説明

加工液捕集装置及びワイヤソー

【課題】ワークの切り出しをより精度良く行えるようにする。
【解決手段】ワイヤソーは、ワイヤ群12に供給されることにより飛散したスラリを捕集する加工液捕集装置を有する。この装置は、スラリを捕集するための捕集部材16a,16bと、これら捕集部材16a,16bをワイヤ群12の上方であってその近傍となる高さ位置に配置しかつワイヤ群12の走行方向に変位可能に支持するガイド軸22等と、捕集部材16a,16bを駆動する油圧シリンダ24と、捕集部材16a,16bがワークWに対して所定の間隔を隔てた位置に配置されるようにワークWの切り込み送りの位置に応じて前記油圧シリンダ24の駆動を制御する制御手段(NC装置40)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断用ワイヤにより構成されたワイヤ群に対して半導体インゴット等のワークを切り込み送りすることにより当該ワークを切断するワイヤソーに適用される加工液捕集装置及び当該装置を備えたワイヤソーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガイドローラ間に切断用ワイヤが巻き掛けられることにより該ワイヤが多数本並んだ状態で張設され、このワイヤ群をその軸方向に高速走行させながら、ワーク保持部に保持されたワークを前記ワイヤ群に対して切り込み送りすることにより、ワークをスライス状に多数毎同時に切り出すようにしたワイヤソーが知られている。
【0003】
この種のワイヤソーでは、高速走行するワイヤ群に対して遊離砥粒を含むスラリ(加工液)を供給することが行われるが、その際、一旦ワイヤ群に供給されたスラリがワークに沿って舞い上がり(巻き上がり)、これがワークやワイヤ群に再度供給されることが知られており、特に、ワイヤ群とワーク保持部とが接近してくる切り込み送り終期には、ワーク、ワイヤ群及びワーク保持部により囲まれた狭い空間内でスラリが舞い上がることによりワイヤ群やワークにスラリが再供給され易く、これがワイヤ群の振動やスラリの供給過多等、ワークの切り出し精度に悪影響を与える原因の一つとなっている。
【0004】
そこで、出願人は、特許文献1に開示されるように、ワーク保持部に捕集部材を設け、舞い上がったスラリを回収することにより上記のような不都合を軽減することを考えた。
【特許文献1】特開2007−273711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される従来のワイヤソーでは、飛散したスラリを捕集するための捕集部材をワーク保持部に設けているため、切り込み送り終期にスラリを捕集する上では効果的であるが、それ以前の段階では、捕集部材とワイヤ群とが離れているため、切断中にワークから飛散するスラリを捕集することは難しい。
【0006】
しかし、切り込み送り終期ほど顕著ではないにせよ、実際にはそれ以前の段階(切り込み送り開始〜終期までの間)でも、ワイヤ群に沿ってワーク近傍に運ばれたスラリがワーク側面に沿って舞い上がる等、切断中にワークからスラリが飛散し、切り出し精度に影響を与えることが少なからず認められる。従って、ワーク切断の高精度化の要請に鑑みると、切り込み送り(切断作業)の全工程においてこのようなスラリの飛散による影響を防止できる方が好ましい。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みて成されたものであり、飛散したスラリがワイヤ群やワークに対して再度供給されるという不都合を切り込み送り(切断作業)の全工程に亘って阻止することにより、ワークの切り出しをより精度良く行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、互いに平行に並ぶ複数の切断用ワイヤにより形成されかつワイヤ軸方向に走行するワイヤ群に対して上下方向に幅が変化する断面形状を有するワークを切り込み送りすると共に、この切り込み位置よりもワイヤ走行方向における上流側の位置で当該ワイヤ群に対して加工液を供給するように構成されたワイヤソーに組み込まれ、前記ワイヤ群に供給されることにより飛散した加工液を捕集する加工液捕集装置であって、前記ワイヤ群による切断中にワークから