説明

半導体ウェハ加工用ベースフィルム

ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる、高温下ならびに高湿下での優れた寸法安定性、平滑性、機械強度、および優れた加工適正を有する半導体ウェハ加工用ベースフィルムが提供される。 このフィルムは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる二軸配向フィルムであって、200℃で10分間熱処理した際のフィルムの熱収縮率が、フィルムの製膜方向および幅方向のいずれも1.00%以下である半導体ウェハ加工用ベースフィルムからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる二軸配向フィルムを用いた半導体ウェハ加工用ベースフィルムに関する。更に詳しくは、半導体ウェハ加工、特にバックグラインド工程またはダイシング工程において、バックグラインドテープの基材あるいはダイシングテープの基材として用いた際、優れた寸法安定性、平滑性、機械強度を有するバックグラインドテープ用またはダイシングテープ用ベースフィルムに関する。
【背景技術】
半導体製造におけるウェハ裏面の研磨工程(バックグラインド工程)と、完成したウェハからICチップを切断する工程(ダイシング工程)では、種々の粘着剤を積層した粘着テープがウェハの固定用に使用される。バックグラインド工程において表面に回路形成されたウェハは粘着テープに固定された状態で裏面を研磨され、UV照射や加熱などにより粘着剤の粘着力が低減された後、次のダイシング工程へ移動する。ダイシング工程では粘着テープに固定されたウェハが個々のICチップ単位にカッティングされ、バックグラインド工程と同様にUV照射や加熱などにより粘着剤の粘着力が低減された後、一つづつ取り出される。取り出されたICチップは次のボンディング工程、モールディング工程に移送される。
従来、ダイシングテープの粘着フィルム及び離形フィルムの基材フィルムとしては、ポリオレフィン及びその共重合体、ポリ塩化ビニル及びその共重合体、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド等のプラスチックフィルムが用いられており、最近では機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格等の点で、例えば、特開平5−175332号公報、特開平1−5838号公報に示されたようにポリエステルフィルムが用いられるようになってきている。一方、ポリエステルフィルム及びシリコーン樹脂離形層に含まれている不純物に起因するシリコンウェハの歩留り低下を防止する目的で、重合触媒にゲルマニウム化合物を適用する(特開平10−214801号公報)方法が開示されている。また、同様な低汚染性の観点からバックグラインドテープやダイシングテープの保管における粘着層保護用の離型フィルムに関する技術が特開平11−20105号公報により開示されている。
ところで、近頃の半導体の高集積化に伴い、半導体ウェハの薄肉化が急速に進行している中で、ウェハ厚みの薄肉化に適した新たな半導体ウェハ加工技術が考案されてきている。特にウェハ厚みが非常に薄くなってきたために従来の研磨方法では、ウェハの破損や従来よりも研磨に時間がかかる等の課題があり、加工技術として例えばプラズマでエッチングをする方法等が考案されてきている。
しかしながら、新たに考案された加工方法では、従来の加工方法に比べて加工温度が高温になるため、従来のポリエステルフィルムを基材とした半導体ウェハ加工用フィルムでは、その熱寸法安定性や機械強度が課題となってきている。また、ダイシング工程では一般にテープ剥離の際、加熱やUV照射により粘着剤の粘着力を弱めた後、切断した各チップをピックアップするためにテープのエキスパンドを行う方法やテープ側からチップを突上げる方法を用いてチップ間に隙間を開けているが、加熱時のテープの寸法収縮が大きいとチップのピックアップ不良が発生し、半導体ウェハの生産効率が悪くなることが課題となってきている。
一方、基材フィルムとしてポリイミドを用いた場合、吸水率が高いために、より高い寸法安定性が求められている。
さらに、半導体ウェハの生産性を向上させるために、工程内のクリーン化や加工性の改良が常に追求されている。
【特許文献1】 特開平5−175332号公報
【特許文献2】 特開平1−5838号公報
【特許文献3】 特開平10−214801号公報
【特許文献4】 特開平11−20105号公報
【発明の開示】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題を解決して、半導体ウェハ加工、特にバックグラインドテープの基材あるいはダイシングテープの基材として用いた際に、高温下ならびに高湿下での優れた寸法安定性、平滑性、機械強度、および優れた加工適正を有する半導体加工用ベースフィルムを得ることを目的とする。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる二軸配向フィルムであって、200℃で10分間熱処理した際のフィルムの熱収縮率が、フィルムの製膜方向および幅方向のいずれも1.00%以下である半導体ウェハ加工用ベースフィルムによって達成される。
また、本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第2に、
半導体ウェハ加工用ベースフィルムが、バックグラインドテープ用またはダイシングテープ用である上記第1の本発明に記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルムによっても達成される。
さらにまた、本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第3に、
フィルムの抽出オリゴマー量が0.8重量%以下であり、フィルムの厚み方向の屈折率が1.501以上1.515以下である上記第1の本発明に記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルムによっても達成される。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第4に、
上記第1または第2の本発明のバックグラインドテープ用ベースフィルムの片面に粘着剤層を有するバックグラインドテープ、上記第1または第2の本発明のダイシングテープ用ベースフィルムの片面に粘着剤層を有するダイシングテープの少なくともいずれか1つによって達成される。
さらに、本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第5に、
上記第4の本発明のバックグラインドテープの粘着剤層の上にさらに離形フィルムを有するバックグラインドテープ複合体、上記第4の本発明のダイシングテープの粘着剤層の上にさらに離形フィルムを有するダイシングテープ複合体の少なくともいずれか1つによって達成される。
【発明の効果】
本発明の半導体ウェハ加工用ベースフィルムは、高温下ならびに高湿下での優れた寸法安定性、平滑性および機械強度に優れている。特に、半導体ウェハ加工に使用されるダイシングテープ用またはバックグラインドテープ用として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
<ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルム>
本発明において、半導体ウェハ加工用ベースフィルムは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(以下、PENと称することがある。)を主たる成分とし、コポリマー又は混合体でもよい。このポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、主たるジカルボン酸成分は、ナフタレンジカルボン酸であり、主たるグリコール成分は、エチレングリコールである。ここで、ナフタレンジカルボン酸としては、たとえば2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができ、これらの中で2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。また主たるとは、本発明のフィルムの成分であるポリマーの構成成分において全繰返し単位の少なくとも80mol%がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであることを意味し、更に好ましくは90mol%以上、特に好ましくは95mol%以上である。すなわち、本発明のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルム本来の特性を極端に失うことがなく、高温下の使用での寸法安定性、機械強度を確保できればよい。
コポリマーである場合は、主たる成分のエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート以外のコポリマーを構成する共重合成分としては、分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができる。かかる化合物として例えば、シュウ酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸を好ましく用いることができる。また、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸も好ましく用いることができる。さらにまた、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコール等の如き2価アルコール類等も好ましく用いることができる。
