説明

加飾体貼着木目込み方法及びその装置

【課題】 加飾体の周縁部より内側を木目込みする場合においても、加飾体を容易に木目込むことができると共に加飾体を成形体に確実に貼着することができる加飾体貼着木目込み方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 加飾体と該加飾体の周縁部より内側に木目込み溝が形成された成形体の少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、木目込み刃が貫通し、且つ、昇降可能にされた下型に前記加飾体を保持させる工程と、該下型に対向して配設され、且つ、昇降可能にされた上型に前記成形体を保持させる工程と、該上型を下降させて前記木目込み刃により前記成形体の木目込み溝に前記加飾体の一部を押し込んで木目込む工程と、該木目込み終了後、前記下型を上昇させて前記加飾体を前記成形体に押圧し、該成形体に加飾体を貼着する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾体貼着木目込み方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ドアトリム等の成形体の表面に加飾体を貼着すると共に加飾体の周縁部を成形体の木目込み溝に木目込みするものは公知にされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3189969号公報(第1頁、第1−2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
該特許文献1のように加飾体の周縁部を木目込みする場合は比較的木目込みしやすい。しかし、加飾体の周縁部より内側、例えば中央部を木目込みする場合、加飾体が引き伸ばされて木目込み溝に貼着されることが極めて困難であるという問題がある。また、加飾体に大きな引っ張りによる残留応力が生じているために該加飾体が成形体に一度貼着されたにも拘らず、型開きすると直ちに剥がれてしまうという問題もある。
本発明は、上記の問題に鑑みて成されたもので、加飾体の周縁部より内側を木目込みする場合においても、加飾体を容易に木目込むことができると共に加飾体を成形体に確実に貼着することができる加飾体貼着木目込み方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本発明における加飾体貼着木目込み方法は、加飾体の周縁部より内側を木目込みする加飾体貼着木目込み方法であって、前記加飾体と該加飾体の周縁部より内側に木目込み溝が形成された成形体の少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、木目込み刃が貫通し、且つ、昇降可能にされた下型に前記加飾体を保持させる工程と、該下型に対向して配設され、且つ、昇降可能にされた上型に前記成形体を保持させる工程と、該上型を下降させて前記木目込み刃により前記成形体の木目込み溝に前記加飾体の一部を押し込んで木目込む工程と、該木目込み終了後、前記下型を上昇させて前記加飾体を前記成形体に押圧し、該成形体に加飾体を貼着する工程と、を有することを特徴とする。
【0006】
また本発明における加飾体貼着木目込み方法は、前記成形体に加飾体を貼着した後、前記木目込み刃を静止させた状態で所望距離だけ前記上型と下型を一体的に上昇させ、その後、前記上型だけを上昇させて前記加飾体が貼着された成形体を該上型とともに上昇させることを特徴とする。
【0007】
また上記の目的を達成するために本発明における加飾体貼着木目込み装置は、加飾体の周縁部より内側を木目込みする加飾体貼着木目込み装置であって、架台に装着された昇降手段と、該昇降手段に連結されると共に前記加飾体を保持する加飾体保持手段が付属された下型と、該下型に対向して配設されると共に昇降可能にされ、且つ、前記加飾体の周縁部より内側に木目込み溝が形成された成形体を保持する成形体保持手段が付属された上型と、該上型に保持された前記成形体の木目込み溝の下方において前記下型を貫通して配設されると共に前記架台上に固定された木目込み刃と、を具備することを特徴とする。
【0008】
なお本発明における加飾体としては、例えば、表皮、不織布、カーペット、布、合成皮革等のシート状材料が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、加飾体の周縁部より内側を木目込みする加飾体貼着木目込み方法であって、前記加飾体と該加飾体の周縁部より内側に木目込み溝が形成された成形体の少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、木目込み刃が貫通し、且つ、昇降可能にされた下型に前記加飾体を保持させる工程と、該下型に対向して配設され、且つ、昇降可能にされた上型に前記成形体を保持させる工程と、該上型を下降させて前記木目込み刃により前記成形体の木目込み溝に前記加飾体の一部を押し込んで木目込む工程と、該木目込み終了後、前記下型を上昇させて前記加飾体を前記成形体に押圧し、該成形体に加飾体を貼着する工程と、を有するようにしたから、加飾体の周縁部より内側を木目込みする場合においても、加飾体を容易に木目込むことができる。また木目込み部分の加飾体にほとんどテンションがかからないため、加飾体の残留応力が抑えられた状態で該加飾体を成形体に確実に貼着することができる等種々の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。図1において、架台1の上板1a下面には昇降手段としてのシリンダ2、2が装着されており、該シリンダ2、2のピストンロッド先端には下型3が連結されている。なお該下型3には、その周縁外側に、加飾体K(本実施形態では布のシート状材料)を保持する加飾体保持手段としてのセットピン4、4が複数付属されている。
【0011】
また前記下型3の上方には、上型5が該下型3に対向して配設されており、該上型5は上定盤6の下面に固定されて図示されない昇降手段により昇降されるようになっている。なお該上型5には、その内部に、成形体Sを保持する成形体保持手段としての吸引パッド7、7が複数付属されている。また前記成形体Sは前記加飾体Kの周縁部より内側に木目込み溝Saが形成されており、該木目込み溝Saは本実施形態では前記加飾体Kの中央部に対向する位置にされている。