飛散した前記加工液を捕集可能な形状を有する捕集部材と、この捕集部材を前記ワイヤ群の上方であってその近傍となる高さ位置に配置しかつ前記ワイヤ走行方向と平行な方向に変位可能に支持する支持手段と、前記捕集部材を前記ワイヤ走行方向と平行な方向に駆動する駆動手段と、前記ワイヤ群に対するワークの切り込み送りの位置にかかわらず、当該ワークよりも前記ワイヤ走行方向における上流側の位置であって当該ワークに近接する所定位置に前記捕集部材が位置するように前記ワイヤ群に対するワークの切り込み送りの位置に応じて前記捕集部材を変位させるように前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えるものである。
【0009】
そして、本発明に係るワイヤソーは、互いに平行に並ぶ複数の切断用ワイヤにより形成されるワイヤ群と、このワイヤ群をワイヤ軸方向に駆動するワイヤ駆動手段と、ワークを保持するワーク保持部材を有し、このワーク保持部材により保持したワークを前記ワイヤ群に対してその上側から切り込み送りする送り手段と、前記ワイヤ群のうちワークが切り込み送りされる切り込み領域よりもワイヤ軸方向外側に配置され、前記ワイヤ群に対して加工液を供給する加工液供給手段と、前記ワイヤ群による切断中にワークから飛散した加工液を捕集する加工液捕集装置とを備えたワイヤソーであって、前記加工液捕集装置として上記のような加工液捕集装置を備えているものである。
【0010】
このような本発明にかかる加工液捕集装置が組み込まれたワイヤソーによれば、飛散した加工液を捕集可能な形状を有する捕集部材を、ワイヤ群に対するワークの切り込み送りの位置にかかわらず、ワークよりもワイヤ走行方向における上流側の位置であって当該ワークに近接する所定位置に配置することができる。従って、ワイヤ群に対するワークの切り込み送りの位置にかかわらず、ワークの側面に沿って舞い上がる等、ワイヤ群による切断中にワークから飛散する加工液を良好に捕集することが可能となる。
【0011】
上記のような加工液捕集装置において、前記制御手段は、前記ワイヤ群に対するワークの切り込み送りの位置にかかわらず、前記ワイヤ走行方向においてワークと前記捕集部材とが略一定の間隔で配置されるように前記駆動手段を制御するものであるのが好適である。
【0012】
この構成によれば、切り込み送りの全工程に亘って一定の間隔でワークに対して捕集部材を配置できるので、ワークの断面形状にかかわらず加工液の捕集効果を良好に享受することが可能となる。
【0013】
より具体的な構成として、ワイヤ軸方向における一方側から他方側に向かって走行する状態と前記他方側から一方側に向かって走行する状態とに前記ワイヤ群の走行状態が切換えられるものでは、前記捕集部材として、前記ワイヤ走行方向において前記ワークを挟んだその両側の位置にそれぞれ配置される一対の捕集部材が備えられる。
【0014】
この構成によれば、ワイヤ群の何れの走行状態においても良好に加工液を捕集することが可能となる。
【0015】
この場合、前記駆動手段は、両捕集部材を互いに逆方向に連動して変位させるように構成されているのが好適である。
【0016】
つまり、ワイヤソーで切断される主なワークは半導体インゴット等、断面形状が左右対称(ワイヤ走行方向におけるワーク中心を通りかつワイヤ軸方向と直交する線分に対して対称)なものが多い。従って、両捕集部材を互いに逆方向に連動して変位させるように上記駆動手段を構成すれば、簡単な制御で各捕集部材をワークに対してバランス良く配置することが可能となり、ワイヤ群の走行方向にかかわらず均一な捕集効果を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、切断中にワークから飛散する加工液をワイヤ群に対するワークの切り込み送りの位置にかかわらず良好に捕集することが可能となる。従って、飛散した加工液がワイヤ群やワークに再度供給されるという不都合を切断作業の全工程に亘って良好に阻止することができ、その結果、ワークの切り出しをより精度良く行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好ましい実施の形態について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るワイヤソー(本発明にかかる加工液捕集装置が適用されたワイヤソー)の全体構成を模式的に示している。
