説明

医療器具用卓上洗浄装置及び医療器具洗浄方法

【課題】管状の医療器具の内部を効果的に洗浄でき、他の医療器具が汚染されず、洗浄作業者が心地よく使用でき、コンパクトで、効率のよい洗浄性能を有する医療器具用卓上洗浄装置の提供。
【解決手段】超音波発振手段を備える洗浄槽と、給水経路と、循環経路と、廃液経路を備え、管状の医療器具等を洗浄対象とし、洗浄槽から洗浄対象物を介し吸引タンクに繋がる吸引経路を備え、洗浄対象物の接続部と吸引タンクとの間にバルブを設け、吸引ポンプを前記吸引タンクに連結し、洗浄槽内に洗浄液を滞留し、吸引ポンプで吸引タンク内を負圧とし、洗浄対象物と吸引タンクとの間のバルブの開放で、洗浄槽と吸引ポンプの圧力差によって急激に移動する洗浄液により吸引経路に配置された洗浄対象物の内部の汚物等を吸引しタンク内へ押し流し、循環洗浄を可能とする医療器具用卓上洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療器具、特には管状を有する医療器具(例えば耳鼻用の吸引嘴管など)を洗浄する小型の洗浄装置(以下、医療器具卓上洗浄装置)と、該医療器具卓上洗浄装置を用いた医療器具洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耳鼻咽喉等の検査治療には、管状を有する医療器具が多用される。このような管状を有する医療器具は、使用によって、患者の耳鼻咽喉の汚物や菌等で汚染される。高価な医療器具は使い捨てるわけにもいかないため、当該医療器具は繰り返し再使用される。従って、このような管状の医療器具には、他人への種々の菌の感染を防止するため、十分な洗浄が求められる。
【0003】
従来、管状の医療器具の洗浄は、人手によってブラシ等を用いた清掃作業が行われていた。しかしながら、管状の医療器具の汚れ具合は、外観から完全には把握できず、十分な洗浄を行うことは困難であった。このため、十分な洗浄能力と省力化を目的として、現在、種々の洗浄装置が開示されるに至っている。
【0004】
上記洗浄装置としては、例えば、洗浄対象物を洗浄するための洗浄装置において、洗浄対象物を収納する洗浄槽と、洗浄槽に収納された洗浄対象物に向けて、洗浄液を噴出する噴射ノズルと、洗浄槽に収納された洗浄対象物に対して、超音波洗浄を行うための超音波発生器と、洗浄槽内の洗浄液を排出するための排出弁と、噴射ノズル、超音波発生器、排出弁を制御する制御部を備え、前記制御部は、噴射ノズルから洗浄液を噴射させて洗浄対象物を噴射洗浄し、排出弁を制御して、上記噴射洗浄のために噴射ノズルから噴射された洗浄液を洗浄槽内にためて、洗浄対象物を洗浄液に浸積した後、超音波発生器を制御して超音波洗浄を行うよう制御する洗浄装置(例えば、特許文献1参照。)が公知である。
【0005】
また、例えば、被洗浄物として医療器具を収納する洗浄槽と、該洗浄槽内に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記洗浄槽内の洗浄液に超音波振動を与える超音波発生装置と、前記洗浄槽内の洗浄液を循環機構によって循環させる循環系の途中に設けた脱気手段とを備え、前記脱気手段によって脱気した洗浄液により超音波洗浄を行う医療器具用洗浄装置(例えば、特許文献2参照。)が公知である。
【0006】
【特許文献1】特開2002−355624号公報
【特許文献2】特開2007−130037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に係る発明は、噴射ノズルから洗浄液を噴射させて洗浄対象物を噴射洗浄し、排出弁を制御して、上記噴射洗浄のために噴射ノズルから噴射された洗浄液を洗浄槽内にためて、洗浄対象物を洗浄液に浸積した後、超音波発生器を制御して超音波洗浄を行うことから、外部の洗浄及び省力化においては一定の効果が得られる。しかしながら、噴射ノズルによる噴射では洗浄対象物である管状の医療器具の外面については十分に洗い流せるものの、内部の洗浄は十分とはいえなかった。
【0008】
特許文献2に係る発明は、洗浄槽内の洗浄液に超音波振動を与える超音波発生装置と、前記洗浄槽内の洗浄液を循環機構によって循環させる循環系の途中に設けた脱気手段とを備え、前記脱気手段によって脱気した洗浄液により超音波洗浄を行うことで、洗浄液中における超音波洗浄の効果を向上させようとする発明である。当該発明によって、超音波洗浄の効果は向上すると考えられる。しかしながら、管状の医療器具の内部は、洗浄槽内において洗浄液が滞留しやすく、大きな汚物が挟まって残留する状態等の解消は、未だ十分とはいえない。
【0009】
また、洗浄操作が基本的に洗浄槽内で行われるため、環状の医療器具の内部から汚物等が洗浄槽全体に吐出され、仮に最終的にこのような汚物等が洗浄槽内に残留した場合、その後洗浄される他の医療器具が汚染される可能性がある。また、洗浄槽に吐出された汚物が浮遊することは、洗浄作業者にとって、非常に不快である。
【0010】
更に、装置の持ち運びや設置が容易なコンパクトな卓上の洗浄装置は、その設計上、各バルブ、ポンプは極力小型化、且つ低廉化する必要があるが、コンパクト化、低廉化は、吸引ポンプ等の高出力化をより困難とする事情もある。
【0011】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、管状の医療器具の内部をより効果的に洗浄でき、洗浄槽内が汚染され難く、洗浄後新たに洗浄される他の医療器具が汚染されることもなく、洗浄作業者が心地よく使用することができ、コンパクトで、効率のよい洗浄性能を有する医療器具用卓上洗浄装置を安価に提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
