説明

列車の自車位置検出装置、車体傾斜制御システム、操舵システム、アクティブ制振システム及びセミアクティブ制振システム

【課題】列車の自車位置を高精度に検出する。
【解決手段】速度発電機3と、GPS受信機2と、速度発電機3及びGPS受信機2の出力に基づいて基準位置からの走行距離と速度発電機3の出力を補正する誤差パラメータδkとを推定するカルマンフィルタ21と、速度発電機3及びカルマンフィルタ21の出力に基づいて基準位置からの走行距離を算出して列車位置を決定する自車位置決定部22とを備え、自車位置決定部22は、GPS受信機2の出力の更新時には、カルマンフィルタ21で推定された走行距離により列車位置を決定する一方、GPS受信機2の出力の更新時以外には、速度発電機3の出力の更新時に、カルマンフィルタ21で推定された走行距離のうち最新のものと、カルマンフィルタ21で推定された誤差パラメータδ{^}kのうち最新のものを用いて補正された速度発電機3の出力とに基づいて走行距離を積算して列車位置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、速度センサ及び衛星測位受信機に基づいて列車の位置を検出する自車位置検出装置、それを備えた車体傾斜制御システム、操舵システム、アクティブ制振システム及びセミアクティブ制振システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、列車の走行位置を検出する方法として、速度発電機により得られる車輪回転数に車輪径を乗じて得た値を走行距離として積算し、線路近傍に設置されたATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)やATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)の地上子の位置からの積算走行距離によって線路における現在の自車位置を算出する方法が知られている。しかし、走行摩耗による車輪径の変化や車輪のスリップ等により、積算走行距離に誤差が生じるという問題がある。そこで、GPS(Global Positioning System)とヨーレートセンサと速度発電機を併用することにより、自車位置の検出精度を高める自車位置検出システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この自車位置検出システムは、GPS情報の受信信頼度が高い場合には、GPS情報のみにより自車位置を算出する。GPS情報の受信信頼度が中程度の場合には、GPS情報により取得した自車位置を基準としながら走行時にヨーレートセンサで検出されたヨーレートを既知のヨーレートマップに対照させて自車位置を特定する。GPS情報の受信信頼度が低い場合には、車軸回転数による積算走行距離のみにより自車位置を算出する。なお、ヨーレートマップは、事前のテスト走行でヨーレートセンサの出力を記録し、線路上の位置にヨーレートを関連付けて予め保存したデータである。
【特許文献1】特開2004−271255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記自車位置検出システムでは、ヨーレートマップの作成時の列車と仕様の異なる列車を走行させた場合、マップ作成時の車両とはヨーレートの応答特性が異なるために、正確に自車位置を検出できないことがある。よって、仕様が異なる列車を走行させる場合には、再びテスト走行を実施してヨーレートマップを改めて作成し直さなければならないという手間が生じる。
【0005】
そこで本発明は、手間を掛けずに列車の自車位置を高精度に検出できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明に係る列車の自車位置検出装置は、列車の速度を検出する速度センサと、測位衛星から受信した情報に基づいて自己の位置を定期的に算出する衛星測位受信機と、前記速度センサ及び前記衛星測位受信機の出力に基づいて、基準位置からの走行距離と、前記速度センサの出力を補正するための誤差パラメータとを推定する状態推定器と、前記速度センサ及び前記状態推定器の出力に基づいて基準位置からの走行距離を算出して前記列車の位置を決定する自車位置決定手段とを備え、前記自車位置決定手段は、前記衛星測位受信機の出力の更新時には、前記状態推定器で推定された走行距離により前記列車の位置を決定する一方、前記衛星測位受信機の出力の更新時以外には、前記速度センサの出力の更新時に、前記状態推定器で推定された走行距離のうち最新のものと、前記状態推定器で推定された誤差パラメータのうち最新のものを用いて補正された前記速度センサの出力とに基づいて走行距離を積算し、前記列車の位置を決定することを特徴とする。
【0007】
前記構成によれば、衛星測位信号不使用時に速度センサの出力に基づいて基準位置からの走行距離を積算する際、その積算の基準位置として状態推定器で求めた推定走行距離のうち最新のものを利用しているので、車輪径の変化や車輪のスリップ等により生じる積算走行距離の誤差が殆ど累積されない。かつ、速度センサの出力は、状態推定器で推定された誤差パラメータのうち最新のものを用いて補正されているので、衛星測位信号不使用期間が比較的長く続いたとしても、車輪径の変化や車輪のスリップ等により生じる積算走行距離の誤差が殆ど生じない。よって、速度センサの出力に基づいて走行距離を積算することで自車位置を求めても、精度が非常に良好となる。また、ヨーレートセンサの出力をヨーレートマップに対照させることを行わないので、仕様の異なる列車毎にテスト走行を実施してヨーレートマップを作成する必要がなく、仕様の異なる列車にも容易に適用することができる。したがって、あらゆる仕様の列車の自車位置を高精度に検出することが可能となる。
【0008】