【0020】
この図に示すようにワイヤソーは、所定の間隔を隔てて平行に配置される一対のガイドローラ10A,10Bを有している。これらガイドローラ10A,10Bの外周面上にはローラ軸方向(同図では紙面と直交する方向;以下、前後方向という)に並ぶ多数本の溝が形成され、これらの溝に嵌め込むようにして切断用ワイヤ11が両ガイドローラ10A,10B間に巻回されている。これにより当該ガイドローラ10A,10Bの間に前後方向に切断用ワイヤ11が複数本平行に並んだ状態のワイヤ群12が形成されている。
【0021】
切断用ワイヤ11の両端は、それぞれ図外の繰出し・巻取りボビンにそれぞれ巻き付けられている。そして、各ボビンおよび前記ガイドローラ10A(又は10B)が図外の駆動モータ(ワイヤ駆動手段)により駆動されるとともにその回転方向が正転、逆転に切換えられることにより、一方側のボビンから切断用ワイヤ11が繰出されて他方側のボビンに巻き取られる状態と、その逆の状態とに切換わるように構成されている。これによりガイドローラ10A,10B間においてワイヤ群12がワイヤ軸方向の一方側から他方側に走行する状態と他方側から一方側に走行する走行状態とに切換わるようになっている。
【0022】
ワイヤ群12のうちワークWが切り込み送りされる領域(作業領域Eと呼ぶ)を挟んでその両側(切断用ワイヤ11の走行方向における作業領域Eの上流側および下流側)であってワイヤ群12に近接したその上方位置には、図1及び図2に示すように、それぞれワイヤ群12に対してスラリ(水溶性あるいは油性の分散液に加工用砥粒を混合した加工液)を供給するためのノズル部材14a,14b(加工液供給手段)が配設されている。これらノズル部材14a,14bは、前後方向に延びるスリット状の液吐出口を有しており、この液吐出口からスラリを吐出することによりワイヤ群12の前後方向全体(切断用ワイヤ11の配列方向全体)に亘ってスラリを供給するようになっている。
【0023】
また、ワークWの走行方向における前記作業領域Eの中心位置と各ノズル部材14a,14bとの間には、ワイヤ群12による切断中にワークWから飛散したスラリを捕集するための一対の捕集部材16a,16bと、これらの捕集部材16a,16bを支持しかつワイヤ群12の走行方向と平行な方向(図1の左右方向;以下、単に左右方向という)に変位させるための駆動機構(加工液捕集装置の支持手段及び駆動手段に相当する)とが設けられている。
【0024】
これらの捕集部材16a,16bは、ワイヤ群12の上方であってその近傍となる高さ位置にそれぞれ配置されている。
【0025】
各捕集部材16a,16bは、ワイヤ群12による切断中にワークWから飛散したスラリを捕集可能な例えば樋型の形状を有しており、ワイヤ群12を前後方向に横断するように設けられている。各捕集部材16a,16の内底部はその後側から前側に向かって先下がりの勾配を有しており、また、各捕集部材16a,16bの前端部は捕集したスラリを放流できるように開放されている。つまり、各捕集部材16a,16bは、飛散したスラリを捕集しながらその内底部に沿って前方に流動させ、各捕集部材16a,16bの前端部から図外の回収部内に流下させるように構成されている。
【0026】
各捕集部材16a,16bは、それぞれブラケット20を介してワイヤソーの図外のコラムに支持されている。詳しくは、各捕集部材16a,16bは、それぞれ一対のガイド軸22を介して左右方向に変位可能な状態で前記ブラケット20に支持されている。各ブラケット20には、例えば単動式シリンダからなる油圧シリンダ24がそれぞれ固定されており、捕集部材16a,16bがこれら油圧シリンダ24のピストンロッド24aにそれぞれ連結されている。この構成により各捕集部材16a,16bが油圧シリンダ24の駆動によって作業領域中間の近傍位置と当該作業領域Eの外側であってノズル部材14a,14bの近傍位置とに亘って左右方向に変位可能となっている。つまり、上記ブラケット20、ガイド軸22及び油圧シリンダ24等により上記駆動機構が構成されている。
【0027】
