説明

制振制御装置、制振制御方法およびコンピュータプログラム

【課題】リアルタイムに最適な制御ゲインを同定し、操業中に最適なゲインを適用することが可能な制振制御装置を提供する。
【解決手段】連続的に搬送される帯状の金属板の、搬送方向に直交し、かつ板面に略垂直な方向の振動を抑制する制振装置を制御する制御器を有する本発明の制振制御装置は、制御器の制御ゲインを同定して変更する情報処理装置を備える。情報処理装置は、金属板の搬送方向と直交する方向の変位を検出する検出装置により検出された金属板の変位実績値と、制振装置の操作実績値とを取得するデータ取得部と、変位実績値および操作実績値に基づいて、制振装置の制御モデルを用いて制御器の制御ゲインを同定する制御ゲイン同定部と、同定された制御ゲインに基づいて、所定のタイミングで制御器の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板を搬送するときの当該金属板の板面と略直交する方向の振動を抑制する制振装置のディジタル信号処理による制御技術において、制振装置を制御する制振制御装置、制振制御方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄工場においては、例えば圧延、焼鈍、めっき、合金化等、様々な製造工程において帯状の鋼板をラインに沿って連続的に搬送しながら鋼板を処理している。鋼板を搬送する際、鋼板に振動が生じると、製品品質が劣化したりする等の不具合が生じる。このため、薄板鋼板のめっきライン、塗装ライン、洗浄ライン等には、鋼板の振動抑制を目的とした制振装置が設けられている。例えば、溶融亜鉛めっきラインにおいては、ラインを連続的に搬送され、溶融亜鉛ポットから出てくる鋼板に対してワイピングによってエアやガス等を吹き付けることで亜鉛付着量を調整している。ワイピングに対して鋼板の搬送方向下流側には、鋼板の振動を抑制する電磁制振装置が設けられている。電磁制振装置は、搬送される鋼板に影響する磁界を変化させることにより鋼板の振動を抑制する。これにより、鋼板への亜鉛の付着量を均一にすることができる。
【0003】
従来の電磁制振装置は、当該装置内に設けられた変位センサによって検出された、搬送中の鋼板の板面と直交する方向の変位情報値をフィードバックすることで変位指令値との差分をとり、PID制御によりその差分がゼロとなるように鋼板の位置を制御する。このような電磁制振装置において、PID制御のゲインが操業に応じた設定となっていない場合には、操業条件によっては振動を十分に抑制することができず鋼板の振動が発生してしまい、亜鉛付着量が不均一化して製品品質が劣化するという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、例えば特許文献1には、搬送される鋼板を挟んで対向するように配置され、吸引力を発生する一対の電磁石のインダクタンス変化から電磁石と鋼板との間隙を検出し、鋼板の板厚に応じて制御ゲインを変更する鋼板の制振制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−256325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の制御手法では、電磁石のインダクタンス変化より検出された電磁石と鋼板との間隙に基づいて、鋼板の板厚に応じて制御ゲインを変更しているため、変更後の制御ゲインを適用するまでに時間がかかるという問題があった。このため、リアルタイムに制御ゲインを同定し操業中に最適な制御ゲインに変更するのが難しいことがあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、連続的に搬送される帯状の金属板について、搬送方向に直交し、かつ板面に略垂直な方向の振動を抑制するのに際して、リアルタイムに最適な制御ゲインを同定し、操業中に最適なゲインを適用することが可能な、新規かつ改良された制振制御装置、制振制御方法およびコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、連続的に搬送される帯状の金属板の、搬送方向に直交し、かつ板面に略垂直な方向の振動を抑制する制振装置を制御する制御器を有する制振制御装置が提供される。かかる制振制御装置は、制御器の制御ゲインを同定して変更する情報処理装置を備える。情報処理装置は、金属板の搬送方向と直交する方向の変位を検出する検出装置により検出された金属板の変位実績値と、制振装置の操作実績値とを取得するデータ取得部と、変位実績値および操作実績値に基づいて、制振装置の制御モデルを用いて制御器の制御ゲインを同定する制御ゲイン同定部と、同定された制御ゲインに基づいて、予め設定された変更タイミングで制御器の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の制振制御装置は、鋼板の変位実績値および制振装置の操作実績値に基づき、所定のタイミングでリアルタイムに制御器の制御ゲインを変更する情報処理装置を備える。リアルタイムで制御器の制御ゲインを最適な制御ゲインに設定することにより、制振装置による鋼板の位置制御を高精度に行うことが可能となる。
【0010】
