冷却構造体、ヒートシンクおよび発熱体の冷却方法
【課題】軽量・コンパクトで、かつ放熱特性に優れた冷却構造体および冷却方法を提供する。また、ヒートシンクの重量および容積を大きくすることなく、放熱特性の優れたヒートシンクを提供し、軽量・コンパクトで、かつ放熱特性に優れた冷却構造が実現できるようにする。
【解決手段】発熱体8と、少なくとも冷却流体9に面する発熱体8の表面に、絶縁接着層6を介して接着された、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンク7とを有する放熱構造体、および上記放熱構造体の外部に設置され、内部を流れる冷却流体9と上記ヒートシンク7とが直接接触するように設置された通流路5を備えた冷却構造体とする。また、冷却流体9と直接接触するヒートシンク表面には微細窪み15を設けた構成とする。
【解決手段】発熱体8と、少なくとも冷却流体9に面する発熱体8の表面に、絶縁接着層6を介して接着された、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンク7とを有する放熱構造体、および上記放熱構造体の外部に設置され、内部を流れる冷却流体9と上記ヒートシンク7とが直接接触するように設置された通流路5を備えた冷却構造体とする。また、冷却流体9と直接接触するヒートシンク表面には微細窪み15を設けた構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などで構成される発熱体を冷却するための冷却構造体およびヒートシンクに関するものである。また、上記発熱体の冷却方法に関するものである。
上記冷却構造体とは、発熱体から発生する熱を冷却流体により冷却する冷却構造を指し、発熱体と冷却流体が通流する通流路とを含む構成である。また上記ヒートシンクは、熱的に発熱体と結合すると共に、冷却流体と直接接触し、上記冷却流体と熱交換して発熱体の熱を冷却流体へ放熱する構造物を指す。
【背景技術】
【0002】
従来の冷却構造体は、例えば冷却流体送入口と、内部に流路が形成された伝熱容器と、冷却流体送出口からなるヒートシンクに発熱体を設けた構成をしており、伝熱容器内流路に冷却流体を通流させることにより、発熱体を冷却する構成をしている。また、このような構成のものにおいて、冷却を促進するために、上記流路内に伝熱促進体(フィンや乱流促進体など)を設けて伝熱促進していた。
また、冷却流体送入口と冷却流体送出口を備え、それぞれに連通する流路が内部に形成された冷却流体通流容器に、内部流路と周囲とを連通する開口を設け、発熱体が設けられた絶縁基板(主に電気絶縁と、搭載される電子素子の保持・固定のために設けられる基板)により該開口を覆い、シールする構成の冷却構造体も提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような冷却構造体においては、流路を流れる冷却流体は絶縁基板を冷却し、絶縁基板を介して発熱体が冷却される構造になっている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−121557号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、従来の冷却構造体では、伝熱容器や絶縁基板上に発熱体が取付けられるため、伝熱容器や絶縁基板と発熱体との間に接触熱抵抗が生じ、放熱特性が悪いという問題があった。また、この接触熱抵抗を低減するために伝熱容器や絶縁基板と発熱体との間に塗布されるサーマルグリースの長期信頼性が無いという問題があった。
さらに、発熱体が電子部品である場合、電気絶縁構造にするために発熱体に設けられる絶縁基板の容積および重量が大きく、また絶縁基板取付けに伴う熱抵抗増大のために、放熱特性が悪くなるという問題があった。さらに、ヒートシンク自身の容積および重量が大きいという問題があった。
【0005】
また、従来のヒートシンクでは、流路内に伝熱促進体を設け、熱伝達を促進しているが、伝熱促進体の熱伝達向上効果よりも、伝熱促進体を設けたことによる圧力損失の増大率が大きく、より高出力のポンプが必要となる。したがって、消費電力が大きく、高価で、容積および重量が大きい装置となってしまう問題があった。
また、圧力損失が大きくなるため、通流路内の圧力が上昇し、周囲との圧力差が大きくなることから、ヒートシンクおよび付随する配管等の耐圧特性を向上させる必要があり、通流路を形成するヒートシンクおよび配管等の肉厚を厚くしなければならず、重量および容積が大きくなるといった問題があった。また、接続部のシール特性をより向上させなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、軽量・コンパクトで、かつ放熱特性に優れた冷却構造体および冷却方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
また、ヒートシンクの重量および容積を大きくすることなく、放熱特性の優れたヒートシンクを提供し、軽量・コンパクトで、かつ放熱特性に優れた冷却構造が実現できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による冷却構造体は、発熱体と、少なくとも冷却流体に面する上記発熱体の表面に、絶縁接着層を介して接着された、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクとを有する放熱構造体、および上記放熱構造体の外部に設置され、内部を流れる冷却流体と上記ヒートシンクとが直接接触するように設置された通流路を備えたものである。
【0009】
また、この発明によるヒートシンクは、冷却流体との接触面に、少なくとも冷却流体の流れ方向に交差する辺または弧を有する微細窪みを設けたものである。
【0010】
また、この発明によるヒートシンクは、冷却流体との接触面に、冷却流体の流れ方向に交差する方向に連なった微細窪みを設けたものである。
【0011】
また、この発明による発熱体の冷却方法は、発熱体の表面に、絶縁接着層を介して、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクが接着された放熱構造体を、上記ヒートシンクが、冷却流体と直接接触するように、上記冷却流体が流れる通流路に設置するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明による冷却構造体および冷却方法は、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクを絶縁接着層を介して発熱体の表面に接着し、このような構成の放熱構造体を、冷却流体と上記ヒートシンクとが直接接触するように通流路に設置するので、軽量・コンパクトで放熱特性に優れた冷却構造体とすることができる。
【0013】
また、この発明によるヒートシンクは、冷却流体と接するヒートシンク表面に、少なくとも冷却流体の流れ方向に交差する辺または弧を有する微細窪み、あるいは冷却流体の流れ方向に交差する方向に連なった微細窪みを設けた構成としたので、圧力損失が小さく、かつ放熱特性に優れたヒートシンクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
図1に示す冷却構造体は、低温の冷却流体(冷媒)9を送入する冷却流体送入口1と、内部に流路が形成された冷却流体通流容器3と、冷却流体送出口4とで形成される一連の通流路5内に、放熱構造体2を設置することにより構成されている。上記放熱構造体2は、発熱体8と、冷却流体9に面する発熱体8の表面に、絶縁接着層6を介して接着された、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンク7とで構成されている。
【0015】
このような構成の冷却構造体に対し、通流管(円管、矩形管、フレキシブルチューブ、ホースなど)によりポンプなどを連結し、冷却流体9を通流させることにより、発熱体8から発生する熱を周囲へ放出する(開放型冷却システム)。あるいは、通流管により放熱器と上記冷却構造体とを連結して循環する通流ループを形成することにより、上記通流ループ内を冷却流体9が循環し、発熱体8から発生する熱を放熱器へ輸送して放熱器から周囲へ熱を放出する(循環型冷却システム)。また、その際、上記通流ループ途中路にリザーバおよびフィルターを設けた循環型冷却システムとしてもよい。
また、上記各冷却システムにおいて、通流管または通流ループに複数の冷却構造体が直接または通流管を介して直列接続された構成としても良い。さらに、複数の冷却構造体が分配用ヘッダおよび合流用ヘッダを介して並列接続された構成としても良い。その際、分配用ヘッダおよび合流用ヘッダが冷却流体通流容器3内に内在しても良い。
【0016】
図1に示す冷却構造体は、通流路5中に発熱体8を設けた構成として示しているが、この構成に限定されるものではなく、例えば図示を省略しているが、絶縁接着層6を介して金属箔からなるヒートシンク7が接着された発熱体8を、河川や海中などに浸潜し、周囲の流水へ放熱する構成でも良い。この場合、河川や海が通流路に相当し、河の水や海水が冷却流体となる。
【0017】
また、図1に示す冷却構造体において、発熱体8は配線されていても良く、その際、上記金属箔からなるヒートシンク7に開孔を設け、防水構造の配線取出口を設けても良い。
【0018】
図2はこの発明の実施の形態1による他の冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
図2に示す冷却構造体は、冷却流体通流容器3上面に開口10を設け、開口10より大きな放熱構造体2のヒートシンク7で該開口10を覆い、シールした構成である。
なお、図2中では、開口10を放熱構造体2の平面部により覆った例で示したが、開口10から一部突出した放熱構造体、または窪みを有する放熱構造体により開口10を覆っても良い。
【0019】
図2に示す冷却構造体において、開口10のシール構造としては、容器3とヒートシンク7とを固着(接着や溶着など)する構成でも良いし、Oリングやガスケットを介して圧接する構成でも良い。冷却流体9の漏れを防止するものであれば、特にそのシール構造は限定されない。
【0020】
次に、図1および図2に示す冷却構造体の動作を説明する。冷却流体送入口1から流路へ送入された低温の冷却流体9は、流路を通過し、冷却流体送出口4から送出される。その際、絶縁接着層6を介し発熱体8と熱的に結合するヒートシンク7は、発熱体8からの受熱により温度上昇し、冷却流体9とヒートシンク7との間には温度差が生じる。ヒートシンク7は流路内の冷却流体9と直接接触するように設置されているため、ヒートシンク7から冷却流体9へ熱が伝えられ、冷却流体9は高温へと昇温して、高温の冷却流体9が冷却流体送出口4から送出される。このように、冷却流体9は、冷却流体送入口1、冷却流体通流容器3内の流路、および冷却流体送出口4を順次通流し、流路を通過する際に高温へ昇温し、高温の冷却流体9が連続的に送出されることになる。
【0021】
本実施の形態の冷却構造体においては、冷却流体9に面する発熱体8の表面に、絶縁接着層6を介して可とう性を有する金属箔からなるヒートシンク7を接着して放熱構造体2を構成しており、上記絶縁接着層6は、ヒートシンク7と発熱体8とを電気絶縁すると共に、ヒートシンク7と発熱体8とを物理的かつ熱的に結合させる。また、絶縁接着層6は樹脂であるため、冷却流体9に接触すると膨潤するおそれがあるが、ヒートシンク7は、金属箔で構成されているため、冷却流体に直接接触しても膨潤することがない。さらに、ヒートシンク7は、可とう性を有するため、冷却流体9と絶縁接着層6とが接触しないように、絶縁接着層6を覆うように配置することができるので、上記絶縁接着層6を防水することができる。したがって、このような構成の放熱構造体2を、図1に示すように、冷却流体9が流れる通流路5中に設置することにより、あるいは図2に示すように、開口10を有する通流路5において、ヒートシンク7が上記開口10を覆うように設置することにより、発熱体8と冷却流体9との間に生じる接触抵抗を小さくすることができ、放熱特性に優れると共に、長期信頼性に優れた冷却構造体が得られる。また、軽量で、かつコンパクトな冷却構造を提供できる。
また、ヒートシンク7が可とう性を有する金属箔からなっており、発熱体8の接着面が平面でない場合においてもヒートシンク7の取付けが容易である。
【0022】
なお、上記実施の形態1における発熱体8は、例えば加熱ヒータ、電子機器、電子部品等の発熱源、またはそれらを集積した発熱源、またそれらの発熱源から熱輸送する機器の放熱部、熱交換器等であり、上記発熱体8は絶縁接着層6を介して熱をヒートシンク7へ印加するものであれば特にその構造および寸法には限定されない。特に、電気絶縁を確保した構造でなくても良い。
【0023】
絶縁接着層6は、前述のように、発熱体8とヒートシンク7とを物理的に固着させるものであり、また発熱体8とヒートシンク7とを熱的に結合させる役割、および発熱体8とヒートシンク7とを電気絶縁する役割を担うものである。具体的な材料としては、例えば、エポキシ樹脂系の接着剤に金属繊維または粉末などのフィラーを混入した高熱伝導・電気絶縁接着剤が望ましい。
また、絶縁接着層6の厚さは300μm以下が望ましく、用いる接着剤の熱伝導率は0.5W/(m・K)以上である方が望ましい。これより厚い場合、およびこれより小さい熱伝導率では、絶縁接着層6の熱抵抗が大きくなり過ぎて放熱特性が悪化する。好ましくは絶縁接着層6の厚さは150μm以下、接着剤の熱伝導率は2W/(m・K)以上である方が望ましい。
一方、用いる接着剤の電気絶縁特性としては、体積抵抗が1012Ω/cm以上、絶縁破壊電圧が10kV/cm以上である必要がある。好ましくは体積抵抗が1013Ω/cm以上、絶縁破壊電圧が100kV/cm以上である方が望ましい。さらに、これらの値が高ければ高いほど電気絶縁耐圧特性が良く、望ましい。
【0024】
ヒートシンク7は、可とう性を有する金属箔であり、前述のように、冷却流体9の透過を防止する役割、および絶縁接着層6を介して発熱体8から冷却流体9へ放熱する役割を担う。ヒートシンク7の材料は、銅、アルミニウムなどの金属材料であり、特に冷却流体9の通流速度が大きな場合には、ステンレスやチタンなどの耐エロージョン・コロージョン特性に優れた材料の方が望ましい。また、複数の異なる金属箔を積層させても良く、さらに金属箔表面を処理し、アルマイト皮膜やベイマイト皮膜などを形成しても良い。
また、ヒートシンク7の厚さは1.5mm以下である方が望ましい。これより厚いと、ヒートシンクの可とう性が低下し、発熱体8にヒートシンク7を接着することが困難になる。特に、接着の際、絶縁接着層6に空隙(ボイド)が残留してしまい、放熱特性が著しく劣化する。また、ヒートシンク7材料と発熱体8材料の線膨張係数が大きく異なる場合、ヒートサイクル時に生じる各部材の伸び量の差が大きく、この差に起因する熱応力のために絶縁接着層6が剥がれ、放熱特性が著しく低下する。ヒートシンク7の厚さが薄いほどこの熱応力は小さくなり(熱応力を緩和することができ)、上記条件であれば耐ヒートサイクル特性も向上する。好ましくは500μm以下である方が望ましい。
【0025】
