説明

医用画像分割装置、及び、医用画像分割プログラム

【課題】複数の部位を連続的に撮像することによって得られた1つのシリーズを、読影者が読影し易いようにように、部位ごとのシリーズに分割する。
【解決手段】1つのシリーズ画像を第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とに分割することにより、第1のシリーズ画像を表す第1の画像データと、第2のシリーズ画像を表す第2の画像データとを生成する部位分割処理部13と、第1の画像データに対して、第2のシリーズ画像を特定する情報及び第1のシリーズ画像に対する第2のシリーズ画像の位置関係を表す情報を含む隣接画像情報を付加し、第2の画像データに対して、第1のシリーズ画像を特定する情報及び第2のシリーズ画像に対する第1のシリーズ画像の位置関係を表す情報を含む隣接画像情報を付加する分割情報付加処理部14とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用撮像モダリティによって取得され、複数の部位が表された軸位断画像を表す画像データに基づいて、部位ごとに分割された軸位断画像を表す画像データを生成する医用画像分割装置、及び、そのような装置において用いられる医用画像分割プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療診断においては、生体の内部が表示された医用画像が多く用いられており、そのような医用画像を取得するために、X線撮影や、X線CT(computed tomography:コンピュータ断層撮影)装置や、超音波(US)診断装置や、MRI(magnetic resonance imaging:磁気共鳴撮像)装置や、PET(positron emission tomography:ポジトロン断層撮影)等の様々な技術や装置(モダリティ)が広く利用されている。それらの装置の多くはディジタル化されており、病院内での診断情報処理システム等の構築が進められている。また、それらの撮像技術の内でも、CTやMRIは生体の軸位断画像を比較的狭い間隔で取得して表示できるので、生体の病変部位の発見や評価に大きな成果を上げている。ここで、軸位断画像とは、被検体の体軸に直交又はほぼ直交する面(所謂、輪切り面)が表された断層像のことをいう。以下において、軸位断画像のことを、単にスライス画像とも言う。
【0003】
ところで、CT検査等の断層撮像を行う際には、1回の検査において、必ずしも1部位のみ(例えば、胸部のみ、腹部のみ等)が撮像されるのではなく、複数の部位に渡って(例えば、胸部〜腹部、頭部〜胸部等)連続して撮像が行われることが多い。そのため、通常は、撮像後に、複数部位が表されている一連(1シリーズ)のスライス画像を部位ごとに分割することにより、複数のシリーズが新たに生成される。通常、医師(読影医)は、自分が担当している部位が表されたシリーズを取得して読影を行う。
【0004】
関連する技術として、非特許文献1には、PACS(Picture Archiving and Communication System:医用画像情報システム)又はRIS(radiology information system:放射線科情報管理システム)からワークリストを受け取り、1つの合成された処理としてまとめられるべき1組の処理を認識し、それをCTスキャナに送ることにより1連の検査を行わせ、それによって得られた画像を個別の処理に対応するように分割してPACSに蓄積させる装置(Automatic Study Breakup Device)が開示されている(第13〜14頁)。
【非特許文献1】デジャルネット(DeJarnette)、他「パックス環境におけるCTワークフロー(CT Workflow in a PACS Environment)」、デジャルネット(DeJarnette)・リサーチ・システム社、インターネット<URL:http://www.dejarnette.com/Library/Article%20PDFs/CT%20Workflow%20in%20a%20PACS%20Environment.pdf>、2006年5月26日検索
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、複数の部位が撮像された1つのシリーズを複数のシリーズに分割するシリーズ分割は、必ずしも適切に行われるとは限らない。例えば、各スライス画像に対して誤って部位認識された場合には、誤ったスライス位置において分割されることになる。また、1つのスライス画像に複数の部位が表されている場合に(例えば、胸部と腹部)、そのスライス画像を一方のシリーズ(例えば、腹部のシリーズ)に含めると、他方のシリーズ(例えば、胸部のシリーズ)においては、部位の一部が欠落する(例えば、胸部のシリーズに、肺野の下半分が含まれていない)ことになる。
【0006】
しかしながら、読影中の医師が、そのようなシリーズ分割の失敗や部位の欠落に気づいても、膨大な画像の内から関連するシリーズを検索し、読影中のシリーズの続きを表示させることは極めて困難であり、非常に手間がかかる。その結果、読影医がスムーズに読影を進めることができなくなってしまう。
【0007】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、複数の部位を連続して撮像することによって得られた1つのシリーズを、読影医が読影し易いように、部位ごとのシリーズに分割することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る医用画像分割装置は、複数の軸位断画像を含む1つのシリーズ画像を表す画像データに基づいて、複数のシリーズ画像をそれぞれ表す画像データを生成する装置であって、1つのシリーズ画像を第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とに分割することにより、第1のシリーズ画像を表す第1の画像データと、第2のシリーズ画像を表す第2の画像データとを生成する画像分割手段と、第1の画像データに対して、第2のシリーズ画像を特定する情報及び第1のシリーズ画像に対する第2のシリーズ画像の位置関係を表す情報を含む隣接画像情報を付加し、第2の画像データに対して、第1のシリーズ画像を特定する情報及び第2のシリーズ画像に対する第1のシリーズ画像の位置関係を表す情報を含む隣接画像情報を付加する分割情報付加手段とを具備する。
【0009】
また、本発明の1つの観点に係る医用画像分割プログラムは、複数の軸位断画像を含む1つのシリーズ画像を表す画像データに基づいて、複数のシリーズ画像をそれぞれ表す画像データを生成する際に用いられるプログラムであって、1つのシリーズ画像を第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とに分割することにより、第1のシリーズ画像を表す第1の画像データと、第2のシリーズ画像を表す第2の画像データとを生成する手順(a)と、第1の画像データに対して、第2のシリーズ画像を特定する情報及び第1のシリーズ画像に対する第2のシリーズ画像の位置関係を表す情報を含む隣接画像情報を付加し、第2の画像データに対して、第1のシリーズ画像を特定する情報及び第2のシリーズ画像に対する第1のシリーズ画像の位置関係を表す情報を含む隣接画像情報を付加する手順(b)とをCPUに実行させる。
