説明

動力伝達装置

【課題】 従来よりも全長が短縮できるあるいは全長の延長の抑制ができる動力伝達装置を提供することである。
【解決手段】 本発明の動力切替機構3は、入力軸41と第1出力軸42と第2出力軸43と第1ギヤセット5と第2ギヤセット6とを有し、第1ギヤセット5の変速段の一方の第1入力軸ギヤ412は、入力軸41の軸方向において第2ギヤセット6の2つの第2入力軸ギヤ413、414の間に位置することを特徴とする動力伝達装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関やモータなどの動力源から得られる回転動力を車両の適当な走行速度になるように変換して車輪に伝達する動力伝達装置は、例えば、特許文献1のようなものがある。
【0003】
ところで、動力伝達装置は、搭載する車両の大きさ、動力源の大きさ、動力源の種類や構成等の様々な要因との関係により、搭載位置やスペースに制約がある。また、昨今では燃費向上を目的として、軽量化やコンパクト化の要求もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−185981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、従来よりも全長が短縮できるあるいは全長の延長の抑制ができる動力伝達装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明の構成上の特徴は、回転動力が入力される入力軸と、
前記回転動力が前記入力軸を介して入力され、前記入力軸の軸方向と軸方向が平行に配置される第1出力軸及び第2出力軸と、
前記入力軸に対して一体回転可能で軸方向に並設される2つの第1入力軸ギヤと前記2つの第1入力軸ギヤの各々に常時噛合するように前記第1出力軸に対して遊転可能に設けられた2つの第1出力軸ギヤとを有する変速比の異なる2つの変速段と、前記第1出力軸に対して一体回転可能で前記2つの第1出力軸ギヤの間に位置し前記2つの第1出力軸ギヤのどちらかに一体回転可能に連結する変速段選択状態と前記2つの第1出力軸ギヤのどちらにも一体回転可能に連結しない中立状態とを有する変速段選択装置と、を持つ第1ギヤセットと、
前記入力軸に対して一体回転可能で軸方向に並設される2つの第2入力軸ギヤと前記2つの第2入力軸ギヤの各々に常時噛合するように前記第2出力軸に対して遊転可能に設けられた2つの第2出力軸ギヤを有する変速比の異なる2つの変速段と、前記第2出力軸に対して一体回転可能で前記2つの第2出力軸ギヤの間に位置し前記2つの第2出力軸ギヤのどちらかに一体回転可能に連結する変速段選択状態と前記2つの第2出力軸ギヤのどちらにも一体回転可能に連結しない中立状態とを有する変速段選択装置と、を持つ第2ギヤセットと、
を有し、
前記第1ギヤセットの前記変速段の一方の前記第1入力軸ギヤは、前記入力軸の軸方向において前記第2ギヤセットの前記2つの第2入力軸ギヤの間に位置することである。
【0007】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記回転動力を内燃機関及び/又は回転電機から供給可能に切り替えでき、且つ前記回転電機から供給される前記回転電機を前記入力軸又は前記第1出力軸に切り替えできる動力切替機構を有し、
前記第1出力軸は一体回転可能な第1ドリブンギヤを有し、
前記第2出力軸は一体回転可能で前記第1ドリブンギヤと軸方向で同じ位置に配置される第2ドリブンギヤを有し、
前記入力軸は遊転可能且つ前記第1ドリブンギヤ及び前記第2ドリブンギヤと軸方向で同じ位置に配置され、前記動力切替機構により前記回転電機からの前記回転動力が入力され、前記第1ドリブンギヤと常時噛合する伝達ギヤを有することである。
【0008】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記入力軸の軸方向と軸方向が平行に配置されるリバースアイドラ軸と、
前記入力軸に対して一体回転可能なリバース対応ギヤと前記リバース対応ギヤに常時噛合するように前記リバースアイドラ軸に対して遊転可能に設けられたリバースギヤとを有するリバース変速段と、前記リバースアイドラ軸に対して軸方向に移動可能で前記リバースギヤに一体回転可能に連結する変速段選択状態と前記リバースアイドラ軸に対して一体回転可能に連結しない中立状態とを有する変速段選択装置と、をもつリバースギヤセットと、を有し、
