説明

制御装置

【課題】簡易な処理でノイズによる誤動作を低減できる制御装置を提供する。
【解決手段】デジタル回路10全体にわたって複数の箇所に配置された複数のノイズモニタ11により得られたノイズに関するアナログ量は、アナログ/デジタル変換器12により最大デジタル量へ変換され、周波数/電圧制御回路40へ入力される。周波数/電圧制御回路40は、最大デジタル量のうち基準デジタル量を上回るものが一つでもあった場合には、電源電圧がNGであると判定し、クロック発生装置20から出力されるクロックの周波数やレギュレータ30から出力される電源電圧を変更しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関し、特に、システム全体が同一のチップ上に設けられたSOC(System On Chip)構造のマイコン等において電圧のノイズによる不具合を防止するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の回路や装置からなるシステム全体が同一のチップ上に設けられたSOC構造のマイコンが採用されている。SOC構造の例としては、例えば、所定のデジタル処理を行うデジタル回路と、クロックを前記デジタル回路へ入力させるクロック発生装置と、電源電圧を前記デジタル回路へ入力させるレギュレータと、前記クロックの周波数の変更制御を行う周波数制御信号を生成し前記クロック発生装置へ入力させる動作、または前記電源電圧の変更制御を行う電圧制御信号を生成し前記レギュレータへ入力させる動作を行う周波数/電圧制御回路とを同一のチップ上に設けた構造が挙げられる。
【0003】
SOC構造のマイコンにおいては、しばしば、電源電圧へのノイズによる誤動作が問題となる。ノイズによる誤動作を防ぐための技術は、例えば、特許文献1等に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−222919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される半導体集積回路においては、一の回路ブロックがノイズを検出すると、他の回路ブロックに対して、割り込み処理を行うことにより、誤動作を防止しているので、割り込みに伴い、処理が煩雑になるという問題点があった。
【0006】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、簡易な処理でノイズによる誤動作を低減できる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態において、周波数/電圧制御回路は、最大デジタル量のうち基準デジタル量を上回るものが一つでもあった場合には、電源電圧がNGであると判定し、クロック発生装置から出力されるクロックの周波数やレギュレータから出力される電源電圧を変更しない。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、割り込み処理を行う必要がないので、簡易な処理でノイズによる誤動作を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の各実施の形態について、図1〜13を参照して詳細に説明する。
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る制御装置1の構成を示すブロック図である。
【0011】
制御装置1は、デジタル回路10と、クロック発生装置20と、レギュレータ30と、周波数/電圧制御回路40と、メモリ50とを同一のチップ上に備えている。
【0012】
デジタル回路10は、所定のデジタル処理を行う回路である(CPU等)。クロック発生装置20は、クロックをデジタル回路10へ入力させる装置である。レギュレータ30は、電源電圧をデジタル回路10へ入力させる装置である。
【0013】
周波数/電圧制御回路40は、周波数制御信号を生成しクロック発生装置20へ入力させることにより、クロック発生装置20から出力されるクロックの周波数を制御している。すなわち、周波数/電圧制御回路40は、クロックの周波数を変更する場合には、変更を指示する周波数制御信号を生成しクロック発生装置20へ入力させる。
【0014】
また、周波数/電圧制御回路40は、電源電圧制御信号を生成しレギュレータ30へ入力させることにより、レギュレータ30から出力される電源電圧を制御している。すなわち、周波数/電圧制御回路40は、電源電圧を変更する場合には、変更を指示する電源電圧制御信号を生成しレギュレータ30へ入力させる。
【0015】
デジタル回路10は、複数のノイズモニタ11と一のアナログ/デジタル変換器12と比較器13とを有している。
【0016】
複数のノイズモニタ11は、デジタル回路10全体にわたって複数の箇所に配置され、電源電圧またはグランド電圧を時系列でモニタすることにより、基準電圧に対する差分すなわちノイズに関するアナログ量をそれぞれ得る。