ここで、制御ゲイン変更部は、制御ゲイン同定部により同定された制御ゲインの値を1または複数の変更パターンで変化させて、制御モデルを用いて各変更パターンの制御ゲインを設定したときの金属板の推定変位を算出し、制御器の制御ゲインを、各変更パターンについて算出された金属板の推定変位が最小となる変更パターンの制御ゲインに変更してもよい。このように、同定された制御ゲインを変化させて、その際の金属板の推定変位を算出することで、より効果的に金属板の位置を制御できる制御ゲインを制御器に設定することができる。
【0011】
また、制御ゲイン変更部は、制振装置および制振制御装置を接続する通信ラインの同期カウンタに基づいて、制御器の制御ゲインを変更してもよい。この際、例えばPLC等の定周期で稼動し耐故障性も高い通信技術による通信ラインの同期カウンタを用いてもよい。これにより、情報処理装置をより定周期で動作させることができる。
【0012】
本発明の制振制御装置は、制振装置に対する制御器と情報処理装置との接続切替を行う切替スイッチをさらに備えることもできる。このとき、情報処理装置は、制振機器の、切替スイッチによる制御器と情報処理装置との接続状態を確認する確認部と、制御ゲイン変更部により決定された変更後の制御ゲインに基づいて、制振装置の操作量を算出する操作量算出部と、を備え、操作量算出部は、確認部により制振装置と情報処理装置との接続が確認されたとき、制振装置の操作量を算出し、算出した操作量を制振装置へ出力してもよい。これにより、制振装置を複数のルートから制御できるようにすることができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、連続的に搬送される帯状の金属板の、搬送方向に直交し、かつ板面に略垂直な方向の振動を抑制する制振装置を制御する制振制御方法が提供される。かかる制振制御方法は、金属板の搬送方向と直交する方向の変位を検出する検出装置により検出された金属板の変位実績値と、制振装置の操作実績値とを取得するデータ取得ステップと、変位実績値および操作実績値に基づいて、制振装置の制御モデルを用いて、制振装置を制御する制御器の制御ゲインを同定する制御ゲイン同定ステップと、同定された制御ゲインに基づいて、予め設定された変更タイミングで制御器の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、連続的に搬送される帯状の金属板の、搬送方向に直交し、かつ板面に略垂直な方向の振動を抑制する制振装置を制御する制御器を有する制振制御装置の、制御器の制御ゲインを変更する情報処理装置として機能させるコンピュータプログラムが提供される。かかるコンピュータプログラムは、金属板の搬送方向と直交する方向の変位を検出する検出装置により検出された金属板の変位実績値と、制振装置の操作実績値とを取得するデータ取得部と、変位実績値および操作実績値に基づいて、制振装置の制御モデルを用いて制御器の制御ゲインを同定する制御ゲイン同定部と、同定された制御ゲインに基づいて、予め設定された変更タイミングで制御器の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、情報処理装置により鋼板の変位実績値および制振装置の操作実績値に基づいてリアルタイムに最適な制御ゲインを求めることができるので、操業中に制御器の制御ゲインを最適な値に変更することが可能な制振制御装置、制振制御方法およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る連続溶融金属めっき装置を示す模式図である。
【図2】同実施形態に係る制振制御装置を備える制御システムの構成を示す説明図である。
【図3】鋼板の変位の一例を示すグラフである。
【図4】同実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】同実施形態に係る情報処理装置にて構築されたモデルを示すブロック線図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る制振制御装置を備える制御システムの構成を示す説明図である。
【図7】同実施形態に係る情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図8】情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.第1の実施形態>
[連続溶融金属めっき装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態を、製鉄工場における連続溶融金属めっき装置を一例として説明する。図1は、本実施形態に係る連続溶融金属めっき装置1を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、連続溶融金属めっき装置1は、帯状の鋼板2を、溶融金属を満たしためっき浴3に浸漬することにより、鋼板2の表面に溶融金属を連続的に付着させるための装置である。連続溶融金属めっき装置1は、溶融金属ポット4と、ポットロール5と、上下一対のサポートロール6、7と、ワイピングノズル8a、8bと、電磁制振装置9a、9bと、トップロール10とを備える。
