説明

化学気相成長用の流入口要素及び化学気相成長方法

化学気相成長反応器10用の流入口要素22は、反応器の上流から下流への方向に対して横切る面において互いに並んで延在する、複数の細長い管状の要素64、65から形成される。管状の要素は、ガスを下流方向に放出する入口を有する。ウェハキャリア14は、上流から下流への軸を中心に回転する。ガス分配要素は、軸を通って延在する中央面108に対して非対称であるガス分布パターンを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、化学気相成長方法及び化学気相成長装置に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2008年12月4日に出願された米国仮特許出願第61/201,074号の出願日の利益を主張し、その開示内容を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0003】
化学気相成長は、化学種を含む一種以上のガスを、通常平坦なウェハである基板の表面上に向け、それにより反応種が反応し表面上に堆積物を形成することを伴う。たとえば、結晶ウェハ上の半導体材料のエピタキシャル成長により、化合物半導体を形成することができる。III−V族半導体と呼ばれる半導体は、一般に、ガリウム、インジウム、アルミニウム及びそれらの組合せ等のIII族金属源と、水素化物の一種若しくは複数種等のV族元素源、又はNH、AsH若しくはPH、又はテトラメチルアンチモン等のSb有機金属等のV族元素の一種若しくは複数種のV族元素源とを用いて形成される。これらのプロセスにおいて、サファイアウェハ等のウェハの表面で、ガスは互いに反応し、一般式InGaAlAsSbのIII−V族化合物を形成する。ここで、X+Y+Z=およそ1であり、A+B+C+D=およそ1であり、X、Y、Z、A、B、C及びDの各々は0と1との間とすることができる。場合によっては、他のIII族金属のうちのいくつか又はすべての代りにビスマスを使用することもできる。
【0004】
一般に「ハロゲン化物」又は「塩化物」プロセスと呼ばれるいくつかのプロセスでは、III族金属源は、一種以上の金属の揮発性ハロゲン化物、最も一般的にはGaCl等の塩化物である。一般に有機金属化学気相成長すなわち「MOCVD」と呼ばれる別のプロセスでは、III族金属源は、たとえば金属アルキルのようなIII族金属の有機化合物である。
【0005】
化学気相成長において広く採用されてきた装置の一形態は、垂直軸を中心に回転するように反応チャンバ内に取り付けられたディスク状ウェハキャリアを有する。ウェハは、その表面がチャンバ内で上流に向くようにキャリアに保持される。キャリアが軸を中心に回転すると、反応性ガスが、キャリアの上流の流入口要素から反応チャンバ内に導入される。流動ガスは、キャリア及びウェハに向かって下流に、望ましくは層状栓流で流れる。ガスが回転するキャリアに近づくと、粘性抵抗がガスを推進して、軸を中心に回転させ、それにより、キャリアの表面近くの境界領域において、ガスが軸を中心にかつキャリアの外周に向かって外側に流れる。ガスは、キャリアの外縁を越えて流れる際、キャリアの下方に配置された排気ポートに向かって下方に流れる。最も一般的には、このプロセスは、連続した種々のガス組成で、かつ場合によっては種々のウェハ温度で行われ、所望の半導体デバイスを形成する必要に応じて種々の組成を有する半導体の複数の層を堆積させる。単に例として、発光ダイオード(「LED」)及びダイオードレーザの形成では、種々の比率のGa及びInを有するIII−V族半導体の層を堆積させることによって多重量子ウェル(「MQW」)構造を形成することができる。各層は、およそ数10オングストロームの厚さ、すなわち数個の原子層とすることができる。
【0006】
この種の装置は、キャリアの表面にわたりかつウェハの表面にわたり、反応性ガスの安定したかつ規則正しい流れを提供することができ、それにより、キャリア上のウェハのすべて及び各ウェハのすべての領域が、実質的に均一な状態に晒される。これにより、ウェハ上の材料の均一な堆積が促進される。そのような均一性は重要であり、それは、ウェハ上に堆積された材料の層の組成及び厚さのわずかな差であっても、その結果生成されるデバイスの特性に影響を与える可能性があるためである。
【0007】
本技術分野において、この種の装置で用いられる流入口要素の開発に対して、これまで多大な努力がなされてきた。一般に、流入口要素は、サイズがウェハキャリアとおよそ等しい、活性化したガス放出領域にわたって分散している反応性ガスのための入口を有している。これら流入口要素のいくつかは、V族水素化物の混合物等の第1の反応性ガスを移送し、他のものは、金属アルキル及びキャリアガスの混合物等の第2の反応性ガスを移送する。これらの入口は、回転軸に対して平行に延在している管として形成される場合があり、流入口要素の下方に向いているか又は下流の面の上に分散されている。これまで、入口を対称的なパターンで配置することに対して、多大な努力がなされてきた。通常、第1のガス入口は、ウェハキャリアの回転軸を中心に半径対称であるか、又は回転軸において互いに交差する少なくとも2つの垂直な対称面を有するパターンで設けられる。第2のガス入口は、第1のガス入口が間に点在している、同様に対称的なパターンで設けられていた。流入口要素は、一般に、ガスを管状入口に通す複雑な流路構造を組み込んでいる。さらに、ウェハは、通常、たとえば約500℃〜約1200℃のような高温で維持されるため、流入口要素に冷却剤流路を設けなければならない。冷却剤流路は、水又は他の液体の循環流を移送し、したがって、ガスの早期反応を制限するか又は防止するように、流入口要素の温度を比較的低く維持する。たとえば、開示内容を引用することにより本明細書の一部をなすものとする特許文献1に開示されているように、流入口要素に、反応種のないキャリアガスの流れを排出する追加の構造が設けられる場合もある。
【0008】
キャリアガス流は、反応性ガスが流入口要素の付近にある間に、ガス流を互いに分離する。ガスは、流入口要素から離れるまで互いに混合しない。さらに、キャリアガス流を排出することにより、流入口要素から出る反応性ガスの再循環が制限されるか又は防止される。したがって、反応性ガスは、流入口要素に望ましくない堆積物を形成する傾向がない。たとえば、開示内容を引用することにより本明細書の一部をなすものとする、本願と同じ譲受人に譲渡された特許文献2に記載されているように、流入口要素の表面から下流に突出してガス流を誘導するブレード状ディフューザを設けることにより、流入口要素の付近における排出されたガスの再循環を低減することができる。
【0009】