超音波発振手段を備える洗浄槽と、洗浄槽への給水経路と、洗浄槽内の洗浄液を循環させる循環経路と、洗浄槽内の洗浄液を廃棄する廃液経路とを備え、洗浄対象物として管状の医療器具を含む医療器具用卓上洗浄装置において、洗浄槽から洗浄対象物を介して吸引タンクに繋がる吸引経路を備え、吸引経路における洗浄対象物と吸引タンクとの間にバルブを設け、前記吸引タンク内を負圧にするための吸引ポンプを前記吸引タンクを連結し、洗浄槽内に洗浄液を滞留させた状態で、吸引ポンプによって吸引タンク内の圧力を高真空とした状態で、前記洗浄対象物と吸引タンクとの間のバルブを開放することで、洗浄槽と吸引ポンプの圧力差によって急激に移動される洗浄液で、吸引経路に配置された洗浄対象物の内部の汚物等を吸引タンク内へ押し流し、汚物を排出した状態で、循環洗浄を可能とする医療器具用卓上洗浄装置を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、超音波発振手段を備える洗浄槽と、洗浄槽への給水経路と、洗浄槽内の洗浄液を循環させる循環経路と、洗浄槽内の洗浄液を廃棄する廃液経路とを備え、洗浄対象物として管状の医療器具を含む医療器具用卓上洗浄装置において、洗浄槽から洗浄対象物を介して吸引タンクに繋がる吸引経路を備え、吸引経路における洗浄対象物の接続部と吸引タンクとの間にバルブを設け、前記吸引タンク内を負圧にするための吸引ポンプを前記吸引タンクを連結し、洗浄槽内に洗浄液を滞留させた状態で、吸引ポンプによって吸引タンク内を減圧状態とし、前記洗浄対象物と吸引タンクとの間のバルブの開放で、洗浄槽と吸引ポンプの圧力差によって急激に移動する洗浄液により吸引経路に配置された洗浄対象物の内部の汚物等を吸引タンク内へ押し流して、循環洗浄を可能とすることで、洗浄対象物の内部での汚物の滞留を著しく減少させることができる。
【0014】
また吸引ポンプと吸引タンクを組み合わせることで、低出力の吸引ポンプであっても吸引バルブを閉じた状態で吸引タンク内を少しずつ吸引することで、該吸引タンク内を高真空とすることができ、安価でありながら、吸引バルブを開放した瞬間に強烈な勢いで洗浄対象物である管状の医療器具の内部の汚物等を引き込むことができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、上記請求項1に係る発明の構成を備えた上で、洗浄槽内に複数の洗浄対象物を装着するカートリッジを配置し、該カートリッジは、複数の洗浄対象物の内部を吸引するカートリッジ吸引口を備え、前記洗浄対象物の内部からカートリッジ吸引口を介して吸引経路で吸引する構成とし、洗浄対象物の外部を洗浄槽内に貯留した洗浄液で洗浄する構成を兼備したことから、管状の医療器具の外部を洗浄槽で洗浄し、これに並行して管状の医療器具の内部を引タンク内へ押し流し、汚物を排出した状態で、循環洗浄を可能とすることで、洗浄対象物の内部での汚物の滞留をより減少させ、洗浄槽へ汚物の混入を防止して、当該医療器具を洗浄することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、上記請求項1若しくは上記請求項2の発明の構成を備えた上で、CPUが自動運転プログラムを実行する制御手段を備え、洗浄槽の超音波発振手段は、傘状の超音波発振子を有し、該超音波発振子を洗浄槽の蓋の下面に設置し、且つ、ヒータを洗浄槽の底部に設置し、洗浄液はタンパク質分解酵素配合の弱アルカリ性洗浄剤を含有し、前記制御手段が、前記ヒータで、洗浄時の洗浄液温度を約50℃に制御し、循環及び殺菌時の洗浄液温度を約80℃乃至93℃に制御する構成としたことから、たんぱく質分解酵素が最も洗浄力が高い状態で、請求項1及び請求項2に係る発明における洗浄を行うことで優れた洗浄力を発揮でき、且つ、上記請求項1及び請求項2に係る発明における循環若しくは貯留時における殺菌効果を高めることができる。尚、殺菌時の温度が80℃を下回ると十分な殺菌性能を確保することができない。また、約93℃を上限とするのはこれ以上の温度上昇によると、蒸発による洗浄液のロスが多大となり、新たに給湯を行う必要が生じ、温度制御効率が著しく低下する。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、洗浄対象物である管状の医療器具を、洗浄槽内に洗浄液を滞留させた状態で吸引経路に繋いで吸引経路が医療器具の管内に連続させ、吸引タンクと管状の医療器具との間のバルブを閉として、吸引ポンプによって吸引タンク内を負圧とし、前記管状の医療器具と吸引タンクとの間のバルブの開放で、洗浄槽と吸引ポンプの圧力差によって急激に移動する洗浄液により吸引経路に配置された洗浄対象物の内部の汚物等を吸引タンク内へ押し流し、汚物を排出する工程を有することで、洗浄槽内に汚物等が吐出されることがなく、洗浄槽内が汚染され難く、洗浄後新たに洗浄される他の医療器具が汚染されることもなく、洗浄作業者が心地よく使用することができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、上記請求項4に係る作用効果を奏することを前提として、複数の管状の医療器具を接続可能なカートリッジ吸引口と吸引経路に接続可能なコネクタを備えたカートリッジを、吸引経路と医療機器との間に介することで、吸引嘴管の洗浄の効率性を著しく向上させることができる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、上記請求項4若しくは請求項5に係る発明の作用効果を奏することを前提として、吸引タンクからの排出工程と並行して、洗浄槽での洗浄対象物の洗浄工程を行うこととしたから、より効率のよい洗浄性能を発揮することができる。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、上記請求項4、請求項5若しくは請求項6に係る発明の作用効果を奏することを前提として、吸引タンクからの排出工程と並行して、洗浄槽及び循環経路で洗浄液を循環させる循環工程を行うことで、一貫した洗浄、循環工程を繰り返す際に、より高効率とすることができる。
【0021】