【0017】
具体的には、図2〜3のタイミングチャートに示されるように、所定の時間範囲を示すタイミングウィンドウTWn(n:自然数)において、最大値と最小値との差すなわちピーク・トゥ・ピーク電圧(第1のアナログ量)と、極大値および極小値の個数すなわちピーク数(第2のアナログ量)と、直前のタイミングウィンドウTWn-1に対するピーク・トゥ・ピーク電圧の変化量(第3のアナログ量)と、直前のタイミングウィンドウTWn-1に対するピーク数の変化量(第4のアナログ量)と、電源電位の最大アンダーシュート値またはグランド電位の最大オーバーシュート値(第5のアナログ量)とが、ノイズに関するアナログ量として取得され、アナログ/デジタル変換器12へ入力される。なお、図2〜3の詳細については、後述する。
【0018】
図1を参照して、アナログ/デジタル変換器12は、複数のノイズモニタ11でそれぞれ得られた第1乃至第5のアナログ量を、それぞれ、第1乃至第5のデジタル量へアナログ/デジタル変換する。
【0019】
比較器13は、アナログ/デジタル変換器12と一体に設けられ、アナログ/デジタル変換器12で得られた各デジタル量を、複数のノイズモニタ11同士で比較することにより一の最大デジタル量を導出し、ノイズ情報として周波数/電圧制御回路40へ入力させる。すなわち、第1乃至第5のデジタル量それぞれに対応して、第1乃至第5の最大デジタル量が導出され、周波数/電圧制御回路40へ入力される。
【0020】
周波数/電圧制御回路40は、入力された各最大デジタル量を、予め設定された所定の基準デジタル量と比較する。そして、第1乃至第5の最大デジタル量のうち一つでも基準デジタル量を上回るものがあった場合には、電源電圧がNGであると判定し、変更を指示しないような制御信号を生成する。
【0021】
具体的には、周波数/電圧制御回路40は、図4に示されるように、第1乃至第5の最大デジタル量がそれぞれ正入力端子へ入力される比較回路C1〜C5と、比較回路C1〜C5からの出力信号が入力されるOR回路O1とを内蔵している。比較回路C1〜C5の負入力端子には、予め設定された所定の基準デジタル量(比較回路毎に異なるが、例えば、8ビット長であれば、”LLHLLLLL”等)が入力される。各比較回路は、最大デジタル量が基準デジタル量より大きい場合には、Hレベル信号をOR回路O1へ入力させ、最大デジタル量が基準デジタル量以下である場合には、Lレベル信号をOR回路O1へ入力させる。これにより、第1乃至第5の最大デジタル量のうち基準デジタル量を上回るものが一つでもあった場合には、OR回路O1からの出力信号をHレベルとし、電源電圧がNGであると判定できる。なお、比較回路C1〜C5は、周波数/電圧制御回路40内にではなく、比較器13内に設けられてもよい。
【0022】
図2は、制御装置1の周波数制御を示すタイミングチャートである。図2においては、一連のタイミングウィンドウTW1〜TW7が示されている。
【0023】
タイミングウィンドウTW1では、電源電圧において、ほとんど変動はない。従ってタイミングウィンドウTW1の終了時点では、電源電圧はOKと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW2における周波数の変更制御は、実施可能と判定される。なお、図2では、タイミングウィンドウTW2において、周波数の変更制御は実施されていないが、仮に他のコントローラ等から指示があれば、実施される。
【0024】
また、タイミングウィンドウTW2では、電源電圧において、ほとんど変動はない。従ってタイミングウィンドウTW2の終了時点では、電源電圧はOKと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW3における周波数の変更制御は、実施可能と判定される。なお、図2では、タイミングウィンドウTW3において、周波数の変更制御は実施されていないが、仮に他のコントローラ等から指示があれば、実施される。
【0025】
また、タイミングウィンドウTW3では、クロックの立ち下がりに起因して、電源電圧において、ピーク・トゥ・ピーク電圧が大きく変動している。従ってタイミングウィンドウTW3の終了時点では、電源電圧はNGと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW4における周波数の変更制御は、実施不可能と判定される。
【0026】
また、タイミングウィンドウTW4では、未だ、電源電圧において、ピーク・トゥ・ピーク電圧が大きく変動している。従ってタイミングウィンドウTW4の終了時点において、電源電圧はNGと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW5における周波数の変更制御は、実施不可能と判定されるので、仮に他のコントローラ等から指示があっても、実施されない。
