説明

加工性に優れた鋼管及びその製造方法

【課題】優れた加工性を有すると共に寸法精度の良好な鋼管及びその製造方法を提供する。
【解決手段】特定の成分系の鋼管をAc3変態点温度以上に加熱し室温まで連続冷却した後、円周方向の断面において減面率が5%以上、45%以下となるように冷間で伸管加工を施し、更に、(Ac1変態点温度−100)℃以上、Ac1変態点温度以下の温度範囲で0.005℃/S以上、5℃/s以下の昇温速度で再加熱し、その温度範囲で5分以上、300分以下の間保持した後、室温まで空冷する。これにより、r*値が1.0以上となる鋼管の曲げ加工において、鋼管の曲げ外側の減肉と曲げ内側のしわが抑制され、曲げ加工性が著しく向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用部品や機械構造用部品等の素材として用いられる加工性に優れた鋼管及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用部品や機械構造用部品等の素材として用いられる鋼管は、一般に目的の部品形状とするため冷間で加工される場合が多く、優れた加工性が要求される。しかしながら、従来の鋼管では、必ずしも十分な加工性が得られていなかった。例えば、自動車の足回り部品では、鋼管の曲げ加工が行われる。しかしながら、従来の鋼管では、曲げ外側の減肉が大きく、減肉が著しい場合には破断に至ることもある。また、従来の鋼管では、チューブハイドロフォーミングのような厳しい加工を施す場合に、コーナーR止まりでの減肉が大きく、減肉が著しい場合には破断に至ることもある。
【0003】
このような鋼管の加工性の問題に対しては、例えば塑性異方性の指標であるr値(ランクフォード値)を向上させることが有効である(特許文献1を参照)。また、鋼管のr値を高くする方法としては、例えば鋼管を温間で縮径圧延することでr値を高くする方法がある(特許文献2を参照)。しかしながら、この方法の場合、温間での縮径圧延を管軸方向に引張ながら連続的なロールによる絞り圧延によって行うために、鋼管の内面側の形状不良や偏肉が生じ易く、さらに縮径圧延時の加工発熱などにより温度制御が難しく、鋼管の長手方向や円周方向での材質の不均質化などの問題が発生してしまう。
【特許文献1】特開昭55−56624号公報
【特許文献2】特開2001−214218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、優れた加工性を有すると共に寸法精度の良好な鋼管及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1) 質量%で、C:0.0010〜0.30%、Si:0.60%以下、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、鋼管の管軸方向の引張試験において次式に示す鋼管のr*値が1.0以上であることを特徴とする加工性に優れた鋼管。
r*=ln(C/C)÷ln(C×L/C×L
;試験前の鋼管の外周(mm)
C ;試験後の鋼管の外周(mm)
;試験前の鋼管の管軸方向の評点間距離(mm)
L ;試験後の鋼管の管軸方向の評点間距離(mm)
(2) 更に、質量%で、Cr:0.05〜1.00%、Mo:0.05〜1.00%、Ni:0.05〜1.00%、Cu:0.05〜1.00%、Ti:0.010〜0.200%、Nb:0.010〜0.200%、V:0.010〜0.200%、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0010〜0.0100%のうち何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(1)記載の加工性に優れた鋼管。
(3) 鋼管をAc3変態点温度以上に加熱し室温まで連続冷却した後、鋼管の円周方向の断面において次式に示す減面率が5%以上、45%以下となるように冷間で伸管加工し、更に、(Ac1変態点温度−100)℃以上、Ac1変態点温度以下の温度範囲で、0.005℃/S以上、5℃/s以下の昇温速度で再加熱し、その温度範囲で5分以上、300分以下の間保持した後、室温まで空冷することを特徴とする加工性に優れた鋼管の製造方法。
減面率(%)={(伸管加工前の鋼管の断面積−伸管加工後の鋼管の断面積)/伸管加工前の鋼管の断面積}×100