請求項8に係る発明によれば、上記請求項6若しくは請求項7に係る発明において、洗浄槽内での洗浄対象物の洗浄工程は、洗浄液にタンパク質分解酵素配合の弱アルカリ性洗浄剤を用いて、ヒータで洗浄液温度を約50℃とし、若しくは、洗浄液の循環工程は、約80℃乃至93℃とすることで、洗浄槽及び循環経路の殺菌を行うこととしたから、洗浄剤の特性に応じた温度制御、及び工程における洗浄液のロスの低減と殺菌性能とを絶妙にバランスさせた殺菌温度制御を実現し、極めて優れた洗浄、殺菌性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
超音波発振手段を備える洗浄槽と、洗浄槽への給水経路と、洗浄槽内の洗浄液を循環させる循環経路と、洗浄槽内の洗浄液を廃棄する廃液経路とを備え、洗浄対象物として管状の医療器具を含む医療器具用卓上洗浄装置において、洗浄槽内に複数の洗浄対象物を装着したカートリッジを配置し、該カートリッジは、複数の洗浄対象物の内部を吸引するカートリッジ吸引口を備えたものとし、吸引経路における洗浄対象物と吸引タンクとの間にバルブを設け、前記吸引タンク内を負圧にするための吸引ポンプを前記吸引タンクを連結し、洗浄槽内に洗浄液を滞留させた状態で、吸引ポンプによって吸引タンク内を高真空状態とし、前記洗浄対象物と吸引タンクとの間のバルブの開放で、洗浄槽と吸引ポンプの圧力差によって急激に移動する洗浄液により前記洗浄対象物の内部をカートリッジ吸引口を介して吸引タンクへ繋がる吸引経路へ吸引して、吸引経路に配置された洗浄対象物の内部の汚物等を吸引タンク内へ押し流し、汚物を排出した状態で、循環洗浄を行うことで、洗浄対象物の内部での汚物の滞留をより減少させ、洗浄槽へ汚物の混入を防止し、管状の医療機器に対して優れた洗浄力を発揮する医療器具用卓上洗浄装置を実現した。
【実施例】
【0023】
図1は本発明の実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置の構成を示す概略図、図2は同実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置を示す(a)平面図及び(b)正面図、図3は同実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置を示す(a)右側面図及び(b)背面図である。
【0024】
本発明の実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置1は、図2の平面図、正面図及び図3の右側面図及び(b)背面図にその外形を示すように、概ね縦48cm、横48cm、高さ45cm程度の大きさを有する卓上タイプの医療器具卓上洗浄装置であり、洗浄対象物として耳鼻用等の吸引嘴管5(図5(a)参照。)に適するものである。
【0025】
本実施例に係る医療用器具洗浄装置は、マイクロコンピュータを内臓し、マイクロコンピュータに搭載されるCPU(中央演算処理装置)が所定のプログラムを実行し、各バルブ、ポンプ、内部タイマー、センサ等の動作を制御することで自動運転が可能である。自動/手動切替スイッチで自動を選択し、自動ボタンを押すことで、前記CPUの制御により、予めプログラムによって決められた動作を自動的に実行できる。また、前記自動/手動切替スイッチを手動を選択することで、手動操作へ切り替えることができる。
【0026】
本実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置1は、特に図1に示すように、洗浄槽2、吸引タンク3、前記洗浄槽2の蓋4の下面側に取付けられる三基の超音波発振子40、前記洗浄槽2に対する給湯経路R1、給水経路R2及び洗剤投入経路R12、洗浄槽2内の洗浄液を循環させる循環経路R7、洗浄対象物である管状の洗浄槽2から真空タンクへ洗浄液を導入する吸引経路、洗浄槽2から洗浄液を排出する排水経路R9、吸引タンク3から汚物を含む廃液を排出する吸引タンク側排水経路R11を備える。以下、各構成について説明する。
【0027】
洗浄槽2は、上記給湯経路R1、給水経路R2、洗剤投入経路R12、循環経路R7、吸引経路、排水経路R9の夫々と接続した構成である。洗浄槽2の上部には開閉可能な扉状の蓋4を備え、該蓋4の下面側には、三基の超音波発振子40を設けてある。当該超音波発振子40は傘状を有し、洗浄槽内に貯留された洗浄液全体に超音波を発振することができる。蓋4には安全性の観点から図示しないダンパーを設置してあり、蓋4の急激な開閉を制限してある。また、蓋4には、洗浄によって生ずる蒸気を逃すための蒸気逃し穴41を設けてある。
【0028】
洗浄槽2の内部底面には循環経路R7の出水側開口部、及び排水経路R9の排水口27が開口している。また、当該洗浄槽2内の底面には、ヒータ43を配置してあり、その上方に内底となる内底板26を設けてある。内底板26には多数の貫通穴260を形成してあり、ヒータ43が洗浄液に浸漬される構成とする。
【0029】
また、洗浄槽2の側面には、洗浄対象物である吸引嘴管5が装着されたカートリッジの一端を接続するための洗浄槽側接続部22を備えている。該洗浄槽側接続部22は洗浄槽2の側壁に対する貫通穴を備える。本実施例においては、洗浄槽側接続部22は洗浄槽2の側面の左右に各二箇所ずつ、縦方向に配列して設けてある。
【0030】
更に、洗浄槽2の側面には、洗剤21を洗浄槽2へ供給する洗剤投入経路R12における洗剤投入口25と循環経路R7の入水側開口部と、給水口24と、給湯口23と、層内温度センサS1と、第一オーバーフロー口28、第二オーバーフロー口29を設けてある。
【0031】
前記内底板26上には、洗浄対象物である吸引嘴管5を10本接続可能なカートリッジ7を、四基、積み重ねて配置する。
各カートリッジ7は、金属製のフレーム73及びサブフレーム74によって平面視矩形に形成されており、一端に洗浄槽2の前記洗浄槽側接続部22に嵌合し、且つ、該洗浄液及び汚物の移送経路となるコネクタ72を備えている。また、フレーム73内には、前記コネクタから送液用通路76を10本に分岐させて、10本の吸引嘴管5の夫々に対応するカートリッジ吸引口70を設けてある。各カートリッジ吸引口70に吸引嘴管5の一端を接続し、吸引嘴管5の他端は開口状態とする。
