説明

加熱ヒータ、加熱ヒータの製造方法、定着装置および画像形成装置

【課題】 発熱抵抗体の局所部分が過昇温状態となるのを抑制することができるとともに、高い安全性および充分な絶縁耐圧性を確保することができる加熱ヒータを提供する。
【解決手段】 加熱ヒータ200は、複数の絶縁層202,203,204,205からなる矩形板状のセラミック基板201と、通電によって発熱する発熱領域がそれぞれ異なる複数の発熱抵抗体2032,2042とを含む。そして、前記複数の発熱抵抗体2032,2042は、複数の絶縁層202,203,204,205のそれぞれ異なる層間に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通電によって発熱する発熱抵抗体を有する加熱ヒータ、および該加熱ヒータの製造方法に関する。また、該加熱ヒータを備える定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として、熱ローラ定着方式の定着装置が多用されている。熱ローラ定着方式の定着装置は、互いに圧接されたローラ対(定着ローラおよび加圧ローラ)を備え、このローラ対の両方あるいはいずれか一方の内部に配置されたハロゲンヒータ等からなる加熱手段によってローラ対を所定の温度(定着温度)に加熱した後、未定着トナー像が形成された記録紙などの記録媒体をローラ対の圧接部(定着ニップ部)に給紙し、圧接部を通過させることで、熱と圧力によって記録紙にトナー像の定着を行うようになっている。
【0003】
ところで、カラー画像形成装置に備えられる定着装置においては、定着ローラ表層にシリコンゴム等からなる弾性層を設けた弾性ローラを用いることが一般的である。定着ローラを弾性ローラとすることで、定着ローラ表面が、未定着トナー像の凸凹に対応して弾性変形し、トナー像面を覆い包むように接触するため、モノクロに比べてトナー量の多いカラーの未定着トナー像に対して良好に加熱定着を行うことが可能となる。また、定着ニップ部での弾性層の歪開放効果によって、モノクロに比べてオフセットしやすいカラートナーに対して離型性を向上することができる。さらに、定着ニップのニップ形状が上(定着ローラ側)に凸(所謂、逆ニップ形状)となることから、記録紙の剥離性能を向上させることができ、剥離爪等の剥離手段を用いずとも記録紙の剥離が可能となり(セルフストリッピング)、剥離手段に起因する画像欠陥を解消することができる。
【0004】
このようなカラー画像形成装置に備えられる定着装置において、高速化に対応するには、定着ニップ部のニップ幅を広くする必要がある。ニップ幅を広くする方法としては、定着ローラの弾性層の層厚を厚くすることや、定着ローラ径を大きくするなどの方法がある。しかしながら、弾性層を具備した定着ローラでは、弾性層の熱伝導性が非常に低いので、定着ローラ内部に加熱手段がある場合、プロセス速度を高速化した場合に定着ローラ温度が追従しなくなる問題がある。一方、定着ローラ径を大きくした場合には、ウォームアップ時間が長くなる問題や、消費電力が増大するといった問題が発生する。
【0005】
このような問題を解決するカラー画像形成装置に備えられる定着装置として、特許文献1には、外部加熱ベルトを用いて定着ローラを外部から加熱するように構成された外部ベルト加熱定着方式の定着装置が開示されている。この外部ベルト加熱定着方式の定着装置では、定着ローラを外部から効率的に加熱することができるため、ウォームアップ時間を短くすることができる。また、特許文献2には、定着ローラと加熱ローラとの間に定着ベルトを掛け渡し、定着ベルトを介して定着ローラと加圧ローラとを圧接させた構成のベルト定着方式の定着装置が開示されている。このベルト定着方式の定着装置では、熱容量が小さい定着ベルトを加熱するため、ウォームアップ時間を短くすることができる。また、外部ベルト加熱定着方式およびベルト定着方式のいずれの定着装置においても、定着ローラにハロゲンランプ等の熱源を内蔵する必要がないので、スポンジゴム等からなる低硬度の弾性層を厚く設けることができ、広いニップ幅を確保することができる。
【0006】
さらに、特許文献3には、ベルト定着方式の定着装置において、定着ベルトを加熱する加熱手段として、セラミック基板上に発熱抵抗体をスクリーン印刷により形成した面状のセラミック発熱体を用いた面状発熱ベルト定着方式の定着装置が開示されている。この面状発熱ベルト定着方式の定着装置では、加熱手段の熱容量が小さくなると同時に、加熱手段としての面状のセラミック発熱体が直接発熱することから、ハロゲンランプ等を用いて間接的に加熱ローラを加熱する方式に比べて熱応答速度が向上し、ウォームアップ時間の更なる短縮や更なる省エネ化が達成できる。
【0007】
また、特許文献4には、定着ベルトよりも薄い定着フィルムを用いる定着装置であって、定着フィルムの内周面にセラミック発熱体を当接させて構成されるフィルム定着方式の定着装置が開示されている。
【0008】
しかしながら、面状のセラミック発熱体を発熱源として用いた、面状発熱ベルト定着方式の定着装置やフィルム定着方式の定着装置では、次のような問題点がある。すなわち、面状発熱ベルト定着方式の定着装置やフィルム定着方式の定着装置では、定着ニップ部に給紙される記録紙のサイズに応じて定着ベルト表面や定着フィルム表面における記録紙が接触しない非通紙領域では、セラミック発熱体から発生した熱が記録紙によって奪われることがないので、非通紙領域に対応する定着ベルト、定着フィルムおよびセラミック発熱体の局所部分が過昇温状態となり、発煙や焼損に至ってしまうおそれがある。このように、局所部分が過昇温状態となるのは、定着ベルト、定着フィルムおよびセラミック発熱体は、熱容量が小さく、かつ、記録紙の搬送方向に対して垂直方向への熱伝導性能が悪いためである。
【0009】
特許文献5には、セラミック基板の表面に絶縁体層(ガラスコート層)を介して複数の発熱抵抗体が積層され、各層の発熱抵抗体に対応して発熱領域が複数に分割されて構成される加熱ヒータが開示されている。また、特許文献6には、発熱抵抗体が形成されたセラミック基板が、接着剤を介して複数積層され、各層の発熱抵抗体に対応して発熱領域が複数に分割されて構成される加熱ヒータが開示されている。特許文献5,6に開示される加熱ヒータは、各層の発熱抵抗体に対する通電状態を制御することによって、複数の発熱領域を区別した状態で発熱させることができ、非通紙領域に対応する定着ベルト、定着フィルムおよび発熱抵抗体の局所部分が過昇温状態となるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−212896号公報
【特許文献2】特開平10−307496号公報
【特許文献3】特開2007−304414号公報
【特許文献4】特開2007−304477号公報
【特許文献5】特開平4−81877号公報
【特許文献6】特開平6−337605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献5,6に開示される加熱ヒータでは、発熱抵抗体は、セラミック基板の表面上にスクリーン印刷などの方法で形成されたものなので、セラミック基板の表面から剥離してしまうおそれがある。このように、セラミック基板の表面からの発熱抵抗体の剥離が発生すると、発熱抵抗体の局所部分に異常発熱が生じることになる。発熱抵抗体の異常発熱が続くと、発熱抵抗体自身から発煙が生じたり、発火に至る場合もあり、発熱抵抗体自身が破損し、安全性が損なわれる。
【0012】
また、たとえば、特許文献5に開示される加熱ヒータを製造する場合、焼成されたセラミック基板の表面上に発熱抵抗体およびガラスコート層をスクリーン印刷によって形成する工程と、形成された発熱抵抗体およびガラスコート層を焼成(焼成温度は、たとえば800℃以上)する工程とを繰り返して、発熱領域が複数に分割される加熱ヒータを作製することになり、生産効率が悪くかつ高製造コストとなる。さらに、加熱ヒータは、焼成工程が繰り返されて作製される、すなわち、加熱および冷却が繰り返されて作製される。そのため、セラミック基板および発熱抵抗体は、加熱膨張と冷却収縮とを繰り返すことになり、線膨張係数の違いに応じて、セラミック基板の表面からの発熱抵抗体の剥離が発生し、安全性が損なわれる。
【0013】
また、絶縁体層であるガラスコート層は、スクリーン印刷によって形成されるため、層厚の上限値としては10μm程度が限度である。さらに、ガラスコート層には、スクリーン印刷の版の目詰まり、メッシュ痕などにより、ボイドやピンホールが発生しやすい。このようなガラスコート層では、安全で確実な絶縁耐圧性を確保することができない。そのため、特に、発熱抵抗体として銀パラジウムなどの銀系材料を用いた場合、エレクトロケミカルマイグレーション(イオンマイグレーション)の発生によるリークの危険性が大きくなる。
【0014】
したがって本発明の目的は、発熱抵抗体の局所部分が過昇温状態となるのを抑制することができるとともに、高い安全性および充分な絶縁耐圧性を確保することができる加熱ヒータを提供することであり、該加熱ヒータを効率よく製造することができる加熱ヒータの製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、前記加熱ヒータを備える定着装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、電気絶縁性を有する複数の絶縁層からなる矩形板状のセラミック基板と、
通電によって発熱する発熱領域がそれぞれ異なる複数の発熱抵抗体とを含み、
前記複数の発熱抵抗体は、前記絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられることを特徴とする加熱ヒータである。
【0016】
また本発明は、前記複数の発熱抵抗体は、
セラミック基板の長手方向に関して、それぞれ異なる領域が発熱領域となるように、前記絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられて、
それぞれ個別に通電可能となるように構成されることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記複数の発熱抵抗体は、
セラミック基板の長手方向中央部が発熱領域となるように設けられる第1発熱抵抗体と、
セラミック基板の長手方向両端部が発熱領域となるように設けられる第2発熱抵抗体とを含み、
前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体とは、前記絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられて、それぞれ個別に通電可能となるように構成されることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記複数の発熱抵抗体は、
セラミック基板の長手方向に関して、セラミック基板の厚み方向から見た場合に、一部の発熱領域が重なるように、前記絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられて、
それぞれ個別に通電可能となるように構成されることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記複数の発熱抵抗体は、
セラミック基板の長手方向中央部が発熱領域となるように設けられる第1発熱抵抗体と、
セラミック基板の長手方向両端部間にわたる全領域が発熱領域となるように設けられる第2発熱抵抗体とを含み、
前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体とは、前記絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられて、それぞれ個別に通電可能となるように構成されることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記複数の絶縁層は、厚みが50μm以上の層であることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、前記セラミック基板の長手方向両端部には、セラミック基板の厚み方向に凹んだ凹部が形成され、
前記凹部の表面には、前記複数の発熱抵抗体のそれぞれに対して電気的に接続される給電端子が形成されることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、記録媒体上に担持されるトナー像を加熱手段によって加熱して、記録媒体上に定着させる定着装置であって、
前記加熱手段は、
前記加熱ヒータと、
前記加熱ヒータを保持し、加熱ヒータで発生する熱を前記トナー像に伝達する保持部材と、
前記加熱ヒータの前記発熱抵抗体に電圧を印加する加熱用電源と、を含んで構成されることを特徴とする定着装置である。
【0023】
また本発明は、記録媒体におけるトナー像が担持されるトナー像担持面に、外周面において接触して、回転可能に設けられる無端状のベルト部材である定着ベルトを備え、
前記加熱手段は、前記保持部材が前記定着ベルトの内周面に接触するように設けられて、前記定着ベルトを介してトナー像を加熱するように構成されることを特徴とする。
【0024】
また本発明は、前記定着ベルトの内周面に接触して設けられる定着部材と、前記定着ベルトを介して前記定着部材に圧接する加圧部材とを備え、
前記加熱手段は、前記定着ベルトと前記加圧部材との間を通過する記録媒体上に担持されるトナー像を、前記定着ベルトを介して加熱するように構成されることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、前記定着ベルトの内周面に接触するように設けられる前記保持部材に対して前記定着ベルトを介して圧接する加圧部材を備え、