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明によれば、自動車用部品や機械構造用部品等の素材として必要な加工性を鋼管に付与することができ、そのような優れた加工性を有すると共に、寸法精度の良好な鋼管及びその製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の加工性に優れた高強度鋼管及びその製造方法について詳細に説明する。
本発明者らは、鋼管SをAc3変態点温度以上に加熱し、鋼管Sの円周方向の材質を均質化した後、例えば図1に示す芯引き法のように、ダイス11とプラグ12の間でチャック13を用いて鋼管Sを引き抜きながら行う冷間での伸管加工と、特定の条件下での熱処理と組み合わせることで、従来の鋼管に比べてr値が向上することを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の加工性に優れた鋼管は、質量%で、C:0.0010〜0.30%、Si:0.60%以下、Mn:0.20〜2.50%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、鋼管の管軸方向の引張試験において次式に示す鋼管のr*値が1.0以上であることを特徴とする。
【0009】
上記本発明の加工性に優れた鋼管は、更に、質量%で、Cr:0.05〜1.00%、Mo:0.05〜1.00%、Ni:0.05〜1.00%、Cu:0.05〜1.00%、Ti:0.010〜0.200%、Nb:0.010〜0.200%、V:0.010〜0.200%、B:0.0005〜0.0050%、Ca:0.0010〜0.0100%のうち何れか1種又は2種以上を含有してもよい。
【0010】
また、本発明の加工性に優れた鋼管の製造方法は、上記特定の成分系の鋼管をAc3変態点温度以上に加熱し室温まで連続冷却した後、鋼管の円周方向の断面において減面率が5%以上、45%以下となるように冷間で伸管加工し、更に、(Ac1変態点温度−100)℃以上、Ac1変態点温度以下の温度範囲で、0.005℃/S以上、5℃/s以下の昇温速度で再加熱し、その温度範囲で5分以上、300分以下の間保持した後、室温まで空冷することを特徴とする。
【0011】
具体的に、Ac3変態点温度以上に加熱し室温まで連続冷却した鋼管は、ランダムな結晶方位を有している。本発明では、このようなランダムな結晶方位を有する鋼管を冷間で伸管加工することによって、管軸方向に引張の加工ひずみを付与する一方、円周方向及び肉厚方向に圧縮の加工ひずみを付与する。これにより、結晶を回転させ、その後の熱処理により回復、再結晶させることで、{111}方位や{110}方位を有する結晶粒が発達し、鋼管のr値が向上することになる。したがって、本発明のように冷間での伸管加工と熱処理との組み合わせによってr値の高い鋼管を得るためには、ランダムな結晶方位を有する鋼管を冷間で伸管加工する際の加工ひずみ量とその後の熱処理条件が重要となってくる。
【0012】
先ず、本発明の鋼管を構成する化学成分の限定理由について説明する。
(C:0.0010〜0.30%)
Cは、r値を劣化させる元素である。しかしながら、Cを0.0010%未満に下げてもr値の向上代は飽和してしまい、さらにコストアップとなるため、その下限の値を0.0010%とした。一方、Cが0.30%を超えると、r値が低下し、さらに延性も低下してしまうため、良好な加工性が得られなくなるため、その上限の値を0.30%とした。
【0013】
(Si:0.60%以下)
Siは、脱酸に有効な元素である。しなしながら、Siが0.60%を超えると、鋼の脆化を招き、延性が劣化するため、その上限の値を0.60%とした。
【0014】
(Mn:0.20〜2.50%)
Mnは、鋼の強度及び靭性を確保する上で不可欠な元素である。一方、Mnは、一般にr値を低下させる元素として知られており、その低下代はC量が多い鋼ほど顕著になる。本発明では、Mnが0.20%未満になると、強度及び靭性の劣化が著しくなるため、その下限の値を0.20%とした。一方、Mnが2.50%を超えると、r値が低下し、更に強度が高くなり過ぎ、靭性及び延性の劣化を招くため、その上限の値を2.50%とした。
【0015】
(P:0.020%以下)
