内燃機関の燃料噴射制御装置
【課題】騒音およびNOxの低減と、排気に含まれるPMの低減とを両立する内燃機関の燃料噴射制御装置を提供する。
【解決手段】パイロット噴射時にインジェクタ12へ供給する燃料の圧力は、メイン噴射時にインジェクタ12へ供給する燃料の圧力よりも低く設定される。これにより、パイロット噴射においてインジェクタ12から噴射された燃料は、インジェクタ12の周囲に濃い混合気を生成する。そのため、微量のパイロット噴射であっても、燃料の着火性は向上する。一方、メイン噴射およびアフター噴射において、インジェクタ12はパイロット噴射よりも高い圧力の燃料を噴射する。そのため、燃料の燃焼によって高圧となった燃焼室18に微粒化された燃料が供給され、燃料の燃焼は均一化する。これにより、メイン噴射およびアフター噴射における騒音およびNOxの低減、ならびに排気に含まれるPMの低減が図られる。
【解決手段】パイロット噴射時にインジェクタ12へ供給する燃料の圧力は、メイン噴射時にインジェクタ12へ供給する燃料の圧力よりも低く設定される。これにより、パイロット噴射においてインジェクタ12から噴射された燃料は、インジェクタ12の周囲に濃い混合気を生成する。そのため、微量のパイロット噴射であっても、燃料の着火性は向上する。一方、メイン噴射およびアフター噴射において、インジェクタ12はパイロット噴射よりも高い圧力の燃料を噴射する。そのため、燃料の燃焼によって高圧となった燃焼室18に微粒化された燃料が供給され、燃料の燃焼は均一化する。これにより、メイン噴射およびアフター噴射における騒音およびNOxの低減、ならびに排気に含まれるPMの低減が図られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コモンレールに貯えた高圧の燃料を内燃機関の燃焼室へ直接噴射するコモンレール式の燃料噴射装置が広く知られている。このようなコモンレール式の燃料噴射装置の場合、燃料を複数回に分割して燃焼室へ噴射することにより、燃料の燃焼によって生じる騒音の軽減、およびNOxなどの排気中の汚染物質の低減が図られる(特許文献1参照)。燃料の噴射を複数回に分割する場合、燃料は、主たる噴射となるメイン噴射、メイン噴射に先立つパイロット噴射、およびメイン噴射に後続するアフター噴射として噴射される。
【0003】
アフター噴射で噴射される燃料は、メイン噴射における燃料の燃焼で生成した燃焼ガスを酸化する。これにより、メイン噴射における燃料の燃焼によって生じた煤などのPM(Particulate Matter)は酸化され、排気に含まれるPMは減少する。また、アフター噴射は、メイン噴射に後続して実行される。メイン噴射ではパイロット噴射およびアフター噴射に比較して多くの燃料が噴射されるため、燃焼室における圧力はメイン噴射による燃料の燃焼によって上昇する。そのため、メイン噴射に後続するアフター噴射は、上昇した燃焼室の圧力に抗して燃料を噴射する必要がある。
【0004】
しかしながら、コモンレールに貯えられている燃料の圧力は、目標とする一定の圧力に制御されている。そのため、コモンレールにおける燃料の圧力は、一連のパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射の全体について同一の値が設定されている。この場合、アフター噴射によるPMの除去を図るために目標とする圧力を高く設定すると、パイロット噴射においても噴射される燃料の圧力は高くなる。パイロット噴射の場合、燃料の噴射量は他の噴射と比較して微量である。そのため、パイロット噴射において高圧の燃料を噴射すると、微量の燃料は短時間で燃焼室内の空気に拡散する。その結果、燃料の着火性が低下し、失火を招く原因となる。また、メイン噴射において高圧の燃料を噴射すると、比較的大量の燃料が急激に燃焼する。その結果、燃焼室の圧力の急上昇を招き、騒音およびNOxの増加を招く原因となる。このように、騒音およびNOxの低減と排気に含まれるPMの低減とは、相反する条件が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−133322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、騒音およびNOxの低減と、排気に含まれるPMの低減とを両立する内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明では、燃料圧力変更手段は、燃料供給装置からインジェクタへ供給する燃料の圧力を、噴射ごとにそれぞれ異なる圧力に設定する。すなわち、燃料圧力変更手段は、メイン噴射におけるメイン噴射圧力、パイロット噴射におけるパイロット噴射圧力、およびアフター噴射におけるアフター噴射圧力を、それぞれ異なる圧力に設定する。これにより、アフター噴射時において、高圧の燃焼室に対応してアフター噴射圧力を高く設定しても、パイロット噴射およびメイン噴射の圧力は燃焼室の圧力に応じて低く設定される。そのため、アフター噴射による燃焼ガスの酸化により排気に含まれるPMの低減を図りつつ、パイロット噴射時における燃料の失火は回避される。また、メイン噴射における燃焼室の圧力の急激な上昇も抑えられる。したがって、騒音およびNOxの低減と、排気に含まれるPMの低減とを両立して達成することができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、燃料圧力設定手段は、パイロット噴射時におけるパイロット噴射圧力をメイン噴射時におけるメイン噴射圧力よりも低く設定する。パイロット噴射では、メイン噴射に比較して微量の燃料が噴射される。そのため、燃料の貫徹力および拡散力が大きくなると、噴射された燃料と燃焼室の空気との混合によって生成した混合気は希薄となりやすい。混合気が希薄になると、燃料の着火が不安定となり、失火を招きやすい。この燃料の貫徹力および拡散力は、インジェクタから噴射される燃料の圧力に依存する。その結果、パイロット噴射圧力をメイン噴射と同等に設定すると、パイロット噴射で噴射された燃料は失火しやすい。そこで、パイロット噴射圧力をメイン噴射圧力よりも低く設定することにより、インジェクタから噴射された燃料によって生成した混合気はインジェクタの周囲にとどまる。そのため、比較的濃い混合気がインジェクタの周囲に形成され、燃料の着火性が向上する。したがって、パイロット噴射における失火を低減し、メイン噴射における燃料の安定した燃焼を促進することができる。
【0009】
請求項3記載の発明では、燃料圧力設定手段は、アフター噴射時におけるアフター噴射圧力をメイン噴射時におけるメイン噴射圧力よりも高く設定している。アフター噴射では、メイン噴射に後続して燃料が噴射される。メイン噴射では多くの燃料が燃焼するため、燃焼室の圧力は燃料の燃焼によって上昇している。そのため、メイン噴射と同等の圧力でアフター噴射を実行すると、アフター噴射においてインジェクタから噴射された燃料は、十分な貫徹力を確保できず、燃焼ガスとの混合が不十分になりやすい。そこで、アフター噴射圧力をメイン噴射圧力よりも高く設定することにより、インジェクタから噴射された燃料は燃焼室の全体へ混合されやすくなる。そのため、燃焼室の燃焼ガスとアフター噴射で噴射された燃料との混合は促進される。したがって、燃焼ガスに含まれる未燃焼成分はアフター噴射によって供給された燃料で酸化され、排気に含まれるPMを低減することができる。
【0010】
請求項4記載の発明では、燃料供給装置は、第一コモンレールおよび第二コモンレールを有している。第二コモンレールは、第一コモンレールよりも低い圧力で燃料を貯える。燃料圧力変更手段は、インジェクタと第一コモンレールまたは第二コモンレールとの接続を切り替える。これにより、インジェクタには、第一コモンレールから圧力の高い燃料が供給されるとともに、第二コモンレールから圧力の低い燃料が供給される。そのため、インジェクタと第一コモンレールまたは第二コモンレールとの接続を切り替えることにより、インジェクタから噴射される燃料の圧力は変更される。したがって、インジェクタから噴射する燃料の圧力を噴射の時期にあわせて容易に変更することができる。
【0011】
請求項5記載の発明では、燃料供給装置は、サプライポンプとインジェクタとを接続する燃料供給部から分岐するリターン部を有している。燃料供給装置は、このリターン部に減圧弁を有している。燃料圧力変更手段は、サプライポンプから吐出される燃料の流量、またはリターン部に設けられている減圧弁の開度の少なくとも何れか一方を開閉する。インジェクタには、減圧弁が閉じているとき圧力の高い燃料が供給されるとともに、減圧弁が開いているとき圧力の低い燃料が供給される。また、サプライポンプの吐出量を変更することにより、インジェクタに供給される燃料の圧力は変化する。そのため、減圧弁を開閉またはサプライポンプの吐出量を調整することにより、インジェクタから噴射される燃料の圧力は変更される。したがって、インジェクタから噴射する燃料の圧力を噴射の時期にあわせて容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態による内燃機関の燃料噴射制御装置を適用したディーゼルエンジンシステムを示す模式図
【図2】第1実施形態による内燃機関の燃料噴射制御装置を示すブロック図
【図3】第1実施形態による内燃機関の燃料噴射制御装置におけるクランクシャフトの回転角度と燃料噴射量との関係を示す概略図
【図4】第1実施形態による内燃機関の燃料噴射制御装置の処理の流れを示す概略図
【図5】燃料の噴射圧力と燃料の噴霧の粒径との関係を示す概略図
【図6】アフター噴射における燃料の噴射圧力とPM発生量との関係を示す概略図
【図7】第1実施形態による内燃機関の燃料噴射制御装置において、燃料の噴射時期を示すインジェクタの駆動信号と燃料の燃焼との経時的な変化を示す模式図
【図8】燃料の噴射圧力とパイロット噴射における燃料の燃焼量との関係を示す概略図
【図9】噴射開始からの経過時間と燃料の噴霧の長さとの関係を示す概略図
【図10】第2実施形態によるディーゼルエンジンシステムの燃料供給装置を示す模式図
【図11】第3実施形態によるディーゼルエンジンシステムの燃料供給装置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、内燃機関の燃料噴射制御装置を適用したディーゼルエンジンシステムの複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態によるディーゼルエンジンシステムを図1に示す。ディーゼルエンジンシステム10は、機関本体11、インジェクタ12および燃料供給装置13を備えている。機関本体11は、シリンダブロック14、シリンダヘッド15およびピストン16などを有している。シリンダブロック14は、内側に複数のシリンダ17を形成している。シリンダヘッド15は、シリンダブロック14の端部に設けられている。ピストン16は、シリンダブロック14が形成するシリンダ17の内側を軸方向へ往復移動する。シリンダ17を形成するシリンダブロック14の内壁、シリンダヘッド15の内壁およびピストン16の端面は、相互の間に燃焼室18を形成している。
【0015】
インジェクタ12は、シリンダヘッド15を貫いて設けられている。インジェクタ12の先端は、燃焼室18に露出している。燃料供給装置13は、第一コモンレール21、第二コモンレール22、サプライポンプ23および燃料タンク24を有している。サプライポンプ23は、燃料タンク24から吸入した燃料を加圧する。サプライポンプ23で加圧された燃料は、第一コモンレール21および第二コモンレール22に供給される。第一コモンレール21および第二コモンレール22は、いずれもサプライポンプ23から供給された燃料を、圧力を維持した状態で貯える。第一コモンレール21および第二コモンレール22は、切替弁25を経由してインジェクタ12に接続している。具体的には、インジェクタ12には、燃料供給通路部26が接続している。この燃料供給通路部26は、切替弁25を挟んで第一コモンレール21に接続する第一供給通路部31と、第二コモンレール22に接続する第二供給通路部32とに接続している。切替弁25を切り替えることにより、インジェクタ12は第一コモンレール21または第二コモンレール22と選択的に接続する。
【0016】
