説明

出力伝達装置及び減速機構付モータ

【課題】緩衝部材を廃止して構成しても、ホイールギヤと出力軸との間の軸方向のガタつきを抑制することができる出力伝達装置及び減速機構付モータを提供する。
【解決手段】ホイールギヤ31に対しその軸方向から組み付けられて該ホイールギヤ31と回転方向に直接係合し、該ホイールギヤ31の回転を出力軸33に伝達する伝達部材としての伝達プレート32と、ホイールギヤ31とで伝達プレート32を軸方向に挟む位置に設けられ、伝達プレート32における軸方向の反ホイールギヤ31側への移動を規制する規制部としてのCリング51とを備える。そして、ホイールギヤ31には、伝達プレート32をCリング51に対して軸方向に押圧する押圧手段としての弾性爪部45が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力伝達装置及び減速機構付モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車のウインドガラスを開閉するパワーウインド用モータは、モータ本体の駆動により回転するウォーム軸とホイールギヤとが噛合されて構成される出力伝達装置(減速部)がそのモータ本体と一体に組み付けられた減速機構付モータで構成されている(例えば特許文献1参照)。このような出力伝達装置は、ウォーム軸と、該ウォーム軸と噛合するホイールギヤと、該ホイールギヤと一体回転する伝達部材及び出力軸(特許文献1中、中間ホイール及びピニオン)とを備えており、該ホイールギヤと出力軸との間には緩衝部材としてのダンパが設けられている。このダンパは、ホイールギヤの軸方向及び回転方向において該ホイールギヤ及び出力軸とそれぞれ当接しており、ウォーム軸から出力軸への回転伝達の際の衝撃を吸収する役割をなしている。これにより、出力伝達装置におけるウォーム軸等の構成部品の破損が抑制されている。
【特許文献1】実開平6−69493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のような出力伝達装置では、ウォーム軸等の強度を向上させることで、ダンパを必要としない構成とすることが可能であり、部品点数増加の抑制に貢献できる。しかしながら、ダンパをなくすと、寸法誤差や組付誤差等により、ホイールギヤの軸方向において該ホイールギヤと出力軸との間にガタが発生してしまうことが想定され、この点においてなお、改善の余地があった。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、緩衝部材を廃止して構成しても、ホイールギヤと出力軸との間の軸方向のガタつきを抑制することができる出力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、外周にウォーム部を有する回転軸の回転を、前記ウォーム部と噛合するホイールギヤを介して出力軸に伝達する出力伝達装置において、前記ホイールギヤに対しその軸方向から組み付けられて該ホイールギヤと回転方向に直接係合し、該ホイールギヤの回転を前記出力軸に伝達する伝達部材と、前記伝達部材を前記ホイールギヤとで前記軸方向に挟む位置に設けられ、前記伝達部材の反ホイールギヤ側への移動を規制する規制部と、前記伝達部材を前記ホイールギヤ及び前記規制部のいずれか一方に対して前記軸方向に押圧する押圧手段とを備えたことをその要旨とする。
【0006】
この発明では、押圧手段によって伝達部材がホイールギヤ及び規制部のいずれか一方に対して軸方向に押圧されるため、ホイールギヤと伝達部材との間の軸方向における寸法誤差や組付誤差等が吸収される。これにより、緩衝部材を廃止して構成しても、ホイールギヤと伝達部材との間の軸方向のガタつきを抑制することができ、ひいては、ホイールギヤと出力軸との間の軸方向のガタつきを抑制することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の出力伝達装置において、前記ホイールギヤ及び前記伝達部材のいずれか一方には、いずれか他方に対して回転方向に弾性的に当接する回転方向押圧手段が設けられたことをその要旨とする。
【0008】
この発明では、回転方向押圧手段によりホイールギヤと伝達プレートとの間の回転方向における寸法誤差や組付誤差等が吸収され、該ホイールギヤと伝達プレートとの間の回転方向におけるガタつきを抑制することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の出力伝達装置において、前記押圧手段は、前記ホイールギヤ及び前記伝達部材のいずれか一方に形成され、いずれか他方を前記軸方向に押圧する弾性爪部であり、前記伝達部材は、前記弾性爪部の弾性力により前記規制部に対して前記軸方向に押圧されるように構成されたことをその要旨とする。
【0010】