【0012】
また前記上型5に保持された前記成形体Sの木目込み溝Saの下方には、木目込み刃8が前記下型3に穿設された通し穴3aを貫通して配設されており、該木目込み刃8は前記架台1における上板1a上に固定されている。
【0013】
このように構成されたものの作動について説明する。まず、加飾体Kと成形体Sの少なくとも一方に接着剤を塗布する。本実施形態では、加飾体Kの上面に接着剤を塗布する。次に、該接着剤が塗布された加飾体Kを下型3に保持させる。加飾体Kの周縁部にはセットピン4、4に引っ掛けるための図示されない孔が各々穿孔されており、この孔をセットピン4、4に引っ掛けることによって加飾体Kが木目込み刃8で僅かにテンションがかけられた状態で下型3に保持される。
【0014】
次に、成形体Sの上面を上型5の下面に当接させ、且つ、吸引パッド7、7に連通接続された図示されない吸引手段を作動させて該上型5に成形体Sを保持させる。そして、前記図示されない昇降手段の作動により、該成形体Sが保持された上型5を下降させる。この下降は木目込み刃8の先端が加飾体Kを介して木目込み溝Saの底に到達するまで行われる。これにより、木目込み刃8で成形体Sの木目込み溝Saに加飾体Kの一部を押し込んで木目込む(図2参照)。
【0015】
次に、該木目込み終了後、シリンダ2、2の伸長作動により下型3を上昇させる。これにより、木目込まれた部分を除いた残りの加飾体Kを下型3で成形体Sに押圧し、該成形体Sに加飾体Kを貼着する(図3参照)。なお、この時点でシリンダ2、2は伸長作動のストロークエンドまで到達しておらず、該ストロークエンドまで所望距離(本実施形態では20mm)の余裕がある。
【0016】
次に、前記図示されない昇降手段の作動により、上型5を上昇させる。そうすると、上述したシリンダ2、2の伸長作動の余裕ストローク20mm分だけ下型3が上型5と一緒に上昇する。これにより上型5と下型3が成形体S及び加飾体Kを挟持した状態で一体的に20mm上昇する。なお、この際、木目込み刃8は、上述したように架台1における上板1a上に固定されているから、静止した状態である。
【0017】
そして、上述のように該上型5と下型3が一体的に20mm上昇するとシリンダ2、2が伸長作動のストロークエンドまで到達し、下型3の上昇が停止する。その後は前記図示されない昇降手段の作動により上型5だけが上昇し、加飾体Kが貼着された成形体Sは上型5に保持されたまま該上型5とともに上昇する(図4参照)。
【0018】
次に、シリンダ2、2の縮引作動により下型3を下降させる。そして、前記図示されない吸引手段の作動を停止させ、前記加飾体Kが貼着された成形体Sを上型5から取り外す。
【0019】
なお本発明では上述したように、前記成形体Sに加飾体Kを貼着した後、前記木目込み刃8を静止させた状態で所望距離だけ前記上型5と下型3を一体的に上昇させ、その後、前記上型5だけを上昇させて前記加飾体Kが貼着された成形体Sを該上型5とともに上昇させるようにしているから、型開きの際、加飾体Kが貼着された成形体S、即ち、製品の木目込み部分と木目込み刃8が引っ掛かるのを防止し、該木目込み部分と木目込み刃8を容易且つ確実に分離することができる。このため、型開きの際に、該製品がうまく離型できずに下型3に残ってしまったり、該製品の木目込み部分の加飾体が剥がれてしまったりする不具合を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態を示す正面断面図である。
【図2】木目込み溝に加飾体の一部を押し込んで木目込んだ状態を示す図である。
【図3】成形体に加飾体を貼着した状態を示す図である。
【図4】加飾体が貼着された成形体を上型に保持させたまま上昇させた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 架台
2 昇降手段
3 下型
4 加飾体保持手段
5 上型
7 成形体保持手段
8 木目込み刃
S 成形体
Sa 木目込み溝
K 加飾体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加飾体の周縁部より内側を木目込みする加飾体貼着木目込み方法であって、前記加飾体と該加飾体の周縁部より内側に木目込み溝が形成された成形体の少なくとも一方に接着剤を塗布する工程と、木目込み刃が貫通し、且つ、昇降可能にされた下型に前記加飾体を保持させる工程と、該下型に対向して配設され、且つ、昇降可能にされた上型に前記成形体を保持させる工程と、該上型を下降させて前記木目込み刃により前記成形体の木目込み溝に前記加飾体の一部を押し込んで木目込む工程と、該木目込み終了後、前記下型を上昇させて前記加飾体を前記成形体に押圧し、該成形体に加飾体を貼着する工程と、を有することを特徴とする加飾体貼着木目込み方法。
【請求項2】
前記成形体に加飾体を貼着した後、前記木目込み刃を静止させた状態で所望距離だけ前記上型と下型を一体的に上昇させ、その後、前記上型だけを上昇させて前記加飾体が貼着された成形体を該上型とともに上昇させることを特徴とする請求項1記載の加飾体貼着木目込み方法。
【請求項3】
加飾体の周縁部より内側を木目込みする加飾体貼着木目込み装置であって、架台に装着された昇降手段と、該昇降手段に連結されると共に前記加飾体を保持する加飾体保持手段が付属された下型と、該下型に対向して配設されると共に昇降可能にされ、且つ、前記加飾体の周縁部より内側に木目込み溝が形成された成形体を保持する成形体保持手段が付属された上型と、該上型に保持された前記成形体の木目込み溝の下方において前記下型を貫通して配設されると共に前記架台上に固定された木目込み刃と、を具備することを特徴とする加飾体貼着木目込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−272807(P2006−272807A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96926(P2005−96926)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】