説明

医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、及び医用画像処理方法

【課題】複数の画像を重ねて表示する場合に、複数の画像に部分的な位置ずれがあっても、画像同士の位置合わせを容易にすることが可能な医用画像処理装置を提供する。
【解決手段】モニタ画面6aにVR画像AとVR画像Bとを重ねて表示し、VR画像Bのうち操作者が任意にして領域1内のMPR画像11〜13も表示する。VR画像A又はVR画像Bを部分的に独立して移動、回転させてVR画像A、Bの表示位置を一致させる。例えばVR画像Bの断面を表すMPR画像13を、操作者が指定した回転軸Oで回転させることで、VR画像Bのうち領域1内の画像を回転させて表示させる。これにより、頭部についてはVR画像Aの向きとVR画像Bの向きとを一致させることができる。このように部分的に画像を移動、回転させることでVR画像AとVR画像Bの表示位置及び向き一致させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線CT装置などの医用画像診断装置によって収集された画像同士を重ね合わせて表示するための処理を行う医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像を用いた診断では、例えば異なる時期に撮影された画像を比較するために複数の画像を重ね合わせて表示することが行われる。このように複数の画像を比較するためには、画像同士の表示位置及び向きを一致させる必要がある。2次元画像同士の比較や重ね合わせでは、画像同士の位置合わせは困難ではないが、3次元画像同士の位置や向きを一致させることは煩雑な作業になる。
【0003】
従来においては、操作者は手動で複数の画像を回転させたり移動させたりすることにより表示位置や向きを一致させたり、簡易的に位置合わせを行ったりしていた(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−137190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術における画像の位置合わせの方法によると、ボリュームデータ(ボクセルデータ)全体を1つのデータとして扱っているため、部分的な位置合わせが困難である。撮影を複数回行う場合、前回の撮影時における患者の位置と、今回の撮影時における患者の位置とを全く一致させて撮影を行うことは困難であり、患者の体位や位置がずれた状態で撮影を行うと、得られた画像同士の表示位置や向きを一致させることが困難になる。
【0006】
また、X線CT装置の撮影速度や画像処理の速度が向上したことで大容量のボリュームデータを扱うことが可能となり、撮影範囲を広げることが可能となってきている。しかしながら、撮影範囲が広範になると部分的なずれが生じる場合がある。例えば、患者の全身を撮影した場合、重ね合わせて表示する複数の画像のうち、胸の位置は一致しているが腰がねじれてしまったため腰の位置や向きがずれていたり、肩の位置は一致しているが首の角度が異なっていたりする場合がある。このような場合に、ボリュームデータ全体を1つのデータとして扱って、画像全体の位置や向きを変更して複数の画像の位置を合わせようとしても、部分的な位置ずれを修正することは困難である。その結果、人体の部分的な動きに対応させて複数の画像の表示位置や向きを一致させることが困難であった。
【0007】
また、複数の画像のうち目的の部位の表示位置を一致させようとして画像全体の位置や向きを変更した場合、その目的の部位の表示位置を一致させることができても、周囲の部位については表示位置がずれてしまう場合がある。例えば血管の走行を観察する場合など、広範囲に亘る部位を観察対象とする場合には、部分的に表示位置や向きを一致させることができても、広範囲に亘る部位の表示位置を一致させることは困難である。
【0008】
この発明は上記の問題点を解決するものであり、複数の画像を重ねて表示する場合に、複数の画像に部分的な位置ずれがあっても、画像同士の位置合わせを容易にすることが可能な医用画像処理装置、医用画像処理プログラム、及び医用画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、医用画像診断装置によって収集された複数のボリュームデータに基づく画像のうち少なくとも1つのボリュームデータに基づく画像について、操作者の指示に従って部分的に角度又は位置を変更する画像処理手段と、前記変更後の画像と他のボリュームデータに基づく画像とを重ねて表示手段に表示させる表示制御手段と、を有することを特徴とする医用画像処理装置である。
