説明

加熱調理器

【課題】赤外線センサにより常に正確な温度検出ができるようにした加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】熱伝導層60aと発熱層60bとで形成した被加熱容器60と、被加熱容器60の蓋62と、被加熱容器60の加熱手段66と、被加熱容器60の温度を検出する赤外線センサ67とを備え、被加熱容器60の赤外線センサ67と対向する底面部は、局部的に発熱層60bのない熱伝導層60aのみとし、この熱伝導層60aのみの局所部分を赤外線センサ67の視野部60cとしたものである。これによって、赤外線センサ67は、熱伝導層60aのみの視野部60cから赤外線を検出するものであり、被加熱容器60との間の異物のかみ込みがなく、また可動部を不要とし可動不良発生の可能性もなく、常に正確な温度検出ができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッド材で形成した被加熱容器を備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クラッド材で形成した被加熱容器を備えた加熱調理器として誘導加熱式炊飯器が知られている。そして、被加熱容器内の調理物である米と水の温度を検出する方法としては、被加熱容器を構成する外側の金属材を局部的に除去して内側の金属材に温度センサをバネで付勢して当接させた直接方式(例えば、特許文献1参照)、あるいは被加熱容器の底面から放射される赤外線を赤外線センサで測定する間接方式(例えば、特許文献2参照)がある。
【特許文献1】実開平3−76516号公報
【特許文献2】特公平5−75407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の被加熱容器に温度センサを当接する直接方式では、被加熱容器を構成する内側の金属材の温度を検出するため温度検出の精度が高まるが、被加熱容器と温度センサ間に米粒などの異物をかみ込むことが生じ、この場合は正確な温度検出ができないという課題があった。
【0004】
また、前記従来の赤外線センサを用いる間接方式では、被加熱容器と温度センサ間の異物のかみ込みはないが、被加熱容器の着脱に連動して上下する遮蔽筒体を別途設け、これを通して赤外線を赤外線センサへ放射するものであり、別部材が必要で構成上の課題がある。
【0005】
そして、前記従来の構成ではいずれも可動部(温度センサ、遮蔽筒体)を有するため、可動不良発生の可能性があり、常に正確な温度検出ができない恐れもあった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、赤外線センサにより常に正確な温度検出ができるようにした加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の加熱調理器は、熱伝導層と発熱層とを有するクラッド材で形成した被加熱容器と、被加熱容器の開口部を覆う蓋と、被加熱容器を加熱する加熱手段と、被加熱容器の温度を検出する赤外線センサと、赤外線センサが検出した温度に基づき加熱手段による被加熱容器の加熱量を制御する制御手段とを備え、前記被加熱容器の赤外線センサと対向する底面部は、局部的に発熱層のない熱伝導層のみとし、この熱伝導層のみの局所部分を赤外線センサの視野部としたものである。
【0008】
これによって、赤外線センサは、熱伝導層のみの局所部分である赤外線センサの視野部から赤外線を検出するものであり、被加熱容器との間の異物のかみ込みがなく、また可動部を不要とし可動不良発生の可能性もなく、常に正確な温度検出ができるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱調理器は、赤外線センサにより常に正確な温度検出ができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、熱伝導層と発熱層とを有するクラッド材で形成した被加熱容器と、被加熱容器の開口部を覆う蓋と、被加熱容器を加熱する加熱手段と、被加熱容器の温度を検出する赤外線センサと、赤外線センサが検出した温度に基づき加熱手段による被加熱容器の加熱量を制御する制御手段とを備え、前記被加熱容器の赤外線センサと対向する底面部は、局部的に発熱層のない熱伝導層のみとし、この熱伝導層のみの局所部分を赤外線センサの視野部とした加熱調理器とするものである。これによって、赤外線センサは、熱伝導層のみの局所部分である赤外線センサの視野部から赤外線を検出するものであり、被加熱容器との間の異物のかみ込みがなく、また可動部を不要とし可動不良発生の可能性もなく、常に正確な温度検出ができるものである。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明において、被加熱容器の視野部に、発熱層より熱伝導率が高く、かつ放射率の高い材料を設けて、視野部外周の発熱層と同一の平坦な底面部となるようにしたことにより、正確な温度検出ができるとともに、被加熱容器の取り扱いに違和感を感ずることがない。