前記リバースアイドラ軸は一体回転可能で前記第1ドリブンギヤに常時噛合するリバースアイドラギヤを有することである。
【0009】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項3において、前記リバース対応ギヤは、前記第1入力軸ギヤの一方であることである。
【0010】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1〜4の何れか1項において、前記入力軸に対して一体回転可能な1つ第3入力軸ギヤと前記1つの第3入力軸ギヤに常時噛合するように前記第1出力軸に対して遊転可能に設けられた1つの第3出力軸ギヤとを有する前記第1及び第2ギヤセットの変速段と変速比の異なる変速段と、前記第1出力軸に対して軸方向に移動可能で前記1つの第3出力軸ギヤに対して一体回転可能に連結する変速段選択状態と前記1つの第3出力軸ギヤに対して一体回転可能に連結しない中立状態とを有する変速段選択装置と、を持つ第3ギヤセットを有し、
前記第3入力軸ギヤは、前記第2入力軸ギヤの一方であることである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明においては、第1ギヤセットの変速段の一方の第1入力軸ギヤが、入力軸の軸方向において第2ギヤセットの2つの第2入力軸ギヤの間に位置する。通常、異なるギヤセットは、軸方向において、一方のギヤとギヤとの間に他方のギヤが配置しない。よって、軸方向において、ギヤセットのギヤの間に別のギヤセットのギヤを位置させるため、軸方向の長さが短縮する。つまり、動力伝達装置の全長が短縮できる。
【0012】
請求項2に係る発明においては、回転動力が内燃機関及び/又は回転電機から供給可能であり、回転電機の回転動力を動力伝達装置の上流である入力軸又は動力伝達装置の下流である第1出力軸に供給可能である。回転動力供給元の切り替え及び回転電機の回転動力の供給する先の切り替えは、動力切替機構が行う。動力源として内燃機関に加えて回転電機も用いる所謂ハイブリッド車においても、異なる軸に配置されるギヤセットを軸方向で重ねることで、回転電機及び動力切替機構が追加されても軸方向への延長を抑制することができる。
【0013】
また、 第1ドリブンギヤ、第2ドリブンギヤ及び伝達ギヤは、軸方向において同じ位置に配置されるため、軸方向の長さが短縮する。
【0014】
請求項3に係る発明においては、車両の後進のためのリバースアイドラ軸が入力軸と平行に配置され、リバースアイドラギヤが第2ドリブンギヤと常時噛合する。そのため、第1ドリブンギヤ、第2ドリブンギヤ及び伝達ギヤと軸方向で同じ位置に配置され、軸方向への延長が抑制される。
【0015】
請求項4に係る発明においては、リバース変速段のリバース対応ギヤとして、第1ギヤセットの一方の第1入力軸ギヤを使用するため、軸方向でリバースギヤと第1ギヤセットの一方の変速段とが同じ位置になり、軸方向の長さが短縮する。
【0016】
請求項5に係る発明においては、第1ギヤセット及び第2ギヤセットの変速段とは異なる変速比である第3ギヤセットの変速段が、第2ギヤセットの一方の変速段と入力軸上のギヤを共用するため、軸方向の長さが短縮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の動力伝達装置11の構成を説明するスケルトン図である。
【図2】本実施形態の動力伝達装置11の構成の一部を断面図で表した説明図である。
【図3】本実施形態の動力伝達装置11の動作を説明するスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の代表的な実施形態を図1〜図3を参照して説明する。本実施形態に係る動力伝達装置は、車両に搭載される。
【0019】
(実施形態)
本実施形態の動力伝達装置11は、図1及び図2に示されるように、通常クラッチ1、モータ(回転電機)2、動力切替機構3、入力軸41、第1出力軸42、第2出力軸43、リバースアイドラ軸44、第1ギヤセット5、第2ギヤセット6、第3ギヤセット7及びリバースギヤセット8を有する。図2には、通常クラッチ1の図示が省略されている。
【0020】
