説明

動圧軸受装置およびファン

【課題】冷却ファンの高速回転化に伴う大きな振動が電子機器内の他の装置に影響を与えないようにする
【解決手段】動圧軸受装置は、軸受部44と前記軸受部に挿入され、前記軸受部に対して中心軸を中心として相対回転するシャフト41と前記軸受部の上側にて前記シャフトに固定され、外周面に直接的または1つ以上の部材を介してインペラが取付可能な略環状のブッシング25と前記軸受部の内周面と前記シャフトの外周面との間のラジアル間隙に存在する潤滑油によって構成され、前記潤滑油に流体動圧を発生させるラジアル動圧軸受部と、前記ラジアル動圧軸受部の上側にて、前記軸受部の内周面と前記シャフトの外周面とによって構成されるシール間隙55に、前記潤滑油の界面が位置するシール部とを備え、前記軸受部の上面と前記ブッシングの下面との間に、径方向に広がる微小な横間隙501が構成され、前記シール間隙が、前記横間隙を介して外部空間と連絡する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに搭載される動圧軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軸流ファンや遠心ファン等の様々なファンにおいて、例えば、特開2011−78224号公報に開示されるように、軸受として玉軸受が採用されている。また、特開2000−14080号公報のファンでは、銅系材料の粉末を焼結した含油軸受が採用されている。
【0003】
特開2005−321089号公報では、ディスク駆動装置のスピンドルモータに利用される動圧軸受装置が開示される。動圧軸受装置は、ハウジングと、軸受スリーブと、軸部材と、リング状のシール部材と、を備える。軸受スリーブは、ハウジングに固定される。軸部材は、軸受スリーブ内に配置される。シール部材は、軸受スリーブの上側にて軸部材に固定される。動圧軸受装置では、軸受スリーブの内周面と軸部材の外周面との間にラジアル軸受部が設けられる。ラジアル軸受部により、軸部材がラジアル方向に非接触支持される。軸受スリーブの上側端面とシール部材の下側端面との間に第1スラスト軸受部が設けられる。軸受スリーブの下側端面と軸部材の下端に設けられたフランジ部との間に第2スラスト軸受部が設けられる。第1スラスト軸受部および第2スラスト軸受部のそれぞれにより、シール部材およびフランジ部がスラスト方向に非接触支持される。シール部材の外周面とハウジングの上端部内周面との間にシール空間が形成され、潤滑油の油面が、シール空間の範囲内に常に維持される。
【0004】
特開2000−175405号公報に開示されるハードディスクドライブ装置のスピンドルモータは、回転磁石が取り付けられたハブと、スリーブを介して固定子コイルが取り付けられたベースと、を備える。ハブの外縁部は、ベースに近接し、ハブとベースとの間にラビリンスが形成される。これにより、スピンドルモータ内に発生したオイルミスト等の飛散が防止され、高性能のハードディスクドライブ装置が実現される。特開2004−248481号公報に開示されるスピンドルモータでは、ハブが、下方に向かって突出する円筒状の突出部、を備える。ハブの突出部よりも内側の面と軸受スリーブの上面との間の空間、突出部の内周面と軸受スリーブの外周面との間の空間、および、突出部の下面と軸受スリーブの周囲に設けられたフランジとの間の空間により、ラビリンスシールが構成される。
【特許文献1】特開2011−78224号公報
【特許文献2】特開2000−14080号公報
【特許文献3】特開2005−321089号公報
【特許文献4】特開2000−175405号公報
【特許文献5】特開2004−248481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、サーバ等の電子機器の高性能化に伴い、電子機器からの発熱量が増大している。このため、電子機器内の冷却ファンを高速回転して風量を増大することが求められる。しかし、冷却ファンの高速回転化に伴い、冷却ファンには大きな振動が発生し、電子機器内の他の装置に影響を与えてしまう。例えば、冷却ファンの振動により、ディスク駆動装置の読み出しや書き込みにエラーが発生する。
【0006】
本発明は、ファンの振動低減に適した構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な第一の側面に係る動圧軸受装置は、軸受部と、前記軸受部に挿入され、前記軸受部に対して中心軸を中心として相対回転するシャフトと、前記軸受部の上側にて前記シャフトに固定され、外周面に直接的または1つ以上の部材を介してインペラが取付可能な略環状のブッシングと、前記軸受部の内周面、前記シャフトの外周面、および、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面との間のラジアル間隙に存在する潤滑油によって構成され、前記潤滑油に流体動圧を発生させるラジアル動圧軸受部と、前記ラジアル動圧軸受部の上側にて、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面とによって構成されるシール間隙に、前記潤滑油の界面が位置するシール部と、を備え、前記軸受部の上面と前記ブッシングの下面との間に前記中心軸に垂直な方向に広がる微小な横間隙が構成され、前記シール間隙が、前記横間隙を介して外部空間と連絡する。
【0008】
本発明の例示的な第二の側面に係る動圧軸受装置は、軸受部と、前記軸受部に挿入され、前記軸受部に対して中心軸を中心として相対回転するシャフトと、前記軸受部の上側にて前記シャフトに固定され、外周面に直接的または1つ以上の部材を介してインペラが取付可能な略環状のブッシングと、前記軸受部の内周面、前記シャフトの外周面、および、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面との間のラジアル間隙に存在する潤滑油によって構成され、前記潤滑油に流体動圧を発生させるラジアル動圧軸受部と、前記ラジアル動圧軸受部の上側にて、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面とによって構成されるシール間隙に、前記潤滑油の界面が位置するシール部と、を備え、前記軸受部の上面と前記ブッシングの下面との間に前記中心軸に垂直な方向に広がる横間隙が構成され、前記軸受部の周面と前記ブッシングの周面との間に、前記中心軸を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙が構成され、前記縦間隙が、前記横間隙の径方向外側の端部と連接され、前記シール間隙が、前記横間隙および前記縦間隙を介して外部空間と連絡する。
【0009】
本発明の例示的な第三の側面に係る動圧軸受装置は、軸受部と、前記軸受部に挿入され、インペラが直接的または1つ以上の部材を介して取り付けられる予定の取付面を外周面に有し、前記軸受部に対して中心軸を中心として相対回転するシャフトと、前記軸受部の内周面、前記シャフトの外周面、および、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面との間のラジアル間隙に存在する潤滑油によって構成され、前記潤滑油に流体動圧を発生させるラジアル動圧軸受部と、前記ラジアル動圧軸受部の上側にて、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面とによって構成されるシール間隙に、前記潤滑油の界面が位置するシール部と、軸方向において、前記シール部と前記取付面との間にて前記シャフトに固定され、前記シール間隙の開口よりも径方向外側まで広がる環状の環状部材と、を備え、前記軸受部の上面と前記環状部材の下面との間に径方向に広がる微小な横間隙が構成され、前記シール間隙が、前記横間隙を介して外部空間と連絡する。
【0010】
本発明の例示的な第四の側面に係る動圧軸受装置は、軸受部と、前記軸受部に挿入され、インペラが直接的または1つ以上の部材を介して取り付けられる予定の取付面を外周面に有し、前記軸受部に対して中心軸を中心として相対回転するシャフトと、前記軸受部の内周面、前記シャフトの外周面、および、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面との間のラジアル間隙に存在する潤滑油によって構成され、前記潤滑油に流体動圧を発生させるラジアル動圧軸受部と、前記ラジアル動圧軸受部の上側にて、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面とによって構成されるシール間隙に、前記潤滑油の界面が位置するシール部と、前記軸受部の上部に固定される環状の環状部材と、を備え、前記シャフトの前記外周面と前記環状部材の内周面との間に、軸方向に延びる微小な縦間隙が構成され、前記縦間隙の径方向の最小幅が、前記シール間隙の開口の径方向の最大幅よりも小さく、前記シール間隙が、前記縦間隙を介して外部空間と連絡する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ファンの振動低減に適した構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、一の実施形態に係るファンの断面図である。
【図2】図2は、軸受機構の断面図である。
【図3】図3は、軸受機構の断面図である。
【図4】図4は、軸受機構の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】図5は、軸受機構の一部を拡大して示す断面図である。
【図6】図6は、軸受部の断面図である。
【図7】図7は、軸受部の底面図である。
【図8】図8は、スラストキャップの平面図である。
【図9】図9は、ファンに発生する振動のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】図10は、ファンに発生する振動のシミュレーション結果を示す図である。
【図11】図11は、ファンに発生する振動のシミュレーション結果を示す図である。
【図12】図12は、ファンに発生する振動のシミュレーション結果を示す図である。
【図13】図13は、比較例に係るファンに発生する振動のシミュレーション結果を示す図である。
【図14】図14は、軸受機構の他の例を示す断面図である。
【図15】図15は、軸受機構の一部を示す断面図である。
【図16】図16は、ファンの他の例を示す断面図である。
【図17】図17は、ブッシングとロータホルダとの固定構造を示す図である。
【図18】図18は、ブッシングとロータホルダとの固定構造を示す図である。
【図19】図19は、ラビリンス構造の他の例を示す図である。
【図20】図20は、ラビリンス構造の他の例を示す図である。
【図21】図21は、軸受機構のさらに他の例を示す断面図である。
【図22】図22は、軸受機構のさらに他の例を示す断面図である。
【図23】図23は、軸受機構のさらに他の例を示す断面図である。
【図24】図24は、軸受機構のさらに他の例を示す断面図である。
【図25】図25は、他の例に係るファンの断面図である。
【図26】図26は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図27】図27は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図28】図28は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図29】図29は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図30】図30は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図31】図31は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図32】図32は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図33】図33は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図34】図34は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図35】図35は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図36】図36は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図37】図37は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図38】図38は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【図39】図39は、さらに他の例に係るファンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、モータの中心軸方向における図1の上側を単に「上側」と呼び、下側を単に「下側」と呼ぶ。なお、上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。また、中心軸に平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0014】
