説明

内視鏡装置および内視鏡診断装置

【課題】所定の偏光特性による偏光特性画像を得て、病変部等からの表出組織を識別可能に表示することができる内視鏡装置および内視鏡診断装置を提供する。
【解決手段】被検体内に挿入される挿入部を備える内視鏡装置であって、それぞれ偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光を、偏光角度を保持したままの状態で挿入部の先端部まで導光する3種類ないし4種類の偏波保存ファイバを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光状態の異なる複数の偏光光を被検体の被観察領域に順次照射し、その反射光を順次撮像するための内視鏡装置、および、この内視鏡装置を用いて偏光光観察を実施する内視鏡診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体に病変部があるか、どの程度病変部が進行しているかの診断をするために、従来から内視鏡、光学顕微鏡などの光学診断システムが使用されている。それらの診断システムでは、生体の一部に光を照射し反射してくる光を撮像して、生体表面の色、明るさ、構造等の変化を観察し、その観察によって医師が病変部の状態を診断している。このような診断システムの光学系では、通常観察用の自然光だけでなく、偏光光を使用することによって、生体の異方性の特徴から正常部と病変部の変化を捉える手法や、生体観察の精度を上げる手法が提案されている(特許文献1、2及び3参照)。
【0003】
本出願人の出願に係る特許文献1には、その一例として、偏光光を使用し、消化器、特に、胃壁の偏光異方性を持つ粘膜層から戻る戻り光の非偏光光の割合、すなわち戻り光の偏光度に基づいて粘膜層の厚みを算出することにより、胃壁の粘膜層の厚さの変化を検出することにより、がんの浸潤度を診断できる可能性があることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、偏光光を使用することにより、高倍率の拡大観察が行われる局所的な部位である関心部位に平行偏光を有する照明光を照射した際の後方散乱光の像と、垂直偏光を有する照明光を照射した際の後方散乱光の像とを用いて、関心部位における深層からの多重散乱光を除去しつつ、拡大観察画像を得、具体的には両画像信号を差分処理して偏光画像信号を得、得られた偏光画像信号に基づいて拡大観察画像を得、モニタに表示することが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、近赤外光を用いて脂肪内に分布する血管の位置を認識する際に偏光光を利用することにより、脂肪内の血管像を観察する上でノイズとなる、脂肪表面での後方散乱光をカットすることで、脂肪表面で反射した光によるハレーションを防ぐことができ、脂肪内に分布する血管の位置を正確に認識可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−240676号公報
【特許文献2】特開2006−325973号公報
【特許文献3】特開2007−282965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、粘膜内がん(mがん)の診断に重要な基準判断として、病変部ががんかそうでないか、また、粘膜内がんか、そうでないがん、例えば、粘膜下層浸潤がん(smがん)であるかの区別が重要であり、そのため、粘膜筋板があるかないか、すなわち正常に存在しているかが決めてとなる。しかし、上述の特許文献1に記載の手法では、胃壁の粘膜層の厚さの変化によって、がんの浸潤度を診断できる可能性があることが示されているが、どのくらいの厚さの変化がどのくらいの浸潤度となるかについては示されておらず、粘膜内がんか、粘膜下層浸潤がんか、を区別する判断基準がなく、また、そのような判断を可能とする偏光画像を得ることができないという問題があった。
【0008】
また、特許文献2及び3に開示されている手法は、偏光光を使用することにより、拡大観察画像を表示することができるし、脂肪内に分布する血管の位置を正確に認識することができるので、確かに、生体観察の精度を上げることができるが、関心部位における深層からの多重散乱光を除去するのが目的であり、また、表面反射光によるハレーションを防ぐのが目的であり、生体の異方性を検知するのが目的ではないので、病変部ががんかそうでないか、また、粘膜内がんか、粘膜下層浸潤がんかの判断を可能とする偏光画像を計測することができないという問題があった。
【0009】
また、内視鏡診断装置において、白色光観察に加えて、狭帯域光観察や蛍光観察等の特殊光観察を行うことによって、診断精度の向上を図るものが知られている。このような内視鏡診断装置では、特殊光観察によって、白色光観察では得ることができない各種の情報を得ることが可能である。しかしながら、特殊光観察として、偏光光観察を行うことができる内視鏡装置および内視鏡診断装置は実現されていない。
【0010】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、内視鏡診断装置において、所定の偏光特性による偏光特性画像を得て、病変部等からの表出組織を識別可能に表示することができ、医師が、この偏光特性画像を見て病変部等からの表出組織を識別し、がんの浸潤度等の診断を行うことを支援することができる内視鏡装置および内視鏡診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体内に挿入される挿入部を備える内視鏡装置であって、
それぞれ偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光を、偏光角度を保持したままの状態で前記挿入部の先端部まで導光する3種類ないし4種類の偏波保存ファイバを備えることを特徴とする内視鏡装置を提供するものである。
【0012】
ここで、前記3種類の偏波保存ファイバは、それぞれ0°、+45°、+90°の偏光角度の直線偏光を導光するものであることが好ましい。
【0013】
また、前記4種類の偏波保存ファイバは、それぞれ0°、+45°、+90°、−45°の偏光角度の直線偏光を導光するものであることが好ましい。
【0014】
さらに、前記偏光角度の異なる直線偏光が被検体に照射される毎に、該被検体からの反射光を光電変換して順次撮像し、その光強度画像情報を出力する撮像素子を備え、
前記撮像素子の受光面には、該受光面で受光される光を、偏光状態の異なる3種類ないし4種類の偏光光に同時に変換するパターニング素子が装着されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、それぞれ偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光を順次発する光源装置と、
上記に記載の内視鏡装置と、
前記内視鏡装置から出力される、前記偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光の被検体からの反射光による複数の光強度画像情報に偏光変換処理を行って、所定の偏光特性による偏光特性画像情報に変換し、該所定の偏光特性による偏光特性画像情報に表示変換処理を行って、該所定の偏光特性による偏光特性画像情報を可視化して表示するための表示用偏光特性画像情報に変換するプロセッサ装置と、
前記プロセッサ装置により得られる表示用偏光特性画像情報に基づいて、前記所定の偏光特性による偏光特性画像を表示する表示装置とを備えることを特徴とする内視鏡診断装置を提供する。
【0016】
さらに、前記偏光角度の異なる直線偏光が被検体に照射される毎に、該被検体からの反射光を当該内視鏡装置の外部まで導光する光ファイバを備えることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、それぞれ偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光を順次発する光源装置と、
上記に記載の内視鏡装置と、
前記内視鏡装置から偏光角度の異なる直線偏光が被検体に照射される毎に、前記光ファイバにより導光される反射光を光電変換して順次撮像し、その光強度偏光画像情報を出力する撮像装置と、
前記撮像装置から出力される、前記偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光の被検体からの反射光による複数の光強度画像情報に偏光変換処理を行って、所定の偏光特性による偏光特性画像情報に変換し、該所定の偏光特性による偏光特性画像情報に表示変換処理を行って、該所定の偏光特性による偏光特性画像情報を可視化して表示するための表示用偏光特性画像情報に変換するプロセッサ装置と、
前記プロセッサ装置により得られる表示用偏光特性画像情報に基づいて、前記所定の偏光特性による偏光特性画像を表示する表示装置とを備えることを特徴とする内視鏡診断装置を提供する。
【0018】
ここで、前記光源装置は、光源と、該光源から発せられる照明光をランダム偏光に変換する偏光解消板と、該偏光解消板により変換されるランダム偏光を所定の偏光角度の直線偏光に変換する直線偏光板と、前記ランダム偏光が偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光に順次変換されるように、前記直線偏光板を回転させる回転手段とを備えることが好ましい。
【0019】
また、前記回転手段は、前記直線偏光板により、前記ランダム偏光が、それぞれ0°、+45°、+90°の3種類の偏光角度の直線偏光に変換されるように、前記直線偏光板を順次回転させるものであることが好ましい。
【0020】
また、前記回転手段は、前記直線偏光板により、前記ランダム偏光が、それぞれ0°、+45°、+90°、−45°の4種類の偏光角度の直線偏光に変換されるように、前記直線偏光板を順次回転させるものであることが好ましい。
【0021】
また、前記光源装置は、光源と、該光源から発せられる照明光を円偏光に変換する円偏光子と、該円偏光子により変換される円偏光を所定の偏光角度の直線偏光に変換する直線偏光板と、前記円偏光が偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光に順次変換されるように、前記直線偏光板を回転させる回転手段とを備えることが好ましい。
【0022】
また、前記回転手段は、前記直線偏光板により、前記円偏光が、それぞれ0°、+45°、+90°の3種類の偏光角度の直線偏光に変換されるように、前記直線偏光板を順次回転させるものであることが好ましい。
【0023】
また、前記回転手段は、前記直線偏光板により、前記円偏光が、それぞれ0°、+45°、+90°、−45°の4種類の偏光角度の直線偏光に変換されるように、前記直線偏光板を順次回転させるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、所定の偏光特性による偏光特性画像を得て、病変部等からの表出組織を識別可能に表示することができ、医師が、この偏光特性画像を見て病変部等からの表出組織を識別し、粘膜内がんの浸潤度等の診断を行うことを支援することができる。
【0025】
また、本発明によれば、病変部等からの表出組織を識別可能に表示することができ、内視鏡手術や腹腔鏡手術等に用いることができる内視鏡診断装置及び腹腔鏡ナビゲーション装置に適用できる。
さらに、本発明によれば、内視鏡検査や診断を容易かつ正確にすることができ、内視鏡手術や腹腔鏡手術等を容易かつ正確に行うための手助けとなる偏光画像を提供することができる。
【0026】
特に、本発明によれば、生体の消化器等の所定部位の病巣(病変部)ががんかそうでないか、また、粘膜内がんか、そうでないがん、例えば粘膜下層浸潤がんであるかを区別することができ、その区別の判断基準である「粘膜筋板の有り無し」に対応する「粘膜層に表出する膠原線維の有り無し」を偏光計測によって撮像し、かつ識別することができ、それらを示す偏光画像を得ることができる。
【0027】
また、本発明によれば、がん、粘膜内がん、粘膜下層浸潤がん等の判断基準となる「粘膜層に表出する膠原線維の有り無し」を疑似カラーでモニタ等の表示手段に表示することができる。
【0028】
さらに、本発明によれば、内視鏡先端部に、偏光角度の異なる3種類ないし4種類の偏波保存ファイバを設けるという簡単な構成によって、特殊光観察として、偏光光観察を行うことができる内視鏡装置および内視鏡診断装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る偏光画像計測表示システムの一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す偏光画像計測表示システムの偏光撮像系の一実施形態の模式図である。
【図3】図1に示す偏光画像計測表示システムの偏光撮像系の他の実施形態の概略構成図である。
【図4】(a)は、図1に示す偏光画像計測表示システムの偏光撮像系の他の実施形態の概略構成図であり、(b)は、(a)の偏光撮像系に用いられるパターニング偏光/波長板の1画素分の素子を拡大して示す拡大模式図である。