【0020】
鋼板2は、溶融金属によるめっき対象となる金属帯の一例である。本実施形態では鋼板2の例を上げて説明するが、本発明の金属帯は、めっき対象となる帯状の金属材料であれば、その材質は問わない。また、溶融金属は、亜鉛、鉛−錫、アルミニウムなどの耐食性金属が一般的であるが、めっき金属として使用されるその他の金属であってもよい。溶融金属で鋼板2をめっきして得られる溶融めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、合金化亜鉛めっき鋼板等が代表的であるが、その他の種類のめっき鋼板であってもよい。
【0021】
溶融金属ポット4は、上記溶融金属からなるめっき浴3を貯留する。めっき浴3には、当該めっき浴3に鋼板2を導入させるためのスナウト(図示せず。)が、その一端をめっき浴3内に浸漬されるように傾斜配設されている。
【0022】
ポットロール5は、めっき浴3中の最下方に配設され、サポートロール6、7よりもロール径が大きい。このポットロール5は、スナウトを通ってめっき浴3内に斜め下方に向けて導入された鋼板2を、鉛直方向上方に方向転換する。
【0023】
サポートロール6、7は、めっき浴3中のポットロール5の上方に配置され、ポットロール5から鉛直方向に引き上げられた鋼板2を左右両側から挟み込むようにして配設される。サポートロール6、7は、不図示の軸受(例えば、すべり軸受、転がり軸受等)により回転自在に支持される。本実施形態にかかるサポートロール6、7は無駆動式であり、高速通板される鋼板2に従動して回転する。なお、サポートロール6、7はモータ等により回転駆動される駆動式であってもよい。
【0024】
ワイピングノズル8a、8bは、めっき浴3外に配設けられ、めっき浴3から鉛直方向に引き上げられた鋼板2の表面に気体を吹き付けて余剰な溶融金属を払拭する。これにより、鋼板2に対する溶融金属の目付量を適正量に制御できる。
【0025】
電磁制振装置9a、9bは、連続溶融金属めっき装置1を搬送される鋼板2の、主として搬送方向に直交し、かつ板面に略垂直な方向の振動を抑制するための装置である。電磁制振装置9a、9bは、鋼板2を挟んで対向して配置されコイルが巻回された一対の鉄芯からなり、直流励磁により鉄芯に磁束を発生させる。この磁束の影響を受けて、搬送方向に対して直交する方向における鋼板2の位置が変化する。電磁制振装置9a、9bは、このように鋼板2の位置を制御して、言わば鋼板面の厚さ方向の振動を抑制する。なお、電磁制振装置9a、9bによる制振制御方法の詳細については後述する。また、本実施形態に係る電磁制振装置9a、9bは、後述する制振制御装置によってリアルタイムに制御されている。
【0026】
トップロール10は、めっき処理された鋼板2を次の工程へ搬送するために、鋼板2の搬送方向を転換する。
【0027】
このような連続溶融金属めっき装置1は、不図示の駆動源により鋼板2を長手方向に移動させて、装置内の各部を通板させる。鋼板2は、スナウトを通じてめっき浴3中に斜め下方に導入され、ポットロール5を周回して、その進行方向が鉛直方向上方に変換される。次いで、鋼板2は、サポートロール6、7の間に挟み込まれながら上昇して、めっき浴3外に引き上げられる。このとき、鋼板2は、サポートロール6、7により形状矯正されて、幅方向の反りが抑制される。その後、めっき浴3外に引き上げられた鋼板2は、ワイピングノズル9により余剰な溶融金属を払拭されて所定の目付量に制御され、トップロール10により次の工程へ搬送される。このようにして、連続溶融金属めっき装置1は、鋼板2をめっき浴3中に連続的に浸漬して、溶融金属でめっきする。
【0028】
[制振制御装置の構成]
本実施形態に係る連続溶融金属めっき装置1において鋼板2の振動を抑制する電磁制振装置9a、9bは、図2に示す制振制御装置100によってリアルタイムに制御されている。上述したように、鋼板2は、必ずしも常に同じ位置を通過して搬送されることはなく、搬送による振動等によって通過位置は変動している。例えば、図3に測定した一例を示すように、電磁制振装置9a、9bと鋼板2の板面との距離(間隔)は時間の経過とともに時々刻々と変化している。電磁制振装置9a、9bにより鋼板2の位置を制御するが、本実施形態では、この電磁制振装置9a、9bの操作量を算出する制振制御装置100の制御ゲインをリアルタイムで更新することで、高精度に鋼板2の位置を制御することができる。
【0029】
本実施形態に係る制振制御装置100は、情報処理装置110と、PID制御器120と、電流コントローラ130とを備える。
【0030】
(PID制御器および電流コントローラ)
PID制御器120および電流コントローラ130は、電磁制振装置9a、9bを制御する機能部である。PID制御器120により電磁制振装置9a、9bの操作量を決定し、決定された操作量に基づいて電流コントローラ130により電磁制振装置9a、9bに加える電流を制御している。
【0031】