図1は、本発明の一の実施形態に係る軸流ファン1の断面図である。以下、軸流ファン1を単に「ファン1」という。ファン1は、モータ11と、インペラ12と、ハウジング13と、複数の支持リブ14と、ベース部15と、を備える。ハウジング13は、インペラ12の外周を囲む。ハウジング13は、支持リブ14を介してベース部15に接続される。複数の支持リブ14は、周方向に配列される。ベース部15は、支持リブ14と一繋がりの部材である。ベース部15上には、モータ11が固定される。
【0015】
インペラ12は樹脂製であり、有蓋略円筒状のカップ121と、複数の翼122と、を有する。カップ121は、モータ11の外側を覆う。カップ121は、後述のモータ11の回転部2の一部を兼ねている。カップ121は、天面部123と、側壁部124と、を有する。天面部123は、中心軸J1に垂直に広がる。側壁部124は、天面部123の外縁部から下方に延びる。複数の翼122は、中心軸J1を中心として側壁部124の外周面から径方向外方に延びる。カップ121および複数の翼122は樹脂の射出成型により一繋がりの部材として構成される。
【0016】
天面部123の上面には、穴部125が設けられる。穴部125には錘129が配置される。錘129は、タングステン等の比重が大きい金属が含有された接着剤である。側壁部124の下端部124aの径方向内側においても、錘129が配置される。インペラ12の上部および下部に錘129が配置されることにより、インペラ12およびモータ11の回転部2のアンバランスを低減することができる。このように、二面バランス修正が行われることにより、インペラ12およびモータ11の重心の中心軸J1からのずれによるファン1の振動を抑制することができる。以下、錘129が配置される側壁部124の下端部124aおよび穴部125を「バランス修正部124a,125」という。
【0017】
ファン1では、モータ11によりインペラ12が中心軸J1を中心として回転されることにより、上方から下方に向かってエアの流れが発生する。
【0018】
モータ11は、アウタロータ型の3相モータである。モータ11は、回転部2と、静止部3と、軸受機構4と、を有する。回転部2は、略円筒状の金属製のヨーク21と、ロータマグネット22と、カップ121と、を有する。ヨーク21は、カップ121の内側に固定される。ロータマグネット22は、ヨーク21の内周面に固定される。軸受機構4は、潤滑油46の流体動圧を発生する動圧軸受装置であり、回転部2は、軸受機構4を介して中心軸J1を中心に、静止部3に対して回転可能に支持される。
【0019】
静止部3は、略円筒状の軸受保持部31と、ステータ32と、回路基板33と、を有する。軸受保持部31の下部は、ベース部15の中央の孔部を規定する内周面に固定される。ステータ32は、ベース部15の上側にて、軸受保持部31の外周面に固定される。ステータ32は、ロータマグネット22の径方向内側に位置する。ステータ32は、ステータコア321と、ステータコア321上に形成された複数のコイル322と、を有する。ステータコア321は、積層鋼板にて形成される。ステータ32の下部には、回路基板33が固定される。回路基板33に挿入された図示省略のピンにコイル322からの引出線が取り付けられることにより、ステータ32と回路基板33とが電気的に接続される。コイル322の引出線は、直接回路基板に接続されても良い。モータ11の駆動時には、ロータマグネット22とステータ32との間にて回転力が発生する。
【0020】
回路基板33の上面には、環状の磁性部材331が配置される。磁性部材331は、ロータマグネット22の下方に位置する。また、モータ11の静止時に、軸方向において、ステータ32の磁気中心の位置が、ロータマグネット22の磁気中心の位置よりも下方に位置する。ファン1では、ロータマグネット22とステータ32との間およびロータマグネット22と磁性部材331との間にて、ロータマグネット22を下方に吸引する磁気吸引力が生じる。これにより、ファン1の回転時に、インペラ12が、静止部3に対して浮上する力を低減することができる。
【0021】
図2は、軸受機構4を示す断面図である。軸受機構4は、シャフト41と、環状のスラストプレート42と、軸受部44と、キャップ部材であるスラストキャップ45と、略環状のブッシング25と、潤滑油46と、を有する。ブッシング25は、金属にて形成される。軸受部44の上側にて、シャフト41の上部にブッシング25の内周面が圧入にて固定される。ブッシング25の外径は、軸受部44の外径よりも小さい。図1に示すように、インペラ12は、ブッシング25の外周面に固定される。すなわち、シャフト41の上部には、ブッシング25を介してインペラ12の天面部123が間接的に固定される。インペラ12とブッシング25とは、インサート成型により結合されてもよい。この場合、ブッシング25の外径は、軸受部44の外径よりも大きい。そのため、図2のような軸受機構4を、金型内に配置した場合にブッシング25の外周面に樹脂が位置することで、金型を複雑にすることなく、インペラ12をブッシング25に固定しつつ、成型することができる。インペラ12がブッシング25に直接固定されることにより、ファン1の構造を簡素化し、製造コストを削減することができる。また、金型内でブッシング25が精度良く中心軸と略同軸に配置され、その周囲にインペラ12が形成されるため、インペラ12及びブッシング25の中心軸J1との同軸度が小さくなる。スラストプレート42は、シャフト41の下部に固定される、軸受部44と軸方向に対向するスラスト部である。スラストプレート42は、シャフト41の下端から径方向外方に広がる。軸受部44は、ステータ32の径方向内側に配置される。なお、シャフト41およびスラストプレート42は、回転部2の一部でもある。軸受部44およびスラストキャップ45は、静止部3の一部でもある。以下の他の形態においても同様である。
【0022】
図3は、軸受機構4の下部近傍を拡大して示す断面図である。スラストプレート42の内周面には、軸方向に延びる溝部421が設けられ、溝部421とシャフト41の外周面411との間にて、連通孔421aが構成される。これにより、スラストプレート42の上側と下側の潤滑油46の内圧の差を低減できる。図4に示すように、スラストプレート42の上面は、外縁部に位置する傾斜面422aを有する。傾斜面422aは、径方向外方に向かって下方へと傾斜する。スラストプレート42の上面のうち、傾斜面422aの径方向内側に位置する面は、中心軸J1に垂直な、シャフト41を囲む環状の面である。以下、当該面を「上環状面422」という。スラストプレート42の下面の外縁部には、径方向外方に向かって上方へと傾斜する傾斜面423aが設けられる。スラストプレート42の下面のうち傾斜面423aの径方向内側に位置する面は、中心軸J1に垂直な、環状の面である。以下、当該面を「下環状面423」という。
【0023】
図3に示す軸受部44は、ステンレス鋼やりん青銅等の金属により形成された1つのスリーブである。軸受部44は、軸受保持部31の内周面に固定される。軸受部44には、シャフト41が挿入される。軸受部44は、内周面441の下部から、下方に向かって拡径する第1段差部442と、第1段差部442と軸受部44の下端部444との間にて下方に向かって拡径する第2段差部443と、を有する。スラストキャップ45は、下端部444の内側に配置され、スラストキャップ45の外周面は下端部444の内周面に固定される。スラストキャップ45はスラストプレート42の下方にて軸受部44の下部を閉塞する。スラストキャップ45の上面の外縁部は、第2段差部443の下面443aと軸方向に接触する。スラストプレート42は、第1段差部442と第2段差部443との間に配置される。
【0024】
軸受機構4では、軸受部44の内周面441とシャフト41の外周面411との間にラジアル間隙51が構成される。スラストプレート42の上環状面422と上環状面422に軸方向に対向する第1段差部442の下面442aとの間に間隙52が構成される。以下、間隙52を「第1下部スラスト間隙52」という。スラストプレート42の下環状面423とスラストキャップ45の上面451とが軸方向に対向し、これらの面の間に間隙53が構成される。以下、間隙53を「第2下部スラスト間隙53」という。第1下部スラスト間隙52および第2下部スラスト間隙53の軸方向における幅の和は、10μm以上40μm以下である。スラストプレート42の外周面と軸受部44の第1段差部442を構成する内周面との間に間隙54が構成される。以下、間隙54を「側部間隙54」という。
【0025】
図5は、軸受部44の上部近傍を拡大して示す図である。軸受部44の内周面441の上部は、第1傾斜面441aと、第2傾斜面441bと、を有する。第1傾斜面441aは、軸受部44の上面から下方に向かって径方向内方へと傾斜する。換言すれば、第1傾斜面441aは、直径が上方に向かって漸次増大する。第2傾斜面441bは、第1傾斜面441aの下端から下方に向かって径方向内方へと傾斜する。第1傾斜面441aと中心軸J1とのなす角は、第2傾斜面441bと中心軸J1とのなす角よりも大きい。第1傾斜面441aと第2傾斜面441bとの境界は、第1傾斜面441aの上端とシャフト41の外周面411との間の径方向中間位置よりも径方向内側に位置する。
【0026】
第1傾斜面441aとシャフト41の外周面411との間には、上方に向かって径方向の幅が漸次増大する1つのシール間隙55が構成される。シール間隙55は、中心軸J1を中心とする環状である。シール間隙55にて、毛管現象を利用して潤滑油46を保持するシール部55aが構成される。また、シール間隙55は、多くの潤滑油46を保持するオイルバッファとしての役割を果たす。モータ11では、シール間隙55、図3に示すラジアル間隙51、第1下部スラスト間隙52、側部間隙54、および、第2下部スラスト間隙53が互いに繋がった1つの袋構造5をなし、袋構造5に潤滑油46が連続して存在する。袋構造5では、図5に示すシール間隙55のみに潤滑油46の界面が位置する。
【0027】
シャフト41の上部に固定されたブッシング25の下面と軸受部44の上面との間には中心軸J1に垂直な径方向に広がる微小な横間隙501が構成される。横間隙501の軸方向の幅は、軸受機構4内への埃の進入を防止できる程度に微小であればよく、好ましくは、横間隙501の軸方向の幅は、200μm以下である。より好ましくは、横間隙501の軸方向の幅は、100μm以下である。ブッシング25の外周面と軸受保持部31の内周面との間には、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙502が構成される。縦間隙502は、横間隙501の径方向外側の端部に連接する。ファン1では、軸受機構4が組み立てられることにより、横間隙501が構成され、軸受機構4が軸受保持部31に取り付けられることにより、縦間隙502が構成される。シール間隙55は、横間隙501および縦間隙502を介して外部空間に連絡する。ここでの外部空間とは、図1のステータ32の上方の空間を指す。
【0028】
横間隙501の軸方向の幅および縦間隙502の径方向の幅は、いずれもシール間隙55の開口の径方向の幅よりも小さい。横間隙501の幅および縦間隙502の幅とは、正確には、それぞれの最小幅を指す。シール間隙55の開口の幅は、シール間隙55の最大幅に等しい。シール間隙55の最大幅とは、シール間隙55において、潤滑油が保持可能な領域における最大幅を意味する。横間隙501および縦間隙502は、シール間隙55の開口の幅よりも小さいため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが構成される。横間隙501および縦間隙502が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することが抑制される。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。換言すれば、横間隙501および縦間隙502によりラビリンス構造が構成される。