第一コモンレール21は、第二コモンレール22よりも高い圧力で燃料を貯える。すなわち、サプライポンプ23で加圧された燃料の一部は、第一コモンレール21に供給される。一方、サプライポンプ23で加圧された燃料の他の一部は、第二コモンレール22に第一コモンレール21よりも低い圧力で貯えられる。このように、第一コモンレール21および第二コモンレール22は、異なる圧力の燃料を貯えている。そして、インジェクタ12は、第一コモンレール21または第二コモンレール22から異なる圧力の燃料が供給される。
【0017】
ディーゼルエンジンシステム10は、上記の構成に加え、吸気装置34および排気装置35を備えている。吸気装置34は、吸気管部材36およびスロットル37を有している。吸気管部材36は、吸気通路38を形成している。吸気通路38は、一方の端部が燃焼室18に接続し、図示しない他方の端部が大気に開放している。スロットル37は、吸気管部材36が形成する吸気通路38を開閉する。排気装置35は、排気管部材41および図示しない排気浄化部を有している。排気管部材41は、排気通路42を形成している。排気通路42は、一方の端部が燃焼室18に接続し、他方の端部が大気に開放している。図示しない排気浄化部は、排気通路42の途中に設けられ、燃焼室18から排出される排気を浄化する。
【0018】
ディーゼルエンジンシステム10は、上記の構成に加え燃料噴射制御装置50を備えている。燃料噴射制御装置50は、ECU(Electronic Control Unit)51を備えている。ECU51は、吸気圧センサ52、吸気温度センサ53、アクセル開度センサ54、回転数センサ55、水温センサ56、第一圧力センサ57、第二圧力センサ58および吸入空気量センサ59と接続している。吸気圧センサ52は、吸気通路38を流れる吸気の圧力を検出する。吸気圧センサ52は、検出した吸気の圧力に基づく電気信号をECU51へ出力する。吸気温度センサ53は、吸気通路38を流れる吸気の温度を検出する。吸気温度センサ53は、検出した吸気の温度に基づく電気信号をECU51へ出力する。アクセル開度センサ54は、図示しないアクセルペダルの踏み込み量を検出する。アクセル開度センサ54は、検出したアクセルペダルの踏み込み量に基づく電気信号をECU51へ出力する。回転数センサ55は、機関本体11の図示しないクランクシャフトの回転数を検出する。回転数センサ55は、検出したクランクシャフトの回転数に基づく電気信号をECU51へ出力する。水温センサ56は、機関本体11の冷却水の温度を検出する。水温センサ56は、検出した冷却水の温度に基づく電気信号をECU51へ出力する。第一圧力センサ57は、第一コモンレール21に貯えられている燃料の圧力を検出する。第一圧力センサ57は、検出した第一コモンレール21における燃料の圧力に基づく電気信号をECU51へ出力する。第二圧力センサ58は、第二コモンレール22に貯えられている燃料の圧力を検出する。第二圧力センサ58は、検出した第二コモンレール22における燃料の圧力に基づく電気信号をECU51へ出力する。吸入空気量センサ59は、吸気通路38から燃焼室18へ吸入される空気量を検出する。吸入空気量センサ59は、検出した空気量に基づく電気信号をECU51へ出力する。
【0019】
ECU51は、図示しないCPU、ROMおよびRAMからなるマイクロコンピュータで構成されている。ECU51は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムにしたがってディーゼルエンジンシステムの全体を制御する。ECU51は、コンピュータプログラムを実行することにより、図2に示すように噴射量設定部61、インジェクタ駆動部62、燃料圧力設定部63および燃料圧力切替部64をソフトウェア的に実現している。これら、噴射量設定部61、インジェクタ駆動部62、燃料圧力設定部63および燃料圧力切替部64は、ハードウェア的に実現してもよい。ECU51は、記憶部65に接続している。記憶部65は、例えば不揮発性メモリなどを有している。記憶部65は、ECU51のROMおよびRAMと共用してもよい。
【0020】
噴射量設定部61は、各インジェクタ12から燃焼室18へ噴射する燃料の噴射量を設定する。噴射量設定部61は、アクセル開度センサ54で検出したアクセルペダルの踏み込み量、および回転数センサ55で検出したクランクシャフトの回転数に基づいて、インジェクタ12から噴射する燃料噴射量Qを設定する。このとき、噴射量設定部61は、吸気圧センサ52で検出した吸気の圧力、吸気温度センサ53で検出した吸気の温度、水温センサ56で検出した冷却水の温度、吸入空気量センサ59で検出した吸入空気量、および各インジェクタ12の噴射特性などに基づいて、燃料噴射量Qを補正して決定燃料噴射量Qd設定する。また、噴射量設定部61は、決定燃料噴射量Qdを、メイン噴射における燃料の噴射量であるメイン噴射量Qm、パイロット噴射における燃料の噴射量であるパイロット噴射量Qp、およびアフター噴射における燃料の噴射量であるアフター噴射量Qaに分配する。
【0021】
インジェクタ駆動部62は、噴射量設定部61で設定した量の燃料を噴射するためにインジェクタ12を駆動する。インジェクタ駆動部62は、インジェクタ12の例えば電磁駆動部に駆動信号を出力する。これにより、インジェクタ12は、燃料の噴射を断続する。インジェクタ駆動部62は、第一コモンレール21または第二コモンレール22に貯えられている燃料の圧力、および噴射量設定部61で設定した各時期における燃料の噴射量に基づいて駆動時間を設定する。そして、インジェクタ駆動部62は、設定した駆動時間に基づく駆動信号を各インジェクタ12へ出力する。インジェクタ12は、インジェクタ駆動部62から出力された駆動信号にしたがって燃料の噴射を断続する。これにより、インジェクタ12は、メイン噴射において噴射量設定部61で設定されたメイン噴射量Qmの燃料、パイロット噴射においてパイロット噴射量Qpの燃料、およびアフター噴射においてアフター噴射量Qaの燃料をそれぞれ噴射する。
【0022】
ここで、例えば図3に示すようにメイン噴射は、インジェクタ12の一連の燃料噴射時期における主たる噴射である。ここで、一連の燃料噴射時期とは、ピストン16が下死点(BDC)から上死点(TDC)を経由して再び下死点へ移動する圧縮行程から燃焼行程までの間に相当する。メイン噴射は、この一回の燃料噴射時期において、決定燃料噴射量Qdのうち大部分の燃料噴射量Qmを噴射する。一方、パイロット噴射は、メイン噴射に先立つ噴射であり、決定燃料噴射量Qdからメイン噴射量Qmおよびアフター噴射量Qaを減じた量に相当する。すなわち、決定燃料噴射量Qdは、Qd=Qm+Qp+Qaである。また、メイン噴射量Qm、パイロット噴射量Qpおよびアフター噴射量Qaの間には、Qm>Qa>Qpの関係が成立する。
【0023】
燃料圧力設定部63は、第一コモンレール21における燃料の圧力、および第二コモンレール22における燃料の圧力をそれぞれ設定する。この場合、燃料圧力設定部63は、第一コモンレール21における燃料の圧力を第二コモンレール22における燃料の圧力よりも高く設定する。本実施形態の場合、第一コモンレール21は、メイン噴射およびアフター噴射に対応する圧力P1の燃料を貯えている。一方、第二コモンレール22は、パイロット噴射に対応する圧力P2の燃料を貯えている。これにより、パイロット噴射を実行するとき、インジェクタ12は第二コモンレール22に貯えられている圧力P2の燃料を噴射する。一方、メイン噴射およびアフター噴射を実行するとき、インジェクタ12は第一コモンレール21に貯えられている圧力P1の燃料を噴射する。つまり、この場合、インジェクタ12は、パイロット噴射において、メイン噴射またはアフター噴射における燃料の噴射圧力よりも低い噴射圧力で燃料を噴射する。
【0024】
また、第一コモンレール21はアフター噴射に対応する圧力P1の燃料を貯え、第二コモンレール22はパイロット噴射およびメイン噴射に対応する圧力P2の燃料を貯える構成としてもよい。これにより、パイロット噴射およびメイン噴射を実行するとき、インジェクタ12は第二コモンレール22に貯えられている圧力P2の燃料を噴射する。一方、アフター噴射を実行するとき、インジェクタ12は第一コモンレール21に貯えられている圧力P1の燃料の噴射する。この場合、インジェクタ12は、アフター噴射において、パイロット噴射またはメイン噴射における燃料の噴射圧力よりも高い噴射圧力で燃料を噴射する。
【0025】
燃料圧力切替部64は、燃料の噴射時期にあわせて切替弁25を切り替える。上述のように、インジェクタ12に接続する燃料供給通路部26は、切替弁25を挟んで第一供給通路部31または第二供給通路部32に接続している。燃料圧力切替部64は、切替弁25を駆動することにより、燃料供給通路部26と第一供給通路部31、または燃料供給通路部26と第二供給通路部32とを選択的に切り替える。これにより、インジェクタ12は、第一コモンレール21に貯えられている圧力P1の燃料、または第二コモンレール22に貯えられている圧力P2の燃料が供給される。燃料圧力切替部64および切替弁25は、特許請求の範囲の燃料圧力切替手段に相当する。
【0026】
次に、上記の構成によるディーゼルエンジンシステム10の制御について図4に基づいて説明する。
ECU51は、ディーゼルエンジンシステム10が運転を開始すると、予め設定された間隔でディーゼルエンジンシステム10の運転状態を取得する(S101)。具体的には、ECU51は、アクセル開度センサ54からアクセルペダルの踏み込み量、および回転数センサ55から機関本体の回転数を取得する。これにより、ECU51は、ディーゼルエンジンシステム10の運転状態すなわち負荷状態を取得する。
【0027】
噴射量設定部61は、S101で取得したディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて、決定燃料噴射量Qdを設定する(S102)。具体的には、噴射量設定部61は、S101で取得したディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて、基礎となる燃料噴射量Qを設定する。そして、噴射量設定部61は、この燃料噴射量Qを、吸気圧センサ52で取得した吸気の圧力、吸気温度センサ53で取得した吸気の温度、水温センサ56で取得した冷却水の温度、吸入空気量センサ59で取得した吸入空気量、および各インジェクタ12の噴射特性などに基づいて補正し、決定燃料噴射量Qdを設定する。
【0028】
噴射量設定部61は、S102において決定燃料噴射量Qdを設定すると、燃料の噴射時期を設定する(S103)。噴射量設定部61は、圧縮行程において下死点から上死点へ上昇、または燃焼行程において上死点から下死点へ下降するピストン16の位置、すなわち図示しないクランクシャフトの回転角度がいずれにあるとき燃料を噴射するかを設定する。あわせて、噴射量設定部61は、ピストン16が圧縮行程から燃焼行程にある間に実行する一連の噴射時期において、いずれの時期にパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射を実行するかについても設定する。一連のパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射は、上述の燃料噴射時期に実行される。この燃料を噴射する時期、すなわちパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射の時期は、シリンダ17を往復移動するピストン16の位置すなわちクランクシャフトの回転角度に関連づけて設定される。
【0029】
燃料圧力設定部63は、S103において噴射時期が設定されると、第一コモンレール21および第二コモンレール22における燃料の圧力を実レール圧として取得する(S104)。すなわち、燃料圧力設定部63は、第一圧力センサ57から第一コモンレール21における燃料の圧力を取得するとともに、第二圧力センサ58から第二コモンレール22における燃料の圧力を取得する。
【0030】
燃料圧力設定部63は、S104において第一コモンレール21および第二コモンレール22における燃料の圧力を取得すると、燃料噴射時期に噴射圧力の変更を実行するか否かを判断する(S105)。例えばアイドル状態や低負荷状態などのようにディーゼルエンジンシステム10の運転状態によっては、燃料噴射時期に燃料の噴射圧力を変更する必要がない。そのため、燃料圧力設定部63は、S101で取得したディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて、燃料を噴射する圧力を変更するか否かを判断する。
