説明

再狭窄の予防のための薬剤を同定するための方法およびそれらの使用

細胞増殖、血栓症、組織モデリング、および炎症に対する試験薬剤の効果を測定するための一連のアッセイ法において試験薬剤を分析することによって、再狭窄を阻害または予防する薬剤を同定する。本発明の組成物を使用して、再狭窄の治療を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、再狭窄を予防する薬剤を同定するための方法、および再狭窄の治療または予防における、本明細書中において規定されるコルヒチンアナログを非限定的に含む、スクリーンにおいて同定された1つまたは複数の薬剤の使用を提供し、従って、生物学、分子生物学、化学、医薬化学、薬理学、および医学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
関連する開示の説明
バルーン血管形成術におけるステントの成功は、血栓性合併症および脈管壁の再狭窄によって制限され、これらは両方とも、通常の損傷および修復プロセスの結果として生じる。抗血小板薬および処置的な抗凝固は、ステント内血栓症の発生率を低下させ、一方、薬剤溶出ステントは、再狭窄の発生率を顕著に低下させた。薬剤溶出ステントにおいて使用される現在認可されている薬物(パクリタキセル、ラパマイシン)は、非常に抗増殖性であり、効果的に平滑筋増殖を阻害しかつ新生内膜過形成を遮断する。しかし、抗増殖剤は、損傷した脈管の完全な治癒を遅延または阻止し得る。従って、傷ついた脈管の永続化によって、晩期喪失(新生内膜肥厚に起因する脈管径の漸進的な喪失)および晩期血栓症(late thrombosis)が生じ得り、追加の標的病巣の脈管再生の頻度が増加し、かつそれゆえこのような薬物がコーティングされたステントの効果を低下させる。
【0003】
再狭窄および晩期血栓症の原因となる生物学的プロセスとしては、血小板および炎症細胞の漸増および活性化、細胞増殖および移動、脈管リモデリング、および内皮細胞機能の低下を伴う、損なわれた再内皮化(re-endothelialization)が挙げられる。薬剤溶出ステントにおいて首尾よく使用されてきた薬物(例えば、ラパマイシン、パクリタキセル、エベロリムス)は強力な抗増殖性剤であるので、増殖の阻害(例えば、平滑筋細胞、炎症細胞)が重要なプロセスである。
【0004】
薬剤溶出ステントにおいて試験された薬物は、以下のいくつかのカテゴリー由来の薬剤を含む:抗増殖性(パクリタキセル、アクチノマイシンD、17β-エストラジオール、メシル酸イマチニブ)、抗増殖性/免疫抑制性(ラパマイシン、FK-506、ミコフェノール酸)、抗炎症性(メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、トラニラスト)、抗血栓性(ヒルジン、イロプロスト)、およびその他(ロシグリタゾン)(Abizaid, 2004, D'Amato, 1994, Serruys, 2004, Sousa, 2003a, 2003b)。パクリタキセル、ラパマイシンおよびエベロリムスは、有効であると示され、臨床使用に認可されたが、同じクラス由来のいくつかを含む他の化合物は、失敗に終わった(例えば、アクチノマイシンD、ミコフェノール酸)。漸増された白血球および活性化された細胞型によって産生された炎症メディエーターおよび増殖因子は、脈管細胞機能を調節し、かつ回復および修復プロセスに影響を与え得るが、炎症プロセスのみを(例えば、グルココルチコイドを用いて)遮断することは有効ではなかった。
【0005】
タキソールまたはラパマイシンがコーティングされている、認可された薬剤溶出ステントの主な健康上のリスクの1つは、晩期血栓症であり、これは、ステント留置術の数ヶ月から数年後に、死を含む重篤な合併症へ至り得る。ステントに関連する血栓症を予防するための現在の処置は、経口抗血栓剤、例えば、プラビックス(Plavix)の使用であり、これらは、副作用に起因して、または抗血栓剤が禁忌される手術などの他の医療処置に起因して、長期間は維持され得ない。内皮細胞は、血栓症および線維素溶解を制御することにおいて重要な役割を果たし、かつ、非凝固促進性の表面を提供するので、晩期血栓症についての主な原因は、ステントが挿入された部位における不完全な再内皮化と考えられている。残念なことに、インビボでのステントの機能に影響を与える複雑な生物学的プロセスに起因して、傷ついた脈管の完全な治癒を低下させることなしに、再狭窄を阻害することにおいて最も有効である薬剤の効率的な同定および使用のための方法は、現在のところ、開発されていない。
【0006】
炎症および再狭窄に関連する生物学を含む、ヒト疾患の複雑な生物学をインビトロでモデル化し、かつ、複雑な生物学的活性を誘発する薬物のスクリーニングおよび開発のために使用され得る、ヒト初代細胞に基づくアッセイシステム(BioMAP(登録商標)システム)が、開発された。米国特許第6,656,695号および同第6,763,307号、ならびにPCT公開公報第01/67103号、同第03/23753号、同第04/22711号、同第04/63088号、同第04/94609号、同第05/23987号、同第04/94992号、同第05/93561号を参照のこと。これらの各々は、参照により本明細書中に組み込まれる。BioMAPシステムは、抗増殖剤、免疫阻害剤、抗炎症剤などを含む、広範囲の機構的に多様な化合物種の活性を検出および識別することができる。例えば、Kunkel et al. (2004) Assay Drug Dev Technol. 2:431-41;およびKunkel et al. (2004). FASEB J. 18:1279-81を参照のこと。
【0007】
BioMAPシステムにおける、実験化合物およびヒトまたは獣医学用途について認可された薬物を含む、化合物の活性プロファイリングは、化合物の作用機序の理解を高め、かつこれらの化合物がBioMAPシステムにおいて誘導する生物学的活性の好ましい組み合わせに基づいて、特定の治療用途に好適である化合物の同定を可能にする。
【0008】
再狭窄を予防および治療するためのより良い薬剤および薬剤の組み合わせを用いる、インビボでの使用が意図されるステントおよび他のデバイスについての要求が存在している。本発明はこれらの要求を満たす。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、再狭窄の予防に有用な薬剤を同定するための方法を提供する。本方法において、候補薬剤が抗再狭窄剤の所望の特徴の組み合わせを有するかどうかを同定するために、薬剤を複数の異なる細胞型を使用する一団のアッセイ法において試験する。所望の特徴は、(1)平滑筋増殖を阻害すること、(2)内皮細胞増殖に対して、効果がほとんどないかまたは全くないこと、(3)創傷治癒の促進を伴うマトリクスリモデリングを阻害すること、(3)非血栓促進性、および(4)選択された抗炎症活性を含む。
【0010】
抗再狭窄剤の所望の特徴の全てを有する薬剤はほとんどないため、本発明はまた、薬剤が単独で作用するよりも効果的に抗再狭窄剤の所望の特徴を共同で提供する対の薬剤、および2つまたはそれ以上の薬剤の組み合わせを同定するための方法を提供する。本発明のこの方法において、薬剤の組み合わせがアッセイ法において一緒に試験され、所望の特徴のセットを共同で提供する試験された組み合わせのサブセットが同定される。
【0011】
本発明はまた、インビボ脈管用途、例えば、脈管移植、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)における使用などに意図されるステントまたは他のデバイスを提供し、該デバイスは、所望の抗再狭窄的な特徴を有するとして本明細書中においてまたは本発明の方法によって同定された1つまたは複数の薬剤を含有するように修飾されている。一態様において、本発明は、インビボでの使用が意図されるステントまたは他のデバイスを提供し、ここで該ステントまたはデバイスは、8-アザグアニン、アモジアキンジヒドロクロリド二水和物、アトバコン、ベツリン、クロラムブシル、シクロピロックスエタノールアミン、シス-(Z)-フルペンチキソールジヒドロクロリド、クロフィリウムトシラート、メシル酸デフェロキサミン、メシル酸ドキサゾシン、エスクレチン、モノベンゾン、ニフェジピン、プリマキンジホスファート、セクリニン、シロシンゴピン、テルコナゾール、および本明細書中に規定されるコルヒチンアナログからなる群より選択される1つまたは複数の薬物を含む。ここで薬剤または薬物の好ましいセットは、シス-(Z)-フルペンチキソールジヒドロクロリド、クロフィリウムトシラート、モノベンゾン、ニフェジピン、プリマキンジホスファート、セクリニン、および本明細書中に規定されるコルヒチンアナログからなる群より選択される。本発明に従うステントまたはデバイスは、インビボに配置した際の薬物の溶出に好適なコーティングまたは任意の他の担体製剤として、前記1つまたは複数の薬物を含んでもよい。
【0012】
本発明のある態様において、脈管用途、例えば、脈管移植、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)における使用などのためのステントまたは他のデバイスが提供され、ここで該ステントまたは他のデバイスは、本明細書中に規定されるコルヒチンアナログを含む。ここでこのようなアナログは、非限定的に、下記においてさらに記載されるトリメチルコルヒチン酸およびその誘導体を含む。
【0013】
別の態様において、本発明は、インビボ用途、脈管用途、例えば、脈管移植、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)における使用などに意図されるステントまたは他のデバイスを提供し、このデバイスは、以下の群:8-アザグアニン、アモジアキンジヒドロクロリド二水和物、アトバコン、ベツリン、クロラムブシル、シクロピロックスエタノールアミン、シス-(Z)-フルペンチキソールジヒドロクロリド、クロフィリウムトシラート、メシル酸デフェロキサミン、メシル酸ドキサゾシン、エスクレチン、モノベンゾン、ニフェジピン、プリマキンジホスファート、セクリニン、シロシンゴピン、テルコナゾール、および本明細書中に規定されるコルヒチンアナログより選択される1つまたは複数の薬物と、第2の生物学的に活性な薬剤とを含む。このような薬剤は、非限定的に、抗炎症剤、例えば、グルココルチコイド受容体アゴニスト(例えば、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド)、抗増殖または増殖モディファイアー(modifier)(例えば、エストラジオール)、脂質代謝調節薬(例えば、スタチン)、インスリン増感剤(例えば、ロシグリタゾン)、抗血栓薬などを含んでもよい。
【0014】
本発明はまた、抗再狭窄剤の脈管投与のための、インビボ脈管用途、例えば、脈管移植、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)における使用などに意図されるステントまたは他のデバイスを使用する再狭窄の治療または予防のための方法および組成物を提供し、ここで該デバイスはコルヒチンアナログを含有するように修飾されており、このアナログは、非限定的に、トリメチルコルヒチン酸ならびにそのアナログおよび誘導体を含む。本発明に従うステントまたはデバイスは、インビボに配置した際の薬物の溶出に好適なコーティングまたは任意の他の担体製剤として、前記1つまたは複数の薬物を含んでもよい。本発明の方法は、投与部位の近位の再狭窄を、治療、遅延または予防するのに有効である治療的有効量のコルヒチンアナログを含む薬学的組成物を対象へ脈管投与することを含む。
【0015】
定義