【0027】
また、タイミングウィンドウTW5では、電源電圧において、ほとんど変動はない。従ってタイミングウィンドウTW5の終了時点では、電源電圧はOKと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW6における周波数の変更制御は、実施可能と判定される。なお、図2では、タイミングウィンドウTW6において、周波数の変更制御(2逓倍)が実施されている。
【0028】
図3は、制御装置1の電源電圧制御を示すタイミングチャートである。図3においては、一連のタイミングウィンドウTW1〜TW7が示されている。
【0029】
タイミングウィンドウTW1では、電源電圧において、ほとんど変動はない。従ってタイミングウィンドウTW1の終了時点では、電源電圧はOKと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW2における電源電圧の変更制御は、実施可能と判定される。なお、図3では、タイミングウィンドウTW2では、電源電圧の変更制御は実施されていないが、仮に他のコントローラ等から指示があれば、実施される。
【0030】
また、タイミングウィンドウTW2では、電源電圧において、ほとんど変動はない。従ってタイミングウィンドウTW2の終了時点では、電源電圧はOKと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW3における電源電圧の変更制御は、実施可能と判定される。なお、図3では、タイミングウィンドウTW3において、電源電圧の変更制御は実施されていないが、仮に他のコントローラ等から指示があれば、実施される。
【0031】
また、タイミングウィンドウTW3では、電源電圧において、ほとんど変動はない。従ってタイミングウィンドウTW3の終了時点では、電源電圧はOKと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW4における電源電圧の変更制御は、実施可能と判定される。なお、図3では、タイミングウィンドウTW4において、電源電圧の変更制御(1.0Vから0.9Vへの0.1Vの降圧)が実施されている。
【0032】
また、タイミングウィンドウTW4では、降圧の反動に起因して、電源電圧において、最大アンダーシュートが大きくなっている。従ってタイミングウィンドウTW4の終了時点において、電源電圧はNGと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW5における電源電圧の変更制御は、実施不可能と判定されるので、仮に他のコントローラ等から指示があっても、実施されない。
【0033】
また、タイミングウィンドウTW5では、電源電圧において、ピーク・トゥ・ピーク電圧が大きく変動している。従ってタイミングウィンドウTW5の終了時点において、電源電圧はNGと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW6における電源電圧の変更制御は、実施不可能と判定されるので、仮に他のコントローラ等から指示があっても、実施されない。
【0034】
また、タイミングウィンドウTW6では、電源電圧において、ほとんど変動はない。従ってタイミングウィンドウTW6の終了時点では、電源電圧はOKと判定される。よって、引き続くタイミングウィンドウTW7における電源電圧の変更制御は、実施可能と判定される。なお、図3では、タイミングウィンドウTW7において、電源電圧の変更制御は実施されていないが、仮に他のコントローラ等から指示があれば、実施される。
【0035】
図5は、本実施の形態に係る制御装置1の有効性を示す回路図である。図5(a)には、PMOSトランジスタP1とNMOSトランジスタN1とからなるインバータI1が開示されている。PMOSトランジスタP1およびNMOSトランジスタN1は、いずれも、閾値電圧が0.45Vであり、インバータI1は、0.7Vの電源電圧で動作している。
【0036】
図5において、インバータI1へLレベル電位が入力された場合には、PMOSトランジスタP1は、ゲート・ソース間電圧が0.7V−0V=0.7V>0.45VとなるのでON状態となり、NMOSトランジスタN1は、ゲート・ソース間電圧が0V−0V=0V<0.45VとなるのでOFF状態となる。このとき、例えば図5(b)に示されるように、最大アンダーシュートが0.2Vのノイズが電源ラインに起因していても、PMOSトランジスタP1は、ゲート・ソース間電圧が0.5V−0V=0.5V>0.45VとなるのでON状態を保つことが可能である。
【0037】