Pは、鋼中に不可避的に含有される成分である。しかしながら、Pが0.020%を超えると、鋼中で粒界偏析や中心偏析を起こし、延性劣化の原因となるので、その上限の値を0.020%以下とした。
【0016】
(S:0.010%以下)
Sは、Mnと結合してMnSを形成するが、このMnSは冷間加工において割れの発生起点となる。このため、S量はできるだけ少ないことが望ましく、その上限の値を0.010%とした。
【0017】
(Al:0.005〜0.050%以下)
Alは、脱酸のために必要であるが、過剰に添加するとAlなどの鋼中に残存する脱酸生成物の量が増すことになる。特に、電縫鋼管に用いられる場合、電縫部での巨大な介在物は致命的欠陥となる。したがって、このような理由から、Alは0.005〜0.050%とした。
【0018】
(Cr:0.05〜1.00%)
(Mo:0.05〜1.00%)
(Ni:0.05〜1.00%)
(Cu:0.05〜1.00%)
Cr、Mo、Ni、Cuは、何れも強化元素であり、必要に応じて0.05%以上添加することが好ましい。一方、過剰の添加はコストアップや延性の劣化を招くため、その上限の値は、1.00%とした。
【0019】
(Ti:0.010〜0.200%)
(Nb:0.010〜0.200%)
( V :0.010〜0.200%)
Ti、Nb、Vは、炭化物、窒化物若しくは炭窒化物を形成することによって、鋼材を高強度化したり、加工性を向上したりできるため、必要に応じて0.010%以上添加することが好ましい。一方、過剰の添加は結晶粒内又は粒界に多量の炭化物、窒化物若しくは炭窒化物として析出し、延性を劣化させてしまうため、その上限の値を0.200%とした。
【0020】
(B:0.0005〜0.0050%)
Bは、r値を向上させたり、耐二次加工性の改善に有効であるので、必要に応じて0.0005%以上添加することが好ましい。一方、過剰の添加は結晶粒内や粒界に多量の炭化物や窒化物として析出し、延性を劣化させてしまうため、その上限の値を0.0050%とした。
【0021】
(Ca:0.0010〜0.0100%)
Caは、介在物制御の他、脱酸に有効な元素であり、冷間での加工性を向上させるのに有効であり、必要に応じて0.0010%以上添加することが好ましい。一方、過剰な添加は鋼中の介在物が増加し、逆に冷間での加工性を劣化させるため、その上限の値を0.0100%とした。
【0022】
次に、本発明の鋼管におけるr*値の限定理由について説明する。
r*値は、板のr(ランクフォード)値に相当する鋼管の加工性を著す指標であり、以下の式(1)で表される。
r*=ln(C/C)÷ln(C×L/C×L) …(1)
但し、
;試験前の鋼管の外周(mm)
C ;試験後の鋼管の外周(mm)
;試験前の鋼管の管軸方向の評点間距離(mm)
L ;試験後の鋼管の管軸方向の評点間距離(mm)
なお、上記r*の値は、伸管加工後、熱処理した鋼管について、JIS11号管状試験片を用いた引張試験で10%の予ひずみを付与した前後で測定している。
【0023】
本発明では、鋼管の管軸方向の引張試験により得られるr*値は、1.0以上とすることが好ましい。これは、r*値が1.0以上の鋼管の曲げ加工において、鋼管の曲げ外側の減肉と曲げ内側のしわが抑制され、曲げ加工性が著しく向上するためである。さらに、鋼管のr*値が1.2以上であれば、曲げ加工性が更に一段と向上する。したがって、鋼管の管軸方向の引張試験により得られるr*値は、1.0以上が好ましく、より好ましくは1.2以上である。
【0024】
次に、本発明による鋼管の製造条件について説明する。
本発明では、鋼管の管軸方向に垂直な断面の全域において材質の均質化を図ると共に、ランダムな結晶方位を得るために、鋼管をAc3変態点温度以上に加熱し室温まで連続冷却する。その後、鋼管の加工性を向上させることを目的とした冷間での伸管加工と熱処理を行う。
【0025】
具体的に、本発明では、冷間で伸管加工する際に、鋼管の円周方向の断面における減面率を5%以上、45%以下とすることが好ましい。この減面率が5%未満では、鋼管に付与される加工ひずみ量が小さく、結晶の回転が殆ど起こらずランダムな結晶方位のままであり、その後の熱処理においてもr値を高める{111}方位や{110}方位の結晶を得ることが困難となる。一方、この減面率が45%を超えると、伸管加工中に鋼管の管軸方向の引張ひずみ量が大きくなり過ぎて破断してしまう。以上のことから、冷間で伸管加工する際に、鋼管の円周方向の断面における減面率は、5%以上、45%以下とすることが好ましい。さらに、冷間での伸管加工と熱処理により鋼管の加工性を向上させるためには、冷間での伸管加工において鋼管を減肉させることがより好ましい。