本発明の実施は、特に記載されない限り、当該分野の技術内にある、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を使用する。このような技術は、文献、例えば、"Molecular Cloning: A Laboratory Manual", second edition (Sambrook et al., 1989);"Oligonucleotide Synthesis" (M. J. Gait, ed., 1984);"Animal Cell Culture" (R. I. Freshney, ed., 1987);"Methods in Enzymology" (Academic Press, Inc.);"Handbook of Experimental Immunology" (D. M. Weir & C. C. Blackwell, eds.);"Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells" (J. M. Miller & M. P. Calos, eds., 1987);"Current Protocols in Molecular Biology" (F. M. Ausubel et al., eds., 1987);"PCR: The Polymerase Chain Reaction", (Mullis et al., eds., 1994);および"Current Protocols in Immunology" (J. E. Coligan et al., eds., 1991)において十分に説明されている。
【0016】
本発明の化合物、またはそれらの薬学的に許容される塩は、1つまたは複数の不斉中心を含んでもよく、(R)-もしくは(S)-として、またはアミノ酸について(D)-もしくは(L)-として、絶対立体化学の点で規定され得る、エナンチオマー、ジアステレオマー、および他の立体異性体を生じさせる場合がある。本発明は、全てのこのような可能性のある異性体、ならびにそれらのラセミ形態および光学的に純粋な形態を含むように意図される。光学的に活性な(+)および(-)、(R)-および(S)-、または(D)-および(L)-異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製されてもよいか、または当該分野において公知の従来の技術を使用して、例えばクロマトグラフィーによって、分割されてもよい。本明細書中に記載の化合物がオレフィン二重結合または他の幾何学的非対称の中心を含む場合、かつ、特に記載されない限り、該化合物は、EおよびZ幾何異性体の両方を含むように意図される。同様に、全ての互変異性体も、含まれるように意図される。
【0017】
全体にわたって使用される場合、「調節」とは、示される現象の増加または減少を指すように意図される(例えば、生物学的活性の調節は、生物学的活性の増加または生物学的活性の減少を指す)。
【0018】
本明細書中において使用される場合、用語「治療」、「治療すること」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。前記効果は、疾患もしくは状態、またはその症状を完全にまたは部分的に予防する点で、予防的であってもよく、および/または、状態および/または該状態に起因する副作用についての部分的または完全な治癒の点で、治療的であってもよい。「治療」とは、本明細書中において使用される場合、哺乳動物、特にヒトにおける、疾患または状態のいかなる治療をも包含し、かつ以下を含む:(a)状態に罹患しやすいかもしれないがそれを有するとは診断されていない対象において状態が生じるのを予防すること;(b)状態の発達を阻害すること;および(c)状態を緩和すること、即ち、その後退を引き起こすこと。
【0019】
「有効量」とは、有利なまたは所望の結果をもたらすに十分な量である。有効量は、1つまたは複数の投与で投与され得る。有効量は、治療の意図される期間の間、脈管腔、脈管壁、または他の部位内で、その既知の効能に従って、特定の生物学的薬剤の所望の平均の局所濃度を提供するために必要とされる量と一致する。用量は、当該分野において公知であるように、予備的な動物実験を行い、用量反応曲線を作成することによって、当業者によって決定されてもよい。用量反応曲線における最大濃度は、当該分野において公知であるように、溶液中の化合物の溶解性および動物モデルに対する毒性によって、決定される。
【0020】
任意の適切かつ有効な量が、個々の「治療」または「用量」を構成するために、1つまたは複数の移植片上に支持され得る。
【0021】
有効量は、さらに、治療の意図される期間の間、ステントまたは他のデバイスの挿入の領域内で、その既知の効能に従って、特定の生物学的薬剤の所望の平均局所濃度を提供するために必要とされる量と一致する。身体的活動に起因する循環変動または排尿に起因する損失について、相応な許容量が作製され得、例えば、10〜90%の損失許容量(loss allowance)が、個々の患者およびそれらのルーチンに依存して作製される可能性がある。
【0022】
本明細書中において交換可能に使用される、用語「個体」、「対象」、「ホスト」、および「患者」とは、ヒト、マウス、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、哺乳動物の家畜、哺乳動物の競技動物、および哺乳動物ペットを含むが、これらに限定されない、哺乳動物を指す。ヒト対象が、特に関心対象である。
【0023】
本明細書中において使用される場合、用語「決定すること」、「評価すること」、「分析すること」、「測定すること」および「検出すること」とは、量的決定および質的決定の両方を指し、従って、用語「決定すること」は、本明細書中において、「分析すること」、「測定すること」などと交換可能に使用される。量的決定が意図される場合、「量を決定すること」という句などが使用される。質的決定または量的決定のいずれかが意図される場合、「増殖のレベルを決定すること」という句または「増殖を検出すること」という句が使用される。
【0024】
本発明をさらに記載する前に、本発明は、記載される特定の態様に限定されず、従って、当然ながら変化し得ることが理解される。さらに、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書中において使用される専門用語は、特定の態様のみを記載する目的のためであり、限定的であるようには意図されないことが理解される。
【0025】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限値と下限値との間の、文脈において明記されない限り下限値の単位の10分の1までの介在する各値、およびその記載の範囲内の任意の他に記載されるかまたは介在する値が、本発明内に包含されることが理解される。これらのより狭い範囲の上限値および下限値は独立して、これらのより狭い範囲内に含まれてもよく、また、記載の範囲内の任意の具体的に排除される限界値に従って、本発明内に含まれる。記載の範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値のいずれかまたは両方を除く範囲もまた、本発明に含まれる。
【0026】
特に規定されない限り、本明細書中において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書中に記載のものと同様または均等である任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料をここで記載している。以下に記載の全ての刊行物が、参照により本明細書中に組み込まれる。特に記載されない限り、本明細書中において使用される技術は、当業者に周知の標準的な方法である。
【0027】
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈において明記されない限り、複数の指示物を含むことが注意されなければならない。従って、例えば、「バイオマーカー(a biomarker)」への言及は複数のこのようなバイオマーカーを含み、「サンプル(the sample)」への言及は1つまたは複数のサンプルおよび当業者に公知のその均等物への言及などを含む。特許請求の範囲は、任意の要素を排除するように立案されてもよいことが、さらに注意される。従って、この記載は、請求項要素の記載に関連して「だけ」、「のみ」などの排他的な用語の使用、または「消極的な」限定の使用についての先行詞として役立つように意図される。さらに、開示の任意の積極的に記載された要素は、特許請求の範囲からその要素を排除するための消極的な限定のための基礎を提供する。
【0028】
本明細書中において引用される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が具体的かつ個々に記載され、参照により組み込まれるかのように参照により組み込まれ、かつ参照により組み込まれ、それに関連して刊行物が引用される方法および/または材料を開示および記載する。刊行物の引用は、出願日前のその開示についてであり、本発明が先願発明によってこのような刊行物に先行するように権利を与えられ得られないことの承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、独立して確認される必要がある実際の公開日とは異なる場合がある。
【0029】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかし、本発明の精神および範囲内の種々の変形および修飾がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるため、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい態様を示すが、例としてのみ与えられることが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は、再狭窄を阻害し、創傷治癒を促進し、かつ血栓事象を予防する、薬剤を溶出する冠状動脈ステントおよび他のデバイスでの使用のための、例えば、経皮的冠動脈インターベンションのための、薬物の同定方法を提供する。ステント留置術の長期間の成功は、一般的に、(1)ステント挿入によって誘導された脈管への損傷に起因する初期の脈管平滑筋過形成の予防、(2)脈管形態および機能を正常化するための再内皮化の促進、および(3)損傷治癒を生じさせるための局所炎症の阻害を含む。ステント留置術の合併症の多くは(例えば、いったん抗血液凝固剤(blood thinner)が患者から除去された後の、標的病巣の脈管再生および血栓事象の要求)、不完全な損傷治癒および再内皮化に主に起因する。
【0031】
ステントによって送達される従来の薬物、例えば、ラパマイシン、パクリタキセルおよびエベロリムスは、他の関連する生物学的事象を顧みず、急激な新生内膜過形成に関与する増殖事象を阻害するそれらの能力のため選択されてきた。これらの薬物がコーティングされたステントで治療された患者は、創傷治癒が不完全となる場合があり、かつ、晩期再狭窄および血栓事象の危険性がある。従って、より良好な抗再狭窄剤についての必要性が存在する。
【0032】
本発明は、それらの薬物を同定するための方法を提供し、新規の薬物および薬物組み合わせがコーティングされたステントを提供する。本発明の方法およびステントは、(1)平滑筋細胞増殖を阻害すること、(2)内皮細胞増殖に対して効果がほとんどないかまたは全くないこと、(3)創傷治癒の促進を伴うマトリクスリモデリングを阻害すること、(4)血栓症を促進しないこと、(5)脈管弛緩を促進すること、および(6)選択された抗炎症活性として規定される、好ましい組み合わせの特徴(または、重要な生物学的活性)を示す薬物の同定に基づく。所望の特徴の記載、およびこれらの特徴を測定するために使用される対応するマーカー(または、読み出しパラメータ(readout parameter))を表1に列挙する。
【0033】
(表1)抗再狭窄剤の所望の生物学的活性

