処理基板収納ポッド及び処理基板収納ポッドの蓋開閉システム
【課題】IMSシステムにおいてポッドの蓋に付随する極微小な塵等のミニエンバイロンメント内への拡散を抑制するポッド及び該ポッドに応じたFIMSシステムを提供する。
【解決手段】ポッドの蓋外側面内に被係合部を配置し、ポッド開口周囲に配される該蓋が嵌合可能なフランジ部に対して外部空間より該被係合部にアクセス可能となる挿通孔を配する。ラッチ機構はフランジ部におけるポッド本体側の面においてフランジ側壁に平行な方向に摺動可能に支持され、該ラッチ機構における係合部は該挿通孔を介して被係合部に至り、該ラッチ機構の移動に応じて係合及び非係合の状態変化を為す。
【解決手段】ポッドの蓋外側面内に被係合部を配置し、ポッド開口周囲に配される該蓋が嵌合可能なフランジ部に対して外部空間より該被係合部にアクセス可能となる挿通孔を配する。ラッチ機構はフランジ部におけるポッド本体側の面においてフランジ側壁に平行な方向に摺動可能に支持され、該ラッチ機構における係合部は該挿通孔を介して被係合部に至り、該ラッチ機構の移動に応じて係合及び非係合の状態変化を為す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等において、ポッドと呼ばれる搬送容器に内部保持されたウエハを半導体処理装置間にて移送する際に用いられる、所謂FIMS(Front-Opening Interface Mechanical Standard)システムに関する。より詳細には、当該FIMSシステムにおいて用いられる、ウエハを収容する密閉容器たる所謂FOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれる処理基板収納ポッド(ポッド)、及び当該ポッドの蓋を開閉して該ポッドに対するウエハの移載を行うFIMSシステムたる蓋開閉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造プロセスは、処理装置内部、ポッド、及び当該ポッドから処理装置への基板受け渡しを行う微小空間のみを高清浄状態に保持し、その他の空間の清浄度はある程度のレベルに維持して行われている。ポッドは、その内部に複数のウエハを平行且つ隔置した状態で保持可能な棚と、外面を構成する面の一つにウエハ出し入れに用いられる開口とを有する略立方体形状を有する本体容器と、その開口を閉鎖する蓋と、から構成される。この開口が形成されている面がポッドの底面ではなく一側面(微小空間に対して正対する面)に位置するポッドを前述したFOUPと総称している。
【0003】
また、上述した微小空間は、ポッドの開口と向かい合う開口部と、開口部を閉鎖するドアと、半導体処理装置側に設けられた処理装置側の他の開口部と、開口部からポッド内部に侵入してウエハを保持すると共に該処理装置側の他の開口部を通過して処理装置側にウエハを搬送する移載ロボットとを有している。また、微小空間を形成する構成は、ドア正面にポッド開口が正対するようポッドを支持する載置台を有している。この載置台の上面には、ポッド下面に設けられた位置決め用の穴に嵌合されてポッドの載置位置を規定する位置決めピンと、ポッド下面に設けられた被クランプ部と係合してポッドを載置台に対して固定するクランプユニットとが配置されている。通常、載置台はドア方向に対して所定距離の前後移動が可能となっている。ポッド内のウエハを処理装置に移載する際には、ポッドが載置された状態でポッドの蓋がドアと接触するまでポッドを移動させ、接触後にドアによってポッド開口部からその蓋が取り除かれる。これら操作によって、ポッド内部と処理装置内部とが微小空間を介して連通することとなり、以降ウエハの移載操作が繰り返して行われる。この載置台、ドア、開口部、ドアの開閉機構、開口部が構成された微小空間の一部を構成する壁等を含めて、前述したFIMSシステムと総称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−077177号公報
【特許文献2】特許第3417821号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば従来のポッドは、特許文献1に開示されるように、本体容器の開口の付近における内側の面に嵌合孔を配置し、蓋には蓋外周から外方方向に伸縮可能な爪を配するものである。この方式では、本体容器に蓋を所定のとおり挿嵌した後に、その爪を伸張させる。伸張した爪は本体容器の嵌合孔に挿入され、蓋が本体容器に対して、固定される。また、この逆の動作により、蓋と本体容器との固定が解除される。当該爪の伸縮は、一般に、当該爪と連結されて蓋の中央領域内の所定位置に配置された被操作部に対して、蓋表面の外部から所謂キー部材を嵌合させてこれを操作することで行われている。このような部材の接触、回動、その際に生じる摺動等により、通常は半導体製造上問題視されるべき塵が発生する。しかし、これら塵は蓋の表面とドアの表面との間の微小隙間から当該隙間の外部に拡散する以前に、ダウンフローが形成された微小空間内に移動される。このため、当該塵の微小空間或いはポッド内への拡散は問題視されるレベルには至らず、特に当該塵に対する対応は為されていなかった。また、通常清浄度の劣った空間を搬送されることから、ポッド本体の外周面及び蓋の表面には当該空間で付着した塵、或いは外気に含まれた例えばハイドロカーボン等が吸着している。これらに関しても、前述したキー部材等から生じた塵と同様に、ダウンフローによる抑制効果が好適に機能していると考えられていた。
【0006】
ここで、半導体デバイスは、素子の高機能化及び小型化が漸次進められている。このため素子に用いられる配線幅、デザインルール等がより狭められ、従来であれば問題とならなかったより小さな塵の存在にも留意する必要が生じてきている。このような極微小な塵は、従来対応策が練られてきた塵と異なり、所謂ブラウン運動や微小な静電気の影響等、従来とは異なる動作によって空間を移動する。具体的には、このような極微細な塵は、前述したダウンフローによって微小空間の下方に押し流し更に外部空間に排出しようとしても、単純に気流に流されずに微小空間内に漂い出してくる可能性がある。なお、特許文献2には、蓋側に爪を配置するのではなく、ポッド側の開口外部に回動式のレバーを配置して蓋が開口を閉鎖した状態において当該レバーが蓋表面側から蓋を押さえ込む構成が開示されている。当該構成では、特許文献1におけるキー部材に起因する塵の発生は開口の周囲で生じることとなり、蓋及びこれを保持するドアからの塵の拡散の程度は引用文献1の構成よりは低減できる可能性がある。しかし、蓋開閉の操作前に当該レバーの操作を予め行っておく必要が存在し、且つ当該操作のための構成が開口部周囲に存在することから、外部空間に存在する極微小な塵が微小空間側に拡散してくる恐れが存在する。
【0007】
また、昨今のウエハの大口径化に伴ってこれを収容するポッドも大型化してきている。このような大型のポッドの場合、ポッドの蓋を閉鎖する際にこれを保持するドアが大きく動作し、且つ閉鎖に際して大きな駆動力を呈することが必要となる。このため、従来のドア−ポッド蓋の関係においてドアのみの動作によってポッドの蓋をポッドに対して好適に固定させることが困難となると考えられる。そこで、ポッド開口を閉鎖する蓋の表面に付着する極微小な塵の影響を抑制し、且つ蓋開閉時において当該開閉操作に伴う塵の発生、及び発生した塵の微小空間或いはポッド内部への拡散を抑制することが必要となる。
【0008】
本発明は以上の状況に鑑みて為されたものであり、ポッド開口を閉鎖する蓋の表面に付着する極微小な塵の影響を抑制し、且つ蓋開閉時において当該開閉操作に伴う塵の発生、及び発生した塵の微小空間或いはポッド内部への拡散を抑制する密閉容器たる処理基板収納ポッド(またはポッド)及び当該密閉容器に対応する蓋開閉システムの提供を目的としている。また、大口径ウエハ用のポッドにおいて、該ポッドの開口を閉鎖する際にポッド開口を確実に閉鎖することが可能となる密閉容器及び当該密閉容器に対応する蓋開閉システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る密閉容器は、周囲に座部を具備する開口を有する、処理基板を収納するための内部空間を有する本体容器と、該開口に挿嵌され、該座部に押し付けられて該開口を密閉可能な蓋とを備える処理基板収納ポッドであって、該本体容器は、該本体容器に対して移動可能に取り付けられるラッチ機構であって、該ラッチ機構は、前記ラッチ機構の移動方向と異なる方向に突出するアーム部と、前記アーム部の先端に取り付けられる係合部とを有するラッチ機構を備え、該蓋は、該蓋の側面上に刻設され第一溝と、一端は該第一溝と連通し、他端は該蓋が該開口に完全に挿嵌された状態において該内部空間側の蓋の面と連通するように刻設される第二溝とを有する被係合部を備えることを特徴とする処理基板収納ポッドにより解決する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポッドに蓋が固定された状態において蓋の表面は平坦な面となる。また、蓋には外部からアクセスされ且つ操作される所謂可動部材も存在しなくなる。従って、従来構成のようなドア表面における所謂ラッチ爪の操作に伴う発塵を完全に無くすことが可能となる。また、従来と異なり、蓋は内部に種々の構成を有さず、単なる平板状の部材となる。従って、洗浄による塵等の除去が容易になると共に、排除困難な状態での塵等の蓋への付着が無くなり、蓋単体で考えた場合であっても塵等に対する清浄度を高く維持することが可能となる。特に、蓋に設けられる被係合凹部は単なる溝形状であることから、加工、洗浄が従来の蓋の場合と比較して、非常に容易となる。また、半導体製造工程に用いられるウエハのサイズは、現状の所謂300mmφから450mmφへの移行が検討されている。このような大口径のウエハを収容するポッドでは、蓋のサイズの大型化と同時に蓋の反り、撓みといった変形の防止、ポッドに対する蓋の固定の確実性と固定強度の確保等が求められる。本発明に係るポッドの蓋の構造では、蓋構造が単純な平板構造となることから、蓋の軽量化が容易であると共に蓋の軽量化を為しつつ、蓋の剛性を高める構造を採用することも可能となる。従って、このような要望に対して容易且つ確実に対応することが可能となる。
【0011】
また、本発明によれば、蓋をポッド本体に対して固定した状態で、常に蓋がポッド開口を密閉する方向に付勢される構成としている。更には、蓋固定時において、ポッドに対して蓋を固定する所謂ラッチ機構は、蓋がポッド開口に押し付けられる方向の付勢力を徐々に大きくしつつ加えることを可能としている。当該構成とすることによって、ポッド自体の気密性の向上、及び搬送時等における蓋の振動による発塵の可能性を低減が可能となる。また、同時に、ドア自体の駆動力を大きくすること無く、蓋をポッドに対して好適に固定、密着させることが可能となる。このことはラッチ機構の急激な動作及び急激な負荷の加わりを抑制し、ドアの所謂閉鎖力を段階的に制御することを可能とする。更に、当該蓋の表面を平坦にできることから、当該蓋或いはドアの対向面の何れかにシール部材を配することにより、これら蓋及びドアに挟まれる空間をその周囲空間から完全に分離することとなり、蓋が微小空間内に持ち込んだ塵、外気等の拡散を確実に防止できる。更に、ドアが蓋を吸着保持することに加え、シール部材により形成される蓋とドアとに挟まれた閉鎖空間を減圧化してドアの保持力を高めることも可能となる。また、蓋開閉操作を行うための構成の配置及び当該構成の動作領域が、基本的にポッド外部及び微小空間の外部で行われることとなる。従って、仮にこれら構成による発塵が生じた場合であっても、当該塵のポッド内部或いは微小空間内部への拡散の頻度は従来構成の場合と比較して大きく低減される。
【0012】
また、本発明においてラッチ機構が垂直方向に駆動する様式とされ、且つ下方位置において蓋固定を為す構造とした場合、ラッチ機構自身の自重によってポッドに対する蓋の固定が為されることとなる。この場合、蓋開閉時におけるラッチ機構を駆動操作する構成に動作不良が生じた場合であっても、常にラッチ機構が蓋固定位置に存在可能であることから、蓋の閉鎖は保たれてポッド内の清浄状態を維持し続けることが可能となる。また、例えば特許文献1に開示する構成の場合、キー部材とラッチ機構の被操作部とが内部で噛み込む等の事態が生じてこれら構成の分離が困難となった場合、分離のために、蓋を分解する等の操作を行う必要が生じる可能性がある。これに対して、本発明においては、ラッチ機構に対してポッドの側面等、微小空間に対する所謂外部空間側からのアクセスを為し、ラッチ機構に強制的な動作を行わせることが可能である。従って、ラッチ機構等に異常が生じてその操作が困難となった場合であっても、強制的な操作を容易に為すことにより、当該ラッチ機構に関連するトラブルから回復することか可能となる。更に、ラッチ状態の適否の検出についても特別の構成の付加、操作の確立を要さず、外部から目視によってラッチ状態を容易に確認することが可能となる。
【0013】
更に、本発明においては、ラッチ機構の操作を為す駆動機構において、当該ラッチ機構を操作するための操作部(後述する駆動接触面)の大きさを任意に設定可能である。従って、ドアによって蓋を開放する際にポッドを停止する位置精度を従来の場合と比較して低くすることも可能である。従来構成の場合、載置位置に対する蓋の固定位置、開口部に対するポッドの固定位置、ラッチ機構に起因した蓋に対するドアの当接位置を全て高い位置精度で満たさなければ、ポッドからの蓋の取り外しとポッド内部と微小空間との連通を為すことができなかった。しかし、本発明によれば、少なくともラッチ機構に起因する蓋及びポッドの停止精度の要件が緩和されることから、例えば蓋開閉装置の動作プログラムの構成の簡素化や、実際の操作上の安定性といった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の一実施形態に係るポッド及び対応する蓋開閉システムの主要部の概略構造を示す斜視図である。
【図1B】図1Aにおける領域1Bに含まれる構成を拡大して示す図である。
【図2】図1Aに示すポッドにおける蓋の構造を示す斜視図である。
【図3】図1Aに示すポッドにおけるポッド本体の構造を示す斜視図である。
【図4】図1Aに示すポッドにおけるラッチ機構の構造を示す斜視図である。
【図5A】図1Aに示す蓋開閉システムの主要部を側方から見た状態を示す概略図である。
【図5B】図5Aに示す主要部を外部空間側正面から見た状態を示す概略図である。
【図6A】本発明の一実施形態に係る係合凹部3cの形状を正面から見た状態を示す図である。
【図6B】本発明の他の実施形態に係る係合凹部3cの形状を正面から見た状態を示す図である。
【図7A】図6Aに示す係合凹部3cに対してラッチ機構が作用する状態を段階的に示す図である。
【図7B】図6Bに示す係合凹部3cに対してラッチ機構が作用する状態を段階的に示す図である。
【図8A】図1Aに示すポッドとラッチ機構駆動ユニットとについて、その駆動様式を説明するため図である。
【図8B】図1Aに示すポッドとラッチ機構駆動ユニットとについて、その駆動様式を説明するため図である。
【図8C】図1Aに示すポッドとラッチ機構駆動ユニットとについて、その駆動様式を説明するため図である。
【図8D】図1Aに示すポッドとラッチ機構駆動ユニットとについて、その駆動様式を説明するため図である。
【図9A】図4に示すポッドにおけるラッチ機構の構造のうち、付勢力の付与を示す斜視図である。
【図9B】ラッチ機構のアーム部に付与する付勢力の付与の仕方を示す斜視図である。
【図9C】図9Bに示したラッチ機構を用いた場合のラッチ機構の移動とアーム部の動きを示した概略図である。
【図9D】図9Bに示したラッチ機構を用いた場合のラッチ機構の移動とアーム部の動きを示した概略図である。
【図9E】図9Bに示したラッチ機構を用いた場合のラッチ機構の移動とアーム部の動きを示した概略図である。
【図10】図9Bに示したラッチ機構を用いた場合における処理基板収納容器を示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るロードポート装置の概略構成を示す側断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るロードポート装置の主要部概略構成を図7と同様の様式にて示す拡大側断面図である。
【図13】図12に示す構成に関して、ポッドがローディング位置に存在する状態を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る蓋開閉システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1Aは、本発明の一実施形態に係る密閉容器たるポッドが蓋開閉システムたるFIMSの蓋開閉位置に存在した状態におけるこれら構成を斜視図により示している。また、図1Bは図1Aに示す状態における後述するラッチ機構のローラー部の係合状態を示しており、領域1Bの構成を拡大して示す図である。図2はポッドの蓋の概略斜視図を、図3はポッドの本体の概略斜視図を、また、図4はポッド本体に固定されるラッチ機構の概略斜視図を各々示している。更に、図5Aは載置台及び微小空間の開口部を構成する壁を側面から見た状態を示し、図5Bはこれら状態をポッドが載置される正面側から見た状態を示している。また、図6A及び6Bは後述する被係合凹部の正面から見た形状を示す図であり、図7A及び7Bは当該被係合凹部を有する蓋がポッド本体に対して固定される際のラッチ機構及び蓋の動作を各々模式的に示す図である。
【0016】