通常、入口は、流入口要素の活性化領域全体、すなわち入口が配置されている領域全体にわたり、流入口要素から離れる方向に均一な流速を提供するように、構成されかつ配置されている。場合によっては、特定のガスに対するガス入口を、2つ以上のゾーンに、たとえば回転軸の近くの第1のゾーン及び軸から遠い第2のゾーンとして分割することができる。これら2つのゾーンに別個のガス流路を設けてもよく、それにより、第1のガスの流速を、2つの領域において独立して制御することができる。たとえば、1つの一般的な配置では、V族水素化物等の第1のガスに対する入口は、流入口表面の大部分を覆うアレイで配置され、一方で、III族アルキル等の第2のガスに対する入口は、中心軸に対して略半径方向に延在する1つ以上の狭いストリップで配置される。そのようなシステムでは、軸から遠くに配置されるストリップの一部は、ウェハキャリアの比較的面積の広いリング状部分に第2のガスを供給し、一方で、同じストリップの軸に近い部分は、ウェハキャリアのより面積の狭いリング状部分にガスを供給する。ウェハキャリアの単位面積につき等しい第2のガスの束を提供するために、ストリップに沿った単位長につき第2のガスの不均等な排出速度を提供するように、第2のガス入口を区画することが一般的であった。たとえば、軸の近くの入口に、第2のガスの濃度が比較的低いガス混合物を提供してもよく、一方で、軸から離れた入口に対し、より高濃度のガス混合物を提供してもよい。そのような区画化により、システムに複雑性が加わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0021574号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0173735号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように開発されてきたにも関らず、依然としてさらなる改善が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、化学気相成長反応器を提供する。本発明のこの態様による反応器は、望ましくは、上流方向及び下流方向を有する反応チャンバを有し、同様に望ましくは、上流方向及び下流方向に延在する軸を中心に回転するように、反応チャンバ内のキャリア位置にウェハキャリアを支持するように適合されたキャリア支持体も有する。本発明のこの態様による反応器は、好ましくは、キャリア位置の上流でチャンバに取り付けられた流入口要素を有し、それは、互いに垂直であると共に上流方向に対して垂直なX水平方向及びY水平方向に延在するガス分配面を有する。
【0013】
流入口要素は、好ましくは、ガスをチャンバ内に排出する複数の細長いガス入口を有し、細長いガス入口は、互いに平行にかつガス分配面をX水平方向に横切って延在する。細長い入口は、望ましくは、反応器のY方向中央面を横切って延在し、ガス分配面の主要部分を横切って延在してもよい。たとえば、細長い入口は、ガス分配面全体を実質的に覆うこともでき、又はウェハキャリアの面積におよそ等しい面積を覆うこともできる。細長いガス入口は、好ましくは、第1の反応性ガスを排出する複数の第1のガス入口と、第2の反応性ガスを排出する複数の第2のガス入口とを有し、第1のガス入口は、Y水平方向において互いに間隔を空けて配置され、第2のガス入口は、Y水平方向において互いに間隔を空けて配置されると共に、第1のガス入口が間に点在している。
【0014】
流入口を、X水平方向に延在する反応器の中央面を中心に対称でないパターンで配置することができる。パターンは、そのような中央面を中心に反対称とすることもできる。すなわち、X方向中央面の一方の側への正のY距離に配置された任意の第1のガス入口に対し、第2のガス入口が、X方向中央面の反対側への対応する負のY距離に配置される。
【0015】
本発明のさらなる他の態様は、気相成長方法及び気相成長反応器で用いられる流入口要素を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による堆積装置を示す概略断面図である。
【図2】図1の装置で用いられる構成要素の概略平面図である。
【図3】図2における線3−3に沿って取り出された概略断面図である。
【図4】図2及び図3の要素におけるいくつかの構造を示す概略部分断面斜視図である。
【図5】図4に示す構造の一部の拡大尺の概略部分断面図である。
【図6】図5と同様であるが、図4に示す構造のさらなる部分を示す図である。
【図7】図1〜図6の装置で達成されたウェハキャリア上のガス分布の概略図である。
【図8】図1〜図6の装置で達成されたウェハキャリア上のガス分布の概略図である。
【図9】図1〜図6の装置で達成されたウェハキャリア上のガス分布の概略図である。
【図10】図4と同様であるが、本発明のさらなる実施形態による装置の部分を示す図である。
【図11】図4と同様であるが、本発明のさらに別の実施形態による装置を示すさらなる図である。
【図12】図2と同様であるが、本発明のさらに別の実施形態による装置の部分を示す図である。
【図13】本発明のさらに別の実施形態で用いられる構成要素の概略断面図である。
【図14】本発明のさらに別の実施形態で用いられる構成要素の概略断面図である。
【図15】本発明のさらに別の実施形態で用いられる構成要素の概略断面図である。
【図16】本発明のさらに別の実施形態で用いられる構成要素の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態による反応器(図1)は反応チャンバ10を有し、その壁の内面11は実質的に、中心軸16を中心とする回転面の形態である。反応器の壁は、反応器の上流端に隣接する先細り部分13を有することができ、また可動フープ状部分17を有することもできる。軸16を中心に回転するようにチャンバにスピンドル12が取り付けられている。スピンドルには、ディスク状のウェハキャリア14が取り付けられている。ウェハキャリア14は、ウェハ18等、1つ以上の基板を、ウェハの表面20が軸に沿って上流方向Uに向くように保持するように配置されている。可動壁部分17は、システムが図示するように動作状態であるとき、ウェハキャリア14の周囲に延在するシャッタを形成する。シャッタを、システムをロード及びアンロードするためにポートを開放するように軸方向に移動させることができる。通常、ウェハキャリア14は、スピンドルに脱着可能に取り付けられており、それにより、システムを、ウェハキャリアを取り除くことによってアンロードし、新たなウェハキャリアを挿入することによって再ロードすることができる。
【0018】
ウェハキャリア及びウェハを加熱するために、反応器内に電気抵抗ヒータ等のヒータ15が設けられている。また、反応チャンバの下流端には排気系19が接続されている。
【0019】
