説明

刺激付与装置及び車両用シート

【課題】シート表面からの磁気の発生が望ましくない場合や不必要な場合には磁気の発生を抑制する。
【解決手段】刺激付与装置10には、シート表皮材20と磁石体22との間に電磁石体24が備えられている。電磁石体24は、通電に伴いシート表皮材20に対する着座者側Pに磁気Mを発生すると共に磁石体22に対して着座者P側に反発力を発生する構成とされている。この構成によれば、シート表皮材20側に配置されているのは電磁石体24であるので、この電磁石体24からの磁気Mの発生が停止されたときには、例えば、シート表皮材20側に永久磁石からなる磁石体が配置された構成に比して、シート表面からの磁気Mの発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺激付与装置及び車両用シートに係り、特に車両用シートの着座者に対して磁気及び押圧力を刺激として付与する刺激付与装置及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートの着座者に対して磁気を刺激として付与する刺激付与装置としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1には、磁気治療機能付きシートカバーの例が開示されている。この特許文献1に記載の例において、シートカバーは、複数の磁石体が裏面に装着された構成とされている。
【特許文献1】特開2002−65412号公報
【特許文献2】特開2004−105669号公報
【特許文献3】実開昭64−43753号公報
【特許文献4】実開昭62−139728号公報
【特許文献5】特開2004−113707号公報
【特許文献6】特開平11−151141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、シートカバーの表面に磁石体からの磁気が常に発生した状態となっている。このため、例えば、磁気を必要としない着座者に対して磁気を付与してしまったり、シートカバーの表面に金属等の不要物が付着したりする虞がある。従って、シート表面からの磁気の発生が望ましくない場合や不必要な場合には磁気の発生を抑制できることが望まれる。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シート表面からの磁気の発生が望ましくない場合や不必要な場合には磁気の発生を抑制することができる刺激付与装置及び車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の刺激付与装置は、車両用シートを構成するシートバック及びシートクッションの少なくとも一方の着座者側に配置されるシート表皮材と、前記シート表皮材に対する前記着座者側と反対側に配置された磁石体と、前記シート表皮材と前記磁石体との間に、前記着座者と接離方向に移動可能に配置され、通電に伴い前記シート表皮材に対する前記着座者側に磁気を発生すると共に前記磁石体に対して前記着座者側に反発力を発生する電磁石体と、前記電磁石体への通電を制御するための制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の刺激付与装置では、電磁石体が制御手段によって通電されると、この電磁石体がシート表皮材に対する着座者側に磁気を発生すると共に磁石体に対して着座者側に反発力を発生する。これにより、電磁石体から着座者に対して磁気及び押圧力が付与され、着座者に対してマッサージ効果が提供される。
【0007】
一方、電磁石体への通電が制御手段によって遮断されると、電磁石体からの磁気の発生が停止されて、シート表面からの磁気の発生(つまり磁気の漏洩)が抑制される。しかも、シート表皮材側に配置されているのは電磁石体であるので、この電磁石体からの磁気の発生が停止されたときには、例えば、シート表皮材側に永久磁石からなる磁石体が配置された構成に比して、シート表面からの磁気の発生がより一層効果的に抑制される。
【0008】
このように、請求項1に記載の刺激付与装置によれば、シート表面からの磁気の発生が望ましくない場合や不必要な場合には、電磁石体への通電を制御手段によって遮断することで、シート表面からの磁気の発生を抑制することができる。
【0009】
請求項2に記載の刺激付与装置は、請求項1に記載の刺激付与装置において、前記磁石体は、永久磁石により構成され、前記車両用シートの外方と前記磁石体との間に配置される磁気遮蔽手段を備えた、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の刺激付与装置によれば、磁石体が永久磁石により構成された場合でも、この磁石体から発生した磁気を、車両用シートの外方と磁石体との間に配置された磁気遮蔽手段によって遮蔽することができる。
