制御装置、画像形成装置、及び制御方法
【課題】テストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、多次色を精度良く再現でき、かつ階調再現曲線の滑らかさを保持して階調再現曲線の急激な変動を抑制する。
【解決手段】分光計によって測色した測色色と、領域探索部によって得られた測色適応領域での各色トナー像の面積比に比例した濃度とを各画像情報毎にサンプリング色データベースに保存する。作像手段によって形成可能なトナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色とプリントコントローラの階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数のアルゴリズム、サンプリング色データベースに保存された各測色色を平均化した測定色と参照色との差分、平均化した濃度及び階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて差分をより小さくするための階調再現曲線を表す設定値に対する補正量を決定し、その補正量に基づいて階調再現曲線を表す設定値を補正する。
【解決手段】分光計によって測色した測色色と、領域探索部によって得られた測色適応領域での各色トナー像の面積比に比例した濃度とを各画像情報毎にサンプリング色データベースに保存する。作像手段によって形成可能なトナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色とプリントコントローラの階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数のアルゴリズム、サンプリング色データベースに保存された各測色色を平均化した測定色と参照色との差分、平均化した濃度及び階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて差分をより小さくするための階調再現曲線を表す設定値に対する補正量を決定し、その補正量に基づいて階調再現曲線を表す設定値を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置、並びにこれに用いられる制御装置及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式によってトナー像を形成する画像形成装置においては、温湿度等の環境が変化したり、連続プリント動作を長期間に渡って実施したりすると、トナー像に対する単位面積あたりのトナー付着量が変化して画像濃度を変動させてしまうことがある。カラー画像を形成するカラー画像形成装置では、複数の1次色でそれぞれトナー付着量が変動すると、多次色の色調(例えばL*a*b*表色系におけるL*値とa*値とb*値との組合せ)が乱れてしまう。具体的には、カラー画像形成装置によって再現される色は、1次色と多次色とに大別される。1次色は、1種類のトナーだけによって表現される色である。例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)という4種類のトナーを用いる構成においては、Y,M,C,Kトナーのうち、何れか1つだけによって表現される色が1次色である。これに対し、多次色は、2種類以上のトナーを使用して表現される色である。多次色については、複数の1次色トナー像を重ねることで再現するのであるが、それぞれの1次色トナー像に対するトナー付着量が変動すると、それらの重ね合わせによる多次色トナー像の色調が乱れてしまうのである。
【0003】
そこで、特許文献1に記載のカラー調整の較正を行うカラーマーキング装置においては、多次色、多階調のテストパターンをテストプリント紙上に出力し、その反射率のデータから濃度を類推して画像濃度等に関する画像処理条件を制御するようになっている。即ち、ユーザの命令に基づく画像を出力したプリント紙とは別にテストプリント紙上に、画像処理パラメータ、具体的には階調再現曲線を決定するためのキャリブレーション用のテストパターンを複数形成する。そして、各テストパターンのカラー基準のL*値、a*値、b*値を検出し、その各結果に応じて階調再現曲線を補正する。その後、補正された階調再現曲線に基づいて多次色、多階調のカラートナー像を形成する。これにより、画像形成プロセスの状態が変動した場合にでも、紙面上に出力される色の変動を抑制し、安定した画像品質を得ることができる。
【0004】
ところで、近年においては、チラシ、カタログ、報告書、請求書などの大量のカラードキュメントを高速に出力するカラーオンデマンドプリントを実現するカラープロダクションプリンタが開発されている。このようなカラープロダクションプリンタは、例えば数千万件分の電話料金の請求書や領収書を1週間程度の発行期限で発行するような場合に利用されるものであって、1週間という期間においては昼夜を問わない状況で連続印刷を行う。言い換えれば、1分間に数百枚の高速プリントを数十時間の単位で連続運転する。このような状況から、高速タイプのカラープロダクションプリンタは、連続稼働中に装置を止めることは絶対にできない、という特性を有している。これは、装置を止めることで膨大な部数の発行期限に間に合わなくなることが生じるためである。この点で、高速タイプのカラープロダクションプリンタは、オフィスに設置されるようなプリンタ(MFP:Multifunction Peripheral)とは技術的に大きく異なるものとなっている。
【0005】
上記特許文献1のような画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値の制御では、ユーザの命令に基づく画像を出力したプリント紙とは別に、前述のテストパターンを出力したテストプリント紙を排出することになるため、両者の仕分け作業をユーザに強いることになる。このような仕分け作業は非常に手間がかかるので、テストトナー像を出力する構成を採用することは現実的ではない。このため、上記特許文献1のような階調再現曲線を表す設定値の制御は頻繁に行うことはできない。特に、上述したような高速タイプのカラープロダクションプリンタのように1分間に数百枚の高速プリントを数十時間の単位で連続運転するような場合には、数分に1回の頻度でプリント動作を止めて階調再現曲線を表す設定値の制御を実行することになる。これでは上述したような連続稼働中に装置を絶対に止めることはできないという高速タイプのカラープロダクションプリンタの特性に反することになる。また、階調再現曲線を表す設定値の制御を実行せずに連続稼動してしまうと、プロセスの状態が大きく変わってしまい、画質が劣化してしまう。すなわち、高速タイプのカラープロダクションプリンタに対しては、プリント動作を止めることなく、しかも、常時、リアルタイムに階調再現曲線を表す設定値の制御を実行することができるような新しい構成が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2によれば、テストパターンを、テストプリント紙上に作成する必要がある。このため、画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値の制御による装置のダウンタイムを短くするためには、テストパターン作成の周期を長くしなければならない。一方で、安定した画像品質を得るためには、テストパターンを用いた画像形成のための階調再現曲線を表す設定値の制御の制御を頻繁に行う必要がある。このようなトレードオフは、テストパターンをテストプリント紙上に作成する限り避けることができない。
【0007】
このような問題を解決するために、本発明者らは、特願2010−189881(以下先願と称す)で、テストパターンを出力したテストプリント紙を使わずにユーザの命令に基づく画像情報から測色するのに適した測色適応領域を探索し、作像手段によって形成される複数の多次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値との関係を表すアルゴリズムと、画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の測色適応領域を測色した測色結果と本来の色との差分と、画像処理パラメータの階調再現曲線を表す現在の設定値とに基づいて、差分をより小さくするための画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する制御装置を提案している。この先願の制御装置によれば、テストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、多次色を精度良く再現することができる。
【0008】
しかしながら、テストパターンと違ってユーザの命令により出力される画像情報における色の濃度分布が偏っていることが多い。すなわち、テストパターンでは濃度が高い色から低い色まで満遍なく含まれているが、ユーザの命令により出力される画像情報における色の濃度分布では必ずしも満遍なく含まれているとは限らない。また、ユーザの命令により出力される複数の画像情報においても色の濃度分布が相違することが多い。上記先願ではユーザの命令により出力される1つの画像情報において探索した測色適応領域を測色した測色結果と本来の色との差分をより小さくするような画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定している。このため、色の濃度分布が偏っている画像情報に基づいて実際の画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値を補正すると、補正した実際の階調再現曲線が色の濃度分布の偏りを含むことになり、実際の階調再現曲線の滑らかさが失われる。これにより、補正された実際の階調再現曲線に基づいて出力した画像に、視認できるような階調の不連続が生じる。
上記測色結果には感光体ドラムの偏心による面内色変動やセンサの測定誤差の影響も受けている。面内色変動やセンサの測定誤差が入った測色結果に基づいて実際の階調再現曲線を補正すると、補正した実際の階調再現曲線と理想の階調再現曲線との間に差が生じる。この差は面内色変動やセンサの測定誤差の大きさに応じて変わる。このため、面内色変動やセンサの測定誤差の大きさが急激に変動すると、補正した実際の階調再現曲線と理想の階調再現曲線との差も急激に変化する。これにより、補正された実際の階調再現曲線に基づいて出力した画像に、視認できるような色変動が生じる。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、テストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、多次色を精度良く再現することができ、かつ、階調再現曲線の滑らかさを保持して階調再現曲線の急激な変動を抑制することができる画像形成装置、並びにこれに用いられる制御装置及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、を備える画像形成装置に搭載され、前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御装置において、前記画像情報によって示される画像の中から、測色するのに適した測色適応領域を探索する領域探索処理を実施する領域探索手段と、前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の複数の前記測色適応領域をそれぞれ測色する測色手段と、前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の前記測色適応領域を測色した測色結果である測定色及び前記多次色トナー像における各1次色トナー像の前記測色適応領域での面積比に比例した濃度を各画像情報毎にそれぞれ保存する保存手段と、前記保存手段に保存された前記各測定色及び前記各濃度をそれぞれ平均化する平均化手段と、前記領域探索処理を実施した後、前記作像手段によって形成される複数の1次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と前記作像手段の前記階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数のアルゴリズム、前記平均化手段によって平均化された前記濃度、前記平均化手段によって平均化された前記測定色と前記参照色との差分及び前記階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、前記差分をより小さくするための前記階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する補正量決定手段と、決定した前記補正量に基づいて前記階調再現曲線を表す設定値を補正する補正手段と、を具備することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御手段とを備える画像形成装置において、前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像を測色する測色手段を設けるとともに、前記制御手段として、請求項1の画像形成制御装置を用いたことを特徴とするものである。
更に、請求項3の発明は、画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、を備える画像形成装置に搭載され、前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御方法において、前記画像情報によって示される画像の中から、測色するのに適した測色適応領域を探索する領域探索処理を実施する領域探索工程と、前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の複数の前記測色適応領域をそれぞれ測色する測色工程と、前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の前記測色適応領域を測色した測色結果である測定色及び前記多次色トナー像における各1次色トナー像の前記測色適応領域での面積比に比例した濃度を各画像情報毎にそれぞれ保存手段に保存する保存工程と、前記保存手段に保存された前記各測定色及び前記各濃度をそれぞれ平均化する平均化工程と、前記領域探索処理を実施した後、前記作像手段によって形成される複数の1次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と前記作像手段の前記階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数のアルゴリズム、平均化された前記濃度、平均化された前記測定色と前記参照色との差分及び前記階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、前記差分をより小さくするための前記階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する補正量決定工程と、決定した前記補正量に基づいて前記階調再現曲線を表す設定値を補正する補正工程と、を実施することを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、測色するためのテストプリント紙用の画像を形成して測色する代わりにユーザの命令に基づき出力する画像に対して測色に適した測色適応領域を探索する。探索した多次色トナー像の測色適応領域を測色し、その測色結果である各画像情報毎の各測定色及び各画像情報毎の各濃度をそれぞれ保存手段に保存する。保存手段に保存された各濃度及び各測定色をそれぞれ平均化する。そして、複数のアルゴリズムは作像手段によって形成される複数の1次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と画像情報処理手段の階調再現曲線を表す設定値との関係を表す。このアルゴリズム、平均化した濃度、平均化した測定色と参照色との差分及び階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、上記差分をより小さくするための階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する。このようにして、実際に出力した多次色を測色するためのテストトナー像を形成することなく、ユーザの命令に基づいて形成した画像の測色適応領域を測色した結果に基づいて、階調再現曲線を表す設定値の適切な補正量を決定する。決定した補正量に基づいて階調再現曲線を表す設定値を補正する。これにより、テスト画像を形成することなく階調再現曲線を表す設定値を適切に補正することで、テスト画像を出力したテストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、色を精度良く再現することができる。