前記衛星測位受信機の出力の信頼度の程度を表す受信信頼度を算出する信頼度算出手段をさらに備え、前記状態推定器は、前記推定走行距離を算出する際の推定速度及び耐ノイズ性を調整可能なノイズパラメータを有し、前記ノイズパラメータは、その値が大きくなると推定速度が遅くなる代わりに耐ノイズ性が高まる一方、その値が小さくなると耐ノイズ性が低下する代わりに推定速度が速くなるパラメータであり、前記ノイズパラメータは、前記信頼度算出手段で求めた前記受信信頼度が高くなるにつれて小さくなるように設定される一方、前記信頼度算出手段で求めた前記受信信頼度が低くなるにつれて大きくなるように設定されてもよい。
【0009】
前記構成によれば、衛星測位受信機の受信信頼度に応じてノイズパラメータの値が随時設定され、状態推定器において推定速度を優先させるか又は耐ノイズ性を優先させるかが随時決定される。つまり、受信信頼度が高くなると耐ノイズ性よりも推定速度の向上が優先され、受信信頼度が低くなると推定速度よりも耐ノイズ性の向上が優先される。したがって、状態推定器は、衛星測位受信機の受信信頼度に応じて最適な推定処理を実施することが可能となる。
【0010】
線路近傍に設置されて位置が既知である地上子と無線通信して列車の位置を取得可能な車上子と、前記車上子により列車の位置情報が取得されると、その位置情報により、前記自車位置決定手段で決定する前記列車の位置を初期化する初期化手段とをさらに備えていてもよい。
【0011】
前記構成によれば、列車が地上子を通過した際に地上子と通信した車上子が取得する列車の位置情報は正確であるので、その位置情報により自車位置決定手段で決定する列車の位置を初期化することで、列車の自車位置をより高精度に検出することが可能となる。
【0012】
また、本発明の列車の車体傾斜制御システムは、前記自車位置検出装置と、線路上の位置に関連付けられた線路の曲線情報を保存する線路曲線データベースと、前記自車位置検出装置で検出された前記列車の位置から前記線路曲線データベースを参照して自車位置における線路の曲率を計算する曲率計算手段と、車体を進行方向に対して左右に傾斜させるように駆動するアクチュエータと、前記曲率計算手段の出力に応じて前記アクチュエータを制御する車体傾斜制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、前述した自車位置検出装置により高精度に検出された列車の自車位置と線路曲線データベースと対照させることで、列車の現在地における線路の曲率が高精度に求められる。よって、この線路の曲率に応じてアクチュエータを制御し、車体の傾斜方向及び傾斜量を制御することで、乗り心地と安全性を両立させた最適な車体傾斜制御を実施することが可能となる。
【0014】
また、本発明の列車の操舵システムは、前記自車位置検出装置と、線路上の位置に関連付けられた線路の曲線情報を保存する線路曲線データベースと、前記自車位置検出装置で検出された前記列車の位置から前記線路曲線データベースを参照して自車位置における線路の曲率を計算する曲率計算手段と、進行方向に対して左右に転向可能に支持された車輪を操舵させるアクチュエータと、前記曲率計算手段の出力に応じて前記アクチュエータを制御する操舵制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0015】
前記構成によれば、前述した自車位置検出装置により高精度に検出された列車の自車位置と線路曲線データベースと対照させることで、列車の現在地における線路の曲率が高精度に求められる。よって、この線路の曲率に応じてアクチュエータを制御し、車輪の操舵方向及び操舵量を制御することで、カーブ通過時に車輪がレールから受ける横圧を最適に低減することが可能となる。
【0016】
また、本発明の列車のアクティブ制振システムは、前記自車位置検出装置と、線路上の位置に関連付けられた線路の区間情報を保存する線路区間データベースと、前記自車位置検出装置で検出された前記列車の位置から前記線路区間データベースを参照して自車位置における線路の区間を計算する区間計算手段と、列車の車体と台車との間に介設され、前記車体を前記台車に対して相対変位させるように駆動可能なアクチュエータと、前記車体の加速度を検出可能な加速度センサと、前記加速度センサの出力に基づいて前記アクチュエータを制御するアクティブ制御手段とを備え、前記アクティブ制御手段は、前記区間計算手段の出力に応じて前記アクチュエータの制御方法を変更する構成であることを特徴とする。
【0017】
前記構成によれば、前述した自車位置検出装置により高精度に検出された列車の自車位置と線路区間データベースと対照させることで、列車の現在地がトンネル、曲線、直線等のどの区間にあるかが高精度に求められる。よって、車体に生じる加速度に応じてアクチュエータを制御して乗り心地を良好にするにあたり、現在の区間に応じてアクチュエータの制御方法を変更することで、走行状態に応じた適切な制振を実現することが可能となる。
【0018】
または、本発明の列車のセミアクティブ制振システムは、前記自車位置検出装置と、線路上の位置に関連付けられた線路の区間情報を保存する線路区間データベースと、前記自車位置検出装置で検出された前記列車の位置から前記線路区間データベースを参照して自車位置における線路の区間を計算する区間計算手段と、列車の車体と台車との間に介設され、減衰係数を変更可能な可変ダンパーと、前記車体の前記台車に対する相対速度を取得可能な相対速度取得手段と、前記相対速度取得手段で取得された相対速度に基づいて前記可変ダンパーの減衰係数を制御するセミアクティブ制御手段とを備え、前記セミアクティブ制御手段は、前記区間計算手段の出力に応じて前記可変ダンパーの制御方法を変更する構成であることを特徴とする。
【0019】