次に、上記の状態で、電源制御(0.1V降圧)を行うとする。この場合には、電源ラインにノイズが起因していなければ、PMOSトランジスタP1は、ゲート・ソース間電圧が0.6V−0V=0.6V>0.45VとなるのでON状態を保ち問題なく動作するはずであるが、最大アンダーシュート時にはゲート・ソース間電圧が0.4V−0V=0.4V<0.45VとなるのでOFF状態となる。このとき、NMOSトランジスタN1もOFF状態となるので、インバータI1の出力はHi−Zとなる。従って、インバータI1の出力がそのまま後段へ伝達された場合には誤動作を引き起こすという問題点がある。しかし、本実施の形態に係る制御装置1は、電源電位の最大アンダーシュート値が基準値を上回った場合には、クロックの周波数や電源電圧を変更しないような制御を行うので、誤動作を低減することが可能となる。
【0038】
なお、上述においては、図1を用いて、アナログ/デジタル変換器12が、比較器13と一体に設けられる場合について説明した。しかし、これに限らず、あるいは、図6に制御装置1a(デジタル回路10a)として示されるように、アナログ/デジタル変換器12は、比較器13と一体にではなく、ノイズモニタ11と一体に設けられてもよい。
【0039】
図7は、図6に示されるようにノイズモニタ11とアナログ/デジタル変換器12とが一体に設けられた場合の詳細な構成例を示す回路図であり、特開2001−236240号公報において第8図として開示されている周知の技術である。図7の回路では、電源電位VDDより高い電圧がノイズとして電源電位VDDに乗ることで、PMOSトランジスタ212において、ゲート・ソース間電圧が閾値を超えるので、PMOSトランジスタ212がONし、その結果、電位outがHレベルとなり、ノイズが検出可能となる。上記の閾値は、抵抗223,224の抵抗比で決まるが、閾値の異なるこの回路を一箇所に複数配置(例えば8個とし、閾値は降順とする)し一のノイズモニタ11を構成することで、ノイズモニタ11からは、例えば電源電位VDDのオーバーシュートに対して”HHHLLLLL”のような信号が出力される。
【0040】
このように、本実施の形態に係る制御装置1,1aによれば、周波数/電圧制御回路40は、ノイズに関する第1乃至第5の最大デジタル量のうち基準デジタル量を上回るものが一つでもあった場合には、電源電圧がNGであると判定し、クロックの周波数や電源電圧を変更しないような制御を行う。従って、特許文献1と比較して、割り込み処理を行う必要がないので、簡易な処理でノイズによる誤動作を低減できる。
【0041】
<実施の形態2>
実施の形態1においては、図7に示されるようなノイズモニタ11を、図1および図6に示されるようにデジタル回路10全体にわたって複数の箇所にそれぞれ配置し、電源電圧またはグランド電圧を時系列でモニタすることにより、基準電圧に対する差分すなわちノイズに関するアナログ量をそれぞれ得る。しかし、電源電圧が可変電圧である場合には、電源電圧またはグランド電圧においてDC成分が変動するので、OK/NGの判定が困難となるという問題点がある。
【0042】
図8は、本発明の実施の形態2に係る制御装置1bの構成を示すブロック図である。図8は、実施の形態1に係る図1および図6において、チップの外部から電源電圧またはグランド電圧を供給する電源パッドVDD−PADまたはグランドパッドGND−PADに近接して、参照用のノイズモニタ11aを追加するとともに、ノイズモニタ11の出力からノイズモニタ11aの出力を減算する比較器C6または比較器C7を追加したものである(デジタル回路10b)。なお、比較器C6または比較器C7は、ノイズモニタ11と同数が設けられ、全てのノイズモニタ11の出力は、ノイズモニタ11aの出力が減算された後に、アナログ/デジタル変換器12へ入力される。
【0043】
電源パッドVDD−PAD(またはグランドパッドGND−PAD)における電源電圧(またはグランド電圧)は、電源ライン(またはグランドライン)へのノイズの影響を受けることはない。従って、ノイズモニタ11の出力において、電源パッドVDD−PADまたはグランドパッドGND−PADに近接して配置されたノイズモニタ11aの出力を差し引くことにより、DC成分の変動を相殺し相対差分を得ることが可能となる。
【0044】
このように、本実施の形態に係る制御装置1bは、参照用のノイズモニタ11aと、ノイズモニタ11とアナログ/デジタル変換器12との間に介在しノイズモニタ11の出力からノイズモニタ11aの出力を減算する比較器(減算器)C6〜C7をさらに備えている。従って、実施の形態1に比較して、電源電圧が可変電圧である場合においても、電源電圧またはグランド電圧におけるDC成分の変動を相殺し、OK/NGの判定を容易とすることができる。
【0045】
<実施の形態3>
実施の形態1においては、デジタル回路10全体にわたって複数の箇所に配置された複数のノイズモニタ11により得られたノイズに関するアナログ量は、アナログ/デジタル変換器12によりデジタル量へ変換され、周波数/電圧制御回路40により基準デジタル量と比較される。しかし、デジタル回路10内において、位置によりタイミングマージンが異なる場合には、上記の比較動作において、ノイズモニタ11毎に異なる重み付けを行ってもよい。
