説明

医用画像読影システム

【課題】読影対象の医用画像の解析結果に応じて必要とされる読影時間を確保し、読影精度の向上を図る。
【解決手段】本発明に係る医用画像読影システムによれば、画像解析装置は、医用画像を解析し、解析結果に基づいて医用画像の読影基準時間を設定する。読影端末は、医用画像が表示部に表示されてから操作部により医用画像の読影終了が指示されるまでの読影時間を計測し、当該計測された読影時間が読影基準時間に到達していない場合、引き続き表示部にその医用画像を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像読影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野では、CR(Computed Radiography)装置、FPD(Flat Panel Detector)装置、CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等のモダリティにおいて生成された医用画像を表示して、医師が病変部の状態や経時変化を観察する読影診断が行われている。
【0003】
医用画像の読影診断においては、医師の多忙や疲労により読影漏れや病変の見落としが発生する可能性がある。そこで、例えば、特許文献1には、一定時間の読影時間が経過する毎に一定作業量に到達した旨を警告するとともに、読影医の疲労レベルを判定し判定結果を表示することで読影医の読影精度の低下を防ぐ技術が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、一回も表示されていない画像や表示時間が不十分な画像が存在する場合に警告を行うことで、読影漏れや病変の見落としを防止する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2005−348936号公報
【特許文献2】特開2007−260064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、読影漏れや病変の見落としなく読影診断を行うために必要とされる読影時間は、読影対象となる医用画像の画質や病変の疑いのある異常陰影の有無によって異なる。例えば、異常陰影が存在する医用画像では、一見して異常陰影の存在しない医用画像より長い読影時間が必要となる。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術は、読影対象となる医用画像毎に読影時間を考慮したものではなく、読影対象の医用画像に対して必要とされる読影時間をかけて読影がされない可能性があった。
【0006】
本発明の課題は、読影対象の医用画像の解析結果に応じて必要とされる読影時間を確保し、読影精度の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の医用画像読影システムは、
医用画像を解析する画像解析手段と、
前記画像解析手段による解析結果に基づいて前記医用画像の読影基準時間を設定する読影基準時間設定手段と、
前記医用画像を表示する表示手段と、
前記医用画像の読影終了を指示するための操作手段と、
前記表示手段に前記医用画像が表示されてから前記操作手段により前記医用画像の読影終了が指示されるまでの読影時間を計測し、当該計測された読影時間が前記読影基準時間に到達していない場合に、引き続き前記表示手段に前記医用画像を表示させる表示制御手段と、
を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記表示制御手段は、前記計測された読影時間が前記読影基準時間に到達していない場合に、前記医用画像とともに更なる読影を促すための警告を前記表示手段に表示させる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記表示制御手段は、前記医用画像を引き続き表示した後に前記読影基準時間が経過した場合に、前記医用画像の表示を終了させる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記画像解析手段は、前記医用画像を解析することによって前記医用画像から異常陰影候補を検出する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、
前記表示制御手段は、前記計測された読影時間が前記読影基準時間に到達していない場合に、前記表示手段に前記医用画像とともに前記検出された異常陰影候補の領域を指摘する表示を行わせる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、
前記読影基準時間設定手段は、前記検出された異常陰影候補の特徴量を算出し、当該算出された特徴量に基づいて当該異常陰影候補が真陽性である度合いを示す評価値を算出し、この算出された評価値に基づいて前記医用画像の読影基準時間を設定する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項4又は5に記載の発明において、