【図5】(a)は、図1に示す偏光画像計測表示システムの偏光撮像系の他の実施形態の概略構成図であり、(b)は、(a)の偏光撮像系に用いられるパターニング偏光/波長板の1画素分の素子を拡大して示す拡大模式図である。
【図6】図1に示す偏光画像計測表示システムの偏光撮像系の他の実施形態の概略構成図である。
【図7】本発明に用いられるミューラー画像変換アルゴリズムを説明するための行ミューラー計測システムの説明図である。
【図8】図1に示す偏光画像計測表示システムの偏光変換処理部及びその偏光変数分離処理部の一実施形態の模式図である。
【図9】(a)及び(b)は、それぞれ図8に示す偏光変数分離処理部で変数分離する際の生体観察モデルの一実施形態の概略構成図である。
【図10】(a)は、正常な生体の表層近傍の概略構成模式図であり、(b)は、粘膜内がんが発生した生体の表層近傍の概略構成模式図であり、(c)は、粘膜下層浸潤がんに進行した生体の表層近傍の概略構成模式図である。
【図11】本発明に係る偏光画像計測表示システムで実施される偏光画像表示方法の一例を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係る内視鏡診断装置の構成を表す一実施形態の外観図である。
【図13】図12に示す内視鏡診断装置の内部構成を表すブロック図である。
【図14】図12に示す内視鏡診断装置で用いられるパターニング素子の1画素分の素子を拡大して示す拡大模式図である。
【図15】回転手段の構成を表す一実施形態の概念図である。
【図16】加圧手段の作用を表す一実施形態の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明に係る内視鏡装置および内視鏡診断装置を詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明に係る偏光画像計測表示システムの一実施形態の概略構成を示す模式的ブロック図である。
図1に示す本実施形態の偏光画像計測表示システム10は、生体(被検体)の所定部位、例えば人体の消化器等の体腔や人体の腹部内等を検査したり、その病変部や病巣を観察したり、診断したり、その手術や処置等をするのに用いられる内視鏡や腹腔鏡に適用され、また、内視鏡診断装置や腹腔鏡ナビゲーション装置等に用いられるものであり、所定部位の表層に表出する表出組織を表層の組織と識別するための、所定の偏光特性、すなわち偏光変数による偏光特性画像を得、表出組織を表層の組織と識別可能に可視化して表示するものである。
【0032】
図示例の偏光画像計測表示システム10は、生体の所定部位に異なる複数の偏光状態の照射光(偏光光)をそれぞれ照射し、所定部位の表層からの複数の異なる偏光状態の反射光による複数の光強度画像を撮像する偏光撮像系12と、異なる偏光状態の複数の光強度画像に偏光変換処理を行い、所定の偏光特性による偏光特性画像(それぞれ偏光特性の異なる複数の偏光特性画像)を得る偏光変換処理部14と、偏光特性画像を、表出組織を表層の組織と識別可能に可視化して表示するための表示用偏光特性画像に変換する表示変換処理部16と、表示用偏光特性画像を表示する表示部18と、所定部位の通常のカラー画像を取得する通常カラー撮像系20と、表示用偏光特性画像を通常のカラー画像に重ねて、若しくは並べて表示するために両画像の合成を行う画像合成部22と、を有する。
なお、偏光撮像系12及び偏光変換処理部14は、本発明に係る偏光画像計測装置を構成する。
【0033】
偏光撮像系12は、従来のP/S偏光だけではなく、複数の偏向特性(偏光変数)を含む高次の偏光パラメータ(ミューラー(Mueller)行列)を計測することができる偏光撮像システム、すなわち撮影対象のミューラー計測ができるミューラー撮像システムを構成するもので、生体の所定部位にその表層から複数の異なる偏光状態の照射光をそれぞれ照射する偏光照射部24と、偏光状態の異なる偏光光が偏光照射部24から生体に照射される毎に、複数の偏光状態の照射光によって照射された所定部位の表層から複数の偏光状態の反射光を順次受光して、所定部位の表層の複数の光強度画像を撮像する撮像部26と、を有するものである。
【0034】
本発明においては、偏光撮像系12は、このようなミューラー撮像システムを構成することができるものであれば、どのような撮像系であってもよく、その偏光照射部24及び撮像部26としては、種々のタイプのものを用いることができる。
【0035】
図2に、本発明の偏光撮像系の一実施形態の模式図を示す。
同図に示す偏光撮像系12aは、図1に示す偏光撮像系12として用いられ、アザム(Azzam)方式の2重位相子型のミューラー行列偏光計の光学系をなすもので、検査対象又は観察対象となる生体の所定部位である人体腹部Aに所定の偏光状態の照射光を照射する偏光照射部24aと、人体腹部Aから反射する所定の偏光状態の反射光を検出光として受光して撮像する撮像部26aを有する。
【0036】
偏光照射部24aは、光源34と、光源34より人体腹部A側に固定的に配置される本発明の第1偏光子である偏光板36a及び人体腹部A側に配置され、所定角度毎に回転される本発明の第1位相差付与手段である回転位相差板38aを備え、複数の偏光状態内の1つの偏光状態の照射光のみをそれぞれ順次透過させる照射側の第1偏光フィルタ部40aとを有する。
【0037】
また、撮像部26aは、CCDカメラ42と、カメラ42より人体腹部A側に固定的に配置される本発明の第2偏光子である偏光板36b及び人体腹部A側に配置され、所定角度毎に回転される本発明の第2位相差付与手段である回転位相差板38bを備え、第1偏光フィルタ部40aを透過する照射光の1つの偏光状態に対応する1つの偏光状態の反射光のみをそれぞれ順次透過させる反射側の第2偏光フィルタ部40bとを有する。
【0038】
偏光照射部24aに用いられる光源34としては、人体腹部Aを撮像可能に照明できる所定波長の光を射出できれば特に制限的ではなく、例えば、所定の狭帯域波長のレーザビームを射出するレーザやLED等や、キセノンランプや、蛍光灯、水銀灯などの白色灯等や、3原色、例えばRGBの3色のLEDやレーザからなる白色LEDや白色レーザ、所定波長のレーザと蛍光体とからなる擬似白色レーザなどを用いることができる。なお、白色灯等や白色LED等を用いる場合には、所定の狭帯域波長を透過する色フィルタや、いわゆるバンドパスフィルタを用いる必要がある。
【0039】
ここで、照射光の所定の狭帯域波長としては、特に制限的ではないが、例えば、400nm〜700nm等の可視域であっても良いし、700nm〜1300nmの赤外域であっても良く、波長帯域は、例えば、5nm〜50nm、好ましくは10nm〜20nmである。
【0040】
カメラ42は、デジタル画像情報として人体腹部Aの偏光光による光強度画像情報を取得するものであり、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を備えた高画素密度カメラを用いることができる。画素数としては特に限定はないが、高精細な偏光画像を得るためには、20万画素以上であるのが好ましく、100万画素以上であるのがより好ましい。画素数の上限は特に限定されないが、後述する撮像部26aのカメラのCCDや後述するCCD56の画素数によって定めればよい。
【0041】
また、第1及び第2偏光フィルタ部40a及び40bの偏光板36a及び36bは、それぞれ偏光子及び検光子として用いられるもので、同様の偏光板が用いられ、光源34からの射出光の光軸に垂直に固定して配置される。例えば、光源34からの射出光は、偏光板36aによって直線偏光される。また、回転位相差板38bを透過した反射光は、偏光板36bによって直線偏光される。
【0042】
また、第1及び第2偏光フィルタ部40a及び40bの回転位相差板38a及び38bは、例えば、回転する円板状のλ/4波長板が用いられ、すなわちλ/4波長板を光軸に垂直な平面内において光軸周りにそれぞれ所定角度毎に回転させることにより構成することができる。例えば、回転位相差板38aを透過した光は、直線偏光又は円(楕円)偏光した光となり、人体腹部Aで反射した光も、直線偏光又は円(楕円)偏光した光となる。なお、回転位相差板38a及び38bとなる2枚のλ/4波長板は、光軸に垂直に所定位相差となるように光軸周りに所定角度ずらした状態で、それぞれ所定角度ずつ回転される。
【0043】
なお、回転位相差板38a及び38bをそれぞれ回転駆動する機構としては、特に限定的ではなく、回転位相差板38a及び38bを構成する円板の外周を保持して回転させる公知の回転駆動機構を用いることができる。
【0044】
偏光撮像系12aの偏光照射部24aの第1偏光フィルタ部40aと、撮像部26aの第2偏光フィルタ部40bとは、互いに各々の所定の偏光状態に正確に維持する必要があるために、両者を正確に位置合わせしておく必要がある。
【0045】
この偏光撮像系12aは、回転位相差板38a及び38bを回転駆動させる必要があるために、装置が大型化するため、偏光照射部24a及び撮像部26aを人体の腹部Aの外部に設置する必要があるが、偏光特性(偏光変数)は完全であり、腹腔鏡には好適に適用でき、腹腔鏡ナビゲーション装置に好適に用いることができる。なお、回転位相差板38a及び38bとしては、λ/4板に限定されず、λ/2板や、その他の位相差板を用いても良い。
【0046】
ここで、例えば、図示例の実施形態の偏光撮像系12aは、ミューラー撮像システムを構成し、撮影対象(サンプル)Mの4行×4列のミューラー行列を求めるための光強度偏光画像を求めるものである。
【0047】
したがって、本実施形態では、ミューラー行列に含まれる全ての偏光特性、すなわち16(=4×4)の偏光変数を全て得るためには、詳細は、後述するが、偏光状態が互いに異なる少なくとも16枚の光強度偏光画像を取得する必要がある。すなわち、第1偏光フィルタ部40aから射出され、人体の腹部Aに入射される入射光の偏光状態が互いに異なる少なくとも4種類となり、人体の腹部Aから反射され、第2偏光フィルタ部40bから射出される検出光の偏光状態が互いに異なる少なくとも4種類となり、その組み合わせが少なくとも16種類の互いに異なる偏光状態となるように、回転位相差板38a及び38bを回転させる必要がある。
【0048】
例えば、偏光撮像系12aでは、第1偏光フィルタ部40aの回転位相差板38aのλ/4波長板を、入射光の偏光状態が互いに異なる少なくとも4種類となるように、後述する光の偏光状態を表す入射光のストークスパラメータS、S、S及びSが互いに異なるように回転させると共に、第2偏光フィルタ部40bの回転位相差板38bのλ/4波長板を、入射光のストークスパラメータS、S、S及びSのそれぞれに対して、出射光の偏光状態が互いに異なる少なくとも4種類となるように、例えば、出射光のストークスパラメータS、S、S及びSが互いに異なるように回転させながら、撮像部26は、16回以上撮影し、16フレーム(枚)以上の光強度偏光画像、すなわち16フレーム以上の光強度偏光画像情報を取得する必要がある。この場合に、レジスト処理を行うのが良い。
【0049】
なお、ストークスパラメータS、S、S、及びSは、それぞれ、偏光の全体の強度(縦と横との偏光ベクトルの和)、縦と横(水平方向と垂直方向)との偏光ベクトルの差、偏光角45度と135度との偏光ベクトルの差、及び右円偏光と左円偏光との差ということができる。
【0050】
また、本発明においては、互いに異なる偏光状態の16フレーム(枚)以上の光強度偏光画像から、入射光及び出射光のストークスパラメータS、S、S、及びSを求めて、ミューラー行列を求めてもよいが、予め、互いに異なる偏光状態の16フレーム(枚)以上の光強度偏光画像から直接ミューラー行列を求めるように演算方式を設定しておけば、入射光及び出射光のストークスパラメータS、S、S、及びSは、必ずしも求めなくても良い。
【0051】
また、本実施形態においては、回転位相差板38aであるλ/4波長板の偏光角度(回転角度)がθである時、回転位相差板38bであるλ/4波長板の偏光角度(回転角度)は、5θ以上、かつ、θの奇数倍、好ましくは5θに設定されることも好ましい。
【0052】
例えば、第1偏光フィルタ部40aの回転位相差板38aのλ/4波長板の回転角度θを、0°から180°まで所定の角度毎に、例えば、11.25°毎に変えると共に、第2偏光フィルタ部40bの回転位相差板38bのλ/4波長板の回転角度を、その5倍以上、すなわち5θ以上の角度毎に変えながら、撮像部26は、16(=180/11.25)回撮影し、16フレームの光強度偏光画像を取得することができる。
【0053】
また、詳細は後述するが、本発明では、偏光撮像系12aにおいて、λ/4波長板の偏光角度θを、0度から180度まで、例えば、7.2度毎に変えながら、撮像部26は、25(=180/7.2)回撮影し、25フレーム(枚)の光強度偏光画像、すなわち25フレームの光強度偏光画像情報を取得するのがより好ましい。
【0054】
なお、回転位相差板38a及び38bの回転方法としては、これに限定されるわけではなく、4行4列のミューラー行列の16偏光変数(要素)の1つでも欠けて求まらなくなることがないように、基本的には、入射光及び出射光の偏光状態を、円偏光成分と直線偏光成分を含み、方位の変化がある異なる偏光状態にできれば、どのような回転方法であっても良いが、全偏光変数を均等に(例えば、直線偏光←→楕円偏光←→円偏光、光軸方向が0°←→180°(=ポアンカレ球表面全域))、かつ同じ条件が重ならないように変調することが好ましい。例えば、回転位相板38aの回転角度を、0°、90°、180°及び270°とすると、45°及び135°の円偏光成分が発生せず、ミューラー行列の4行4列の全偏光変数を求めることができないので、間の角度を回転させることが必要である。また、光軸の方も、0°と90°との2方向しかなく、方位に関しても間の45°とか135°の成分がないと、ミューラー行列の全偏光変数を求めることができず、不完全なものとなる。
