説明

円筒状成形体及びその製造方法、円筒状成形体ユニット、画像形成装置用部材、画像形成装置、並びに樹脂組成物

【課題】外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性が維持される円筒状成形体を提供すること。
【解決手段】分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂から選択される少なくも1種のポリイミド系樹脂と、層状構造を持つ無機系潤滑性粉末と、を含んで構成される機能層を有し、2層以上の積層体で構成され、最外層及び最内層の少なくとも一方として前記機能層を有し(例えば最外層11として有し)、又は前記機能層の単層で構成される円筒状成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状成形体及びその製造方法、円筒状成形体ユニット、画像形成装置用部材、画像形成装置、並びに樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状成形体としては、画像形成装置用部材を始め、様々な技術分野で開発がなされている。
例えば、特許文献1では、ポリウレタンからなる基層表面に、ポリフェニルサルホン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリカーボネートなどの熱可塑性エンジニアリングプラスチックに潤滑剤を含ませた表層を形成した中間転写体の発明が提案されている。
また、特許文献2では、ポリイミドからなる基材の外表面に、フッ素樹脂または二硫化モリブデンを吹き付け固着させ離型層を形成した積層構造体を中間転写ベルトとして用いる発明が提案されている。
特許文献3及び4では、フッ素樹脂粒子を熱可塑性樹脂中に混合して表面層を形成した中間転写体の発明が提案されている。
また、特許文献5のでは、ポリイミド基材中に熱伝導性粉体を分散して、ベルトの熱伝導性を高めることが提案されている。
また、特許文献6及び7では、フッ素樹脂、二硫化モリブデンなどの粉末を添加することでベルトに滑り性を付与させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−234589公報
【特許文献2】特開2006−116821公報
【特許文献3】特開平8−211757公報
【特許文献4】特開平9−190010公報
【特許文献5】特開平10−120805公報
【特許文献6】特開平11−156971公報
【特許文献7】特開2005−139351公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性が維持される円筒状成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂から選択される少なくも1種のポリイミド系樹脂と、層状構造を持つ無機系潤滑性粉末と、を含んで構成される機能層を有し、
2層以上の積層体で構成され、最外層及び最内層の少なくとも一方として前記機能層を有し、又は前記機能層の単層で構成される円筒状成形体。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記円筒状成形体が、2層以上の積層体で構成され、
前記機能層を、最外層として有する請求項1に記載の円筒状成形体。
【0007】
請求項3に係る発明は、
前記無機系潤滑性粉末が、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、及び黒鉛から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の円筒状成形体。
【0008】
請求項4に係る発明は、
前記無機系潤滑性粉末の含有量が、前記機能層を構成する全樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上50質量部以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の円筒状成形体。
【0009】
請求項5に係る発明は、
前記円筒状成形体が、2層以上の積層体で構成され、
前記機能層と接する層が、ポリイミド系樹脂を含んで構成された層である請求項1〜4のいずれか1項に記載の円筒状成形体。
【0010】
請求項6に係る発明は、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の円筒状成形体と、該円筒状成形体を張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、を備え、画像形成装置に対して脱着される円筒状成形体ユニット。
【0011】
請求項7に係る発明は、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の円筒状成形体で構成された画像形成装置用部材。
【0012】
請求項8に係る発明は、
請求項7に記載の画像形成装置用部材を備える画像形成装置。
【0013】
請求項9に係る発明は、
分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂、及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂から選択される少なくも1種のポリイミド系樹脂の前駆体と、
層状構造を持つ無機系潤滑性粉末と、
前記ポリイミド系樹脂の前駆体を溶解する溶媒と、
を含む樹脂組成物。
【0014】
請求項10に係る発明は、
前記無機系潤滑性粉末が、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、及び黒鉛から選択される少なくとも1種である請求項9に記載の樹脂組成物。
【0015】
請求項11に係る発明は、
前記無機系潤滑性粉末の含有量が、全樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上50質量部以下である請求項9又は10に記載の樹脂組成物。
【0016】
請求項12に係る発明は、
請求項9〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、被塗布物上に塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜に対して加熱処理を施して、分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂、及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂から選択される少なくも1種のポリイミド系樹脂と層状構造を持つ無機系潤滑性粉末とを含んで構成される機能層を形成する工程を有する円筒状成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、ポリイミド系樹脂として分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂以外の樹脂を適用した場合に比べ、外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性が維持される円筒状成形体を提供できる。
請求項2に係る発明によれは、ポリイミド系樹脂として分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂以外の樹脂を適用した場合に比べ、少なくも外周面の離型性が維持される円筒状成形体を提供できる。
請求項3に係る発明によれば、無機系潤滑性粉末として、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、及び黒鉛から選択される少なくとも1種以外の粉末を適用した場合に比べ、外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性が維持される円筒状成形体を提供できる。
請求項4に係る発明によれば、無機系潤滑性粉末の含有量が上記範囲外の場合に比べ、外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性が維持される円筒状成形体を提供できる。
請求項5に係る発明によれば、機能層と接する層がポリイミド系樹脂を含んで構成されていない場合に比べ、機能層とそれと接する層との剥離が抑制される円筒状成形体が提供できる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、ポリイミド系樹脂として分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂以外の樹脂を適用した円筒状成形体を備える場合に比べ、外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性が維持される円筒状成形体を備えた円筒状成形体ユニットを提供できる。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、ポリイミド系樹脂として分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂以外の樹脂を適用した円筒状成形体を備える場合に比べ、円筒状成形体における、外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性の低減に起因する画像欠陥が抑制される画像形成装置用部材を提供できる。
請求項8に係る発明によれば、ポリイミド系樹脂として分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂以外の樹脂を適用した円筒状成形体を備える場合に比べ、円筒状成形体における、外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性の低減に起因する画像欠陥が抑制される画像形成装置を提供できる。
【0020】
請求項9に係る発明によれば、ポリイミド系樹脂の前駆体として分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂以外の樹脂の前駆体を適用した場合に比べ、離型性が維持される機能層を得る樹脂組成物を提供できる。
請求項10に係る発明によれば、無機系潤滑性粉末として、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、及び黒鉛から選択される少なくとも1種以外の粉末を適用した場合に比べ、離型性が維持される機能層を得る樹脂組成物を提供できる。
請求項11に係る発明によれば、無機系潤滑性粉末の含有量が上記範囲外の場合に比べ、離型性が維持される機能層を得る樹脂組成物を提供できる。
【0021】
請求項12に係る発明によれば、ポリイミド系樹脂の前駆体として分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂以外の樹脂の前駆体を適用した場合に比べ、外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性が維持される円筒状成形体を得る円筒状成形体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係る円筒状成形体を示す概略斜視図である。
【図2】図1のA−A概略断面図である。
【図3】他の本実施形態に係る円筒状成形体を示す概略断面図(図1のA−A概略断面図に相当)である。
【図4】円形電極の一例を示す概略平面図(A)及び概略断面図(B)である。
【図5】本実施形態に係る円筒状成形体ユニットを示す概略斜視図である。
【図6】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図7】他の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0024】
[円筒状成形体]
図1は、実施形態に係る円筒状成形体を示す概略斜視図である。図2は、図1のA−A概略断面図である。
【0025】
本実施形態に係る円筒状成形体10(以下、無端ベルトと称する)は、図1及び図2に示すように、例えば、無端状に形成され、例えば厚み30μm以上80μm以下の基材層12と、基材層12の外周面に設けられた例えば厚み5μm以上70μm以下の最外層11と、の積層体で構成されている。
そして、最外層11として、分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂から選択される少なくも1種のポリイミド系樹脂と、層状構造を持つ無機系潤滑性粉末と、を含んで構成される機能層(以下、ポリイミド系樹脂層と称することがある)を適用している。