前記読影基準時間設定手段は、前記検出された異常陰影候補の特徴量を算出し、当該算出された特徴量に基づいて当該異常陰影候補が真陽性である度合いを示す評価値を算出し、この算出された評価値及び検出された異常陰影候補の個数に基づいて前記医用画像の読影基準時間を設定する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、読影対象の医用画像の解析結果に応じて必要とされる読影時間が確保されるので、読影精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔医用画像読影システム100の構成〕
図1に、医用画像読影システム100のシステム構成を示す。
医用画像読影システム100は、病院内に設置されるシステムである。図1に示すように、医用画像読影システム100は、モダリティ10、画像管理サーバ20、画像解析装置30、読影端末40を含んで構成され、各装置は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の通信回線からなる通信ネットワークNを介してデータ送受信可能に接続されている。医用画像読影システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。なお、各装置の台数は、特に限定されない。
【0016】
モダリティ10は、患者の検査対象の部位を撮影し、撮影した画像をデジタル変換して医用画像を生成し、画像管理サーバ20に出力する。モダリティ10は、例えば、CR装置、FPD装置等が含まれる。
【0017】
画像管理サーバ20は、モダリティ10により生成された医用画像の画像データ、及び医用画像に関する付帯情報を蓄積記憶・管理するコンピュータ装置である。具体的に、画像管理サーバ20は、ハードディスク等により構成される記憶部25を有する。この記憶部25は、医用画像DB(Data Base)251を有している。
【0018】
医用画像DB251において記憶される医用画像は、DICOM規格に則ったDICOMファイル形式で保存されている。DICOMファイルは、画像部とヘッダ部とから構成される。画像部には医用画像の実データ、ヘッダ部に当該医用画像に関する付帯情報が書き込まれている。医用画像DB251は、医用画像の付帯情報を格納する医用画像管理テーブルを有し、医用画像を検索可能に格納する。
【0019】
付帯情報は、例えば、患者情報、検査情報、画像詳細情報を含んで構成されている。
【0020】
患者情報は、患者を識別するための患者識別情報(例えば、患者ID)、患者の名前、性別、生年月日等の医用画像の患者に関する各種情報が含まれる。
検査情報は、検査を識別するための検査識別情報(例えば、検査ID)、検査日付、モダリティの種類、検査部位、担当医師等の検査に関する各種情報とが含まれる。
【0021】
画像詳細情報は、画像ID、画像生成時刻、医用画像の格納場所を示すファイルパス名等の医用画像に関する各種情報が含まれる。
【0022】
画像管理サーバ20は、モダリティ10から医用画像が受信されると、受信された医用画像を医用画像DB251に格納し、その付帯情報を医用画像管理テーブルに登録する。また、受信された医用画像を通信ネットワークNを介して画像解析装置30に転送し医用画像の解析を行わせ、解析結果を医用画像の付帯情報及び医用画像管理テーブルに追加する。
【0023】
また、画像管理サーバ20は、通信ネットワークNを介しての読影端末40からの検索要求に応じて、読影端末40から送信される条件に合致した医用画像を医用画像DB251により検索して、条件に合致した医用画像のリストデータを読影端末40に送信する。また、読影端末40から取得要求のあった医用画像のデータを医用画像DB251から読み出して読影端末40に送信する。
【0024】
画像解析装置30は、画像管理サーバ20から転送された医用画像を解析し、解析結果を画像管理サーバ20に送信する。画像解析装置30の構成については後述する。
読影端末40は、画像管理サーバ20に蓄積記憶されている医用画像を取得して、医師の読影用に表示するためのPC(Personal Computer)等の端末装置である。読影端末40の構成については後述する。
【0025】
〔画像解析装置30の構成〕
図2に、画像解析装置30の機能的構成を示す。
図2に示すように、画像解析装置30は、CPU31、操作部32、表示部33、通信部34、RAM35、記憶部36等を備えて構成され、各部はバス37により接続されている。
【0026】
CPU31は、記憶部36に記憶されているシステムプログラムや画像解析情報生成処理プログラムを始めとする各種処理プログラムを読み出し、RAM35内に形成されたワークエリアに展開し、該プログラムに従って各部を制御する。
【0027】
操作部32は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号をCPU31に出力する。
【0028】