【0055】
なお、ミューラー行列に含まれるすべての偏光特性(偏光変数)を得る必要がなく、特定の偏光特性(偏光変数)のみが必要である場合には、25フレーム等の少なくとも16フレームの光強度偏光画像を取得する必要はなく、必要な偏光特性(偏光変数)に応じて必要な数のフレームの光強度偏光画像のみを取得するようにしても良い。例えば、直線偏光に関する偏光状態のみが問題になる場合には、16フレーム未満、例えば、12フレームのみの光強度偏光画像を取得するようにしても良い。
【0056】
なお、図2に示す実施形態の偏光撮像系12aは、偏光照射部24aの本発明の第1位相差付与手段として、回転位相差板38aを用い、撮像部26aの本発明の第2位相差付与手段として、回転位相差板38bを用いるものであるが、本発明はこれに限定されず、例えば、第1位相差付与手段として、位相差シート又は2枚の位相変調素子を用いても良いし、第2位相差付与手段として、2枚の位相変調素子、偏光子貼付パターニング素子又は偏光子及び位相子に貼り付けられたパターニング素子を用いても良い。
【0057】
図3に、第1及び第2位相差付与手段としてそれぞれ2枚の位相変調素子を用いる偏光撮像系の一実施形態を示す。
図3に示す偏光撮像系12bは、回転位相差板38a及び38bの代わりに、それぞれ2枚の位相変調素子44a、45a及び44b、45bを用いる点を除いて、図2に示す光撮像系12aと同様の構成を有するものであるので、その詳細な説明は省略する。
偏光撮像系12bは、偏光照射部24b、及び撮像部26bを有し、偏光照射部24bは、光源34と、偏光板36a、第1位相変調素子44a及び第2位相変調素子45aからなる第1偏光フィルタ部46aと、を有し、撮像部26bは、第1及び第2位相変調素子44b及び45b、並びに偏光板36bからなる第2偏光フィルタ部46bと、カメラ42とを有する。
【0058】
偏光照射部24bの第1偏光フィルタ部46aに用いられる第1及び第2位相変調素子44a及び45aは、撮像部26bの第2偏光フィルタ部46bに用いられる第1及び第2位相変調素子44b及び45bと同様の構成を有するものである。これらの位相変調素子44a、44b、45a及び45bは、屈折率に方向性があり、その方向に関しては変えることができないが、電気的に駆動することにより、屈折率の高さを変えることができる素子であり、例えば、直線偏光が入った時に、屈折率の高さを変えることにより、直線偏光だけを通すこともできるし、縦と横の屈折率の高さに応じた楕円偏光や円偏光(λ/4)を通すこともできる素子である。なお、このような位相変調素子44a、44b、45a及び45bとして、例えば、液晶素子等を用いた位相変調素子や、市販の位相変調素子(例えば、メドウラーク(Meadowlark)社製)等を挙げることができる。
このような第1位相変調素子44a及び44b(例えば0度に配置)に対してそれぞれ第2位相変調素子45a及び45bを45度傾けて設置(例えば45度に配置)することにより、楕円偏光や円偏光を直線偏光にすることもできるし、楕円偏光の楕円率を変えることもできるし、様々な角度の楕円偏光にすることもできる。例えば、0°に設置された第1位相変調素子44aに、45°の方向の直線偏光光が入射する場合、位相変調素子44aの位相差(複屈折率)が0(=0°)の場合は、直線偏光光が変化せずそのまま透過して出ていき、一方、位相変調素子44aの位相差がλ/4(=90°=π/2)の場合は、直線偏光光はその影響を受けて、円偏光光として出ていくことになる。
【0059】
このため、偏光撮像系12bでは、第1位相変調素子44a及び44bと第2位相変調素子45a及び45bとを組み合わせて電気的に変調駆動することにより、機械的に回転する回転位相差板38a及び38bと同様の機能を発揮させることができる。すなわち、第1位相変調素子44a及び44bをそれぞれ第2位相変調素子45a及び45bと組み合わせることにより、図2に示す偏光撮像系12aにおいて回転位相差板38a及び38bを回転させることによって実現した入射光の偏光状態、及び検出光の偏光状態と同じ入射光の偏光状態、及び同じ検出光の偏光状態を達成することができ、偏光照射部24bからの入射光においても、撮像部26bの検出光においても、ストークスパラメータS、S、S及びSを求めることができ、設定することができる。
【0060】
すなわち、偏光照射部24bの第1偏光フィルタ部46aの第1位相変調素子44a
を、例えば、その遅相軸が偏光板36aの遅相軸に対して0度、すなわち軸(屈折率の高い方向)の角度が0°となるように設定し、直線偏光の縦と横の偏光量(ベクトル)、すなわち位相差がΔ1、Δ2となるようにすると共に、第1位相変調素子44bを、その遅相軸が偏光板36aの遅相軸に対して45度、すなわち軸(屈折率の高い方向)の角度が45°となるように設定し、偏光の斜め(左右)方向の偏光量、すなわち位相差がΔ1、Δ2となるようにすることにより、偏光照射部24bからの入射光において、後述する光の偏光状態を表すストークスパラメータS、S、S及びSを互いに異なるものとすることができる。
【0061】
一方、撮像部26bの第2偏光フィルタ部46aの第2位相変調素子45a及び45bについても同様に、第2位相変調素子45bを、軸(屈折率の高い方向)の角度が0°となるように設定し、位相差がΔ1、Δ2となるようにすると共に、第2位相変調素子44aを、軸(屈折率の高い方向)の角度が45°となるように設定し、位相差がΔ1、Δ2となるようにすることにより、撮像部26bの検出光においても、ストークスパラメータS、S、S及びSを互いに異なるものとすることができる。
【0062】
したがって、本実施形態の偏光撮像系12bも、ミューラー撮像システムを構成し、互いに偏光状態の異なる偏光光による少なくとも16枚の光強度画像を得ることができ、ミューラー行列に含まれる全16の偏光変数を得ることができる。
【0063】
この偏光撮像系12bは、位相変調素子44a、44b、45a及び45bを駆動させるので、偏光特性(偏光変数)は完全であるし、回転位相差板38a及び38bを回転駆動させる図1に示す偏光撮像系12aに比べて、装置が小型化できるので、腹腔鏡にはより好適に適用でき、腹腔鏡ナビゲーション装置により好適に組み込むことができる。
【0064】
なお、図2及び図3に示す例では、偏光照射部24と撮像部26に同様の偏光フィルタ部を用いているが、本発明は、これに限定されず、両者で異なる偏光フィルタ部を用いても良いし、異なる位相差付与手段を用いても良い。例えば、図2に示す偏光照射部24aと、図3に示す撮像部26bとを用いて偏光撮像系を構成しても良いし、逆に図3に示す偏光照射部24bと、図2に示す撮像部26aとを用いて偏光撮像系を構成しても良い。
【0065】
なお、図2及び図3に示す例は、偏光照射部24と撮像部26を生体の外部に配置するものであり、腹腔鏡などに適用されものであるが、以下に、内視鏡等の生体内部に適用可能な例を示す。
【0066】
図4(a)は、内視鏡に適用される偏光撮像系の一実施形態の模式図であり、図4(b)は、その偏光撮像系に用いられるパターニング偏光/波長板の1画素分の素子を拡大して示す拡大模式図である。
図4(a)に示す偏光撮像系12cは、偏光照射部24c及び撮像部26cを有し、偏光照射部24cは、光源34と、偏光板36a、第1及び第2位相変調素子44a及び45aからなる第1偏光フィルタ部46aと、光ファイバ48を備える光プローブ50と、を有し、撮像部26cは、光プローブ50内に配置されるパターニング偏光/波長板52からなる第2偏光フィルタ部54と、CCD56とを有する。
ここで、偏光照射部24cの光源34及び第1偏光フィルタ部46aは、図3に示す偏光撮像系12bと同様の構成を有するものであるので、その詳細な説明は省略する。
【0067】
光ファイバ48は、内視鏡の光伝送部として機能し、第2偏光フィルタ部54を透過した所定の偏光状態の照射光を光プローブ50の先端まで導光して、その先端から所定の部位に伝送された照射光を、生体の体腔内の所定部位である胃などの消化器Bの表層に照射する。
【0068】
CCD56は、デジタル画像情報として体腔Bの表層の偏光光による光強度画像情報を取得する高画素密度撮像素子であるが、CMOSなどの他の撮像素子を用いても良い。
【0069】
光プローブ50内に配置されるパターニング偏光/波長板52は、図4(b)に示すように、偏光状態の異なる4つの偏光子のアレイからなる矩形状の偏光板55aと、その中の1つの偏光子に貼付された位相子(波長板)55bと、を備える矩形状の偏光子及び位相子パターニング素子53を、多数、例えば、取得すべき偏光画像の画素数分だけアレイ状に配置したものである。すなわち、パターニング偏光/波長板52は、単独で第2偏光フィルタ部54を構成するものであり、図2及び図3に示す第2偏光フィルタ部40b及び46bと同様の機能を有するものである。
【0070】
なお、偏光子及び位相子パターニング素子53としては、図4(b)に拡大して示すように、矩形状の偏光板55aの4つの偏光子の内の左下の偏光角(軸(屈折率の高い方向)の角度)0°の偏光子53a、左上の偏光角90°の偏光子53b、右上の偏光角45°の偏光子53c、及び右上の偏光角90°の偏光子に偏光角45°の位相子(波長板)が貼り付けられた位相子貼付偏光子53dが2×2のアレイ状に配置されて、偏光画像の1画素となるものを挙げることができる。
【0071】
このように、偏光子及び位相子パターニング素子53の偏光子53b及び53aによって縦(90°)と横(0°)との偏光成分、偏光子53cによって斜め(45°)の偏光成分、位相子貼付偏光子53dによって楕円偏光成分(円偏光成分:90°、45°)(軸(屈折率の高い方向)の角度:90°、位相差:Δ1=0、軸の角度:90°、位相差:Δ2=λ/4)を求めることができるので、図2及び図3に示す撮像部26a及び26bの第2偏光フィルタ部40b及び46bと同様に、撮像部26cの検出光においても、偏光の全体の強度(縦と横との偏光ベクトルの和)、縦と横(水平方向と垂直方向)との偏光ベクトルの差、偏光角45度と135度との偏光ベクトルの差、及び右円偏光と左円偏光との差に対応するストークスパラメータS、S、S及びSを互いに異なるものとすることができるし、また、求めることもでき、設定することもできる。
【0072】
したがって、本実施形態の偏光撮像系12cも、ミューラー撮像システムを構成し、互いに偏光状態の異なる偏光光による少なくとも16枚の光強度画像を得ることができ、ミューラー行列に含まれる全16の偏光変数を得ることができる。
【0073】
なお、ミューラー行列に含まれる全16の偏光変数を得る必要がない場合には、図4(a)に示す偏光撮像系12cの第2偏光フィルタ部54において、偏光子及び位相子パターニング素子53のアレイからなるパターニング偏光/波長板52の代わりに、互いに偏光状態の異なる3つの偏光子のアレイからなる偏光子パターニング素子、すなわち、図4(a)に示す偏光子及び位相子パターニング素子53の右下の、楕円偏光成分に対応する位相子貼付偏光子53dがない、偏光子53a,53b及び53cの3つのみからなる偏光子パターニング素子をアレイ状に配置したパターニング偏光板を用いても良い。この場合には、ミューラー行列に含まれる全16の偏光変数の内、楕円偏光成分に対応しない、直線偏光に対応する12偏光変数を求めることができる。
【0074】
なお、パターニング偏光/波長板52やパターニング偏光板を用いる場合には、偏光子及び位相子パターニング素子53や偏光子パターニング素子のアレイ状に配置された偏光子53a〜53dのそれぞれにCCD56の1画素を正確に対応させ、各偏光子53a〜53dからの偏光のみを検出する必要がある。しかし、偏光子53a〜53dの各々とCCD56の各画素とを完全に対応させて組み立てたり、製造したりすることは困難であるので、対応が不十分な場合には、CCD56で撮像後、電気信号やデータとして補正処理を行うのが好ましい。
【0075】
上述したように、偏光子及び位相子パターニング素子53の4つの偏光子のアレイや、偏光子パターニング素子の3つの偏光子のアレイが偏光画像の1画素となるので、CCD56の画素数は、偏光光による光強度画像の画素数の4倍又は3倍必要となる。したがって、光強度画像の画素数が、例えば20万画素であれば、CCD56の画素数は、80万画素又は60万画素となり、光強度画像の画素数が、例えば100万画素であれば、CCD56の画素数は、400万画素又は300万画素となる。
【0076】
ここで、内視鏡に適用される偏光撮像系としては、図4(a)に示す偏光撮像系12cに限定されず、図5(a)に示す偏光撮像系12dのように、図4(a)に示す偏光照射部24cの第1偏光フィルタ部46aの第1及び第2位相変調素子44a及び45aの代わりに、図2に示す回転位相差板38aを用いる第1偏光フィルタ部40aを備える偏光照射部24dを用いても良い。
【0077】