前記構成によれば、前述した自車位置検出装置により高精度に検出された列車の自車位置と線路区間データベースと対照させることで、列車の現在地がトンネル、曲線、直線等のどの区間にあるかが高精度に求められる。よって、車体と台車の相対速度に応じて可変ダンパーの減衰係数を制御して乗り心地を良好にするにあたり、線路の区間に応じて可変ダンパーの制御方法を変更することで、走行状態に応じた適切な制振を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、あらゆる仕様の列車の自車位置を高精度に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る自車位置検出装置1のブロック図である。図1に示すように、自車位置検出装置1は、線路11上を走行する列車10に搭載されている。自車位置検出装置1は、GPS受信機2(衛星測位受信機)、速度発電機3(速度センサ)、車上子4、演算制御部5及び出力部6を備えている。
【0023】
GPS受信機2は、複数のGPS衛星G1〜Gnから受信した情報に基づいて定期的に自己の位置を算出する。即ち、複数のGPS衛星G1〜Gnは、地球を周回する人工衛星であり、自己の測位用コードや軌道情報(送信元のGPS衛星の三次元位置座標と時間等に関する情報を含む)などのGPS情報を電波により送信し、GPS受信機2はそのGPS情報を定期的に受信して自己の位置を随時算出している。
【0024】
速度発電機3は、列車10の車輪12の車軸回転数に応じてパルスを発生させるものであり、単位時間当たりのパルス数を計算することにより、列車10の速度を検出することが可能となっている。
【0025】
車上子4は、地上子13と無線通信して列車10の位置等に関する情報を取得可能となっている。地上子13は、線路11の近傍に設置されたATS(Automatic Train Stop:自動列車停止装置)又はATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)の地上子であり、その位置が予め既知となっている。
【0026】
演算制御部5は、GPS受信機2、速度発電機3及び車上子4からの情報に基づいて各種演算処理を行うCPU等の演算制御装置である。具体的には、演算制御部5は、CPU、CPUが実行するプログラム及びプログラムに使用されるデータが記憶されているROM、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAM、書き換え可能なEEPROM等で構成されている。出力部6は、演算制御部5から演算結果を外部へ出力するインターフェースである。
【0027】
図2は図1に示す自車位置検出装置1の主に演算制御部5を機能的に説明するブロック図である。図2に示すように、演算制御部5は、信頼度算出部20、拡張カルマンフィルタ21(状態推定器)及び自車位置決定部22(自車位置決定手段)を備えている。信頼度算出部20は、GPS受信機2からの情報に基づいてGPS受信信頼度の程度を表すGPS受信信頼度係数Rを算出する。GPS受信信頼度係数Rは、以下の数式1で算出される。
【0028】
【数1】


但し、tはディファレンシャル補正信号更新時間[sec]、Nは捕捉したGPS衛星数、HDOPは測位精度(衛星の配置)である。ディファレンシャル補正信号更新時間tは、DGPSにおいて、基準局(図示せず)からの補正信号更新時間を意味している。HDOPは、地球上の観測点における水平方向での位置精度の低下率(Horizontal Dilution of Precision:水平方向位置精度低下率)を意味している。なお、数式1において、GPS受信信頼度係数Rの値が大きいほど受信の信頼性が高いことを示している。
【0029】
また、拡張カルマンフィルタ21は、GPS受信機2、速度発電機3及び信頼度算出部20の出力に基づいて基準位置からの走行距離を推定する。自車位置決定部22は、拡張カルマンフィルタ21、速度発電機3及び車上子4の出力に基づいて列車10の位置を決定する。なお、基準位置には、駅などに停車中の自車位置等を用いている。
【0030】
図3は図1に示す自車位置検出装置の自車位置検出原理を説明する図面である。図3に示すように、GPS受信機2から出力されるGPS位置座標、信頼度算出部20から出力されるGPS受信信頼度係数R、及び、速度発電機3から出力される車軸回転数ωjが入力となり、拡張カルマンフィルタ21及び自車位置決定部22を介して列車10の自車位置が出力されている。なお、自車位置決定部22は、所定の積分処理を行う積分器24と、基準位置と走行距離から自車位置を求める変換器25とから構成されている。
【0031】
以下、自車位置検出手順についてさらに具体的に説明する。GPS受信機2のサンプリング時間をH[sec]、速度発電機3のサンプリング時間をh[sec]、基準位置からのサンプリング時間Hごとのk個目の推定走行距離をsk(k=0,1,・・・)、サンプリング時間hごとの走行距離をrj(j=0,1,・・・)、速度発電機3から出力される車軸回転数をωj[rps]とする。この場合、区間[k−1,k]のωjの平均値ω{−}k-1は、以下の数式2で表される。なお、記号{−}は、その直前の記号(この場合はω)の上に−が記載されていることを意味することとする。
【0032】
【数2】


ここで、摩耗による車輪径変化や車輪滑り等による誤差を表す誤差パラメータをδkとし、車輪直径をd[m]としたとき、k番目の推定走行距離skは、以下の数式3で表される。
【0033】
【数3】


そして、誤差パラメータδkには外部からの作用が無いとすると、以下の数式4が成り立つ。
【0034】
【数4】


よって、数式3と数式4とを纏めると、以下の数式5の時変系状態方程式と、数式6の出力方程式で表すことができる。
【0035】
【数5】

【0036】
【数6】


さらに、状態変数[sk,δk]Tと観測量ykにそれぞれノイズパラメータw1,w2,vkが加わると、数式5及び数式6は、以下の数式7及び数式8で表される。なお、w1,w2は定数である。
