説明

冷却流体冷却型半導体装置

【課題】装置の製造寸法のばらつきにも関わらず、冷却効果に優れ組み付けも容易な冷却流体冷却型半導体装置を提供する。
【解決手段】所定間隔を隔てて複数配置される冷却チューブ2と、冷却チューブ2の両端部に設けられる一対のヘッダ5、6と、冷却チューブ2の間に挟圧される半導体モジュール1とを備え、ヘッダ5、6には、冷却チューブ2よりも容易に変形可能な変形容易部位が形成され、ヘッダ5、6の半導体モジュール1の厚さ方向の剛性が、冷却チューブ2の半導体モジュール1の厚さ方向の剛性よりも小さくされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却流体冷却型半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車、燃料電池車、純二次電池車など電力を用いて走行する電気自動車では、構成が堅牢、簡素で制御が容易な交流モータを用いるために、直流電力と交流電力との間で双方向変換する大電力のインバータ装置特に三相インバータ装置が必要となる。
【0003】
この種の大電力インバータ装置は、通常、複数の半導体モジュールで構成されるが、半導体モジュールの発熱が大きいために、冷却流体が流れる間接冷却部材を用いてそれらを均一に間接冷却することが実用上必須となっている。
【0004】
複数の半導体モジュールを均一冷却する冷却流体冷却型間接冷却部材として、一対のヘッダの間に多数の扁平冷却チューブを配置したいわゆる冷却管並列型クーラーが好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−37219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した冷却管並列型クーラーにより半導体モジュールを間接冷却する場合、扁平冷却チューブと半導体モジュールとの良好な接触が重要な課題となる。
【0007】
しかし、各扁平冷却チューブ間隔や扁平冷却チューブの形状、半導体モジュールの厚さなどはそれぞれ製造ばらつきをもつため、両者間に隙間が生じて熱抵抗が極端に増加するという不具合があった。
【0008】
また、扁平冷却チューブ間のスペースよりも半導体モジュールの厚さが大きければ、半導体モジュールの組み付け作業が困難となる上、挿入後に扁平冷却チューブが両端部を支点として弓形に湾曲してしまい、半導体モジュールに局部的に応力が集中する部位や、扁平冷却チューブから離れる部位が生じてしまうという不具合もあった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、装置の製造寸法のばらつきにも関わらず、冷却効果に優れ組み付けも容易な冷却流体冷却型半導体装置を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の冷却流体冷却型半導体装置は、所定間隔を隔てて複数配置される冷却チューブと、前記冷却チューブの両端部に設けられる一対のヘッダと、前記冷却チューブの間に挟圧される半導体モジュールと、を備え、前記ヘッダには、前記冷却チューブよりも容易に変形可能な変形容易部位が形成され、前記ヘッダの前記半導体モジュールの厚さ方向の剛性が、前記冷却チューブの前記半導体モジュールの厚さ方向の剛性よりも小さくされていることを特徴とする。
【0011】
これにより、装置の製造寸法のばらつきにも関わらず、冷却効果に優れ組み付けも容易な冷却流体冷却型半導体装置を実現することができる。
【0012】
すなわち、本構成によれば、ヘッダが冷却チューブよりも半導体モジュールの厚さ方向へ変形容易に形成されているので、ヘッダにより製造寸法のばらつきを吸収できる上、冷却チューブの湾曲を抑制できる。このため、冷却チューブと半導体モジュールとの接触性が悪化したり、半導体モジュールに局部的な応力が集中することがない。
【0013】
請求項2記載の構成によれば、請求項1記載の冷却流体冷却型半導体装置において、前記変形容易部位は、前記ヘッダにおける前記半導体モジュールを挟む一対の前記冷却チューブの間に形成されていることを特徴とする。
【0014】