【0031】
燃料圧力設定部63は、燃料噴射時期に噴射圧力の変更を実行すると判断すると(S105:Yes)、第一コモンレール21および第二コモンレール22に貯える燃料の圧力を設定する(S106)。すなわち、燃料圧力設定部63は、S101で取得したディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて、第一コモンレール21に貯える燃料の圧力、および第二コモンレール22に貯える燃料の圧力を設定する。本実施形態の場合、燃料は、メイン噴射およびアフター噴射において圧力P1で噴射される。一方、燃料は、パイロット噴射において圧力P2で噴射される。燃料圧力設定部63は、ディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて、第一コモンレール21に貯える燃料の圧力P1、および第二コモンレール22に貯える燃料の圧力P2を設定する。
【0032】
燃料圧力設定部63は、S106において燃料の圧力を設定すると、第一コモンレール21および第二コモンレール22における燃料の圧力を、それぞれ目標となる圧力P1および圧力P2に制御する(S107)。燃料圧力設定部63は、S104で取得した第一コモンレール21および第二コモンレール22における実レール圧に基づいて、サプライポンプ23から吐出する燃料の圧力および流量を制御する。これにより、燃料圧力設定部63は、第一コモンレール21の圧力を目標となる圧力P1に制御するとともに、第二コモンレール22の圧力を目標となる圧力P2に制御する。
【0033】
燃料圧力設定部63は、S107において第一コモンレール21および第二コモンレール22の圧力を制御しつつ、燃料の圧力を変更する時期を設定する(S108)。すなわち、燃料圧力設定部63は、S103で設定した燃料の噴射時期、つまりパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射の時期に基づいて、どの時期に燃料の圧力を変更するかを設定する。本実施形態の場合、燃料は、圧力P2でパイロット噴射が実行された後、圧力P1でメイン噴射およびアフター噴射が実行される。そのため、燃料圧力設定部63は、燃料の圧力を変更する時期をパイロット噴射とメイン噴射との間に設定する。
【0034】
燃料圧力切替部64は、燃料圧力設定部63において燃料の圧力を変更する時期が変更されると、パイロット噴射に対応するために切替弁25を第二コモンレール22側に切り替える(S109)。すなわち、燃料圧力切替部64は、切替弁25を駆動して、インジェクタ12に接続する燃料供給通路部26の接続先を、第二コモンレール22に接続する第二供給通路部32に切り替える。これにより、インジェクタ12は、第二コモンレール22から燃料が供給される。
【0035】
インジェクタ駆動部62は、S109において燃料圧力切替部64によって燃料供給通路部26が第二コモンレール22に接続されるとともに、パイロット噴射の時期になると、インジェクタ12を駆動してパイロット噴射を実行する(S110)。これにより、インジェクタ12は、パイロット噴射として、第二コモンレール22から供給された圧力P2の燃料を噴射する。
【0036】
燃料圧力切替部64は、S108で設定した燃料の圧力を変更する時期、すなわちS110においてパイロット噴射が完了すると、切替弁25を第一コモンレール21へ切り替える(S111)。すなわち、燃料圧力切替部64は、切替弁25を駆動して、インジェクタ12に接続する燃料供給通路部26の接続先を、第一コモンレール21に接続する第一供給通路部31に切り替える。これにより、インジェクタ12は、第一コモンレール21から燃料が供給される。
【0037】
インジェクタ駆動部62は、S111において燃料圧力切替部64によって燃料供給通路部26が第一コモンレール21に接続されるとともに、メイン噴射の時期になると、インジェクタ12を駆動してメイン噴射を実行する(S112)。これにより、インジェクタ12は、メイン噴射として第一コモンレール21から供給された圧力P1の燃料を噴射する。さらに、インジェクタ駆動部62は、アフター噴射の時期になると、インジェクタ12を駆動してアフター噴射を実行する(S113)。これにより、インジェクタ12は、アフター噴射として、第一コモンレール21から供給された圧力P1の燃料を噴射する。
【0038】
S105において燃料噴射時期に噴射圧力を変更しないと判断されると(S105:No)、インジェクタ駆動部62は、予め設定された噴射プログラムにしたがってインジェクタ12を駆動する(S114)。すなわち、インジェクタ駆動部62は、S102で設定した決定燃料噴射量QdおよびS103で設定した燃料の噴射時期に基づいて、予め設定された噴射プログラムにしたがってインジェクタ12を駆動する。この噴射プログラムは、S101で取得したディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて決定される。例えばディーゼルエンジンシステム10の負荷が小さいとき、噴射プログラムはパイロット噴射を含まない。そのため、インジェクタ駆動部62は、パイロット噴射においてインジェクタ12を駆動せず、メイン噴射においてインジェクタ12を駆動する。これにより、インジェクタ12は、噴射プログラムにしたがって燃料を噴射する。
【0039】
次に、上記の構成によるディーゼルエンジンシステム10の作用について説明する。
本実施形態の場合、燃料は、パイロット噴射において、メイン噴射およびアフター噴射に比較して低い圧力で噴射される。すなわちパイロット噴射の圧力はP2であるのに対し、メイン噴射およびアフター噴射の圧力はP1である。図5に示すように、インジェクタから噴射される燃料の噴霧は、噴射圧力が高くなるほど粒径が小さくなる。すなわち、燃料は、インジェクタ12からの噴射圧力が高くなるほど微粒化が促進される。メイン噴射およびアフター噴射における燃料の圧力P1をパイロット噴射における燃料の圧力P2よりも高く設定することにより、メイン噴射およびアフター噴射の燃料は微粒化が促進される。
【0040】
特に、アフター噴射が実行されるメイン噴射の終了後は、メイン噴射による燃料の燃焼によって燃焼室18の圧力および温度が上昇している。そのため、アフター噴射で噴射される燃料は、着火遅れが小さくなる。その結果、メイン噴射で生成した燃焼ガスとアフター噴射で噴射された燃料との混合が不十分になると、煤すなわちPMの生成が増加するおそれがある。すなわち、図6に示すように、PMの発生量は、アフター噴射における燃料の圧力が高くなるほど減少する。
【0041】
本実施形態の場合、アフター噴射の燃料は、メイン噴射による燃料の燃焼によって圧力および温度が上昇した燃焼室18に圧力P1で噴射される。これにより、燃焼室18において圧力および温度が上昇していても、アフター噴射で噴射された高圧の燃料はメイン噴射で生成した燃焼ガスを撹拌しなが混合される。そのため、燃焼ガスは、アフター噴射で噴射された燃料に速やかかつ均一に混合される。その結果、図7に示すように他の噴射に比較して着火遅れが小さなアフター噴射時であっても、燃焼ガスに含まれるPMなどの未燃焼物質は、アフター噴射で噴射された燃料によって酸化される。
【0042】
一方、パイロット噴射における燃料の燃焼量は、図8に示すようにインジェクタ12からの噴射圧力が高くなるほど低下する。インジェクタ12から噴射された燃料の噴霧の長さは、図9に示すように噴射開始からの時間の経過とともに変化する。この燃料の噴霧の長さは、インジェクタ12から噴射される圧力が高くなるほど迅速に拡大する。つまり、燃料の噴射圧力が高くなるほど、燃料の噴霧は迅速に成長する。また、上述の図5に示すように、インジェクタ12から噴射される燃料の噴霧は、噴射圧力が高くなるほど微粒化が促進される。パイロット噴射における燃料の噴射量は、メイン噴射やアフター噴射に比較して微量である。そのため、パイロット噴射において、微量の燃料を高圧で噴射すると、インジェクタ12から噴射された燃料は、図9に示すように噴霧が迅速に成長し、燃焼室18の全体に拡散する。これにより、高圧の燃料をパイロット噴射において噴射すると、燃焼室18に生成する混合気は希薄になる。その結果、パイロット噴射における燃料は、図8に示すように噴射圧力が高くなるほど着火性が低下し、燃焼量も低下する。そこで、パイロット噴射における燃料を、メイン噴射およびアフター噴射の圧力P1よりも小さな圧力P2に設定することにより、インジェクタ12から噴射された燃料の噴霧は成長しにくくなる。そのため、インジェクタ12から噴射された燃料は、インジェクタ12の周囲にとどまり、濃い混合気を生成する。その結果、パイロット噴射において圧力P2で燃料を噴射することにより、燃料は、微量であっても燃焼が促進される。
【0043】
パイロット噴射で噴射された燃料の燃焼が促進されることにより、パイロット噴射で噴射された燃料は火種を形成する。そのため、パイロット噴射に後続してメイン噴射を実行すると、メイン噴射で噴射された燃料はパイロット噴射で形成された火種によって速やかかつ緩やかに燃焼する。その結果、メイン噴射によって供給された燃料の急激な燃焼は抑制される。したがって、騒音の発生およびNOxの生成が低減される。
【0044】
以上説明した第1実施形態では、燃料圧力切替部64は、インジェクタ12へ供給する燃料の圧力を、噴射ごとにそれぞれ異なる圧力に切り替える。すなわち、燃料圧力切替部64は、メイン噴射とパイロット噴射およびアフター噴射とで燃料の噴射圧力を異なる圧力に切り替えている。
具体的には、燃料圧力設定部63は、パイロット噴射時におけるパイロット噴射圧力をメイン噴射時におけるメイン噴射圧力よりも低く設定している。これにより、パイロット噴射においてインジェクタ12から噴射された燃料は、インジェクタ12の周囲にとどまり、インジェクタ12の周囲に濃い混合気を生成する。そのため、この濃い混合気によって、微量のパイロット噴射であっても、燃料の着火性は向上する。したがって、パイロット噴射における失火を低減し、メイン噴射における燃料の安定した燃焼を促進することができる。
【0045】
また、燃料圧力設定部63は、アフター噴射圧力をメイン噴射圧力よりも高く設定してもよい。これにより、インジェクタ12から噴射された燃料は燃焼室18の燃焼ガスの全体へ均一に拡散する。そのため、燃焼室18の燃焼ガスとアフター噴射で噴射された燃料との混合は促進される。したがって、燃焼ガスに含まれる未燃焼成分はアフター噴射によって供給された燃料で酸化され、排気に含まれるPMを低減することができる。
このように、複数の燃料の噴射圧力を設定することにより、アフター噴射の実行によるPMの低減と、パイロット噴射の実行によるNOxおよび騒音の低減とを両立して達成することができる。
【0046】
また、第1実施形態の場合、燃料供給装置13は、第一コモンレール21および第二コモンレール22を有している。第二コモンレール22は、第一コモンレール21よりも低い圧力で燃料を貯える。燃料圧力切替部64は、インジェクタ12と第一コモンレール21または第二コモンレール22との接続を切り替える。これにより、インジェクタ12には、第一コモンレール21から圧力の高い燃料が供給されるとともに、第二コモンレール22から圧力の低い燃料が供給される。そのため、インジェクタ12と第一コモンレール21または第二コモンレール22との接続を切り替えることにより、インジェクタ12から噴射される燃料の圧力は変更される。したがって、インジェクタ12から噴射する燃料の圧力を噴射の時期にあわせて容易に変更することができる。
【0047】
(第2実施形態)
第2実施形態によるディーゼルエンジンシステムの燃料供給装置を図10に示す。