通常クラッチ1は、動力源の1つである内燃機関(図示略)と後述する入力軸41との断続を行う部材である。
【0021】
入力軸41は、一端が通常クラッチ1と結合しており、他端は動力伝達装置11のケース(図示略)かケースに固定された部材に回転可能に枢支される。
【0022】
モータ2は、入力軸41を回転中心とするロータ21と、ロータ21の外周側にステータ22と、ロータ21と一体回転する出力部23とを有し、内燃機関とで通常クラッチ1を挟む位置に配置される。ステータ22は、動力伝達装置11のケースかケースに固定された部材に固定される。出力部23は、後述する動力切替機構3のスリーブ33と常時係合する。
【0023】
動力切替機構3は、軸方向においてモータ2側から、モータ入力ギヤ31及び伝達ギヤ32を有し、更に、モータ入力ギヤ31の外周側に位置するスリーブ33を有する。モータ入力ギヤ31は、入力軸41と一体回転し、外周側がスリーブ33の内周側と係合可能である。伝達ギヤ32は、入力軸41に対して遊転しており、後述する第1出力軸42と一体回転する第1ドリブンギヤ421と常時噛合する。そして、軸方向でモータ2側の外周の一部がスリーブ33の内周側と係合可能である。スリーブ33は、モータ2側の内周側がモータ2の出力部23と常時係合している状態で、入力軸41の軸方向に移動する。スリーブ33は軸方向移動することで、モータ入力ギヤ31及び/伝達ギヤ32と一体回転可能に係合する。動力切替機構3は、スリーブ33が出力部23とのみ係合している中立状態と、スリーブ33が出力部23及びモータ入力ギヤ31と係合している入力軸連結状態と、スリーブ33が出力部23及び伝達ギヤ32と係合している出力軸連結状態とを有する。図1においては、動力切替機構3は中立状態を示している。図3においては、動力切替機構3の入力軸連結状態と出力軸連結状態とを図示している。入力軸41より上側のスリーブ33で入力軸連結状態、入力軸41より下側のスリーブ33で出力軸連結状態を示している。
【0024】
第1出力軸42は、入力軸41と軸方向が平行になるように配置され、両端が動力伝達装置11のケースかケースに固定された部材に回転可能に枢支される。そして、軸方向で通常クラッチ1側に、一体回転する第1ドリブンギヤ421と第1出力軸出力ギヤ422とを有する。第1ドリブンギヤ421は、動力切替機構3の伝達ギヤ32と常時噛合する。第1出力軸出力ギヤ422は、第1ドリブンギヤ421より軸方向において通常クラッチ1側に位置し、動力伝達装置11を介して伝達された回転動力を車両の全車輪に伝達する差動機構のデフ軸9の最終ギヤ91と常時噛合する。
【0025】
第2出力軸43は、入力軸41と軸方向が平行になるように配置され、両端が動力伝達装置11のケースかケースに固定された部材に回転可能に枢支される。そして、軸方向で通常クラッチ1側に、一体回転する第2ドリブンギヤ431と第2出力軸出力ギヤ432とを有する。第2ドリブンギヤ431は、後述するリバースアイドラ軸44のリバースアイドラギヤ441と常時噛合する。第2出力軸出力ギヤ432は、第2ドリブンギヤ431より軸方向において通常クラッチ1側に位置し、最終ギヤ91と常時噛合する。
【0026】
リバースアイドラ軸44は、入力軸41と軸方向が平行になるように配置され、両端が動力伝達装置11のケースかケースに固定された部材に回転可能に枢支される。そして、軸方向で通常クラッチ1側に、一体回転するリバースアイドラギヤ441を有する。リバースアイドラギヤ441は、第2出力軸43の第2ドリブンギヤ431と常時噛合する。
【0027】
第1ギヤセット5は、2つの変速段とその2つの変速段のどちらかを選択する変速段選択装置52とを有する。変速段は、入力軸41に対して一体回転可能な第1入力軸ギヤと第1入力軸ギヤに常時噛合する第1出力軸42に対して遊転可能な第1出力軸ギヤとの組み合わせであり、軸方向で変速段選択装置52を挟んで2つ配置される。変速段はそれぞれ変速比が異なり、通常クラッチ1側の変速段は第1入力軸ギヤ411と第1出力軸ギヤ423との組み合わせであり、変速段選択装置52を挟んだもう一つの変速段は第1入力軸ギヤ412と第1出力軸ギヤ424との組み合わせである。変速段選択装置52は、軸方向において、第1出力軸ギヤ423と第1出力軸ギヤ424との間に位置し、第1出力軸42と一体回転するハブ53と、ハブ53の外周側に位置し、ハブ53と一体回転可能且つ軸方向に移動可能なスリーブ54とを有する。スリーブ54は、軸方向に移動し、第1出力軸ギヤ423又は第1出力軸ギヤ424に係合する。変速段選択装置52は、スリーブ54がどちらのギヤとも係合せず、どちらの変速段も選択されていない状態を中立状態と、第1出力軸ギヤ423と一体回転可能に係合している状態を第1速段選択状態と、第1出力軸ギヤ424と一体回転可能に係合している状態を第3速段選択状態とを有する。