【0046】
図9は、本発明の実施の形態3に係る制御装置による基準値の重み付けの例を模式的に示す概念図である。
【0047】
図9に示されるように、デジタル回路10は、3(行)×3(列)=9(ブロック)分割されている。
【0048】
図9に示されるように、各行は、上方から下方へ向かって、T(Top)行、M(Middle)行、およびB(Bottom)行と命名されており、各列は、左方から右方へ向かって、W(West)列、M(Middle)列、およびE(East)列と命名されている。
【0049】
すなわち、デジタル回路10は、9つのブロックTW,TM,TE,MW,MM,ME,BW,BM,BEに分割され、ブロック毎に、異なる重みを付与されたノイズモニタ11が配置される。図9においては、ブロックTW,TM,TE,MW,MM,ME,BW,BM,BEに対して、それぞれ、1.2,1.1,1.0,1.0,1.0,1.0,1.0,1.0,0.9の重みが付与されている。具体的には、これらの値は、レジスタファイルやROMテーブル等に保存されており、アナログ/デジタル変換時にアナログ/デジタル変換器12によりデジタル量へ付与すなわち乗算される。
【0050】
従って、1より大きい重みが付与されるブロックTW,TMは、重みとして1が付与される(言い換えれば重みが付与されない)ブロックTE,MW,MM,ME,BW,BMに比較して、周波数/電圧制御回路40において最大デジタル量が基準デジタル量を超えて電源電圧がNGと判定される可能性が高くなる。一方、1より小さい重みが付与されるブロックBEは、重みとして1が付与されるブロックTE,MW,MM,ME,BW,BMに比較して、周波数/電圧制御回路40において最大デジタル量が基準デジタル量を超えて電源電圧がNGと判定される可能性が低くなる。
【0051】
これらの重みは、タイミングマージンによって決定する。例えば、デジタル回路10内の全タイミングパスに対するスラック量(余裕度)の平均値と、各ブロックのスラック量とを算出し、両者の比を重みとする。これにより、タイミングが厳しいパスが多いブロックTW,TMでは、電源ラインやグランドラインに起因するノイズ検知の基準を緩め、過剰な制御を防ぐことができる。
【0052】
このように、本実施の形態に係る制御装置によれば、アナログ/デジタル変換器12は、変換対象となるアナログ量を得たノイズモニタ11のデジタル回路10内の位置に応じた重みをデジタル量へ付与しつつアナログ/デジタル変換する。また、アナログ/デジタル変換器12は、重みを、デジタル回路10内の物理ブロック(ブロックTW,TM,TE,MW,MM,ME,BW,BM,BE)毎に定める。従って、タイミングが厳しいパスが多いブロックにおいても、過剰な制御を防ぐことができる。
【0053】
<実施の形態4>
実施の形態3においては、重みを、デジタル回路10内の物理ブロック毎に定める場合について説明した。しかし、デジタル回路10を物理的配置のみに基づき単純に分割させた場合には、タイミングマージンの算出が煩雑になるので、重みの算出が煩雑になる場合がある。
【0054】
図10は、本発明の実施の形態4に係る制御装置による基準値の重み付けの例を模式的に示す概念図である。本実施の形態においては、デジタル回路10がCPUからなる場合について説明する。
【0055】
CPUからなるデジタル回路10は、メモリインタフェースからなるブロック101、算術演算器からなるブロック102、浮動小数点演算器からなるブロック103、割込みコントローラからなるブロック104、命令デコーダからなるブロック105、乗算器からなるブロック106、およびマイクロコントローラからなるブロック107に分割されている。また、ブロック101,107は比較的に規模が大きいので、ブロック101はブロック101a,101bに、ブロック106はブロック106a,106b,106cに、それぞれ、さらに下位階層へ分割されている。すなわち、図10は、図8においてデジタル回路10を、物理ブロックにではなく、機能ブロックに分割させたものである。
【0056】
図10においては、ブロック101a,101b,102,103,104,105,106a,106b,106c,107に対して、それぞれ、1.2,1.0,1.1,1.0,1.0,1.0,1.0,1.0,1.0,0.9の重みが付与されている。
【0057】
このように、本実施の形態に係る制御装置は、重みを、デジタル回路10内の物理ブロック毎にではなく、論理的な意味を有する機能ブロック(ブロック101〜107)毎に定める。従って、実施の形態3に比較して、重みの算出を容易に行うことが可能となる。
【0058】
<実施の形態5>