より具体的に説明すると、PID制御器120には、電磁制振装置9a、9bから鋼板2までの距離を表す変位情報H、Hと鋼板2の目標位置を表す位置鋼板位置指令Hrefとに基づいて算出された偏差Eが入力される。ここで、変位情報は、電磁制振装置9a、9bの近辺に設置された変位センサ11a、11bによって測定することができる。変位センサ11a、11bとしては、例えば渦電流式のセンサを用いることができる。渦電流式の変位センサ11a、11bは、高周波磁界を利用して、当該磁界内に測定対象物が存在することにより電磁誘導作用によって変化するコイルのインピーダンスを測定する。そして、変位センサ11a、11bは、インピーダンスが変化する発振状態の変化より、鋼板2と変位センサ11a、11bとの間の距離を測定する。この変位情報は電磁制振装置9a、9bから鋼板2までの距離を表す測定値であって、鋼板2の搬送方向に直交し、かつ板面に垂直な方向の位置情報である。変位センサは1台であってよく、また、板幅方向に複数台設置して、各変位センサの測定値の平均値を採用してもよい。
【0032】
本実施形態では、鋼板2について、電磁制振装置9aと対向する鋼板2の面を表面、電磁制振装置9bと対向する鋼板2の面を裏面とする。そして、鋼板2の表面と変位センサ11aとの間の距離を変位情報Hとし、鋼板2の裏面と変位センサ11bとの間の距離を変位情報Hとする。変位情報HとHとの差分をとることにより実際の電磁制振装9a、9bに対する鋼板2の位置が取得され、実際の鋼板2の位置と鋼板位置指令Hrefとの差分をとることにより目標値と実際値(変位実績値)との偏差Eが取得される。
【0033】
PID制御器120は、偏差Eに基づき、PID制御によって鋼板2の新たな位置を算出する。そして、電流コントローラ130は、PID制御器120により算出された操作量に基づき、電磁制振装置9a、9bに電流を加える。
【0034】
(情報処理装置)
本実施形態に係る制振制御装置100は、電磁制振装置9a、9bの操作量を算出するPID制御器120における制御ゲインをリアルタイムに変更することができる。制振制御装置100は、鋼板2の現在位置に応じて制御ゲインを変更するための機能部として、情報処理装置110を備えている。
【0035】
情報処理装置110は、図4に示すように、データ取得部112と、制御ゲイン同定部114と、制御ゲイン変更部116と、メモリ118とを備える。データ取得部112は、制御LAN102を介して電磁制振装置9a、9bの操業に必要なパラメータや、電磁制振装置9a、9bの変位実績値および電磁石に流れる電流実績値をリアルタイムで取得する。データ取得部112にて取得されたデータは、制御ゲイン同定部114へ出力され、必要に応じてメモリ118に記録される。なお、本実施の形態では電流実績値が制振装置の操作実績値に当たる。
【0036】
制御ゲイン同定部114は、電磁制振装置9a、9bを制御する制御系モデルを構築し、当該モデルに基づきPID制御器の制御ゲインの同定を行う。図5に、制御ゲイン同定部114にて構築されたモデルのブロック線図を示す。図5のブロック線図で表されるモデルは、PID制御器120、電流コントローラ130、および電磁制振装置9a、9bのコイルをモデル化したものである。制御ゲイン同定部114による制御ゲイン同定処理は、以下のように行われる。
【0037】
まず、PID制御器モデルに入力される偏差Eは、図2に示したように下記数式(1)で表される。
【0038】
【数1】

【0039】
また、図5に示すブロック線図の伝達関数は下記数式(2)で表される。なお、図5において、符号114a、114b、114cはそれぞれ制御ゲインのうちPゲイン、Iゲイン、Dゲインを示す。符号114dは積分器であり、符号114eは微分器である。また、符号114fは電流コントローラ・コイルモデルを表す。なお、Tはコイルの時定数である。
【0040】
【数2】

【0041】
ここで、数式(2)を下記数式(3)に基づき双一次変換により離散化すると、下記数式(4)のようになる。なお、Tはサンプリング周期を表す。I[k]はk時刻における電流Iの値であり、E[k]はk時刻における偏差Eの値である。
【0042】
【数3】


【0043】
数式(4)を展開すると下記数式(5)のようになり、さらに数式(5)をz−1I[k]=I[k−1]に基づき展開すると下記数式(6)となる。ここで、I[k−1]はk時刻の1単位時刻前の電流Iの値であり、I[k−2]はk時刻の2単位時刻前の電流Iの値である。また、E[k−1]はk時刻の1単位時刻前の偏差Eの値であり、E[k−2]はk時刻の2単位時刻前の偏差Eの値である。
【0044】
【数4】

【0045】
そして、数式(6)をI[k]についての式に整理すると、下記数式(7)となる。
【0046】
【数5】

【0047】
ここで、数式(7)を行列で表現すると、下記数式(8)のようになる。こうして電磁制振装置9a、9bに関する制御系モデルが構築される。
【0048】
【数6】

【0049】
本実施形態に係る制振制御装置100の制御ゲイン同定部114は、PID制御器120の制御ゲイン(Pゲイン、Iゲイン、Dゲイン)を、下記数式(9)により同定し、制御ゲイン変更部116により同定された制御ゲインに基づいてPID制御器120の制御ゲインを更新する。このようにリアルタイムに制御ゲインを同定し、時々刻々と変化する状況に適した制御ゲインを設定することで、高精度に電磁制振装置9a、9bを制御することができ、鋼板2の振動を効果的に抑制することができる。