増殖因子が介在する条件および炎症条件の両方の下での増殖。EC、内皮細胞(冠状動脈または臍静脈のいずれか);SMC、平滑筋細胞(冠状動脈または臍動脈のいずれか)、単球、末梢血単球;HDF、皮膚線維芽細胞。
【0034】
関連する生物学的プロセス(表1に列挙される読み出しパラメータの測定を含む、平滑筋細胞の過形成、組織リモデリング、炎症など)をモデル化し、かつスクリーニングのために使用されるBioMAPシステムを表2に列挙する。表1に列挙される細胞の各々が、以下に記載の1つまたは複数のシステムにおいて使用され得る。例えば、平滑筋細胞は、CASM3C;CASMNo;SM3CおよびSMNoシステムにおいて使用される。このようなBioMapシステムは、一般的に、初代ヒト細胞に基づくアッセイ法である。化合物は、1つまたは複数のこのようなBioMapシステムにおいて、通常、少なくとも約2のこのようなシステムにおいてスクリーニングされ、かつ少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、および表2に記載のアッセイ法全てまでにおいて、スクリーニングされてもよい。
【0035】
本発明のある態様において、化合物は、平滑筋細胞を使用して少なくとも1つのシステムにおいて、および内皮細胞を使用して少なくとも1つのシステムにおいて、スクリーニングされる。ある態様において、化合物は、炎症に関連する少なくとも1つのシステム、例えば、システムLPS、3C、4HおよびHSM3Cにおいて、さらにスクリーニングされ、これらのシステムには、炎症細胞(単球、T細胞、内皮細胞)およびメディエーター(TNF-α、IFN-γなど)が含まれる。他の形態において、化合物は、組織リモデリングに関連する少なくとも1つのシステム、例えば、システムHDF3CT、HDFTおよびCASM3Cにおいて、さらにスクリーニングされ、これらのシステムには、組織リモデリングに関与する細胞型(線維芽細胞、平滑筋細胞)および因子(例えば、増殖因子)が含まれる。
【0036】
これらのアッセイ法を、選択した読み出しパラメータのそれらの調節に従って採点する。調節される表1に記載の各読み出しパラメータについて陽性(スコア1)または陰性(スコア0)のスコアを化合物に付ける。対照化合物、通常、再狭窄の阻害について認可された治療剤、例えば、ラパマイシンまたはパクリタキセルよりも高いスコアを得る化合物を、認可された治療剤と比べての改善と考え、更なる使用について選択してもよい。
【0037】
(表2)所望の特徴を有する抗再狭窄剤についてスクリーニングするために使用されるBioMAPシステム

SRB、スルホローダミンB
【0038】
各パラメータの相対的重要性は、特定の用途について最も関心対象のパラメータを選択するためにスクリーナーによって重みづけされてもよい。好ましい薬物は、所望の様式で読み出しパラメータの全てを調節するが、望ましい生物活性化合物はまた、所望の様式でパラメータの1個または数個しか調節しない場合もある。いずれかの薬物が単独で誘導し得るよりもより多くの所望のパラメータ変化が得られるように、2つまたはそれ以上の薬物を組み合わせることができる。再狭窄について、好ましい化合物は、高い総合スコアを有し、かつ、内皮細胞増殖に影響を与えることなく平滑筋細胞増殖を阻害するものである。
【0039】
1000を超える生理学的に活性な化合物のライブラリを、表1に列挙される活性について、表2に列挙されるアッセイ法において、スクリーニングした。ステント留置術後に生じる新生内膜過形成の阻害の重要性のために、内皮細胞増殖と比べて平滑筋細胞増殖を選択的に阻害する化合物を同定した。得られた化合物を、表2に列挙される活性に従って評価および採点し、存在する各活性について値1を与えた(表3)。パクリタキセルおよびラパマイシンの総合スコアを、比較のために示す。従って、パクリタキセルおよびラパマイシンに等しいかまたはこれらよりも高い総合スコアを有し、しかし同時に、平滑筋増殖および内皮細胞増殖へ異なって影響を与える化合物を、再狭窄の治療についての現存の薬物に比べての改善と考える。BioMAPスクリーンにおいて高いスコアを有する化合物の中でも(表4)、エスクレチンは、ラットにおけるバルーン脈管損傷後の新生内膜過形成を阻害すると報告され(Panら, 2003)、従って、本明細書中に記載されるスクリーニング方法の妥当性を独立して確認している。
【0040】
(表3)選択した薬物のパラメータスコア