なお、偏光撮像系12c及び12dは、光プローブ50の先端に、図4(b)及び図5(b)に示す偏光子及び位相子パターニング素子53をアレイ状に配置したパターニング偏光/波長板52及びCCD56を組み込んでいるので、装置が小型化できるにもかかわらず、偏光特性(偏光変数)は完全であるので、内視鏡にはより好適に適用でき、内視鏡診断装置により好適に組み込むことができる。
【0078】
また、図6に示す偏光撮像系12eのように、図4(a)に示す偏光撮像系12cにおいて、撮像部26cの光プローブ50内に配置されるパターニング偏光/波長板52及びCCD56の代わりに、消化器Bからの所定の偏光状態の反射光を光プローブ50の光ファイバ48内を光伝送させて、他端から射出させ、生体の外部で、図3に示す第2偏光フィルタ部46bを用い、光ファイバ48の他端から射出された偏光反射光を、イメージファイバ58で伝送して、第2偏光フィルタ部46bに入射させ、偏光フィルタ部46bの後ろに配置されたCCD56で撮像する撮像部26dを用いても良い。
【0079】
この偏光撮像系12eでは、消化器Bからの偏光反射光を、光ファイバ48及びイメージファイバ58によって導光するので、解像度が低下する恐れがあるが、偏光状態の変化は少なく偏光状態は維持されるので、光プローブ50内に撮像部26dを組み込む必要がないので、装置を小型化する必要はなく、装置構成の自由度を高くすることができる。
【0080】
本実施形態の偏光撮像系12eでも、偏光撮像系12c及び12dと同様に、偏光特性(偏光変数)は完全であり、内視鏡にはより容易に適用でき、内視鏡診断装置により容易に組み込むことができる。
【0081】
なお、内視鏡に適用される偏光撮像系においても、上記偏光撮像系12c、12d及び12eに限定されず、偏光照射部24及び撮像部26に、異なる又は同じ、種々の偏光フィルタ部を用いても良いし、異なる又は同じ、種々の位相差付与手段を用いても良い。
偏光撮像系12は、基本的に以上のように、構成される。
【0082】
次に、偏光変換処理部14は、図1に示すように、偏光撮像系12で撮像された偏光光(複数の偏光状態の反射光)による複数枚の光強度画像の画像情報、例えば、25フレームの光強度画像情報を、撮像部26から受信し、受信した複数の光強度画像情報にミューラー画像変換を行い、複数(例えば、16)の偏光変数についての複数枚のミューラー画像(複数フレームのミューラー画像情報)を得るミューラー画像変換部28と、得られた複数枚のミューラー画像(複数フレームのミューラー画像情報)に偏光変数分離処理を行って、生体の所定部位の表層に表出する表出組織を表層の組織と識別するための、所定の偏光変数(偏光特性)による偏光特性画像(偏光特性画像情報)に変換する偏光変数分離処理部30と、ミューラー画像変換部28においてミューラー画像変換に用いられる偏光板(36a、36b)や回転位相差板(38a、38b)、位相変調素子(44a、44b、45a、45b)、パターニング偏光/波長板(52)等の位相差付与手段の偏光角等の偏光素子特性を補正する偏光素子特性補正処理部32とを有する。
【0083】
ここで、ミューラー画像変換部28は、高次の偏光パラメータ(ミューラー(Mueller)行列)を得るための変換処理を行う部分である。
【0084】
ところで、サンプルMがミューラー行列Mの各要素で与えられる偏光特性を持ち、その偏光特性がサンプルMの特徴を表すものである場合、ミューラー行列M、すなわちその要素を求める必要がある。ここで、ミューラー行列Mは、4行4列の行列であり、下記式(1)で与えられ、16の要素を持つので、各要素によるサンプルの16個のミューラー画像を得ることになる。
【0085】
【数1】

【0086】
ここで、ミューラー行列Mの全16の要素m00〜m33の各要素と偏光の物理的特性との厳密な対応は難しいが、おおまかな関係としては、要素m00は、輝度を表し、全16の要素m00〜m33は、偏光度を表し、要素m01、m02、m10及びm20は、二色性(直線複吸収)を表し、要素m03及びm30は、円二色性(円複吸収)を表し、要素m11、m12、m21及びm22は、旋光性(円複屈折)を表し、要素m11〜m13、m21〜m23及びm31〜m33は、複屈折性(直線複屈折)を表すものである。
なお、ミューラー行列Mの全16の要素m00〜m33を測定する場合、図7に示すような、サンプルMがミューラー行列で表わされるミューラー計測システムを構成する必要があり、このミューラー計測システムにおいて、25種類の異なる偏光状態の光による光強度画像を得る必要がある。なお、このミューラー計測システムは、図2に示す偏光撮像系12aと同じ偏光照射部24a及び撮像部26aからなるものであることが分かる。
【0087】
ここで、ミューラー画像変換部28におけるミューラー行列の変換アルゴリズムについて説明する。
サンプルMの16の偏光要素が、上記ミューラー行列Mで表わされ、図7に示すミューラー計測システムおいて、サンプルMへの入射光の偏光状態が、ストークスパラメータ
、S、S及びSで表わされ、サンプルMから反射された検出光の偏光状態が、ストークスパラメータS’、S’、S’及びS’で表わされ、偏光板36a及び36bのミューラー行列がP及びPで、角度θにおける1/4λ板(λ/4波長板)38a及び38bのミューラー行列がR(θ)及びR(5θ)で表わされる場合、下記式(2)を満足する。
【0088】
【数2】

【0089】
ここで、ストークスパラメータS’は、I(θ)(S’=I(θ))であるので、1/4λ板(λ/4波長板)38aの角度θの時の光強度をフーリエ変換すると、下記式(3)で表わされる。
【数3】

ここで、光強度の実測値をΦ(θ)とすると、最小二乗法によってΦ(θ)とI(θ)との誤差が最小になるように、25個のフーリエ係数(振幅)a〜a12及びb〜b12を求めることになり、異なるθについての25個の上記式(3)が必要となるので、上記式(3)において、I(θ)=Φ(θ)としたときの25個の連立方程式を解くことになる。
【0090】
その結果、ミューラー行列Mの各要素m00〜m33は、下記式(4)に示すように、フーリエ係数a〜a12及びb〜b12を用いて表すことができるので、ミューラー行列Mの各要素m00〜m33を求めることができる。
00=a−a+a−a10+a12
01=2(a−a−a12
02=2(b+b−b12
03=b−2b11=b+2b=b+b−b11
10=2(−a+a10−a12
11=4(a+a12
12=4(−b+b12
13=−4b=4b11=2(−b+b11
20=2(−b+b10−b12
21=4(b+b12
22=4(a−a12
23=4a=−4a11=2(a−a11
30=2b−b=−b+2b=b−b+b
31=−4b=−4b=−2(b+b
32=−4a=4a=2(−a+a
33=−2a=2a=−a+a) ……(4)
【0091】
なお、図7に示すミューラー行列偏光計によって構成される偏光撮像系12aで設置されるλ/4板は材料の波長特性や製造技術により、厳密にλ/4(90°)にすることは難しいため、λ/4板38a、38bと偏光板36a、36bとが主軸方位や複屈折位相差を持つ場合には、ミューラー行列の要素m00〜m33が誤差を含むことになる。したがって、偏光計測の精度向上のために、この誤差をキャリブレーションする必要がある。
これらの誤差のキャリブレーション方法は、ここでは記載を省略するが、チップマン(Chipman)や、ゴールドシュタイン(Goldstein)が提案するキャリブレーション方法を適用すればよい。
【0092】
以上から、ミューラー行列Mの16個の全要素についての16枚のミューラー画像を求めるには、偏光状態の異なる25枚の光強度画像が必要である。
こうして、ミューラー画像変換部28は、上記変換処理アルゴリズムによって、角度θを7.2度(180/25)毎に撮像することにより得られた光状態の異なる25枚の光強度画像(情報)から、ミューラー行列を得ることができ、全16個の要素に基づく16枚のミューラー画像(情報)を得ることができる。
【0093】
なお、上記式(4)から分かるように、フーリエ係数a〜a12及びb〜b12のなかには、一次独立でないものが存在している。したがって、上述のように、25枚の光強度画像の全てを用いなくても、ミューラー行列Mの16個の全要素(ミューラーパラメータ)を求めることができる。すなわち、本発明においては、フーリエ変換した場合には、25枚の光強度画像を取得するのが好ましいが、少なくとも16枚の光強度画像を取得すればよい。
【0094】
一方、上記式(1)から分かるように、ミューラー行列Mは、16の要素m00〜m33を持つものであるので、これらの要素(ミューラーパラメータ)を全部求めるためには、少なくとも16種類の偏光状態の異なる光強度画像(偏光画像)が必要であることが分かる。
【0095】
したがって、上記式(2)から明らかなように、サンプルMへの入射光の偏光状態を表すストークスパラメータがS’、S’、S’及びS’の4種類で、サンプルMからの検出光の偏光状態を表すストークスパラメータがS、S、S及びSであることから、サンプルMへの入射光の偏光状態及びサンプルMからの検出光の偏光状態を、互いに異なるように設定し、例えば、上述したように、縦(90°:垂直)の直線偏光成分、横(0°:水平)の直線偏光成分、斜め(45°)の直線偏光成分、及び楕円率が異なる(90°/45°)の楕円(円)偏光成分となるように設定することにより、それぞれ4種の偏光状態から、それぞれ4種のストークスパラメータS’、S’、S’及びS’並びにS、S、S及びSを求めるための、16種類の偏光状態のサンプルMの光強度画像を得ることができる。その結果、16個のミューラーパラメータを全部求めることができる。
【0096】
次に、偏光変数分離処理部30は、ミューラー画像変換部28で得られたミューラー行列に分解処理を行って、ミューラー行列において混在している偏光特性(偏光変数)を分離する処理を行う部分であるということができ、換言すれば、得られた複数枚のミューラー画像(複数フレームのミューラー画像情報)に偏光変数分離処理を行って、生体の所定部位の表層に表出する表出組織を表層の組織と識別するための、所定の偏光変数(偏光特性)による偏光特性画像(偏光特性画像情報)に変換する部分である。なお、偏光特性画像(偏光特性画像情報)は、所定部位の表層に表出する膠原繊維などの表出組織の表出程度を表わすものであるということもできる。
【0097】
偏光変数分離処理部30において、ミューラー行列Mは、主として、リターダンス特性(複屈折性、旋光性)と、吸収特性(二色性、円二色性)と、偏光解消性との3つに分離される。これらの分離された偏光特性から、生体の所定部位(サンプル)の偏光解消度、位相差、方位(位相差)、方位(吸収)及び旋光性、さらに、光の偏光度及び光の偏光方位等の偏光特性を求めることができる。
【0098】
ここで、位相差は、光の進行方向に垂直な面での物質の屈折率の縦と横の差であり、偏光解消度は、偏光した光がその物質に入射して、出射した光の偏光状態(偏光しているか否(偏光していない)かを示す状態)がどの程度の影響を受けるかを表す値であり、位相差の方位は、屈折率が最大の方向を角度として表すものであり、吸収の方位は、二色性の方位と同じで、吸収の最も高い方向を角度として表すものであり、旋光性は、直線偏光に対する回転特性を角度として表すもので、方位を持たないことが位相差と異なるものである。
【0099】
ところで、ミューラー行列をMとし、偏光解消度を表す行列をMΔとし、リターダンス(位相差)を表す行列をMとし、2色性を表す行列をMとするとき、下記式(5)で表わすことができる。なお、これらの行列は、4行4列の行列である。
M=MΔ …(5)
【0100】
したがって、上記式(1)に基づいて、ミューラー行列Mを分解することにより、行列MΔ、M、及びMを求め、行列MΔから偏光解消度、行列Mから位相差、及び行列Mから2色性を求めることができる。
【0101】
なお、ミューラー行列の分解方法及び各特性とミューラー行列の要素との関係についても、アザム(Azzam)や、チップマン(Chipman)や、ゴールドシュタイン(Goldstein)等により、提案されている方法や関係式を適用すれば良いので、ここでは、詳細な記載を省略して、その結果を記載する(”Polarized light”, Dennis Goldstein, 2th ed., Marcel Dekker, NY (2003), Chapter 9 “Mathematics of the Mueller Matrix“ 9.5 “The Lu-Chipman Decomposition” P175-P186、及び、SPIE Vol. 3120 “Decomposition of Mueller Matrix” P385-P396参照)。
【0102】
すなわち、分解された行列Mは、ミューラー行列Mの要素m00〜m33を用いて下記式(6)で与えられ、位相差Rは、下記式(7)で与えられることが分かる。ここで、係数a及びbは、それぞれ下記式(8)及び(9)で与えられる。
【数4】

【0103】
また、分解された行列Mも、ミューラー行列Mの要素m00〜m33を用いて下記式(10)で与えられ、2色性Dは、下記式(11)で与えられることが分かる。ここでも、係数a及びbは、それぞれ上記式(8)及び(9)で与えられる。
【数5】

【0104】