これらの化合物は1種のみでなく2種以上を同時に用いることができる。またこれらの化合物の中でも、酸成分としてはイソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p−オキシ安息香酸が、またグリコール成分としてはトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールネオペンチルグリコールおよびビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
また、本発明で使用するポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってもよい。また本発明で使用するポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、例えば極く少量のグリセリン、ペンタエリスリトール等の如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
さらにまた本発明のフィルムは、主たる成分のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのほかに、他の有機高分子を混合した混合体であっても良い。かかる有機高分子としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン−4,4’−テトラメチレンジフェニルジカルボキシレート、ポリエチレン−2,7−ナフタレンジカルボキシレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリネオペンチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等を挙げることができる。これらの中でも、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
これらのPENと混合する有機高分子は1種のみならず2種以上を併用しても良い。PENと混合する有機高分子の割合は、、ポリマーの繰返し単位で、高々20mol%、好ましくは10mol%以下、特に好ましくは5mol%以下の範囲である。かかる混合体の製造は一般に知られたポリエステル組成物の製造方法によって実施できる。
本発明で使用するポリエステルは従来公知の方法で得ることができる。例えばジカルボン酸とグリコールとの反応で、直接、低重合度ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとを従来公知のエステル交換触媒を用いてエステル交換反応させる方法の後、重合触媒の存在下で重合反応を行えばよい。エステル交換反応触媒としては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物が挙げられ、これらは一種または二種以上併用してもよい。重合触媒としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、三塩化アンチモン、三臭化アンチモン、アンチモングリコレート、酢酸アンチモン等のアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物が挙げられる。
上記の重合触媒のなかでも、ゲルマニウム化合物が特に好ましく用いられる。かかるゲルマニウム化合物を重縮合反応触媒として、例えばエステル化反応あるいはエステル交換反応完了前から重合反応開始直後の間に、得られたエステル交換反応物に添加し、減圧状態で撹拌しながら加熱して重縮合反応を行なわせることが好ましい。本発明において重縮合反応触媒に用いるゲルマニウム化合物としては、例えば(イ)無定形酸化ゲルマニウム(ロ)微細な結晶性酸化ゲルマニウム(ハ)酸化ゲルマニウムを水に溶解した溶液等を好ましく用いることができる。これらの酸化ゲルマニウムのなかでも、結晶性二酸化ゲルマニウム、非晶性二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等の如きゲルマニウム化合物を好ましく使用でき、特に結晶性二酸化ゲルマニウムおよび非晶性二酸化ゲルマニウムを好ましく使用できる。
重縮合反応触媒に用いるゲルマニウム化合物の量は、あまり少ないと十分な重合反応の促進効果が得られず、また極端に多くすると得られるポリエステルの軟化点が低下したりすることがあるので、ポリエステル中に残存するゲルマニウムの金属元素として好ましくは10〜1000重量ppm、より好ましくは10〜500重量ppm、さらに好ましくは10〜200重量ppmである。なお、ゲルマニウムの金属元素含有濃度は、乾燥したサンプルを走査電子顕微鏡(SEM,日立計測機器サービス(株)製の商品名「S570型」)にセットし、それに連結したエネルギー分散型X線マイクローアナライザー(XMA,(株)堀場製作所製の商品名「EMAX−7000」)にて定量分析を行った値である。
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でリン化合物を含有することが好ましい。かかるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホネート化合物及びそれらの誘導体等があげられ、これらは単独で使用しても二種以上を併用してもよい。これらの中でも、リン化合物としては、下記式(I)で表されるホスホネート化合物が好ましい。
O−C(O)−X−P(O)−(OR …(I)
ここで、式中の、RおよびRは炭素数原子数1〜4のアルキル基、Xは−CH−または−CH(Y)−(Yは、フェニル基を示す。)であり、RおよびRはそれぞれ同一でも異なっていても良い。
特に好ましいリン化合物は、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボブトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボプロポキシ−ホスホノ−フェニル酢酸およびカルボブトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステルおよびジブチルエステルである。
本発明において、これらのホスホネート化合物の好ましい理由は、通常安定剤として使用されているリン化合物に比べ、金属化合物との反応が比較的緩やかに進行することから、重縮合反応中の金属化合物の触媒活性の持続時間が長く、結果としてポリエステルへの触媒の添加量を少なくでき、触媒に対して多量の安定剤を添加してもポリエステルの熱安定性を損ないにくいためである。
これらリン化合物の添加時期は、エステル交換反応が実質的に終了した後であればいつでもよく、例えば、重縮合反応を開始する以前の大気圧下、重縮合反応を開始した後の減圧下、重縮合反応の末期または重縮合反応の終了後すなわちポリマーを得た後に添加してもよい。
リン化合物の好ましい含有量は、ポリエステルの熱安定性の点から、リン化合物中のリン元素としてポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート中20〜100重量ppmであることが好ましい。
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、2,6−ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを原料として用いたものでも、2,6−ジメチルナフタレートに代表される2,6−ナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体とエチレングリコールを原料として用いたものでもよい。エステル交換反応を経由する製造方法においては、エステル交換反応を0.05MPa以上0.20MPa以下の加圧下にて実施することで、金属化合物の添加量をさらに低減できる。
なお、本発明で使用されるポリエステルは、溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において固相重合することもできる。フィルムの抽出オリゴマー量を低減させるために、本発明において固相重合も好ましく行われる。
なお、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなるポリマーの固有粘度は0.40dl/g以上0.90dl/g以下であることが好ましい。また、固有粘度はo−クロロフェノールを溶媒として用いて、25℃で測定した値(単位:dl/g)である。
<添加剤>
本発明の半導体ウェハ加工用ベースフィルムには、フィルムに滑り性を付与するために不活性粒子を少割合含有させることが好ましい。かかる不活性粒子としては、例えば球状シリカ、多孔質シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、二酸化チタン、カオリンクレー、硫酸バリウム、ゼオライトの如き無機粒子、或いはシリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子の如き有機粒子を挙げることができる。無機粒子は粒径が均一であること等の理由で、天然品よりも合成品であることが好ましい。無機粒子の結晶形態、硬度、比重、色は特に制限されず、目的に応じて使用することができる。
具体的な無機粒子としては、炭酸カルシウム、多孔質シリカ、球状シリカ、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム等を挙げることができる。
これらの中でも、炭酸カルシウム粒子、球状シリカ粒子、多孔質シリカ粒子、板状珪酸アルミニウムが特に好ましい。