【0029】
これにより、ファン1の寿命を向上することができる。また、ブッシング25を利用してラビリンス構造を構成するため、回転部2の構造が複雑になることもない。ブッシング25および軸受部44が金属製であることから、横間隙501を精度よく設けることができる。また、静電気によるブッシング25への埃の付着やラビリンス構造内部への埃の進入も抑制される。なお、高精度に成形することができるのであれば、ブッシング25は金属以外の材料により成形されてもよい。
【0030】
図6は軸受部44の縦断面図である。軸受部44の内周面441の上部および下部には、ヘリングボーン形状の第1ラジアル動圧溝列711および第2ラジアル動圧溝列712が設けられる。なお、軸受部44の外周面に設けられた微小凹部は、軸方向において、第1ラジアル動圧溝列711および第2ラジアル動圧溝列712の間に位置する。図3に示すラジアル間隙51の上部では、第1ラジアル動圧溝列711により、潤滑油46に対してラジアル方向に流体動圧を発生させる上ラジアル動圧軸受部681が構成される。ラジアル間隙51の下部では、第2ラジアル動圧溝列712により、下ラジアル動圧軸受部682が構成される。以下、上ラジアル動圧軸受部681および下ラジアル動圧軸受部682をまとめて「ラジアル動圧軸受部68」という。ラジアル動圧軸受部68は、軸受部44の内周面441、シャフト41の外周面411、および、ラジアル間隙51に存在する潤滑油46により構成される。
【0031】
図5に示すシール間隙55は、ラジアル動圧軸受部68よりも上方に位置し、ラジアル動圧軸受部68と連続する。また、軸方向において、ラジアル動圧軸受部68は、図1の2つのバランス修正部124a,125の間に位置する。また、径方向において、上ラジアル動圧軸受部681は、モータ11およびインペラ12の重心と重なる。
【0032】
図7は軸受部44の底面図である。第1段差部442の下面442aには、ヘリングボーン形状の第1スラスト動圧溝列721が設けられる。図8は、スラストキャップ45の平面図である。スラストキャップ45の上面451、すなわち、図3の袋構造5の底部の上面には、ヘリングボーン形状の第2スラスト動圧溝列722が設けられる。図3に示す第1下部スラスト間隙52において、第1スラスト動圧溝列721により潤滑油46に対してアキシャル方向の流体動圧を発生させる第1下スラスト動圧軸受部691が構成される。また、第2下部スラスト間隙53において、第2スラスト動圧溝列722により第2下スラスト動圧軸受部692が構成される。
【0033】
モータ11の駆動時には、ラジアル動圧軸受部68によりシャフト41がラジアル方向に支持される。第1下スラスト動圧軸受部691および第2下スラスト動圧軸受部692により、袋構造5の底部の上方に存在するスラストプレート42がスラスト方向に支持される。その結果、図1の回転部2およびインペラ12が静止部3に対して中心軸J1を中心として回転可能に支持される。モータ11の駆動時には、潤滑油46が、図3に示す第1下部スラスト間隙52、側部間隙54、第2下部スラスト間隙53および連通孔421aを循環する。また、図4に示すように、スラストプレート42の上環状面422の外縁部に、傾斜面422aが設けられるため、シャフト41が傾いた場合に、スラストプレート42が軸受部44の第1段差部442の下面442aに強く接触することが防止される。
【0034】
モータ11では、第1下スラスト動圧軸受部691および第2下スラスト動圧軸受部692が設けられることにより、インペラ12の回転時における静止部3に対する回転部2の軸方向の位置を安定させることができる。これにより、軸方向の幅の狭い横間隙501を容易に設計することができる。なお、スラストプレート42とスラストキャップ45とを接触させた場合であってもブッシング25の下面と軸受部44の上面とが接触しないように横間隙501の幅が設計される。
【0035】
図6に示すように、第2傾斜面441bの下部には、第1ラジアル動圧溝列711の一部が存在する。ファン1の駆動時に、図5に示すシャフト41が僅かに傾斜すると、シャフト41の外周面411における第2傾斜面441bに近づく部位と、第2傾斜面441bの当該部位に対応する部位との間の間隙56において、第1ラジアル動圧溝列711による流体動圧が発生する。その結果、シャフト41が第2傾斜面441bにより支持される。このように、回転部2の回転時にシャフト41が傾斜した場合、シール間隙55の下側に隣接した間隙56において、シャフト41の外周面411に第2傾斜面441bが沿うことにより、シャフト41が軸受部44の上部に強く接触することが防止される。
【0036】
図9は、ラジアル間隙51の径方向の幅を3μmとした場合におけるファン1に発生する振動のシミュレーション結果である。横軸に振動の周波数を示し、縦軸に振動の各周波数成分の振幅を示している。図10ないし図12は、ラジアル間隙51を4μm、5μm、6μmとした場合におけるファン1に発生する振動のシミュレーション結果である。図13は、玉軸受を有するモータが搭載された比較例のファンに発生する振動のシミュレーション結果である。
【0037】
図13の曲線90に示すように、玉軸受を有するファンに発生する振動では、750Hz〜1250Hzの範囲に複数のピークが存在する。図13では、右側のピークから順に符号901〜904を付している。これに対し、ラジアル間隙の幅が3μmおよび4μmの軸受機構4では、図9および図10に示すように、図13のピーク901〜904よりも、これらに対応するピーク911〜914が低いことが判る。さらに、ラジアル間隙51の幅が5μmおよび6μmの軸受機構4では、図11および図12に示すように、図13の右側および左側に位置する2つのピーク901,904に対応する位置において、ピークが存在しないことが判る。また、残りの2つのピーク902,903よりも、これらに対応するピーク912,913の高さが、半分以下であることが判る。
【0038】
以上のように、ファン1では、シャフト41と軸受部44との間の潤滑油46による、いわゆる、ダンパー効果により、玉軸受が用いられる従来のファンに比べて振動を低減することができる。特に、ラジアル間隙51の径方向の幅を5μm以上とすることにより、振動を十分に低減することができる。ラジアル間隙51の径方向の幅は、ラジアル間隙51にて十分に流体動圧を発生させるために20μm以下である。
【0039】
以上、ファン1について説明したが、ファン1に流体動圧軸受機構である軸受機構4が利用されることにより、ファン1の振動を低減することができる。その結果、ファン1の消費電力を抑えることができる。また、ブッシング25を利用したラビリンス構造により潤滑油46の蒸発が抑制されるため容易に長寿命化が実現され、ファン1の振動低減に適した構造が得られる。横間隙501が設けられることにより、軸受機構4とファン1の他の部品との取り付け時に、軸受機構4内に埃が進入することが防止される。以下の実施形態においても同様である。その結果、過度に清浄な施設を利用することなく、ファン1を組み立てることができる。また、軸受機構4を施設内へと輸送する際にも埃が進入することが防止される。組み立て後には、縦間隙502が設けられるため、横間隙501および縦間隙502により、埃が軸受機構4内に進入することが防止される。
【0040】
シール部が軸受部の上部および下部に設けられる流体動圧軸受機構の場合、シール部間に圧力差が生じることによる潤滑油46の漏出を防止するために、高度な設計が必要となる。これに対し、モータ11では、軸受機構4が、袋構造5をなし、袋構造5に潤滑油46が連続して存在する。すなわち、モータ11の軸受機構4は、シール部55aが1箇所のみである、いわゆる、フルフィル構造である。そのため、潤滑油46の漏出を容易に防止することができる。また、シール部55aにおける潤滑油46の液面の位置を一定に保つことができる。また、複数のシール部が設けられる場合に比べて、潤滑油46の蒸発を抑制できる。特に、シール部55aは、横間隙501および縦間隙502を介してモータ11内部に設けられることから、ファン1の駆動時に、シール部55aがエアの流れに曝されることが防止される。その結果、潤滑油46の蒸発をより抑制できる。さらに、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。軸受機構4では、シャフト41の周囲にシール部55aが構成されるため、シャフト41から径方向外方に離間してシール部が構成される場合に比べて、遠心力によりシール部55aから潤滑油46が漏出することが防止される。
【0041】
第1下部スラスト間隙52および第2下部スラスト間隙53の軸方向における幅の和が、10μm以上40μm以下であることにより、潤滑油46によるダンパー効果を確保しつつ流体動圧を発生させることができる。
【0042】
軸受部44の内周面441に第1ラジアル動圧溝列711の一部が存在する第2傾斜面441bが設けられることにより、ラジアル間隙51を広くしても、シャフト41を十分に支持することができる。その結果、ファン1が高速にて回転したり、高温状態にて回転する場合であっても、軸受剛性の低下を防止することができる。
【0043】
モータ11は3相モータであることから、モータ11を高速にて回転させることができる。その結果、ファン1が搭載される電子機器の他の装置に影響を与える周波数帯とモータ11に発生する振動の周波数とを容易にずらすことができる。
【0044】
モータ11では、磁性部材331が設けられることにより、ロータマグネット22に対して下方に向かう磁気吸引力が生じるため、ファン1の駆動時に、インペラ12が静止部3に対して浮き上がる力による第1下スラスト動圧軸受部691における軸受の損失の増大を抑制することができる。さらに、ステータ32の磁気中心がロータマグネット22の磁気中心よりも下方に位置することによりロータマグネット22に対して下方に向かう磁気吸引力が生じるため、第1下スラスト動圧軸受部691における軸受の損失の増大をより抑制することができる。
【0045】
軸方向において、ラジアル動圧軸受部68が、2つのバランス修正部124a,125の間に位置することにより、回転部2およびインペラ12を安定して回転することができ、振動をより低減することができる。また、ラジアル動圧軸受部68の軸方向の長さを短くすることができ、軸受部44を短くすることができる。その結果、軸受部44を精度よく製造することができる。好ましくは、軸受部44の軸方向の長さは、直径の4倍以下である。径方向において、上ラジアル動圧軸受部681が、モータ11およびインペラ12の重心と重なることにより、回転部2およびインペラ12をより安定して回転することができ、振動をより低減することができる。以下の他の形態においても同様である。
【0046】
なお、モータ11では、ステータコア321の上端は上ラジアル動圧軸受部681と径方向に重なる。このようにステータ32を上側に配置することにより、ステータ32の磁気中心の位置を上ラジアル動圧軸受部681と下ラジアル動圧軸受部682との間に配置することができる。これにより、モータ11の回転が安定する。好ましくは、ステータコア321の下端は下ラジアル動圧軸受部682と径方向に重なる。さらに好ましくは、径方向において、インペラ12および回転部2の重心位置と上ラジアル動圧軸受部681とが重なる。
【0047】
図14は、軸受機構4の他の例を示す図である。軸受機構4の軸受部44aは、金属の焼結体である筒形状のスリーブ47と、軸受ハウジング48と、を有する。スリーブ47には、潤滑油46が含浸されている。軸受ハウジング48は、スリーブ47の外周面を覆う。軸受ハウジング48の外径は、ブッシング25の外径と略同一である。軸受ハウジング48は、スリーブ47の上側にて径方向内方に広がる環状上部481、を有する。スリーブ47の外周面と軸受ハウジング48の内周面との間に軸方向に延びる循環路472が設けられる。潤滑油46は、循環路472、環状上部481の下面とスリーブ47の上面との間の間隙、ラジアル間隙51および第1下部スラスト間隙52を循環する。
【0048】