【0032】
以上の四基のカートリッジ7は、コネクタ72を左右交互に配置した状態で積載し、洗浄槽2内の対応する位置に設けられた前記各洗浄槽側接続部22と前記コネクタ72とを接続した構成とする。
【0033】
洗剤投入経路R12は、洗剤21が充填された洗剤用容器20から洗剤投入用ポンプP2を用いて前記洗剤投入口25へ繋がる配管によって形成してある。洗剤21は例えば、タンパク分解酵素を配合した無泡性の弱アルカリ性洗浄剤(例えば、クリーンケミカル株式会社製タンパク分解酵素配合無泡性弱アルカリ性洗浄剤であるレビクロス(商品名)専用洗浄剤)を使用することができる。
【0034】
洗浄対象物装着部は、縦方向に4段、横方向に10個の吸引嘴管5を配置するためのカートリッジ7と、該カートリッジ7に接続するための洗浄槽側接続部22a及び吸引タンク側接続部22bを備えている。従って、最大で40本の吸引嘴管5を同時に接続した状態で使用でき、各段ごとに処理を行うことができる。
【0035】
循環経路R7は出水側開口部から配管及び循環ポンプP1を介し、洗浄槽2の上部と繋がる配管によって形成してある。
【0036】
洗浄槽側面上端近傍に上方から設けた第二オーバーフロー口29、第一オーバーフロー口28から、オーバーフロー経路R8を設けてある。オーバーフロー経路R8は排水経路R9に接続してある。また、オーバーフロー経路R8には後記吸引タンク3から吸引タンク側排水経路R11を接続してある。第二オーバーフロー口29内の空間と第一オーバーフロー口28内の空間は連通している。
【0037】
前記第二オーバーフロー口29の近傍には、異常の検知を行う異常検知センサS3を設けてある。また、第一オーバーフロー口28の近傍には、給水及び空焚きの検知を行う給水/空焚き検知センサS2を設けてある。また、給水/空焚き検知センサS2の近傍であってより排水側となる位置に、流水センサS6を設けてある。
【0038】
吸引経路は、夫々カートリッジ7との接続側となる第一バルブ吸引経路R3、第二バルブ吸引経路R4、第三バルブ吸引経路R5、第四バルブ吸引経路R6を備え、これら四本の経路の他端側は共通する一経路である吸引タンク側吸引経路R10に接続してある。
【0039】
吸引タンク3は、上記吸引タンク側吸引経路R10と、吸引タンク側排水経路R11と、逆止弁V15を介して設置される吸引ポンプP3とを接続している。また吸引タンク3には、吸引圧力の上限を検知する吸引圧力上限センサS4と、吸引圧力を検知する吸引圧力センサS5を設けてある。吸引タンク側吸引経路R10には吸引タンク側吸引バルブV10を設けてあり、吸引タンク側排水経路R11には吸引タンク側排水バルブV11を設けてある。また、吸引タンク3内の排水の際に圧力を抜くための圧抜きバルブV9を設けてある。
【0040】
洗浄槽2の底部の排水口27から、排水バルブV12を経由して、終端まで延設した構成である。
【0041】
次に、本実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置1を用いた洗浄方法について説明する。
尚、洗浄前操作として、上記医療用具用卓上洗浄装置1に示したように、四基の各カートリッジ7は、該カートリッジ7のカートリッジ吸引口を、吸引嘴管5の一端と接続することで、カートリッジ7一つ当たり5本の吸引嘴管5を夫々セットし、各カートリッジ7のコネクタ72は洗浄槽2内の対応する洗浄槽側接続部22と接続した状態とする。
【0042】
医療器具の洗浄は、順に、(A)予備洗浄工程、(B)本洗浄工程、(C)濯ぎ工程、(D)熱水処理工程、(E)乾燥工程の5工程で行う。ここで、(A)予備洗浄工程及び(B)本洗浄工程は吸引タンク3内を負圧とし、前記洗浄対象物と吸引タンク3との間のバルブの開放で、洗浄槽2と吸引ポンプP3の圧力差によって急激に移動する洗浄液により吸引経路に配置された前記最大40本の吸引嘴管5の内部の汚物等を吸引タンク3内へ押し流し、汚物を排出する工程である。(C)の濯ぎ工程も同様の減圧手段を用いて濯ぎを行うものである。また、(D)熱水処理工程は溶剤を用いることなく消毒を行う工程である。
【0043】
(A)予備洗浄工程
実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置1の洗浄液用容器に洗浄液を注入した状態とする。医療器具用卓上洗浄装置1の各バルブは初期状態において全閉である。医療器具用卓上洗浄装置1の電源を投入する。次に、自動運転を選択し、スタートボタンを押す。
【0044】
給水バルブV2、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8が開となり、洗浄槽2内へ給水(洗浄液の供給)が開始される。また、循環バルブV7によって洗浄槽2から循環経路R7へ給水される。循環経路R7への給水は、空運転による循環ポンプP1等の消耗を防止するためである。尚、本実施例における予備洗浄工程では、給湯は行わず、洗浄水に洗剤21は添加していない。
【0045】
また前記給水と並行して、吸引タンク3内を負圧とするための減圧動作を行う。圧抜きバルブV9及び吸引タンク側排水バルブV11は閉、各吸引バルブ(第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6)も閉とし、吸引タンク3を閉鎖系とした状態で吸引ポンプP3を動作させ、圧力値が高真空である設定値(7.5×10−2Pa)となった状態にまで、吸引タンク3内の圧力を低下させる。吸引ポンプP3は吸引圧力センサS5によって圧力設定値に達したことが検知されると、マイクロコンピュータのCPUは吸引ポンプP3の作動を停止させる。
【0046】
