説明

化合物系薄膜太陽電池、及びその製造方法

【課題】太陽電池のFF特性の向上、歩留まりの低減に有効な裏面電極層を積層してなる太陽電池、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ガラス基板上に、モリブデンからなる金属裏面電極層を積層した化合物系薄膜太陽電池であって、上記金属裏面電極層は、スパッタ法により、その表面の反射率が10%以上35%以下の範囲で上記ガラス基板上に製膜されていることを特徴とする化合物系薄膜太陽電池を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板上に金属裏面電極層を積層してなる化合物系薄膜太陽電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する関心や政策等から、各種の太陽電池の研究や製造が盛んである。
各種の太陽電池の中でも、特に化合物系太陽電池は、変換効率の潜在能力の高さや経年変化に対する高い信頼性等から、量産実用化に目覚しいものがある。
【0003】
この点、特許文献1では、直列接続された2以上のユニットセルを絶縁性基板上に備える集積型薄膜太陽電池であって、前記絶縁性基板上に順次積層された、第1の電極膜、pn接合を含む半導体膜、および第2の電極膜を含み、前記第1の電極膜、前記半導体膜、および前記第2の電極膜は、それぞれ、互いに略平行な第1、第2および第3の分割溝で分割された2以上のユニットセルを構成しており、隣接する2つの前記ユニットセルは、一方のユニットセルの第2の電極膜が前記第2の分割溝を介して他方のユニットセルの前記第1の電極膜と接続されることによって、直列接続されており、前記半導体膜は、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含み前記第1の電極膜に隣接する化合物半導体膜を有し、前記第1の電極膜は、モリブデンを含み、前記第1の電極膜の平坦部の厚さが0.3μm以下である集積型薄膜太陽電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−21713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の技術によれば、第1の電極であるMo膜をレーザによりパターニングした際に、Mo膜の分割溝のエッジ部において、盛り上がりが発生して短絡を引き起こすことを防ぐことに一定の効果を奏することができる。
一方、上記特許文献1記載の技術におけるMo膜である金属裏面電極層に関して、高い信頼性とFF特性を有する太陽電池を得るためには、短絡を引き起こすバリやデブリ等を考慮するのみでは十分でない。
即ち、金属裏面電極層上に積層される光吸収層との密着性や、太陽電池全体としての抵抗率をさらに考慮することで、太陽電池のFF特性の向上や、歩留まりの低減を図ることが出来る。
【0006】
そこで本発明は、太陽電池のFF特性の向上、歩留まりの低減に有効な金属裏面電極層を積層してなる化合物系薄膜太陽電池、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る化合物系薄膜太陽電池は、ガラス基板上に、モリブデンからなる金属裏面電極層を積層した化合物系薄膜太陽電池であって、上記金属裏面電極層は、スパッタ法により、その表面の反射率が10%以上35%以下の範囲で上記ガラス基板上に製膜されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記ガラス基板上に製膜されるモリブデンの膜厚が800nm以下であるものとしてもよい。
【0009】
また、本発明の別の観点に係る化合物系太陽電池を構成する金属裏面電極層の製造方法は、所定の真空チャンバ内に、上記ガラス基板を試料として配置すると共に、上記モリブデンをスパッタターゲットとして配置した上、当該真空チャンバ内を真空排気する工程と、上記真空排気されたチャンバ内にガス流量60〜70sccmで不活性ガスを注入して製膜圧力20mTorr以下に保持した上、上記真空チャンバ内に配置された一対のスパッタ電極を駆動させて、上記ガラス基板と上記モリブデンの間に電圧をかけ、上記ガラス基板上に上記モリブデンを製膜する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光吸収層との密着性、レーザによるパターニングの容易さ、太陽電池として低抵抗率を兼ね備えた太陽電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る化合物系薄膜太陽電池の積層構造を示す図である。