前記加熱手段は、前記定着ベルトと前記加圧部材との間を通過する記録媒体上に担持されるトナー像を、前記定着ベルトを介して加熱するように構成されることを特徴とする。
【0026】
また本発明は、記録媒体におけるトナー像が担持されるトナー像担持面に接触する定着部材と、前記定着部材に圧接する加圧部材と、内周面が前記保持部材と接触し、かつ外周面が前記定着部材と接触して回転可能に設けられる無端状のベルト部材である加熱ベルトとを備え、
前記加熱手段は、前記定着部材と前記加圧部材との間を通過する記録媒体上に担持されるトナー像を、前記加熱ベルトおよび前記定着部材を介して加熱するように構成されることを特徴とする。
【0027】
また本発明は、前記加熱用電源は、前記加熱ヒータの前記発熱抵抗体に印加する電圧値を可変制御可能な電源であり、前記発熱抵抗体における投入電力値が一定となるように可変制御されることを特徴とする。
【0028】
また本発明は、記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段によって記録媒体上に形成されるトナー像を、所定の定着温度に加熱して定着させる定着手段とを含む画像形成装置であって、
前記定着手段が、前記加熱ヒータを備える前記定着装置であることを特徴とする画像形成装置である。
【0029】
また本発明は、電気絶縁性を有する矩形板状の複数のセラミック基体のそれぞれの表面上に、通電によって発熱する発熱領域が異なる発熱抵抗体を形成する抵抗体形成工程と、
前記抵抗体形成工程で得られる発熱抵抗体が形成された複数のセラミック基体を、発熱抵抗体が形成されていない複数のセラミック基体に挟み込むように重ね合わせた後、加圧下で圧着させて、各セラミック基体が積層された積層体を得る積層体作製工程と、
前記積層体作製工程で得られる積層体を焼成する焼成工程と、を含むことを特徴とする加熱ヒータの製造方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、加熱ヒータは、複数の絶縁層からなる矩形板状のセラミック基板と、通電によって発熱する発熱領域がそれぞれ異なる複数の発熱抵抗体とを含む。そして、前記複数の発熱抵抗体は、絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられる。
【0031】
加熱ヒータにおいて、発熱抵抗体は、セラミック基板の表面上に形成されているのではなく、セラミック基板を構成する複数の絶縁層の層間に設けられている。そのため、加熱ヒータが加熱膨張と冷却収縮とを繰り返した際に、発熱抵抗体とセラミック基板との線膨張係数の違いにより、発熱抵抗体がセラミック基板から剥離するのを防止することができ、発熱抵抗体の局所部分が異常発熱して過昇温状態となるのを防止することができる。したがって、加熱ヒータは、発熱抵抗体自身から発煙が生じたり、発火に至るのを防止されたものとなり、高い安全性を確保することができる。また、加熱ヒータにおいて、複数の発熱抵抗体は、電気絶縁性を有するセラミック基板中のそれぞれ異なる絶縁層の層間に設けられているので、各発熱抵抗体間における充分な絶縁耐圧性を確保することができる。
【0032】
また本発明によれば、複数の発熱抵抗体は、セラミック基板の長手方向に関して、それぞれ異なる領域が発熱領域となるように、絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられる。そして、複数の発熱抵抗体は、それぞれ個別に通電可能となるように構成されている。これによって、セラミック基板の長手方向、すなわち、加熱ヒータの長手方向における発熱量を、複数の発熱抵抗体のそれぞれに対する通電状態を切り替えることによって調整することができ、加熱ヒータの表面における温度分布が所望の温度分布となるように調整することができる。
【0033】
また本発明によれば、複数の発熱抵抗体は、第1発熱抵抗体と第2発熱抵抗体とを含む。第1発熱抵抗体は、セラミック基板の長手方向中央部に対応する領域が発熱領域となり、第2発熱抵抗体は、セラミック基板の長手方向両端部に対応する領域が発熱領域となる。そして、第1発熱抵抗体と第2発熱抵抗体とは、絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられて、それぞれ個別に通電可能となるように構成されている。これによって、セラミック基板の長手方向、すなわち、加熱ヒータの長手方向における発熱量を、第1発熱抵抗体と第2発熱抵抗体とに対する通電状態を切り替えることによって調整することができ、加熱ヒータの表面における温度分布が所望の温度分布となるように調整することができる。
【0034】
また本発明によれば、複数の発熱抵抗体は、セラミック基板の長手方向に関して、セラミック基板の厚み方向から見た場合に、一部の発熱領域が重なるように、絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられる。そして、複数の発熱抵抗体は、それぞれ個別に通電可能となるように構成されている。これによって、セラミック基板の長手方向、すなわち、加熱ヒータの長手方向における発熱量を、複数の発熱抵抗体のそれぞれに対する通電状態を切り替えることによって調整することができ、加熱ヒータの表面における温度分布が所望の温度分布となるように調整することができる。
【0035】
また本発明によれば、複数の発熱抵抗体は、第1発熱抵抗体と第2発熱抵抗体とを含む。第1発熱抵抗体は、セラミック基板の長手方向中央部に対応する領域が発熱領域となる。第2発熱抵抗体は、セラミック基板の長手方向両端部間にわたる全領域が発熱領域となる。そして、第1発熱抵抗体と第2発熱抵抗体とは、絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられて、それぞれ個別に通電可能となるように構成されている。これによって、セラミック基板の長手方向、すなわち、加熱ヒータの長手方向における発熱量を、第1発熱抵抗体と第2発熱抵抗体とに対する通電状態を切り替えることによって調整することができ、加熱ヒータの表面における温度分布が所望の温度分布となるように調整することができる。特に、第2発熱抵抗体のみに電圧を印加して通電することによって、加熱ヒータの長手方向の全領域を発熱させることができるので、加熱ヒータの表面における温度分布を均一にすることができる。
【0036】
また本発明によれば、複数の絶縁層は、厚みが50μm以上の層である。これによって、複数の絶縁層の層間に設けられる発熱抵抗体がそれぞれ個別に通電制御されて、発熱抵抗体間に電位差が生じた場合であっても、各発熱抵抗体間における充分な絶縁耐圧性を確保することができるとともに、エレクトロケミカルマイグレーション(イオンマイグレーション)の発生を防止することができる。
【0037】
また本発明によれば、セラミック基板の長手方向両端部には、セラミック基板の厚み方向に凹んだ凹部が形成されている。そして、前記凹部の表面には、複数の発熱抵抗体のそれぞれに対して電気的に接続される給電端子が形成されている。発熱抵抗体に対して電気的に接続される給電端子が、セラミック基板の凹部表面に形成されているので、セラミック基板中の絶縁層の層間に設けられる発熱抵抗体に対して、給電端子を介して確実に給電することができる。
【0038】
また本発明によれば、定着装置は、記録媒体上に担持されるトナー像を加熱する加熱手段が、前述した加熱ヒータを含んで構成される。前述した加熱ヒータは、発熱抵抗体の局所部分が過昇温状態となるのを抑制することができるとともに、高い安全性および充分な絶縁耐圧性を確保することができるものである。そのため、定着装置は、高い安全性が確保されたものとなる。
【0039】
また本発明によれば、定着装置は、定着ベルトをさらに備え、加熱手段が定着ベルトを介して記録媒体上のトナー像を加熱するように構成される。そして、加熱手段は、加熱ヒータを保持する保持部材が定着ベルトの内周面に接触するように設けられている。定着ベルトは、熱容量が小さくなるように設計可能な部材である。加熱手段は、前述のように定着ベルトに直接接触して加熱するので、熱容量が大きいローラ状の定着ローラを内部に配置される熱源によって間接的に加熱する場合に比べて、ウォームアップ時間を短縮することができる。
【0040】
また本発明によれば、定着装置は、定着ベルトの内周面に接触して設けられる定着部材と、定着ベルトを介して定着部材に圧接する加圧部材とをさらに備える。そして、加熱手段は、定着ベルトと加圧部材との間を通過する記録媒体上に担持されるトナー像を、定着ベルトを介して加熱するように構成される。このような構成の定着装置では、記録媒体上のトナー像は、定着ベルトを介して互いに圧接する定着部材と加圧部材との間を通過するときに定着される。そのため、記録媒体上のトナー像は、定着ベルトを介して加熱手段によって加熱されるとともに、定着部材と加圧部材との間に発生する圧接力によって加圧されるので、より安定した定着性能を確保することができる。
【0041】
また本発明によれば、定着装置は、定着ベルトの内周面に接触するように設けられる加熱手段の保持部材に対して定着ベルトを介して圧接する加圧部材を備える。そして、加熱手段は、定着ベルトと加圧部材との間を通過する記録媒体上に担持されるトナー像を、定着ベルトを介して加熱するように構成される。このような構成の定着装置では、記録媒体上のトナー像は、定着ベルトを介して互いに圧接する加熱手段の保持部材と加圧部材との間を通過するときに定着される。そのため、記録媒体上のトナー像は、定着ベルトを介して加熱手段によって加熱されるとともに、加熱手段の保持部材と加圧部材との間に発生する圧接力によって加圧されるので、より安定した定着性能を確保することができる。また、加熱手段の保持部材と加圧部材とが定着ベルトを介して互いに圧接するように構成することによって、加圧部材と圧接する定着部材などの他の部材を設けなくても、記録媒体上のトナー像に圧接力を付与することができ、定着装置の構成を簡略化することができる。
【0042】
また本発明によれば、定着装置は、記録媒体のトナー像担持面に接触する定着部材と、定着部材に圧接する加圧部材と、内周面が加熱手段の保持部材と接触し、かつ外周面が定着部材と接触して回転可能に設けられる加熱ベルトとを備える。そして、加熱手段は、定着部材と加圧部材との間を通過する記録媒体上のトナー像を、加熱ベルトおよび定着部材を介して加熱するように構成される。このような構成の定着装置では、記録媒体上のトナー像は、互いに圧接する定着部材と加圧部材との間を通過するときに定着される。このとき、記録媒体上のトナー像は、加熱手段の保持部材と接触し、かつ定着部材と接触する加熱ベルトを介して定着部材から加熱を受けるとともに、定着部材と加圧部材との間に発生する圧接力によって加圧されるので、より安定した定着性能を確保することができる。
【0043】
また本発明によれば、加熱手段が有する加熱ヒータの発熱抵抗体に電圧を印加する加熱用電源は、加熱ヒータの発熱抵抗体に印加する電圧値を可変制御可能な電源である。そして、加熱用電源は、発熱抵抗体における投入電力値が一定となるように可変制御される。通電によって発熱する発熱抵抗体は、製造ロット間で電気抵抗値がばらつくものであり、かつ、温度変化に応じて電気抵抗値が変動するものである。これに対して、加熱用電源が、発熱抵抗体における投入電力値が一定となるように可変制御されるので、定着装置は、安定した定着性能を確保することができる。
【0044】
また本発明によれば、画像形成装置は、記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段によって記録媒体上に形成されるトナー像を、所定の定着温度に加熱して定着させる定着手段とを含む。そして、画像形成装置は、トナー像を定着させる定着手段として、前記加熱ヒータを有する前記定着装置を備えることによって実現される。
【0045】
また本発明によれば、加熱ヒータの製造方法は、抵抗体形成工程と、積層体作製工程と、焼成工程とを含む。抵抗体形成工程では、電気絶縁性を有する矩形板状の複数のセラミック基体のそれぞれの表面上に、通電によって発熱する発熱領域が異なる発熱抵抗体を形成する。積層体作製工程では、抵抗体形成工程で得られる発熱抵抗体が形成された複数のセラミック基体を、発熱抵抗体が形成されていない複数のセラミック基体に挟み込むように重ね合わせた後、加圧下で圧着させて、各セラミック基体が積層された積層体を得る。次に焼成工程では、積層体作製工程で得られる積層体を焼成する。
【0046】
以上のように、加熱ヒータの製造方法では、各セラミック基体と、セラミック基体の表面上に形成された発熱抵抗体とを同時焼成して加熱ヒータを作製するので、積層された各セラミック基体が焼成されて形成されるセラミック基板中に、各セラミック基体に対応する複数の絶縁層が形成され、該絶縁層の層間に発熱抵抗体が設けられた加熱ヒータを作製することができる。
【0047】
また、本発明に係る加熱ヒータの製造方法では、各セラミック基体と、セラミック基体の表面上に形成された発熱抵抗体とを同時焼成して加熱ヒータを作製するので、焼成されたセラミック基板の表面上に発熱抵抗体およびガラスコート層を形成する工程と、形成された発熱抵抗体およびガラスコート層を焼成する工程とを繰り返して加熱ヒータを作製する従来技術に比べて、生産効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態に係る加熱ヒータ200の構成を示す断面図である。
【図2】加熱ヒータ200のセラミック基板201中に形成される各絶縁層の構成を示す図である。