給水は、設定時間内に、給水/空焚き検知センサS2と流水センサS6による水位の検知がONとなった状態で停止する。尚、水位異常検知センサS3がONとなった場合、若しくは給水/空焚き検知センサS2と流水センサS6による水位の検知が設定時間内に検知されない場合、若しくは吸引タンク3の吸引圧力センサS5が設定値に達するまでに設定時間以上かかった場合に、CPUは異常検知と扱い、異常を知らせるブザーと異常表示ボタンの点灯がされる。
【0047】
給水が完了し、吸引タンク3内の圧力値が設定値に達した状態で、真空吸引を行う。
真空吸引は、循環経路R7の吸引、第一吸引バルブ経路R3の吸引、第二吸引バルブ経路R4の吸引、第三吸引バルブ経路R5の吸引、第四吸引バルブ経路R6の吸引を行う。本実施例では、これらの各吸引バルブ経路(R3、R4、R5、R6)における真空吸引は、並行して行うのではなく、順に一つずつ行う。
【0048】
循環経路R7の吸引においては、第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6はいずれも閉じており、循環バルブV7が開いた構成で吸引を行い、次の第一吸引バルブ経路R3の吸引では、循環バルブV7、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6はいずれも閉じており、第一吸引バルブV3が開いた構成で吸引を行う。いずれも吸引は、先に第一吸引バルブV3を開いた状態で行い、吸引タンク3の負圧下で、吸引タンク側吸引バルブV10を開くことによって行う。
【0049】
第一吸引バルブ経路R3の吸引では、洗浄液が、洗浄槽2から洗浄対象物である吸引嘴管5の開口側端部、カートリッジ7の送液用通路を通り、第一吸引バルブV3、吸引タンク側吸引バルブV10を経由して、吸引タンク3へ導入される。洗浄液の吸引により、吸引嘴管5内の汚物は、吸引タンク3内へ導入される。洗浄液が吸引タンク3内へ入ることで、吸引タンク3内の圧力は上昇し、真空上限センサが設定値に達したことを検知すると、CPUが圧抜きバルブV9と吸引タンク側排水バルブV11を開に制御する。洗浄液及び汚物は吸引タンク側排水バルブV11から排水経路R9で外部へ排出される。圧抜きバルブV9と吸引タンク側排水バルブV11は、排水量と流速から排水が完了するだけの設定時間の経過により、閉状態に制御される。
【0050】
以降、上記第一吸引バルブ経路R3と同様の処理を、第二吸引バルブ経路R4、第三吸引バルブ経路R5、第四吸引バルブ経路R6の夫々の吸引について、各経路を順次一回行う。即ち、洗浄液が、洗浄槽2から洗浄対象物である吸引嘴管5の開口側端部、カートリッジ7の送液用通路を通り、該当する経路のバルブである第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5若しくは第四吸引バルブV6のいずれかと、吸引タンク側吸引バルブV10を経由して、吸引タンク3へ導入され、洗浄液の吸引により、吸引嘴管5内の汚物は、吸引タンク3内へ導入し、真空上限センサが設定値に達したことを検知すると、CPUが圧抜きバルブV9と吸引タンク側排水バルブV11を開に制御する。洗浄液及び汚物は吸引タンク側排水バルブV11から排水経路R9で外部へ排出される。圧抜きバルブV9と吸引タンク側排水バルブV11は、排水量と流速から排水が完了するだけの設定時間の経過により、閉状態に制御される。即ち、各吸引バルブ(第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6)に対応する各一経路ごとに装着された十本の吸引嘴管5の吸引洗浄を行うこととなる。
【0051】
各吸引バルブ経路(R3、R4、R5、R6)の吸引が終了し、第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6が閉となった後、吸引タンク3内の排水を引き続き行いながら、洗浄槽2に新たな給水を行う。給水の完了を検知すると、超音波発振子40から超音波を1分間発振する。
【0052】
超音波洗浄が終了した後、第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を開とし、循環ポンプP1を作動させる。
【0053】
洗浄槽2及び循環経路R7の洗浄液(水)の循環を設定時間実行すると、CPUは第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を閉とし、洗浄槽2内の洗浄液を排水するための排水バルブV12を開とし、洗浄槽2内の使用済みの洗浄液を排水経路R9から排水する。最終時点の圧抜きバルブV9と吸引タンク側排水バルブV11の状態は、開状態としておく。
【0054】
(B)本洗浄工程
本実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置1を用いた洗浄方法の本洗浄工程では、洗浄液の成分に洗剤21を加えたものを使用する。尚、上記したように、本実施例において添加する洗剤21はタンパク分解酵素を配合した無泡性の弱アルカリ性洗浄剤としている。
【0055】
本工程では、先ず給湯バルブV1、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を開とし、他のバルブを全て閉とする。洗浄槽2内へ給湯(洗浄液の供給)が開始される。また、ポンプは循環ポンプP1のみを作動させる。循環ポンプP1の作動によって循環バルブV7を経由して洗浄槽2から循環経路R7へ給湯される。洗浄液の温度は、洗剤21の洗浄力が優れる温度として、概ね50℃に制御される。給湯に並行して、洗剤ポンプを作動させ、内部タイマーによって一定時間、洗浄槽2内に洗剤21を供給する。洗剤ポンプは作動時間経過後、停止する。
【0056】
給湯の完了を流水センサS6及び給水/空焚き検知センサS2で検知し、CPUが給湯バルブV1、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を閉とする。水位異常検知センサS3が水位異常を検知した場合、若しくは給水/空焚き検知センサS2と流水センサS6による水位の検知が設定時間内にONとならなかった場合には、CPUは異常検知と扱い、異常を知らせるブザーと異常表示ボタンの点灯がされる。