これによれば、冷却チューブを湾曲変形させることなく半導体モジュールと冷却チューブとの良好な密着を実現することができる。
【0015】
請求項3記載の構成によれば、請求項1記載の冷却流体冷却型半導体装置において、前記ヘッダは、前記冷却チューブの両端が直接又は連結管部を介して接合される冷却チューブ接合部を有し、前記ヘッダの前記冷却チューブ接合部に、前記変形容易部位が形成されていることを特徴とする。
【0016】
これによれば、装置の製造寸法のばらつきにも関わらず、冷却効果に優れ組み付けも容易な冷却流体冷却型半導体装置を実現することができる。
【0017】
請求項4記載の構成によれば所定間隔を隔てて複数配置される冷却チューブと、前記冷却チューブの両端部に設けられる一対のヘッダと、前記冷却チューブの間に挟圧される半導体モジュールと、を備え、前記半導体モジュールを挟んで配置される一対の前記冷却チューブのうち、一方の前記冷却チューブの全体を薄肉又は一方の前記冷却チューブ端部に中央部よりも変形容易な低剛性部を設け、一方の前記冷却チューブの剛性が、他方の前記冷却チューブの剛性よりも小さいことを特徴とする。
【0018】
これによれば、製造寸法ばらつきの吸収のために半導体モジュールを挟む一対の冷却チューブの一方の変位を抑止することができるので、半導体モジュールの位置が変動することがなく、半導体モジュールへのブスバーなどの接続作業が困難となることがなく、組み付け作業が簡素となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1のインバータ装置の模式平面図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図1の装置の要部横断面図である。
【図4】図3のA−A線矢視断面図である。
【図5】実施例2の冷却流体冷却型半導体装置を示す要部横断面図である。
【図6】図5のA−A線矢視断面図である。
【図7】実施例2の変形態様を示す要部横断面図である。
【図8】図7のA−A線矢視断面図である。
【図9】実施例3の冷却流体冷却型半導体装置を示す要部横断面図である。
【図10】図9の縦断面図である。
【図11】図9の扁平冷却チューブの側面図である。
【図12】実施例4の冷却流体冷却型半導体装置を示す要部横断面図である。
【図13】図12の縦断面図である。
【図14】図12の扁平冷却チューブの側面図である。
【図15】実施例5の冷却流体冷却型半導体装置を示す要部横断面図である。
【図16】実施例6の冷却流体冷却型半導体装置を示す要部横断面図である。
【図17】図16のA−A線矢視断面図である。
【図18】実施例7の冷却流体冷却型半導体装置を示す要部横断面図である。
【図19】実施例8の冷却流体冷却型半導体装置を示す要部横断面図である。
【図20】実施例9の冷却流体冷却型半導体装置を示す要部横断面図である。
【図21】実施例7の変形態様を示す要部横断面図である。
【図22】実施例8の変形態様を示す要部横断面図である。
【図23】実施例9の変形態様を示す要部横断面図である。
【図24】aは実施例10の冷却流体冷却型半導体装置を示す要部横断面図(半導体モジュール挿入直後)である。bはその完成図である。
【図25】実施例11の冷却流体冷却型半導体装置を示す要部横断面図である。
【図26】図25のA−A線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の冷却流体冷却型半導体装置を用いたインバータ装置の好適な態様を以下の実施例を参照して説明する。
【0021】
(実施例1)
実施例1のインバータ装置を図1、図2を参照して以下に説明する。図1は、このインバータ装置の模式平面図であり、図2はそのA―A線矢視断面図である。
【0022】
(全体構成)
1は、両面冷却型半導体モジュール、2は扁平冷却チューブ、3は金属製で良熱伝導性及び剛性を有する押さえ板、4はU字状板ばね部材、5、6はヘッダ、7は平滑コンデンサ、8はケース、9は蓋板である。
【0023】