【0012】
第3の発明は、特に、第1の発明において、被加熱容器の視野部に、カーボンをバインドした耐熱材料を設けて、視野部外周の発熱層と同一の平坦な底面部となるようにしたことにより、正確な温度検出ができるとともに、被加熱容器の取り扱いに違和感を感ずることがない。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明において、被加熱容器の視野部外周の発熱層に断熱層を設け、発熱層から視野部へ流入する熱流を小さくするようにしたことにより、より精度の良い温度検出が行える。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、被加熱容器の視野部は、凹面形状とし、そこから放射される赤外線が、赤外線センサに集光されるようにしたことにより、効果的に赤外線を集光し、より精度の良い温度検出が行える。
【0015】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、被加熱容器の視野部の熱伝導層にオーバーコートを施したことにより、より被加熱容器の使い勝手が良く、精度の良い温度検出が行える。
【0016】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、被加熱容器の視野部は、その周辺の熱伝導層部よりも厚みを薄くしたことにより、より被加熱容器の温度検出精度を高めることができる。
【0017】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、蓋内に設けられた圧力調整手段を備え、被加熱容器内の圧力を調整するようにしたことにより、精度の良い温度検出ができることに加え、加圧調理ができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1〜図3は、本発明の実施の形態1における加熱調理器として電磁誘導式炊飯器を例示している。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態における加熱調理器は、アルミニウムなどの熱伝導率の良い材料からなる熱伝導層60aに、磁性金属材料からなるフェライト系ステンレス鋼板の発熱層60bを圧接加工により張り合わせた、いわゆるクラッド材を型鍛造して器状に形成した被加熱容器60を備えている。また、上面が開口した本体61と、開閉自在に本体61を覆う蓋62と、蓋62の開閉状態を検出する蓋開閉検出手段63と、本体61内において被加熱容器60を着脱自在に収納するとともに底部に水抜き穴65を設けた保護枠64と、保護枠64の下面に固定され被加熱容器60を誘導加熱する加熱コイルよりなる加熱手段66とを備えている。
【0021】
さらに、本体61の下方部には、被加熱容器60の底面から放射される赤外線量を検出して被加熱容器60の底面の温度を測定する赤外線センサ67と、加熱手段66に高周波電流を供給するインバータ68を有する加熱基板69を配置している。本体61の前上方部には、操作キーと表示素子を有する制御基板70を配置している。制御基板70上には炊飯行程を記憶させたマイクロコンピュータ(図示せず)を実装し、赤外線センサ67が測定した被加熱容器60の底面温度と、操作キー入力に基づき加熱基板69へ制御出力を出力して、加熱手段66による被加熱容器60の加熱量および一連の炊飯行程を制御する制御手段を構成している。
【0022】
ここで、被加熱容器60の赤外線センサ67と対向する底面(中央)部は、図2に拡大して示しているように、局部的に発熱層60bのない熱伝導層60aのみとし、この熱伝導層60aのみの局所部分を赤外線センサ67の視野部60cとしたものである。視野部60cと赤外線センサ67間には可動部などの別部材が存在していないものである。なお、視野部60cは、被加熱容器60の型鍛造前に発熱層60bとなるステンレス鋼板を打ち抜き加工してクラッド材とする、あるいは鍛造後に発熱層60bを切削加工することにより、被加熱容器60の底面部を熱伝導率の高い材料からなる熱伝導層60aのみとしている。
【0023】
また、赤外線センサ67は、図2に示すように、防水機能を備えた光学フィルター67aと、鏡筒67bと、赤外線検出素子を収納したセンサケース67cと、取り付け足71と、リード線72で構成している。