【0026】
本実施形態に係る無端ベルト10では、ポリイミド系樹脂層で構成された最外層11を上記構成とすることで、最外層11の表面、つまり外周面の離型性が維持される。
この理由は定かではないが、以下の理由によるものと推測される。
【0027】
無機系潤滑性粉末と呼ばれる無機材料は、表面に活性の高い水酸基やカルボキシル基を存在することから、ポリイミド系樹脂として分子両末端にアミノ基を有するものと適用することで、無機系潤滑性粉末とポリイミド系樹脂(又はその前駆体)との親和性が高まり、無機系潤滑性粉末が分散性良く、しかもポリイミド系樹脂に対して密着性が良く(つまり接合強度が良く)、機能層に配合されるものと考えられる。
そして、親和性が高まるが故に、層状構造を持つ無機系潤滑剤粉末は、ポリイミド系樹脂で構成される層中に、その主面(厚み方向に対向する面)が層表面に沿って(つまり対向するようにして)配合されるものと考えられる。
【0028】
このため、ポリイミド系樹脂層で構成された最外層11の外周面には、層状構造を持つ無機系潤滑剤粉末の主面が露出し易い状態となり、加えて、層状構造を持つ無機系潤滑剤粉末が分散性良く配合され、しかもポリイミド系樹脂と密着性良く配合されており、最外層11としてのポリイミド系樹脂層が磨耗しても、それが維持されるものと考えられる。
また、熱可塑性ポリイミド系樹脂粒子とフッ素樹脂粒子と溶媒に分散させると、溶媒と熱可塑性ポリイミド系樹脂粒子との間、溶媒とフッ素樹脂粒子との間に相互作用力が生じて、熱可塑性ポリイミド系樹脂粒子とフッ素樹脂粒子は、溶媒中で分散安定化する。分散が安定化している状態で塗布を行うと、その分散安定化された状態にて、塗布膜が形成されることとなる。その後、加熱処理を行うことで、溶媒分が留去されるが、熱可塑性ポリイミド系樹脂粒子とフッ素樹脂粒子通しが密着して、運動性が低下し固定化される。この際に、互いの粒子が混ざり合った状態が形成されるものと考える。
【0029】
したがって、本実施形態に係る無端ベルト10では、外周面の離型性が維持されると考えられる。
また、最外層11は、樹脂成分よりも硬い無機系潤滑性粉末の主面が露出し易い状態であると共に、無機系潤滑性粉末がポリイミド系樹脂と親和性が高まった状態で層中に配合されていることから、磨耗され難く、磨耗に起因する磨耗粉の発生が抑制されるとも考えられる。
一方、上記ポリイミド系樹脂層が無端ベルト10の外周面ではなく内周面を構成する場合(図3参照)には、内周面の離型性が維持されると考えられる。
【0030】
ここで、本実施形態に係る無端ベルト10は、外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性が維持されることから、例えば、画像形成装置用部材として有用である。
そして、当該画像形成装置用部材を備えた画像形成装置では、外周面及び内周面の少なくとも一方の離型性の低下に起因する画像欠陥が抑制される。
【0031】
以下、本実施形態に係る無端ベルト10の構成材料や特性について詳細に説明する。
【0032】
(最外層)
まず、最外層11について説明する。
最外層11は、例えば、分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂から選択される少なくも1種のポリイミド系樹脂と、層状構造を持つ無機系潤滑性粉末と、を含んで構成されるポリイミド系樹脂層である。
【0033】
ポリイミド系樹脂層には、無端ベルト10の用途に応じて(例えば中間転写体[中間転写ベルト]や、搬送転写体[搬送転写ベルト]等の転写ベルトに適用する場合)、導電材料も含んで構成される。
【0034】
ポリイミド系樹脂層は、具体的には、ポリイミド系樹脂の前駆体と層状構造を持つ無機系潤滑性粉末とポリイミド系樹脂の前駆体を溶解する溶媒と含む樹脂組成物により形成する。
つまり、ポリイミド系樹脂層は、上記樹脂組成物の塗膜に対して、加熱処理を施し、ポリイミド系樹脂の前駆体のイミド化反応を生じさせ、ポリイミド系樹脂を形成することで得られる層である。
【0035】
ポリイミド系樹脂層を形成するための樹脂組成物は、例えば、ポリイミド系樹脂の前駆体と層状構造を持つ無機系潤滑性粉末とポリイミド系樹脂の前駆体を溶解する溶媒と共に、必要に応じて、導電材料、触媒としての3級アミン、カルボン酸無水物、分散剤などの添加物を含んでもよい。
【0036】
−ポリイミド系樹脂(その前駆体)−
ポリイミド系樹脂(その前駆体)について説明する。
ポリイミド系樹脂としては、分子主鎖繰り返し単位中に、イミド環を有する樹脂であり、分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂から選択される少なくも1種のポリイミド系樹脂が適用される。
そして、これらポリイミド系樹脂の前駆体としては、例えば、イミド化反応を経てイミド環へと変化するアミック酸構造を持つ前駆体が適用される。
【0037】
まず、分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂(その前駆体)について説明する。
分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂としては下記一般式(1)で示されるポリイミド樹脂(但し、一般式(1)中、n/(m+n)≦0.1、又はn=0を示す)が好適に挙げられ、その前駆体としては下記一般式(1)で示されるポリアミック酸樹脂(但し、一般式(1)中、n/(m+n)≧0.5、又はm=0を示す)が好適に挙げられる。
【0038】
【化1】

【0039】
一般式(1)中、R、及びRは、それぞれ独立に4価の有機基を示す。
、R、及びRとしては、それぞれ独立に2価の有機基を示す。
m、及びnは、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表す。
但し、一般式(1)で示される化合物が、ポリイミド樹脂を示す場合、n/(m+n)≦0.1、又はn=0を示し、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を示す場合、n/(m+n)≧0.5、又はm=0を示す。
【0040】
ここで、一般式(1)中、R、及びRが表す4価の有機基としては、原料となるテトラカルボン酸二無水物より4つのカルボニル基を除いたその残基であるが、対応するテトラカルボン酸として具体的には、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸などが挙げられる。
これらの中でも、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸が望ましい。
【0041】
一般式(1)中、R、R、及びRが表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基構造であるが、対応するジアミン化合物として、具体的には、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
これらの中でも、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンが望ましい。
【0042】
ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸樹脂は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。また、得られたポリアミック酸樹脂は、部分的にイミド化反応を行ったポリアミック酸−ポリイミド共重合体であってもよい。
【0043】
テトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系テトラカルボン酸二無水物、脂肪族系テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0044】
芳香族系テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等が挙げられる。
【0045】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0046】
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が望ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が望ましい。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いる。
【0047】
ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
ジアミン化合物としては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0048】
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が望ましい。
これらのジアミン化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いる。
【0049】
ここで、ポリイミド樹脂の前駆体としてのポリアミック酸樹脂は、望ましくは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンとを重合反応して得られたものである。
なお、ポリイミド樹脂(その前駆体)の分子両末端にアミノ基を持たせるには、例えば、重合反応の際に使用するジアミン化合物のモル当量を、テトラカルボン酸のモル当量より過剰に添加することで行われる。ジアミン化合物とテトラカルボン酸とのモル当量の比は、テトラカルボン酸のモル当量を1に対して、1.0001以上1.2以下の範囲とすることがよく、好ましくは1.001以上1.2以下の範囲である。
ジアミン化合物とテトラカルボン酸とのモル当量の比が、1.0001未満では、分子量末端のアミノ基の効果が小さく、良好な分散性を得ることができないことがある。また、1.2を超える場合、得られるポリアミック酸の分子量が小さく、ベルト強度(引裂き強度、引張り強度、)が低くなってしまうことがある。
【0050】
また、ポリアミック酸樹脂の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸樹脂を溶解するものであれば特に限定されない。
【0051】
また、ポリアミック酸樹脂の生成時の溶剤の固形分濃度は特に規定されるものではないが、例えば5質量%以上50質量%以下が好ましく、さらに10質量%以上30質量%以下が好ましい。
【0052】
また、ポリアミック酸樹脂の生成時(重合時)の反応温度としては、例えば0℃以上80℃以下の範囲であることがよい。
【0053】
また、ポリアミック酸樹脂を部分的にイミド化し、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体とする場合、ポリアミック酸樹脂を加熱処理によりイミド化する方法、又は脱水剤及び/又は触媒を作用させて化学的にイミド化する方法により、ポリアミック酸樹脂中のポリアミック酸構造の少なくとも一部を脱水閉環反応によってイミド基に転換する。
【0054】
ここで、加熱処理によりイミド化する方法における加熱温度は、例えば、通常60℃以上200℃以下とされ、望ましくは100℃以上170℃以下とされる。
【0055】
一方、化学的にイミド化する方法は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し化学的にイミド化反応を進行させる。脱水剤は、1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされない。例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などの酸無水物から選ばれる1種類又は2種類以上を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
【0056】
化学的にイミド化する方法において、使用する触媒としては、例えばピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンなどの3級アミンから選ばれる1種類又は2種類以上を用いることができるが、これらに限定されるものではない。触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
