説明

処理装置及び処理方法

【課題】バッチ式であっても、処理するウエハの枚数に応じた最小限の処理ガス量で処理を可能にした処理装置とする。
【解決手段】仕切板21をチャンバ1の上下方向に移動させることで、処理するウエハ8の枚数に応じた一方側の領域4aを設定し、3方弁13により、一方側の領域4aの処理室4に開口する供給配管11から処理ガスを供給し、他方側の領域4bの処理室4に開口する供給配管11からNガスを供給し、処理する枚数のウエハ8に応じた量の処理ガスを使用して処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハに対して熱処理等の処理を施すためのバッチ式の処理装置及び処理方法に関し、処理するウエハの枚数に応じた最小限の処理ガス量で処理を可能にしたものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程においては、複数枚のウエハに対して成膜処理や酸化処理、拡散処理等の熱処理を一括して行うバッチ式の熱処理装置が知られている。バッチ式の熱処理装置は、ボートと呼ばれる保持具に多数のウエハを棚状に積層して処理室内にウエハを配置している(例えば、特許文献1及び2参照)。処理室内に多数のウエハを配置して一括処理するため、多数枚のウエハに対して所定の処理を一度に施すことができる。
【0003】
従来から知られているバッチ式の処理装置では、処理ガスを一つの供給口から供給したり、複数の供給口から分割して処理室内に均一に供給することで、処理室内に所定の濃度の処理ガスを満たすようにしている。少ない枚数のウエハをバッチ式の処理装置で処理する場合、ダミーとなるウエハを処理室内に配置し、処理室内に所定の濃度の処理ガスを満たすことで対応している。
【0004】
このため、従来から知られているバッチ式の処理装置では、処理するウエハの枚数に拘わらず処理室の容積に応じた量の処理ガスが用いられ、処理するウエハが多くても少なくても材料費が同じだけ必要になっていた。
【0005】
【特許文献1】特開2003−59837号公報
【特許文献2】特開2001−355071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、バッチ式であっても、処理するウエハの枚数に応じた最小限の処理ガス量で処理を可能にした処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、内部に処理室が形成される反応容器を備え、処理室内に反応用の処理ガス及びパージガスを選択的に供給するガス供給手段を反応容器の長手方向に複数設け、処理室内を二分する仕切板を反応容器の長手方向に移動自在に備え、仕切板で仕切られた一方側の領域の処理室にウエハが収容されたときに、一方側の領域の処理室に開口するガス供給手段から処理ガスの供給を選択すると共に、他方側の領域の処理室に開口するガス供給手段からパージガスの供給を選択する選択手段を備えたことを特徴とする処理装置にある。
かかる第1の態様では、仕切板を反応容器の長手方向に移動させることで処理するウエハの枚数に応じた一方側の領域を設定し、選択手段により、一方側の領域の処理室に開口するガス供給手段から処理ガスを供給し、他方側の領域の処理室に開口するガス供給手段からパージガスを供給することで、処理する枚数のウエハに応じた量の処理ガスを使用して処理を行うことができる。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の第2の態様は、内部に処理室が形成される反応容器を備え、処理室内に反応用の処理ガス及びパージガスを選択的に供給するガス供給手段を反応容器の長手方向に複数設け、処理室内の排気を行う排気手段をガス供給手段に対応して反応容器の長手方向に複数設け、処理室内の長手方向に複数枚のウエハを所定の間隔で積層状態に保持する長尺状の保持具を備え、保持具を貫通して反応容器の内壁に沿う状態で処理室内を二分する仕切板を反応容器の長手方向に移動自在に備え、仕切板で仕切られた一方側の領域の処理室の保持具にウエハが保持されたときに、一方側の領域の処理室に開口するガス供給手段から処理ガスの供給を選択すると共に、他方側の領域の処理室に開口するガス供給手段からパージガスの供給を選択する選択手段を備えたことを特徴とする処理装置にある。
かかる第2の態様では、仕切板を反応容器の長手方向に移動させることで処理するウエハの枚数に応じた一方側の領域を設定し、選択手段により、一方側の領域の処理室に開口するガス供給手段から処理ガスを供給し、他方側の領域の処理室に開口するガス供給手段からパージガスを供給し、ガス供給手段に対応した排気手段により処理ガス及びパージガスの排気を行うことで、処理する枚数のウエハに応じた量の処理ガスを使用して処理を行うことができる。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様の処理装置において、ガス供給手段は、反応容器の長手方向に複数接続される供給配管と、供給配管の基端部に切換え手段を介して接続される処理ガスの処理ガス配管及びパージガスのパージガス配管とからなり、選択手段は、切換え手段を切り換えることにより処理ガス配管もしくはパージガス配管の供給配管への接続状態を選択する手段であることを特徴とする処理装置にある。