冷却流体通流容器3は、内部に流路が形成されたもので、冷却流体9の収容および冷却流体9が移動する通路の役割を担うものである。図2に示すように、冷却流体通流容器3に少なくとも一つ以上の開口10が設けられていても良く、その際は、絶縁接着層6を介して発熱体8に接着されたヒートシンク7によりこの開口10が覆われシールされる。これにより、冷却流体9の収容および冷却流体9が移動する通路の役割を担う。
【0026】
なお、ヒートシンク7から冷却流体9への伝熱を促進するために、流路内に伝熱促進体を設けても良い。この場合の伝熱促進体は、熱的にヒートシンク7と結合し、伝熱表面積拡大効果と乱流促進による熱伝達向上効果を合わせ持つフィンであり、略板状、略円柱状などの突起やインナーフィンなどで構成される。また、上記伝熱促進体は、乱流促進による熱伝達向上効果を有する乱流促進体も指し、発熱体8取付け面に対向する流路壁に設けた各種形状の突起、リボンやコイルや各種形状の突起を有する基板、または複数の開孔を有する基板などの内挿物を指している。
なお、図2のように開口10を設けた場合、開口10部の流路の通流横断面積が大きく、通流速度が低下し、放熱特性が悪くなるので、適切な通流路を確保しつつ開口10に対向する流路壁が突出した構成の方が望ましい。
【0027】
流路は、一連の蛇行流路でも良く、分配用ヘッダおよび合流用ヘッダを伴った並列流路でも良く、冷却流体9が移動できる通路であれば特にその構造・形状・寸法などは制限されない。
また、冷却流体通流容器3に設けられた開口10に二つ以上の流路が形成されても良い。例えば、開口10内の流路が仕切り板により分割され、それぞれの流路における冷却流体9の流れ方向が対向する構成としても良い。
【0028】
冷却流体送入口1は、低温の冷却流体9を送入する役割を担い、一方、冷却流体送出口4は、高温の冷却流体9を送出する役割を担っている。これらは、通常、通流管(円管、矩形管、フレキシブルチューブ、ホースなど)と連結される。冷却流体送入口1および冷却流体送出口4と上記通流管との連結部は、通流管が固着されていても良いし、通流管と一体構造物であっても良いし、ニップル付通流管を固着、またはOリングやガスケットを用いて通流管や同様の冷却流体通流容器3と連結される構成でも良く、冷却流体9を送入または送出することができれば特にその構造は制限されない。
【0029】
冷却流体通流容器3を構成する材料としては、冷却流体9を収容できる材料であれば良く、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの樹脂であっても良いし、アルミニウム、銅、ステンレスなどの金属、あるいはそれらを主材料とする複合材料などでも良い。
また、冷却流体通流容器3は複数の部品から構成されていても良い。
さらに、冷却流体通流容器3の一部が樹脂材料により成形された場合、その表面の少なくとも一部に金属板(例えば、ステンレス板など)を設けても良い。このようにすることにより、樹脂材料の経年変化による変形を抑制することができる。特に、発熱体8または発熱体8固定用冶具と上記金属板とにより冷却流体通流容器3を挟み込むように固定すると、よりその効果が大きい。その際、板ばねなどを用いたばね構造により固定する方がより望ましい。
なお、上記金属板が冷却流体9と接するように金属板の一部が流路に剥き出しになっても良く、このようにすることにより、発熱体8として電子機器等が設けられた場合に行われる絶縁(耐圧)試験が容易に行える。
上記金属板は冷却流体通流容器3に設けられていれば良く、特にその寸法および取付け方法は限定されず、ボルト等の固定冶具により固定されても良く、溶着、接着など固着させても良い。またその一部が流路に剥き出しになった場合は、該剥き出し部からの冷却流体9の漏れを防止する構造である必要があり、Oリングやガスケットなどを介して密着させても良い。
【0030】
冷却流体9は、蒸留水、不凍液、油、液化二酸化炭素、アルコールおよびアンモニアなどの液体である。また、ヒートシンク表面で冷却流体9が沸騰する液体でも良い。
【0031】
冷却流体通流容器3と発熱体8間の固定法としては、ボルト・ナット等の冶具により固定しても良く、板ばねなどを用いたばね構造により固定しても良い。冷却流体通流容器3と発熱体8とを固定することができれば、特にその構造は限定されない。
【0032】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2による冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
本実施の形態2は、上記実施の形態1の発熱体8をより具体化したもので、図3に示すように、半導体素子11と、この半導体素子11の片面に設置されたヒートスプレッダ12とで構成されている。このような発熱体に対しては、半導体素子11と反対側のヒートスプレッダ面に、絶縁接着層6を介して可とう性を有する金属箔からなるヒートシンク7を接着させて放熱構造体2を構成する。
【0033】
ヒートスプレッダ12は、半導体素子11を固定する役割、半導体素子11からまたは半導体素子11へ通電する役割、および半導体素子11で発生する熱を熱拡散すると共に、絶縁接着層6を介してヒートシンク7へ上記熱を伝える役割を担うもので、金属からなる。好ましくは、熱伝導率の高い銅および銅を主材料とする合金からなる方が望ましい。
【0034】
半導体素子11は、半導体素子11下面とヒートスプレッダ12上面とが物理的、熱的、電気的に結合し(例えば、半田付など)、一方図示を省略している電極と半導体素子11上面とが電気的に連結されており(例えば、アルミニウムワイヤや半田バンプを介して連結)、上記電極とヒートスプレッダ12との間を電気的に連結または非連結する役割を担うものである。したがって、電極とヒートスプレッダ12との間を通電し、半導体素子11を制御することにより、所望の機能(例えば、交流を直流または直流を交流へ変換するなどの機能)を得ることができるものであれば良く、例えばIGBTやDiodeなどの半導体素子である。
なお、半導体素子11とヒートスプレッダ12との間に、一つまたは複数の介在物(例えば基板など)が設けられても良い。
【0035】
なお、実施の形態2による放熱構造体では、ヒートスプレッダ12上面に半導体素子11を設け、該ヒートスプレッダ12下面に前記ヒートシンク7が接着された構成であれば良く、その他の構成に関しては特に制限されない。例えば、図示を省略しているが、上記半導体素子11と異なる制御用素子、ゲート電極やセンサー素子などをヒートスプレッダ12上またはその上方さらに側方に設けても良い。
また、ヒートスプレッダ12の少なくとも一部を剥き出しにし、かつ上記部材(半導体素子、ヒートスプレッダ、電極、半導体素子と異なる制御用素子、ゲート電極、センサー素子など)を一括して樹脂モールドし、その後ヒートシンク7を接着しても良く、また、ヒートスプレッダ12に予めヒートシンク7を接着し、その後、ヒートシンク7の少なくとも一部が剥き出しになるように、上記部材を樹脂モールドした構成でも良い。図3において、13は樹脂モールドを示す。
以下、少なくともヒートシンク7、絶縁接着層6、ヒートスプレッダ12、半導体素子11から構成される構造物を片面放熱構造体20と記す。
【0036】
図3に示す冷却構造体は、上記構成の片面放熱構造体20を、図2と同様の構成の、開口10が設けられた冷却流体通流容器3に設置するものであり、片面放熱構造体20のヒートシンク7が上記開口10を覆うように設置されている。該ヒートシンク7は開口10より大きなヒートシンク7である。
【0037】
次に、上記冷却構造体の動作を説明する。冷却流体送入口1から流路へ送入された低温の冷却流体9(冷媒)は流路を通流しつつ、片面放熱構造体20のヒートシンク7と接し、冷却流体送出口4から送出される。その際、ヒートスプレッダ12と電極との間に通電し半導体素子11を制御することにより、半導体素子11は所望の機能を果たし、同時に電気的なロスから発生する熱がヒートスプレッダ12と絶縁接着層6とを介してヒートシンク7へ伝えられる。この受熱によりヒートシンク7は昇温し、冷却流体9とヒートシンク7との間には温度差が生じる。ヒートシンク7は流路内の冷却流体9と直接接触するように設置されているため、ヒートシンク7から冷却流体9へ熱が伝えられ、冷却流体9は高温へと昇温して、高温の冷却流体9が冷却流体送出口4から送出される。このように、冷却流体9は、冷却流体送入口1、冷却流体通流容器3内の流路、および冷却流体送出口4を順次通流し、流路を通過する際に片面放熱構造体20から受熱し高温へ昇温し、高温の冷却流体9が連続的に送出されることになる。
【0038】
図3に示す本実施の形態の冷却構造体においても、実施の形態1と同様、半導体素子11およびヒートスプレッタ12と冷却流体9との間に生じる接触抵抗を小さくすることができ、放熱特性に優れると共に、長期信頼性に優れた冷却構造体が得られる。また、軽量で、かつコンパクトな冷却構造を提供できる。
【0039】
図4はこの発明の実施の形態2による他の冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
図4において、放熱構造体20は、半導体素子11と、この半導体素子11の両面にそれぞれ設置され、半導体素子11と反対側の面にそれぞれ、絶縁接着層6を介して可とう性を有する金属箔からなるヒートシンク7が接着された2つのヒートスプレッタ12a、12bとで構成されている。図4の放熱構造体20では、図3に示した放熱構造体20の電極(図示を省略)が、ヒートスプレッダ12bとして半導体素子11上面に設けられた構成であり、下側のヒートスプレッダを第1ヒートスプレッダ12a、上側の電極を第2ヒートスプレッダ12bと呼ぶことにする。なお、第1ヒートスプレッダ12aは図3のヒートスプレッダ12と同様のものである。
【0040】
第2ヒートスプレッダ12bは上記電極に相当しており、さらに半導体素子11で発生する熱を拡散すると共に、絶縁接着層6を介してヒートシンク7へ上記熱を伝える役割を担うもので、金属からなる。第1ヒートスプレッタ12aと同様、好ましくは、熱伝導率が高い銅および銅を主材料とする合金からなる方が望ましい。なお、第1ヒートスプレッダ12aと異なり、半導体素子11を固定する役割を担う必要性が無いことから、第2ヒートスプレッダ12bは半導体素子11と物理的に結合する必要性は無く、直接または介在物(例えば、半田バンプなど)を介して第2ヒートスプレッダ12bと半導体素子11とが接することにより、電気的および熱的に結合する構成であっても良いし、第1ヒートスプレッダ12aと同様に物理的に半導体素子11と結合していても良い。その他の各部材および構成に関しては、図3の説明と同様である。
【0041】
以下、少なくともヒートシンク7、絶縁接着層6、第1ヒートスプレッダ12a、第2ヒートスプレッダ12b、半導体素子11から構成される構造物を両面放熱構造体20と記す。
【0042】
図4に示す冷却構造体は、上記構成の両面放熱構造体20の両側に、冷却流体送入口1と、内部に流路が形成され、かつ開口10が設けられた冷却流体通流容器3と、冷却流体送出口4とからなる通流路5をそれぞれ設置したものであり、両面放熱構造体20の各ヒートシンク7が上記各通流路5の開口10を覆うように設置されている。該ヒートシンク7は開口10より大きなヒートシンク7である。
【0043】
次に、上記冷却構造体の動作を説明する。それぞれの通流路5において、冷却流体送入口1から流路へ送入された低温の冷却流体9(冷媒)は、流路を通流しつつ、両面放熱構造体20のそれぞれのヒートシンク7と接し、冷却流体送出口4から送出される。その際、第1ヒートスプレッダ12aと第2ヒートスプレッダ12bとの間に通電し半導体素子11を制御することにより、半導体素子11は所望の機能を果たし、同時に電気的なロスから発生する熱が各ヒートスプレッダ12a、12bと絶縁接着層6とを介して二つのヒートシンク7へ伝えられる。この受熱によりそれぞれのヒートシンク7は昇温し、流路内の冷却流体9とヒートシンク7との間に温度差が生じる。各ヒートシンク7は流路内の冷却流体9と直接接触するように設置されているため、ヒートシンク7から冷却流体9へ熱が伝えられ、冷却流体9は高温へと昇温して、高温の冷却流体9が冷却流体送出口4から送出される。このように、二つの通流路5それぞれにおいて、冷却流体9が、冷却流体送入口1、冷却流体通流容器3内の流路、および冷却流体送出口4を順次通流し、流路を通過する間に、両面放熱構造体20から受熱し高温へ昇温し、高温の冷却流体9が連続的に送出されることになる。
【0044】
図4に示す本実施の形態の冷却構造体においても、半導体素子11およびヒートスプレッタ12と冷却流体9との間に生じる接触抵抗を小さくすることができ、放熱特性に優れると共に、長期信頼性に優れた冷却構造体が得られる。また、軽量で、かつコンパクトな冷却構造を提供できる。
さらに、従来の冷却構造体を基に両面から放熱する構造にした場合、強固な絶縁基板により挟まれた構成になることから、半導体素子の両面が強く拘束されてしまい、熱応力などにより発生した力が半導体素子に直接働き、半導体素子や接合部などが破壊してしまう。しかし、本実施の形態の放熱構造によれば、各ヒートシンクやヒートスプレッダなどがより柔軟に配設されている(強い拘束力がない)ことから、半導体素子に大きな力が働き難く、上記した破壊を抑制することができる。したがって、図4に示すような構成とすることにより、二つのヒートシンク7から放熱することができ、放熱特性が著しく向上する。
【0045】
なお、図4では、二つの冷却流体通流容器3により両面放熱構造体20を挟み込む構成として説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、UまたはW字状の冷却流体通流容器3の二面に挟まれる空間に両面放熱構造体20を挿入し、その二面のそれぞれに設けられた開口10を、両面放熱構造体20のヒートシンク7が覆いシールされる構成でも良い。
【0046】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3による冷却構造体を模式的に示す構成図であり、図5(a)はヒートシンクの伝熱面を示す平面構成図、図5(b)は断面構成図である。また、図5(b)においては、放熱構造体2の丸印部分を拡大した図を合わせて示す。
本実施の形態3による冷却構造体は、上記実施の形態1および実施の形態2における放熱構造体のヒートシンク表面に、断面形状が矩形で、かつ流体の流れ方向に交差する方向に連なった一連の微細窪み15を設けたものである。
本実施の形態では、微細窪み15内へ主流(流路中央部の冷却流体の流れ)の低温流体が流入し、微細窪み15内の高温流体と撹拌混合され、再び微細窪み15下流側で主流へ押出されることにより、ヒートシンク7表面に形成される温度境界層の発達を抑制し、伝熱特性を向上させるようにしたものである。したがって、ヒートシンク7の放熱特性は、冷却流体9の物性値(種類および温度などに影響される値)や流速に大きく依存する。
【0047】
そこで、所望の通流路形状および使用条件(冷却流体9の種類や温度、圧力、流速など)において、ヒートシンク表面が滑らかである場合の平均温度境界層厚さをδとし、この厚さを基準に微細窪み15の寸法を検討した結果について説明する。なお、ヒートシンク表面が滑らかである場合の平均温度境界層厚さδは、例えば、流路幅50mm、流路長50mm、流路高さ3mmの流路に、20℃の水を通水し冷却する場合、δ=0.09mmである。