【0037】
【数7】

【0038】
【数8】



ノイズパラメータvkの値が大きくなると、図4(a)に示すように、拡張カルマンフィルタ21の推定速度が遅くなる代わりに耐ノイズ性が高まる。一方、ノイズパラメータvkの値が小さくなると、図4(b)に示すように、耐ノイズ性が低下する代わりに推定速度が速くなる。本実施形態では、信頼度算出部20で求めたGPS受信信頼度係数Rが高くなるにつれてノイズパラメータvkが小さくなる一方、信頼度算出部20で求めたGPS受信信頼度係数Rが低くなるにつれてノイズパラメータvkが大きくなるように設定されている。なお、w1はvkと同じ効果があり、vkの代わりにw1を変更してもよい。
【0039】
次に、走行距離の算出方法は、(1)GPS受信機2がGPS情報を受信して測位可能な場合と、(2)トンネル通過時のようにGPS受信機2がGPS情報を受信せず測位不可能な場合とで大別され、前記(1)の場合は更に、(1-1)GPS受信機2のサンプリング時と、(1-2)GPS受信機2のサンプリングの間のブランク期間における速度発電機3のサンプリング時とに分けられる。なお、GPS受信機2のサンプリング時間Hは、速度発電機3のサンプリング時間h以上となっている。
【0040】
(1)GPS受信機2がGPS情報を受信して測位可能な場合であって、(1-1)GPS受信機2のサンプリング時には、GPS受信機2で出力されるGPS位置座標を線路軌道上に投影して求めた走行距離sk-1と車軸平均回転数ω{−}k-1に基づいて、拡張カルマンフィルタ21により状態量y{^}k(=s{^}k)を計算し、最新の走行距離rjは、以下の数式9で算出される。なお、記号{^}は、その直前の記号(この場合はy,s)の上に^が記載されていることを意味することとする。
【0041】
【数9】


(1-2) GPS受信機2のサンプリングの間のブランク期間における速度発電機3のサンプリング時には、走行距離rjは、最新の誤差パラメータ推定値δ{^}kを用いて、以下の数式10で算出される。
【0042】
【数10】


ここで、前記(1-1)の処理により、GPS受信機2のサンプリング毎に、走行距離rjが拡張カルマンフィルタ21により推定された推定走行距離skでリセットされるので、数式10の第1項のhdπ(1+δ{^}k)ωjによる誤差の累積が防止されている。
【0043】
(2)トンネル通過時のようにGPS受信機2がGPS情報を受信せず測位不可能な場合には、GPS情報が更新されないので、走行距離rjのリセットは行われず、数式10による計算が繰り返される。
【0044】
また、車上子4により列車10の位置情報が取得されると、車上子4で出力される絶対位置座標を線路軌道上に投影して絶対走行距離uを求め、以下の数式11で最新の走行距離rjを初期化する。なお、車上子4と自車位置決定部22とで初期化手段が構成されている。
【0045】
【数11】


次に、自車位置検出装置1の処理手順について図5の流れに沿って説明する。図5は図1に示す自車位置検出装置1の自車位置検出手順を説明するフローチャートである。図5に示すように、まず、δ{^}k、s{^}k、rjに所定の初期値が設定される(ステップS1)。次いで、n及びω{−}k-1にゼロが代入される(ステップS2)。次いで、ωjに車軸回転数が入力される(ステップS3)。次いで、車上子4に地上子13からの位置補正情報の入力があったか否かが判定される(ステップS4)。ステップS4でNoの場合には、GPS受信機2がGPS情報を正常に受信して測位可能か否かが判定される(ステップS5)。ステップS5でYesの場合には、GPS位置座標が更新された否か、即ち、GPS受信機2のサンプリング時点であるか否かが判定される(ステップS6)。
【0046】
ステップS6でYesの場合には、GPS位置座標からykが計算される(ステップS7)。次いで、前述した数式2により車軸回転数の平均値ω{−}k-1を求める(ステップS8)。次いで、GPS受信信頼度係数Rが計算される(ステップS9)。次いで、そのGPS受信信頼度係数Rからノイズパラメータvkが計算される(ステップS10)。次いで、そのノイズパラメータvkに基づいて、前述した数式7及び8により拡張カルマンフィルタ21による推定処理が行われ、s{^}k(=y{^}k)、δ{^}kが更新される(ステップS11)。次いで、そのy{^}kが走行距離rjに代入される(ステップS12)。そして、その走行距離rjが出力される(ステップS13)。
【0047】
また、ステップS6においてNoの場合には、GPS受信機2のサンプリングのブランク期間であるため、まず、車軸回転数の平均値ω{−}k-1にω{−}k-1+ωjが代入される(ステップS14)。次いで、nに1がインクリメントされる(ステップS15)。次いで、前述した数式10により、速度発電機3により得られる車輪回転数に車輪径や誤差パラメータ推定値δ{^}k等を乗じて得た値が走行距離として積算される(ステップS16)。
【0048】
また、ステップS5においてNoの場合には、トンネル通過時のようにGPS受信機2がGPS情報を正常に受信せず測位不可能な場合であるため、skにrjが代入され(ステップS17)、ω{−}k-1にゼロが代入され(ステップS18)、nにゼロが代入される(ステップS19)、拡張カルマンフィルタ21の誤差共分散行列が初期化される(ステップS20)。次いで、ステップS16に移行し、そこで求められた走行距離rjがステップS13で出力される。
【0049】
また、ステップS4においてYesの場合には、車上子4により列車10の位置情報が取得されているので、車上子4で出力される絶対位置座標を線路軌道上に投影して絶対走行距離uを求め、前述した数式11により最新の走行距離rjを初期化する(ステップS21)。次いで、skにrjが代入され(ステップS22)、ω{−}k-1にゼロが代入され(ステップS23)、nにゼロが代入され(ステップS24)、拡張カルマンフィルタ21の誤差共分散行列が初期化され(ステップS25)、走行距離rjがステップS13で出力される。