表示部33は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニタにより構成され、CPU31から入力される表示信号の指示に従って、各種画面や医用画像等を表示する。
【0029】
通信部34は、LANアダプタ、ルータ、TA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNに接続された各装置とデータの送受信を行う。
【0030】
RAM35は、CPU31により実行制御される各種処理において、記憶部36から読み出された各種プログラム、入力若しくは出力データ、及びパラメータ等を一時的に格納するワークエリアを形成する。
【0031】
記憶部36は、HDD(Hard Disc)や半導体の不揮発性メモリ等により構成される。
記憶部36は、CPU31で実行されるシステムプログラムや、画像解析情報生成処理プログラム、画像解析処理プログラム、検査部位に応じた異常陰影候補検出プログラムを始めとする各種プログラム、これらのプログラムの実行に必要なデータ(例えば、図10(a)(b)に示す読影時間設定テーブル361、362)を記憶する。各種プログラムは、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードの形態で記憶部36に格納され、CPU31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0032】
〔読影端末40の構成〕
図3に、読影端末40の機能的構成を示す。
図3に示すように、読影端末40の構成は、図2に示す画像解析装置30と略同様である。即ち、読影端末40は、CPU41、操作部42、表示部43、通信部44、RAM45、記憶部46等を備えて構成され、各部はバス47により接続されている。
【0033】
記憶部46に記憶されるプログラムには、後述する表示制御処理を実行するためのプログラムが含まれる。その他のCPU41、操作部42、表示部43、通信部44、RAM45、記憶部46の構成は、図2のCPU31、操作部32、表示部33、通信部34、RAM35、記憶部36と略同様であるので説明を援用する。
【0034】
〔画像解析装置30の動作〕
次に、画像解析装置30の動作について説明する。
図4に、画像管理サーバ20から転送された医用画像が通信部34により受信された際にCPU31により実行される画像解析情報生成処理のフローを示す。当該処理は、CPU31と記憶部36に記憶されている画像解析情報生成処理プログラムとの協働によるソフトウエア処理により実現される。
【0035】
まず、受信された医用画像に画像解析処理が実行される(ステップS1)。
図5に、ステップS1において実行される画像解析処理のフローを示す。
画像解析処理においては、まず、医用画像が解析されることによって異常陰影候補の検出が行われる(ステップS101)。ステップS101においては、受信された医用画像の付帯情報に基づき医用画像の検査部位を判断し、検査部位に応じた異常陰影候補検出プログラムを読み出して、読み出した異常陰影候補検出プログラムに従って異常陰影候補の検出が行われる。
【0036】
以下、ステップS101の処理の一例として、検査部位が胸部正面である場合の異常陰影候補の検出について説明する。ここでは、異常陰影候補として、結節状陰影の候補を検出する例について説明する(桂川茂彦:「胸部単純X線写真におけるコンピュータ支援診断(Computer-Aided Diagnosis)」放射線医学物理による)。
【0037】
まず、医用画像から、マッチドフィルタにより結節状陰影のコントラストを増強した画像と、平滑化フィルタによりコントラストを減弱した画像が作成され、両者の対応する画素値の差分をとることによって差分画像が作成される。マッチドフィルタは、例えば、直径9mmの結節状陰影のコントラスト対雑音比が最大となるように設計されたものである。差分画像では肋骨などの胸部正常構造のコントラストは低下し、結節状陰影のコントラストが強調される。
【0038】
次いで、差分画像に対して複数回のしきい値処理が行われる。しきい値処理は、予め定めたしきい値以上の画素値を1、それ以外を0に変換して二値化する処理である。しきい値は、差分画像の画素値のヒストグラムの面積比率で表現した値である。例えば、差分画像のヒストグラムの上位1%〜40%の範囲でしきい値を変化させて複数回のしきい値処理が行われる。このしきい値処理によって、異常陰影、胸郭、血管影などの陰影が抽出される。
【0039】
次いで、複数回のしきい値処理により抽出された陰影のそれぞれの有効直径、円形度、不整度等の特徴量が算出される。図6に、有効直径(図6中Dで示す)、円形度、不整度の算出式を示す。有効直径は、陰影と同じ面積をもつ円の直径である。円形度は、その円を陰影の重心に重ねたときに、円内に含まれる陰影の面積(画素数)の割合である。不整度は、陰影の辺縁の不正の程度を表すものであり、陰影の周囲の長さに対する上記の円の円周の比を1から差し引いた値である。
【0040】
次いで、算出された特徴量に基づいて、抽出された陰影から異常陰影候補が絞り込まれる。