本願において、各軸位断画像のことを「スライス画像」といい、1つのシリーズに含まれる軸位断画像の集合のことを「シリーズ画像」という。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つのシリーズ画像を分割することによって得られた複数のシリーズ画像を表す画像データに、分割相手のシリーズ画像に関する情報を付加するので、現在表示中のシリーズ画像に隣接するシリーズ画像を、容易に検索することができる。従って、シリーズ分割に失敗したり、分割後のシリーズ画像に部位の欠落が生じていた場合においても、欠落部分を含む別のシリーズ画像を容易に検索して表示させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る医用画像分割装置を含む医用画像撮影システムの構成を示すブロック図である。この医用画像撮影システムは、被検体について医用画像の撮像検査を行うモダリティ1と、画像サーバ2と、画像表示端末3と、読影用端末4とを含んでいる。これらの装置1〜4は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に準拠している。
【0012】
モダリティ1は、CT装置1aや、CR(computed radiography)装置1bや、MRI装置1cや、PET装置1dや、超音波診断装置(US)1e等の医用画像撮像装置を含んでいる。これらのモダリティ1a〜1eは、撮像検査を行うことにより画像データを生成して、画像付帯情報と共に画像サーバ2に出力する。
【0013】
画像サーバ2は、モダリティ1によって取得された画像データを保管及び管理するPACS(Picture Archiving and Communication System:医用画像情報システム)用のサーバである。この画像サーバ2は、医用画像部位分割機能を有しており、通常の画像サーバの動作(画像データの保管等)に加えて、医用画像分割装置としても動作する。画像サーバ2は、後述する読影用端末4の要求に従って、画像データを画像表示端末3に出力する。
【0014】
図1に示すように、画像サーバ2は、制御部11と、部位認識部12と、部位分割処理部13と、分割情報付加処理部14と、格納部15と、分割画像特定部16とを有している。制御部11〜分割情報付加処理部14及び分割画像特定部16は、例えば、CPU(中央演算処理装置)と本実施形態に係る医用画像分割プログラムとによって構成されている。
【0015】
制御部11は、モダリティ1から出力された画像データを格納部15に格納させる。また、制御部11は、入力された画像データによって表される画像の方向(軸位断(axial)、冠状断(coronal)、矢状断方向(sagittal)等)を確認し、軸位断方向である場合には、その画像データを部位認識部12にも出力する。なお、画像の方向は、例えば、DICOMタグ(0020,0037):Image Orientation(Patient)、又は、(0020,0020):Patient Orientationが付された画像付帯情報によって取得される。
【0016】
部位認識部12は、1シリーズ分の画像データによって表される複数の軸位断画像(以下において、「スライス画像」ともいう)について、各軸位断画像に被検体のどの部位が表されているかを認識する。そして、認識結果(部位)を含む情報(部位情報)を生成し、画像データに関連付ける。部位は、例えば、「Head(頭)」、「Neck(頸)」、「Chest(胸)」等のように、文字列によって示されても良いし、1:head、2:neck、3:chest等のように、予めコード化された整数値によって示されても良い。
【0017】
部位分割処理部13は、部位認識部12によって生成された各スライス画像の部位情報に基づいて、そのシリーズにおける部位の境界(部位が変化するスライス位置)を認識し、その境界に基づいてシリーズの分割位置を設定する。そして、その分割位置においてシリーズ画像を複数のシリーズ画像に分割することにより、複数のシリーズ画像をそれぞれ表す画像データを生成する。例えば、分割前のシリーズ画像において、第1〜第10スライスが胸部を表しており、第11スライス以降が腹部を表していると認識された場合に、第10スライスと第11スライスとの間が胸部と腹部の境界であると認識され、第1〜第10スライス画像を含む第1のシリーズ画像を表す画像データと、第11スライス以降の画像を含む第2のシリーズ画像を表す画像データとが生成される。
【0018】
部位情報付加処理部14は、次の(1)〜(3)に示す情報(隣接画像情報)、及び、胸部や腹部等の部位情報((0018,0015):Body Part)を生成し、分割後の各シリーズに画像付帯情報として付加する。
(1)分割前のシリーズに関する情報
部位情報付加処理部14は、例えば、分割前のシリーズ画像を表す画像データから、分割前及び分割後のシリーズに共通する画像付帯情報(例えば、DICOMタグ(0028,0030):Pixel Spacingが付された情報)を取得し、それを分割後の各シリーズの画像データに付加する。
【0019】
(2)隣接するシリーズを特定する情報
部位情報付加処理部14は、例えば、胸部が表された第1のシリーズ画像の画像データに対して、腹部が表された第2のシリーズ画像のファイル名や識別コードを付加し、第2のシリーズ画像の画像データに対して、第1のシリーズ画像のファイル名や識別コードを付加する。
【0020】
(3)隣接シリーズとの位置関係を表す情報
例えば、腹部に対して胸部は「上側」であるので、部位情報付加処理部14は、第1のシリーズ画像の画像データに対して「上側」を表す情報を付加し、第2のシリーズ画像の画像データに対して「下側」を表す情報を付加する。或いは、このようなシリーズ画像相互の位置関係ではなく、共通の座標系に対する各シリーズ画像の位置座標を、隣接シリーズとの位置関係を表す情報として用いても良い。
これらの部位認識部12〜部位情報付加処理部14の動作については、後で具体的に説明する。
【0021】
格納部15は、例えば、画像サーバ2に内蔵されているハードディスクドライブであり、制御部11の制御の下で、分割前の画像データ及びその画像付帯情報や、部位分割処理部13によって生成された分割後の画像データや、部位情報付加処理部14によって画像データに付加された情報や、それらの各部を動作させるための制御プログラム(医用画像部位分割プログラム)等を格納する。なお、記録媒体としては、ハードディスクの他に、MO、MT、RAM、CD−ROM、又は、DVD−ROM等を用いても良く、その場合には、それらの記録媒体を駆動する駆動装置が、画像サーバ2に内蔵され、又は、画像サーバ2の外部に接続される。
【0022】
分割情報特定部16は、制御部11や画像表示端末3を介して入力されるユーザ(読影医)の命令に従って、格納部15に格納されている画像データの内から、画像表示端末3に表示中のシリーズ画像の分割相手であるシリーズ画像を検索して表示させる。検索の際には、部位情報付加処理部14によって各シリーズ画像を表す画像データに付加された情報が用いられる。
【0023】
画像表示端末3は、外部から入力される画像データに基づいて検査画像を表示する端末装置であり、高精細なディスプレイを備えている。また、画像表示端末3は、ユーザが命令を入力するための入力装置(例えば、入力ボタン、キーボード、マウス等)を備えていても良い。なお、図1に示す画像表示端末3の画面3aには、複数の軸位断画像が模式的に示されている。
読影用端末4は、ユーザ(読影医)が、画像表示端末3に表示された検査画像を参照しながら読影レポート等を作成するために用いられる装置であり、読影レポート等を表示する画面4aや、キーボード等の入力デバイス4b等を備えている。
【0024】
次に、図1に示す部位認識部12の構成及び動作について、図2〜図4を参照しながら説明する。