図15に示すように、環状上部481の内周面481aは、直径が上方に向かって漸次増大する傾斜面である。換言すれば、内周面481aは、下方に向かって径方向内方へと傾斜する。以下、内周面481aを「第1傾斜面481a」という。スリーブ47の内周面471の上部には、直径が上方に向かって漸次増大する傾斜面471aが設けられる。換言すれば、内周面471aは、下方に向かって径方向内方へと傾斜する。以下、傾斜面471aを「第2傾斜面471a」という。第1傾斜面481aと中心軸J1とのなす角は、第2傾斜面471aと中心軸J1とのなす角よりも大きい。軸受機構4の他の構造は、図3に示す軸受機構4と同様である。
【0049】
第1傾斜面481aと、シャフト41の外周面411との間には、上方に向かって径方向の幅が漸次増大するシール間隙55が構成される。シール間隙55の下側に隣接して、シャフト41の外周面411と第2傾斜面471aとの間に間隙56が構成される。シール間隙55では、毛管現象を利用して潤滑油46を保持するシール部55aが構成される。シール部55aが、シャフト41の周囲に構成されるため、遠心力によりシール部55aから潤滑油46の漏出が抑制される。
【0050】
第2傾斜面471aの下部には、図6と同様の第1ラジアル動圧溝列711の一部が存在する。ファン1の駆動時に、シャフト41が僅かに傾斜すると、シャフト41の外周面411に第2傾斜面471aが沿う状態となり、間隙56において、流体動圧が発生する。これにより、シャフト41が第2傾斜面471aにより支持され、シャフト41が軸受部44aの上部に強く接触することが防止される。
【0051】
軸受機構4においても、ブッシング25の下面と軸受部44aの上面との間に、径方向に広がる横間隙501が構成される。ブッシング25の外周面と軸受保持部31の内周面との間に、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる縦間隙502が構成される。シール間隙55は、横間隙501および縦間隙502を介して外部空間に連絡する。横間隙501の軸方向の最小幅および縦間隙502の径方向の最小幅は、いずれもシール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。横間隙501および縦間隙502は、シール間隙55の開口の最大幅よりも小さいため、シール間隙よりも幅の小さいラビリンスが構成される。横間隙501および縦間隙502が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することが抑制される。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。さらに、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0052】
図16は、ファン1の他の例を示す断面図である。図16に示すファン1では、図1に示すものと比べて、モータ11に対してインペラ12が下方へと延びる。モータ11の全体は、インペラ12のカップ121内に収容される。他の構造は、図1のファン1と同様である。
【0053】
ファン1では、軸方向において、軸受部44の下端であるスラストキャップ45が、インペラ12の下端126よりも上方に位置する。軸受部44の下端は、通常、モータ11の最下端に位置する。したがって、モータ11の重心がインペラ12の内側に位置し、インペラ12をより安定して回転することができる。3相モータの場合、モータを小さくしてもインペラを十分に回転することができるため、このような構造は3相モータを採用する場合に特に適している。
【0054】
図17は、ブッシング25とインペラ12との他の締結構造を示す図である。図17のインペラ12は、カップ121の内面に沿って、有蓋略円筒状のロータホルダ210に固定される。カップ121の天面部の中央は大きく開口する。ロータホルダ210は、円筒部21aと、天面部21bと、を有する。天面部21bは、中心軸J1に垂直に広がる。円筒部21aは、略円筒状で、天面部21bの外縁部から下方に延びる。ロータホルダ210は金属製であり、円筒部21aは、図1のヨーク21として機能する。天面部21bの中央、すなわち天面部21bの内縁部には、内縁部から下方へと延びる円筒状のバーリング部211が設けられる。バーリング部211の内周面がブッシング25の外周面に圧入されることにより、ブッシング25にロータホルダ210が固定される。これにより、シャフト41の上部には、インペラ12が、間接的に固定される。金属部品同士の締結により、インペラ12とブッシング25とが強固に固定される。
【0055】
図18は、ブッシング25とインペラ12とのさらに他の締結構造を示す図である。インペラ12は、図17に示すものとほぼ同様の構造を有するが、ロータホルダ210にはバーリング部が設けられない。ブッシング25の外周面に環状の溝251が設けられ、天面部21bの内周部が溝251内にカシメ固定される。図18においても、金属部品同士の締結により、インペラ12とブッシング25とが強固に固定される。
【0056】
図19は、軸受部44の上方のラビリンス構造の他の例を示す図である。ブッシング25は下部の外縁部に、軸受部44に向かって下方へと延びる外環状部252を有する。軸受部44は、シャフト41の周囲にてブッシング25に向かって上方へと突出する内環状部445を有する。換言すれば、軸受部44は、上部の外縁部にブッシング25とは反対側に窪む環状の凹部445a、を有する。以下、凹部445aを「環状凹部445a」と呼ぶ。内環状部445は、環状凹部445aの側面を規定する部位と捉えることができる。外環状部252は、内環状部445の径方向外側に位置する。すなわち、外環状部252が、環状凹部445a内に配置される。ブッシング25の外環状部252よりも内側の下面と、軸受部44の内環状部445の上面とにより、径方向に広がる横間隙501が構成される。以下、横間隙501を「第1横間隙501」という。外環状部252の内周面と内環状部445の外周面とにより、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる縦間隙502が構成される。縦間隙502の上端は、第1横間隙501の径方向外側の端部に連接する。外環状部252の下面と、下面に軸方向に対向する環状凹部445aの底面、すなわち、内環状部445よりも外側の面との間に、径方向に広がる他の横間隙501aが構成される。以下、横間隙501aを「第2横間隙501a」という。縦間隙502の下端は、第2横間隙501aの径方向内側の端部に連接する。
【0057】
図19の場合においても、第1横間隙501の軸方向の最小幅および縦間隙502の径方向の最小幅は、いずれもシール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。第1横間隙501および縦間隙502が設けられることにより、軸受機構4内の潤滑油の蒸発を抑制することができる。このように、第1横間隙501および縦間隙502は、ブッシング25と軸受部44との間に構成されてもよい。さらに、第2横間隙501aが設けられるため、潤滑油の蒸発をより確実に抑えることができる。第2横間隙501の軸方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。軸受機構4では、第1横間隙501、縦間隙502および第2横間隙501aが設けられるため、軸受機構4とファン1の他の部品との取り付け時に、軸受機構4内に埃が進入することがより確実に防止される。このように、ブッシング25と軸受部44との間に縦間隙502が構成される場合、第1横間隙501および第2横間隙501aは、必ずしも微小な間隙でなくてもよい。縦間隙502のみ微小な間隙であっても、軸受機構4とファン1の他の部品との取り付け時に、軸受機構4内に埃が進入することが防止される。その結果、過度に清浄な施設を利用することなく、ファン1を組み立てることができる。また、軸受機構4を施設内へと輸送する際にも埃が進入することが防止される。
【0058】
軸受機構4は、ブッシング25の下部の内周部が軸受部44の上部の内側に入り込む構造でもよい。すなわち、軸受部44の上部の外縁部にブッシング25へと突出する外環状部が設けられ、ブッシング25の下部に外環状部よりも径方向内側にて軸受部44へと突出する内環状部が設けられてもよい。外環状部は、内環状部の外側に形成された環状凹部内に配置される。ブッシング25の下部である内環状部の外周面と軸受部44の上部である外環状部の内周面との間に縦間隙502が構成される。さらには、ブッシング25の直径を大きくしてブッシング25の外周部が下方へと延び、軸受保持部31の上部の径方向外側がブッシング25の下部に囲まれ、ブッシング25の下部の内周面と軸受保持部31の上部の外周面との間に縦間隙502が構成されてもよい。
【0059】
このように、縦間隙502は、シール部の近傍にて、軸受保持部31または軸受部44の周面とブッシング25の周面との間に構成される。第2横間隙501aもブッシング25の下面と軸受保持部31の上面との間に構成されてよい。なお、ラビリンス構造において、静止体側を径方向外側に配置することにより、蒸発した潤滑油の放出を効果的に抑制することができる。
【0060】
図20は、軸受部44の上方のラビリンス構造のさらに他の例を示す図である。ブッシング25は下部に、径方向外方に向かうに従って下方へと向かう傾斜面を有する。軸受部44も上部に、径方向外方に向かうに従って下方へと向かう傾斜面を有する。これらの傾斜面の間に、径方向外方に向かうに従って下方へと向かう傾斜間隙503が構成される。傾斜間隙503は、中心軸J1を中心とする円錐面状である。傾斜間隙503の最小幅はシール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。なお、傾斜間隙503の最小幅は、両傾斜面間の最小距離を指す。傾斜間隙503の径方向内側には、横間隙501が構成される。シール間隙55は、横間隙501および傾斜間隙503を介して外部空間に連絡する。傾斜間隙503を設けることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することが抑制される。軸受機構4では、横間隙501および傾斜間隙503が設けられるため、軸受機構4とファン1の他の部品との取り付け時に、軸受機構4内に埃が進入することがより確実に防止される。
【0061】
なお、傾斜間隙503の径方向外側の端部に連続する間隙として、縦間隙や横間隙がさらに設けられてもよい。また、傾斜間隙503は、径方向外方に向かうに従って上方へと傾斜してもよい。
【0062】
図21は、軸受機構4のさらに他の例を示す図である。軸受機構4の構造は図3に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。軸受機構4では、図3のスラストキャップ45が省略される。スラストプレート42の外周面と軸受部44の下端部444の内周面との間の側部間隙54において、シール部54aが構成される。シール部54aは、側部間隙54の下部に位置し、下方に向かって径方向の幅が漸次増大する。スラスト動圧軸受部として、スラストプレート42の上面と軸受部44との間の第1下部スラスト間隙52に第1下スラスト動圧軸受部691のみが構成される。なお、ロータマグネットとステータとの軸方向の磁気中心をずらすことにより、シャフト41には常に上方へと向かう力が作用する。軸受機構4の他の構造は、図3に示すものと同様である。軸受機構4の上部には、図5と同様のシール部55aが構成される。このように、軸受機構は、複数のシール部を有する。
【0063】
軸受機構4においても、ブッシング25の下面と軸受部44の上面との間に横間隙501が構成され、ブッシング25の外周面と軸受保持部31の内周面との間に縦間隙502が構成される。シール間隙55は、横間隙501および縦間隙502を介して外部空間に連絡する。横間隙501の軸方向の最小幅および縦間隙502の径方向の最小幅は、いずれもシール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。
【0064】
図21の軸受機構4においても、ラジアル間隙51の径方向の幅が、5μm以上であることにより、ファン1の振動を十分に低減することができる。ただし、ラジアル間隙51の幅は、ラジアル間隙51にて十分に流体動圧を発生させるために20μm以下である。
【0065】
図22は、他の例に係る軸受機構4を示す断面図である。軸受機構4のブッシング25は、軸受部44の外側にて下方へと延びる環状部253、を備える。環状部253の内周面と軸受部44の外周面との間に縦間隙504が構成される。他の構造は、図2に示す軸受機構4と同様である。軸受機構4では、シール間隙55が、ブッシング25の下面と軸受部44の上面との間に構成される横間隙501、および、縦間隙504を介して外部空間に連絡する。