本発明に係る密閉容器たるポッド1は、容器本体であるポッド本体2、蓋3、及びポッド本体2に対して摺動可能に取り付けられるラッチ機構5から構成される。ポッド本体2は略立方体形状であって内部にウエハ等の被収容物をその高さ方向に複数枚並置して収容する内部空間を有する。なお、ポッド本体はウエハを収容可能な種々の形態とすることが可能であるが、基本形状が立方体形状であることから、本明細書においては略立方体形状として定義している。ポッド本体2は、該略立方体形状における一側面に当該内部空間に連通する開口2aを有している。該開口2aは、前述した内部空間を外部空間と連通させる。当該一側面には、更に当該開口2aの周囲を囲むようにして、該開口2aを含む開口平面と平行な平面内にて該開口2aの周囲から外方に張り出したフランジ部2cが形成されている。フランジ部2cは当該一側面と平行な側端面を有し、当該側端面は後述する蓋開閉システムたるロードポートの開口周囲壁と対向する。フランジ部2cは、蓋3がポッド本体2と嵌合して開口2aを閉鎖可能となるように、蓋3の厚さ以上の厚さと、平板形状を有する蓋3の平板状の一面(後述する裏面3a)とほぼ同じ大きさとからなる収容空間2dを形成する。収容空間2dでは、開口2aの周囲に段差である座部を形成し、蓋3が開口2aに挿嵌されて座部に密着することで、開口2aが密閉される。
【0017】
また、フランジ部2cの外周面、本形態においては外側面に対して、外部空間から該収容空間2dに連通する挿通孔として、矩形状のローラー部挿通孔2eが設けられる。当該ローラー部挿通孔2eは、フランジ部2cの両外側面の各々に対して、上下2箇所に配置される。また、本形態では、当該フランジ部2cに対して、ラッチ機構5が摺動可能に支持されるスライドレール2gも配置される。該スライドレール2gは、フランジ部2cにおける前述した側端面と反対側の面(ポッド本体側に位置する面)である裏面3a上であって、外側面と隣接し且つ該外側面の延在方向に延在するように配置される。更に、ポッド本体2には、更に不図示のポッド搬送用ロボットによって保持される部分である被保持フランジ2hが上部に、また載置台と実際に当接して該載置台に固定される不図示の被係合部等が配置される被固定フランジ2iが下部に配置される。なお、これら被保持フランジ2h及び被固定フランジ2iは本発明に係るポッドの特徴的構成と関連性を有しないため、ここでの説明は省略する。
【0018】
本実施形態における蓋3は、ポッド本体2の開口2aを閉鎖した際に内部空間に面する裏面3a及び外部空間側に配置される表面3bを対向面とする平板状の部材からなる。また、平板形状の外周面、本本形態においては外側面に対して、前述したポッド本体2におけるローラー部挿通孔2eに対応した上下位置に対して被係合凹部3cが一対配置される。被係合部たる被係合凹部3cは、当該被係合凹部3cが形成される蓋3の外側側面上に外側面に沿って刻設される第一溝3c1と、一端が第一溝3c1と連通し、他端が蓋3が開口2aに完全に挿嵌された状態において蓋3の内部空間側の面(裏面)3aと連通して開口するように刻設される第二溝3c2とから構成されるL字形状を有する。第一溝の長さ及び幅は、前述したポッド本体2に設けられるローラー部挿通孔2eと一致する長さ及び幅を有する。また、該第一溝3c1において蓋3の裏面3a側に位置して係合凹部の一部を構成する内側壁3c3は後述するローラー部5bが接触して移動し、また蓋3をポッド本体2に引き付けるための作用面として機能する。なお、当該蓋3の表面3bには、後述するドアの吸着パッドによって吸着保持される際の被吸着領域において、効率的な吸着保持を可能とするように表面研磨処理が施されている。ここで、蓋表面3bには、清浄度の劣る空間内でポッドを搬送した際に付着した塵等が存在する。従って、これら吸着パッドによって封止して微小空間内への拡散を防止する観点から、当該領域は該表面3bのほぼ全域を含むように構成されることが好ましい。
【0019】
次に図6Aを参照して被係合凹部3cの構成について詳述する。第一溝3c1は平板形状延在方向において同一幅で延在するのではなく、その幅を変化させている。具体的には、第二溝3c2と連通する領域において蓋裏面3a側に幅を広げ、第一溝3c1の閉塞端部3c4に近づくに従ってその幅を狭くし、閉塞端部から所定距離hの位置より一定幅となっている。従って、内側壁3c3は、蓋裏面3aに対して、第二溝3c2への開口部近傍において最も近接し、閉塞端部3c4に近づくにつれて離れるように傾斜面を形成し、所定距離hの位置より平行となる。当該被係合凹部3cの形状より得られる効果について、図7Aを参照して説明する。図7Aは、蓋3のポッド本体2に対する固定時における被係合凹部3cと後述するローラー部5bとの位置関係の変化を示している。図7Aにおいて一転鎖線で示される中心線5b1はローラー部5bの移動軸線に対応し、二点鎖線は後述するドアが蓋3をポッド本体2に当接させた際の蓋3の表面3bの位置及びその概相線3c5を示している。また、図7Aは紙面上方のステップより順次蓋3とローラー部5bとの位置関係の推移を示している。ステップ1(Step1)では、蓋3のポッド本体2への取り付け操作により、まずローラー部5bが第二溝3c2に嵌まり込み、蓋3が所定位置に押し込まれるに連れてローラー部5bは第一溝3c1まで移動する。そして、蓋3の表面3bが所定位置3c5に至った段階で不図示のドアによる蓋3の移動は停止される。ここで、後述するラッチ機構が駆動し、ローラー部5bは移動軸線に沿って蓋3の閉塞端部3c4に向けて移動を開始する。ローラー部5は軸線上の移動に際して内側壁3c3の傾斜面と当接して、蓋3をポッド本体2に対して押し付ける方向の押圧力Pを当該傾斜面に付与する。当該押圧力Pによって、蓋3はポッド本体2側に向かって押し込まれ、ステップ2(Step2)に示すように、概相線3c5より蓋3の裏面3a側に移動する。ローラー部5bが更に移動し、同一幅の領域に至ることによってステップ3(Step3)に示すように蓋3の押し込みは停止し、蓋3がポッド本体2に対して所定の負荷を伴って密着固定された状態が得られる。
【0020】
次に、図6B及び7Bを用いて被係合凹部3cの更なる形態について説明する。なお、図6A及び7Aと同様の部分、構成、ステップ等に関しては説明を省略し、相違点についてのみ説明することとする。同図に示す形態では、第二溝3c2における第一溝3c1と連通する箇所から所定距離だけ離れた位置より、第二溝3c2における第一溝3c1と連通する箇所から遠ざかるにしたがって、内側壁3c3の面と蓋3の裏面3aとの距離が接近するように第二溝3c2が刻設されている。すなわち、第一溝3c1と第二溝3c2とが連通する箇所から所定距離の位置(図6Aおよび図6Bにおける、閉塞端部3c4から距離hの位置)において、内側壁3c3の傾斜の向きが変わり、内側壁3c3が蓋3の裏面3aに近づくことになる。第二溝3c2をこの形にすることにより、実際にローラー部5bが閉塞端部3c4に近づく場合の蓋3等の動作について図7Bを用いて説明する。ステップ1からステップ3でのローラー部5bと蓋3との相対的な動作は図7Aにおいて述べた場合と同一である。しかし、本形態では、ローラー部5bが所定距離hよりも閉塞端部3c4に近づくことにより、ローラー部5bの内側壁3c3に対する押圧力Pが緩和され、蓋3が最もポッド本体2に押し付けられた位置よりも若干初期位置にむけて戻ることとなる。即ち、ステップ4(Step4)に示すように、蓋3はステップ3(Step3)に示す位置よりも蓋表面3b側に移動し、最終的に逆の傾斜面となった内側壁3c3によってローラー部5bに対して復帰力P2が作用した状態となる。この状態では、ローラー部5bは復帰力P2によって閉塞端部3c3に押し付けられた状態となり、ポッド等に対して外的要因が加えられた場合であって、ローラー部5bは常に閉塞端部3c4に固定されることとなる。
【0021】
次にラッチ機構5の詳細について述べる。ラッチ機構5は、ポッド本体2に対して移動可能に取り付けられる。たとえば、ラッチ機構5の移動方向は、たとえば、代表的には、フランジ部2cの外周面に沿っての移動である。ラッチ機構5は、ラッチ本体部5a、係合部たるローラー部5b、及びラッチ本体部5aとローラー部5bとを連結するアーム部5cを有する。ラッチ本体部5aは、たとえば、ラッチ機構5の移動方向に延在する角柱状の部材であって、当該ラッチ本体部5aの第一の対向面5dとアーム部5cにおける第二の対向面5fにおいてポッド本体2のフランジ部2cの裏面及び側面に各々対向している。第一の対向面5dには、前述したスライドレール2gを摺動可能に収容するために、該第一の対向面5d上においてラッチ本体部5aの延在方向に沿って延在するガイド溝5gが配置される。なお、ラッチ機構5は、角柱状の部材に限らず、円柱部材またはブロック部材でもよい。ポッド本体2に対して移動可能に取り付けられる。アーム部5cは、第一の対向面5dの形成面からラッチ本体部5aの延在方向に対して異なる方向(たとえば、垂直方向)に突き出し、前述したローラー部挿通孔2eに対応するように上下位置に一対配置される。なお、本実施形態では、第一の対向面5d及び第二の対向面5fは、実際にはフランジ2cに対して微小間隔を保持して対向し、当接、摺動等が生じない構造としている。なお、これら構成の配置、例えばラッチ本体部5aからのアーム部5cの突き出し方向等は、当該実施形態に限定されない。即ち、延在方向である一軸に沿って移動可能なラッチ本体部5aから特定の方向にアーム部5cが突き出している。アーム部5cの先端には、係合部たるローラー部5bが取り付けられている。
ラッチ機構5のローラー部5bは、開口2aへの蓋3の挿嵌にしたがって該第二溝3c2内に進入すると、その後、ラッチ機構5を移動させることにより、ラッチ機構5の移動とともに、第一溝3c1内を、第一溝3c1における内部空間側の内側壁3c3に接しながら移動する。
【0022】
ローラー部5bは、フランジ部2cに設けられたローラー部挿通孔2eを介して蓋収容空間2d内に突き出し、前述した被係合凹部3cの内側壁3c3の一部と当接する。ローラー部5bは円板形状を有し、当該底面に対して垂直な回転軸5eを介してアーム部5cによって軸支されている。該回転軸5eは、ラッチ本体部5aの延在方向、及びアーム部5cの突き出し方向各々と垂直な方向に延在する。当該構成により、該回転軸5eに垂直な面内をローラー部5bが平行移動する、即ちラッチ本体部5aが延在方向に摺動する際には、ローラー部5bは回転軸5e周りに転動して円板外周面は当接する該内側壁に対する当接状態を維持しつつ、当接位置を変えることとなる。なお、本実施形態ではローラー部5bにおける円板外周面にゴム等弾性を有する部材を貼り付けて、該円板の周面方向に弾性を付与する構造としている。これにより、ローラー部5bの回転移動時においても当接部が回転せずに摺動することが防止され、発塵を抑制することが可能となる。
なお、ラッチ機構5の移動方向は、たとえば、開口2aの形成面に対して平行でもよい。または、蓋3が開口2aに完全に挿嵌された状態における内部空間側の蓋3の面、すなわち開口2aの形成面に対して角度をもっていてもよい。たとえば、フランジ部2cの外周面に沿って、開口2aの形成面に平行な面をフランジ2cの外壁に形成し、ラッチ機構5をそれに沿って移動させれば、開口2aの形成面に対して平行に移動する。この場合、鉛直方向でもよいし、水平方向でもよい。
フランジ部2cの外周面に沿って、開口2aの形成面に対して角度をもった面をフランジ2cの外壁に持たせ、ラッチ機構5をそれに沿って移動させれば、開口2aの形成面に対して角度をもった方向に移動させることができる。ラッチ機構5が、開口2aの形成面に対して角度を持って、斜めに移動することにより、ラッチ機構の移動ストロークを大きくとるができる。ラッチ機構5の移動により蓋3を締め付ける際に、ラッチ機構5による締付力の変化率を小さくすることができ、繊細な締付けが可能となる。
ここで、第一溝3c1の内側壁3c3の面の延在方向と、ラッチ機構5の移動方向とは交差する。そして、内側壁3c3の面の延在方向と、ラッチ機構5の移動方向とは、第二溝3c2において第一溝3c1と連通する側に向かって狭まるように、角度をもって交差している。
ラッチ機構5が、内側壁3c3の面の延在方向とラッチ機構5の移動方向との交差が狭まる方向と反対方向(広がる方向)に移動すると、ローラー部5bと、ラッチ機構5の第一の対向面5dとの距離は一定であるから、内側壁3c3の面とラッチ機構5の第一の対向面5dとの距離の増加による楔効果で、ラッチ機構5の移動にともなって係合部たるローラー部5bが内側壁3c3をラッチ機構5の方向に引き付けようとする。内側壁3c3がラッチ機構5の方向に引き付けられることによって、蓋3は座部に押し付けられて強固に固定される。一方、ラッチ機構5が第一溝3c1の内側壁3c3に沿って第二溝3c2まで、内側壁3c3の面の延在方向とラッチ機構5の移動方向との交差が狭まる方向に移動した際には、蓋3の固定を徐々に解放する。
本実施の形態においては、図6Aおよび図6Bに示すように、閉塞端部3c4から所定距離hの位置では、内側壁3c3の傾斜の向きを変えている。すなわち、本発明における所定の位置hとは、内側壁3c3の面の延在方向とラッチ機構5の移動方向との交差の角度を小さくするように内側壁3c3の傾斜の向きを変える意義を有している。すなわち、当初、内側壁3c3の面の延在方向とラッチ機構5の移動方向との交差が広がる方向に向かってラッチ機構5が移動すると、内側壁3c3の面とラッチ機構5の第一の対向面5dとの距離がある増分で増加する。さらに、ラッチ機構5を移動させて、閉塞端部3c4から所定距離hの位置に差し掛かると、内側壁3c3の面の延在方向とラッチ機構5の移動方向との交差の角度が変化するため、内側壁3c3の面とラッチ機構5の第一の対向面4dとの距離の増分が減少する。したがって、前記のとおり、図7Aのステップ3および図7Bのステップ4のように、閉塞端部3c4から所定距離hの位置を、適切な圧力で蓋3をポッド本体2の収容空間における開口2aの段差に押し付けられるように設定する。
【0023】
本実施形態では、ガイドレール2gとガイド溝5gとによってポッド本体2に対するラッチ機構5の取り付けを為している。これによりラッチ機構5のポッド本体2に対する不要な接触を無くし、該接触による発塵を防止している。しかし、ポッド本体2に対するラッチ機構5の取り付けを強固にし、摺動時の所謂がた等の低減を目的として、ガイド溝5gとローラー部5bの円板外周面の一部とによって、矩形状のローラー部挿通孔2eの一内側壁とガイドレール2gとの間の部分を挟持することにより、ラッチ機構5をポッド本体2に対して取り付けることとしても良い。この場合、前述したローラー部5bの円板外周面に弾性体を付加することによって、矩形状のローラー部挿通孔2eの一内側壁と係合凹部の内側壁3c3の両者に対して、ローラー部5bが適度な押圧力を有して当接することができる。これら部材間の当接部分においてある程度発塵することは避けられない。従ってこれら当接部分での摩耗特性に留意した耐磨耗性材料等を用いる、或いは低発塵性のベアリングからなるローラーを用いる等により、ラッチ機構5の動作に起因する発塵を更に抑制することが可能となる。
【0024】
次に、ラッチ機構5によるポッド本体2に対する蓋3の開放様式について以下に述べる。図1A中に示すように、蓋3がポッド本体2における収容空間2dに収容されて開口2aを閉鎖した状態において、ローラー部5bはローラー挿通孔2eの下方、即ちL字状の被係合凹部3cにおける第一溝3c1の閉鎖端部3c4に位置する。なお、ラッチ機構5は、自重によって、当該閉鎖端部に位置する。さらに、図9Aの矢印で示すように、ラッチ機構5において、ローラー部5bがラッチ本体部5aに近づく方向の力を付与させる。これにより、被係合凹部3cにおけるローラー部5bの位置が安定する。たとえば、ローラー部5bの回転軸5eをアーム部5cに固定し、アーム部5cの延在する方向に、アーム部5cをラッチ機構に対して収縮するような付勢力を与えるように弾性部材を取り付けてもよい。弾性部材としては、スプリングが考えられる。または、ローラー部5bの回転軸5eがアーム部5cに対して、ラッチ本体部5aの方向に可動な構造として、スプリングの一端をローラー部5bの回転軸5eに、他端をアーム部5cに取り付けて、アーム部5cの延在する方向に、ローラー部5bがラッチ本体部5aに近づくような方向の付勢力を与えてもよい。これで、ローラー部5bにより、蓋3をポッド本体2の座部に密着させる方向の付勢力を与えることができる。ローラー部5bはその付勢力の反力を受けて、その位置に停止して安定する。当該状態からラッチ機構5をラッチ開放位置、即ち図1Aにおける上方にスライドさせると、ローラー部5bはL字状の被係合凹部3cにおける第一溝3c1と第二溝3c2とが連通する位置に移動する。この移動によって、ローラー部5bは蓋裏面3aに開口する第二溝3c2に位置することとなり、当接する内側壁3c3が存在しなくなる。従って、蓋3に対するローラー部5bによる規制が無くなり、蓋3は第二溝3c2の延在方向、即ち蓋3をポッド開口2aより遠ざける方向への移動が可能となる。