この発明では、押圧手段としての弾性爪部によって伝達部材を規制部に対し軸方向に押圧させることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の出力伝達装置において、前記規制部は、前記押圧手段を構成するものであって、前記伝達部材を前記ホイールギヤに対して前記軸方向に押圧した状態で設けられたことをその要旨とする。
【0011】
この発明では、規制部が押圧手段を兼ねるため、押圧手段としての特別な構成を必要とせず、構成を簡単にすることが可能である。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の出力伝達装置において、前記ホイールギヤには、その回転方向に傾斜する傾斜部が設けられ、前記伝達部材は、前記規制部によって前記ホイールギヤの傾斜部に対して前記軸方向に押圧されるように構成されたことをその要旨とする。
【0012】
この発明では、規制部による軸方向の押圧力が回転方向にも分散されることで、伝達部材がホイールギヤに対し回転方向に押圧される。そのため、簡単な構成で軸方向だけでなく回転方向のがたつきも抑制することが可能となる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、モータ本体の回転軸の回転を、請求項1〜5のいずれか1項に記載の出力伝達装置にて出力可能に構成された減速機構付モータである。
この発明では、ホイールギヤと出力軸との間の軸方向のガタつきが抑制された減速機構付モータを提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
従って、上記記載の発明によれば、緩衝部材を廃止して構成しても、ホイールギヤと出力軸との間の軸方向のガタつきを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示す本実施形態のモータ1は、自動車のウインドガラスを開閉するパワーウインド用のモータであり、モータ本体2と、出力伝達装置としての減速部3とからなる減速機付きモータにて構成されている。
【0016】
モータ本体2は、ヨークハウジング4、一対のマグネット5、電機子6、ブラシホルダ7及び一対のブラシ8を備えている。ヨークハウジング4は略有底扁平円筒状に形成され、その内側面にマグネット5が固着されている。ヨークハウジング4の底部中央には軸受9が設けられ、該軸受9は電機子6の回転軸10の基端を回転可能に支持する。
【0017】
ヨークハウジング4の開口部4aはフランジ状に形成され、後述するギヤハウジング21の開口部21aにネジ11にて固定される。尚、この固定の際に、ヨークハウジング4の開口部4aとギヤハウジング21の開口部21aとでブラシホルダ7が挟持されて固定される。
【0018】
ブラシホルダ7は、ヨークハウジング4内において、電機子6の回転軸10の先端を回転可能に支持する軸受12及び回転軸10に固着された整流子13に摺接するブラシ8を保持している。また、ブラシホルダ7の両ハウジング4,21から突出する部分は車体側から延びる車体側コネクタ(図示略)と連結するためコネクタ部7aであって、該コネクタ部7aの凹部7b内には複数本のターミナル14が露出している。これらターミナル14はブラシホルダ7にインサートされており、前記ブラシ8、及びモータ1内に備えられる回転センサ15等と電気的に接続されている。そして、コネクタ部7aが車体側コネクタと連結されることで、モータ1と車体側に備えられるウインドECU16とが電気的に接続され、電源供給やセンサ信号等の出力が行われる。
【0019】
このようなモータ本体2に対し、減速部3は、ギヤハウジング21、ウォーム軸22、出力部材23及びブレーキ機構24を備えている。出力部材23は、ウォーム軸22の回転を外部に出力するものであり、ホイールギヤ31、伝達部材としての伝達プレート32及び出力軸33からなる(図2参照)。
【0020】
ギヤハウジング21は樹脂製であって、該ギヤハウジング21の内部には、ウォーム軸22、ホイールギヤ31、伝達プレート32及びブレーキ機構24が収容されている。ギヤハウジング21は、前記ヨークハウジング4の開口部4aと対向する開口部21aを備え、両開口部4a,21a間に前記ブラシホルダ7が介装される。
【0021】
ギヤハウジング21は、ウォーム軸22を収容するために開口部21aから該ウォーム軸22の軸方向に延びる略円筒状の軸収容筒部21bと、該軸収容筒部21bと連通しホイールギヤ31を収容するホイール収容凹部21cと、軸収容筒部21bの基端(モータ本体2側)に設けられブレーキ機構24を収容するためのブレーキ収容凹部21dとを備えている。
【0022】