【0066】
軸受機構4では、横間隙501および縦間隙504が設けられるため、軸受機構4とファン1の他の部品との取り付け時に、軸受機構4内に埃が進入することがより確実に防止される。このように、ブッシング25と軸受部44との間に縦間隙504が構成される場合、第1横間隙501は、必ずしも微小な間隙でなくてもよく、縦間隙504のみが微小な間隙であってもよい。また、シール部55aからの潤滑油46の蒸発を防止することができる。
【0067】
図23は、さらに他の例に係る軸受機構4を示す断面図である。ブッシング25は、内周面から径方向内側に突出する環状の突出部254、を備える。シャフト41の上端部は、上方に向かって縮径する段差部412、を備える。突出部254は、段差部412の上面412a、すなわち、法線が上方を向く面に軸方向に接触する。これにより、ファン1の組み立て時、より具体的には、シャフト41の上部に、ブッシング25を介してインペラ12を間接的に固定する時に、ブッシング25の軸方向の位置がずれることが防止され、横間隙501を容易に所望の幅とすることができる。軸受機構4では、図24に示すように、シャフト41の段差部412が省略され、シャフト41の上面に突出部254が軸方向に接触してもよい。この場合も、ファン1の組み立て時に、ブッシング25の軸方向の位置がずれることが防止され、横間隙501を容易に所望の幅とすることができる。その結果、高精度なラビリンスを構成することができる。
【0068】
図25は、他の例に係るファン1を示す断面図である。ステータコア321の径方向内側の部位は、軸受部44の外周面に固定される。静止部3には、ベース部15の中央の孔部に円筒状の部材31a(以下、「円筒部31a」という)が固定され、円筒部31aの上部が、ステータコア321の下部に軸方向に接触する。ブッシング25には、図22と同様に、軸受部44の外側にて下方へと延びる環状部253が設けられる。他の構造は、図17に示すファン1と同様である。
【0069】
ファン1の組み立て時には、ロータホルダ210が軸受機構4のブッシング25に上方から圧入される。このとき、環状部253の先端が治具にて下方から支持される。次に、軸受部44の外周にステータ32が取り付けられ、軸受部44の下部が、ベース部15に固定された円筒部31aに挿入される。ファン1では、ロータホルダ210の圧入時に、ブッシング25を下方から支持することにより、ブッシング25の軸方向の位置がずれることが防止される。その結果、横間隙501の軸方向の幅を容易に所望の幅とすることができ、高精度なラビリンスを構成することができる。
【0070】
図26は、さらに他の例に係るファン1を示す断面図である。インペラ12の天面部123は、軸方向に貫通する貫通孔127、を備える。他の構造は、図1に示すファン1と同様である。貫通孔127は、ステータ32と軸方向に重なる。貫通孔127は、ステータ32とステータ32の上側に位置する天面部123との間の空間811と、インペラ12の上側の空間812、すなわち、ファン1の上流側の空間とを連絡する。ファン1の駆動時には、ステータ32の周囲にエアの流れが生じ、ステータ32が冷却される。このように、貫通孔127は、ステータ32にエアの流れを導くための流路としての役割を果たす。
【0071】
図27は、さらに他の例に係るファン1を示す断面図である。ファン1では、インペラ12のカップ121の内側に有蓋略円筒状のロータホルダ210が固定される。カップ121の天面部123の中央に軸方向に貫通する貫通孔128aが設けられる。以下、貫通孔128aを「第1貫通孔128a」という。ロータホルダ210の天面部21bは、バーリング部211の径方向外側にて、下方に向かって窪む第1段差部212と、第1段差部212の径方向外側にて下方に向かって窪む第2段差部213と、を有する。第1段差部212と第2段差部213との間の部位には、貫通孔128bが設けられる。以下、貫通孔128bを「第2貫通孔128b」という。軸方向において、第2貫通孔128bは、縦間隙502の上部と同じ高さに位置する。
【0072】
ファン1では、第1貫通孔128a、カップ121の天面部123とロータホルダ210の天面部21bとの間の空間128c、および、第2貫通孔128bにより、ステータ32の上側の空間811とインペラ12の上側の空間812とを連絡する流路128が構成される。これにより、ファン1の駆動時にステータ32を冷却することができる。また、軸方向において、第2貫通孔128b、すなわち、流路128の下流側の部位が、縦間隙502の上部と同じ高さに位置する、すなわち、第2貫通孔128bと縦間隙502の上部とが径方向に重なるため、縦間隙502および横間隙501内に埃が進入することが防止される。なお、第2貫通孔128bは、縦間隙502の上部よりも下方に位置してもよい。その場合も、縦間隙502および横間隙501内に埃が進入することが防止される。
【0073】
図28は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の軸受機構4の構造は、図14および図15に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図28に示すように、軸受ハウジング48の環状上部481は、軸受保持部31の上端よりも上側に位置する。環状上部481の上面は、軸受部44aの上面でもある。また、スリーブ47の上面も、軸受保持部31の上端よりも上側に位置する。
【0074】
ファン1では、インペラ12のカップ121の内側に有蓋略円筒状のロータホルダ210が固定される。ロータホルダ210は、円筒部21aと、天面部21bと、ホルダ突出部211aと、を有する。ホルダ突出部211aは、バーリング部214と、第1部位215と、第2部位216と、を有する。バーリング部214および第2部位216は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。第1部位215は、中心軸J1を中心とする略円環板状である。第1部位215は、バーリング部214の下端から中心軸J1に垂直に径方向外方に広がる。第2部位216は、第1部位215の外縁部から下方に延びる。天面部21bは、中心軸J1を中心とする略円環板状である。天面部21bは、第2部位216の下端から中心軸J1に垂直に径方向外方に広がる。円筒部21aは、中心軸J1を中心とする略円筒状である。円筒部21aは、天面部21bの外縁部から下方に延びる。ロータホルダ210は金属製であり、円筒部21aは、図1のヨーク21として機能する。
【0075】
カップ121の天面部123の中央に軸方向に貫通する貫通孔が設けられる。当該貫通孔の内周面に、ホルダ突出部211aのバーリング部214の外周面が圧入にて固定される。インペラ12とロータホルダ210とは、インサート成型により結合されてもよい。軸受部44aの上側にて、シャフト41の上部にホルダ突出部211aのバーリング部214の内周面が圧入にて固定される。シャフト41にロータホルダ210およびインペラ12が固定されていない状態では、シャフト41は、外周面411の上部に取付面413を有する。取付面413は、ロータホルダ210を介してインペラ12の天面部123が間接的に取り付けられる予定の面である。シャフト41は、軸受部44aに挿入され、軸受部44aに対して中心軸J1を中心として相対回転する。
【0076】
シール部55aは、ラジアル動圧軸受部68の上側にて、シャフト41の周囲に構成される。シール部55aは、潤滑油46の界面が位置するシール間隙55を有する。シール部55aの上方には、中心軸J1に垂直に広がる環状部材49が設けられる。環状部材49は、中心軸J1を中心とする略円環板状である。環状部材49の内周面は、軸方向において、シール部55aとホルダ突出部211aのバーリング部214との間にて、シャフト41の外周面411に固定される。換言すれば、環状部材49は、軸方向において、シール部55aと取付面413との間にてシャフト41に固定される。環状部材49は、中心軸J1を中心として、シール間隙55の開口よりも径方向外側まで広がる。すなわち、環状部材49はシール間隙55の開口を覆っている。換言すれば、平面視において、環状部材49はシール間隙55の開口と重なっている。図28の例では、環状部材49は、環状上部481の上面の外縁よりも径方向外側まで広がる。
【0077】
環状部材49の下面と軸受部44aの上面との間に、径方向に広がる微小な横間隙501が構成される。シール間隙55は、横間隙501を介して外部空間と連絡する。横間隙501の軸方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが構成される。横間隙501が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することを抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0078】
環状部材49がシャフト41に固定されているため、シャフト41にロータホルダ210およびインペラ12が取り付けられていない状態であっても、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。その結果、過度に清浄な施設を利用することなく、ファン1を組み立てることができる。また、軸受機構4を輸送する際にも埃が進入することが防止される。図29ないし図31に示すファン1においても同様である。
【0079】
図29は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図28に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図29に示すように、ファン1では、図28に示す環状部材49に代えて、中心軸J1を中心とする環状の環状部材49aが設けられる。環状部材49aは、天蓋部491と、筒状部492と、を備える。天蓋部491は、中心軸J1を中心とする略円環板状である。天蓋部491は、軸方向において、シール部55aと取付面413との間にてシャフト41に固定される。天蓋部491は、環状上部481の外周面よりも径方向外側まで広がる。筒状部492は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。筒状部492は、天蓋部491の外縁部から下方に延びる。筒状部492の内周面は、軸受部44aの一部である軸受ハウジング48の環状上部481の外周面と径方向に対向する。
【0080】
天蓋部491の下面と軸受部44aの上面との間に、径方向に広がる微小な横間隙501が構成される。筒状部492の内周面と環状上部481の外周面との間には、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙502が構成される。縦間隙502の上端部は、横間隙501の径方向外側の端部と連接する。シール間隙55は、横間隙501および縦間隙502を介して外部空間と連絡する。横間隙501の軸方向の最小幅および縦間隙502の径方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが構成される。横間隙501に加えて縦間隙502が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することをさらに抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発をさらに抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0081】
環状部材49aと軸受部44aとの間に縦間隙502が構成される場合、横間隙501は、必ずしも微小な間隙でなくてもよい。縦間隙502のみ微小な間隙であっても、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0082】
図30は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図28に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図30に示すように、軸受部44aは、環状上部481の上面の外縁部から上方に向かって突出する環状突起部482を有する。環状突起部482は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。環状部材49は、中心軸J1を中心として、シール間隙55の開口よりも径方向外側まで広がる。環状部材49の外周面は、環状突起部482の内周面と径方向に対向する。なお、環状突起部482は、環状上部481の上面の外縁部よりも径方向内側の位置から上方に向かって突出してもよい。