第2実施形態の場合、燃料供給装置13は、吐出通路部71、接続通路部72、高圧側通路部73、低圧側通路部74、燃料供給通路部75、排出通路部76、高圧側切替弁77、低圧側切替弁78、減圧弁79およびリーク弁81を有している。吐出通路部71は、サプライポンプ23と第一コモンレール21とを接続している。接続通路部72は、第一コモンレール21と第二コモンレール22とを接続している。高圧側通路部73は、第一コモンレール21と燃料供給通路部75とを接続している。低圧側通路部74は、第二コモンレール22と燃料供給通路部75とを接続している。燃料供給通路部75は、高圧側通路部73または低圧側通路部74とインジェクタ12とを接続している。排出通路部76は、第二コモンレール22と燃料タンク24とを接続している。高圧側切替弁77は、高圧側通路部73に設けられ、第一コモンレール21から燃料供給通路部75への燃料の流れを断続する。低圧側切替弁78は、低圧側通路部74に設けられ、第二コモンレール22から燃料供給通路部75への燃料の流れを断続する。減圧弁79は、接続通路部72に設けられ、第一コモンレール21から第二コモンレール22へ流れる燃料を減圧する。リーク弁81は、排出通路部76に設けられ、第二コモンレール22から燃料タンク24への燃料の流れを断続する。
【0048】
高圧側切替弁77、低圧側切替弁78、減圧弁79およびリーク弁81は、燃料圧力変更手段としてのECU51に接続している。ECU51は、駆動信号を出力することにより、高圧側切替弁77、低圧側切替弁78、減圧弁79およびリーク弁81の開閉を制御する。サプライポンプ23で加圧された燃料は、吐出通路部71を経由して第一コモンレール21に貯えられる。第一コモンレール21で余剰となった燃料は、接続通路部72を経由して第二コモンレール22に貯えられる。このとき、燃料は、接続通路部72を経由して流れる間に、減圧弁79で減圧される。これにより、第二コモンレール22に貯えられる燃料の圧力は、第一コモンレール21に貯えられる燃料の圧力よりも低くなる。また、第二コモンレール22で余剰となった燃料は、リーク弁81が開放されると、排出通路部76を経由して燃料タンク24へ戻される。ECU51は、サプライポンプ23から吐出される燃料の流量、およびリーク弁81を経由して燃料タンク24へ戻される燃料の流量を調整することにより、第一コモンレール21および第二コモンレール22における燃料の圧力を制御する。
【0049】
インジェクタ12は、燃料供給通路部75に接続している。本実施形態の場合、インジェクタ12は、制御弁部82を有している。制御弁部82は、ECU51から出力された駆動信号によって開閉する。インジェクタ12は、燃料供給通路部75から分岐する背圧通路83を有している。これにより、インジェクタ12は、第一コモンレール21または第二コモンレール22から供給された燃料の一部をニードル84を押し付ける背圧として利用している。制御弁部82は、このニードル84に背圧を加える燃料の流れを断続する。これにより、燃料からニードル84に加わる力のバランスは変化する。制御弁部82で燃料の流れを調整し燃料からニードル84へ加わる力のバランスを変化させることにより、ニードル84は軸方向へ往復移動する。その結果、インジェクタ12の先端に設けられている図示しない噴孔からの燃料の噴射は断続される。なお、上述のインジェクタ12は、一例であり、例えばピエゾ素子の伸縮により背圧を制御する構成など、任意の構成とすることができる。
【0050】
パイロット噴射のようにインジェクタ12から比較的圧力の低い燃料を噴射する場合、ECU51は、高圧側通路部73の高圧側切替弁77を閉じるとともに、低圧側通路部74の低圧側切替弁78を開く。これにより、燃料は、第二コモンレール22からインジェクタ12へ供給される。そのため、インジェクタ12は、第二コモンレール22に貯えられている比較的低圧の燃料を噴射する。一方、ECU51は、パイロット噴射が終了すると、低圧側通路部74の低圧側切替弁78を閉じるとともに、高圧側通路部73の高圧側切替弁77を開く。これにより、燃料は、第一コモンレール21からインジェクタ12へ供給される。そのため、インジェクタ12は、第一コモンレール21に貯えられている比較的高圧の燃料を噴射する。このように、ECU51は、高圧側切替弁77および低圧側切替弁78の開閉することにより、インジェクタ12に供給される燃料の圧力を切り替える。
【0051】
第2実施形態の場合、第二コモンレール22は、第一コモンレール21よりも低い圧力で燃料を貯える。ECU51は、インジェクタ12と第一コモンレール21または第二コモンレール22との接続を切り替える。これにより、インジェクタ12には、第一コモンレール21から圧力の高い燃料が供給されるとともに、第二コモンレール22から圧力の低い燃料が供給される。ECU51は、高圧側切替弁77および低圧側切替弁78の開閉によって、インジェクタ12と第一コモンレール21または第二コモンレール22との接続を切り替える。これにより、インジェクタ12から噴射される燃料の圧力は変更される。したがって、インジェクタ12から噴射する燃料の圧力を噴射の時期にあわせて容易に変更することができる。
【0052】
(第3実施形態)
第3実施形態によるディーゼルエンジンシステムの燃料供給装置を図11に示す。
第3実施形態の場合、燃料供給装置13は、燃料供給部91、リターン部92および減圧弁93を有している。燃料供給部91は、サプライポンプ23とインジェクタ12とを接続している。インジェクタ12の構成は、第2実施形態と同一である。リターン部92は、燃料供給部91から分岐し、燃料供給部91と反対側の端部が燃料タンク24に接続している。減圧弁93は、リターン部92に設けられ、サプライポンプ23から吐出された燃料の圧力を調整する。
【0053】
サプライポンプ23および減圧弁93は、ECU51に接続している。ECU51は、駆動信号を出力することにより、サプライポンプ23および減圧弁93を制御する。具体的には、ECU51は、出力した駆動信号によりサプライポンプ23から吐出される燃料の流量を制御する。ECU51は、例えばサプライポンプ23の燃料吸入側に設けられた流量調整弁によってサプライポンプ23へ吸入される燃料の流量を制御することにより、サプライポンプ23から吐出される燃料の流量を制御する。サプライポンプ23から吐出される燃料の量が流量が大きくなると、サプライポンプ23からインジェクタ12へ供給される燃料の圧力は高くなる。また、ECU51は、出力した駆動信号によりリターン部92における減圧弁93を開閉する。減圧弁93の開度が大きくなると、サプライポンプ23から吐出され燃料は、より多くが燃料タンク24へ戻される。そのため、減圧弁93の開度が大きくなると、サプライポンプ23からインジェクタ12へ供給される燃料の圧力は低下する。これらのように、ECU51は、サプライポンプ23から吐出される燃料の流量または減圧弁93の開度の少なくともいずれか一方を調整することにより、サプライポンプ23からインジェクタ12へ供給する燃料の圧力を変更する。
【0054】
パイロット噴射のようにインジェクタ12から比較的圧力の低い燃料を噴射する場合、ECU51は、サプライポンプ23から吐出する燃料の流量を減少させるとともに、減圧弁93の開度を拡大する。これにより、サプライポンプ23からインジェクタ12へ供給される燃料の圧力は低下する。そのため、インジェクタ12は、サプライポンプ23から吐出された後、減圧された比較的低圧の燃料を噴射する。一方、ECU51は、パイロット噴射が終了すると、サプライポンプ23から吐出する燃料の流量が増加させるとともに、減圧弁93の開度を縮小する。これにより、サプライポンプ23からインジェクタ12へ供給される燃料の圧力は上昇する。そのため、インジェクタ12は、サプライポンプ23から吐出された比較的高圧の燃料を噴射する。
【0055】
第3実施形態では、ECU51は、リターン部92に設けられている減圧弁93を開閉する。これにより、インジェクタ12には、減圧弁93が閉じているとき圧力の高い燃料が供給されるとともに、減圧弁93が開いているとき圧力の低い燃料が供給される。また、ECU51は、サプライポンプ23から吐出する燃料の流量を調整する。減圧弁93に加え、サプライポンプ23から吐出する燃料の流量を変更することにより、インジェクタ12から噴射される燃料の圧力は変更される。したがって、インジェクタ12から噴射する燃料の圧力を噴射の時期にあわせて容易に変更することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【0057】
第1実施形態および第2実施形態では、第一コモンレール21および第二コモンレール22にそれぞれ圧力の異なる燃料を貯える例について説明した。すなわち、インジェクタ12は、第一コモンレール21に貯えられている高圧の燃料、または第二コモンレール22に貯えられている低圧の燃料を噴射する構成について説明した。しかし、第三コモンレールを備えるディーゼルエンジンシステム10として、パイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射において、それぞれ異なる圧力の燃料を噴射する構成としてもよい。
【0058】
第3実施形態の場合、燃料を高圧または低圧の二段階に変更するのではなく、減圧弁93の開度を適宜変更することにより、パイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射において、インジェクタ12はそれぞれの時期に異なる噴射圧力の燃料を噴射する構成としてもよい。
また、複数の実施形態では、燃料噴射時期においてパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射を実行する例について説明した。しかし、各噴射を多段階に分割して実施してもよく、パイロット噴射の前またはアフター噴射の後にさらに燃料を噴射する構成としてもよい。この場合も、燃料の噴射圧力は、二段階以上に変更することができる。
【符号の説明】
【0059】
図面中、11は機関本体(内燃機関本体)、12はインジェクタ、13は燃料供給装置、18は燃焼室、21は第一コモンレール、22は第二コモンレール、23はサプライポンプ、25は切替弁(燃料圧力変更手段)、50は燃料噴射制御装置、61は噴射量設定部(噴射量設定手段)、62はインジェクタ駆動部(インジェクタ駆動手段)、64は燃料圧力切替部(燃料圧力変更手段)、91は燃料供給部、92はリターン部、93は減圧弁を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コモンレールに貯えた高圧の燃料を内燃機関の燃焼室へ直接噴射するコモンレール式の燃料噴射装置が広く知られている。このようなコモンレール式の燃料噴射装置の場合、燃料を複数回に分割して燃焼室へ噴射することにより、燃料の燃焼によって生じる騒音の軽減、およびNOxなどの排気中の汚染物質の低減が図られる(特許文献1参照)。燃料の噴射を複数回に分割する場合、燃料は、主たる噴射となるメイン噴射、メイン噴射に先立つパイロット噴射、およびメイン噴射に後続するアフター噴射として噴射される。
【0003】
アフター噴射で噴射される燃料は、メイン噴射における燃料の燃焼で生成した燃焼ガスを酸化する。これにより、メイン噴射における燃料の燃焼によって生じた煤などのPM(Particulate Matter)は酸化され、排気に含まれるPMは減少する。また、アフター噴射は、メイン噴射に後続して実行される。メイン噴射ではパイロット噴射およびアフター噴射に比較して多くの燃料が噴射されるため、燃焼室における圧力はメイン噴射による燃料の燃焼によって上昇する。そのため、メイン噴射に後続するアフター噴射は、上昇した燃焼室の圧力に抗して燃料を噴射する必要がある。
【0004】