有機粒子としては、有機塩粒子や架橋高分子粒子などが挙げられる。かかる有機塩粒子としては例えば蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩が挙げられる。また、架橋高分子粒子としては例えば、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸もしくはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独体または共重合体が挙げられる。さらにまた、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子も好ましく挙げられる。架橋高分子粒子の中でもシリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子が特に好ましい。
これらフィルム中に添加される不活性粒子の粒子径は、各々の種類の粒子について、平均粒径が0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、0.08μm以上3.5μm以下であることがさらに好ましく、0.10μm以上3μm以下であることが特に好ましい。また、フィルム中に含まれる不活性粒子の全添加量は0.05重量%以上3重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.08重量%以上2.0重量%以下であり、0.1重量%以上1.0重量%以下であることが特に好ましい。
フィルムに添加する不活性粒子は上記に例示した中から選ばれた単一成分でもよく、二成分あるいは三成分以上を含む多成分でもよい。また、単一成分の場合には平均粒径が異なる2種類以上の粒子を含有しても良い。
なお、不活性粒子の平均粒径は、(株)島津製作所製の商品名「CP−50型セントリフューグルパーティクルサイズアナライザー(Centrifugal Particle Size Annalyzer)」を用いて測定し、該測定から得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50重量%に相当する粒径を読み取った値である(「粒度測定技術」日刊工業新聞発行、1975年頁242〜247参照)。
本発明のフィルムは、平均粒径が0.3μm以上0.8μm以下である炭酸カルシウム粒子を0.05重量%以上0.4重量%以下、および/または平均粒径が0.1μm以上0.6μm以下である球状シリカ粒子を0.03重量%以上0.5重量%以下、および/または平均粒径が0.1μm以上0.6μm以下であるシリコーン粒子を0.03重量%以上0.4重量%以下の割合で含有することが特に好ましい。さらに、同じ種類の不活性粒子で粒径が異なる粒子が同時に含まれていても良く、その場合は同じ種類の不活性粒子全体の含有量が上記の範囲内になっていればよい。
本発明のフィルムは、その用途に応じて結晶核剤、酸化防止剤、熱安定化剤、易滑剤、難燃剤、帯電防止剤、ポリシロキサン等を配合することができる。
不活性粒子やその他の添加剤の添加時期はポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを製膜するまでの段階であれば特に制限はなく、例えば重合段階で添加してもよく、また製膜の際に添加してもよい。均一分散の見地からは、不活性粒子やその他の添加剤をエチレングリコール中に添加して重合時に高濃度添加してマスターチップとし、得られたマスターチップを無添加チップで希釈するのが好ましい。
<ベースフィルム>
本発明の半導体ウェハ加工用ベースフィルムは、上述したポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる二軸配向フィルムである。本発明におけるベースフィルム(フィルムと略記することがある)は、単層または2層以上の複数層のいずれであってもよく、2層以上の複数層からなることが、半導体ウェハとの密着面の平坦性およびベースフィルムの巻取り性を両立する上で好ましい。2層以上の複数層を構成する手段としては、共押出し法、押出しラミネート法、コーティング法等を用いることができ、特に限定はされないが、生産性の観点から上述したポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを使用して複数台の押出し機から各々樹脂を押し出す共押出し法で複数層を構成することが好ましい。
また本発明の半導体ウェハ加工用ベースフィルムは、バックグラインドテープ用またはダイシングテープ用であることが好ましい。
<熱収縮率>
本発明のフィルムは、200℃で10分間加熱処理したときの熱収縮率が、フィルムの製膜方向および幅方向のいずれも1.00%以下である。本発明のフィルムの熱収縮率は、−0.20%以上0.80%以下であることがさらに好ましく、−0.10%以上0.60%以下であることが特に好ましい。本発明では、特に断らない限り、製膜方向とはフィルムが連続製膜されるときの進行方向であり、フィルムの長手方向、縦方向、連続製膜方向またはMD方向と称することがある。また、本発明では、幅方向とはフィルム面内方向における製膜方向に直交する方向であり、横方向またはTDと称することもある。
200℃の温度で10分間加熱処理したときの熱収縮率が1.00%を超えると、半導体ウェハ加工工程における温度が高温となった場合に、ベースフィルムの寸法収縮が大きくなる一方で、ウェハは熱膨張するため、加工工程の途中でウェハがテープの粘着剤から脱落したり、場合によってはウェハの厚みが薄いために破損することがある。熱収縮率が−0.20%未満の場合、すなわち熱膨張する場合にはウェハの熱膨張よりもベースフィルムの熱膨張が大きくなり、テープの粘着剤がウェハの周辺部からウェハの表面に回りこむことがある。さらに、フィルムの収縮または膨張が本発明の範囲を超えて大きい場合、いずれの場合もウェハの膨張率との差によって、テープ上に載っている半導体ウェハが反るため好ましくない。また、フィルムの膨張率が半導体ウェハの膨張率よりも大きい場合は、ウェハ側を内側にして反り、チップ同士のせりあいの原因となるため、フィルムの膨張、すなわち熱収縮率がマイナスになる方向は極力抑制する必要がある。
なお、所望の熱収縮率を有するフィルムを得るために、フィルムの製造において二軸延伸し、熱固定を行った後、さらに、フィルムの熱弛緩処理を行うことがより好ましい。
<抽出オリゴマー量>
本発明のフィルムのオリゴマー抽出量は、クロロホルムを用いて24時間抽出する条件において0.8重量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.6重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。オリゴマー抽出量が0.8重量%を超えると半導体ウェハ加工用ベースフィルムとして用いた場合に、工程内の加工温度環境下や粘着剤層塗設工程においてオリゴマーがベースフィルム表面に析出し、加工工程内の汚染や粘着剤層とベースフィルム間の接着強度が低下する等の問題を引き起こすことがある。フィルム表面へのオリゴマーの析出を抑制するには、フィルム中に含まれるオリゴマー量を低減させることが最も効果的であり、本用途向けにはオリゴマー抽出量を少なくすることが好ましい。
なお、オリゴマー抽出量を少なくし、所望の範囲とするためには、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの固有粘度を0.45dl/g以上0.90dl/g以下にすることが好ましく、さらに好ましくは0.48〜0.85dl/g、特に好ましくは0.50〜0.80dl/gである。ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの固有粘度が下限に満たない場合は、フィルムの抽出オリゴマー量が多くなりすぎ、一方上限を超える場合は、重合および製膜工程で過剰な負荷を要することがある。
また、オリゴマー抽出量を所望の範囲とするためには、フィルムの固有粘度は0.40〜0.90dl/gであることが好ましい。なお、固有粘度はo−クロロフェノールを溶媒として用いて、25℃で測定した値(単位:dl/g)である。
<厚み方向の屈折率>
本発明のフィルムの厚み方向の屈折率(nz)は1.501以上1.515以下であることが好ましい。より好ましくは1.503以上1.513以下であり、特に好ましくは1.504以上1.512以下である。厚み方向の屈折率が1.501未満であるとフィルムの耐デラミ性が悪化するため、フィルムの切断端面にバリが発生するようになり、場合によっては切粉が工程内を汚染することがある。また、厚み方向の屈折率が1.515を超えるとフィルムが脆くなり、バックグラインドテープやダイシングテープのベースフィルムとして用いられた場合のテープ剥離の際にフィルム破れが発生することがある。
なお、フィルムの厚み方向において所望の屈折率を有するフィルムを得るためには、ベースフィルム製造時の熱固定温度を上げる、もしくは縦方向または横方向の延伸倍率を下げることで可能である。
<フィルムの厚みのバラツキ>
本発明のフィルムの厚みのバラツキは、フィルムの平均厚みに対して15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、8%以下であることが特に好ましい。フィルムの厚みのバラツキが小さい程、バックグラインドテープと半導体ウェハおよびダイシングテープと半導体ウェハとの接着面の接着強度が均一化し、安定したテーピングが可能となるため、より精密なバックグラインドおよびダイシングが可能となり、高精細化、高密度化に好ましいチップを供給できる。
<ヤング率>
本発明のフィルムのヤング率は、フィルムの製膜方向と幅方向のいずれにおいても、5400MPa以上6900MPa以下であることが好ましく、より好ましくは5500MPa以上6800MPa以下であり、特に好ましくは5600MPa以上6700MPa以下である。また両方向のヤング率の差は、1000MPa以下であることが好ましい。
ヤング率が5400MPa未満であるとフィルムの剛性が不足し、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムの高弾性率を活用した半導体ウェハ加工用ベースフィルムの薄膜化が困難になることがある。また、ヤング率が6900MPaを超えるとフィルムの裁断時に切粉が多く発生し易くなり、クリーン状態での加工を汚染する可能性がある。さらに、切断した各チップのピックアップ時にテープのエキスパンドやテープ側からのチップの突上げが困難になり、生産効率が低下する。