【0024】
なお、インバータ68は、一般的によく知られているように、加熱手段66に周波数20〜30kHz程度あるいは50kHz以上の高周波電流を供給している。例えば、一石式のインバータ回路であれば、商用電源を整流器により整流し、その出力端にはコンデンサとチョークコイルのフィルター回路が接続されている。フィルター回路の負荷側には、逆並列接続したスイッチング素子とダイオード、発振回路などを有する高周波発生回路が接続されているものである。
【0025】
以上のように構成された加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
【0026】
米とその米量に対応する水を被加熱容器60に入れ、本体61内の保護枠64に収納し、蓋62を閉じる。操作部の炊飯キー(図示せず)を使用者が操作すると、制御基板70上のマイクロコンピュータが、このキー入力を受け、炊飯工程の実行を開始する。マイクロコンピュータ内のROMには、浸水、炊き上げ、蒸らし、保温の各工程における被加熱容器60内部の水と米の調節温度の目標値と加熱時間が記憶されている。この温度目標値と加熱時間、および赤外線センサ67の出力する被加熱容器60の視野部60cの検出温度に基づき、加熱基板69を駆動する。温度目標値より検出温度が低い時は、加熱基板69より加熱手段66へ高周波電流が供給されることにより高周波磁界が発生し、被加熱容器60の発熱層60bを通過して、発熱層60bに渦電流が流れる。この渦電流と発熱層60bの表皮電気抵抗値によるジュール熱で、発熱層60bが誘導加熱されて発熱し、その熱が熱伝導層60aを通して被調理物である米と水へ均一に伝導されることで、効率よく加熱調理される。
【0027】
炊飯中の被加熱容器60の視野部60cは熱伝導層60aの一部であるため、その温度は、炊飯初期は被調理物である米を含んだ水温に依存することになり、一般的には−5℃〜30℃である。また、炊き上げ行程では約134℃〜145℃で炊飯終了を検出して加熱が停止されるので、その間の最高温度は約150℃である。保温行程では約70℃〜73℃に温度調節される。従って、被加熱容器60底面の温度範囲は−5℃〜150℃となるため、その視野部60cから放射される赤外線の波長はウィーンの変位則およびシュテファン・ボルツマン則より、図3(a)の赤外線の放射エネルギー強度を示すように、約2μm以上の遠赤外線領域となる。本実施の形態においては、水薄膜の吸収波長帯域(図3(b))の影響を避けるため、約3.3μm〜7μmの波長の赤外線のみを透過させる光学フィルター67aを装着している。ステファン・ボルツマン則によれば、この光学フィルター67aを透過した赤外線をセンサケース67cに収納した赤外線検出素子で検出した赤外線エネルギー値も、被加熱容器60における視野部60cの表面温度の4乗に比例する。従って、赤外線検出素子で検出した赤外線エネルギー値から、被加熱容器60の視野部60cの表面温度を算出することが可能となる。
【0028】
なお、水厚膜では約1.9μmと約2.9μmに−OH基の吸収が現れる。さらに、約7ミクロン以上では、水の分子が共振し選択的に強く吸収されるので、膜厚の厚い水滴が光学フィルター67aへ付着した場合、赤外線センサ67へ届く前に、被加熱容器60の視野部60cから放射される赤外線の殆どが吸収されてしまう。他方、視野部60cへ付着した膜厚の厚い水滴は、その波長域での水の放射率が約0.93と高いため、対流・伝導による遅延が生じるが、被加熱容器60の加熱が進むにつれて乾燥して消失するので影響は少ない。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては、赤外線センサ67に赤外線を放射する被加熱容器60の視野部60cは、熱伝導率の高いアルミニウムなどの材料のみとしているので、被加熱容器60内の被調理物である米と水の温度の温度変化を正確に検出することができる。従って、被加熱容器60の被調理物の温度を制御基板70により、約0℃〜150℃まで高精度に温度検出して、加熱調理することにより、良食味のご飯を得ることができる。
【0030】
なお、赤外線エネルギー値と被加熱容器60の視野部60cの表面温度との相関を記述したテーブルデータを、制御手段であるマイクロコンピュータ内のROMに記憶させておき、このテーブルデータを参照する方法で、被加熱容器60の視野部60cの表面温度を求めても良い。
【0031】
また、赤外線検出素子は約3μm〜4.3μmの帯域で感度を持つサーモパイルや、サーミスタ・ボロメータ(一対のサーミスタ素子の片方にのみ赤外線が受光される構成とした簡易型も含む)、焦電素子、あるいは、InSb、HgCdTe、PbSなどの半導体化合物による光検出器が適している。