化学的にイミド化する反応は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し必要に応じて加熱することにより行われる。脱水閉環の反応温度は、通常0℃以上180℃以下、望ましくは60℃以上150℃以下とされる。
【0057】
なお、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体に、作用させた脱水剤及び/又は触媒は除去しなくともよいが、以下の方法で除去してもよい。作用させた脱水剤及び/又は触媒を除去する方法としては、減圧加熱、又は再沈殿法を用いることができる。減圧加熱は、真空下80℃以上120℃以下の温度で行われ、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を留去する。また、再沈殿法は、触媒、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を溶解させ、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体は溶解させない貧溶媒を用い、この貧溶媒の大過剰中に、反応液を加えることによって行われる。貧溶剤としては、特に制限はなく、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンの如きケトン系溶剤、ヘキサンなどの如き炭化水素系溶剤、などが使用できる。析出するポリアミック酸−ポリイミド共重合体は、ろ別・乾燥後、再度γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に溶解させる。
【0058】
次に、分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂(その前駆体)について説明する。
分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂としては、分子骨格中に剛直なイミド基と柔軟性を付与するアミド基とを有する樹脂であり、例えば、下記一般式(2)で示されるポリアミドイミド樹脂(但し、一般式(2)中、n1/(m1+n1)≦0.1、又はn1=0を示す)が好適に挙げられ、その前駆体としては下記一般式(2)で示されるポリアミック酸樹脂(但し、一般式(2)中、n1/(m1+n1)≧0.5、又はm1=0を示す)が好適に挙げられる。
【0059】
【化2】

【0060】
一般式(2)中、R11、及びR13は、それぞれ独立に3価の有機基を示す。
12、R14、及びR15としては、それぞれ独立に2価の有機基を示す。
m1、及びn1は、それぞれ独立に0又は1以上の整数を表す。
但し、一般式(2)で示される化合物が、ポリアミドイミド樹脂を示す場合、n1/(m1+n1)≦0.1、又はn1=0を示し、ポリアミドイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸樹脂を示す場合、n1/(m1+n1)≧0.5、又はm1=0を示す。
【0061】
ここで、一般式(2)中、R11、及びR13が表す3価の有機基としては、原料となる3価のカルボン酸誘導体より3つのカルボニル基を除いたその残基であるが、対応する3価のカルボン酸化合物として具体的には、例えば、トリメリット酸が挙げられる。
【0062】
一般式(2)中、R12、R14、及びR15が表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基構造であるが、対応するジアミン化合物として具体的には、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
これらの中でも、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンが望ましい。
【0063】
ポリアミドイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸樹脂は、例えば、酸クロライド法(a):酸無水物基を有する3価のカルボン酸誘導体のハライド化合物(最も代表的には当該カルボン酸誘導体のクロライド化合物)とジアミン化合物とを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭42ー15637号公報参照。)、イソシアネート法(b):酸無水物基を有する3価のカルボン酸誘導体と芳香族イソシアネートとを溶媒中で反応させて製造する公知の方法(例えば、特公昭44ー19274号公報)等により合成される。
また、得られたポリアミック酸樹脂は、部分的にイミド化反応を行ったポリアミック酸−ポリアミドイミド共重合体であってもよい。
以下、各製造方法の詳細について説明する。
【0064】
(a)酸クロライド法
酸クロライド法に用いられる酸無水物基を有する3価のカルボン酸の誘導体ハライド化合物(誘導体クロライド化合物)としては、例えば、下記一般式(2−1)で示される化合物が挙げられる。
【0065】
【化3】

【0066】
一般式(2−1)中、Xはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)を示す。
一般式(2−1)中、Xとしては、塩素原子、つまりクロライドが望ましい。
【0067】
一般式(2−1)で示される化合物として具体的には、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、4、4’ビフェニルジカルボン酸、4、4’ビフェニルエーテルジカルボン酸、4、4’ビフェニルスルホンジカルボン酸、4、4’ベンゾフェノンジカルボン酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、3、3’、4、4’ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3、3、’、4、4’ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、3、3’、4、4’ビフェニルテトラカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸、マレイン酸、フマール酸、ダイマー酸、スチルベンジカルボン酸、1、4シクロヘキサンジカルボン酸、1、2シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸の酸クロライドが挙げられる。
これらのカルボン酸の誘導体ハライド化合物(誘導体クロライド化合物)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いる。
【0068】
一方、酸クロライド法に用いられるジアミン化合物としては、特に限定されないが、芳香族ジアミン化合物、脂肪族ジアミン化合物、および脂環族ジアミン化合物が挙げられるが、芳香族ジアミンが好適に挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、 m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、オキシジアニリン、メチレンジアミン、ヘキサフルオロイソプロピリデンジアミン、ジアミノ−m−キシリレン、ジアミノ−p−キシリレン、1,4−ナフタレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス−(4−アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、イソプロピリデンジアニリン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、o−トリジン、2,4−トリレンジアミン、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス−(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス−(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]へキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド等が挙げられる。
これらのジアミン化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いる。
【0069】
酸クロライド法により得られるポリアミック酸樹脂(ポリアミドイミド樹脂の前駆体)は、上記原料を有機極性溶媒に溶解した後、低温(例えば0℃以上30℃以下)で反応させて得られる。
本有機極性溶媒としては、ポリアミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸樹脂と同様なものが挙げられる。
【0070】
(b)イソシアネート法
イソシアネート法に用いられる酸無水物基を有する3価のカルボン酸誘導体としては、例えば、下記一般式(2−2)で示される化合物が好適に挙げられる。
【0071】
【化4】

【0072】
一般式(2−2)中、Rは水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基、又はフェニル基を示す。
【0073】
一般式(2−2)で示される化合物としては、一般式(2−2)に該当する化合物であれば、特に制限はないが、最も代表的には無水トリメリット酸が挙げられる。
【0074】
一方、イソシアネート法に用いられる芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−〔2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン〕ジイソシアネート、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3′−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジエチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート等が挙げられる。
これらの芳香族ポリイソシアネートは、単独で又は2種以上組み合わせて用いる。
【0075】
また、芳香族ポリイソシアネートは、必要に応じて、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環式イソシアネート、又は3官能以上のポリイソシアネートと併用してもよい。
【0076】
イソシアネート法により得られるポリアミック酸樹脂(ポリアミドイミド樹脂の前駆体)は、上記原料を有機極性溶媒に溶解した後、温度(例えば40℃以上200℃以下)で反応させて得られる。
本有機極性溶媒としては、ポリアミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸樹脂と同様なものが挙げられる。
【0077】
ここで、イソシアネート法による場合、上記原料からポリアミドイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸樹脂を経由することなく、ポリアミドイミド樹脂を生成できることから、これら原料をポリアミドイミド樹脂の前駆体として、ポリイミド系樹脂層を形成するための樹脂組成物に含ませもよい。
【0078】
また、ポリアミドイミド樹脂(その前駆体)の分子両末端にアミノ基を持たせるには、例えば、重合反応の際に使用するジイソシアネート化合物のモル当量を、トリメリット酸のモル当量より過剰に添加することで行われる。ジイソシアネート化合物とテトラカルボン酸とのモル当量の比は、テトラカルボン酸のモル当量を1に対して、ジイソシアネート化合物を例えば1.0001以上1.2以下の範囲とすることがよく、望ましくは1.001以上1.2以下の範囲である。
ジイソシアネート化合物とトリメリット酸とのモル当量の比が、1.0001未満では、分子量末端のアミノ基の効果が小さく、良好な分散性を得ることができないことがある。また、1.2を超える場合、 得られるポリアミドイミドの分子量が小さく、ベルト強度(引裂き強度、引張り強度、)が低くなってしまうことがある。
【0079】
なお、ポリアミドイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸樹脂は、上記以外はポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸樹脂と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
−無機系潤滑性粉末−
無機系潤滑性粉末は、層状の粉末、具体的には層状の結晶構造を有するもので、各層面に沿って滑る構造を持つ個体潤滑剤である。