装置の上述した特徴は、ニューヨーク州プレーンビュー(Plainview, New York)のVeeco Instruments, Inc.社により登録商標「TurboDisc」及び「Ganzilla」で販売されている反応器で用いられるものと同様のものとすることができる。
【0020】
反応チャンバの上流端には、流入口要素22が設けられている。流入口要素の下流面24は、ウェハキャリア及びウェハに向かって下流方向に向いている。流入口要素は、通常、N又はH等のキャリアガスと混合されている、V族水素化物等の第1の反応性ガス源30に接続されている。流入口要素はまた、同様に通常はキャリアガスと混合されている、金属アルキル等の第2の反応性ガス源26にも接続されている。さらに、流入口要素は、いかなる反応性ガスとも混合されていないN又はH等のキャリアガス源32と、冷却剤循環装置33とに接続されている。
【0021】
図2及び図3に最もよく示すように、流入口要素22は、下流に向いた面42を有する上板40と、下流面42から下流に突出している環状マニホルド44とを有している。マニホルド44は、内部バッフル46(図2)によって、第1のガス部分48及び第2のガス部分50に細分化されている。第1のガス部分48及び第2のガス部分50は、概して、中央面52の両側に位置しており、中央面52は、反応器を通って延在すると共に反応器の軸16を組み込んでいる。第1のガス部分48は、第1の反応性ガス源30に接続されており、第2のガス部分50は、第2の反応性ガス源26に接続されている(図1)。これらの接続を、上板40を通って下方に延在するボアを通して確立することができる。ガスマニホルド44から下流に、環状の冷却剤流路が設けられている。冷却剤流路は、中央面52の一方の側に配置された冷却剤入口部分54と、中央面52の反対側に配置された冷却剤出口部56とに細分化されている。
【0022】
冷却剤入口部分及び冷却剤出口部分は、マニホルドの部分48及び50を通って延在している導管(図示せず)によって冷却剤循環装置33(図1)に接続されている。
【0023】
上板40から下流にガス分配板60が配置されており、それにより、板60及び40は、協働してそれらの間にガス分配チャンバ62を画定する。ガス分配チャンバ62は、キャリアガス源32(図1)と連通しているが、マニホルドの第1のガス部分又は第2のガス部分とは連通していない。
【0024】
図4に最もよく示すように、板60は、互いに平行に延在する多数の細長い管状ガス分配要素64及び66から形成されている。細長い要素64及び66の伸長方向を、任意に、「+X」方向と呼ぶ。この方向は、上流方向及び下流方向に対して垂直であると共に、チャンバ(図1)の軸16に対して垂直な方向である。細長い要素は、「+Y方向」において互いにずれており、「+Y方向」もまた軸16に対して垂直であると共に、+X方向に対して垂直である。
【0025】
軸16が通常(但し必須ではない)、通常の重力基準面において垂直に延在するため、X方向及びY方向を含む、軸16に対して垂直な方向を、本明細書では「水平」方向と呼ぶ。また、軸に対して垂直な面を、本明細書では水平面と呼ぶ。したがって、上板40及び分配板60は共に水平面に延在している。また、従来のデカルト座標系のように、+X方向と反対の水平方向を、本明細書では−X方向と呼び、+Y方向と反対の方向を、本明細書では−Y方向と呼ぶ。軸16に対して平行な上流方向U及び下流方向Dは、デカルト座標系の第3の方向、すなわちZ方向を構成する。
【0026】
管状の要素64を、本明細書では第1のガス分配要素と呼ぶ。したがって図5に示すように、各第1のガス分配要素は、開口部のない上流壁68、開口部のない側壁70及び下流壁72を有する略矩形管状体を組み込んでいる。壁68、70及び72は、協働して内部ボア74を画定する。下流壁72には、細長い溝穴76の形態の開口部が内部を通って延在している。溝穴76は、第1のガス要素64に沿って縦方向に(X方向に)延在している。
【0027】
下流壁72に細長いディフューザ78が取り付けられており、それは、第1のガス分配要素64に沿って縦方向に延在している。ディフューザ78は、概して、三角柱の形態である。ディフューザは、2つの部分80から形成されており、それらの各々は、ディフューザ内で縦方向に、すなわちX方向に延在している通路82を組み込んでいる。部分80は、管状の要素の下流壁72に背面取付されている。ディフューザ80は、全体として、概して細長い三角柱の形態である。ディフューザ幅、すなわちY方向における寸法は、下流方向Dにおける距離が管状の要素から離れるに従い低減する。通路又は追加のガス入口84が、管状の要素からディフューザ78を通って、ディフューザの管状の要素から遠い縁、すなわちディフューザの下流縁まで延在している。通路又は入口84は、ディフューザの2つの背面合せされた三角形部分80によって画定された細長い溝穴の形態である。通路84は、溝穴76と連通し、したがって、第1のガス分配要素64の長さに沿って管状の要素の内部ボア74と連通している。
【0028】
本明細書では第2のガス分配要素と呼ぶ要素66は、第1のガス要素64と同一であるが、第2のガス分配要素の各々(図6)の下流壁86には、第1のガス分配要素の溝穴76の代りに、その長さに沿って一連の穴88が配置されている。同様に、第2のガス分配要素各々のディフューザ90は、一連の小さい管状入口ポート92を有し、それらのうちの1つが、図6において、ディフューザを通って延在し穴88と連通しているのが見える。通路又は入口ポート92の各々は、ディフューザ90の下流縁において開放している。ここでまた、各管状の要素は上流壁96及び側壁94を有し、それにより、下流壁86並びに他の壁94及び96が協働して、要素内を縦方向に延在する内部ボア98を画定する。ここでもまた、各ディフューザは、冷却剤通路100を有しており、それもまた縦方向に延在している。要素66の長さに沿って設けられている多数の個々の入口92は、協働して、細長い入口を画定している。したがって、本開示で用いるように、細長い入口に言及する場合、それは、要素64の溝穴76等の細長い単一の溝穴を含むと共に、一列に配置された複数の個々の入口から形成される細長い入口も含むものと理解されるべきである。
【0029】
図4に示すように、第1のガス分配要素64及び第2のガス分配要素66は、並んで配置され、相互に隣接する要素の側壁94及び70間に延在している溶接部102による等、互いに機械的に取り付けられている。要素の上流壁94及び68は、協働して板60の上流面を画定し、下流壁72及び86は、協働して板の下流面を画定する。溶接部102は、要素の長さに沿って、間隔が空けられた位置にのみ配置されている。したがって、本明細書において「基礎」入口と呼ぶ溝穴状の入口開口部104は、板を通してその上流面からその下流面まで、隣接するガス分配要素64及び66の間を延在している。ガス分配板60の上流面は、板60と上板40との間の空間62に面している。