【0032】
なお、鏡筒67bは赤外線検出素子の視野を絞り込み、被加熱容器60視野部60cとの距離を確保するために用いているが、炊飯行程中の赤外線検出素子の温度が、その素子の耐熱温度以内であれば、敢えて使用する必要はない。
【0033】
また、取り付け足71は本体61への固定機能以外に、冷却ファンの振動や、誘導加熱される被加熱容器のの振動、加熱手段66の低周波のうなり振動が、赤外線検出素子へ伝達されないように防振する機能も持たせている。
【0034】
なお、加熱手段66は保護枠64に固定されていても、一体に埋め込まれていても良いものである。
【0035】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における加熱調理器の要部を示している。実施の形態1と基本構成は同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下、相違点について説明する。
【0036】
図に示すように、本実施の形態における加熱調理器は、クラッド材で型鍛造した被加熱容器60の視野部60cの空間に、発熱層60bより熱伝導率が高く、かつ放射率の高い充填材料75を設けて、視野部60c外周の発熱層60bと同一の平坦な底面部となるようにしている。すなわち、充填材料75は溶融状態で視野部60cに流し込んだ後に冷却することで、視野部60c外周の発熱層60bと同一の平坦な被加熱容器底面を得ている。これにより、被加熱容器60内の米を含んだ水温の4乗に比例した赤外線を効率よく放射することができる。
【0037】
なお、充填する材料は、高い熱伝導率を有する材料に表面処理を施して、高い放射率としても良い。銅(底表面処理:光沢無)、アルミニウム(底表面処理:黒色アルマイト)を用いることができる。
【0038】
このように、本実施の形態では、被加熱容器の視野部に、発熱層より熱伝導率が高く、かつ放射率の高い材料を設けて、視野部外周の発熱層と同一の平坦な底面部となるようにしたことにより、正確な温度検出ができるとともに、被加熱容器の取り扱いに違和感を感ずることがない。
【0039】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における加熱調理器の要部を示している。実施の形態1と基本構成は同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下、相違点について説明する。
【0040】
図に示すように、本実施の形態における加熱調理器は、被加熱容器60の視野部60cに、カーボンをバインドした耐熱材料76を設けて、視野部60c外周の発熱層60bと同一の平坦な底面部となるようにしている。すなわち、耐熱材料76はカーボンをバインド材に混合して練り込み、視野部60cに充填、あるいは塗布した後、焼結して成形することで、視野部60c外周の発熱層60bと同一の平坦な被加熱容器底面を得ている。これにより、被加熱容器60内の米を含んだ水温の4乗に比例した赤外線を効率よく放射することができる。
【0041】
なお、耐熱材料76は、200℃超での使用に耐える材料なら良く、大別すると金属系材料とセラミック系材料がある。
【0042】
このように、本実施の形態では、被加熱容器の視野部に、カーボンをバインドした耐熱材料を設けて、視野部外周の発熱層と同一の平坦な底面部となるようにしたことにより、正確な温度検出ができるとともに、被加熱容器の取り扱いに違和感を感ずることがない。
【0043】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における加熱調理器の要部を示している。実施の形態1、3と基本構成は同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下、相違点について説明する。
【0044】
図に示すように、本実施の形態における加熱調理器は、被加熱容器60の視野部60c外周の発熱層60bに、すなわち、発熱層60bと耐熱材料76間に断熱層77を設け、発熱層60bから視野部60c、耐熱材料76へ流入する熱流を小さくするようにしている。
【0045】
なお、断熱層77は200℃超での使用に耐える材料なら良く、フッ素樹脂系材料やセラミック系材料を用いることができる。また、セラミックスのナノ多穴体構造およびセラミックス・ポリマー複合化構造などからなるマルチセラミックス膜新断熱材料を用いれば、コストはやや上がるが熱を伝える三要素(格子振動、対流、輻射)のいずれも抑えることができる。
【0046】