無機系潤滑性粉末として具体的には、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、二硫化タングステン、フッ化黒鉛、黒鉛(グラファイド)等が挙げられる。
これらの無機系潤滑性粉末は、単独で又は2種以上組み合わせて用いる。
【0081】
これらの中でも、無機系潤滑性粉末としては、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、及び黒鉛から選択される少なくとも1種であることがよい。これら無機系潤滑性粉末は、他のものに比べ、硬度が高く、ポリイミド系樹脂に対して親和性が高まり易いことから、ポリイミド系樹脂層の表面の離型性が維持され易くなる。また、ポリイミド系樹脂層の摩耗・摩擦などに対しても耐久性を示し易くなる。
【0082】
なお、二硫化モリブデン、及び黒鉛は、六方晶という層状の結晶構造を持つものである。窒化ホウ素は、燐片状結晶構造を持つものである。
【0083】
無機系潤滑性粉末の平均粒径は、例えば、0.1μm以上100μm以下であることがよく、望ましくは1μm以上50μm以下、より望ましくは1μm以上20μm以下である。
無機系潤滑性粉末の平均粒径は、数平均粒子径を示し、10μm以上600μm以下の範囲の粒子については、レーザ回折法を用い、3nm以上10μm未満の粒径については動的散乱方式にて測定した。レーザ回折法を用いた測定装置としては、特に制限はないが例えば、堀場製作所社製LA−300を用いられる。また、動的散乱方式を用いた測定装置としては、堀場製作所社製LB−500を用いられる。いずれの場合も試料粒子を純水に0.1質量%の濃度となるように添加した後、攪拌しながら超音波を印加して分散したものを装置に設置して測定した値である。
【0084】
無機系潤滑性粉末の含有量は、全樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上50質量部以下であることがよく、望ましくは5質量部以上40質量部以下、より望ましくは10質量部以上30質量部以下である。
無機系潤滑性粉末の含有量を上記範囲とすると、ポリイミド系樹脂層の表面の離型性が維持され易くなる。
なお、無機系潤滑性粉末の含有量が多すぎると、ポリイミド系樹脂層の強度が低下することある。
【0085】
−溶媒−
ポリイミド系樹脂層を形成するための樹脂組成物に使用する溶媒について説明する。
溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素も使用可能である。
溶媒は、ポリイミド系樹脂の前駆体を溶解するものであれば特に限定されない。
【0086】
溶媒は、先のポリイミド系樹脂の前駆体であるポリアミック酸樹脂合成時から使用しても、ポリアミック酸樹脂合成後に目的とする溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、合成後のポリアミック酸樹脂の溶液に目的とする量の溶剤を添加して希釈する方法、合成後のポリアミック酸樹脂を再沈殿した後に目的とする溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を徐々に留去しながら目的とする溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれかでもよい。
【0087】
−導電材料−
導電材料について説明する。
導電材料としては、導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率10Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)のものが挙げられる。
導電材料として具体的は、例えば、カーボンブラック(例えばケッチエンブラック、アセチレンブラック、表面が酸化処理されたカーボンブラック等)、金属(例えばアルミニウムやニッケル等)、酸化金属化合物(例えば酸化イットリウム、酸化錫等)、イオン導電性物質(例えばチタン酸カリウム、LiCl等)、導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなど)等が挙げられる。
【0088】
導電材料は、その使用目的により選択されるが、電気抵抗の経時での安定性や、転写電圧による電界集中を抑制する電界依存性の観点から、pH5以下(望ましくはpH4.5以下であり、より望ましくはpH4.0以下)の酸化処理カーボンブラック(例えば表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して得られたカーボンブラック)がよく、電気的耐久性付与の観点から、導電性高分子(例えばポリアニリン等)がよい。
導電材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0089】
なお、導電材料がカーボンブラック等の粒子状の場合、その一次粒径が10μm未満、望ましくは1μm以下の粒子であることがよい。
【0090】
導電材料の含有量は、例えば、全樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下であることがよい。
【0091】
−3級アミン−
3級アミンは、イミド化反応の触媒と働くものであり、例えば、ピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンから選ばれる1種又は2種以上を好適に挙げられる。
【0092】
3級アミンの含有量は、例えば、全樹脂成分100質量部に対して、0.1以上30質量部以下であることがよい。
【0093】
−カルボン酸無水物−
カルボン酸無水物は、イミド化反応時の脱水剤として働き、イミド化反応を促進するものである。カルボン酸無水物としては、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などが挙げられ、これらの中でも無水酢酸が好適である。これらは、1種類又は2種類以上用いてもよい。
【0094】
カルボン酸無水物の含有量は、例えば、全樹脂成分100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下であることがよい。
−分散剤−
ポリイミド系樹脂層を形成するための樹脂組成物に使用する分散剤について説明する。
分散剤としては、無機系潤滑性粉末や導電材料(粒状の導電材料)を分散させるためのものであり、低分子量でも高分子量のものでもよく、またカチオン系、アニオン系、非イオン系から選ばれるいずれの種類の分散剤が挙げられるが、特に、非イオン系高分子が望ましい。
非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加してもよい。
本分散剤の添加量は、全樹脂成分100質量部に対して、例えば、0.2質量部以上3質量部以下であることがよい。
【0095】
−ポリイミド系樹脂層を形成するための樹脂組成物の特性−
樹脂組成物の固形分濃度は、特に規定されるものではないが、無端ベルト製造時の塗工プロセスのしやすさより選択される。塗工上、樹脂組成物の粘度としては、例えば、一般に1Pa・s以上100Pa・s以下が望ましく、その粘度となる樹脂組成物の固形分濃度としては、例えば、塗工溶媒(例えば有機極性溶媒)100質量部に対して10質量%以上40質量%以下が望ましい。
【0096】
(基材層)
次に、基材層12について説明する。
基材層12は、樹脂材料を含んで構成される。基材層12も、無端ベルト10の用途に応じて(例えば中間転写体[中間転写ベルト]や、搬送転写体[搬送転写ベルト]等の転写ベルトに適用する場合)、導電材料を含んで構成される。
【0097】
樹脂材料について説明する。
樹脂材料としては、樹脂材料は、そのヤング率が、ベルト厚みによっても異なるが、望ましくは、3500MPa以上、より望ましくは4000MPa以上であればよく、ベルトとしての機械特性が満足される。樹脂としては、上記ヤング率を満たせば、制限はないが、例えば、ポリイミド系樹脂(例えば、熱可塑性、又は熱硬化性のポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂)、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、補強材を添加してなるポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0098】
なお、ヤング率は、JIS K7127(1999)に準じて引張試験を行い、得られた応力・歪曲線の初期ひずみ領域の曲線に接線を引き、その傾きにより求める。測定条件としては、短冊状試験片(幅6mm、長さ130mm)、ダンベル1号、試験速度500mm/分、厚さはベルト本体の厚さの各設定で測定するものとする。
【0099】
上記樹脂材料の中でも、ポリイミド系樹脂が好適である。ポリイミド系樹脂(特にポリイミド樹脂)は、高ヤング率材料であることから、ベルト回転駆動時の変形が他の樹脂に比べ少なくなる。そして、最外層11がポリイミド系樹脂を含んで構成されることから、最外層11と接触する下層に相当する基材層12もポリイミド系樹脂を含んで構成させることで、最外層11と下層となる基材層12との密着性が向上すると考えられ、当該層間の剥離が抑制される。
【0100】
導電材料について説明する。
導電材料についても、最外層11を構成する導電材料と同様なものが挙げられる。
【0101】
(無端ベルトの特性)
次に、本実施形態に係る無端ベルト10の特性について説明する。
本実施形態に係る無端ベルト10が中間転写体(中間転写ベルト)に適用される場合、その外周面の表面抵抗率は、常用対数値で8(LogΩ/□)以上13(LogΩ/□)以下であることが望ましく、8(LogΩ/□)以上12(LogΩ/□)以下であることがより望ましい。表面抵抗率の常用対数値が13(LogΩ/□)を超えると、二次転写時に記録媒体と中間転写体とが静電吸着し、記録媒体の剥離ができなくなる場合がある。一方、表面抵抗率の常用対数値が8(LogΩ/□)未満であると、中間転写体に一次転写されたトナー像の保持力が不足し画質の粒状性や像乱れが発生する場合がある。尚、前記体積抵抗率の常用対数値は、導電材料の種類、及び導電材料の添加量により制御される。
【0102】
ここで、表面抵抗率の測定方法は、次の通り行う。円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「URプローブ」)を用い、JIS K6911に従って測定する。表面抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。図4は、円形電極の一例を示す概略平面図(A)及び概略断面図(B)である。図4に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ベルトTの転写面の表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出する。ここで、下記式中、d(mm)は円柱状電極部Cの外径を示し、D(mm)はリング状電極部Dの内径を示す。
式:ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
なお、表面抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
【0103】
本実施形態に係る無端ベルト10が中間転写体(中間転写ベルト)に適用される場合、その全体の体積抵抗率は、常用対数値で8(LogΩcm)以上13(LogΩcm)以下であることが望ましい。前記体積抵抗率の常用対数値が8(LogΩcm)未満であると、像保持体から中間転写体に転写された未定着トナー像の電荷を保持する静電的な力が働きにくくなるため、トナー同士の静電的反発力や画像エッジのフリンジ電界の力によって、画像の周囲にトナーが飛散してしまい、ノイズの大きい画像が形成される場合がある。一方、前記体積抵抗率の常用対数値が13(LogΩcm)を超えると、電荷の保持力が大きいために、一次転写での転写電界で中間転写体表面が帯電するために除電機構が必要となる場合がある。尚、前記体積抵抗率の常用対数値は、導電材料の種類、及び導電材料の添加量により制御される。
【0104】