かかる第3の態様では、切換え手段を切り換えることにより、供給配管から処理ガス及びパージガスを選択的に供給することができる。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の第4の態様は、ウエハが保持された部位の領域とウエハが保持されていない領域との二つの領域に処理室を分割し、ウエハが保持された部位の領域に反応用の処理ガスを供給すると共に、ウエハが保持されていない領域にパージガスを供給してウエハに処理を施すことを特徴とする処理方法にある。
かかる第4の態様では、ウエハが保持された部位の領域にのみ反応用の処理ガスを供給することにより、処理する枚数のウエハに応じた量の処理ガスを使用して処理を行うことができる。
【0011】
本発明の第5の態様は、第4の態様の処理方法において、二つの領域は保持されるウエハの枚数に応じて可変とされ、処理ガス及びパージガスは共通の供給口から選択的に供給されることを特徴とする処理方法にある。
かかる第5の態様では、ウエハの枚数に応じて処理ガスを供給する領域を可変にし、共通の供給口から選択的に処理ガスを供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1には本発明の一実施形態例に係る処理装置の概略断面、図2には図1中のII−II線矢視を示してある。
【0013】
図に示すように、中心軸が垂直方向に延びて配される反応容器としての筒状のチャンバ(例えば、セラミックス製)1が備えられ、チャンバ1の底部は底板(例えば、セラミックス製)2で塞がれ、チャンバ1の天井部は天井部材(例えば、セラミックス製)3で塞がれている。底板2及び天井部材3で塞がれたチャンバ1の内部に処理室4が形成される。
【0014】
処理室4の内部にはボート5が配置されている。ボート5は、底板2側に備えられる基台6と、基台6の上に上下方向に延びて配される4本の支柱7とを備えている。支柱7には円盤状のウエハ8の外周縁が嵌合する溝部が多数形成され、溝部にウエハ8の外周縁を嵌合させることで、ウエハ8が水平に保持され、ウエハ8はボート5に所定の間隔で上下方向に積層された状態に保持される。
【0015】
チャンバ1にはガス供給手段としての供給配管11が接続され、供給配管11はチャンバ1の長手方向(上下方向)に複数(図示例では6箇所)接続されている。即ち、チャンバ1には上下に6箇所の供給配管11a、11b、11c、11d、11e、11fが接続されている。供給配管11に対応して処理室4内の排気を行う排気手段としての排気管12a、12b、12c、12d、12e、12fが接続されている。
【0016】
供給配管11a、11b、11c、11d、11e、11fの基端部には、それぞれ切換え手段としての3方弁13a、13b、13c、13d、13e、13fが設けられている。3方弁13a、13b、13c、13d、13e、13fには、それぞれ、処理ガス配管14a、14b、14c、14d、14e、14fが接続されると共に、パージガス配管15a、15b、15c、15d、15e、15fが接続されている。
【0017】
処理ガス配管14には流量調整手段16を介して処理ガスが送られ、パージガス配管15には流量調整手段17を介してパージガスとしてのNガスが送られる。3方弁13を切り換えることにより、供給配管11への接続が処理ガス配管14またはパージガス配管15とされる(選択手段)。つまり、供給配管11a、11b、11c、11d、11e、11fは処理ガスの供給もしくはNガスの供給が個別に選択されるようになっている。
【0018】
尚、パージガスとしては、Nガスに限らず、Arガス等の他の不活性ガスを用いることも可能である。
【0019】
一方、4本の支柱7が貫通してチャンバ1の内壁に沿う状態の円盤状の仕切板21が昇降自在に備えられ、基台6を貫通して昇降する昇降桿22の先端に仕切板21が固定されている。昇降桿22を介して仕切板21を任意の位置に昇降させることにより、ウエハ8が保持される領域4a(図1では上側の領域)とウエハ8が保持されていない領域4bとに処理室4を二分することができる。
【0020】
即ち、図1の例では、供給配管11a、11b、11c及び排気管12a、12b、12cが開口してウエハ8が保持されている上側の領域4aと、供給配管11d、11e、11f及び排気管12d、12e、12fが開口してウエハ8が保持されていない下側の領域4bとに処理室4が二分されている。
【0021】
尚、仕切板21の形状としては、4本の支柱7が貫通する円盤状の形状に限らず、4本の支柱7の部位が切り欠かかれた形状の仕切板を適用することも可能である。
【0022】
上述した処理装置では、ウエハ8の保持状況に応じて、即ち、処理するウエハ8の枚数に応じて仕切板21を処理室4の長手方向に移動させ、ウエハ8の枚数に応じた一方側の領域(上側の領域4a)を設定する。供給配管11a、11b、11cの3方弁13a、13b、13cを操作して、供給配管11a、11b、11cと処理ガス配管14a、14b、14cを連通状態にする。また、他方側の領域(下側の領域4b)の供給配管11d、11e、11fの3方弁13d、13e、13fを操作して、供給配管11d、11e、11fとパージガス配管15d、15e、15fを連通状態にする。
【0023】