【0030】
図2及び図3に最もよく示すように、複合板60は、マニホルド44に取り付けられ、マニホルドによって包囲される円形領域を横切って完全に延在している。したがって、板60は、本明細書では流入口要素の活性化領域又はガス放出領域と呼ぶ円形領域を完全に占有する。この円形領域は、軸16と同軸である。第1のガス分配要素64及び第2のガス分配要素66は、X水平方向に、すなわち同様にX方向に延在する中央面108に対して平行な方向に延在する。第1のガス分配要素64及び第2のガス分配要素66は、物理的に第1のガス部分48と第2のガス部分50との間に延在し、たとえば溶接等によって、両部分に機械的に接続されている。しかしながら、第1のガス分配要素64の内部ボアは、第1のガス部分48にのみ連通しており、第2のガス分配要素66の内部ボアは、第2のガス部分50にのみ連通している。ディフューザ78、90に組み込まれた冷却剤流路82、100(図5及び図6)は、両端部において開放しており、冷却剤入口部分54及び冷却剤出口部分56(図3)に接続されている。
【0031】
図2に最もよく示すように、個々のガス分配要素64及び66の各々は、X方向に対して垂直に延在している中央面52を横切って、X方向に延在している。個々のガス分配要素によって画定される細長い入口もまた、中央面52を横切って延在している。この実施形態では、各ガス分配要素と各ガス分配要素によって画定される細長い入口とは、流入口要素の活性化ガス分配領域の実質的に範囲全体を横切って延在している。第1のガス分配要素64及び第2のガス分配要素66は、X方向に延在している中央面108に対して対称的には配置されていない。むしろ、第1のガス分配要素64及び第2のガス分配要素66は、中央面108に対して反対称又は負対称(negative-symmetry)パターン内に配置されている。すなわち、中央面108から正の差すなわち+Yの差で配置されている第1のガス分配要素64各々に対し、第2のガス分配要素66が、中央面108から対応する−Yの距離に配置されている。たとえば、第1のガス分配要素64aは、中央面108から距離+Yに配置されている。第2のガス分配要素66aは、同じ中央面から等しい大きさの対応する負の距離−Yに配置されている。各ガス分配要素までの距離は、たとえば溝穴状入口84(図6)の長手方向中心線又は穴92(図6)の列の長手方向中心線のような要素によって画定された、入口の長手方向中心線まで測定される。図2の説明において、ガス分配要素間の空間すなわち基礎ガス入口104は、例示を明確にするために省略している。
【0032】
動作時、H、N又は両方等の一種以上のキャリアガスと混合されている、アンモニア又は他のV族水素化物の混合物等の第1の反応性ガスが、マニホルドの第1のガス部分48を通って供給され、第1のガス分配要素64の長手方向ボア74(図5)内に流れ込む。したがって、第1の反応性ガスは、第1のガス分配要素64及び関連するディフューザ78によって画定される入口84から、一連の細長いカーテン状のガス流111(図4)として噴出する。同様に、キャリアガスと混合されている金属アルキル等の第2の反応性ガスは、マニホルドの第2のガス部分50(図2)を通して供給され、第2のガス分配要素66の内部ボア98(図6)を通過する。したがって、第2のガスは、第2のガス分配要素及び関連するディフューザによって画定される入口92から流れ113の列(図4)として噴出する。これらガス流113の列は、第1のガス流111の間に点在する。H、N又はその混合物等のキャリアガスは、キャリアガス空間62内に導入され、板を構成しているガス分配要素64及び66間に画定された空間すなわち基礎開口部104を通過する。したがって、キャリアガスは、第1の反応性ガス流111各々と第2の反応性ガス流113の隣接する列との間に挿入されたカーテン状の流れ115として噴出する。ガス流は、ウェハキャリア14及びウェハ18の付近まで下流に移動し、それらの付近で、ウェハキャリア及びウェハの回転運動による回転流内に押し流される。第1の反応性ガス及び第2の反応性ガスは、ウェハ表面において互いに反応して、たとえばIII−V族半導体として堆積物を形成する。
【0033】
第1の反応性ガス及び第2の反応性ガスは、流入口要素の付近にあり、かつ流入口要素から下流に実質的に層状の秩序立った流れで流れる間、実質的に互いに分離したままである。いくつかの要因がこの作用に寄与する。ディフューザ90及び76は、それらの間に略V字型の流路を画定し、そのような流路は、基礎入口104の下流に配置される。流路は、距離が基礎入口104から下流に離れるほどY水平方向に徐々に広がる。これにより、キャリアガス流115の秩序立った拡散が容易になり、それによって、実質的に層状のキャリアガス流が、ディフューザ76及び90の下流縁において優勢になる。第1の反応性ガス流111及び第2の反応性ガス流113は、ディフューザの下流縁においてこの流れ形態に導入され、したがって、同様の秩序立った層流で流れる傾向がある。さらに、キャリアガス流115は、第1の反応性ガス流111と第2の反応性ガス流113との間に実質的に完全な隔離をもたらす。言い換えれば、上流から下流の軸16に対して横切る、水平面における経路は、第2の反応性ガス流113のうちの1つから隣接する第1の反応性ガス流111まで延在し、キャリアガス流115のうちの1つと交差する。これは、流入口要素の活性化領域、すなわちガス入口が存在する領域内に限られる、水平面に引かれるいかなる曲線に対しても当てはまる。第1の反応性ガス流と第2の反応性ガス流との間のこの実質的に完全な隔離により、ガス間の早期の反応が最小限になる。
【0034】
第1のガス及び第2のガスの流れは、X方向に延在している中央面108を中心に対称ではない。ウェハキャリア及びウェハが固定されていた場合、これにより、ウェハキャリア及びウェハが第1の反応性ガス及び第2の反応性ガスに不均一に露出する結果となる。たとえば、図7に概略的に示すように、ウェハキャリア14が示されており、例示の目的で+X方向に、すなわち図7の右を指しているキャリア上のマーカ120が提供されている。ウェハキャリアがこの向きのままであった場合、暗い縞として示す領域は、第1の反応性ガスによって大きく影響され、一方で明るい縞として示す領域は、第2の反応性ガスによってより大きく影響される。影響領域の同じパターンを図8に示すが、指標120が反対の方向すなわち−X方向を向くように、ウェハキャリア14が中心軸16を中心に180°回転している。図8の明るい縞及び暗い縞のパターンは、図7のパターンの逆である。したがって、ウェハキャリアが回転すると、ウェハキャリアの1つの向きにおいて第1のガスに大きく露出していた領域は、ウェハキャリアの反対の向きにおいて第2のガスに大きく露出することになる。ウェハキャリアが連続して回転すると、露出パターンは図9に示すように均一になる。