図2は、図1に示す部位認識部12の機能を示すブロック図である。図2に示すように、部位認識部12は、特徴量計算部121と、部位確信度計算部122と、スコアテーブル記憶部123と、部位決定処理部124と、部位情報記憶部125と、部位修正処理部126とを含んでいる。この内の特徴量計算部121〜部位決定処理部124は、各スライス画像について、そこに表された部位を暫定的に決定する。また、部位修正処理部126は、複数のスライス画像の部位情報に基づいて、各スライス画像について暫定的に決定された部位を修正する。なお、スライス画像の部位情報については後述する。
【0025】
図3は、部位認識部12の動作を示すフローチャートである。制御部11(図1)において軸位断画像を表すものであると判断された画像データが部位認識部12に入力されると、以下に説明する部位認識動作が開始される。
ステップS1において、画像データ及びその画像付帯情報は、1スライス分ごとに、特徴量計算部121に入力される。ここで、画像付帯情報には、画像の方向を表す情報((0020,0037):Image Orientation(Patient)、又は、(0020,0020):Patient Orientation)や、1画素のピッチを表す情報((0028,0030):Pixel Spacing)や、スライスの厚さを表す情報((0018,0050):Slice Thickness)や、1行及び1列に含まれる画素数を表す情報((0028,0010):Raws、及び、(0028,0011):Columns)や、画像の左上位置の3次元座標を表す情報((0020,0032):Image Position (Patient))等が含まれる。ここで、括弧内は、各情報のDICOMタグ及び属性名を示している。
【0026】
ステップS2において、特徴量計算部121は、1つのスライス画像について特徴量を算出する。ここで、特徴量とは、スライス画像に表された体部の特徴を数値化したものである。特徴量は、例えば、次の(a)に示すように、スライス画像に表された体部の形状に基づいて算出される。また、各画素データの値(即ち、画素の輝度)が体部の特性(組織性状等)に対応している場合には、次の(b)や(c)に示すように、その値に応じて特徴量を算出しても良い。例えば、CT画像における画素データの値はCT値によって決定されるが、この値は、体部を透過した放射線量を表す物理量である。なお、水のCT値は0HUであり、空気領域のCT値は−1000HU程度であり、骨領域のCT値は250HU〜3000HU程度である。
【0027】
(a)体部全体の円形度
円形度ρは、対象領域の面積S及びその周囲の長さLを用いて、次式(1)によって算出される。
ρ=4πS/L …(1)
円形度ρは、対象領域の形状が真円に近づくほど1.0に近づき、形状が真円から離れるほど(例えば、楕円率が1から離れるほど)小さくなる。例えば、対象領域が頭部である場合には、円形度は比較的高くなる。反対に、対象領域が胸部や腹部である場合には、円形度は比較的低くなる。
(b)空気領域特徴量:(空気領域を示すCT値の画素数)/(体部全体の画素数)
例えば、対象領域が胸部である場合には、肺が存在しているために空気領域は比較的広くなる。反対に、対象領域が頭部である場合には、空気領域はほぼゼロとなる。
(c)骨領域特徴量:(骨領域を示すCT値の画素数)/(体部全体の画素数)
例えば、対象領域が腹部である場合には、体部全体に対する骨部の領域は比較的狭い範囲となる。反対に、対象領域が脚部である場合には、体部全体に対して骨部が多くの割合を占める。
【0028】
次に、ステップS3において、部位確信度計算部122は、特徴量計算部121によって計算された特徴量に基づいて、部位確信度を算出する。ここで、部位確信度とは、対象部位が、「ある部位」である可能性(「頭部」らしさ、「胸部」らしさ等)を数値化したものである。本実施形態において、部位確信度は、予め用意されているスコアテーブルを用いて算出される。
【0029】
図4は、部位確信度の算出に用いられるスコアテーブルの例を示している。このスコアテーブルは、空気領域特徴量(空気量)の値に基づいて、「頭部」らしさ、「胸部」らしさ、「腹部」らしさ、及び、「脚部」らしさを求める際に用いられる。この他に、部位の項目として、「骨盤部」を挙げても良い。また、隣接する2つの部位の境界(境界領域)や、複数の部位が混在している領域(混在領域、例えば、頭部と頸部、又は、胸部と腹部等)を示す項目(例えば、「頭頸部」又は「胸腹部」)を挙げても良い。
【0030】
例えば、あるCT画像に表された体部の空気領域特徴量が60%である場合に、スコアテーブルにおいて60%が含まれる「40〜80%」の欄を参照すると、その体部の「頭部」らしさのスコアは−1.0であり、「胸部」らしさのスコアは0.8であり、「腹部」らしさのスコアは−0.2であり、「脚部」らしさのスコアは−1.0であることがわかる。
このようなスコアテーブルは、特徴量ごとに作成され、スコアテーブル記憶部123に記憶されている。スコアテーブルは、統計に基づいて作成されても良いし、ユーザ(医師等)の経験等に基づいて意図的に作成されても良い。
【0031】
部位確信度計算部122は、そのようなスコアテーブルを参照することによって、各特徴量について各「部位」らしさのスコアを求め、それらのスコアを部位ごとに加算する。そのようにして得られた部位ごとのスコアの総和が、部位確信度となる。
【0032】
再び図3を参照すると、ステップS4において、部位決定処理部124は、ステップS3において得られた部位確信度の内で値が最も大きいものを、そのスライス画像に表された体部の部位として仮決定する。その際に、部位確信度の値が大きい部位が複数あり、それらの差が所定の範囲内(例えば、10%以内)である場合には、両方の部位を採用しても良い。例えば、胸部と腹部の部位確信度が大きい場合には、そのスライスの部位を「胸部」又は「腹部」とする。或いは、境界領域又は混在領域を示す項目(例えば、「胸腹部」)がある場合には、それを採用しても良い。
【0033】
ステップS5において、部位情報記憶部125は、ステップS2において得られた特徴量や、ステップS3において得られた部位確信度や、ステップS4において仮決定された部位を、そのスライス画像の部位情報(部位に関する情報)として保存する。なお、特徴量については、必ずしも全てを記憶しておく必要はなく、所定の特徴量(例えば、後述するステップS8において用いられる特徴量)のみを保存するようにしても良い。
このようなステップS1〜S5の動作は、1シリーズに含まれる全てのスライス画像について行われる(ステップS6)。
【0034】
全てのスライス画像についての部位情報が得られると、ステップS7において、部位修正処理部126は、部位情報記憶部125に保存されている部位情報を、スライス順に整列する。モダリティ1(図1)において生成された画像データは、画像サーバ2にスライス順に送信されるとは限らないからである。なお、スライスの順序は、画像付帯情報の内の画像位置情報((0020,0032):Image Position (Patient))に基づいて判断される。或いは、ステップS7の替わりに、部位情報記憶部125が、ステップS5において、画像位置情報に基づいて部位情報をスライス順に整列しながら保存するようにしても良い。
【0035】
次に、ステップS8において、部位修正処理部126は、各スライスについて仮決定された部位を、複数のスライス画像の部位情報を用いて修正する。修正方法としては、例えば、次の(1)〜(3)に示す方法が挙げられる。
(1)隣接スライスの部位情報を用いる方法