本実施の形態の微細窪み15の深さをH1とすると、(1.5×δ)<H1<(ヒートシンク7の厚さ)でなければならない。H1≦(1.5×δ)である場合、微細窪み15内には主にヒートシンク7表層の高温流体のみが流入・流出する結果、ヒートシンク7の表面が高温流体で覆われてしまい、放熱特性の改善効果が得られ難くなる。好ましくは、(2.0×δ)<H1<(ヒートシンク7の厚さ−50μm)である方が望ましい。
一般に、微細窪みに形成される剥離部の流れ方向の長さは、微細窪み15の深さH1の5倍程度と言われている。それゆえ、微細窪み15の流れ方向の開口幅がこれ以上でなければならない。一般化するために、微細窪み15の水力相当直径(=4×微細窪み15の開口面積/微細窪み15の開口部周長)をDとすると(例えば、微細窪み15の形状が、図5に示す形状であり、流れ方向に沿った上記微細窪みの長さ(開口幅)がLの場合、D≒2×Lとなる)、D>(10×H1)でなければならない。D≦(10×H1)の場合、微細窪み15内のほとんどの部分が剥離部16または淀み部17となり、冷却流体9が流入し難く、放熱特性の改善効果が得られ難くい。
【0048】
以上のような寸法条件を満たす微細窪み15をヒートシンク7表面に設けると、ヒートシンク7表層の高温流体と主流の低温流体とが撹拌混合され、温度境界層の発達を抑制することができるので、ヒートシンクの放熱特性が向上する。
【0049】
なお、図5においては、微細窪み15の断面形状が矩形であり、かつ流体の流れ方向に交差する方向に連なった一連の微細窪み15を示したが、上記断面形状は三角形、半円形などでも良い。また、流体の流れ方向に交差する方向に連なった一連の蛇行溝であってもよい。さらに、微細窪み15の形状は、流体の流れ方向に交差する方向に連なった一連の窪みでなくてもよく、流体の流れ方向に交差する辺または弧を有するものであれば、立方体、直方体、半球、円錐、円柱、三角柱などの形状でもよい。また、これらの形状の窪みが、千鳥配列や碁盤目配列などのように複数点在するように、断続的に設けられても良く、特にその形状および配置は制限されない。
なお、その際の微細窪み15の深さH1および水力相当直径Dにおいても、前述の条件を満たす必要がある。
【0050】
上記種々の形状の微細窪みにおいて、冷却流体9の流れ方向に沿った辺では、微細窪み15内の冷却流体9に働くせん断力の影響が大きく、微細窪み15内の冷却流体9の流速が低下し、また流路を流れる低温流体(主流)と微細窪み15内の高温流体の入れ替わり効率が悪く、微細窪み15内に高温流体が停滞しやすいので、放熱特性の向上効果が小さい。一方、冷却流体の流れ方向に直交する方向の辺では上記せん断力の影響は小さく、微細窪み15内へ主流の低温流体が流入し、微細窪み15内の高温流体と撹拌混合され、再び微細窪み15下流側で主流へ押出されることにより、ヒートシンク7表面に形成される温度境界層の発達を抑制し、伝熱特性を向上させることが可能となる。したがって、放熱特性が向上する微細窪みの形状としては、冷却流体の流れ方向に直交する方向に辺を有する形状である必要がある。望ましくは、冷却流体の流れ方向に直交する方向に連なった形状の微細窪みである方がよい。
なお、微細窪み15は冷却流体9の流れ方向と直交する必要は無く、冷却流体9の流れ方向と任意の角度を有して交差する方向に辺を有しておれば、同様の効果がある。さらに直線状でなくても良く円弧状、蛇行状、ジグザグ状でも良い。
【0051】
このように、本実施の形態は、ヒートシンク表面に設けられた、少なくとも冷却流体の流れ方向に交差する辺または弧を有する微細窪みにより、ヒートシンク7表面に形成される温度境界層の発達を抑制し、伝熱特性を向上させるものであるが、上記窪みによるこのような効果が得られる要因の1つは、微細窪みにより冷却流体の剥離が生じ、窪み内の伝熱面に低温の冷却流体が衝突して噴流効果をおこすことによると考えられる。また、別の要因としては、窪みの内壁面に沿って流入し昇温した高温流体と、主流から窪み内に直接流入する低温流体とが窪み内、または窪みからの流出部で混合攪拌されることによると考えられる。いずれの要因によって伝熱促進効果が得られるかは窪みの形状により異なってくる。
【0052】
次に、冷却流体の流れ方向に沿った、微細窪みの深さ方向の断面形状について説明する。図6に典型的な不等脚台形状の断面を有する微細窪み15が設けられた流路を示す。
図示したように、微細窪み15の角部をA、B、C、Dとし、それぞれの角部におけるヒートシンク7平面と成す角度をθ1、θ2、θ3、θ4とする。また、微細窪み15の配設ピッチをPとし、A−B、B−C、C−D、D−A区間の、ヒートシンク7平面方向の距離をL1、L2、L3、L4とする。また、流路の高さをH2、微細窪み15の深さをH1とする。なお、微細窪み15の開口幅Lは、L=L1+L2+L3として表せる。
【0053】
まず、微細窪み15による冷却流体9の剥離に関して説明する。図6において、通流路5を左から右へ冷却流体9が通流する場合について説明する。
図6において、剥離が生じるには角部Aで剥離を引き起こす必要がある。剥離部16が生じると、剥離部16の下流側が低温流体の再付着点18となり、主流の低温流体の流入が生じる。したがって、この再付着点18より下流部の熱伝達が向上し、ヒートシンク7の放熱特性が向上する。
【0054】
剥離する条件としては、二次元デフューザーに関する文献(Rneau,L.R.他2名、Trans.ASME、Ser.D、89−1(1967−3)、P141)や文献(Fox,R.W.とKline,S.J.、Trans.ASME、Ser.D、84−3(1962−9)、P303)に記述されるように、θ1>約30°であると剥離が生じ、θ1>(40×(L1/H2)1/3)°であれば安定して剥離部が形成する。したがって、本発明においても、θ1>30°である必要があり、好ましくはθ1>(40×(L1/H2)1/3)°である方が望ましい。
【0055】
θ2に関しては、特に制約条件は無い。
θ3は、角部Cに冷却流体9の淀み部17が形成されやすいことから、広角(θ3>90°)である方が望ましい。
θ4は、θ3の条件に呼応して鋭角(θ4<90°)である方が望ましい。
【0056】
なお、B−C面とD−A面とは平行でなくても良い。
また、角部Aは剥離しやすいようにエッジを有した方が望まれるが、その他の角部B、C、Dは冷却流体9がスムーズに流れるように曲面からなる方が望ましい。
また、図6では微細窪み15を形成する各面を平面として示しているが、曲率の大きな曲面であっても良い。
上記の条件より、微細窪み15の断面形状としては、上記条件を満足する開口部が大きな略台形である方が望ましい。
【0057】
H1に関しては、前述したように、(1.5×δ)<H1<(ヒートシンク7の厚さ)である必要がある。また、Lも同様、L>(5×H1)である必要がある(D≒2×Lの場合)。
ただし、例えば両端部など、微細窪み15の一部は、上記範囲のH1およびLでなくても良い。
【0058】
また、図6において、A−B面は剥離部16で覆われるため放熱特性が悪く、一方、B−C面およびD−A面は主流の流れとほぼ平行であるが、C−D面は主流の流れ方向と任意の角度を有することから、主流がC−D面に衝突するため噴流効果が得られ、放熱特性が高い。それゆえ、C−D面が最も重要であり、L3が長いほど良い。つまり、L2=L4=0の方が望ましい。なお、この場合、角部Bと角部Cが一致するため、角部Cでの淀み部17が剥離部16に含まれ、淀み部17における放熱特性の悪影響が無くなるので、さらに放熱特性が良くなる。
上記条件より、微細窪み15の断面形状としては、上記条件を満足する略不等辺三角形である方がさらに望ましい。
さらに、L1は小さいほど良く、L1=0(微細窪み15の断面形状が直角三角形)でも良く、またL1<0(θ1>90°)でも良い。(但し、θ1が大きくなり過ぎると、放熱特性の改善効果が小さくなる。)
なお、断面形状が略不等辺三角形である場合のθ4は、上記条件より、θ4<19°(θ1>θ4)となる。
【0059】
このように、微細窪み15の断面形状が略不等辺三角形であり、上流側の角度θ1がθ1>30°、下流側の角度θ4がθ4<19°であると、上流側の角部Aで剥離が生じ、主流が角部Aに対向する伝熱面(C−D面)に衝突して噴流効果が得られ、放熱特性が高いヒートシンクが得られる。また、この場合、微細窪み15内の下流側の伝熱面(C−D面)が主流方向へ突出していることから、角部Aで剥離した冷却流体9が再付着点18に達するまでのH1方向の移動距離が短くなり、再付着点までの流れ方向の距離(L方向の剥離部16の長さ)が短くなる。よって、配設ピッチP区間に占める有効な伝熱面積の割合が大きくなり、放熱特性が向上する。
【0060】
次に、窪みの内壁面に沿って流入し昇温した高温流体と、主流から窪み内に直接流入する低温流体とが窪み内で混合攪拌されることによる伝熱促進効果について説明する。説明の都合上、図6において、冷却流体9が流路を右から左へ流れる場合として説明する。
A−D−C−Bに沿って流れる高温流体がA−B面へ流入し、一方微細窪み15の開口部から主流の低温流体がA−B面へ流入し、それぞれの冷却流体がA−B面で衝突し、撹拌混合することにより、ヒートシンク7表面に形成される温度境界層の発達を抑制し、放熱特性を向上させる。このような要因により放熱を促進する場合、まず冷却流体9がD−C面に沿って通流した方が良く、角部Dで剥離が生じない方が良い。よって、前述した各文献に記載される剥離しない条件より、図6の構成において、θ4<(25×(L3/H2)-1/2)である必要がある。好ましくは、より安定して剥離しないように、θ4<(12.5×(L3/H2)-1/2))である方が望ましい。
θ3は、角部Cに冷却流体9の淀み部17が形成されやすいことから、広角(θ3>90°)である方が望ましい。
θ2に関しては、特に制約条件は無い。
A−B面に直交して低温流体が流入した方が冷却流体の混合および撹拌作用が高く、θ1≒(90°−θ4)が望ましいが、θ1<(90°−θ4)になると著しくその効果が小さくなるわけではない。
一方、A−B面は冷却流体が衝突する面であることから放熱特性が良いが、θ1>90°になると角部B周りに高温流体を停滞させる窪みを形成するため、放熱特性が低下し始める。
以上のことから、30°<θ1<100°である必要がある。好ましくは、θ1は(90°−θ4)±10°以内である方が望ましい。
なお、B−C辺とD−A辺は平行でなくても良く、また全ての角部は曲面からなっても良い。さらに、図6では微細窪み15を形成する各面を平面として示しているが、曲率の大きな曲面でも良い。
上記の条件より、微細窪み15の断面形状としては、上記条件を満足する開口部が大きな略不等脚台形である方が望ましい(θ1>θ4)。
【0061】
H1に関しては、上記同様、(1.5×δ)<H1<(ヒートシンク7の厚さ)である必要がある。また、Lも同様、L>(5×H1)である必要がある(D≒2×Lの場合)。
ただし、例えば両端部など、微細窪み15の一部は、上記範囲のH1およびLでなくても良い。
【0062】
また、A−D面、D−C面、C−B面は、全てその表面上を冷却流体が通流し放熱する役割を担うもので特に区別する必要は無い。つまり、L2=L4=0でも良い。このようにすることにより、角部Bと角部Cが一致するため、角部Bと角部Cで生ずる淀み部17が一つになることから、淀み部17における放熱特性の悪影響が小さくなり、さらに放熱特性が良くなる。
上記の条件より、微細窪み15の断面形状としては、上記条件を満足する略不等辺三角形である方がさらに望ましい(θ1>θ4)。
【0063】
このように、微細窪み15の断面形状が略不等脚台形あるいは略不等辺三角形であり、上流側の角度θ4と下流側の角度θ1とが、θ1>θ4であると、窪み内に流入する高温流体と主流の低温流体とが、上流側の角部Dに対向する伝熱面(A−B面)で衝突し混合攪拌されるので、放熱特性が高いヒートシンクが得られる。
【0064】
なお、以上の説明から、θ1>θ4であり、かつθ1>30°となる窪み形状の場合は、冷却流体がいずれの方向に流れても、放熱特性が高いヒートシンクが得られることとなる。
【0065】
本実施の形態の構成による効果を実証するために,4種類の伝熱面形状の異なるヒートシンクを用いて、熱流動試験を実施した。試験装置は、流路幅50mm、流路高さ2mmの流路に50mm四方の開口を設け、開口部に銅製のヒートシンクを装着し、ヒートシンク背面より300Wを入熱した。評価したヒートシンクは、冷却流体と接する伝熱面が、平面状のもの(基準流路R0)、ヒートシンクの伝熱面に冷却流体通流方向に沿って高さ2mm、厚さ1.5mmの板状フィンを配設ピッチ3.5mmで複数設けたもの(ストレートフィン付流路Rf)、ヒートシンクの伝熱面に、冷却流体上流側が大きく窪んだ不等辺三角形溝(深さ300μm)を冷却流体通流方向に直行するように3.5mm間隔で複数設けたもの(本実施の形態による流路R1)、ヒートシンクの伝熱面に、冷却流体下流側が大きく窪んだ不等辺三角形溝(深さ300μm)を冷却流体通流方向に直行するように3.5mm間隔で複数設けたもの(本実施の形態による流路R2)である。冷却流体は50wt%の不凍液であり、入口温度を70℃に設定した。
【0066】
試験結果を、図7(a)〜(c)に示す。図7(a)は圧力損失と流速の関係を示す。基準流路R0に比べ、ストレートフィン付流路Rfの圧力損失は約6倍程度増大しているが、本実施の形態の流路R1、R2の場合ほとんど増加していない。
図7(b)は熱伝達係数と流速の関係を示す。基準流路R0に比べ、ストレートフィン付流路Rfの熱伝達係数は約3倍程度増大するが、圧力損失の増大率より小さい。本実施の形態の流路R1、R2の場合、流速が0.5m/s以下では基準流路とほぼ同等の値を示すが、0.5m/s以上では熱伝達係数が大きく増大し、基準流路より1.7倍程度大きな値を示す。
より解かり易い比較をするために、図7(c)に熱伝達係数と圧力損失の関係を示す。同一圧力損失に関して比較すると(例えば、2000Pa)、基準流路R0に比べ、本実施の形態の流路R1、R2では熱伝達係数が約1.7倍程度に増大した。一方、ストレートフィン付流路Rfでは、冷却流体と接する伝熱面積が基準流路に比べ約1.7倍に増大するにもかかわらず、熱伝達係数は約1.4倍程度の上昇にとどまっている。また、同一熱伝達係数に関して比較すると(例えば、8000W/(m2K)、基準流路R0に比べ、本実施の形態の流路R1、R2では、圧力損失が約1/3に減少している。したがって、本実施の形態のヒートシンクを用いた場合、より小型のポンプにより目的の放熱を行うことができる。
【0067】
このように、本実施の形態の流路構成では、流動特性がほとんど悪化せず、伝熱特性のみ著しく増大する効果がある。
また、ストレートフィン付ヒートシンクのように、伝熱面に突起物を設ける必要が無いことから、容易に製作することができ、低コストとなる。また、突起物が無いことから、搬送時の突起の保護が不要であり、さらに突起をぶつける等により熱流動特性が大きく変化して信頼性が低下することもない。さらに搬送容積も小さくなることから搬送時のコストが小さくなる。さらに、従来のように、フィン等の突起物を設け、表面積を増大させ、伝熱特性を向上させる効果は、流路高さが小さくなるにつれ減少するが、本実施の形態の流路は流路高さが小さくなってもその効果が変らないことから、本実施の形態の流路構成は流路高さが小さい場合に特にその効果が大きい。