ここで、体積抵抗率の測定は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ)を用い、JIS K6911に従って測定する。前記体積抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。測定は表面抵抗率と同一の装置で測定する。但し、図4に示す円形電極において、表面抵抗率測定時の板状絶縁体Bに代えて第二電圧印加電極B’とを備える。そして、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第二電圧印加電極B’との間にベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cと第二電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加した時に流れる電流I(A)を測定し、下記式により、ベルトTの体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出する。ここで、下記式中、tは、ベルトTの厚さを示す。
式ρv=19.6×(V/I)×t
なお、体積抵抗率は、円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
【0105】
また、上記式に示される19.6は、抵抗率に変換するための電極係数であり、円柱状電極部の外径d(mm)、試料の厚さt(cm)より、πd/4tとして算出される。また、ベルトTの厚さは、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを使用し測定する。
【0106】
(無端ベルトの製造方法)
以下、本実施形態に係る無端ベルト10の製造方法について説明する。
なお、無端ベルト10として、基材層12の樹脂材料としてポリイミド樹脂、基材層12及び最外層11に導電材料としてカーボンブラックを含ませた形態の製造方法について説明するが、これに限られるわけではない。
【0107】
まず、芯体を準備する。準備する芯体としては、円筒状金型等が挙げられる。芯体の素材としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、ニッケル等の金属が挙げられる。芯体の長さは、目的とする無端ベルト以上の長さが必要であるが、目的とする無端ベルトの長さより、10%以上40%以下長いことが望ましい。
【0108】
次に、基材層形成用塗布液として、カーボンブラックを分散させたポリアミド酸溶液を準備する。
具体的には、例えば、有機極性溶媒中にテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物を溶解させ、これにカーボンブラックを分散させた後、重合してカーボンブラックを分散させたポリアミド酸樹脂の溶液を準備する。
この際、ポリアミド酸樹脂の溶液における、モノマー濃度(溶媒中におけるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の濃度)は種々の条件により設定されるが、5質量%以上30質量%以下が望ましい。また、重合反応温度は80℃以下に設定することが望ましく、特に望ましくは5℃以上50℃以下であり、重合反応時間は5時間以上10時間以下である。
【0109】
次に、基材層形成用塗布液を芯材としての円筒状金型に塗布し、基材層形成用塗布液の塗膜を形成する。
塗布液の円筒状金型への塗布方法は、特に制限はなく、例えば、円筒状金型の外周面に浸漬する方法や、円筒状金型の内周面に塗布する方法、軸を水平にして円筒状金型を回転させながら、その外周面又は内周面に「らせん塗布方法」や「ダイ方式塗布方法」により塗布する方法等が挙げられる。
【0110】
次に、基材層形成用塗布液の塗膜を乾燥させ、基材層となる皮膜(乾燥したイミド化前の塗膜)を形成する。乾燥条件は、例えば80℃以上200℃以下の温度で10分間以上60分間以下がよく、温度が高いほど加熱時間は短くてよい。加熱の際、熱風を当てることも有効である。加熱時は、温度を段階的に上昇させたり、速度を変化させずに上昇させてもよい。芯体の軸方向を水平にして、芯体を5rpm以上60rpm以下で回転させるのがよい。乾燥後は芯体を垂直にしてもよい。
【0111】
次に、最外層形成用塗布液として、上記ポリイミド系樹脂層を形成するための樹脂組成物(溶液)を準備する。
【0112】
次に、最外層形成用塗布液を形成した基材層となる皮膜上に塗布して、最外層形成用塗布液の塗膜を形成する。
塗布液の円筒状金型への塗布方法は、特に制限はなく、基材層形成用塗布液の塗布方法と同様である。
【0113】
次に、最外層形成用塗布液の塗膜を乾燥させ、最外層となる皮膜(乾燥したイミド化前の塗膜)を形成する。
【0114】
次に、基材層12及び最外層11となる皮膜に対して、加熱処理を行う。
本加熱処理は、基材層12となる皮膜のポリアミック酸がイミド化する条件(温度・時間)で行う。
そして、本加熱処理を行った後、皮膜を芯体から抜き取る。これにより、基材層12及び最外層11の積層体である無端ベルト10が得られる。
【0115】
ここで、イミド化する加熱条件としては、例えば250℃以上450℃以下(望ましくは300℃以上350℃以下)で、20分間以上60分間以下加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミド樹脂の皮膜が形成される。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
【0116】
なお、基材層12と最外層11との密着性の観点から、基材層12となる皮膜のポリアミック酸樹脂がイミド化する加熱処理と最外層11とのポリアミック酸樹脂がイミド化する加熱処理とを同時に行うことからよいが、基材層12となる皮膜に対してイミド化する加熱処理(焼成)を行って基材層12を形成した後、最外層形成用塗布液を塗布し、最外層11となる皮膜に対してイミド化する加熱処理(焼成)を行って最外層11を形成してもよい。
【0117】
以上説明した本実施形態に係る無端ベルト10は、基材層12と最外層11との2層構成の積層体とし、最外層11として無機系潤滑性粉末を含むポリイミド系樹脂層を適用した形態について説明したが、これに限られず、無機系潤滑性粉末を含むポリイミド系樹脂層の単層構成であってもよく、無機系潤滑性粉末を含むポリイミド系樹脂層を有する2層以上の積層体であってもよい。具体的には、例えば、図3に示すように、基材層12の内周面に最内層13を設け、最内層13として無機系潤滑性粉末を含むポリイミド系樹脂層を適用した形態(又は最外層11を設けず、基材層12の内周面に最内層13を設けた形態)が挙げられる。
また、基材層12を複数層としてもよく、基材層12と最外層11との間、基材層12と最内層13との間に、中間層(例えば無端ベルト10を電磁誘導加熱方式の加熱ベルトとして適用する場合、金属発熱層等)等を設けた形態であってもよい。
【0118】
(円筒状成形体ユニット)
図5は、本実施形態に係る円筒状成形体ユニットを示す概略斜視図である。
本実施形態に係る円筒状成形体ユニット130(以下、無端ベルトユニットと称する)は、図5に示すように、上記本実施形態に係る無端ベルト10を備えており、例えば、無端ベルト10は対向して配置された駆動ロール131及び従動ロール132により張力がかかった状態で掛け渡されている(以下、「張架」という場合がある。)。
ここで、本実施形態に係る無端ベルトユニット130は、無端ベルト10を中間転写体として適用させる場合、無端ベルト10を張架するロールとして、感光体(像保持体)表面のトナー像を無端ベルト10上に一次転写させるためのロールと、無端ベルト10上に転写されたトナー像をさらに記録媒体に二次転写させるためのロールが配置される。
なお、無端ベルト10を張架するロールの数は限定されず、使用態様に応じて配置すればよい。このような構成の無端ベルトユニット130は、装置に組み込まれて使用され、駆動ロール131,従動ロール132の回転に伴って無端ベルト10も張架した状態で回転する。
【0119】
(画像形成装置用部材)
本実施形態に係る無端ベルトは、画像形成装置用部材(本実施形態に係る画像形成用部材)として利用し得る。
画像形成装置用部材としては、例えば、中間転写体(中間転写ベルト)、記録媒体搬送転写部材(記録媒体搬送ベルト)、記録媒体搬送部材(記録媒体搬送ベルト)、定着部材(定着ベルト:加熱ベルトや加圧ベルト)等が挙げられる。
なお、本実施形態に係る無端ベルトは、画像形成装置用部材以外にも、例えば、搬送ベルト、駆動ベルト、ラミネートベルト、電気絶縁材、配管被覆材、電磁波絶縁材、熱源絶縁体、電磁波吸収フィルム等にも利用し得る。
【0120】
(画像形成装置)
本実施形態に係る画像形成装置は、本実施形態に係る無端ベルトで構成された画像形成装置用部材(本実施形態に係る画像形成用部材)を備えて構成される。
例えば、本実施形態に係る画像形成装置は、中間転写体(中間転写ベルト)、記録媒体搬送転写部材(記録媒体搬送ベルト)、記録媒体搬送部材(記録媒体搬送ベルト)、定着部材(定着ベルト:加熱ベルトや加圧ベルト)等の画像形成装置用部材として、本実施形態に係る無端ベルト10を備える。
【0121】
本実施形態に係る画像形成装置は、例えば、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置といった電子写真方式の画像形成装置が挙げられ、具体的には、例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置、像保持体上に保持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色毎の現像装置を備えた複数の像保持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置が挙げられる。
【0122】
本実施形態の画像形成装置の具体的構成としては、例えば、像保持体と、像保持体表面を帯電する帯電手段と、像保持体表面を露光し静電潜像を形成する露光手段と、像保持体表面に形成された静電潜像を現像剤にて現像し、トナー像を形成する現像手段と、像保持体表面に形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、備えたものが挙げられ、必要に応じてその他公知の手段を更に備えていてもよい。
【0123】
そして、本実施形態に係る画像形成装置としては、例えば、転写手段が中間転写体と像保持体に形成されたトナー像を中間転写体に一次転写する一次転写手段と中間転写体に転写されたトナー像を記録媒体に二次転写する二次転写手段とを備え、当該中間転写体として上記本実施形態に係る無端ベルト10を備える構成が挙げられる。
【0124】
また、本実施形態に係る画像形成装置としては、例えば、転写手段が記録媒体を搬送するための記録媒体搬送転写部材(記録媒体搬送転写ベルト)と像保持体に形成されたトナー像を記録媒体搬送転写部材により搬送された記録媒体に転写するための転写手段とを備え、当該記録媒体転写体として上記本実施形態に係る無端ベルトを備える構成が挙げられる。
【0125】
また、本実施形態に係る画像形成装置としては、例えば、定着手段として、互いに押圧するように対向配置された一対の定着部材を少なくとも備え、一対の定着部材の少なくともいずれか一方の定着部材(定着ベルト:加熱ベルトや加圧ベルト)として上記本実施形態に係る無端ベルトを備える構成が挙げられる。
【0126】
その他、本実施形態に係る画像形成装置としては、例えば、記録媒体収納容器から画像形成部を経て装置外部へ、記録媒体を搬送する経路において配置される記録媒体搬送部材を備え、記録媒体搬送部材として上記本実施形態に係る無端ベルトを備える構成も挙げられる。
【0127】
以下、本実施形態の画像形成装置の具体例を図面を用いてより詳細に説明する。
なお、以下に示す具体例において、定着手段としては、一対の定着ロールを備えたものが用いられているが、少なくとも一方の定着ロールを定着ベルトに置き換え、当該定着ベルトとして本実施形態に係る無端ベルトを備えたものでもよい。
【0128】
図6は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。本画像形成装置は、中間転写体(中間転写ベルト)として本実施形態に係る無端ベルトを用いている。
【0129】
図6に示す画像形成装置100は、感光体(像保持体の一例)101Y、101M、101C、101BKを備えており、矢線A方向への回転に伴いその表面には周知の電子写真プロセス(図示せず)によって画像情報に応じた静電潜像が形成される(なお、図6中、帯電装置、露光装置およびクリーニング装置等は不図示)。
【0130】
そして、この感光体101Y、101M、101C、101BKの周囲には、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(BK)の各色に対応した現像装置105〜108が配設されており、感光体101Y、101M、101C、101BKに形成された静電潜像をそれぞれの現像装置105〜108で現像してトナー像が形成される。