そして、複数枚の多次色トナー像について保存手段に保存された測色適応領域の面積比に比例した各濃度及び各測定色をそれぞれ平均化して各画像情報における色の濃度分布の偏りを均すことで、色の濃度分布が偏っている画像情報を用いても補正した階調再現曲線の滑らかさは失われない。そして、感光体ドラムの偏心による面内色変動や測定誤差の影響も平均化することでこれらの影響を少なくすることができる。これにより、階調再現曲線の滑らかさを保持して、かつ、階調再現曲線の急激な変動を抑制することができる。視認できるような階調の不連続が生じたり、視認できるような色変動が生じたりすることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、テストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、多次色を精度良く再現することができ、かつ、階調再現曲線の滑らかさを保持して階調再現曲線の急激な変動を抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図である。
【図2】実施形態に係るプリンタの画像形成ユニットを示す拡大構成図である。
【図3】実施形態に係るプリンタにおける各種機器の電気的な接続を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係るプリンタの本体制御部及びその周囲構成を示すブロック図である。
【図5】本体制御部によって実施される色再現精度向上処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図6】ユーザから供される画像情報によって表される画像の一例を示す模式図である。
【図7】ユーザから供される画像情報によって表される画像から探索された測色適応領域を示す模式図である。
【図8】L=256の場合の時間tとt+1での階調再現曲線τ(t)とτ(t+1)、変動量δの関係を示す特性図である。
【図9】CM空間で4分割したセル上の濃度と各セルの中心点を示す模式図である。
【図10】L=256の場合の時間tとt+1での階調再現曲線の制御点と変動量δの関係を示す特性図である。
【図11】t=100の場合の画像への重み関数の様子を示す特性図である。
【図12】面内変動に対する階調再現曲線推定誤差の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態について説明する。
先ず、実施形態に係る画像形成装置の基本的な構成について説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、請求書などの大量のカラードキュメントを高速に出力するカラーオンデマンドプリントを実現するカラープロダクションプリンタである。このようなカラープロダクションプリンタは、例えば数千万件分の電話料金の請求書や領収書を1週間程度で発行するような場合に利用されるものであって、1週間という期間で昼夜を問わない状況で連続印刷を行う(言い換えれば、1分間に数百枚の高速プリントを数十時間の単位で連続運転する)。
【0015】
図1は実施形態に係るカラープロダクションプリンタの要部を示す概略構成図である。この図1においては、カラープロダクションプリンタ100(以下、単にプリンタ100という)の全体のうち、露光、帯電、現像、転写、定着を行う電子写真のプロセスを用いた画像形成工程部分(プロセスエンジン部)のみを示している。プリンタ100には、図1に示した構成部材の他に、記録材である記録紙115の供給を行う給紙装置、記録紙115を手差し給紙させるための手差しトレイ、及び画像形成済みの記録紙115が排紙される排紙トレイなど(いずれも図示せず)が設けられている。
【0016】
プリンタ100には、中間転写体である無端ベルト状の中間転写ベルト105が設けられている。中間転写ベルト105は、4つの支持ローラ112、113、114、119に張架された状態で、駆動ローラとしての機能を有する支持ローラ112の回転駆動によって図中反時計周り方向に無端移動せしめられる。
【0017】
中間転写ベルト105の張架部分には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色用の4つの画像形成ユニット103Y,C,M,Kが配設されている。これら画像形成ユニット103Y,C,M,Kは、使用するトナーの色が異なる点の他が、互いにほぼ同じ構成になっている。なお、符号の末尾に付したY,C,M,Kという添字は、Y,C,M,K用の部材や装置であることを示している。
【0018】
画像形成ユニット103Y,C,M,Kは、ドラム状の感光体101Y,C,M,K、現像装置102Y,C,M,K、感光体を一様帯電せしめる帯電装置などを具備している。中間転写ベルト10のループ内において、感光体101Y,C,M,Kとベルトを介して対向する位置には、1次転写ローラ106Y,C,M,Kが配設されており、ベルトを感光体101Y,C,M,Kに押圧している。これにより、感光体101Y,C,M,Kと中間転写ベルト105とが当接するY,C,M,K用の1次転写ニップが形成されている。
【0019】
中間転写ベルト105の上方には、現像装置102Y,C,M,K内に補給するためのY,C,M,Kトナーを収容するトナーボトル104Y,C,M,Kが配設されている。
【0020】
画像形成ユニット103Y,C,M,Kの帯電装置は、潜像担持体としての感光体101Y,C,M,Kの表面をトナーの帯電極性と同極性に一様帯電せしめるものである。同図においては、帯電装置として、帯電バイアスが印加される帯電ブラシローラを感光体101Y,C,M,Kに当接又は近接させたものを例に示しているが、スコロトロンチャージャーなど、他の構成の帯電装置を用いてもよい。
【0021】
画像形成ユニット103Y,C,M,Kの下方には、潜像書込ユニット200が設けられている。この潜像書込ユニット200は、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて、図示しない半導体レーザを駆動してY,M,C,K用の書込光Lbを出射しながら、図示しないポリゴンミラーによってそれら書込光Lbを主走査方向に偏向せしめて、潜像担持体としての感光体101Y,C,M,Kを光走査する。これにより、一様帯電後の感光体101Y,C,M,Kの表面にY,C,M,K用の静電潜像を書き込む。なお、光源は半導体レーザに限られるものではなく、例えばLED(light emitting diode)であってもよい。
【0022】
以下、画像形成ユニット103Y,C,M,Kの構成について、図2を参照しながら説明する。4つの画像形成ユニット103Y,C,M,Kは、使用するトナーの色が異なる点の他がほぼ同様の構成になっており、図2においては、4つのうち、何れか1つだけを示している。どの色のユニットであるのかを限定せずに、符号の末尾の添字(Y,C,M,K)を省略している。また、以下の説明においても、符号の末尾の添字(Y,C,M,K)の表記を省略している。
【0023】
画像形成ユニット103は、感光体101の周囲に、感光体101を帯電する帯電装置301、現像装置102、感光体クリーニング装置311などを具備している。中間転写ベルト105のループ内において、ベルトを介して感光体101に対向する位置には、1次転写ローラ106が配設されている。1次転写ローラ106の代わりに、導電性のブラシ形状のものや、非接触のコロナチャージャなどを採用してもよい。
【0024】
帯電装置301は、帯電ローラを採用した接触帯電方式のものであり、感光体101に接触して電圧を印加することにより感光体101の表面を一様に帯電する。この帯電装置301には、非接触のスコロトロンチャージャーなどを採用した非接触帯電方式のものも採用できる。
【0025】
現像装置102は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する図示しない現像剤を内包している。現像剤としては一成分現像剤を使用してもよい。現像装置102は、現像ケース内に設けられた攪拌部303と現像部304とに大別できる。攪拌部303では、二成分現像剤(以下、単に「現像剤」という)が攪拌されながら搬送されて現像剤担持体としての現像スリーブ305上に供給される。
【0026】
攪拌部303には、平行な2本のスクリュウ306が設けられている。これら2本のスクリュウ306の間には、両端部で互いが連通するように仕切るための仕切り板309が設けられている。また、現像スリーブ305や2本のスクリュウ306などを収納する現像ケース308には、現像装置102内の現像剤のトナー濃度を検出するためのトナー濃度センサ418が取り付けられている。一方、現像部304では、現像スリーブ305に付着した現像剤のうちのトナーが感光体101に転移される。
【0027】
現像部304には、現像ケースの開口を通して感光体101と対向する現像スリーブ305が設けられており、その現像スリーブ305内には図示しないマグネットが固定配置されている。また、現像スリーブ305に先端が接近するようにドクタブレード307が設けられている。本実施の形態では、このドクタブレード307と現像スリーブ305との間の最接近部における間隔が0.9[mm]となるように設定されている。この現像装置102では、現像剤を2本のスクリュウ306で攪拌しながら搬送循環し、現像スリーブ305に供給する。現像スリーブ305に供給された現像剤は、マグネットにより汲み上げて保持される。現像スリーブ305に汲み上げられた現像剤は、現像スリーブ305の回転に伴って搬送され、ドクタブレード307により適正な量に規制される。規制された現像剤は攪拌部303に戻される。
【0028】
このようにして感光体101と対向する現像領域まで搬送された現像剤は、マグネットにより穂立ち状態となり、磁気ブラシを形成する。現像領域では、現像スリーブ305に印加されている現像バイアスにより、現像剤中のトナーを感光体101上の静電潜像部分に移動させる現像電界が形成される。これにより、現像剤中のトナーは、感光体101上の静電潜像部分に転移し、感光体101上の静電潜像は可視像化され、トナー像が形成される。現像領域を通過した現像剤は、マグネットの磁力が弱い部分まで搬送されることで現像スリーブ305から離れ、攪拌部303に戻される。このような動作の繰り返しにより、攪拌部303内のトナー濃度が薄くなると、それをトナー濃度センサ418が検出し、その検出結果に基づいて攪拌部303にトナーが補給される。
【0029】
感光体クリーニング装置311は、クリーニングブレード312の先端を感光体101に押し当てられるように配置される、例えばポリウレタンゴム製のクリーニングブレード312を備えている。また、本実施形態では、クリーニング性能を高めるために感光体101に接触する導電性のファーブラシ310を併用している。このファーブラシ310には、図示しない金属製の電界ローラからバイアスが印加されており、その電界ローラには図示しないスクレーパの先端が押し当てられている。そして、クリーニングブレード312やファーブラシ310により感光体101から除去されたトナーは、感光体クリーニング装置311の内部に収容され、図示しない廃トナー回収装置にて回収される。
【0030】
画像形成ユニット103においては、回転駆動される感光体101の表面が帯電装置301によって一様帯電せしめられる。そして、プリントコントローラ410(図3参照)からの画像情報に基づいて、潜像書込ユニット200が書込光Lbによる光走査を行って感光体101の表面に静電潜像を書き込む。この静電潜像は、現像装置102によって現像されてY、M、C又はKの1次色からなる1次色トナー像になる。この1次色トナー像は、1次転写ニップ内で感光体101の表面から中間転写ベルト105のおもて面に1次転写される。1次転写ニップを通過した後の感光体101の表面に付着している転写残トナーは、感光体クリーニング装置311により除去される。
【0031】
先に示した図1において、画像形成ユニット103Y,C,M,Kは、以上のようなプロセスにより、感光体101Y,C,M,Kの表面にY,C,M,Kトナー像を形成する。これらY,C,M,Kトナー像は、Y,M,C,K用の1次転写ニップで中間転写ベルト105のおもて面に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト105のおもて面には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0032】
中間転写ベルト105のループ外には、中間転写ベルト105の周方向における全域のうち、支持ローラ112に対する掛け回し箇所に対して当接して2次転写ニップを形成している2次転写ローラ108が配設されている。この2次転写ローラ108には、トナーの帯電極性と逆極性の2次転写バイアスが印加される。2次転写ニップの下方には、レジストローラ対が配設されており、これは中間転写ベルト105の4色重ね合わせトナー像に同期させるタイミングで、記録紙115を2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップに進入した記録紙には、2次転写バイアスやニップ圧の作用により、中間転写ベルト105上の4色重ね合わせトナー像が記録紙上に一括2次転写される。そして、4色重ね合わせトナー像は、記録紙115の白色と相まってフルカラートナー像になる。なお、2次転写ローラ108の代わりに、スコロトロンチャージャーなどを用いてもよい。
【0033】
2次転写ローラ108の図中上方には、記録紙115上に転写されたフルカラートナー像を記録紙115に定着させるため定着装置111が設けられている。この定着装置111は、加熱ローラ117に加圧ローラ118を押し当てた構成となっている。また、定着装置111は、加熱ローラ117と圧ローラ118との当接による定着ニップを通過した後の記録紙Pに形成されているフルカラートナー像を被検対象として測色を行う測色手段としての分光計109を有している。かかる分光計109としては、特開2005−315883号公報で開示されているものを例示することができる。
【0034】