また、行列MΔは、上記式(5)を変形することにより、下記式(12)で与えられ、偏光解消度mΔは、下記式(13)で与えられることが分かる。ここで、m‘、κ1、κ2及びκ3は、それぞれ上記式(14)、(15)、(16)、(17)及び(18)で与えられる。なお、λ1、λ2、及びλ3は、mΔの固有値から導くことができる。
Δ=MM−1−1 …(12)
【数6】

【0105】
本発明者らは、こうして得られた偏光特性のうち、特定の偏光特性が所定部位の表層に表出する表出組織を表層の組織と識別する性質があることを知見した。
【0106】
このような偏光特性としては、位相差、偏光解消度、方位(位相差)、方位(吸収)、旋光性、光の偏光度、光の偏光方位、二色性、二色性方位、p偏光及びs偏光等の偏光特性が、所定部位の表層に表出する表出組織を表層の組織と識別する上で好ましい。その結果、これらの偏光特性による偏光特性画像、すなわち、位相差画像、偏光解消度画像、方位画像(位相差)、方位画像(吸収)、旋光性画像、光の偏光度画像、光の偏光方位画
像、二色性画像、二色性方位画像、p偏光及びs偏光画像では、表出組織と表層の組織とを区別して、例えば、疑似カラーで識別可能に表示することができる。
【0107】
このような偏光特性によって識別できる表出組織は、線維状組織であるのが好ましく、線維状組織は、膠原線維、神経線維、又は筋線維であるのが好ましい。
【0108】
図8は、図1に示す偏光画像計測表示システムの偏光変換処理部及びその偏光変数分離処理部の一実施形態の模式図であり、特に、偏光変数分離処理部を詳しく説明した説明図である。
図8に示すように、偏光変数分離処理部30は、ミューラー画像変換部28で得られたミューラー行列に分解処理を行う分離部82と、分離部82で分離された偏光特性画像に生体の所定部位の表層に表出する表出組織を表層の組織と識別するための強調処理を施した強調偏光特性画像を形成する分離後画像形成部84とからなり、偏光画像計測表示システム10の偏光変換処理部14は、上述したようにミューラー画像変換部28、偏光変数分離処理部30及び偏光素子特性補正処理部32に加え、さらに、ミューラー画像変換部28から偏光変数分離処理部30で変数分離する際の生体観察モデルを設定する生体観察モデル設定部86と、分離後画像形成部84で形成する強調偏光特性画像の偏光特性の領域を設定する分離後画像形成用パラメータ設定部88とを有する。
【0109】
分離部82は、生体観察モデル設定部86で設定された生体観察モデルを用いて、計測されたミューラー行列において混在している偏光特性を分離することにより、すなわちミューラー行列の複数の要素の各々からなる複数枚のミューラー画像に偏光変数分離処理を行うことにより、生体の所定部位の表層に表出する表出組織を表層の組織と識別するのに適した、所定の偏光変数(偏光特性)による偏光特性画像(偏光特性画像情報)を出力する部分である。なお、例えば、偏光特性が位相差であれば、分離部82の出力信号は、0〜360°の画像情報である。
【0110】
分離後画像形成部84は、生体の所定部位の表層に表出する表出組織を表層の組織と識別するために、分離部82で分離された所定の偏光特性による偏光特性画像に対して、分離後画像形成用パラメータ設定部88で設定された所定の偏光特性の強調領域(注目領域)に強調処理を施した強調偏光特性画像を形成する部分であり、強調偏光特性画像形成部ということもできる。
【0111】
図9(a)及び(b)は、それぞれ図8に示す偏光変数分離処理部で変数分離する際の生体観察モデルの一実施形態の概略構成図であり、それぞれミューラー画像変換部から偏光変数分離処理部で変数分離する際の生体観察モデルを説明した説明図である。
【0112】
本発明に用いることができる生体観察モデルとしては、まず、図9(a)に示す複数の偏光状態の照射光が観察される生体を透過する「透過モデル」90aを挙げることができる。ここで、分離部82では、この透過モデル90aを前提として、偏光変数分離処理部30で変数分離している。この透過モデル90aは、は、図9(a)に示すように、「二色性」、「位相差×旋光」及び「偏光解消度」の層を複数重ねたモデルである。なお、この透過モデル90aは、生体サンプルの偏光特性を取得するためには有効なモデルである。
【0113】
一方、実際の系では、観察される生体に照射光を斜めに照射して、その反射光を撮像することになる。したがって、本発明の生体観察モデルとして、図9(b)に示す「反射モデル」90bを生体観察モデルとすることが考えられる。この場合の生体観察モデルとしては、例えば、図9(b)に示すように、「散乱性(偏光解消度)」、「位相差」「旋光性」及び「二色性」の層を複数重ねたモデルがある。また、反射モデルであることにより各層で反射光が発生し、例えば、散乱+位相差の混在した反射光が観測される。このような反射モデルでは、これらが想定できるので、偏光変数分離処理部30で変数分離精度が上がり、リターダンス特性、吸収特性、偏光解消性の精度アップが期待できる。
【0114】
なお、図8に示す生体観察モデル設定部86は、偏光変数分離処理部で変数分離する際の生体観察モデルとして、上述したこの透過モデル90aや反射モデル90b等の生体観察モデルを設定するためのものである。このように、実際の観察系に合わせて、生体観察モデル設定部86にて、生体観察モデルを選択できるようにすることで、偏光変数分離処理部30で変数分離精度が上がり、リターダンス特性、吸収特性、偏光解消性の精度アップが期待できる。
【0115】
分離後画像形成用パラメータ設定部88は、特定の偏光特性が所定部位の表層に表出する表出組織を表層の組織と識別するために、分離後画像形成部84で形成する強調偏光特性画像の偏光特性の領域を設定するためのものであり、観察される組織毎に、位相差などの特定の偏光特性における強調するべき領域を設定することができるものである。
【0116】
なお、本発明者らが、このような分離後画像形成用パラメータ設定部88を設けたのは、特定の偏光特性が所定部位の表層に表出する表出組織を表層の組織と識別するためには、観察組織毎に、強調すべき偏光特性の領域、例えば、偏光特性が位相差であれば、強調すべき位相差領域を設定できるようにする必要があることを知見したからである。
本発明では、偏光特性画像の観察時には、分離後画像形成用パラメータ設定部88から観察組織毎に適切なパラメータを選択することで、表層に表出する表出組織を明確に表層の組織と識別することができる。
【0117】
例えば、偏光特性が位相差であれば、分離部82からの出力信号は0〜360°の画像情報であるので、観察組織が膠原線維である場合には、強調すべき位相差領域として、分離後画像形成用パラメータ設定部88によって、140°±10°の領域を設定することができる。
【0118】
なお、ここでは、強調すべき偏光特性の領域を、観察組織毎(神経、リンパ節、血管)に設定する例を示したが、観察部位(上部消化器、下部消化器、呼吸器)毎に設定するようにしても良い。
【0119】
特に、膠原線維の表出度合いは、がんの進行度合いを診断する上で、有効である。
がんの進行度合いと、膠原線維の表出度合いとの関係は、以下のように考えることができる。
【0120】
図10(a)は、正常な生体の表層近傍の概略構成模式図であり、図10(b)は、粘膜内がんが発生した生体の表層近傍の概略構成模式図であり、図10(c)は、粘膜下層浸潤がんに進行した生体の表層近傍の概略構成模式図である。
図10(a)に示すように、正常な生体の表層近傍の組織60aは、表面側から粘膜層62、その下側に粘膜筋板64、その下に粘膜下層66があり、膠原線維68は、粘膜筋板64の下側の粘膜下層66に存在している。
【0121】
次に、図10(b)に示す粘膜内がんが発生した生体の表層近傍の組織60bでは、粘膜層62に粘膜内がん(mがん)70が発生しているが、粘膜層62の下側の粘膜筋板64は破れておらず、粘膜筋板64の下側の粘膜下層66に存在している膠原線維68は、粘膜層62には表出していない。このため、粘膜内がんが発生した生体の表層近傍の組織60bでは、本発明による偏光計測を行っても、正常な生体の表層近傍の組織60aの場合と同様に、粘膜層62に表出した膠原線維68を検出することはできない。
【0122】
これに対し、図10(c)に示すがん72が進行している、すなわち粘膜下層浸潤がん(smがん)72が存在する生体の表層近傍の組織60cでは、粘膜下層浸潤がん72に進行している部分の粘膜筋板64が破れて、その破れ部分65から粘膜下層66の膠原線維68が粘膜層62に移動し、表面の粘膜層62のがん細胞72の間で成長し、膠原線維68が表層の粘膜層62に表出する。このため、粘膜下層浸潤がん72が存在する生体の表層近傍の組織60cでは、本発明による偏光計測を行って、粘膜層62に表出した膠原線維68を検出することができ、他の組織と識別することができる。その結果、粘膜層62に表出した膠原線維68を表色することができ、膠原線維68の粘膜層62への表出を知ることができ、粘膜下層浸潤がん72を検出することができる。
【0123】
すなわち、図10(c)に示すように、粘膜下層浸潤がん72の進行に従い、粘膜筋板64が破れると、粘膜筋板64の下層にある粘膜下層66から膠原線維68を生成する線維芽細胞が入り込み、粘膜下層66の膠原線維68が、その破れから粘膜層62に移動し、上層の粘膜層62にて膠原線維68が多く生成される。すなわち、その膠原線維68が表面から捉えられるかどうかによって、図10(b)に示す粘膜内がん70と図10(c)に示す粘膜下層浸潤がん72の区別が可能となる。
【0124】
この膠原線維68は、高分子から構成されており、光学異方性があるために、上記偏光特性によって粘膜層62と識別でき、識別可能に画像表示できる。したがって、膠原線維68は、粘膜層62と識別可能に疑似カラー画像として可視化できる。
したがって、このような画像によって、所定部位の表面のがん細胞の間で膠原線維が成長しており、間質変化(粘膜への膠原線維の表出)を確認できれば、転移可能性高いと診断可能であり、がんか否か、また、粘膜内がんか粘膜下層浸潤がんかを診断することが可能となる。
【0125】
次に、表示変換処理部16は、偏光変換処理部14の偏光変数分離処理部30で得られた所定の偏光特性の偏光特性画像(情報)に表示変換処理、すなわち表示色明度画像変換処理を行って、偏光特性画像(情報)を、表出組織を表層の組織と識別可能に可視化して、例えば、疑似カラーに着色して疑似カラー表示するための表示用偏光特性画像情報に変換する部分である。
【0126】
ここで、表示変換処理部16による表示変換処理は、偏光特性画像情報に基づいて、所定の偏光変数の値(偏光特性の強度)に応じて表出組織及び表層の組織に彩色すべき色を決定し、この表出組織及び該表層の組織に彩色すべき色をカラーマッピングすることにより表出組織の表出分布を可視化して表示するための表示用偏光特性画像情報を生成するのが良い。
【0127】
表示部18は、表示変換処理部16で得られた表示用偏光特性画像情報に基づいて表示画面に表出組織を表層の組織と識別可能に可視化表示、すなわち、疑似カラー表示するものである。表示部18には、公知のモニタやディスプレイを用いることができる。
なお、表示部18による偏光特性画像の表示は、表示用偏光特性画像情報に基づいて、彩色すべき色に彩色された表出組織の分布を可視化可能に表示するのが好ましい。
【0128】
また、通常カラー撮像系20は、所定部位に通常観察用の照明光を照射してその反射光を撮像することにより得られた光強度画像(情報)を得るものであり、従来公知の通常カラー画像の撮像系を用いることができる。
【0129】
また、画像合成部22は、表示変換処理部16で得られた表示用偏光特性画像情報及び通常カラー撮像系20で得られた通常のカラー光強度画像情報に基づいて、表示用偏光特性画像と通常のカラー光強度画像とを組み合わせて、例えば、両者を重ね合わせて、もしくは並べて、もしくは両者を演算処理して表示するための合成画像情報を生成する。その結果、表示部18には、合成画像情報に基づく合成画像を表示させることができる。
【0130】
本発明に係る偏光画像計測表示システムは、基本的に以上のように構成される。
【0131】
以下に、本発明に係る偏光画像計測表示システムの作用、並びにこれらにおいて実施される偏光画像計測方法及び偏光画像表示方法について説明する。
図11は、本発明に係る偏光画像計測表示システムにおいて実施される偏光画像計測方法による偏光画像表示方法、すなわち偏光画像計測及び表示方法の一例を示すフローチャートである。
【0132】
まず、本発明では、ステップS100において、生体の所定部位の表層を偏光計測するために、図1に示す偏光画像計測表示システム10を準備し、撮像する異なる偏光状態の光強度画像の枚数や、偏光画像計測表示システム10で用いられる種々の初期値や条件を設定する。
【0133】
次に、ステップS102において、偏光画像計測表示システム10の偏光撮像系12の偏光照射部24によって生体の所定部位に、その表層から所定の偏光状態の照射光をそれぞれ照射する。
【0134】
続いて、ステップS104において、偏光照射部24によって照射された所定の偏光状態の照射光による、所定部位の表層からの所定の偏光状態の反射光を撮像部26によって撮像して1枚の偏光変調された、生体の所定部位の表層の光強度画像(データ)を計測し取得する。
【0135】