【0041】
(表4)所望のパラメータ調節についての総スコア

【0042】
従って、一態様において、本発明は、インビボでの使用が意図されるステントまたは他のデバイスを提供し、ここで該ステントまたはデバイスは、8-アザグアニン、アモジアキンジヒドロクロリド二水和物、アトバコン、ベツリン、クロラムブシル、シクロピロックスエタノールアミン、シス-(Z)-フルペンチキソールジヒドロクロリド、クロフィリウムトシラート、メシル酸デフェロキサミン、メシル酸ドキサゾシン、エスクレチン、モノベンゾン、ニフェジピン、プリマキンジホスファート、セクリニン、シロシンゴピン、テルコナゾール、およびコルヒチンアナログ、例えば、トリメチルコルヒチン酸からなる群より選択される1つまたは複数の薬物を含む。ここで薬剤または薬物の好ましいセットは、シス-(Z)-フルペンチキソールジヒドロクロリド、クロフィリウムトシラート、モノベンゾン、ニフェジピン、プリマキンジホスファート、セクリニン、およびコルヒチンアナログ、例えば、トリメチルコルヒチン酸からなる群より選択され、ここで薬剤の最も好ましいセットは、トリメチルコルヒチン酸および以下にさらに説明されるその誘導体を含む。
【0043】
別の態様において、本発明は、インビボでの使用が意図されるステントまたは他のデバイスを提供し、ここで該ステントまたはデバイスは、以下の群:8-アザグアニン、アモジアキンジヒドロクロリド二水和物、アトバコン、ベツリン、クロラムブシル、シクロピロックスエタノールアミン、シス-(Z)-フルペンチキソールジヒドロクロリド、クロフィリウムトシラート、メシル酸デフェロキサミン、メシル酸ドキサゾシン、エスクレチン、モノベンゾン、ニフェジピン、プリマキンジホスファート、セクリニン、シロシンゴピン、テルコナゾール、およびコルヒチンアナログ、例えば、トリメチルコルヒチン酸より選択される薬物の1つと、第2の生物学的に活性な薬剤とを含む。このような生物学的に活性な薬剤には、非限定的に、臨床的に証明された抗炎症剤、例えば、グルココルチコイド受容体アゴニスト(例えば、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド)、治癒促進薬(pro-healing drug)(例えば、エストラジオール)、脂質代謝調節薬(例えば、スタチン)、抗血栓薬などが含まれてもよい。
【0044】
第2の薬剤として関心対象の化合物には、新生物組織についての化学療法剤、虚血または炎症組織についての抗炎症剤、内分泌組織についてのホルモンまたはホルモンアンタゴニスト、心臓血管または他の組織についてのイオンチャネルモディファイアー、および中枢神経についての神経活性剤が含まれてもよい。本発明に好適な薬剤の例は、The Pharmacological Basis of Therapeutics, Goodman and Gilman, McGraw-Hill, New York, New York, (1993)において、以下のセクション:Drugs Acting at Synaptic and Neuroeffector Junctional Sites;Drugs Acting on the Central Nervous System;Autacoids: Drug Therapy of Inflammation;Water, Salts and Ions;Drugs Affecting Renal Function and Electrolyte Metabolism;Cardiovascular Drugs;Drugs Affecting Gastrointestinal Function;Drugs Affecting Uterine Motility;Chemotherapy of Parasitic Infections;Chemotherapy of Microbial Diseases;Chemotherapy of Neoplastic Diseases;Drugs Used for Immunosuppression;Drugs Acting on Blood-Forming organs;Hormones and Hormone Antagonists;Vitamins, Dermatology;およびToxicologyに記載され、全てが参照により本明細書中に組み込まれる。薬剤は、シンプルな薬物、ペプチド、ペプチドフラグメント、DNA、RNA、リボザイム、または核酸およびペプチドもしくはペプチドフラグメントの作製されたハイブリッド、または各々の誘導体の形態であってもよい。
【0045】
関心対象の具体的な薬剤としては、ステント内再狭窄を阻害する治療剤が挙げられる。このような薬剤としては、ラパマイシン;抗血小板薬;GPIIb/IIIa阻害剤、例えば、RheoPro;DNA;リボザイム;RNA;抗血小板薬、例えば、アスピリンおよびジピリダモール;抗凝固薬、例えば、ヘパリン、クマジン、プロタミン、およびヒルジン;細胞有糸分裂(複製)を妨げるように直接作用する抗有糸分裂薬(細胞傷害剤)、および複製を妨げる代謝拮抗物質、例えば、メトトレキサート、コルヒチン、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、アドリアマイシン、ムタマイシンなどが含まれてもよい。抗炎症剤、例えば、グルココルチコイド、例えば、デキサメタゾン、ベタメタゾンなどもまた、血管形成術の間の管腔組織に対する損傷によって引き起こされた炎症を局所的に抑制するに有用であり得る。
【0046】
アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE-I)が、抗高血圧および腎臓保護作用のために使用される。ACE阻害剤としては、カプトプリル、ベナゼプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、キナプリル、ラミプリル、イミダプリル、ペリンドプリル、エルブミン、およびトランドラプリルが挙げられるが、これらに限定されない。ACE受容体遮断薬もまた、ACE阻害剤の代わりにまたはこれらと共に使用されてもよく、ACE受容体遮断薬としては、ロサルタン、イルベサルタン、カンデサルタン、シレキセチル、およびバルサルタンが挙げられる。
【0047】
ニコチン受容体アゴニスト、例えば、ニコチン(S-3-(1-メチル-2-ピロリジニル)ピリジン)およびニコチン受容体へ実質的に特異的に結合する他の化合物は、薬理学的効果を与える。「ニコチン受容体アゴニスト」は、天然の化合物(小分子、ポリペプチド、ペプチドなど、特に、天然の植物アルカロイドなどが挙げられるが、これらに限定されない)、内因性リガンド(例えば、天然源から精製される、組換えで作製されるか、または合成の、およびさらにこのような内因性リガンドの誘導体および変形体を含む)、ならびに合成された化合物(例えば、小分子、ペプチドなど)を含む。用語「ニコチン」は、さらに、ニコチンと同様の薬物療法特性を示すニコチンの任意の薬理学的に許容される誘導体または代謝産物を含む。このような誘導体、代謝産物、および代謝産物の誘導体は、当該分野において公知であり、コチニン、ノルコチニン、ノルニコチン、ニコチンN-オキシド、コチニンN-オキシド、3-ヒドロキシコチニンおよび5-ヒドロキシコチニン、またはそれらの薬学的に許容される塩を含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0048】
一酸化窒素を増加させる薬剤、例えば、S-ニトロソペニシラミン、ニトロプルシドナトリウム、N-エチル-2-(1-エチル-2-ヒドロキシ-2-ニトロソヒドラジノ)エタンアミン(NOC 12)などは、抗再狭窄剤としての関心対象である。一酸化窒素の産生はまた、酵素である一酸化窒素シンターゼに対するそれらの効果に起因して、サイトカイン、例えば、γ-インターフェロン、腫瘍壊死因子、IL-1、IL-2および内毒素によって調節される場合もある。NOシンターゼの誘導型は、サイトカインによって増加され、かつ構成型はサイトカインによって減少されるようである。HMG-CoA還元酵素阻害剤は、米国特許第6,147,109,号(Liaoら)によって記載されるように、内皮細胞NOS活性を上方制御すること分かった。一酸化窒素シンターゼの任意の形態が、前記タンパク質もしくはそれから誘導される活性フラグメントとして、または発現のためのDNA構築物として、使用され得る。
【0049】
さらに、再狭窄の阻害について関心対象であるのは、抗血管新生効果を有する化合物である。これらには、抗血管新生ポリペプチド:アンギオスタチン(O'Reilly et al. (1994) Cell 79:315-328);エンドスタチン(O'Reilly et al. (1997) Cell 88: 277-285);および抗血管新生アンチトロンビンIII(Bock et al. (1982) Nucleic Acids Res. 10 (24), 8113-8125)などが挙げられ、さらにそれらの機能的に活性な変形体および誘導体が挙げられる。他の抗血管新生剤としては、マトリックスメタロプロテアーゼの阻害剤、例えば、アミホスチン、WR-1065;マリマスタット、プリモマスタット(primomastat)、アルファ-1アンチトリプシンなどが挙げられる。
【0050】
あるいは、トロンビンを遮断する化合物、および他の抗凝固剤、例えば、トリペプチドモチーフD-Phe-Pro-Argに基づく化合物;例えばLY287045などが、再狭窄を阻害するために使用されてもよい。多くの化合物、例えば、イノガトランおよびメラガトランが、当該分野において公知である。非限定的な例については、特に、米国特許第6,326,386号;第6,232,315号;第6,201,006号;第6,174,855号;第6,060,451号;および第5,985,833号を参照のこと。
【0051】
TGF-ベータ受容体のアゴニストもまた関心対象である。TGF-β受容体I型およびII型は、TGF-ベータの大抵の活性を媒介する(Ebner et al. (1993) Science 260:1344-1348;およびFranzen et al. (1993) Cell 75: 681-692)。リガンドとしては、TGF-β、ならびにその模倣物および生物学的に活性な誘導体が挙げられる。