【0050】
【数7】

【0051】
数式(9)および以下において、上部に^(ハット)が付してある値は推定値であることを意味する。数式(9)より、Pゲイン、Iゲイン、およびDゲインは、数式(8)の変数a[k]、b[k]、c[k]、d[k]、e[k]の推定値に基づき算出することができる。これらの変数は、例えば逐次最小二乗法により算出することができる。一般に、逐次最小二乗法は、下記数式(10)により表される。
【0052】
【数8】

【0053】
忘却係数λは、値を更新する際の修正量を算出するにあたり、最新のデータによる修正をどの程度まで修正量に反映させるかを設定するための係数であり、適宜設定することができる。数式(10)に基づく最小二乗法により推定したい変数を算出することで、数式(9)により、Pゲイン、Iゲイン、およびDゲインの推定値を算出することができる。制御ゲイン同定部114は、算出した制御ゲインを制御ゲイン変更部116へ出力する。
【0054】
図4の説明に戻り、制御ゲイン変更部116は、制御LAN102を介して、PID制御器120に設定されている制御ゲインを、制御ゲイン同定部114により同定された制御ゲイン(Pゲイン、Iゲイン、Dゲイン)に基づいて変更する。制御ゲイン変更部116では、現在設定されていると推定された制御ゲインでの制御よりも効果的に鋼板2の振動を抑制できる制御ゲインが存在するか否かを判定し、PID制御器120の制御ゲインをより有効な値に変更する。例えば、制御ゲイン変更部116は、制御ゲイン同定部114により同定された制御ゲインを1または複数の変更パターンで変化させて、図5に示すモデルに基づき各変更パターンについての制御対象である鋼板2の変位を算出する。そして、制御ゲイン変更部116は、制御ゲインを各変更パターンについて変化させたときの鋼板2の予測変位が最小となる変更パターンの制御ゲインを、PID制御器120に反映させる。
【0055】
制御ゲインの変更パターンは、適宜設定することができ、少なくとも1つあればよい。例えば、制御ゲイン変更部116は、制御ゲイン同定部114により同定された制御ゲインを3%、5%、7%と上下させた6パターンについて、鋼板2の予測変位を算出する。そして、制御ゲイン変更部116は、これらの変更パターンのうち鋼板2の予測変位が最小となる変更パターンの制御ゲインを特定し、制御LAN102を介して、PID制御器120の制御ゲインを変更する。制御ゲイン変更部116は、予め設定された変更タイミングで、例えば、制御ゲイン同定部114から新たな制御ゲインが入力されたタイミングで、PID制御器120の制御ゲインの設定を変更する。
【0056】
メモリ118は、情報処理装置100により制御ゲインを算出するにあたり必要な情報を一時的に記憶する記憶部である。メモリ118は、例えば、データ取得部112により取得された各種情報や、制御ゲイン同定部114により制御ゲインを算出する過程で必要な情報等を記憶する。
【0057】
このような情報処理装置110は、例えばパーソナルコンピュータを用いて構築することができる。パーソナルコンピュータを用いることができることでPID制御器120の制御ゲインをリアルタイムに変更するシステムを容易に構築できる。一方、制御系設計上、情報処理装置110には定周期性を厳守することが要求される。そこで、パーソナルコンピュータで構築された情報処理装置110により厳密な定周期での稼動を実現するため、定周期で稼動し耐故障性も高いPLCと同期をとるようにしてもよい。
【0058】
具体的には、情報処理装置110は、例えば定周期で行われるPLCのカウントアップに基づいてPID制御器120の制御ゲインを変更するようにする。すなわち、制御ゲインの設定を変更する変更タイミングは、PLCのカウントアップに基づいて決定されている。この場合、情報処理装置110は、例えばPLCのカウントアップ値が変化したときには上記制御ゲイン同定部114および制御ゲイン変更部116による演算を1回実施し、PID制御器120の制御ゲインを変更する。一方、情報処理装置110を構築するパーソナルコンピュータのカウンタが定周期で作動していない場合等の問題発生時には、情報処理装置110はPLCにより現在設定されている制御ゲインでの操業を行うようにしてもよい。
【0059】
このように、定周期性の高い設備と同期して情報処理装置110を動作させ、PID制御器120の制御ゲインを変更することで、安定した制御システムを実現することができる。
【0060】
以上、本実施形態に係る電磁制振装置9a、9bを制御する制振制御装置100の構成とその機能について説明した。本実施形態の制振制御装置100は、電磁制振装置9a、9bを制御する制振制御装置に、鋼板2の変位実績値および電磁石に流れる電流実績値に基づきリアルタイムにPID制御器120の制御ゲインを変更する情報処理装置110を備える。これにより、リアルタイムで最適な制御ゲインを設定することができ、電磁制振装置9a、9bによる鋼板2の位置制御を高精度に行うことが可能となる。
【0061】
<2.第2の実施形態>