従って、例えば、感光体101Yに書き込まれた静電潜像はイエローの画像情報に対応したものであり、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像装置105で現像され、感光体101Y上にはイエローのトナー像が形成される。
【0131】
中間転写ベルト102は感光体101Y、101M、101C、101BKの表面に接触されるように配置されたベルト状の中間転写ベルトであり、背面ロール117及び支持ロール118〜119により張力を付与されつつ矢線B方向へ回転する。
【0132】
感光体101Y、101M、101C、101BKに形成された未定着トナー像は、感光体101Y、101M、101C、101BKと上記中間転写ベルト102とが接するそれぞれの一次転写位置で、順次感光体101Y、101M、101C、101BKから中間転写ベルト102の表面に各色のトナー像が重ね合わされて転写される。
【0133】
この一次転写位置において、中間転写ベルト102の裏面側には中間転写ベルト102の不必要な領域へ転写電界が作用するのを抑制するための遮蔽部材121〜124により転写前接触領域への帯電を防止した一次転写装置109〜112としてコロナ放電器が配設されており、この帯電装置109〜112にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体101Y、101M、101C、101BK上の未定着トナー像は中間転写ベルト102外周面に静電的に転写される。この一次転写装置109〜112は、静電力を利用したものであれば、コロナ放電器に限らず電圧が印加されたロールやブラシなどでもよい。
【0134】
このようにして中間転写ベルト102に一次転写された未定着トナー像は、中間転写ベルト102の回転に伴って記録媒体103の搬送経路に面した二次転写位置へと搬送される。二次転写位置では二次転写ロール120と中間転写ベルト102の裏面側に接している背面ロール117とが中間転写ベルト102を挟んで配設されている。
【0135】
送りロール126によって給紙部113から搬出された記録媒体103は、この二次転写ロール120と中間転写ベルト102との接触部に挿通される。この時、上記二次転写ロール120と背面ロール117との接触部に電圧を印加しており、中間転写ベルト102に保持された未定着トナー像は上記二次転写位置において記録媒体103に転写される。
【0136】
そして、未定着トナー像が転写された記録媒体103は中間転写ベルト102から剥がされ、搬送ベルト115によって加熱ロール127と加圧ロール128とが対向して設けられた定着装置の加熱ロール127と加圧ロール128との接触部に送り込まれて未定着トナー像の定着処理がなされる。このとき、二次転写工程と定着工程とを同時に行う転写同時定着工程の装置構成とすることも可能である。
【0137】
中間転写ベルト102は、クリーニング装置116が備えられている。このクリーニング装置116は中間転写ベルト102と接離自在に配設されており、二次転写される迄、中間転写ベルト102から離間している。
【0138】
図7は、他の本実施形態の画像形成装置を示す概略構成図である。本画像形成装置は、記録媒体搬送部材(記録媒体搬送ベルト)として本実施形態に係る無端ベルトを適用した形態である。
【0139】
図7に示す画像形成装置200は、感光体、帯電装置、現像装置および感光体清掃部材を備えた画像形成ユニット200Y、200M、200C、200Bkと、記録媒体搬送転写ベルト206と、転写ロール207Y、207M、207C、207Bkと、記録媒体搬送ロール208と、定着装置209とを備えている。
【0140】
画像形成ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、矢印A方向(時計回り方向)に回転する像保持体である感光体201Y、201M、201C、201Bkが備えられている。感光体201Y、201M、201C、201Bkの周囲には、帯電装置202Y、202M、202C、202Bkと、露光装置203Y、203M、203C、203Bkと、各色現像装置(イエロー現像装置204Y、マゼンタ現像装置204M、シアン現像装置204C、ブラック現像装置204Bk)と、感光体クリーニング装置205Y、205M、205C、205Bkとがそれぞれ配置されている。
【0141】
画像形成ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、記録媒体搬送転写ベルト206に対して4つ並列に、画像形成ユニット200Y、200M、200C、200Bkの順に配置されているが、画像形成ユニット200Bk、200Y、200C、200Mの順等、画像形成方法に合わせて順序を設定する。
【0142】
記録媒体搬送転写ベルト206は、支持ロール210、211、212、213によって、矢印B方向(反時計回り方向)に感光体201Y、201M、201C、201Bkと同じ周速度をもって回転可能になっており、支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体201Y、201M、201C、201Bkとそれぞれ接するように配置されている。記録媒体搬送転写ベルト206は、クリーニング装置214が備えられている。
【0143】
転写ロール207Y、207M、207C、207Bkは、記録媒体搬送転写ベルト206の内側であって、記録媒体搬送転写ベルト206と感光体201Y、201M、201C、201Bkとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体201Y、201M、201C、201Bkと、記録媒体搬送転写ベルト206を介してトナー画像を記録媒体Pに転写する転写領域を形成している。
【0144】
定着装置209は、記録媒体搬送転写ベルト206と感光体201Y、201M、201C、201Bkとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送できるように配置されている。
【0145】
記録媒体搬送ロール208により、記録媒体Pは記録媒体搬送転写ベルト206に搬送される。
【0146】
画像形成ユニット200Yにおいては、感光体201Yを回転駆動させる。これと連動して帯電装置202Yが駆動し、感光体201Yの表面を所定の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体201Yは、次に、露光装置203Yによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0147】
続いて該静電潜像は、イエロー現像装置204Yによって現像される。すると、感光体201Yの表面にトナー画像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよいが、ここでは二成分系トナーである。
【0148】
このトナー画像は、感光体201Yと記録媒体搬送転写ベルト206との転写領域を通過すると同じに、記録媒体Pが静電的に記録媒体搬送転写ベルト206に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207Yから印加される転写バイアスにより形成される電界により、記録媒体Pの外周面に順次、転写される。
【0149】
この後、感光体201Y上に残存するトナーは、感光体クリーニング装置205Yによって清掃・除去される。そして、感光体201Yは、次の転写サイクルに供される。
【0150】
以上の転写サイクルは、画像形成ユニット200M、200C、200Bkでも同様に行われる。
【0151】
転写ロール207Y、207M、207C、207Bkによってトナー画像を転写された記録媒体Pは、さらに定着装置209に搬送され、定着が行われる。以上により記録媒体上に所望の画像が形成される。
【0152】
ここで、記録媒体としては、通常は、紙製の記録媒体(いわゆる用紙)や、プラスチックフィルムで構成された記録媒体(いわゆるOHPシート)などの比較的柔軟性の高い材料で構成されたシート状の部材が用いられるが、比較的剛性の高い材料で構成された板状の部材(例えば、厚みのあるプラスチック製のカードなど)も記録媒体として利用してもよい。
【0153】
なお、本実施形態に係る画像形成装置では、電子写真方式の画像形成装置について説明したが、これに限られず、電子写真方式以外の公知の画像形成装置(例えば、用紙搬送用の無端ベルトを備えたインクジェット記録装置など)であってもよい。
【実施例】
【0154】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0155】
[ポリアミック酸樹脂の合成(その組成物(PAA−1)の調製)]
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中で、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じながら、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略する場合もある)1954.0gを注入した。液温度を60℃まで加熱した後に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200.2g(1.0モル)を添加して溶解させた。溶解の確認後、溶液温度を60℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物288.3g(0.98モル)を添加して、攪拌・溶解した。テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、60℃に保持しながら、攪拌を続けて、ポリアミック酸樹脂の重合反応を行った。24時間反応を行い、固形分濃度20質量%のアミノ基を分子両末端とするポリアミック酸樹脂組成物(PAA−1)を得た。
【0156】
[ポリアミック酸樹脂の合成(その組成物(PAA−2)の調製)]
攪拌棒、温度計、滴下ロートを取り付けたフラスコ中で、五酸化リンによって乾燥した窒素ガスを通じながら、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略する場合も有る)1961.6gを注入した。液温度を60℃まで加熱した後に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル196.2g(0.98モル)を添加して溶解させた。溶解の確認後、溶液温度を60℃に保ちながら、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294.2g(1.0モル)を添加して、攪拌・溶解した。テトラカルボン酸二無水物の溶解を確認後、さらに、60℃に保持しながら、攪拌を続けて、ポリアミック酸樹脂の重合反応を行った。24時間反応を行い、固形分濃度20質量%のジカルボン酸無水物基を分子両末端とするポリアミック酸樹脂組成物(PAA−2)を得た。
【0157】
[調整例1](CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸組成物(A−1)の調製
ポリアミック酸組成物(PAA−1)500g中に、非イオン系高分子としてポリビニル−2−ピロリドン(BASFジャパン社株式会社製、Luvitec(R)K17:以下「PVP」と略する場合もある)0.5gを添加・溶解させた。乾燥した導電材料としての酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下「CB」と略する場合もある)25.0g、無機系潤滑性粉末として、窒化ホウ素(水島合金鉄株式会社製SHP−3:平均粒径4μm以上7μm以下)10.0gを添加して、ボールミルにて6時間で処理して、カーボンブラック、窒化ホウ素の分散を行い、(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−1)を得た。以下、その組成を示す。
【0158】
−(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−1)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・窒化ホウ素 :10.0g
【0159】
[調整例2](CB・二硫化モリブデン)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−2)の調製