【0083】
環状部材49の下面と軸受部44aの上面との間に、径方向に広がる微小な横間隙501が構成される。環状部材49の外周面と環状突起部482の内周面との間には、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙502が構成される。縦間隙502の下端部は、横間隙501の径方向外側の端部と連接する。シール間隙55は、横間隙501および縦間隙502を介して外部空間と連絡する。横間隙501の軸方向の最小幅および縦間隙502の径方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが構成される。横間隙501に加えて縦間隙502が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することをさらに抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発をさらに抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0084】
環状部材49と軸受部44aとの間に縦間隙502が構成される場合、横間隙501は、必ずしも微小な間隙でなくてもよい。縦間隙502のみ微小な間隙であっても、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0085】
図31は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図28に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図31に示すように、ファン1では、環状部材49に加えて、中心軸J1を中心とする環状の環状部材49bが設けられる。環状部材49の外径は、環状上部481の上面の外径よりも小さい。環状部材49bは、天蓋部491bと、筒状部492bと、を備える。天蓋部491bは、中心軸J1を中心とする略円環板状である。筒状部492bは、中心軸J1を中心とする略円筒状である。筒状部492bは、天蓋部491bの外縁部から下方に延びる。筒状部492bの内周面は、環状上部481の外周面に固定される。筒状部492bの内周面は、環状部材49の外周面と径方向に対向する。天蓋部491bは、環状部材49の上方に位置する。天蓋部491bの下面は、環状部材49の上面と軸方向に対向する。
【0086】
環状部材49の下面と軸受部44aの上面との間に、径方向に広がる微小な横間隙501が構成される。環状部材49の外周面と筒状部492bの内周面との間には、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙502が構成される。環状部材49の上面と天蓋部491bの下面との間には、径方向に広がる微小な横間隙501aが構成される。縦間隙502の下端部は、横間隙501の径方向外側の端部と連接する。縦間隙502の上端部は、横間隙501aの径方向外側の端部と連接する。シール間隙55は、横間隙501、縦間隙502および横間隙501aを介して外部空間と連絡する。
【0087】
横間隙501,501aの軸方向の最小幅および縦間隙502の径方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが構成される。横間隙501に加えて縦間隙502および横間隙501aが設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することをさらに抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発をさらに抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0088】
横間隙501および縦間隙502は、必ずしも微小な間隙でなくてもよい。横間隙501aのみ微小な間隙であっても、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0089】
図32は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図28に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図32に示すように、環状部材49は、軸受部44aの上部に固定される。本実施形態では、環状部材49は、環状上部481の上面に固定される。環状部材49は、中心軸J1を中心とする略円環板状である。環状部材49の内径は、シャフト41の外径よりも僅かに大きい。環状部材49の内周面は、軸方向において、シール部55aと取付面413との間にて、シャフト41の外周面411と径方向に対向する。
【0090】
環状部材49の内周面とシャフト41の外周面411との間に、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙502が構成される。シール間隙55は、縦間隙502を介して外部空間と連絡する。縦間隙502の径方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。すなわち、環状部材49は、シール間隙55の開口の一部を覆っている。換言すれば、平面視において、環状部材49はシール間隙55の開口の一部と重なっている。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが、シール部55aの上方に構成される。縦間隙502が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することを抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0091】
環状部材49が軸受部44aに固定されているため、シャフト41にロータホルダ210およびインペラ12が取り付けられていない状態であっても、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。図33および図34に示すファン1においても同様である。
【0092】
図33は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図32に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図33に示すように、軸受部44aは、環状上部481の上面の外縁部から上方に向かって突出する環状突起部482を有する。環状突起部482は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。環状部材49は、環状突起部482の径方向内側にて軸受部44aの環状上部481の上面に配置される。本実施形態では、環状部材49は、軸受部44aの環状上部481の上面に固定されるが、環状突起部482の内周面に固定されてもよい。環状部材49の外周面は、環状突起部482の内周面に全周に亘って接触する。なお、環状突起部482は、環状上部481の上面の外縁部よりも径方向内側の位置から上方に向かって突出してもよい。また、環状部材49の外周面の少なくとも一部が、環状突起部482の内周面に接触していればよい。
【0093】
環状部材49の内周面とシャフト41の外周面411との間には、図32に示す縦間隙502と同様の縦間隙502が構成される。縦間隙502が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することを抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。環状部材49の外周面が環状突起部482の内周面に接触することにより、環状部材49を軸受部44aに取り付ける際の環状部材49の位置決めを容易にすることができる。
【0094】
図34は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図32に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図34に示すように、ロータホルダ210のホルダ突出部211aの第1部位215は、環状部材49の上方に位置する。第1部位215の下面は、環状部材49の上面と軸方向に対向する。ホルダ突出部211aの第2部位216は、軸受部44aの環状上部481の径方向外側に位置する。第2部位216の内周面は、環状部材49の外周面および環状上部481の外周面と径方向に対向する。
【0095】
環状部材49の内周面とシャフト41の外周面411との間に、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙502が構成される。第1部位215の下面と環状部材49の上面との間には、径方向に広がる微小な横間隙501が構成される。第2部位216の内周面と環状部材49の外周面および環状上部481の外周面との間には、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙504が構成される。本実施形態では、第2部位216の内周面と環状部材49の外周面および環状上部481の外周面との間に、微小な縦間隙504が構成されるが、第2部位216の内周面と環状上部481の外周面との間にのみ構成されてもよい。すなわち、微小な縦間隙504のうち第2部位216の内周面と環状部材49の外周面との間の間隙は、必ずしも微小な間隙でなくてもよい。縦間隙502の上端部は、横間隙501の径方向内側の端部と連接する。縦間隙504の上端部は、横間隙501の径方向外側の端部と連接する。シール間隙55は、縦間隙502、横間隙501および縦間隙504を介して外部空間と連絡する。
【0096】
縦間隙502,504の径方向の最小幅および横間隙501の軸方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが構成される。縦間隙502に加えて、横間隙501および縦間隙504が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することをさらに抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発をさらに抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0097】
図35は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図34に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図35に示すように、ファン1では、環状部材49が設けられておらず、ホルダ突出部211aの第1部位215の下面が、軸受部44aの環状上部481の上面と軸方向に対向する。
【0098】
第1部位215の下面と環状上部481の上面との間には、径方向に広がる横間隙509が構成される。横間隙509の径方向外側の端部は、縦間隙504の上端部と連接する。シール間隙55は、横間隙509および縦間隙504を介して外部空間と連絡する。
【0099】
縦間隙504の径方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが、シール間隙55よりも径方向外側に構成される。縦間隙504が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することをさらに抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発をさらに抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0100】
図36は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図35に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図36に示すように、ホルダ突出部211aの第2部位216に、環状部材49cが固定される。環状部材49cは、中心軸J1を中心とする略円筒状である。環状部材49cの外周面は、第2部位216の内周面に固定される。環状部材49cの下端は、軸受保持部31の上端近傍に位置する。環状部材49cの内周面は、環状上部481の外周面と径方向に対向する。環状部材49cの下面は、軸受保持部31の上面と軸方向に対向する。