【0010】
請求項7に記載の発明は、コンピュータに、医用画像診断装置によって収集された複数のボリュームデータに基づく画像のうち少なくとも1つのボリュームデータに基づく画像について、操作者の指示に従って部分的に角度又は位置を変える画像処理機能と、前記変更後の画像と他のボリュームデータに基づく画像とを重ねて表示手段に表示させる表示制御機能と、を実行させることを特徴とする医用画像処理プログラムである。
【0011】
請求項8に記載の発明は、医用画像診断装置によって収集された複数のボリュームデータに基づく画像のうち少なくとも1つのボリュームデータに基づく画像について、操作者の指示に従って部分的に角度又は位置を変えるステップと、前記変更後の画像と他のボリュームデータに基づく画像とを重ねて表示手段に表示するステップと、を含むことを特徴とする医用画像処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
この発明によると、画像の向き又は位置を部分的に変更して表示することにより、患者の部分的な体位の違い、動き又は病変などにかかわらず、複数の画像の表示位置や向きを一致させることが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(構成)
この発明の実施形態に係る医用画像処理装置の構成について図1を参照して説明する。図1は、この発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
画像記憶部3には、X線CT装置、MRI装置、又は超音波診断装置などの医用画像診断装置(図示しない)によって収集されたボリュームデータ(ボクセルデータ)が記憶されている。ボリュームデータには、例えばヘッダデータとして医用画像診断装置名、患者の識別情報(患者IDなど)、患者の氏名、画像番号、撮影年月日、撮影時刻、撮影位置、生年月日、性別、撮影体位、撮影部位などが付加されている。そして、画像を表示する場合、操作部7を用いて例えば患者IDや患者の氏名などを入力することで読み出し可能となっている。
【0015】
画像処理部2は、記憶部3から取得したボリュームデータに対して、所定の画像処理方法をそのボリュームデータに施すことにより画像データを生成し、その画像データを表示制御部5に出力する。画像処理部2は、例えばボリュームレンダリング(Volume Rendering)、MPR(Multi Plane Reconstruction)処理、MIP(Maximum Intensity Projection)処理、又は、MinIP(Minimum Intensity Projection)処理などの画像処理をボリュームデータに施すことにより、ボリュームレンダリング画像データ(以下、「VR画像データ」と称する場合がある)、MPR画像データ、MIP画像データ、又はMinIP画像データなどを生成する。
【0016】
ボリュームレンダリングは、ボリュームデータに対して所定の視線方向(投影光線の投影方向)を決めて、任意の視点から光線追跡処理を行い、視線上のボクセル値(輝度値等)の積分値や重み付き累積加算値を投影面上の画像ピクセルに出力することによって、臓器等を立体的に抽出してVR画像データを作成する処理である。
【0017】
MPR処理は、ボリュームデータを切断する任意の平面(切断平面)の画像データを求める処理である。MIP処理は、投影光線によって貫かれた各ボクセル値から最大値を計算し、得られた最大値を投影面上の画像ピクセルに出力する処理である。また、MinIP処理は、各ボクセル値から最小値を計算し、得られた最小値を投影面上の画像ピクセルに出力する処理である。
【0018】
また、MPR画像を用いる診断では、厚み方向に複数のMPR画像を加算して平均することによって厚み付きMPR画像データを作成し、その厚み付きMPR画像を参照して診断を行う場合もある。
【0019】
表示制御部5は、画像処理部2によって生成されたVR画像データやMPR画像データなどを受けてVR画像やMPR画像を表示部6に表示させる。複数の画像データが操作部7によって制御部4を介して指定された場合、表示制御部5は複数のVR画像データを画像処理部2から受けて、複数のVR画像を重ねて表示部6に表示させる。例えば、同じ患者の術前と術後とで得られたVR画像を重ねて表示することで両画像の比較が行われる。