【0052】
薬物の複合システムは、プロテーゼ、即ち、ステントまたは他のデバイスによって運ばれてもよい。抗凝固剤または抗血小板薬は、最初の数日間非常に迅速に溶出するように、デバイスの最外層表面に含まれてもよい。抗炎症剤および抗複製剤は、新生内膜過剰増殖がデバイスを囲んだ後、非血液細胞と接触する場合、その後溶出し続けるために、デバイス中へ処方され得る。薬剤の溶出速度は、一定である必要はなく、かつ患者の要求に合うように調整されてもよい。
【0053】
本明細書中において使用される場合、用語ステントとは、当該分野において公知であるように使用され、必要に応じて、身体内の器官または脈管の内腔に挿入されかつ保持され得る、プロテーゼを指す。用途としては、血管、気管、腎臓および尿道管、ファローピウス管、エウスタキオ管、大腸および小腸などの支持が挙げられる。ステント作製において一般的に使用される材料としては、生物学的に適合な金属、例えば、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金、銅など、ならびにこれらの金属の合金;低形状記憶プラスチック;形状記憶プラスチックまたは合金、例えば、ニチノールなどが挙げられる。任意のこれらの材料が、本発明における使用のためのチャネルを形成するために製造され得、かつマトリクスとの共有結合を形成し得るか、またはこれらを形成するように誘導体化され得る。
【0054】
使用されてもよい非常に多数の異なるステントが存在する。任意の数のステントが本発明に従って使用されてもよいが、便宜上、数個の代表的なステントを、本発明の例示的な態様において記載する。当業者は、任意の種類のステントが、本発明に関連して使用されてもよいことを理解する。市販されるステントの非限定的な例としては、タンデムショートセグメント(tandem short segment)狭窄病巣について通常使用される、Gianturco-RoubinステントおよびPalmaz-Schatzステント;Wallstent(Boston Scientific, Natick, Mass)、長い病巣について使用される自己展開式ステンレスステント;Mammothermステント、Symphonyステント、Smartステント、全て自己展開式ニチノールのもの;バルーン展開式Perflex、AVE、Intrastent、およびHerculinkステント、自己展開式Instent、Gianturco Z-ステント(Wilson-Cook, Winston-Salem, NC)、Ultraflexニチノールメッシュステント(Microinvasive, Natick, Mass)、およびEsophacoil(IntraTherapeutics, Eden Prairie, Minn)が挙げられる。気管気管支ステントとしては、Gianturco Z気管気管支樹ステントおよびWallstent気管気管支エンドプロテーゼが挙げられる。ステントは、当該分野において公知であるように、自己展開式でもよいか、またはバルーンで展開可能でもよい。
【0055】
本発明についての更なるプラットフォームとしては、高分子生分解性ステント、吻合デバイス、およびスカフォールド(scaffold)、例えば、選択的レーザー焼結、三次元印刷、溶融堆積製造、およびマイクロまたはナノファブリケーションのためのステレオリソグラフィーを含む、固体の自由形状製造(free-form fabrication)技術を使用して作製された、合成生分解性または生体浸食性(bioerodible)多孔質スカフォールドが挙げられる。
【0056】
本発明の一態様において、薬物は、ステントからの放出のための液体として製剤化される。例えば、ステントは、薬物輸送壁を備えるチャンバを含んでもよく、ここで抗再狭窄剤がチャンバ中へロードされており、次いで該壁を介して選択的に輸送される(米国特許第5,498,238号を参照のこと)。このアプローチの他の変形法としては、中空管状ワイヤステント、またはリザーバを備えるステントの使用が挙げられる。このようなステントは、ステントが移植される標的部位への液体製剤の送達のための孔を有する外側に面している側壁を有するとして、当該分野において記載されている(米国特許第5,891,108号)。抗再狭窄剤は、ステントの外側の表面上に配置された指向的送達開口部を介して、リザーバから直接血管壁へ拡散されてもよい。このようなデバイスはまた、リザーバからの薬剤の送達を制御するための浸透圧エンジンアセンブリを備えてもよい(米国特許第6,071,305号)。
【0057】
液体製剤の代替物は、デバイス自体へ混合された薬物を含むデバイスによって提供される。一態様において、ステント自体が、抗再狭窄剤を含むポリマー材料から形成され、ここでステントは、生分解性または生体吸収性である(米国特許第6,004,346号を参照のこと)。または、プロテーゼは、生体安定性であってもよく、この場合、薬物が、それが組み込まれている生体安定性の材料から拡散される。金属ステントでは、デバイスは、金属の少なくとも部分に重なる薬物保持コーティングを含み得る。
【0058】
あるいは、デバイスは、薬物保持コーティングを含んでもよい。例えば、多孔質ステントを、粉末状金属またはポリマーから作製することができ、ここでその後、抗再狭窄剤が、ステントの孔へ圧縮される(米国特許第5,972,027号および第6,273,913号を参照のこと)。薬物送達のためのステントはまた、複数のコーティングを含むことが可能であり、ここで放出速度は、2つのコーティングについて異なり(米国特許第6,258,121号を参照のこと)、ここで抗再狭窄剤の1つが、延長された放出プロファイルを与えるように両方のコーティング中に存在し得るか、またはここで2つまたはそれ以上の抗再狭窄剤が別個に放出される。他の複合コーティングは、抗再狭窄剤およびポリマー材料の少なくとも1つの複合層と、該複合層上に配置されかつ生物活性剤の制御された放出を提供するための適切な厚みがある少なくとも1つのバリア層とを含む(米国特許第6,335,029号を参照のこと)。ステントが圧縮されている際は穿孔が閉じているように、抗再狭窄剤を含有するコーティング上の覆いに、穴を開けることもできる。脈管中に配置されると、ステントは展開され、穿孔が開く(米国特許第6,280,411号を参照のこと)。
【0059】
薬物は、共有結合(例えば、C-C結合、硫黄架橋)または非共有結合(例えば、イオン結合、水素結合)によって保持されてもよい。その後、ブレンドされたマトリクスを、ステントに浸漬するかステントに噴霧することによって、または当該分野において公知の他のコーティング方法によって、ステント表面へ接着させてもよい。あるいは、薬物は、マクロ粒子またはナノ粒子中に封入され、ステントコーティング中に分散され得る。拡散を制限するトップコートが、任意で、上記コーティングへ塗布されてもよい。薬物はまた、非生体浸食性マトリクスが使用される場合、粒子溶解または拡散によって、または、生分解性物質中に組み込まれる(吸収される)場合、ポリマー分解の間に放出されてもよい。
【0060】
ある態様において、ステントとは異なる薬物送達デバイスが、薬物の長期間の放出をもたらすために、ステント挿入部位の近くに移植されてもよい。非限定的に、このような薬物送達デバイスは、脈管壁(vascular wall)へ注射されたかまたはこれへ付着するようにコーティングされた、生分解性マイクロ粒子;生分解性ヒドロゲル(即ち、ゼラチン、アルギネート)、エチレン酢酸ビニル、キトサン、絹フィブロン、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ-L-ラクチド-コ-カプロラクトン、ポリ(ヒドロキシバレラート)、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリジアキサノン(polydiaxanone)、ポリオルトエステル、ポリアミノ酸、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ペプチドナノ繊維またはその他から作製された材料のシート、または、シート、粒子、リングもしくは他の都合のよい形状としての他の好適な合成ポリマーを含んでもよい。上述のように、薬物は、非生体浸食性マトリクスが使用される場合は粒子溶解もしくは拡散によって、または生分解性物質中に組み込まれる(吸収される)場合はポリマー分解の間に、放出されてもよい。
【0061】
本発明のスクリーニング方法は、再狭窄を阻害する薬物の能力とポジティブにまたはネガティブに関連する、多数の生物学的活性に影響を与えるその能力について試験薬剤を分析することによって、実施される。これらの生物学的活性は、薬剤が以下に影響を与え得るかどうかを示す:(1)選択された炎症反応(これらの選択された活性は、T細胞反応、内皮細胞および平滑筋細胞反応、ケモカインの産生が含まれてもよい)、(2)例えば平滑筋細胞および/または内皮細胞の、細胞増殖、(3)組織リモデリング(マトリクス産生および分解に関与するタンパク質の発現:コラーゲン1、uPAR、PAI-1)、(4)血管緊張低下(PGE2レベル)、および(5)血栓症(血栓症に関与するタンパク質の発現:組織因子、トロンボモジュリン)。再狭窄を予防するための好ましい薬剤は、内皮細胞増殖にほとんどまたは全く影響を与えずに平滑筋増殖を阻害し、マトリクスリモデリングを阻害し、血管弛緩性であり、血栓促進性でなく、かつ、選択された抗炎症活性を誘導する。
【0062】
関心対象の生物学的活性の1つを分析するために任意の方法が本発明の方法において使用され得るが、BioMAPシステムが、本方法における使用に最も有益かつ効率的である。BioMAPシステムは、内皮細胞、平滑筋細胞、単球、T細胞、および線維芽細胞を使用するアッセイ法を含み、これらのアッセイ法を、細胞増殖(平滑筋および内皮細胞)に対するこれらの薬剤、ならびに組織リモデリング、炎症、および血栓症のマーカーに対するこれらの薬剤の影響を評価するために行った。
【0063】