【0011】
請求項3に記載の刺激付与装置は、請求項2に記載の刺激付与装置において、前記磁気遮蔽手段は、その内部に前記磁石体を収容し前記電磁石体側に開口を有する有底筒状に形成されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の刺激付与装置によれば、永久磁石からなる磁石体から有底筒状に形成された磁気遮蔽手段の開口を介して電磁石体側へ磁気(電磁石体との間に反発力を生じさせるための磁気)を発生させつつ、磁石体からそれ以外の方向へ発生する磁気を磁気遮蔽手段によって遮蔽することができる。
【0013】
請求項4に記載の刺激付与装置は、請求項2に記載の刺激付与装置において、前記磁気遮蔽手段は、前記電磁石体に対する着座者側に前記シート表皮材に沿って設けられると共に、前記電磁石体と前記着座者との間に磁気透過部を有する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の刺激付与装置によれば、磁気遮蔽手段の磁気透過部を介して電磁石体からの磁気を着座者側に透過させつつ、永久磁石からなる磁石体から着座者側へ発生する磁気を磁気遮蔽手段によって遮蔽することができる。
【0015】
請求項5に記載の刺激付与装置は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の刺激付与装置において、前記電磁石体は、軟磁性材料により形成された鉄心部と、前記鉄心部に巻回された巻線部と、を有して構成されて、前記磁石体と接離方向に対向して配置されている、ことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の刺激付与装置によれば、磁石体が永久磁石により構成された場合でも、この磁石体から発生した磁気を、電磁石体のうちの軟磁性材料により形成された鉄心部によって遮蔽することができる。これにより、シート表面からの磁気の発生が望ましくない場合や不必要な場合におけるシート表面からの磁気の発生(つまり磁気の漏洩)をさらに効果的に抑制することができる。
【0017】
請求項6に記載の刺激付与装置は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の刺激付与装置において、前記シート表皮材を加温する発熱手段を備えた、ことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の刺激付与装置によれば、発熱手段によってシート表皮材を加温することにより、電磁石からの磁気及び押圧力に加えて温熱刺激を着座者に付与することができる。
【0019】
しかも、発熱手段が例えば電熱ヒータ等の電源を要する構成の場合には、電源から電磁石体への配線の一部を電源から発熱手段への配線と共有させることができるので、電源から電磁石体への配線の全てを新設する必要が無く、配線数の増加を抑制することができる。
【0020】
請求項7に記載の刺激付与装置は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の刺激付与装置において、前記電磁石体は、通電方向の切替に伴い、前記磁石体に対して前記着座者側に反発力を発生する反発力発生状態と、前記磁石体に対して吸引力を発生する吸引力発生状態と、に切替可能とされ、前記制御手段は、前記電磁石体への通電方向を切り替える、ことを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の刺激付与装置によれば、制御手段によって電磁石体への通電方向が切り替えられると、電磁石体が磁石体に対して着座者側に反発力を発生する反発力発生状態と、磁石体に対して吸引力を発生する吸引力発生状態と、に切り替えられる。これにより、電磁石体から着座者に対して押圧力を繰り返し付与することができ、着座者に対してより一層効果的なマッサージ効果を提供することができる。
【0022】
また、前記課題を解決するために、請求項8に記載の車両用シートは、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の刺激付与装置を一体に備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項8に記載の車両用シートによれば、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の刺激付与装置を一体に備えているので、シート表面からの磁気の発生が望ましくない場合や不必要な場合には磁気の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、本発明によれば、シート表面からの磁気の発生が望ましくない場合や不必要な場合には、電磁石体への通電を制御手段によって遮断することで、シート表面からの磁気の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