【0020】
ここで、重ね合わせる画像の1例について図2を参照して説明する。図2は重ね合わせる画像の1例を示す模式図である。ボリュームデータAとボリュームデータBは、患者の全身を撮影することで得られたデータである。例えば、ボリュームデータAが術前に撮影されたデータであり、ボリュームデータBが術後に撮影されたデータである。ここでは図2に示すようなボリュームデータAとボリュームデータBとを重ね合わせる場合について説明する。
【0021】
表示制御部5はボリュームデータAに基づく画像とボリュームデータBに基づく画像とを重ねて表示部6に表示させる。例えば、画像処理部2にてボリュームレンダリングが実行されることで、VR画像データAとVR画像データBが作成され、それらが重ねて表示部6に表示される。
【0022】
この表示の1例について図3を参照して説明する。図3は画像の表示例を示す画面の図である。表示制御部5は画像処理部2からVR画像データAとVR画像データBとを受けると、表示部6のモニタ画面6a上にVR画像AとVR画像Bとを重ねて表示させる。図3では、便宜的にVR画像Aを破線で描画し、VR画像Bを実線で描画している。この実施形態ではVR画像同士を重ね合わせる例について説明するが、VR画像に限らず、MIP画像やMinIP画像などを重ね合わせて表示しても良い。
【0023】
操作者は表示部6に表示させる画像を選択することができる。例えば、表示部6のモニタ画面6a上に表示画像の選択欄を表示させ、操作者が操作部7を用いて合成画像を選択(クリックなど)すると、表示制御部5はVR画像AとVR画像Bとを重ねて表示部6に表示させる。また、操作者によってデータA又はデータBが選択されると、表示制御部5は選択されたVR画像を表示部6に表示させる。このように、この実施形態に係る医用画像処理装置1では、選択された複数のVR画像を重ねて表示部6に表示しても良く、また、1つのVR画像を表示部6に表示しても良い。
【0024】
また、表示制御部5はVR画像A、B上に、ボリュームデータの分割位置を指定するための分割線Lを予め設定された位置(初期設定の位置)に表示させる。画像処理部2は、分割線Lによって指定された位置のMPR画像データを作成し、表示制御部5はそのMPR画像を表示部6に表示させる。
【0025】
操作者はMPR処理の対象となるデータを選択することができる。例えば、表示部6のモニタ画面6a上にMPR画像の選択欄を表示させ、操作者が操作部7を用いてデータBを選択すると、画像処理部2はボリュームデータBに対してMPR処理を施すことによりMPR画像データを作成する。表示制御部5はそのMPR画像を表示部6に表示させる。以下、ボリュームデータBのMPR画像を表示部6に表示する場合について説明するが、ボリュームデータAのMPR画像を表示部6に表示しても良い。
【0026】
図3に示す例においては、互いに直交する3つの断面に沿ったMPR画像が表示部6に表示されている。MPR画像13は分割線Lに沿った断面のMPR画像であり、MPR画像11及びMPR画像12は分割線Lに直交する方向に沿った断面のMPR画像である。例えば、MPR画像11がコロナル像に相当し、MPR画像12がサジタル像に相当し、MPR画像13がアキシャル像に相当する。
【0027】
操作者が操作部7を用いて分割線Lを任意の位置に設定することができる。例えば、図3に示す分割線L2のように、VR画像Bに対して斜めに設定しても良い。このように斜めの分割線L2が設定されても、その分割線L2に沿ったMPR画像と、その分割線L2に直交する方向のMPR画像が画像処理部2によって作成されて表示部6に表示されることになる。
【0028】
また、画像処理部2は操作者が指定した分割線を境界としてボリュームデータを複数の領域に分割し、分割後の各領域のデータに対して所定の視線方向に沿ってボリュームレンダリングなどを施すことでVR画像データなどを生成する。なお、画像処理部2は記憶部3に記憶されている原画像データの書き換えを行わず、位置合わせ用のデータ(以下、「マスクデータ」と称する場合がある)を複数の領域に分割し、分割後の各領域のデータに対して所定の画像処理を施すことでVR画像データなどを生成する。
【0029】