なお、ラッチ機構5において、ローラー部5bがラッチ本体部5aに近づく方向の力を付与させる際に、図9Bで示すように、アーム部5cをラッチ本体部5aに対して回動可動に枢軸5hにより固定して、図9Bにおける矢印で示すように、ローラー部5bがラッチ本体部5aに回転して近づくような力を付与してもよい。たとえば、枢軸5hを囲むように弾性部材(たとえば、スプリング)を取り付け、一端をアーム部5cに、他端をラッチ本体部5aに取り付けて付勢力を与えることが考えられる。この場合の付勢力は、被係合凹部3cにおける第二溝3c2に対して、第一溝3c1が延在する方向の力がアーム部5cにかかるような回転力である。たとえば、図9Bを参照すると、ラッチ機構5が下向きに移動することによって蓋3をポッド本体2に固定するとすれば、被係合凹部3cにおける第二溝3c2に対して、下向きに第一溝3c1が刻設されるから、ラッチ機構5が移動する方向の力がアーム部5cに付加されるような回転力を付加することになる。これは、また、第一の溝3c1の内側壁をラッチ機構5に近づける方向に、枢軸5h周りに付勢されていることである。すなわち、この場合、図9Bに示すように、アーム部5cに下向きの力が付加されるような回転力を生じさせる付勢力ということになる。
このような構成とすることにより、ラッチ機構5の被係合凹部3c内での移動によって、図9Cから図9Eのように、蓋3が固定される。図9Cから図9Eは、図9Bに示したラッチ機構を用いた場合のラッチ機構の移動とアーム部の動きを示した概略図である。図9Cに示すように、まず蓋3を開口2aに挿入すると、第二溝3c2にローラー部5bが挿入される。アーム部5cは、ローラー部5bが第二溝3c2を進行するにしたがって、自然に開く。ラッチ機構5がさらに移動すると、ローラー部5bは、アーム部5cにかかる付勢力にしたがって、第二溝3c2から第一溝3c1に向かって、自然に方向を変える。そして、ラッチ機構5が移動を終了すると、第一溝3c1の閉塞端部3c4において、付勢力によりローラー部5bが停止保持され、蓋3が開口2aの座部に強固に押し付けられる。閉塞端部3c4において、第一溝3c1の向きをアーム部5cにかかる付勢力の方向に変えるように第一溝3c1の閉塞端部3c4を設定しても良い。
【0025】
なお、上述した実施形態では、ラッチ機構5はフランジ部2cの両側辺の裏側角に一対配置することとしている。当該形態の場合、ラッチ機構5の自重によってラッチ状態を得ることとなることから、ポッド保管時において特にラッチ機構5を定位置に維持する機構を設ける必要が無く、ポッドの構成を簡略なものとする効果が得られる。このような簡易な構成は、塵の洗浄の容易さと共に塵自体のポッドに対する付着の可能性も低減するという効果も呈する。また、実際の半導体製造工場においては、半導体処理装置は隣接する装置が殆ど密着して配置されるが、当該構成の場合、後述するラッチ機構駆動ユニットを付加した場合であっても半導体処理装置の設置上の投影面積は特に影響されない。しかしながら、本発明は当該形態に限定されず、フランジ部2cの上下辺に対して配置しても良い。また、蓋3のポッド本体2に対する固定強度を増すために、ローラー部5bを更に上辺及び下辺の少なくとも一方に追加することとしても良い。また、一つの被係合凹部3cに対して複数のローラー部が対応することで前述した固定強度を確保する構成とし、被係合凹部の数を減らすこととしても良い。また、本形態ではローラー部挿通孔2eより通過する構成はローラー部5bのみの如く記載されている。しかし、回転軸5eもアーム部5cの一部として把握することも可能であり、当該ローラー部挿通孔2eを挿通する構成は係合部たるローラー部5bとアーム部5cの一部とし、当該ローラー部挿通孔2eを挿通する構成は少なくとも係合部であると定義されることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態では、被係合凹部3cを第一溝3c1と第二溝3c2とからなるL字形状の凹状の溝からなる形態としている。しかしながら、裏面まで連通する厚み方向に延在する第二溝に対応する領域と、側面の延在方向(厚み方向に対して垂直な方向)に延在する第一溝に対応する領域を含む様式であれば本発明におけるL字形状に含まれる。例えば、複数の第二溝が一つの第一溝と連通する様式、第二溝と連通しない第一溝の他端が更なる溝と連通して蓋の表面側に開口する様式、等、種々の様式とすることが可能である。このような連続的な溝形状とすることによって、加工の容易性、洗浄上の作業性の向上といった効果が見込まれる。
【0027】
また、本実施形態ではラッチ機構5をラッチ位置に保持する手段として、ローラー部5bの円板の周面に対して弾性を付与することでこれに換えている。しかしながら、当該形態のみならず、例えばバネ等の弾性部材をラッチ本体部5aと連結する等し、ラッチ機構に対して常に付勢力を与える構成としても良い。また、本実施形態では、係合対象物としてローラー部材5bを、被係合部材として被係合凹部の内側壁3c3を用いることとしている。当該構成の場合係合部位からの発塵の可能性は大きく低減される。しかし、所謂回転ローラーからの発塵が問題となる場合もあり得ることから、実施形態に示すローラー部材5を用いず、耐磨耗性の高い円柱状の当接部材等を用いることとしても良い。この場合、当接部材を板バネ等から構成することとしても良い。また、本実施形態では、スライドレール2gから仮に発塵した場合であっても塵の微小空間方向への拡散がフランジ部2cによって遮られることからスライドレール2gをフランジ部2cの裏面に配置することとしている。当該構成の場合、ポッドの正面投影面積を変えないことから、隣り合う半導体製造装置が密着している場合であっても、ポッド載置上特に問題は生じない。しかしラッチ機構の構成の簡略化の観点から、スライドレール2gをフランジ部2cの外側面上に配置する構成としても良い。
【0028】
更に、本実施形態では被係合凹部3cに対して、フランジ部2cの外周面からアクセスする様式によってローラー部5bによる係合状態を得ることとしている。当該様式によれば、加工の容易性、実際の係合状態の目視確認が可能となること、スライドレール2gとローラー部挿通孔2eとを離して配置することが可能となる、及びローラー部5bを第一溝3c1に対して相対的に大きくすることが可能となり係合力を大きくするといった効果が得られる。しかし、これを例えばフランジ部2cの裏面側からのみアクセスする様式としても良い。また、この場合、例えば当該被係合凹部3cを蓋3の厚さ方向に形成される第二溝を構成する孔と当該孔と連通して、当該孔の形成方向から他の方向に向かう方向に形成される第一溝を構成とする他の孔とからなる孔形状とし、これを裏面3aにおける外周近傍に配置することとしても良い。
【0029】
以上に述べたポッド1によれば、蓋3は外周面に被係合凹部3cのみを有する平板状の部材となる。従って、塵等が管理されていない空間に放置された場合であっても、従来構成における所謂ラッチキーの受容孔が存在しないことからこれら塵等が付着する確率自体や蓋の内部に塵等が貯蔵される確率が低下する。また、塵等の付着は平坦な面の表面が主であることから、洗浄、或いはダウンフロー下において容易にこれを除去することが可能となる。また、従来構成におけるドア表面のラッチキーの操作部材を配する必要がなくなることから、ドアの構造の簡略化やこの簡略化に伴う環境清浄度の向上を図ることも可能となる。また、蓋3をポッド本体2に固定する際に、ラッチ機構5によって徐々に蓋3をポッド本体2に対し押し込むように負荷を強めながら蓋固定を行うことが可能となり、より大きな蓋3を用いる場合であっても好適な蓋密着状態を得ることが可能となる。
【0030】
次に、上述したポッドに対応した密閉容器の蓋開閉システムについて以下に述べる。なお、図1Aは、上述したポッド1、及び、後述する蓋開閉システム101におけるポッド載置部121、ドッキングプレート123、ドア115a、第一の開口部111、筐体壁105a、ラッチ機構駆動ユニット131及びフランジカバー133を示している。本蓋開閉システム101においては、ラッチ機構駆動手段たるラッチ機構駆動ユニット131及びフランジカバー133が特徴的な構成となる。本実施形態において、ラッチ機構駆動ユニット131は一軸方向に伸縮するロッドを有するアクチュエータにより構成される。当該ラッチ機構駆動ユニット131は、ポッド1における蓋3がドア115aによって吸着保持される位置に存在する状態にある時に、ラッチ機構5のラッチ本体部5aの軸心とアクチュエータのロッドの軸心とが一致し、当該ラッチ本体部5aの上下において当該ロッドが向か合うように配置される。
【0031】
換言すれば、ラッチ機構駆動ユニット131は、ラッチ機構5の移動方向に沿って押圧可能なロッドと、そのロッドを移動軸に沿って伸縮可能に支持するアクチュエータとを具備する。たとえば、ラッチ機構駆動ユニット131は、ラッチ本体部5aの移動軸と同軸もしくは平行に配置される。即ち、本実施形態におけるラッチ機構駆動ユニット131は蓋3の取り外し位置に存在するポッド1のラッチ機構5に対応する位置であって、当該ラッチ機構5を上下方向に押圧駆動可能に配置される。なお、該ロッドの軸心はラッチ機構5の移動軸と一致するように配置されることが好ましい。ラッチ機構5のラッチ本体部5aにおける上下端面は被押圧面である前述した駆動接触面として作用し、ロッド先端が当該被押圧面を押圧することによってラッチ機構5の軸方向の駆動が為される。
【0032】
またラッチ機構駆動ユニット131は、上下のユニットにてラッチ本体部5aの被押圧面である上下の端面を挟持するように、後述する制御装置によって駆動される。これら上下のラッチ機構駆動ユニット131には、例えばエアシリンダからなるアクチュエータが用いられることが好適である。当該エアシリンダの圧力を上下のユニットにおいて違えておくことによって、これらのロッドがラッチ本体部5aを挟持した後、差圧に準じた速度、付勢力によってラッチ本体部5aを移動させることになる。図6A或いは図6Bに示す形態において、例えば単一のラッチ機構駆動ユニット131によってラッチ本体部5aを駆動させた場合には、急速且つ局所的に急激な負荷が蓋3に対して加えられる。しかし、一対のラッチ機構駆動ユニット131を用いて速度等を制御してラッチ本体部5aを移動させることによって、ある程度以上の時間経過を伴った適度な荷重の付加を為して蓋3の固定を行うことが可能となり、安定的なポッド1の閉鎖を行うことが可能となる。
【0033】
ここで、実際の蓋3の開閉操作に関して、ラッチ機構駆動ユニット131の動作順序について図8Aから8Dを用いて説明する。なお、本形態では、説明の容易化のために、上下に配置されたラッチ機構駆動ユニット131が各々別個に駆動する場合について述べることとする。これら図は、ポッド1とラッチ機構駆動ユニット131とのみを斜視図により示すものである。図8Aは、ポッド1がドア115aによって蓋3の開閉が為される位置に配置された状態を示す。当該状態において、ラッチ機構5の押圧面は、各々対応するラッチ機構駆動ユニット131のロッド先端から軸方向に所定間隔離れた状態にある。当該状態より、下方に配置されたラッチ機構駆動ユニット131が動作を開始し、図8Bに示すように、ロッドを伸長させてラッチ本体部5aの下端面を押圧してラッチ機構5を上方に移動させる。これによりローラー部5bは被係合凹部3cにおける第二溝3c2に位置することとなる。当該位置においてローラー部5bと被係合凹部3cとの係合状態は解除され、蓋3はポッド本体2から取り外し可能の状態となる。なお、前述したように、本形態においてローラー部5bは円板外周部に弾性を有する部材を配置しており、常に、当該弾性に起因する付勢力を有して被係合凹部3cの内壁面に当接している。
【0034】
当該状態に至った後、蓋3は図8Cにおいて不図示とされるドアによって吸着保持され、ドアの移動に伴う蓋3のポッド本体2からの取り外しが行われる。その後、開放されたポッド本体2の開口2aを介して、該ポッド本体2の内部に収容されたウエハの搬出、及び処理装置によって処理されたウエハが該内部へ搬入される。全てのウエハが搬入された後、再度ドアによる図6Cに示す状態への蓋3の移動、及びその後の蓋3による開口2の閉鎖の動作が為される。続いて、図8Dに示すように、下方に配置されたラッチ機構駆動ユニット131がロッドを収縮させると共に、上方に配置されたラッチ機構駆動ユニット131が動作を開始して、そのロッドを伸長させ、ラッチ本体部5aの上端面を押圧してラッチ機構5を下方に移動させる。これによりローラー部5bは被係合凹部3cにおける第一溝3c1に位置することとなる。当該位置においてローラー部5bと内側壁3c3との係合状態が成立し、蓋3はポッド本体2に対して固定された状態となる。係合状態が得られた後、上方のラッチ機構駆動ユニット131はそのロッドを収縮させ、図8Aに示す状態に復帰する。以上のラッチ機構駆動ユニット131の動作によって、ポッド1に対しての蓋3の取り外しから取り付けまでの一連の操作が為される。
なお、既に説明したとおり、図10に示すように、ラッチ機構5の移動方向を、開口2aの形成面に対して角度をもたせることも可能である。図10は、図9Bに示したラッチ機構を用いた場合における処理基板収納容器を示す斜視図である。すなわち、開口2aの形成面に対して角度を持つような面をフランジ部2cの外周面に沿って構成し、ラッチ機構5をそれに沿って移動させる。ラッチ機構駆動ユニット131を使用して、ラッチ機構5を鉛直方向に移動させる構成と同様の装置で、ラッチ機構5は開口2aの形成面に対して角度をもった方向に移動させることができる。ラッチ機構5のアーム部5cおよびローラー部5bと被係合凹部3cにおける位置関係は、図9Cから図9Eを参照して説明したとおりである。ラッチ機構5が、開口2aの形成面に対して角度を持って、斜めに移動することにより、ラッチ機構の移動ストロークを大きくとるができる。ラッチ機構5の移動により蓋3を締め付ける際に、ラッチ機構5による締付力の変化率を小さくすることができ、繊細な締付けが可能となる。ここでラッチ駆動機構ユニット131をそのロッドの移動方向がラッチ機構5の移動軸と同軸もしくは平行になるように開口2aの形成面に対して傾けて配置してもよい。
【0035】
本発明の一実施形態に係る蓋開閉システムでは、更にフランジカバー133を有している。当該フランジカバー133は、ポッド2のフランジ部2cの外周面と全域と対向可能な内周面を有する筒状の構造体からなる。フランジカバー133は、ポッド1が配置される側(外部空間側)に対して、筐体壁105aから垂直に突き出すように配置される。ポッド1がドア115aによって蓋3の開閉が為される位置に配置された状態において、当該フランジカバー133はポッド2のフランジ部2cの外周面を覆い、外部空間から直接的に該外周面に至る経路を遮断する。本実施形態では、ラッチ機構5が蓋3との係合位置及び非係合位置の何れに存在する場合であっても、ローラー部挿通孔2eを介して外部空間からポッド本体2における収容空間2dに至る経路が存在してしまう。通常ポッド内部は該内部と連通する微小空間に供給される清浄気体の影響により外部空間より所謂陽圧とされるため、従来であれば当該ローラー部挿通孔2eについても外方に向かう気流が生じることから塵の対策上問題はないと考えられる。本形態では、更にフランジカバー133を配置することによって当該実質的に当該ローラー部挿通孔2eを介して構成される収容空間2dから外部空間に至る経路を可能な限り小さくすることを可能としている。これにより例えば分子運動領域の拡散によって当該ローラー挿通孔2eを介して収容空間2dに至る極微小な塵についても、これを抑制することが可能となる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、ラッチ機構駆動ユニット131であるアクチュエータをラッチ機構5に対して上下に一対配置することとしている。当該構成とすることによってラッチ機構5の構造の簡素化が可能となり、塵の持ち込身の可能性を低減するという効果が得られる。しかし、ラッチ機構5に対して軸方向に付勢力を与える付勢手段を付加し、ラッチ機構駆動ユニット131はラッチ機構5の上方或いは下方の何れか一方に配置することとしても、ラッチ機構5の配置に関連する本発明の効果を得ることは可能である。また、例えばドッキングプレート123に対して、当該ドッキングプレート123の進退方向に沿って一方向に昇降或いは降下する傾斜面を固定カム面とし、当該カム面と当接することによって該カム面に従動するカム手段を配し、該カム手段の動作によってロッド等が上昇或いは下降するラッチ機構駆動ユニット131を構築しても良い。即ち、容器載置台たるポッド載置台とラッチ機構駆動ユニットとの間に所謂カム機構を配置し、当該カム機構によってラッチ機構駆動ユニットを駆動することとしても良い。当該構成とすることにより、アクチュエータ等を駆動する駆動源を無くすることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、フランジカバー133としてフランジ部2cを全て覆うことによって、ローラー部挿通孔2eを介した収容空間2dと外部空間との直接的な連通を防止している。当該構成とすることによって、例えばローラー部挿通孔2e、ローラー部5b等の洗浄が容易となるという効果が得られる。しかし、例えば、ローラー部5b及びアーム部5cがローラー部挿通孔2e内に収容されるようにアーム部5cの厚さを薄くし、収容部をカバーによって覆う構成としても良い。当該構成とすることにより、蓋開閉システム上部材の追加を行うことなく本発明の効果を得ることが可能となる。
【0038】
上述した形態では、従来の蓋開閉システムに対してラッチ機構駆動システム131とフランジカバー133とを付加するのみによって、本発明に係る密閉容器を使用することが可能となる。また、実際の半導体処理装置の設置上の投影面積に関しても、これら構成は当該面積を特に変えることがない。従って、現存する半導体製造ラインに対しても、本発明に係る密閉容器を使用可能とするように改造を為すことは容易であるといえる。蓋開閉システムを以上述べた構成とすることによって、本発明に係る密閉容器が使用可能となり、当該密閉容器から得られる上述した種々の効果を享受することが可能となる。なお、フランジカバー133については、配置されることがより好ましいが、例えばドッキングプレート123の構成等によっては位置することが困難な場合も考えられる。この場合、従来の所謂デザインルールからなる半導体製造工程の場合、例えば微小空間内からポッド内部に送られる清浄気体の流量を増加させることによって、現状問題となるサイズの塵のポッド内部への侵入を防止することとしても良い。