ベルトループ外には、ベルトクリーニング装置110が配設されている。このベルトクリーニング装置110は、中間転写ベルト105の周方向における全域のうち、支持ローラ113に対する掛け回し箇所に当接している。そして、2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト105に付着しているトナーを除去する。
【0035】
図3は、プリンタ100における各部の電気的な接続を示すブロック図である。プリンタ100は、制御装置として機能する本体制御部406を備えており、この本体制御部406が各部を駆動制御することにより電子写真のプロセスを用いた画像形成動作を制御する。本体制御部406は、各種演算や各部の駆動制御を実行するCPU(Central Processing Unit)402にバスライン409を介して、コンピュータプログラム等の固定的データを予め記憶するROM(Read Only Memory)405と各種データを書き換え自在に記憶するワークエリア等として機能するRAM(Random Access Memory)403とが接続されている。また、本体制御部406は、色測定手段である分光計109やトナー濃度センサ418、温湿度センサ417からの情報をデジタルデータに変換するA/D変換回路401も備えており、A/D変換回路401はCPU402にバスライン409を介して接続されている。
【0036】
本体制御部406には、PC(Personal Computer)411やスキャナ412、FAX(Facsimile)413等から送られた画像データを処理して露光データに変換するプリントコントローラ410が接続されている。また、本体制御部406には、モータやクラッチ415を駆動する駆動回路414が接続されている。さらに、本体制御部406には、画像形成部(画像形成ユニット103、1次転写装置106、潜像書込ユニット200、2次転写ローラ108など)に画像形成に必要な電圧を発生する高圧発生装置416も接続されている。
【0037】
また、本体制御部406には、パラメータ設定部404も接続されている。パラメータ設定部404は、安定した画像濃度を得るために、分光計109などで測定された情報を元にCPU402で計算された結果に基づいて、潜像書込ユニット200のレーザ強度、帯電装置301の帯電印加電圧、現像装置102の現像バイアス等の画像処理パラメータを変更する。
【0038】
プリンタ100によってPC411からの情報に従って印刷を行う場合、PC411にインストールされているプリンタドライバが用いられて画像データを含む印刷情報がPC411から送信される。画像処理手段に相当するプリントコントローラ410は、PC411から送信された画像データを含む印刷情報を受けて、画像データを処理して露光データに変換して、本体制御部406にプリント指令を出力する。プリント指令を受けた本体制御部406のCPU402は、ROM405のコンピュータプログラムに従うことにより、電子写真のプロセスを用いた画像形成制御処理を実行する。より詳細には、本体制御部406のCPU402は、駆動回路414を介してモータやクラッチ415を駆動させ、支持ローラ112が回転駆動して中間転写ベルト105が回転駆動する。また、本体制御部406のCPU402は、これと同時に、駆動回路414および高圧発生装置416、パラメータ設定部404を介して電子写真のプロセスを用いた画像形成部(画像形成ユニット103、1次転写装置106、潜像書込ユニット200、2次転写ローラ108など)を駆動する。
【0039】
本体制御部406は、上述のようにして中間転写ベルト105上に形成された4色重ね合わせトナー像が2次転写ニップに進入するタイミングに合わせて駆動回路414を介してモータやクラッチ415を駆動させて給紙装置(図示せず)を制御して記録紙115の供給を行う。給紙装置から供給された記録紙115は、中間転写ベルト105と2次転写ローラ108との間に送り込まれ、2次転写ローラ108により、中間転写ベルト105上の合成トナー像が記録紙115上に2次転写される。その後、記録紙115は、2次転写ローラ108に吸着した状態で定着装置111まで搬送され、定着装置111で熱と圧力が加えられてトナー像の定着処理が行われる。定着装置111を通過した記録紙115は、排紙トレイ(図示せず)に排出されスタックされる。なお、2次転写後の中間転写ベルト105上に残留した転写残トナーは、ベルトクリーニング装置110により除去される。
【0040】
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図4は、本体制御部406とその周囲構成とを示すブロック図である。同図において、本体制御部406は、測定値取得部406aと、補正量決定部406bと、アルゴリズム演算部406cと、領域探索部406dと、パラメータ設定部406eと、RGB/L*a*b*変換部406fと、サンプリング色データベース406gとを有している。これらの各部は、それぞれ、ハードウエアによって構成されているのではなく、本体制御部406のデータ記憶部に記憶しているプログラムによって構成される。また、プリントコントローラ410は、3Dのルックアップテーブル(以下3D−LUTと略す)410aと、アンダーカラー除去(以下UCRと略す)/グレーコンポーネット置換(以下GCRと略す)410bと、階調再現曲線(以下TRCと略す)を表す設定値を記憶部410cと、中間調処理部410dとを有している。
【0041】
図5は本体制御部406によって実施される色再現精度向上処理の処理フローを示すフローチャートである。色再現精度向上処理では、印刷ジョブを開始すると、印刷枚数を表すカウンタtを0に初期化する(ステップS101)。既定枚数印刷し終わったら終了し(ステップS102;YES)。規定枚数印刷し終わっていなければ、印刷枚数カウンタtを1だけ増やす(ステップS102;NO、ステップS103)。新しいt枚目の画像データについて印刷処理を実行し(ステップS104)、領域探索処理を実施する(ステップS105)。この領域探索処理は、これから出力する画像の画像情報に基づいて、画像の中から、多次色の測色に適した測色適応領域を探索する処理であり、領域探索部406d(図4参照)によって実施される。この領域探索処理に先立って、これから出力する画像の画像情報が、プリンタコントローラ410(図4参照)によって取得される。外部から送られてくる画像情報は、画像を構成する、マトリクス状に並ぶ複数の画素についてそれぞれR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の単色成分の明度を表した画素値を具備するものであるが、プリコントローラ410は、その画像情報を、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)の単色成分の明度を表した画素値を具備するものに変換する。そして、変換後の画像情報を、本体制御部406の領域探索部406dに受け渡す。
【0042】
そして、領域探索部406dは、その画像情報によって示される画像の全領域のうち、どの領域を測色対象となる測色適応領域にするのかを探索する。この探索の後、その画像を形成した記録紙が定着装置111(図1参照)内に送り込まれ、分光計109(図3参照)によって測色適応領域の測色を行う。この測色結果は、本体制御部406の測定値取得部406a(図4参照)によって取得される。
【0043】
測色適応領域の探索については、次のようにして行われる。即ち、画像情報によって表される画素マトリクスの所定位置にある画素を注目画素とし、その注目画素を中心とする所定サイズの領域を部分領域として抽出する。例えば、初回の抽出においては、例えば200dpiの解像度の画素マトリクスにおける左上から21列目で且つ21行目の画素を注目画素とし、この注目画素を中心とする41画素×41画素の5mm角程度の領域を部分領域として抽出する(300dpiでは一辺61画素の正方形に相当)。そして、抽出した部分領域における各画素の画素値(C,M,Y,K)を参照しながら、その部分領域全体としての濃淡の平坦さを示す平坦度を算出する。平坦度としては、様々な算出法によって求められたものを用いることが可能である。平坦度の第1例としては、次のような算出法によって求められたものを挙げることができる。即ち、まず、C,M,Y,Kについてそれぞれ、各画素の分散を求める。次いで、その分散の和に負の符号をつけたものを部分領域内の平坦度として求める。平坦度の第2例として、分散共分散行列の行列式を挙げることができる。具体的には、C,M,Y,Kについてそれぞれ、部分領域内の各画素における分散と共分散を求める。次いで、分散を対角成分に、共分散を非対角成分に配置した4×4の分散共分散行列を構築し、その行列式を計算する。そして、行列式の値に負の符号を付けたものを平坦度として求めてもよい。分散共分散行列の行列式を用いることで、CMYK空間での分布の広がりを評価することができるからである。先に説明した第1例の平坦度に比べて、異なる成分間の色の広がりも評価することができる点が優れている。また、平坦度の第3例として、色の周波数特性を利用したものを挙げることができる。具体的には、部分領域内の各画素値を用いてフーリエ変換を行い、特定周波数のフーリエ係数の絶対値の二乗の和を求める。この和に負の符号を付けて平坦度とする。特定周波数については複数の周波数を用いることができる。第1例の平坦度では、中間調処理された画像に対しては中間調処理のパターンの影響を受けて、平坦である領域を識別できないケースがある。これに対し、第3例の平坦度では、特定周波数のフーリエ係数の絶対値の二乗の和を用いることで、中間調処理の影響を排した平坦度を算出することができる。平坦度は、これまで説明した第1例〜第3例のものに限られるものではなく、公知の平坦度算出技術を用いることが可能である。
【0044】
抽出した部分領域の平坦度を求めると、次に、全ての部分領域を抽出したか否か(画像の全領域について部分領域の抽出が完了したか否か)、を判断する。そして、まだ抽出していない部分領域があると判断した場合には、注目画素の位置を右方向に1画素分だけずらして、それを中心とする41画素×41画素の5mm角程度の領域を部分領域として抽出する。そして、同様にして、抽出した部分領域の色の平坦度を算出する。以降、3、4、5・・・n個目の部分領域の抽出の際に、それぞれ注目画素の位置を右方向に1画素分だけずらしていく。そして、注目画素の列方向の位置をマトリクスの右端から左に向けて21番目の位置までずらした後は、注目画素の列方向の位置をマトリクスの左端から右に向けて21番目の位置まで戻すとともに、行方向の位置を1画素分だけ下方向にずらす。その後、注目画素の位置を1画素分ずつ右にずらす処理を繰り返す。以上のようにして、注目画素の位置をラスタ走査のように順次ずらしていって、画像の全領域を網羅する。
【0045】
なお、注目画素を1画素分ずつずらすのではなく、抽出した部分領域同士の縁部を互いに重ねないように各部分領域を抽出してもよい。例えば、21列目、21行目の注目画素を中心とする41画素×41画素の大きさの部分領域を抽出した後には、62列目、62行目の注目画素を中心とする41画素×41画素の大きさの部分領域を抽出するのである。
【0046】
画像の全領域からの部分領域の抽出や平坦度の算出を行うと、全ての部分領域の中から平坦度の最も優れたものを特定し、その平坦度について、所定の基準平坦度よりも優れているか否かを判定する。そして、優れている場合には、その部分領域を測色に適した測色適応領域とする。
【0047】
このような領域探索処理により、例えば、図6に示すような画像の場合には、図7に符号A1〜A27で示される27個の測色適応領域が探索される。
【0048】
領域探索処理が終わると、測定値取得部406a(図4参照)が紙に出力された印刷画像の色(L*a*b*)を測定し、図5のステップS105で計算された測色適応領域における測色データを取得する(ステップS106)。次に、測色データをサンプリング色データベース406g(図4参照)に保存する(ステップS107)。このサンプリング色データベース406gは、t枚目での出力画像について、サンプリング位置・色:S(t)、L*a*b*目標値:R(t)、出力画像の測定値:M(t)を保存する。複数枚のトナー像を測色して、各測色データをサンプリング色データベース406gに保存することにより、濃度が高い色から低い色まで万遍なく、かつ大量の画像情報を使うことができる。よって、階調再現曲線の滑らかさを保持して、かつ理想の階調再現曲線との差の変動を抑制することができる。そのため、視認できるような階調の不連続が生じたり、補正の前後で視認できるような色変動が生じたりすることを防ぐことができる。
【0049】
次に、t枚目での出力画像において、サンプリング位置・色:S(t)、L*a*b*目標値:R(t)、出力画像の測定値:M(t)について以下に概説する。
サンプリング位置・色:S(t)について、領域探索部406dで、t枚目での出力画像について決定したN(t)個のサンプリングする位置・色:S(t)は以下の数1の式(1)で表され、サンプリング色データベース406gに保存される。
【0050】
【数1】
【0051】
ここで、(xi(t),yi(t))は、時間tにおいて、出力画像上のi番目のサンプリング位置(測定の中心点の座標)、(ci(t),mi(t),yi(t),ki(t))は対応するデジタルデータでのCMYK濃度である。
【0052】
また、L*a*b*目標値:R(t)について、アルゴリズム演算部406cによって、元の画像データ(RGB)から上記S(t)に記録されているサンプリング位置を参照して決められるL*a*b*目標値R(t)は以下の数2の式(2)で表され、サンプリング色データベース406gに保存される。
【0053】
【数2】
【0054】
ここで、
【0055】
【数3】
【0056】
は、時間tにおいて出力画像上のi番目のサンプリング位置(xi(t),yi(t))におけるRGB値を変換して得られるL*a*b*目標値である。
【0057】
更に、出力画像の測定値:M(t)について、上記S(t)に記録されているサンプリング位置を参照して測定値取得部406a(図4参照)で取得したユーザ画像の紙出力から測色された測定値M(t)は以下の数4の式(3)で表され、サンプリング色データベース406gに保存される。
【0058】
【数4】
【0059】
ここで、(Li(t),ai(t),bi(t))は、時間tにおいて出力画像上のi番目のサンプリング位置(xi(t),yi(t))におけるL*a*b*測定値である。
【0060】
次に、図5のステップS108で、tが予め決められている制御周期P0で割り切れるかどうかをチェックする。もし、割り切れるならば、過去P0枚のデータ(t,t−1,...,t−P0+1)について、サンプリング色データベース406g(図4参照)から、サンプリング位置・色:S(t)、L*a*b*目標値:R(t)、出力画像の測定値:M(t)を取得する(ステップS108;YES、ステップS109)。割り切れなければ、ステップS103で印刷画像の枚数のカウンタtを1増やし、未だ出力するプリントが残っている場合(ステップS102;NO)にはステップS103に戻り、次の画像データについて領域探索処理を実行する。サンプリング色データベース406gから測色データを取得すると(ステップS109)、補正量決定部406b(図4参照)が補正量決定処理を実施して(ステップS110)、Y,M,C,Kにおける階調再現曲線TRCを表す設定値に対する補正量を決定する。補正量決定処理で決定された階調再現曲線TRCを表す設定値に対する補正量と、階調再現曲線TRCを表す設定値とに基づいて、パラメータ設定部406e(図4参照)が制御パラメータ補正処理を実施して階調再現曲線TRCを表す設定値を補正する(ステップS111)。その後、ステップS102に戻り次の画像データについて処理を実行する。