一般的に、BioMAPシステムは、実際的なインビトロフォーマットで複雑なヒト疾患生物学をモデル化するように設計される。これは、複数の疾患に関連するシグナル伝達経路が同時に活性となるように、ヒト初代細胞(単一の細胞型、または細胞型の規定された混合物)を刺激することによって、達成される。細胞型および刺激の選択は、疾患生物学および機構の知識によって導かれる。好適な細胞型を組み込み、かつ疾患状態に関連する刺激シグナル伝達経路を刺激することによって、BioMAPシステムにおいて検出された生物学的活性と疾患プロセスとの関連付けが可能となる。その後、関心対象の生物学的空間の適用範囲(例えば、炎症、組織リモデリング)を提供する生物学的に意味のあるタンパク質読み出しを測定することによって、薬物効果を記録し、これによって、試験した種々の薬物クラス間の識別が可能となる。この評価のために有用なBioMAPシステムを表2に列挙する。
【0064】
理論に限定されないが、特定のパラメータを含めることについての根拠の一部を、以下に概説する。成功したステント薬物であるパクリタキセル、ラパマイシンおよびエベロリムスは、平滑筋細胞増殖の強力な阻害剤であり、このことは、これが、再狭窄を予防するために必要とされる生物学的効果であることを示唆している。これらの化合物はまた、内皮細胞増殖の強力な阻害剤であり、従って創傷治癒を妨げ、この活性は望ましくは回避される。
【0065】
細胞移動およびマトリクスリモデリングプロセスは、特定のタンパク質、例えば、uPARおよびPAI-1によって調節され、新生内膜形成において重要な役割を果たす(Behrendt, 2004;Stefansson, 2003)。高レベルのuPAは、再狭窄の危険因子である(Strauss, 1999)。PGE2、およびcAMPを上方制御する他のプロスタグランジン経路成分(例えば、PGI2)は、公知の平滑筋細胞の弛緩薬および増殖阻害剤である(Wong, 2001)。炎症はアテローム性動脈硬化症において重要な役割を果たし、MCP-1およびCD40を含む炎症マーカーが、患者において増加する(Garlichs, 2001;Deo, 2004)。高いプレ脈管形成(pre-angioplasy)レベルの炎症性タンパク質であるCD40L(CD40についてのリガンド)は、血管形成術後のより高い再狭窄率の前兆である(Cipollone et al., 2003;L'Allier, 2005)。他のケモカイン、例えば、IL-8およびIP-10は、それぞれ、血管新生をポジティブおよびネガティブに調節し(Belperio, 2000)、また、炎症性白血球の漸増に関与する。コラーゲンI産生は、創傷治癒の解決に関連する。VEGFR2は、移動および増殖を媒介する血管新生内皮上の主要なVEGF受容体であり、このことは、この受容体の発現の促進が望ましいことを示唆している(Rahimi, 2000)。M-CSFは、単球からのマクロファージの分化に関与し、また、VEGF産生および潜在的に再内皮化のプロモーターである(Eubank, 2003)。2つの認可されたステント薬物(パクリタキセルおよびラパマイシン)は、以前に報告されたように、単球によって産生されるTNF-αのレベルを増加させる(Allen, 1993)。TNF-αの増加は平滑筋を弛緩させるようにプロスタグランジンなどの他の因子を誘導する場合があり、TNF-αの阻害はうっ血性心不全患者を悪化させると示された(Chung, 2003)。このことは、あるレベルのTNF-αが保護的であることを示している。局所の血栓形成を予防することは、創傷治癒および再内皮化のプロセスを調節する場合があり、従って、組織因子の減少およびトロンボモジュリンの増加が重要である。
【0066】
本発明の方法は、4つの重要な生物学的活性(細胞増殖、炎症、血栓症、および組織リモデリング)に対する薬剤の効果を評価するためのアッセイ法で実施され得るが、BioMAPシステムは、異なる初代細胞型の共培養および複数の疾患関連因子での複雑な刺激条件を使用するので、本発明はまた、再狭窄の阻害における薬剤の有用性に関するより多くの情報を提供する更なる態様を提供する。このような更なるアッセイ法は、内皮細胞および単球/マクロファージの相互作用、平滑筋細胞および内皮細胞の増殖に対する炎症因子の効果、炎症条件下での平滑筋細胞および内皮細胞の増殖に対する種々の増殖因子刺激の差別的効果、ならびに追加の読み出し(例えば、細胞外基質)を明らかにするアッセイ法を含む。
【0067】
本発明の方法は、新規の抗再狭窄剤の同定に関する。本方法において試験するに好適な薬剤としては、非限定的に、小分子化合物、天然産物、タンパク質ペプチド、植物または他の抽出物、一般的には生物学的活性を有する任意の薬剤または物質が挙げられる。一態様において、本発明は、再狭窄を予防する2つまたはそれ以上の薬剤の組み合わせを同定するために実施される。
【0068】
種々の異なる候補薬剤が、上記方法によってスクリーニングされてもよい。候補薬剤は、多数の化学種を含むが、典型的には、それらは、有機分子、好ましくは、50ダルトンを超えかつ約2,500ダルトン未満の分子量を有する小さな有機化合物である。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用(特に、水素結合)に必要な官能基を含み、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、好ましくは該官能性化学基の少なくとも2つを含む。候補薬剤は、しばしば、1つまたは複数の上記官能基で置換された、環状炭素またはヘテロ環式構造および/または芳香族または多環芳香族構造を含む。候補薬剤はまた、ペプチド、糖類、核酸、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造アナログ、またはそれらの組み合わせを含む生体分子の中から見出される。
【0069】
候補薬剤は、合成化合物または天然化合物のライブラリを含む多種多様な供給源から得られる。例えば、ランダム化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、多数の手段が、多種多様の有機化合物および生体分子のランダムでかつ指向化(directed)された合成について利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリが、入手可能であるか、または容易に作製される。さらに、天然のまたは合成されたライブラリおよび化合物は、従来の化学的、物理的および生化学的手段によって容易に修飾され、コンビナトリアルライブラリを作製するために使用されてもよい。公知の薬剤が、構造アナログを作製するために、指向化されたまたはランダムな化学修飾、例えば、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化(amidification)などに供されてもよい。
【0070】
別の態様において、本発明は、公知の薬物(抗血小板剤、スタチン系薬剤、および抗高血圧薬が挙げられるが、これらに限定されない)のこれらの生物学的活性に対する効果をさらに調べ、その後、それらの薬物とのそれらの作用の相補性(complementarity)に基づいて再狭窄を予防するための薬剤を選択することによって実施される。パクリタキセルがコーティングされたステントを受容する患者は、しばしば、スタチンおよび種々の抗高血圧薬を含む他の薬剤を処方されるので、薬物組み合わせの評価は有用である。予想外の有害な活性なしに、公知の抗再狭窄剤(例えば、パクリタキセル)と一緒に、増強された抗再狭窄活性を提供する、特定の薬物(または薬物クラス)の同定は、最適な患者利益を提供する。本発明は相乗的活性を同定するために理想的であり、かつ例示されたBioMAPシステムは、再狭窄に関連する多種多様の生物学的機構に対する薬剤の活性を検出する。
【0071】
本発明は、薬物を同定し、かつこのような薬物および薬物組み合わせがコーティングされたステントを提供する。ここで該薬物は、(1)平滑筋細胞増殖を阻害すること、(2)内皮細胞増殖に対して効果がほとんどないかまたは全くないこと、(3)創傷治癒の促進を伴うマトリクスリモデリングを阻害すること、(4)血栓症を促進しないこと、(5)脈管弛緩の促進、および(6)選択された抗炎症活性として規定される、好ましい組み合わせの特徴(または、重要な生物学的活性)を提供する。
【0072】
異なる増殖条件(増殖因子のみによって、または再狭窄部位で通常見られる炎症促進性因子の存在下で、駆動される増殖)下での、および異なる供給源(臍帯または冠状動脈)由来の平滑筋細胞および内皮細胞の増殖に対する、複数用量でのそれらの相対的効果を測定することによって、再狭窄の治療についての薬物の選択がさらに改善され得る。表1に列挙されるBioMAPシステム3C、SM3C、CANo、CASMNo、CA3C、およびCASM3Cにおける細胞増殖の統計解析を、候補化合物である8-アザグアニン、アモジアキンジヒドロクロリド二水和物、アトバコン、シクロピロックス、シス-(Z)-フルペンチキソールジヒドロクロリド、クロフィリウムトシラート、モノベンゾン、プリマキンジホスファート、セクリニン、シロシンゴピン、テルコナゾール、およびトリメチルコルヒチン酸について行った。下記の表5は、前記化合物についての内皮細胞増殖に対する平滑筋細胞増殖の対数比(log ratio)を示している。>1の比率を示す薬物は、内皮細胞増殖と比べて平滑筋細胞増殖を優先的に阻害し、かつ再狭窄の阻害剤として特に有望な候補である(比率を有さない細胞は、両方の増殖の値が、DMSO対照と顕著には相違しなかったことを意味する)。
【0073】
この分析は、トリメチルコルヒチン酸(コルヒチンアナログ)を有望として選び出した。何故ならば、トリメチルコルヒチン酸が、全ての条件下で、試験した全ての用量で、初代細胞の供給源と無関係に、内皮細胞と比べて平滑筋細胞に対する優先的な効果を示すためである。
【0074】
従って、一態様において、本発明は、インビボでの使用が意図されるステントまたは他のデバイスを提供し、ここで該ステントまたはデバイスは、活性薬剤として1つまたは複数のコルヒチンアナログおよびそれらの薬学的に許容される塩を含み、ここで該薬剤は以下の構造Iを有する。