また、低流速の場合(本実験では流速が0.5m/sより小さい場合)は層流域であり、上記のような本発明の効果は顕著には見られなかった。本実施の形態は特に乱流域(本実験では流速が0.5m/s以上の場合)においてその効果が得られる。なお、微細窪み15深さH1が大きくなるほど、層流領域から乱流領域に遷移する臨界流速は小さくなる(より小さな流速でも乱流域に達する)。
【0068】
上記実施の形態では、微細窪み15内の高温流体を下流側へ押し出す構成であるが、更なる伝熱促進法として、図8と図9に示すように、微細窪み15に対し、冷却流体の流れ方向に沿ったバイパス溝19を設け、このバイパス溝19へ上記微細窪み15内の高温流体を効率良く押し出すことにより、微細窪み15内の温度境界層の厚さをより小さくし、放熱特性を向上させても良い。なお、図8(a)、図9(a)はヒートシンクの伝熱面の平面構成図、図8(b)、図9(b)は各々図8(a)、図9(a)のB−B線での断面構成図である。また、図8(c)、図9(c)は各々図8(a)、図9(a)のC−C線での断面構成図であり、冷却流体の動きを合わせて示す。
【0069】
このようにすることにより、微細窪み15内の高温流体が流出する出口が大きくなり、効率良く高温流体が流出し、放熱特性が向上する。特に、剥離部16および淀み部17内の高温流体が排出されやすく、有効な伝熱面積が増大し、より放熱特性が向上する。
【0070】
なお、上記バイパス溝19の形状は、その横断面形状が矩形または三角形などでもよく、その形状、寸法等は特に制限されない。
【0071】
また、上記ヒートシンク7の周辺部はシール特性を向上させるため、微細窪み15を設けない方が望ましい。
また、一つのヒートシンク7中に複数の異なる形状(パターン)の微細窪み15が形成されていても良い。
さらに、ヒートシンク7周辺のシール部と中央の放熱部、すなわち冷却流体9と接する部分は同一面にある必要は無く、シール部と放熱部間に任意の段差を設けても良い。
【0072】
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4によるヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。図10においては、ヒートシンクの丸印部分を拡大した図を合わせて示す。
本実施の形態4によるヒートシンク70は、図10に示すように、冷却流体送入口1と、内部に流路が形成された伝熱容器30と、冷却流体送出口4からなり、ヒートシンク70の、流路内壁面には、実施の形態3で説明した微細窪み15が設けられている。上記実施の形態3で説明した微細窪み15による放熱特性改善効果は、図7で示す実験結果からもわかるように、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクに微細窪み15を設けた構成特有のものではなく、任意の伝熱面に対して上記微細窪み15を設ける場合においても効果がある。
上記微細窪み15は、ヒートシンク70の内壁面表層の冷却流体のみを撹拌混合し、温度境界層の発達を抑制するものであり、主流の流れを乱さないことから圧力損失の増加が小さいので、ヒートシンクの重量および容積を大きくすることなく、ヒートシンクの放熱特性を向上させることができる。
また、このような微細窪み15は、伝熱面積を増やすために伝熱面にフィン等の突起を設けるものに比べ、より優れた伝熱特性を有すると共に、重量が重くならず、また、製造も容易である。
【0073】
なお、本実施の形態のヒートシンク70の伝熱容器30には発熱体8が設けられ、伝熱容器30内流路に冷却流体9を通流させ、発熱体8を冷却する冷却構造を形成するが、発熱体8は該ヒートシンク70に電気を供給しない構造でヒートシンク70に熱を印加できるものであれば、その構造、形状、寸法等制限されない。また、発熱体8と伝熱容器30間にサーマルグリースなどの接触熱抵抗低減剤を塗布しても良い。
また、ヒートシンク70は複数の分割部品から構成されても良い。
【0074】
図11はこの発明の実施の形態4による他のヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。冷却流体送入口1と、内部に流路が形成された冷却流体通流容器32と、冷却流体送出口4とからなる通流路5において、冷却流体通流容器32に内在する流路と周囲とを連通する開口10を設け、上記実施の形態3で説明した微細窪み15が設けられた基板状のヒートシンク71により、該開口10を覆いシールする。その際、ヒートシンク71は、上記微細窪み15が設けられた面が通流路5内の冷却流体9と直接接触するように配置され、ヒートシンク71の背面には発熱体8が設けられる。
なお、この場合、発熱体8とヒートシンク71との間にサーマルグリースなどの接触熱抵抗低減剤を塗布しても良いし、発熱体8とヒートシンク71とが半田等により固着されていても良い。
また、ヒートシンク71は、基板と、上記基板上に固着(接着、半田付など)された可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクとで構成され、上記金属箔からなるヒートシンク表面に微細窪み15を設けても良い。
【0075】
図12はこの発明の実施の形態4による他のヒートシンクを模式的に示す構成図であり、図12(b)は図12(a)のB−B線での断面構成図、図12(c)は図12(b)のC−C線での断面の一部を拡大して示す図である。
図12において、ヒートシンク72の伝熱面には複数のフィン73が設けられており、ヒートシンク72の伝熱容器30内には複数の流路51が形成されている。またフィン73表面には、上記実施の形態3で説明した微細窪み15が設けられている。
このような構成であっても、フィン73を設ける効果に加え、さらに微細窪み15による効果が加わり、放熱特性の優れたヒートシンクが得られる。
なお、図12において、フィン73が設けられた伝熱内壁面にも微細窪み15を設けても良い。
【0076】
図13はこの発明の実施の形態4による、さらに他のヒートシンクを模式的に示す構成図であり、図13(b)は図13(a)のB−B線での断面構成図、図13(c)は図13(b)のC−C線での断面の一部を拡大して示す図である。
図13において、ヒートシンク74を構成する伝熱容器30内に円形の流路52を一つまたは複数設け、その流路内壁面に上記実施の形態3で説明した微細窪み15が設けられている。
このような構成の場合は、特にねじ切り加工などにより、流路内壁面に微細窪み15を容易に加工することができる。
また、圧力損失の増加が小さく、放熱特性を向上させたヒートシンクを提供することができる。
【0077】
なお、図12ではフィン73の対向する面に設けられる微細窪み15の先端位置が一致して配設された例で示したが、図13に示すように対向する面に設けられる微細窪み15の先端位置がずれて配設されても良い。
【0078】
また、本実施の形態4で示した各構成のヒートシンクにおいても、冷却流体との接触面に設けられる微細窪み15は、冷却流体9の流れを横断する方向に連なった一連状の窪みであって、上記冷却流体9の流れ方向に沿った、深さ方向の断面形状が、略台形または略不等辺三角形断面を有する微細窪み15を設けた方が望ましい。
また、微細窪み15にバイパス溝19を設ける構成としても良い。
【0079】
実施の形態5.
図14はこの発明の実施の形態5によるヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。図14においては、ヒートシンクの丸印部分を拡大した図を合わせて示す。
本実施の形態5によるヒートシンク75は、図14に示すように、冷却流体9が送入される冷却流体送入口1が、ヒートシンクの伝熱面76の略中央部に対向するように配設されたものであり、上記ヒートシンクの伝熱面76には上記実施の形態3で説明した微細窪み15が設けられているものである。
【0080】
一般に、発熱体8は発熱源が発熱体中央に配設されたり、あるいは発熱体中央が蓄熱しやすい構造のため、発熱体中央をより低温の冷却流体9で冷却した方が、放熱特性が良い。しかし、単に伝熱面76の中央に対向して冷却流体送入口1を設け、送入口1から冷却流体9を送入しても、冷却流体送入口1近傍の伝熱面76では衝突噴流による高い伝熱促進効果が得られるが、伝熱面76の周辺部では温度境界層が厚く放熱特性が悪くなり、ヒートシンク全体としての放熱特性はあまり良くない。
そこで、本実施の形態では、伝熱面76に上記実施の形態3で述べた微細窪み15を設けることにより、温度境界層の発達を抑制し、放熱特性を向上させている。これにより、ヒートシンク全体の放熱特性がさらに向上する。
特に、上記微細窪み15を設ける際には、冷却流体送入口1位置に対し、線対称になるように、また多重円を形成するように、さらに渦巻き状に上記微細窪み15を設けることにより、冷却流体送入口周辺部における放熱特性が向上し、ヒートシンク全体の放熱特性が向上する。
【0081】
なお、微細窪み15は、花びら形状の多重円や渦巻き状を形成しても良い。
さらに、伝熱面76と対向する面に冷却流体9の流れを案内する突起を設けても良い。この突起により、絞り、旋廻流または乱流を引き起こすと、さらに放熱特性が向上する。
【0082】
また、本実施の形態4では、基板状のヒートシンクに対して説明したが、実施の形態1または実施の形態2に示した冷却構造体におけるヒートシンク7に対しても、同様の構成とすることにより、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の実施の形態1による冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による他の冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
【図3】この発明の実施の形態2による冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2による他の冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
【図5】この発明の実施の形態3による冷却構造体を模式的に示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係わる微細窪みの断面形状を模式的に示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3による冷却構造体を従来のものと比較して説明する図である。
【図8】この発明の実施の形態3による他の冷却構造体を模式的に示す構成図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるさらに他の冷却構造体を模式的に示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態4によるヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。
【図11】この発明の実施の形態4による他のヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。
【図12】この発明の実施の形態4による他のヒートシンクを模式的に示す構成図である。
【図13】この発明の実施の形態4によるさらに他のヒートシンクを模式的に示す構成図である。
【図14】この発明の実施の形態5によるヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。
【符号の説明】
【0084】
1 冷却流体送入口、2,20 放熱構造体、3,32 冷却流体通流容器、4 冷却流体送出口、5 通流路、6 絶縁接着層、7 金属箔からなるヒートシンク、8 発熱体、9 冷却流体、10 開口、11 半導体素子、12,12a,12b ヒートスプレッダ、13 樹脂モールド、15 微細窪み、16 剥離部、17 淀み部、18 再付着点、19 バイパス溝、30 伝熱容器、31 伝熱面、51,52 流路、70,71,72,74 ヒートシンク、73 フィン。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などで構成される発熱体を冷却するための冷却構造体およびヒートシンクに関するものである。また、上記発熱体の冷却方法に関するものである。
上記冷却構造体とは、発熱体から発生する熱を冷却流体により冷却する冷却構造を指し、発熱体と冷却流体が通流する通流路とを含む構成である。また上記ヒートシンクは、熱的に発熱体と結合すると共に、冷却流体と直接接触し、上記冷却流体と熱交換して発熱体の熱を冷却流体へ放熱する構造物を指す。
【背景技術】
【0002】
従来の冷却構造体は、例えば冷却流体送入口と、内部に流路が形成された伝熱容器と、冷却流体送出口からなるヒートシンクに発熱体を設けた構成をしており、伝熱容器内流路に冷却流体を通流させることにより、発熱体を冷却する構成をしている。また、このような構成のものにおいて、冷却を促進するために、上記流路内に伝熱促進体(フィンや乱流促進体など)を設けて伝熱促進していた。
また、冷却流体送入口と冷却流体送出口を備え、それぞれに連通する流路が内部に形成された冷却流体通流容器に、内部流路と周囲とを連通する開口を設け、発熱体が設けられた絶縁基板(主に電気絶縁と、搭載される電子素子の保持・固定のために設けられる基板)により該開口を覆い、シールする構成の冷却構造体も提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような冷却構造体においては、流路を流れる冷却流体は絶縁基板を冷却し、絶縁基板を介して発熱体が冷却される構造になっている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−121557号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、従来の冷却構造体では、伝熱容器や絶縁基板上に発熱体が取付けられるため、伝熱容器や絶縁基板と発熱体との間に接触熱抵抗が生じ、放熱特性が悪いという問題があった。また、この接触熱抵抗を低減するために伝熱容器や絶縁基板と発熱体との間に塗布されるサーマルグリースの長期信頼性が無いという問題があった。
さらに、発熱体が電子部品である場合、電気絶縁構造にするために発熱体に設けられる絶縁基板の容積および重量が大きく、また絶縁基板取付けに伴う熱抵抗増大のために、放熱特性が悪くなるという問題があった。さらに、ヒートシンク自身の容積および重量が大きいという問題があった。
【0005】
また、従来のヒートシンクでは、流路内に伝熱促進体を設け、熱伝達を促進しているが、伝熱促進体の熱伝達向上効果よりも、伝熱促進体を設けたことによる圧力損失の増大率が大きく、より高出力のポンプが必要となる。したがって、消費電力が大きく、高価で、容積および重量が大きい装置となってしまう問題があった。