ここで、ボリュームデータの分割処理について図4を参照して説明する。図4は、ボリュームデータの分割位置を指定する際の画面の図である。図3と同様にVR画像AとVR画像Bとが重畳されて表示部6に表示されている状態で、表示制御部5は分割線Lを表示させる。この分割線Lは操作部4を用いることで任意の位置に移動させたり、任意の方向に向きを変えたりすることができる。図3と同様にMPR画像13がこの分割線Lに沿った画像となっている。操作者は操作部4を用いて分割線Lを所望の位置に移動させて分割する位置を指定する。分割線Lに沿ったMPR画像13をモニタ画面6aに表示させることで、操作者はそのMPR画像13を観察しながら分割する位置を指定することができる。分割位置が決まったら、モニタ画面6a上に表示されている分割断面位置の「設定」ボタンを操作部7で指定(マウスでクリック)することで、分割線Lが表示されている位置が分割位置に設定される。
【0030】
また、分割線を複数の位置に設定してボリュームデータ全体を複数の領域に分割しても良い。複数の領域に分割する1例について図5を参照して説明する。図5は分割した各領域を示す模式図である。分割線を複数の位置に設定する場合、例えば図5に示す模式図のようにボリュームデータB全体を領域1〜領域5に分割しても良い。図5に示す例では、領域1は患者の頭部を含み、領域2は胸部と腹部を含み、領域3は腰部を含み、領域4は左脚部を含み、領域5は右脚部を含むようにボリュームデータBが分割されている。ボリュームデータを複数の領域に分割する場合、制御部4によって各領域を示す情報に番号が付され、各領域を示す情報は記憶部(図示しない)に記憶される。
【0031】
分割位置の設定が終了すると、各領域に含まれる個々の画像を独立して任意の方向に回転させたり、任意の方向に移動させたりすることが可能となる。ここで、画像の移動又は回転について図6を参照して説明する。図6は部分的に画像を移動又は回転させる際の画面の図である。図6に示すように、表示制御部5はモニタ画面6a上に操作対象となっている領域を囲むマークM(枠)を表示させる。このマークMによって囲まれた領域が操作対象の部位となっており、操作者は操作部7を用いてそのマークM内の画像を独立して回転させたり、移動させたりすることができる。図6に示す例では、領域1(頭部)を囲むマークM(枠)が表示部6に表示されているため、領域1内の画像を独立して回転させたり移動させたりすることが可能となっている。ボリュームデータを複数の領域に分割した場合、各領域に番号が付されて各領域を示す情報が記憶部(図示しない)に記憶されているため、表示制御部5はその記憶部から領域1を示す情報を読み込み、その領域1を囲むマークMを表示部6に表示させる。
【0032】
例えば、操作部7でモニタ画面6a上のMPR画像13を指定し、回転軸Oを中心にそのMPR像13を所望の角度、回転させる。画像処理部2は操作部7から回転方向と回転量(角度)を示す情報を受けて、その角度分傾けた視線方向に沿ってボリュームレンダリングを施すことにより、領域1について回転させられたVR画像データを作成する。表示制御部5はその回転させられたVR画像を表示部6に表示させる。これにより、領域1内の画像は操作者によって指定された角度の分、回転させられることになる。図6に示す例においては、VR画像AとVR画像Bとでは頭部の向きがずれているため、一方のVR画像(この実施形態ではVR画像B)の頭部の画像を回転させることで、VR画像Aの頭部の画像と位置や向きを一致させることが可能となる。なお、回転軸Oの位置は操作者によって任意に指定可能となっている。つまり、操作者が任意に指定した回転軸を中心として領域1内の画像を回転させることが可能である。
【0033】
また、操作者が操作部7を用いてマークM内の画像を移動させると、表示制御部5はその移動量に応じてマークM内の画像を独立して移動させて表示部6に表示させる。例えば、VR画像Aの頭部とVR画像Bの頭部の位置がずれている場合、一方のVR画像(この実施形態ではVR画像B)の頭部の画像を独立して移動させることで、VR画像Aの頭部の画像と表示位置を一致させることが可能となる。
【0034】
以上のように、領域1内の画像(頭部の画像)のみを回転又は移動させることにより、VR画像Bの他の部分の画像は回転又は移動させられることがないため、領域1内の画像の向き又は位置を一致させたことに起因して、他の部分の画像の向きや位置がずれてしまうことがない。つまり、VR画像を部分的に独立して回転又は移動させることにより、他の部分の画像の向きや位置をずらさず、部分的に画像の向きや位置を一致させることが可能となる。