【0057】
次に、第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8、圧抜きバルブV9、吸引タンク側排水バルブV11を開とし、循環ポンプP1を作動させる。尚、圧抜きバルブV9と吸引タンク側排水バルブV11は極力吸引タンク3内の水分を外部へ排出するため、開状態とする趣旨である。
【0058】
設定時間の経過により、循環ポンプP1を停止し、第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を閉とする。そして、所定時間、超音波発振子40から超音波を発振し、超音波洗浄を行う。
【0059】
超音波発振子40は、吸引圧力センサS5が設定値になるまで作動する。尚、吸引圧力センサS5の設定値までの到達時間が設定時間以上かかった場合、超音波の発振が検知されない場合、及び真空上限センサで圧力上限状態が検知されている場合には、CPUは異常検知と扱い、異常を知らせるブザーと異常表示ボタンの点灯を行う。
【0060】
また超音波洗浄と並行して、吸引ポンプP3を作動させ、吸引タンク3内を負圧にする。負圧とするための減圧動作は、吸引タンク3内の圧力値が高真空である設定値(7.5×10−2Pa)となるまで行う。
【0061】
超音波洗浄が終了し、且つ吸引タンク3内の圧力値が高真空である設定値(7.5×10−2Pa)となった状態にまで減圧された状態となったことで、真空吸引を行う。
【0062】
真空吸引は先の予備洗浄工程における真空吸引と同様の順序で自動的に行われる。即ち、第一吸引バルブ経路R3の吸引、第二吸引バルブ経路R4の吸引、第三吸引バルブ経路R5の吸引、第四吸引バルブ経路R6の吸引を行う。第一吸引バルブ経路R3の吸引では、洗浄液が、洗浄槽2から洗浄対象物である吸引嘴管5の開口側端部、カートリッジ7の送液用通路を通り、第一吸引バルブV3、吸引タンク側吸引バルブV10を経由して、吸引タンク3へ導入される。洗浄液の吸引により、吸引嘴管5内の汚物は、吸引タンク3内へ導入される。洗浄液が吸引タンク3内へ入ることで、吸引タンク3内の圧力は上昇し、真空上限センサが設定値に達したことを検知すると、CPUが圧抜きバルブV9と吸引タンク側排水バルブV11を開に制御する。洗浄液及び汚物は吸引タンク側排水バルブV11から排水経路R9で外部へ排出される。圧抜きバルブV9と吸引タンク側排水バルブV11は、排水量と流速から排水が完了するだけの設定時間の経過により、閉状態に制御される。また、上記第一吸引バルブ経路R3と同様の処理を、第二吸引バルブ経路R4、第三吸引バルブ経路R5、第四吸引バルブ経路R6の夫々の吸引について、各経路を順次一回行う。最終時点の圧抜きバルV9ブと吸引タンク側排水バルブV11の状態は、開状態としておく。
【0063】
(C)濯ぎ工程
本濯ぎ工程では、先ず給湯バルブV1、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を開とする。圧抜きバルブV9、吸引タンク側排水バルブV11の開状態は保持する。他のバルブを全て閉とする。洗浄槽2内へ給湯(洗浄液の供給)が開始される。また、ポンプは循環ポンプP1のみを作動させる。循環ポンプP1の作動によって循環バルブV7を経由して洗浄槽2から循環経路R7へ給湯される。洗浄液の温度は、概ね50℃に制御される。給水ではなく給湯を用いる理由としては、残留する洗剤21の溶解度を上昇させることで、濯ぎ性能を向上させるためである。
【0064】
給湯の完了を流水センサS6及び給水/空焚き検知センサS2で検知し、CPUが給湯バルブV1、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を閉とする。水位異常検知センサS3が水位異常を検知した場合、若しくは給水/空焚き検知センサS2と流水センサS6による水位の検知が設定時間内にONとならなかった場合には、CPUは異常検知と扱い、異常を知らせるブザーと異常表示ボタンの点灯がされる。
【0065】
次に、第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を開とし、循環ポンプP1を作動させる。尚、圧抜きバルブV9、吸引タンク側排水バルブV11は引き続き開の状態を保つ。
【0066】
設定時間の経過により、循環ポンプP1を停止し、第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を閉とする。圧抜きバルブV9、吸引タンク側排水バルブV11は引き続き開の状態を保つ。そして、所定時間、超音波発振子40から超音波を発振し、超音波洗浄を行う。
【0067】
真空吸引は、先の予備洗浄工程及び本洗浄工程における真空吸引と同様の順序で自動的に行われる。即ち、第一吸引バルブ経路R3の吸引、第二吸引バルブ経路R4の吸引、第三吸引バルブ経路R5の吸引、第四吸引バルブ経路R6の吸引を行う。第一吸引バルブ経路R3の吸引では、洗浄液が、洗浄槽2から洗浄対象物である吸引嘴管5の開口側端部、カートリッジ7の送液用通路を通り、第一吸引バルブV3、吸引タンク側吸引バルブV10を経由して、吸引タンク3へ導入される。洗浄液の吸引により、吸引嘴管5内の汚物は、吸引タンク3内へ導入される。洗浄液が吸引タンク3内へ入ることで、吸引タンク3内の圧力は上昇し、真空上限センサが設定値に達したことを検知すると、CPUが圧抜きバルブV9と吸引タンク側排水バルブV11を開に制御する。洗浄液及び汚物は吸引タンク側排水バルブV11から排水経路R9で外部へ排出される。圧抜きバルブV9と吸引タンク側排水バルブV11は、排水量と流速から排水が完了するだけの設定時間の経過により、閉状態に制御される。また、上記第一吸引バルブ経路R3と同様の処理を、第二吸引バルブ経路R4、第三吸引バルブ経路R5、第四吸引バルブ経路R6の夫々の吸引について、各経路を順次一回行う。最終時点の圧抜きバルV9ブと吸引タンク側排水バルブV11の状態は、開状態とし、排水バルブV12を開状態とする。