両面冷却型半導体モジュール1は、たとえばパワーMOSFETが形成された電力用半導体素子チップの両面すなわちソース電極及びドレイン電極にそれぞれ金属放熱板を半田層を介して密着させ、両金属放熱板の外主面面及び制御電極端子を除いて樹脂モールドした構造を有している。
【0024】
合計6個の両面冷却型半導体モジュール1は、それぞれが三相インバータ回路の各半導体スイッチング素子及びこの半導体スイッチング素子と逆並列に接続されたフライホイルダイオードとして機能する。各両面冷却型半導体モジュール1の両側の金属放熱板の外主面は、図示しない絶縁スペーサを介して互いに異なる扁平冷却チューブ2の一主面に個別に当接している。この絶縁スペーサは、窒化アルミニウムフィルムで構成されているが、他の絶縁フィルムでもよい。更に、シリコングリスなどの熱伝導グリスを熱伝導面に塗布することが好ましい。インバータ回路の接地端をなす半導体モジュール1の金属放熱板は上記絶縁スペーサなしに扁平冷却チューブ2に直接当接させてもよい。
【0025】
扁平冷却チューブ2は、アルミ押し出し(又は引き抜き)成形管からなり、互いに隔壁により隔てられた複数の冷却流体通路を有し、各冷却流体通路はヘッダ5、6を連結している。
【0026】
U字状板ばね部材4は、押さえ板3、扁平冷却チューブ2、半導体モジュール1、扁平冷却チューブ2、押さえ板3をこの順番に重ねてなるサブセットを半導体モジュール1の厚さ方向に挟圧し、扁平冷却チューブ2と半導体モジュール1との間の熱抵抗を低減している。押さえ板3はU字状板ばね部材4の挟圧力が扁平冷却チューブ2の各部に均等に分散するように高い剛性を有している。
【0027】
各扁平冷却チューブ2の両端部はヘッダ5、6に固定されている。ヘッダ5、6の反扁平冷却チューブ側の側面は平滑コンデンサ7に密着して固定されている。ヘッダ5、6は平滑コンデンサ7とともにケース8内に収容され、蓋板9により密閉されている。ヘッダ5、6の下端面にはそれぞれ連結管部10が固定され、連結管部10はケース8の底板部を通じて外部に突出している。
【0028】
平滑コンデンサ7は、半導体モジュール1により構成される三相インバータ回路の正負直流端に図示しないブスバーにより接続されて、電圧変動を抑止するためのものである。
【0029】
(冷却系の構成)
ヘッダ5、6と扁平冷却チューブ2との結合構造を図3、図4を参照して以下に説明する。図3は、図1の装置の要部横断面図を示し、図4はそのA―A線矢視断面図を示す。
【0030】
この実施例では、ヘッダ5、6は、扁平冷却チューブ2の連結位置に扁平冷却チューブ2が嵌入する開口部50、60を有し、開口部50、60を囲んでリング状の凹部51、61を有している。このリング状の凹部51、61は、扁平冷却チューブ2の端部に接合される内側筒壁部52、62と、この内側筒壁部52、62に所定間隔を隔てて対面しつつ内側筒壁部52、62を囲む外側する外側筒壁部53、63と、この内側筒壁部52、62と外側筒壁部53、63とを連結するリング状の底壁部54、64とからなり、図3においてヘッダ5、6側に食い込むU字形凹部となっている。扁平冷却チューブ2の端部は、この開口部50、60に嵌入されて、内側筒壁部52、62の内周面にろう付けされている。
【0031】
この実施例によれば、ヘッダ5、6の凹部51、61が、扁平冷却チューブ2よりも容易に半導体モジュール1の厚さ方向(X方向ともいう)に弾性変形できるために、扁平冷却チューブ2と半導体モジュール1とが組み付けに際して上記X方向に位置ずれしていてもこの位置ずれを吸収することができる。
【0032】
(効果)
上記実施例の冷却流体冷却型半導体装置によれば、次の効果を奏することができる。
【0033】
各半導体モジュール1に等しく低温の冷却流体を均等に分配し、冷却効果のばらつきを低減することができ、各半導体モジュール1は、両側の扁平冷却チューブ2に放熱できるので冷却効果に優れる。
【0034】
挟圧部材であるU字状板ばね部材4により、一対の扁平冷却チューブ2と半導体モジュール1とを挟圧するので、簡素な構造で扁平冷却チューブ2に半導体モジュール1を各部均一の力により密着させることができ、接触熱抵抗を低減することができる。
【0035】