実施の形態1においては、図1〜2を用いて上述したように、周波数/電圧制御回路40は、電源電圧がNGであると判定された場合には、クロック発生装置20から出力されるクロックに関して、周波数の変更は行わないものの、クロック自体はデジタル回路10へそのまま入力させる。しかし、あるいは、周波数/電圧制御回路40は、誤動作が発生する可能性が高い場合には、デジタル回路10へのクロックの入力を遮断することによりデジタル回路10の動作を停止(ホールド)してもよい。
【0059】
図11は、本発明の実施の形態5に係る制御装置1cの構成を示すブロック図である。図11は、実施の形態1に係る図1において、デジタル回路10とクロック発生装置20との間にAND回路A1を介在させたものである。AND回路A1においては、一方入力端子に、クロック発生装置20から出力されるクロックが入力され、他方入力端子に、周波数/電圧制御回路40において生成される動作ホールド制御信号が入力され、これらの論理積が、ホールド制御後クロックとしてデジタル回路10へ入力される。
【0060】
周波数/電圧制御回路40は、電源電圧がOKであると判定した場合にはHレベルの動作ホールド制御信号を、電源電圧がNGであると判定した場合にはLレベルの動作ホールド制御信号を、それぞれAND回路A1の他方入力端子へ入力させる。これにより、電源電圧がNGであると判定した場合に、デジタル回路10へのクロックの入力を遮断することができる。
【0061】
図12は、制御装置1cの周波数制御を示すタイミングチャートである。図12においては、一連のタイミングウィンドウTW1〜TW10が示されている。
【0062】
図12においては、タイミングウィンドウTW6において、周波数の変更制御(2逓倍)が実施されている。
【0063】
この変更制御に起因して、タイミングウィンドウTW6〜TW7の終了時点において、電源電圧はNGと判定されるので、タイミングウィンドウTW7〜TW8においては、周波数の変更制御は実施不可能と判定されるが、タイミングウィンドウTW7〜TW8以外のタイミングウィンドウTW1〜TW6,TW9〜TW10においては、周波数の変更制御は実施可能と判定される。なお、タイミングウィンドウTW6における周波数の変更の指示は、タイミングウィンドウTW1の終了時点におけるOKの判定を受けて、タイミングウィンドウTW2において他のコントローラ等により行われている。
【0064】
また、図12では、周波数の変更制御が実施される前後において、動作ホールド制御信号がLレベルとなっている。すなわち、動作ホールド制御信号は、周波数の変更が指示されたタイミングウィンドウTW2において立ち下がり、電源電圧にほとんど変動がなくなったタイミングウィンドウTW9において立ち上がっている。これにより、誤動作が発生する可能性が高い変更制御の前後において、デジタル回路10へのクロックの入力を遮断することによりデジタル回路10の動作をホールドすることができる。
【0065】
図13は、制御装置1cの電源電圧制御を示すタイミングチャートである。図13においては、一連のタイミングウィンドウTW1〜TW10が示されている。
【0066】
図13においては、タイミングウィンドウTW6において、電源電圧の変更制御(1.0Vから0.9Vへの0.1Vの降圧)が実施されている。
【0067】
この変更制御に起因して、タイミングウィンドウTW6〜TW7の終了時点において、電源電圧はNGと判定されるので、タイミングウィンドウTW7〜TW8においては、電源電圧の変更制御は実施不可能と判定されるが、タイミングウィンドウTW7〜TW8以外のタイミングウィンドウTW1〜TW6,TW9〜TW10においては、電源電圧の変更制御は実施可能と判定される。なお、タイミングウィンドウTW6における電源電圧の変更の指示は、タイミングウィンドウTW1の終了時点におけるOKの判定を受けて、タイミングウィンドウTW2において他のコントローラ等により行われている。
【0068】
また、図13では、電源電圧の変更制御が実施される前後において、動作ホールド制御信号がLレベルとなっている。すなわち、動作ホールド制御信号は、電源電圧の変更が指示されたタイミングウィンドウTW2において立ち下がり、電源電圧にほとんど変動がなくなったタイミングウィンドウTW9において立ち上がっている。これにより、誤動作の発生する可能性が高い変更制御の前後において、デジタル回路10へのクロックの入力を遮断することによりデジタル回路10の動作をホールドすることができる。
【0069】
このように、本実施の形態に係る制御装置1cによれば、周波数/電圧制御回路40は、クロックの周波数または電源電圧の変更が指示されたタイミングで立ち下がり電源電圧がOKと判定されたタイミングで立ち上げる動作ホールド制御信号を生成し、AND回路A1を介してデジタル回路10へ入力させる。従って、実施の形態1に比較して、さらに誤動作を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】実施の形態1に係る制御装置の一の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る制御装置の周波数制御を示すタイミングチャートである。