【図3】加熱ヒータの製造方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る加熱ヒータ300の構成を示す断面図である。
【図5】加熱ヒータ300のセラミック基板301中に形成される各絶縁層の構成を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る定着装置15の構成を示す図である。
【図7】加熱手段21の構成を示す図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る定着装置40の構成を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る定着装置50の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の一形態に係る画像形成装置100の構成を示す図である。
【図11】従来技術における加熱ヒータの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
(加熱ヒータ)
図1は、本発明の第1実施形態に係る加熱ヒータ200の構成を示す断面図である。図1(a)は、加熱ヒータ200の長手方向中央部における構成を示し、図1(b)は、加熱ヒータ200の長手方向端部近傍における構成を示し、図1(c)は、加熱ヒータ200の長手方向端部の給電端子が形成される領域部分における構成を示す。また、図2は、加熱ヒータ200のセラミック基板201中に形成される各絶縁層の構成を示す図である。図2(a)は、セラミック基板201中に形成される第1絶縁層202の構成を示し、図2(b)は、セラミック基板201中に形成される第2絶縁層203の構成を示し、図2(c)は、セラミック基板201中に形成される第3絶縁層204の構成を示し、図2(d)は、セラミック基板201中に形成される第4絶縁層205の構成を示す。
【0050】
加熱ヒータ200は、電気絶縁性を有する矩形板状のセラミック基板201と、通電によって発熱する発熱領域がそれぞれ異なる複数の発熱抵抗体である、第1発熱抵抗体2032および第2発熱抵抗体2042とを含んで構成される。
【0051】
セラミック基板201は、第1絶縁層202と、第2絶縁層203と、第3絶縁層204と、第4絶縁層205とからなる。セラミック基板201中における各絶縁層は、第1絶縁層202、第2絶縁層203、第3絶縁層204、第4絶縁層205の順に積層され、第1絶縁層202および第4絶縁層205が、加熱ヒータ200における外層部分となる。
【0052】
ここで、セラミック基板201は、詳細は後述するが、各絶縁層202,203,204,205を構成するセラミック基体が積層された状態で焼成されて形成されたものである。セラミック基板201を構成する材料、すなわち、各絶縁層202,203,204,205のセラミック基体を構成する材料としては、純度の高いアルミナ、結晶化ガラス、フォルステライト、ステアタイト、ガラスとアルミナとの複合材料である低温同時焼結セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramic、略称LTCC)などの電気絶縁性を有するセラミックを挙げることができる。本実施形態では、セラミック基板201を構成する材料は、LTCCである。
【0053】
また、各絶縁層202,203,204,205は、それぞれ矩形状に形成されて、短手寸法が12.3mm、長手寸法が360mm、厚みが0.2mmである。
【0054】
そして、第1絶縁層202と第2絶縁層203との層間には、第1発熱抵抗体2032が設けられ、第2絶縁層203と第3絶縁層204との層間には、第2発熱抵抗体2042が設けられている。第1発熱抵抗体2032と第2発熱抵抗体2042とは、セラミック基板201の長手方向に関して、それぞれ異なる領域が発熱領域となるように設けられている。
【0055】
第1絶縁層202と第2絶縁層203との層間に設けられる第1発熱抵抗体2032は、図2(b)に示すように、セラミック基板201の長手方向中央部に対応する発熱領域において、長手方向に平行な複数の直線部分2032aが、U字状の反転部分2032bを介して、短手方向に交互にかつ平行に連なるように構成されている。本実施形態では、第1発熱抵抗体2032は、線幅が0.79mm、厚みが10μmで、直線部分2032aが5つ形成され、反転部分2032bが4つ形成されている。
【0056】
第2絶縁層203と第3絶縁層204との層間に設けられる第2発熱抵抗体2042は、図2(c)に示すように、セラミック基板201の長手方向両端部に対応した発熱領域204a,204bを有する。第2発熱抵抗体2042は、セラミック基板201の長手方向両端部に対応する発熱領域204a,204bにおいて、長手方向に平行な複数の直線部分2042aが、U字状の反転部分2042bを介して、短手方向に交互にかつ平行に連なり、各発熱領域204a,204b間は、連結部分2042cによって接続されている。本実施形態では、第2発熱抵抗体2042は、線幅が0.44mm、厚みが10μmで、各発熱領域204a,204bにおいて直線部分2042aが7つ形成され、反転部分2042bが6つ形成されている。
【0057】
第1発熱抵抗体2032および第2発熱抵抗体2042を構成する材料としては、導電性を有し、通電および発熱によって溶融するなどの変形を起こさないものであればよく、たとえば、セラミック基板201がアルミナからなる場合には、タングステン、ステンレスなどを好適に用いることができ、セラミック基板201が結晶化ガラス、フォルステライト、ステアタイト、LTCCからなる場合には、金、銀、銀パラジウム、銅などを好適に用いることができる。本実施形態では、LTCCからなるセラミック基板201に対して、第1および第2発熱抵抗体2032,2042を構成する材料は、銀パラジウムである。
【0058】
また、セラミック基板201の短手方向一端部側に対応する長手方向両端部には、第2絶縁層203の表面まで第1絶縁層202を貫通する、セラミック基板201の厚み方向に凹んだ第1凹部206が形成されている。そして、第1凹部206の表面、すなわち、第2絶縁層203の表面には、第1発熱抵抗体2032に対して電気的に接続される第1給電端子2033が形成されている。これによって、セラミック基板201中における第1絶縁層202と第2絶縁層203との層間に設けられる第1発熱抵抗体2032に対して、第1給電端子2033を介して確実に給電することができる。
【0059】
さらに、セラミック基板201の短手方向他端部側に対応する長手方向両端部には、第3絶縁層204の表面まで第1絶縁層202および第2絶縁層203を貫通する、セラミック基板201の厚み方向に凹んだ第2凹部207が形成されている。そして、第2凹部207の表面、すなわち、第3絶縁層204の表面には、第2発熱抵抗体2042に対して電気的に接続される第2給電端子2043が形成されている。これによって、セラミック基板201中における第2絶縁層203と第3絶縁層204との層間に設けられる第2発熱抵抗体2042に対して、第2給電端子2043を介して確実に給電することができる。
【0060】
第1給電端子2033および第2給電端子2043を構成する材料としては、第1および第2発熱抵抗体2032,2042と同様の材料を挙げることができる。本実施形態では、銀パラジウムからなる第1および第2発熱抵抗体2032,2042に対して、第1および第2給電端子2033,2042を構成する材料は、銀パラジウムである。
【0061】
以上のように構成される加熱ヒータ200では、通電によって発熱する第1および第2発熱抵抗体2032,2042が、セラミック基板201中における絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられている。すなわち、加熱ヒータ200において、第1および第2発熱抵抗体2032,2042は、セラミック基板201の表面上に形成されているのではなく、セラミック基板201を構成する複数の絶縁層の層間に設けられている。
【0062】
そのため、加熱ヒータ200が加熱膨張と冷却収縮とを繰り返した際に、第1および第2発熱抵抗体2032,2042とセラミック基板201との線膨張係数の違いにより、第1および第2発熱抵抗体2032,2042がセラミック基板201から剥離するのを防止することができ、第1および第2発熱抵抗体2032,2042の局所部分が異常発熱して過昇温状態となるのを防止することができる。したがって、加熱ヒータ200は、発熱抵抗体自身から発煙が生じたり、発火に至るのを防止されたものとなり、高い安全性を確保することができる。また、加熱ヒータ200において、第1および第2発熱抵抗体2032,2042は、電気絶縁性を有するセラミック基板201中のそれぞれ異なる絶縁層の層間に設けられているので、各発熱抵抗体間における充分な絶縁耐圧性を確保することができる。
【0063】
また、加熱ヒータ200では、第1発熱抵抗体2032と第2発熱抵抗体2042とは、それぞれ個別に通電可能となるように構成されている。これによって、セラミック基板201の長手方向、すなわち、加熱ヒータ200の長手方向における発熱量を、第1発熱抵抗体2032と第2発熱抵抗体2042とに対する通電状態を切り替えることによって調整することができ、加熱ヒータ200の表面における温度分布が所望の温度分布となるように調整することができる。
【0064】
また、加熱ヒータ200では、加熱ヒータ200の長手方向中央部に対応する領域のみを発熱させたい場合には、第1発熱抵抗体2032のみを通電させればよく、加熱ヒータ200の長手方向両端部間にわたる全領域を発熱させたい場合には、第1発熱抵抗体2032および第2発熱抵抗体2042の両方の発熱抵抗体を通電させればよい。ここで、第2発熱抵抗体2042が形成される第2絶縁層203と第3絶縁層204との層間では、加熱ヒータ200の長手方向中央部に対応する領域部分には、発熱抵抗体が形成されていない。このように、加熱ヒータ200では、長手方向両端部間にわたる全領域に対応した発熱抵抗体を形成しなくても、第1発熱抵抗体2032と第2発熱抵抗体2042との通電状態を制御することによって、長手方向両端部間にわたる全領域を発熱させることができる。したがって、加熱ヒータ200は、長手方向両端部間にわたる全領域を発熱させるための発熱抵抗体を形成する場合に比べて、銀パラジウムや金などの高価な材料からなる発熱抵抗体の使用量を低減することができ、そのため、加熱ヒータのトータルコストを低減することができる。
【0065】
また、加熱ヒータ200は、前述したように、加熱ヒータ200の長手方向中央部が発熱領域となる第1発熱抵抗体2032と、加熱ヒータ200の長手方向両端部が発熱領域となる第2発熱抵抗体2042とが設けられているが、第1発熱抵抗体2032および第2発熱抵抗体2042によって形成される加熱ヒータ200の長手方向に関する発熱領域のパターンは、これに限定されるものではない。
【0066】
たとえば、加熱ヒータ200の長手方向一端部から長手方向中央部にわたる領域が、第1発熱抵抗体2032の発熱領域となり、加熱ヒータ200の長手方向他端部近傍の領域が、第2発熱抵抗体2042の発熱領域となるように構成してもよい。このように構成された加熱ヒータ200では、加熱ヒータ200の長手方向一端部から長手方向中央部にわたる領域のみを発熱させたい場合には、第1発熱抵抗体2032のみを通電させればよく、加熱ヒータ200の長手方向両端部間にわたる全領域を発熱させたい場合には、第1発熱抵抗体2032および第2発熱抵抗体2042の両方の発熱抵抗体を通電させればよい。
【0067】
図3は、加熱ヒータの製造方法を示すフローチャートである。前述した加熱ヒータ200の製造方法は、ステップs1の抵抗体形成工程と、ステップs2の開口部形成工程と、ステップs3の積層体作製工程と、ステップs4の焼成工程とを含む。
【0068】
ステップs1の抵抗体形成工程では、たとえば、400mm×400mm×0.2mmの矩形板状の4つのセラミックシートを準備する。そして、セラミックシートの表面上に、1つの大きさが12.3mm×360mm×0.2mmであるセラミック基体に応じた9つの領域ごとに、スクリーン印刷法により、第1発熱抵抗体2032および第1給電端子2033を形成する。また、他のセラミックシートの表面上に、1つの大きさが12.3mm×360mm×0.2mmであるセラミック基体に応じた9つの領域ごとに、スクリーン印刷法により、第2発熱抵抗体2042および第2給電端子2043を形成する。このようにして、矩形板状の2つのセラミックシートのそれぞれの表面上に、通電によって発熱する発熱領域が異なる第1および第2発熱抵抗体2032,2042を形成することができる。
【0069】
次に、ステップs2の開口部形成工程では、セラミック基体に応じた9つの領域ごとに第1発熱抵抗体2032および第1給電端子2033が形成されたセラミックシートを用いて、セラミック基体に応じた各領域の長手方向両端部における、第1給電端子2033が形成されていない箇所に、打ち抜き型を用いて、開口部(キャビティ)を形成する。また、発熱抵抗体が形成されていない残余の2つのセラミックシートのうち、1つのセラミックシートを用いて、セラミック基体に応じた各領域の長手方向両端部にも、打ち抜き型を用いて、開口部(キャビティ)を形成する。
【0070】
次に、ステップs3の積層体作製工程では、抵抗体形成工程で得られた発熱抵抗体が形成された2つのセラミックシートを、発熱抵抗体が形成されていない2つのセラミックシートに挟み込むように、位置合わせして重ね合わせた後、プレス冶具を用いて、加圧下で圧着(温水等方圧プレス:WIP)させて、4つのセラミックシートを積層させる。そして、積層された4つのセラミックシートについて、セラミック基体に応じた9つの領域に対応した外形を有する金型を用いて切断し、12.3mm×360mm×0.8mmの大きさを有する9つの積層体を得る。