【0061】
ここで、図5のステップS110の補正量決定処理について以下に詳細に説明する。
CMYKの各原色の濃度(面積比)がそれぞれ0からL−1のLレベルに量子化されているとする。但し、0はブランク、L−1はソリッド、例えばLは256である。階調再現曲線は、CMYKの各原色について独立に決められる次の数5の式(4)に示すような関数τc,τm,τy,τkで表される。
【0062】
【数5】
【0063】
入力0(ブランク)とL−1(ソリッド)に対する階調再現曲線の出力は、それぞれ、0とL−1に固定されている。時間tにおけるCMYKの各原色についての階調再現曲線を表す各設定値をτc(t),τm(t),τy(t),τk(t)とする。今、階調再現曲線を表す設定値の変動量δc,δm,δy,δkを「TRC制御」により次の数6の式(5)によって決める。
【0064】
【数6】
すると、時間t+1における階調再現曲線を表す各設定値は、次の数7の式(6)に示すように決められる。
【数7】
【0065】
図8は時間tとt+1の各階調再現曲線と補正量δを示す特性図である。同図はL=256の場合の時間tとt+1での階調再現曲線τ(t)とτ(t+1)、変動量δの例である。
【0066】
また、CMYKデータ(c,m,y,k)について,時間tにおける紙上での測定値が(L,a,b)であるとする。階調再現曲線を表す設定値を変動量δc,δm,δy,δkだけで変動させた後、時間t+1における推定値
【0067】
【数8】
【0068】
は、以下の数9の式(7)、
【0069】
【数9】
で与えられる。ここで、数9の式(7)の
【0070】
【数10】
【0071】
は、L*a*b*の各成分のCMYK濃度(c,m,y,k)についての偏微分係数、すなわちCMYK濃度(c,m,y,k)の各成分を微小に変化させたときのL*a*b*の各成分の変化量を集めたJacobian行列である。この行列は、CMYKの入力値を様々に変えたときの多次色トナー像の測色値のデータから求めればよい。
【0072】
サンプリング色データベース406g(図4参照)に記録したデータについて、CMYKデジタルデータ空間(dS(t)の(ci(t),mi(t),yi(t),ki(t))成分)でクラスタリングを行い、CMYK(デジタルデータ)、L*a*b*(目標値・測定値)のクラスタ平均を使ってTRC制御を起動する。感光体ドラムの偏心による面内色変動や測定誤差の影響を抑えるために、CMYKの値をセル状に区分して、TRC制御点を各セルの中心に代表させて計算する。また、セル内のデータが多ければ誤差は相殺されるので、信頼度は高くなる。セル内のデータ数に応じてセルへ信頼度を付与する仕組みを導入する。
【0073】
図9のように、CMYKの各原色について、濃度(0〜L−1)をQ等分(QはLの約数)したCMYK4次元空間でのQ4個のセル(4次元長立法体)を考える。図9にはCMYK濃度のセル分割と中心点を示している。CM空間について、Q=4分割した例である。TRC制御点を各セルの中心点(黒丸)で代表させる。
【0074】
【数11】
【0075】
セルP(qc,qm,qy,qk)の中心は次の数12の式(10)で与えられる。
【0076】
【数12】
【0077】
CMYKの値が、セルP(qc,qm,qy,qk)にあるようなサンプリング色についてはTRC変動量を、セルP(qc,qm,qy,qk)の中心点に相当する格子点(10)に代表させて計算する。図10は、L=256、Q=16のときのTRC制御点と変動量の例である。
【0078】
今、t0枚目の印刷の後、サンプリング色データベース406g(図4参照)に保持されている。そして、補正量決定部406bにおいて、過去P0枚の画像データ(t=t0,t0−1,...,t−P0+1)についてのサンプリング色S(t)、L*a*b*目標値R(t),出力画像の測色値M(t)を使って、4Q個のTRC変動量を次の数13の式(11)で表す
【0079】
【数13】
【0080】
を変数とする次の数14の式(12)の評価関数Jを定義する。
【0081】
【数14】
【0082】
ここで、下記の数15はx以下の最大の整数を表す。
【0083】
【数15】
【0084】
そして、上記の数14の式(12)の評価関数Jの右辺第1項は目標値と時間t+1における推定値との誤差を最小化するための項である。また、第2項は階調再現曲線TRCを表す設定値に対する変動量を滑らかさにするための項で、階調再現曲線TRCを表す設定値に対する変動量の2次微分(離散形)の二乗和である。数14の式(12)の評価関数Jを最小にするようなδを計算する。
【0085】
【数16】
【0086】
また、数16の式(13)において、下記の数17の式(14)のヤコビアン行列は、数18の式(15)での値を計算する。
【0087】
【数17】
【0088】
【数18】
【0089】
【数19】
【0090】
上記数19(Tは行列の転置)は、時間tにおけるCMYKデータ(ci(t),mi(t),yi(t),ki(t))についての測定値と目標値との偏差である。Qを十分に大きく選べば(例えば、Q=16)、数18の式(15)のCMYKについての測定値と目標値との偏差の推定値として用いることができる。また、数14の式(12)の評価関数Jを最小化では、セル内のデータ数が多いほど、そのセルの中心点への重みが大きくなる。
【0091】
w(t−t0)は、データに重み付けして、より最近のデータの寄与がより大きくなるようにするための重み変数である。t=t0+1→t=t0+Tとき、w(t)が単調増加するような関数を選ぶ。例えば、図11のような単調増加凹関数(tが増えると、微係数が0に近づくような関数、あるいは上に凸な関数)のようなものにすればよい(図11では、c=0.07、t0=100)。
【0092】
w(t−t0)=1−exp(−c(t−t0)) ・・・(16)
但し、cは正の整数(10/T程度)
上記数14の式(12)の最小化問題は、δc(c),δm(m),δy(y),δk(k)についての2次形式であるので、標準的な最適化計算法で解くことが可能である。また、下記の数20の式(17)の以外のδc(c),δm(m),δy(y),δk(k)の値は、補間によって計算する。
【0093】
【数20】
【0094】
次に、図5のステップS111のパラメータ補正について概説する。
図5のステップS110で決められた補正量と、階調再現曲線の設定値とに基づいて、実際の階調再現曲線を表す設定値を下記の数21の式(18)のように更新する。
【0095】
【数21】
【0096】
図5のステップS111のパラメータ補正を行った後、ステップS102に戻る。
【0097】
このように、濃度レベルをQ分割してできるCMYK4次元空間の超立方体の中心点のTRC変動を使った計算方法により、次のような利点がある。
(1)測定データを平均化できるため、感光体ドラムの偏心による面内色変動や測定誤差の影響を打ち消すことができる。したがって、制御の精度を向上させることができると同時に階調再現曲線の滑らかさを保持して、かつ急激に変動を抑制することができる。そのため、視認できるような階調の不連続が生じたり、視認できるような色変動が生じたりすることを防ぐことができる。
(2)TRC制御の制御点を均等に配置できて、かつ計算時間を縮減できる。画像データに依らず、CMYK合わせて4Q個の量を計算すればよい(例えばQは16)。
【0098】
ここで、面内変動ΔE(μ+3σ)、サンプリング色数とTRC推定誤差(256レベル)の関係を図12に示す。面内変動が0のときには、サンプリング色数に関係なく、推定誤差が1.8程度であり、階調レベル(256)で正規化すると、誤差は0.7%程度である。N=2000では、面内変動が増加しても推定誤差はほとんど変わらない。しかし、サンプリング色数が少ないほど、面内変動の増加に伴う推定精度の劣化が顕著となる。色安定性の最終目標がΔE≦3であるので、面内変動もその程度に抑えられると想定すると、図12から、N=200程度のサンプリング色で、TRC推定精度を約0.7%に維持できることになる。
【0099】
以上説明したように、実施形態によれば、制御装置たる本体制御部406が、画像情報によって示される画像の中から、多次色を測色するのに適した測色適応領域を探索する領域探索処理を実施する。そして、画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の測色適応領域を測色手段たる分光計109によって測色した測色結果である測定色(Li(t),ai(t),bi(t))と、測色適応領域での各色トナー像の面積比に比例した濃度とを各画像情報毎にそれぞれサンプリング色データベース406gに保存する。そして、サンプリング色データベース406gに保存された各測色結果である各測定色(Li(t),ai(t),bi(t))を平均化した測定色を求める。また、サンプリング色データベース406gに保存された各濃度を平均化した濃度を求める。作像手段によって形成可能なトナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色とプリントコントローラ410の階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数の数式モデルであるアルゴリズム、平均化した測定色と参照色(Li,ai,bi)との差分、平均化した濃度及び階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、差分をより小さくするための階調再現曲線を表す設定値の補正量(δc(t),δm(t),δy(t),δk(t))を決定し、その補正量に基づいて階調再現曲線を表す設定値を補正して多次色トナー像の色再現精度の向上を図る色再現精度向上処理を実施する。これにより、テストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、多次色を精度良く再現することができる。そして、各画像情報毎の各測色結果である測定色と各濃度とをそれぞれ平均化して階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定することにより、色の濃度分布が偏っている画像情報を用いても実際の階調再現曲線の滑らかさは失われないとともに、感光体ドラムの偏心による面内色変動や測定誤差の影響を打ち消すことができる。これにより、階調再現曲線の滑らかさを保持して、かつ、階調再現曲線の急激な変動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0100】
100 プリンタ
109 分光計
401 A/D変換回路
402 CPU
403 RAM
404 パラメータ設定部
405 ROM
406 本体制御部
406a 測定値取得部
406b 補正量決定部
406c アルゴリズム演算部
406d 領域探索部
406e パラメータ設定部
406f RGB/L*a*b*変換部
406g サンプリング色データベース
410 プリントコントローラ
410a 3D−LUT
410b UCR/GCR
410c TRC
410d 中間調処理部
411 PC
412 スキャナ
413 FAX
414 駆動回路
415 モータ・クラッチ
416 高圧発生装置
417 温湿度センサ
418 トナー濃度センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【特許文献1】特開2002−033935号公報
【特許文献2】特開2004−229294号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置、並びにこれに用いられる制御装置及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式によってトナー像を形成する画像形成装置においては、温湿度等の環境が変化したり、連続プリント動作を長期間に渡って実施したりすると、トナー像に対する単位面積あたりのトナー付着量が変化して画像濃度を変動させてしまうことがある。カラー画像を形成するカラー画像形成装置では、複数の1次色でそれぞれトナー付着量が変動すると、多次色の色調(例えばL*a*b*表色系におけるL*値とa*値とb*値との組合せ)が乱れてしまう。具体的には、カラー画像形成装置によって再現される色は、1次色と多次色とに大別される。1次色は、1種類のトナーだけによって表現される色である。例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)という4種類のトナーを用いる構成においては、Y,M,C,Kトナーのうち、何れか1つだけによって表現される色が1次色である。これに対し、多次色は、2種類以上のトナーを使用して表現される色である。多次色については、複数の1次色トナー像を重ねることで再現するのであるが、それぞれの1次色トナー像に対するトナー付着量が変動すると、それらの重ね合わせによる多次色トナー像の色調が乱れてしまうのである。
【0003】
そこで、特許文献1に記載のカラー調整の較正を行うカラーマーキング装置においては、多次色、多階調のテストパターンをテストプリント紙上に出力し、その反射率のデータから濃度を類推して画像濃度等に関する画像処理条件を制御するようになっている。即ち、ユーザの命令に基づく画像を出力したプリント紙とは別にテストプリント紙上に、画像処理パラメータ、具体的には階調再現曲線を決定するためのキャリブレーション用のテストパターンを複数形成する。そして、各テストパターンのカラー基準のL*値、a*値、b*値を検出し、その各結果に応じて階調再現曲線を補正する。その後、補正された階調再現曲線に基づいて多次色、多階調のカラートナー像を形成する。これにより、画像形成プロセスの状態が変動した場合にでも、紙面上に出力される色の変動を抑制し、安定した画像品質を得ることができる。
【0004】
ところで、近年においては、チラシ、カタログ、報告書、請求書などの大量のカラードキュメントを高速に出力するカラーオンデマンドプリントを実現するカラープロダクションプリンタが開発されている。このようなカラープロダクションプリンタは、例えば数千万件分の電話料金の請求書や領収書を1週間程度の発行期限で発行するような場合に利用されるものであって、1週間という期間においては昼夜を問わない状況で連続印刷を行う。言い換えれば、1分間に数百枚の高速プリントを数十時間の単位で連続運転する。このような状況から、高速タイプのカラープロダクションプリンタは、連続稼働中に装置を止めることは絶対にできない、という特性を有している。これは、装置を止めることで膨大な部数の発行期限に間に合わなくなることが生じるためである。この点で、高速タイプのカラープロダクションプリンタは、オフィスに設置されるようなプリンタ(MFP:Multifunction Peripheral)とは技術的に大きく異なるものとなっている。
【0005】