無機系潤滑性粉末を二硫化モリブデン(住鉱潤滑剤(株)製MolyPowderPS:平均粒径0.4μm)に変更した以外は調整例1と同様にして、(CB・二硫化モリブデン)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−2)を得た。以下、その組成を示す。
【0160】
−(CB・二硫化モリブデン)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−2)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・二硫化モリブデン :10.0g
【0161】
[調整例3](CB)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−3)の調製
無機系潤滑性粉末を添加しない以外は調整例1と同様にして、CB分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−3)を得た。以下、その組成を示す。
【0162】
−(CB)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−3)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
【0163】
[調整例4](CB・PTFE)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−4)の調製
無機系潤滑性粉末(窒化ホウ素)の代わりに、PTFE粒子(旭硝子社製PTFE粒子:FluonPTFEルブリカントI73J:平均粒径7μm)に変更した以外は調整例1と同様にして、(CB・PTFE)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−4)を得た。以下、その組成を示す。
【0164】
−(CB・PTFE)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−4)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・PTFE :10.0g
【0165】
[調整例5](CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−5)の調製
アミノ基を分子両末端とするポリアミック酸樹脂組成物(PAA−1)の代わりに、ジカルボン酸無水物基を分子両末端とするポリアミック酸樹脂組成物(PAA−2)に変更した以外は調整例1と同様に処理して、(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−5)を調整した。以下、その組成を示す。
【0166】
−(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−5)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・窒化ホウ素 :10.0g
【0167】
[調整例6](CB・二硫化モリブデン)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−6)の調製
アミノ基を分子両末端とするポリアミック酸樹脂組成物(PAA−1)の代わりに、ジカルボン酸無水物基を分子両末端とするポリアミック酸樹脂組成物(PAA−2)に変更した以外は調整例1と同様に処理して、(CB・二硫化モリブデン)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−6)を調整した。以下、その組成を示す。
【0168】
−(CB・二硫化モリブデン)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−6)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・二硫化モリブデン :10.0g
【0169】
[調整例7] (CB・黒鉛)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−7)の調整
無機系潤滑性粉末を黒鉛(日本黒鉛社製鱗状黒鉛粉末J−CPB(平均粒径5μm))に変更した以外は調整例1と同様にして、(CB・黒鉛)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−7)を得た。以下、その組成を示す。
【0170】
−(CB・黒鉛)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−7)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・黒鉛 :10.0g
【0171】
[調整例8] (CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−8)の調整
無機系潤滑性粉末である窒化ホウ素(水島合金鉄株式会社製SHP−3:平均粒径4μm以上7μm以下)を30.0gに変更した以外は調整例1と同様にして、(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−8)を得た。以下、その組成を示す。
【0172】
−(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−8)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・窒化ホウ素 :30.0g
【0173】
[調整例9] (CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−9)の調整
無機系潤滑性粉末である窒化ホウ素(水島合金鉄株式会社製SHP−3:平均粒径4μm以上7μm以下)を5.0gに変更した以外は調整例1と同様にして、(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−9)を得た。以下、その組成を示す。
【0174】
−(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−9)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・窒化ホウ素 :5.0g
【0175】
[調整例10] (CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−10)の調整
無機系潤滑性粉末である窒化ホウ素(水島合金鉄株式会社製SHP−3:平均粒径4μm以上7μm以下)を40.0gに変更した以外は調整例1と同様にして、(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−10)を得た。以下、その組成を示す。
【0176】
−(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−10)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・窒化ホウ素 :40.0g
【0177】
[調整例11] (CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−11)の調整
無機系潤滑性粉末である窒化ホウ素(水島合金鉄株式会社製SHP−3:平均粒径4μm以上7μm以下)を2.0gに変更した以外は調整例1と同様にして、(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−11)を得た。以下、その組成を示す。
【0178】
−(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−11)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・窒化ホウ素 :2.0g
【0179】
[調整例12] (CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−13)の調整
無機系潤滑性粉末である窒化ホウ素(水島合金鉄株式会社製SHP−3:平均粒径4μm以上7μm以下)を50.0gに変更した以外は調整例1と同様にして、(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−13)を得た。以下、その組成を示す。
【0180】
−(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−12)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・窒化ホウ素 :50.0g
【0181】
[調整例13] (CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−13)の調整
無機系潤滑性粉末である窒化ホウ素(水島合金鉄株式会社製SHP−3:平均粒径4μm以上7μm以下)を1.0gに変更した以外は調整例1と同様にして、(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−13)を得た。以下、その組成を示す。
【0182】
−(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−13)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・窒化ホウ素 :1.0g
【0183】
[調整例14] (CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−14)の調整
無機系潤滑性粉末である窒化ホウ素(水島合金鉄株式会社製SHP−3:平均粒径4μm以上7μm以下)を55.0gに変更した以外は調整例1と同様にして、(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−14)を得た。以下、その組成を示す。
【0184】
−(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−14)の組成−
・ポリアミック酸樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・窒化ホウ素 :55.0g
【0185】
[調整例15] (CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−15)の調整
ポリアミドイミド樹脂として、ポリアミドイミド樹脂がNMP溶剤に溶解したワニス(東洋紡社製バイロマックスHR16−NN)に、NMPを加えて5倍に希釈した後、大過剰量のメタノール中に滴下して、ポリアミドイミド樹脂を析出させた。析出物をG3グラスフィルターにて濾別した後、真空下(〜2mmHg)/40℃で12時間乾燥させたポリアミドイミド樹脂を得た。
このポリアミドイミド樹脂100gをNMP400gに溶解したポリアミドイミド樹脂中に、非イオン系高分子としてポリビニル−2−ピロリドン(BASFジャパン社株式会社製、Luvitec(R)K17)0.5gを添加・溶解させた。乾燥した導電材料としての酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下「CB」と略する場合もある)25.0g、無機系潤滑性粉末として、窒化ホウ素(水島合金鉄株式会社製SHP−3:平均粒径4μm以上7μm以下)15.0gを添加して、ボールミルにて6時間で処理して、カーボンブラック、窒化ホウ素の分散を行い、(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミドイミド樹脂組成物(A−15)を得た。以下、その組成を示す。
【0186】
−(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−15)の組成−
・ポリアミドイミド樹脂:100g
・NMP :400g
・PVP :0.5g
・CB :25.0g
・窒化ホウ素 :15.0g
【0187】
[実施例1]無端ベルト(B−1)の製造:単層
基材層形成用塗布液として(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−1)を、外径366mm、長さ450mmの円筒状SUS製金型表外面に塗布した。なお、この円筒状金型には、表面にフッ素系の離型剤を予め塗布することで、ベルト成形後の剥離性を向上させておいた。