また、圧力損失が大きくなるため、通流路内の圧力が上昇し、周囲との圧力差が大きくなることから、ヒートシンクおよび付随する配管等の耐圧特性を向上させる必要があり、通流路を形成するヒートシンクおよび配管等の肉厚を厚くしなければならず、重量および容積が大きくなるといった問題があった。また、接続部のシール特性をより向上させなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、軽量・コンパクトで、かつ放熱特性に優れた冷却構造体および冷却方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
また、ヒートシンクの重量および容積を大きくすることなく、放熱特性の優れたヒートシンクを提供し、軽量・コンパクトで、かつ放熱特性に優れた冷却構造が実現できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による冷却構造体は、発熱体と、少なくとも冷却流体に面する上記発熱体の表面に、絶縁接着層を介して接着された、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクとを有する放熱構造体、および上記放熱構造体の外部に設置され、内部を流れる冷却流体と上記ヒートシンクとが直接接触するように設置された通流路を備えたものである。
【0009】
また、この発明によるヒートシンクは、冷却流体との接触面に、少なくとも冷却流体の流れ方向に交差する辺または弧を有する微細窪みを設けたものである。
【0010】
また、この発明によるヒートシンクは、冷却流体との接触面に、冷却流体の流れ方向に交差する方向に連なった微細窪みを設けたものである。
【0011】
また、この発明による発熱体の冷却方法は、発熱体の表面に、絶縁接着層を介して、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクが接着された放熱構造体を、上記ヒートシンクが、冷却流体と直接接触するように、上記冷却流体が流れる通流路に設置するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明による冷却構造体および冷却方法は、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクを絶縁接着層を介して発熱体の表面に接着し、このような構成の放熱構造体を、冷却流体と上記ヒートシンクとが直接接触するように通流路に設置するので、軽量・コンパクトで放熱特性に優れた冷却構造体とすることができる。
【0013】
また、この発明によるヒートシンクは、冷却流体と接するヒートシンク表面に、少なくとも冷却流体の流れ方向に交差する辺または弧を有する微細窪み、あるいは冷却流体の流れ方向に交差する方向に連なった微細窪みを設けた構成としたので、圧力損失が小さく、かつ放熱特性に優れたヒートシンクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
図1に示す冷却構造体は、低温の冷却流体(冷媒)9を送入する冷却流体送入口1と、内部に流路が形成された冷却流体通流容器3と、冷却流体送出口4とで形成される一連の通流路5内に、放熱構造体2を設置することにより構成されている。上記放熱構造体2は、発熱体8と、冷却流体9に面する発熱体8の表面に、絶縁接着層6を介して接着された、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンク7とで構成されている。
【0015】
このような構成の冷却構造体に対し、通流管(円管、矩形管、フレキシブルチューブ、ホースなど)によりポンプなどを連結し、冷却流体9を通流させることにより、発熱体8から発生する熱を周囲へ放出する(開放型冷却システム)。あるいは、通流管により放熱器と上記冷却構造体とを連結して循環する通流ループを形成することにより、上記通流ループ内を冷却流体9が循環し、発熱体8から発生する熱を放熱器へ輸送して放熱器から周囲へ熱を放出する(循環型冷却システム)。また、その際、上記通流ループ途中路にリザーバおよびフィルターを設けた循環型冷却システムとしてもよい。
また、上記各冷却システムにおいて、通流管または通流ループに複数の冷却構造体が直接または通流管を介して直列接続された構成としても良い。さらに、複数の冷却構造体が分配用ヘッダおよび合流用ヘッダを介して並列接続された構成としても良い。その際、分配用ヘッダおよび合流用ヘッダが冷却流体通流容器3内に内在しても良い。
【0016】
図1に示す冷却構造体は、通流路5中に発熱体8を設けた構成として示しているが、この構成に限定されるものではなく、例えば図示を省略しているが、絶縁接着層6を介して金属箔からなるヒートシンク7が接着された発熱体8を、河川や海中などに浸潜し、周囲の流水へ放熱する構成でも良い。この場合、河川や海が通流路に相当し、河の水や海水が冷却流体となる。
【0017】
また、図1に示す冷却構造体において、発熱体8は配線されていても良く、その際、上記金属箔からなるヒートシンク7に開孔を設け、防水構造の配線取出口を設けても良い。
【0018】
図2はこの発明の実施の形態1による他の冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
図2に示す冷却構造体は、冷却流体通流容器3上面に開口10を設け、開口10より大きな放熱構造体2のヒートシンク7で該開口10を覆い、シールした構成である。
なお、図2中では、開口10を放熱構造体2の平面部により覆った例で示したが、開口10から一部突出した放熱構造体、または窪みを有する放熱構造体により開口10を覆っても良い。
【0019】
図2に示す冷却構造体において、開口10のシール構造としては、容器3とヒートシンク7とを固着(接着や溶着など)する構成でも良いし、Oリングやガスケットを介して圧接する構成でも良い。冷却流体9の漏れを防止するものであれば、特にそのシール構造は限定されない。
【0020】
次に、図1および図2に示す冷却構造体の動作を説明する。冷却流体送入口1から流路へ送入された低温の冷却流体9は、流路を通過し、冷却流体送出口4から送出される。その際、絶縁接着層6を介し発熱体8と熱的に結合するヒートシンク7は、発熱体8からの受熱により温度上昇し、冷却流体9とヒートシンク7との間には温度差が生じる。ヒートシンク7は流路内の冷却流体9と直接接触するように設置されているため、ヒートシンク7から冷却流体9へ熱が伝えられ、冷却流体9は高温へと昇温して、高温の冷却流体9が冷却流体送出口4から送出される。このように、冷却流体9は、冷却流体送入口1、冷却流体通流容器3内の流路、および冷却流体送出口4を順次通流し、流路を通過する際に高温へ昇温し、高温の冷却流体9が連続的に送出されることになる。
【0021】
本実施の形態の冷却構造体においては、冷却流体9に面する発熱体8の表面に、絶縁接着層6を介して可とう性を有する金属箔からなるヒートシンク7を接着して放熱構造体2を構成しており、上記絶縁接着層6は、ヒートシンク7と発熱体8とを電気絶縁すると共に、ヒートシンク7と発熱体8とを物理的かつ熱的に結合させる。また、絶縁接着層6は樹脂であるため、冷却流体9に接触すると膨潤するおそれがあるが、ヒートシンク7は、金属箔で構成されているため、冷却流体に直接接触しても膨潤することがない。さらに、ヒートシンク7は、可とう性を有するため、冷却流体9と絶縁接着層6とが接触しないように、絶縁接着層6を覆うように配置することができるので、上記絶縁接着層6を防水することができる。したがって、このような構成の放熱構造体2を、図1に示すように、冷却流体9が流れる通流路5中に設置することにより、あるいは図2に示すように、開口10を有する通流路5において、ヒートシンク7が上記開口10を覆うように設置することにより、発熱体8と冷却流体9との間に生じる接触抵抗を小さくすることができ、放熱特性に優れると共に、長期信頼性に優れた冷却構造体が得られる。また、軽量で、かつコンパクトな冷却構造を提供できる。
また、ヒートシンク7が可とう性を有する金属箔からなっており、発熱体8の接着面が平面でない場合においてもヒートシンク7の取付けが容易である。
【0022】
なお、上記実施の形態1における発熱体8は、例えば加熱ヒータ、電子機器、電子部品等の発熱源、またはそれらを集積した発熱源、またそれらの発熱源から熱輸送する機器の放熱部、熱交換器等であり、上記発熱体8は絶縁接着層6を介して熱をヒートシンク7へ印加するものであれば特にその構造および寸法には限定されない。特に、電気絶縁を確保した構造でなくても良い。
【0023】
絶縁接着層6は、前述のように、発熱体8とヒートシンク7とを物理的に固着させるものであり、また発熱体8とヒートシンク7とを熱的に結合させる役割、および発熱体8とヒートシンク7とを電気絶縁する役割を担うものである。具体的な材料としては、例えば、エポキシ樹脂系の接着剤に金属繊維または粉末などのフィラーを混入した高熱伝導・電気絶縁接着剤が望ましい。
また、絶縁接着層6の厚さは300μm以下が望ましく、用いる接着剤の熱伝導率は0.5W/(m・K)以上である方が望ましい。これより厚い場合、およびこれより小さい熱伝導率では、絶縁接着層6の熱抵抗が大きくなり過ぎて放熱特性が悪化する。好ましくは絶縁接着層6の厚さは150μm以下、接着剤の熱伝導率は2W/(m・K)以上である方が望ましい。
一方、用いる接着剤の電気絶縁特性としては、体積抵抗が1012Ω/cm以上、絶縁破壊電圧が10kV/cm以上である必要がある。好ましくは体積抵抗が1013Ω/cm以上、絶縁破壊電圧が100kV/cm以上である方が望ましい。さらに、これらの値が高ければ高いほど電気絶縁耐圧特性が良く、望ましい。
【0024】
ヒートシンク7は、可とう性を有する金属箔であり、前述のように、冷却流体9の透過を防止する役割、および絶縁接着層6を介して発熱体8から冷却流体9へ放熱する役割を担う。ヒートシンク7の材料は、銅、アルミニウムなどの金属材料であり、特に冷却流体9の通流速度が大きな場合には、ステンレスやチタンなどの耐エロージョン・コロージョン特性に優れた材料の方が望ましい。また、複数の異なる金属箔を積層させても良く、さらに金属箔表面を処理し、アルマイト皮膜やベイマイト皮膜などを形成しても良い。
また、ヒートシンク7の厚さは1.5mm以下である方が望ましい。これより厚いと、ヒートシンクの可とう性が低下し、発熱体8にヒートシンク7を接着することが困難になる。特に、接着の際、絶縁接着層6に空隙(ボイド)が残留してしまい、放熱特性が著しく劣化する。また、ヒートシンク7材料と発熱体8材料の線膨張係数が大きく異なる場合、ヒートサイクル時に生じる各部材の伸び量の差が大きく、この差に起因する熱応力のために絶縁接着層6が剥がれ、放熱特性が著しく低下する。ヒートシンク7の厚さが薄いほどこの熱応力は小さくなり(熱応力を緩和することができ)、上記条件であれば耐ヒートサイクル特性も向上する。好ましくは500μm以下である方が望ましい。
【0025】
冷却流体通流容器3は、内部に流路が形成されたもので、冷却流体9の収容および冷却流体9が移動する通路の役割を担うものである。図2に示すように、冷却流体通流容器3に少なくとも一つ以上の開口10が設けられていても良く、その際は、絶縁接着層6を介して発熱体8に接着されたヒートシンク7によりこの開口10が覆われシールされる。これにより、冷却流体9の収容および冷却流体9が移動する通路の役割を担う。
【0026】
なお、ヒートシンク7から冷却流体9への伝熱を促進するために、流路内に伝熱促進体を設けても良い。この場合の伝熱促進体は、熱的にヒートシンク7と結合し、伝熱表面積拡大効果と乱流促進による熱伝達向上効果を合わせ持つフィンであり、略板状、略円柱状などの突起やインナーフィンなどで構成される。また、上記伝熱促進体は、乱流促進による熱伝達向上効果を有する乱流促進体も指し、発熱体8取付け面に対向する流路壁に設けた各種形状の突起、リボンやコイルや各種形状の突起を有する基板、または複数の開孔を有する基板などの内挿物を指している。
なお、図2のように開口10を設けた場合、開口10部の流路の通流横断面積が大きく、通流速度が低下し、放熱特性が悪くなるので、適切な通流路を確保しつつ開口10に対向する流路壁が突出した構成の方が望ましい。
【0027】
流路は、一連の蛇行流路でも良く、分配用ヘッダおよび合流用ヘッダを伴った並列流路でも良く、冷却流体9が移動できる通路であれば特にその構造・形状・寸法などは制限されない。
また、冷却流体通流容器3に設けられた開口10に二つ以上の流路が形成されても良い。例えば、開口10内の流路が仕切り板により分割され、それぞれの流路における冷却流体9の流れ方向が対向する構成としても良い。
【0028】
冷却流体送入口1は、低温の冷却流体9を送入する役割を担い、一方、冷却流体送出口4は、高温の冷却流体9を送出する役割を担っている。これらは、通常、通流管(円管、矩形管、フレキシブルチューブ、ホースなど)と連結される。冷却流体送入口1および冷却流体送出口4と上記通流管との連結部は、通流管が固着されていても良いし、通流管と一体構造物であっても良いし、ニップル付通流管を固着、またはOリングやガスケットを用いて通流管や同様の冷却流体通流容器3と連結される構成でも良く、冷却流体9を送入または送出することができれば特にその構造は制限されない。
【0029】
冷却流体通流容器3を構成する材料としては、冷却流体9を収容できる材料であれば良く、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの樹脂であっても良いし、アルミニウム、銅、ステンレスなどの金属、あるいはそれらを主材料とする複合材料などでも良い。
また、冷却流体通流容器3は複数の部品から構成されていても良い。
さらに、冷却流体通流容器3の一部が樹脂材料により成形された場合、その表面の少なくとも一部に金属板(例えば、ステンレス板など)を設けても良い。このようにすることにより、樹脂材料の経年変化による変形を抑制することができる。特に、発熱体8または発熱体8固定用冶具と上記金属板とにより冷却流体通流容器3を挟み込むように固定すると、よりその効果が大きい。その際、板ばねなどを用いたばね構造により固定する方がより望ましい。
なお、上記金属板が冷却流体9と接するように金属板の一部が流路に剥き出しになっても良く、このようにすることにより、発熱体8として電子機器等が設けられた場合に行われる絶縁(耐圧)試験が容易に行える。
上記金属板は冷却流体通流容器3に設けられていれば良く、特にその寸法および取付け方法は限定されず、ボルト等の固定冶具により固定されても良く、溶着、接着など固着させても良い。またその一部が流路に剥き出しになった場合は、該剥き出し部からの冷却流体9の漏れを防止する構造である必要があり、Oリングやガスケットなどを介して密着させても良い。
【0030】
冷却流体9は、蒸留水、不凍液、油、液化二酸化炭素、アルコールおよびアンモニアなどの液体である。また、ヒートシンク表面で冷却流体9が沸騰する液体でも良い。
【0031】
冷却流体通流容器3と発熱体8間の固定法としては、ボルト・ナット等の冶具により固定しても良く、板ばねなどを用いたばね構造により固定しても良い。冷却流体通流容器3と発熱体8とを固定することができれば、特にその構造は限定されない。
【0032】
実施の形態2.