ヘッダ5、6の扁平冷却チューブ連結部をなすリング状の凹部51、61が扁平冷却チューブ2を囲み、このリング状の凹部51、61の板厚を扁平冷却チューブ2のX方向平均厚さ以下とするなどしてリング状の凹部51、61のX方向剛性を扁平冷却チューブ2のそれよりも小さく設定しているので、一対の扁平冷却チューブ2間のスペース幅が半導体モジュール1のそれよりも小さい場合や、両者の位置がずれている場合でも、扁平冷却チューブ2を弓形に湾曲させることなく良好にこの寸法誤差を吸収することができる。この結果、扁平冷却チューブ2はその半導体モジュール当接主面各部においてむらなく良好に半導体モジュール2の上記金属放熱板に接することができる。
【0036】
(変形態様1)
上記実施例では、リング状の凹部51、61により扁平冷却チューブ2のX方向変位を可能としたが、ヘッダ5、6から扁平冷却チューブ2の端部に向けて薄肉の筒部を突出させ、この筒部に扁平冷却チューブ2を接合する構造を採用しても良い。
【0037】
この場合にも、この筒部がヘッダ5、6の主部を起点としてX方向に容易に弾性変形可能であるため、扁平冷却チューブ2自体の変形を抑止しつつ扁平冷却チューブ2をX方向に変位させて、扁平冷却チューブ2と半導体モジュール1とを良好に密着させることができる。
【0038】
その他、扁平冷却チューブ2とヘッダ5、6との間に、それらと別体に形成された薄肉の連結管部を介設しても上記と同様にこの連結管部を優先的に弾性変形させることができ、同様の効果を奏することができる。 更に、ヘッダ5、6の扁平冷却チューブ2に連結される部分は、弾性変形ではなく塑性変形させてもよい。ただし、弾性変形させる場合は、半導体モジュール1の繰り返し交換などにおいて支障が生じないので有利であり、更にその上、この弾性変形力を、扁平冷却チューブ2を半導体モジュール1に押し付け付勢する力の一部又は全部として利用できるという効果も生じる。
【0039】
(実施例2)
他の実施例の冷却流体冷却型半導体装置を図5、図6を参照して説明する。この実施例は、図3、図4に示される実施例1の扁平冷却チューブ2のうち、X方向最外側の扁平冷却チューブ2を第一の高剛性扁平冷却チューブ21に代替し、更に第一の高剛性扁平冷却チューブ21から(N+2、Nは1以上の整数)目の扁平冷却チューブ2を第二の高剛性扁平冷却チューブ22に変更したものである。なお、第一、第二の高剛性扁平冷却チューブ21、22は、図3、図4に示すリング状の凹部51、61なしにヘッダ5、6に固定されている。
【0040】
また、この実施例では、図3、図4に示すU字状板ばね部材4の代わりに、コイルバネ40を互いに対面する一対の扁平冷却チューブ2、2の間に介設している。
【0041】
また、X方向中央の第二の扁平冷却チューブ22はX方向両側の半導体モジュール1を冷却している。このため、第二の高剛性扁平冷却チューブ22は他の扁平冷却チューブ2、21よりも大きい流路断面積を有している。
【0042】
第一、第二の扁平冷却チューブ21、22は、厚肉とされて格段に大きい高剛性を有しているので、これら第一、第二の扁平冷却チューブ21、22は扁平冷却チューブ2よりもX方向へ変位しにくい。その結果、半導体モジュール1にブスバーを接続するに際して、ブスバーをこれら第一、第二の扁平冷却チューブ21、22を基準として配線すれば、ブスバーと半導体モジュール1との接続位置のばらつきを低減して、接合部接続作業を容易化することができる。
【0043】
(変形態様)
この実施例の装置の変形例を図7、図8を参照して説明する。この実施例は、図5、図6に示される実施例2のコイルバネ40を板ばね41に変更したものである。このようにすれば、板ばね41の挿入作業は、コイルバネ40のそれよりも容易であるので組み付け工程を簡素化することができる他、板ばね41は、コイルバネ40よりも扁平冷却チューブ2に広い面積にわたって対面できるので、板ばね41は押さえ板3を通じて扁平冷却チューブ2の各部をより一層均等に付勢することができる。
【0044】
(実施例3)
他の実施例の冷却流体冷却型半導体装置を図9図11を参照して説明する。この実施例では、扁平冷却チューブ2の両端面にはキャップ23が被着されて、遮蔽されている。その代わり、扁平冷却チューブ2には、ヘッダ5、6内の冷却流体流通方向(X方向に)開口する一対のヘッダ連通開口部24、24が形成されている。