次に、図6および図7に基づいて、本発明の第2の実施形態に係る制振制御装置200について説明する。本実施形態に係る制振制御装置200は、第1の実施形態の制振制御装置100と比較して、切替スイッチ240を備える点で相違する。以下、第1の実施形態との相違点を主に、本実施形態に係る制振制御装置200について説明する。なお、図6は、本実施形態に係る制振制御装置200を備える制御システムの構成を示す説明図である。図7は、本実施形態に係る情報処理装置210の機能構成を示すブロック図である。
【0062】
[制振制御装置の構成]
本実施形態に係る制振制御装置200は、図6に示すように、情報処理装置210と、PID制御器220と、電流コントローラ230と、切替スイッチ240とを備える。本実施形態に係るPID制御器220および電流コントローラ230は、第1の実施形態に係るPID制御器120および電流コントローラ130と同様に構成され、機能する。このため、ここではPID制御器220および電流コントローラ230についての詳細な説明は省略する。
【0063】
(切替スイッチ)
本実施形態に係る制振制御装置200は、図6に示すように、通常のPID制御器220および電流コントローラ230により電磁制振装置9a、9bの操作量を算出するルートと、情報処理装置210により電磁制振装置9a、9bの操作量を算出するルートとを有する。切替スイッチ240は、この2つのルートを切り替えるために設けられている。切替スイッチ240によって電流コントローラ230と電磁制振装置9a、9bとが接続されている場合には、第1の実施形態と同様に、情報処理装置210にて新たな制御ゲインをリアルタイムで算出、PID制御器220の制御ゲインを更新して、当該ゲインに基づいて電流コントローラ230によって電磁制振装置9a、9bに加える電流値が算出される。一方、切替スイッチ240によって情報処理装置210と電磁制振装置9a、9bとが接続されている場合には、新たな制御ゲインを用いて、情報処理装置210内で電磁制振装置9a、9bに加える電流値を算出する。
【0064】
切替スイッチ240の設定は、例えば、制御システムの異常発生箇所を検知して自動的に切り替えるようにしてもよく、オペレータの判断によって切り替えるようにしてもよい。このような切替スイッチ240を設けることで、より容易にリアルタイムに制御ゲインを変更することができ、各時点における最適な制御ゲインで電磁制振装置9a、9bを制御することが可能となる。また、電磁制振装置9a、9bを複数ルートで制御することが可能なため、あるルートでのリアルタイム制御に問題が発生しても、他のルートでの制御が可能である。これにより、安定した制御システムを実現することができる。
【0065】
(情報処理装置)
情報処理装置210は、図7に示すように、データ取得部211と、制御ゲイン同定部212と、制御ゲイン変更部213と、出力先確認部214と、操作量算出部215と、メモリ216とを備える。
【0066】
データ取得部211は、制御LAN102を介して電磁制振装置9a、9bの操業に必要なパラメータや、電磁制振装置9a、9bの変位実績値および電磁石に流れる電流実績値をリアルタイムで取得する。データ取得部211にて取得されたデータは、制御ゲイン同定部212へ出力され、必要に応じてメモリ216に記録される。データ取得部211は、第1の実施形態に係るデータ取得部112と同様に機能する。
【0067】
制御ゲイン同定部212は、電磁制振装置9a、9bを制御する制御系モデルを構築し、当該モデルに基づきPID制御器の制御ゲインの同定を行う。本実施形態に係る制御ゲイン同定部212も、第1の実施形態に係る制御ゲイン同定部114と同様に機能する。すなわち、制御ゲイン同定部114は、図5に示すブロック線図で表されるモデルを構築し、当該モデルに基づきPID制御器220の制御ゲインを同定する。この制御ゲイン同定処理は、第1の実施形態と同様の手法により上記数式(1)〜(10)に基づき行うことができる。制御ゲイン同定部212は、算出されたPゲイン、Iゲイン、およびDゲインの推定値を制御ゲイン変更部213へ出力する。
【0068】
制御ゲイン変更部213は、制御LAN102を介して、PID制御器220に設定されている制御ゲインを、制御ゲイン同定部212により同定された制御ゲイン(Pゲイン、Iゲイン、Dゲイン)に基づいて変更する。本実施形態に係る制御ゲイン変更部213も、第1の実施形態に係る制御ゲイン変更部114とほぼ同様に機能する。
【0069】
まず、第1の実施形態と同様に、制御ゲイン変更部213は、制御ゲイン同定部212により同定された制御ゲインを1または複数の変更パターンで変化させて、図5に示すモデルに基づき各変更パターンについての制御対象である鋼板2の変位を算出する。そして、制御ゲイン変更部213は、制御ゲインを各変更パターンについて変化させたときの鋼板2の予測変位が最小となる変更パターンの制御ゲインを特定し、電磁制振装置9a、9bの操作量を算出するための制御ゲインとして用いることを決定する。制御ゲインの変更パターンは、第1の実施形態と同様に適宜設定することができ、少なくとも1つあればよい。
【0070】
また、制御ゲイン変更部213は、後述する出力先確認部214の確認情報に基づいて、直接制御LAN102を介してPID制御器220の制御ゲインを変更するか、あるいは後述する操作量算出部215により電磁制振装置9a、9bの操作量を算出するかを判定する。かかる判定結果に基づき、制御ゲイン変更部213は情報の出力先を決定し、決定した出力先に対して新たな制御ゲインを出力する。