さらに、前記ワイヤ群12の上方位置にはワーク送り装置が配置されている。
【0028】
このワーク送り装置(送り手段)は、前記コラムに対して昇降可能に支持されるワーク保持部材32とこのワーク保持部材32を昇降駆動する駆動機構等とを含み、前記ワーク保持部材32により保持したワークWを前記ワイヤ群12に対してその上側から切り込み送りするように構成されている。
【0029】
ワーク保持部材32の駆動機構は、詳細図を省略するが、所謂ねじ送り機構からなり、サーボモータ30の駆動によりワーク保持部材32を昇降駆動するように構成されている。
【0030】
なお、このワイヤソーには、ワークWの切断動作を統括的に制御するNC装置40が設けられており、ワークWの切り出し時(切断作業時)には、ワークWを所定の送り速度で切り込み送りすべく前記サーボモータ30がこのNC装置40により制御されると共に、ワークWの切り込み送りの位置にかかわらず、ワイヤ走行方向におけるワークWよりも上流側の位置であって当該ワークWに近接する所定位置に各捕集部材16a,16bを配置すべく前記油圧シリンダ24がこのNC装置40により駆動制御される。具体的には、図外の記憶手段に記憶されたワークWの断面形状に関するデータとサーボモータ30に組み込まれた位置検出手段(エンコーダ等)から出力される位置データ等とに基づき、ワークWに近接する位置であって当該ワークWと各捕集部材16a,16bとの間に一定の間隔が保たれるように前記油圧シリンダ24に対する圧油供給通路に設けられる流量制御バルブ26がNC装置40により制御される。
【0031】
次に、NC装置40の制御に基づくワイヤソーの動作についてその作用と共に説明する。
【0032】
まず、図1に示すような状態で、ガイドローラ10A(又は10B)が回転駆動され、これによりワークWが高速駆動される。ここでは、同図中に矢印で示すようにガイドローラ10A(又は10B)は反時計回りに駆動され、従って、ワイヤ群12は作業領域Eにおいて右方(ガイドローラ10A側)から左方(ガイドローラ10B側)に高速駆動されるものとする。
【0033】
ワイヤ群12の駆動後、ワイヤ走行方向上流側に位置するノズル部材14aからワイヤ群12へのスラリの供給が開始され、さらにこの状態で、前記サーボモータ30が駆動されることにより、ワイヤ群12上方の所定の送り開始位置からワークWがワーク保持部材32と一体に下降を開始する。この際、同図に示すように各捕集部材16a,16bはワークWの略下方位置に配置されている。
【0034】
ワークWの送りが進むと、図3の(a)に示すように、油圧シリンダ24の駆動により各捕集部材16a,16bがそれぞれワークW(作業領域E)の両外側に移動し、ワイヤ群12に対してその上側からワークWが押し付けられる。これによりワークWの切断が開始される。この際、各捕集部材16a,16bは、同図の(a)に示すようにワークWに近接する所定配置、つまり、ワークWとの間に上記一定の間隔を隔てた位置に配置される。従って、ワイヤ群12による切断中にワークWから飛散したスラリ、例えばワイヤ群12と共に運ばれてワークWに沿って舞い上がったスラリは、図中破線矢印で示すように、ワイヤ群12の走行方向上流側に位置する捕集部材16aにより捕集されることとなり、これによって当該飛散したスラリがワークWやワイヤ群12に再度供給されることが防止される。なお、捕集されたスラリは上記の通り捕集部材16aの前端部に流動し、ここから図外の回収部内に流下し回収されることとなる。
【0035】
ワークWの切り込み送りが進むと、各捕集部材16a,16bはさらに作業領域Eの外側に向かって移動する。そして、図3の(b)に示すように、切り込み位置がワークWの中心位置を超えると、同図中矢印で示すように、各捕集部材16a,16bの移動方向が反転され、その後、各捕集部材16a,16bは、ワークWの切り込み送りが進むに伴い作業領域Eの内側に向かって移動する。このように各捕集部材16a,16bがワークWとの間に一定の間隔を保つように移動することにより、ワークWの切り込み送りの位置にかかわらず上記のようなスラリの捕集効果が発揮される。
【0036】