<表面粗さ(Ra)>
本発明のフィルムの少なくとも片面における中心線平均表面粗さ(Ra)は3nm以上80nm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm以上60nm以下、特に好ましくは7nm以上50nm以下である。さらに、フィルムが2層以上の複数層構成の場合、フィルム両面のRaの和が10nm以上であることが好ましく、14nm以上であることがより好ましい。ここで、中心線平均粗さ(Ra)はJIS B−0601に規定する方法により、カットオフは0.25mm、測定触針は半径3μmのものを用いて表面粗さ計((株)小坂研究所製の商品名「サーフコーダSE−30C」あるいは(株)東京精密製の商品名「サーフコムSE−3CK」)にて測定される。
Raが3nm未満であるとフィルムの滑りが悪く、フィルム製造時の搬送や、フィルムの巻取りにおいてフィルム表面に擦り傷が発生しやすくなったり、フィルムをロール状態に巻き取った場合にフィルムとフィルムの間に巻込まれた空気が抜けにくく、発生したエアだまりによってフィルムの平面性が損なわれることがある。一方、Raが80nmを超えるとフィルムが滑り過ぎるため、フィルムの巻取り、またはフィルム表面に粘着層を塗設してテープとした後の巻取りにおいて巻ズレが頻繁に発生する可能性がある。
<フィルム密度>
本発明のフィルムの密度は1.356g/cm以上1.364g/cm以下であることが好ましい。さらに好ましくは1.357g/cm以上1.362g/cm以下である。密度が1.356g/cm未満であると、フィルムの結晶性が低く半導体ウェハ加工工程における寸法安定性が不十分となることがある。また、密度が1.364g/cmを超えると結晶性が高くなり過ぎてフィルムの靭性が失われるため、バックグラインドテープやダイシングテープの基材とした場合のテープ剥離に際に破断しやすくなる。なお、フィルムの密度は硝酸カルシウム水溶液を溶媒として用いた密度勾配間中、25℃で浮沈法により測定された値である。
<フィルムの平均厚み>
本発明のフィルムの平均厚みは9μm以上150μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは9μm以上125μm以下、特に好ましくは12μm以上100μm以下である。フィルムの平均厚みが9μm未満であると、ウェハ加工における支持体としての機械強度やウェハ表面の保護機能が不足する場合がある。一方、フィルムの平均厚みが150μmを超えると非常にフィルムのスティフネスが強くなりすぎ、テープの粘着強度が若干でも強い場合には、テープ剥離の際にウェハが破損したり、ダイシング後にフィルムをエキスパンドするための力が大きくなりすぎる可能性がある。
<動摩擦係数>
本発明のフィルムは、フィルム同士の動摩擦係数(μd)が0.5以下であることが好ましい。動摩擦係数(μd)が0.5を超えると、製膜工程中および粘着剤層塗布加工中でのハンドリング性が悪くなり、例えば工程内のロール上での走行中またはロール状に巻取る際にしわやスクラッチ等の欠点を生じる。
<熱収縮率の差>
本発明のフィルムを200℃で10分間熱処理した際のフィルムの熱収縮率は、フィルムの製膜方向の熱収縮率(SMD)と幅方向の熱収縮率(STD)との差の絶対値(|SMD−STD|)が0.60%以下であることが好ましい。この値はさらに好ましくは0.50%以下、特に好ましくは0.40%以下である。熱収縮率の差の絶対値が0.60%を超えると、バックグラインドテープやダイシングテープのベースフィルムとして使用した場合にフィルムの寸法変化量の異方性が大きく、半導体ウェハの反りが発生する場合がある。
<バックグラインドテープ>
本発明におけるバックグラインドテープは上述のバックグラインドテープ用ベースフィルムの片面に粘着剤層を有する。半導体ウェハ裏面の研磨工程であるバックグラインド工程において、バックグラインドテープ用ベースフィルムの片面に粘着剤層が積層されたバックグラインドテープをシリコンウェハの固定用に用いることによって、シリコンウェハを安定した状態で固定することが可能となる。
<ダイシングテープ>
本発明におけるダイシングテープは上述のダイシングテープ用ベースフィルムの片面に粘着剤層を有する。半導体ウェハからICチップを切断する工程であるダイシング工程において、ダイシングテープ用ベースフィルムの片面に粘着剤層が積層されたダイシングテープをシリコンウェハの固定用に用いることによって、シリコンウェハを安定した状態で固定することが可能となる。
<塗布層>
本発明のバックグラインドテープ用またはダイシングテープ用ベースフィルムには、粘着剤との易接着性を向上させる目的でその少なくとも片面に塗布層を設けることができる。塗布層はポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニル系樹脂から選ばれる少なくとも1種の水溶性または水分散性高分子樹脂からなることが好ましく、特にポリエステル樹脂とアクリル樹脂の両方を含むのが好ましい。本発明で用いる塗布層のポリエステル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が0〜100℃、更に好ましくは10〜90℃のものである。該ポリエステル樹脂は、水に可溶性または分散性のポリエステルが好ましいが、多少の有機溶剤を含有しても良い。
かかるポリエステル樹脂としては、以下のような多塩基酸またはそのエステル形成誘導体とポリオールまたはそのエステル形成誘導体から成る。すなわち、多塩基酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。これら酸成分を2種以上用いて共重合ポリエステル樹脂を合成する。また、若干量ながら不飽和多塩基酸成分のマレイン酸、イタコン酸等及びp−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸を用いることができる。また、ポリオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明で用いる塗布層のアクリル樹脂は、ガラス転移点(Tg)が−50〜50℃、更に好ましくは−50〜25℃のものである。該アクリル樹脂は、水に可溶性または分散性のアクリルが好ましいが、多少の有機溶剤を含有しても良い。
かかるアクリル樹脂としては以下のようなアクリルモノマーから共重合できる。このアクリルモノマーとしては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ含有モノマー;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等のカルボキシ基またはその塩を含有するモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーが挙げられる。塗布層として用いられるアクリル樹脂は、これらに限定されるものではない。
本発明で用いられる上記組成物は、塗膜を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液等の水性塗液の形態で使用されるのが好ましい。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記組成物以外の他の樹脂、例えばオキサゾリン基を有する重合体、メラミン、エポキシ、アジリジン等の架橋剤、帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、滑剤(フィラー、ワックス)などを添加することができる。かかる滑剤はフィルムの滑り性の向上あるいは耐ブロッキング性の向上を目的として、必要に応じて滑剤を添加することができる。
水性塗液の固形分濃度は、通常20重量%以下であり、更には1〜10重量%であることが好ましい。この割合が1重量%未満であると、ポリエステルフィルムへの塗れ性が不足し、一方、20重量%を越えると塗剤の安定性や塗布外観が悪化することがある。
塗布層は、未延伸フィルムまたは一軸延伸が終了したフィルムに水性塗液を塗布し、その後、2方向または1方向に延伸し熱固定することでフィルム上に強固に設けることができる。塗工方法としてはロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレー法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法等を単独または組み合わせて用いることが出来る。
<粘着剤>
本発明のバックグラインドテープやダイシングテープを構成する粘着剤としては従来公知のものが広く用いられうるが、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤としては、具体的には、アクリル酸エステルを主たる構成単位とする単独重合体および共重合体から選ばれたアクリル系重合体その他の官能性単量体との共重合体およびこれら重合体の混合物が用いられる。たとえば、炭素数1〜10のアルキルアルコールのアクリル酸エステル、炭素数1〜10のアルキルアルコールのメタクリル酸エステル、酢酸ビニルエステル、アクリロニトリル、ビニルアルキルエーテルなどを好ましく使用できる。また上記アクリル系共重合体は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、官能性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等が用いられる。官能性単量体を有する共重合体粘着剤は、架橋剤を使用することにより接着力と凝集力とを任意の値に設定することができる。このような架橋剤としては、多価イソシアネート化合物、多価エポキシ化合物、多価アジリジン化合物、キレート化合物等がある。多価イソシアネート化合物としては、具体的にはトルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのアダクトタイプのもの等が用いられる。多価エポキシ化合物としては、具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステルアクリレート等が用いられる。多価アジリジン化合物としては、具体的にはトリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕ホスフィンオキシド、ヘキサ〔1−(2−メチル)−アジリジニル〕トリホスファトリアジン等が用いられる。またキレート化合物としては、具体的にはエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等が用いられる。