【0028】
第2ギヤセット6は、2つの変速段とその2つの変速段のどちらかを選択する変速段選択装置62とを有する。変速段は、入力軸41に対して一体回転可能な第2入力軸ギヤと第2入力軸ギヤに常時噛合する第2出力軸43に対して遊転可能な第2出力軸ギヤとの組み合わせであり、軸方向で変速段選択装置62を挟んで2つ配置される。変速段はそれぞれ変速比が異なり、通常クラッチ1側の変速段は第2入力軸ギヤ413と第2出力軸ギヤ433との組み合わせであり、変速段選択装置62を挟んだもう1つの変速段は第2入力軸ギヤ414と第2出力軸ギヤ434との組み合わせである。変速段選択装置62は、軸方向において、第2出力軸ギヤ433と第2出力軸ギヤ434との間に位置し、第2出力軸43と一体回転するハブ63と、ハブ63の外周側に位置し、ハブ63と一体回転可能且つ軸方向に移動可能なスリーブ64とを有する。スリーブ64は、軸方向に移動し、第2出力軸ギヤ433又は第2出力軸ギヤ434に係合する。変速段選択装置62は、スリーブ64がどちらのギヤとも係合せず、どちらの変速段も選択されていない状態を中立状態と、第2出力軸ギヤ433と一体回転可能に係合している状態を第2速段選択状態と、第2出力軸ギヤ434と一体回転可能に係合している状態を第4速段選択状態とを有する。
【0029】
第1ギヤセット5の第3変速段の第1入力軸ギヤ412は、軸方向において第2ギヤセット6の第2入力軸ギヤ413と第2入力軸歯車414との間に位置する。
【0030】
第3ギヤセット7は、1つの変速段とその1つの変速段を選択するかしないかの変速段選択装置72とを有する。1つの変速段は、第2入力軸ギヤ414(第3入力軸ギヤ)と第2入力軸ギヤ414に常時噛合する第3出力軸ギヤ425との組み合わせで、第5速段である。変速段選択装置72は、軸方向において、第3出力軸ギヤ425のほうが通常クラッチ1側に位置し、第1出力軸42と一体回転可能なハブ73と、ハブ73の外周側に位置し、ハブ73と一体回転可能且つ軸方向に移動可能なスリーブ74とを有する。スリーブ74は、軸方向に移動し第3出力軸ギヤ425に係合する第5速段選択状態と、第3出力軸ギヤ425に係合しない、中立状態とを有する。
【0031】
第3ギヤセット7の第5速段の第2入力軸ギヤ414は、第2ギヤセット6の第4速段と共用している。つまり、第2入力軸ギヤ414は、第2出力軸ギヤ434と第3出力軸ギヤ425とに常時噛合している。
【0032】
リバースギヤセット8は、リバース変速段とそのリバース変速段を選択するかしないかの変速段選択装置82とを有する。リバース変速段は、第1入力軸ギヤ411(リバース対応ギヤ)と第1入力軸ギヤ411に常時噛合するリバースアイドラ軸44に対して遊転可能に設けられたリバースギヤ442との組み合わせで、車両の後進の変速段である。変速段選択装置82は、軸方向において、リバースギヤ442のほうが通常クラッチ1側に位置し、リバースアイドラ軸44と一体回転可能なハブ83と、ハブ83の外周側に位置し、ハブ83と一体回転可能且つ軸方向に移動可能なスリーブ84とを有する。スリーブ84は、軸方向に移動しリバースギヤ442に係合する後進変速段選択状態と、リバースギヤ442に係合しない中立状態とを有する。
【0033】
リバースギヤセット8の後進変速段の第1入力軸ギヤ441は、第1ギヤセット5の第1速段と共用している。つまり、第1入力軸ギヤ441は、第1出力軸ギヤ423とリバースギヤ442とに常時噛合している。
【0034】
次に、図1及び図2を参照しながら、動力伝達装置11の作用について説明する。
【0035】