【0071】
次に、ステップs4の焼成工程では、積層体作製工程で得られる積層体を焼成する。積層体を焼成するときの焼成温度は、各セラミック基体が焼結し、かつ発熱抵抗体が溶融しない温度に設定される。具体的には、各セラミック基体がLTCCからなり、発熱抵抗体および給電端子が銀パラジウムからなる場合には、非酸化性雰囲気下で800〜900℃の温度で焼成する。
【0072】
このようにして、各セラミック基体が積層された積層体を焼成することによってセラミック基板201が形成される。そして、該セラミック基板201中には、各セラミック基体に対応する複数の絶縁層が形成され、前記複数の絶縁層の異なる層間に、第1および第2発熱抵抗体2032,2042が設けられた加熱ヒータ200を製造することができる。なお、加熱ヒータ200における第1凹部206および第2凹部207は、開口部形成工程で形成した開口部が組み合されて形成される。
【0073】
以上のように、加熱ヒータ200の製造方法では、各セラミック基体と、セラミック基体の表面上に形成された第1および第2発熱抵抗体2032,2042とを同時焼成して加熱ヒータ200を作製するので、積層された各セラミック基体が焼成されて形成されるセラミック基板201中に、各セラミック基体に対応する複数の絶縁層が形成され、前記複数の絶縁層の異なる層間に発熱抵抗体が設けられた加熱ヒータ200を作製することができる。
【0074】
また、加熱ヒータ200の製造方法では、各セラミック基体と、セラミック基体の表面上に形成された第1および第2発熱抵抗体2032,2042とを同時焼成して加熱ヒータ200を作製するので、焼成されたセラミック基板の表面上に発熱抵抗体およびガラスコート層を形成する工程と、形成された発熱抵抗体およびガラスコート層を焼成する工程とを繰り返して加熱ヒータを作製する従来技術に比べて、生産効率を向上することができる。
【0075】
次に、加熱ヒータ200について実施した、絶縁耐圧性、イオンマイグレーションおよび耐久性の評価結果について説明する。なお、絶縁耐圧性を評価するにあたって、従来法で製造される加熱ヒータを比較サンプルとして用いた。
【0076】
<比較サンプルの作製>
図11は、従来技術における加熱ヒータの製造方法を示すフローチャートである。ステップa1のセラミック焼成工程では、アルミナからなる基板を焼成してセラミック基板を作製する。次に、ステップa2の第1抵抗体形成工程では、焼成されたセラミック基板の表面上に、加熱ヒータ200の第1発熱抵抗体2032と同じ発熱領域を有する銀パラジウムからなる第1発熱抵抗体を、スクリーン印刷法により形成する。次に、ステップa3の第1コート層形成工程では、セラミック基板の表面上に形成された第1発熱抵抗体を被覆するように、スクリーン印刷法により、厚みが10μmの第1ガラスコート層を形成する。そして、ステップa4の第1焼成工程では、セラミック基板の表面上に形成された第1発熱抵抗体および第1ガラスコート層を焼成する。
【0077】
次に、ステップa5の第2抵抗体形成工程では、第1ガラスコート層の表面上に、加熱ヒータ200の第2発熱抵抗体2042と同じ発熱領域を有する銀パラジウムからなる第2発熱抵抗体を、スクリーン印刷法により形成する。次に、ステップa6の第2コート層形成工程では、第2抵抗体形成工程において形成された第2発熱抵抗体を被覆するように、スクリーン印刷法により、厚みが10μmの第2ガラスコート層を形成する。そして、ステップa7の第2焼成工程では、第2抵抗体形成工程において形成された第2発熱抵抗体および第2ガラスコート層を焼成する。
【0078】
このようにして、セラミック基板の表面上に、ガラスコート層を介して複数の発熱抵抗体が積層されてなる加熱ヒータである比較サンプルを作製した。なお、比較サンプルにおけるガラスコート層は、スクリーン印刷法によって形成するため、10μmを超える厚みとするのは困難である。
【0079】
<絶縁耐圧性の評価>
本実施形態に係る加熱ヒータ200と、比較サンプルとを用いて、絶縁耐圧性の評価を実施した。絶縁耐圧性の評価に供した加熱ヒータ200は、LTCCからなるセラミック基板201中の複数の絶縁層において、銀パラジウムからなる第1および第2発熱抵抗体2032,2042が、それぞれ異なる層間に設けられたものである。また、加熱ヒータ200として、セラミック基板201の各絶縁層の厚みが、50μm、100μmおよび200μmとなる3種類を準備した。
【0080】
絶縁耐圧性の評価方法としては、第1発熱抵抗体と第2発熱抵抗体との間に2kVの電圧を1分間にわたって印加し、リークが発生するか否かを評価した。評価結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から、比較サンプルではリークが発生するのに対して、加熱ヒータ200では、セラミック基板201の各絶縁層の厚みが50μm以上に設定されることによって、各発熱抵抗体間における充分な絶縁耐圧性を確保可能であることがわかる。なお、厚みが50μm未満のセラミック基体は、作製するのが困難である。
【0083】
<イオンマイグレーションの評価>
セラミック基板201の各絶縁層の厚みが50μmである加熱ヒータ200を用いて、イオンマイグレーションの評価を実施した。イオンマイグレーションの評価方法としては、高温高湿環境下(35℃、85%)に加熱ヒータ200を設置し、第1発熱抵抗体2032に対して電圧(100V)を印加して発熱させた。また、第2発熱抵抗体2042に対して電圧を印加せず接地することで、第1発熱抵抗体2032と第2発熱抵抗体2042との間に電位差を発生させた。なお、第1発熱抵抗体に対する詳細な電圧印加方法としては、9秒間電圧を印加した後、11分間電圧印加を停止することで、常温から200℃への昇温を繰り返すという、ヒートサイクル試験をトータル200時間実施した。そして、200時間のヒートサイクル試験後の加熱ヒータ200を用いて、第1発熱抵抗体2032と第2発熱抵抗体2042との間に2kVの電圧を1分間にわたって印加し、リークが発生するか否かを評価した。その結果、セラミック基板201の各絶縁層の厚みが50μmである加熱ヒータ200は、リークの発生がなかった。
【0084】
以上のことより、加熱ヒータ200では、セラミック基板201の各絶縁層の厚みが50μm以上に設定されることによって、イオンマイグレーションの発生を防止可能であることがわかる。
【0085】
<耐久性の評価>
セラミック基板201の各絶縁層の厚みが50μmである加熱ヒータ200を用いて、耐久性の評価を実施した。耐久性の評価方法としては、連続通電試験およびヒートサイクル試験で実施した。
【0086】
連続通電試験の試験方法としては、加熱ヒータ200の第1および第2発熱抵抗体2032,2042に対して1000時間にわたって電圧(100V)を印加して、220℃で発熱させた。そして、連続通電試験後の加熱ヒータ200について、試験前に対して電気抵抗値の変動があるか否かを評価した。また、連続通電試験後の加熱ヒータ200について、前述した絶縁耐圧性の評価を行って、リークが発生するか否かを評価した。さらに、連続通電試験後の加熱ヒータ200について、発熱抵抗体がセラミック基板から剥離しているか否かを目視評価した。
【0087】
また、ヒートサイクル試験の試験方法としては、加熱ヒータ200の第1および第2発熱抵抗体2032,2042に対して、9秒間電圧を印加した後、11分間電圧印加を停止することで、常温から220℃への昇温を繰り返し、トータル500時間実施した。そして、ヒートサイクル試験後の加熱ヒータ200について、試験前に対して電気抵抗値の変動があるか否かを評価した。また、ヒートサイクル試験後の加熱ヒータ200について、前述した絶縁耐圧性の評価を行って、リークが発生するか否かを評価した。さらに、ヒートサイクル試験後の加熱ヒータ200について、発熱抵抗体がセラミック基板から剥離しているか否かを目視評価した。評価結果を表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
表2から、加熱ヒータ200では、セラミック基板201の各絶縁層の厚みが50μm以上に設定されることによって、優れた耐久性を有することがわかる。
【0090】
図4は、本発明の第2実施形態に係る加熱ヒータ300の構成を示す断面図である。図4(a)は、加熱ヒータ300の長手方向中央部における構成を示し、図4(b)は、加熱ヒータ300の長手方向端部近傍における構成を示し、図4(c)は、加熱ヒータ300の長手方向端部の給電端子が形成される領域部分における構成を示す。また、図5は、加熱ヒータ300のセラミック基板301中に形成される各絶縁層の構成を示す図である。図5(a)は、セラミック基板301中に形成される第1絶縁層302の構成を示し、図5(b)は、セラミック基板301中に形成される第2絶縁層303の構成を示し、図5(c)は、セラミック基板301中に形成される第3絶縁層304の構成を示し、図5(d)は、セラミック基板301中に形成される第4絶縁層305の構成を示す。
【0091】
加熱ヒータ300は、前述した加熱ヒータ200に類似しており、加熱ヒータ200と同様の方法で製造することができる。加熱ヒータ300は、電気絶縁性を有する矩形板状のセラミック基板301と、通電によって発熱する発熱領域がそれぞれ異なる複数の発熱抵抗体である、第1発熱抵抗体3032および第2発熱抵抗体3042とを含んで構成される。
【0092】
セラミック基板301は、複数の絶縁層である、第1絶縁層302と、第2絶縁層303と、第3絶縁層304と、第4絶縁層305とからなる。セラミック基板301中における各絶縁層は、第1絶縁層302、第2絶縁層303、第3絶縁層304、第4絶縁層305の順に積層され、第1絶縁層302および第4絶縁層305が、加熱ヒータ300における最外層部分となる。
【0093】
ここで、セラミック基板301は、各絶縁層302,303,304,305を構成するセラミック基体が積層された状態で焼成されて形成されたものである。セラミック基板301を構成する材料、すなわち、各絶縁層302,303,304,305のセラミック基体を構成する材料としては、前述した加熱ヒータ200のセラミック基板201を構成する材料と同様のものを挙げることができる。本実施形態では、セラミック基板301を構成する材料は、LTCCである。
【0094】
また、各絶縁層302,303,304,305は、それぞれ矩形状に形成されて、短手寸法が12.3mm、長手寸法が360mm、厚みが0.2mmである。
【0095】
そして、第1絶縁層302と第2絶縁層303との層間には、第1発熱抵抗体3032が設けられ、第2絶縁層303と第3絶縁層304との層間には、第2発熱抵抗体3042が設けられている。第1発熱抵抗体3032と第2発熱抵抗体3042とは、セラミック基板301の長手方向に関して、セラミック基板301の厚み方向から見た場合に、一部の発熱領域が重なるように設けられている。
【0096】
第1絶縁層302と第2絶縁層303との層間に設けられる第1発熱抵抗体3032は、図5(b)に示すように、セラミック基板301の長手方向中央部に対応する発熱領域において、長手方向に平行な複数の直線部分3032aが、U字状の反転部分3032bを介して、短手方向に交互にかつ平行に連なるように構成されている。本実施形態では、第1発熱抵抗体3032は、線幅が0.79mm、厚みが10μmで、直線部分3032aが5つ形成され、反転部分3032bが4つ形成されている。
【0097】
第2絶縁層303と第3絶縁層304との層間に設けられる第2発熱抵抗体3042は、図5(c)に示すように、セラミック基板301の長手方向両端部間にわたる全領域が発熱領域となるようにされている。第2発熱抵抗体3042は、セラミック基板301の長手方向両端部間にわたる発熱領域において、長手方向に平行な複数の直線部分3042aが、U字状の反転部分3042bを介して、短手方向に交互にかつ平行に連なるように構成されている。本実施形態では、第2発熱抵抗体3042は、線幅が1.1mm、厚みが10μmで、直線部分3042aが5つ形成され、反転部分3042bが4つ形成されている。
【0098】
第1発熱抵抗体3032および第2発熱抵抗体3042を構成する材料としては、前述した加熱ヒータ200の第1および第2発熱抵抗体2032,2042を構成する材料と同様のものを挙げることができる。本実施形態では、LTCCからなるセラミック基板301に対して、第1および第2発熱抵抗体3032,3042を構成する材料は、銀パラジウムである。
【0099】
また、セラミック基板301の短手方向一端部側に対応する長手方向一端部、および、セラミック基板301の短手方向他端部側に対応する長手方向他端部には、第2絶縁層303の表面まで第1絶縁層302を貫通する、セラミック基板301の厚み方向に凹んだ第1凹部306が形成されている。そして、第1凹部306の表面、すなわち、第2絶縁層303の表面には、第1発熱抵抗体3032に対して電気的に接続される第1給電端子3033が形成されている。これによって、セラミック基板301中における第1絶縁層302と第2絶縁層303との層間に設けられる第1発熱抵抗体3032に対して、第1給電端子3033を介して確実に給電することができる。
【0100】