【0050】
以上に説明した構成によれば、速度発電機3の出力に基づいて基準位置からの走行距離rjを積算する際、その積算の基準位置として拡張カルマンフィルタ21で求めた最新の推定走行距離s{^}kが利用されているので、車輪12の外径の変化や車輪12のスリップ等により生じる積算走行距離の誤差が殆ど累積されない。また、ヨーレートセンサの出力をヨーレートマップに対照させることを行わないので、仕様の異なる列車毎にテスト走行を実施してヨーレートマップを作成する必要がなく、仕様の異なる列車にも容易に適用することができる。したがって、あらゆる仕様の列車の自車位置を高精度に検出することが可能となる。
【0051】
また、拡張カルマンフィルタ21により推定された誤差パラメータδ{^}kのうち最新のものを利用して走行距離rjの積算が行われるので、さらに積算精度が向上している。
【0052】
さらに、GPS受信信頼度係数Rに応じてノイズパラメータvkの値が随時設定され、拡張カルマンフィルタ21において推定速度を優先させるか又は耐ノイズ性を優先させるかが随時決定されている。つまり、GPS受信信頼度係数Rが小さくなると、図4(a)のように推定速度よりも耐ノイズ性の向上が優先され、GPS受信信頼度係数Rが大きくなると、図4(b)のように耐ノイズ性よりも推定速度の向上が優先される。したがって、拡張カルマンフィルタ21は、GPS受信機2の受信信頼度に応じて最適な推定処理を実施することが可能となる。
【0053】
また、列車10が地上子13を通過して車上子4が地上子13と無線通信できた際には、車上子4が地上子13から取得した正確な位置情報により自車位置決定部22で決定する列車10の自車位置が初期化されているので、列車10の自車位置をより高精度に検出することが可能となる。なお、本実施形態では、衛星測位システムとしてGPSが利用されているが、他の衛星測位システムを利用してもよい。また、本実施形態では、速度センサとして速度発電機が利用されているが、これに限られず、たとえばドップラー速度計などを利用してもよい。
【0054】
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態に係る自車位置検出装置の演算制御部35を機能的に説明するブロック図である。図6に示すように、演算制御部35の信頼度算出部31には、自車位置決定部22の出力が入力されていると共に、信頼度データベース30が接続されている。
【0055】
GPS情報の受信信頼度は、線路に近接するビル等の影響により低下することがあり、線路周囲の環境を予め調査等することで、ある程度はGPS電波の受信信頼度を知ることができる。そこで、信頼度データベース30には、調査済み受信信頼度m(rj)が線路上の位置に関連付けて保存されている。即ち、信頼度データベース30には、調査済み受信信頼度m(rj)が走行距離rjの関数として保存されている。なお、調査済み受信信頼度m(rj)の値が大きいほど受信の信頼性が高いことを示している。
【0056】
具体的には、信頼度算出部31は、GPS受信機2及び信頼度データベース30からの情報に基づいてGPS受信信頼度係数Rを算出する。信頼度データベース30の保存された調査済み受信信頼度をm(rj)とすると、GPS受信信頼度係数Rは、以下の数式12で算出される。
【0057】
【数12】


以上に説明した構成によれば、信頼度算出部31は、GPS受信機2からの情報以外に信頼度データベース30からの情報も利用してGPS受信信頼度係数Rを算出しているので、GPSの受信信頼度をより高精度に求めることが可能となる。なお、他の構成は第1実施形態と同様であるため同一符号を付して説明を省略する。
【0058】
次に、図7〜図10は本発明の自車位置検出装置1の具体的な使用例を説明する図面である。
【0059】
(第1使用例)
図7は図1に示す自車位置検出装置1を備えた車体傾斜制御システム50を説明する図面である。図8は図7に示す車体傾斜制御システム50のブロック図である。図7に示すように、列車の車体60は、車輪62を備えた台車61の上に左右一対の空気バネ67,68を介して設けられている。車体60は、コンプレッサー61を備えており、コンプレッサー61は空気溜62を介して左右の空気バネ67,68に接続されている。また、空気バネ67,68と空気溜62との間にはそれぞれ吸気弁63、64が介設されており、空気バネ67,68には外気と連通/遮断させるための排気弁65,66がそれぞれ接続
そして、左右の吸気弁63,64及び排気弁65,66を制御して、コンプレッサー61からの圧縮空気を左右の空気バネ67,68に選択的に供給することで、車体60の台車61に対する傾斜角が変更可能となっている。即ち、コンプレッサー61、空気溜62、吸気弁63,64、排気弁65,66及び空気バネ67,68により、車体60を進行方向に対して左右に傾斜させるアクチュエータ54が構成されている。また、車体60と台車61の間には左右一対の車高検知センサ69,70が介設されており、車体60の傾斜角が検出可能となっている。よって、後述する車体傾斜制御部53は、車高検知センサ69,70からの情報に基づいて吸気弁63,64及び排気弁65,66を駆動することで、車体60が目的の傾斜角となるように制御することができる。
【0060】
図8に示すように、車体傾斜制御システム50は、前述した自車位置検出装置1、線路曲線データベース51、曲率計算部52、車体傾斜制御部53及びアクチュエータ54を備えている。なお、自車位置検出装置1の構成は第1実施形態で説明したものと同様であるため同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