本実施形態の動力伝達装置11は、内燃機関とモータ2の2つを動力源としており、内燃機関のみ、モータ2のみ、内燃機関及びモータ2の両方、で車両を走行させることができる。まず、内燃機関のみの場合は、通常クラッチ1を接続状態、動力切替機構3を中立状態とする。内燃機関の回転動力により入力軸41か回転し、選択されている変速段の変速比に変換される。モータ2のみの場合は、通常クラッチ1を切断状態、動力切替機構3を入力軸連結状態とする。モータ2の回転動力は、動力切替機構3及びモータ入力ギヤ31を介して入力軸41に伝達され、選択されている変速段の変速比に変換される。内燃機関及びモータ2の両方の場合は、通常クラッチ1を接続状態、動力切替機構3を入力軸連結状態とする。内燃機関の回転動力が入力軸41に伝達され、モータ2の回転動力も入力軸41に伝達される。
【0036】
次に、入力軸41に伝達された回転動力が、最終ギヤ91からデフ軸9に伝達される経路を変速段毎に説明する。
【0037】
第1速段の場合、第1ギヤセット5の変速段選択装置52を第1速段選択状態とし、その他のギヤセットの変速段選択装置を中立状態とする。第1出力軸ギヤ423は第1出力軸42と一体回転可能状態で、入力軸41に伝達された回転動力が第1入力軸ギヤ411及び第1出力軸ギヤ423を介して第1出力軸42に伝達される。第1出力軸42に伝達された回転動力は、第1出力軸出力ギヤ422から最終ギヤ91に伝達され、デフ軸9に到達する。
【0038】
第2速段の場合、第2ギヤセット6の変速段選択装置62を第2速段選択状態とし、その他のギヤセットの変速段選択装置を中立状態とする。第2出力軸ギヤ433は第2出力軸43と一体回転可能状態で、入力軸41に伝達された回転動力が第2入力軸ギヤ413及び第2出力軸ギヤ433を介して第2出力軸43に伝達される。第2出力軸43に伝達された回転動力は、第2出力軸出力ギヤ432から最終ギヤ91に伝達され、デフ軸9に到達する。
【0039】
第3速段の場合、第1ギヤセット5の変速段選択装置52を第3速段選択状態とし、その他のギヤセットの変速段選択装置を中立状態とする。第1出力軸ギヤ424は第1出力軸42と一体回転可能状態で、入力軸41に伝達された回転動力が第1入力軸ギヤ412及び第1出力軸ギヤ424を介して第1出力軸42に伝達される。第1出力軸42に伝達された回転動力は、第1出力軸出力ギヤ422から最終ギヤ91に伝達され、デフ軸9に到達する。
【0040】
第4速段の場合、第2ギヤセット6の変速段選択装置62を第4速段選択状態とし、その他のギヤセットの変速段選択装置を中立状態とする。第2出力軸ギヤ434は第2出力軸43と一体回転可能状態で、入力軸41に伝達された回転動力が第2入力軸ギヤ414及び第2出力軸ギヤ434を介して第2出力軸43に伝達される。第2出力軸43に伝達された回転動力は、第2出力軸出力ギヤ432から最終ギヤ91に伝達され、デフ軸9に到達する。
【0041】
第5速段の場合、第3ギヤセット7の変速段選択装置72を第5速段選択状態とし、その他のギヤセットの変速段選択装置を中立状態とする。第3出力軸ギヤ525は第1出力軸42と一体回転可能状態で、入力軸41に伝達された回転動力が第2入力軸ギヤ414及び第3出力軸ギヤ425を介して第1出力軸42に伝達される。第1出力軸42に伝達された回転動力は、第1出力軸出力ギヤ422から最終ギヤ91に伝達され、デフ軸9に到達する。
【0042】
後進変速段の場合、リバースギヤセット8の変速段選択装置82を後進変速段選択状態とし、その他のギヤセットの変速段選択装置を中立状態とする。リバースアイドラ軸44はリバースギヤ442と一体回転可能状態で、入力軸41に伝達された回転動力が第1入力軸ギヤ411及びリバースギヤ442を介してリバースアイドラ軸44に伝達される。リバースアイドラ軸44に伝達された回転動力は、リバースアイドラギヤ441から第2出力軸43に伝達し、第2出力軸43の第2出力軸出力ギヤ432から最終ギヤ91に伝達され、デフ軸9に到達する。
【0043】
また、本実施形態の動力伝達装置11は、モータ2のみを動力源とした場合に、上記している変速段の何れも選択しない状態、つまりモータ2の出力を入力軸41を介さずに出力軸側に伝達することで車両を走行させることが可能である。その場合、通常クラッチ1は切断状態、動力切替機構3は出力軸連結状態にする。モータ2の回転動力は、動力切替機構3と係合している伝達ギヤ32に伝達される。伝達ギヤ32は第1出力軸42の第1ドリブンギヤ421と常時噛合しているため、回転動力は第1ドリブンギヤ421を介して第1出力軸42を回転させ、第1出力軸出力ギヤ422から最終ギヤ91に伝達し、デフ軸9を回転させる。変速比の決まっている変速段を切り替える間、入力軸41に入力された回転動力は車輪側に伝達するのが途切れる。その際、モータ2の回転動力を第1出力軸42に直接伝達することで、車両の走行速度低下が抑制され、あるいは変速段の切り替えによる変速ショックが緩和される等、車両搭乗の快適性が向上する。