はじめに、本発明の一実施形態について説明する。
【0026】
図1には、本発明の一実施形態に係る刺激付与装置10が一体に備えられた車両用シート12が斜視図にて示されており、図2には、この車両用シート12における刺激付与装置10が設けられた部分が側面断面図にて示されている。
【0027】
なお、これらの図及び以下に説明する図において示される矢印UP、矢印OUT、矢印FRは、この車両用シート12が備えられた車両の車両上下方向上側、車両幅方向外側、車両前後方向前側をそれぞれ示している。
【0028】
図1に示される車両用シート12は、例えば、乗用自動車等の車両の前席等として用いられるものであり、シートクッション14及びシートバック16を備えて構成されている。シートバック16には、刺激付与装置10が一体に設けられており、この刺激付与装置10は、例えば着座者の肩部及び腰部を支持する部位(例えば、着座者のツボの位置する部位)に埋設された複数の刺激付与ユニット18を有して構成されている。
【0029】
なお、本実施形態では、刺激付与装置10がシートバック16に一体に設けられており、このシートバック16の着座者側に配置されたシート表皮材20及び複数の刺激付与ユニット18により刺激付与装置10が構成されている。
【0030】
各刺激付与ユニット18は、図2に示されるように、磁石体22と、電磁石体24と、制御手段としての制御スイッチ26と、セパレータ28と、を有して構成されている。
【0031】
磁石体22は、永久磁石により構成されており、シート表皮材20に対する着座者P側と反対側に配置されている。この磁石体22は、着座者P側にS極を有すると共に着座者P側と反対側にN極を有する構成とされており、図示しない例えばシートフレーム等に一体に固定されている。
【0032】
電磁石体24は、軟磁性材料により形成された鉄心部30と、この鉄心部30に巻回された巻線部32と、を有して構成されている。この電磁石体24は、クッション材34によって着座者Pと接離方向に移動可能に支持されると共に、シート表皮材20と磁石体22との間に磁石体22と接離方向に対向して配置されている。
【0033】
また、この電磁石体24は、図2(B)に示されるように、通電されると着座者P側がN極となると共に磁石体22側がS極になり、シート表皮材20に対する着座者P側に磁気を発生すると共に磁石体22に対して着座者P側に反発力を発生する構成とされている。
【0034】
制御スイッチ26は、開閉スイッチにより構成されており、例えば車載バッテリ等の電源36と電磁石体24との間に接続線40を介して直列に接続されている。この制御スイッチ26は、例えば、車両用シート12の側部やインストルメントパネル等に設けられており、着座者Pの操作に応じて開閉されて電磁石体24への通電を制御する構成とされている。
【0035】
セパレータ28は、磁石体22と電磁石体24との接触を防止するためのものであり、透磁材料により形成されて磁石体22と電磁石体24との間に配置されている。
【0036】
また、この刺激付与装置10では、図2(A)に示される如く、制御スイッチ26が開かれて電磁石体24への通電が遮断されているときには、例えば、クッション材34の弾性力によって電磁石体24が磁石体22側へ付勢され、シート表皮材20が平滑な状態となる構成とされている。
【0037】
さらに、この刺激付与装置10では、図2(B)に示される如く、制御スイッチ26が閉じられて電磁石体24が通電されているときには、磁石体22との間の反発力によって電磁石体24が着座者P側に移動され、これに伴ってシート表皮材20の一部が突出された状態となる構成とされている。
【0038】
そして、上記構成からなる刺激付与装置10を一体に備えた車両用シート12によれば、以下の特有な効果を奏する。
【0039】
すなわち、本発明の一実施形態に係る車両用シート12では、図2(B)に示されるように、制御スイッチ26が閉じられて電磁石体24が通電されると、電磁石体24がシート表皮材20に対する着座者P側に磁気を発生すると共に磁石体22に対して着座者P側に反発力を発生する。これにより、電磁石体24から着座者Pに対して磁気Mが付与されると共に、電磁石体24によってシート表皮材20の一部が突出された状態とされて着座者Pに対して押圧力Fが付与され、着座者Pに対してマッサージ効果が提供される。
【0040】