【0071】
出力先確認部214は、切替スイッチ240の設定に基づいて、制御ゲイン変更部214の情報の出力先を確認する。出力先確認部214は、切替スイッチ240の設定より電磁制振装置9a、9bの操作量を電流コントローラ230または操作量算出部215のいずれで行うかを確認し、当該操作量を算出する機能部を確認情報として制御ゲイン変更部213に出力する。
【0072】
操作量算出部215は、制御ゲイン変更部213により決定された制御ゲインに基づいて、電磁制振装置9a、9bの操作量を算出する。操作量算出部215は、情報処理装置210にて操作量を算出する場合にのみ機能する。操作量算出部215は、情報処理装置200にて構築されたモデルに基づいて、電流コントローラ230と同等、電磁制振装置9a、9bのコイルへ与える電流値を操作量として算出し、切替スイッチ240を介して算出した電流値を電磁制振装置9a、9bへ直接出力する。これにより、電磁制振装置9a、9bは操作量算出部215によっても直接制御することが可能となる。
【0073】
メモリ216は、情報処理装置200により制御ゲインを算出するにあたり必要な情報を一時的に記憶する記憶部であり、第1の実施形態のメモリ118と同様に機能する。
【0074】
以上、本実施形態に係る電磁制振装置9a、9bを制御する制振制御装置200の構成とその機能について説明した。本実施形態の制振制御装置200は、電磁制振装置9a、9bを制御する制振制御装置に、鋼板2の変位実績値および電磁石に流れる電流実績値に基づきリアルタイムにPID制御器120の制御ゲインを変更する情報処理装置210を備える。これにより、リアルタイムで最適な制御ゲインを設定することができ、電磁制振装置9a、9bによる鋼板2の位置制御を高精度に行うことが可能となる。また、切替スイッチ240によって電磁制振装置9a、9bの操作量を算出するルートを切り替え可能とすることで、耐故障性の高い、安定した制御システムを実現することができる。
【0075】
<3.情報処理装置のハードウェア構成>
次に、図8に基づいて、上記実施形態に係る情報処理装置110、210のハードウェア構成について、詳細に説明する。図8は、上記実施形態に係る情報処理装置110、210のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0076】
情報処理装置110、210は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、情報処理装置110、210は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
【0077】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置110、210内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0078】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
【0079】
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、情報処理装置110、210の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。情報処理装置110、210のユーザは、この入力装置909を操作することにより、情報処理装置110、210に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0080】
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、情報処理装置110、210が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、情報処理装置110、210が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0081】
ストレージ装置913は、情報処理装置110、210の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
【0082】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、情報処理装置110、210に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0083】
接続ポート917は、機器を情報処理装置110、210に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、情報処理装置110、210は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
【0084】
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
【0085】