【0039】
次に本発明に係る密閉容器に応じた蓋開閉システムについて説明する。図11は概略構成を示す該システムの側断面図であり、図12は該システム101におけるポッド載置部、ドア、ポッド、及び蓋等を同様の様式にて拡大して示した図である。また、図13はポッドの開口を蓋が閉鎖した状態での、ポッド載置部、ドア等を模式的に示す図である。蓋開閉システム101は、微小空間103を構成する筐体105及び筐体105に隣接して配置されるポッド載置部121を有する。筐体105は、更にファン107、ロボット109、第一の開口部111、第二の開口部113、ドアシステム115を有する。ファン107は筐体105によって微小空間103の上部に配置され、筐体105の外部空間に存在する気体を微小空間内部に導入する。なお、ファン107に対しては、外部空間の清浄度に応じて、当該空間から導入される気体より塵埃等の汚染物質を除去するフィルタが付随している。筐体105の下部には気流が流出可能となるような構造が配置されており、微小空間103内部で発生する粉塵等は当該気流に運ばれて筐体105の下部から外部空間に排出される。
【0040】
ロボット109におけるロボットアーム109aは、第一の開口部111及び第二の開口部113を介して微小空間の外部に突出可能となっている。第一の開口部111はドアシステム115におけるドア115aにより一見閉鎖状態とされるが、ドア115aの外周と第一の開口部111の内周面との間には隙間が形成されることから、当該ドア115aは第一の開口部111を略閉鎖可能となっていると述べる。第二の開口部113は、ウエハ処理装置117の内部と接続されているが、当該ウエハ処理装置117の詳細に関しては本発明と直接の関係を有さないために本明細書における説明は省略する。また、ラッチ機構駆動機構131及びフランジカバー133については先に説明済みであることからここでの説明は省略することとし、図面の理解を容易とするために図中においてフランジカバー133を省略することとする。
【0041】
ポッド載置部121は、ドッキングプレート123、ポッド固定システム125、及びドッキングプレート駆動システム127を有する。ドッキングプレート123の上面は略平面とされており、該上面にはポッド固定システム125の一部が配置される。本発明に係るポッド1は、ドッキングプレート123の上面に載置され、ポッド固定システム125の当該一部、具体的にはピンがポッド1の下面に配置された不図示の被係合部と係合することによりドッキングプレート123上の所定位置に固定される。なお、ドッキングプレート123は、ポッド1を上面に載置した際に、ポッド1における本体開口2aが前述した第一の開口部111と正対するよう配置されている。ドッキングプレート駆動システム127は、ガイドレール127a及び駆動シリンダ127bを用いて、ドッキングプレート123と共に該所定位置に固定されたポッド1を該第一の開口部111に向かう方向及び離間する方向に駆動する。
【0042】
駆動用シリンダ127bは載置台本体121aに一端部が固定されており、他端部となる伸縮するシリンダ端部がドッキングプレート123に固定されている。ドッキングプレート123はガイドレール127aに対して摺動可能に支持されており、駆動シリンダ127bのシリンダ端部の伸縮に応じてガイドレール127a上を摺動する。ここで、ドッキングプレート123は、ポッド1を当該ドッキングプレート123上に外部から搭載する(ロードする)或いは取り除く(アンロードする)位置が微小空間103から最も離れた位置に存在することとなり、ポッドの蓋3を取り外す位置が微小空間103に対して最も接近する位置となる。
【0043】
ドア115aの表面に配置される吸着パッド115kは該蓋3と当接した状態で不図示の配管を通じて負圧供給源108(図14参照)より負圧を供給することにより該蓋3を吸着し、当該蓋3をドア115aによって保持することを可能とする。ドアシステム115は、ドアアーム115b、ドア開閉アクチュエータ115c及びドア上下機構115dを有する。ドアアーム115bは棒状の部材からなり、一端においてドア115aを支持し、他端においてドア開閉アクチュエータ115cと連結されており、中間部の適当な位置において当該位置を中心に回転可能に軸支されている。ドア開閉アクチュエータ115cによって該回転中心を軸としてドアアーム115bは回転し、該ドアアーム115bの一端及びここに支持されるドア115aは第一の開口部111に対して接近或いは離間の動作を行う。ドア上下機構115dは、ドア開閉アクチュエータ115cと前述したドアアーム115bの回転軸とを支持し、上下動用アクチュエータによって上下方向に延在するガイドに沿って当該アクチュエータ及びこれに支持されるドアアーム115b及びドア115aを上下方向に駆動する。
【0044】
また、図13に示されるように、ドア115aの蓋3との対向面の周囲には、蓋3の表面3b設けられたシール面と対応するように、略円環状のシール部材115mが配置される。当該シール部材115mは、蓋3がドア115aの表面に配置された吸着パッド115kにより吸着保持された状態でシール面3cと当接、密着する。これにより形成される密閉空間に蓋3の表面に付着した微小な塵等を封止することで、これら塵の周囲への拡散を防止する。なお、本実施形態では蓋3は吸着パッド115kによってのみ保持されている。しかし、例えばドア表面に更なる吸着排気用のポートを設け、シール部材115mによって密閉されたドア115a、蓋3及びシール部材115mから構成される空間内部を排気する構成としても良い。当該構成とすることにより、微小な塵等を強制的に排除することが可能となると共に、ドア115aによる蓋3を保持する保持力をより大きなものとすることが可能となる。また、吸着パッド115kを無くし、シール部材115mを一種の吸着パッドとして使用することとしても良い。
【0045】
なお、図14に当該FIMSシステム101の構成をブロック図として示す。上述したファン107、ロボット109、ドアシステム115、ポッド固定システム125、及びドッキングプレート駆動システム127は、制御装置102によって各々制御される。ドアシステム115は、ドア開閉用アクチュエータ115c、及びドア上下機構115dを各々独立して制御可能であるが、実際上はこれら各々の構成が一連のタイムチャートに応じて動作するようにこれら構成を制御する。また、ラッチ機構駆動ユニット131についても制御装置102によって制御され、上述したドアシステム115の一連の動作と連動するように駆動される。なお、吸着パッド115kに対する負圧供給源108からの負圧の供給及び供給停止(負圧の破壊)の動作は、制御装置102によって行われる。ドッキングプレート駆動システム127は、駆動シリンダ127bの駆動のオンオフを行うが、当該駆動シリンダ127の動作によってドッキングプレート123が確実に所定の二位置、即ちポッド1のロード位置に存在する場合とポッド1がウエハ挿脱可能な位置であるドック位置に存在する場合とを検知する必要がある。
【0046】
このため、ポッド1がドッキングプレート123上の載置されたこと、及びドッキングプレート123に対してポッド1をロード・アンロードすべき位置に該ドッキングプレート123が存在することを検知するロードセンサ127dが、ドッキングプレート駆動システム127に接続されている。また、ドッキングプレート123が上述したドック位置に存在するか否かを検知するドックセンサ127cも該ドッキングプレート駆動システム127に接続されている。ここで、本発明では、蓋3自体の剛性が高く変形しにくいこと、及びラッチ機構5が一軸のみの動作によって係合非係合の切換が為されることにより、当該ラッチ機構5の係合ミスが起こる蓋然性は従来構成と比較して大幅に低減されている。このため、本実施形態では、ラッチ機構駆動機構131に対して、ロッドの伸縮の状態に応じてオンオフの信号を発する構成とし、当該オンオフ信号によって蓋3のポッド本体2に対する係合、非係合の状態を検知することとしている。なお、本発明の実施形態は当該検知様式に限定されず、例えば光センサ等を用いて、ラッチ機構5の動作を直接的に検知して係合状態の適否を知る構成としても良い。
【0047】
ここで、実際にウエハ処理作業を行う際の当該蓋開閉システム101の動作について説明する。ウエハ処理作業において、所定枚数のウエハを収容し内部が清浄気体によって満たされたポッド1がドッキングプレート123上に載置される。ドッキングプレート123を載置する際に、ポッド固定システム125が動作してドッキングプレート123に対するポッド1の載置位置を所定のものとする。続いてドッキングプレート駆動システム127が動作し、ポッド1を第一の開口部111に向けて駆動する。具体的には、ポッド固定システム125によってドッキングプレート123と一体化されたポッド1を、ドッキングプレート123を介する様式にて駆動シリンダ127bが移動させる。その際、ドア115aは第一の開口部111を略閉鎖する位置で停止している。当該駆動動作は、ポッド1の蓋3がドア115aの当接面と当接し、ドッキングプレート123と第一の開口部111と所定の位置関係となった段階にて終了する。この時、ラッチ機構駆動ユニット131とラッチ機構5とが図6A8A等に示す所定の位置関係を満たす状態となる。当該状態からラッチ機構駆動ユニット131が動作を開始し、ポッド本体2の蓋3に対する係合状態が解除される。同時に、吸着パッド115kが蓋3を吸着し、蓋3がドア115aによって保持され、且つ蓋3の表面とドア115aの表面とに挟持される空間がシール部材115mによって密閉された状態となる。なお、制御装置102は、ドア115aによる蓋3の吸着保持と、ラッチ機構駆動ユニット131によるラッチ機構5のポッド本体2に対する蓋3の係合解除の操作とが同期するようにこれら構成を動作させている。
【0048】
当該状態からドア開閉アクチュエータ115cが動作を開始し、ドアアーム115bが回動して蓋3を保持するドア115aを第一の開口部111から微小空間103の内部方向に運ぶ。ドアアーム115bが所定角度で回動を停止した後、ドア上下機構115dが動作を開始し、ドア開閉アクチュエータ115cと共にドア115aを下方に移動させる。当該動作によって第一の開口部111は全開状態となり、微小空間103は第一の開口部111を介してポッド本体2の内部と連通した状態となる。この状態においてロボット109が動作を開始し、ロボットアーム109aによってウエハ4をポッド1の内部から第二の開口部113を介してウエハ処理装置117に搬送する。また、この状態を維持して、当該ロボット109は、更にウエハ処理装置117内部において所定の処理が施されたウエハをポッド1内部へも搬送する。蓋3をポッド1に取り付け、ポッド1を蓋開閉システム101より取り外し可能とする場合には、基本的にはこれら動作が逆に行われる。また、図6A或いは6Bに示す本形態では、制御装置102は、ドア115aによる蓋3のポット本体2に対する所定位置への移動終了(ローラー部5bの第一溝3c1への移動が完了したことに同期させて、ラッチ機構駆動ユニット131を動作させる。これにより、図7A或いは7Bに示すローラー部5bによる蓋3の押し込み等の動作を確実に行うことが可能となる。
【0049】
以上に述べたポッド、及び当該ポッドに対応する蓋開閉システムたるFIMSシステムを用いることにより、ポッド開口を閉鎖する蓋の表面に付着する極微小な塵の影響を抑制し、且つ蓋開閉時において当該開閉操作に伴う塵の発生、及び発生した塵の微小空間或いはポッド内部への拡散を抑制することが可能となる。より具体的には、蓋3のポッド本体2への固定及びその解除をポッド本体に設けられたフランジ部2cの外側面側行うこととしている。例えば第一の開口部111の外周近傍から外部空間に向かう気流を形成しておくことによって、配置的に低減されているポッド内或いは微小空間内への微小な塵等の拡散可能性を更に低減することが可能となる。
【0050】
以上述べた実施形態では、本発明はウエハを対象とするFIMSシステムに関して主として述べている。しかしながら、本発明の適用対象は該システムに限定されず、例えばディスプレイ用のパネル、光ディスク等を収容する密閉容器等に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:ポッド、 2:ポッド本体、 3:蓋、 4:ウエハ、 5:ラッチ機構、 101:蓋開閉システム、 102:制御装置、 103:微小空間、 105:筐体、 107:ファン、 108:負圧供給源 109:ロボット、 111:第一の開口部、 113:第二の開口部、 115:ドアシステム、 117:ウエハ処理装置、 121:ポッド載置台、 123:ドッキングプレート、 125:ポッド固定システム、 127:ドッキングプレート駆動システム、 131:ラッチ部材駆動ユニット、 131:フランジカバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等において、ポッドと呼ばれる搬送容器に内部保持されたウエハを半導体処理装置間にて移送する際に用いられる、所謂FIMS(Front-Opening Interface Mechanical Standard)システムに関する。より詳細には、当該FIMSシステムにおいて用いられる、ウエハを収容する密閉容器たる所謂FOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれる処理基板収納ポッド(ポッド)、及び当該ポッドの蓋を開閉して該ポッドに対するウエハの移載を行うFIMSシステムたる蓋開閉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造プロセスは、処理装置内部、ポッド、及び当該ポッドから処理装置への基板受け渡しを行う微小空間のみを高清浄状態に保持し、その他の空間の清浄度はある程度のレベルに維持して行われている。ポッドは、その内部に複数のウエハを平行且つ隔置した状態で保持可能な棚と、外面を構成する面の一つにウエハ出し入れに用いられる開口とを有する略立方体形状を有する本体容器と、その開口を閉鎖する蓋と、から構成される。この開口が形成されている面がポッドの底面ではなく一側面(微小空間に対して正対する面)に位置するポッドを前述したFOUPと総称している。
【0003】
また、上述した微小空間は、ポッドの開口と向かい合う開口部と、開口部を閉鎖するドアと、半導体処理装置側に設けられた処理装置側の他の開口部と、開口部からポッド内部に侵入してウエハを保持すると共に該処理装置側の他の開口部を通過して処理装置側にウエハを搬送する移載ロボットとを有している。また、微小空間を形成する構成は、ドア正面にポッド開口が正対するようポッドを支持する載置台を有している。この載置台の上面には、ポッド下面に設けられた位置決め用の穴に嵌合されてポッドの載置位置を規定する位置決めピンと、ポッド下面に設けられた被クランプ部と係合してポッドを載置台に対して固定するクランプユニットとが配置されている。通常、載置台はドア方向に対して所定距離の前後移動が可能となっている。ポッド内のウエハを処理装置に移載する際には、ポッドが載置された状態でポッドの蓋がドアと接触するまでポッドを移動させ、接触後にドアによってポッド開口部からその蓋が取り除かれる。これら操作によって、ポッド内部と処理装置内部とが微小空間を介して連通することとなり、以降ウエハの移載操作が繰り返して行われる。この載置台、ドア、開口部、ドアの開閉機構、開口部が構成された微小空間の一部を構成する壁等を含めて、前述したFIMSシステムと総称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−077177号公報
【特許文献2】特許第3417821号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば従来のポッドは、特許文献1に開示されるように、本体容器の開口の付近における内側の面に嵌合孔を配置し、蓋には蓋外周から外方方向に伸縮可能な爪を配するものである。この方式では、本体容器に蓋を所定のとおり挿嵌した後に、その爪を伸張させる。伸張した爪は本体容器の嵌合孔に挿入され、蓋が本体容器に対して、固定される。また、この逆の動作により、蓋と本体容器との固定が解除される。当該爪の伸縮は、一般に、当該爪と連結されて蓋の中央領域内の所定位置に配置された被操作部に対して、蓋表面の外部から所謂キー部材を嵌合させてこれを操作することで行われている。このような部材の接触、回動、その際に生じる摺動等により、通常は半導体製造上問題視されるべき塵が発生する。しかし、これら塵は蓋の表面とドアの表面との間の微小隙間から当該隙間の外部に拡散する以前に、ダウンフローが形成された微小空間内に移動される。このため、当該塵の微小空間或いはポッド内への拡散は問題視されるレベルには至らず、特に当該塵に対する対応は為されていなかった。また、通常清浄度の劣った空間を搬送されることから、ポッド本体の外周面及び蓋の表面には当該空間で付着した塵、或いは外気に含まれた例えばハイドロカーボン等が吸着している。これらに関しても、前述したキー部材等から生じた塵と同様に、ダウンフローによる抑制効果が好適に機能していると考えられていた。
【0006】