しかしながら、コモンレールに貯えられている燃料の圧力は、目標とする一定の圧力に制御されている。そのため、コモンレールにおける燃料の圧力は、一連のパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射の全体について同一の値が設定されている。この場合、アフター噴射によるPMの除去を図るために目標とする圧力を高く設定すると、パイロット噴射においても噴射される燃料の圧力は高くなる。パイロット噴射の場合、燃料の噴射量は他の噴射と比較して微量である。そのため、パイロット噴射において高圧の燃料を噴射すると、微量の燃料は短時間で燃焼室内の空気に拡散する。その結果、燃料の着火性が低下し、失火を招く原因となる。また、メイン噴射において高圧の燃料を噴射すると、比較的大量の燃料が急激に燃焼する。その結果、燃焼室の圧力の急上昇を招き、騒音およびNOxの増加を招く原因となる。このように、騒音およびNOxの低減と排気に含まれるPMの低減とは、相反する条件が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−133322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、騒音およびNOxの低減と、排気に含まれるPMの低減とを両立する内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明では、燃料圧力変更手段は、燃料供給装置からインジェクタへ供給する燃料の圧力を、噴射ごとにそれぞれ異なる圧力に設定する。すなわち、燃料圧力変更手段は、メイン噴射におけるメイン噴射圧力、パイロット噴射におけるパイロット噴射圧力、およびアフター噴射におけるアフター噴射圧力を、それぞれ異なる圧力に設定する。これにより、アフター噴射時において、高圧の燃焼室に対応してアフター噴射圧力を高く設定しても、パイロット噴射およびメイン噴射の圧力は燃焼室の圧力に応じて低く設定される。そのため、アフター噴射による燃焼ガスの酸化により排気に含まれるPMの低減を図りつつ、パイロット噴射時における燃料の失火は回避される。また、メイン噴射における燃焼室の圧力の急激な上昇も抑えられる。したがって、騒音およびNOxの低減と、排気に含まれるPMの低減とを両立して達成することができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、燃料圧力設定手段は、パイロット噴射時におけるパイロット噴射圧力をメイン噴射時におけるメイン噴射圧力よりも低く設定する。パイロット噴射では、メイン噴射に比較して微量の燃料が噴射される。そのため、燃料の貫徹力および拡散力が大きくなると、噴射された燃料と燃焼室の空気との混合によって生成した混合気は希薄となりやすい。混合気が希薄になると、燃料の着火が不安定となり、失火を招きやすい。この燃料の貫徹力および拡散力は、インジェクタから噴射される燃料の圧力に依存する。その結果、パイロット噴射圧力をメイン噴射と同等に設定すると、パイロット噴射で噴射された燃料は失火しやすい。そこで、パイロット噴射圧力をメイン噴射圧力よりも低く設定することにより、インジェクタから噴射された燃料によって生成した混合気はインジェクタの周囲にとどまる。そのため、比較的濃い混合気がインジェクタの周囲に形成され、燃料の着火性が向上する。したがって、パイロット噴射における失火を低減し、メイン噴射における燃料の安定した燃焼を促進することができる。
【0009】
請求項3記載の発明では、燃料圧力設定手段は、アフター噴射時におけるアフター噴射圧力をメイン噴射時におけるメイン噴射圧力よりも高く設定している。アフター噴射では、メイン噴射に後続して燃料が噴射される。メイン噴射では多くの燃料が燃焼するため、燃焼室の圧力は燃料の燃焼によって上昇している。そのため、メイン噴射と同等の圧力でアフター噴射を実行すると、アフター噴射においてインジェクタから噴射された燃料は、十分な貫徹力を確保できず、燃焼ガスとの混合が不十分になりやすい。そこで、アフター噴射圧力をメイン噴射圧力よりも高く設定することにより、インジェクタから噴射された燃料は燃焼室の全体へ混合されやすくなる。そのため、燃焼室の燃焼ガスとアフター噴射で噴射された燃料との混合は促進される。したがって、燃焼ガスに含まれる未燃焼成分はアフター噴射によって供給された燃料で酸化され、排気に含まれるPMを低減することができる。
【0010】
請求項4記載の発明では、燃料供給装置は、第一コモンレールおよび第二コモンレールを有している。第二コモンレールは、第一コモンレールよりも低い圧力で燃料を貯える。燃料圧力変更手段は、インジェクタと第一コモンレールまたは第二コモンレールとの接続を切り替える。これにより、インジェクタには、第一コモンレールから圧力の高い燃料が供給されるとともに、第二コモンレールから圧力の低い燃料が供給される。そのため、インジェクタと第一コモンレールまたは第二コモンレールとの接続を切り替えることにより、インジェクタから噴射される燃料の圧力は変更される。したがって、インジェクタから噴射する燃料の圧力を噴射の時期にあわせて容易に変更することができる。
【0011】
請求項5記載の発明では、燃料供給装置は、サプライポンプとインジェクタとを接続する燃料供給部から分岐するリターン部を有している。燃料供給装置は、このリターン部に減圧弁を有している。燃料圧力変更手段は、サプライポンプから吐出される燃料の流量、またはリターン部に設けられている減圧弁の開度の少なくとも何れか一方を開閉する。インジェクタには、減圧弁が閉じているとき圧力の高い燃料が供給されるとともに、減圧弁が開いているとき圧力の低い燃料が供給される。また、サプライポンプの吐出量を変更することにより、インジェクタに供給される燃料の圧力は変化する。そのため、減圧弁を開閉またはサプライポンプの吐出量を調整することにより、インジェクタから噴射される燃料の圧力は変更される。したがって、インジェクタから噴射する燃料の圧力を噴射の時期にあわせて容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態による内燃機関の燃料噴射制御装置を適用したディーゼルエンジンシステムを示す模式図
【図2】第1実施形態による内燃機関の燃料噴射制御装置を示すブロック図
【図3】第1実施形態による内燃機関の燃料噴射制御装置におけるクランクシャフトの回転角度と燃料噴射量との関係を示す概略図
【図4】第1実施形態による内燃機関の燃料噴射制御装置の処理の流れを示す概略図
【図5】燃料の噴射圧力と燃料の噴霧の粒径との関係を示す概略図
【図6】アフター噴射における燃料の噴射圧力とPM発生量との関係を示す概略図
【図7】第1実施形態による内燃機関の燃料噴射制御装置において、燃料の噴射時期を示すインジェクタの駆動信号と燃料の燃焼との経時的な変化を示す模式図
【図8】燃料の噴射圧力とパイロット噴射における燃料の燃焼量との関係を示す概略図
【図9】噴射開始からの経過時間と燃料の噴霧の長さとの関係を示す概略図
【図10】第2実施形態によるディーゼルエンジンシステムの燃料供給装置を示す模式図
【図11】第3実施形態によるディーゼルエンジンシステムの燃料供給装置を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、内燃機関の燃料噴射制御装置を適用したディーゼルエンジンシステムの複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態によるディーゼルエンジンシステムを図1に示す。ディーゼルエンジンシステム10は、機関本体11、インジェクタ12および燃料供給装置13を備えている。機関本体11は、シリンダブロック14、シリンダヘッド15およびピストン16などを有している。シリンダブロック14は、内側に複数のシリンダ17を形成している。シリンダヘッド15は、シリンダブロック14の端部に設けられている。ピストン16は、シリンダブロック14が形成するシリンダ17の内側を軸方向へ往復移動する。シリンダ17を形成するシリンダブロック14の内壁、シリンダヘッド15の内壁およびピストン16の端面は、相互の間に燃焼室18を形成している。
【0015】
インジェクタ12は、シリンダヘッド15を貫いて設けられている。インジェクタ12の先端は、燃焼室18に露出している。燃料供給装置13は、第一コモンレール21、第二コモンレール22、サプライポンプ23および燃料タンク24を有している。サプライポンプ23は、燃料タンク24から吸入した燃料を加圧する。サプライポンプ23で加圧された燃料は、第一コモンレール21および第二コモンレール22に供給される。第一コモンレール21および第二コモンレール22は、いずれもサプライポンプ23から供給された燃料を、圧力を維持した状態で貯える。第一コモンレール21および第二コモンレール22は、切替弁25を経由してインジェクタ12に接続している。具体的には、インジェクタ12には、燃料供給通路部26が接続している。この燃料供給通路部26は、切替弁25を挟んで第一コモンレール21に接続する第一供給通路部31と、第二コモンレール22に接続する第二供給通路部32とに接続している。切替弁25を切り替えることにより、インジェクタ12は第一コモンレール21または第二コモンレール22と選択的に接続する。
【0016】
第一コモンレール21は、第二コモンレール22よりも高い圧力で燃料を貯える。すなわち、サプライポンプ23で加圧された燃料の一部は、第一コモンレール21に供給される。一方、サプライポンプ23で加圧された燃料の他の一部は、第二コモンレール22に第一コモンレール21よりも低い圧力で貯えられる。このように、第一コモンレール21および第二コモンレール22は、異なる圧力の燃料を貯えている。そして、インジェクタ12は、第一コモンレール21または第二コモンレール22から異なる圧力の燃料が供給される。
【0017】
ディーゼルエンジンシステム10は、上記の構成に加え、吸気装置34および排気装置35を備えている。吸気装置34は、吸気管部材36およびスロットル37を有している。吸気管部材36は、吸気通路38を形成している。吸気通路38は、一方の端部が燃焼室18に接続し、図示しない他方の端部が大気に開放している。スロットル37は、吸気管部材36が形成する吸気通路38を開閉する。排気装置35は、排気管部材41および図示しない排気浄化部を有している。排気管部材41は、排気通路42を形成している。排気通路42は、一方の端部が燃焼室18に接続し、他方の端部が大気に開放している。図示しない排気浄化部は、排気通路42の途中に設けられ、燃焼室18から排出される排気を浄化する。
【0018】
ディーゼルエンジンシステム10は、上記の構成に加え燃料噴射制御装置50を備えている。燃料噴射制御装置50は、ECU(Electronic Control Unit)51を備えている。ECU51は、吸気圧センサ52、吸気温度センサ53、アクセル開度センサ54、回転数センサ55、水温センサ56、第一圧力センサ57、第二圧力センサ58および吸入空気量センサ59と接続している。吸気圧センサ52は、吸気通路38を流れる吸気の圧力を検出する。吸気圧センサ52は、検出した吸気の圧力に基づく電気信号をECU51へ出力する。吸気温度センサ53は、吸気通路38を流れる吸気の温度を検出する。吸気温度センサ53は、検出した吸気の温度に基づく電気信号をECU51へ出力する。アクセル開度センサ54は、図示しないアクセルペダルの踏み込み量を検出する。アクセル開度センサ54は、検出したアクセルペダルの踏み込み量に基づく電気信号をECU51へ出力する。回転数センサ55は、機関本体11の図示しないクランクシャフトの回転数を検出する。回転数センサ55は、検出したクランクシャフトの回転数に基づく電気信号をECU51へ出力する。水温センサ56は、機関本体11の冷却水の温度を検出する。水温センサ56は、検出した冷却水の温度に基づく電気信号をECU51へ出力する。第一圧力センサ57は、第一コモンレール21に貯えられている燃料の圧力を検出する。第一圧力センサ57は、検出した第一コモンレール21における燃料の圧力に基づく電気信号をECU51へ出力する。第二圧力センサ58は、第二コモンレール22に貯えられている燃料の圧力を検出する。第二圧力センサ58は、検出した第二コモンレール22における燃料の圧力に基づく電気信号をECU51へ出力する。吸入空気量センサ59は、吸気通路38から燃焼室18へ吸入される空気量を検出する。吸入空気量センサ59は、検出した空気量に基づく電気信号をECU51へ出力する。
【0019】
ECU51は、図示しないCPU、ROMおよびRAMからなるマイクロコンピュータで構成されている。ECU51は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムにしたがってディーゼルエンジンシステムの全体を制御する。ECU51は、コンピュータプログラムを実行することにより、図2に示すように噴射量設定部61、インジェクタ駆動部62、燃料圧力設定部63および燃料圧力切替部64をソフトウェア的に実現している。これら、噴射量設定部61、インジェクタ駆動部62、燃料圧力設定部63および燃料圧力切替部64は、ハードウェア的に実現してもよい。ECU51は、記憶部65に接続している。記憶部65は、例えば不揮発性メモリなどを有している。記憶部65は、ECU51のROMおよびRAMと共用してもよい。