一方、図2(A)に示されるように、制御スイッチ26が開けられて電磁石体24への通電が遮断されると、電磁石体24からの磁気の発生が停止されて、シート表面からの磁気Mの発生(つまり磁気Mの漏洩)が抑制される。しかも、シート表皮材20側に配置されているのは電磁石体24であるので、この電磁石体24からの磁気の発生が停止されたときには、例えば、シート表皮材20側に永久磁石からなる磁石体が配置された構成に比して、シート表面からの磁気Mの発生がより一層効果的に抑制される。
【0041】
このように、本発明の一実施形態に係る車両用シート12によれば、シート表面からの磁気Mの発生が望ましくない場合や不必要な場合には、制御スイッチ26を開いて電磁石体24への通電を遮断することで、シート表面からの磁気Mの発生を抑制することができる。
【0042】
これにより、例えば、着座者Pが磁気カード等の磁気に弱いものを所持している場合や、着座者Pがペースメーカを装着しているなど磁気に対して禁忌症状がある場合にもかかわらず、着座者Pに対して磁気Mを付与してしまうことを抑制することができる。また、例えば駐車中などのように車両用シート12を使用していない間に、シート表皮材20に不要物(例えば、金属ピン、砂鉄類、クリップなどの金属)が付着してしまうことを抑制することができる。
【0043】
また、本発明の一実施形態に係る車両用シート12によれば、磁石体22が永久磁石により構成された場合でも、図2(A)に示されるように、この磁石体22から発生した磁気Mを、電磁石体24のうちの軟磁性材料により形成された鉄心部30によって遮蔽することができる。これにより、シート表面からの磁気Mの発生が望ましくない場合や不必要な場合におけるシート表面からの磁気Mの発生(つまり磁気Mの漏洩)をさらに効果的に抑制することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0045】
例えば、上記実施形態において、刺激付与装置10は、シートバック16に一体に設けられていたが、シートクッション14に一体に設けられていても良い。また、刺激付与装置10は、シートクッション14及びシートバック16の両方に一体に設けられていても良い。
【0046】
また、刺激付与装置10がシートクッション14に設けられる場合に、刺激付与ユニット18は、シートクッション14における着座者の例えば大腿部及び臀部を支持する部位にそれぞれ埋設されていても良い。
【0047】
また、上記実施形態において、磁石体22は、永久磁石により構成されていたが、電磁石により構成されていても良い。
【0048】
また、上記実施形態では、磁石体22と電磁石体24との接触を防止するためにセパレータ28が用いられていたが、例えば、クッション材34によって電磁石体24の移動を制限することで磁石体22と電磁石体24との接触を防止することができる場合には、セパレータ28が省かれた構成とされていても良い。
【0049】
また、本発明の一実施形態に係る刺激付与装置10は、図3乃至図9に示されるように構成されていても良い。
【0050】
すなわち、図3に示される変形例では、上述の本発明の一実施形態に係る刺激付与装置10に、軟磁性材料により形成された磁気遮蔽手段としての磁気遮蔽部材42が追加されている。この磁気遮蔽部材42は、その内部に磁石体22を収容し電磁石体24側に開口44を有する有底筒状に形成されている。
【0051】
この構成によれば、永久磁石からなる磁石体22から磁気遮蔽部材42の開口44を介して電磁石体24側へ磁気M(電磁石体24との間に反発力を生じさせるための磁気)を発生させつつ、磁石体22からそれ以外の方向(シートバック16の高さ方向及び背面方向)へ発生する磁気M,Mを磁気遮蔽部材42によって遮蔽することができる。
【0052】
また、図4に示される変形例では、図3に示される変形例に、軟磁性材料により形成された磁気遮蔽手段としての磁気シールド46がさらに追加されている。この磁気シールド46は、電磁石体24とシート表皮材20との間にシート表皮材20に沿って設けられると共に、電磁石体24とシート表皮材20との間に磁気透過部48(例えば、孔部、及び磁気遮蔽力低減部等)を有する構成とされている。
【0053】
この構成によれば、磁気シールド46の磁気透過部48を介して電磁石体24からの磁気Mを着座者P側に透過させつつ、永久磁石からなる磁石体22から着座者P側へ発生する磁気Mを磁気シールド46によって遮蔽することができる。
【0054】
また、図5,図6に示される変形例では、図4に示される変形例に、発熱手段としての電熱ヒータ50が追加されている。この電熱ヒータ50は、図5に示されるように、磁気シールド46に全面に亘って一体的に張り巡らされている。
【0055】