図3はこの発明の実施の形態2による冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
本実施の形態2は、上記実施の形態1の発熱体8をより具体化したもので、図3に示すように、半導体素子11と、この半導体素子11の片面に設置されたヒートスプレッダ12とで構成されている。このような発熱体に対しては、半導体素子11と反対側のヒートスプレッダ面に、絶縁接着層6を介して可とう性を有する金属箔からなるヒートシンク7を接着させて放熱構造体2を構成する。
【0033】
ヒートスプレッダ12は、半導体素子11を固定する役割、半導体素子11からまたは半導体素子11へ通電する役割、および半導体素子11で発生する熱を熱拡散すると共に、絶縁接着層6を介してヒートシンク7へ上記熱を伝える役割を担うもので、金属からなる。好ましくは、熱伝導率の高い銅および銅を主材料とする合金からなる方が望ましい。
【0034】
半導体素子11は、半導体素子11下面とヒートスプレッダ12上面とが物理的、熱的、電気的に結合し(例えば、半田付など)、一方図示を省略している電極と半導体素子11上面とが電気的に連結されており(例えば、アルミニウムワイヤや半田バンプを介して連結)、上記電極とヒートスプレッダ12との間を電気的に連結または非連結する役割を担うものである。したがって、電極とヒートスプレッダ12との間を通電し、半導体素子11を制御することにより、所望の機能(例えば、交流を直流または直流を交流へ変換するなどの機能)を得ることができるものであれば良く、例えばIGBTやDiodeなどの半導体素子である。
なお、半導体素子11とヒートスプレッダ12との間に、一つまたは複数の介在物(例えば基板など)が設けられても良い。
【0035】
なお、実施の形態2による放熱構造体では、ヒートスプレッダ12上面に半導体素子11を設け、該ヒートスプレッダ12下面に前記ヒートシンク7が接着された構成であれば良く、その他の構成に関しては特に制限されない。例えば、図示を省略しているが、上記半導体素子11と異なる制御用素子、ゲート電極やセンサー素子などをヒートスプレッダ12上またはその上方さらに側方に設けても良い。
また、ヒートスプレッダ12の少なくとも一部を剥き出しにし、かつ上記部材(半導体素子、ヒートスプレッダ、電極、半導体素子と異なる制御用素子、ゲート電極、センサー素子など)を一括して樹脂モールドし、その後ヒートシンク7を接着しても良く、また、ヒートスプレッダ12に予めヒートシンク7を接着し、その後、ヒートシンク7の少なくとも一部が剥き出しになるように、上記部材を樹脂モールドした構成でも良い。図3において、13は樹脂モールドを示す。
以下、少なくともヒートシンク7、絶縁接着層6、ヒートスプレッダ12、半導体素子11から構成される構造物を片面放熱構造体20と記す。
【0036】
図3に示す冷却構造体は、上記構成の片面放熱構造体20を、図2と同様の構成の、開口10が設けられた冷却流体通流容器3に設置するものであり、片面放熱構造体20のヒートシンク7が上記開口10を覆うように設置されている。該ヒートシンク7は開口10より大きなヒートシンク7である。
【0037】
次に、上記冷却構造体の動作を説明する。冷却流体送入口1から流路へ送入された低温の冷却流体9(冷媒)は流路を通流しつつ、片面放熱構造体20のヒートシンク7と接し、冷却流体送出口4から送出される。その際、ヒートスプレッダ12と電極との間に通電し半導体素子11を制御することにより、半導体素子11は所望の機能を果たし、同時に電気的なロスから発生する熱がヒートスプレッダ12と絶縁接着層6とを介してヒートシンク7へ伝えられる。この受熱によりヒートシンク7は昇温し、冷却流体9とヒートシンク7との間には温度差が生じる。ヒートシンク7は流路内の冷却流体9と直接接触するように設置されているため、ヒートシンク7から冷却流体9へ熱が伝えられ、冷却流体9は高温へと昇温して、高温の冷却流体9が冷却流体送出口4から送出される。このように、冷却流体9は、冷却流体送入口1、冷却流体通流容器3内の流路、および冷却流体送出口4を順次通流し、流路を通過する際に片面放熱構造体20から受熱し高温へ昇温し、高温の冷却流体9が連続的に送出されることになる。
【0038】
図3に示す本実施の形態の冷却構造体においても、実施の形態1と同様、半導体素子11およびヒートスプレッタ12と冷却流体9との間に生じる接触抵抗を小さくすることができ、放熱特性に優れると共に、長期信頼性に優れた冷却構造体が得られる。また、軽量で、かつコンパクトな冷却構造を提供できる。
【0039】
図4はこの発明の実施の形態2による他の冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
図4において、放熱構造体20は、半導体素子11と、この半導体素子11の両面にそれぞれ設置され、半導体素子11と反対側の面にそれぞれ、絶縁接着層6を介して可とう性を有する金属箔からなるヒートシンク7が接着された2つのヒートスプレッタ12a、12bとで構成されている。図4の放熱構造体20では、図3に示した放熱構造体20の電極(図示を省略)が、ヒートスプレッダ12bとして半導体素子11上面に設けられた構成であり、下側のヒートスプレッダを第1ヒートスプレッダ12a、上側の電極を第2ヒートスプレッダ12bと呼ぶことにする。なお、第1ヒートスプレッダ12aは図3のヒートスプレッダ12と同様のものである。
【0040】
第2ヒートスプレッダ12bは上記電極に相当しており、さらに半導体素子11で発生する熱を拡散すると共に、絶縁接着層6を介してヒートシンク7へ上記熱を伝える役割を担うもので、金属からなる。第1ヒートスプレッタ12aと同様、好ましくは、熱伝導率が高い銅および銅を主材料とする合金からなる方が望ましい。なお、第1ヒートスプレッダ12aと異なり、半導体素子11を固定する役割を担う必要性が無いことから、第2ヒートスプレッダ12bは半導体素子11と物理的に結合する必要性は無く、直接または介在物(例えば、半田バンプなど)を介して第2ヒートスプレッダ12bと半導体素子11とが接することにより、電気的および熱的に結合する構成であっても良いし、第1ヒートスプレッダ12aと同様に物理的に半導体素子11と結合していても良い。その他の各部材および構成に関しては、図3の説明と同様である。
【0041】
以下、少なくともヒートシンク7、絶縁接着層6、第1ヒートスプレッダ12a、第2ヒートスプレッダ12b、半導体素子11から構成される構造物を両面放熱構造体20と記す。
【0042】
図4に示す冷却構造体は、上記構成の両面放熱構造体20の両側に、冷却流体送入口1と、内部に流路が形成され、かつ開口10が設けられた冷却流体通流容器3と、冷却流体送出口4とからなる通流路5をそれぞれ設置したものであり、両面放熱構造体20の各ヒートシンク7が上記各通流路5の開口10を覆うように設置されている。該ヒートシンク7は開口10より大きなヒートシンク7である。
【0043】
次に、上記冷却構造体の動作を説明する。それぞれの通流路5において、冷却流体送入口1から流路へ送入された低温の冷却流体9(冷媒)は、流路を通流しつつ、両面放熱構造体20のそれぞれのヒートシンク7と接し、冷却流体送出口4から送出される。その際、第1ヒートスプレッダ12aと第2ヒートスプレッダ12bとの間に通電し半導体素子11を制御することにより、半導体素子11は所望の機能を果たし、同時に電気的なロスから発生する熱が各ヒートスプレッダ12a、12bと絶縁接着層6とを介して二つのヒートシンク7へ伝えられる。この受熱によりそれぞれのヒートシンク7は昇温し、流路内の冷却流体9とヒートシンク7との間に温度差が生じる。各ヒートシンク7は流路内の冷却流体9と直接接触するように設置されているため、ヒートシンク7から冷却流体9へ熱が伝えられ、冷却流体9は高温へと昇温して、高温の冷却流体9が冷却流体送出口4から送出される。このように、二つの通流路5それぞれにおいて、冷却流体9が、冷却流体送入口1、冷却流体通流容器3内の流路、および冷却流体送出口4を順次通流し、流路を通過する間に、両面放熱構造体20から受熱し高温へ昇温し、高温の冷却流体9が連続的に送出されることになる。
【0044】
図4に示す本実施の形態の冷却構造体においても、半導体素子11およびヒートスプレッタ12と冷却流体9との間に生じる接触抵抗を小さくすることができ、放熱特性に優れると共に、長期信頼性に優れた冷却構造体が得られる。また、軽量で、かつコンパクトな冷却構造を提供できる。
さらに、従来の冷却構造体を基に両面から放熱する構造にした場合、強固な絶縁基板により挟まれた構成になることから、半導体素子の両面が強く拘束されてしまい、熱応力などにより発生した力が半導体素子に直接働き、半導体素子や接合部などが破壊してしまう。しかし、本実施の形態の放熱構造によれば、各ヒートシンクやヒートスプレッダなどがより柔軟に配設されている(強い拘束力がない)ことから、半導体素子に大きな力が働き難く、上記した破壊を抑制することができる。したがって、図4に示すような構成とすることにより、二つのヒートシンク7から放熱することができ、放熱特性が著しく向上する。
【0045】
なお、図4では、二つの冷却流体通流容器3により両面放熱構造体20を挟み込む構成として説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、UまたはW字状の冷却流体通流容器3の二面に挟まれる空間に両面放熱構造体20を挿入し、その二面のそれぞれに設けられた開口10を、両面放熱構造体20のヒートシンク7が覆いシールされる構成でも良い。
【0046】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3による冷却構造体を模式的に示す構成図であり、図5(a)はヒートシンクの伝熱面を示す平面構成図、図5(b)は断面構成図である。また、図5(b)においては、放熱構造体2の丸印部分を拡大した図を合わせて示す。
本実施の形態3による冷却構造体は、上記実施の形態1および実施の形態2における放熱構造体のヒートシンク表面に、断面形状が矩形で、かつ流体の流れ方向に交差する方向に連なった一連の微細窪み15を設けたものである。
本実施の形態では、微細窪み15内へ主流(流路中央部の冷却流体の流れ)の低温流体が流入し、微細窪み15内の高温流体と撹拌混合され、再び微細窪み15下流側で主流へ押出されることにより、ヒートシンク7表面に形成される温度境界層の発達を抑制し、伝熱特性を向上させるようにしたものである。したがって、ヒートシンク7の放熱特性は、冷却流体9の物性値(種類および温度などに影響される値)や流速に大きく依存する。
【0047】
そこで、所望の通流路形状および使用条件(冷却流体9の種類や温度、圧力、流速など)において、ヒートシンク表面が滑らかである場合の平均温度境界層厚さをδとし、この厚さを基準に微細窪み15の寸法を検討した結果について説明する。なお、ヒートシンク表面が滑らかである場合の平均温度境界層厚さδは、例えば、流路幅50mm、流路長50mm、流路高さ3mmの流路に、20℃の水を通水し冷却する場合、δ=0.09mmである。
本実施の形態の微細窪み15の深さをH1とすると、(1.5×δ)<H1<(ヒートシンク7の厚さ)でなければならない。H1≦(1.5×δ)である場合、微細窪み15内には主にヒートシンク7表層の高温流体のみが流入・流出する結果、ヒートシンク7の表面が高温流体で覆われてしまい、放熱特性の改善効果が得られ難くなる。好ましくは、(2.0×δ)<H1<(ヒートシンク7の厚さ−50μm)である方が望ましい。
一般に、微細窪みに形成される剥離部の流れ方向の長さは、微細窪み15の深さH1の5倍程度と言われている。それゆえ、微細窪み15の流れ方向の開口幅がこれ以上でなければならない。一般化するために、微細窪み15の水力相当直径(=4×微細窪み15の開口面積/微細窪み15の開口部周長)をDとすると(例えば、微細窪み15の形状が、図5に示す形状であり、流れ方向に沿った上記微細窪みの長さ(開口幅)がLの場合、D≒2×Lとなる)、D>(10×H1)でなければならない。D≦(10×H1)の場合、微細窪み15内のほとんどの部分が剥離部16または淀み部17となり、冷却流体9が流入し難く、放熱特性の改善効果が得られ難くい。
【0048】
以上のような寸法条件を満たす微細窪み15をヒートシンク7表面に設けると、ヒートシンク7表層の高温流体と主流の低温流体とが撹拌混合され、温度境界層の発達を抑制することができるので、ヒートシンクの放熱特性が向上する。
【0049】
なお、図5においては、微細窪み15の断面形状が矩形であり、かつ流体の流れ方向に交差する方向に連なった一連の微細窪み15を示したが、上記断面形状は三角形、半円形などでも良い。また、流体の流れ方向に交差する方向に連なった一連の蛇行溝であってもよい。さらに、微細窪み15の形状は、流体の流れ方向に交差する方向に連なった一連の窪みでなくてもよく、流体の流れ方向に交差する辺または弧を有するものであれば、立方体、直方体、半球、円錐、円柱、三角柱などの形状でもよい。また、これらの形状の窪みが、千鳥配列や碁盤目配列などのように複数点在するように、断続的に設けられても良く、特にその形状および配置は制限されない。
なお、その際の微細窪み15の深さH1および水力相当直径Dにおいても、前述の条件を満たす必要がある。
【0050】
上記種々の形状の微細窪みにおいて、冷却流体9の流れ方向に沿った辺では、微細窪み15内の冷却流体9に働くせん断力の影響が大きく、微細窪み15内の冷却流体9の流速が低下し、また流路を流れる低温流体(主流)と微細窪み15内の高温流体の入れ替わり効率が悪く、微細窪み15内に高温流体が停滞しやすいので、放熱特性の向上効果が小さい。一方、冷却流体の流れ方向に直交する方向の辺では上記せん断力の影響は小さく、微細窪み15内へ主流の低温流体が流入し、微細窪み15内の高温流体と撹拌混合され、再び微細窪み15下流側で主流へ押出されることにより、ヒートシンク7表面に形成される温度境界層の発達を抑制し、伝熱特性を向上させることが可能となる。したがって、放熱特性が向上する微細窪みの形状としては、冷却流体の流れ方向に直交する方向に辺を有する形状である必要がある。望ましくは、冷却流体の流れ方向に直交する方向に連なった形状の微細窪みである方がよい。