軸収容筒部21bには、所定間隔を有する一対の軸受25a,25bにてウォーム軸22が前記回転軸10と同軸上に回転可能に支持されて収容されている。ウォーム軸22の軸受25a,25bにて支持される部位間には、ホイールギヤ31と噛合するためのウォーム22a(ウォーム部)が形成されている。ウォーム22aは、軸方向両端部より軸方向中央部が小径とされホイールギヤ31の歯部23aを有する外周部に倣った鼓型ウォームにて構成されている。つまり、ウォーム22aとホイールギヤ31との噛合範囲が大きくされており、この噛合部分の強度向上が図られている。また、ウォーム軸22の先端には、該ウォーム軸22のスラスト荷重を受けるためのスラスト受けボール26a及びスラスト受けプレート26bが備えられている。
【0023】
ブレーキ収容凹部21dには、モータ本体2の回転軸10とウォーム軸22との間に介在されるブレーキ機構24が収容されている。ブレーキ機構24は、モータ本体2の駆動による回転軸10の回転時にその回転力をウォーム軸22に伝達する一方、出力部材23側からの回転力がウォーム軸22を介して入力されると、制動力が生じて自身の回転が規制されるように作動するものである。
【0024】
図2(b)に示すように、前記ホイール収容凹部21cの中央部には、ホイールギヤ31の軸方向(同図における左右方向)に延びる円筒支持部21eが形成されている。円筒支持部21eは、ホイールギヤ31の挿入孔41に挿入されて該ホイールギヤ31を回転可能に支持している。また、円筒支持部21eには軸受27が設けられており、該軸受27は前記出力軸33を回転可能に支持している。
【0025】
ホイールギヤ31は樹脂製であって、図3(a)(b)(c)に示すように、外周部にウォーム軸22のウォーム22aと噛合するギヤ部42が形成されるとともに、中央部に前記挿入孔41が形成されている。また、ホイールギヤ31の軸方向の一端面(図2(a)に示す側の端面)において、挿入孔41とギヤ部42との間には9個の係合溝43が周方向等間隔に形成されている。各係合溝43は径方向に沿って延びるとともに、その周方向両側面は互いに平行をなしている。この9個の係合溝43のうちの周方向等間隔に位置する3つには、軸方向に貫通する貫通孔44が形成されている。そして、各貫通孔44には、その外周側端部から内周側に延びる押圧手段としての弾性爪部45が形成されており、この各弾性爪部45は軸方向への撓みが許容されている。尚、各弾性爪部45の内周側端部には、ホイールギヤ31の軸方向に突出する突出部46が形成されている。
【0026】
一方、軸受27に軸支された出力軸33は、図2(b)に示すように、先端部がギヤハウジング21の外部に突出しており、該先端部付近にはウインドガラスを開閉するためのウインドレギュレータ(図示略)と駆動連結される連結部33aが形成されている。尚、連結部33aはギヤハウジング21(ホイール収容凹部21c)の外面と軸方向に当接している。また、出力軸33の基端部は、ギヤハウジング21(ホイール収容凹部21c)内に位置しており、その基端部には、出力軸33及びホイールギヤ31とともに出力部材23を構成する伝達プレート32を取り付けるためのプレート取付部33bが形成されている。このプレート取付部33bは、軸方向から見て十字形状をなしている(図2(a)参照)。
【0027】
伝達プレート32は金属製であって、図4(a)(b)(c)に示すように、その中央部には出力軸33のプレート取付部33bが挿入される筒状部32aが形成されている。この筒状部32aはプレート取付部33bに対応した十字形状をなしており、該プレート取付部33bと回転方向に係合している。これにより、伝達プレート32と出力軸33とが一体回転可能となっている。また、出力軸33の基端部には、規制部としてのCリング51が固定されている。このCリング51は、伝達プレート32と軸方向に当接しており、伝達プレート32における出力軸33基端側からの抜け止めとして働いている。
【0028】
伝達プレート32には、筒状部32aの軸方向の一端部から湾曲して外周側に延びる中間部32bが形成されている。この中間部32bには、径方向外側に延びる9個の係合片32cが周方向等間隔に形成されており、該各係合片32cは前記ホイールギヤ31の各係合溝43に嵌着されている。これにより、各係合溝43と各係合片32cとが回転方向に係合し、ホイールギヤ31と伝達プレート32とが一体回転可能となっている。即ち、出力部材23を構成するホイールギヤ31、伝達プレート32及び出力軸33は同軸で一体回転するようになっている。そして、このような出力部材23を収容するホイール収容凹部21cは、開口部がカバー部材52にて閉塞され、該カバー部材52の一部にて出力軸33の基端部(プレート取付部33b)が支持されている。
【0029】
このような出力部材23において、伝達プレート32の係合片32cのうちの3つは、ホイールギヤ31の各弾性爪部45の突出部46と軸方向に弾性的に当接している。即ち、伝達プレート32は出力軸33の基端側に付勢されており、該伝達プレート32の筒状部32aがCリング51に対して押圧されている。この弾性爪部45の伝達プレート32に対する押圧により、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の軸方向における寸法誤差や組付誤差が吸収され、該ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の軸方向におけるガタつきが防止されるようになっている。