【0101】
環状部材49cの内周面と環状上部481の外周面との間に、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙504が構成される。環状部材49cの下面と軸受保持部31の上面との間には、径方向に広がる微小な横間隙506が構成される。縦間隙504の上端部は、横間隙509の径方向外側の端部と連接する。縦間隙504の下端部は、横間隙506の径方向内側の端部と連接する。シール間隙55は、横間隙509、縦間隙504および横間隙506を介して外部空間と連絡する。
【0102】
縦間隙504の径方向の最小幅および横間隙506の軸方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが、シール間隙55よりも径方向外側に構成される。縦間隙504に加えて横間隙506が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することをより一層抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発をより一層抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0103】
図37は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図35に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図37に示すように、ロータホルダ210のホルダ突出部211aでは、バーリング部214が第1部位215の径方向内側の端部から下方に延びる。軸受部44aは、環状上部481の上面の外縁部から上方に向かって延びる環状外壁部483を有する。環状外壁部483は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。環状外壁部483の外周面は、ホルダ突出部211aの第2部位216の内周面と径方向に対向する。
【0104】
環状外壁部483の外周面と第2部位216の内周面との間に、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙504が構成される。環状上部481の上方の空間508は、縦間隙504の上端部と連接する。シール間隙55は、空間508および縦間隙504を介して外部空間と連絡する。
【0105】
縦間隙504の径方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが、シール間隙55よりも径方向外側に構成される。縦間隙504が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することを抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0106】
図38は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図36に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図38に示すように、インペラ12は、ブッシング25を介してシャフト41に固定される。ブッシング25は、中心軸J1を中心とする略円柱状である。ブッシング25の外径は、環状上部481の外径より僅かに大きい。インペラ12の天面部123の内周面は、ブッシング25の外周面に固定される。ブッシング25の下面は、軸受部44aの環状上部481の上面と軸方向に対向する。ブッシング25の外周面には、環状部材49cも固定される。環状部材49cは、中心軸J1を中心とする略円筒状である。環状部材49cの内周面は、インペラ12の天面部123の下側において、ブッシング25の外周面に固定される。環状部材49cの内周面は、環状上部481の外周面と径方向に対向する。
【0107】
ブッシング25の下面と環状上部481の上面との間には、径方向に広がる微小な横間隙501が構成される。環状部材49cの内周面と環状上部481の外周面との間には、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙504が構成される。縦間隙504の上端部は、横間隙501の径方向外側の端部と連接する。シール間隙55は、横間隙501および縦間隙504を介して外部空間と連絡する。
【0108】
横間隙501の軸方向の最小幅および縦間隙504の径方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが構成される。横間隙501および縦間隙504が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することを抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0109】
図39は、さらに他の例に係るファン1の一部を示す断面図である。ファン1の構造は、図38に示すものと類似しており、同様の構成には同符号を付す。図39に示すように、インペラ12は、中心軸J1を中心とする略円筒状の内筒部123aを備える。内筒部123aは、天面部123の径方向内側の端部から下方に延びる。内筒部123aの内周面の上部は、ブッシング25の外周面に固定される。内筒部123aの内周面の下部は、軸受部44aの環状上部481の外周面と径方向に対向する。
【0110】
内筒部123aの内周面と環状上部481の外周面との間には、中心軸J1を中心とする環状であって軸方向に延びる微小な縦間隙504が構成される。縦間隙504の上端部は、横間隙501の径方向外側の端部と連接する。シール間隙55は、横間隙501および縦間隙504を介して外部空間と連絡する。
【0111】
横間隙501の軸方向の最小幅および縦間隙504の径方向の最小幅は、シール間隙55の開口の径方向の最大幅よりも小さい。このため、シール間隙55よりも幅の小さいラビリンスが構成される。横間隙501および縦間隙504が設けられることにより、シール部55aから気化した潤滑油を含む空気が、軸受機構4の外部へと移動することを抑制することができる。その結果、軸受機構4内の潤滑油46の蒸発を抑制することができる。また、シール部55a内に埃などの異物が進入することも防止することができる。
【0112】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0113】
縦間隙502,504は機械加工により容易に微小とすることができるが、横間隙501,501a,506には組立精度も要求されるため、横間隙501,501a,506は、微小であれば、シール間隙55の開口の幅より大きくてもよい。ブッシング25は、例えば、プレス加工にて成型された焼結製部材でもよい。図23に示す軸受機構4では、ブッシング25から突出部254が省略され、軸方向においてブッシング25の下面と同じ位置にシャフト41に段差部が設けられ、ブッシング25の下面が段差部に軸方向に接触してもよい。図2に示す軸受機構4では、ブッシング25の外径が、軸受部44の外径と略同一でもよい。この場合、軸受保持部31の上部が、軸受保持部31の他の部位よりも径方向外側に位置することにより、当該上部の内周面とブッシング25の外周面との間に縦間隙502が構成される。
【0114】
図14に示す軸受機構4では、ブッシング25の外径が、軸受ハウジング48の外径よりも小さくされてもよい。これにより、ブッシング25と軸受保持部31との間に容易に縦間隙502を構成することができる。また、軸受ハウジング48とブッシング25との間に図20と同様の傾斜間隙が設けられてもよい。
【0115】
図17に示すロータホルダ210の天面部21bにステータ32を冷却するための流路として、軸方向に貫通する貫通孔が設けられてもよい。図18ないし図20、図25、図28ないし図37に示すファンにおいても同様である。図1に示すインペラ12は、ブッシング25の外周面に直接的に固定されるが、1つ以上の部材を介して間接的に固定されてもよい。図16、図21、図26、図38、図39においても同様である。図17に示すインペラ12は、2以上の部材を介してブッシング25に固定されてもよい。図18、図19、図20、図25および図27においても同様である。また、図27に示す、第1貫通孔128aは、必ずしもに天面部123の中央に設けられなくてもよい。
【0116】
図28ないし図37に示すインペラ12は、ロータホルダ210に直接的に固定されるが、1つ以上の部材を介して間接的に固定されてもよい。図28ないし図34に示すインペラ12は、ロータホルダ210を介さずシャフト41に直接的に固定されてもよい。図28ないし図34に示すインペラ12は、ブッシングを介してシャフト41に間接的に固定されてもよい。
【0117】
図3や図14に示す軸受機構4において、スラストプレートの上面側のみにスラスト動圧軸受部が構成されてもよい。この場合、図21の軸受機構4と同様に、シャフト41には常に上方に向かう力が与えられる。スラストプレートにより、インペラ12の浮上力とは反対方向に作用する力を発生する軸受部44を容易に構成することができる。
【0118】
第1ラジアル動圧溝列711の上部は、他の部位と独立して第2傾斜面441bに設けられてもよい。軸受部44では、必ずしも、第2傾斜面441bに動圧溝が存在しなくてもよい。この場合であっても、第2傾斜面441bが設けられることにより、シャフト41を支持する面積を確保することができるため、軸受剛性をある程度向上することができる。
【0119】
上記実施形態では、第1および第2ラジアル動圧溝列711,712は、シャフト41の外周面411に設けられてもよい。スラストプレート42の上面および下面にスラスト動圧溝列721,722が設けられてもよい。軸受機構4では、必ずしも、連通孔421aが設けられる必要はない。
【0120】
軸受部44の上部近傍において、シャフト41の外周面411に縮径する部位を設けることにより、当該部位と軸受部44の内周面441との間にシール部が構成されてもよい。シール部として、シール間隙に設けられた動圧溝により流体動圧を発生するビスコシールが用いられてもよい。
【0121】
インペラ12の天面部123のバランス修正部125に、金属部材が錘として設けられてもよい。また、貫通孔や切欠状の部位がバランス修正部として設けられてもよい。側壁部124のバランス修正部124aにおいても同様である。天面部123および側壁部124の下端部124aの一方にのみ錘が設けられてもよい。また、天面部123や側壁部124の一部を除去することにより回転部2のアンバランスが解消されてもよい。
【0122】
上記実施形態では、モータ11の静止時に、軸方向において、ステータ32の磁気中心とロータマグネット22の磁気中心とが一致してもよい。これにより、モータ11の振動をより低減することができる。
【0123】
モータ11は、遠心ファン等の他のファンのモータとして利用されてよい。モータ11が利用されるファンは、サーバのようにハードディスクが搭載される機器に最適である。サーバでは、ハードディスクに近接した位置にファンが搭載される。このため、振動が大きなファンが搭載された場合にハードディスクの読み書きエラーが生じやすい。しかしながら、モータ11が利用されるファンがサーバに搭載されれば、ハードディスクの読み書きエラーが生じくい。
【0124】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、エアの流れを発生するファンに利用することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 ファン
2 静止部
3 回転部
4 軸受機構
5 袋構造
11 モータ
12 インペラ
22 ロータマグネット
25 ブッシング
32 ステータ
41 シャフト
42 スラストプレート
44,44a 軸受部
45 スラストキャップ
46 潤滑油
47 スリーブ
48 軸受ハウジング
49,49a〜49c 環状部材
51 ラジアル間隙
52 第1下部スラスト間隙
53 第2下部スラスト間隙
55 シール間隙
55a,54a シール部
68 ラジアル動圧軸受部
122 翼
127 貫通孔
128 流路
210 ロータホルダ
252 外環状部
253 環状部
254 突出部
331 磁性部材
411 (シャフトの)外周面