図7(a)に、しきい値処理におけるしきい値の変化としきい値処理によって抽出される結節状陰影及び血管影の有効半径の変化の関係を示す。図7(b)に、しきい値処理におけるしきい値の変化としきい値処理によって抽出される結節状陰影及び肺血管の円形度の変化の関係を示す。図7(a)、(b)は、実験的経験的に基づいて得られた結果をグラフ化したものである。図7(a)、(b)に示すように、結節状陰影はしきい値の増大とともに有効半径は穏やかに変化し、また、比較的高い円形度を保持しているのに対し、血管影はしきい値16%で急激な有効半径の増加と円形度の低下が見られる。
従って、各陰影におけるしきい値16%付近での有効半径、円形度の変化に基づき、異常陰影候補を絞り込むことができる。
【0041】
異常陰影候補が検出されると、検出された各異常陰影候補の特徴量が算出される(ステップS102)。例えば、抽出された異常陰影候補の画素値の平均値、コントラスト、集中度、標準偏差、歪度が特徴量として算出される。
【0042】
コントラストは、以下のようにして算出される。
まず、図8に示すように異常陰影候補の領域の重心から辺縁の1点までの距離d3にある円が候補辺縁として指定される。次に、距離d3を元に外側領域と内側領域が設定される。例えば、図8に示すように重心から距離0.8d3にある円領域が内側領域、重心から距離1.2d3以上で距離1.7d3以下の領域が外側領域として設定される。
次いで、外側領域と内側領域のそれぞれについて画素値の平均値が算出される。そして、各平均値の差が算出される。この平均値の差が異常陰影候補のコントラストである。
【0043】
集中度は、結節状陰影は中心部の濃度が低い傾向にあることを利用して以下のように算出される。
まず、異常陰影候補の領域について勾配情報が作成される。勾配情報はエッジ検出フィルタを用いて作成する。このエッジ検出フィルタは乳房画像の濃度勾配を勾配ベクトルとして算出するものである。
【0044】
次いで、算出した勾配情報を元に勾配ベクトルが算出される。そして、図9に示すように異常陰影候補の領域の各画素から勾配ベクトル方向に、当該異常陰影候補の直径の最大値分だけ投票が行われる。投票とは、異常陰影候補の領域の各画素から勾配ベクトルを設定することである。図9の例では異常陰影候補の直径の最大値を15mmとして勾配ベクトルを設定している。
【0045】
投票により勾配ベクトルが設定されると、この投票結果を元に濃度の集中度が算出される。具体的には、異常陰影候補の領域の各画素に投票が行われた回数が計数され、この回数が投票値とされる。つまり、図9における勾配ベクトルの設定は投票を示すので、投票値はこの勾配ベクトルを示す矢印が各画素を通過した回数となる。そして、各画素の投票値のうち最大の投票値が、その異常陰影候補の集中度として算出される。図9の例では画素1〜4の投票結果は、それぞれ1、1、2、4となり、投票値の最も大きい画素4の投票値が、その異常陰影候補の集中度として算出されることとなる。
【0046】
集中度が大きいということは、異常陰影候補の領域内で勾配ベクトルの向きが投票値の最も大きい画素に集中している度合いが大きく、異常陰影候補が真の結節状陰影である可能性が高いということを示す。
【0047】
歪度は、以下のようにして算出される。
まず、異常陰影候補の各方向(重心と辺縁を結ぶ予め定められた複数方向の直線)における歪度Skが算出され、各方向の歪度Skの和が算出される。この各方向の歪度Skの和が、特徴量としての歪度となる。〔数1〕に、歪度Skの算出式を示す。
【数1】

【0048】
複数の特徴量が算出されると、異常陰影候補が真陽性である度合いを示す評価値として、異常陰影候補の真陽性と偽陽性からのマハラノビス距離比が算出される(ステップS103)。マハラノビス距離は、2つのグループに属する学習データの分散を考慮して、判別対象のデータが各グループにどれだけ近いのかを距離で示すものである。マハラノビス距離比は以下のようにして算出される。
【0049】
まず、予め真陽性又は偽陽性の何れであるかが明らかな陰影画像を2つのグループに分けてその特徴量(平均値、コントラスト、集中度、標準偏差、歪度)を学習データとして準備しておく。このとき、上記特徴量を変量とする学習データにより真陽性と偽陽性の母集団が形成される。マハラノビス距離Dは、真陽性、偽陽性の各母集団の重心と、異常陰影候補について算出された特徴量を変量とする判別対象データとの距離を示すものであり、下記〔数2〕により算出することができる。
【数2】

【0050】
上記式(1)におけるμは各母集団を形成する学習データの平均値縦ベクトル(以下、単に平均という)であり、式(2)で示される。また、式(1)におけるxは判別対象データの縦ベクトルであり、式(3)により示される。
そして、求めた真陽性の母集団とのマハラノビス距離をD、偽陽性の母集団とのマハラノビス距離をDとし、DをDで除算することによりマハラノビス距離比が算出される。
【0051】
なお、本実施の形態においては、当該異常陰影候補が真陽性である度合いを示す評価値として異常陰影候補の真陽性と偽陽性の母集団からのマハラノビス距離の比率であるマハラノビス距離比を用いることとしたが、これに限定されない。