これらのモノマーを重合して得られるアクリル系共重合体の分子量は、1.0×10〜10.0×10であり、好ましくは4.0×10〜8.0×10である。さらに、粘着剤層として、放射線を照射することにより硬化して、ピックアップ時の接着力を低下できるものも用いることができる。具体的には、上記アクリル系共重合体を主剤として、これに放射線重合性化合物を含ませた粘着剤を用いることが好ましい。このような放射線重合性化合物としては、たとえば特開昭60−196,956号公報および特開昭60−223,139号公報に開示されているような、光照射によって三次元網状化しうる分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物が広く用いられ、具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートなどが用いられる。
さらに放射線重合性化合物として、上記のようなアクリレート系化合物のほかに、ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエステル型またはポリエーテル型などのポリオール化合物と、多価イソシアネート化合物たとえば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアネートなどを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有するアクリレートあるいはメタクリレートたとえば2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなどを反応させて得られる。このウレタンアクリレート系オリゴマーは、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個以上有する放射線重合性化合物である。
このようなウレタンアクリレート系オリゴマーとして、特に分子量が3000〜30000、好ましくは3000〜10000、さらに好ましくは4000〜8000であるものを用いると、半導体ウェハ表面が粗い場合にも、ウェハチップのピックアップ時にチップ表面に粘着剤が付着することがないため好ましい。またウレタンアクリレート系オリゴマーを放射線重合性化合物として用いる場合には、特開昭60−196,956号公報に開示されたような分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個以上有する低分子量化合物を用いた場合と比較して、粘着シートとして極めて優れたものが得られる。すなわち粘着シートの放射線照射前の接着力は充分に大きく、また放射線照射後には接着力が充分に低下してウェハチップのピックアップ時にチップ表面に粘着剤が残存することはない。
また必要に応じて、粘着剤層中に、上記のような粘着剤と放射線重合性化合物とに加えて、放射線照射により着色する化合物を含有させることもできる。このような放射線照射により、着色する化合物を粘着剤層に含ませることによって、粘着シートに放射線が照射された後には該シートは着色され、したがって光センサーによってウェハチップを検出する際に検出精度が高まり、ウェハチップのピックアップ時に誤動作が生ずることがない。また粘着シートに放射線が照射されたか否かが目視により直ちに判明するという効果が得られる。
放射線照射により着色する化合物の好ましい具体例としてはロイコ染料が挙げられる。ロイコ染料としては、慣用のトリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系のものが好ましく用いられる。これらロイコ染料とともに好ましく用いられる顕色剤としては、従来から用いられているフェノールホルマリン樹脂の初期重合体、芳香族カルボン酸誘導体、活性白土などの電子受容体が挙げられ、さらに、色調を変化させる場合は種々公知の発色剤を組合せて用いることもできる。このような放射線照射によって着色する化合物は、一旦有機溶媒などに溶解された後に粘着剤層中に含ませてもよく、また微粉末状にして粘着剤層中に含ませてもよい。この化合物は、粘着剤層中に0.01〜10重量%好ましくは0.5〜5重量%の量で用いられることが望ましい。
<バックグラインドテープ複合体>
本発明において、バックグラインドテープは通常、粘着剤層の表面を離形フィルムにより保護されたバックグラインドテープ複合体の状態で保管され、バックグラインド工程で離形フィルムを剥離除去して使用される。すなわち、本発明のバックグラインドテープ複合体は、バックグラインドテープの粘着層の上にさらに離形フィルムを有する。
かかる離形フィルムは、ポリエステルよりなるベースフィルムの片面にシリコーン離形層を積層させてなるものであり、シリコーン離形層面とバックグラインドテープの粘着層面とを貼りあわせ、バックグラインドテープ複合体とする。離形フィルムは、シリコーン離形層とポリエステルよりなるベースフィルムの間にさらにプライマー層を有していてもよい。
<ダイシングテープ複合体>
本発明において、ダイシングテープは通常、粘着剤層の表面を離形フィルムにより保護されたダイシングテープ複合体の状態で保管され、ダイシング工程で離形フィルムを剥離除去して使用される。すなわち、本発明のダイシングテープ複合体は、ダイシングテープの粘着層の上にさらに離形フィルムを有する。
かかる離形フィルムは、ポリエステルよりなるベースフィルムの片面にシリコーン離形層を積層させてなるものであり、シリコーン離形層面とダイシングテープの粘着層面とを貼りあわせ、ダイシングテープ複合体とする。離形フィルムは、シリコーン離形層とポリエステルよりなるベースフィルムの間にさらにプライマー層を有していてもよい。
<離形フィルムを構成するポリエステルベースフィルム>
本発明の離形フィルムを構成するポリエステルベースフィルムは、本発明の半導体ウェハ加工用ベースフィルムと同一のポリエステルで構成してもよいが、異なるポリエステルで構成してもよい。かかるポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とするポリエステルが好ましく例示される。ここで主たるとは、ポリマーの構成成分において全繰返し単位の少なくとも80mol%がエチレンテレフタレートまたはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートであることを意味し、より好ましくは90mol%以上、特に好ましくは95mol%以上である。
なお、離形フィルムを構成するポリエステルベースフィルムは、バックグラインド加工およびダイシング加工後、紫外線照射して粘着剤を硬化させ、粘着力を低下させるために、該ベースフィルムの光線透過率が85%以上であることが好ましい。
<シリコーン離形層>
本発明の離形フィルムを構成するシリコーン離形層は、例えば硬化性シリコーン樹脂を含む塗液をポリエステルベースフィルムの片面に塗布し、乾燥、硬化させることにより形成できる。硬化性シリコーン樹脂としては、縮合反応系、付加反応系、紫外線もしくは電子線硬化系などいずれの反応系のものが例示され、かかる硬化性シリコーン樹脂の中から1種以上用いることができる。
<製造条件>
本発明のベースフィルムの製造方法について、詳述する。本発明のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムは、例えば通常の押出温度、すなわち融点(以下Tmと表わす)以上(Tm+70℃)以下の温度で、樹脂を溶融押出して得られたフィルム状溶融物を、回転冷却ドラムの表面で急冷し、固有粘度が0.40〜0.90dl/gの未延伸フィルムを得る。この工程でフィルム状溶融物と回転冷却ドラムとの密着性を高める目的で、フィルム状溶融物に静電荷を付与する静電密着法が知られている。一般にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは溶融物の電気抵抗が高いため、上記の冷却ドラムとの静電密着が不十分になる場合がある。この対策としては、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの全2官能性カルボン酸成分に対し、0.1〜10mmol%のエステル形成性官能基を有するスルホン酸4級ホスホニウムを含有させるのが好ましい。
このようにして得られた未延伸フィルムは、120〜170℃、より好ましくは130〜160℃の温度で、縦方向に2.8〜3.5倍の延伸倍率で延伸され、次いで横方向に120〜150℃の温度で2.8〜3.6倍の延伸倍率で延伸され、二軸配向フィルムとなる。なお、横延伸倍率は縦延伸倍率の0.90〜1.15倍程度の倍率にすることがフィルムの厚みのバラツキを所望の範囲にする上で好ましい。また、これらの延伸は複数段階に分割して行なわれる多段延伸であってもよい。