また、この変形例では、図6に示されるように、例えば車載バッテリ等の電源36と電熱ヒータ50とを中継する電源ターミナル52がシートバック16に一体的に設けられており、電磁石体24は、この電源ターミナル52に接続されている。
【0056】
この構成によれば、電熱ヒータ50によってシート表皮材20を加温することができ、これにより、電磁石体24からの磁気M及び押圧力Fに加えて温熱刺激Hを着座者Pに付与することができる。
【0057】
しかも、電源36から電磁石体24への配線の一部(すなわち、電源36から電源ターミナル52までの配線)を電源36から電熱ヒータ50への配線と共有させることができるので、電源36から電磁石体24への配線の全てを新設する必要が無く、配線数の増加を抑制することができる。
【0058】
なお、本変形例では、シート表皮材20を加温するために電熱ヒータ50が用いられていたが、その他の発熱装置が用いられていても良い。
【0059】
また、図7に示される変形例では、上述の本発明の一実施形態に係る刺激付与装置10に対して、制御スイッチ26が極性切替スイッチにより構成されると共に、ECU54、操作スイッチ56、可変抵抗素子58が追加されている。ECU54は、着座者Pによる操作スイッチ56への操作入力(例えば、作動継続時間、押圧力Fの付与間隔時間、押圧力Fの強弱など)に応じて制御スイッチ26及び可変抵抗素子58を制御する構成とされている。
【0060】
この構成によれば、制御スイッチ26がECU54によって切り替えられて電磁石体24への通電方向が切り替えられることにより、電磁石体24を磁石体22に対して着座者P側に反発力を発生する反発力発生状態と、磁石体22に対して吸引力を発生する吸引力発生状態と、に切り替えることができる。これにより、電磁石体24から着座者Pに対して押圧力Fを繰り返し付与することができ、着座者Pに対してより一層効果的なマッサージ効果を提供することができる。
【0061】
また、可変抵抗素子58がECU54によって制御されて電磁石体24への供給電流が増減されることにより、電磁石体24の磁石体22に対する反発力、ひいては、電磁石体24の着座者Pへの押圧力Fを増減させることができる。これにより、着座者Pに対してさらに効果的なマッサージ効果を提供することができる。
【0062】
ここで、図8には、上述のようにECU54によって制御スイッチ26及び可変抵抗素子58が制御された場合の着座者Pへの押圧力の変化が波形W1によって示されている。なお、波形W2は、電磁石体24への通電が遮断された状態で着座者Pの背中が電磁石体24へ接触しているときの着座者Pへの押圧力、波形W3は、着座者Pの背中が電磁石体24から離れている状態の押圧力(つまり、押圧力がゼロの場合)をそれぞれ示している。
【0063】
この図に示されるように、ECU54によって制御スイッチ26及び可変抵抗素子58が制御されることで、着座者Pに対してより一層効果的なマッサージ効果を提供できることが判る。
【0064】
また、図9に示される変形例では、刺激付与装置10がシート表皮材としてのシートバックカバー60を有して構成されて車両用シート12に別体に設けられている。この構成によれば、車両用シート12に刺激付与装置10を後付けすることができる。
【0065】
なお、上記複数の変形うち組み合わせ可能な変形例は、適宜組み合わされて実施可能であることは勿論である。
【0066】
次に、本発明の参考例について説明する。
【0067】
[第一参考例]
図10には、本発明の第一参考例に係る刺激付与装置110が一体に備えられた車両用シート112の要部が側面断面図にて示されている。
【0068】
この図に示される刺激付与装置110は、上述の本発明の一実施形態に係る刺激付与装置10に対して、電磁石体24の代わりに磁石体64を備えた構成とされている。
【0069】
磁石体64は、クッション材34によって着座者Pと接離方向に移動可能に支持されると共に、シート表皮材20と磁石体22との間に磁石体22と接離方向に対向して配置されている。また、この磁石体64は、着座者P側にN極を有すると共に着座者P側と反対側にS極を有する構成(つまり、磁石体22と同一極同士が向かい合う構成)とされている。
【0070】
この構成によれば、着座者Pがシートバック16に寄り掛かったときには、磁石体64が磁石体22との反発力によって着座者Pに押圧され、これにより、着座者Pに対して磁気M及び押圧力Fを付与することができる。
【0071】
また、磁石体22との間の反発力で磁石体64を着座者P側に押圧することができるので、磁石体64が単体でシート表皮材20に貼り付けられた構成に比して、着座者Pの背中への磁石体64の接触圧を増加させることができる。
【0072】