【0068】
次に、下記工程Y(給湯、循環、排水とこれらに並行して行う吸引タンク3内の排水)を、設定回数繰り返し行う。
工程Y:給湯バルブV1、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を開とする。圧抜きバルブV9、吸引タンク側排水バルブV11の開状態は保持する。他のバルブを全て閉とする。洗浄槽内へ給湯(洗浄液の供給)を開始する。また、ポンプは循環ポンプP1のみを作動させる。循環ポンプP1の作動によって循環バルブV7を経由して洗浄槽から循環経路R7へ給湯される。給湯の完了を流水センサS6及び給水/空焚き検知センサS2で検知し、CPUが給湯バルブV1、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を閉とする。第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を開とし、循環ポンプP1を作動させる。圧抜きバルブV9、吸引タンク側排水バルブV11は引き続き開の状態を保つ。設定時間の経過により、循環ポンプP1を停止し、排水経路R9の排水バルブV12を開とし、洗浄槽2内の使用済み液を排出する。
【0069】
(D)熱水処理工程
上記工程Yを設定回数繰り返した後、熱処理工程を行う。
循環バルブV7、圧抜きバルブV9、吸引タンク側排水バルブV11、給湯バルブV1、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を開とし、他のバルブを閉とする。給湯を開始し、流水センサS6及び給水/空焚き検知センサS2が給湯の完了を検知すると、CPUが給湯バルブV1とエア抜き用循環バルブV8を閉とする。
【0070】
第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8、圧抜きバルブV9、吸引タンク側排水バルブV11を開とし、循環ポンプP1及びヒータ43を作動させる。加温によって湯温を設定温度である80℃となるまで洗浄液(湯)の循環を行う。
【0071】
前記設定温度80℃となることを検知すると、第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6、循環バルブV7、エア抜き用循環バルブV8を閉とし、ヒータ43で更に加温し、次の設定温度である93℃にまで洗浄液の温度を上昇させる。設定温度に達すると、その温度を10分間保持する。当該加温処理によって、洗浄対象物である吸引嘴管5の殺菌洗浄を行う。
【0072】
殺菌後、排水を行う。洗浄液は高温であるので、給水経路R2から水を洗浄槽2内へ供給し、洗浄液の温度を下げて、排水する。水量の増減を流水センサS6及び給水/空焚き検知センサS2で制御しながら、オーバーフロー経路R8で排水を行う。即ち、第一オーバーフロー口28及び第二オーバーフロー口29から洗浄液がオーバーフロー経路R8へ入り、高い水位を検知する給水/空焚き検知センサS2で洗浄液を検知すると、給水バルブV2を閉とし、低い水位を検知する流水センサS6で洗浄液が5秒間検知できないと、給水バルブV2を開とする。湯温が設定温度以下になると、排水バルブV12を開き、排水経路R9で洗浄液を排水する。
【0073】
(E)乾燥工程(真空吸引及びエア置換)
次いで、各カートリッジ7ごとに対応して、第一吸引バルブV3、第二吸引バルブV4、第三吸引バルブV5、第四吸引バルブV6の各経路及び循環経路R7につき、真空吸引を行い、洗浄対象物である吸引嘴管5及び装置内の水分を除去する(以下、水分除去動作Z。)。
下記水分除去動作Zを設定回数繰り返す。
水分除去動作Z:各バルブを閉とした状態で、吸引ポンプP3を作動させ、吸引タンク3内の圧力値が高真空である設定値(7.5×10−2Pa)となるまで減圧する。設定値になると、循環バルブV7と吸引タンク側吸引バルブV10を開として、吸引タンク3内へ水分を引き込む。設定時間終了後、第一吸引バルブ経路R3、第二吸引バルブ経路R4、第三吸引バルブ経路R5、第四吸引バルブ経路R6につき、順次同様の真空吸引を行う。
【0074】
上記水分除去動作Zを設定回数繰り返した後、排水バルブV12、圧抜きバルブV9、吸引タンク側排水バルブV11を開とし、洗浄槽2及び吸引タンク3に残存する僅かな水分を排出する。
以上により、本実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置1の自動洗浄動作が完了する。
【0075】
尚、本発明は、上記実施例に限定するものではなく、各配管におけるバルブの追加や位置の変更、処理の回数やタイミング、カートリッジ7の数やカートリッジ7一つ当たりのカートリッジ吸引口の数等は、自由に変更できる。
【0076】
また、本実施例では開示していないが、例えば、洗浄槽2からの高温の排水の温度を下げる他の手段として、排水経路R9に吸引タンクからの温度の低い排水と混合する排水混合器を設けることで、湯の温度を下げることもできる。
【0077】
尚、本発明においては、上記実施例で、温度制御手段として、ヒータ、湯、水を使用したが、これに限らず、加熱、冷却のいずれの温度制御においても、種々の公知の熱交換手段を使用することができる。
【0078】
また、上記実施例では、自動と手動の動作を可能としているが、これに限らず、例えば自動運転のみ可能な構成とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置の構成を示す概略図。
【図2】本発明の実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置を示す(a)平面図、(b)正面図。
【図3】本発明の実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置を示す(a)右側面図、(b)背面図。