このようにして得られた二軸配向フィルムは、235〜255℃、より好ましくは240℃〜250℃の温度で0.3〜20秒間熱固定するのが好ましい。その後、熱収縮率を低下させる目的で、縦方向および/または横方向に、弛緩率0.5〜15%の範囲で熱弛緩処理を行うのがさらに好ましい。なお、延伸機の機構から、一般に横方向の弛緩がやり易く、横方向の熱収縮率は0%に近づけることが容易である。一方、縦方向の熱収縮率、特に200℃近辺の熱収縮率を小さくすることは難しいため、前述のような縦方向と横方向の延伸倍率および延伸温度が効果的である。
また、本発明のポリエステルフィルムは、前記のような熱処理のほかに、巻き取った後に熱処理することがより好ましい。巻き取った後の熱処理の方法は特定されないが、懸垂式の弛緩熱処理法が特に好ましい。懸垂式の弛緩熱処理法とは、処理するフィルムを上方に設置したローラーを経て下方に自重で垂下させ、その途中で加熱した後、下方のローラーで冷却しながらほぼ水平方向に向きを変え、ニップローラーで巻取り張力を遮断した上で巻き取るものが好ましく挙げられる。垂下距離は2〜10m程度がよく、2m未満では自重が小さすぎて平面性が損われ易く、また、加熱範囲が短いので弛緩効果を得ることが非常に難しい。他方、垂下距離が10mを超えると、作業性が悪く、自重が重くなるので、加熱域の位置によっては所望の熱収縮率が得られないことがある。
この製膜工程後の熱処理は、得られる二軸配向ポリエステルフィルムの200℃における熱収縮率が所望の範囲になるものなら、フィルムの製膜工程内(熱固定後の弛緩処理)で行われてもフィルムを製膜し一度巻き取った後の弛緩熱処理で行われても特にその処理方法は限定されない。好ましい加熱方式は、即時にフィルムを加熱できることから赤外線加熱である。また、好ましい弛緩熱処理温度は、フィルム温度が200〜240℃となるように処理するものである。フィルム温度が200℃未満では200℃での熱収縮率を小さくすることが難しく、他方、フィルム温度が240℃を超えると平面性が悪化し易く、ひどい場合はオリゴマーが析出してフィルムが白くなることがある。この白化は圧力履歴に左右され、例えば吊りベルトをフィルムロールのフィルム部分に架けて運搬すると、200℃以下であっても、ベルトと接触した部分が白化する場合がある。なお、フィルム温度は、非接触の赤外線式温度計(例えばバーンズ式輻射温度計)を用いて測定できる。これらの熱処理方法の中、フィルムの広範囲な範囲の熱収縮率をより均一に抑えやすいことから、製膜工程での熱処理よりも懸垂式弛緩熱処理法が好ましい。
一方、離形フィルムを構成するポリエステルベースフィルムは、従来から知られている、あるいは当業界に蓄積されている方法で得ることができる。すなわち、溶融・押出されたポリエステルの未延伸フイルムを一軸方向に延伸し、次いで上記延伸方向と直角方向に延伸し、さらに熱固定処理を行なう。本発明において、離型層は、例えば離型層の成分を含む塗液をポリエステルベースフィルムに塗布し、加熱乾燥させることにより塗設することができる。塗液の塗布方法としては公知の塗工方法が適用することができ、例えばロールコーター法、ブレードコーター法を用いることができる。以上の方法により得られた離形フィルムをバックグラインドテープやダイシングテープに張り合わせることで、各複合体が得られる。
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は以下の方法により測定または評価したものである。また、実施例中の部および比は、特に断らない限り、重量部および重量比を示す。
(1)熱収縮率
200℃に温度設定されたオーブンの中に無緊張状態で10分間フィルムを保持し、加熱処理前後での寸法変化を熱収縮率S(%)として下式(1)により算出する。
S=[(L−L)/L]×100 …(1)
ただし、L:熱処理前の標点間距離、L:熱処理後の標点間距離をそれぞれ表す。なお、試料幅20mm、長さ200mmであり、熱処理前の標点間距離は150mmである。フィルムの製膜方向(MD)と幅方向(TD)の両方向で測定を行い、熱収縮率を求めた。
(2)オリゴマー抽出量
フィルムサンプル5gをソクスレー抽出器を用いてクロロホルム内で24時間抽出操作を行った。乾燥後のフィルムサンプルの重量を測定し、抽出前重量W(g)と抽出後重量W(g)とからオリゴマー抽出量K(重量%)を下式(2)により求めた。
K=[(W−W)/W]×100 …(2)
(3)加熱後のオリゴマー析出率
フィルムを木枠に固定した後160℃の熱風循環(空気)式乾燥器内に10分間保持した後、フイルム表面にアルミニウムを蒸着し、微分干渉型光学顕微鏡でフイルム表面の写真を撮影する。この写真上でオリゴマー(白い斑点状に写る)の占める面積の総和の写真全面積に対する百分率で加熱オリゴマー析出率を評価する。
○: オリゴマー析出率2.5%未満
△: オリゴマー析出率2.5〜4.5%
×: オリゴマー析出率4.5%以上
(4)フィルムの厚み方向の屈折率(nz)
アッベの屈折率計(株式会社アタゴ製)を使用して、25℃にてNa−D線を用いてフィルムの厚み方向(z)の屈折率を求めた。
(5)ヤング率
試料幅10mm、長さ150mmに切り、チヤック間100mmにして引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分でインストロンタイプの万能引張試験装置で引張る。フィルムの製膜方向(MD)と幅方向(TD)の両方向で測定を行い、得られた荷重−伸び曲線の立上部の接線よりヤング率を算出する。
(6)中心線平均粗さ(Ra)
JIS B−0601に規定する方法により、カットオフは0.25mm、測定触針は半径3μmのものを用いて表面粗さ計((株)東京精密製の商品名「サーフコムSE−3CK」)にて測定する。
(7)フィルム厚み
マイクロメーター(アンリツ(株)製の商品名「K−402B型」)を用いて、フィルムの製膜方向(MD)および幅方向(TD)において各々10cm間隔で測定を行い、全部で300ヶ所のフィルム厚みを測定する。得られた300ヶ所のフィルム厚みの平均値を算出してフィルム平均厚みt(μm)を得る。
さらに電子マイクロメーター(アンリツ(株)製の商品名「K−312A型」)を用いて、針圧30g、走行速度25mm/秒でフィルムの製膜方向(MD)および幅方向(TD)それぞれ2mの長さにわたって測定し、連続厚みチャートを得る。このチャートから最大厚みt(μm)と最小厚みt(μm)を読み取る。
こうして得られたフィルム平均厚みt(μm)および最大厚みt(μm)と最小厚みt(μm)とから、下式(3)により厚みのバラツキD(%)を求める。
D=[(t−t)/t]×100 …(3)
(8)動摩擦係数(μd)
75mm(幅)×100mm(長さ)のカットフィルム(サンプル)を2枚重ねた上に重量200gのおもりを荷重W(g)として乗せ、上側のフィルムを150mm/分の速度で滑らせ、滑らせている時の力F(g)から動摩擦係数(μd)を計算する。なおフィルムは23℃、65%RHで24時間調湿した後に測定する。
動摩擦係数=F/W
(9)熱収縮率の差
200℃に温度設定されたオーブンの中に無緊張状態で10分間フィルムを保持し、フィルムの製膜方向(MD)および幅方向(TD)のそれぞれにおいて、各々の加熱処理前後での寸法変化から(1)熱収縮率と同様、熱収縮率S(%)を下式(1)により算出し、両方向の熱収縮率の差の絶対値を算出する。
S=[(L−L)/L]×100 …(1)
ただし、L0:熱処理前の標点間距離、L:熱処理後の標点間距離をそれぞれ表す。
(10)密度
JIS C2151に準じて二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムの密度を測定した。
(11)吸水率
JIS K7209に準じて、一辺が50mmの正方形のベースフィルムを用い、23℃の水に24時間浸水させた後、フィルムの吸水率を測定した。
(12)寸法安定性
25×25cmのベースフィルムを用い、65℃、85%RHの雰囲気下で100時間放置後、4隅のカール状態を測定し、反り量(mm)の平均値を測定した。○が合格である。
○;10mm未満の反り量
×;10mm以上の反り量
(13)半導体ウェハの加工性(バックグラインドおよびダイシング)
各実施例および比較例の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムにアクリル系粘着剤(n−ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体)を厚さ14μmとなるように塗布し、粘着シートを作製した。得られた粘着シートの粘着剤層上に8インチのシリコンウェハを貼着してウェハのバックグラインドおよびダイシングのテストをそれぞれ行なった。なお、ダイシングを行った後に非拡張型ダイボンダーでチップのピックアップを行った。この際のダイシング、ピックアップの条件は、ダイシング切込み深さ:テープ表面から20μm、突き上げピン:4本、吸着ホルダーの径:28mmφ、コレット:角錐コレット、突き上げ距離:2mm、ダイシングサイズ:8mm×8mmである。
(14)半導体ウェハの加工性(バックグラインドおよびテープ剥離)
各実施例および比較例の二軸配向ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムにアクリル系粘着剤(n−ブチルアクリレートとアクリル酸との共重合体)を厚さ14μmとなるように塗布し、粘着シートを作製した。得られた粘着シートの粘着剤層上に8インチのシリコンウェハを貼着してウェハのバックグラインドおよびテープ剥離のテストをそれぞれ行なった。なお、テスト条件は、バックグラインド加工温度:180℃、テープ剥離前の熱処理温度:150℃である。
【実施例1】