【0075】
別の態様において、本発明は、インビボでの使用が意図されるステントまたは他のデバイスを提供し、ここで該ステントまたはデバイスは、活性薬剤として1つまたは複数のイソコルヒチンアナログおよびそれらの薬学的に許容される塩を含み、ここで該薬剤は以下の構造IIを有する。

【0076】
構造IおよびIIにおいて、R1およびR2は独立して、H;C1〜10アルキル、アルケニル、およびアルキニルより選択される。R1およびR2はまた、形成される環がアルキニル基を含まないならば、1〜6個の炭素原子を含む環を形成してもよい。前記アルキル、アルケニル、およびアルキニル基は、任意で、1つまたは複数のOH、OR9、NR10R11およびFで置換され得る。但し、前記OHおよびF置換基は、上記構造中のNが結合されているのと同一の炭素原子へ結合されておらず、いずれのF置換基もアリリック(allylic)またはプロパルギリック(propargylic)ではなく、かつ、OHおよびOR9は、同一の炭素へ結合されておらず、OHおよびNR10R11も同一の炭素原子へ結合されていないならば、ここでR9、R10、およびR11は独立して、分岐したおよび分岐していないC1〜5アルキルから選択される。
【0077】
R3は、H、分岐したおよび分岐していないC1〜6アルキル、アルケニルおよびアルキニルより選択される。
【0078】
Xは、OまたはNOR9である。
【0079】
R4およびR5は独立して、H、OH、OR9、NR1R2より選択され、但し、構造がIである場合にR4へ組み込まれている場合、R9はCH3ではない。
【0080】
R6、R7、およびR8の各々は独立して、分岐したまたは分岐していないC1〜6低級アルキルより選択され、かつR6およびR7、またはR7およびR8は、環内に1または2個の炭素原子を含む環を形成してもよい。
【0081】
本発明の一態様において、薬剤は、化合物IIIまたはそれらの薬学的に許容される塩である。

【0082】
別の態様において、本発明は、インビボでの使用が意図されるステントまたは他のデバイスを提供し、ここで該ステントまたはデバイスは、本明細書中に記載されるコルヒチンアナログを、第2の生物学的に活性な薬剤と組み合わせて含む。このような生物学的に活性な薬剤としては、非限定的に、臨床的に証明された抗炎症剤、例えば、グルココルチコイド受容体アゴニスト(例えば、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ブデソニド)、治癒促進薬(例えば、エストラジオール)、脂質代謝調節薬(例えば、スタチン)、抗血栓薬などが含まれてもよい。
【0083】
このようなステントおよびデバイスは、再狭窄の治療または予防について当該分野において公知である用途が見出される。例えば、ステントは、バルーン血管形成術後に患者の脈管構造中へ入れられてもよく、ここで該ステント、または該ステントの近くに移植されるデバイスは、再狭窄の発生を遅延または予防するために、上記の説明に従う1つまたは複数の薬物を放出するように設計されている。このような態様において、コルヒチンアナログは、約0.01〜約100 μMの有効な局所濃度で送達される。ある態様において、装置は、ステント移植の意図される期間の少なくとも一部の間、1〜約60日間、薬物を放出するように構成される。
【0084】
実施例
細胞培養
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を複数のドナーからプールし、標準的な方法に従って培養し、そして第4継代でマイクロタイタープレートへ平板培養した。3人のドナー由来のヒト新生児包皮線維芽細胞(HDF)をプールし、そして標準的な方法に従って培養した。サイトカインでの刺激の24時間前に、マイクロタイタープレート中のコンフルエントなHDFを血清飢餓処理した。冠状動脈内皮細胞(CAEC)、冠状動脈平滑筋細胞(CASMC)、および臍動脈平滑筋細胞(SMC)を、標準的な方法に従って培養した。末梢血単核細胞(PBMC)を、標準的な方法に従って、正常なヒトドナー由来のバフィーコートから調製した。各システムを作製するためにコンフルエントなマイクロタイタープレートへ添加した薬剤の濃度/量は、以下の通りであった:サイトカイン(IL-1ベータ、1 ng/ml;TNF-アルファ、5 ng/ml;IFN-ガンマ、20 ng/ml;TGF-ベータ、5 ng/ml;IL-4、5 ng/ml)、活性化因子(ヒスタミン、10μM;SAg、20 ng/mlまたはLPS、0.2 ng/ml)、PBMC(7.5×104細胞/ウェル)。
【0085】
化合物
化合物を、指示された通り溶媒中において調製し、細胞の刺激の1時間前に添加し、そして表2に列挙されるパラメータの測定のために24時間刺激期間の間、存在させた。増殖のために、サイトカインでの細胞の刺激の1時間前に化合物を添加し、96時間存在させた。DMSO中において調製した場合、溶媒の最終濃度は、0.1%以下であった。
【0086】
読み出しパラメータ測定
読み出しパラメータのレベルをELISAによって測定した。簡単に記載すると、マイクロタイタープレートを、処理し、遮断し、その後1時間、一次抗体またはアイソタイプ対照抗体(0.01〜0.5μg/ml)と共にインキュベートした。洗浄後、プレートを、ペルオキシダーゼが結合された抗マウスIgG二次抗体またはビオチンが結合された抗マウスIgG抗体と共に1時間、その後ストレプトアビジン-HRPと共に30分間、インキュベートした。プレートを洗浄し、TMB基質で発色させ、そして吸光度(OD)を450 nmで読んだ(650 nmでのバックグラウンド吸光度を差し引く)。LPSシステム中のTNF-アルファの定量を、市販のキットを使用して製造業者の指示に従って行った。内皮細胞(HUVECおよびCAEC)、平滑筋細胞(SMCおよびCASMC)、ならびにPBMC(T細胞)の増殖を、アラマーブルー(Alamar blue)またはSRB還元によって定量した。
【0087】
毒性評価
細胞に対する化合物の副作用を、(1)総タンパク質の変化を測定すること(スルホローダミンBまたはSRBアッセイ);(2)末梢血単核細胞の生存能力を測定すること(ヨウ化プロピジウムPIの混合);および(3)顕微鏡可視化によって決定した。10%TCAで固定した後、細胞を0.1%スルホローダミンBで染色し、そして560 nmでウェルを読むことによって、SRBを行った。活性化因子の存在下で24時間培養したPBMCへヨウ化プロピジウム(10μg/ml)を添加し、そして10分後フローサイトメトリーにより、色素を取り入れた細胞のパーセンテージを測定することによって、PBMC生存能力を評価した。サンプルを以下のスキームに従って視覚的に評価した:2.0=丸石(不活性化表現型);1.0=活性化(通常の表現型);0.5=レース状または希薄;0.375=丸い;0.25=希薄かつ粒状;0.1=ウェルにおいて細胞無し。
【0088】
データ解析
各パラメータについての平均OD値を、1実験当たり3連のサンプルから算出した。その後、処理サンプルにおける各パラメータについて得られた平均値を適切な対照からの平均値で割り、比率を出した。その後、全ての比率をlog10変換した。99%予測エンベロープ(prediction envelope)(図における灰色陰影)を、歴史的対照(historical control)について算出した。平均値±SDを示す。
【0089】
SRBパラメータ(スルホローダミンB、総タンパク質損失の指標)が<-0.3であり、Plパラメータ(ヨウ化プロピジウム、リンパ球毒性の指標)が<-0.1であり、そして視覚パラメータ(細胞形状の変化)が<-0.6である場合、BioMAPシステムにおける細胞毒性が示される。パクリタキセル、ラパマイシンおよびデキサメタゾンは、試験された用量で毒性の兆候を示さず、そして全用量範囲にわたって活性であった。17ベータ-エストラジオールおよびアクチノマイシンDは、それぞれ、10μMおよび4.572 nMで細胞毒性の兆候を示し、そして3.3μMおよび0.5 nM未満の用量で不活性であった。
【0090】
表1に列挙されるシステムにおける細胞増殖の統計解析を、候補薬物について行った。表5は、非常に有望な化合物であるトリメチルコルヒチン酸を含む化合物のサブセットについての、内皮細胞増殖に対する平滑筋細胞増殖の対数比を示している。>1(緑)の比率を示す薬物は、内皮細胞増殖に比べて平滑筋細胞増殖を優先的に阻害し、そして再狭窄の阻害剤として特に有望な候補である(比率を有さない細胞は、両方の増殖の値が、DMSO対照と顕著には相違しなかったことを意味する)。
【0091】
(表5)選択した化合物についての内皮細胞および平滑筋細胞モデル系における増殖の対数比