線路は、直線、緩和曲線及び円曲線からなる。よって、線路曲線データベース51には、曲線入口位置、緩和曲線長、円曲線長及び曲線方向の項目を有するテーブルが保存されている。曲率計算部52は、自車位置検出装置1で検出された自車位置を線路曲線データベース51に対照させて、列車が緩和曲線又は円曲線のどの部分に存在するかを求め、現在の自車位置における線路の曲率(又は曲率半径)を計算する。例えば、緩和曲線がクロソイドで形成されている場合には、公知のクロソイドの式を使って曲率を計算することができる。又は、曲線を複数の線分を用いて近似し、それぞれの点に曲率情報を割り当てて現在位置から最も近い点の曲率を利用するようにしてもよい。そして、車体傾斜制御部53は、曲率計算部52で計算された曲率に基づいてアクチュエータ54を駆動させ、車体60が目的の傾斜角となるように制御する。
【0062】
また、曲率計算部52は、自車位置検出装置1で検出された自車位置に所定の距離を足したものを線路曲線データベース51に対照させることで、カーブ進入を前もって予測し、車体傾斜の動作遅れを防止する構成としてもよい。これにより、車両がカーブに進入する手前から車体傾斜を開始することが可能となる。
【0063】
以上に説明した構成によれば、前述した自車位置検出装置1により高精度に検出された列車の自車位置と線路曲線データベース51と対照させることで、列車の現在位置における線路の曲率が高精度に求められる。よって、この線路の曲率に応じてアクチュエータ54を制御し、車体60の傾斜方向及び傾斜量を制御することで、乗り心地と安全性を両立させた最適な車体傾斜制御を実施することができる。
【0064】
(第2使用例)
図9は図1に示す自車位置検出装置1を備えた操舵システム80を説明する図面である。図10は図9に示す操舵システム80のブロック図である。図9に示すように、列車の台車90には、前輪91が設けられた車軸93と、後輪92が設けられた車軸94とが取り付けられている。車軸93,94は、前輪91及び後輪92が進行方向に対して左右に転向可能なように回転軸95,96を介して台車90に支持されている。さらに、車軸93,94と台車90との間には油圧シリンダ97,98からなるアクチュエータ84が介設されている。そして、後述する台車操舵制御部83が、油圧シリンダ97,98をそれぞれ伸縮駆動させることで、前輪91及び後輪92が左右に操舵可能となっている。
【0065】
図10に示すように、操舵システム80は、前述した自車位置検出装置1、線路曲線データベース51、曲率計算部52、台車操舵制御部83及びアクチュエータ84を備えている。台車操舵制御部83は、曲率計算部52で計算された曲率に基づいてアクチュエータ84を駆動させ、前輪91及び後輪92が目的の操舵角となるように制御する。なお、自車位置検出装置1の構成は第1実施形態で説明したものと同様であり、線路曲線データベース51及び曲率計算部52は第1使用例と同様であるため同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
以上に説明した構成によれば、自車位置検出装置1により高精度に検出された列車の自車位置と線路曲線データベース51と対照させることで、列車の現在位置における線路の曲率が高精度に求められる。よって、この線路の曲率に応じてアクチュエータ84を制御し、前輪91及び後輪92の操舵方向及び操舵量を制御することで、カーブ通過時に前輪91及び後輪92が線路のレールから受ける横圧を最適に低減することができる。
【0067】
(第3使用例)
図11は図1に示す自車位置検出装置1を備えたアクティブ制振システム100を説明する図面である。図12は図11に示すアクティブ制振システム100のブロック図である。図11に示すように、列車の車体101は、車輪103を備えた台車102の上に左右一対の空気バネ104,105を介して設けられている。車体101の下面には車体側ブラケット101aが固定されていると共に、台車102の上面には台車側ブラケット102aが固定されている。
【0068】
各ブラケット101a,102aの間には、進行方向に対して左右に直進運動を発生させる電気式、油圧式又は空気圧式のアクチュエータ106が介設されている。また、各ブラケット101a,102aの間には、車体側ブラケット101aと台車側ブラケット102aとの間の相対運動に減衰作用を付与するダンパー107が介設されている。また、車体101には、進行方向に対して左右の加速度を検出する加速度センサ109が取り付けられている。
【0069】
図12に示すように、アクティブ制振システム100は、前述した自車位置検出装置1、線路区間データベース111、区間計算部112、アクティブ制御部110、加速度センサ109及びアクチュエータ106を備えている。線路区間データベース111には、線路の区間情報(直線区間、曲線区間、トンネル区間など)が線路の位置に関連付けされて保存されている。曲率計算部112は、自車位置検出装置1で検出された自車位置を線路区間データベース111に対照させて、列車がどのような区間に存在するかを計算する。アクティブ制御部110は、加速度センサ109で検出される加速度を打ち消すようにアクチュエータ106を制御する。そして、区間計算部112によりトンネル区間を通過中であると計算された時には、アクティブ制御部110は、空力の影響を考慮して、制御ゲインを上げたり、制御の周波数帯を空力周波数に応じて変更する。
【0070】
以上に説明した構成によれば、自車位置検出装置1により高精度に検出された列車の自車位置と線路区間データベース111と対照させることで、列車の現在地がトンネル、曲線、直線等のどの区間にあるかが高精度に求められる。よって、車体101に生じる加速度に応じてアクチュエータ106を制御して乗り心地を良好にするにあたり、線路の区間に応じてアクチュエータ106の制御方法を変更することで、走行状態に応じた適切な制振を実現することが可能となる。なお、他の構成は第1使用例又は第2使用例と同様であるため同一符号を付して説明を省略する。また、上記例では車体の左右方向を例に示したが、加速度センサ、相対変位センサ、アクチュエータを上下方向に設置することにより車体上下方向の制振制御も可能である。