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール60部の混合物に、酢酸マンガン・4水塩0.03部を添加し、150℃から240℃に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、さらに平均粒径0.4μm、粒径比1.1の球状シリカ粒子を0.2重量%添加した。そして、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、エステル交換反応終了後、燐酸トリメチル0.023部を添加した。ついで、反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、0.2mmHg以下の高真空下にて重縮合反応を行い、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した固有粘度が0.62dl/g、のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートポリマー(「ポリマーC」と呼ぶ)を得た。このポリマーCを170℃で6時間乾燥させた後、押出機に供給し、溶融温度305℃で溶融し、開度1mmのスリット状ダイを通して、表面仕上げ0.3S、表面温度50℃の回転ドラム上に押出し、未延伸フィルムを得た。
こうして得られた未延伸フィルムを、145℃で縦方向(製膜方向)に3.3倍に延伸し、次いで140℃で横方向(幅方向)に3.4倍延伸し、さらに243℃で5秒間熱固定処理及び幅方向に5%収縮させ(トウイン)、厚み16μm、固有粘度0.52dl/gの二軸配向PENフィルムを1500mm幅で3000mのロール状に巻き取った。その後、得られた二軸配向PENフィルムを、上方に設置されたニップローラーを経て下方に自重で垂下させながら、その途中でフィルム温度が225℃となるように赤外線加熱装置で加熱した後、上方に設置されたローラーより4m下方にあるニップローラーで冷却しながらほぼ水平方向に向きを変え、ニップローラーで巻取り張力を遮断した後に巻き取り、弛緩熱処理を行った。弛緩は上方のニップローラーと巻取り張力の遮断を行うニップローラーとの速度の差をつけて行った。
こうして得られた弛緩熱処理後の二軸配向PENフィルムを実施例1とした。
得られた実施例1のフィルムの特性評価結果を表1に示す。実施例フィルムのウェハ加工性については、フィルムの熱寸法変化、フィルムの厚みバラツキやフィルムの平面性等によるダイボンダー装置の誤動作による不良も起きず、良好なピックアップ操作ができた。また、粘着層塗設工程内および半導体ウェハ加工工程内を汚染することなく、さらに、テープ剥離ではフィルム破れがなく、半導体ウェハの製造における加工性は良好であった。
【実施例2】
縦方向の延伸倍率を2.9倍とし、横方向の延伸倍率を3.1倍に変更し、懸垂式の弛緩熱処理を行わなかった以外は、実施例1と同様な操作を繰り返し、厚み75μmの二軸配向PENフィルムを得た。
得られた実施例2のフィルムの特性評価結果を表1に示す。実施例フィルムのウェハ加工性については、フィルムの熱寸法変化、フィルムの厚みバラツキやフィルムの平面性等によるダイボンダー装置の誤動作による不良も起きず、良好なピックアップ操作ができた。また、粘着層塗設工程内および半導体ウェハ加工工程内を汚染することなく、さらに、テープ剥離ではフィルム破れがなく、半導体ウェハの製造における加工性は良好であった。
【実施例3】
実施例3としては、次のようにして2層構成のフィルムを作成した。まず、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール60部の混合物に、酢酸マンガン・4水塩0.03部を添加し、150℃から240℃に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、さらに平均粒径0.5μmの炭酸カルシウム粒子を0.15重量%添加した。そして、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、エステル交換反応終了後、燐酸トリメチル0.023部を添加した。ついで、反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、0.2mmHg以下の高真空下にて重縮合反応を行い、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した固有粘度が0.63dl/g、のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートポリマー(「ポリマーA」と呼ぶ)を得た。
また、ポリマーAと同様にしてエステル交換反応を行い、重合触媒として非晶性二酸化ゲルマニウム0.02部を添加し、さらに平均粒径0.1μm、粒径比1.1の球状シリカ粒子を0.05重量%添加した以外はポリマーAと同様にして重合を行い、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した固有粘度が0.63dl/g、のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートポリマー(「ポリマーB」と呼ぶ)を得た。
これらの各ポリマーを各々170℃で6時間乾燥させた後、2台の別々の押出機に供給し、各々溶融温度300℃で溶融し、共押出し法により開度1mmのスリット状ダイを通して、表面仕上げ0.3S、表面温度50℃の回転ドラム上に押出し、2層構成の未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、実施例1と同様に逐次に二軸延伸し、熱固定を行って、フィルム厚み16μm(ポリマーA層側10μm/ポリマーB層側6μm)、固有粘度0.54dl/gの二軸配向PENフィルムを1500mm幅で3000mのロール状に巻き取った。その後、実施例1と同様に得られた二軸配向PENフィルムを同じ懸垂式の弛緩熱処理装置を使って、弛緩熱処理を行った。こうして得られた弛緩熱処理後の二軸配向PENフィルムを実施例3とした。
得られた実施例のフィルムの特性評価結果を表1に示す。特にこれら実施例フィルムのウェハ加工性については、フィルムの熱寸法変化、フィルムの厚みバラツキやフィルムの平面性等によるダイボンダー装置の誤動作による不良も起きず、良好なピックアップ操作ができた。また、粘着層塗設工程内および半導体ウェハ加工工程内を汚染することなく、さらに、テープ剥離ではフィルム破れがなく、半導体ウェハの製造における加工性は良好であった。
比較例1
東レ・デュポン製「カプトン;タイプH」の50μmフィルムを用いた。
フィルムの特性評価結果を表1に示す。フィルムの熱寸法変化は非常に優れているが、吸水率が高いため、高湿度下では寸法安定姓に劣るものであった。
比較例2
テレフタル酸ジメチル100部とエチレングリコール60部の混合物に、酢酸マンガン・4水塩0.03部を添加し、150℃から240℃に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、さらに平均粒径0.4μm、粒径比1.1の球状シリカ粒子を0.2重量%添加した。そして、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、エステル交換反応終了後、燐酸トリメチル0.023部を添加した。ついで、反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、0.2mmHg以下の高真空下にて重縮合反応を行い、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した固有粘度が0.62dl/g、のポリエチレンテレフタレートポリマーを得た。このポリマーを170℃で3時間乾燥させた後、押出機に供給し、溶融温度290℃で溶融し、開度1mmのスリット状ダイを通して、表面仕上げ0.3S、表面温25℃の回転ドラム上に押出し、未延伸フィルムを得た。
こうして得られた未延伸フィルムを、90℃で縦方向(製膜方向)に3.2倍に延伸し、次いで120℃で横方向(幅方向)に3.8倍延伸し、さらに210℃で5秒間熱固定処理及び幅方向に5%収縮させ(トウイン)、厚み16μm、固有粘度0.55dl/gの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを1500mm幅で3000mのロール状に巻き取った。その後、得られた二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを、上方に設置されたニップローラーを経て下方に自重で垂下させながら、その途中でフィルム温度が180℃となるように赤外線加熱装置で加熱した後、上方に設置されたローラーより4m下方にあるニップローラーで冷却しながらほぼ水平方向に向きを変え、ニップローラーで巻取り張力を遮断した後に巻き取り、弛緩熱処理を行った。弛緩は上方のニップローラーと巻取り張力の遮断を行うニップローラーとの速度の差をつけて行った。
こうして得られた弛緩熱処理後の二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを比較例2とした。
得られた比較例2のフィルムの特性評価結果を表1に示す。ウェハ加工性については、フィルムの寸法安定性の悪さにより、チップの位置ズレ等が発生し、ダイボンダー装置の誤動作による不良が生じた。また、粘着層塗設工程内および半導体ウェハ加工工程内を汚染する程度のオリゴマー析出量であった。また加熱後のフィルム表面へのオリゴマー析出率も高かった。
比較例3
比較例3としては、縦方向の延伸倍率を3.6倍とし、横方向の延伸倍率を3.7倍に変更した以外は実施例2と同様な操作を繰り返し、厚み50μmの二軸配向PENフィルムを得た。
得られた比較例3のフィルムの特性評価結果を表1に示す。フィルムの熱寸法変化がフィルム縦方向および横方向のいずれも1.00%を超え、ウェハ加工性については、チップの位置ズレ等が発生し、ダイボンダー装置の誤動作による不良が生じた。
比較例4
比較例4としては、縦方向の延伸倍率を3.6倍とし、横方向の延伸倍率を3.9倍変更した以外は実施例1と同様な操作を繰り返し、懸垂式の弛緩熱処理を行って、厚み20μmの二軸配向PENフィルムを得た。