なお、前記した断熱層77より効果が低下するが、安価にするために発熱層60bの内側、すなわち視野部60c(耐熱材料76)の外周部の表面を、放射率が0.05以下になる表面処理加工を施して断熱層77としても良い。表面処理加工としては、鏡面加工や、めっき加工(例えば、黒色のクロム系薄膜(1〜3μm)を皮膜形成)がある。
【0047】
このように、本実施の形態では、被加熱容器の視野部外周の発熱層に断熱層を設け、発熱層から視野部へ流入する熱流を小さくするようにしたことにより、より精度の良い温度検出が行える。
【0048】
(実施の形態5)
図7は、本発明の実施の形態5における加熱調理器の要部を示している。実施の形態1と基本構成は同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下、相違点について説明する。
【0049】
図に示すように、本実施の形態における加熱調理器は、被加熱容器60の視野部60cは、凹面形状78とし、そこから放射される赤外線が、赤外線センサ67に集光されるようにしている。
【0050】
このように、本実施の形態では、視野部を凹面形状としたことにより、効果的に赤外線を集光し、より精度の良い温度検出が行える。
【0051】
なお、上記した実施の形態1〜5において、少なくとも被加熱容器60の視野部60cの熱伝導層60aに、傷の保護および赤外線の放射の改善、増大のためのオーバーコートを施すことにより、より使い勝手が良く、精度の良い温度測定が行える。オーバーコート材料としては、有機樹脂塗料はもとより、他の無機系塗料・セラミック系塗料などが使用できる。例えば、シロキサン結合(Si−O−Si)で構成されたと膜表面に撥水基を固定させた無機系塗料では、長期間安定した塗膜外観を維持できる。
【0052】
また、クラッド材を型鍛造した被加熱容器30の底面の視野部60cを凹面形状にする代わりに、炭素を主体とする粉粒を圧縮または加熱して凝縮したのち切削加工する、もしくは型により成形加工して器形状とし、その加工時に視野部60cの厚みを周辺部よりも薄くすることにより、被調理物である米と水の温度をより精度良く検出することができる。
【0053】
(実施の形態6)
図8は、本発明の実施の形態6における加熱調理器として電磁誘導式炊飯器を例示している。
【0054】
図に示すように、本実施の形態における加熱調理器81は、クラッド材で形成した被加熱容器82を着脱自在に収納するため、有底筒状の収納部81aを有する。収納部81aの底部には、被加熱容器82を誘導加熱する加熱コイルよりなる底面加熱手段83が設けられ、赤外線センサ84が被加熱容器82から放射される赤外線量を検出し、温度に換算することで被加熱容器82の底面の温度を検出する構成としている。被加熱容器82の側面にも、誘導加熱する加熱コイルよりなる側面加熱手段85が設けられている。
【0055】
被加熱容器82は、その詳細説明を省略しているが、実施の形態1と同様な構成をしており、赤外線センサ84と対向する底面部は、局部的に発熱層のない熱伝導層のみとし、この熱伝導層のみの局所部分を赤外線センサ84の視野部82aとしている。
【0056】
また、加熱調理器81の後部のヒンジ部に設けたヒンジ軸(図示は省略)にて軸支され、被加熱容器82の上部を開閉する蓋86を備えている。蓋86には蓋加熱板87が設けてあり、この蓋加熱板87を誘導加熱する加熱コイルよりなる蓋加熱手段88が設けられている。蓋加熱板87は被加熱容器82内部から排出する蒸気口89を有しており、蓋86の内蓋に設けられた圧力調整手段90とにより、被加熱容器82の内部の圧力を調整する構成としている。
【0057】
被加熱容器パッキン91は、蓋86の閉時に蓋加熱板87と被加熱容器82の上縁外周部にあるフランジ部の間で挟持され、気密を保つ働きをする。制御手段92は加熱調理器81の動作全体を制御する。制御基板93は、この制御手段92の加熱信号を入力して、底面加熱手段83、側面加熱手段85、および蓋加熱手段88へ高周波電流を供給して、被加熱容器82を誘導加熱することで、被調理物である米と水を加熱調理する。
【0058】
そして、圧力調整手段90を開閉することにより、炊飯の炊き上げ工程に限らず、蒸らし工程で、被加熱容器82で生成された蒸気による被加熱容器82内の蒸気圧力および蒸気温度を制御して、いろいろな食感の飯に炊き上げ、炊飯性能の向上をはかっている。
【0059】
なお、圧力調整手段90の弁開閉機構については、温度に応じて伸縮する形状記憶合金に限らず、これらの弁体を上下に移動させる電動機、ソレノイドなどにより形成することができるものである。
【0060】
なお、底面加熱手段83、側面加熱手段85、および蓋加熱手段88は、誘導加熱に限定するものではない。それぞれの部位に対して、炊飯工程で必要とする熱量が供給できる手段であればよい。すなわち、従来から知られているヒータの他にも、温風、高温蒸気、ガス燃焼などを組み合わせてもよいことは、言うまでもない。