次に、ステップS106において、取得された光強度画像(データ)が所定枚数、好ましくは、少なくとも16枚、例えば、25枚に達しているかどうかの判断をして、所定枚数に達していなければ(NO)、ステップS102に戻り、偏光照射部24から偏光状態を変えて照射光を生体の所定部位に照射する照射光照射ステップS102と次のステップS104の、照射光の偏光状態に対応して変更された偏光状態の反射光を撮像部26で撮像して1枚の光強度画像(データ)を取得する撮像ステップS104とを、所定枚数に達するまで繰り返し、所定枚数に達していれば、次のステップS108に移る。
【0136】
次に、ステップS108において、撮像部26によって取得された少なくとも16枚の光強度画像(データ)に偏光変換処理部14によって偏光変換処理を行い、すなわち、サブステップS110で、偏光変換処理部14のミューラー画像変換部28のミューラー画像変換処理によって、16枚のミューラー画像(データ)を得て、さらに、サブステップS112で、偏光変数分離処理部30によって、所定部位の表層に表出する表出組織を前記表層の組織と識別するための、物理的意味の明確な偏光変数(データ)(位相差、位相差方位、偏光解消度、光の偏光度、二色性、二色性方位、旋光、光の偏光方位、P/S偏光)に分離変換して、所定の偏光変数(偏光特性)による偏光特性画像(データ)を取得する。
【0137】
続いて、ステップS114において、偏光変換処理部14で得られた偏光特性画像(データ)を、表示変換処理部16によって、所定部位の表層に表出する表出組織が表層の組織と識別可能に可視化して表示するために疑似カラーに着色された表示用画像(データ)に変換する。
【0138】
なお、ステップS108で、偏光変数分離処理部30によって偏光特性画像(データ)を取得した後、分離後画像形成部84によって、この偏光特性画像の中の注目領域に対して強調処理を施し、強調処理偏光特性画像(データ)を形成し、続くステップS114で、分離後画像形成部84によって形成された強調処理偏光特性画像(データ)に対して、表示変換処理部16によって表示変換処理を行い、疑似カラーに着色された表示用画像(データ)に変換してもよい。
【0139】
また、ステップS114で、表示変換処理部16によって表示用画像(データ)を取得した後、画像合成部22によって、表示変換処理部16で得られた表示用画像(データ)に基づいて、あらかじめ撮像されている同一部位の、偏光解消度画像、光の偏光度画像、位相差画像、位相差の方位画像、吸収の方位画像、旋光画像のうちの2以上を組み合わせて表示、例えば、2以上の偏光特性画像を重ねて、もしくは並べて表示するための合成画像情報を生成し、表示部18に、合成画像情報(データ)に基づく合成画像を表示させてもよい。
【0140】
次に、ステップS116において、表示変換処理部16で得られた表示用画像(データ)に基づいて、所定部位の表層に表出する表出組織が表層の組織と識別可能に可視化して表示するために、医師が判断しやすい表示色として疑似カラーに着色された表示用画像を表示部18のモニタ画面に表示する。
こうして、本発明に係る偏光画像表示方法は終了する。
【0141】
なお、本発明者らは、この偏光画像計測表示システム10を用い、上述の偏光画像表示方法を実施して、偏光撮像系12にて胃のがん部の表面を計測して、表示部18のモニタ画面に表示したところ、胃の正常部には見られなかった差が明確にあることをモニタ画面で確認できた。
【0142】
なお、本発明に係る偏光画像表示方法において、別のステップで、通常カラー撮像系20によって所定部位に通常観察用の照明光を照射してその反射光を撮像して通常のカラー光強度画像情報(データ)を取得しておき、次のステップで、画像合成部22によって、表示変換処理部16で得られた表示用偏光特性画像情報(データ)及び通常カラー撮像系20で得られた通常のカラー光強度画像情報(データ)に基づいて、表示用偏光特性画像と通常のカラー光強度画像とを重ねて、もしくは並べて表示するための合成画像情報(データ)を生成し、次のステップで、表示部18に、合成画像情報(データ)に基づく合成画像を表示させても良い。
【0143】
また、本発明において、図1に示す偏光撮像系(光源、偏光カメラ)12によって、4枚の偏光変調した生体の光強度画像を計測し、位相差画像、位相差方位画像に変換し、医師が判断しやすい表示色として表示部18のモニタ画面に表示することもできる。
この光学系にて、胃のがん部の表面を計測したところ、胃の正常部には見られなかった位相差が明確にあることを確認できた。
【0144】
さらに、本発明においては、図1に示す偏光画像計測表示システム10の偏光撮像系12によって、4枚及び3枚の偏光変調した生体の所定部位の表層の光強度画像を計測し、それぞれの場合について、偏光変換処理部14で偏光変換処理を行い、位相差画像及び位相差方位画像に変換し、表示変換処理部16において疑似カラーに着色された表示用画像情報に変換し、医師が判断しやすい表示色として表示部18のモニタ画面に表示する。
【0145】
なお、本発明者らは、この光画像計測表示システム10を用い、偏光撮像系12にて、胃のがん部の表面を計測したところ、4枚の光強度画像の場合も、3枚の光強度画像の場合も、胃の正常部には見られなかった差が明確にあることをモニタ画面で確認できた。
【0146】
次に、本発明の内視鏡装置および内視鏡診断装置について説明する。
【0147】
図12は、本発明に係る内視鏡診断装置の構成を表す一実施形態の外観図、図13は、その内部構成を表すブロック図である。これらの図に示すように、内視鏡診断装置100は、照明光(白色光、偏光光)を発生する光源装置104と、光源装置104から発せられる照明光を導光して被検体の被観察領域に照射し、その反射光を撮像して画像信号を出力する内視鏡装置102と、内視鏡装置102により撮像された画像を画像処理して照明光に対応する内視鏡画像等を出力するプロセッサ装置106と、プロセッサ装置106によって画像処理して得られた内視鏡画像等を表示する表示装置108と、入力操作を受け付ける入力装置110とによって構成されている。
【0148】
ここで、内視鏡診断装置100は、光源装置104から導光した白色光を被検体に照射し、その反射光を撮像して白色光画像を表示(観察)する白色光観察モードと、光源装置104から導光した偏光光(直線偏光)を被検体に照射し、その反射光を撮像して偏光特性画像を表示する偏光光観察モードとを有する。各観察モードは、内視鏡装置102の切り替えスイッチ158や入力装置110から入力される指示に基づき、適宜切り替えられる。
【0149】
光源装置104は、白色光発生部118と、偏光光発生部120とを備えている。光源装置104は、プロセッサ装置106の制御部152の制御により、観察モードに従って、白色光ないし偏光光(直線偏光)を発する。
【0150】
白色光発生部118は、白色光観察モードの場合に白色光を発する。白色光発生部118の具体的な構成は省略しているが、白色光光源と、観察モードに応じて、白色光光源から発せられる白色光の通過、遮断を切り替える切替手段とによって構成される。白色光光源は、白色光を発するものであれば何ら制限はなく、例えば、キセノンランプや、蛍光灯、水銀灯などの白色灯、レーザ、LEDなどの半導体光源等を使用することができる。
【0151】
偏光光発生部120は、偏光光観察モードの場合に、偏光状態(偏光角度)の異なる3種類ないし4種類の偏光光(直線偏光)を順次発する。偏光光発生部120は、光源160と、偏光解消板162と、直線偏光板164と、回転手段166とによって構成されている。
【0152】
光源160は、光源装置104の電源がオンのときに常にオンして照明光を発する。光源160は、照明光を発するものであれば何ら制限はなく、例えば、白色光発生部118で使用される白色光の光源を利用(共用)することができる。
【0153】
偏光解消板162は、光源160から発せられる照明光の偏光を解消してランダム偏光に変換する。なお、偏光解消板162の代わりに、光源160から発せられる照明光を円偏光に変換する円偏光子を使用してもよい。
【0154】
直線偏光板164は、偏光解消板162により変換されるランダム偏光、もしくは、円偏光子により変換される円偏光を、その光軸を中心とする回転角度に応じて所定の偏光角度の直線偏光に変換する。
【0155】
回転手段166は、その光軸を中心として直線偏光板164を所定の回転角度に順次回転する。回転手段166により直線偏光板164を所定の回転角度に順次回転させることによって、直線偏光板164により、ランダム偏光ないし円偏光が、0°、+45°、+90°の偏光角度の異なる3種類の直線偏光、もしくは、0°、+45°、+90°、−45°の偏光角度の異なる4種類の直線偏光に順次変換される。
【0156】
図15は、回転手段の構成を表す一実施形態の概念図である。同図において、直線偏光板164は、その光軸を中心とする外周面にねじ山が形成された円盤状(円筒形状)のものである。つまり、直線偏光板164は、平歯車状に形成されている。回転手段166は、直線偏光板164のねじ山と螺合するギア(平歯車)168と、このギア168の中心部に結合された回転軸170と、この回転軸170を回転することによってギア168を回転するモータ172とによって構成されている。
【0157】
直線偏光板164と回転手段166のギア168とは、直線偏光板164の光軸と回転手段166の回転軸170とが平行になるように、かつ、両者のねじ山が螺合するように、配置されている。そして、モータ172を駆動することによって、回転軸170を介してギア168が回転され、これに応じて直線偏光板164が光軸を中心として回転される。つまり、モータ172の駆動に応じて、直線偏光板164を所定の角度に回転させることができる。
【0158】
なお、直線偏光板164および回転手段166の具体的な構成は、図15に示す例に限定されず、同様の機能を実現する各種の構成のものを利用することができる。
【0159】
光源装置104では、白色光観察モードの場合に、白色光発生部118から白色光が発せられる。偏光光観察モードの場合には、偏光光発生部120から、例えば、1フレーム毎に1つずつ、偏光状態(偏光角度)の異なる3種類ないし4種類の偏光光(直線偏光)が順次発せられる。白色光および偏光光は、それぞれ、内視鏡装置102の2つの光ファイバ142A、142Bの入射端に入射される。
【0160】
続いて、内視鏡装置102は、被検体内に挿入される内視鏡挿入部122の先端から2系統(2灯)の照明光(白色光、偏光光)を出射する照明光学系と、被観察領域を撮像する2系統(2眼)の撮像光学系とを有する、電子内視鏡である。内視鏡装置102は、内視鏡挿入部122と、内視鏡挿入部122の先端の湾曲操作や観察のための操作を行う操作部124と、内視鏡装置102を光源装置104およびプロセッサ装置106に着脱自在に接続するコネクタ部126A,126Bとを備えている。
【0161】
内視鏡挿入部122は、可撓性を持つ軟性部128と、湾曲部130と、先端部(以降、内視鏡先端部とも呼称する)132とから構成されている。
【0162】
湾曲部130は、軟性部128と先端部132との間に設けられ、操作部124に配置されたアングルノブ134の回動操作により湾曲自在に構成されている。この湾曲部130は、内視鏡装置102が使用される被検体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲でき、内視鏡先端部132の照射口136A,136B及び撮像素子138A、138Bの観察方向を、所望の観察部位に向けることができる。
【0163】
内視鏡先端部132には、図13に示すように、被観察領域へ光を照射する2系統の照射口136A,136Bと、被観察領域からの反射光を撮像する2系統の観察窓140A,140Bが配置されている。
【0164】
照射口136Aの奥には、レンズ112A等の光学系が取り付けられ、さらにその奥に、ライトガイドとしての光ファイバ142Aが収納されている。また、照射口136Bの奥には、レンズ112B等の光学系が取り付けられ、さらにその奥に、光ファイバ142Bが収納されている。光ファイバ142A、142Bは、光源装置104からコネクタ部126Aを介して内視鏡先端部132まで敷設されている。
【0165】
光ファイバ142Bは、光源装置104から順次発せられる、0°、+45°、+90°、−45°の偏光角度の異なる4種類の直線偏光を、偏光角度を保持したままの状態で内視鏡先端部132まで導光する4種類の偏波保存ファイバ174A〜174Dを含む。なお、光源装置104から、0°、+45°、+90°の偏光角度の異なる3種類の直線偏光が順次発せられる場合には、これに対応する3種類の偏波保存ファイバ174A〜174Cを備えていればよい。
【0166】
光源装置104から発せられる0°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174Aにより、偏光角度を保存したままの状態で内視鏡先端部132まで導光される。0°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174Bでは全く導光されない。また、0°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174C,174Dにより、その一部の成分が導光される。