ここで、半導体デバイスは、素子の高機能化及び小型化が漸次進められている。このため素子に用いられる配線幅、デザインルール等がより狭められ、従来であれば問題とならなかったより小さな塵の存在にも留意する必要が生じてきている。このような極微小な塵は、従来対応策が練られてきた塵と異なり、所謂ブラウン運動や微小な静電気の影響等、従来とは異なる動作によって空間を移動する。具体的には、このような極微細な塵は、前述したダウンフローによって微小空間の下方に押し流し更に外部空間に排出しようとしても、単純に気流に流されずに微小空間内に漂い出してくる可能性がある。なお、特許文献2には、蓋側に爪を配置するのではなく、ポッド側の開口外部に回動式のレバーを配置して蓋が開口を閉鎖した状態において当該レバーが蓋表面側から蓋を押さえ込む構成が開示されている。当該構成では、特許文献1におけるキー部材に起因する塵の発生は開口の周囲で生じることとなり、蓋及びこれを保持するドアからの塵の拡散の程度は引用文献1の構成よりは低減できる可能性がある。しかし、蓋開閉の操作前に当該レバーの操作を予め行っておく必要が存在し、且つ当該操作のための構成が開口部周囲に存在することから、外部空間に存在する極微小な塵が微小空間側に拡散してくる恐れが存在する。
【0007】
また、昨今のウエハの大口径化に伴ってこれを収容するポッドも大型化してきている。このような大型のポッドの場合、ポッドの蓋を閉鎖する際にこれを保持するドアが大きく動作し、且つ閉鎖に際して大きな駆動力を呈することが必要となる。このため、従来のドア−ポッド蓋の関係においてドアのみの動作によってポッドの蓋をポッドに対して好適に固定させることが困難となると考えられる。そこで、ポッド開口を閉鎖する蓋の表面に付着する極微小な塵の影響を抑制し、且つ蓋開閉時において当該開閉操作に伴う塵の発生、及び発生した塵の微小空間或いはポッド内部への拡散を抑制することが必要となる。
【0008】
本発明は以上の状況に鑑みて為されたものであり、ポッド開口を閉鎖する蓋の表面に付着する極微小な塵の影響を抑制し、且つ蓋開閉時において当該開閉操作に伴う塵の発生、及び発生した塵の微小空間或いはポッド内部への拡散を抑制する密閉容器たる処理基板収納ポッド(またはポッド)及び当該密閉容器に対応する蓋開閉システムの提供を目的としている。また、大口径ウエハ用のポッドにおいて、該ポッドの開口を閉鎖する際にポッド開口を確実に閉鎖することが可能となる密閉容器及び当該密閉容器に対応する蓋開閉システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る密閉容器は、周囲に座部を具備する開口を有する、処理基板を収納するための内部空間を有する本体容器と、該開口に挿嵌され、該座部に押し付けられて該開口を密閉可能な蓋とを備える処理基板収納ポッドであって、該本体容器は、該本体容器に対して移動可能に取り付けられるラッチ機構であって、該ラッチ機構は、前記ラッチ機構の移動方向と異なる方向に突出するアーム部と、前記アーム部の先端に取り付けられる係合部とを有するラッチ機構を備え、該蓋は、該蓋の側面上に刻設され第一溝と、一端は該第一溝と連通し、他端は該蓋が該開口に完全に挿嵌された状態において該内部空間側の蓋の面と連通するように刻設される第二溝とを有する被係合部を備えることを特徴とする処理基板収納ポッドにより解決する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポッドに蓋が固定された状態において蓋の表面は平坦な面となる。また、蓋には外部からアクセスされ且つ操作される所謂可動部材も存在しなくなる。従って、従来構成のようなドア表面における所謂ラッチ爪の操作に伴う発塵を完全に無くすことが可能となる。また、従来と異なり、蓋は内部に種々の構成を有さず、単なる平板状の部材となる。従って、洗浄による塵等の除去が容易になると共に、排除困難な状態での塵等の蓋への付着が無くなり、蓋単体で考えた場合であっても塵等に対する清浄度を高く維持することが可能となる。特に、蓋に設けられる被係合凹部は単なる溝形状であることから、加工、洗浄が従来の蓋の場合と比較して、非常に容易となる。また、半導体製造工程に用いられるウエハのサイズは、現状の所謂300mmφから450mmφへの移行が検討されている。このような大口径のウエハを収容するポッドでは、蓋のサイズの大型化と同時に蓋の反り、撓みといった変形の防止、ポッドに対する蓋の固定の確実性と固定強度の確保等が求められる。本発明に係るポッドの蓋の構造では、蓋構造が単純な平板構造となることから、蓋の軽量化が容易であると共に蓋の軽量化を為しつつ、蓋の剛性を高める構造を採用することも可能となる。従って、このような要望に対して容易且つ確実に対応することが可能となる。
【0011】
また、本発明によれば、蓋をポッド本体に対して固定した状態で、常に蓋がポッド開口を密閉する方向に付勢される構成としている。更には、蓋固定時において、ポッドに対して蓋を固定する所謂ラッチ機構は、蓋がポッド開口に押し付けられる方向の付勢力を徐々に大きくしつつ加えることを可能としている。当該構成とすることによって、ポッド自体の気密性の向上、及び搬送時等における蓋の振動による発塵の可能性を低減が可能となる。また、同時に、ドア自体の駆動力を大きくすること無く、蓋をポッドに対して好適に固定、密着させることが可能となる。このことはラッチ機構の急激な動作及び急激な負荷の加わりを抑制し、ドアの所謂閉鎖力を段階的に制御することを可能とする。更に、当該蓋の表面を平坦にできることから、当該蓋或いはドアの対向面の何れかにシール部材を配することにより、これら蓋及びドアに挟まれる空間をその周囲空間から完全に分離することとなり、蓋が微小空間内に持ち込んだ塵、外気等の拡散を確実に防止できる。更に、ドアが蓋を吸着保持することに加え、シール部材により形成される蓋とドアとに挟まれた閉鎖空間を減圧化してドアの保持力を高めることも可能となる。また、蓋開閉操作を行うための構成の配置及び当該構成の動作領域が、基本的にポッド外部及び微小空間の外部で行われることとなる。従って、仮にこれら構成による発塵が生じた場合であっても、当該塵のポッド内部或いは微小空間内部への拡散の頻度は従来構成の場合と比較して大きく低減される。
【0012】
また、本発明においてラッチ機構が垂直方向に駆動する様式とされ、且つ下方位置において蓋固定を為す構造とした場合、ラッチ機構自身の自重によってポッドに対する蓋の固定が為されることとなる。この場合、蓋開閉時におけるラッチ機構を駆動操作する構成に動作不良が生じた場合であっても、常にラッチ機構が蓋固定位置に存在可能であることから、蓋の閉鎖は保たれてポッド内の清浄状態を維持し続けることが可能となる。また、例えば特許文献1に開示する構成の場合、キー部材とラッチ機構の被操作部とが内部で噛み込む等の事態が生じてこれら構成の分離が困難となった場合、分離のために、蓋を分解する等の操作を行う必要が生じる可能性がある。これに対して、本発明においては、ラッチ機構に対してポッドの側面等、微小空間に対する所謂外部空間側からのアクセスを為し、ラッチ機構に強制的な動作を行わせることが可能である。従って、ラッチ機構等に異常が生じてその操作が困難となった場合であっても、強制的な操作を容易に為すことにより、当該ラッチ機構に関連するトラブルから回復することか可能となる。更に、ラッチ状態の適否の検出についても特別の構成の付加、操作の確立を要さず、外部から目視によってラッチ状態を容易に確認することが可能となる。
【0013】
更に、本発明においては、ラッチ機構の操作を為す駆動機構において、当該ラッチ機構を操作するための操作部(後述する駆動接触面)の大きさを任意に設定可能である。従って、ドアによって蓋を開放する際にポッドを停止する位置精度を従来の場合と比較して低くすることも可能である。従来構成の場合、載置位置に対する蓋の固定位置、開口部に対するポッドの固定位置、ラッチ機構に起因した蓋に対するドアの当接位置を全て高い位置精度で満たさなければ、ポッドからの蓋の取り外しとポッド内部と微小空間との連通を為すことができなかった。しかし、本発明によれば、少なくともラッチ機構に起因する蓋及びポッドの停止精度の要件が緩和されることから、例えば蓋開閉装置の動作プログラムの構成の簡素化や、実際の操作上の安定性といった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の一実施形態に係るポッド及び対応する蓋開閉システムの主要部の概略構造を示す斜視図である。
【図1B】図1Aにおける領域1Bに含まれる構成を拡大して示す図である。
【図2】図1Aに示すポッドにおける蓋の構造を示す斜視図である。
【図3】図1Aに示すポッドにおけるポッド本体の構造を示す斜視図である。
【図4】図1Aに示すポッドにおけるラッチ機構の構造を示す斜視図である。
【図5A】図1Aに示す蓋開閉システムの主要部を側方から見た状態を示す概略図である。
【図5B】図5Aに示す主要部を外部空間側正面から見た状態を示す概略図である。
【図6A】本発明の一実施形態に係る係合凹部3cの形状を正面から見た状態を示す図である。
【図6B】本発明の他の実施形態に係る係合凹部3cの形状を正面から見た状態を示す図である。
【図7A】図6Aに示す係合凹部3cに対してラッチ機構が作用する状態を段階的に示す図である。
【図7B】図6Bに示す係合凹部3cに対してラッチ機構が作用する状態を段階的に示す図である。
【図8A】図1Aに示すポッドとラッチ機構駆動ユニットとについて、その駆動様式を説明するため図である。
【図8B】図1Aに示すポッドとラッチ機構駆動ユニットとについて、その駆動様式を説明するため図である。
【図8C】図1Aに示すポッドとラッチ機構駆動ユニットとについて、その駆動様式を説明するため図である。
【図8D】図1Aに示すポッドとラッチ機構駆動ユニットとについて、その駆動様式を説明するため図である。
【図9A】図4に示すポッドにおけるラッチ機構の構造のうち、付勢力の付与を示す斜視図である。
【図9B】ラッチ機構のアーム部に付与する付勢力の付与の仕方を示す斜視図である。
【図9C】図9Bに示したラッチ機構を用いた場合のラッチ機構の移動とアーム部の動きを示した概略図である。
【図9D】図9Bに示したラッチ機構を用いた場合のラッチ機構の移動とアーム部の動きを示した概略図である。
【図9E】図9Bに示したラッチ機構を用いた場合のラッチ機構の移動とアーム部の動きを示した概略図である。
【図10】図9Bに示したラッチ機構を用いた場合における処理基板収納容器を示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るロードポート装置の概略構成を示す側断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るロードポート装置の主要部概略構成を図7と同様の様式にて示す拡大側断面図である。
【図13】図12に示す構成に関して、ポッドがローディング位置に存在する状態を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態に係る蓋開閉システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態について、以下に図面を参照して説明する。図1Aは、本発明の一実施形態に係る密閉容器たるポッドが蓋開閉システムたるFIMSの蓋開閉位置に存在した状態におけるこれら構成を斜視図により示している。また、図1Bは図1Aに示す状態における後述するラッチ機構のローラー部の係合状態を示しており、領域1Bの構成を拡大して示す図である。図2はポッドの蓋の概略斜視図を、図3はポッドの本体の概略斜視図を、また、図4はポッド本体に固定されるラッチ機構の概略斜視図を各々示している。更に、図5Aは載置台及び微小空間の開口部を構成する壁を側面から見た状態を示し、図5Bはこれら状態をポッドが載置される正面側から見た状態を示している。また、図6A及び6Bは後述する被係合凹部の正面から見た形状を示す図であり、図7A及び7Bは当該被係合凹部を有する蓋がポッド本体に対して固定される際のラッチ機構及び蓋の動作を各々模式的に示す図である。
【0016】
本発明に係る密閉容器たるポッド1は、容器本体であるポッド本体2、蓋3、及びポッド本体2に対して摺動可能に取り付けられるラッチ機構5から構成される。ポッド本体2は略立方体形状であって内部にウエハ等の被収容物をその高さ方向に複数枚並置して収容する内部空間を有する。なお、ポッド本体はウエハを収容可能な種々の形態とすることが可能であるが、基本形状が立方体形状であることから、本明細書においては略立方体形状として定義している。ポッド本体2は、該略立方体形状における一側面に当該内部空間に連通する開口2aを有している。該開口2aは、前述した内部空間を外部空間と連通させる。当該一側面には、更に当該開口2aの周囲を囲むようにして、該開口2aを含む開口平面と平行な平面内にて該開口2aの周囲から外方に張り出したフランジ部2cが形成されている。フランジ部2cは当該一側面と平行な側端面を有し、当該側端面は後述する蓋開閉システムたるロードポートの開口周囲壁と対向する。フランジ部2cは、蓋3がポッド本体2と嵌合して開口2aを閉鎖可能となるように、蓋3の厚さ以上の厚さと、平板形状を有する蓋3の平板状の一面(後述する裏面3a)とほぼ同じ大きさとからなる収容空間2dを形成する。収容空間2dでは、開口2aの周囲に段差である座部を形成し、蓋3が開口2aに挿嵌されて座部に密着することで、開口2aが密閉される。
【0017】
また、フランジ部2cの外周面、本形態においては外側面に対して、外部空間から該収容空間2dに連通する挿通孔として、矩形状のローラー部挿通孔2eが設けられる。当該ローラー部挿通孔2eは、フランジ部2cの両外側面の各々に対して、上下2箇所に配置される。また、本形態では、当該フランジ部2cに対して、ラッチ機構5が摺動可能に支持されるスライドレール2gも配置される。該スライドレール2gは、フランジ部2cにおける前述した側端面と反対側の面(ポッド本体側に位置する面)である裏面3a上であって、外側面と隣接し且つ該外側面の延在方向に延在するように配置される。更に、ポッド本体2には、更に不図示のポッド搬送用ロボットによって保持される部分である被保持フランジ2hが上部に、また載置台と実際に当接して該載置台に固定される不図示の被係合部等が配置される被固定フランジ2iが下部に配置される。なお、これら被保持フランジ2h及び被固定フランジ2iは本発明に係るポッドの特徴的構成と関連性を有しないため、ここでの説明は省略する。
【0018】
本実施形態における蓋3は、ポッド本体2の開口2aを閉鎖した際に内部空間に面する裏面3a及び外部空間側に配置される表面3bを対向面とする平板状の部材からなる。また、平板形状の外周面、本本形態においては外側面に対して、前述したポッド本体2におけるローラー部挿通孔2eに対応した上下位置に対して被係合凹部3cが一対配置される。被係合部たる被係合凹部3cは、当該被係合凹部3cが形成される蓋3の外側側面上に外側面に沿って刻設される第一溝3c1と、一端が第一溝3c1と連通し、他端が蓋3が開口2aに完全に挿嵌された状態において蓋3の内部空間側の面(裏面)3aと連通して開口するように刻設される第二溝3c2とから構成されるL字形状を有する。第一溝の長さ及び幅は、前述したポッド本体2に設けられるローラー部挿通孔2eと一致する長さ及び幅を有する。また、該第一溝3c1において蓋3の裏面3a側に位置して係合凹部の一部を構成する内側壁3c3は後述するローラー部5bが接触して移動し、また蓋3をポッド本体2に引き付けるための作用面として機能する。なお、当該蓋3の表面3bには、後述するドアの吸着パッドによって吸着保持される際の被吸着領域において、効率的な吸着保持を可能とするように表面研磨処理が施されている。ここで、蓋表面3bには、清浄度の劣る空間内でポッドを搬送した際に付着した塵等が存在する。従って、これら吸着パッドによって封止して微小空間内への拡散を防止する観点から、当該領域は該表面3bのほぼ全域を含むように構成されることが好ましい。
【0019】
次に図6Aを参照して被係合凹部3cの構成について詳述する。第一溝3c1は平板形状延在方向において同一幅で延在するのではなく、その幅を変化させている。具体的には、第二溝3c2と連通する領域において蓋裏面3a側に幅を広げ、第一溝3c1の閉塞端部3c4に近づくに従ってその幅を狭くし、閉塞端部から所定距離hの位置より一定幅となっている。従って、内側壁3c3は、蓋裏面3aに対して、第二溝3c2への開口部近傍において最も近接し、閉塞端部3c4に近づくにつれて離れるように傾斜面を形成し、所定距離hの位置より平行となる。当該被係合凹部3cの形状より得られる効果について、図7Aを参照して説明する。図7Aは、蓋3のポッド本体2に対する固定時における被係合凹部3cと後述するローラー部5bとの位置関係の変化を示している。図7Aにおいて一転鎖線で示される中心線5b1はローラー部5bの移動軸線に対応し、二点鎖線は後述するドアが蓋3をポッド本体2に当接させた際の蓋3の表面3bの位置及びその概相線3c5を示している。また、図7Aは紙面上方のステップより順次蓋3とローラー部5bとの位置関係の推移を示している。ステップ1(Step1)では、蓋3のポッド本体2への取り付け操作により、まずローラー部5bが第二溝3c2に嵌まり込み、蓋3が所定位置に押し込まれるに連れてローラー部5bは第一溝3c1まで移動する。そして、蓋3の表面3bが所定位置3c5に至った段階で不図示のドアによる蓋3の移動は停止される。ここで、後述するラッチ機構が駆動し、ローラー部5bは移動軸線に沿って蓋3の閉塞端部3c4に向けて移動を開始する。ローラー部5は軸線上の移動に際して内側壁3c3の傾斜面と当接して、蓋3をポッド本体2に対して押し付ける方向の押圧力Pを当該傾斜面に付与する。当該押圧力Pによって、蓋3はポッド本体2側に向かって押し込まれ、ステップ2(Step2)に示すように、概相線3c5より蓋3の裏面3a側に移動する。ローラー部5bが更に移動し、同一幅の領域に至ることによってステップ3(Step3)に示すように蓋3の押し込みは停止し、蓋3がポッド本体2に対して所定の負荷を伴って密着固定された状態が得られる。