【図2】本実施形態に係る化合物系薄膜太陽電池に関し、金属裏面電極層に関する実験において使用したパターニング装置を示す図である。
【図3】本実施形態に係る化合物系薄膜太陽電池に関する実験において、金属裏面電極層の反射率と製膜圧力の相関関係を示すグラフである。
【図4】本実施形態に係る化合物系薄膜太陽電池に関する実験において、反射率と抵抗率の相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る化合物系薄膜太陽電池、及びその製造方法について、図を参照して説明する。
図1に、本実施形態に係る化合物系薄膜太陽電池の積層構造を示す。
化合物系薄膜太陽電池1は、図1に示されるように、ガラス基板11上に、金属裏面電極層12、光吸収層13、高抵抗バッファ層14、窓層15を順次積層してなる。
【0013】
ガラス基板11は例えば、青板ガラスにより構成される。
なお、ガラス基板11は、青板ガラスに含まれるナトリウム(Na)やカリウム(K)等のアルカリ金属成分が、光吸収層中に拡散するのを防止するため、例えば、膜厚50nm程度のシリカ(SiO2)等からなるアルカリバリア層をコーティングした青板ガラスにより構成してもよい。
【0014】
金属裏面電極層12は、モリブデン(Mo)からなる薄膜であって、ガラス基板11上にDCスパッタ法で製膜される。
ここで、金属裏面電極層12としてモリブデン(Mo)膜が使用されるのは、光吸収層13の形成過程で使用されるセレン(Se)に対して耐食性が高いこと、汎用技術であるスパッタ法で大面積まで容易に製膜可能であること、セレン(Se)との反応によってモリブデン(Mo)膜上に生成するモリブデンセレナイド(MoSe2)層が、金属針を使用したメカニカルスクライバーによる光吸収層13と高抵抗バッファ層14のパターニング時に個体潤滑剤として作用し、金属裏面電極層12を貫通してガラス基板11まで傷つけることがないこと等の理由による。
また、本実施形態に係る金属裏面電極層12は、3基のモリブデン(Mo)ターゲットを使用して、DCスパッタ法で、三層構造に製膜する。このように三層構造としているのは、インライン型のスパッタ装置の場合、モリブデン(Mo)製膜部分への入熱と発生する圧縮応力により、長尺のガラス基板では割れが発生しやすいためである。
なお、本実施形態に係る金属裏面電極層12の詳細については後述する。
【0015】
光吸収層13は例えば、p型の導電性を有するI−III−VI族カルコパイライト構造の厚さ1〜3μmの薄膜であり、CuInSe、Cu(InGa)Se、Cu(InGa)(SSe)等の多元化合物半導体薄膜により構成される。また、p型CIS系光吸収層としては、その他、セレン化合物系CIS系光吸収層、硫化物系CIS系光吸収層及びセレン化・硫化物系CIS系光吸収層があり、前記セレン化合物系CIS系光吸収層は、CuInSe、Cu(InGa)Se又はCuGaSeからなり、前記硫化物系CIS系光吸収層は、CuInS、Cu(InGa)S、CuGaSからなり、前記セレン化・硫化物系CIS系光吸収層は、CuIn(SSe)、Cu(InGa)(SSe)、CuGa(SSe)からなり、また、表面層を有するものとしては、CuIn(SSe)を表面層として持つCuInSe、CuIn(SSe)を表面層として持つCu(InGa)Se、CuIn(SSe)を表面層として持つCu(InGa)(SSe)、CuIn(SSe)を表面層として持つCuGaSe、Cu(InGa)(SSe)を表面層として持つCu(InGa)Se、Cu(InGa)(SSe)を表面層として持つCuGaSe、CuGa(SSe)を表面層として持つCu(InGa)Se又はCuGa(SSe)を表面層として持つCuGaSeがある。
この光吸収層13は、セレン化/硫化法や多元同時蒸着法により、金属裏面電極層12上に製膜される。
【0016】
高抵抗バッファ層14は、光吸収層との電気的接合を形成するための層である。バッファ層は、有機金属化学的気相成長(MOCVD)法や真空蒸着法等によって、硫化亜鉛(ZnS)等の亜鉛混晶化合物等の薄膜により形成することができる。
【0017】
窓層15は、n型透明導電膜により構成される。この窓層15は、MOCVD法により、高抵抗バッファ層14上に製膜される。
【0018】