そして、同図中の(c)に示すように、切り込み送りの終期には、上記一定間隔を保った状態で各捕集部材16a,16bがワークWに近接した位置に配置される結果、ワイヤ群12、ワーク保持部22及びワークWにより囲まれた空間内に捕集部材16a,16bが配置される。従って、ワイヤ群12と共に運ばれて上記空間内で舞い上がったスラリは、図中破線矢印で示すように、捕集部材16aにより捕集されることとなる。
【0037】
上記の例は、作業領域Eにおいてガイドローラ10A側からガイドローラ10B側にワークWが駆動される場合であるが、これとは逆に、ガイドローラ10B側からガイドローラ10A側にワークWが走行し、かつ上流側に位置するノズル部材14bからスラリが供給される場合も、上記の通り各捕集部材16a,16bが上記一定間隔を保った状態でワークWに近接した位置に配置されていることにより、ワークWから飛散したスラリは、同様に、ワイヤ群12の走行方向上流側に位置する捕集部材16bによって良好に捕集されることとなる。
【0038】
以上のように、このワイヤソーによれば、ワイヤ群12に対するワークWの切り込み送りの位置にかかわらず、ワークWの側面に沿って舞い上がったスラリを捕集することができるので、飛散したスラリがワイヤ群12やワークWに再度供給されるという不都合を切断作業の全工程に亘って良好に阻止することができる。特に、このワイヤソーでは、上下方向に幅が変化する円柱状のワークWを切断しながらも、上記のようにワークWとの間に常に一定の間隔が保たれるように各捕集部材16a,16bの位置が制御されるので、切断作業の全工程に亘って上記のようなスラリ捕集効果を良好に享受することができる。
【0039】
従って、切り込み送りの主に終期にだけスラリの捕集効果を得ることができる従来のワイヤソーと比較すると、ワークWの切り出しをより高精度に行うことが可能となる。
【0040】
ところで、上述したワイヤソーは、本発明に係るワイヤソー(本発明に係る加工液捕集装置が組み込まれたワイヤソー)の好ましい実施形態の一例であって、その具体的な構成は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0041】
例えば、上述したワイヤソーでは、各捕集部材16a,16bをガイド軸22により変位可能に支持した上で前記油圧シリンダ24によって各捕集部材16a,16bを駆動するように各捕集部材16a,16bの駆動機構が構成されているが、当該駆動機構は実施形態の構成に限定されるものではなく、例えばモータを駆動源とするねじ送り機構やラック・ピニオンによる送り機構等、実施形態以外の駆動機構を適用してもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、各捕集部材16a,16bを油圧シリンダ24によって個別に駆動する構成となっているが、上記半導体インゴットのように断面形状が左右対称(ワイヤ走行方向におけるワーク中心を通りかつワイヤ軸方向と直交する線分に対して対称)なワークWでは、各捕集部材16a,16bをワークWに対して左右対称に配置すればよいので、共通の駆動源で両捕集部材16a,16bが連動して互いに逆方向に変位するように上記駆動機構を構成するようにしてもよい。この構成によれば、簡単な構成および制御に基づいて各捕集部材16a,16bを駆動することが可能となる。
【0043】
また、上述したワイヤソーでは、切断作業の全工程に亘ってワークWとの間に常に一定の間隔を隔てた位置に捕集部材16a,16bが配置されるようにしているが、勿論、ワークWの切り込み送りの位置に応じてワークWと各捕集部材16a,16bとの間隔を変動させるようにしてもよい。例えば、ワークWの断面形状と切り込み送りの位置との関係で、切り込み送りの位置のうちワークWの近傍にスラリが飛散し易いような位置ではワークWに対して捕集部材16a,16bを近接して配置し、逆に、切り込み送りの位置のうちワークWから離間した位置にスラリが飛散し易いような位置ではワークWに対して捕集部材16a,16bを離して配置するようにしてもよい。
【0044】
また、実施形態では、各捕集部材16a,16bの内底部に勾配を設けることにより捕集したスラリを前後方向に流動させながらその前端部が回収部内に流下させるようにしているが、捕集部材16a,16bの具体的な構成はこれに限定されず、ワイヤ群12による切断中にワークWから飛散したスラリを捕集できる形状であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明にかかるワイヤソー(本発明にかかる加工液捕集装置が組み込まれたワイヤソー)を示す正面概略図である。