【図4】本発明の実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置におけるカートリッジの(a)平面、正面、左側面を示す斜視図、(b)平面、正面、右側面を示す斜視図。
【図5】本発明の実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置の(a)洗浄対象物である吸引嘴管を示す斜視図,(b)吸引嘴管をカートリッジに取着した状態を示す斜視図。
【図6】本発明の実施例に係る医療器具用卓上洗浄装置の各工程を示す略図。
【符号の説明】
【0080】
1 医療器具用卓上洗浄装置
2 洗浄槽
20 洗剤用容器
21 洗剤
22a 洗浄槽側接続部
22b 吸引タンク側接続部
23 給湯口
24 給水口
25 洗剤投入口
26 内底板
260 貫通穴
27 排水口
28 第一オーバーフロー口
29 第二オーバーフロー口
3 吸引タンク
4 蓋
40 超音波発振子
41 蒸気逃し穴
43 ヒータ
5 洗浄対象物(吸引嘴管)
7 カートリッジ
70 カートリッジ吸引口
71 把手
72 コネクタ
73 フレーム
P1 循環ポンプ
P2 洗剤投入用ポンプ
P3 吸引ポンプ
R1 給湯経路
R2 給水経路
R3 第一吸引バルブ経路
R4 第二吸引バルブ経路
R5 第三吸引バルブ経路
R6 第四吸引バルブ経路
R7 循環経路
R8 オーバーフロー経路
R9 排水経路
R10 吸引タンク側吸引経路
R11 吸引タンク側排水経路
R12 洗剤投入経路
S1 槽内温度センサ
S2 給水/空焚き検知センサ
S3 異常検知センサ
S4 吸引圧力上限センサ
S5 吸引圧力センサ
S6 流水センサ
V1 給湯バルブ
V2 給水バルブ
V3 第一吸引バルブ
V4 第二吸引バルブ
V5 第三吸引バルブ
V6 第四吸引バルブ
V7 循環バルブ
V8 エア抜き用循環バルブ
V9 圧抜きバルブ
V10 吸引タンク側吸引バルブ
V11 吸引タンク側排水バルブ
V12 排水バルブ
V13 定流量バルブ
V14 定流量バルブ
V15 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波発振手段を備える洗浄槽と、洗浄槽への給水経路と、洗浄槽内の洗浄液を循環させる循環経路と、洗浄槽内の洗浄液を廃棄する廃液経路とを備え、洗浄対象物として管状の医療器具を含む医療器具用卓上洗浄装置において、
洗浄槽から洗浄対象物を介して吸引タンクに繋がる吸引経路を備え、吸引経路における洗浄対象物の接続部と吸引タンクとの間にバルブを設け、前記吸引タンク内を負圧にするための吸引ポンプを前記吸引タンクを連結し、
洗浄槽内に洗浄液を滞留させた状態で、吸引ポンプによって吸引タンク内を負圧とし、前記洗浄対象物と吸引タンクとの間のバルブの開放で、洗浄槽と吸引ポンプの圧力差によって急激に移動する洗浄液により吸引経路に配置された洗浄対象物の内部の汚物等を吸引タンク内へ押し流して、循環洗浄を可能とすることを特徴とする医療器具用卓上洗浄装置。
【請求項2】
洗浄槽内に複数の洗浄対象物を装着するカートリッジを配置し、該カートリッジは、複数の洗浄対象物の内部を吸引するカートリッジ吸引口を備え、前記洗浄対象物の内部からカートリッジ吸引口を介して吸引経路で吸引する構成とし、洗浄対象物の外部を洗浄槽内に貯留した洗浄液で洗浄する構成を兼備したことを特徴とする請求項1記載の医療器具用卓上洗浄装置。
【請求項3】
CPUが自動運転プログラムを実行する制御手段を備え、洗浄槽の超音波発振手段は、傘状の超音波発振子を有し、該超音波発振子を洗浄槽の蓋の下面に設置し、且つ、ヒータを洗浄槽の底部に設置し、
洗浄液はタンパク質分解酵素配合の弱アルカリ性洗浄剤を含有し、
前記制御手段が、前記ヒータで、洗浄時の洗浄液温度を約50℃に制御し、循環殺菌時の洗浄液温度を約80℃ないし93℃に制御することを特徴とする請求項1又は2記載の医療器具用洗浄装置。
【請求項4】
洗浄対象物である管状の医療器具を、洗浄槽内に洗浄液を滞留させた状態で吸引経路に繋いで吸引経路が医療器具の管内に連続させ、吸引タンクと管状の医療器具との間のバルブを閉として、吸引ポンプによって吸引タンク内を負圧とし、前記管状の医療器具と吸引タンクとの間のバルブの開放で、洗浄槽と吸引ポンプの圧力差によって急激に移動する洗浄液により吸引経路に配置された洗浄対象物の内部の汚物等を吸引タンク内へ押し流し、汚物を排出する工程を有することを特徴とする医療器具洗浄方法。
【請求項5】
複数の管状の医療器具を接続可能なカートリッジ吸引口と吸引経路に接続可能なコネクタを備えたカートリッジを、吸引経路と医療機器との間に介することを特徴とする請求項4記載の医療器具洗浄方法。
【請求項6】
吸引タンクからの排出工程と並行して、洗浄槽での洗浄対象物の洗浄工程を行うことを特徴とする請求項4又は5記載の医療器具洗浄方法。
【請求項7】
吸引タンクからの排出工程と並行して、洗浄槽及び循環経路で洗浄液を循環させる循環工程を行うことを特徴とする請求項4、5又は6記載の医療器具洗浄方法。
【請求項8】
洗浄槽内での洗浄対象物の洗浄工程は、洗浄液にタンパク質分解酵素配合の弱アルカリ性洗浄剤を用いて、ヒータで洗浄液温度を約50℃とし、若しくは、洗浄液の循環工程は、約80℃乃至93℃とすることで、洗浄槽及び循環経路の殺菌を行うことを特徴とする請求項6又は7記載の医療器具洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−115223(P2010−115223A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288499(P2008−288499)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(395013348)株式会社アスカメディカル (3)
【Fターム(参考)】