以上、上記の本発明の実施形態に係る情報処理装置110、210の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0087】
1 連続溶融金属めっき装置
2 鋼板
3 めっき浴
4 溶融金属ポット
5 ポットロール
6、7 サポートロール
8a、8b ワイピングノズル
9a、9b 電磁制振装置
10 トップロール
11a、11b 変位センサ
100、200 制振制御装置
110、210 情報処理装置
112、211 データ取得部
114、212 制御ゲイン同定部
116、213 制御ゲイン変更部
118、216 メモリ
120、220 PID制御器
130、230 電流コントローラ
214 出力先確認部
215 操作量算出部
240 切替スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送される帯状の金属板の、搬送方向に直交し、かつ板面に略垂直な方向の振動を抑制する制振装置を制御する制御器を有する制振制御装置であって、
前記制御器の制御ゲインを同定して変更する情報処理装置を備え、
前記情報処理装置は、
前記金属板の搬送方向と直交する方向の変位を検出する検出装置により検出された金属板の変位実績値と、前記制振装置の操作実績値とを取得するデータ取得部と、
前記変位実績値および前記操作実績値に基づいて、前記制振装置の制御モデルを用いて前記制御器の制御ゲインを同定する制御ゲイン同定部と、
同定された前記制御ゲインに基づいて、予め設定された変更タイミングで前記制御器の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更部と、
を備えることを特徴とする、制振制御装置。
【請求項2】
前記制御ゲイン変更部は、
前記制御ゲイン同定部により同定された前記制御ゲインの値を1または複数の変更パターンで変化させて、前記制御モデルを用いて前記各変更パターンの制御ゲインを設定したときの前記金属板の推定変位を算出し、
前記制御器の制御ゲインを、前記各変更パターンについて算出された前記金属板の推定変位が最小となる変更パターンの制御ゲインに変更することを特徴とする、請求項1に記載の制振制御装置。
【請求項3】
前記制御ゲイン変更部は、前記制振装置および前記制振制御装置を接続する通信ラインの同期カウンタに基づいて、前記制御器の制御ゲインを変更することを特徴とする、請求項1または2に記載の制振制御装置。
【請求項4】
前記制振装置に対する前記制御器と前記情報処理装置との接続切替を行う切替スイッチをさらに備え、
前記情報処理装置は、
前記制振機器の、前記切替スイッチによる前記制御器と前記情報処理装置との接続状態を確認する確認部と、
前記制御ゲイン変更部により決定された変更後の制御ゲインに基づいて、前記制振装置の操作量を算出する操作量算出部と、
を備え、
前記操作量算出部は、前記確認部により前記制振装置と前記情報処理装置との接続が確認されたとき、前記制振装置の操作量を算出し、算出した前記操作量を前記制振装置へ出力することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
連続的に搬送される帯状の金属板の、搬送方向に直交し、かつ板面に略垂直な方向の振動を抑制する制振装置を制御する制振制御方法であって、
前記金属板の搬送方向と直交する方向の変位を検出する検出装置により検出された金属板の変位実績値と、前記制振装置の操作実績値とを取得するデータ取得ステップと、
前記変位実績値および前記操作実績値に基づいて、前記制振装置の制御モデルを用いて、前記制振装置を制御する制御器の制御ゲインを同定する制御ゲイン同定ステップと、
同定された前記制御ゲインに基づいて、予め設定された変更タイミングで前記制御器の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更ステップと、
を含むことを特徴とする、制振制御方法。
【請求項6】
コンピュータを、連続的に搬送される帯状の金属板の、搬送方向に直交し、かつ板面に略垂直な方向の振動を抑制する制振装置を制御する制御器を有する制振制御装置の、前記制御器の制御ゲインを変更する情報処理装置として機能させるコンピュータプログラムであって、
前記金属板の搬送方向と直交する方向の変位を検出する検出装置により検出された金属板の変位実績値と、前記制振装置の操作実績値とを取得するデータ取得部と、
前記変位実績値および前記操作実績値に基づいて、前記制振装置の制御モデルを用いて前記制御器の制御ゲインを同定する制御ゲイン同定部と、
同定された前記制御ゲインに基づいて、予め設定された変更タイミングで前記制御器の制御ゲインを変更する制御ゲイン変更部と、
を備えることを特徴とする、コンピュータプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−223775(P2012−223775A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90831(P2011−90831)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】