【0044】
その他、本実施形態の動力伝達装置11は、内燃機関が停止している場合に、動力切替装置3を入力軸連結状態、通常クラッチ1を接続状態とすることで、モータ2の回転動力により内燃機関の始動も可能である。内燃機関を始動するためのスタータを非搭載として、車両の軽量化も図れる。
【0045】
本実施形態の動力伝達装置11によれば、第1ギヤセット5の第3速段の第1入力軸ギヤ412が、入力軸41の軸方向において第2ギヤセット6の2つの第2入力軸ギヤ413と第2入力軸ギヤ414とに間に位置するため、動力伝達装置11の軸方向の長さが短縮する。つまり、動力伝達装置11の全長が短縮する。
【0046】
本実施形態の動力伝達装置11は、回転動力を内燃機関とモータ2の2種類から供給されており、モータ2の回転動力を入力軸41又は入力軸41を介さず第1出力軸42に供給することが動力切替機構3を有する。このような構成において、モータ2及び動力の切り替えも行う動力切替装置3を配置すると、通常、軸方向に延長することになるが、異なる軸に配置されるギヤセット5,6を軸方向で重ねることで、軸方向への延長を抑制することができる。
【0047】
また、 第1ドリブンギヤ421、第2ドリブンギヤ431及び伝達ギヤ32を軸方向において同じ位置に配置するため、軸方向の長さが短縮する。
【0048】
そして、本実施形態の動力伝達装置11は、車両の後進のためのリバースアイドラ軸44が入力軸41と平行に配置され、リバースアイドラギヤ441が第2ドリブンギヤ431と常時噛合するため、第1ドリブンギヤ421、第2ドリブンギヤ431及び伝達ギヤ32と軸方向で同じ位置に配置される。よって、軸方向への延長が抑制される。
【0049】
更に、本実施形態の動力伝達装置11は、リバース変速段のリバース対応ギヤ442として、第1ギヤセット5の第1入力軸ギヤ411を使用する。そのため、軸方向でリバース対応ギヤ442と第1ギヤセット5の一方の変速段とが同じ位置になり、軸方向の長さが短縮する。
【0050】
その他、本実施形態の動力伝達装置11は、第1ギヤセット5及び第2ギヤセット6の変速段とは異なる変速比である第3ギヤセット7の第5速段が、第2ギヤセット6の第4速段の第2入力軸ギヤ414を使用する。つまり、第2ギヤセット6と第3ギヤセット7の変速段が入力軸41上のギヤを共用する。よって、変速段が増加したとし(変速段が多く)ても、ギヤを共用するため、軸方向の長さが短縮する。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1ギヤセット5〜第3ギヤセット7の各変速段の組み合わせは、上記した以外も可能である。
【符号の説明】
【0052】
1:通常クラッチ、
11:動力伝達装置、
2:モータ(回転電機)、21:ロータ、22:ステータ、23:出力部、
3:動力切替機構、31:モータ入力ギヤ、32:伝達ギヤ、33:スリーブ
41:入力軸、411,412:第1入力軸ギヤ、413,414:第2入力軸ギヤ、
42:第1出力軸、421:第1ドリブンギヤ、422:第1出力軸出力ギヤ、
423,424:第1出力軸ギヤ、424:第1出力軸ギヤ、
43:第2出力軸、431:第2ドリブンギヤ、432:第2出力軸出力ギヤ、
433,434:第2出力軸ギヤ、
44:リバースアイドラ軸、441:リバースアイドラギヤ、442:リバースギヤ、
5:第1ギヤセット、52:変速段選択装置、53:ハブ、54:スリーブ、
6:第2ギヤセット、62:変速段選択装置、63:ハブ、64:スリーブ、
7:第3ギヤセット、72:変速段選択装置、73:ハブ、84:スリーブ、
8:リバースギヤセット、82:変速段選択装置、83:ハブ、84:スリーブ、
9:デフ軸、91:最終ギヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動力が入力される入力軸と、