【0045】
ヘッダ5、6は半導体モジュール1を挟む一対の扁平冷却チューブ2、2の間に位置して、ヘッダ連通開口部24を囲んで扁平冷却チューブ2にろう付けされた両端開口で蛇腹状の弾性筒部500、600を有している。また、半導体モジュール1が存在しない側にて互いに隣接する一対の扁平冷却チューブ2、2間に位置してヘッダ連通開口部24を囲んで扁平冷却チューブ2にろう付けされた両端開口で直管状の剛性筒部501、601を有している。弾性筒部500、600は、貫通孔24に連通する貫通孔を囲む周壁部を有し、この周壁部が蛇腹状に形成された短い金属筒などにより構成されている。したがって、扁平冷却チューブ2の両端部、弾性筒部500、600及び剛性筒部501、601は、ろう付けなどにより一体化されてヘッダを構成している。
【0046】
この実施例によれば、弾性筒部500、600が弾性変形容易な蛇腹形状に形成されているので、U字状板ばね部材4による挟圧により弾性筒部500、600を半導体モジュール1の厚さに応じて伸縮させることができ、これにより、扁平冷却チューブ2を湾曲変形させることなく半導体モジュール1と扁平冷却チューブ2との良好な密着を実現することができる。また、半導体モジュール1の挿入前の扁平冷却チューブ2、2間の半導体モジュール挿入用隙間を大きく設定することができ、半導体モジュール1の挿入作業を容易とすることができる。図11は扁平冷却チューブ2の側面図すなわちX方向にみた図である。
【0047】
(実施例4)
他の実施例の冷却流体冷却型半導体装置を図12図14を参照して説明する。この実施例では、図9図11に示す実施例3の装置において、剛性筒部501、601を省略し、X方向両端部の扁平冷却チューブ2を除く中央部の扁平冷却チューブ2AをX方向両側の半導体モジュール1、1にそれぞれ当接させ、各半導体モジュール、扁平冷却チューブのセット全体を単一のU字状板ばね部材4aでX方向に挟圧したものである。
【0048】
この実施例によれば、実施例4の剛性筒部501、601を省略することができ、実施例4に比較して装置の小型化と組み付け工数の低減を実現することが可能となる。ただし、この実施例では、両側の半導体モジュール1を冷却する中央部の扁平冷却チューブ2Aの冷却流体流路断面積を増大して、各半導体モジュール1の冷却を均等化することが好ましい。
【0049】
(実施例5)
他の実施例の冷却流体冷却型半導体装置を図15を参照して説明する。この実施例では、ヘッダ5、6が、半導体モジュール1に隣接して径大な鍔状筒部502、602を有する点をその特徴としている。
【0050】
この鍔状筒部501は、X方向に容易に弾性変形できるので、半導体モジュール1の両側の扁平冷却チューブ2の変位を可能とすることができる。なお、鍔状筒部502、602の代わりにリング状凹部をヘッダ5、6の周囲に設けても同様の効果を奏することができるが、ヘッダ5、6内の流体抵抗が増大する不具合が生じる。
【0051】
また、この実施例では、半導体モジュール1を挟持せずに互いに隣接する扁平冷却チューブ2、2間のヘッダ5、6の部分を直管状の剛性筒部55a、65aとしたが、この部分も鍔状筒部又はリング状凹部又は蛇腹部とすることにより、扁平冷却チューブ2をX方向に容易に弾性変形あるいは塑性変形させることができる。
【0052】
(実施例6)
他の実施例の冷却流体冷却型半導体装置を図16、図17を参照して説明する。
【0053】
この実施例は、実施例1に示す装置において、半導体モジュール1の一方側の扁平冷却チューブ2bを厚肉で半導体モジュールの厚さ方向に高剛性とし、半導体モジュール1の他方側の扁平冷却チューブ2cを薄肉で半導体モジュールの厚さ方向に低剛性(変形容易)とし、かつ、ヘッダ5、6のリング状の凹部51、61を省略した点をその特徴としている。
【0054】
なお、扁平冷却チューブ2cを扁平冷却チューブ2bよりも薄肉に形成する代わりに、素材や形状変更により上記剛性差を得てもよい。
【0055】