さらに、セラミック基板301の短手方向他端部側に対応する長手方向一端部、および、セラミック基板301の短手方向一端部側に対応する長手方向他端部には、第3絶縁層304の表面まで第1絶縁層302および第2絶縁層303を貫通する、セラミック基板301の厚み方向に凹んだ第2凹部307が形成されている。そして、第2凹部307の表面、すなわち、第3絶縁層304の表面には、第2発熱抵抗体3042に対して電気的に接続される第2給電端子3043が形成されている。これによって、セラミック基板301中における第2絶縁層303と第3絶縁層304との層間に設けられる第2発熱抵抗体3042に対して、第2給電端子3043を介して確実に給電することができる。
【0101】
第1給電端子3033および第2給電端子3043を構成する材料としては、第1および第2発熱抵抗体3032,3042と同様の材料を挙げることができる。本実施形態では、銀パラジウムからなる第1および第2発熱抵抗体3032,3042に対して、第1および第2給電端子3033,3042を構成する材料は、銀パラジウムである。
【0102】
以上のように構成される加熱ヒータ300では、通電によって発熱する第1および第2発熱抵抗体3032,3042が、セラミック基板301中における絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられている。すなわち、加熱ヒータ300において、第1および第2発熱抵抗体3032,3042は、セラミック基板301の表面上に形成されているのではなく、セラミック基板301を構成する複数の絶縁層の層間に設けられている。
【0103】
そのため、第1および第2発熱抵抗体3032,3042がセラミック基板301から剥離するのを防止することができ、第1および第2発熱抵抗体3032,3042の局所部分が異常発熱して過昇温状態となるのを防止することができる。また、加熱ヒータ300において、第1および第2発熱抵抗体3032,3042は、電気絶縁性を有するセラミック基板301中のそれぞれ異なる絶縁層の層間に設けられているので、各発熱抵抗体間における充分な絶縁耐圧性を確保することができる。
【0104】
また、加熱ヒータ300では、第1発熱抵抗体3032と第2発熱抵抗体3042とは、それぞれ個別に通電可能となるように構成されている。これによって、セラミック基板301の長手方向、すなわち、加熱ヒータ300の長手方向における発熱量を、第1発熱抵抗体3032と第2発熱抵抗体3042とに対する通電状態を切り替えることによって調整することができ、加熱ヒータ300の表面における温度分布が所望の温度分布となるように調整することができる。
【0105】
特に、第2発熱抵抗体3042のみに電圧を印加して通電することによって、加熱ヒータ300の長手方向の全領域を発熱させることができるので、加熱ヒータ300の表面における温度分布を均一にすることができる。
【0106】
また、加熱ヒータ300は、前述したように、加熱ヒータ300の長手方向中央部が発熱領域となる第1発熱抵抗体3032と、加熱ヒータ300の長手方向両端部間にわたる全領域が発熱領域となる第2発熱抵抗体3042とが設けられているが、第1発熱抵抗体3032および第2発熱抵抗体3042によって形成される加熱ヒータ300の長手方向に関する発熱領域のパターンは、これに限定されるものではない。
【0107】
たとえば、加熱ヒータ300の長手方向一端部から長手方向中央部にわたる領域が、第1発熱抵抗体3032の発熱領域となり、加熱ヒータ300の長手方向両端部間にわたる全領域が、第2発熱抵抗体3042の発熱領域となるように構成してもよい。このように構成された加熱ヒータ300では、加熱ヒータ300の長手方向一端部から長手方向中央部にわたる領域のみを発熱させたい場合には、第1発熱抵抗体3032のみを通電させればよく、加熱ヒータ300の長手方向両端部間にわたる全領域を発熱させたい場合には、第2発熱抵抗体3042のみを通電させればよい。
【0108】
(定着装置)
図6は、本発明の第1実施形態に係る定着装置15の構成を示す図である。定着装置15は、定着部材である定着ローラ15aと、加圧部材である加圧ローラ15bと、無端状のベルト部材である定着ベルト25と、加熱手段21とを含んで構成される。定着装置15においては、定着ベルト25が定着ローラ15aと加熱手段21の保持部材211との間に張架され、加圧ローラ15bが定着ベルト25を介して定着ローラ15aに対向するように配置されている。そして、定着ローラ15aと加熱手段21の保持部材211とは、定着ローラ15aの軸線方向において略平行となるように配置されている。つまり、定着ローラ15aの軸線と、加熱手段21の保持部材211の軸線とは、略平行である。
【0109】
定着装置15は、加熱手段21の保持部材211が定着ベルト25の内周面と接触して定着ベルト25を加熱し、定着ベルト25を介して互いに圧接する定着ローラ15aと加圧ローラ15bとの間に形成される定着ニップ部15cを、所定の定着速度および複写速度で記録媒体である記録紙70が通過したとき、記録紙70上に担持されている未定着のトナー像71を記録紙70上に加熱加圧して定着する装置である。なお、未定着のトナー像71は、たとえば、非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)、非磁性二成分現像剤(非磁性トナーおよびキャリア)、磁性現像剤(磁性トナー)などの現像剤(トナー)によって形成される。また、定着速度とは所謂プロセス速度であり、複写速度とは1分あたりのコピー枚数のことである。また、記録紙70が定着ニップ部15cを通過するときには、定着ベルト25は記録紙70のトナー像担持面に当接し、加圧ローラ15bはトナー像担持面とは反対側の面に当接するようになっており、定着ニップ部15cの記録紙搬送方向Cの幅(以下、「定着ニップ幅」という)は7.5mmである。
【0110】
[定着ローラ]
定着ローラ15aは、定着ベルト25を介して加圧ローラ15bに圧接することで定着ニップ部15cを形成するとともに、駆動モータ(駆動手段)により回転軸線まわりに回転方向A方向に回転駆動することによって、定着ベルト25を搬送する。定着ローラ15aは、直径が30mmで、その内側から順に芯金、弾性層が形成された2層構造からなり、芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属あるいはそれらの合金などが用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適している。なお、本実施形態では、定着ローラ15aは、芯金が直径15mmのステンレス鋼からなり、弾性層が厚さ7.5mmのシリコンスポンジゴムからなる。また本実施形態では、定着ローラ15aが定着ベルト25を介して加圧ローラ15bに圧接するときの力は、392N程度である。
【0111】
[加圧ローラ]
加圧ローラ15bは、定着ベルト25を介して定着ローラ15aに対向しかつ定着ローラ15aを圧接し、回転軸線まわりに回転自在に設けられている。加圧ローラ15bは、回転駆動される定着ローラ15aの回転に従動して、定着ローラ15aの回転とは逆方向の回転方向B方向に回転される。加圧ローラ15bは、その内側から順に芯金、弾性層、離型層が形成された3層構造からなっている。芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属あるいはそれらの合金などが用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適しており、離型層にはPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂が適している。加圧ローラ15bは、たとえば、ローラ直径が30mmで、芯金に直径28mm(肉厚1mm)の鉄(STKM)パイプ、弾性層に厚みが1mmのシリコンソリッドゴム、離型層に厚みが30μmのPFAチューブからなるローラを用いることができる。
【0112】
また、加圧ローラ15bの内部には、加圧ローラ15bを加熱するヒータランプ31(たとえば、定格電力400W)が配置されている。制御回路(不図示)が電源回路(不図示)からヒータランプ31に電力を供給(通電)させることによって、ヒータランプ31が発光し、ヒータランプ31から赤外線が放射される。これによって、加圧ローラ15bの内周面が赤外線を吸収して加熱され、加圧ローラ15b全体が加熱される。なお、上述したヒータランプ31は、加圧ローラ15bの内面より加熱するものであるが、これとは別に外周面加熱用のローラにて、加圧ローラ15bの表面より加熱する方法も構成可能である。
【0113】
[定着ベルト]
定着ベルト25は、加熱手段21によって所定の温度に加熱され、定着ニップ部15cを通過する未定着のトナー像71が形成された記録紙70を加熱する。定着ベルト25は、無端状のベルト部材で、加熱手段21の保持部材211と定着ローラ15aによって懸架され、定着ローラ15aに所定の角度θ1(本実施形態では、θ1=185°である。)で巻きかかっている。定着ベルト25は、定着ローラ15aの回転時には、定着ローラ15aに従動して回転方向A方向に回転するようになっている。定着ベルト25は、ポリイミドなどの耐熱性樹脂あるいはステンレスやニッケルなどの金属材料からなる中空円筒状の基材の表面に、弾性層として耐熱性および弾性に優れたエラストマー材料(たとえばシリコンゴム)が形成され、さらにその表面に離型層として耐熱性および離型性に優れた合成樹脂材料(たとえばPFAやPTFEなどのフッ素樹脂)が形成された3層構造となっている。また、基材のポリイミドにフッ素樹脂を内添してもよい。これによって、加熱手段21の保持部材211との摺動負荷を低減することができる。本実施形態では、定着ベルト25は、基材が厚さ50μmのポリイミド、弾性層が厚さ150μmのシリコンゴム、離型層が厚さ30μmのPFAチューブからなる、直径45mmの無端状ベルトである。
【0114】
[加熱手段]
定着装置15に備えられる加熱手段21は、定着ベルト25の内周面に接触して定着ベルト25を所定の温度に加熱する手段である。図7は、加熱手段21の構成を示す図である。加熱手段21は、前述した加熱ヒータ200または加熱ヒータ300と、保持部材211と、固定部材212と、2つの加熱用電源216a,216bとを含む。
【0115】
保持部材211は、加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)を保持する部材であり、定着ベルト25の幅方向(定着ローラ15aの軸線方向)に延びる略半円柱状に形成されている。保持部材211は、略半円弧状の上面において定着ベルト25に接触し、加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)から発生する熱を定着ベルト25に伝導させる。保持部材211の定着ベルト25と接触する上面(以下、「ベルト接触面」という)における記録紙搬送方向Cの接触幅(以下、「加熱ニップ幅」という)は、17mmである。また、保持部材211を構成する材料は、特に限定されないが、高い熱伝導性を有する金属材料であることが好ましく、その金属材料としては、鉄、アルミニウム、銅、アルミニウム合金などを挙げることができるが、本実施形態ではアルミニウム合金を用いる。
【0116】
そして、保持部材211には、定着ベルト25と接触するベルト接触面の周方向中央部に対応して、底面の中央部から内方側に凹んだ凹部が形成され、この凹部に加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)が嵌め込まれるようになっている。ここで、保持部材211の凹部に嵌め込まれた状態の加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)は、加熱ヒータの長手方向が保持部材211の幅方向(定着ベルト25の幅方向)に対応し、加熱ヒータの短手方向が保持部材211の周方向に対応するように配置されている。また、加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)は、セラミック基板における第4絶縁層が形成される側の面が、保持部材211のベルト接触面側となるように、保持部材211の凹部に嵌め込まれている。
【0117】
なお、保持部材211の凹部に嵌め込まれた状態の加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)は、凹部を塞ぐように保持部材211の底面部に接触して配設される固定部材212によって固定されている。このように、加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)が嵌め込まれる凹部が形成された保持部材211は、熱容量が小さなものとなるので、定着装置15としてのウォームアップ時間が短く、かつ、消費電力の増大を抑えて省エネ化が達成できる。
【0118】
また、保持部材211のベルト接触面に、コート層214が設けられるのが好ましい。コート層214は、加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)から発生する熱を定着ベルト25に伝導するための良熱伝導性を有するとともに、定着ベルト25との間の摩擦力が低減可能な材料から形成する必要がある。このようなコート層214が保持部材211のベルト接触面に設けられることによって、定着ベルト25に熱を伝導させるとともに、保持部材211と接触して摺動する定着ベルト25の摩耗を防止して高い耐久性を確保することができる。また、定着ベルト25との間の摩擦力が低減可能となるので、定着ベルト25を駆動する定着ローラ15aおよび加圧ローラ15bへの負荷も低減することができ各ローラ15a,15bの耐久性も確保し、より低トルクで駆動することが可能となる。コート層214を構成する材料としては、PFAやPTFE等のフッ素樹脂を挙げることができる。本実施形態では、コート層214は、PTFEからなる厚み20μmの層である。