【0035】
領域1内の画像の回転又は移動を終了させる場合は、例えば操作部7を用いて終了の指示を医用画像処理装置に与える。領域1以外の領域に含まれる画像を回転させたり、移動させたりする場合は、分割線Lによって再び所望の領域を指定し、その指定した領域に含まれる画像を回転させたり移動させたりする。
【0036】
また、ボリュームデータ全体を複数の領域に分割した場合は、領域1内の画像の回転又は移動を終了させると、表示制御部2は次の領域を囲むマークを表示部6に表示させる。このとき表示制御部5は、各領域を示す情報が記憶されている記憶部(図示しない)から次の領域(領域2)を示す情報を読み込み、領域2を囲むマークMを表示部6に表示させる。例えば、図5に示すように、表示制御部5は、胸部及び腹部を含む領域2を囲むマークMを表示部6に表示させる。そして、領域1内の画像の回転又は移動と同様に、領域2内の画像を独立して回転又は移動させることが可能となる。領域2内の画像の回転又は移動を終了させると、順次、次の領域3、領域4、及び領域5内の画像の回転又は移動が可能となり、VR画像Bを部分的に回転又は移動させることが可能となる。これにより、画像の部分的なずれを修正して、複数の画像の向きや位置を一致させることが可能となる。
【0037】
なお、特許文献1(特開平10−137190号公報)に記載の発明のように、分割後の各領域に含まれる画像の位置を半自動的に一致させても良い。
【0038】
また、操作部7は、マウスやキーボードやポインティングデバイスなどで構成されている。制御部4は医用画像処理装置1の各部に接続され、医用画像処理装置1の全体の動作を制御する。
【0039】
また、画像処理部2は図示しない記憶部に記憶されている画像処理プログラムを読み込むことにより、上述したボリュームレンダリングなどの画像処理や分割処理などの機能を実行する。
【0040】
(動作)
次に、この発明の実施形態に係る医用画像処理装置による一連の動作について図7を参照して説明する。図7は、この発明の実施形態に係る医用画像処理装置の一連の動作を示すフローチャートである。
【0041】
(ステップS01)
ステップS01では、操作者が操作部7を用いて所望の画像データを指定する。例えば、操作部7を用いて画像データの識別情報(患者IDなど)を入力することで、所望の画像データを指定する。ここでは複数の画像を重ね合わせて表示するため、複数の画像データを指定する。
【0042】
(ステップS02)
ステップS02では、画像処理部2がステップS01で指定された画像データ(ボリュームデータ)を画像記憶部3から取得し、そのボリュームデータに対して所定の画像処理を施すことにより画像データを作成する。表示制御部5は画像処理部2で作成された画像データに基づく画像を表示部6に表示させる。
【0043】
例えば、図2の模式図に示すボリュームデータAとボリュームデータBがステップS01で指定された場合、画像処理部2はボリュームデータAとボリュームデータBに対してボリュームレンダリングを施すことによりVR画像データを作成する。表示制御部5は、画像処理部2にて作成されたVR画像A、Bを表示部6に表示させる。
【0044】
ここで、複数の画像の表示の1例を図3に示す。同図に示すように、表示制御部5はVR画像A(破線)とVR画像B(実線)とを重ねて表示部6に表示させる。なお、図3に示す例においては、VR画像AとVR画像Bとを重ねて表示したが、VR画像Aのみ、又はVR画像Bのみを表示しても良い。
【0045】
(ステップS03)
次に、ステップS03では、操作者が操作部4を用いて回転又は移動させる画像を選択する。例えば、操作部4(マウス)によってモニタ画面6a上に表示されているVR画像をクリックすることで画像を選択することができる。以下、VR画像Bが選択された場合について説明するが、VR画像Aを選択しても良く、VR画像Aが選択された場合もVR画像Bが選択された場合と同じ処理が実行されることになる。
【0046】
(ステップS04)