【0035】
この構成において、細長い第1のガス分配要素64(図2)のうちの1つに沿った各単位長は、第1のガスをウェハキャリア上の同じサイズの領域に供給する。同様に、細長い第2のガス分配要素66(図2)のうちの1つに沿った各単位長は、第2のガスをウェハキャリアの同じサイズの領域に供給する。したがって、第1のガス分配要素64のすべてが、それらの長さ全体に沿って単位長当り第1のガスの質量流量を同じにするように配置され、かつ、第2のガス分配要素66のすべてが、それらの長さ全体に沿って単位長当り第2のガスの同じ質量流量を提供するように配置されている場合、ウェハキャリア上の第1のガス及び第2のガスの実質的に均一な束を提供することができる。単位長当りの第1のガスの質量流量は、望ましくは、各細長い横穴84(図5)の長さ全体にわたって均一である。また、第2のガスの質量流量は、望ましくは、別個の入口ポート92(図6)の列によって画定される各細長い入口の全長にわたって均一である。単位長当りの体積流量が異なるか又は第1のガス若しくは第2のガスの濃度が異なる、第1のガス入口の複数のゾーン又は第2のガス入口の複数のゾーンを提供する必要はない。これにより、システムの構成及び動作が大幅に簡略化する。さらに、そのような簡略化は、ガス入口の均一なアレイを提供するために一般に用いられる複雑な構造なしに提供される。各流入口要素64又は66の長さに沿って質量流量が均一であることを確実にするために、ボア74又は98を通る要素の長さに沿った流れ抵抗は、望ましくは、ボアから入口84及び92を通る流れ抵抗に比較して小さい。
【0036】
図7及び図8に示す影響パターンは、単に例示のために提供される概略パターンであることが理解されるべきである。実際の実施では、下流に流れるガス自体が、軸を中心とする回転運動に流れ込む。ガスの回転運動により、ウェハキャリアの任意の所与の回転位置におけるガスへの露出パターンは、図7及び図8に示すパターンより均一になる傾向がある。
【0037】
上述した構造及び動作方法を、本質的に任意のサイズの反応チャンバで利用することができる。構造を、たとえば、ウェハキャリアが約600mm以上であり、活性化したガス放出領域がおよそ同じ寸法か又はそれを上回る流入口要素を有する反応器のように、比較的大きいサイズまで拡大することができる。さらに、流入口要素を容易に製造することができる。
【0038】
上述した構造の多数の変形及び組合せを採用することができる。上述した構成の変形では、第1のガス分配要素64を用いてキャリアガス流を供給することもでき、一方で、基礎入口104を用いて第1の反応性ガス流を供給することもでき、第2の分配要素を用いて第2の反応性ガスを供給することもできる。さらに他の変形では、3以上の反応性ガスを用いてもよい。たとえば、ガス分配要素は、互いに略平行に延在する第1のガス分配要素、第2のガス配要素及び第3のガス分配要素を含むこともできる。
【0039】
図10に示すさらなる変形では、ガス分配板260と流入口要素の上板240との間のガス空間262は、たとえばアンモニアのような第1の反応性ガス源に接続され、それにより、基礎入口204を通って板のガス分配要素間に噴出するガス流は、第1の反応性ガス流111となる。この実施形態では、板260を構成するガス分配要素266のすべてが、上述した第2のガス分配要素66と同様に構成されている。したがって、第2の反応性ガス流113は、ディフューザのすべての縁において追加の入口274から噴出する。他の変形では、流入口要素のすべてが、上述した第1のガス分配要素64で用いられるもののようなスリット状入口を有するように構成される。第1のガスと第2のガスとを分離するために別個のキャリアガス流が用いられない場合であっても、ディフューザによって促進される第1の反応性ガス111の平滑な層流内における、ディフューザの先端における第2の反応性ガス113の放出により、ガスの再循環及び流入口要素上の望ましくない副生成物の堆積に対し適切な再確認を行うことができる。
【0040】
別の実施形態(図11)では、各ガス分配要素は管状体286を有し、それは、その下流面で開放している穴287の列の形態で細長いガス入口を画定している。各細長いガス分配要素は、管状体の下流面に取り付けられた2つのディフューザ288を有し、それらは、細長い入口の両側に位置するようになっている。この場合もまた、ガス分配要素は、互いに取り付けられているが、それらの間に基礎入口290を画定するように互いから間隔を空けて配置されている。この実施形態では、基礎入口290と同様に、ガス分配要素において穴287の列によって画定される入口は、管状体286の下流面において反応チャンバに対して開放しており、それにより、入口のすべての開口部は同じ面に配置される。この構成では、ディフューザ288は、ガス分配要素によって画定される各入口287と、隣接する基礎入口290との間に配置される。この場合もまた、上板240とガス分配要素によって形成される複合板との間のガス空間292は、第1のガス源に接続される一方、ガス分配要素は、第2のガス源に接続され、それにより、第1のガス流111は基礎入口290から噴出し、第2のガス流113は、ガス分配要素によって画定される入口287から噴出する。この実施形態でも同様に、ディフューザによって促進される平滑な層流は、再循環及び堆積物形成を阻止する。この実施形態でも同様に、ディフューザに、冷却剤通路289が設けられることが望ましい。さらなる変形では、ガス分配要素によって画定される細長い入口のいくつか又はすべてが、穴の列ではなく溝穴であってもよい。この場合もまた、ガスは、第1のガス及び第2のガスに加えてキャリアガスを含むことができる。
【0041】
さらに別の変形では、ガス分配板の下流面に取り付けられたディフューザを省略してもよい。さらに他の変形では、入口を除く複合板の下流面にわたって多孔性スクリーンを設けてもよい。さらに別の構成(図12)では、管状ガス分配要素360が互いに当接した関係で並んで取り付けられ、たとえば溶接によって合わせて締結される。この構成では、ガス分配要素366によって形成されるガス分配板を通って延在する基礎入口がない。板360から下流に多孔性スクリーン300が取り付けられ、さまざまなガス分配要素の入口364に、スクリーンを通って下流に延在する短い管が設けられる。キャリアガスを、複合板360とスクリーン300との間の空間363内に導入することができ、それにより、キャリアガスがスクリーンを通って流れ、入口362から噴出している反応性ガス流の各々を包囲する。この実施形態では、個々のガス分配要素の底面に冷却流路367を設けてもよい。
【0042】
上述した実施形態では、ガス分配板は、互いに接合された別個の細長いガス分配要素から形成されている。しかしながら、ガス分配板を、上述したものに類似する細長い入口を画定する1つ以上の単一板から形成することもできる。