上記の通りガラス基板11上に積層される金属裏面電極層12、光吸収層13、高抵抗バッファ層14、窓層15には、その作製過程においてパターニングP1、P2、P3が施される。
【0019】
パターニングP1は、高融点、高耐食性金属であるモリブデン(Mo)を金属裏面電極層12としてDCスパッタ法により製膜した後に行われるパターニングであり、高い直線性と再現性、かつ、高速度でのパターン形成が必要とされる。
【0020】
このパターニングP1におけるパターン溝の形成においては、ガラス基板11ないしはガラス基板11上にコーティングされたアルカリバリア層に、基板の割れの原因となるスクラッチ傷がつくのを防ぐ必要がある。そのため、金属針を使用するメカニカルスクライバーによらず、エキシマレーザ、特に本実施形態においてはKr-Fエキシマレーザを用いる。
Kr-Fエキシマレーザは、赤外域の光で金属を溶かして切断する第1高調波のNd-YAGレーザ(波長:1064nm)とは異なり、紫外域の光で金属を昇華させて切断してパターンを形成する。その結果、ガラス基板への損傷を防ぐことが出来る。
なお、本実施形態においては、エキシマレーザを用いて金属裏面電極層12のパターニングを行うが、本発明はこれに限るものではなく、エキシマレーザの代わりに、第2高調波以上のNd-YAGレーザ、言い換えれば、波長が532nm以下のNd-YAGレーザであってもよく、より望ましくは、第4高調波のNd-YAGレーザ(波長:266nm)であってもよい。
【0021】
パターニングP2は、高抵抗バッファ層14の製膜後に行なわれるパターニングである。パターニングP2におけるパターン溝の形成においては、光吸収層13が光を吸収することと、熱影響による膜の変質を避ける必要があることから、レーザ法を避けて、金属針によるメカニカルスクライビング法が適用される。
【0022】
パターニングP3は、窓層15製膜後に行なわれるパターニングである。パターニングP3におけるパターン溝の形成においては、窓層15として構成される透明導電膜が硬質で透明であることから、レーザ法は適用しにくい。そのため、金属針によるメカニカルスクライビング法が適用される。
【0023】
上記の通り作製される太陽電池モジュール1において、金属裏面電極層12には、光吸収層13との密着性、レーザによるパターニングP1の容易さ、低抵抗率が要求される。
【0024】
ここで、光吸収層13との密着性とは、金属裏面電極層12から光吸収層13が剥離しないことが要求されることを指し示す。
【0025】
また、レーザによるパターニングP1の容易さとは、パターニングP1の形成時に、断線することのない連続した1本の直線状のパターン溝の形成が要求されることを指し示す。この点に関しては更に、パターン溝付近に、デブリやバリといった突起部が発生したり、熱影響部の形成を最小にすることが要求される。
【0026】
また、低抵抗率は、化合物系薄膜太陽電池1の発電効率の低下を招く抵抗成分が出来る限り小さいものであることが要求されることを指し示す。この点、金属裏面電極層12が低抵抗率に関わる点は特に、金属裏面電極層12と光吸収層13の剥離、及び、光吸収層13の製膜過程における気相セレン化時に、モリブデン(Mo)とセレン(Se)とが反応して形成されるモリブデンセレナイド(MoSe2)層が直列抵抗成分の増加を招く点にある。
【0027】
ここで、本願発明者は、上記の通り金属裏面電極層12に要求される光吸収層13との密着性、レーザによるパターニングP1の容易さ、低抵抗率を決定する要因として、金属裏面電極層12の表面形状とその膜厚に着目し、その相関関係を検証した。
【0028】
まず、金属裏面電極層12の表面形状に関して行った実験について説明する。
本実施形態において、金属裏面電極層12はDCスパッタ法により作製されるところ、本願発明者は、金属裏面電極層12の表面形状がスパッタの製膜圧力によって変化することを見出している。
即ち、製膜圧力が低い場合、膜密度ないしはモリブデン(Mo)粒子の密集度が高くなるために、表面の平滑度が増す。逆に製膜圧力が高い場合、膜の表面における膜密度ないしはモリブデン(Mo)粒子の密集度が小さくなるために、隙間の多い形状となる。
そして、当該金属裏面電極層12の表面の膜密度ないしはモリブデン(Mo)粒子の密集度を定量的に評価すべく、製膜圧力のみを変えて作製した金属裏面電極層12に対し、金属裏面電極層12の表面での反射率を測定する実験を行った。
【0029】
図2に、パターニングP1に使用するパターニング装置を示す。