このようにすると、U字状板ばね部材4で挟圧した場合、低剛性側の扁平冷却チューブ2は、図16に示されるように、半導体モジュール1側に弓形に湾曲して密着するので、次の効果を奏することができる。
【0056】
半導体モジュール1は、寸法誤差が生じても一方側の扁平冷却チューブ2bに良好に面接触することができ、冷却を確保することができる。半導体モジュール1のX方向位置を湾曲しない扁平冷却チューブ2bに対して位置決めすることができる。
【0057】
弓形に湾曲した他方の扁平冷却チューブ2cも、その弓形湾曲により少なくとも中央部は半導体モジュール1に密着することができ、この湾曲がない場合に比較して格段の放熱性能を確保することができる。
【0058】
ヘッダ5、6又はヘッダ5、6と扁平冷却チューブ2b、2cとの連結部に弾性変形構造を導入する必要がないので、構造が簡素となる。
【0059】
なお、低剛性の扁平冷却チューブ2cは、U字状板ばね部材4により弾性限界範囲でX方向に弓形湾曲しても良く、弾性限界を超えて塑性変形範囲で湾曲してもよい。
【0060】
(実施例7)
他の実施例の冷却流体冷却型半導体装置を図18を参照して説明する。
【0061】
この実施例は、実施例6と異なる方法で、半導体モジュール1を挟む一対の扁平冷却チューブの一方を低剛性化したものである。すなわち、扁平冷却チューブ2eは、実施例1の扁平冷却チューブ2の両端部を中ぐり加工して薄肉で隔壁なしの低剛性部として形成されている。
【0062】
これにより、扁平冷却チューブ2eのうち、半導体モジュール1に接する中央部に高剛性を与えてその変形を抑止しつつ、その両端部を低剛性とすることができるので、U字状板ばね部材4の付勢により扁平冷却チューブ2eの中央部は良好に半導体モジュール1に密着することができる。
【0063】
(変形態様)
変形態様を図21に示す。この変形態様は、U字状板ばね部材4の代わりに、既述したコイルバネ40により扁平冷却チューブ2eを半導体モジュール1に押し付ける構造を採用したものである。
【0064】
(実施例8)
他の実施例の冷却流体冷却型半導体装置を図19を参照して説明する。
【0065】
この実施例は、実施例6、7と異なる方法で扁平冷却チューブ2を低剛性化したものである。すなわち、この実施例の扁平冷却チューブの中央部2fは、ヘッダ5、6に連結される扁平冷却チューブの先端部2gに薄肉で径大な鍔状筒部2hにより連結されている。鍔状筒部2hの中央部はその両端部よりも径大に形成されている。中央部分と同一形状とされている。
【0066】
これにより、半導体モジュール1に接する扁平冷却チューブの中央部2fに高剛性を与えてその変形を抑止しつつ、鍔状筒部2hを低剛性とすることができるので、U字状板ばね部材4の付勢により扁平冷却チューブの中央部2fは良好に半導体モジュール1に密着することができる。
【0067】
(変形態様)
変形態様を図22に示す。この変形態様は、U字状板ばね部材4の代わりに、既述したコイルバネ40を用いたものである。
【0068】
(実施例9)
他の実施例の冷却流体冷却型半導体装置を図20を参照して説明する。
【0069】
この実施例は、扁平冷却チューブの両端部を68と異なる方法で低剛性化したものである。すなわち、この実施例の扁平冷却チューブは、その両端部に、薄肉で径大な鍔状筒部2iを有している。この鍔状筒部2iは、扁平冷却チューブの厚肉の中央部2fを囲むリング状の凹部2kを有している。
【0070】
(変形態様)
変形態様を図23に示す。この変形態様は、U字状板ばね部材4の代わりに、既述したコイルバネ40を採用したものである。
【0071】
(実施例10)
他の実施例の冷却流体冷却型半導体装置を図24を参照して説明する。
【0072】
この実施例は、半導体モジュール1の扁平冷却チューブ2、2を同一形状に形成するとともにあらかじめ半導体モジュール1から離れる方向に塑性変形させておき(図24a)、半導体モジュール1が挿入されるスペースの幅を十分に確保しておき、半導体モジュール1の挿入後に、U字状板ばね部材4で付勢することにより変形させて、扁平冷却チューブ2、2を半導体モジュール1に所定圧力で接触させる(図24b)ものである。これにより、半導体モジュール1の挿入作業を簡素化することができる。