上記特許文献1のような画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値の制御では、ユーザの命令に基づく画像を出力したプリント紙とは別に、前述のテストパターンを出力したテストプリント紙を排出することになるため、両者の仕分け作業をユーザに強いることになる。このような仕分け作業は非常に手間がかかるので、テストトナー像を出力する構成を採用することは現実的ではない。このため、上記特許文献1のような階調再現曲線を表す設定値の制御は頻繁に行うことはできない。特に、上述したような高速タイプのカラープロダクションプリンタのように1分間に数百枚の高速プリントを数十時間の単位で連続運転するような場合には、数分に1回の頻度でプリント動作を止めて階調再現曲線を表す設定値の制御を実行することになる。これでは上述したような連続稼働中に装置を絶対に止めることはできないという高速タイプのカラープロダクションプリンタの特性に反することになる。また、階調再現曲線を表す設定値の制御を実行せずに連続稼動してしまうと、プロセスの状態が大きく変わってしまい、画質が劣化してしまう。すなわち、高速タイプのカラープロダクションプリンタに対しては、プリント動作を止めることなく、しかも、常時、リアルタイムに階調再現曲線を表す設定値の制御を実行することができるような新しい構成が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2によれば、テストパターンを、テストプリント紙上に作成する必要がある。このため、画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値の制御による装置のダウンタイムを短くするためには、テストパターン作成の周期を長くしなければならない。一方で、安定した画像品質を得るためには、テストパターンを用いた画像形成のための階調再現曲線を表す設定値の制御の制御を頻繁に行う必要がある。このようなトレードオフは、テストパターンをテストプリント紙上に作成する限り避けることができない。
【0007】
このような問題を解決するために、本発明者らは、特願2010−189881(以下先願と称す)で、テストパターンを出力したテストプリント紙を使わずにユーザの命令に基づく画像情報から測色するのに適した測色適応領域を探索し、作像手段によって形成される複数の多次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値との関係を表すアルゴリズムと、画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の測色適応領域を測色した測色結果と本来の色との差分と、画像処理パラメータの階調再現曲線を表す現在の設定値とに基づいて、差分をより小さくするための画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する制御装置を提案している。この先願の制御装置によれば、テストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、多次色を精度良く再現することができる。
【0008】
しかしながら、テストパターンと違ってユーザの命令により出力される画像情報における色の濃度分布が偏っていることが多い。すなわち、テストパターンでは濃度が高い色から低い色まで満遍なく含まれているが、ユーザの命令により出力される画像情報における色の濃度分布では必ずしも満遍なく含まれているとは限らない。また、ユーザの命令により出力される複数の画像情報においても色の濃度分布が相違することが多い。上記先願ではユーザの命令により出力される1つの画像情報において探索した測色適応領域を測色した測色結果と本来の色との差分をより小さくするような画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定している。このため、色の濃度分布が偏っている画像情報に基づいて実際の画像処理パラメータの階調再現曲線を表す設定値を補正すると、補正した実際の階調再現曲線が色の濃度分布の偏りを含むことになり、実際の階調再現曲線の滑らかさが失われる。これにより、補正された実際の階調再現曲線に基づいて出力した画像に、視認できるような階調の不連続が生じる。
上記測色結果には感光体ドラムの偏心による面内色変動やセンサの測定誤差の影響も受けている。面内色変動やセンサの測定誤差が入った測色結果に基づいて実際の階調再現曲線を補正すると、補正した実際の階調再現曲線と理想の階調再現曲線との間に差が生じる。この差は面内色変動やセンサの測定誤差の大きさに応じて変わる。このため、面内色変動やセンサの測定誤差の大きさが急激に変動すると、補正した実際の階調再現曲線と理想の階調再現曲線との差も急激に変化する。これにより、補正された実際の階調再現曲線に基づいて出力した画像に、視認できるような色変動が生じる。
【0009】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、テストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、多次色を精度良く再現することができ、かつ、階調再現曲線の滑らかさを保持して階調再現曲線の急激な変動を抑制することができる画像形成装置、並びにこれに用いられる制御装置及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、を備える画像形成装置に搭載され、前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御装置において、前記画像情報によって示される画像の中から、測色するのに適した測色適応領域を探索する領域探索処理を実施する領域探索手段と、前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の複数の前記測色適応領域をそれぞれ測色する測色手段と、前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の前記測色適応領域を測色した測色結果である測定色及び前記多次色トナー像における各1次色トナー像の前記測色適応領域での面積比に比例した濃度を各画像情報毎にそれぞれ保存する保存手段と、前記保存手段に保存された前記各測定色及び前記各濃度をそれぞれ平均化する平均化手段と、前記領域探索処理を実施した後、前記作像手段によって形成される複数の1次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と前記作像手段の前記階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数のアルゴリズム、前記平均化手段によって平均化された前記濃度、前記平均化手段によって平均化された前記測定色と前記参照色との差分及び前記階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、前記差分をより小さくするための前記階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する補正量決定手段と、決定した前記補正量に基づいて前記階調再現曲線を表す設定値を補正する補正手段と、を具備することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御手段とを備える画像形成装置において、前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像を測色する測色手段を設けるとともに、前記制御手段として、請求項1の画像形成制御装置を用いたことを特徴とするものである。
更に、請求項3の発明は、画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、を備える画像形成装置に搭載され、前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御方法において、前記画像情報によって示される画像の中から、測色するのに適した測色適応領域を探索する領域探索処理を実施する領域探索工程と、前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の複数の前記測色適応領域をそれぞれ測色する測色工程と、前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の前記測色適応領域を測色した測色結果である測定色及び前記多次色トナー像における各1次色トナー像の前記測色適応領域での面積比に比例した濃度を各画像情報毎にそれぞれ保存手段に保存する保存工程と、前記保存手段に保存された前記各測定色及び前記各濃度をそれぞれ平均化する平均化工程と、前記領域探索処理を実施した後、前記作像手段によって形成される複数の1次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と前記作像手段の前記階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数のアルゴリズム、平均化された前記濃度、平均化された前記測定色と前記参照色との差分及び前記階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、前記差分をより小さくするための前記階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する補正量決定工程と、決定した前記補正量に基づいて前記階調再現曲線を表す設定値を補正する補正工程と、を実施することを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、測色するためのテストプリント紙用の画像を形成して測色する代わりにユーザの命令に基づき出力する画像に対して測色に適した測色適応領域を探索する。探索した多次色トナー像の測色適応領域を測色し、その測色結果である各画像情報毎の各測定色及び各画像情報毎の各濃度をそれぞれ保存手段に保存する。保存手段に保存された各濃度及び各測定色をそれぞれ平均化する。そして、複数のアルゴリズムは作像手段によって形成される複数の1次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と画像情報処理手段の階調再現曲線を表す設定値との関係を表す。このアルゴリズム、平均化した濃度、平均化した測定色と参照色との差分及び階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、上記差分をより小さくするための階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する。このようにして、実際に出力した多次色を測色するためのテストトナー像を形成することなく、ユーザの命令に基づいて形成した画像の測色適応領域を測色した結果に基づいて、階調再現曲線を表す設定値の適切な補正量を決定する。決定した補正量に基づいて階調再現曲線を表す設定値を補正する。これにより、テスト画像を形成することなく階調再現曲線を表す設定値を適切に補正することで、テスト画像を出力したテストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、色を精度良く再現することができる。
そして、複数枚の多次色トナー像について保存手段に保存された測色適応領域の面積比に比例した各濃度及び各測定色をそれぞれ平均化して各画像情報における色の濃度分布の偏りを均すことで、色の濃度分布が偏っている画像情報を用いても補正した階調再現曲線の滑らかさは失われない。そして、感光体ドラムの偏心による面内色変動や測定誤差の影響も平均化することでこれらの影響を少なくすることができる。これにより、階調再現曲線の滑らかさを保持して、かつ、階調再現曲線の急激な変動を抑制することができる。視認できるような階調の不連続が生じたり、視認できるような色変動が生じたりすることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、テストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、多次色を精度良く再現することができ、かつ、階調再現曲線の滑らかさを保持して階調再現曲線の急激な変動を抑制することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図である。
【図2】実施形態に係るプリンタの画像形成ユニットを示す拡大構成図である。
【図3】実施形態に係るプリンタにおける各種機器の電気的な接続を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係るプリンタの本体制御部及びその周囲構成を示すブロック図である。
【図5】本体制御部によって実施される色再現精度向上処理の処理フローを示すフローチャートである。
【図6】ユーザから供される画像情報によって表される画像の一例を示す模式図である。
【図7】ユーザから供される画像情報によって表される画像から探索された測色適応領域を示す模式図である。
【図8】L=256の場合の時間tとt+1での階調再現曲線τ(t)とτ(t+1)、変動量δの関係を示す特性図である。
【図9】CM空間で4分割したセル上の濃度と各セルの中心点を示す模式図である。
【図10】L=256の場合の時間tとt+1での階調再現曲線の制御点と変動量δの関係を示す特性図である。
【図11】t=100の場合の画像への重み関数の様子を示す特性図である。
【図12】面内変動に対する階調再現曲線推定誤差の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態について説明する。
先ず、実施形態に係る画像形成装置の基本的な構成について説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、請求書などの大量のカラードキュメントを高速に出力するカラーオンデマンドプリントを実現するカラープロダクションプリンタである。このようなカラープロダクションプリンタは、例えば数千万件分の電話料金の請求書や領収書を1週間程度で発行するような場合に利用されるものであって、1週間という期間で昼夜を問わない状況で連続印刷を行う(言い換えれば、1分間に数百枚の高速プリントを数十時間の単位で連続運転する)。
【0015】
図1は実施形態に係るカラープロダクションプリンタの要部を示す概略構成図である。この図1においては、カラープロダクションプリンタ100(以下、単にプリンタ100という)の全体のうち、露光、帯電、現像、転写、定着を行う電子写真のプロセスを用いた画像形成工程部分(プロセスエンジン部)のみを示している。プリンタ100には、図1に示した構成部材の他に、記録材である記録紙115の供給を行う給紙装置、記録紙115を手差し給紙させるための手差しトレイ、及び画像形成済みの記録紙115が排紙される排紙トレイなど(いずれも図示せず)が設けられている。
【0016】
プリンタ100には、中間転写体である無端ベルト状の中間転写ベルト105が設けられている。中間転写ベルト105は、4つの支持ローラ112、113、114、119に張架された状態で、駆動ローラとしての機能を有する支持ローラ112の回転駆動によって図中反時計周り方向に無端移動せしめられる。
【0017】
中間転写ベルト105の張架部分には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色用の4つの画像形成ユニット103Y,C,M,Kが配設されている。これら画像形成ユニット103Y,C,M,Kは、使用するトナーの色が異なる点の他が、互いにほぼ同じ構成になっている。なお、符号の末尾に付したY,C,M,Kという添字は、Y,C,M,K用の部材や装置であることを示している。
【0018】