この方法は、隣接スライスの位置関係に基づいて、あるスライス画像について仮決定された部位を修正する方法である。
仮決定された部位が、例えば、第1〜第5スライスにおいて頸部(neck)、第6スライスにおいて頭部(head)、第7〜第10スライスにおいて頸部(neck)、第11〜第15スライスにおいて胸部(chest)、第16スライスにおいて脚部(leg)、第17〜第20スライスにおいて胸部(chest)、第21〜第30スライスにおいて腹部(abdomen)となっている場合について検討する。この場合に、第6スライスの前後のスライスにおいて頸部となっているので、第6スライスが頭部であるというのは認識誤りであり、正しくは頸部である。また、第16スライスの前後のスライスにおいては胸部となっているので、第16スライスが脚部であるというのは認識誤りであり、正しくは胸部である。このように、あるスライス画像について仮決定された部位が前後のスライス画像の部位と異なっている場合には、前後のスライス画像を参照することにより、そのスライス画像の部位が修正される。
【0036】
(2)特徴量を用いる方法
この方法は、体軸方向における特徴量の変化に基づいて、あるスライス画像について仮決定された部位を修正する方法である。
図5の(a)は、空気領域特徴量をスライス位置(体軸方向)順に示す図であり、図5の(b)は、空気領域特徴量の微分値を示す図である。図5の(b)に示すように、空気領域特徴量の変化を被検体の上部(頭部側)から下部(脚部側)に向けて観察すると、空気領域特徴量が突然増加し始める部分が存在する。この部分を胸部の開始位置とする。また、さらに脚部側に向けて観察すると、空気領域特徴量が減少から増加に転じる部分が存在する。この部分を胸部と腹部の境界とする。そして、胸部の開始位置から胸部と腹部との境界との間に、胸部以外の部位が仮決定されているスライス画像が存在する場合には、そのスライス画像の部位が胸部に修正される。
【0037】
(3)マッチングカーブを利用する方法
この方法は、被検体(例えば、人体)における部位の通常の配置を参照することにより、各スライス画像について仮決定された部位を修正する方法である。
まず、図6に示すように、各スライス画像について仮決定された部位を、被検体の上部(頭部側)から下部(脚部側)に向けてスライス順に配置する。図6に示すとおり、この部位認識結果には、頭部(Head)と頸部(Neck)とが交互に現れている領域や、胸部(Chest)の間に頸部が現れている領域が見られることから、仮決定された部位には多くの認識誤りが含まれるものと考えられる。
【0038】
次に、図7に示すように、図6に示す部位認識結果と予め作成された参照部位との間のマッチングカーブを探索する。ここで、人体の部位は、頭部→頸部→胸部→腹部の順に配置されているので、図7の縦軸に示すように、それらの部位がこのような順序で配置された参照部位を予め作成しておく。
【0039】
マッチングカーブを探索する際には、部位認識結果と参照部位とが不一致である場合にコストがかかるようにし、コストが最小となるようなカーブを求める。探索手法としては、最適化問題を解くための様々な手法を適用することができる。以下に、その1つとして良く知られている動的計画法(dynamic programming)を用いたマッチングカーブの探索方法を説明する。
【0040】
まず、図8に示すような重みマップを作成する。図8において、列はスライス番号に対応しており、行は部位に対応している。この重みマップにおいて、仮決定されている部位は、重みがゼロになるように設定されている(太枠の領域)。例えば、図6を参照すると、最初のスライスは頭部と仮決定されているので、重みマップにおけるスライス番号1の頭部(Head)のセルの値は「0.0」となっている。また、それ以外のセルについては、ゼロより大きい値が設定される。具体的には、各スライス画像について確信度が算出されている場合には、その確信度と仮決定された部位の確信度との差の値を設定しても良いし、それとは異なる所定の値を設定しても良い。
【0041】
次に、図9に示すようなコストマップを作成する。図9において、各セル(n,m)のコストは次のように設定される。ここで、nはスライス番号を示しており、mは部位番号(1:Head、2:Neck、3:Chest、4:Abdomen)を示している。
(1,1):重みマップにおける(1,1)の値(図8参照)
(n,1):重みマップにおける(n−1,1)の値+所定の値
(1,m):重みマップにおける(1,m−1)の値+所定の値
(n,m):次の(i)〜(iii)の内の最小値
(i)コストマップにおける(n−1,m−1)の値
+重みマップにおける(n,m)の値
(ii)コストマップにおける(n,m−1)の値
+重みマップにおける(n,m)の値+所定の値
(iii)コストマップにおける(n−1,m)の値
+重みマップにおける(n,m)の値+所定の値
【0042】
次に、コストマップを、右側から左側に向かって、周辺の最小値を順次辿って行く。それにより、スライス番号と部位との対応マップが作成される。
図7に示すように、そのようにして得られたマッチングカーブに基づいて、仮決定された部位を参照部位における対応部位に置き換えることにより、部位の修正が行われる。
【0043】
再び、図3を参照すると、ステップS8において、部位修正処理部126は、修正後の部位情報を画像付帯情報として格納部15に出力して保存させる。部位認識部12から出力された部位情報は、画像情報データベースによって管理するようにしても良いし、格納部15に既に格納されている画像データに、タグとして書き込むようにしても良い。
【0044】
以上の説明においては、1シリーズに含まれる複数のスライス画像の各々について部位認識を行った後で、複数スライスに関する部位情報の相互関係を用いて、各スライスの部位情報を修正する。このように、2つの段階を経て部位認識を行う利点は、次の通りである。即ち、1シリーズの全ての画像データがサーバ2に入力されるのを待つことなく、入力されたスライス順に部位認識処理を開始できるので、比較的高速に部位認識結果を得ることができる。また、各スライスについて得られた部位認識結果を、複数のスライス画像の集合によって表される被検体の3次元情報に基づいて修正するので、大きな部位認識誤りを低減することができる。従って、効率良く、且つ、正確な部位認識を行うことが可能となる。
【0045】
ここで、図2に示す部位認識部12は、入力された全てのスライス画像について部位認識処理を行っている。しかしながら、部位認識処理を開始する前にDICOMタグを参照し、撮像部位を表す情報((0018,0015):Body Part)が存在しないスライス画像のみに対して部位認識処理を行うようにしても良い。撮像段階において部位が付される場合もあるからである。
【0046】
或いは、部位認識部12は、連続して入力されるスライス画像に対して、所定のスライス間隔で間引きしながら部位認識処理を行うようにしても良い。その場合には、全体として処理を高速化することが可能となる。さらに、部位認識部12は、連続して入力されるスライス画像の内の所定の範囲についてのみ、部位認識処理を行うようにしても良い。例えば、診断対象が被検体の腹部である場合には、腹部の開始領域(又は、胸部及び腹部の混在領域)が認識できれば良い。その場合には、例えば、スライス画像の3次元座標を表す情報(DICOMタグ(0020,0032):Image Position(Patient))から判断して明らかに脚部と考えられる範囲については、部位認識処理を省略しても良い。
【0047】
また、ステップS3及びS4においてスライスに表された体部の部位を仮決定する際に、スコアテーブルを用いる替わりに、ニューラルネットワーク等の機械学習法を利用して部位を認識しても良い。