【図2】ワイヤソー(主に加工液捕集装置にかかる部分)を示す平面概略図である。
【図3】ワイヤ群に対するワークの切り込み送りの位置と捕集部材の配置との関係を示すワイヤソーの正面模式図である。
【符号の説明】
【0046】
10A,10B ガイドローラ
11 切断用ワイヤ
12 ワイヤ群
14a,14b ノズル部材
16a,16b 捕集部材
32 ワーク保持部材
40 NC装置
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に並ぶ複数の切断用ワイヤにより形成されかつワイヤ軸方向に走行するワイヤ群に対して上下方向に幅が変化する断面形状を有するワークを切り込み送りすると共に、この切り込み位置よりもワイヤ走行方向における上流側の位置で当該ワイヤ群に対して加工液を供給するように構成されたワイヤソーに組み込まれ、前記ワイヤ群に供給されることにより飛散した加工液を捕集する加工液捕集装置であって、
前記ワイヤ群による切断中にワークから飛散した前記加工液を捕集可能な形状を有する捕集部材と、
この捕集部材を前記ワイヤ群の上方であってその近傍となる高さ位置に配置しかつ前記ワイヤ走行方向と平行な方向に変位可能に支持する支持手段と、
前記捕集部材を前記ワイヤ走行方向と平行な方向に駆動する駆動手段と、
前記ワイヤ群に対するワークの切り込み送りの位置にかかわらず、当該ワークよりも前記ワイヤ走行方向における上流側の位置であって当該ワークに近接する所定位置に前記捕集部材が位置するように前記ワイヤ群に対するワークの切り込み送りの位置に応じて前記捕集部材を変位させるように前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする加工液捕集装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加工液捕集装置において、
前記制御手段は、前記ワイヤ群に対するワークの切り込み送りの位置にかかわらず、前記ワイヤ走行方向においてワークと前記捕集部材とが略一定の間隔で配置されるように前記駆動手段を制御することを特徴とする加工液捕集装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加工液捕集装置において、
前記ワイヤ群は、ワイヤ軸方向における一方側から他方側に向かって走行する状態と前記他方側から一方側に向かって走行する状態とに切換えられるものであり、
前記捕集部材として、前記ワイヤ走行方向において前記ワークを挟んだその両側の位置にそれぞれ配置される一対の前記捕集部材を備えていることを特徴とする加工液捕集装置。
【請求項4】
請求項3に記載の加工液捕集装置において、
前記駆動手段は、両捕集部材を互いに逆方向に連動して変位させるように構成されていることを特徴とする加工液捕集装置。
【請求項5】
互いに平行に並ぶ複数の切断用ワイヤにより形成されるワイヤ群と、このワイヤ群をワイヤ軸方向に駆動するワイヤ駆動手段と、ワークを保持するワーク保持部材を有し、このワーク保持部材により保持したワークを前記ワイヤ群に対してその上側から切り込み送りする送り手段と、前記ワイヤ群のうちワークが切り込み送りされる切り込み領域よりもワイヤ軸方向外側に配置され、前記ワイヤ群に対して加工液を供給する加工液供給手段と、前記ワイヤ群による切断中にワークから飛散した加工液を捕集する加工液捕集装置とを備えたワイヤソーであって、前記加工液捕集装置として請求項1乃至4の何れか一項に記載の加工液捕集装置を備えていることを特徴とするワイヤソー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−58228(P2010−58228A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226907(P2008−226907)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】