前記回転動力が前記入力軸を介して入力され、前記入力軸の軸方向と軸方向が平行に配置される第1出力軸及び第2出力軸と、
前記入力軸に対して一体回転可能で軸方向に並設される2つの第1入力軸ギヤと前記2つの第1入力軸ギヤの各々に常時噛合するように前記第1出力軸に対して遊転可能に設けられた2つの第1出力軸ギヤとを有する変速比の異なる2つの変速段と、前記第1出力軸に対して一体回転可能で前記2つの第1出力軸ギヤの間に位置し前記2つの第1出力軸ギヤのどちらかに一体回転可能に連結する変速段選択状態と前記2つの第1出力軸ギヤのどちらにも一体回転可能に連結しない中立状態とを有する変速段選択装置と、を持つ第1ギヤセットと、
前記入力軸に対して一体回転可能で軸方向に並設される2つの第2入力軸ギヤと前記2つの第2入力軸ギヤの各々に常時噛合するように前記第2出力軸に対して遊転可能に設けられた2つの第2出力軸ギヤを有する変速比の異なる2つの変速段と、前記第2出力軸に対して一体回転可能で前記2つの第2出力軸ギヤの間に位置し前記2つの第2出力軸ギヤのどちらかに一体回転可能に連結する変速段選択状態と前記2つの第2出力軸ギヤのどちらにも一体回転可能に連結しない中立状態とを有する変速段選択装置と、を持つ第2ギヤセットと、
を有し、
前記第1ギヤセットの前記変速段の一方の前記第1入力軸ギヤは、前記入力軸の軸方向において前記第2ギヤセットの前記2つの第2入力軸ギヤの間に位置することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
前記回転動力を内燃機関及び/又は回転電機から供給可能に切り替えでき、且つ前記回転電機から供給される前記回転電機を前記入力軸又は前記第1出力軸に切り替えできる動力切替機構を有し、
前記第1出力軸は一体回転可能な第1ドリブンギヤを有し、
前記第2出力軸は一体回転可能で前記第1ドリブンギヤと軸方向で同じ位置に配置される第2ドリブンギヤを有し、
前記入力軸は遊転可能且つ前記第1ドリブンギヤ及び前記第2ドリブンギヤと軸方向で同じ位置に配置され、前記動力切替機構により前記回転電機からの前記回転動力が入力され、前記第1ドリブンギヤと常時噛合する伝達ギヤを有する請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記入力軸の軸方向と軸方向が平行に配置されるリバースアイドラ軸と、
前記入力軸に対して一体回転可能なリバース対応ギヤと前記リバース対応ギヤに常時噛合するように前記リバースアイドラ軸に対して遊転可能に設けられたリバースギヤとを有するリバース変速段と、前記リバースアイドラ軸に対して軸方向に移動可能で前記リバースギヤに一体回転可能に連結する変速段選択状態と前記リバースアイドラ軸に対して一体回転可能に連結しない中立状態とを有する変速段選択装置と、をもつリバースギヤセットと、を有し、
前記リバースアイドラ軸は一体回転可能で前記第1ドリブンギヤに常時噛合するリバースアイドラギヤを有する請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記リバース対応ギヤは、前記第1入力軸ギヤの一方である請求項3に記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記入力軸に対して一体回転可能な1つ第3入力軸ギヤと前記1つの第3入力軸ギヤに常時噛合するように前記第1出力軸に対して遊転可能に設けられた1つの第3出力軸ギヤとを有する前記第1及び第2ギヤセットの変速段と変速比の異なる変速段と、前記第1出力軸に対して軸方向に移動可能で前記1つの第3出力軸ギヤに対して一体回転可能に連結する変速段選択状態と前記1つの第3出力軸ギヤに対して一体回転可能に連結しない中立状態とを有する変速段選択装置と、を持つ第3ギヤセットを有し、
前記第3入力軸ギヤは、前記第2入力軸ギヤの一方である請求項1〜4の何れか1項に記載の動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−112130(P2011−112130A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268300(P2009−268300)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】