また、着座者Pの背中への磁石体64の接触は、磁石体64と磁石体22との間の反発力によるものであるため、着座者Pの背中を例えばローラなどで機械的に押圧したような硬さを感じることを抑制することができる。
【0073】
また、着座者Pが背中をシートバック16に押し付ければ、磁石体64が磁石体22との間の反発力に抗して押し付け方向に移動されるので、シートバック16が着座者Pの身体になじみ、着座者Pの背中と磁石体64との良好な接触状態を得ることができる。
【0074】
[第二参考例]
図11(A)には、本発明の第二参考例に係る刺激付与装置210が一体に備えられた車両用シート212が一部断面を含む側面図にて示されており、図11(B)には、この車両用シート212が正面図にて示されている。
【0075】
これらの図に示される刺激付与装置210は、上述の本発明の第一参考例に係る刺激付与装置110に対して次の如く構成が変更されている。すなわち、磁石体22は、シートバック16の高さ方向に長手状に延在する板状に形成されている。
【0076】
一方、磁石体64は、クッション材34に形成された空間部66内をシートバック16の高さ方向に移動可能とされている。
【0077】
この構成によれば、例えば、シート表面に別の磁石を当てて、この磁石と吸引させた状態で磁石体64をシートバック16の高さ方向に移動させることができる。これにより、着座者によって身長や体格等が異なる場合でも、着座者のツボの位置に合わせて磁石体64の位置をシートバック16の高さ方向に調節することができる。
【0078】
[第三参考例]
図12には、本発明の第三参考例に係る刺激付与装置310が一体に備えられた車両用シート312が正面図にて示されており、図13には、この車両用シート312の刺激付与装置310が設けられた部分が平面断面図にて示されている。
【0079】
これらの図に示される刺激付与装置310は、上述の本発明の第二参考例に係る刺激付与装置210に対して次の如く構成が変更されている。すなわち、磁石体22には、図12に示されるように、シートバック16の高さ方向に所定間隔で袋状の位置決め穴68が複数形成されている。また、この磁石体22には、図13に示されるように、レール部70が形成されている。
【0080】
一方、磁石体64は、レール部70に離脱不能且つシートバック16の高さ方向に移動可能に係止された係止部72と、位置決め穴68に挿入可能な位置決めピン74を有する構成とされている。
【0081】
この構成によれば、磁石体64を磁石体22に対してシートバック16の高さ方向に移動させて、位置決めピン74を位置決め穴68に選択的に挿入することで、磁石体64を予め定められた所定の位置に位置させることができる。
【0082】
また、磁石体64が磁石体22に対して離脱不能に係止されているので、磁石体22からの磁石体64の離脱を防止することができる。
【0083】
なお、磁石体22は、車両用シート12の形状変化への追従性が良い軟質樹脂に強磁性金属が練り込み成形された後に着磁されたものでも良い。また、この場合に、練り込み成形の代わりに二色成形が行われても良い。また、磁石体22は、軟質樹脂に強磁性金属が封入された後に着磁されたものでも良い。さらに、軟質樹脂の代わりに硬質樹脂が用いられても良い。
【0084】
また、この参考例において、磁石体22は、シートバック16の高さ方向に長手状に延在されて磁石体64をシートバック16の高さ方向に移動可能とする構成とされていたが、シートバック16の幅方向に長手状に延在されて磁石体64をシートバック16の幅方向に移動可能とする構成とされも良い。また、磁石体22は、シートバック16の高さ方向及び幅方向に延在されて磁石体64をシートバック16の高さ方向及び幅方向に移動可能とする構成とされても良い。
【0085】
また、図14に示されるように、磁石体22の位置決め穴68は、深さ方向に沿って開口側に向かうに従って拡径するテーパ状に形成されていても良い。この構成によれば、位置決め穴68の開口が広がるので、位置決めピン74を位置決め穴68に挿入し易くできる。
【0086】
また、図15に示されるように、位置決め穴68は、着座者Pのツボと想定される位置に対応して磁石体22の幅方向及び高さ方向に複数形成されていても良い。この構成よれば、着座者Pのツボにより適合する位置に磁石体64を位置させることができる。
【0087】
また、図16に示されるように、磁石体64の着座者P側に突起部76が形成されていても良い。この構成によれば、着座者Pの背中に局所的に押圧力Fを付与することができ、着座者Pへのツボ押し効果を増加させることができる。
【0088】
[第四参考例]
図17には、本発明の第四参考例に係る刺激付与装置410が一体に備えられた車両用シート412が側面図にて示されている。