【0026】
なお、減面率とは、以下の式(2)で表される値である。
減面率(%)={(伸管加工前の鋼管の断面積−伸管加工後の鋼管の断面積)/伸管加工前の鋼管の断面積}×100 …(2)
【0027】
冷間で伸管加工した鋼管に対する本発明の熱処理条件は、(Ac1変態点温度−100)℃以上、Ac1変態点温度以下の温度範囲で、0.005℃/S以上、5℃/s以下の昇温速度で再加熱し、その温度範囲で5分以上、300分以下の間保持した後、室温まで空冷することが好ましい。
【0028】
このうち、再加熱時の昇温速度が0.005℃/s未満でも、鋼管のr*値は良好であるが、生産性の観点から昇温速度を0.005℃/s以上とした。一方、再加熱時の昇温速度が5℃/sを超えると、フェライト粒が成長粗大化しにくくなり、鋼管のr*値の向上には不利となる。したがって、冷間で伸管加工した後の鋼管の熱処理における昇温速度は、0.005℃/s以上、5℃/s以下とすることが好ましい。
【0029】
本発明では、再加熱温度も鋼管のr*値の向上の観点から重要である。すなわち、再加熱温度が(Ac1変態点温度−100)℃未満では、再結晶が完了せず加工性を向上させる結晶方位が未発達となり、加工性が劣化する。一方、再加熱温度がAc1変態点温度を超えると、γ化された領域ではこれまで得られた結晶方位がキャンセルされ、加工性が劣化する。したがって、冷間で伸管加工した後の鋼管の再加熱温度は、(Ac1変態点温度−100)℃以上、Ac1変態点温度以下の温度範囲とすることが好ましい。
【0030】
さらに、本発明では、再加熱保持時間が5分未満では、加工性向上に有利である結晶方位を有するフェライト粒の成長が不十分であり、鋼管の加工性が劣化する場合がある。一方、再加熱保持時間が300分を超えても、鋼管のr*値は良好であるが、生産性の観点から再加熱保持時間を300分以下とした。したがって、冷間で伸管加工した後の鋼管の再加熱保持時間は、5以上、300分以下とすることが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0032】
本発明は、電縫鋼管又はシームレス鋼管のどちらにでも適用可能であるが、本実施例では、表1の化学成分を有する伸管前の電縫鋼管を準備した。この伸管前の鋼管サイズは、外径58.0mm、肉厚2.6mmである。そして、表2及び図2に示す伸管加工条件と伸管前後の熱処理条件で、冷間での伸管加工を行い、その後、熱処理した各鋼管の機械的性質を表3に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
なお、表1中の記号A〜Hは、本発明の組成範囲を満たす本発明例であり、記号I〜Mは、本発明の組成範囲から外れる比較例である。
表2中の記号a〜cは、本発明の伸管加工条件及び熱処理条件を満たす本発明例であり、記号d〜gは、本発明の伸管加工条件及び熱処理条件をから外れる比較例である。
表3は、No.1〜18の鋼管について、r*値、YS、TSの各引張特性値と、曲げ加工性として、2DRの曲げ加工後の曲げ外側の減肉率及び曲げ内側のしわ発生状況を示す。
表3中のr*値は、伸管加工後、熱処理した鋼管について、JIS11号管状試験片を用いた引張試験で10%の予ひずみを付与した後に測定し、上記式(1)を用いて算出した。
表3中のYS、TSは、伸管加工後、熱処理した鋼管について、JIS11号管状試験片を用いた引張試験を実施した。
表3中のの曲げ加工性は、伸管加工後、熱処理した鋼管について、2DRの曲げ加工を実施し、曲げ外側の減面率は上記式(2)を用いて算出し、曲げ内側のしわ発生状況は目視で観察した。
【0037】
表3から明らかなように、No.1〜8の鋼管(本発明例)は、何れもr*値が1.0以上となっており、曲げ加工において曲げ外側の減肉と曲げ内側のしわが抑制されている。
一方、No.9の鋼管は、Cが0.35%と高く、本発明の範囲から外れる比較例であり、鋼管のr*値が低く、曲げ加工性が劣っている。