【0020】
噴射量設定部61は、各インジェクタ12から燃焼室18へ噴射する燃料の噴射量を設定する。噴射量設定部61は、アクセル開度センサ54で検出したアクセルペダルの踏み込み量、および回転数センサ55で検出したクランクシャフトの回転数に基づいて、インジェクタ12から噴射する燃料噴射量Qを設定する。このとき、噴射量設定部61は、吸気圧センサ52で検出した吸気の圧力、吸気温度センサ53で検出した吸気の温度、水温センサ56で検出した冷却水の温度、吸入空気量センサ59で検出した吸入空気量、および各インジェクタ12の噴射特性などに基づいて、燃料噴射量Qを補正して決定燃料噴射量Qd設定する。また、噴射量設定部61は、決定燃料噴射量Qdを、メイン噴射における燃料の噴射量であるメイン噴射量Qm、パイロット噴射における燃料の噴射量であるパイロット噴射量Qp、およびアフター噴射における燃料の噴射量であるアフター噴射量Qaに分配する。
【0021】
インジェクタ駆動部62は、噴射量設定部61で設定した量の燃料を噴射するためにインジェクタ12を駆動する。インジェクタ駆動部62は、インジェクタ12の例えば電磁駆動部に駆動信号を出力する。これにより、インジェクタ12は、燃料の噴射を断続する。インジェクタ駆動部62は、第一コモンレール21または第二コモンレール22に貯えられている燃料の圧力、および噴射量設定部61で設定した各時期における燃料の噴射量に基づいて駆動時間を設定する。そして、インジェクタ駆動部62は、設定した駆動時間に基づく駆動信号を各インジェクタ12へ出力する。インジェクタ12は、インジェクタ駆動部62から出力された駆動信号にしたがって燃料の噴射を断続する。これにより、インジェクタ12は、メイン噴射において噴射量設定部61で設定されたメイン噴射量Qmの燃料、パイロット噴射においてパイロット噴射量Qpの燃料、およびアフター噴射においてアフター噴射量Qaの燃料をそれぞれ噴射する。
【0022】
ここで、例えば図3に示すようにメイン噴射は、インジェクタ12の一連の燃料噴射時期における主たる噴射である。ここで、一連の燃料噴射時期とは、ピストン16が下死点(BDC)から上死点(TDC)を経由して再び下死点へ移動する圧縮行程から燃焼行程までの間に相当する。メイン噴射は、この一回の燃料噴射時期において、決定燃料噴射量Qdのうち大部分の燃料噴射量Qmを噴射する。一方、パイロット噴射は、メイン噴射に先立つ噴射であり、決定燃料噴射量Qdからメイン噴射量Qmおよびアフター噴射量Qaを減じた量に相当する。すなわち、決定燃料噴射量Qdは、Qd=Qm+Qp+Qaである。また、メイン噴射量Qm、パイロット噴射量Qpおよびアフター噴射量Qaの間には、Qm>Qa>Qpの関係が成立する。
【0023】
燃料圧力設定部63は、第一コモンレール21における燃料の圧力、および第二コモンレール22における燃料の圧力をそれぞれ設定する。この場合、燃料圧力設定部63は、第一コモンレール21における燃料の圧力を第二コモンレール22における燃料の圧力よりも高く設定する。本実施形態の場合、第一コモンレール21は、メイン噴射およびアフター噴射に対応する圧力P1の燃料を貯えている。一方、第二コモンレール22は、パイロット噴射に対応する圧力P2の燃料を貯えている。これにより、パイロット噴射を実行するとき、インジェクタ12は第二コモンレール22に貯えられている圧力P2の燃料を噴射する。一方、メイン噴射およびアフター噴射を実行するとき、インジェクタ12は第一コモンレール21に貯えられている圧力P1の燃料を噴射する。つまり、この場合、インジェクタ12は、パイロット噴射において、メイン噴射またはアフター噴射における燃料の噴射圧力よりも低い噴射圧力で燃料を噴射する。
【0024】
また、第一コモンレール21はアフター噴射に対応する圧力P1の燃料を貯え、第二コモンレール22はパイロット噴射およびメイン噴射に対応する圧力P2の燃料を貯える構成としてもよい。これにより、パイロット噴射およびメイン噴射を実行するとき、インジェクタ12は第二コモンレール22に貯えられている圧力P2の燃料を噴射する。一方、アフター噴射を実行するとき、インジェクタ12は第一コモンレール21に貯えられている圧力P1の燃料の噴射する。この場合、インジェクタ12は、アフター噴射において、パイロット噴射またはメイン噴射における燃料の噴射圧力よりも高い噴射圧力で燃料を噴射する。
【0025】
燃料圧力切替部64は、燃料の噴射時期にあわせて切替弁25を切り替える。上述のように、インジェクタ12に接続する燃料供給通路部26は、切替弁25を挟んで第一供給通路部31または第二供給通路部32に接続している。燃料圧力切替部64は、切替弁25を駆動することにより、燃料供給通路部26と第一供給通路部31、または燃料供給通路部26と第二供給通路部32とを選択的に切り替える。これにより、インジェクタ12は、第一コモンレール21に貯えられている圧力P1の燃料、または第二コモンレール22に貯えられている圧力P2の燃料が供給される。燃料圧力切替部64および切替弁25は、特許請求の範囲の燃料圧力切替手段に相当する。
【0026】
次に、上記の構成によるディーゼルエンジンシステム10の制御について図4に基づいて説明する。
ECU51は、ディーゼルエンジンシステム10が運転を開始すると、予め設定された間隔でディーゼルエンジンシステム10の運転状態を取得する(S101)。具体的には、ECU51は、アクセル開度センサ54からアクセルペダルの踏み込み量、および回転数センサ55から機関本体の回転数を取得する。これにより、ECU51は、ディーゼルエンジンシステム10の運転状態すなわち負荷状態を取得する。
【0027】
噴射量設定部61は、S101で取得したディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて、決定燃料噴射量Qdを設定する(S102)。具体的には、噴射量設定部61は、S101で取得したディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて、基礎となる燃料噴射量Qを設定する。そして、噴射量設定部61は、この燃料噴射量Qを、吸気圧センサ52で取得した吸気の圧力、吸気温度センサ53で取得した吸気の温度、水温センサ56で取得した冷却水の温度、吸入空気量センサ59で取得した吸入空気量、および各インジェクタ12の噴射特性などに基づいて補正し、決定燃料噴射量Qdを設定する。
【0028】
噴射量設定部61は、S102において決定燃料噴射量Qdを設定すると、燃料の噴射時期を設定する(S103)。噴射量設定部61は、圧縮行程において下死点から上死点へ上昇、または燃焼行程において上死点から下死点へ下降するピストン16の位置、すなわち図示しないクランクシャフトの回転角度がいずれにあるとき燃料を噴射するかを設定する。あわせて、噴射量設定部61は、ピストン16が圧縮行程から燃焼行程にある間に実行する一連の噴射時期において、いずれの時期にパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射を実行するかについても設定する。一連のパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射は、上述の燃料噴射時期に実行される。この燃料を噴射する時期、すなわちパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射の時期は、シリンダ17を往復移動するピストン16の位置すなわちクランクシャフトの回転角度に関連づけて設定される。
【0029】
燃料圧力設定部63は、S103において噴射時期が設定されると、第一コモンレール21および第二コモンレール22における燃料の圧力を実レール圧として取得する(S104)。すなわち、燃料圧力設定部63は、第一圧力センサ57から第一コモンレール21における燃料の圧力を取得するとともに、第二圧力センサ58から第二コモンレール22における燃料の圧力を取得する。
【0030】
燃料圧力設定部63は、S104において第一コモンレール21および第二コモンレール22における燃料の圧力を取得すると、燃料噴射時期に噴射圧力の変更を実行するか否かを判断する(S105)。例えばアイドル状態や低負荷状態などのようにディーゼルエンジンシステム10の運転状態によっては、燃料噴射時期に燃料の噴射圧力を変更する必要がない。そのため、燃料圧力設定部63は、S101で取得したディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて、燃料を噴射する圧力を変更するか否かを判断する。
【0031】
燃料圧力設定部63は、燃料噴射時期に噴射圧力の変更を実行すると判断すると(S105:Yes)、第一コモンレール21および第二コモンレール22に貯える燃料の圧力を設定する(S106)。すなわち、燃料圧力設定部63は、S101で取得したディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて、第一コモンレール21に貯える燃料の圧力、および第二コモンレール22に貯える燃料の圧力を設定する。本実施形態の場合、燃料は、メイン噴射およびアフター噴射において圧力P1で噴射される。一方、燃料は、パイロット噴射において圧力P2で噴射される。燃料圧力設定部63は、ディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて、第一コモンレール21に貯える燃料の圧力P1、および第二コモンレール22に貯える燃料の圧力P2を設定する。
【0032】
燃料圧力設定部63は、S106において燃料の圧力を設定すると、第一コモンレール21および第二コモンレール22における燃料の圧力を、それぞれ目標となる圧力P1および圧力P2に制御する(S107)。燃料圧力設定部63は、S104で取得した第一コモンレール21および第二コモンレール22における実レール圧に基づいて、サプライポンプ23から吐出する燃料の圧力および流量を制御する。これにより、燃料圧力設定部63は、第一コモンレール21の圧力を目標となる圧力P1に制御するとともに、第二コモンレール22の圧力を目標となる圧力P2に制御する。
【0033】
燃料圧力設定部63は、S107において第一コモンレール21および第二コモンレール22の圧力を制御しつつ、燃料の圧力を変更する時期を設定する(S108)。すなわち、燃料圧力設定部63は、S103で設定した燃料の噴射時期、つまりパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射の時期に基づいて、どの時期に燃料の圧力を変更するかを設定する。本実施形態の場合、燃料は、圧力P2でパイロット噴射が実行された後、圧力P1でメイン噴射およびアフター噴射が実行される。そのため、燃料圧力設定部63は、燃料の圧力を変更する時期をパイロット噴射とメイン噴射との間に設定する。
【0034】
燃料圧力切替部64は、燃料圧力設定部63において燃料の圧力を変更する時期が変更されると、パイロット噴射に対応するために切替弁25を第二コモンレール22側に切り替える(S109)。すなわち、燃料圧力切替部64は、切替弁25を駆動して、インジェクタ12に接続する燃料供給通路部26の接続先を、第二コモンレール22に接続する第二供給通路部32に切り替える。これにより、インジェクタ12は、第二コモンレール22から燃料が供給される。
【0035】
インジェクタ駆動部62は、S109において燃料圧力切替部64によって燃料供給通路部26が第二コモンレール22に接続されるとともに、パイロット噴射の時期になると、インジェクタ12を駆動してパイロット噴射を実行する(S110)。これにより、インジェクタ12は、パイロット噴射として、第二コモンレール22から供給された圧力P2の燃料を噴射する。
【0036】
燃料圧力切替部64は、S108で設定した燃料の圧力を変更する時期、すなわちS110においてパイロット噴射が完了すると、切替弁25を第一コモンレール21へ切り替える(S111)。すなわち、燃料圧力切替部64は、切替弁25を駆動して、インジェクタ12に接続する燃料供給通路部26の接続先を、第一コモンレール21に接続する第一供給通路部31に切り替える。これにより、インジェクタ12は、第一コモンレール21から燃料が供給される。