【0043】
上述した実施形態では、細長いガス入口は直線状である。しかしながら、これは必須ではない。たとえば、図13の実施形態では、実線によって概略的に表す各細長い第1のガス入口464はジグザグパターンで延在している。したがって、そのような入口各々は、概してX方向に、Y方向にわずかに偏向して延在する。概略的に破線で表す細長い第2のガス入口466は同様のジグザグパターンで延在している。基礎入口(図示せず)もまた同様のジグザグ形態とすることができる。この構成でも同様に、第1のガス入口及び第2のガス入口は、概して互いに平行に延在している。しかしながら、細長いガス入口の各々は、依然として概してX方向に延在している。言い換えれば、X方向におけるガス入口の任意の実質的な広がりExにわたり、Y方向におけるそのような入口の広がりEyは、Exに比較して小さい。さらなる変形(図14)では、細長いガス入口564及び566は、直線ではなく弧の形態である。この場合もまた、ガス入口は、概してX方向に延在している。
【0044】
上述した実施形態では、各細長いガス入口は、その長さ全体に沿って単位長当り同じ質量流量の反応性ガスを提供する。変形では、単位長当りの反応性ガスの質量流量は、細長いガス入口の長さに沿って累進的に変化してもよい。これは、たとえば、特定の細長いガス分配要素が、一端のみにおいてガス混合物を受け取り、その長さに沿った流れに対して相当の抵抗を有する場合に行われる可能性がある。図15は、そのような細長い入口から流れ出る第1の反応性ガスの影響パターン601aを概略的に示す。この場合、特定の入口からの反応性ガスの質量流量は、入口の長さに沿って+X方向に累進的に減少する。したがって、ガスによって影響を受けるウェハキャリア上の領域の幅を、+X方向に減少するものとして示す。図15の構成では、第2の反応性ガス入口606は、反対の−X方向に減少する質量流量を有している。中心軸を中心とするウェハの回転は、影響パターンの差を相殺する。たとえば、影響パターン601aの部分603と位置合せされるウェハの部分は、ウェハキャリアが半回転するときに部分605に位置合せされる。さらなる別の構成では、第1のガス入口の交互のものが、反対のX方向に減少する、質量流量、したがって影響パターンを有することができる。第2のガス入口は同様の構成を有することができる。
【0045】
上述した実施形態では、第1のガス入口及び第2のガス入口は、等しい数で設けられ、Y方向に1:1の交互の順序で配置されている。しかしながら、これは必須ではない。たとえば、第2のガス入口の各対の間に、2、3又はそれより多い細長い第1のガス入口を設けてもよい。
【0046】
また、X方向に延在する中央面を中心とする正確な非対称配置で細長いガス入口を配置することは必須ではない。対称配置を含むまで、この配置から外れた配置を用いることができる。また、上述した実施形態では、細長いガス入口を画定する板は、細長い管状ガス分配要素を含む。しかしながら、細長いガス入口を、たとえば、適切なガス分配流路又は入口と連通するチャンバを有する1つ以上の一体板のような他の構造によって提供することもできる。
【0047】
本発明のさらなる実施形態による化学気相成長装置(図16)は、概して中心軸716を中心とする中空の回転体の形態である反応チャンバ710を有している。図1を参照して上述した実施形態と同様に、本装置は、中心軸716を中心として回転するようにウェハキャリア(図示せず)を支持するように適合されたスピンドル(図示せず)等の支持体を有している。この実施形態では、流入口要素722は、図16において概略的に実線によって表す第1のガス入口764と、点線によって概略的に表す第2のガス入口766とを画定している。第1のガス入口は、たとえば、III族元素を含むガス混合物のような第1の反応性ガスのガス源に接続されており、第2のガス入口は、V族元素を含むガス混合物等、第1のガスと反応する第2のガスのガス源に接続されている。ガス入口はまた、図16において点線として概略的に示す第3のガス入口768も有している。第3のガス入口は、キャリアガス源に接続されており、キャリアガスは、チャンバ内で優勢な条件の下で第1のガス及び第2のガスと実質的に反応しない。
【0048】
第1のガス入口は、中心軸716から第1の半径Rを有するガス分配面の領域内にのみ延在している。言い換えれば、第1のガス入口は、中心軸から第1の半径Rまで延在している。第2のガス入口は、中心軸から、この実施形態では第1の半径Rに等しい第2の半径Rまで延在している。第3のガス入口は、第1の半径及び第2の半径より大きい、したがってR及びRより大きい半径Rまで延在している。図示する特定の例では、半径Rは、ガス分配面における反応チャンバの内径に等しいか又はそれよりわずかに小さい。第1の半径R及び第2の半径Rは、ウェハキャリアの半径におよそ等くすることもできる。
【0049】
動作時、第1のガス入口及び第2のガス入口から噴出するガスは、ウェハキャリアまで下流に(図16において軸716に沿って見ている人に向かう方向に)流れ、化学気相成長反応又はキャリアに支持されるウェハの他の処置に関与する。第1の半径R及び第2の半径R内の領域において、第3のガス入口から噴出するキャリアガスは、第1のガス流と第2のガス流との間を下流に流れ、上述したように、これら流れの間で、流入口要素からウェハまでの距離の少なくとも一部にわたり分離を維持する。第1のガス入口及び第2のガス入口によって占有される領域の外側の間隙領域Gにおいて、第3のガス入口から噴出するキャリアガスは、第1の反応性ガス及び第2の反応性ガスをチャンバ710の壁から隔離して維持するカーテンを形成する。これにより、チャンバ壁上の反応生成物の堆積が最小限になる。特に、ガスの再循環が、流入口要素722が反応器壁と接合するチャンバの上流端で発生する可能性がある。図16に示す構成により、いかなる再循環ガスも、本質的にキャリアガスから構成され、したがって、反応器壁又は流入口要素上に堆積物を形成する傾向がない。
【0050】
さらに、間隙領域Gにおいて第1の入口及び第2の入口を省略することにより、ウェハキャリアに向かう反応物質の所与の束を維持するために必要な第1の反応ガス及び第2の反応ガスの全流量が低減する。言い換えれば、第1の反応性ガス及び第2の反応性ガスは、間隙領域Gに提供された場合、ウェハに決して突き当たることなく、ウェハキャリアの外側の周囲を単純に通過する。この無駄をなくすことにより、プロセスで用いられる反応ガスのコストが低減し、また無駄な反応ガスの排出も低減する。
【0051】