【0092】
参考文献





【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビボ脈管用途のためのステントまたは他のデバイスであって、8-アザグアニン、アモジアキンジヒドロクロリド二水和物、アトバコン、ベツリン、クロラムブシル、シクロピロックスエタノールアミン、シス-(Z)-フルペンチキソールジヒドロクロリド、クロフィリウムトシラート、メシル酸デフェロキサミン、メシル酸ドキサゾシン、エスクレチン、モノベンゾン、ニフェジピン、プリマキンジホスファート、セクリニン、シロシンゴピン、テルコナゾール、および構造Iまたは構造IIに規定されるコルヒチンアナログからなる群より選択される1つまたは複数の薬物を含む、ステントまたは他のデバイス。
【請求項2】
抗炎症剤、抗血栓剤、または治癒促進剤(pro-healing agent)をさらに含む、請求項1記載のステントまたは他のデバイス。
【請求項3】
以下の構造Iの1つまたは複数の活性薬剤およびそれらの薬学的に許容される塩を含有する、請求項1記載のステントまたは他のデバイス:

式中、
R1およびR2は独立して、H、C1〜10アルキル、C1〜6シクロアルキル、C1〜10アルケニル、C1〜6シクロアルキル、C1〜6シクロアルケニル、もしくはC1〜10アルキニルであるか、または3〜6個の炭素原子を含む環を一緒になって形成し;但し、R1およびR2のアルケン結合またはアルキン結合を含む炭素原子が同時にNへも結合されていなければ、R1およびR2は任意で、1つまたは複数のF、OR9、またはNR10R11で置換されていてもよく、ここでR9、R10、およびR11は独立して、HまたはC1〜5アルキルであり;
R3は、H、C1〜10アルキル、C1〜6シクロアルキル、C1〜10アルケニル、C1〜6シクロアルキル、C1〜6シクロアルケニル、またはC1〜10アルキニルであり;
Xは、OまたはNOR9であり;
R4は、H;R9はCH3ではないという条件で、OR9;SR9;NR1R2であり、かつ
R5は、H、OR9、SR9、NR1R2であり、かつ
R6、R7、およびR8は独立して、HもしくはC1〜5アルキルであるか、またはR6およびR7もしくはR7およびR8は、独立して1もしくは2個の炭素原子を含む環を一緒に形成する。
【請求項4】
R1およびR2が独立して、H、C1〜10アルキル、またはC1〜6シクロアルキルであり、
R3がHであり、
XがOであり、
R4が、H;R9はCH3ではないという条件で、OR9;SR9;またはNR1R2であり、
R5がHであり、かつ
R6、R7、およびR8が独立して、HまたはC1〜5アルキルである、
請求項3記載のステントまたは他のデバイス。
【請求項5】
R1およびR2がHであり、R4がOHであり、かつR6、R7、およびR8がHまたはCH3である、請求項4記載のステントまたは他のデバイス。
【請求項6】
前記化合物が、以下の構造を有する、請求項5記載のステントまたは他のデバイス:


【請求項7】
以下の構造IIの1つまたは複数の活性薬剤およびそれらの薬学的に許容される塩を含有する、請求項1記載のステントまたは他のデバイス:

式中、
R1およびR2は独立して、H、C1〜10アルキル、C1〜6シクロアルキル、C1〜10アルケニル、C1〜6シクロアルキル、C1〜6シクロアルケニル、もしくはC1〜10アルキニルであるか、または3〜6個の炭素原子を含む環を一緒になって形成し;但し、R1およびR2のアルケン結合またはアルキン結合を含む炭素原子が同時にNへも結合されていなければ、R1およびR2は任意で、1つまたは複数のF、OR9、またはNR10R11で置換されていてもよく、ここでR9、R10、およびR11は独立して、HまたはC1〜5アルキルであり;
R3は、H、C1〜10アルキル、C1〜6シクロアルキル、C1〜10アルケニル、C1〜6シクロアルキル、C1〜6シクロアルケニル、またはC1〜10アルキニルであり;
Xは、OまたはNOR9であり;
R4およびR5は、H、OR9、SR9、NR1R2であり;かつ
R6、R7、およびR8は独立して、HもしくはC1〜5アルキルであるか、またはR6およびR7もしくはR7およびR8は、独立して1もしくは2個の炭素原子を含む環を形成する。
【請求項8】
R1およびR2が独立して、H、C1〜10アルキル、またはC1〜6シクロアルキルであり、
R3がHであり、
XがOであり、
R4がH、OR9、SR9、またはNR1R2であり、
R5がHであり、かつ
R6、R7、およびR8が独立して、HまたはC1〜5アルキルである、
請求項7記載のステントまたは他のデバイス。
【請求項9】
R1およびR2がHであり、R4がOHまたはOCH3であり、かつR6、R7、およびR8がHまたはCH3である、請求項8記載のステントまたは他のデバイス。
【請求項10】
前記化合物が、以下の構造を有する、請求項9記載のステントまたは他のデバイス:


【請求項11】
再狭窄の予防のための、8-アザグアニン、アモジアキンジヒドロクロリド二水和物、アトバコン、ベツリン、クロラムブシル、シクロピロックスエタノールアミン、シス-(Z)-フルペンチキソールジヒドロクロリド、クロフィリウムトシラート、メシル酸デフェロキサミン、メシル酸ドキサゾシン、エスクレチン、モノベンゾン、ニフェジピン、プリマキンジホスファート、セクリニン、シロシンゴピン、テルコナゾール、および構造Iまたは構造IIに規定されるコルヒチンアナログからなる群より選択される化合物の使用。
【請求項12】
再狭窄を予防することにおいて有用な薬剤を同定するための方法であって、薬剤の、平滑筋増殖を阻害する能力;内皮細胞増殖を阻害しない能力;マトリクスリモデリングを阻害する能力;血栓促進剤(pro-thrombotic)として作用しない能力;および抗炎症剤として作用する能力を評価する1つまたは複数のインビトロアッセイにおいて、薬剤を試験する工程を含む、方法。
【請求項13】
平滑筋増殖を阻害する薬剤の能力を評価する少なくとも1つのアッセイ法、および内皮細胞増殖を阻害しない薬剤の能力を評価する少なくとも1つのアッセイ法において、薬剤を試験する工程を含む方法であって、平滑筋増殖を阻害しかつ内皮細胞増殖を阻害しない薬剤が、再狭窄の予防に有用であるとして選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
細胞に作用する少なくとも1つの因子を含む培養物において、薬剤とヒト初代平滑筋細胞とを接触させる工程;
細胞に作用する少なくとも1つの因子を含む培養物において、薬剤とヒト初代内皮細胞とを接触させる工程;
該薬剤の誘導の結果としての該平滑筋細胞および該内皮細胞からの少なくとも1つの異なる細胞パラメータ読み出し(cellular parameter readout)の変化を記録する工程
を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記細胞パラメータ読み出しが、平滑筋細胞の増殖、および内皮細胞の増殖である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
薬剤と追加の初代細胞のインビトロ培養物とを接触させる工程、および該薬剤の誘導の結果としての少なくとも1つの細胞パラメータ読み出しの変化を記録する工程をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記細胞パラメータ読み出しが、内皮細胞または平滑筋細胞のuPAR発現;内皮細胞または単球におけるPGE2発現;内皮細胞および平滑筋細胞におけるトロンボモジュリン発現、内皮細胞および平滑筋細胞における組織因子発現、単球または内皮細胞におけるCD40発現;内皮細胞またはヒト皮膚線維芽細胞におけるIP-10発現;脈管内皮細胞または平滑筋細胞におけるMCP-1発現、ヒト皮膚線維芽細胞におけるコラーゲンI発現;内皮細胞におけるVEGFR2発現;ヒト皮膚線維芽細胞または平滑筋細胞におけるPAI-1発現;平滑筋細胞におけるIL-8発現;内皮細胞または平滑筋細胞におけるM-CSF発現、単球におけるTNF-a発現より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記インビトロアッセイが表2に記載のシステムより選択される、請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2009−542583(P2009−542583A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513336(P2009−513336)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/013230
【国際公開番号】WO2007/143211
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ビックス
【出願人】(506074314)バイオシーク インコーポレイティッド (3)
【Fターム(参考)】