この状態で、処理ガス配管14から処理ガスを供給すると共に、パージガス配管15からNガスを供給することにより、ウエハ8が保持された上側の領域4aの処理室4内に処理ガスが供給され、ウエハ8が保持されていない下側の領域4bの処理室4内にNガスが供給される。上側の領域4aに開口する排気管12a、12b、12cから上側の領域4a内の排気が実施され、下側の領域4bに開口する排気管12d、12e、12fから下側の領域4b内の排気が実施される。
【0024】
これにより、上側の領域4aだけにウエハ8が保持された場合であっても、処理室4の全体に処理ガスを供給する必要がなく、領域に応じた量の処理ガスを供給することができる。
【0025】
ウエハ8の枚数が変更になった場合、ウエハ8の枚数に応じて仕切板21を処理室4の長手方向に移動させ、ウエハ8が保持された領域に開口する供給配管11から処理ガスが供給されると共に、ウエハ8が保持されていない領域に開口する供給配管11からNガスが供給されるように3方弁13を操作し、ウエハ8が保持された領域だけに処理ガスを供給する。
【0026】
このため、ウエハ8の枚数に拘わらずウエハ8が保持された領域だけに処理ガスを供給して熱処理等の処理を施すことができ、バッチ式であっても、処理するウエハ8の枚数に応じた最小限の処理ガス量で処理が可能になり、材料費の低減を図ることが可能になる。
【0027】
上述した実施形態例の処理装置は、例えば、熱拡散処理を行う熱拡散装置として適用され、この場合、図示しない加熱手段が備えられる。また、プラズマを発生させて成膜処理を行う成膜装置等、処理ガスを用いて処理を行う他のバッチ式の処理装置に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態例に係る処理装置の概略断面図である。
【図2】図1中のII−II線矢視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 チャンバ、 2 底板、 3 天井部材、 4 処理室、 5 ボート、 6 基台、 7 支柱、 8 ウエハ、 11 供給配管、 12 排気管、 13 3方弁、 14 処理ガス配管、 15 パージガス配管、 16、17 流量調整手段、 21 仕切板、 22 昇降桿


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に処理室が形成される反応容器を備え、
処理室内に反応用の処理ガス及びパージガスを選択的に供給するガス供給手段を反応容器の長手方向に複数設け、
処理室内を二分する仕切板を反応容器の長手方向に移動自在に備え、
仕切板で仕切られた一方側の領域の処理室にウエハが収容されたときに、一方側の領域の処理室に開口するガス供給手段から処理ガスの供給を選択すると共に、他方側の領域の処理室に開口するガス供給手段からパージガスの供給を選択する選択手段を備えた
ことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
内部に処理室が形成される反応容器を備え、
処理室内に反応用の処理ガス及びパージガスを選択的に供給するガス供給手段を反応容器の長手方向に複数設け、
処理室内の排気を行う排気手段をガス供給手段に対応して反応容器の長手方向に複数設け、
処理室内の長手方向に複数枚のウエハを所定の間隔で積層状態に保持する長尺状の保持具を備え、
保持具を貫通して反応容器の内壁に沿う状態で処理室内を二分する仕切板を反応容器の長手方向に移動自在に備え、
仕切板で仕切られた一方側の領域の処理室の保持具にウエハが保持されたときに、一方側の領域の処理室に開口するガス供給手段から処理ガスの供給を選択すると共に、他方側の領域の処理室に開口するガス供給手段からパージガスの供給を選択する選択手段を備えた
ことを特徴とする処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の処理装置において、
ガス供給手段は、反応容器の長手方向に複数接続される供給配管と、供給配管の基端部に切換え手段を介して接続される処理ガスの処理ガス配管及びパージガスのパージガス配管とからなり、
選択手段は、切換え手段を切り換えることにより処理ガス配管もしくはパージガス配管の供給配管への接続状態を選択する手段である
ことを特徴とする処理装置。
【請求項4】
ウエハが保持された部位の領域とウエハが保持されていない領域との二つの領域に処理室を分割し、ウエハが保持された部位の領域に反応用の処理ガスを供給すると共に、ウエハが保持されていない領域にパージガスを供給してウエハに処理を施すことを特徴とする処理方法。
【請求項5】
請求項4に記載の処理方法において、二つの領域は保持されるウエハの枚数に応じて可変とされ、処理ガス及びパージガスは共通の供給口から選択的に供給されることを特徴とする処理方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−217762(P2007−217762A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−41044(P2006−41044)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】