【0071】
(第4使用例)
図13は図1に示す自車位置検出装置1を備えたセミアクティブ制振システム120を説明する図面である。図14は図13に示すセミアクティブ制振システム120のブロック図である。図13に示すように、車体側ブラケット101aと台車側ブラケット102aとの間には、車体側ブラケット101aと台車側ブラケット102aとの間の相対運動に減衰作用を付与する可変ダンパー127が介設されている。この可変ダンパー127は、電磁粘性流体などを使用したもので、減衰係数を変更可能なものである。
【0072】
図14に示すように、セミアクティブ制振システム120は、前述した自車位置検出装置1、線路区間データベース111、区間計算部112、セミアクティブ制御部130及びアクチュエータ、相対変位センサ108、加速度センサ109及び可変ダンパー127を備えている。セミアクティブ制御部130は、相対変位センサ108で検出される相対変位量を微分することで車体101の台車102に対する相対速度を算出し(相対速度取得手段)、加速度センサ109の出力から車体速度を算出し、その相対速度及び車体速度に基づいて可変ダンパー127の減衰係数を制御する(例えば、特許第3637027号公報の図2等参照)。なお、セミアクティブ制御部130は、車体101に取り付けた加速度センサ109で検出される車体加速度と、台車102に取り付けた加速度センサ(図示せず)で検出される台車加速度との差である相対加速度を積分して相対速度を算出し、その相対速度に基づいて可変ダンパー127の減衰係数を制御してもよい。あるいは、セミアクティブ制御部130は、相対変位センサ108で検出される相対変位量を微分することで車体101の台車102に対する相対速度を算出し、その相対速度に基づいて可変ダンパー127の減衰係数を制御してもよい。
【0073】
そして、セミアクティブ制御部130は、区間計算部112で計算された区間に応じて可変ダンパー127の減衰係数を調節し、車体101の左右方向の加速度が減るように制御する。具体的には、区間計算部112によりトンネル区間を通過中であると計算された時には、セミアクティブ制御部130は、空力の影響を考慮して、制御ゲインを上げたり、又は、制御の周波数帯を空力周波数に応じて変更する。
【0074】
以上に説明した構成によれば、前述した自車位置検出装置1により高精度に検出された列車の自車位置と線路区間データベース111と対照させることで、列車の現在地がトンネル、曲線、直線等のどの区間にあるかが高精度に求められる。よって、相対変位センサ108及び加速度センサ109の出力に応じて可変ダンパー127の減衰係数を制御して乗り心地を良好にするにあたり、線路の区間に応じて可変ダンパー127の制御方法を変更することで、走行状態に応じた適切な制振を実現することが可能となる。なお、他の構成は第1使用例又は第2使用例と同様であるため同一符号を付して説明を省略する。また、上記例では車体の左右方向を例に示したが、加速度センサ、相対変位センサ、アクチュエータを上下方向に設置することにより車体上下方向の制振制御も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明に係る列車の自車位置検出装置、車体傾斜制御システム、操舵システム、アクティブ制振システム及びセミアクティブ制振システムは、あらゆる仕様の列車の自車位置を高精度に検出することができる優れた効果を有し、この効果の意義を発揮できる列車に広く適用すると有益である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自車位置検出装置のブロック図である。
【図2】図1に示す自車位置検出装置の演算制御部を機能的に説明するブロック図である。
【図3】図1に示す自車位置検出装置の自車位置検出原理を説明する図面である。
【図4】(a)(b)はノイズパラメータによる拡張カルマンフィルタの推定速度及び耐ノイズ性への影響を説明するグラフである。
【図5】図1に示す自車位置検出装置の自車位置検出手順を説明するフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る自車位置検出装置の演算制御部を機能的に説明するブロック図である。
【図7】図1に示す自車位置検出装置を備えた車体傾斜制御システムを説明する図面である。
【図8】図7に示す車体傾斜制御システムのブロック図である。
【図9】図1に示す自車位置検出装置を備えた操舵システムを説明する図面である。
【図10】図9に示す操舵システムのブロック図である。
【図11】図1に示す自車位置検出装置を備えたアクティブ制振システムを説明する図面である。
【図12】図11に示すアクティブ制振システムのブロック図である。
【図13】図1に示す自車位置検出装置を備えたセミアクティブ制振システムを説明する図面である。
【図14】図13に示すセミアクティブ制振システムのブロック図である。
【符号の説明】
【0077】
1 自車位置検出装置
2 GPS受信機(衛星測位受信機)
3 速度発電機
4 車上子
10 列車
11 線路
12 車輪
13 地上子
20,31 信頼度算出部(信頼度算出手段)
21 拡張カルマンフィルタ(状態推定器)
22 自車位置決定部(自車位置決定手段)
50 車体傾斜制御システム
51 線路データベース
52 曲率計算部(曲率計算手段)
53 車体傾斜制御部(車体傾斜制御手段)
54,84 アクチュエータ
60 車体
61,90 台車
62 車輪
80 操舵システム
83 操舵制御部(操舵制御手段)