【0037】
インジェクタ駆動部62は、S111において燃料圧力切替部64によって燃料供給通路部26が第一コモンレール21に接続されるとともに、メイン噴射の時期になると、インジェクタ12を駆動してメイン噴射を実行する(S112)。これにより、インジェクタ12は、メイン噴射として第一コモンレール21から供給された圧力P1の燃料を噴射する。さらに、インジェクタ駆動部62は、アフター噴射の時期になると、インジェクタ12を駆動してアフター噴射を実行する(S113)。これにより、インジェクタ12は、アフター噴射として、第一コモンレール21から供給された圧力P1の燃料を噴射する。
【0038】
S105において燃料噴射時期に噴射圧力を変更しないと判断されると(S105:No)、インジェクタ駆動部62は、予め設定された噴射プログラムにしたがってインジェクタ12を駆動する(S114)。すなわち、インジェクタ駆動部62は、S102で設定した決定燃料噴射量QdおよびS103で設定した燃料の噴射時期に基づいて、予め設定された噴射プログラムにしたがってインジェクタ12を駆動する。この噴射プログラムは、S101で取得したディーゼルエンジンシステム10の運転状態に基づいて決定される。例えばディーゼルエンジンシステム10の負荷が小さいとき、噴射プログラムはパイロット噴射を含まない。そのため、インジェクタ駆動部62は、パイロット噴射においてインジェクタ12を駆動せず、メイン噴射においてインジェクタ12を駆動する。これにより、インジェクタ12は、噴射プログラムにしたがって燃料を噴射する。
【0039】
次に、上記の構成によるディーゼルエンジンシステム10の作用について説明する。
本実施形態の場合、燃料は、パイロット噴射において、メイン噴射およびアフター噴射に比較して低い圧力で噴射される。すなわちパイロット噴射の圧力はP2であるのに対し、メイン噴射およびアフター噴射の圧力はP1である。図5に示すように、インジェクタから噴射される燃料の噴霧は、噴射圧力が高くなるほど粒径が小さくなる。すなわち、燃料は、インジェクタ12からの噴射圧力が高くなるほど微粒化が促進される。メイン噴射およびアフター噴射における燃料の圧力P1をパイロット噴射における燃料の圧力P2よりも高く設定することにより、メイン噴射およびアフター噴射の燃料は微粒化が促進される。
【0040】
特に、アフター噴射が実行されるメイン噴射の終了後は、メイン噴射による燃料の燃焼によって燃焼室18の圧力および温度が上昇している。そのため、アフター噴射で噴射される燃料は、着火遅れが小さくなる。その結果、メイン噴射で生成した燃焼ガスとアフター噴射で噴射された燃料との混合が不十分になると、煤すなわちPMの生成が増加するおそれがある。すなわち、図6に示すように、PMの発生量は、アフター噴射における燃料の圧力が高くなるほど減少する。
【0041】
本実施形態の場合、アフター噴射の燃料は、メイン噴射による燃料の燃焼によって圧力および温度が上昇した燃焼室18に圧力P1で噴射される。これにより、燃焼室18において圧力および温度が上昇していても、アフター噴射で噴射された高圧の燃料はメイン噴射で生成した燃焼ガスを撹拌しなが混合される。そのため、燃焼ガスは、アフター噴射で噴射された燃料に速やかかつ均一に混合される。その結果、図7に示すように他の噴射に比較して着火遅れが小さなアフター噴射時であっても、燃焼ガスに含まれるPMなどの未燃焼物質は、アフター噴射で噴射された燃料によって酸化される。
【0042】
一方、パイロット噴射における燃料の燃焼量は、図8に示すようにインジェクタ12からの噴射圧力が高くなるほど低下する。インジェクタ12から噴射された燃料の噴霧の長さは、図9に示すように噴射開始からの時間の経過とともに変化する。この燃料の噴霧の長さは、インジェクタ12から噴射される圧力が高くなるほど迅速に拡大する。つまり、燃料の噴射圧力が高くなるほど、燃料の噴霧は迅速に成長する。また、上述の図5に示すように、インジェクタ12から噴射される燃料の噴霧は、噴射圧力が高くなるほど微粒化が促進される。パイロット噴射における燃料の噴射量は、メイン噴射やアフター噴射に比較して微量である。そのため、パイロット噴射において、微量の燃料を高圧で噴射すると、インジェクタ12から噴射された燃料は、図9に示すように噴霧が迅速に成長し、燃焼室18の全体に拡散する。これにより、高圧の燃料をパイロット噴射において噴射すると、燃焼室18に生成する混合気は希薄になる。その結果、パイロット噴射における燃料は、図8に示すように噴射圧力が高くなるほど着火性が低下し、燃焼量も低下する。そこで、パイロット噴射における燃料を、メイン噴射およびアフター噴射の圧力P1よりも小さな圧力P2に設定することにより、インジェクタ12から噴射された燃料の噴霧は成長しにくくなる。そのため、インジェクタ12から噴射された燃料は、インジェクタ12の周囲にとどまり、濃い混合気を生成する。その結果、パイロット噴射において圧力P2で燃料を噴射することにより、燃料は、微量であっても燃焼が促進される。
【0043】
パイロット噴射で噴射された燃料の燃焼が促進されることにより、パイロット噴射で噴射された燃料は火種を形成する。そのため、パイロット噴射に後続してメイン噴射を実行すると、メイン噴射で噴射された燃料はパイロット噴射で形成された火種によって速やかかつ緩やかに燃焼する。その結果、メイン噴射によって供給された燃料の急激な燃焼は抑制される。したがって、騒音の発生およびNOxの生成が低減される。
【0044】
以上説明した第1実施形態では、燃料圧力切替部64は、インジェクタ12へ供給する燃料の圧力を、噴射ごとにそれぞれ異なる圧力に切り替える。すなわち、燃料圧力切替部64は、メイン噴射とパイロット噴射およびアフター噴射とで燃料の噴射圧力を異なる圧力に切り替えている。
具体的には、燃料圧力設定部63は、パイロット噴射時におけるパイロット噴射圧力をメイン噴射時におけるメイン噴射圧力よりも低く設定している。これにより、パイロット噴射においてインジェクタ12から噴射された燃料は、インジェクタ12の周囲にとどまり、インジェクタ12の周囲に濃い混合気を生成する。そのため、この濃い混合気によって、微量のパイロット噴射であっても、燃料の着火性は向上する。したがって、パイロット噴射における失火を低減し、メイン噴射における燃料の安定した燃焼を促進することができる。
【0045】
また、燃料圧力設定部63は、アフター噴射圧力をメイン噴射圧力よりも高く設定してもよい。これにより、インジェクタ12から噴射された燃料は燃焼室18の燃焼ガスの全体へ均一に拡散する。そのため、燃焼室18の燃焼ガスとアフター噴射で噴射された燃料との混合は促進される。したがって、燃焼ガスに含まれる未燃焼成分はアフター噴射によって供給された燃料で酸化され、排気に含まれるPMを低減することができる。
このように、複数の燃料の噴射圧力を設定することにより、アフター噴射の実行によるPMの低減と、パイロット噴射の実行によるNOxおよび騒音の低減とを両立して達成することができる。
【0046】
また、第1実施形態の場合、燃料供給装置13は、第一コモンレール21および第二コモンレール22を有している。第二コモンレール22は、第一コモンレール21よりも低い圧力で燃料を貯える。燃料圧力切替部64は、インジェクタ12と第一コモンレール21または第二コモンレール22との接続を切り替える。これにより、インジェクタ12には、第一コモンレール21から圧力の高い燃料が供給されるとともに、第二コモンレール22から圧力の低い燃料が供給される。そのため、インジェクタ12と第一コモンレール21または第二コモンレール22との接続を切り替えることにより、インジェクタ12から噴射される燃料の圧力は変更される。したがって、インジェクタ12から噴射する燃料の圧力を噴射の時期にあわせて容易に変更することができる。
【0047】
(第2実施形態)
第2実施形態によるディーゼルエンジンシステムの燃料供給装置を図10に示す。
第2実施形態の場合、燃料供給装置13は、吐出通路部71、接続通路部72、高圧側通路部73、低圧側通路部74、燃料供給通路部75、排出通路部76、高圧側切替弁77、低圧側切替弁78、減圧弁79およびリーク弁81を有している。吐出通路部71は、サプライポンプ23と第一コモンレール21とを接続している。接続通路部72は、第一コモンレール21と第二コモンレール22とを接続している。高圧側通路部73は、第一コモンレール21と燃料供給通路部75とを接続している。低圧側通路部74は、第二コモンレール22と燃料供給通路部75とを接続している。燃料供給通路部75は、高圧側通路部73または低圧側通路部74とインジェクタ12とを接続している。排出通路部76は、第二コモンレール22と燃料タンク24とを接続している。高圧側切替弁77は、高圧側通路部73に設けられ、第一コモンレール21から燃料供給通路部75への燃料の流れを断続する。低圧側切替弁78は、低圧側通路部74に設けられ、第二コモンレール22から燃料供給通路部75への燃料の流れを断続する。減圧弁79は、接続通路部72に設けられ、第一コモンレール21から第二コモンレール22へ流れる燃料を減圧する。リーク弁81は、排出通路部76に設けられ、第二コモンレール22から燃料タンク24への燃料の流れを断続する。
【0048】
高圧側切替弁77、低圧側切替弁78、減圧弁79およびリーク弁81は、燃料圧力変更手段としてのECU51に接続している。ECU51は、駆動信号を出力することにより、高圧側切替弁77、低圧側切替弁78、減圧弁79およびリーク弁81の開閉を制御する。サプライポンプ23で加圧された燃料は、吐出通路部71を経由して第一コモンレール21に貯えられる。第一コモンレール21で余剰となった燃料は、接続通路部72を経由して第二コモンレール22に貯えられる。このとき、燃料は、接続通路部72を経由して流れる間に、減圧弁79で減圧される。これにより、第二コモンレール22に貯えられる燃料の圧力は、第一コモンレール21に貯えられる燃料の圧力よりも低くなる。また、第二コモンレール22で余剰となった燃料は、リーク弁81が開放されると、排出通路部76を経由して燃料タンク24へ戻される。ECU51は、サプライポンプ23から吐出される燃料の流量、およびリーク弁81を経由して燃料タンク24へ戻される燃料の流量を調整することにより、第一コモンレール21および第二コモンレール22における燃料の圧力を制御する。
【0049】
インジェクタ12は、燃料供給通路部75に接続している。本実施形態の場合、インジェクタ12は、制御弁部82を有している。制御弁部82は、ECU51から出力された駆動信号によって開閉する。インジェクタ12は、燃料供給通路部75から分岐する背圧通路83を有している。これにより、インジェクタ12は、第一コモンレール21または第二コモンレール22から供給された燃料の一部をニードル84を押し付ける背圧として利用している。制御弁部82は、このニードル84に背圧を加える燃料の流れを断続する。これにより、燃料からニードル84に加わる力のバランスは変化する。制御弁部82で燃料の流れを調整し燃料からニードル84へ加わる力のバランスを変化させることにより、ニードル84は軸方向へ往復移動する。その結果、インジェクタ12の先端に設けられている図示しない噴孔からの燃料の噴射は断続される。なお、上述のインジェクタ12は、一例であり、例えばピエゾ素子の伸縮により背圧を制御する構成など、任意の構成とすることができる。
【0050】
パイロット噴射のようにインジェクタ12から比較的圧力の低い燃料を噴射する場合、ECU51は、高圧側通路部73の高圧側切替弁77を閉じるとともに、低圧側通路部74の低圧側切替弁78を開く。これにより、燃料は、第二コモンレール22からインジェクタ12へ供給される。そのため、インジェクタ12は、第二コモンレール22に貯えられている比較的低圧の燃料を噴射する。一方、ECU51は、パイロット噴射が終了すると、低圧側通路部74の低圧側切替弁78を閉じるとともに、高圧側通路部73の高圧側切替弁77を開く。これにより、燃料は、第一コモンレール21からインジェクタ12へ供給される。そのため、インジェクタ12は、第一コモンレール21に貯えられている比較的高圧の燃料を噴射する。このように、ECU51は、高圧側切替弁77および低圧側切替弁78の開閉することにより、インジェクタ12に供給される燃料の圧力を切り替える。