反射率の測定においては、図2に示されるパターニング装置を用いた。
また、当該パターニング装置の照射条件は表1に示される通りであり、波長248nmのKr-Fエキシマレーザにより、当該波長248nmに略一致する波長250nmの位置における金属裏面電極層12の全反射を測定した。
【0030】
【表1】

【0031】
また、本実験において反射率を測定した金属裏面電極層12の製膜条件を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2中のパワーに関し、本実施形態における金属裏面電極層12は三層構造で製膜を行っており、ガラス基板11上に製膜される順に、0.66kW、2.88kW、2.88kWで製膜される。なお、この三層からなる金属裏面電極層12の各層の膜厚は、ガラス基板11側から順に90nm、360nm、360nm程度であり、トータルの膜厚は800〜820nmである。
【0034】
上記製膜条件の下、製膜圧力のみを変化させて作製した金属裏面電極層12の反射率の測定結果を図3に示す。
図3に示されるように、製膜圧力が低いほど反射率は上昇する。このことは即ち、製膜圧力が低い場合には、膜密度ないしはモリブデン(Mo)粒子の密集度が高くなって、表面の平滑度が増していることを示している。
この点、反射率が高すぎると、照射面へのエネルギー密度が減少することとなってパターニングが困難となることが想定される。
また、表面が平滑となるために、光吸収層13と金属裏面電極層12との密着性が低下し、光吸収層13が金属裏面電極層12から剥離するおそれがある。
さらに、金属裏面電極層12と光吸収層13の密着性が悪い場合には、剥離を生じて両層の接合面に隙間ができ、直列抵抗成分が増加する。
【0035】
逆に製膜圧力が高いほど反射率は低下する。このことは即ち、製膜圧力が高い場合には、膜密度ないしはモリブデン(Mo)粒子の密集度が小さくなって、表面は隙間の多い形状となっていることを示している。
この点、隙間の多い形状は、光吸収層13との密着性に有効である。しかしながら、あまり隙間が多い場合、言い換えれば反射率が低すぎる場合には、光吸収層13の製膜工程の気相セレン化時にセレン(Se)との反応性が高くなり、モリブデンセレナイド(MoSe2)層が過剰に形成される。そして、このモリブデンセレナイド(MoSe2)層形成による体積膨張により、光吸収層13と金属裏面電極層12との密着性が低下し、光吸収層13が金属裏面電極層12から剥離するおそれがある。
また、モリブデンセレナイド(MoSe2)層は、直列抵抗成分の増加を招いて、太陽電池特性を低下させる。このことは、金属裏面電極層12の抵抗率と反射率の相関関係を表す図4から明らかなように、反射率10%未満では抵抗率が非常に高く、太陽電池特性が悪い。
【0036】
以上の実験結果に基づき、反射率10%以上35%以下の範囲の金属裏面電極層12を製膜させることで、抵抗率が低く、金属裏面電極層12と光吸収層13との密着性が高く、パターニングP1が容易な化合物系薄膜太陽電池1を得ることができることが明らかとなった。
また、以上の実験結果から、製膜圧力20mTorr以下において、上記反射率10%以上35%以下の範囲の金属裏面電極層12が製膜可能であることが明らかである。
【0037】
次に、金属裏面電極層12の膜厚に着目した実験を行った。
膜厚は、スパッタ・ターゲットに印加されるパワーと、基板の搬送速度の組み合わせによって決まることころ、本実験では搬送速度を変えて実験を行った。
【0038】
膜厚の評価実験における金属裏面電極層12の製膜条件を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
本実験においても、金属裏面電極層12は三層構造で製膜を行っており、ガラス基板11上に製膜される順に、0.66kW、2.88kW、2.88kWで製膜される。
【0041】
各製膜条件下において得られた金属裏面電極層12の内容を表4に示す。
【0042】
【表4】

【0043】
表4に示されるように、膜厚が厚いほど、シート抵抗は小さくなった。
また、膜厚340〜820nmの範囲であれば、金属裏面電極層12の反射率は、上述した反射率10%以上35%以下の範囲に属し、有効な太陽電池特性を得られる化合物系薄膜太陽電池1が作製可能であることが明らかである。
【0044】
また、各製膜条件下で製膜した金属裏面電極層12を用いて作製した化合物系薄膜太陽電池1の特性を表5に示す。