【0119】
固定部材212は、保持部材211の凹部に嵌め込まれた状態の加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)を、断熱シート213を介して、保持部材211に近接する方向に弾発的に押圧して、加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)を固定する部材である。加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)と保持部材211との間の接触部分に浮きが発生していると、加熱手段21としての加熱効率が低下するだけではなく、局所的に過熱状態になる部分が生じ、発熱抵抗体の破損だけでなく加熱手段21や定着ベルト25の破損を招いてしまうおそれがある。これに対して、固定部材212が、保持部材211に対する所定位置に加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)を固定することによって、加熱手段21としての加熱効率の低下を抑制することができ、定着装置15としてのウォームアップ時間が短く、消費電力の増大を抑えて省エネ化が達成でき、かつ、高い安全性を確保することができる。
【0120】
固定部材212を構成する材料としては、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属あるいはそれらの合金、耐熱樹脂等を挙げることができる。本実施形態では、固定部材212は、ステンレス鋼からなる厚みが1mmの板状部材であり、撓みに対する強度を確保するために、加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)の短手方向に対応する両端部が定着ローラ15aに近接する方向に屈曲して形成されている。
【0121】
加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)と固定部材212との間に介在する断熱シート213は、加熱ヒータ200(または加熱ヒータ300)から発生した熱が、固定部材212に伝達されてしまうのを防止し、保持部材211に対する伝熱効率を向上させる。本実施形態では、断熱シート213は、フッ素ゴムからなる厚み1mmのシートである。
【0122】
次に、定着装置15の加熱手段21を構成する加熱ヒータとして、加熱ヒータ200を用いた場合と、加熱ヒータ300を用いた場合との通電制御について、それぞれ個別に説明する。
【0123】
定着装置15の加熱手段21を構成する加熱ヒータとして加熱ヒータ200を用いた場合、セラミック基板201の第1絶縁層202と第2絶縁層203との層間に設けられる第1発熱抵抗体2032による発熱領域は、定着ベルト25の幅方向中央部を加熱する発熱源となる。第1発熱抵抗体2032による発熱領域の定着ベルト25の幅方向に対応する幅寸法は、たとえば、A4サイズの記録紙70の短手寸法に応じて200mmに設定される。また、セラミック基板201の第2絶縁層203と第3絶縁層204との層間に設けられる第2発熱抵抗体2042による発熱領域204a,204bは、定着ベルト25の幅方向両端部を加熱する発熱源となる。第2発熱抵抗体2042による発熱領域204a,204bの定着ベルト25の幅方向に対応する幅寸法は、それぞれ60mmに設定される。そして、加熱ヒータ200においては、第1発熱抵抗体2032の定格出力値が750Wに設定され、第2発熱抵抗体2042の定格出力値が450Wに設定され、加熱ヒータ200全体として1200Wに設定されている。
【0124】
また、第1発熱抵抗体2032には、第1給電端子2033を介して加熱用電源216aが接続され、第2発熱抵抗体2042には、第2給電端子2043を介して加熱用電源216bが接続されている。本実施形態において各加熱用電源216a,216bは、第1および第2発熱抵抗体2032,2042に印加する電圧値を可変制御可能な電源である。
【0125】
また、加熱手段21の保持部材211に接触する定着ベルト25の周面近傍には、第1発熱抵抗体2032による発熱領域、および、第2発熱抵抗体2042による発熱領域のそれぞれに対応して、2つの加熱ヒータ用サーミスタ32が配設されている。また、加圧ローラ15bの周面近傍には加圧ローラ側サーミスタ33が配設されている。本実施形態における加熱ヒータ用サーミスタ32は、非接触式の温度検知手段であり、赤外線検知型の温度センサである。また、加圧ローラ側サーミスタ33は、接触式の温度検知手段である。
【0126】
そして、定着装置15では、温度制御手段217が、2つの加熱ヒータ用サーミスタ32および加圧ローラ側サーミスタ33によって検出された温度データに基づいて、定着ベルト25および加圧ローラ15bの表面温度が所定の定着温度となるように、第1発熱抵抗体2032、第2発熱抵抗体2042およびヒータランプ31への通電を制御する。このとき、温度制御手段217は、第1および第2発熱抵抗体2032,2042における投入電力値が一定となるように、各加熱用電源216a,216bを可変制御する。ここで、「投入電力値が一定」とは、目標投入電力値に対して±15%の範囲の電力値のことである。
【0127】
温度制御手段217は、第1および第2発熱抵抗体2032,2042における温度に応じて変動する電流値または電気抵抗値を検出する。本実施形態では、温度制御手段217は、第1および第2発熱抵抗体2032,2042のそれぞれに接続される電流計215a,215bにより計測される電流値を0.2秒周期で検出する。そして、温度制御手段217は、電流値検出結果および加熱ヒータ用サーミスタ32により検出された温度データに基づいて、第1および第2発熱抵抗体2032,2042に対する投入電力値が一定となる印加電圧値を、0.2秒周期で算出する。さらに、温度制御手段217は、算出した印加電圧値に対応した電圧を、各加熱用電源216a,216bにより第1および第2発熱抵抗体2032,2042に印加させる。
【0128】
温度制御手段217は、電流計215a,215bにより計測される第1および第2発熱抵抗体2032,2042の電流値を、0.2秒周期で各加熱用電源216a,216bにフィードバックし、各加熱用電源216a,216bによる印加電圧値を、電流値の変化の方向とは反対の方向に可変制御して、第1および第2発熱抵抗体2032,2042における投入電力値が一定となるようにしている。通電によって発熱する第1および第2発熱抵抗体2032,2042は、製造ロット間で電気抵抗値がばらつくものであり、かつ、温度変化に応じて電気抵抗値が変動するものである。これに対して、温度制御手段217が、第1および第2発熱抵抗体2032,2042における投入電力値が一定となるように、各加熱用電源216a,216bを可変制御するので、定着装置15は、安定した定着性能を確保することができる。
【0129】
なお、第1および第2発熱抵抗体2032,2042における温度に応じて変動する電気抵抗値を検出するように構成される場合には、温度制御手段217は、各加熱用電源216a,216bによる印加電圧値を、電気抵抗値の変化の方向と同じ方向に可変制御して、第1および第2発熱抵抗体2032,2042における投入電力値が一定となるようにすればよい。
【0130】
加熱手段21を構成する加熱ヒータとして加熱ヒータ200を用いた定着装置15では、たとえば、A3サイズの記録紙70を縦送りする場合やA4サイズの記録紙70を横送りするなどの幅広通紙の場合には、温度制御手段217は、各加熱用電源216a,216bを制御して、第1および第2発熱抵抗体2032,2042に電圧を印加させ、定着ベルト25の幅方向の全領域にわたって加熱させる。また、A4サイズの記録紙70を縦送りする場合やB5サイズの記録紙70を横送りするなどの幅狭通紙の場合には、温度制御手段217は、加熱用電源216aのみを制御して、第1発熱抵抗体2032のみに電圧を印加させ、定着ベルト25の幅方向中央部を加熱させる。
【0131】
このように、加熱ヒータ200を備える定着装置15では、たとえば、異なる大きさの記録紙70を通紙させて印字する場合などに、異なる通紙サイズに対応して加熱ヒータ200の表面において所望の温度分布が得られるように、第1および第2発熱抵抗体2032,2042によって形成される複数に分割された発熱領域ごとに通電状態を切替えて、加熱ヒータ200表面における所望の特定領域のみが発熱するように加熱副制御し、記録紙70の通紙幅両端部に対応する第1および第2発熱抵抗体2032,2042の局部的な異常昇温を抑制することができる。このように、分割された発熱領域ごとに通電状態を切替えて加熱副制御し、第1および第2発熱抵抗体2032,2042の局部的な異常昇温を抑制することによって、定着不良、定着画像劣化を防止することができるとともに、発熱抵抗体自身の破損を防止し、消費電力の増大を防止することができる。
【0132】
なお、定着装置15に備えられる加熱ヒータ200を、加熱ヒータ200の長手方向一端部から長手方向中央部にわたる領域(以下、「片側領域」という)が第1発熱抵抗体2032の発熱領域となり、加熱ヒータ200の長手方向他端部近傍の領域が第2発熱抵抗体2042の発熱領域となるように構成した場合には、定着装置15は、主たる通紙領域が加熱ヒータ200の片側領域に対応して設けられることになる。
【0133】
次に、定着装置15の加熱手段21を構成する加熱ヒータとして加熱ヒータ300を用いた場合、セラミック基板301の第1絶縁層302と第2絶縁層303との層間に設けられる第1発熱抵抗体3032による発熱領域は、定着ベルト25の幅方向中央部を加熱する発熱源となる。第1発熱抵抗体3032による発熱領域の定着ベルト25の幅方向に対応する幅寸法は、たとえば、A4サイズの記録紙70の短手寸法に応じて200mmに設定される。また、セラミック基板301の第2絶縁層303と第4絶縁層304との層間に設けられる第2発熱抵抗体3042による発熱領域は、定着ベルト25の幅方向両端部間の全領域を加熱する発熱源となる。第2発熱抵抗体3042による発熱領域の定着ベルト25の幅方向に対応する幅寸法は、320mmに設定される。そして、加熱ヒータ300においては、第1発熱抵抗体3032の定格出力値が750Wに設定され、第2発熱抵抗体3042の定格出力値が1200Wに設定されている。
【0134】
また、第1発熱抵抗体3032には、第1給電端子3033を介して加熱用電源216aが接続され、第2発熱抵抗体3042には、第2給電端子3043を介して加熱用電源216bが接続されている。本実施形態において各加熱用電源216a,216bは、第1および第2発熱抵抗体3032,3042に印加する電圧値を可変制御可能な電源である。
【0135】
また、加熱手段21の保持部材211に接触する定着ベルト25の周面近傍には、第1発熱抵抗体3032による発熱領域、および、第2発熱抵抗体3042による発熱領域の共通領域に対応して、1つの加熱ヒータ用サーミスタ32が配設されている。このように、加熱ヒータ300を備える定着装置15では、定着ベルト25の表面温度を検出する加熱ヒータ用サーミスタ32やサーモスタットなどの安全センサを、第1発熱抵抗体3032による発熱領域、および、第2発熱抵抗体3042による発熱領域の共通領域に対応して配設すればよいので、定着装置15の構成を簡略化することができる。
【0136】
そして、温度制御手段217は、第1および第2発熱抵抗体3032,3042のそれぞれに接続される電流計215a,215bにより計測される電流値を0.2秒周期で検出する。また、温度制御手段217は、電流値検出結果および加熱ヒータ用サーミスタ32により検出された温度データに基づいて、第1および第2発熱抵抗体3032,3042に対する投入電力値が一定となる印加電圧値を、0.2秒周期で算出する。さらに、温度制御手段217は、算出した印加電圧値に対応した電圧を、各加熱用電源216a,216bにより第1および第2発熱抵抗体3032,3042に印加させる。
【0137】
温度制御手段217は、電流計215a,215bにより計測される第1および第2発熱抵抗体3032,3042の電流値を、0.2秒周期で各加熱用電源216a,216bにフィードバックし、各加熱用電源216a,216bによる印加電圧値を、電流値の変化の方向とは反対の方向に可変制御して、第1および第2発熱抵抗体3032,3042における投入電力値が一定となるようにしている。
【0138】
加熱手段21を構成する加熱ヒータとして加熱ヒータ300を用いた定着装置15では、たとえば、A3サイズの記録紙70を縦送りする場合やA4サイズの記録紙70を横送りするなどの幅広通紙の場合には、温度制御手段217は、加熱用電源216bのみを制御して、第2発熱抵抗体3042のみに電圧を印加させ、定着ベルト25の幅方向の全領域にわたって加熱させる。また、A4サイズの記録紙70を縦送りする場合やB5サイズの記録紙70を横送りするなどの幅狭通紙の場合には、温度制御手段217は、加熱用電源216aのみを制御して、第1発熱抵抗体3032のみに電圧を印加させ、定着ベルト25の幅方向中央部を加熱させる。
【0139】
このように、加熱ヒータ300を備える定着装置15では、たとえば、異なる大きさの記録紙70を通紙させて印字する場合などに、異なる通紙サイズに対応して加熱ヒータ300の表面において所望の温度分布が得られるように、第1および第2発熱抵抗体3032,3042の通電状態を切替えて、加熱ヒータ300表面における所望の特定領域のみが発熱するように加熱副制御し、記録紙70の通紙幅両端部に対応する第1および第2発熱抵抗体3032,3042の局部的な異常昇温を抑制することができる。