【0052】
マハラノビス距離比が算出されると、算出されたマハラノビス距離比及び検出された異常陰影候補の位置情報が画像解析結果としてRAM35に一時記憶され(ステップS104)、処理は図4のステップS2に移行する。
【0053】
図4のステップS2においては、画像解析処理における画像解析結果に基づいて、受信された医用画像に読影基準時間が設定される(ステップS2)。具体的には、図10(a)に示す読影時間設定テーブル361が参照され、算出されたマハラノビス距離比に応じた読影基準時間が設定される。複数の異常陰影候補が検出された場合は、最も小さいマハラノビス距離比に応じた読影基準時間が設定される。マハラノビス距離比は小さいほど真陽性である度合いが高く、読影基準時間を長く設定すべきだからである。
【0054】
なお、図10(a)の読影時間設定テーブル361は、マハラノビス距離比によって一義的に読影基準時間が設定されるように構成されているが、図10(b)に示す読影時間設定テーブル362を参照し、マハラノビス距離比及び画像解析処理で検出された異常陰影候補の個数に基づいて読影基準時間を設定するようにしてもよい。
【0055】
読影基準時間が設定されると、画像解析結果(ここでは、異常陰影候補の位置情報)及び読影基準時間が画像ID等の医用画像を特定する情報と対応付けられ、通信部34を介して画像管理サーバ20に送信される(ステップS3)。そして、画像解析情報生成処理は終了する。
【0056】
画像管理サーバ20においては、画像解析装置30から画像ID、画像解析結果及び読影基準時間が受信されると、画像IDにより特定される医用画像の付帯情報に画像解析結果結果及び読影基準時間が書き込まれるとともに、医用画像DB251の医用画像管理テーブルに書き込まれる。
【0057】
〔読影端末40の動作〕
次に、読影端末40の動作について説明する。
図11に、操作部42により一又は複数の医用画像が指定され、医用画像の取得要求が入力された際にCPU41により実行される表示制御処理のフローを示す。この表示制御処理は、CPU41と記憶部46に記憶されている表示制御処理プログラムとの協働によるソフトウエア処理により実現される。
【0058】
まず、通信部44を介して画像管理サーバ20に操作部42により指定された一又は複数の医用画像の取得要求が送信され、医用画像が取得される(ステップS11)。取得された医用画像はRAM45に記憶される。
次いで、取得された医用画像(複数枚指定された場合は1枚目の医用画像)が読影対象の医用画像として表示部43に表示され(ステップS12)、読影時間の計時が開始される(ステップS13)。即ち、CPU41においてクロックのカウントが開始される。
【0059】
図12(a)に、ステップS12において表示部43に表示される画面の一例を示す。図12(a)に示すように、表示部43には読影対象の医用画像が表示される。また、次に読影すべき医用画像が取得されている場合には「次へ」ボタンB1、次に読影すべき医用画像が存在しない場合は「読影終了」ボタン(図示せず)が表示される。これらのボタンは、表示部43に表示されている読影対象の医用画像の読影終了を指示するための読影終了指示ボタンである。図12(a)においては、「次へ」ボタンB1が表示されている場合を示している。
【0060】
操作部42による操作が待機され、「次へ」ボタンB1又は「終了ボタン」が押下されて読影対象の医用画像の読影を終了する指示が入力されると(ステップS14;YES)、読影対象の医用画像の読影時間がこの読影対象の医用画像に設定された読影基準時間以上であるか否かが判断される(ステップS15)。具体的には、計時開始からの経過時間が読影対象の医用画像の付帯情報に書き込まれている読影基準時間と比較されて判断が行われる。
【0061】
読影対象の医用画像の読影時間が読影基準時間以上である場合(ステップS15;YES)、処理はステップS18に移行する。読影対象の読影時間が読影基準時間に到達していない場合(ステップS15;NO)、表示部43に当該読影対象の医用画像が引き続き表示されるとともに医師に更なる読影を促す警告表示及び/又は画像解析装置30において検出された異常陰影候補の領域を指摘するアノテーションが表示される(ステップS16)。
【0062】
図12(b)に、ステップS16において表示部43に表示される画面の一例を示す。図12(b)においては、警告を表示するためのダイアログボックス431と、異常陰影候補の箇所を指摘するアノテーション432の双方が表示された例を示している。警告ダイアログボックス431には、例えば、「指摘位置に病変が存在する可能性があります。」「読影時間が経過していません。指摘位置を確認し、確認したらOKを押してください。」等の更なる読影を促す警告メッセージ及び指摘箇所を確認したことをユーザが入力するための「OK」ボタンが表示される。
【0063】
図12(c)に示すように操作部42から「OK」ボタンが押下されたか若しくは計時開始から読影基準時間が経過すると(ステップS17;YES)、処理はステップS18に移行する。