画像形成ユニット103Y,C,M,Kは、ドラム状の感光体101Y,C,M,K、現像装置102Y,C,M,K、感光体を一様帯電せしめる帯電装置などを具備している。中間転写ベルト10のループ内において、感光体101Y,C,M,Kとベルトを介して対向する位置には、1次転写ローラ106Y,C,M,Kが配設されており、ベルトを感光体101Y,C,M,Kに押圧している。これにより、感光体101Y,C,M,Kと中間転写ベルト105とが当接するY,C,M,K用の1次転写ニップが形成されている。
【0019】
中間転写ベルト105の上方には、現像装置102Y,C,M,K内に補給するためのY,C,M,Kトナーを収容するトナーボトル104Y,C,M,Kが配設されている。
【0020】
画像形成ユニット103Y,C,M,Kの帯電装置は、潜像担持体としての感光体101Y,C,M,Kの表面をトナーの帯電極性と同極性に一様帯電せしめるものである。同図においては、帯電装置として、帯電バイアスが印加される帯電ブラシローラを感光体101Y,C,M,Kに当接又は近接させたものを例に示しているが、スコロトロンチャージャーなど、他の構成の帯電装置を用いてもよい。
【0021】
画像形成ユニット103Y,C,M,Kの下方には、潜像書込ユニット200が設けられている。この潜像書込ユニット200は、外部のパーソナルコンピュータ等から送られてくる画像情報に基づいて、図示しない半導体レーザを駆動してY,M,C,K用の書込光Lbを出射しながら、図示しないポリゴンミラーによってそれら書込光Lbを主走査方向に偏向せしめて、潜像担持体としての感光体101Y,C,M,Kを光走査する。これにより、一様帯電後の感光体101Y,C,M,Kの表面にY,C,M,K用の静電潜像を書き込む。なお、光源は半導体レーザに限られるものではなく、例えばLED(light emitting diode)であってもよい。
【0022】
以下、画像形成ユニット103Y,C,M,Kの構成について、図2を参照しながら説明する。4つの画像形成ユニット103Y,C,M,Kは、使用するトナーの色が異なる点の他がほぼ同様の構成になっており、図2においては、4つのうち、何れか1つだけを示している。どの色のユニットであるのかを限定せずに、符号の末尾の添字(Y,C,M,K)を省略している。また、以下の説明においても、符号の末尾の添字(Y,C,M,K)の表記を省略している。
【0023】
画像形成ユニット103は、感光体101の周囲に、感光体101を帯電する帯電装置301、現像装置102、感光体クリーニング装置311などを具備している。中間転写ベルト105のループ内において、ベルトを介して感光体101に対向する位置には、1次転写ローラ106が配設されている。1次転写ローラ106の代わりに、導電性のブラシ形状のものや、非接触のコロナチャージャなどを採用してもよい。
【0024】
帯電装置301は、帯電ローラを採用した接触帯電方式のものであり、感光体101に接触して電圧を印加することにより感光体101の表面を一様に帯電する。この帯電装置301には、非接触のスコロトロンチャージャーなどを採用した非接触帯電方式のものも採用できる。
【0025】
現像装置102は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する図示しない現像剤を内包している。現像剤としては一成分現像剤を使用してもよい。現像装置102は、現像ケース内に設けられた攪拌部303と現像部304とに大別できる。攪拌部303では、二成分現像剤(以下、単に「現像剤」という)が攪拌されながら搬送されて現像剤担持体としての現像スリーブ305上に供給される。
【0026】
攪拌部303には、平行な2本のスクリュウ306が設けられている。これら2本のスクリュウ306の間には、両端部で互いが連通するように仕切るための仕切り板309が設けられている。また、現像スリーブ305や2本のスクリュウ306などを収納する現像ケース308には、現像装置102内の現像剤のトナー濃度を検出するためのトナー濃度センサ418が取り付けられている。一方、現像部304では、現像スリーブ305に付着した現像剤のうちのトナーが感光体101に転移される。
【0027】
現像部304には、現像ケースの開口を通して感光体101と対向する現像スリーブ305が設けられており、その現像スリーブ305内には図示しないマグネットが固定配置されている。また、現像スリーブ305に先端が接近するようにドクタブレード307が設けられている。本実施の形態では、このドクタブレード307と現像スリーブ305との間の最接近部における間隔が0.9[mm]となるように設定されている。この現像装置102では、現像剤を2本のスクリュウ306で攪拌しながら搬送循環し、現像スリーブ305に供給する。現像スリーブ305に供給された現像剤は、マグネットにより汲み上げて保持される。現像スリーブ305に汲み上げられた現像剤は、現像スリーブ305の回転に伴って搬送され、ドクタブレード307により適正な量に規制される。規制された現像剤は攪拌部303に戻される。
【0028】
このようにして感光体101と対向する現像領域まで搬送された現像剤は、マグネットにより穂立ち状態となり、磁気ブラシを形成する。現像領域では、現像スリーブ305に印加されている現像バイアスにより、現像剤中のトナーを感光体101上の静電潜像部分に移動させる現像電界が形成される。これにより、現像剤中のトナーは、感光体101上の静電潜像部分に転移し、感光体101上の静電潜像は可視像化され、トナー像が形成される。現像領域を通過した現像剤は、マグネットの磁力が弱い部分まで搬送されることで現像スリーブ305から離れ、攪拌部303に戻される。このような動作の繰り返しにより、攪拌部303内のトナー濃度が薄くなると、それをトナー濃度センサ418が検出し、その検出結果に基づいて攪拌部303にトナーが補給される。
【0029】
感光体クリーニング装置311は、クリーニングブレード312の先端を感光体101に押し当てられるように配置される、例えばポリウレタンゴム製のクリーニングブレード312を備えている。また、本実施形態では、クリーニング性能を高めるために感光体101に接触する導電性のファーブラシ310を併用している。このファーブラシ310には、図示しない金属製の電界ローラからバイアスが印加されており、その電界ローラには図示しないスクレーパの先端が押し当てられている。そして、クリーニングブレード312やファーブラシ310により感光体101から除去されたトナーは、感光体クリーニング装置311の内部に収容され、図示しない廃トナー回収装置にて回収される。
【0030】
画像形成ユニット103においては、回転駆動される感光体101の表面が帯電装置301によって一様帯電せしめられる。そして、プリントコントローラ410(図3参照)からの画像情報に基づいて、潜像書込ユニット200が書込光Lbによる光走査を行って感光体101の表面に静電潜像を書き込む。この静電潜像は、現像装置102によって現像されてY、M、C又はKの1次色からなる1次色トナー像になる。この1次色トナー像は、1次転写ニップ内で感光体101の表面から中間転写ベルト105のおもて面に1次転写される。1次転写ニップを通過した後の感光体101の表面に付着している転写残トナーは、感光体クリーニング装置311により除去される。
【0031】
先に示した図1において、画像形成ユニット103Y,C,M,Kは、以上のようなプロセスにより、感光体101Y,C,M,Kの表面にY,C,M,Kトナー像を形成する。これらY,C,M,Kトナー像は、Y,M,C,K用の1次転写ニップで中間転写ベルト105のおもて面に重ね合わせて1次転写される。これにより、中間転写ベルト105のおもて面には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0032】
中間転写ベルト105のループ外には、中間転写ベルト105の周方向における全域のうち、支持ローラ112に対する掛け回し箇所に対して当接して2次転写ニップを形成している2次転写ローラ108が配設されている。この2次転写ローラ108には、トナーの帯電極性と逆極性の2次転写バイアスが印加される。2次転写ニップの下方には、レジストローラ対が配設されており、これは中間転写ベルト105の4色重ね合わせトナー像に同期させるタイミングで、記録紙115を2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップに進入した記録紙には、2次転写バイアスやニップ圧の作用により、中間転写ベルト105上の4色重ね合わせトナー像が記録紙上に一括2次転写される。そして、4色重ね合わせトナー像は、記録紙115の白色と相まってフルカラートナー像になる。なお、2次転写ローラ108の代わりに、スコロトロンチャージャーなどを用いてもよい。
【0033】
2次転写ローラ108の図中上方には、記録紙115上に転写されたフルカラートナー像を記録紙115に定着させるため定着装置111が設けられている。この定着装置111は、加熱ローラ117に加圧ローラ118を押し当てた構成となっている。また、定着装置111は、加熱ローラ117と圧ローラ118との当接による定着ニップを通過した後の記録紙Pに形成されているフルカラートナー像を被検対象として測色を行う測色手段としての分光計109を有している。かかる分光計109としては、特開2005−315883号公報で開示されているものを例示することができる。
【0034】
ベルトループ外には、ベルトクリーニング装置110が配設されている。このベルトクリーニング装置110は、中間転写ベルト105の周方向における全域のうち、支持ローラ113に対する掛け回し箇所に当接している。そして、2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト105に付着しているトナーを除去する。
【0035】
図3は、プリンタ100における各部の電気的な接続を示すブロック図である。プリンタ100は、制御装置として機能する本体制御部406を備えており、この本体制御部406が各部を駆動制御することにより電子写真のプロセスを用いた画像形成動作を制御する。本体制御部406は、各種演算や各部の駆動制御を実行するCPU(Central Processing Unit)402にバスライン409を介して、コンピュータプログラム等の固定的データを予め記憶するROM(Read Only Memory)405と各種データを書き換え自在に記憶するワークエリア等として機能するRAM(Random Access Memory)403とが接続されている。また、本体制御部406は、色測定手段である分光計109やトナー濃度センサ418、温湿度センサ417からの情報をデジタルデータに変換するA/D変換回路401も備えており、A/D変換回路401はCPU402にバスライン409を介して接続されている。
【0036】
本体制御部406には、PC(Personal Computer)411やスキャナ412、FAX(Facsimile)413等から送られた画像データを処理して露光データに変換するプリントコントローラ410が接続されている。また、本体制御部406には、モータやクラッチ415を駆動する駆動回路414が接続されている。さらに、本体制御部406には、画像形成部(画像形成ユニット103、1次転写装置106、潜像書込ユニット200、2次転写ローラ108など)に画像形成に必要な電圧を発生する高圧発生装置416も接続されている。
【0037】
また、本体制御部406には、パラメータ設定部404も接続されている。パラメータ設定部404は、安定した画像濃度を得るために、分光計109などで測定された情報を元にCPU402で計算された結果に基づいて、潜像書込ユニット200のレーザ強度、帯電装置301の帯電印加電圧、現像装置102の現像バイアス等の画像処理パラメータを変更する。
【0038】
プリンタ100によってPC411からの情報に従って印刷を行う場合、PC411にインストールされているプリンタドライバが用いられて画像データを含む印刷情報がPC411から送信される。画像処理手段に相当するプリントコントローラ410は、PC411から送信された画像データを含む印刷情報を受けて、画像データを処理して露光データに変換して、本体制御部406にプリント指令を出力する。プリント指令を受けた本体制御部406のCPU402は、ROM405のコンピュータプログラムに従うことにより、電子写真のプロセスを用いた画像形成制御処理を実行する。より詳細には、本体制御部406のCPU402は、駆動回路414を介してモータやクラッチ415を駆動させ、支持ローラ112が回転駆動して中間転写ベルト105が回転駆動する。また、本体制御部406のCPU402は、これと同時に、駆動回路414および高圧発生装置416、パラメータ設定部404を介して電子写真のプロセスを用いた画像形成部(画像形成ユニット103、1次転写装置106、潜像書込ユニット200、2次転写ローラ108など)を駆動する。
【0039】
本体制御部406は、上述のようにして中間転写ベルト105上に形成された4色重ね合わせトナー像が2次転写ニップに進入するタイミングに合わせて駆動回路414を介してモータやクラッチ415を駆動させて給紙装置(図示せず)を制御して記録紙115の供給を行う。給紙装置から供給された記録紙115は、中間転写ベルト105と2次転写ローラ108との間に送り込まれ、2次転写ローラ108により、中間転写ベルト105上の合成トナー像が記録紙115上に2次転写される。その後、記録紙115は、2次転写ローラ108に吸着した状態で定着装置111まで搬送され、定着装置111で熱と圧力が加えられてトナー像の定着処理が行われる。定着装置111を通過した記録紙115は、排紙トレイ(図示せず)に排出されスタックされる。なお、2次転写後の中間転写ベルト105上に残留した転写残トナーは、ベルトクリーニング装置110により除去される。
【0040】
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図4は、本体制御部406とその周囲構成とを示すブロック図である。同図において、本体制御部406は、測定値取得部406aと、補正量決定部406bと、アルゴリズム演算部406cと、領域探索部406dと、パラメータ設定部406eと、RGB/L*a*b*変換部406fと、サンプリング色データベース406gとを有している。これらの各部は、それぞれ、ハードウエアによって構成されているのではなく、本体制御部406のデータ記憶部に記憶しているプログラムによって構成される。また、プリントコントローラ410は、3Dのルックアップテーブル(以下3D−LUTと略す)410aと、アンダーカラー除去(以下UCRと略す)/グレーコンポーネット置換(以下GCRと略す)410bと、階調再現曲線(以下TRCと略す)を表す設定値を記憶部410cと、中間調処理部410dとを有している。
【0041】