ニューラルネットワークを利用する場合には、例えば、次のような方法により部位が仮決定される。即ち、図10に示すように、スライス画像に表された体部の特徴量(例えば、ステップS2において説明した特徴量(a)〜(c))を、ニューラルネットに入力する。そして、そのスライス画像に表された部位に一致する部位に対して1を出力し、それ以外の部位に対してゼロを出力するように、ニューラルネットを学習させる。例えば、スライス画像に頭部が表されている場合には、「Head」の出力を1とし、「Neck」、「Chest」及び「Abdomen」の出力をゼロとする。このように学習させたニューラルネットを利用することにより、入力された特徴量に対応する部位が取得される。
【0048】
次に、図11を参照しながら、図1に示す部位分割処理部13及び分割情報付加処理部14の動作について説明する。以下に説明する動作は、格納部15に格納されている医用画像分割プログラムに従って、CPUにより実行される。この医用画像分割プログラムは、複数の軸位断画像を含む1つのシリーズを表す画像データに基づいて、2つ以上のシリーズ画像をそれぞれ表す画像データを生成する動作をCPUに実行させるものである。
【0049】
図11の左側に示す図は、分割前のシリーズに含まれるスライス画像を示している。このシリーズにおいて、スライス番号SLNが10以前のスライス画像には胸部が表されており、スライス番号SLNが11以降のスライス画像には腹部が表されている。また、これらのスライス画像の各々には、シリーズを示す番号(DICOMタグ(0020,0011):Series Number)が付されている。図11において、分割前のシリーズのシリーズ番号は1である
【0050】
このようなシリーズ画像(シリーズ番号=1)が取得された場合に、図1に示す部位分割処理部13は、まず、各スライス画像の部位情報に基づいて部位の境界を検出し、その境界に基づいてシリーズを分割する位置を設定する。図11においては、スライス番号SLNが10であるスライス画像101と、スライス番号SLNが11であるスライス画像102との間において、部位が胸部から腹部に変化する。そのため、部位分割処理部13は、これらのスライス画像101及び102の間を部位の境界と判断し、そこを分割位置として設定する。
【0051】
次に、部位分割処理部13は、スライス番号SLNが10以前であるスライス画像のシリーズ番号を1から2に変更することにより、新たなシリーズ画像Aを生成する。同様に、部位分割処理部13は、スライス番号SLNが11以降であるスライス画像のシリーズ番号を1から3に変更することにより、新たなシリーズ画像Bを生成する。このようにして、分割された2組のシリーズ画像が生成される。
【0052】
次に、図1に示す分割情報付加処理部14は、シリーズ画像A及びBの端部のスライス画像、即ち、境界に接しているスライス画像101及び102に対し、隣接シリーズのシリーズ番号を表すタグを作成することにより、隣接シリーズを特定する情報を付加する。例えば、シリーズ画像Aのスライス画像101には、シリーズ画像Bを表すシリーズ番号3が画像付帯情報として付加され、シリーズ画像Bのスライス画像102には、シリーズ画像Aを表すシリーズ番号2が画像付帯情報として付加される。
【0053】
或いは、分割情報付加処理部14は、隣接するシリーズを直接検索できる情報(例えばファイル名)を隣接シリーズを特定する情報として付加するようにしても良い。
このように、ある部位が表されたシリーズ画像に対して隣接シリーズを特定する情報を付加しておくことにより、同一患者について同時に撮影された他の部位が表された画像の検索が容易となる。
【0054】
次に、分割情報付加処理部14は、スライス画像101及び102に対し、DICOMタグ(0020,0052):Frame of Reference UIDを作成することにより、隣接シリーズとの位置関係を表す情報として、基準とする座標系を唯一に識別するための番号を付加する。このような共通の座標系を表す情報をシリーズ画像A及びBに付加しておくことにより、各シリーズ画像A及びBについて、分割前のシリーズ画像から引き続き保持している3次元座標を表す情報((0020,0032):Image Position (Patient))が、互いに共通の座標系を基準としていることが判別される。その結果、この3次元座標を表す情報によってシリーズ画像Aとシリーズ画像Bとの位置関係(例えば、上下関係)が明確になる。
【0055】
或いは、分割情報付加処理部14は、DICOMタグ(0020,0052):Frame of Reference UIDを生成する替わりに、一方のシリーズ画像が、他方のシリーズ画像に対してx軸又はy軸又はz軸のどちら側に存在するのかを表す情報(ベクトル情報)を付加するようにしても良い。
【0056】
なお、分割後のシリーズ画像が2シリーズのみである場合には、隣接シリーズとの位置関係を表す情報を特に付加しなくても良い。図11に示すように、分割後のシリーズ画像A及びBの端部の画像101及び102に隣接シリーズのシリーズ番号を付加しておくことにより、位置関係が決定されるからである。
【0057】
再び、図1を参照すると、例えば、シリーズ画像Aに含まれるスライス画像が画像表示端末3に表示されている間に、ユーザによって隣接シリーズの表示命令が入力されると、分割情報特定部16はシリーズ画像Aの画像付帯情報を検索する。その結果、スライス画像101(図11)に付された隣接シリーズのシリーズ番号(=3)が検出されると、分割情報特定部16は、シリーズ番号が3であるシリーズ画像Bを表す画像データを格納部16から画像表示装置3に出力させる。そして、スライス画像101に付されたDICOMタグ(0020,0052):Frame of Reference UID及び(0020,0032):Image Position (Patient)に基づいて、シリーズ画像Aに含まれるスライス画像101の次に、シリーズ画像Bに含まれるスライス画像102を表示させる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、分割後の各シリーズ画像に互いのシリーズに関する情報を付加するので、隣接するシリーズのスライス画像を容易に検索することができる。従って、元のシリーズが不適切な位置で分割されてしまい、読影中のシリーズ画像に所望のスライス画像が含まれていないことが判明した場合においても、関連するシリーズ画像に含まれるスライス画像を容易に表示させることが可能になる。
【0059】
次に、本発明の第2の実施形態に係る医用画像分割装置について、図12を参照しながら説明する。本実施形態に係る医用画像分割装置は、図1に示す部位分割処理部13及び分割情報付加処理部14における動作が、第1の実施形態におけるものと異なっている。即ち、本実施形態においては、一部のスライス画像が2つのシリーズ画像の間でオーバーラップするようにシリーズ分割を行う。その他の構成及び動作については、図1に示すものと同様である。
【0060】
図12に示す分割前のシリーズ画像(シリーズ番号=1)において、スライス番号SLNが9〜11であるスライス画像に表された部位は、図1の部位認識部12による部位認識の結果、胸腹部であると判断されている。このように、分割前のシリーズ画像が、複数の部位が表されたスライス画像を含む場合には、次のように分割処理が行われる。即ち、部位分割処理部13は、スライス番号SLNが11(胸腹部の下端のスライス画像201)以前のスライス画像のシリーズ番号を1から2に変更することにより、新たなシリーズ画像Aを生成する。同様に、部位分割処理部13は、スライス番号SLNが9(胸腹部の上端のスライス画像202)以降のスライス画像のシリーズ番号を1から3に変更することにより、新たなシリーズ画像Bを生成する。