得られた比較例4のフィルムの特性評価結果を表1に示す。フィルムの熱寸法変化がフィルム縦方向において1.00%を超え、ウェハ加工性については、チップの位置ズレ等が発生し、ダイボンダー装置の誤動作による不良が生じた。
【表1】

【実施例4】
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール60部の混合物に、酢酸マンガン・4水塩0.03部を添加し、150℃から240℃に徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。途中、反応温度が170℃に達した時点で三酸化アンチモン0.024部を添加し、さらに平均粒径0.6μm、粒径比1.1の球状シリカ粒子を0.1重量%添加した。そして、反応温度が220℃に達した時点で3,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩0.042部(2mmol%に相当)を添加した。その後、引き続いてエステル交換反応を行い、エステル交換反応終了後、燐酸トリメチル0.023部を添加した。ついで、反応生成物を重合反応器に移し、290℃まで昇温し、0.2mmHg以下の高真空下にて重縮合反応を行い、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した固有粘度が0.43dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートポリマー(ポリマーD)および固有粘度が0.69dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートポリマー(ポリマーE)を得た。さらにポリマーEを固相重合し、固有粘度が0.78dl/g(ポリマーF)とした。
ポリマーEを170℃で6時間乾燥させた後、押出機に供給し、溶融温度305℃で溶融し、開度1mmのスリット状ダイを通して、表面仕上げ0.3S、表面温度50℃の回転ドラム上に押出し、未延伸フィルムを得た。
こうして得られた未延伸フィルムを、145℃で縦方向(製膜方向)に3.0倍に延伸し、次いで140℃で横方向(幅方向)に3.0倍延伸し、さらに246℃で5秒間熱固定処理及び幅方向に4%収縮させ(トウイン)、厚み30μm、固有粘度0.59dl/gの二軸配向PENフィルムを1500mm幅で3000mのロール状に巻き取った。その後、得られた二軸配向PENフィルムを、上方に設置されたニップローラーを経て下方に自重で垂下させながら、その途中でフィルム温度が225℃となるように赤外線加熱装置で加熱した後、上方に設置されたローラーより4m下方にあるニップローラーで冷却しながらほぼ水平方向に向きを変え、ニップローラーで巻取り張力を遮断した後に巻き取り、弛緩熱処理を行った。弛緩は上方のニップローラーと巻取り張力の遮断を行うニップローラーとの速度の差をつけて行った。
こうして得られた弛緩熱処理後の二軸配向PENフィルムを実施例4とした。
得られた実施例4のフィルムの特性評価結果を表2に示す。実施例フィルムのウェハ加工性については、フィルムの熱寸法変化、フィルムの厚みバラツキやフィルムの平面性等によるダイボンダー装置の誤動作による不良も起きず、良好なピックアップ操作ができた。また、粘着層塗設工程内および半導体ウェハ加工工程内を汚染することなく、さらに、テープ剥離ではフィルム破れがなく、半導体ウェハの製造における加工性は良好であった。
【実施例5】
実施例4においてポリマーFを使用した以外は、実施例4と同様な操作を繰り返し、厚み50μmの二軸配向PENフィルムを得た。このようにして得られた二軸配向PENフィルムを実施例5とした。
得られた実施例5のフィルムの特性評価結果を表2に示す。実施例フィルムのウェハ加工性については、フィルムの熱寸法変化、フィルムの厚みバラツキやフィルムの平面性等によるダイボンダー装置の誤動作による不良も起きず、良好なピックアップ操作ができた。また、粘着層塗設工程内および半導体ウェハ加工工程内を汚染することなく、さらに、テープ剥離ではフィルム破れがなく、半導体ウェハの製造における加工性は良好であった。
【実施例6】
実施例4において145℃で縦方向に3.3倍に延伸し、次いで140℃で横方向に3.3倍延伸した以外は、実施例4と同様な操作を繰り返し、厚み30μmの二軸配向PENフィルムを得た。このようにして得られた二軸配向PENフィルムを実施例6とした。
得られた実施例のフィルムの特性評価結果を表2に示す。実施例フィルムのウェハ加工性については、フィルムの熱寸法変化、フィルムの厚みバラツキやフィルムの平面性等によるダイボンダー装置の誤動作による不良も起きず、良好なピックアップ操作ができた。また、粘着層塗設工程内および半導体ウェハ加工工程内を汚染することなく、さらに、テープ剥離ではフィルム破れがなく、半導体ウェハの製造における加工性は良好であった。
【実施例7】
実施例4においてポリマーDを使用した以外は、実施例4と同様な操作を繰り返し、厚み50umの二軸配向PENフィルムを得た。このようにして得られた二軸配向PENフィルムを実施例7とした。
得られた実施例7のフィルムの特性評価結果を表2に示す。ウェハ加工性については、フィルムの熱寸法変化、フィルムの厚みバラツキやフィルムの平面性等によるダイボンダー装置の誤動作による不良も起きず、良好なピックアップ操作ができた。一方、フィルム表面へのオリゴマー析出による工程内汚染が発生した。
【実施例8】
実施例6において、フィルム中に含まれる不活性粒子の量を0.01重量%とし、さらに熱固定温度を233℃にした以外は、実施例6と同様な操作を繰り返し、厚み30μmの二軸配向PENフィルムを得た。このようにして得られた二軸配向PENフィルムを実施例8とした。
得られた実施例8のフィルムの特性評価結果を表2に示す。ウェハ加工性については、フィルムの熱寸法変化は小さいものの、縦方向および横方向の熱収縮率の差が所望の範囲を超えるため、半導体ウェハの製造における安定性に若干問題があった。
【実施例9】
実施例4において145℃で縦方向に2.7倍に延伸し、次いで140℃で横方向に2.7倍延伸した以外は、実施例4と同様な操作を繰り返し、厚み30μmの二軸配向PENフィルムを得た。このようにして得られた二軸配向PENフィルムを実施例9とした。
得られた実施例のフィルムの特性評価結果を表2に示す。ウェハ加工性については、フィルムの熱寸法変化は小さいものの、フィルム厚み方向の屈折率が高く、フィルムの切粉等による工程内汚染やテープ剥離の際のフィルム破れが発生した。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分としてなる二軸配向フィルムであって、200℃で10分間熱処理した際のフィルムの熱収縮率が、フィルムの製膜方向および幅方向のいずれも1.00%以下であることを特徴とする半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項2】
半導体ウェハ加工用ベースフィルムが、バックグラインドテープ用またはダイシングテープ用である請求項1記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項3】
フィルムの抽出オリゴマー量が0.8重量%以下であり、フィルムの厚み方向の屈折率が1.501以上1.515以下である請求項1記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項4】
フィルムの厚みのバラツキが15%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項5】
フィルムのヤング率が5400MPa以上6900MPa以下である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項6】
フィルムの少なくとも片面における中心線平均表面粗さが3nm以上80nm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項7】
フィルムの密度が1.356g/cm以上1.364g/cm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項8】
フィルムの平均厚みが9μm以上150μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項9】
フィルムの動摩擦係数が0.5以下である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項10】
200℃で10分間熱処理した際のフィルムの熱収縮率は、フィルムの製膜方向の熱収縮率と幅方向の熱収縮率との差の絶対値が0.60%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項11】
フィルムが2層以上の複数層からなる請求項1〜3のいずれかに記載の半導体ウェハ加工用ベースフィルム。
【請求項12】
バックグラインドテープ用ベースフィルムの片面に粘着剤層を有する請求項2に記載のバックグラインドテープ。
【請求項13】
請求項12記載のバックグラインドテープの粘着剤層の上にさらに離形フィルムを有するバックグラインドテープ複合体。
【請求項14】
ダイシングテープ用ベースフィルムの片面に粘着剤層を有する請求項2に記載のダイシングテープ。
【請求項15】
請求項14記載のダイシングテープの粘着剤層の上にさらに離形フィルムを有するダイシングテープ複合体。

【国際公開番号】WO2004/090962
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505286(P2005−505286)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004943
【国際出願日】平成16年4月6日(2004.4.6)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】