【0140】
特に、幅広通紙の場合には、第2発熱抵抗体3042のみに電圧が印加されて、定着ベルト25の幅方向の全領域を加熱するように構成されるので、定着ベルト25表面における均一な温度分布を実現することができる。
【0141】
なお、定着装置15に備えられる加熱ヒータ300を、加熱ヒータ300の長手方向一端部から長手方向中央部にわたる領域(以下、「片側領域」という)が第1発熱抵抗体3032の発熱領域となり、加熱ヒータ300の長手方向両端部間にわたる全領域が第2発熱抵抗体3042の発熱領域となるように構成した場合には、定着装置15は、主たる通紙領域が加熱ヒータ300の片側領域に対応して設けられることになる。
【0142】
以上のように、定着装置15は、記録紙70上に担持されるトナー像71を加熱する加熱手段21が、加熱ヒータ200または加熱ヒータ300を含んで構成される。加熱ヒータ200または加熱ヒータ300は、前述したように、発熱抵抗体の局所部分が過昇温状態となるのを抑制することができるとともに、高い安全性および充分な絶縁耐圧性を確保することができるものである。そのため、定着装置15は、高い安全性が確保されたものとなる。
【0143】
また、定着装置15は、定着ベルト25を備え、加熱手段21が定着ベルト25を介して記録紙70上のトナー像71を加熱するように構成される。そして、加熱手段21は、定着ベルト25に直接接触して加熱するので、熱容量が大きいローラ状の定着ローラを内部に配置される熱源によって間接的に加熱する場合に比べて、ウォームアップ時間を短縮することができる。
【0144】
また、定着装置15では、記録紙70上のトナー像71は、定着ベルト25を介して互いに圧接する定着ローラ15aと加圧ローラ15bとの間を通過するときに定着される。そのため、記録紙70上のトナー像71は、定着ベルト25を介して加熱手段21によって加熱されるとともに、定着ローラ15aと加圧ローラ15bとの間に発生する圧接力によって加圧されるので、より安定した定着性能を確保することができる。
【0145】
図8は、本発明の第2実施形態に係る定着装置40の構成を示す図である。定着装置40は、前述した定着装置15に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0146】
定着装置40は、加圧部材である加圧ローラ15bと、フィルム状の無端ベルト部材である定着ベルト43と、加熱手段41とを含んで構成される、フィルム定着方式の定着装置である。定着装置40においては、定着ベルト43が2つの懸架ローラ44と加熱手段41の加熱ヒータ421を保持する保持部材422との間に張架され、加圧ローラ15bが定着ベルト43を介して保持部材422に対向するように配置されている。そして、定着装置40は、保持部材422が定着ベルト43の内周面に接触して定着ベルト43を加熱し、定着ベルト43を介して互いに圧接する保持部材422と加圧ローラ15bとの間に形成される定着ニップ部422aを記録紙70が通過したとき、トナー像71を加熱加圧して記録紙70上に定着する装置である。また、記録紙70が定着ニップ部422aを通過するときには、定着ベルト43は記録紙70のトナー像担持面に当接し、加圧ローラ15bはトナー像担持面とは反対側の面に当接するようになっている。
【0147】
定着ベルト43は、前述した定着装置15が備える定着ベルト25と同様に、基材の表面に弾性層と離型層とが形成された3層構造となっている。そして、定着ベルト43は、加圧ローラ15bのF方向への回転に従動して回転するようになっている。
【0148】
加熱手段41において、加熱ヒータ421を保持する保持部材422は、加圧ローラ15bの外周面に沿って湾曲した形状にされており、その外周面が定着ベルト43の幅方向全体に当接するようにされている。そして、加熱ヒータ421が、保持部材422の内周面の周方向中央部に接触して配置されている。この加熱ヒータ421は、前述した本実施形態に係る加熱ヒータ200または加熱ヒータ300と同様に構成されたものである。また、加熱ヒータ421の上面には加熱ヒータ用サーミスタ45が接触配置されており、加熱ヒータ421の表面温度を検出するようになっている。
【0149】
また、加熱手段41においては、前述した定着装置15が備える加熱手段21と同様に、印加電圧値を可変制御可能な第1加熱用電源が給電端子を介して加熱ヒータ421の第1発熱抵抗体に接続され、印加電圧値を可変制御可能な第2加熱用電源が給電端子を介して加熱ヒータ421の第2発熱抵抗体に接続されている。そして、第1加熱用電源および第2加熱用電源は、各発熱抵抗体における投入電力値が一定となるように、各発熱抵抗体に対する印加電圧値が可変制御される。
【0150】
以上のような構成の定着装置40では、記録紙70上のトナー像71は、定着ベルト43を介して加熱手段41によって加熱されるとともに、保持部材422と加圧ローラ15bとの間に発生する圧接力によって加圧されるので、安定した定着性能を確保することができる。また、定着装置40は、保持部材422と加圧ローラ15bとが定着ベルト43を介して互いに圧接するように構成されているので、加圧ローラ15bと圧接する他の部材を設けなくても、記録紙70上のトナー像71に圧接力を付与することができ、装置構成を簡略化することができる。
【0151】
図9は、本発明の第3実施形態に係る定着装置40の構成を示す図である。定着装置50は、前述した定着装置15に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。定着装置50は、加熱手段51と、回転可能な加熱ベルト53と、定着部材である定着ローラ54と、加圧部材である加圧ローラ55とを含んで構成される、外部ベルト加熱定着方式の定着装置である。
【0152】
定着装置50においては、定着ローラ54と加圧ローラ55とが対向するように配置され、加熱手段51の加熱ヒータ521を保持する保持部材522が加熱ベルト53を介して定着ローラ54に対向するように配置されている。定着装置50では、保持部材522が加熱ベルト53の内周面に接触して加熱ベルト53を加熱する。そして、加熱ベルト53に保持される熱は、定着ローラ54が加熱ベルト53の外周面に接触して形成される加熱ニップ部51aにおいて、定着ローラ54に伝達される。そして、定着装置50は、互いに圧接する定着ローラ54と加圧ローラ55との間に形成される定着ニップ部54bを記録紙70が通過したとき、トナー像71を加熱加圧して記録紙70上に定着する装置である。また、記録紙70が定着ニップ部54bを通過するときには、定着ローラ54は記録紙70のトナー像担持面に当接し、加圧ローラ55はトナー像担持面とは反対側の面に当接するようになっている。
【0153】
定着ローラ54は、駆動手段により回転軸線まわりに回転方向G方向に回転駆動することによって、加熱ベルト53を搬送する。定着ローラ54は、その内側から順に芯金、弾性層、離型層が形成された3層構造からなっている。そして、定着ローラ54の内部には、ハロゲンヒータからなるヒータランプ54aが配置されている。また、定着ローラ54の周面近傍には、温度検知手段としての定着ローラ側サーミスタ57が配置されており、定着ローラ54の表面温度を検出するようになっている。
【0154】
加圧ローラ55は、定着ローラ54に対向しかつ定着ローラ54を圧接し、回転軸線まわりに回転自在に設けられ、定着ローラ54の回転に従動して回転する。加圧ローラ55は、その内側から順に芯金、弾性層、離型層が形成された3層構造からなっている。そして、加圧ローラ55の内部には、ハロゲンヒータからなるヒータランプ55aが配置されている。また、加圧ローラ55の周面近傍には、温度検知手段としての加圧ローラ側サーミスタ58が配置されており、加圧ローラ55の表面温度を検出するようになっている。
【0155】
加熱手段51において、加熱ヒータ521を保持する保持部材522は、定着ローラ54の外周面に沿って湾曲した形状にされており、その外周面が加熱ベルト53の幅方向全体に当接するようにされている。そして、加熱ヒータ521が、保持部材522の内周面の周方向中央部に接触して配置されている。この加熱ヒータ521は、前述した本実施形態に係る加熱ヒータ200または加熱ヒータ300と同様に構成されたものである。
【0156】
また、加熱手段51においては、前述した定着装置15が備える加熱手段21と同様に、印加電圧値を可変制御可能な第1加熱用電源が給電端子を介して加熱ヒータ521の第1発熱抵抗体に接続され、印加電圧値を可変制御可能な第2加熱用電源が給電端子を介して加熱ヒータ521の第2発熱抵抗体に接続されている。そして、第1加熱用電源および第2加熱用電源は、各発熱抵抗体における投入電力値が一定となるように、各発熱抵抗体に対する印加電圧値が可変制御される。
【0157】
加熱ベルト53は、湾曲して形成される保持部材522の外周面に沿うように設けられる無端状のベルト部材であり、基材の表面に離型層が形成された2層構造となっている。そして、加熱ベルト53は、定着ローラ54のG方向への回転に従動して回転するようになっている。また、加熱ベルト53の周面近傍には加熱ヒータ用サーミスタ56が接触配置されており、加熱ベルト53の表面温度を検出するようになっている。
【0158】
以上のような構成の定着装置50では、記録紙70上のトナー像71は、加熱ベルト53および定着ローラ54を介して加熱手段51によって加熱されるとともに、定着ローラ54と加圧ローラ55との間に発生する圧接力によって加圧されるので、用紙剥離性に優れ、安定した定着性能を確保することができる。
【0159】
(画像形成装置)
図10は、本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を示す図である。画像形成装置100は、読み取った原稿の画像データやネットワーク等を介して送信された画像データに基づいて記録紙70に対して多色および単色の画像を形成する装置である。本実施形態では、画像形成装置100は、多色画像を形成するカラー複合機である。そして、画像形成装置100は、前述した本実施形態の定着装置15,40,50のいずれかの定着装置を備える。画像形成装置100が定着装置15を備えた場合について、以下に説明する。
【0160】
画像形成装置100は、光学系ユニット10、第1〜第4可視像形成ユニットPa〜Pd、中間転写ベルト11、転写前帯電装置20、二次転写ユニット14、定着装置15、内部給紙ユニット16、手差し給紙ユニット17および排紙ユニット18を備える。第1〜第4可視像形成ユニットPa〜Pd、中間転写ベルト11、転写前帯電装置20および二次転写ユニット14は、トナー像形成手段を構成する。そして、画像形成装置100は、ブラック(K)およびカラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色の各色相に対応した画像データを用いて、第1〜第4可視像形成ユニットPa〜Pdにおいて、各色相に対応したトナー像を形成し、該トナー像を中間転写ベルト11に転写する。
【0161】
第1〜第4可視像形成ユニットPa〜Pdは、それぞれ同様の構成であり、たとえば、ブラック(K)の第1可視像形成ユニットPaは、感光体101a、帯電ユニット103a、現像ユニット102a、一次転写ユニット13aおよびクリーニングユニット104a等から構成される。この第1〜第4可視像形成ユニットPa〜Pdは、中間転写ベルト11の移動方向(副走査方向)に一列に配列されている。
【0162】
帯電ユニット103a〜103dは、感光体101a〜101dの表面を所定の電位に均一に帯電させるユニットであり、たとえば接触方式のローラ状の帯電器である。このようなローラ状の帯電器は、感光体101a〜101dの表面を一様に帯電することができるとともに、オゾンの発生を抑制することができる。なお、ローラ状の帯電器に代えて、帯電ブラシを用いた接触方式の帯電器、または、帯電ワイヤを用いた非接触方式の帯電器を用いることもできる。
【0163】
光学系ユニット10は、光源4や反射ミラー8等を備えており、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相の画像データによって変調されたレーザビーム等の光ビームのそれぞれを感光体101a〜101dのそれぞれに照射する。各感光体101a〜101dは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相の画像データによる静電潜像を形成する。
【0164】
現像ユニット102a〜102dは、静電潜像が形成された感光体101a〜101dの表面に現像剤であるトナーを供給し、静電潜像をトナー像に現像する。現像ユニット102a〜102dのそれぞれは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の各色相のトナーを収納しており、感光体101a〜101dのそれぞれに形成された各色相の静電潜像を、各色相のトナー像に顕像化する。クリーニングユニット104a〜104dは、現像・画像転写後における感光体101a〜101d上の表面に残留したトナーを除去・回収する。
【0165】
中間転写ベルト11は、各感光体101a〜101dの上方に配置されており、2つのテンションローラ11a,11bの間にたわむことなく張架されてループ状の移動経路を形成している。中間転写ベルト11の外周面は、感光体101d、感光体101c、感光体101bおよび感光体101aにこの順に対向する。この中間転写ベルト11を挟んで各感光体101a〜101dに対向する位置に、一次転写ユニット13a〜13dが配置されている。中間転写ベルト11が感光体101a〜101dに対向する位置のそれぞれが一次転写位置である。