【0089】
これらの図に示される刺激付与装置410は、上述の本発明の第一参考例に係る刺激付与装置110に、磁気シールド78が追加されている。磁気シールド78は、図17(A)に示されるように、シートバック16のシート表面を覆う状態と、図17(B)に示されるように、シートバック16の上部に巻き上げられた状態とを取り得るように構成されている。
【0090】
なお、磁気シールド78の下端部には、フック80が設けられており、このフック80は、図17(A)に示されるように、シートバック16の下側部に設けられたピン82に引っ掛け可能とされている。
【0091】
この構成よれば、シート表面からの磁気の発生が望ましくない場合や不必要な場合には、図17(A)に示されるように、シート表面を磁気シールド78で覆うことで、磁石体64(又は、磁石体64及び磁石体22)からの磁気の発生(つまり磁気の漏洩)を抑制することができる。
【0092】
なお、磁気シールド78は、シートバック16の幅方向両側にカーテン状に設けられ、シートバック16の幅方向両側へ開くように構成されていても良い。
【0093】
また、図18に示されるように、シートバック16の背面下側部に巻取機構84が設けられ、この巻取機構84によって磁気シールド78が巻き取られる構成とされていても良い。また、この場合に、巻取機構84は、手動で作動される構成とされていても良く、また、電動で作動される構成とされていても良い。
【0094】
また、図19に示されるように、磁気シールド78は、シート表皮材20と磁石体64との間に配置されていても良い。この構成よれば、磁気シールド78がシートバック16の内部に収容されるので、シートバック16の見栄えを確保することができる。
【0095】
また、この場合に、磁気シールド78は、クッション材34に埋設されていても良い。この構成によれば、シートバック16のクッション性が磁気シールド78によって損なわれることを抑制することができる。
【0096】
[第五参考例]
図20には、本発明の第五参考例に係る刺激付与装置510が一体に備えられた車両用シート512の要部が側面断面図にて示されている。
【0097】
これらの図に示される刺激付与装置510は、上述の本発明の第一参考例に係る刺激付与装置110に対して、磁石体22の代わりに電磁石体86が用いられると共に、極性切替スイッチからなる制御スイッチ26、ECU54、操作スイッチ56、可変抵抗素子58が追加されている。ECU54は、着座者Pによる操作スイッチ56への操作入力(例えば、作動継続時間、押圧力Fの付与間隔時間、押圧力Fの強弱など)に応じて制御スイッチ26及び可変抵抗素子58を制御する構成とされている。
【0098】
この構成によれば、制御スイッチ26がECU54によって切り替えられて電磁石体86への通電方向が切り替えられることにより、電磁石体86から磁石体64に対して着座者P側に反発力を発生する反発力発生状態と、磁石体64に対して吸引力を発生する吸引力発生状態と、に切り替えることができる。これにより、磁石体64から着座者Pに対して押圧力Fを繰り返し付与することができ、着座者Pに対してより一層効果的なマッサージ効果を提供することができる。
【0099】
なお、この場合に、図20の波形W4で示されるように、着座者Pへの押圧力Fの間隔時間や押圧力Fの強弱が変化されるように電磁石体86への通電が制御されても良い。
【0100】
このように構成されていると、電磁石体86への通電が遮断された状態で着座者Pの背中が磁石体64へ接触している場合(つまり、図20の波形W5で示される押圧力の場合)や、着座者Pの背中が磁石体64から離れている場合(つまり、図20の波形W6で示される押圧力で、押圧力がゼロの場合)に比して、着座者Pに対してさらに効果的なマッサージ効果を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施形態に係る刺激付与装置が一体に備えられた車両用シートの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る刺激付与装置が一体に備えられた車両用シートの要部拡大側面断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図8】押圧力と時間との関係を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図10】本発明の第一参考例に係る刺激付与装置が一体に備えられた車両用シートの要部拡大側面断面図である。
【図11】本発明の第二参考例に係る刺激付与装置が一体に備えられた車両用シートを示す図である。