【0045】
【表5】

【0046】
この結果、膜厚を820nm、560nm、340nmと変えても太陽電池の特性に変化は見受けられなかった。
以上のことから、金属裏面電極層12の膜厚に因らず、直列抵抗の抵抗値は殆ど変化しないことが分かった。
また、膜厚が820nm、560nm、340nmのどの場合も、金属裏面電極層12のガラス基板11からの剥離や、光吸収層13の金属裏面電極層12からの剥離は発生せず、金属裏面電極層12の膜厚の差による密着性について、差はほとんど観察されなかった。
また、上述した図2に示すパターニング装置によってパターニングを行った結果、膜厚が820nm、560nm、340nmのどの場合も、連続した1本の直線からなるパターン溝が形成されると共に、両隣のセルとの絶縁が確保されており、膜厚の差によるパターニング性について、差はほとんど観察されなかった。
【0047】
もっとも、膜厚が厚い場合には、パターニングP1によって、パターン溝付近にデブリやバリといった突起部が生じ易くなったり、パターン溝内部に短絡の原因となるブリッジが生じやすくなる。この問題は、膜厚を薄くすることで解決される。また、膜厚を薄くする場合には、搬送速度を上げることになり、製造工程において製造効率が高くなる。
【0048】
さらに、パターニングP1の容易さに関し、上述した図2に示すパターニング装置によりパターニングを行った結果、膜厚800nm以下、反射率35%以下の金属裏面電極層12を切断可能であることが分かった。
【0049】
上述の膜厚800nm以下、反射率35%以下の金属裏面電極層12を作製する場合には、まず、所定の真空チャンバ内に、ガラス基板11を試料として配置すると共に、モリブデン(Mo)をスパッタターゲットとして配置した上、当該真空チャンバ以内を真空排気する。
それから、当該真空チャンバ内にガス流量60〜70sccmでアルゴン(Ar)ガスを注入して真空チャンバ内を製膜圧力20mTorr以下の雰囲気に保持した上、上記真空チャンバ内に配置された一対のスパッタ電極を駆動させて、試料であるガラス基板11とスパッタターゲットであるモリブデン(Mo)の間に電圧をかけ、ガラス基板11上にモリブデン(Mo)を製膜する。
これにより、レーザによる反射率が35%以下の金属裏面電極層12が作製される
【符号の説明】
【0050】
1 化合物系薄膜太陽電池
11 ガラス基板
12 裏面電極層
13 光吸収層
14 高抵抗バッファ層
15 窓層
P1 パターニング1
P2 パターニング2
P3 パターニング3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に、モリブデンからなる金属裏面電極層を積層した化合物系薄膜太陽電池であって、
上記金属裏面電極層は、スパッタ法により、その表面の反射率が10%以上35%以下の範囲で上記ガラス基板上に製膜されている、
ことを特徴とする化合物系薄膜太陽電池。
【請求項2】
上記ガラス基板上に製膜されるモリブデンの膜厚が800nm以下である、
請求項1記載の化合物系薄膜太陽電池。
【請求項3】
上記請求項1又は2に係る化合物系太陽電池を構成する金属裏面電極層の製造方法であって、
所定の真空チャンバ内に、上記ガラス基板を試料として配置すると共に、上記モリブデンをスパッタターゲットとして配置した上、当該真空チャンバ内を真空排気する工程と、
上記真空排気されたチャンバ内にガス流量60〜70sccmで不活性ガスを注入して製膜圧力20mTorr以下に保持した上、上記真空チャンバ内に配置された一対のスパッタ電極を駆動させて、上記ガラス基板と上記モリブデンの間に電圧をかけ、上記ガラス基板上に上記モリブデンを製膜する工程と、を有する、
ことを特徴とする化合物系薄膜太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−212614(P2010−212614A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59809(P2009−59809)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成13年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電技術研究開発委託事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】