No.10の鋼管は、Mnが2.70%と高く、本発明の範囲から外れる比較例であり、鋼管のr*値が低く、曲げ加工性が劣っている。
No.11の鋼管は、Crが1.50%と高く、本発明の範囲から外れる比較例であり、鋼管のr*値が低く、曲げ加工性が劣っている。
No.12の鋼管は、Tiが0.250%と高く、本発明の範囲から外れる比較例であり、鋼管のr*値が低く、曲げ加工性が劣っている。
No.13の鋼管は、Bが0.0150%と高く、本発明の範囲から外れる比較例であり、鋼管のr*値が低く、曲げ加工性が劣っている。
No.14の鋼管は、伸管加工前の加熱温度がAc3変態点温度以下であることから、本発明の範囲から外れる比較例であり、伸管加工前の鋼管の結晶方位のランダム化と母材部と電縫溶接部の材質が均質化なされていないことから、鋼管のr*値が低く、曲げ加工性が劣っている。
No.15の鋼管は、伸管加工における減面率が3%と低く、本発明の範囲から外れる比較例であり、鋼管のr*値が低く、曲げ加工性が劣っている。
No.16の鋼管は、伸管加工における減面率が50%と高く、本発明の範囲から外れる比較例であり、伸管加工中に鋼管が破断した。
No.17の鋼管は、伸管加工後の再加熱温度が高く、本発明の範囲から外れる比較例であり、鋼管のr*値が低く、曲げ加工性が劣っている。
No.18の鋼管は、伸管加工後の再加熱温度が低く、本発明の範囲から外れる比較例であり、回復、再結晶が不十分であることから、鋼管のr*値が低く、曲げ加工性が劣っている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の冷間による伸管加工を説明するための断面図である。
【図2】図2は、表2に示す伸管加工条件と伸管前後の熱処理条件を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0039】
S…鋼管 11…ダイス 12…プラグ 13…チャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C:0.0010〜0.30%、
Si:0.60%以下、
Mn:0.20〜2.50%、
P:0.020%以下、
S:0.010%以下、
Al:0.005〜0.050%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、鋼管の管軸方向の引張試験において次式に示す鋼管のr*値が1.0以上であることを特徴とする加工性に優れた鋼管。
r*=ln(C/C)÷ln(C×L/C×L
;試験前の鋼管の外周(mm)
C ;試験後の鋼管の外周(mm)
;試験前の鋼管の管軸方向の評点間距離(mm)
L ;試験後の鋼管の管軸方向の評点間距離(mm)
【請求項2】
更に、質量%で、
Cr:0.05〜1.00%、
Mo:0.05〜1.00%、
Ni:0.05〜1.00%、
Cu:0.05〜1.00%、
Ti:0.010〜0.200%、
Nb:0.010〜0.200%、
V:0.010〜0.200%、
B:0.0005〜0.0050%、
Ca:0.0010〜0.0100%のうち何れか1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の加工性に優れた鋼管。
【請求項3】
鋼管をAc3変態点温度以上に加熱し室温まで連続冷却した後、鋼管の円周方向の断面において次式に示す減面率が5%以上、45%以下となるように冷間で伸管加工し、更に、(Ac1変態点温度−100)℃以上、Ac1変態点温度以下の温度範囲で、0.005℃/S以上、5℃/s以下の昇温速度で再加熱し、その温度範囲で5分以上、300分以下の間保持した後、室温まで空冷することを特徴とする加工性に優れた鋼管の製造方法。
減面率(%)={(伸管加工前の鋼管の断面積−伸管加工後の鋼管の断面積)/伸管加工前の鋼管の断面積}×100

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−266750(P2008−266750A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114054(P2007−114054)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】