【0064】
ステップS18においては、次に読影すべき医用画像が取得されているか否かが判断される。次に読影すべき医用画像が取得されていると判断されると(ステップS18;YES)、表示部43の表示対象が次に読影すべき医用画像に切り替えられる(ステップS19)。そして、処理はステップS13に戻り、ステップS12以降の処理が実行される。一方、次に読影すべき医用画像が存在しないと判断されると(ステップS18;NO)、表示部43への医用画像の表示が終了され(ステップS20)、本処理は終了する。
【0065】
以上説明したように、医用画像読影システム100によれば、画像解析装置30は、医用画像を解析し、解析結果に基づいて医用画像の読影基準時間を設定する。読影端末40は、医用画像が表示部43に表示されてから操作部42により医用画像の読影終了が指示されるまでの読影時間を計測し、当該計測された読影時間が読影基準時間に到達していない場合、引き続き表示部43にその医用画像を表示させる。
【0066】
従って、読影対象の医用画像の解析結果に応じて必要とされる読影時間が確保されるので、読影精度の向上を図ることができる。
【0067】
また、読影時間が読影基準時間に満たない場合には、更なる読影を促すための警告が表示されるので、読影時間が十分でなかったことを医師に認識させることができる。
【0068】
また、引き続き医用画像を表示した後に読影基準時間が経過した場合に医用画像の表示を終了させるので、無駄に医用画像を表示しておくことを防止することができる。
【0069】
また、画像解析装置30は、医用画像を解析することによって医用画像の異常陰影候補を検出し、その検出結果に基づいて医用画像の読影基準時間を設定するので、異常陰影候補が医用画像に存在するか否かに応じて必要な読影時間を確保することができる。
【0070】
また、計測された読影時間が読影基準時間に到達していない場合に、医用画像上に検出された異常陰影候補の領域を指摘する表示を行うので、医師がどの領域を重点的に読影すべきかを把握することが可能となる。
【0071】
また、画像解析装置30は、検出された異常陰影候補の特徴量を算出し、当該算出された特徴量に基づいて当該異常陰影候補が真陽性である度合いを示す評価値を算出し、この算出された評価値に基づいて医用画像の読影基準時間を設定する。従って、読影に時間を要する真陽性である度合い異常陰影候補が存在する医用画像については、より長い読影時間を確保することができ、読影精度の向上を図ることができる。
【0072】
また、画像解析装置30は、検出された異常陰影候補の特徴量を算出し、当該算出された特徴量に基づいて当該異常陰影候補が真陽性である度合いを示す評価値を算出し、この算出された評価値及び検出された異常陰影候補の個数に基づいて医用画像の読影基準時間を設定する。従って、医用画像上で検出された異常陰影候補の真陽性である度合い及び個数に応じて必要となる読影時間を確保することができ、読影精度の向上を図ることができる。
【0073】
なお、上記実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施の形態においては、画像解析装置30は、画像解析処理において医用画像から異常陰影候補を検出し、この検出結果に基づいて読影基準時間を設定する場合を例にとり説明したが、画像解析処理としてはこれに限定されず、例えば、医用画像の画質の評価値(例えば、S/N比)を算出し、この算出結果に基づいて読影基準時間を設定することとしてもよい。
【0074】
また、上記実施の形態においては、画像解析装置30と読影端末40とが別個の装置である場合を例にとり説明したが、画像解析装置30と読影端末40の双方の機能を備えた1つの装置であってもよい。この場合、例えば、当該装置の記憶部には、図4のステップS1〜S3の処理を行うプログラム及び図11のステップS11〜S20の処理を行うプログラムが記憶される。通信部を介して入力された医用画像に対して図4のステップS1〜S3の処理及び図11のステップS12〜S20の処理を一連で行うプログラムを記憶部に記憶し、入力された医用画像の画像解析〜表示までを一連の流れとして行うようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施の形態においては、異常陰影候補が真陽性である度合いを示す評価値としてマハラノビス距離比を算出することとしたが、これに限定されない。
また、異常陰影候補の領域を指摘する表示として、当該領域を示すアノテーションを表示することとしたが、これに限定されず、医用画像の異常陰影候補以外の領域をマスクすることによって異常陰影候補の領域を指摘する等、他の方法を用いてもよい。
【0076】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDDや半導体の不揮発性メモリ等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0077】