【0020】
次に、図6B及び7Bを用いて被係合凹部3cの更なる形態について説明する。なお、図6A及び7Aと同様の部分、構成、ステップ等に関しては説明を省略し、相違点についてのみ説明することとする。同図に示す形態では、第二溝3c2における第一溝3c1と連通する箇所から所定距離だけ離れた位置より、第二溝3c2における第一溝3c1と連通する箇所から遠ざかるにしたがって、内側壁3c3の面と蓋3の裏面3aとの距離が接近するように第二溝3c2が刻設されている。すなわち、第一溝3c1と第二溝3c2とが連通する箇所から所定距離の位置(図6Aおよび図6Bにおける、閉塞端部3c4から距離hの位置)において、内側壁3c3の傾斜の向きが変わり、内側壁3c3が蓋3の裏面3aに近づくことになる。第二溝3c2をこの形にすることにより、実際にローラー部5bが閉塞端部3c4に近づく場合の蓋3等の動作について図7Bを用いて説明する。ステップ1からステップ3でのローラー部5bと蓋3との相対的な動作は図7Aにおいて述べた場合と同一である。しかし、本形態では、ローラー部5bが所定距離hよりも閉塞端部3c4に近づくことにより、ローラー部5bの内側壁3c3に対する押圧力Pが緩和され、蓋3が最もポッド本体2に押し付けられた位置よりも若干初期位置にむけて戻ることとなる。即ち、ステップ4(Step4)に示すように、蓋3はステップ3(Step3)に示す位置よりも蓋表面3b側に移動し、最終的に逆の傾斜面となった内側壁3c3によってローラー部5bに対して復帰力P2が作用した状態となる。この状態では、ローラー部5bは復帰力P2によって閉塞端部3c3に押し付けられた状態となり、ポッド等に対して外的要因が加えられた場合であって、ローラー部5bは常に閉塞端部3c4に固定されることとなる。
【0021】
次にラッチ機構5の詳細について述べる。ラッチ機構5は、ポッド本体2に対して移動可能に取り付けられる。たとえば、ラッチ機構5の移動方向は、たとえば、代表的には、フランジ部2cの外周面に沿っての移動である。ラッチ機構5は、ラッチ本体部5a、係合部たるローラー部5b、及びラッチ本体部5aとローラー部5bとを連結するアーム部5cを有する。ラッチ本体部5aは、たとえば、ラッチ機構5の移動方向に延在する角柱状の部材であって、当該ラッチ本体部5aの第一の対向面5dとアーム部5cにおける第二の対向面5fにおいてポッド本体2のフランジ部2cの裏面及び側面に各々対向している。第一の対向面5dには、前述したスライドレール2gを摺動可能に収容するために、該第一の対向面5d上においてラッチ本体部5aの延在方向に沿って延在するガイド溝5gが配置される。なお、ラッチ機構5は、角柱状の部材に限らず、円柱部材またはブロック部材でもよい。ポッド本体2に対して移動可能に取り付けられる。アーム部5cは、第一の対向面5dの形成面からラッチ本体部5aの延在方向に対して異なる方向(たとえば、垂直方向)に突き出し、前述したローラー部挿通孔2eに対応するように上下位置に一対配置される。なお、本実施形態では、第一の対向面5d及び第二の対向面5fは、実際にはフランジ2cに対して微小間隔を保持して対向し、当接、摺動等が生じない構造としている。なお、これら構成の配置、例えばラッチ本体部5aからのアーム部5cの突き出し方向等は、当該実施形態に限定されない。即ち、延在方向である一軸に沿って移動可能なラッチ本体部5aから特定の方向にアーム部5cが突き出している。アーム部5cの先端には、係合部たるローラー部5bが取り付けられている。
ラッチ機構5のローラー部5bは、開口2aへの蓋3の挿嵌にしたがって該第二溝3c2内に進入すると、その後、ラッチ機構5を移動させることにより、ラッチ機構5の移動とともに、第一溝3c1内を、第一溝3c1における内部空間側の内側壁3c3に接しながら移動する。
【0022】
ローラー部5bは、フランジ部2cに設けられたローラー部挿通孔2eを介して蓋収容空間2d内に突き出し、前述した被係合凹部3cの内側壁3c3の一部と当接する。ローラー部5bは円板形状を有し、当該底面に対して垂直な回転軸5eを介してアーム部5cによって軸支されている。該回転軸5eは、ラッチ本体部5aの延在方向、及びアーム部5cの突き出し方向各々と垂直な方向に延在する。当該構成により、該回転軸5eに垂直な面内をローラー部5bが平行移動する、即ちラッチ本体部5aが延在方向に摺動する際には、ローラー部5bは回転軸5e周りに転動して円板外周面は当接する該内側壁に対する当接状態を維持しつつ、当接位置を変えることとなる。なお、本実施形態ではローラー部5bにおける円板外周面にゴム等弾性を有する部材を貼り付けて、該円板の周面方向に弾性を付与する構造としている。これにより、ローラー部5bの回転移動時においても当接部が回転せずに摺動することが防止され、発塵を抑制することが可能となる。
なお、ラッチ機構5の移動方向は、たとえば、開口2aの形成面に対して平行でもよい。または、蓋3が開口2aに完全に挿嵌された状態における内部空間側の蓋3の面、すなわち開口2aの形成面に対して角度をもっていてもよい。たとえば、フランジ部2cの外周面に沿って、開口2aの形成面に平行な面をフランジ2cの外壁に形成し、ラッチ機構5をそれに沿って移動させれば、開口2aの形成面に対して平行に移動する。この場合、鉛直方向でもよいし、水平方向でもよい。
フランジ部2cの外周面に沿って、開口2aの形成面に対して角度をもった面をフランジ2cの外壁に持たせ、ラッチ機構5をそれに沿って移動させれば、開口2aの形成面に対して角度をもった方向に移動させることができる。ラッチ機構5が、開口2aの形成面に対して角度を持って、斜めに移動することにより、ラッチ機構の移動ストロークを大きくとるができる。ラッチ機構5の移動により蓋3を締め付ける際に、ラッチ機構5による締付力の変化率を小さくすることができ、繊細な締付けが可能となる。
ここで、第一溝3c1の内側壁3c3の面の延在方向と、ラッチ機構5の移動方向とは交差する。そして、内側壁3c3の面の延在方向と、ラッチ機構5の移動方向とは、第二溝3c2において第一溝3c1と連通する側に向かって狭まるように、角度をもって交差している。
ラッチ機構5が、内側壁3c3の面の延在方向とラッチ機構5の移動方向との交差が狭まる方向と反対方向(広がる方向)に移動すると、ローラー部5bと、ラッチ機構5の第一の対向面5dとの距離は一定であるから、内側壁3c3の面とラッチ機構5の第一の対向面5dとの距離の増加による楔効果で、ラッチ機構5の移動にともなって係合部たるローラー部5bが内側壁3c3をラッチ機構5の方向に引き付けようとする。内側壁3c3がラッチ機構5の方向に引き付けられることによって、蓋3は座部に押し付けられて強固に固定される。一方、ラッチ機構5が第一溝3c1の内側壁3c3に沿って第二溝3c2まで、内側壁3c3の面の延在方向とラッチ機構5の移動方向との交差が狭まる方向に移動した際には、蓋3の固定を徐々に解放する。
本実施の形態においては、図6Aおよび図6Bに示すように、閉塞端部3c4から所定距離hの位置では、内側壁3c3の傾斜の向きを変えている。すなわち、本発明における所定の位置hとは、内側壁3c3の面の延在方向とラッチ機構5の移動方向との交差の角度を小さくするように内側壁3c3の傾斜の向きを変える意義を有している。すなわち、当初、内側壁3c3の面の延在方向とラッチ機構5の移動方向との交差が広がる方向に向かってラッチ機構5が移動すると、内側壁3c3の面とラッチ機構5の第一の対向面5dとの距離がある増分で増加する。さらに、ラッチ機構5を移動させて、閉塞端部3c4から所定距離hの位置に差し掛かると、内側壁3c3の面の延在方向とラッチ機構5の移動方向との交差の角度が変化するため、内側壁3c3の面とラッチ機構5の第一の対向面4dとの距離の増分が減少する。したがって、前記のとおり、図7Aのステップ3および図7Bのステップ4のように、閉塞端部3c4から所定距離hの位置を、適切な圧力で蓋3をポッド本体2の収容空間における開口2aの段差に押し付けられるように設定する。
【0023】
本実施形態では、ガイドレール2gとガイド溝5gとによってポッド本体2に対するラッチ機構5の取り付けを為している。これによりラッチ機構5のポッド本体2に対する不要な接触を無くし、該接触による発塵を防止している。しかし、ポッド本体2に対するラッチ機構5の取り付けを強固にし、摺動時の所謂がた等の低減を目的として、ガイド溝5gとローラー部5bの円板外周面の一部とによって、矩形状のローラー部挿通孔2eの一内側壁とガイドレール2gとの間の部分を挟持することにより、ラッチ機構5をポッド本体2に対して取り付けることとしても良い。この場合、前述したローラー部5bの円板外周面に弾性体を付加することによって、矩形状のローラー部挿通孔2eの一内側壁と係合凹部の内側壁3c3の両者に対して、ローラー部5bが適度な押圧力を有して当接することができる。これら部材間の当接部分においてある程度発塵することは避けられない。従ってこれら当接部分での摩耗特性に留意した耐磨耗性材料等を用いる、或いは低発塵性のベアリングからなるローラーを用いる等により、ラッチ機構5の動作に起因する発塵を更に抑制することが可能となる。
【0024】
次に、ラッチ機構5によるポッド本体2に対する蓋3の開放様式について以下に述べる。図1A中に示すように、蓋3がポッド本体2における収容空間2dに収容されて開口2aを閉鎖した状態において、ローラー部5bはローラー挿通孔2eの下方、即ちL字状の被係合凹部3cにおける第一溝3c1の閉鎖端部3c4に位置する。なお、ラッチ機構5は、自重によって、当該閉鎖端部に位置する。さらに、図9Aの矢印で示すように、ラッチ機構5において、ローラー部5bがラッチ本体部5aに近づく方向の力を付与させる。これにより、被係合凹部3cにおけるローラー部5bの位置が安定する。たとえば、ローラー部5bの回転軸5eをアーム部5cに固定し、アーム部5cの延在する方向に、アーム部5cをラッチ機構に対して収縮するような付勢力を与えるように弾性部材を取り付けてもよい。弾性部材としては、スプリングが考えられる。または、ローラー部5bの回転軸5eがアーム部5cに対して、ラッチ本体部5aの方向に可動な構造として、スプリングの一端をローラー部5bの回転軸5eに、他端をアーム部5cに取り付けて、アーム部5cの延在する方向に、ローラー部5bがラッチ本体部5aに近づくような方向の付勢力を与えてもよい。これで、ローラー部5bにより、蓋3をポッド本体2の座部に密着させる方向の付勢力を与えることができる。ローラー部5bはその付勢力の反力を受けて、その位置に停止して安定する。当該状態からラッチ機構5をラッチ開放位置、即ち図1Aにおける上方にスライドさせると、ローラー部5bはL字状の被係合凹部3cにおける第一溝3c1と第二溝3c2とが連通する位置に移動する。この移動によって、ローラー部5bは蓋裏面3aに開口する第二溝3c2に位置することとなり、当接する内側壁3c3が存在しなくなる。従って、蓋3に対するローラー部5bによる規制が無くなり、蓋3は第二溝3c2の延在方向、即ち蓋3をポッド開口2aより遠ざける方向への移動が可能となる。
なお、ラッチ機構5において、ローラー部5bがラッチ本体部5aに近づく方向の力を付与させる際に、図9Bで示すように、アーム部5cをラッチ本体部5aに対して回動可動に枢軸5hにより固定して、図9Bにおける矢印で示すように、ローラー部5bがラッチ本体部5aに回転して近づくような力を付与してもよい。たとえば、枢軸5hを囲むように弾性部材(たとえば、スプリング)を取り付け、一端をアーム部5cに、他端をラッチ本体部5aに取り付けて付勢力を与えることが考えられる。この場合の付勢力は、被係合凹部3cにおける第二溝3c2に対して、第一溝3c1が延在する方向の力がアーム部5cにかかるような回転力である。たとえば、図9Bを参照すると、ラッチ機構5が下向きに移動することによって蓋3をポッド本体2に固定するとすれば、被係合凹部3cにおける第二溝3c2に対して、下向きに第一溝3c1が刻設されるから、ラッチ機構5が移動する方向の力がアーム部5cに付加されるような回転力を付加することになる。これは、また、第一の溝3c1の内側壁をラッチ機構5に近づける方向に、枢軸5h周りに付勢されていることである。すなわち、この場合、図9Bに示すように、アーム部5cに下向きの力が付加されるような回転力を生じさせる付勢力ということになる。
このような構成とすることにより、ラッチ機構5の被係合凹部3c内での移動によって、図9Cから図9Eのように、蓋3が固定される。図9Cから図9Eは、図9Bに示したラッチ機構を用いた場合のラッチ機構の移動とアーム部の動きを示した概略図である。図9Cに示すように、まず蓋3を開口2aに挿入すると、第二溝3c2にローラー部5bが挿入される。アーム部5cは、ローラー部5bが第二溝3c2を進行するにしたがって、自然に開く。ラッチ機構5がさらに移動すると、ローラー部5bは、アーム部5cにかかる付勢力にしたがって、第二溝3c2から第一溝3c1に向かって、自然に方向を変える。そして、ラッチ機構5が移動を終了すると、第一溝3c1の閉塞端部3c4において、付勢力によりローラー部5bが停止保持され、蓋3が開口2aの座部に強固に押し付けられる。閉塞端部3c4において、第一溝3c1の向きをアーム部5cにかかる付勢力の方向に変えるように第一溝3c1の閉塞端部3c4を設定しても良い。
【0025】
なお、上述した実施形態では、ラッチ機構5はフランジ部2cの両側辺の裏側角に一対配置することとしている。当該形態の場合、ラッチ機構5の自重によってラッチ状態を得ることとなることから、ポッド保管時において特にラッチ機構5を定位置に維持する機構を設ける必要が無く、ポッドの構成を簡略なものとする効果が得られる。このような簡易な構成は、塵の洗浄の容易さと共に塵自体のポッドに対する付着の可能性も低減するという効果も呈する。また、実際の半導体製造工場においては、半導体処理装置は隣接する装置が殆ど密着して配置されるが、当該構成の場合、後述するラッチ機構駆動ユニットを付加した場合であっても半導体処理装置の設置上の投影面積は特に影響されない。しかしながら、本発明は当該形態に限定されず、フランジ部2cの上下辺に対して配置しても良い。また、蓋3のポッド本体2に対する固定強度を増すために、ローラー部5bを更に上辺及び下辺の少なくとも一方に追加することとしても良い。また、一つの被係合凹部3cに対して複数のローラー部が対応することで前述した固定強度を確保する構成とし、被係合凹部の数を減らすこととしても良い。また、本形態ではローラー部挿通孔2eより通過する構成はローラー部5bのみの如く記載されている。しかし、回転軸5eもアーム部5cの一部として把握することも可能であり、当該ローラー部挿通孔2eを挿通する構成は係合部たるローラー部5bとアーム部5cの一部とし、当該ローラー部挿通孔2eを挿通する構成は少なくとも係合部であると定義されることが好ましい。
【0026】
また、本実施形態では、被係合凹部3cを第一溝3c1と第二溝3c2とからなるL字形状の凹状の溝からなる形態としている。しかしながら、裏面まで連通する厚み方向に延在する第二溝に対応する領域と、側面の延在方向(厚み方向に対して垂直な方向)に延在する第一溝に対応する領域を含む様式であれば本発明におけるL字形状に含まれる。例えば、複数の第二溝が一つの第一溝と連通する様式、第二溝と連通しない第一溝の他端が更なる溝と連通して蓋の表面側に開口する様式、等、種々の様式とすることが可能である。このような連続的な溝形状とすることによって、加工の容易性、洗浄上の作業性の向上といった効果が見込まれる。
【0027】
また、本実施形態ではラッチ機構5をラッチ位置に保持する手段として、ローラー部5bの円板の周面に対して弾性を付与することでこれに換えている。しかしながら、当該形態のみならず、例えばバネ等の弾性部材をラッチ本体部5aと連結する等し、ラッチ機構に対して常に付勢力を与える構成としても良い。また、本実施形態では、係合対象物としてローラー部材5bを、被係合部材として被係合凹部の内側壁3c3を用いることとしている。当該構成の場合係合部位からの発塵の可能性は大きく低減される。しかし、所謂回転ローラーからの発塵が問題となる場合もあり得ることから、実施形態に示すローラー部材5を用いず、耐磨耗性の高い円柱状の当接部材等を用いることとしても良い。この場合、当接部材を板バネ等から構成することとしても良い。また、本実施形態では、スライドレール2gから仮に発塵した場合であっても塵の微小空間方向への拡散がフランジ部2cによって遮られることからスライドレール2gをフランジ部2cの裏面に配置することとしている。当該構成の場合、ポッドの正面投影面積を変えないことから、隣り合う半導体製造装置が密着している場合であっても、ポッド載置上特に問題は生じない。しかしラッチ機構の構成の簡略化の観点から、スライドレール2gをフランジ部2cの外側面上に配置する構成としても良い。
【0028】