【0030】
また、上記のような出力部材23の組み付けの際には、ホイールギヤ31及び出力軸33をホイール収容凹部21cに組み付けた後、伝達プレート32を軸方向から組み付ける。その際、伝達プレート32の各係合片32cはホイールギヤ31の各係合溝43に圧入される。ここで、図5に示すように、各係合溝43における回転方向両側面には、回転方向押圧手段としての圧入用突起43aがそれぞれ形成されており、該係合溝43に係合片32cが押し込まれることで、その各圧入用突起43aが押し潰されるようになっている。これにより、圧入用突起43aが回転方向において係合片32cに弾性的に押圧するようになっている。そのため、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の回転方向における寸法誤差や組付誤差が吸収され、該ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の回転方向におけるガタつきが防止されるようになっている。
【0031】
上記したようなモータ1では、モータ本体2の駆動により回転軸10が回転されると、ブレーキ機構24及びウォーム軸22が回転し、そのウォーム軸22の回転はホイールギヤ31に伝達され、該ホイールギヤ31、伝達プレート32及び出力軸33が一体回転する。このとき、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間における軸方向及び回転方向のガタつきが抑制されており、ウォーム軸22の回転が出力軸33にスムーズに伝達されるようになっている。また、本実施形態のモータ1では、ウォーム軸22がホイールギヤ31との噛み合い数を稼ぐことができる鼓型ウォームにて構成されているため、回転方向におけるホイールギヤ31と伝達プレート32との間にゴム等の緩衝部材を設けずとも、ウォーム軸22及びホイールギヤ31の破損等を抑制することができるようになっている。
【0032】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態では、ホイールギヤ31に対しその軸方向から組み付けられて該ホイールギヤ31と回転方向に直接係合し、該ホイールギヤ31の回転を出力軸33に伝達する伝達部材としての伝達プレート32と、ホイールギヤ31とで伝達プレート32を軸方向に挟む位置に設けられ、伝達プレート32における軸方向の反ホイールギヤ31側への移動を規制する規制部としてのCリング51とを備える。そして、ホイールギヤ31には、伝達プレート32をCリング51に対して軸方向に押圧する押圧手段としての弾性爪部45が形成される。これにより、弾性爪部45によって伝達プレート32がCリング51に対して軸方向に押圧されるため、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の軸方向における寸法誤差や組付誤差等が吸収される。従って、緩衝部材を廃止して構成しても、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の軸方向におけるガタつきを抑制することができ、ひいては、ホイールギヤ31と出力軸33との間の軸方向のガタつきを抑制することができる。
【0033】
(2)本実施形態では、ホイールギヤ31の係合溝43には、伝達プレート32の係合片32cに対して回転方向に弾性的に押圧する圧入用突起43a(回転方向押圧手段)が形成される。そのため、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の回転方向における寸法誤差や組付誤差等が吸収され、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の回転方向におけるガタつきを抑制することができる。
【0034】
(3)本実施形態では、ホイールギヤ31には、伝達プレート32の係合片32cを軸方向に押圧する弾性爪部45が形成されるため、該弾性爪部45によって伝達プレート32をCリング51に対し軸方向に押圧させることができる。
【0035】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ホイールギヤ31に弾性爪部45が形成されたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば図6(a)(b)に示すような弾性爪部45を設けない構成としてもよい。図6(a)(b)に示すように、ホイールギヤ31の各係合溝61は、その回転方向の両側部がそれぞれ該回転方向に傾斜する傾斜部62となっており、該傾斜部62は開口方向(図6(b)において上方向)に向かうにつれて拡がるテーパ状をなしている。伝達プレート32の各係合片32cは、その回転方向の両側部が各係合溝61の傾斜部62とそれぞれ当接している。