その他、医用画像読影システム100及び医用画像読影システム100を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態における医用画像読影システムの機能構成例を示す図である。
【図2】図1の画像解析装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】図1の読影端末の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】図2のCPUにより実行される画像解析情報生成処理を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップS1において実行される画像解析処理を示すフローチャートである。
【図6】図5の画像解析処理において用いられる有効直径、円形度、不整度を説明するための図である。
【図7】(a)は、図5の画像解析処理において行われるしきい値処理のしきい値と有効半径の関係を示す図、(b)は、図5の画像解析処理において行われるしきい値処理のしきい値と円形度の関係を示す図である。
【図8】コントラストの算出方法を説明するための図である。
【図9】集中度の算出方法を説明するための図である。
【図10】読影時間設定テーブルの例を示す図である。
【図11】図3のCPUにより実行される表示制御処理を示すフローチャートである。
【図12】(a)は、図11のステップS12において表示部に表示される画面の一例を示す図、(b)は、図11のステップS16において表示部に表示される画面の一例を示す図、(c)は、(b)に示す画面におけるユーザの操作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
100 医用画像読影システム
10 モダリティ
20 画像管理サーバ
25 記憶部
251 医用画像DB
30 画像解析装置
31 CPU
32 操作部
33 表示部
34 通信部
35 RAM
36 記憶部
37 バス
40 読影端末
41 CPU
42 操作部
43 表示部
44 通信部
45 RAM
46 記憶部
47 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像を解析する画像解析手段と、
前記画像解析手段による解析結果に基づいて前記医用画像の読影基準時間を設定する読影基準時間設定手段と、
前記医用画像を表示する表示手段と、
前記医用画像の読影終了を指示するための操作手段と、
前記表示手段に前記医用画像が表示されてから前記操作手段により前記医用画像の読影終了が指示されるまでの読影時間を計測し、当該計測された読影時間が前記読影基準時間に到達していない場合に、引き続き前記表示手段に前記医用画像を表示させる表示制御手段と、
を備える医用画像読影システム。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記計測された読影時間が前記読影基準時間に到達していない場合に、前記医用画像とともに更なる読影を促すための警告を前記表示手段に表示させる請求項1に記載の医用画像読影システム。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記医用画像を引き続き表示した後に前記読影基準時間が経過した場合に、前記医用画像の表示を終了させる請求項1又は2に記載の医用画像読影システム。
【請求項4】
前記画像解析手段は、前記医用画像を解析することによって前記医用画像から異常陰影候補を検出する請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像読影システム。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記計測された読影時間が前記読影基準時間に到達していない場合に、前記表示手段に前記医用画像とともに前記検出された異常陰影候補の領域を指摘する表示を行わせる請求項4に記載の医用画像読影システム。
【請求項6】
前記読影基準時間設定手段は、前記検出された異常陰影候補の特徴量を算出し、当該算出された特徴量に基づいて当該異常陰影候補が真陽性である度合いを示す評価値を算出し、この算出された評価値に基づいて前記医用画像の読影基準時間を設定する請求項4又は5に記載の医用画像読影システム。
【請求項7】
前記読影基準時間設定手段は、前記検出された異常陰影候補の特徴量を算出し、当該算出された特徴量に基づいて当該異常陰影候補が真陽性である度合いを示す評価値を算出し、この算出された評価値及び検出された異常陰影候補の個数に基づいて前記医用画像の読影基準時間を設定する請求項4又は5に記載の医用画像読影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−57727(P2010−57727A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227060(P2008−227060)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】