【0073】
なお、扁平冷却チューブ2、2の代わりに既述した低剛性の扁平冷却チューブ21と高剛性の扁平冷却チューブ2とを用いても良い。
【0074】
(実施例11)
他の実施例の冷却流体冷却型半導体装置を図25、図26を参照して説明する。
【0075】
この実施例は、扁平冷却チューブ2の下方に半導体モジュール配列方向(X方向)にベースプレート1000を配置したものである。ヘッダ5、6はこのベースプレート1000に固定されている。
【0076】
ベースプレート1000には一対の固定壁部1001が立設されている。一対の扁平冷却チューブ2、2とこれら扁平冷却チューブ2、2に挟設される半導体モジュール1からなるセットが2つ、両固定壁部1001の間に配置され、両セット間に、押さえ板33、33と楔状部材1002とが配置されている。押さえ板33、33は、扁平冷却チューブ2の反半導体モジュール側の主面に密着され、押さえ板33は、下方へ向かうにつれて厚さが増大する。押さえ板33の楔状部材側の表面は斜面となっている。楔状部材1002は下方へ向かうにつれて薄くなる形状を有している。楔状部材1002にはボルトが挿通されており、ボルトの先端部はベースプレート1000に螺入されている。したがって、このボルトを締め込むことにより、楔状部材002が下方へ変位し、扁平冷却チューブ2は半導体モジュール1に密着される。楔状部材1002の戻りはボルトにより阻止される。
【0077】
(変形態様)
押さえ板33は、扁平冷却チューブ2と一体に成形することができる。
【符号の説明】
【0078】
1:半導体モジュール
2:扁平冷却チューブ
3:押さえ板
4:U字状板ばね部材(挟圧部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を隔てて複数配置される冷却チューブと、
前記冷却チューブの両端部に設けられる一対のヘッダと、
前記冷却チューブの間に挟圧される半導体モジュールと、
を備え、
前記ヘッダには、前記冷却チューブよりも容易に変形可能な変形容易部位が形成され、前記ヘッダの前記半導体モジュールの厚さ方向の剛性が、前記冷却チューブの前記半導体モジュールの厚さ方向の剛性よりも小さくされていることを特徴とする冷却流体冷却型半導体装置。
【請求項2】
前記変形容易部位は、前記ヘッダにおける前記半導体モジュールを挟む一対の前記冷却チューブの間に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却流体冷却型半導体装置。
【請求項3】
前記ヘッダは、前記冷却チューブの両端が直接又は連結管部を介して接合される冷却チューブ接合部を有し、
前記ヘッダの前記冷却チューブ接合部に、前記変形容易部位が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の冷却流体冷却型半導体装置。
【請求項4】
所定間隔を隔てて複数配置される冷却チューブと、
前記冷却チューブの両端部に設けられる一対のヘッダと、
前記冷却チューブの間に挟圧される半導体モジュールと、
を備え、
前記半導体モジュールを挟んで配置される一対の前記冷却チューブのうち、一方の前記冷却チューブの全体を薄肉又は一方の前記冷却チューブ端部に中央部よりも変形容易な低剛性部を設け、一方の前記冷却チューブの剛性が、他方の前記冷却チューブの剛性よりも小さいことを特徴とする冷却流体冷却型半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−109127(P2011−109127A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10863(P2011−10863)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【分割の表示】特願2000−200021(P2000−200021)の分割
【原出願日】平成12年6月30日(2000.6.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】