【図3】実施の形態1に係る制御装置の電源電圧制御を示すタイミングチャートである。
【図4】実施の形態1に係る周波数/電圧制御回路の構成を示す回路図である。
【図5】実施の形態1に係る制御装置の有効性を示す回路図である。
【図6】実施の形態1に係る制御装置の他の構成を示すブロック図である。
【図7】実施の形態1に係る制御装置の他の構成を示す回路図である。
【図8】実施の形態2に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態3に係る制御装置による基準値の重み付けの例を模式的に示す概念図である。
【図10】実施の形態4に係る制御装置による基準値の重み付けの例を模式的に示す概念図である。
【図11】実施の形態5に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態5に係る制御装置の周波数制御を示すタイミングチャートである。
【図13】実施の形態5に係る制御装置の電源電圧制御を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0071】
1,1a〜1c 制御装置、10,10a〜10b デジタル回路、11 ノイズモニタ、12 アナログ/デジタル変換器、13 比較器、20 クロック発生装置、30 レギュレータ、40 周波数/電圧制御回路、50 メモリ、A1 AND回路、C1〜C7 比較器、O1 OR回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のデジタル処理を行うデジタル回路と、
クロックを前記デジタル回路へ入力させるクロック発生装置と、
電源電圧を前記デジタル回路へ入力させるレギュレータと、
前記クロックの周波数の変更制御を行う周波数制御信号を生成し前記クロック発生装置へ入力させる動作、または前記電源電圧の変更制御を行う電圧制御信号を生成し前記レギュレータへ入力させる動作を行う周波数/電圧制御回路と
を同一のチップ上に備える制御装置であって、
前記デジタル回路は、
前記デジタル回路内の複数の箇所に配置され、前記電源電圧またはグランド電圧をモニタすることによりノイズに関するアナログ量をそれぞれ得る複数のノイズモニタと、
前記複数のノイズモニタでそれぞれ得られた複数の前記アナログ量を、それぞれ複数のデジタル量へアナログ/デジタル変換するアナログ/デジタル変換器と、
前記複数のデジタル量を比較することにより一の最大デジタル量を導出し前記周波数/電圧制御回路へ入力させるデジタル量比較器と
を有し、
前記周波数/電圧制御回路は、前記周波数制御信号または前記電圧制御信号を、前記最大デジタル量と所定の基準デジタル量との比較結果に応じて生成する
制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記チップの外部から前記電源電圧または前記グランド電圧を供給する電源パッドまたはグランドパッドに近接して配置され、前記電源電圧またはグランド電圧をモニタすることにより参照アナログ量を得る参照ノイズモニタと
前記複数のノイズモニタと前記アナログ/デジタル変換器との間に介在し、複数の前記アナログ量から前記参照アナログ量を減算する減算器と
をさらに備える制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記アナログ/デジタル変換器は、変換対象となる前記アナログ量を得た前記ノイズモニタの前記デジタル回路内の位置に応じた重みを前記デジタル量へ付与しつつアナログ/デジタル変換する
制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の制御装置であって、
前記アナログ/デジタル変換器は、前記重みを、前記デジタル回路内の物理ブロック毎に定める
制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の制御装置であって、
前記アナログ/デジタル変換器は、前記重みを、前記デジタル回路内の機能ブロック毎に定める
制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記周波数/電圧制御回路は、前記最大デジタル量と所定の基準デジタル量との比較結果に応じた動作ホールド制御信号を生成し前記デジタル回路へ入力させる
制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−110332(P2009−110332A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282730(P2007−282730)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】