ステップS04では、画像処理部2が、ステップS03で選択されたボリュームデータに対してMPR処理を施すことにより、所定の断面におけるMPR画像データを作成し、表示制御部5はMPR画像を表示部6に表示させる。例えば、図3に示すように、表示制御部5はVR画像AとVR画像Bを表示部6に表示させるとともに、ボリュームデータの分割位置を指定するための分割線Lを予め設定された位置(初期設定の位置)に表示させる。画像処理部2は、選択されたボリュームデータBについて、分割線Lの位置におけるMPR画像データを作成し、表示制御部5はそのMPR画像を表示部6に表示させる。
【0047】
図3に示す例においては、互いに直交する2つの断面に沿ったMPR画像11、12、13が画像処理部2にて作成されて表示部6に表示されている。MPR画像13は分割線Lに沿った断面の画像であり、MPR画像11及びMPR画像12は分割線Lに直交する方向に沿った断面のMPR画像である。
【0048】
(ステップS05、S08)
分割線Lは任意の位置に設定することができる。例えば、操作者が操作部7を用いて分割線Lを移動させ、所望の位置に設定する。このように分割線Lを移動させることで、MPR画像を作成する断面の位置を指定する(ステップS05)。MPR画像を作成する断面の位置が変更されると、画像処理部2は新たに指定された断面のMPR画像データを作成し、表示制御部5はそのMPR画像を表示部6に表示させる(ステップS08)。例えば、図3に示す分割線L2に沿った断面のMPR画像と、分割線L2に直交する方向のMPR画像が画像処理部2によって作成されて表示部6に表示されることになる。
【0049】
(ステップS06、S08)
また、操作部7を用いてモニタ画面6a上のMPR画像13を指定し、回転軸Oを中心にMPR画像13を所望の角度、回転させると(ステップS06)、画像処理部2はその回転角度に応じて視線方向を変えてボリュームレンダリングを施すことにより新たなVR画像データを作成する。表示制御部5は新たに作成されたVR画像データを表示部6に表示させる(ステップS08)。これにより、VR画像B全体が回転させられることになる。なお、回転軸Oの位置は操作者によって任意に指定可能となっている。つまり、操作者が任意に指定した回転軸を中心としてVR画像B全体を回転させることが可能である。
【0050】
(ステップS07、S08)
また、操作部7を用いてVR画像Bを任意の方向に移動させると(ステップS06)、表示制御部5は操作部7の指示に従ってVR画像B全体を指示された方向に移動させて表示部6に表示させる(ステップS08)。
【0051】
以上のように、ステップS05〜ステップS08によって、VR画像B全体を回転させたり平行移動させたりして、2つの画像の位置や向きを調整することができる。この段階では、VR画像全体を回転させたり移動させたりしているだけなので、VR画像AとVR画像Bとが部分的にずれている場合は、その部分的な位置ずれを修正することは困難である。図3に示す例では、腰部や脚部の位置や角度がずれているため、VR画像AとVR画像Bの全体の位置を一致させることは困難である。そこで、部分的にVR画像A、Bを回転させたり移動させたりすることにより、部分的な位置ずれを修正してVR画像A、Bの全体の位置や向きを一致させる。以下、部分的な位置ずれを修正するための処理について説明する。
【0052】
(ステップS09、S10、S11)
ボリュームデータを複数の領域に分割して部分的なずれを修正する場合(ステップS09、Yes)、図4に示すように、分割線Lによって分割する位置を指定する。このとき、現在表示しているMPR画像の断面位置(分割位置)を変更する場合(ステップS10、Yes)、操作者は操作部7を用いて分割線Lを移動させることで分割位置を変更する(ステップS05)。分割線Lに沿ったMPR画像13をモニタ画面6aに表示させることで、操作者はそのMPR画像13を観察しながら分割する位置を指定することができる。分割位置が決まったら、モニタ画面6a上に表示されている分割断面位置の「設定」ボタンを操作部7で指定(クリック)することで、分割線Lが表示されている位置が分割位置に設定される。
【0053】
分割位置を変更しない場合(ステップS10、No)、又は新たに分割位置を設定した場合、画像処理部2は分割線Lによって指定された位置でボリュームデータ(マスクデータ)を分割する(ステップS11)。
【0054】
また、分割線を複数の位置に設定して、図5に示すようにボリュームデータB全体を複数の領域(領域1〜領域5)に分割しても良い。このようにボリュームデータを複数の領域に分割する場合、制御部4によって各領域を示す情報に番号が付され、各領域を示す情報は記憶部(図示しない)に記憶される。