【0061】
このように、本実施の形態では、圧力調整手段を備え、被加熱容器内の圧力を調整するようにしたことにより、精度の良い温度検出ができることに加え、加圧調理ができる。
【0062】
上記した各実施の形態1〜6の構成は、必要に応じて適宜組み合わせることができるものであり、各実施の形態に示した構成そのものに限られるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明にかかる加熱調理器は、赤外線センサにより常に正確な温度検出ができるものであるので、炊飯器に限らず誘導加熱式以外のヒータ式、ガス燃焼式、温風、高温蒸気式の加熱調理器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の断面図
【図2】同加熱調理器の赤外線センサ周辺の要部断面図
【図3】(a)赤外線エネルギーの強度を示すグラフ(b)水の吸収スペクトルを示すグラフ
【図4】本発明の実施の形態2における加熱調理器の赤外線センサ周辺の要部断面図
【図5】本発明の実施の形態3における加熱調理器の赤外線センサ周辺の要部断面図
【図6】本発明の実施の形態4における加熱調理器の赤外線センサ周辺の要部断面図
【図7】本発明の実施の形態5における加熱調理器の赤外線センサ周辺の要部断面図
【図8】本発明の実施の形態6における加熱調理器の断面図
【符号の説明】
【0065】
60 被加熱容器
60a 熱伝導層
60b 発熱層
60c、82a 視野部
66 加熱手段
67、84 赤外線センサ
70 制御基板(制御手段)
75 充填材料
76 耐熱材料
77 断熱層
78 凹面形状
90 圧力調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導層と発熱層とを有するクラッド材で形成した被加熱容器と、被加熱容器の開口部を覆う蓋と、被加熱容器を加熱する加熱手段と、被加熱容器の温度を検出する赤外線センサと、赤外線センサが検出した温度に基づき加熱手段による被加熱容器の加熱量を制御する制御手段とを備え、前記被加熱容器の赤外線センサと対向する底面部は、局部的に発熱層のない熱伝導層のみとし、この熱伝導層のみの局所部分を赤外線センサの視野部とした加熱調理器。
【請求項2】
被加熱容器の視野部に、発熱層より熱伝導率が高く、かつ放射率の高い材料を設けて、視野部外周の発熱層と同一の平坦な底面部となるようにした請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
被加熱容器の視野部に、カーボンをバインドした耐熱材料を設けて、視野部外周の発熱層と同一の平坦な底面部となるようにした請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
被加熱容器の視野部外周の発熱層に断熱層を設け、発熱層から視野部へ流入する熱流を小さくするようにした請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
被加熱容器の視野部は、凹面形状とし、そこから放射される赤外線が、赤外線センサに集光されるようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項6】
被加熱容器の視野部の熱伝導層にオーバーコートを施した請求項1〜5のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項7】
被加熱容器の視野部は、その周辺の熱伝導層部よりも厚みを薄くした請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱調理器。
【請求項8】
蓋内に設けられた圧力調整手段を備え、被加熱容器内の圧力を調整するようにした請求項1〜7のいずれか1項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図3】
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【図8】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−106704(P2009−106704A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284974(P2007−284974)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】