図16に示す構成を変更することもできる。たとえば、第1の半径R及び第2の半径Rは、互いに異なることもできる。これら半径のうちの1つを、第3の半径R程度に大きくすることもでき、又はさらにはそれより大きくすることもできる。そのような構成では、反応器壁に隣接するガスのカーテンは、キャリアガスと、反応ガスのうちの一方のみとを含む。そのようなカーテンは、チャンバ壁における堆積を抑制するには依然として有効である。第1のガス入口と第2のガス入口との間に第3のガス入口を設けることは必須ではない。たとえば、第3のガス入口を、間隙領域Gのみに設けることもできる。また、図16ではガス入口を平行な列で配置されるように示すが、他の構造を用いることも可能である。たとえば、第1のガス入口を、「欄(field)」又は連続領域の形態とすることができ、第2のガス入口を、1つ以上の半径方向の列の形態とすることができる。
【0052】
上述した特徴のこれら及び他の変形及び組合せを、本発明から逸脱することなく利用することができるため、好ましい実施形態の上述した説明を、本発明の限定としてではなく単に例示として解釈するべきである。
【産業上の利用の可能性】
【0053】
本発明を、たとえば半導体デバイスの製造に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学気相成長反応器であって、
(a)上流方向及び下流方向を有する反応チャンバと、
(b)前記上流方向及び前記下流方向に延在する軸を中心に回転するように、前記反応チャンバ内のキャリア位置にウェハキャリアを支持するキャリア支持体と、
(c)前記キャリア位置の上流で前記チャンバに取り付けられた流入口要素であって、互いに垂直でありかつ前記上流方向に対して垂直なX水平方向及びY水平方向に延在するガス分配面を有し、ガスを前記チャンバ内に排出する複数の細長いガス入口を有し、前記細長いガス入口は、互いに平行にかつ前記ガス分配面を前記X水平方向に横切って延在すると共に、該反応器のY方向中央面を横切って延在し、前記細長いガス入口は、第1の反応性ガスを排出する複数の第1のガス入口と第2の反応性ガスを排出する複数の第2のガス入口とを有し、前記第1のガス入口は、前記Y水平方向において互いに間隔を空けて配置され、前記第2のガス入口は、前記Y水平方向において互いに間隔を空けて配置されると共に、前記第1のガス入口が間に点在している、流入口要素と
を含んでなる反応器。
【請求項2】
前記細長いガス入口は、前記入口要素の前記ガス分配面の主要部分にわたって延在するパターンで配置される、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記第1のガス入口及び前記第2のガス入口は、前記X水平方向に延在する前記反応器の中央面を中心に対称ではないパターンで配置される、請求項1に記載の反応器。
【請求項4】
前記第1のガス入口及び前記第2のガス入口は、前記X水平方向に延在する前記中央面を中心に反対称であるパターンで配置され、それにより、前記X方向中央面の一方の側への正のY距離に配置された任意の第1のガス入口に対し、第2のガス入口が、前記X方向中央面の反対側への対応する負のY距離に配置される、請求項3に記載の反応器。
【請求項5】
流入口要素であって、
下流方向に向くと共に、互いに垂直でありかつ前記下流方向に対して垂直なX水平方向及びY水平方向に延在するガス分配面を有し、ガスをチャンバ内に排出する複数の細長いガス入口を有し、前記細長いガス入口は、前記X水平方向において互いに平行に延在し、前記細長いガス入口は、前記ガス分配面の主要部分にわたって延在するパターンで配置され、前記細長いガス入口は、第1の反応性ガスを排出する複数の第1のガス入口と、第2の反応性ガスを排出する複数の第2のガス入口とを有し、前記第1のガス入口は、前記Y水平方向において互いに間隔を空けて配置され、前記第2のガス入口は、前記Y水平方向において互いに間隔を空けて配置されると共に、前記第1のガス入口が間に点在している、流入口要素。
【請求項6】
化学気相成長反応器用の流入口要素であって、下流側を有すると共に該下流側から離れる下流方向を画定する構造体を具備し、前記構造体は、前記下流方向に開放すると共に、該下流方向に対して垂直なX水平方向において互いに平行に延在する、複数の細長い基礎ガス入口を画定し、前記基礎ガス入口は、前記X水平方向に対して垂直なY水平方向において互いに間隔を空けて配置され、前記構造体は、前記基礎ガス入口の間で前記X水平方向において互いに平行に延在する、前記基礎ガス入口から下流に突出する複数の細長いディフューザをさらに有し、前記ディフューザは、前記Y水平方向における各前記ディフューザの寸法が、前記下流方向において前記基礎ガス入口から下流の縁まで低減するように先細りであり、前記ディフューザの少なくともいくつかは、該ディフューザの前記縁において開口部を有する追加のガス入口を有する、流入口要素。
【請求項7】
各前記ディフューザは、当該ディフューザ内で前記X方向に延在する少なくとも1つの冷却剤通路を有し、前記構造体は、各前記ディフューザに関連する前記X方向に延在するガス分配流路を有し、前記ガス分配流路は、前記冷却剤通路から上流に配置されると共に、前記追加のガス入口と連通する、請求項6に記載の流入口要素。
【請求項8】
各前記ディフューザは、前記Y方向に互いに間隔を空けて配置された2つの冷却剤通路を有し、1つ以上の接続通路が、前記ディフューザに関連する前記ガス分配流路から前記ディフューザの前記追加のガス入口の前記開口部まで延在し、各前記ディフューザの前記接続通路は、当該ディフューザの前記冷却剤通路の間に延在する、請求項7に記載の流入口要素。
【請求項9】
前記構造体は、前記ディフューザの各々に関連する管状の要素を有し、各前記ディフューザに関連する該管状の要素は、当該ディフューザに関連する前記ガス分配流路を画定すると共にそのようなディフューザを構造的に支持し、前記管状の要素は前記X方向において互いに平行に延在する、請求項7に記載の流入口要素。
【請求項10】
前記基礎ガス入口は、前記管状の要素の隣接するものの間に延在する、請求項9に記載の流入口要素。
【請求項11】
前記構造体は、前記基礎ガス入口及び前記追加のガス入口を有する活性化領域と、前記活性化領域から水平方向にずれている1つ以上のマニホルドとを画定し、前記管状の要素の少なくともいくつかは、前記1つ以上のマニホルドまで延在する、請求項8に記載の流入口要素。
【請求項12】
化学気相成長反応器用の流入口要素であって、互いに平行に延在すると共に、協働して上流側及び下流側を有する板を画定するように互いに機械的に取り付けられる、複数の細長い要素を具備し、前記板は、前記細長い要素の隣接するものの間において前記上流側から前記下流側まで延在する基礎入口開口部を有し、該流入口要素は、前記板の上流に1つ以上のガス空間を画定すると共に前記基礎入口開口部と連通する構造体をさらに具備する、流入口要素。
【請求項13】
前記細長い要素の少なくともいくつかは管状であり、該管状の要素は1つ以上のガス分配流路を画定する、請求項12に記載の流入口要素。