【0055】
分割位置の設定が終了すると、分割された領域に含まれる画像を独立して任意の方向に回転させたり、任意の方向に移動させたりすることが可能となる。図6に示すように、表示制御部5はモニタ画面6a上に操作対象となっている領域を囲むマークM(枠)を表示させる。操作者は操作部7を用いてそのマークM内の画像を独立して回転させたり、移動させたりすることができる。図6に示す例では、領域1(頭部)を囲むマークMが表示部6に表示されているため、領域1内の画像を回転させたり移動させたりすることが可能となっている。
【0056】
(ステップS13、S15)
領域1内の画像を回転させる場合、操作者は操作部7を用いてモニタ画面6a上のMPR画像13を指定し、回転軸Oを中心にそのMPR画像13を所望の角度、回転させる。なお、回転軸Oの位置は操作者によって任意に指定することできる。画像処理部2は操作部4から回転方向と回転角度を示す情報を受けて、その角度分傾きえた視線方向に沿ってボリュームレンダリングを施すことにより、領域1について回転させられたVR画像データを作成する。表示制御部5はその回転させられたVR画像を表示部6に表示させる。これにより、領域1内の画像は操作者によって指定された角度の分、独立して回転させられることになる。図6に示す例では、VR画像AとVR画像Bとでは頭部の向きがずれているため、例えばVR画像Bの頭部の画像を回転させることで、VR画像Aの頭部の画像と位置や向きを一致させることが可能となる。
【0057】
(ステップS14、S15)
また、操作者が操作部4を用いてマークM内の画像を移動させると、表示制御部5はその移動量に応じてマークM内の画像を移動させて表示部6に表示させる。なお、操作者が操作部4を用いてMPR画像11などを指定し、指定したMPR画像11など移動させてもマークM内の画像を移動させることができる。つまり、MPR画像11などの移動量に応じて表示制御部5はマークM内の画像を移動させて表示部6に表示させる。
【0058】
以上のように、領域1内の画像(頭部の画像)を独立して回転又は移動させることにより、VR画像Bの他の部分の画像の向きや位置をずらさずに、部分的に画像の向きや位置を一致させることが可能となる。
【0059】
そして、領域1以外の領域に含まれる画像を独立して回転させたり移動させたりする場合は、ステップS09に戻って再び分割線Lによって所望の領域を指定し、その指定した領域に含まれる画像を回転させたり移動させたりする。このようにステップS09からステップS15の処理を繰り返すことにより、VR画像Bを部分的に回転させたり移動させたりしてVR画像AとVR画像Bの表示位置や向きを一致させる。
【0060】
また、ボリュームデータ全体を複数の領域に分割した場合は、領域1内の画像の回転又は移動を終了させると、次の操作対象となっている画像の回転又は移動を実行する。領域1内の画像の回転又は移動が終了すると、表示制御部5は次の領域を囲むマークを表示部6に表示させる。例えば、図5に示すように、領域1の次に領域2内の画像が操作対象となり、順次、領域3、領域4、及び領域5内の画像が操作対象となって、それぞれ独立して移動させたり回転させたりすることが可能となる。
【0061】
例えば、図5に示すように、領域3内に含まれる腰部の画像を左側(矢印の方向)に独立して移動させることで、腰部についてVR画像AとVR画像Bの表示位置や向きを一致させることができる。また、領域4内に含まれる左脚部の画像を独立して回転させることで、左脚部についてVR画像AとVR画像Bの表示位置や向きを一致させることができる。このとき、回転軸O2を中心として領域4内に含まれる画像を回転させる。この回転軸O2の位置についても、操作者が任意に設定することができる。
【0062】
このように、VR画像Bを部分的に回転させたり移動させたりして各領域に含まれる画像をVR画像Aに一致させることが可能となる。そのことにより、VR画像AとVR画像Bの位置と向きを全体的に一致させることが可能となり、両画像の比較が容易になる。
【0063】
以上のように、この実施形態に係る医用画像処理装置によると、画像を部分的に独立して回転させたり移動させたりすることで、複数の画像の表示位置と向きを一致させることが可能となる。これにより、患者の全身を撮影した場合など、撮影範囲が広い画像同士であっても全体像を一致させることが可能となる。また、患者の複雑な動きにも対応して複数の画像の表示位置と向きを一致させることが可能となる。