更に、本実施形態では被係合凹部3cに対して、フランジ部2cの外周面からアクセスする様式によってローラー部5bによる係合状態を得ることとしている。当該様式によれば、加工の容易性、実際の係合状態の目視確認が可能となること、スライドレール2gとローラー部挿通孔2eとを離して配置することが可能となる、及びローラー部5bを第一溝3c1に対して相対的に大きくすることが可能となり係合力を大きくするといった効果が得られる。しかし、これを例えばフランジ部2cの裏面側からのみアクセスする様式としても良い。また、この場合、例えば当該被係合凹部3cを蓋3の厚さ方向に形成される第二溝を構成する孔と当該孔と連通して、当該孔の形成方向から他の方向に向かう方向に形成される第一溝を構成とする他の孔とからなる孔形状とし、これを裏面3aにおける外周近傍に配置することとしても良い。
【0029】
以上に述べたポッド1によれば、蓋3は外周面に被係合凹部3cのみを有する平板状の部材となる。従って、塵等が管理されていない空間に放置された場合であっても、従来構成における所謂ラッチキーの受容孔が存在しないことからこれら塵等が付着する確率自体や蓋の内部に塵等が貯蔵される確率が低下する。また、塵等の付着は平坦な面の表面が主であることから、洗浄、或いはダウンフロー下において容易にこれを除去することが可能となる。また、従来構成におけるドア表面のラッチキーの操作部材を配する必要がなくなることから、ドアの構造の簡略化やこの簡略化に伴う環境清浄度の向上を図ることも可能となる。また、蓋3をポッド本体2に固定する際に、ラッチ機構5によって徐々に蓋3をポッド本体2に対し押し込むように負荷を強めながら蓋固定を行うことが可能となり、より大きな蓋3を用いる場合であっても好適な蓋密着状態を得ることが可能となる。
【0030】
次に、上述したポッドに対応した密閉容器の蓋開閉システムについて以下に述べる。なお、図1Aは、上述したポッド1、及び、後述する蓋開閉システム101におけるポッド載置部121、ドッキングプレート123、ドア115a、第一の開口部111、筐体壁105a、ラッチ機構駆動ユニット131及びフランジカバー133を示している。本蓋開閉システム101においては、ラッチ機構駆動手段たるラッチ機構駆動ユニット131及びフランジカバー133が特徴的な構成となる。本実施形態において、ラッチ機構駆動ユニット131は一軸方向に伸縮するロッドを有するアクチュエータにより構成される。当該ラッチ機構駆動ユニット131は、ポッド1における蓋3がドア115aによって吸着保持される位置に存在する状態にある時に、ラッチ機構5のラッチ本体部5aの軸心とアクチュエータのロッドの軸心とが一致し、当該ラッチ本体部5aの上下において当該ロッドが向か合うように配置される。
【0031】
換言すれば、ラッチ機構駆動ユニット131は、ラッチ機構5の移動方向に沿って押圧可能なロッドと、そのロッドを移動軸に沿って伸縮可能に支持するアクチュエータとを具備する。たとえば、ラッチ機構駆動ユニット131は、ラッチ本体部5aの移動軸と同軸もしくは平行に配置される。即ち、本実施形態におけるラッチ機構駆動ユニット131は蓋3の取り外し位置に存在するポッド1のラッチ機構5に対応する位置であって、当該ラッチ機構5を上下方向に押圧駆動可能に配置される。なお、該ロッドの軸心はラッチ機構5の移動軸と一致するように配置されることが好ましい。ラッチ機構5のラッチ本体部5aにおける上下端面は被押圧面である前述した駆動接触面として作用し、ロッド先端が当該被押圧面を押圧することによってラッチ機構5の軸方向の駆動が為される。
【0032】
またラッチ機構駆動ユニット131は、上下のユニットにてラッチ本体部5aの被押圧面である上下の端面を挟持するように、後述する制御装置によって駆動される。これら上下のラッチ機構駆動ユニット131には、例えばエアシリンダからなるアクチュエータが用いられることが好適である。当該エアシリンダの圧力を上下のユニットにおいて違えておくことによって、これらのロッドがラッチ本体部5aを挟持した後、差圧に準じた速度、付勢力によってラッチ本体部5aを移動させることになる。図6A或いは図6Bに示す形態において、例えば単一のラッチ機構駆動ユニット131によってラッチ本体部5aを駆動させた場合には、急速且つ局所的に急激な負荷が蓋3に対して加えられる。しかし、一対のラッチ機構駆動ユニット131を用いて速度等を制御してラッチ本体部5aを移動させることによって、ある程度以上の時間経過を伴った適度な荷重の付加を為して蓋3の固定を行うことが可能となり、安定的なポッド1の閉鎖を行うことが可能となる。
【0033】
ここで、実際の蓋3の開閉操作に関して、ラッチ機構駆動ユニット131の動作順序について図8Aから8Dを用いて説明する。なお、本形態では、説明の容易化のために、上下に配置されたラッチ機構駆動ユニット131が各々別個に駆動する場合について述べることとする。これら図は、ポッド1とラッチ機構駆動ユニット131とのみを斜視図により示すものである。図8Aは、ポッド1がドア115aによって蓋3の開閉が為される位置に配置された状態を示す。当該状態において、ラッチ機構5の押圧面は、各々対応するラッチ機構駆動ユニット131のロッド先端から軸方向に所定間隔離れた状態にある。当該状態より、下方に配置されたラッチ機構駆動ユニット131が動作を開始し、図8Bに示すように、ロッドを伸長させてラッチ本体部5aの下端面を押圧してラッチ機構5を上方に移動させる。これによりローラー部5bは被係合凹部3cにおける第二溝3c2に位置することとなる。当該位置においてローラー部5bと被係合凹部3cとの係合状態は解除され、蓋3はポッド本体2から取り外し可能の状態となる。なお、前述したように、本形態においてローラー部5bは円板外周部に弾性を有する部材を配置しており、常に、当該弾性に起因する付勢力を有して被係合凹部3cの内壁面に当接している。
【0034】
当該状態に至った後、蓋3は図8Cにおいて不図示とされるドアによって吸着保持され、ドアの移動に伴う蓋3のポッド本体2からの取り外しが行われる。その後、開放されたポッド本体2の開口2aを介して、該ポッド本体2の内部に収容されたウエハの搬出、及び処理装置によって処理されたウエハが該内部へ搬入される。全てのウエハが搬入された後、再度ドアによる図6Cに示す状態への蓋3の移動、及びその後の蓋3による開口2の閉鎖の動作が為される。続いて、図8Dに示すように、下方に配置されたラッチ機構駆動ユニット131がロッドを収縮させると共に、上方に配置されたラッチ機構駆動ユニット131が動作を開始して、そのロッドを伸長させ、ラッチ本体部5aの上端面を押圧してラッチ機構5を下方に移動させる。これによりローラー部5bは被係合凹部3cにおける第一溝3c1に位置することとなる。当該位置においてローラー部5bと内側壁3c3との係合状態が成立し、蓋3はポッド本体2に対して固定された状態となる。係合状態が得られた後、上方のラッチ機構駆動ユニット131はそのロッドを収縮させ、図8Aに示す状態に復帰する。以上のラッチ機構駆動ユニット131の動作によって、ポッド1に対しての蓋3の取り外しから取り付けまでの一連の操作が為される。
なお、既に説明したとおり、図10に示すように、ラッチ機構5の移動方向を、開口2aの形成面に対して角度をもたせることも可能である。図10は、図9Bに示したラッチ機構を用いた場合における処理基板収納容器を示す斜視図である。すなわち、開口2aの形成面に対して角度を持つような面をフランジ部2cの外周面に沿って構成し、ラッチ機構5をそれに沿って移動させる。ラッチ機構駆動ユニット131を使用して、ラッチ機構5を鉛直方向に移動させる構成と同様の装置で、ラッチ機構5は開口2aの形成面に対して角度をもった方向に移動させることができる。ラッチ機構5のアーム部5cおよびローラー部5bと被係合凹部3cにおける位置関係は、図9Cから図9Eを参照して説明したとおりである。ラッチ機構5が、開口2aの形成面に対して角度を持って、斜めに移動することにより、ラッチ機構の移動ストロークを大きくとるができる。ラッチ機構5の移動により蓋3を締め付ける際に、ラッチ機構5による締付力の変化率を小さくすることができ、繊細な締付けが可能となる。ここでラッチ駆動機構ユニット131をそのロッドの移動方向がラッチ機構5の移動軸と同軸もしくは平行になるように開口2aの形成面に対して傾けて配置してもよい。
【0035】
本発明の一実施形態に係る蓋開閉システムでは、更にフランジカバー133を有している。当該フランジカバー133は、ポッド2のフランジ部2cの外周面と全域と対向可能な内周面を有する筒状の構造体からなる。フランジカバー133は、ポッド1が配置される側(外部空間側)に対して、筐体壁105aから垂直に突き出すように配置される。ポッド1がドア115aによって蓋3の開閉が為される位置に配置された状態において、当該フランジカバー133はポッド2のフランジ部2cの外周面を覆い、外部空間から直接的に該外周面に至る経路を遮断する。本実施形態では、ラッチ機構5が蓋3との係合位置及び非係合位置の何れに存在する場合であっても、ローラー部挿通孔2eを介して外部空間からポッド本体2における収容空間2dに至る経路が存在してしまう。通常ポッド内部は該内部と連通する微小空間に供給される清浄気体の影響により外部空間より所謂陽圧とされるため、従来であれば当該ローラー部挿通孔2eについても外方に向かう気流が生じることから塵の対策上問題はないと考えられる。本形態では、更にフランジカバー133を配置することによって当該実質的に当該ローラー部挿通孔2eを介して構成される収容空間2dから外部空間に至る経路を可能な限り小さくすることを可能としている。これにより例えば分子運動領域の拡散によって当該ローラー挿通孔2eを介して収容空間2dに至る極微小な塵についても、これを抑制することが可能となる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、ラッチ機構駆動ユニット131であるアクチュエータをラッチ機構5に対して上下に一対配置することとしている。当該構成とすることによってラッチ機構5の構造の簡素化が可能となり、塵の持ち込身の可能性を低減するという効果が得られる。しかし、ラッチ機構5に対して軸方向に付勢力を与える付勢手段を付加し、ラッチ機構駆動ユニット131はラッチ機構5の上方或いは下方の何れか一方に配置することとしても、ラッチ機構5の配置に関連する本発明の効果を得ることは可能である。また、例えばドッキングプレート123に対して、当該ドッキングプレート123の進退方向に沿って一方向に昇降或いは降下する傾斜面を固定カム面とし、当該カム面と当接することによって該カム面に従動するカム手段を配し、該カム手段の動作によってロッド等が上昇或いは下降するラッチ機構駆動ユニット131を構築しても良い。即ち、容器載置台たるポッド載置台とラッチ機構駆動ユニットとの間に所謂カム機構を配置し、当該カム機構によってラッチ機構駆動ユニットを駆動することとしても良い。当該構成とすることにより、アクチュエータ等を駆動する駆動源を無くすることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、フランジカバー133としてフランジ部2cを全て覆うことによって、ローラー部挿通孔2eを介した収容空間2dと外部空間との直接的な連通を防止している。当該構成とすることによって、例えばローラー部挿通孔2e、ローラー部5b等の洗浄が容易となるという効果が得られる。しかし、例えば、ローラー部5b及びアーム部5cがローラー部挿通孔2e内に収容されるようにアーム部5cの厚さを薄くし、収容部をカバーによって覆う構成としても良い。当該構成とすることにより、蓋開閉システム上部材の追加を行うことなく本発明の効果を得ることが可能となる。
【0038】
上述した形態では、従来の蓋開閉システムに対してラッチ機構駆動システム131とフランジカバー133とを付加するのみによって、本発明に係る密閉容器を使用することが可能となる。また、実際の半導体処理装置の設置上の投影面積に関しても、これら構成は当該面積を特に変えることがない。従って、現存する半導体製造ラインに対しても、本発明に係る密閉容器を使用可能とするように改造を為すことは容易であるといえる。蓋開閉システムを以上述べた構成とすることによって、本発明に係る密閉容器が使用可能となり、当該密閉容器から得られる上述した種々の効果を享受することが可能となる。なお、フランジカバー133については、配置されることがより好ましいが、例えばドッキングプレート123の構成等によっては位置することが困難な場合も考えられる。この場合、従来の所謂デザインルールからなる半導体製造工程の場合、例えば微小空間内からポッド内部に送られる清浄気体の流量を増加させることによって、現状問題となるサイズの塵のポッド内部への侵入を防止することとしても良い。
【0039】
次に本発明に係る密閉容器に応じた蓋開閉システムについて説明する。図11は概略構成を示す該システムの側断面図であり、図12は該システム101におけるポッド載置部、ドア、ポッド、及び蓋等を同様の様式にて拡大して示した図である。また、図13はポッドの開口を蓋が閉鎖した状態での、ポッド載置部、ドア等を模式的に示す図である。蓋開閉システム101は、微小空間103を構成する筐体105及び筐体105に隣接して配置されるポッド載置部121を有する。筐体105は、更にファン107、ロボット109、第一の開口部111、第二の開口部113、ドアシステム115を有する。ファン107は筐体105によって微小空間103の上部に配置され、筐体105の外部空間に存在する気体を微小空間内部に導入する。なお、ファン107に対しては、外部空間の清浄度に応じて、当該空間から導入される気体より塵埃等の汚染物質を除去するフィルタが付随している。筐体105の下部には気流が流出可能となるような構造が配置されており、微小空間103内部で発生する粉塵等は当該気流に運ばれて筐体105の下部から外部空間に排出される。
【0040】
ロボット109におけるロボットアーム109aは、第一の開口部111及び第二の開口部113を介して微小空間の外部に突出可能となっている。第一の開口部111はドアシステム115におけるドア115aにより一見閉鎖状態とされるが、ドア115aの外周と第一の開口部111の内周面との間には隙間が形成されることから、当該ドア115aは第一の開口部111を略閉鎖可能となっていると述べる。第二の開口部113は、ウエハ処理装置117の内部と接続されているが、当該ウエハ処理装置117の詳細に関しては本発明と直接の関係を有さないために本明細書における説明は省略する。また、ラッチ機構駆動機構131及びフランジカバー133については先に説明済みであることからここでの説明は省略することとし、図面の理解を容易とするために図中においてフランジカバー133を省略することとする。
【0041】
ポッド載置部121は、ドッキングプレート123、ポッド固定システム125、及びドッキングプレート駆動システム127を有する。ドッキングプレート123の上面は略平面とされており、該上面にはポッド固定システム125の一部が配置される。本発明に係るポッド1は、ドッキングプレート123の上面に載置され、ポッド固定システム125の当該一部、具体的にはピンがポッド1の下面に配置された不図示の被係合部と係合することによりドッキングプレート123上の所定位置に固定される。なお、ドッキングプレート123は、ポッド1を上面に載置した際に、ポッド1における本体開口2aが前述した第一の開口部111と正対するよう配置されている。ドッキングプレート駆動システム127は、ガイドレール127a及び駆動シリンダ127bを用いて、ドッキングプレート123と共に該所定位置に固定されたポッド1を該第一の開口部111に向かう方向及び離間する方向に駆動する。
【0042】
駆動用シリンダ127bは載置台本体121aに一端部が固定されており、他端部となる伸縮するシリンダ端部がドッキングプレート123に固定されている。ドッキングプレート123はガイドレール127aに対して摺動可能に支持されており、駆動シリンダ127bのシリンダ端部の伸縮に応じてガイドレール127a上を摺動する。ここで、ドッキングプレート123は、ポッド1を当該ドッキングプレート123上に外部から搭載する(ロードする)或いは取り除く(アンロードする)位置が微小空間103から最も離れた位置に存在することとなり、ポッドの蓋3を取り外す位置が微小空間103に対して最も接近する位置となる。
【0043】
ドア115aの表面に配置される吸着パッド115kは該蓋3と当接した状態で不図示の配管を通じて負圧供給源108(図14参照)より負圧を供給することにより該蓋3を吸着し、当該蓋3をドア115aによって保持することを可能とする。ドアシステム115は、ドアアーム115b、ドア開閉アクチュエータ115c及びドア上下機構115dを有する。ドアアーム115bは棒状の部材からなり、一端においてドア115aを支持し、他端においてドア開閉アクチュエータ115cと連結されており、中間部の適当な位置において当該位置を中心に回転可能に軸支されている。ドア開閉アクチュエータ115cによって該回転中心を軸としてドアアーム115bは回転し、該ドアアーム115bの一端及びここに支持されるドア115aは第一の開口部111に対して接近或いは離間の動作を行う。ドア上下機構115dは、ドア開閉アクチュエータ115cと前述したドアアーム115bの回転軸とを支持し、上下動用アクチュエータによって上下方向に延在するガイドに沿って当該アクチュエータ及びこれに支持されるドアアーム115b及びドア115aを上下方向に駆動する。
【0044】