【請求項14】
前記ガス分配流路と連通する追加のガス入口をさらに具備し、該追加のガス入口は前記板の前記下流側に開放している、請求項12に記載の流入口要素。
【請求項15】
前記管状の要素の少なくともいくつかに沿って延在すると共に当該管状の要素の下流に突出する細長いディフューザをさらに具備し、前記追加のガス入口の少なくともいくつかは前記ディフューザ内に延在する、請求項13に記載の流入口要素。
【請求項16】
前記管状の要素の端部において該管状の要素に接続されると共に前記ガス分配流路と連通する1つ以上のマニホルドをさらに具備する、請求項13に記載の流入口要素。
【請求項17】
化学気相成長反応器であって、
(a)上流方向及び下流方向を有する反応チャンバと、
(b)前記上流方向及び前記下流方向に延在する軸を中心に回転するように、前記反応チャンバ内のキャリア位置にウェハキャリアを支持するキャリア支持体と、
(c)前記キャリア位置の上流で前記チャンバに取り付けられた流入口要素であって、前記下流方向に対して垂直な水平方向に延在するガス分配面を有し、ガスを前記チャンバ内に排出する複数の細長いガス入口を有し、前記細長いガス入口は前記水平方向のうちの第1の方向において互いに平行に延在し、前記細長いガス入口は、第1の反応性ガスを排出する複数の第1のガス入口と、第2の反応性ガスを排出する複数の第2のガス入口と、実質的に前記第1の反応性ガス及び前記第2の反応性ガスがなく、かつ該第1の反応性ガス及び該第2の反応性ガスと実質的に反応しないキャリアガスを排出する複数の第3のガス入口とを有し、前記ガス入口は、前記第1の水平方向に対して垂直な前記水平方向のうちの第2の方向において互いに間隔を空けて配置されると共に、前記第1のガス入口及び前記第2のガス入口のうちの少なくともいくつかが隣接する入口の対を構成し、かつ前記第3のガス入口の少なくともいくつかが前記対のうちの少なくともいくつかの前記第1のガス入口と前記第2のガス入口との間に配置されるように、互いの間に点在する、流入口要素と
を含んでなる反応器。
【請求項18】
前記第3のガス入口は、隣接する第1のガス入口及び第2のガス入口の前記対のすべての対の前記第1のガス入口と前記第2のガス入口との間に配置される、請求項17に記載の反応器。
【請求項19】
前記流入口要素は、前記第1の水平方向に延在すると共に前記第3のガス入口から下流に突出する、細長いディフューザを有し、前記第1のガス入口及び前記第2のガス入口は前記ディフューザの上に配置される、請求項17に記載の反応器。
【請求項20】
化学気相成長方法であって、
(a)反応チャンバ内で1つ以上のウェハを保持するウェハキャリアを、該ウェハの表面が上流方向に向くように維持するステップと、
(b)前記上流方向及び下流方向に延在する軸を中心に前記ウェハキャリアを回転させるステップと、
(c)前記軸を横切る第1の水平方向において互いに平行に延在する複数の細長いガス入口から、前記ウェハキャリアに向かって下流に複数種類のガスを排出するステップであって、第1の反応性ガスの流れ及び第2の反応性ガスの流れが、前記細長い入口の別個のものから排出されるように、かつ前記第1の反応性ガス及び前記第2の反応性ガスが実質的になく、かつ該第1の反応性ガス及び該第2の反応性ガスと実質的に反応しないキャリアガスが、前記細長い入口のうちの他のものから排出されるように、かつ前記キャリアガスの流れのうちの少なくとも一部が、前記第1のキャリアガス及び前記第2のキャリアガスの隣接する流れの間で排出されるように行われる、排出するステップと
を含んでなる方法。
【請求項21】
前記第1の反応性ガスは、一種以上のIII族金属の1つ以上の金属源を有し、前記第2の反応性ガスは、一種以上のV族元素の1つ以上の元素源を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
化学気相成長反応器であって、
(a)上流方向及び下流方向を有する反応チャンバと、
(b)前記上流方向及び前記下流方向に延在する軸を中心に回転するように、前記反応チャンバ内のキャリア位置にウェハキャリアを支持するキャリア支持体と、
(c)前記キャリア位置の上流において前記チャンバに取り付けられた流入口要素であって、前記下流方向に対して垂直な水平方向に延在するガス分配要素を有し、第1の反応性ガスを排出する複数の第1のガス入口と、第2の反応性ガスを排出する複数の第2のガス入口と、実質的に前記第1の反応性ガス及び前記第2の反応性ガスがなく、かつ該第1の反応性ガス及び該第2の反応性ガスと実質的に反応しないキャリアガスを排出する複数の第3のガス入口とを有し、前記第1のガス入口、前記第2のガス入口及び前記第3のガス入口は、それぞれ前記軸から第1の半径方向距離、第2の半径方向距離及び第3の半径方向距離まで延在し、該第3の半径方向距離は該第1の半径方向距離及び該第2の半径方向距離のうちの少なくとも一方より大きい、流入口要素と
を含んでなる反応器。
【請求項23】
前記第1の半径方向距離及び前記第2の半径方向距離は互いに実質的に等しい、請求項22に記載の反応器。
【請求項24】
化学気相成長方法であって、
(a)軸を中心に基板を支持するディスク状ホルダを回転させるステップであって、その間、前記基板の表面を、前記軸に対して実質的に垂直にかつ前記軸に沿って上流方向に向くように維持する、回転させるステップと、該回転させるステップの間、
(b)互いに反応する第1のガス及び第2のガスを、前記基板に向かって前記軸に対して平行な下流方向に、前記軸からそれぞれ第1の半径方向距離及び第2の半径方向距離まで広がるガス流の第1のセット及び第2のセットとして排出し、同時に、前記第1のガス及び前記第2のガスと実質的に反応しない第3のガスを、前記下流方向に、前記軸から、前記第1の半径方向距離及び前記第2の半径方向距離のうちの少なくとも一方より大きい第3の半径方向距離まで広がるガス流の第3のセットとして排出するステップと
を含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2012−511259(P2012−511259A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539676(P2011−539676)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/066502
【国際公開番号】WO2010/065695
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(504225666)ビーコ・インストゥルメンツ・インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】