【0167】
これに対し、光源装置104から発せられる+90°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174Bにより、偏光角度を保存したままの状態で内視鏡先端部132まで導光される。+90°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174Aでは全く導光されない。また、+90°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174C,174Dにより、その一部の成分が導光される。
【0168】
また、光源装置104から発せられる+45°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174Cにより、偏光角度を保存したままの状態で内視鏡先端部132まで導光される。+45°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174Dでは全く導光されない。また、+45°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174A,174Bにより、その一部の成分が導光される。
【0169】
これに対し、光源装置104から発せられる−45°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174Dにより、偏光角度を保存したままの状態で内視鏡先端部132まで導光される。−45°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174Cでは全く導光されない。また、−45°の偏光角度の直線偏光は、偏波保存ファイバ174A,174Bにより、その一部の成分が導光される。
【0170】
従って、光ファイバ142Bによって導光され、内視鏡先端部132から発せられる偏光光、すなわち、偏波保存ファイバ174A〜174Dによって導光され、内視鏡先端部132から発せられる偏光光の合成光は、光源装置104から順次発せられる、0°、+45°、+90°、−45°の偏光角度の直線偏光と完全に同一なものとはならないが、偏光状態の異なる4種類の偏光光が発せられる。また、3種類の偏波保存ファイバ174A〜174Cのみを備える場合も同様である。
【0171】
なお、3種類ないし4種類の偏波保存ファイバは、それぞれ複数本備えられていてもよい。この場合、各々の偏波保存ファイバの本数を同数とし、複数の偏波保存ファイバをランダム(均一)に配設することが望ましい。
【0172】
ここで、白色光観察モードの場合、光源装置104から発せられる白色光が、光ファイバ142Aによって内視鏡先端部132まで導かれ、レンズ112Aを介して照射口136Aから被検体の被観察領域に照射される。
【0173】
偏光光観察モードの場合、光源装置104から発せられる直線偏光が、光ファイバ142Bによって、偏光角度が保存されたままの状態で内視鏡先端部132まで導かれ、レンズ112Bを介して照射口136Bから被検体の被観察領域に照射される。例えば、光源装置104から偏光角度の異なる合計4種類の直線偏光が順次発せられ、光ファイバ142Bによって導光されて被検体の被観察領域に照射される。
【0174】
観察窓140Aの奥には、被検体の被観察領域の像光を取り込むための対物レンズユニット144A等の光学系が取り付けられ、さらにその奥には、被観察領域の画像情報を取得するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子138Aが取り付けられている。また、観察窓140Bの奥には、対物レンズユニット144B等の光学系が取り付けられ、さらに対物レンズユニット144Bの奥には、撮像素子138Bが取り付けられている。撮像素子138Bの受光面には、受光面で受光される光を、偏光状態の異なる4種類の偏光光に同時に変換するパターニング素子146Bが装着されている。撮像素子138Aは白色光観察用であり、撮像素子138Bは偏光光観察用である。
【0175】
パターニング素子146Bは、同様の機能を果たすものであれば何ら限定されず、例えば、図4(b)に示すものの他、図14に示すように、左上の偏光角(軸(屈折率の高い方向)の角度)0°の矩形状の偏光子、右下の偏光角90°の矩形状の偏光子、右上の偏光角45°の矩形状の偏光子、及び左下の偏光角135°の矩形状の偏光子が2×2のアレイ状に配置されて、光強度偏光画像の1画素となるもの等を用いることができる。また、3種類の異なる偏光状態の偏光光に変換するパターニング素子を用いてもよい。
【0176】
ここで、白色光観察モードの場合、白色光が照射された被検体の被観察領域からの反射光が対物レンズユニット144Aにより集光され、撮像素子138Aによって白色光画像が撮像される。
【0177】
偏光光観察モードの場合、偏光状態の異なる偏光光が照射される毎に、偏光光が照射された被検体の被観察領域からの反射光が対物レンズユニット144Bにより集光され、パターニング素子146Bにより4種類の異なる偏光状態の偏光光とされた後、撮像素子138Bによって光強度偏光画像が撮像される。つまり、4種類の直線偏光が照射される場合には、合計で16種類の偏光状態の異なる偏光光の光強度偏光画像が撮像される。
【0178】
撮像素子138Aから出力される白色光画像の撮像信号(アナログ信号)は、スコープケーブル148Aを通じてA/D変換器150Aに入力される。また、撮像素子138Bから出力される光強度偏光画像の撮像信号(アナログ信号)は、スコープケーブル148Bを通じてA/D変換器150Bに入力される。A/D変換器150A、150Bは、それぞれ、撮像素子138A、138Bからの撮像信号(アナログ信号)を画像信号(デジタル信号)に変換する。変換後の画像信号は、コネクタ部126Bを介してプロセッサ装置106の画像処理部154に入力される。
【0179】
なお、図示はしていないが、操作部124及び内視鏡挿入部122の内部には、組織採取用処置具等を挿入する鉗子チャンネルや、送気・送水用のチャンネル等、各種のチャンネルが設けられている。
【0180】
続いて、プロセッサ装置106は、制御部152と、画像処理部154と、記憶部156とを備えている。制御部152には、表示装置108および入力装置110が接続されている。プロセッサ装置106は、内視鏡装置102の切り替えスイッチ158や入力装置110から入力される指示に基づき、光源装置104を制御するとともに、内視鏡装置102から入力される画像信号を画像処理し、表示用画像を生成して表示装置108に出力する。
【0181】
制御部152は、内視鏡装置102の切り替えスイッチ158や入力装置110からの指示、例えば、観察モード、画像表示モード等の指示に基づいて、画像処理部154および光源装置104の動作を制御する。画像表示モードは、白色光画像、所定の偏光特性による偏光特性画像のいずれかを表示する、2以上の画像(白色光画像、所定の偏光特性による偏光特性画像)を組み合わせて表示する、例えば、2以上の画像を重ね合わせて表示する、並べて表示する、演算処理して表示する等の画像の表示形態を指定する指示である。
【0182】
画像処理部154は、制御部152の制御の基で、観察モードに基づき、白色光画像、偏光特性画像の画像種別に応じて、内視鏡装置102から入力される画像信号に対して所定の画像処理を施す。画像処理部154で処理された画像信号は、制御部152に送られて、制御部152で各種情報と共に内視鏡観察画像にされて表示装置108に表示され、必要に応じて、メモリやストレージ装置からなる記憶部156に記憶される。
【0183】
画像処理部154は、白色光画像処理部154Aと、偏光画像処理部154Dと、画像合成部154Eとを備えている。白色光観察モードの場合には、A/D変換器150Aによりデジタル信号に変換された画像信号が、白色光画像処理部154Aに供給される。また、偏光光観察モードの場合には、A/D変換器150Bによりデジタル信号に変換された画像信号が、偏光画像処理部154Dに供給される。
【0184】
白色光画像処理部154Aは、白色光観察モードの場合に、白色光画像の画像信号に対して、白色光画像に適した所定の画像処理を施し、白色光画像信号(白色光画像)を出力(生成)する。画像処理としては、例えば、ホワイトバランス補正、ガンマ補正、輪郭強調、色補正等が含まれる。白色光画像処理部154Aは、図1に示す通常カラー撮像系に含まれる画像処理部に相当するものである。
【0185】
偏光画像処理部154Dは、偏光光観察モードの場合に、光強度偏光画像の画像信号に対して、光強度偏光画像に適した所定の画像処理を施し、所定の偏光特性による偏光画像信号(偏光特性画像)を出力する。画像処理には、上記に加えて、偏光変換処理および表示変換処理が含まれる。また、偏光画像処理部154Dでは、画像表示モードに応じて、所定の偏光特性の偏光特性画像が生成される。偏光画像処理部154Dは、図1に示す偏光変換処理部14および表示変換処理部16に相当するものである。
【0186】
白色光画像信号および偏光画像信号は、例えば、1枚(1フレーム)の画像を単位として記憶部156に記憶される。
【0187】
画像合成部154Eは、画像表示モードに従って、記憶装置に記憶された白色光画像信号および偏光画像信号に基づき、白色光画像および所定の偏光特性の偏光特性画像から2以上の画像を組み合わせて合成画像を生成し、合成画像信号を出力する。画像合成部154Eは、合成画像として、2以上の画像(白色光画像、所定の偏光特性による偏光特性画像)を重ね合わせたり、並べて配置したり、演算処理した合成画像を生成する。画像合成部154Eは、図1に示す画像合成部22に相当するものである。
【0188】
画像処理部154からは、白色光画像信号、偏光画像信号および合成画像信号が出力され、制御部152に入力される。制御部152により、画像表示モードに従って、白色光画像信号、偏光画像信号および合成画像信号に基づき、白色光画像、偏光特性画像および合成画像のいずれかが表示装置108に表示される。
【0189】
次に、内視鏡診断装置101の動作を説明する。
まず、白色光観察モードのときの動作を説明する。
【0190】
観察モードや画像表示モード等の指示が、内視鏡装置102の切り替えスイッチ158や入力装置110からプロセッサ装置106の制御部152に入力される。そして、制御部152により、観察モードに従って、画像処理部154および光源装置104が制御される。
【0191】
白色光観察モードの場合、光源装置104からは白色光が発せられる。
【0192】
内視鏡装置102では、光源装置104から発せられた白色光が、光ファイバ142Aにより導光され、レンズ112Aを介して照射口136Aから被検体の被観察領域に照射される。そして、被観察領域からの反射光(白色光)が対物レンズユニット144Aにより集光され、撮像素子138Aにより光電変換されて白色光画像の撮像信号(アナログ信号)が出力される。
【0193】
白色光画像の撮像信号は、A/D変換器150Aにより画像信号(デジタル信号)に変換され、観察モードに従って、白色光画像処理部154Aにより白色光画像に適した所定の画像処理が施され、白色光画像信号が出力される。
【0194】
画像表示モードに従って、白色光画像信号が表示装置108に出力され、白色光画像が表示装置108上に表示される。
【0195】
観察が終了すると、内視鏡挿入部122が被検体の体腔内から取り出され、各装置の電源がオフとされる。
【0196】
続いて、偏光光観察モードのときの動作を説明する。
【0197】
偏光光観察モードの場合、光源装置104からは、例えば、1フレーム毎に1つずつ、0°、+45°、+90°、−45°の偏光角度の異なる合計4種類の直線偏光が順次発せられる。
【0198】
内視鏡装置102では、光源装置104から発せられた直線偏光が、光ファイバ142Bによって、偏光角度を保持したままの状態で内視鏡先端部132まで導かれ、レンズ112Bを介して照射口136Bから被検体の被観察領域に照射される。そして、偏光状態の異なる偏光光が照射される毎に、偏光光が照射された被検体の被観察領域からの反射光が対物レンズユニット144Bにより集光され、パターニング素子146Bにより4種類の異なる偏光状態の偏光光とされた後、撮像素子138Bによって光強度偏光画像が撮像される。
【0199】
上記のように、偏光光観察モードの場合には、1フレーム毎に1つずつ、偏光状態の異なる合計4種類の偏光光が被検体の被観察領域に順次照射され、偏光光が照射される毎に、パターニング素子146Bにより4種類の異なる偏光状態の偏光光に同時に変換される。つまり、本実施形態の場合、撮像素子138Bからは、4フレーム毎に、照射4種類×変換4種類=16種類の光強度偏光画像の撮像信号が順次出力される。
【0200】
16種類の光強度偏光画像の撮像信号は、A/D変換器150Bにより画像信号(デジタル信号)に変換され、観察モードに従って、偏光画像処理部154Dにより光強度偏光画像に適した所定の画像処理が施され、偏光画像信号が出力される。偏光光観察モードの場合、16種類の光強度偏光画像の画像信号に対して偏光変換処理および表示変換処理が施され、画像表示モードに従って、所定の偏光特性の偏光特性画像の偏光画像信号が生成される。
【0201】