【0036】
そして、規制部としてのCリング51は、伝達プレート32を軸方向のホイールギヤ31側に押しつけた状態で出力軸33の基端部(プレート取付部33b)に固定されており、伝達プレート32の各係合片32cは、ホイールギヤ31の各係合溝61の傾斜部62に対し軸方向に押圧されるようになっている。これにより、その傾斜部62に対する軸方向への押圧力は回転方向にも分散され、各係合片32cは各係合溝61に対して軸方向だけでなく回転方向にも押圧力を付与するようになっている。
【0037】
このような構成によれば、Cリング51が伝達プレート32をホイールギヤ31に対して押圧する押圧手段としての役割も果たしている。そして、そのCリング51からの押圧力により、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の軸方向及び回転方向における寸法誤差や組付誤差が吸収され、その各方向におけるホイールギヤ31と伝達プレート32との間のガタつきが防止されるようになっている。また、このような構成によれば、規制部としてのCリング51が押圧手段も兼ねるため、押圧手段としての特別な構成を必要とせず、構成を簡単にすることが可能となる。
【0038】
尚、図6(a)(b)に示すような構成において、伝達プレート32の係合片32cを、例えば図7(a)(b)に示すような形状に変更してもよい。図7(a)の係合片32cは、その回転方向の両端部からそれぞれホイールギヤ31に向かって延びる弾性部32d(回転方向押圧手段)が形成され、各弾性部32dは係合溝61の各傾斜部62に弾性的に当接している。また、図7(b)の係合片32cには、その回転方向の両端部からそれぞれ反ホイールギヤ31に向かって延びる弾性部32e(回転方向押圧手段)が形成されており、該係合片32cの断面は略U状をなしている。そして、各弾性部32d,32eは係合溝61の各傾斜部62に弾性的に当接している。このような構成によれば、各弾性部32d,32eは各傾斜部62と弾性的に当接するため、ガタつき防止効果を安定して発揮させることができる。
【0039】
・上記実施形態では、回転方向押圧手段として圧入用突起43aが形成されたが、特にこれに限定されるものではなく、回転方向押圧手段としての弾性部63を、例えば図8〜図11に示すような構成としてもよい。
【0040】
図8(a)(b)に示すものでは、係合溝43の底部43bには、回転方向に互いに対向する一対の弾性部63が突出形成されており、この各弾性部63の間に伝達プレート32の係合片32cが嵌着されている。これにより、係合片32cは各弾性部63により弾性的に挟持されるようになっている。
【0041】
また、図9(a)(b)に示すものでは、伝達プレート32の係合片32cの先端に、回転方向に一旦延びてそこからホイールギヤ31側に屈曲された弾性部63が形成され、該弾性部63は、係合溝43の底部43bに形成した溝状の固定部43cに固定されている。
【0042】
図8及び図9に示すような構成によれば、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の軸方向及び回転方向における寸法誤差や組付誤差が吸収され、その各方向におけるホイールギヤ31と伝達プレート32との間のガタつきが防止されるようになっている。また、それに加えて、弾性部63は係合片32cと弾性的に当接するため、ガタつき防止効果を安定して発揮させることができる。
【0043】
また、図10に示すものでは、係合溝43の回転方向の一側面に弾性部63が延出形成されており、該弾性部63は係合片32cと回転方向において弾性的に当接している。
図11(a)に示すものでは、係合溝43が外周側に向かって幅狭となるように形成され、係合片32cには、その先端から回転方向両側にそれぞれ傾斜して延びる弾性部63が形成されている。そして、各弾性部63は係合溝43を回転方向に弾性的に押圧している。また、図11(b)に示すものでは、その先端から回転方向片側に傾斜して延びる弾性部63が形成され、該弾性部63が係合溝43を回転方向に弾性的に押圧している。
【0044】
図10及び図11(a)(b)に示すような構成によれば、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の回転方向における寸法誤差や組付誤差が吸収され、その回転方向におけるホイールギヤ31と伝達プレート32との間のガタつきが防止されるようになっている。また、それに加えて、弾性部63が係合溝43と弾性的に当接するため、ガタつき防止効果を安定して発揮させることができる。
【0045】