【図12】本発明の第三参考例に係る刺激付与装置が一体に備えられた車両用シートの正面図である。
【図13】本発明の第三参考例に係る刺激付与装置が一体に備えられた車両用シートの要部拡大平面断面図である。
【図14】本発明の第三参考例に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図15】本発明の第三参考例に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図16】本発明の第三参考例に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図17】本発明の第四参考例に係る刺激付与装置が一体に備えられた車両用シートの側面図である。
【図18】本発明の第四参考例に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図19】本発明の第四参考例に係る刺激付与装置の変形例を示す図である。
【図20】本発明の第五参考例に係る刺激付与装置が一体に備えられた車両用シートの要部拡大側面断面図である。
【図21】押圧力と時間との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0102】
10 刺激付与装置
12 車両用シート
20 シート表皮材
22 磁石体
24 電磁石体
26 制御スイッチ(制御手段)
30 鉄心部
32 巻線部
42 磁気遮蔽部材(磁気遮蔽手段)
46 磁気シールド(磁気遮蔽手段)
48 磁気透過部
50 電熱ヒータ(発熱手段)
54 ECU(制御手段)
60 シートバックカバー(シート表皮材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートを構成するシートバック及びシートクッションの少なくとも一方の着座者側に配置されるシート表皮材と、
前記シート表皮材に対する前記着座者側と反対側に配置された磁石体と、
前記シート表皮材と前記磁石体との間に、前記着座者と接離方向に移動可能に配置され、通電に伴い前記シート表皮材に対する前記着座者側に磁気を発生すると共に前記磁石体に対して前記着座者側に反発力を発生する電磁石体と、
前記電磁石体への通電を制御するための制御手段と、
を備えたことを特徴とする刺激付与装置。
【請求項2】
前記磁石体は、永久磁石により構成され、
前記車両用シートの外方と前記磁石体との間に配置される磁気遮蔽手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載の刺激付与装置。
【請求項3】
前記磁気遮蔽手段は、その内部に前記磁石体を収容し前記電磁石体側に開口を有する有底筒状に形成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の刺激付与装置。
【請求項4】
前記磁気遮蔽手段は、前記電磁石体に対する着座者側に前記シート表皮材に沿って設けられると共に、前記電磁石体と前記着座者との間に磁気透過部を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の刺激付与装置。
【請求項5】
前記電磁石体は、軟磁性材料により形成された鉄心部と、前記鉄心部に巻回された巻線部と、を有して構成されて、前記磁石体と接離方向に対向して配置されている、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の刺激付与装置。
【請求項6】
前記シート表皮材を加温する発熱手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の刺激付与装置。
【請求項7】
前記電磁石体は、通電方向の切替に伴い、前記磁石体に対して前記着座者側に反発力を発生する反発力発生状態と、前記磁石体に対して吸引力を発生する吸引力発生状態と、に切替可能とされ、
前記制御手段は、前記電磁石体への通電方向を切り替える、
ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の刺激付与装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の刺激付与装置を一体に備えたことを特徴とする車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−247547(P2009−247547A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98361(P2008−98361)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】