次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、クリーンオーブン中で、300℃、30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温(25℃)で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的の無端ベルト基材(B−1)を得た。
【0188】
[実施例2]無端ベルト(B−2)の製造:単層
基材層形成用塗布液として(CB・二硫化モリブデン)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−2)を用いた以外は、無端ベルト(B−1)と同様にして無端ベルト基材(B−2)を作製した。
【0189】
[実施例3]無端ベルト(B−3)の製造:積層
基材層形成用塗布液としてCB分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−3)を、円筒状SUS製金型表外面に焼成後の膜厚が50μmとなるように塗布した。
次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行い、基材層となる皮膜を形成した。
次に、乾燥処理後、基材層となる皮膜表面に、最外層形成用塗布液として(CB・窒化ホウ素)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−1)を30μm膜厚になるように塗布して、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行い、最外層となる皮膜を形成した。
次に、乾燥処理後、リーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、基材層となる皮膜及び最外層となる皮膜のイミド化反応を進行させた。
その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、積層化された無端ベルト基材(B−3)を作製した。
【0190】
[実施例4]無端ベルト(B−4)の製造:積層
基材層形成用塗布液としてCB分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−3)を、円筒状SUS製金型表外面に焼成後の膜厚が50μmとなるように塗布した。
次に、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行い、基材層となる皮膜を形成した。
次に、乾燥処理後、基材層となる皮膜表面に、最外層形成用塗布液として(CB・二硫化モリブデン)分散ポリアミック酸樹脂組成物(A−2)を30μm膜厚になるように塗布して、金型を回転させながら、温度120℃の条件で、30分間乾燥処理を行い、最外層となる皮膜を形成した。
次に、乾燥処理後、リーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、基材層となる皮膜及び最外層となる皮膜のイミド化反応を進行させた。
その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、積層化された無端ベルト基材(B−4)を作製した。
【0191】
[実施例5]〜[実施例14] 無端ベルト(B−5)〜(B−14)の製造:積層
基材層形成用塗布液および最外層形成用塗布液として、表2〜表3に従った塗布液を用いた以外は、実施例3と同様にして、積層化された無端ベルト(B−5)〜(B−14)を作製した。
【0192】
[比較例1〜4]
基材層形成用塗布液として,表3に従ったポリアミック酸樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、単層無端ベルト基材(B−15)、(B−16)、(B−17)、(B−18)を作製した。
【0193】
[比較例5〜6]
最外層形成用塗布液として、表4に従ったポリアミック酸樹脂組成物を用いた以外は、実施例3と同様にして、積層無端ベルト(B−19)、(B−20)を作製した。
【0194】
[評価]
各例で得られた無端ベルトにつき、以下の評価を行った。結果を表1〜4に示す。
【0195】
(ベルト膜厚)
得られた無端ベルトの作製直後の膜厚について測定した。
無端ベルトの膜厚測定は、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを用い、同一試料ついて5回測定を行い、その平均値をベルト膜厚とした。
【0196】
(耐折性:MIT試験)
得られた無端ベルトから150mm×15mmの試験片を作製した。
JIS−C5016に準じて、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定した。同一試料について10回の測定を行い、その平均値をもって耐折性の評価結果とした。測定データとした。測定機は、東洋精機MIT耐揉疲労試験機MIT−DAを使用した。
【0197】
(表面抵抗率)
得られた無端ベルトの表面抵抗率を該述の方法により測定した。
【0198】
(出力画像の画質・出力後のベルト性状、出力後のベルト膜厚)
富士ゼロックス社製ApeosPort−III C4400改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)に、中間転写ベルトとして得られた無端ベルトを装着し、低温低湿(10℃15%RH)で、Cyan、Magentaの50%ハーフトーンを富士ゼロックス社製C2紙に5000枚出力し、5000枚目の出力画像の画質について濃度ムラ及び斑点欠陥を目視で評価した。なお、各評価基準は以下の通りである。
【0199】
−濃度ムラ−
◎:濃度ムラが確認されない。
○:濃度ムラが僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
×:濃度ムラがはっきりと確認できた。
【0200】
−斑点欠陥
◎:斑点欠陥が確認されない。
○:斑点欠陥が僅かに確認できたが、問題のないレベルである。
×:斑点欠陥がはっきりと確認できた。
【0201】
そして、画像出力後、中間転写ベルトとしての無端ベルトの表面を目視にて観察し、出力後のベルト性状(異物付着、表面故障)について調べた。
また、画像出力後、中間転写ベルトとしての無端ベルトを取り出し、ベルト膜厚をベルト作製直後と同様に測定した。
【0202】
【表1】

【0203】
【表2】

【0204】
【表3】

【0205】
【表4】

上記結果から、本実施例で示した各無端ベルトは、比較例で示した各無端ベルトに比べ、ベルト表面の離型性が維持されていると考えられることから、ベルト表面のクリーニング性が高く、画像出力後の異物付着もなく、長期間にわたって、表面の良好な出力画像の画質が得られていることがわかる。
また、本実施例で示した各無端ベルトは、比較例で示した各無端ベルトに比べ、画像出力後の表面故障もなく、かつ、膜厚変化もないことがわかる。
また、本実施例で示した各無端ベルトは、比較例で示した各無端ベルトに比べ、高い耐久性を有し、駆動に際して繰り返し曲げ・伸び応力のかかる中間転写ベルトとしての機械強度を有することがわかる。
【0206】
一方、比較例4に示した、無機系潤滑性粉末を配合していない単層無端ベルト(B−8)は、ベルト表面にトナー粒子、外添材などが付着・残留しやすいことより、コピー画質が低下する傾向にあった。また、駆動に伴う摩擦摩耗の結果、ベルト膜厚の減少、膜厚ばらつきの増大を引き起こしてしまった。
また、比較例1に示した、フッ素樹脂粒子を配合した単層無端ベルト(B−5)は、機械強度、出力画像の画質には、優れるものの、駆動に伴い膜厚の摩耗劣化が大きく、長期間の使用に耐えるものではなかった。
また、比較例2、3に示した、分子両末端がジカルボン酸二無水物基であるポリイミド樹脂中に無機系潤滑性粉末を分散した単層無端ベルト(B−6)、(B−7)は、無機系潤滑性粉末の分散性が悪いためか、良好な出力画像の画質を得ることができなかった。
また、比較例2、3に示した、分子両末端がジカルボン酸二無水物基であるポリイミド樹脂中に無機系潤滑性粉末を分散した単層無端ベルト(B−6)、(B−7)は、ポリイミド樹脂と無機系潤滑性粉末との親和性が悪いためか、ベルト駆動に伴い、表面摩耗が生じてしまい、異物付着、表面故障が生じ、さらにはベルト膜厚の減少、膜厚ばらつきの増大を引き起こしてしまった。
【符号の説明】
【0207】
10 円筒状成形体(無端ベルト)
11 最外層
12 基材層
12 最内層
100 画像形成装置
101Y、101M、101C、101BK 感光体
102 中間転写ベルト
105〜108 現像器
200 画像形成装置
200Y、200M、200C、200Bk 画像形成ユニット
206 記録媒体搬送転写ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂から選択される少なくも1種のポリイミド系樹脂と、層状構造を持つ無機系潤滑性粉末と、を含んで構成される機能層を有し、
2層以上の積層体で構成され、最外層及び最内層の少なくとも一方として前記機能層を有し、又は前記機能層の単層で構成される円筒状成形体。
【請求項2】
前記円筒状成形体が、2層以上の積層体で構成され、
前記機能層を、最外層として有する請求項1に記載の円筒状成形体。
【請求項3】
前記無機系潤滑性粉末が、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、及び黒鉛から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の円筒状成形体。
【請求項4】
前記無機系潤滑性粉末の含有量が、前記機能層を構成する全樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上50質量部以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の円筒状成形体。
【請求項5】
前記円筒状成形体が、2層以上の積層体で構成され、
前記機能層と接する層が、ポリイミド系樹脂を含んで構成された層である請求項1〜4のいずれか1項に記載の円筒状成形体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の円筒状成形体と、該円筒状成形体を張力がかかった状態で掛け渡す複数のロールと、を備え、画像形成装置に対して脱着される円筒状成形体ユニット。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の円筒状成形体で構成された画像形成装置用部材。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置用部材を備える画像形成装置。
【請求項9】
分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂、及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂から選択される少なくも1種のポリイミド系樹脂の前駆体と、
層状構造を持つ無機系潤滑性粉末と、
前記ポリイミド系樹脂の前駆体を溶解する溶媒と、
を含む樹脂組成物。
【請求項10】
前記無機系潤滑性粉末が、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、及び黒鉛から選択される少なくとも1種である請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記無機系潤滑性粉末の含有量が、全樹脂成分100質量部に対して、2質量部以上50質量部以下である請求項9又は10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、被塗布物上に塗布して塗膜を形成した後、前記塗膜に対して加熱処理を施して、分子両末端にアミノ基を有するポリイミド樹脂及び分子両末端にアミノ基を有するポリアミドイミド樹脂から選択される少なくも1種のポリイミド系樹脂と層状構造を持つ無機系潤滑性粉末とを含んで構成される機能層を形成する工程を有する円筒状成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−159803(P2012−159803A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21173(P2011−21173)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】