図5は本体制御部406によって実施される色再現精度向上処理の処理フローを示すフローチャートである。色再現精度向上処理では、印刷ジョブを開始すると、印刷枚数を表すカウンタtを0に初期化する(ステップS101)。既定枚数印刷し終わったら終了し(ステップS102;YES)。規定枚数印刷し終わっていなければ、印刷枚数カウンタtを1だけ増やす(ステップS102;NO、ステップS103)。新しいt枚目の画像データについて印刷処理を実行し(ステップS104)、領域探索処理を実施する(ステップS105)。この領域探索処理は、これから出力する画像の画像情報に基づいて、画像の中から、多次色の測色に適した測色適応領域を探索する処理であり、領域探索部406d(図4参照)によって実施される。この領域探索処理に先立って、これから出力する画像の画像情報が、プリンタコントローラ410(図4参照)によって取得される。外部から送られてくる画像情報は、画像を構成する、マトリクス状に並ぶ複数の画素についてそれぞれR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の単色成分の明度を表した画素値を具備するものであるが、プリコントローラ410は、その画像情報を、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(黒)の単色成分の明度を表した画素値を具備するものに変換する。そして、変換後の画像情報を、本体制御部406の領域探索部406dに受け渡す。
【0042】
そして、領域探索部406dは、その画像情報によって示される画像の全領域のうち、どの領域を測色対象となる測色適応領域にするのかを探索する。この探索の後、その画像を形成した記録紙が定着装置111(図1参照)内に送り込まれ、分光計109(図3参照)によって測色適応領域の測色を行う。この測色結果は、本体制御部406の測定値取得部406a(図4参照)によって取得される。
【0043】
測色適応領域の探索については、次のようにして行われる。即ち、画像情報によって表される画素マトリクスの所定位置にある画素を注目画素とし、その注目画素を中心とする所定サイズの領域を部分領域として抽出する。例えば、初回の抽出においては、例えば200dpiの解像度の画素マトリクスにおける左上から21列目で且つ21行目の画素を注目画素とし、この注目画素を中心とする41画素×41画素の5mm角程度の領域を部分領域として抽出する(300dpiでは一辺61画素の正方形に相当)。そして、抽出した部分領域における各画素の画素値(C,M,Y,K)を参照しながら、その部分領域全体としての濃淡の平坦さを示す平坦度を算出する。平坦度としては、様々な算出法によって求められたものを用いることが可能である。平坦度の第1例としては、次のような算出法によって求められたものを挙げることができる。即ち、まず、C,M,Y,Kについてそれぞれ、各画素の分散を求める。次いで、その分散の和に負の符号をつけたものを部分領域内の平坦度として求める。平坦度の第2例として、分散共分散行列の行列式を挙げることができる。具体的には、C,M,Y,Kについてそれぞれ、部分領域内の各画素における分散と共分散を求める。次いで、分散を対角成分に、共分散を非対角成分に配置した4×4の分散共分散行列を構築し、その行列式を計算する。そして、行列式の値に負の符号を付けたものを平坦度として求めてもよい。分散共分散行列の行列式を用いることで、CMYK空間での分布の広がりを評価することができるからである。先に説明した第1例の平坦度に比べて、異なる成分間の色の広がりも評価することができる点が優れている。また、平坦度の第3例として、色の周波数特性を利用したものを挙げることができる。具体的には、部分領域内の各画素値を用いてフーリエ変換を行い、特定周波数のフーリエ係数の絶対値の二乗の和を求める。この和に負の符号を付けて平坦度とする。特定周波数については複数の周波数を用いることができる。第1例の平坦度では、中間調処理された画像に対しては中間調処理のパターンの影響を受けて、平坦である領域を識別できないケースがある。これに対し、第3例の平坦度では、特定周波数のフーリエ係数の絶対値の二乗の和を用いることで、中間調処理の影響を排した平坦度を算出することができる。平坦度は、これまで説明した第1例〜第3例のものに限られるものではなく、公知の平坦度算出技術を用いることが可能である。
【0044】
抽出した部分領域の平坦度を求めると、次に、全ての部分領域を抽出したか否か(画像の全領域について部分領域の抽出が完了したか否か)、を判断する。そして、まだ抽出していない部分領域があると判断した場合には、注目画素の位置を右方向に1画素分だけずらして、それを中心とする41画素×41画素の5mm角程度の領域を部分領域として抽出する。そして、同様にして、抽出した部分領域の色の平坦度を算出する。以降、3、4、5・・・n個目の部分領域の抽出の際に、それぞれ注目画素の位置を右方向に1画素分だけずらしていく。そして、注目画素の列方向の位置をマトリクスの右端から左に向けて21番目の位置までずらした後は、注目画素の列方向の位置をマトリクスの左端から右に向けて21番目の位置まで戻すとともに、行方向の位置を1画素分だけ下方向にずらす。その後、注目画素の位置を1画素分ずつ右にずらす処理を繰り返す。以上のようにして、注目画素の位置をラスタ走査のように順次ずらしていって、画像の全領域を網羅する。
【0045】
なお、注目画素を1画素分ずつずらすのではなく、抽出した部分領域同士の縁部を互いに重ねないように各部分領域を抽出してもよい。例えば、21列目、21行目の注目画素を中心とする41画素×41画素の大きさの部分領域を抽出した後には、62列目、62行目の注目画素を中心とする41画素×41画素の大きさの部分領域を抽出するのである。
【0046】
画像の全領域からの部分領域の抽出や平坦度の算出を行うと、全ての部分領域の中から平坦度の最も優れたものを特定し、その平坦度について、所定の基準平坦度よりも優れているか否かを判定する。そして、優れている場合には、その部分領域を測色に適した測色適応領域とする。
【0047】
このような領域探索処理により、例えば、図6に示すような画像の場合には、図7に符号A1〜A27で示される27個の測色適応領域が探索される。
【0048】
領域探索処理が終わると、測定値取得部406a(図4参照)が紙に出力された印刷画像の色(L*a*b*)を測定し、図5のステップS105で計算された測色適応領域における測色データを取得する(ステップS106)。次に、測色データをサンプリング色データベース406g(図4参照)に保存する(ステップS107)。このサンプリング色データベース406gは、t枚目での出力画像について、サンプリング位置・色:S(t)、L*a*b*目標値:R(t)、出力画像の測定値:M(t)を保存する。複数枚のトナー像を測色して、各測色データをサンプリング色データベース406gに保存することにより、濃度が高い色から低い色まで万遍なく、かつ大量の画像情報を使うことができる。よって、階調再現曲線の滑らかさを保持して、かつ理想の階調再現曲線との差の変動を抑制することができる。そのため、視認できるような階調の不連続が生じたり、補正の前後で視認できるような色変動が生じたりすることを防ぐことができる。
【0049】
次に、t枚目での出力画像において、サンプリング位置・色:S(t)、L*a*b*目標値:R(t)、出力画像の測定値:M(t)について以下に概説する。
サンプリング位置・色:S(t)について、領域探索部406dで、t枚目での出力画像について決定したN(t)個のサンプリングする位置・色:S(t)は以下の数1の式(1)で表され、サンプリング色データベース406gに保存される。
【0050】
【数1】
【0051】
ここで、(xi(t),yi(t))は、時間tにおいて、出力画像上のi番目のサンプリング位置(測定の中心点の座標)、(ci(t),mi(t),yi(t),ki(t))は対応するデジタルデータでのCMYK濃度である。
【0052】
また、L*a*b*目標値:R(t)について、アルゴリズム演算部406cによって、元の画像データ(RGB)から上記S(t)に記録されているサンプリング位置を参照して決められるL*a*b*目標値R(t)は以下の数2の式(2)で表され、サンプリング色データベース406gに保存される。
【0053】
【数2】
【0054】
ここで、
【0055】
【数3】
【0056】
は、時間tにおいて出力画像上のi番目のサンプリング位置(xi(t),yi(t))におけるRGB値を変換して得られるL*a*b*目標値である。
【0057】
更に、出力画像の測定値:M(t)について、上記S(t)に記録されているサンプリング位置を参照して測定値取得部406a(図4参照)で取得したユーザ画像の紙出力から測色された測定値M(t)は以下の数4の式(3)で表され、サンプリング色データベース406gに保存される。
【0058】
【数4】
【0059】
ここで、(Li(t),ai(t),bi(t))は、時間tにおいて出力画像上のi番目のサンプリング位置(xi(t),yi(t))におけるL*a*b*測定値である。
【0060】
次に、図5のステップS108で、tが予め決められている制御周期P0で割り切れるかどうかをチェックする。もし、割り切れるならば、過去P0枚のデータ(t,t−1,...,t−P0+1)について、サンプリング色データベース406g(図4参照)から、サンプリング位置・色:S(t)、L*a*b*目標値:R(t)、出力画像の測定値:M(t)を取得する(ステップS108;YES、ステップS109)。割り切れなければ、ステップS103で印刷画像の枚数のカウンタtを1増やし、未だ出力するプリントが残っている場合(ステップS102;NO)にはステップS103に戻り、次の画像データについて領域探索処理を実行する。サンプリング色データベース406gから測色データを取得すると(ステップS109)、補正量決定部406b(図4参照)が補正量決定処理を実施して(ステップS110)、Y,M,C,Kにおける階調再現曲線TRCを表す設定値に対する補正量を決定する。補正量決定処理で決定された階調再現曲線TRCを表す設定値に対する補正量と、階調再現曲線TRCを表す設定値とに基づいて、パラメータ設定部406e(図4参照)が制御パラメータ補正処理を実施して階調再現曲線TRCを表す設定値を補正する(ステップS111)。その後、ステップS102に戻り次の画像データについて処理を実行する。
【0061】
ここで、図5のステップS110の補正量決定処理について以下に詳細に説明する。
CMYKの各原色の濃度(面積比)がそれぞれ0からL−1のLレベルに量子化されているとする。但し、0はブランク、L−1はソリッド、例えばLは256である。階調再現曲線は、CMYKの各原色について独立に決められる次の数5の式(4)に示すような関数τc,τm,τy,τkで表される。
【0062】
【数5】
【0063】
入力0(ブランク)とL−1(ソリッド)に対する階調再現曲線の出力は、それぞれ、0とL−1に固定されている。時間tにおけるCMYKの各原色についての階調再現曲線を表す各設定値をτc(t),τm(t),τy(t),τk(t)とする。今、階調再現曲線を表す設定値の変動量δc,δm,δy,δkを「TRC制御」により次の数6の式(5)によって決める。
【0064】
【数6】
すると、時間t+1における階調再現曲線を表す各設定値は、次の数7の式(6)に示すように決められる。
【数7】
【0065】
図8は時間tとt+1の各階調再現曲線と補正量δを示す特性図である。同図はL=256の場合の時間tとt+1での階調再現曲線τ(t)とτ(t+1)、変動量δの例である。
【0066】
また、CMYKデータ(c,m,y,k)について,時間tにおける紙上での測定値が(L,a,b)であるとする。階調再現曲線を表す設定値を変動量δc,δm,δy,δkだけで変動させた後、時間t+1における推定値
【0067】
【数8】
【0068】
は、以下の数9の式(7)、
【0069】
【数9】
で与えられる。ここで、数9の式(7)の
【0070】
【数10】
【0071】
は、L*a*b*の各成分のCMYK濃度(c,m,y,k)についての偏微分係数、すなわちCMYK濃度(c,m,y,k)の各成分を微小に変化させたときのL*a*b*の各成分の変化量を集めたJacobian行列である。この行列は、CMYKの入力値を様々に変えたときの多次色トナー像の測色値のデータから求めればよい。
【0072】
サンプリング色データベース406g(図4参照)に記録したデータについて、CMYKデジタルデータ空間(dS(t)の(ci(t),mi(t),yi(t),ki(t))成分)でクラスタリングを行い、CMYK(デジタルデータ)、L*a*b*(目標値・測定値)のクラスタ平均を使ってTRC制御を起動する。感光体ドラムの偏心による面内色変動や測定誤差の影響を抑えるために、CMYKの値をセル状に区分して、TRC制御点を各セルの中心に代表させて計算する。また、セル内のデータが多ければ誤差は相殺されるので、信頼度は高くなる。セル内のデータ数に応じてセルへ信頼度を付与する仕組みを導入する。
【0073】
図9のように、CMYKの各原色について、濃度(0〜L−1)をQ等分(QはLの約数)したCMYK4次元空間でのQ4個のセル(4次元長立法体)を考える。図9にはCMYK濃度のセル分割と中心点を示している。CM空間について、Q=4分割した例である。TRC制御点を各セルの中心点(黒丸)で代表させる。
【0074】
【数11】
【0075】
セルP(qc,qm,qy,qk)の中心は次の数12の式(10)で与えられる。
【0076】
【数12】
【0077】
CMYKの値が、セルP(qc,qm,qy,qk)にあるようなサンプリング色についてはTRC変動量を、セルP(qc,qm,qy,qk)の中心点に相当する格子点(10)に代表させて計算する。図10は、L=256、Q=16のときのTRC制御点と変動量の例である。
【0078】
今、t0枚目の印刷の後、サンプリング色データベース406g(図4参照)に保持されている。そして、補正量決定部406bにおいて、過去P0枚の画像データ(t=t0,t0−1,...,t−P0+1)についてのサンプリング色S(t)、L*a*b*目標値R(t),出力画像の測色値M(t)を使って、4Q個のTRC変動量を次の数13の式(11)で表す
【0079】
【数13】
【0080】
を変数とする次の数14の式(12)の評価関数Jを定義する。
【0081】
【数14】
【0082】
ここで、下記の数15はx以下の最大の整数を表す。
【0083】
【数15】
【0084】
そして、上記の数14の式(12)の評価関数Jの右辺第1項は目標値と時間t+1における推定値との誤差を最小化するための項である。また、第2項は階調再現曲線TRCを表す設定値に対する変動量を滑らかさにするための項で、階調再現曲線TRCを表す設定値に対する変動量の2次微分(離散形)の二乗和である。数14の式(12)の評価関数Jを最小にするようなδを計算する。
【0085】
【数16】
【0086】
また、数16の式(13)において、下記の数17の式(14)のヤコビアン行列は、数18の式(15)での値を計算する。
【0087】
【数17】
【0088】
【数18】
【0089】
【数19】
【0090】
上記数19(Tは行列の転置)は、時間tにおけるCMYKデータ(ci(t),mi(t),yi(t),ki(t))についての測定値と目標値との偏差である。Qを十分に大きく選べば(例えば、Q=16)、数18の式(15)のCMYKについての測定値と目標値との偏差の推定値として用いることができる。また、数14の式(12)の評価関数Jを最小化では、セル内のデータ数が多いほど、そのセルの中心点への重みが大きくなる。
【0091】
w(t−t0)は、データに重み付けして、より最近のデータの寄与がより大きくなるようにするための重み変数である。t=t0+1→t=t0+Tとき、w(t)が単調増加するような関数を選ぶ。例えば、図11のような単調増加凹関数(tが増えると、微係数が0に近づくような関数、あるいは上に凸な関数)のようなものにすればよい(図11では、c=0.07、t0=100)。
【0092】
w(t−t0)=1−exp(−c(t−t0)) ・・・(16)
但し、cは正の整数(10/T程度)