413 取付面
445 内環状部
445a 環状凹部
481 環状上部
482 環状突起部
491,491b 天蓋部
492,492b 筒状部
501,501a,506 横間隙
502,504 縦間隙
503 傾斜間隙
691 第1下スラスト動圧軸受部
692 第2下スラスト動圧軸受部
811,812 空間
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受部と、
前記軸受部に挿入され、前記軸受部に対して中心軸を中心として相対回転するシャフトと、
前記軸受部の上側にて前記シャフトに固定され、外周面に直接的または1つ以上の部材を介してインペラが取付可能な略環状のブッシングと、
前記軸受部の内周面、前記シャフトの外周面、および、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面との間のラジアル間隙に存在する潤滑油によって構成され、前記潤滑油に流体動圧を発生させるラジアル動圧軸受部と、
前記ラジアル動圧軸受部の上側にて、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面とによって構成されるシール間隙に、前記潤滑油の界面が位置するシール部と、
を備え、
前記軸受部の上面と前記ブッシングの下面との間に、径方向に広がる微小な横間隙が構成され、
前記シール間隙が、前記横間隙を介して外部空間と連絡する、動圧軸受装置。
【請求項2】
前記軸受部の周面と前記ブッシングの周面との間に、軸方向に延びる微小な縦間隙が構成され、
前記縦間隙が、前記横間隙の径方向外側の端部と連接され、
前記シール間隙が、前記横間隙および前記縦間隙を介して外部空間と連絡する、請求項1に記載の動圧軸受装置。
【請求項3】
軸受部と、
前記軸受部に挿入され、前記軸受部に対して中心軸を中心として相対回転するシャフトと、
前記軸受部の上側にて前記シャフトに固定され、外周面に直接的または1つ以上の部材を介してインペラが取付可能な略環状のブッシングと、
前記軸受部の内周面、前記シャフトの外周面、および、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面との間のラジアル間隙に存在する潤滑油によって構成され、前記潤滑油に流体動圧を発生させるラジアル動圧軸受部と、
前記ラジアル動圧軸受部の上側にて、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面とによって構成されるシール間隙に、前記潤滑油の界面が位置するシール部と、
を備え、
前記軸受部の上面と前記ブッシングの下面との間に、径方向に広がる横間隙が構成され、
前記軸受部の周面と前記ブッシングの周面との間に、軸方向に延びる微小な縦間隙が構成され、
前記縦間隙が、前記横間隙の径方向外側の端部と連接され、
前記シール間隙が、前記横間隙および前記縦間隙を介して外部空間と連絡する、動圧軸受装置。
【請求項4】
前記ブッシングおよび前記軸受部の一方の部材が、他方の部材へと突出する環状部、を備え、
前記他方の部材が、前記一方の部材とは反対側に窪み、前記環状部と軸方向に対向する環状凹部、を備え、
前記環状部が、前記環状凹部内に配置され、
前記環状部の内周面と前記環状凹部を規定する前記他方の部材の外周面との間に前記縦間隙が構成される、請求項2または3に記載の動圧軸受装置。
【請求項5】
前記ブッシングが、下方へと延びる環状部を備え、
前記環状部の内周面と前記軸受部の外周面との間に前記縦間隙が構成される、請求項2または3に記載の動圧軸受装置。
【請求項6】
前記縦間隙の径方向の最小幅が、前記シール間隙の開口の径方向の最大幅よりも小さい、請求項2ないし5のいずれかに記載の動圧軸受装置。
【請求項7】
前記ブッシングの外径が、前記軸受部の外径と略同一、または、前記軸受部の外径よりも小さい、請求項1または3に記載の動圧軸受装置。
【請求項8】
前記横間隙の軸方向の最小幅が、前記シール間隙の開口の径方向の最大幅よりも小さい、請求項1ないし7のいずれかに記載の動圧軸受装置。
【請求項9】
前記横間隙の径方向外側にて、前記軸受部と前記ブッシングとの間に、前記中心軸を中心とする円錐面状の傾斜間隙が構成され、
前記傾斜間隙の最小幅が、前記シール間隙の開口の径方向の最大幅よりも小さく、
前記シール間隙が、前記横間隙および前記傾斜間隙を介して外部空間と連絡する、請求項1または3に記載の動圧軸受装置。
【請求項10】
前記ブッシングは、内周面から径方向内側に突出する環状の突出部を有し、
前記突出部は、前記シャフトの上方を向く面と接触する、請求項1ないし9のいずれかに記載の動圧軸受装置。
【請求項11】
前記軸受部が、金属の1つの部材にて構成される、請求項1ないし10のいずれかに記載の動圧軸受装置。
【請求項12】
前記軸受部が、
金属の焼結体であるスリーブと、
前記スリーブの外周面を覆う軸受ハウジングと、
を備え、
前記軸受ハウジングが、前記スリーブの上側にて径方向内方に広がる環状上部、を備え、
前記シール間隙が、前記環状上部の内周面と、前記シャフトの外周面との間に構成される、請求項1ないし10のいずれかに記載の動圧軸受装置。
【請求項13】
前記シャフトの下端から径方向外方へと広がって前記軸受部と軸方向に対向するスラストプレート、をさらに備え、
前記軸受部および前記スラストプレートの軸方向に互いに対向する面の間のスラスト間隙に、前記潤滑油の流体動圧を発生するスラスト動圧軸受部が構成される、請求項1ないし12のいずれかに記載の動圧軸受装置。
【請求項14】
前記スラストプレートの下方にて前記軸受部の下部を閉塞するキャップ部材、をさらに備え、
前記スラストプレートと前記キャップ部材との間の他のスラスト間隙に、前記潤滑油の流体動圧を発生する他のスラスト動圧軸受部が構成される、請求項13に記載の動圧軸受装置。
【請求項15】
前記シール間隙、前記ラジアル間隙および前記スラスト間隙を含む袋構造の間隙に、前記潤滑油が連続して存在し、前記潤滑油の界面が前記シール間隙のみに構成される、請求項13または14に記載の動圧軸受装置。
【請求項16】
軸受部と、
前記軸受部に挿入され、インペラが直接的または1つ以上の部材を介して取り付けられる予定の取付面を外周面に有し、前記軸受部に対して中心軸を中心として相対回転するシャフトと、
前記軸受部の内周面、前記シャフトの外周面、および、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面との間のラジアル間隙に存在する潤滑油によって構成され、前記潤滑油に流体動圧を発生させるラジアル動圧軸受部と、
前記ラジアル動圧軸受部の上側にて、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面とによって構成されるシール間隙に、前記潤滑油の界面が位置するシール部と、
軸方向において、前記シール部と前記取付面との間にて前記シャフトに固定され、前記シール間隙の開口よりも径方向外側まで広がる環状の環状部材と、
を備え、
前記軸受部の上面と前記環状部材の下面との間に径方向に広がる微小な横間隙が構成され、
前記シール間隙が、前記横間隙を介して外部空間と連絡する、動圧軸受装置。
【請求項17】
前記環状部材が、
前記中心軸を中心とする略円環板状であり、軸方向において、前記シール部と前記取付面との間にて前記シャフトに固定される天蓋部と、
前記天蓋部から下方へ延びて前記軸受部の外周面と径方向に対向する筒状部と、
を備え、
前記横間隙が、前記軸受部の前記上面と前記天蓋部の下面との間に構成され、
前記筒状部の内周面と前記軸受部の前記外周面との間に、軸方向に延びる微小な縦間隙が構成され、
前記縦間隙が、前記横間隙の径方向外側の端部と連接し、
前記シール間隙が、前記縦間隙も介して外部空間と連絡する、請求項16に記載の動圧軸受装置。
【請求項18】
前記軸受部が、前記上面から上方に向かって突出する環状突起部を有し、
前記環状部材が、前記中心軸を中心とする略円環板状であり、
前記環状部材の外周面が、前記環状突起部の内周面と径方向に対向し、
前記環状部材の前記外周面と前記環状突起部の前記内周面との間に、軸方向に延びる微小な縦間隙が構成され、
前記縦間隙が、前記横間隙の径方向外側の端部と連接し、
前記シール間隙が、前記縦間隙も介して外部空間と連絡する、請求項16に記載の動圧軸受装置。
【請求項19】
前記縦間隙の径方向の最小幅が、前記シール間隙の前記開口の径方向の最大幅よりも小さい、請求項17または18に記載の動圧軸受装置。
【請求項20】
前記横間隙の軸方向の最小幅が、前記シール間隙の前記開口の径方向の最大幅よりも小さい、請求項16ないし19のいずれかに記載の動圧軸受装置。
【請求項21】
軸受部と、
前記軸受部に挿入され、インペラが直接的または1つ以上の部材を介して取り付けられる予定の取付面を外周面に有し、前記軸受部に対して中心軸を中心として相対回転するシャフトと、
前記軸受部の内周面、前記シャフトの外周面、および、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面との間のラジアル間隙に存在する潤滑油によって構成され、前記潤滑油に流体動圧を発生させるラジアル動圧軸受部と、
前記ラジアル動圧軸受部の上側にて、前記軸受部の前記内周面と前記シャフトの前記外周面とによって構成されるシール間隙に、前記潤滑油の界面が位置するシール部と、
前記軸受部の上部に固定される環状の環状部材と、
を備え、
前記シャフトの前記外周面と前記環状部材の内周面との間に、軸方向に延びる微小な縦間隙が構成され、
前記縦間隙の径方向の最小幅が、前記シール間隙の開口の径方向の最大幅よりも小さく、
前記シール間隙が、前記縦間隙を介して外部空間と連絡する、動圧軸受装置。
【請求項22】
前記軸受部が、上面から上方に向かって突出する環状突起部を有し、
前記環状部材が、前記環状突起部の径方向内側にて前記軸受部の前記上面に固定され、
前記環状部材の外周面の少なくとも一部が、前記環状突起部の内周面に接触する、請求項21に記載の動圧軸受装置。
【請求項23】
モータと、
複数の翼を有し、前記モータにより前記中心軸を中心として回転してエアの流れを発生するインペラと、
を備え、
前記モータが、
請求項1ないし15のいずれかに記載の動圧軸受装置と、
ステータを有する静止部と、
前記ステータの径方向外側に配置されるロータマグネットを有する回転部と、
を備える、ファン。
【請求項24】
前記インペラが、樹脂製であり、前記ブッシングに固定される、請求項23に記載のファン。
【請求項25】
前記ブッシングに、金属製のロータホルダが固定され、
前記インペラが、前記ロータホルダに固定される、請求項23に記載のファン。
【請求項26】
前記ブッシングおよび前記軸受部が、金属製である、請求項23ないし25のいずれかに記載のファン。
【請求項27】
モータと、
複数の翼を有し、前記モータにより前記中心軸を中心として回転してエアの流れを発生するインペラと、
を備え、
前記モータが、
請求項16ないし22のいずれかに記載の動圧軸受装置と、
ステータを有する静止部と、
前記ステータの径方向外側に配置されるロータマグネットを有する回転部と、
を備える、ファン。
【請求項28】
前記静止部が、前記ロータマグネットの下方に位置する磁性部材、をさらに備え、
前記磁性部材と、前記ロータマグネットとの間にて前記回転部を下方に吸引する磁気吸引力が発生する、請求項23ないし27のいずれかに記載のファン。
【請求項29】
前記モータの静止時に、軸方向において、前記ロータマグネットの磁気中心の位置が、前記ステータの磁気中心の位置と一致する、または、上方に位置する、請求項23ないし28のいずれかに記載のファン。
【請求項30】
前記モータが3相モータである、請求項23ないし29のいずれかに記載のファン。
【請求項31】
軸方向において、前記軸受部の下端が前記インペラの下端よりも上方に位置する、請求項23ないし30のいずれかに記載のファン。
【請求項32】
前記インペラが、前記インペラの上側の空間と、前記ステータの上側の空間とを連絡する流路、を備える、請求項23ないし31のいずれかに記載のファン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate


【公開番号】特開2013−61063(P2013−61063A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102725(P2012−102725)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】