【0064】
なお、VR画像AとVR画像Bとを異なる濃度で表示部6に表示しても良い。これにより、両画像を重ねて表示した場合であってもVR画像AとVR画像Bとを区別して認識することが可能となる。
【0065】
また、この実施形態に係る医用画像処理装置は、複数の画像の位置合わせを行う以外に、視線方向に対して手前側に存在する画像を除去する処理に利用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の実施形態に係る医用画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】重ね合わせる画像の1例を示す模式図である。
【図3】画像の表示例を示す画面の図である。
【図4】ボリュームデータの分割位置を指定する際の画面の図である。
【図5】分割した各領域を示す模式図である。
【図6】部分的に画像を移動又は回転させる際の画面の図である。
【図7】この発明の実施形態に係る医用画像処理装置の一連の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 医用画像処理装置
2 画像処理部
3 画像記憶部
4 制御部
5 表示制御部
6 表示部
7 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像診断装置によって収集された複数のボリュームデータに基づく画像のうち少なくとも1つのボリュームデータに基づく画像について、操作者の指示に従って部分的に角度又は位置を変更する画像処理手段と、
前記変更後の画像と他のボリュームデータに基づく画像とを重ねて表示手段に表示させる表示制御手段と、
を有することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記少なくとも1つのボリュームデータを複数の領域に分割し、前記分割後の個々のボリュームデータに基づく画像について、前記操作者の指示に従って角度又は位置を変更することを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、前記少なくとも1つのボリュームデータを前記操作者の指示に従った位置で分割することを特徴とする請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、前記操作者によって指定された回転軸を中心に前記分割後のボリュームデータに基づく画像を回転させることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記複数のボリュームデータに基づく画像について、それぞれ異なる濃度で前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、前記ボリュームデータに対してボリュームレンダリング法、MPR法、MIP法、又はMinIP法のいずれかの処理を施すことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
コンピュータに、
医用画像診断装置によって収集された複数のボリュームデータに基づく画像のうち少なくとも1つのボリュームデータに基づく画像について、操作者の指示に従って部分的に角度又は位置を変える画像処理機能と、
前記変更後の画像と他のボリュームデータに基づく画像とを重ねて表示手段に表示させる表示制御機能と、
を実行させることを特徴とする医用画像処理プログラム。
【請求項8】
医用画像診断装置によって収集された複数のボリュームデータに基づく画像のうち少なくとも1つのボリュームデータに基づく画像について、操作者の指示に従って部分的に角度又は位置を変えるステップと、
前記変更後の画像と他のボリュームデータに基づく画像とを重ねて表示手段に表示するステップと、
を含むことを特徴とする医用画像処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−151965(P2007−151965A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354066(P2005−354066)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】