また、図13に示されるように、ドア115aの蓋3との対向面の周囲には、蓋3の表面3b設けられたシール面と対応するように、略円環状のシール部材115mが配置される。当該シール部材115mは、蓋3がドア115aの表面に配置された吸着パッド115kにより吸着保持された状態でシール面3cと当接、密着する。これにより形成される密閉空間に蓋3の表面に付着した微小な塵等を封止することで、これら塵の周囲への拡散を防止する。なお、本実施形態では蓋3は吸着パッド115kによってのみ保持されている。しかし、例えばドア表面に更なる吸着排気用のポートを設け、シール部材115mによって密閉されたドア115a、蓋3及びシール部材115mから構成される空間内部を排気する構成としても良い。当該構成とすることにより、微小な塵等を強制的に排除することが可能となると共に、ドア115aによる蓋3を保持する保持力をより大きなものとすることが可能となる。また、吸着パッド115kを無くし、シール部材115mを一種の吸着パッドとして使用することとしても良い。
【0045】
なお、図14に当該FIMSシステム101の構成をブロック図として示す。上述したファン107、ロボット109、ドアシステム115、ポッド固定システム125、及びドッキングプレート駆動システム127は、制御装置102によって各々制御される。ドアシステム115は、ドア開閉用アクチュエータ115c、及びドア上下機構115dを各々独立して制御可能であるが、実際上はこれら各々の構成が一連のタイムチャートに応じて動作するようにこれら構成を制御する。また、ラッチ機構駆動ユニット131についても制御装置102によって制御され、上述したドアシステム115の一連の動作と連動するように駆動される。なお、吸着パッド115kに対する負圧供給源108からの負圧の供給及び供給停止(負圧の破壊)の動作は、制御装置102によって行われる。ドッキングプレート駆動システム127は、駆動シリンダ127bの駆動のオンオフを行うが、当該駆動シリンダ127の動作によってドッキングプレート123が確実に所定の二位置、即ちポッド1のロード位置に存在する場合とポッド1がウエハ挿脱可能な位置であるドック位置に存在する場合とを検知する必要がある。
【0046】
このため、ポッド1がドッキングプレート123上の載置されたこと、及びドッキングプレート123に対してポッド1をロード・アンロードすべき位置に該ドッキングプレート123が存在することを検知するロードセンサ127dが、ドッキングプレート駆動システム127に接続されている。また、ドッキングプレート123が上述したドック位置に存在するか否かを検知するドックセンサ127cも該ドッキングプレート駆動システム127に接続されている。ここで、本発明では、蓋3自体の剛性が高く変形しにくいこと、及びラッチ機構5が一軸のみの動作によって係合非係合の切換が為されることにより、当該ラッチ機構5の係合ミスが起こる蓋然性は従来構成と比較して大幅に低減されている。このため、本実施形態では、ラッチ機構駆動機構131に対して、ロッドの伸縮の状態に応じてオンオフの信号を発する構成とし、当該オンオフ信号によって蓋3のポッド本体2に対する係合、非係合の状態を検知することとしている。なお、本発明の実施形態は当該検知様式に限定されず、例えば光センサ等を用いて、ラッチ機構5の動作を直接的に検知して係合状態の適否を知る構成としても良い。
【0047】
ここで、実際にウエハ処理作業を行う際の当該蓋開閉システム101の動作について説明する。ウエハ処理作業において、所定枚数のウエハを収容し内部が清浄気体によって満たされたポッド1がドッキングプレート123上に載置される。ドッキングプレート123を載置する際に、ポッド固定システム125が動作してドッキングプレート123に対するポッド1の載置位置を所定のものとする。続いてドッキングプレート駆動システム127が動作し、ポッド1を第一の開口部111に向けて駆動する。具体的には、ポッド固定システム125によってドッキングプレート123と一体化されたポッド1を、ドッキングプレート123を介する様式にて駆動シリンダ127bが移動させる。その際、ドア115aは第一の開口部111を略閉鎖する位置で停止している。当該駆動動作は、ポッド1の蓋3がドア115aの当接面と当接し、ドッキングプレート123と第一の開口部111と所定の位置関係となった段階にて終了する。この時、ラッチ機構駆動ユニット131とラッチ機構5とが図6A8A等に示す所定の位置関係を満たす状態となる。当該状態からラッチ機構駆動ユニット131が動作を開始し、ポッド本体2の蓋3に対する係合状態が解除される。同時に、吸着パッド115kが蓋3を吸着し、蓋3がドア115aによって保持され、且つ蓋3の表面とドア115aの表面とに挟持される空間がシール部材115mによって密閉された状態となる。なお、制御装置102は、ドア115aによる蓋3の吸着保持と、ラッチ機構駆動ユニット131によるラッチ機構5のポッド本体2に対する蓋3の係合解除の操作とが同期するようにこれら構成を動作させている。
【0048】
当該状態からドア開閉アクチュエータ115cが動作を開始し、ドアアーム115bが回動して蓋3を保持するドア115aを第一の開口部111から微小空間103の内部方向に運ぶ。ドアアーム115bが所定角度で回動を停止した後、ドア上下機構115dが動作を開始し、ドア開閉アクチュエータ115cと共にドア115aを下方に移動させる。当該動作によって第一の開口部111は全開状態となり、微小空間103は第一の開口部111を介してポッド本体2の内部と連通した状態となる。この状態においてロボット109が動作を開始し、ロボットアーム109aによってウエハ4をポッド1の内部から第二の開口部113を介してウエハ処理装置117に搬送する。また、この状態を維持して、当該ロボット109は、更にウエハ処理装置117内部において所定の処理が施されたウエハをポッド1内部へも搬送する。蓋3をポッド1に取り付け、ポッド1を蓋開閉システム101より取り外し可能とする場合には、基本的にはこれら動作が逆に行われる。また、図6A或いは6Bに示す本形態では、制御装置102は、ドア115aによる蓋3のポット本体2に対する所定位置への移動終了(ローラー部5bの第一溝3c1への移動が完了したことに同期させて、ラッチ機構駆動ユニット131を動作させる。これにより、図7A或いは7Bに示すローラー部5bによる蓋3の押し込み等の動作を確実に行うことが可能となる。
【0049】
以上に述べたポッド、及び当該ポッドに対応する蓋開閉システムたるFIMSシステムを用いることにより、ポッド開口を閉鎖する蓋の表面に付着する極微小な塵の影響を抑制し、且つ蓋開閉時において当該開閉操作に伴う塵の発生、及び発生した塵の微小空間或いはポッド内部への拡散を抑制することが可能となる。より具体的には、蓋3のポッド本体2への固定及びその解除をポッド本体に設けられたフランジ部2cの外側面側行うこととしている。例えば第一の開口部111の外周近傍から外部空間に向かう気流を形成しておくことによって、配置的に低減されているポッド内或いは微小空間内への微小な塵等の拡散可能性を更に低減することが可能となる。
【0050】
以上述べた実施形態では、本発明はウエハを対象とするFIMSシステムに関して主として述べている。しかしながら、本発明の適用対象は該システムに限定されず、例えばディスプレイ用のパネル、光ディスク等を収容する密閉容器等に対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:ポッド、 2:ポッド本体、 3:蓋、 4:ウエハ、 5:ラッチ機構、 101:蓋開閉システム、 102:制御装置、 103:微小空間、 105:筐体、 107:ファン、 108:負圧供給源 109:ロボット、 111:第一の開口部、 113:第二の開口部、 115:ドアシステム、 117:ウエハ処理装置、 121:ポッド載置台、 123:ドッキングプレート、 125:ポッド固定システム、 127:ドッキングプレート駆動システム、 131:ラッチ部材駆動ユニット、 131:フランジカバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲に座部を具備する開口を有する、処理基板を収納するための内部空間を有する本体容器と、
該開口に挿嵌され、裏面が該座部に押し付けられて該開口を密閉可能な蓋とを備える処理基板収納ポッドであって、
該本体容器は、該本体容器に対して移動可能に取り付けられるラッチ機構であって、該ラッチ機構は、前記ラッチ機構の移動方向と異なる方向に突出するアーム部と、前記アーム部の先端に取り付けられる係合部とを有するラッチ機構を備え、
該蓋は、該蓋の側面上に刻設され第一溝と、一端は該第一溝と連通し、他端は該蓋が該開口に完全に挿嵌された状態において該内部空間側の蓋の面と連通するように刻設される第二溝とを有する被係合部を備え、
前記ラッチ機構の係合部は、該開口への該蓋の挿嵌にしたがって該第二溝内に進入し、該ラッチ機構の移動とともに第一溝内を、該第一溝における該内部空間側の内側壁面に接しながら移動し、
前記第一溝の内側壁面の延在方向と、前記ラッチ機構の移動方向とは、第二溝において該第一溝と連通する側に向かって狭まるように交差しており、
該ラッチ機構が該交差の狭まる方向と反対方向に移動した際には、該蓋を該座部に押し付けて強固に固定し、該ラッチ機構が前記第一溝の内側壁面に沿って第二溝まで該交差の狭まる方向に移動した際に、該蓋を該開口から解放することを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項2】
請求項1に記載の処理基板収納ポッドであって、前記ラッチ機構の移動は、該蓋部材が該開口に完全に挿嵌された状態の該内部空間側の蓋の面に対して角度を持った方向への移動であることを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の処理基板収納ポッドであって、
該ラッチ機構の移動は、開口の形成面に対して角度をもった移動であることを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
該アーム部は該ラッチ機構の本体部に取り付けられ、
該アーム部には、該係合部が前記ラッチ機構の本体部に近づく方向の付勢力を付与する弾性部材が付与されていることを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
該ラッチ機構は、該ラッチ機構に対して枢軸周りに回動可能に取り付けられるアームを備え、
該係合部材は、該アームに取り付けられていて、
該アームは、該係合部材が該第一溝に進入した後に、前記第一の溝の内側壁面を該ラッチ機構に近づける方向に、該枢軸周りに付勢されていることを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
該第二溝における前記該第一溝と連通する箇所から所定距離離れた位置より、該第二溝における前記該第一溝と連通する箇所から遠ざかるにしたがって、前記内側壁面と該裏面との距離が接近するように該第二溝が刻設されていることを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
前記係合部は、前記内側壁面に当接して転動可能な円板状のローラーを有することを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
前記ラッチ機構は、前記係合部を前記被係合部と係合する位置に停止保持する付勢力を前記係合部に付与する付勢手段を更に有することを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
該本体容器は、前記ラッチ機構を移動可能に支持するスライドレールを有することを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項10】
蓋と本体容器とからなる処理基板収納ポッドの該蓋を開閉して該本体容器内部に収納される被収容物の収納および取り出しを可能とする蓋開閉システムであって、
請求項1から5のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドと、
開口部を有する微小空間と、
前記開口部を閉鎖する位置と開放する位置との間で移動可能なドアと、
前記処理基板収納ポッドが前記ドアによる前記蓋の開閉が行われる位置に位置した際に前記ラッチ機構を操作可能であって、前記開口部の周囲に配置されるラッチ機構駆動手段と、を有することを特徴とする蓋開閉システム。
【請求項11】
請求項10に記載の蓋開閉システムであって、
前記ラッチ機構駆動手段は、前記ラッチ機構を押圧するロッドと、該ロッドを該本体容器に対して移動させるように伸縮可能に支持するアクチュエータとを有することを特徴とする蓋開閉システム。
【請求項1】
周囲に座部を具備する開口を有する、処理基板を収納するための内部空間を有する本体容器と、
該開口に挿嵌され、裏面が該座部に押し付けられて該開口を密閉可能な蓋とを備える処理基板収納ポッドであって、
該本体容器は、該本体容器に対して移動可能に取り付けられるラッチ機構であって、該ラッチ機構は、前記ラッチ機構の移動方向と異なる方向に突出するアーム部と、前記アーム部の先端に取り付けられる係合部とを有するラッチ機構を備え、
該蓋は、該蓋の側面上に刻設され第一溝と、一端は該第一溝と連通し、他端は該蓋が該開口に完全に挿嵌された状態において該内部空間側の蓋の面と連通するように刻設される第二溝とを有する被係合部を備え、
前記ラッチ機構の係合部は、該開口への該蓋の挿嵌にしたがって該第二溝内に進入し、該ラッチ機構の移動とともに第一溝内を、該第一溝における該内部空間側の内側壁面に接しながら移動し、
前記第一溝の内側壁面の延在方向と、前記ラッチ機構の移動方向とは、第二溝において該第一溝と連通する側に向かって狭まるように交差しており、
該ラッチ機構が該交差の狭まる方向と反対方向に移動した際には、該蓋を該座部に押し付けて強固に固定し、該ラッチ機構が前記第一溝の内側壁面に沿って第二溝まで該交差の狭まる方向に移動した際に、該蓋を該開口から解放することを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項2】
請求項1に記載の処理基板収納ポッドであって、前記ラッチ機構の移動は、該蓋部材が該開口に完全に挿嵌された状態の該内部空間側の蓋の面に対して角度を持った方向への移動であることを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の処理基板収納ポッドであって、
該ラッチ機構の移動は、開口の形成面に対して角度をもった移動であることを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
該アーム部は該ラッチ機構の本体部に取り付けられ、
該アーム部には、該係合部が前記ラッチ機構の本体部に近づく方向の付勢力を付与する弾性部材が付与されていることを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
該ラッチ機構は、該ラッチ機構に対して枢軸周りに回動可能に取り付けられるアームを備え、
該係合部材は、該アームに取り付けられていて、
該アームは、該係合部材が該第一溝に進入した後に、前記第一の溝の内側壁面を該ラッチ機構に近づける方向に、該枢軸周りに付勢されていることを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
該第二溝における前記該第一溝と連通する箇所から所定距離離れた位置より、該第二溝における前記該第一溝と連通する箇所から遠ざかるにしたがって、前記内側壁面と該裏面との距離が接近するように該第二溝が刻設されていることを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
前記係合部は、前記内側壁面に当接して転動可能な円板状のローラーを有することを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
前記ラッチ機構は、前記係合部を前記被係合部と係合する位置に停止保持する付勢力を前記係合部に付与する付勢手段を更に有することを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドであって、
該本体容器は、前記ラッチ機構を移動可能に支持するスライドレールを有することを特徴とする処理基板収納ポッド。
【請求項10】
蓋と本体容器とからなる処理基板収納ポッドの該蓋を開閉して該本体容器内部に収納される被収容物の収納および取り出しを可能とする蓋開閉システムであって、
請求項1から5のいずれか一項に記載の処理基板収納ポッドと、
開口部を有する微小空間と、
前記開口部を閉鎖する位置と開放する位置との間で移動可能なドアと、
前記処理基板収納ポッドが前記ドアによる前記蓋の開閉が行われる位置に位置した際に前記ラッチ機構を操作可能であって、前記開口部の周囲に配置されるラッチ機構駆動手段と、を有することを特徴とする蓋開閉システム。
【請求項11】
請求項10に記載の蓋開閉システムであって、
前記ラッチ機構駆動手段は、前記ラッチ機構を押圧するロッドと、該ロッドを該本体容器に対して移動させるように伸縮可能に支持するアクチュエータとを有することを特徴とする蓋開閉システム。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−187615(P2011−187615A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50311(P2010−50311)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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