【0166】
一次転写ユニット13a〜13dには、感光体101a〜101dの表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト11上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体101a〜101dに形成された各色相のトナー像は、中間転写ベルト11の外周面に順次重ねて転写され、中間転写ベルト11の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0167】
ただし、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の色相の一部のみの画像データが入力された場合には、4つの感光体101a〜101dのうち、入力された画像データの色相に対応する一部の感光体のみにおいて静電潜像およびトナー像の形成が行われる。たとえば、モノクロ画像形成時には、ブラックの色相に対応した感光体101aのみにおいて静電潜像の形成およびトナー像の形成が行われ、中間転写ベルト11の外周面にはブラックのトナー像のみが転写される。
【0168】
各一次転写位置において中間転写ベルト11の外周面に転写されたトナー像は、中間転写ベルト11の回転によって、転写前帯電装置20によって帯電された後、二次転写ユニット14との対向位置である二次転写位置に搬送される。二次転写ユニット14は、画像形成時において、内周面がテンションローラ11aの周面に接触する中間転写ベルト11の外周面に所定のニップ圧で圧接されている。内部給紙ユニット16または手差し給紙ユニット17から給紙された記録紙70が、二次転写ユニット14と中間転写ベルト11との間を通過する際に、二次転写ユニット14にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト11の外周面から記録紙70の表面にトナー像が転写される。
【0169】
なお、感光体101a〜101dから中間転写ベルト11に付着したトナーのうち、記録紙70上に転写されずに中間転写ベルト11上に残存したトナーは、次工程での混色を防止するために、転写クリーニングユニット12によって回収される。
【0170】
トナー像が転写された記録紙70は、前述した本発明の定着装置15に導かれ、定着ニップ部を通過して加熱および加圧を受ける。これによって、トナー像が、記録紙70の表面に堅牢に定着する。トナー像が定着した記録紙70は、排紙ローラ18aによって排紙ユニット18上に排出される。
【0171】
また、画像形成装置100には、内部給紙ユニット16に収納されている記録紙70を、二次転写ユニット14と中間転写ベルト11との間および定着装置15を経由して、排紙ユニット18に送るための略垂直方向に延びる用紙搬送路P1が設けられている。用紙搬送路P1には、内部給紙ユニット16内の記録紙70を一枚ずつ用紙搬送路P1内に繰り出すピックアップローラ16a、繰り出された記録紙70を上方に向けて搬送する搬送ローラ16b、搬送されてきた記録紙70を所定のタイミングで二次転写ユニット14と中間転写ベルト11との間に導くレジストローラ19、記録紙70を排紙ユニット18に排出する排紙ローラ18aが配置されている。
【0172】
また、画像形成装置100の内部には、手差し給紙ユニット17からレジストローラ19に至る間に、ピックアップローラ16aおよび搬送ローラ16bを配置した用紙搬送路P2が形成されている。さらに、排紙ローラ18aから用紙搬送路P1におけるレジストローラ19の上流側に至る間には、用紙搬送路P3が形成されている。
【0173】
排紙ローラ18aは、正逆両方向に回転自在にされており、記録紙70の片面に画像を形成する片面画像形成時、および、記録紙70の両面に画像を形成する両面画像形成における第2面画像形成時に正転方向に駆動されて記録紙70を排紙ユニット18に排出する。一方、両面画像形成における第1面画像形成時には、排紙ローラ18aは、用紙の後端が定着装置15を通過するまで正転方向に駆動された後、記録紙70の後端部を挟持した状態で逆転方向に駆動されて記録紙70を用紙搬送路P3内に導く。これによって、両面画像形成時に片面のみに画像が形成された記録紙70は、表裏面および前後端を反転した状態で用紙搬送路P1に導かれる。
【0174】
レジストローラ19は、内部給紙ユニット16または手差し給紙ユニット17から給紙され、または、用紙搬送路P3を経由して搬送された記録紙70を、中間転写ベルト11の回転に同期したタイミングで二次転写ユニット14と中間転写ベルト11との間に導く。このため、レジストローラ19は、感光体101a〜101dや中間転写ベルト11の動作開始時には回転を停止しており、中間転写ベルト11の回転に先立って給紙または搬送された記録紙70は、前端をレジストローラ19に当接させた状態で用紙搬送路P1内における移動を停止する。この後、レジストローラ19は、二次転写ユニット14と中間転写ベルト11とが圧接する位置で、記録紙70の前端部と中間転写ベルト11上に形成されたトナー像の前端部とが対向するタイミングで回転を開始する。
【0175】
なお、第1〜第4可視像形成ユニットPa〜Pdの全てにおいて画像形成が行われるフルカラー画像形成時には、一次転写ローラ13a〜13dが中間転写ベルト11を感光体101a〜101dの全てに圧接させる。一方、第1可視像形成ユニットPaのみにおいて画像形成が行われるモノクロ画像形成時には、一次転写ユニット13aのみが中間転写ベルト11を感光体101aに圧接させる。
【0176】
以上のように構成される画像形成装置100は、高い安全性が確保されるとともに、ウォームアップ時間が長くなるのが防止され、安定した定着性能を確保可能な定着装置15を備えているので、高速下で高品位な画像を記録紙70上に形成することができる。
【0177】
なお、本実施形態の画像形成装置100は、1つの定着装置15を備える構成としたが、定着装置15,40,50から選ばれる少なくとも1つの定着装置を備えるように構成すればよく、複数の定着装置を備える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0178】
15,40,50 定着装置
15a,54 定着ローラ
15b,55 加圧ローラ
21,41,51 加熱手段
25,43 定着ベルト
53 加熱ベルト
100 画像形成装置
200,300 加熱ヒータ
201,301 セラミック基板
202,302 第1絶縁層
203,303 第2絶縁層
204,304 第3絶縁層
205,305 第4絶縁層
206,306 第1凹部
207,307 第2凹部
2032,3032 第1発熱抵抗体
2033,3033 第1給電端子
2042,3042 第2発熱抵抗体
2043,4043 第2給電端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性を有する複数の絶縁層からなる矩形板状のセラミック基板と、
通電によって発熱する発熱領域がそれぞれ異なる複数の発熱抵抗体とを含み、
前記複数の発熱抵抗体は、前記絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられることを特徴とする加熱ヒータ。
【請求項2】
前記複数の発熱抵抗体は、
セラミック基板の長手方向に関して、それぞれ異なる領域が発熱領域となるように、前記絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられて、
それぞれ個別に通電可能となるように構成されることを特徴とする請求項1記載の加熱ヒータ。
【請求項3】
前記複数の発熱抵抗体は、
セラミック基板の長手方向中央部が発熱領域となるように設けられる第1発熱抵抗体と、
セラミック基板の長手方向両端部が発熱領域となるように設けられる第2発熱抵抗体とを含み、
前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体とは、前記絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられて、それぞれ個別に通電可能となるように構成されることを特徴とする請求項2記載の加熱ヒータ。
【請求項4】
前記複数の発熱抵抗体は、
セラミック基板の長手方向に関して、セラミック基板の厚み方向から見た場合に、一部の発熱領域が重なるように、前記絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられて、
それぞれ個別に通電可能となるように構成されることを特徴とする請求項1記載の加熱ヒータ。
【請求項5】
前記複数の発熱抵抗体は、
セラミック基板の長手方向中央部が発熱領域となるように設けられる第1発熱抵抗体と、
セラミック基板の長手方向両端部間にわたる全領域が発熱領域となるように設けられる第2発熱抵抗体とを含み、
前記第1発熱抵抗体と前記第2発熱抵抗体とは、前記絶縁層のそれぞれ異なる層間に設けられて、それぞれ個別に通電可能となるように構成されることを特徴とする請求項4記載の加熱ヒータ。
【請求項6】
前記複数の絶縁層は、厚みが50μm以上の層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の加熱ヒータ。
【請求項7】
前記セラミック基板の長手方向両端部には、セラミック基板の厚み方向に凹んだ凹部が形成され、
前記凹部の表面には、前記複数の発熱抵抗体のそれぞれに対して電気的に接続される給電端子が形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の加熱ヒータ。
【請求項8】
記録媒体上に担持されるトナー像を加熱手段によって加熱して、記録媒体上に定着させる定着装置であって、
前記加熱手段は、
請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ヒータと、
前記加熱ヒータを保持し、加熱ヒータで発生する熱を前記トナー像に伝達する保持部材と、
前記加熱ヒータの前記発熱抵抗体に電圧を印加する加熱用電源と、を含んで構成されることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
記録媒体におけるトナー像が担持されるトナー像担持面に、外周面において接触して、回転可能に設けられる無端状のベルト部材である定着ベルトを備え、
前記加熱手段は、前記保持部材が前記定着ベルトの内周面に接触するように設けられて、前記定着ベルトを介してトナー像を加熱するように構成されることを特徴とする請求項8記載の定着装置。
【請求項10】
前記定着ベルトの内周面に接触して設けられる定着部材と、前記定着ベルトを介して前記定着部材に圧接する加圧部材とを備え、
前記加熱手段は、前記定着ベルトと前記加圧部材との間を通過する記録媒体上に担持されるトナー像を、前記定着ベルトを介して加熱するように構成されることを特徴とする請求項9記載の定着装置。
【請求項11】
前記定着ベルトの内周面に接触するように設けられる前記保持部材に対して前記定着ベルトを介して圧接する加圧部材を備え、
前記加熱手段は、前記定着ベルトと前記加圧部材との間を通過する記録媒体上に担持されるトナー像を、前記定着ベルトを介して加熱するように構成されることを特徴とする請求項9記載の定着装置。
【請求項12】
記録媒体におけるトナー像が担持されるトナー像担持面に接触する定着部材と、前記定着部材に圧接する加圧部材と、内周面が前記保持部材と接触し、かつ外周面が前記定着部材と接触して回転可能に設けられる無端状のベルト部材である加熱ベルトとを備え、
前記加熱手段は、前記定着部材と前記加圧部材との間を通過する記録媒体上に担持されるトナー像を、前記加熱ベルトおよび前記定着部材を介して加熱するように構成されることを特徴とする請求項8記載の定着装置。
【請求項13】
前記加熱用電源は、前記加熱ヒータの前記発熱抵抗体に印加する電圧値を可変制御可能な電源であり、前記発熱抵抗体における投入電力値が一定となるように可変制御されることを特徴とする請求項8〜12のいずれか1つに記載の定着装置。
【請求項14】
記録媒体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、トナー像形成手段によって記録媒体上に形成されるトナー像を、所定の定着温度に加熱して定着させる定着手段とを含む画像形成装置であって、
前記定着手段が、請求項8〜13のいずれか1つに記載の定着装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
電気絶縁性を有する矩形板状の複数のセラミック基体のそれぞれの表面上に、通電によって発熱する発熱領域が異なる発熱抵抗体を形成する抵抗体形成工程と、
前記抵抗体形成工程で得られる発熱抵抗体が形成された複数のセラミック基体を、発熱抵抗体が形成されていない複数のセラミック基体に挟み込むように重ね合わせた後、加圧下で圧着させて、各セラミック基体が積層された積層体を得る積層体作製工程と、
前記積層体作製工程で得られる積層体を焼成する焼成工程と、を含むことを特徴とする加熱ヒータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−23178(P2011−23178A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166174(P2009−166174)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】