【0061】
次に、図1に示す分割情報付加処理部14は、分割後のシリーズ画像A及びBの端部のスライス画像201a及び202bの各々に対し、隣接シリーズを特定する情報を付加する。隣接シリーズを特定する情報としては、第1の実施形態におけるのと同様に、隣接シリーズのシリーズ番号を用いても良いし、ファイル名等を用いても良い。
【0062】
また、図1に示す分割情報付加処理部14は、分割後のシリーズ画像A及びBの端部のスライス画像201a及び202bに対し、隣接シリーズとの位置関係を表す情報を付加する。さらに、分割情報付加処理部14は、分割後のシリーズ画像Aとシリーズ画像Bとにおいて重複するスライスの端部に、対応するスライス画像を表す情報を付加しても良い。その場合には、例えば、シリーズ画像Aのスライス画像202aには、シリーズ画像Bのスライス画像202bを表す情報が付加され、シリーズ画像Bのスライス画像201には、シリーズ画像Aのスライス画像201aを表す情報が付加される。
【0063】
隣接シリーズとの位置関係を表す情報としては、第1の実施形態におけるのと同様に、DICOMタグ(0020,0052):Frame of Reference UID、即ち、共通の座標系を表す情報を用いても良い。この場合には、各シリーズ画像A及びBが分割前のシリーズから引き続き保持している3次元座標を表す情報((0020,0032):Image Position (Patient))から、両者の位置関係や、両者間において対応するスライス画像が明らかになる。
【0064】
図1に示す分割画像特定部16は、例えば、画像表示端末3にシリーズ画像A又はBが表示されている間に、隣接シリーズの表示命令が入力された場合に、シリーズ画像Aの画像付帯情報を検索することにより、スライス画像201aに付された隣接シリーズのシリーズ番号(=3)を検出する。そして、対応するスライス画像を表す情報に基づいて、シリーズ画像Bに含まれる一連のスライス画像の表示を、スライス画像201b(スライス画像201aに対応)から開始させる。
【0065】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、複数の部位が表されたスライス画像が分割後のシリーズ画像においてオーバーラップするようにシリーズ分割を行うので、分割後の両方のシリーズ画像において部位の欠落を防ぐことが可能になる。
また、本実施形態によれば、分割後のシリーズ画像間において対応するスライス画像にも互いを関連付ける情報を付加するので、読影中のシリーズ画像の続きとなる隣接シリーズのスライス画像を、重複や洩れを招くことなく容易に検索して表示させることが可能になる。
【0066】
以上、本実施形態においては、複数の部位が表されているスライス画像(図12においては、胸腹部)が、図1に示す部位認識部12によって認識されている場合について説明した。しかしながら、図11に示すように、2つの部位の間に境界が設定できる場合においても、その境界を含む所定の範囲をオーバーラップさせるようにシリーズ分割を行っても良い。例えば、SLN=10とSLN=11との間に設定された境界位置から±Zcm、又は、その境界位置からNスライス分(Nは自然数)をオーバーラップさせる範囲として、シリーズ画像A及びシリーズ画像Bの両方に含めるようにする。
【0067】
次に、本発明の第3の実施形態に係る医用画像分割装置について、図13を参照しながら説明する。本実施形態に係る医用画像分割装置は、図1に示す部位分割処理部13及び分割情報付加処理部14における動作が、第1の実施形態におけるものと異なっている。即ち、本実施形態においては、図1に示すモダリティ1によって取得された画像データに基づいて、体積データ(ボリュームデータ)が構成される。その他の構成及び動作については、図1に示すものと同様である。
【0068】
図13に示すように、図1に示す部位分割処理部13は、部位認識部12による部位認識の結果に基づいて、z軸方向において部位が変化する面(境界面)を検出する。
次に、部位分割処理部13は、z座標の値が境界面のz座標よりも大きい範囲に含まれる体積データについて、シリーズ番号を1から2に変更することにより、新たな体積データ(画像A)を生成する。同様に、部位分割処理部13は、z座標の値が境界面のz座標よりも小さい範囲に含まれる体積データについて、シリーズ番号を1から3に変更することにより、新たな体積データ(画像B)を生成する。
【0069】
次に、図1に示す分割情報付加処理部14は、分割後の画像A及びBに隣接画像及び隣接画像との位置関係を特定する情報を付加する。例えば、画像Aに対しては、境界面(z=0面)に含まれる座標(0,0,0)に識別番号001を付加した情報(0,0,0,001)が、画像付帯情報として付加される。一方、画像Bに対しては、境界面(z=100面)に含まれる座標(0,0,100)に、識別番号001を付加した情報(0,0,100,001)が、画像付帯情報として付加される。この識別番号001により、画像Aと画像Bとが隣接しており、画像A内の座標(0,0,0)と、画像B内の座標(0,0,100)とが対応していることが特定される。
【0070】
次に、本発明の第4の実施形態に係る医用画像分割装置について、図14を参照しながら説明する。本実施形態に係る医用画像分割装置は、図1に示す部位分割処理部13及び分割情報付加処理部14における動作が、第1の実施形態におけるものと異なっている。即ち、本実施形態においては、分割前の体積データの一部がオーバーラップするように、複数の体積データに分割する。その他の構成及び動作については、図1に示すものと同様である。
【0071】
図14に示すように、図1に示す部位分割処理部13は、部位認識部12による部位認識の結果に基づいて、z軸方向において部位が変化する面(境界面)を検出する。
次に、部位分割処理部13は、境界面から±Zcmの範囲を、分割後の体積データにおいてオーバーラップさせる範囲に設定する。そして、部位分割処理部13は、z座標の値が、(境界面のz座標−Zcm)よりも大きい範囲に含まれる体積データについて、シリーズ番号を1から2に変更することにより、新たな体積データ(画像A)を生成する。同様に、部位分割処理部13は、z座標の値が、(境界面のz座標+Zcm)よりも小さい範囲に含まれる体積データについて、シリーズ番号を1から3に変更することにより、新たな体積データ(画像B)を生成する。
【0072】
次に、図1に示す分割情報付加処理部14は、分割後の画像A及びBに隣接画像及び隣接画像との位置関係を特定する情報を付加する。例えば、画像Aに対しては、座標(0,0,0)に識別番号001を付加した情報(0,0,0,001)と、座標(0,0,10)に識別番号002を付加した情報(0,0,10,002)とが、画像付帯情報として付加される。一方、画像Bに対しては、座標(0,0,90)に識別番号001を付加した情報(0,0,90,001)と、座標(0,0,100)に識別番号002を付加した情報(0,0,100,002)とが画像付帯情報として付加される。ここで、画像A内の座標(0,0,0)及び(0,0,10)と、画像B内の座標(0,0,100)及び(0,0,90)とは、オーバーラップしている範囲の端面に含まれる座標である。
【0073】
これらの識別番号001及び022により、画像Aと画像Bとが隣接していることが特定される。また、画像A内の座標(0,0,0)と画像B内の座標(0,0,90)とが対応しており、画像A内の座標(0,0,10)と画像B内の座標(0,0,100)とが対応していることが特定される。