なお、微細窪み15は冷却流体9の流れ方向と直交する必要は無く、冷却流体9の流れ方向と任意の角度を有して交差する方向に辺を有しておれば、同様の効果がある。さらに直線状でなくても良く円弧状、蛇行状、ジグザグ状でも良い。
【0051】
このように、本実施の形態は、ヒートシンク表面に設けられた、少なくとも冷却流体の流れ方向に交差する辺または弧を有する微細窪みにより、ヒートシンク7表面に形成される温度境界層の発達を抑制し、伝熱特性を向上させるものであるが、上記窪みによるこのような効果が得られる要因の1つは、微細窪みにより冷却流体の剥離が生じ、窪み内の伝熱面に低温の冷却流体が衝突して噴流効果をおこすことによると考えられる。また、別の要因としては、窪みの内壁面に沿って流入し昇温した高温流体と、主流から窪み内に直接流入する低温流体とが窪み内、または窪みからの流出部で混合攪拌されることによると考えられる。いずれの要因によって伝熱促進効果が得られるかは窪みの形状により異なってくる。
【0052】
次に、冷却流体の流れ方向に沿った、微細窪みの深さ方向の断面形状について説明する。図6に典型的な不等脚台形状の断面を有する微細窪み15が設けられた流路を示す。
図示したように、微細窪み15の角部をA、B、C、Dとし、それぞれの角部におけるヒートシンク7平面と成す角度をθ1、θ2、θ3、θ4とする。また、微細窪み15の配設ピッチをPとし、A−B、B−C、C−D、D−A区間の、ヒートシンク7平面方向の距離をL1、L2、L3、L4とする。また、流路の高さをH2、微細窪み15の深さをH1とする。なお、微細窪み15の開口幅Lは、L=L1+L2+L3として表せる。
【0053】
まず、微細窪み15による冷却流体9の剥離に関して説明する。図6において、通流路5を左から右へ冷却流体9が通流する場合について説明する。
図6において、剥離が生じるには角部Aで剥離を引き起こす必要がある。剥離部16が生じると、剥離部16の下流側が低温流体の再付着点18となり、主流の低温流体の流入が生じる。したがって、この再付着点18より下流部の熱伝達が向上し、ヒートシンク7の放熱特性が向上する。
【0054】
剥離する条件としては、二次元デフューザーに関する文献(Rneau,L.R.他2名、Trans.ASME、Ser.D、89−1(1967−3)、P141)や文献(Fox,R.W.とKline,S.J.、Trans.ASME、Ser.D、84−3(1962−9)、P303)に記述されるように、θ1>約30°であると剥離が生じ、θ1>(40×(L1/H2)1/3)°であれば安定して剥離部が形成する。したがって、本発明においても、θ1>30°である必要があり、好ましくはθ1>(40×(L1/H2)1/3)°である方が望ましい。
【0055】
θ2に関しては、特に制約条件は無い。
θ3は、角部Cに冷却流体9の淀み部17が形成されやすいことから、広角(θ3>90°)である方が望ましい。
θ4は、θ3の条件に呼応して鋭角(θ4<90°)である方が望ましい。
【0056】
なお、B−C面とD−A面とは平行でなくても良い。
また、角部Aは剥離しやすいようにエッジを有した方が望まれるが、その他の角部B、C、Dは冷却流体9がスムーズに流れるように曲面からなる方が望ましい。
また、図6では微細窪み15を形成する各面を平面として示しているが、曲率の大きな曲面であっても良い。
上記の条件より、微細窪み15の断面形状としては、上記条件を満足する開口部が大きな略台形である方が望ましい。
【0057】
H1に関しては、前述したように、(1.5×δ)<H1<(ヒートシンク7の厚さ)である必要がある。また、Lも同様、L>(5×H1)である必要がある(D≒2×Lの場合)。
ただし、例えば両端部など、微細窪み15の一部は、上記範囲のH1およびLでなくても良い。
【0058】
また、図6において、A−B面は剥離部16で覆われるため放熱特性が悪く、一方、B−C面およびD−A面は主流の流れとほぼ平行であるが、C−D面は主流の流れ方向と任意の角度を有することから、主流がC−D面に衝突するため噴流効果が得られ、放熱特性が高い。それゆえ、C−D面が最も重要であり、L3が長いほど良い。つまり、L2=L4=0の方が望ましい。なお、この場合、角部Bと角部Cが一致するため、角部Cでの淀み部17が剥離部16に含まれ、淀み部17における放熱特性の悪影響が無くなるので、さらに放熱特性が良くなる。
上記条件より、微細窪み15の断面形状としては、上記条件を満足する略不等辺三角形である方がさらに望ましい。
さらに、L1は小さいほど良く、L1=0(微細窪み15の断面形状が直角三角形)でも良く、またL1<0(θ1>90°)でも良い。(但し、θ1が大きくなり過ぎると、放熱特性の改善効果が小さくなる。)
なお、断面形状が略不等辺三角形である場合のθ4は、上記条件より、θ4<19°(θ1>θ4)となる。
【0059】
このように、微細窪み15の断面形状が略不等辺三角形であり、上流側の角度θ1がθ1>30°、下流側の角度θ4がθ4<19°であると、上流側の角部Aで剥離が生じ、主流が角部Aに対向する伝熱面(C−D面)に衝突して噴流効果が得られ、放熱特性が高いヒートシンクが得られる。また、この場合、微細窪み15内の下流側の伝熱面(C−D面)が主流方向へ突出していることから、角部Aで剥離した冷却流体9が再付着点18に達するまでのH1方向の移動距離が短くなり、再付着点までの流れ方向の距離(L方向の剥離部16の長さ)が短くなる。よって、配設ピッチP区間に占める有効な伝熱面積の割合が大きくなり、放熱特性が向上する。
【0060】
次に、窪みの内壁面に沿って流入し昇温した高温流体と、主流から窪み内に直接流入する低温流体とが窪み内で混合攪拌されることによる伝熱促進効果について説明する。説明の都合上、図6において、冷却流体9が流路を右から左へ流れる場合として説明する。
A−D−C−Bに沿って流れる高温流体がA−B面へ流入し、一方微細窪み15の開口部から主流の低温流体がA−B面へ流入し、それぞれの冷却流体がA−B面で衝突し、撹拌混合することにより、ヒートシンク7表面に形成される温度境界層の発達を抑制し、放熱特性を向上させる。このような要因により放熱を促進する場合、まず冷却流体9がD−C面に沿って通流した方が良く、角部Dで剥離が生じない方が良い。よって、前述した各文献に記載される剥離しない条件より、図6の構成において、θ4<(25×(L3/H2)-1/2)である必要がある。好ましくは、より安定して剥離しないように、θ4<(12.5×(L3/H2)-1/2))である方が望ましい。
θ3は、角部Cに冷却流体9の淀み部17が形成されやすいことから、広角(θ3>90°)である方が望ましい。
θ2に関しては、特に制約条件は無い。
A−B面に直交して低温流体が流入した方が冷却流体の混合および撹拌作用が高く、θ1≒(90°−θ4)が望ましいが、θ1<(90°−θ4)になると著しくその効果が小さくなるわけではない。
一方、A−B面は冷却流体が衝突する面であることから放熱特性が良いが、θ1>90°になると角部B周りに高温流体を停滞させる窪みを形成するため、放熱特性が低下し始める。
以上のことから、30°<θ1<100°である必要がある。好ましくは、θ1は(90°−θ4)±10°以内である方が望ましい。
なお、B−C辺とD−A辺は平行でなくても良く、また全ての角部は曲面からなっても良い。さらに、図6では微細窪み15を形成する各面を平面として示しているが、曲率の大きな曲面でも良い。
上記の条件より、微細窪み15の断面形状としては、上記条件を満足する開口部が大きな略不等脚台形である方が望ましい(θ1>θ4)。
【0061】
H1に関しては、上記同様、(1.5×δ)<H1<(ヒートシンク7の厚さ)である必要がある。また、Lも同様、L>(5×H1)である必要がある(D≒2×Lの場合)。
ただし、例えば両端部など、微細窪み15の一部は、上記範囲のH1およびLでなくても良い。
【0062】
また、A−D面、D−C面、C−B面は、全てその表面上を冷却流体が通流し放熱する役割を担うもので特に区別する必要は無い。つまり、L2=L4=0でも良い。このようにすることにより、角部Bと角部Cが一致するため、角部Bと角部Cで生ずる淀み部17が一つになることから、淀み部17における放熱特性の悪影響が小さくなり、さらに放熱特性が良くなる。
上記の条件より、微細窪み15の断面形状としては、上記条件を満足する略不等辺三角形である方がさらに望ましい(θ1>θ4)。
【0063】
このように、微細窪み15の断面形状が略不等脚台形あるいは略不等辺三角形であり、上流側の角度θ4と下流側の角度θ1とが、θ1>θ4であると、窪み内に流入する高温流体と主流の低温流体とが、上流側の角部Dに対向する伝熱面(A−B面)で衝突し混合攪拌されるので、放熱特性が高いヒートシンクが得られる。
【0064】
なお、以上の説明から、θ1>θ4であり、かつθ1>30°となる窪み形状の場合は、冷却流体がいずれの方向に流れても、放熱特性が高いヒートシンクが得られることとなる。
【0065】
本実施の形態の構成による効果を実証するために,4種類の伝熱面形状の異なるヒートシンクを用いて、熱流動試験を実施した。試験装置は、流路幅50mm、流路高さ2mmの流路に50mm四方の開口を設け、開口部に銅製のヒートシンクを装着し、ヒートシンク背面より300Wを入熱した。評価したヒートシンクは、冷却流体と接する伝熱面が、平面状のもの(基準流路R0)、ヒートシンクの伝熱面に冷却流体通流方向に沿って高さ2mm、厚さ1.5mmの板状フィンを配設ピッチ3.5mmで複数設けたもの(ストレートフィン付流路Rf)、ヒートシンクの伝熱面に、冷却流体上流側が大きく窪んだ不等辺三角形溝(深さ300μm)を冷却流体通流方向に直行するように3.5mm間隔で複数設けたもの(本実施の形態による流路R1)、ヒートシンクの伝熱面に、冷却流体下流側が大きく窪んだ不等辺三角形溝(深さ300μm)を冷却流体通流方向に直行するように3.5mm間隔で複数設けたもの(本実施の形態による流路R2)である。冷却流体は50wt%の不凍液であり、入口温度を70℃に設定した。
【0066】
試験結果を、図7(a)〜(c)に示す。図7(a)は圧力損失と流速の関係を示す。基準流路R0に比べ、ストレートフィン付流路Rfの圧力損失は約6倍程度増大しているが、本実施の形態の流路R1、R2の場合ほとんど増加していない。
図7(b)は熱伝達係数と流速の関係を示す。基準流路R0に比べ、ストレートフィン付流路Rfの熱伝達係数は約3倍程度増大するが、圧力損失の増大率より小さい。本実施の形態の流路R1、R2の場合、流速が0.5m/s以下では基準流路とほぼ同等の値を示すが、0.5m/s以上では熱伝達係数が大きく増大し、基準流路より1.7倍程度大きな値を示す。
より解かり易い比較をするために、図7(c)に熱伝達係数と圧力損失の関係を示す。同一圧力損失に関して比較すると(例えば、2000Pa)、基準流路R0に比べ、本実施の形態の流路R1、R2では熱伝達係数が約1.7倍程度に増大した。一方、ストレートフィン付流路Rfでは、冷却流体と接する伝熱面積が基準流路に比べ約1.7倍に増大するにもかかわらず、熱伝達係数は約1.4倍程度の上昇にとどまっている。また、同一熱伝達係数に関して比較すると(例えば、8000W/(m2K)、基準流路R0に比べ、本実施の形態の流路R1、R2では、圧力損失が約1/3に減少している。したがって、本実施の形態のヒートシンクを用いた場合、より小型のポンプにより目的の放熱を行うことができる。
【0067】
このように、本実施の形態の流路構成では、流動特性がほとんど悪化せず、伝熱特性のみ著しく増大する効果がある。
また、ストレートフィン付ヒートシンクのように、伝熱面に突起物を設ける必要が無いことから、容易に製作することができ、低コストとなる。また、突起物が無いことから、搬送時の突起の保護が不要であり、さらに突起をぶつける等により熱流動特性が大きく変化して信頼性が低下することもない。さらに搬送容積も小さくなることから搬送時のコストが小さくなる。さらに、従来のように、フィン等の突起物を設け、表面積を増大させ、伝熱特性を向上させる効果は、流路高さが小さくなるにつれ減少するが、本実施の形態の流路は流路高さが小さくなってもその効果が変らないことから、本実施の形態の流路構成は流路高さが小さい場合に特にその効果が大きい。
また、低流速の場合(本実験では流速が0.5m/sより小さい場合)は層流域であり、上記のような本発明の効果は顕著には見られなかった。本実施の形態は特に乱流域(本実験では流速が0.5m/s以上の場合)においてその効果が得られる。なお、微細窪み15深さH1が大きくなるほど、層流領域から乱流領域に遷移する臨界流速は小さくなる(より小さな流速でも乱流域に達する)。
【0068】
上記実施の形態では、微細窪み15内の高温流体を下流側へ押し出す構成であるが、更なる伝熱促進法として、図8と図9に示すように、微細窪み15に対し、冷却流体の流れ方向に沿ったバイパス溝19を設け、このバイパス溝19へ上記微細窪み15内の高温流体を効率良く押し出すことにより、微細窪み15内の温度境界層の厚さをより小さくし、放熱特性を向上させても良い。なお、図8(a)、図9(a)はヒートシンクの伝熱面の平面構成図、図8(b)、図9(b)は各々図8(a)、図9(a)のB−B線での断面構成図である。また、図8(c)、図9(c)は各々図8(a)、図9(a)のC−C線での断面構成図であり、冷却流体の動きを合わせて示す。
【0069】
このようにすることにより、微細窪み15内の高温流体が流出する出口が大きくなり、効率良く高温流体が流出し、放熱特性が向上する。特に、剥離部16および淀み部17内の高温流体が排出されやすく、有効な伝熱面積が増大し、より放熱特性が向上する。
【0070】
なお、上記バイパス溝19の形状は、その横断面形状が矩形または三角形などでもよく、その形状、寸法等は特に制限されない。
【0071】
また、上記ヒートシンク7の周辺部はシール特性を向上させるため、微細窪み15を設けない方が望ましい。
また、一つのヒートシンク7中に複数の異なる形状(パターン)の微細窪み15が形成されていても良い。
さらに、ヒートシンク7周辺のシール部と中央の放熱部、すなわち冷却流体9と接する部分は同一面にある必要は無く、シール部と放熱部間に任意の段差を設けても良い。
【0072】
実施の形態4.