画像表示モードに従って、偏光画像信号が表示装置108に出力され、所定の偏光特性画像が表示装置108上に表示される。偏光光観察モードでは、膠原線維や神経線維が強調された偏光特性画像を得ることができる。
【0202】
観察が終了すると、内視鏡挿入部122が被検体の体腔内から取り出され、各装置の電源がオフとされる。
【0203】
続いて、合成画像について説明する。
【0204】
内視鏡診断装置101では、上記のように、観察モードに応じて、白色光画像および偏光特性画像を撮像し、画像表示モードに応じて、2以上の画像を組み合わせた合成画像(重ね合わせ表示、並列表示、演算処理表示)を表示させることができる。画像合成部154Eは、同一被観察領域(被観察部位)の、白色光画像および所定の偏光特性による偏光特性画像のうちの2以上の画像が撮像された後、画像表示モードに従って、白色光画像および所定の偏光特性による偏光特性画像のうちの2以上の画像を重ね合わせたり、並べて配置したり、演算処理した合成画像を生成する。
【0205】
なお、偏光特性画像(偏光特性画像情報)としては、前述のように、偏光解消度、光の偏光度、位相差、位相差の方位、吸収の方位、旋光の偏光特性等を含む各種の偏光特性画像を例示することができる。
【0206】
以上のように、内視鏡診断装置100では、内視鏡先端部132に、偏光角度の異なる3種類ないし4種類の偏波保存ファイバを設けるという簡単な構成によって、特殊光観察として、偏光光観察を行うことができる内視鏡装置および内視鏡診断装置を実現することができる。
【0207】
なお、図16(a)に示すように、偏波保存ファイバの代わりに、シングルモードの光ファイバ174と、この光ファイバ174の光軸に直交する断面に対して、3方向(例えば、(1)上下、(2)左右、(3)右斜め下)ないし4方向(例えば、(1)上下、(2)左右、(3)右斜め下、(4)左斜め下)から順次圧力を加える加圧手段(図示省略)とを設ける構成としてもよい。
【0208】
同図(b)に示すように、光ファイバ174の断面に対して上下方向から圧力を加えることによって、光ファイバ174の断面は押しつぶされて左右方向に長い楕円形状となる。光ファイバ174の断面をこのような形状に変形させることによって、0°の偏光角度の直線偏光を、偏光角度を保持したままの状態で内視鏡先端部132まで導光する偏波保存ファイバ174Aと同等の機能を果たすことができる。
【0209】
また、同図(c)に示すように、光ファイバ174の断面に対して左右方向から圧力を加えることによって、光ファイバ174の断面は押しつぶされて上下方向に長い楕円形状となる。光ファイバ174の断面をこのような形状に変形させることによって、+90°の偏光角度の直線偏光を、偏光角度を保持したままの状態で内視鏡先端部132まで導光する偏波保存ファイバ174Bと同等の機能を果たすことができる。
【0210】
また、同図(d)に示すように、光ファイバ174の断面に対して右斜め下方向から圧力を加えることによって、光ファイバ174の断面は押しつぶされて左斜め下方向に長い楕円形状となる。光ファイバ174の断面をこのような形状に変形させることによって、+45°の偏光角度の直線偏光を、偏光角度を保持したままの状態で内視鏡先端部132まで導光する偏波保存ファイバ174Cと同等の機能を果たすことができる。
【0211】
また、同図(e)に示すように、光ファイバ174の断面に対して左斜め下方向から圧力を加えることによって、光ファイバ174の断面は押しつぶされて右斜め下方向に長い楕円形状となる。光ファイバ174の断面をこのような形状に変形させることによって、−45°の偏光角度の直線偏光を、偏光角度を保持したままの状態で内視鏡先端部132まで導光する偏波保存ファイバ174Dと同等の機能を果たすことができる。
【0212】
以上のように、シングルモードの光ファイバの断面に対して、3方向ないし4方向から順次圧力を加えることによって、偏波保存ファイバ174A〜174Dと同様の機能を実現することができる。
【0213】
また、上記実施形態では、内視鏡装置の内部に撮像素子を実装し、その受光面にパターニング素子を装着する例を示しているが、本発明は、これに限定されない。すなわち、図6に示したように、反射光の撮像手段(撮像装置)を内視鏡装置の外部に設ける構成としてもよい。
【0214】
この場合、内視鏡装置は、光源装置により発生される偏光状態の異なる偏光光が被検体に照射される毎に、被検体からの反射光を内視鏡装置の外部まで導光する光ファイバを備える。
【0215】
また、内視鏡装置の外部に設けられる撮像装置は、光ファイバにより内視鏡装置の外部まで導光される反射光を変調して偏光状態の異なる3種類ないし4種類の偏光光を順次発生する偏光変調手段と、この偏光変調手段により発生される偏光状態の異なる偏光光のうちの1つの偏光状態の偏光光を通過させる偏光子と、この偏光子を通過する偏光光を光電変換して順次撮像し、その光強度画像情報を出力する撮像素子とを備え、内視鏡装置から偏光状態の異なる偏光光が被検体に照射される毎に、被検体からの反射光を光電変換して順次撮像し、その光強度偏光画像情報を出力する。
【0216】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0217】
10 偏光画像計測表示システム
12,12a,12b,12c,12d,12e 偏光撮像系
14 偏光変換処理部
16 表示変換処理部
18 表示部
20 通常カラー撮像系
22 画像合成部
24,24a,24b,24c 偏光照射部
26,26a,26b,26c,26d 撮像部
28 ミューラー画像変換部
30 偏光変数分離処理部
32 偏光素子特性補正処理部
34 光源
36a,36b 偏光板
38a,38b 回転位相差板
40a,40b,46a,46b,54 偏光フィルタ部
42 カメラ
44a,44b,45a,45b 位相変調素子
48 光ファイバ
50 光プローブ
52 パターニング偏光/波長板
53 偏光子及び位相子パターニング素子
56 CCD
82 分離部
84 分離後画像形成部
86 生体観察モデル設定部
88 分離後画像形成パラメータ設定部
100 内視鏡診断装置
102 内視鏡装置
104 光源装置
106 プロセッサ装置
108 表示装置
110 入力装置
112A、112B レンズ
118 白色光発生部
120 偏光光発生部
122 内視鏡挿入部
124 操作部
126A,126B コネクタ部
128 軟性部
130 湾曲部
132 先端部
134 アングルノブ
136A,136B 照射口
138A、138B 撮像素子
140A,140B 観察窓
142A、142B 光ファイバ
144A、144B 対物レンズユニット
146B パターニング素子
148A、148B スコープケーブル
150A、150B A/D変換器
152 制御部
154 画像処理部
154A 白色光画像処理部
154D 偏光画像処理部
154E 画像合成部
156 記憶部
158 切り替えスイッチ
160 光源
162 偏光解消板
164 直線偏光板
166 回転手段
168 ギア
170 回転軸
172 モータ
174A〜174D 偏波保存ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に挿入される挿入部を備える内視鏡装置であって、
それぞれ偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光を、偏光角度を保持したままの状態で前記挿入部の先端部まで導光する3種類ないし4種類の偏波保存ファイバを備えることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記3種類の偏波保存ファイバは、それぞれ0°、+45°、+90°の偏光角度の直線偏光を導光するものであることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記4種類の偏波保存ファイバは、それぞれ0°、+45°、+90°、−45°の偏光角度の直線偏光を導光するものであることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
さらに、前記偏光角度の異なる直線偏光が被検体に照射される毎に、該被検体からの反射光を光電変換して順次撮像し、その光強度画像情報を出力する撮像素子を備え、
前記撮像素子の受光面には、該受光面で受光される光を、偏光状態の異なる3種類ないし4種類の偏光光に同時に変換するパターニング素子が装着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項5】
それぞれ偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光を順次発する光源装置と、
請求項4に記載の内視鏡装置と、
前記内視鏡装置から出力される、前記偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光の被検体からの反射光による複数の光強度画像情報に偏光変換処理を行って、所定の偏光特性による偏光特性画像情報に変換し、該所定の偏光特性による偏光特性画像情報に表示変換処理を行って、該所定の偏光特性による偏光特性画像情報を可視化して表示するための表示用偏光特性画像情報に変換するプロセッサ装置と、
前記プロセッサ装置により得られる表示用偏光特性画像情報に基づいて、前記所定の偏光特性による偏光特性画像を表示する表示装置とを備えることを特徴とする内視鏡診断装置。
【請求項6】
さらに、前記偏光角度の異なる直線偏光が被検体に照射される毎に、該被検体からの反射光を当該内視鏡装置の外部まで導光する光ファイバを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項7】
それぞれ偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光を順次発する光源装置と、
請求項6に記載の内視鏡装置と、
前記内視鏡装置から偏光角度の異なる直線偏光が被検体に照射される毎に、前記光ファイバにより導光される反射光を光電変換して順次撮像し、その光強度偏光画像情報を出力する撮像装置と、
前記撮像装置から出力される、前記偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光の被検体からの反射光による複数の光強度画像情報に偏光変換処理を行って、所定の偏光特性による偏光特性画像情報に変換し、該所定の偏光特性による偏光特性画像情報に表示変換処理を行って、該所定の偏光特性による偏光特性画像情報を可視化して表示するための表示用偏光特性画像情報に変換するプロセッサ装置と、
前記プロセッサ装置により得られる表示用偏光特性画像情報に基づいて、前記所定の偏光特性による偏光特性画像を表示する表示装置とを備えることを特徴とする内視鏡診断装置。
【請求項8】
前記光源装置は、光源と、該光源から発せられる照明光をランダム偏光に変換する偏光解消板と、該偏光解消板により変換されるランダム偏光を所定の偏光角度の直線偏光に変換する直線偏光板と、前記ランダム偏光が偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光に順次変換されるように、前記直線偏光板を回転させる回転手段とを備えることを特徴とする請求項5または7に記載の内視鏡診断装置。
【請求項9】
前記回転手段は、前記直線偏光板により、前記ランダム偏光が、それぞれ0°、+45°、+90°の3種類の偏光角度の直線偏光に変換されるように、前記直線偏光板を順次回転させるものであることを特徴とする請求項8に記載の内視鏡診断装置。
【請求項10】
前記回転手段は、前記直線偏光板により、前記ランダム偏光が、それぞれ0°、+45°、+90°、−45°の4種類の偏光角度の直線偏光に変換されるように、前記直線偏光板を順次回転させるものであることを特徴とする請求項8に記載の内視鏡診断装置。
【請求項11】
前記光源装置は、光源と、該光源から発せられる照明光を円偏光に変換する円偏光子と、該円偏光子により変換される円偏光を所定の偏光角度の直線偏光に変換する直線偏光板と、前記円偏光が偏光角度の異なる3種類ないし4種類の直線偏光に順次変換されるように、前記直線偏光板を回転させる回転手段とを備えることを特徴とする請求項5または7に記載の内視鏡診断装置。
【請求項12】
前記回転手段は、前記直線偏光板により、前記円偏光が、それぞれ0°、+45°、+90°の3種類の偏光角度の直線偏光に変換されるように、前記直線偏光板を順次回転させるものであることを特徴とする請求項11に記載の内視鏡診断装置。
【請求項13】
前記回転手段は、前記直線偏光板により、前記円偏光が、それぞれ0°、+45°、+90°、−45°の4種類の偏光角度の直線偏光に変換されるように、前記直線偏光板を順次回転させるものであることを特徴とする請求項11に記載の内視鏡診断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−45029(P2012−45029A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186973(P2010−186973)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】