【0074】
以上、本実施形態においては、2つの部位の境界が設定できる場合について説明した。しかしながら、図1に示す部位認識処理部12により、1つの軸位断画像に2つの部位が表されている範囲(例えば、胸腹部)が予め認識されている場合には、その範囲を画像A及びBの両方に含めるように画像分割を行っても良い。
【0075】
以上説明した第1〜第4の実施形態においては、1つのシリーズの軸位断画像を2つのシリーズに分割しているが、3つ以上のシリーズに分割しても良い。その場合には、分割する各境界面やオーバーラップさせる範囲の各端面に、隣接シリーズを特定する情報及び隣接シリーズとの位置関係を特定する情報を付加すれば良い。
【0076】
次に、本発明の第5の実施形態に係る医用画像分割装置について説明する。図15は、本実施形態に係る医用画像分割装置を含む医用画像撮影システムの構成を示すブロック図である。
図15に示すように、このシステムは、図1に示す画像サーバ2の替わりに、画像サーバ5と、部位認識装置6と、画像分割装置7と、画像格納装置8とを含んでいる。これらの装置5〜7は、DICOM規格に準拠している。その他の構成については、図1に示すシステムにおけるものと同様である。
【0077】
画像サーバ5は、モダリティ1から出力された画像データを保管及び管理するPACS用サーバである。画像サーバ5は、モダリティ1から入力された画像データを画像格納装置8に格納させる。また、画像サーバ5は、その画像データの画像付帯情報に撮像部位を表す情報((0018,0015):Body Part)が含まれていない場合に、画像データを部位認識装置6に出力して部位認識処理を行わせる。さらに、画像サーバ5は、情報読影用端末4の要求に従って、画像格納装置8に格納されている画像データを画像表示端末3に出力するように、画像格納装置8を制御する。
【0078】
部位認識装置6は、1シリーズの画像データによって表される複数の軸位断画像に基づいて、各軸位断画像に被検体のどの部位が撮像されているかを認識して部位情報を生成する装置である。部位認識装置6における部位認識処理機能及び動作については、図1及び図2に示す部位認識部12におけるものと同様である。このような部位認識装置6は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)によって構成されている。
【0079】
医用画像分割装置(以下、単に「画像分割装置」ともいう)7は、部位分割処理部71と、分割情報付加処理部72と、分割画像特定部73とを含んでいる。これらの各部71〜73の動作は、図1に示す部位分割処理部13、分割情報付加処理部14、及び、分割画像特定部16におけるものとそれぞれ同様である。このような画像分割装置7は、例えば、先に説明した医用画像分割プログラムが読み込まれたパーソナルコンピュータ(PC)によって構成されている。
【0080】
画像格納装置8は、例えば、画像サーバ5に接続されているハードディスクドライブである。或いは、記録媒体として、その他に、MO、MT、RAM、CD−ROM、又は、DVD−ROM等を用いても良く、その場合には、それらの記録媒体を駆動する駆動装置が、画像サーバ5に接続される。或いは、画像サーバ5に画像格納装置を内蔵させても良い。
【0081】
本実施形態においては、画像分割装置7をPCによって構成するので、既存の医用画像撮影システムに画像分割機能を容易に組み込むことができる。従って、既存の設備を活用しつつ、効率の良い画像分割処理を行うことが可能となる。
なお、本実施形態において、画像分割装置7は、画像分割後の画像データやそれらの画像付帯情報を画像格納装置8に出力して格納させているが、画像分割装置7に内蔵されている格納装置(例えば、ハードディスク)に、画像データや画像付帯情報を格納するようにしても良い。
【0082】
以上説明した第1〜第5の実施形態において、部位認識部12(図1)及び部位認識装置6(図15)は、モダリティ1から直接画像サーバ2及び5に入力された画像データについて部位認識処理を行っている。しかしながら、モダリティ1において生成された後で一旦記録媒体に格納された画像データを画像サーバ2又は部位認識装置6に読み込むことにより、部位認識処理を行っても良い。
【0083】
次に、本発明の第1〜第5の実施形態に係る医用画像分割装置を含む医用画像撮影システムの別の構成例について、図16を参照しながら説明する。図16に示すように、このシステムにおいて、モダリティ1、画像サーバ2、画像表示端末3、読影用端末4は、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)等のネットワークN1を介して互いに接続されている。或いは、画像サーバ2の替わりに、図15に示す画像サーバ5と、部位認識装置6と、画像分割装置7と、画像格納装置8とを、ネットワークN1に接続するようにしても良い。また、このネットワークN1に、各診療科に設置されている端末30や、RIS(radiology information system:放射線科情報管理システム)40や、HIS(Hospital Information System:病院情報システム)50を接続しても良い。
【0084】
図16に示すように、医用画像部位分割機能を有する画像サーバ2(又は、部位分割装置7)をネットワークN1に接続することにより、適切に分割されたシリーズ画像や、隣接シリーズを検索し易いシリーズ画像を種々の端末(例えば、読影用端末4や、各診療科端末30)において利用できるようになるので、効率の良い読影や医療診断を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、医療用撮像モダリティによって取得された、複数の部位が表された軸位断画像を表す画像データに基づいて、部位ごとに分割された軸位断画像を表す画像データを生成する医用画像分割装置、及び、そのような装置において用いられる医用画像分割プログラムにおいて利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る医用画像分割装置を含む医用画像撮影システムの構成を示す図である。
【図2】図1に示す部位認識部の機能を示すブロック図である。
【図3】図1に示す部位認識部の動作を示すフローチャートである。
【図4】空気領域特徴量を用いた部位確信度スコアテーブルを示す図である。
【図5】空気領域特徴量及びその微分値を示す図である。
【図6】仮決定された部位(部位認識結果)をスライス順に配置した図である。
【図7】部位認識結果と参照部位との間のマッチングカーブを示す図である。
【図8】動的計画法によるマッチングカーブの探索に用いられる重みマップである。
【図9】動的計画法によるマッチングカーブの探索に用いられるコストマップである。
【図10】ニューラルネットを利用した部位の仮決定方法を説明するための図である。
【図11】図1に示す部位分割処理部及び分割情報付加処理部の動作を説明するための図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る医用画像分割装置の動作を説明するための図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る医用画像分割装置の動作を説明するための図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る医用画像分割装置の動作を説明するための図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る医用画像分割装置を含む医用画像撮影システムの構成を示す図である。