100 アクティブ制振システム
106 アクチュエータ
109 加速度センサ
110 アクティブ制御部(アクティブ制御手段)
111 線路区間データベース
112 区間計算部(区間計算手段)
120 セミアクティブ制振システム
127 可変ダンパー
130 セミアクティブ制御部(セミアクティブ制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の速度を検出する速度センサと、
測位衛星から受信した情報に基づいて自己の位置を定期的に算出する衛星測位受信機と、
前記速度センサ及び前記衛星測位受信機の出力に基づいて、基準位置からの走行距離と、前記速度センサの出力を補正するための誤差パラメータとを推定する状態推定器と、
前記速度センサ及び前記状態推定器の出力に基づいて基準位置からの走行距離を算出して前記列車の位置を決定する自車位置決定手段とを備え、
前記自車位置決定手段は、前記衛星測位受信機の出力の更新時には、前記状態推定器で推定された走行距離により前記列車の位置を決定する一方、前記衛星測位受信機の出力の更新時以外には、前記速度センサの出力の更新時に、前記状態推定器で推定された走行距離のうち最新のものと、前記状態推定器で推定された誤差パラメータのうち最新のものを用いて補正された前記速度センサの出力とに基づいて走行距離を積算し、前記列車の位置を決定することを特徴とする列車の自車位置検出装置。
【請求項2】
前記衛星測位受信機の出力の信頼度の程度を表す受信信頼度を算出する信頼度算出手段をさらに備え、
前記状態推定器は、走行距離を算出する際の推定速度及び耐ノイズ性を調整可能なノイズパラメータを有し、
前記ノイズパラメータは、その値が大きくなると推定速度が遅くなる代わりに耐ノイズ性が高まる一方、その値が小さくなると耐ノイズ性が低下する代わりに推定速度が速くなるパラメータであり、
前記ノイズパラメータは、前記信頼度算出手段で求めた前記受信信頼度が高くなるにつれて小さくなるように設定される一方、前記信頼度算出手段で求めた前記受信信頼度が低くなるにつれて大きくなるように設定される請求項1に記載の列車の自車位置検出装置。
【請求項3】
線路近傍に設置されて位置が既知である地上子と無線通信して列車の位置を取得可能な車上子と、
前記車上子により列車の位置情報が取得されると、その位置情報により、前記自車位置決定手段で決定する前記列車の位置を初期化する初期化手段とをさらに備えている請求項1又は2に記載の列車の自車位置検出装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の自車位置検出装置と、
線路上の位置に関連付けられた線路の曲線情報を保存する線路曲線データベースと、
前記自車位置検出装置で検出された前記列車の位置から前記線路曲線データベースを参照して自車位置における線路の曲率を計算する曲率計算手段と、
車体を進行方向に対して左右に傾斜させるように駆動するアクチュエータと、
前記曲率計算手段の出力に応じて前記アクチュエータを制御する車体傾斜制御手段とを備えていることを特徴とする列車の車体傾斜制御システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の自車位置検出装置と、
線路上の位置に関連付けられた線路の曲線情報を保存する線路曲線データベースと、
前記自車位置検出装置で検出された前記列車の位置から前記線路曲線データベースを参照して自車位置における線路の曲率を計算する曲率計算手段と、
進行方向に対して左右に転向可能に支持された車輪を操舵させるアクチュエータと、
前記曲率計算手段の出力に応じて前記アクチュエータを制御する操舵制御手段とを備えていることを特徴とする列車の操舵システム。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の自車位置検出装置と、
線路上の位置に関連付けられた線路の区間情報を保存する線路区間データベースと、
前記自車位置検出装置で検出された前記列車の位置から前記線路区間データベースを参照して自車位置における線路の区間を計算する区間計算手段と、
列車の車体と台車との間に介設され、前記車体を前記台車に対して相対変位させるように駆動可能なアクチュエータと、
前記車体の加速度を検出可能な加速度センサと、
前記加速度センサの出力に基づいて前記アクチュエータを制御するアクティブ制御手段とを備え、
前記アクティブ制御手段は、前記区間計算手段の出力に応じて前記アクチュエータの制御方法を変更する構成であることを特徴とする列車のアクティブ制振システム。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載の自車位置検出装置と、
線路上の位置に関連付けられた線路の区間情報を保存する線路区間データベースと、
前記自車位置検出装置で検出された前記列車の位置から前記線路区間データベースを参照して自車位置における線路の区間を計算する区間計算手段と、
列車の車体と台車との間に介設され、減衰係数を変更可能な可変ダンパーと、
前記車体の前記台車に対する相対速度を取得可能な相対速度取得手段と、
前記相対速度取得手段で取得された相対速度に基づいて前記可変ダンパーの減衰係数を制御するセミアクティブ制御手段とを備え、
前記セミアクティブ制御手段は、前記区間計算手段の出力に応じて前記可変ダンパーの制御方法を変更する構成であることを特徴とする列車のセミアクティブ制振システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−42179(P2009−42179A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210084(P2007−210084)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】