【0051】
第2実施形態の場合、第二コモンレール22は、第一コモンレール21よりも低い圧力で燃料を貯える。ECU51は、インジェクタ12と第一コモンレール21または第二コモンレール22との接続を切り替える。これにより、インジェクタ12には、第一コモンレール21から圧力の高い燃料が供給されるとともに、第二コモンレール22から圧力の低い燃料が供給される。ECU51は、高圧側切替弁77および低圧側切替弁78の開閉によって、インジェクタ12と第一コモンレール21または第二コモンレール22との接続を切り替える。これにより、インジェクタ12から噴射される燃料の圧力は変更される。したがって、インジェクタ12から噴射する燃料の圧力を噴射の時期にあわせて容易に変更することができる。
【0052】
(第3実施形態)
第3実施形態によるディーゼルエンジンシステムの燃料供給装置を図11に示す。
第3実施形態の場合、燃料供給装置13は、燃料供給部91、リターン部92および減圧弁93を有している。燃料供給部91は、サプライポンプ23とインジェクタ12とを接続している。インジェクタ12の構成は、第2実施形態と同一である。リターン部92は、燃料供給部91から分岐し、燃料供給部91と反対側の端部が燃料タンク24に接続している。減圧弁93は、リターン部92に設けられ、サプライポンプ23から吐出された燃料の圧力を調整する。
【0053】
サプライポンプ23および減圧弁93は、ECU51に接続している。ECU51は、駆動信号を出力することにより、サプライポンプ23および減圧弁93を制御する。具体的には、ECU51は、出力した駆動信号によりサプライポンプ23から吐出される燃料の流量を制御する。ECU51は、例えばサプライポンプ23の燃料吸入側に設けられた流量調整弁によってサプライポンプ23へ吸入される燃料の流量を制御することにより、サプライポンプ23から吐出される燃料の流量を制御する。サプライポンプ23から吐出される燃料の量が流量が大きくなると、サプライポンプ23からインジェクタ12へ供給される燃料の圧力は高くなる。また、ECU51は、出力した駆動信号によりリターン部92における減圧弁93を開閉する。減圧弁93の開度が大きくなると、サプライポンプ23から吐出され燃料は、より多くが燃料タンク24へ戻される。そのため、減圧弁93の開度が大きくなると、サプライポンプ23からインジェクタ12へ供給される燃料の圧力は低下する。これらのように、ECU51は、サプライポンプ23から吐出される燃料の流量または減圧弁93の開度の少なくともいずれか一方を調整することにより、サプライポンプ23からインジェクタ12へ供給する燃料の圧力を変更する。
【0054】
パイロット噴射のようにインジェクタ12から比較的圧力の低い燃料を噴射する場合、ECU51は、サプライポンプ23から吐出する燃料の流量を減少させるとともに、減圧弁93の開度を拡大する。これにより、サプライポンプ23からインジェクタ12へ供給される燃料の圧力は低下する。そのため、インジェクタ12は、サプライポンプ23から吐出された後、減圧された比較的低圧の燃料を噴射する。一方、ECU51は、パイロット噴射が終了すると、サプライポンプ23から吐出する燃料の流量が増加させるとともに、減圧弁93の開度を縮小する。これにより、サプライポンプ23からインジェクタ12へ供給される燃料の圧力は上昇する。そのため、インジェクタ12は、サプライポンプ23から吐出された比較的高圧の燃料を噴射する。
【0055】
第3実施形態では、ECU51は、リターン部92に設けられている減圧弁93を開閉する。これにより、インジェクタ12には、減圧弁93が閉じているとき圧力の高い燃料が供給されるとともに、減圧弁93が開いているとき圧力の低い燃料が供給される。また、ECU51は、サプライポンプ23から吐出する燃料の流量を調整する。減圧弁93に加え、サプライポンプ23から吐出する燃料の流量を変更することにより、インジェクタ12から噴射される燃料の圧力は変更される。したがって、インジェクタ12から噴射する燃料の圧力を噴射の時期にあわせて容易に変更することができる。
【0056】
(その他の実施形態)
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【0057】
第1実施形態および第2実施形態では、第一コモンレール21および第二コモンレール22にそれぞれ圧力の異なる燃料を貯える例について説明した。すなわち、インジェクタ12は、第一コモンレール21に貯えられている高圧の燃料、または第二コモンレール22に貯えられている低圧の燃料を噴射する構成について説明した。しかし、第三コモンレールを備えるディーゼルエンジンシステム10として、パイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射において、それぞれ異なる圧力の燃料を噴射する構成としてもよい。
【0058】
第3実施形態の場合、燃料を高圧または低圧の二段階に変更するのではなく、減圧弁93の開度を適宜変更することにより、パイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射において、インジェクタ12はそれぞれの時期に異なる噴射圧力の燃料を噴射する構成としてもよい。
また、複数の実施形態では、燃料噴射時期においてパイロット噴射、メイン噴射およびアフター噴射を実行する例について説明した。しかし、各噴射を多段階に分割して実施してもよく、パイロット噴射の前またはアフター噴射の後にさらに燃料を噴射する構成としてもよい。この場合も、燃料の噴射圧力は、二段階以上に変更することができる。
【符号の説明】
【0059】
図面中、11は機関本体(内燃機関本体)、12はインジェクタ、13は燃料供給装置、18は燃焼室、21は第一コモンレール、22は第二コモンレール、23はサプライポンプ、25は切替弁(燃料圧力変更手段)、50は燃料噴射制御装置、61は噴射量設定部(噴射量設定手段)、62はインジェクタ駆動部(インジェクタ駆動手段)、64は燃料圧力切替部(燃料圧力変更手段)、91は燃料供給部、92はリターン部、93は減圧弁を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃焼室を有する内燃機関本体と、前記燃焼室にそれぞれ設けられ燃料を噴射するインジェクタと、前記インジェクタに加圧した燃料を供給する燃料供給装置と、を備える内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記燃焼室へ噴射する燃料の量を設定する噴射量設定手段と、
前記インジェクタを駆動して、前記噴射量設定手段で設定した燃料の噴射量のうち主たる量を噴射するメイン噴射、前記メイン噴射に先立って燃料を噴射するパイロット噴射、および前記メイン噴射に後続して燃料を噴射するアフター噴射を実行するインジェクタ駆動手段と、
前記燃料供給装置から前記インジェクタへ供給する燃料の圧力を、それぞれ異なる前記メイン噴射におけるメイン噴射圧力、前記パイロット噴射におけるパイロット噴射圧力、および前記アフター噴射におけるアフター噴射圧力に設定する燃料圧力変更手段と、
を備える内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記燃料圧力変更手段は、前記パイロット噴射圧力を前記メイン噴射圧力よりも低く設定する請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
前記燃料圧力変更手段は、前記アフター噴射圧力を前記メイン噴射圧力よりも高く設定する請求項1または2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記燃料供給装置は、
燃料を加圧するサプライポンプと、
前記サプライポンプで加圧された燃料を貯える第一コモンレールと、
前記サプライポンプで加圧された燃料を前記第一コモンレールよりも低い圧力で貯える第二コモンレールと、を有し、
前記燃料圧力変更手段は、前記インジェクタと前記第一コモンレールまたは前記第二コモンレールとの接続を切り替えることにより、前記インジェクタへ供給する燃料の圧力を変更する請求項1、2または3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項5】
前記燃料供給装置は、
燃料を加圧するサプライポンプと、
前記サプライポンプと前記インジェクタとを接続し、前記サプライポンプで加圧された燃料が前記インジェクタへ供給される燃料供給部と、
前記燃料供給部から分岐し、前記燃料供給部と反対側が燃料を貯える燃料タンクに接続するリターン部と、
前記リターン部に設けられている減圧弁と、を有し、
前記燃料圧力変更手段は、前記サプライポンプから吐出する燃料の流量、または前記減圧弁の開度の少なくともいずれか一方を変更することにより、前記インジェクタへ供給する燃料の圧力を変更する請求項1、2または3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項1】
複数の燃焼室を有する内燃機関本体と、前記燃焼室にそれぞれ設けられ燃料を噴射するインジェクタと、前記インジェクタに加圧した燃料を供給する燃料供給装置と、を備える内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記燃焼室へ噴射する燃料の量を設定する噴射量設定手段と、
前記インジェクタを駆動して、前記噴射量設定手段で設定した燃料の噴射量のうち主たる量を噴射するメイン噴射、前記メイン噴射に先立って燃料を噴射するパイロット噴射、および前記メイン噴射に後続して燃料を噴射するアフター噴射を実行するインジェクタ駆動手段と、
前記燃料供給装置から前記インジェクタへ供給する燃料の圧力を、それぞれ異なる前記メイン噴射におけるメイン噴射圧力、前記パイロット噴射におけるパイロット噴射圧力、および前記アフター噴射におけるアフター噴射圧力に設定する燃料圧力変更手段と、
を備える内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記燃料圧力変更手段は、前記パイロット噴射圧力を前記メイン噴射圧力よりも低く設定する請求項1記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項3】
前記燃料圧力変更手段は、前記アフター噴射圧力を前記メイン噴射圧力よりも高く設定する請求項1または2記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項4】
前記燃料供給装置は、
燃料を加圧するサプライポンプと、
前記サプライポンプで加圧された燃料を貯える第一コモンレールと、
前記サプライポンプで加圧された燃料を前記第一コモンレールよりも低い圧力で貯える第二コモンレールと、を有し、
前記燃料圧力変更手段は、前記インジェクタと前記第一コモンレールまたは前記第二コモンレールとの接続を切り替えることにより、前記インジェクタへ供給する燃料の圧力を変更する請求項1、2または3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項5】
前記燃料供給装置は、
燃料を加圧するサプライポンプと、
前記サプライポンプと前記インジェクタとを接続し、前記サプライポンプで加圧された燃料が前記インジェクタへ供給される燃料供給部と、
前記燃料供給部から分岐し、前記燃料供給部と反対側が燃料を貯える燃料タンクに接続するリターン部と、
前記リターン部に設けられている減圧弁と、を有し、
前記燃料圧力変更手段は、前記サプライポンプから吐出する燃料の流量、または前記減圧弁の開度の少なくともいずれか一方を変更することにより、前記インジェクタへ供給する燃料の圧力を変更する請求項1、2または3記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−24197(P2013−24197A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162065(P2011−162065)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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