・上記各実施形態では、係合片32c及び係合溝43はそれぞれ、回転方向の両側部は互いに平行をなすように構成されたが、これ以外に例えば、図12に示すように、外周側に向かって幅狭となるように構成してもよい。このような構成によれば、ホイールギヤ31と伝達プレート32との間の径方向及び回転方向におけるガタつきを抑制可能となっている。
【0046】
・上記実施形態では、係合溝43及び係合片32cはそれぞれ9個設けられたが、特にこれに限定されるものではなく、8個以下、若しくは10個以上設けてもよい。
・上記実施形態では、弾性爪部45がホイールギヤ31側に形成されたが、伝達プレート32側に形成してもよい。また、弾性爪部45の代わりに、例えば別部材としてのシート状のゴム部材をホイールギヤ31と伝達プレート32の軸方向間に介在させてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、伝達プレート32と出力軸33とが別体として構成されたが、一体に構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態のモータの断面図。
【図2】(a)出力部材を示す正面図、(b)減速部の断面図。
【図3】ホイールギヤを示す(a)正面図、(b)同図(a)におけるA−A線断面図、(c)背面図。
【図4】伝達プレートを示す(a)正面図、(b)同図(a)におけるB−B線断面図、(c)背面図。
【図5】係合溝及び係合片を示す正面図。
【図6】別例の出力部材を示す(a)正面図、(b)断面図。
【図7】(a)(b)それぞれ別例の弾性部を説明するための断面図。
【図8】別例の弾性部を示す(a)正面図、(b)断面図。
【図9】別例の弾性部を示す(a)正面図、(b)断面図。
【図10】別例の弾性部を示す正面図。
【図11】(a)(b)それぞれ別例の弾性部を説明するための正面図。
【図12】別例の係合溝及び係合片を示す正面図。
【符号の説明】
【0049】
2…モータ本体、10…回転軸、22…ウォーム軸、22a…ウォーム(ウォーム部)、31…ホイールギヤ、32…伝達部材としての伝達プレート、32c…係合片、33…出力軸、43…係合溝、43a…回転方向押圧手段としての圧入用突起、45…押圧手段としての弾性爪部、51…規制部としてのCリング、62…傾斜部、63…回転方向押圧手段としての弾性部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周にウォーム部を有する回転軸の回転を、前記ウォーム部と噛合するホイールギヤを介して出力軸に伝達する出力伝達装置において、
前記ホイールギヤに対しその軸方向から組み付けられて該ホイールギヤと回転方向に直接係合し、該ホイールギヤの回転を前記出力軸に伝達する伝達部材と、
前記伝達部材を前記ホイールギヤとで前記軸方向に挟む位置に設けられ、前記伝達部材の反ホイールギヤ側への移動を規制する規制部と、
前記伝達部材を前記ホイールギヤ及び前記規制部のいずれか一方に対して前記軸方向に押圧する押圧手段とを備えたことを特徴とする出力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の出力伝達装置において、
前記ホイールギヤ及び前記伝達部材のいずれか一方には、いずれか他方に対して回転方向に弾性的に当接する回転方向押圧手段が設けられたことを特徴とする出力伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の出力伝達装置において、
前記押圧手段は、前記ホイールギヤ及び前記伝達部材のいずれか一方に形成され、いずれか他方を前記軸方向に押圧する弾性爪部であり、
前記伝達部材は、前記弾性爪部の弾性力により前記規制部に対して前記軸方向に押圧されるように構成されたことを特徴とする出力伝達装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の出力伝達装置において、
前記規制部は、前記押圧手段を構成するものであって、前記伝達部材を前記ホイールギヤに対して前記軸方向に押圧した状態で設けられたことを特徴とする出力伝達装置。
【請求項5】
請求項4に記載の出力伝達装置において、
前記ホイールギヤには、その回転方向に傾斜する傾斜部が設けられ、
前記伝達部材は、前記規制部によって前記ホイールギヤの傾斜部に対して前記軸方向に押圧されるように構成されたことを特徴とする出力伝達装置。
【請求項6】
モータ本体の回転軸の回転を、請求項1〜5のいずれか1項に記載の出力伝達装置にて出力可能に構成されたことを特徴とする減速機構付モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−14251(P2010−14251A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176956(P2008−176956)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】