上記数14の式(12)の最小化問題は、δc(c),δm(m),δy(y),δk(k)についての2次形式であるので、標準的な最適化計算法で解くことが可能である。また、下記の数20の式(17)の以外のδc(c),δm(m),δy(y),δk(k)の値は、補間によって計算する。
【0093】
【数20】
【0094】
次に、図5のステップS111のパラメータ補正について概説する。
図5のステップS110で決められた補正量と、階調再現曲線の設定値とに基づいて、実際の階調再現曲線を表す設定値を下記の数21の式(18)のように更新する。
【0095】
【数21】
【0096】
図5のステップS111のパラメータ補正を行った後、ステップS102に戻る。
【0097】
このように、濃度レベルをQ分割してできるCMYK4次元空間の超立方体の中心点のTRC変動を使った計算方法により、次のような利点がある。
(1)測定データを平均化できるため、感光体ドラムの偏心による面内色変動や測定誤差の影響を打ち消すことができる。したがって、制御の精度を向上させることができると同時に階調再現曲線の滑らかさを保持して、かつ急激に変動を抑制することができる。そのため、視認できるような階調の不連続が生じたり、視認できるような色変動が生じたりすることを防ぐことができる。
(2)TRC制御の制御点を均等に配置できて、かつ計算時間を縮減できる。画像データに依らず、CMYK合わせて4Q個の量を計算すればよい(例えばQは16)。
【0098】
ここで、面内変動ΔE(μ+3σ)、サンプリング色数とTRC推定誤差(256レベル)の関係を図12に示す。面内変動が0のときには、サンプリング色数に関係なく、推定誤差が1.8程度であり、階調レベル(256)で正規化すると、誤差は0.7%程度である。N=2000では、面内変動が増加しても推定誤差はほとんど変わらない。しかし、サンプリング色数が少ないほど、面内変動の増加に伴う推定精度の劣化が顕著となる。色安定性の最終目標がΔE≦3であるので、面内変動もその程度に抑えられると想定すると、図12から、N=200程度のサンプリング色で、TRC推定精度を約0.7%に維持できることになる。
【0099】
以上説明したように、実施形態によれば、制御装置たる本体制御部406が、画像情報によって示される画像の中から、多次色を測色するのに適した測色適応領域を探索する領域探索処理を実施する。そして、画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の測色適応領域を測色手段たる分光計109によって測色した測色結果である測定色(Li(t),ai(t),bi(t))と、測色適応領域での各色トナー像の面積比に比例した濃度とを各画像情報毎にそれぞれサンプリング色データベース406gに保存する。そして、サンプリング色データベース406gに保存された各測色結果である各測定色(Li(t),ai(t),bi(t))を平均化した測定色を求める。また、サンプリング色データベース406gに保存された各濃度を平均化した濃度を求める。作像手段によって形成可能なトナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色とプリントコントローラ410の階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数の数式モデルであるアルゴリズム、平均化した測定色と参照色(Li,ai,bi)との差分、平均化した濃度及び階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、差分をより小さくするための階調再現曲線を表す設定値の補正量(δc(t),δm(t),δy(t),δk(t))を決定し、その補正量に基づいて階調再現曲線を表す設定値を補正して多次色トナー像の色再現精度の向上を図る色再現精度向上処理を実施する。これにより、テストプリント紙の仕分け作業をユーザに強いることなく、多次色を精度良く再現することができる。そして、各画像情報毎の各測色結果である測定色と各濃度とをそれぞれ平均化して階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定することにより、色の濃度分布が偏っている画像情報を用いても実際の階調再現曲線の滑らかさは失われないとともに、感光体ドラムの偏心による面内色変動や測定誤差の影響を打ち消すことができる。これにより、階調再現曲線の滑らかさを保持して、かつ、階調再現曲線の急激な変動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0100】
100 プリンタ
109 分光計
401 A/D変換回路
402 CPU
403 RAM
404 パラメータ設定部
405 ROM
406 本体制御部
406a 測定値取得部
406b 補正量決定部
406c アルゴリズム演算部
406d 領域探索部
406e パラメータ設定部
406f RGB/L*a*b*変換部
406g サンプリング色データベース
410 プリントコントローラ
410a 3D−LUT
410b UCR/GCR
410c TRC
410d 中間調処理部
411 PC
412 スキャナ
413 FAX
414 駆動回路
415 モータ・クラッチ
416 高圧発生装置
417 温湿度センサ
418 トナー濃度センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0101】
【特許文献1】特開2002−033935号公報
【特許文献2】特開2004−229294号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、
前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、
を備える画像形成装置に搭載され、
前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御装置において、
前記画像情報によって示される画像の中から、測色するのに適した測色適応領域を探索する領域探索処理を実施する領域探索手段と、
前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の複数の前記測色適応領域をそれぞれ測色する測色手段と、
前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の前記測色適応領域を測色した測色結果である測定色及び前記多次色トナー像における各1次色トナー像の前記測色適応領域での面積比に比例した濃度を各画像情報毎にそれぞれ保存する保存手段と、
前記保存手段に保存された前記各測定色及び前記各濃度をそれぞれ平均化する平均化手段と、
前記領域探索処理を実施した後、前記作像手段によって形成される複数の1次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と前記作像手段の前記階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数のアルゴリズム、前記平均化手段によって平均化された前記濃度、前記平均化手段によって平均化された前記測定色と前記参照色との差分及び前記階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、前記差分をより小さくするための前記階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する補正量決定手段と、
決定した前記補正量に基づいて前記階調再現曲線を表す設定値を補正する補正手段と、
を具備することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御手段とを備える画像形成装置において、
前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像を測色する測色手段を設けるとともに、前記制御手段として、請求項1の画像形成制御装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、を備える画像形成装置に搭載され、前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御方法において、
前記画像情報によって示される画像の中から、測色するのに適した測色適応領域を探索する領域探索処理を実施する領域探索工程と、
前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の複数の前記測色適応領域をそれぞれ測色する測色工程と、
前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の前記測色適応領域を測色した測色結果である測定色及び前記多次色トナー像における各1次色トナー像の前記測色適応領域での面積比に比例した濃度を各画像情報毎にそれぞれ保存手段に保存する保存工程と、
前記保存手段に保存された前記各測定色及び前記各濃度をそれぞれ平均化する平均化工程と、
前記領域探索処理を実施した後、前記作像手段によって形成される複数の1次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と前記作像手段の前記階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数のアルゴリズム、平均化された前記濃度、平均化された前記測定色と前記参照色との差分及び前記階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、前記差分をより小さくするための前記階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する補正量決定工程と、
決定した前記補正量に基づいて前記階調再現曲線を表す設定値を補正する補正工程と、
を実施することを特徴とする制御方法。
【請求項1】
画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、
前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、
を備える画像形成装置に搭載され、
前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御装置において、
前記画像情報によって示される画像の中から、測色するのに適した測色適応領域を探索する領域探索処理を実施する領域探索手段と、
前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の複数の前記測色適応領域をそれぞれ測色する測色手段と、
前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の前記測色適応領域を測色した測色結果である測定色及び前記多次色トナー像における各1次色トナー像の前記測色適応領域での面積比に比例した濃度を各画像情報毎にそれぞれ保存する保存手段と、
前記保存手段に保存された前記各測定色及び前記各濃度をそれぞれ平均化する平均化手段と、
前記領域探索処理を実施した後、前記作像手段によって形成される複数の1次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と前記作像手段の前記階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数のアルゴリズム、前記平均化手段によって平均化された前記濃度、前記平均化手段によって平均化された前記測定色と前記参照色との差分及び前記階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、前記差分をより小さくするための前記階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する補正量決定手段と、
決定した前記補正量に基づいて前記階調再現曲線を表す設定値を補正する補正手段と、
を具備することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御手段とを備える画像形成装置において、
前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像を測色する測色手段を設けるとともに、前記制御手段として、請求項1の画像形成制御装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
画像情報に基づいて、1つの像担持体の表面に互いに異なる複数の1次色トナー像を作像するか、あるいは、複数の像担持体の表面にそれぞれ互いに異なる1次色トナー像を作像する作像手段と、互いに異なる複数の1次色トナー像を形成する画像処理パラメータである階調再現曲線を表す設定値に基づいて前記作像手段に入力する画像情報を処理する画像情報処理手段と、前記1つの潜像担持体あるいは前記複数の潜像担持体の表面に対して当接部材を当接させて転写ニップを形成しながら、前記1つの潜像担持体の表面に形成された複数の1次色トナー像、あるいは、前記複数の潜像担持体の表面にそれぞれ形成された1次色トナー像を、前記当接部材の表面、あるいは前記表面に保持される記録シート、に重ね合わせて転写して多次色トナー像を得る転写手段と、を備える画像形成装置に搭載され、前記作像手段及び前記転写手段の各駆動の制御及び所定の演算処理の実行を行う制御方法において、
前記画像情報によって示される画像の中から、測色するのに適した測色適応領域を探索する領域探索処理を実施する領域探索工程と、
前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の複数の前記測色適応領域をそれぞれ測色する測色工程と、
前記画像情報に基づいて形成された多次色トナー像の前記測色適応領域を測色した測色結果である測定色及び前記多次色トナー像における各1次色トナー像の前記測色適応領域での面積比に比例した濃度を各画像情報毎にそれぞれ保存手段に保存する保存工程と、
前記保存手段に保存された前記各測定色及び前記各濃度をそれぞれ平均化する平均化工程と、
前記領域探索処理を実施した後、前記作像手段によって形成される複数の1次色トナー像についてそれぞれ予め記憶している出力色と前記作像手段の前記階調再現曲線を表す設定値との関係を表す複数のアルゴリズム、平均化された前記濃度、平均化された前記測定色と前記参照色との差分及び前記階調再現曲線を表す現在の設定値に基づいて、前記差分をより小さくするための前記階調再現曲線を表す設定値の補正量を決定する補正量決定工程と、
決定した前記補正量に基づいて前記階調再現曲線を表す設定値を補正する補正工程と、
を実施することを特徴とする制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図7】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図7】
【図9】
【公開番号】特開2012−165296(P2012−165296A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25649(P2011−25649)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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