【図16】本発明の第1の実施形態に係る医用画像分割装置を含む医用画像撮影システムの別の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 モダリティ
1a コンピュータ断層撮影(CT)装置
1b コンピュータ放射線撮影(CR)装置
1c 磁気共鳴撮像(MRI)装置
1d ポジトロン断層撮影(PET)装置
1e 超音波撮像(US)装置
2、5 画像サーバ
3 画像表示端末
3a、4a 画面
4 読影用端末
4b 入力デバイス
6 部位認識装置
7 画像分割装置
8 画像格納装置
11 制御部
12 部位認識部
13、71 部位分割処理部
14、72 分割情報付加処理部
15 格納部
16、73 分割画像特定部
30 診療科端末
40 放射線科情報管理システム(RIS)
50 病院情報システム(HIS)
101、102、201a、201b、202a、202b スライス画像
121 特徴量計算部
122 部位確信度計算部
123 スコアテーブル記憶部
124 部位決定処理部
125 部位情報記憶部
126 部位修正処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の軸位断画像を含む1つのシリーズ画像を表す画像データに基づいて、少なくとも第1及び第2のシリーズ画像を含む複数のシリーズ画像をそれぞれ表す画像データを生成する装置であって、
1つのシリーズ画像を第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とに分割することにより、第1のシリーズ画像を表す第1の画像データと、第2のシリーズ画像を表す第2の画像データとを生成する画像分割手段と、
第1の画像データに対して、第2のシリーズ画像を特定する情報及び第1のシリーズ画像に対する第2のシリーズ画像の位置関係を表す情報を含む隣接画像情報を付加し、第2の画像データに対して、第1のシリーズ画像を特定する情報及び第2のシリーズ画像に対する第1のシリーズ画像の位置関係を表す情報を含む隣接画像情報を付加する分割情報付加手段と、
を具備する医用画像分割装置。
【請求項2】
前記画像分割手段が、第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とが軸方向の所定の範囲においてオーバーラップするように、第1及び第2の画像データを生成する、請求項1記載の医用画像分割装置。
【請求項3】
前記画像分割手段が、1つの軸位断画像に複数の部位が表されている範囲をオーバーラップさせる、請求項2記載の医用画像分割装置。
【請求項4】
医用画像分割装置に接続されている表示装置に前記第1の画像データが入力されることにより、前記表示装置の画面に前記第1のシリーズ画像が表示されている場合に、
外部から入力される信号に応じ、前記第1のシリーズ画像の隣接画像情報に基づいて前記第2のシリーズ画像を検索して前記画面に表示させる隣接画像特定手段をさらに具備する請求項1〜3のいずれか1項記載の医用画像分割装置。
【請求項5】
複数の軸位断画像を含む1つのシリーズ画像を表す画像データに基づいて、少なくとも第1及び第2のシリーズ画像を含む複数のシリーズ画像をそれぞれ表す画像データを生成する装置であって、
1つのシリーズ画像を第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とに分割することにより、第1のシリーズ画像を表す第1の画像データと、第2のシリーズ画像を表す第2の画像データとを生成する画像分割手段であって、第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とが、1つの軸位断画像に複数の部位が表されている範囲においてオーバーラップするように、第1及び第2の画像データを生成する前記画像分割手段を具備する医用画像分割装置。
【請求項6】
前記画像分割手段が、1つの軸位断画像に頭部及び頸部、頸部及び胸部、胸部及び腹部、又は、腹部及び骨盤部が表されている範囲をオーバーラップさせる、請求項3又は5記載の医用画像分割装置。
【請求項7】
複数の軸位断画像を含む1つのシリーズ画像を表す画像データに基づいて、少なくとも第1及び第2のシリーズ画像を含む複数のシリーズ画像をそれぞれ表す画像データを生成する際に用いられるプログラムであって、
1つのシリーズ画像を第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とに分割することにより、第1のシリーズ画像を表す第1の画像データと、第2のシリーズ画像を表す第2の画像データとを生成する手順(a)と、
第1の画像データに対して、第2のシリーズ画像を特定する情報及び第1のシリーズ画像に対する第2のシリーズ画像の位置関係を表す情報を含む隣接画像情報を付加し、第2の画像データに対して、第1のシリーズ画像を特定する情報及び第2のシリーズ画像に対する第1のシリーズ画像の位置関係を表す情報を含む隣接画像情報を付加する手順(b)と、
をCPUに実行させる医用画像分割プログラム。
【請求項8】
手順(a)が、第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とが軸方向の所定の範囲においてオーバーラップするように、第1及び第2の画像データを生成することを含む、請求項7記載の医用画像分割プログラム。
【請求項9】
手順(a)が、1つの軸位断画像に複数の部位が表されている範囲をオーバーラップさせることを含む、請求項8記載の医用画像分割プログラム。
【請求項10】
医用画像分割装置に接続されている表示装置に前記第1の画像データが入力されることにより、前記表示装置の画面に前記第1のシリーズ画像が表示されている場合に、
外部から入力される信号に応じ、前記第1のシリーズ画像の隣接画像情報に基づいて前記第2のシリーズ画像を検索して前記表示装置に入力させることにより、前記第2のシリーズ画像を画面に表示させる手順をさらにCPUに実行させる請求項7〜9のいずれか1項記載の医用画像分割プログラム。
【請求項11】
複数の軸位断画像を含む1つのシリーズ画像を表す画像データに基づいて、少なくとも第1及び第2のシリーズ画像を含む複数のシリーズ画像をそれぞれ表す画像データを生成する際に用いられるプログラムであって、
1つのシリーズ画像を第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とに分割することにより、第1のシリーズ画像を表す第1の画像データと、第2のシリーズ画像を表す第2の画像データとを生成する手順(a)であって、第1のシリーズ画像と第2のシリーズ画像とが、1つの軸位断画像に複数の部位が表されている範囲においてオーバーラップするように、第1及び第2の画像データを生成する手順(a)をCPUに実行させる医用画像分割プログラム。
【請求項12】
手順(a)が、1つの軸位断画像に頭部及び頸部、頸部及び胸部、胸部及び腹部、又は、腹部及び骨盤部が表されている範囲をオーバーラップさせることを含む、請求項9又は11記載の医用画像分割プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−6091(P2008−6091A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180078(P2006−180078)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】