図10はこの発明の実施の形態4によるヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。図10においては、ヒートシンクの丸印部分を拡大した図を合わせて示す。
本実施の形態4によるヒートシンク70は、図10に示すように、冷却流体送入口1と、内部に流路が形成された伝熱容器30と、冷却流体送出口4からなり、ヒートシンク70の、流路内壁面には、実施の形態3で説明した微細窪み15が設けられている。上記実施の形態3で説明した微細窪み15による放熱特性改善効果は、図7で示す実験結果からもわかるように、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクに微細窪み15を設けた構成特有のものではなく、任意の伝熱面に対して上記微細窪み15を設ける場合においても効果がある。
上記微細窪み15は、ヒートシンク70の内壁面表層の冷却流体のみを撹拌混合し、温度境界層の発達を抑制するものであり、主流の流れを乱さないことから圧力損失の増加が小さいので、ヒートシンクの重量および容積を大きくすることなく、ヒートシンクの放熱特性を向上させることができる。
また、このような微細窪み15は、伝熱面積を増やすために伝熱面にフィン等の突起を設けるものに比べ、より優れた伝熱特性を有すると共に、重量が重くならず、また、製造も容易である。
【0073】
なお、本実施の形態のヒートシンク70の伝熱容器30には発熱体8が設けられ、伝熱容器30内流路に冷却流体9を通流させ、発熱体8を冷却する冷却構造を形成するが、発熱体8は該ヒートシンク70に電気を供給しない構造でヒートシンク70に熱を印加できるものであれば、その構造、形状、寸法等制限されない。また、発熱体8と伝熱容器30間にサーマルグリースなどの接触熱抵抗低減剤を塗布しても良い。
また、ヒートシンク70は複数の分割部品から構成されても良い。
【0074】
図11はこの発明の実施の形態4による他のヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。冷却流体送入口1と、内部に流路が形成された冷却流体通流容器32と、冷却流体送出口4とからなる通流路5において、冷却流体通流容器32に内在する流路と周囲とを連通する開口10を設け、上記実施の形態3で説明した微細窪み15が設けられた基板状のヒートシンク71により、該開口10を覆いシールする。その際、ヒートシンク71は、上記微細窪み15が設けられた面が通流路5内の冷却流体9と直接接触するように配置され、ヒートシンク71の背面には発熱体8が設けられる。
なお、この場合、発熱体8とヒートシンク71との間にサーマルグリースなどの接触熱抵抗低減剤を塗布しても良いし、発熱体8とヒートシンク71とが半田等により固着されていても良い。
また、ヒートシンク71は、基板と、上記基板上に固着(接着、半田付など)された可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクとで構成され、上記金属箔からなるヒートシンク表面に微細窪み15を設けても良い。
【0075】
図12はこの発明の実施の形態4による他のヒートシンクを模式的に示す構成図であり、図12(b)は図12(a)のB−B線での断面構成図、図12(c)は図12(b)のC−C線での断面の一部を拡大して示す図である。
図12において、ヒートシンク72の伝熱面には複数のフィン73が設けられており、ヒートシンク72の伝熱容器30内には複数の流路51が形成されている。またフィン73表面には、上記実施の形態3で説明した微細窪み15が設けられている。
このような構成であっても、フィン73を設ける効果に加え、さらに微細窪み15による効果が加わり、放熱特性の優れたヒートシンクが得られる。
なお、図12において、フィン73が設けられた伝熱内壁面にも微細窪み15を設けても良い。
【0076】
図13はこの発明の実施の形態4による、さらに他のヒートシンクを模式的に示す構成図であり、図13(b)は図13(a)のB−B線での断面構成図、図13(c)は図13(b)のC−C線での断面の一部を拡大して示す図である。
図13において、ヒートシンク74を構成する伝熱容器30内に円形の流路52を一つまたは複数設け、その流路内壁面に上記実施の形態3で説明した微細窪み15が設けられている。
このような構成の場合は、特にねじ切り加工などにより、流路内壁面に微細窪み15を容易に加工することができる。
また、圧力損失の増加が小さく、放熱特性を向上させたヒートシンクを提供することができる。
【0077】
なお、図12ではフィン73の対向する面に設けられる微細窪み15の先端位置が一致して配設された例で示したが、図13に示すように対向する面に設けられる微細窪み15の先端位置がずれて配設されても良い。
【0078】
また、本実施の形態4で示した各構成のヒートシンクにおいても、冷却流体との接触面に設けられる微細窪み15は、冷却流体9の流れを横断する方向に連なった一連状の窪みであって、上記冷却流体9の流れ方向に沿った、深さ方向の断面形状が、略台形または略不等辺三角形断面を有する微細窪み15を設けた方が望ましい。
また、微細窪み15にバイパス溝19を設ける構成としても良い。
【0079】
実施の形態5.
図14はこの発明の実施の形態5によるヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。図14においては、ヒートシンクの丸印部分を拡大した図を合わせて示す。
本実施の形態5によるヒートシンク75は、図14に示すように、冷却流体9が送入される冷却流体送入口1が、ヒートシンクの伝熱面76の略中央部に対向するように配設されたものであり、上記ヒートシンクの伝熱面76には上記実施の形態3で説明した微細窪み15が設けられているものである。
【0080】
一般に、発熱体8は発熱源が発熱体中央に配設されたり、あるいは発熱体中央が蓄熱しやすい構造のため、発熱体中央をより低温の冷却流体9で冷却した方が、放熱特性が良い。しかし、単に伝熱面76の中央に対向して冷却流体送入口1を設け、送入口1から冷却流体9を送入しても、冷却流体送入口1近傍の伝熱面76では衝突噴流による高い伝熱促進効果が得られるが、伝熱面76の周辺部では温度境界層が厚く放熱特性が悪くなり、ヒートシンク全体としての放熱特性はあまり良くない。
そこで、本実施の形態では、伝熱面76に上記実施の形態3で述べた微細窪み15を設けることにより、温度境界層の発達を抑制し、放熱特性を向上させている。これにより、ヒートシンク全体の放熱特性がさらに向上する。
特に、上記微細窪み15を設ける際には、冷却流体送入口1位置に対し、線対称になるように、また多重円を形成するように、さらに渦巻き状に上記微細窪み15を設けることにより、冷却流体送入口周辺部における放熱特性が向上し、ヒートシンク全体の放熱特性が向上する。
【0081】
なお、微細窪み15は、花びら形状の多重円や渦巻き状を形成しても良い。
さらに、伝熱面76と対向する面に冷却流体9の流れを案内する突起を設けても良い。この突起により、絞り、旋廻流または乱流を引き起こすと、さらに放熱特性が向上する。
【0082】
また、本実施の形態4では、基板状のヒートシンクに対して説明したが、実施の形態1または実施の形態2に示した冷却構造体におけるヒートシンク7に対しても、同様の構成とすることにより、本実施の形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】この発明の実施の形態1による冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による他の冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
【図3】この発明の実施の形態2による冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
【図4】この発明の実施の形態2による他の冷却構造体を模式的に示す断面構成図である。
【図5】この発明の実施の形態3による冷却構造体を模式的に示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係わる微細窪みの断面形状を模式的に示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3による冷却構造体を従来のものと比較して説明する図である。
【図8】この発明の実施の形態3による他の冷却構造体を模式的に示す構成図である。
【図9】この発明の実施の形態3によるさらに他の冷却構造体を模式的に示す構成図である。
【図10】この発明の実施の形態4によるヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。
【図11】この発明の実施の形態4による他のヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。
【図12】この発明の実施の形態4による他のヒートシンクを模式的に示す構成図である。
【図13】この発明の実施の形態4によるさらに他のヒートシンクを模式的に示す構成図である。
【図14】この発明の実施の形態5によるヒートシンクを模式的に示す断面構成図である。
【符号の説明】
【0084】
1 冷却流体送入口、2,20 放熱構造体、3,32 冷却流体通流容器、4 冷却流体送出口、5 通流路、6 絶縁接着層、7 金属箔からなるヒートシンク、8 発熱体、9 冷却流体、10 開口、11 半導体素子、12,12a,12b ヒートスプレッダ、13 樹脂モールド、15 微細窪み、16 剥離部、17 淀み部、18 再付着点、19 バイパス溝、30 伝熱容器、31 伝熱面、51,52 流路、70,71,72,74 ヒートシンク、73 フィン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体から発生する熱を冷却流体により冷却する冷却構造体において、発熱体と、少なくとも上記冷却流体に面する上記発熱体の表面に、絶縁接着層を介して接着された、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクとを有する放熱構造体、および上記放熱構造体の外部に設置され、内部を流れる冷却流体と上記ヒートシンクとが直接接触するように設置された通流路を備えたことを特徴とする冷却構造体。
【請求項2】
放熱構造体は通流路内に設置されていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造体。
【請求項3】
通流路は、冷却流体送入口と、内部に流路が形成され、かつ開口が設けられた冷却流体通流容器と、冷却流体送出口とを有し、
放熱構造体は、上記放熱構造体のヒートシンクが上記開口を覆うように設置されていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造体。
【請求項4】
放熱構造体は、半導体素子と、この半導体素子の両面にそれぞれ設置され、上記半導体素子と反対側の面にそれぞれ、絶縁接着層を介して可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクが接着された2つのヒートスプレッタとで構成され、
通流路は、上記ヒートスプレッタの外側にそれぞれ設けられ、各々、冷却流体送入口と、内部に流路が形成され、かつ開口が設けられた冷却流体通流容器と、冷却流体送出口とを有し、
上記各ヒートスプレッタのヒートシンクが上記各通流路の開口を覆うように、上記放熱構造体が設置されていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造体。
【請求項5】
冷却流体と直接接触するヒートシンク表面に、少なくとも冷却流体の流れ方向に交差する辺または弧を有する微細窪みを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の冷却構造体。
【請求項6】
冷却流体と直接接触するヒートシンク表面に、冷却流体の流れ方向に交差する方向に連なった微細窪みを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の冷却構造体。
【請求項7】
冷却流体の流れ方向に沿った、微細窪みの深さ方向の断面形状が略台形、または略不等辺三角形であることを特徴とする請求項5または6記載の冷却構造体。
【請求項8】
微細窪みの深さH1は、ヒートシンク表面が滑らかである場合の平均温度境界層厚さをδとした時、(1.5×δ)<H1<(ヒートシンクの厚さ)であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の冷却構造体。
【請求項9】
微細窪みの水力相当直径Dは、上記微細窪みの深さH1に対し、D>(10×H1)であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の冷却構造体。
【請求項10】
微細窪みと連結し、冷却流体の流れ方向に沿ったバイパス溝を設けたことを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の冷却構造体。
【請求項11】
通流路を流れる冷却流体と直接接触し、上記冷却流体と熱交換するヒートシンクにおいて、上記ヒートシンクの伝熱面の、上記冷却流体との接触面に、少なくとも冷却流体の流れ方向に交差する辺または弧を有する微細窪みを設けたことを特徴とするヒートシンク。
【請求項12】
通流路を流れる冷却流体と直接接触し、上記冷却流体と熱交換するヒートシンクにおいて、上記ヒートシンクの伝熱面の、上記冷却流体との接触面に、冷却流体の流れ方向に交差する方向に連なった微細窪みを設けたことを特徴とするヒートシンク。
【請求項13】
冷却流体の流れ方向に沿った、微細窪みの深さ方向の断面形状が略台形、または略不等辺三角形であることを特徴とする請求項11または12記載のヒートシンク。
【請求項14】
微細窪みの深さH1は、ヒートシンク表面が滑らかである場合の平均温度境界層厚さをδとした時、(1.5×δ)<H1<(ヒートシンクの厚さ)であることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載のヒートシンク。
【請求項15】
微細窪みの水力相当直径Dは、上記微細窪みの深さH1に対し、D>(10×H1)であることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載のヒートシンク。
【請求項16】
微細窪みと連結し、冷却流体の流れ方向に沿ったバイパス溝を設けたことを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載のヒートシンク。
【請求項17】
微細窪みが設けられたヒートシンク表面の略中央部は、冷却流体が通流路内に流入する冷却流体送入口に対向していることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載のヒートシンク。
【請求項18】
発熱体の表面に、絶縁接着層を介して、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクが接着された放熱構造体を、上記ヒートシンクが、冷却流体と直接接触するように、上記冷却流体が流れる通流路に設置することを特徴とする発熱体の冷却方法。
【請求項1】
発熱体から発生する熱を冷却流体により冷却する冷却構造体において、発熱体と、少なくとも上記冷却流体に面する上記発熱体の表面に、絶縁接着層を介して接着された、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクとを有する放熱構造体、および上記放熱構造体の外部に設置され、内部を流れる冷却流体と上記ヒートシンクとが直接接触するように設置された通流路を備えたことを特徴とする冷却構造体。
【請求項2】
放熱構造体は通流路内に設置されていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造体。
【請求項3】
通流路は、冷却流体送入口と、内部に流路が形成され、かつ開口が設けられた冷却流体通流容器と、冷却流体送出口とを有し、
放熱構造体は、上記放熱構造体のヒートシンクが上記開口を覆うように設置されていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造体。
【請求項4】
放熱構造体は、半導体素子と、この半導体素子の両面にそれぞれ設置され、上記半導体素子と反対側の面にそれぞれ、絶縁接着層を介して可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクが接着された2つのヒートスプレッタとで構成され、
通流路は、上記ヒートスプレッタの外側にそれぞれ設けられ、各々、冷却流体送入口と、内部に流路が形成され、かつ開口が設けられた冷却流体通流容器と、冷却流体送出口とを有し、
上記各ヒートスプレッタのヒートシンクが上記各通流路の開口を覆うように、上記放熱構造体が設置されていることを特徴とする請求項1記載の冷却構造体。
【請求項5】
冷却流体と直接接触するヒートシンク表面に、少なくとも冷却流体の流れ方向に交差する辺または弧を有する微細窪みを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の冷却構造体。
【請求項6】
冷却流体と直接接触するヒートシンク表面に、冷却流体の流れ方向に交差する方向に連なった微細窪みを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の冷却構造体。
【請求項7】
冷却流体の流れ方向に沿った、微細窪みの深さ方向の断面形状が略台形、または略不等辺三角形であることを特徴とする請求項5または6記載の冷却構造体。
【請求項8】
微細窪みの深さH1は、ヒートシンク表面が滑らかである場合の平均温度境界層厚さをδとした時、(1.5×δ)<H1<(ヒートシンクの厚さ)であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の冷却構造体。
【請求項9】
微細窪みの水力相当直径Dは、上記微細窪みの深さH1に対し、D>(10×H1)であることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の冷却構造体。
【請求項10】
微細窪みと連結し、冷却流体の流れ方向に沿ったバイパス溝を設けたことを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の冷却構造体。
【請求項11】
通流路を流れる冷却流体と直接接触し、上記冷却流体と熱交換するヒートシンクにおいて、上記ヒートシンクの伝熱面の、上記冷却流体との接触面に、少なくとも冷却流体の流れ方向に交差する辺または弧を有する微細窪みを設けたことを特徴とするヒートシンク。
【請求項12】
通流路を流れる冷却流体と直接接触し、上記冷却流体と熱交換するヒートシンクにおいて、上記ヒートシンクの伝熱面の、上記冷却流体との接触面に、冷却流体の流れ方向に交差する方向に連なった微細窪みを設けたことを特徴とするヒートシンク。
【請求項13】
冷却流体の流れ方向に沿った、微細窪みの深さ方向の断面形状が略台形、または略不等辺三角形であることを特徴とする請求項11または12記載のヒートシンク。
【請求項14】
微細窪みの深さH1は、ヒートシンク表面が滑らかである場合の平均温度境界層厚さをδとした時、(1.5×δ)<H1<(ヒートシンクの厚さ)であることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載のヒートシンク。
【請求項15】
微細窪みの水力相当直径Dは、上記微細窪みの深さH1に対し、D>(10×H1)であることを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載のヒートシンク。
【請求項16】
微細窪みと連結し、冷却流体の流れ方向に沿ったバイパス溝を設けたことを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載のヒートシンク。
【請求項17】
微細窪みが設けられたヒートシンク表面の略中央部は、冷却流体が通流路内に流入する冷却流体送入口に対向していることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載のヒートシンク。
【請求項18】
発熱体の表面に、絶縁接着層を介して、可とう性を有する金属箔からなるヒートシンクが接着された放熱構造体を、上記ヒートシンクが、冷却流体と直接接触するように、上記冷却流体が流れる通流路に設置することを特徴とする発熱体の冷却方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−261555(P2006−261555A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79734(P2005−79734)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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