説明

半導体スイッチ素子用ドライバ回路および半導体スイッチ素子の制御方法

【課題】応答性、温度に対するロバスト性、ならびに、半導体スイッチ素子の最小ON時間および最小OFF時間に対するフレキシブル性に優れた半導体スイッチ素子用ドライバ回路および半導体スイッチ素子の制御方法を提供する。
【解決手段】半導体スイッチ素子用ドライバ回路101は、フリップフロップ素子9を含む論理回路からなり、外部からのON指令L1およびOFF指令L2に従いIGBT10の動作信号を生成するフリップフロップ回路6と、動作信号が半導体スイッチ素子9に関する最小ON時間および最小OFF時間の要求を満たすようにフリップフロップ素子9のセット/リセットを操作するマイコン1と、を備える。フリップフロップ回路6により、外部からのON/OFF指令に対して高応答で動作させ、マイコン1でフリップフリップ素子9のセット・リセットを制御することで、その出力信号をマスクし、最小ON/OFF時間を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応答性、温度に対するロバスト性、ならびに、半導体スイッチ素子の最小ON時間および最小OFF時間に対するフレキシブル性に優れた半導体スイッチ素子用ドライバ回路および半導体スイッチ素子の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体スイッチ素子のドライバ回路は、外部からのON/OFF指令に従い、応答性よく半導体スイッチ素子の動作信号を生成する。応答性の要求は数μsオーダである。さらに、半導体スイッチ素子のドライバ回路は、半導体スイッチ素子の最小ON時間および最小OFF時間を満足することが要求される。この最小ONが満足されない場合は、リンギングによる素子破壊が生じることがあり、また、この最小OFF時間が満足されない場合は、注入キャリアが十分に抜けきらず、不完全OFFとなる。
【0003】
この動作信号の最小ON/OFF時間を守るため、一般的にCR時定数のタイマ回路が用いられてきた。しかし、CR時定数のタイマ回路を用いた場合、温度によってCR素子の特性(定数)が変化するため、周囲温度の変化による定数のばらつきに対する安定性(温度に対するロバスト性)に劣る。また、タイマ時間の仕様を変えるには、CR素子を交換する必要があるため、様々な半導体スイッチ素子の最小ON/OFF時間に対応可能となるフレキシブル性に劣る。
【0004】
そこで、このタイマにマイクロプロセッサを用い、そのクロックにより時間を管理する方法が考えられる。マイクロプロセッサを用いれば、温度に対するロバスト性およびタイマ時間の仕様のフレキシブル性を改善できる。しかし、マイクロプロセッサのソフトウェア処理には数μsかかり、マイクロプロセッサを用いない場合と比較すると数十倍〜数百倍の時間を要する。これは、半導体スイッチ素子のドライバ回路への要求と同程度の時間であり、外部からのON/OFF指令に対する応答性の要求を満足できないおそれがある。
【0005】
また、従来、入力端子をセットリセットフリップフロップのセット端子(S)と、1チップ・マイクロプロセッサの入力端子とに接続し、1チップ・マイクロプロセッサの出力端子をセットリセットフリップフロップのリセット端子(R)に接続し、セットリセットフリップフロップのQ端子からの出力を出力信号としたチャタリング防止回路が知られている(特許文献1参照)。この回路では、1チップ・マイクロプロセッサは、入力端子からの信号がある一定時間連続してHighレベルであるとき、一時的に出力端子にLowレベル信号を出力するソフトウェアを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−143413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、CR時定数のタイマ回路を用いた場合、温度に対するロバスト性に劣り、また、様々な半導体スイッチ素子の最小ON/OFF時間に対応可能となるフレキシブル性に劣る問題点がある。
また、前記チャタリング防止回路の技術を応用した場合、1チップ・マイクロプロセッサは、入力信号が「一定時間」連続してHighレベルであるとき、一時的にLowレベル信号を出力する。このため、入力信号の変化に対し、出力信号の変化は、必然的に「一定時間」遅れることとなり、外部からのON/OFF指令に対する応答性の要求を満足しない問題点がある。
そこで、本発明の課題は、入出力応答性、温度のロバスト性、仕様のフレキシブル性の要求のいずれも満足する半導体スイッチ素子用ドライバ回路および半導体スイッチ素子の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フリップフロップ回路により、外部からのON/OFF指令に対して高応答で(応答性よく)動作させ、演算処理部でそのフリップフリップ回路に対し、セット・リセット信号を制御することで、フリップフロップ回路の信号をマスクし、最小のON/OFF時間を満足する。
半導体スイッチ用ドライバ回路は、外部からのON/OFF指令に従い、応答性よく半導体スイッチの動作信号を生成する。また、半導体スイッチのドライバは、最小ON時間、最小OFF時間を満足することが要求される。このゲート信号の最小ON/OFF時間を守るため、従来はCR時定数のタイマ回路を用いられてきたが、周囲温度の変化による定数のばらつきに対する安定性、および、様々な最小時間への対応といったフレキシブル性が劣る。そこで、このタイマに演算処理部(マイコン)を用い、そのクロックにより時間を管理する。演算処理部の演算時間による応答性の遅れは、フリップフロップ回路を組み合わせることで解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、応答性、温度に対するロバスト性、ならびに、半導体スイッチ素子の最小ON時間および最小OFF時間に対するフレキシブル性に優れた半導体スイッチ素子用ドライバ回路および半導体スイッチ素子の制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による第1実施形態の半導体スイッチ素子用ドライバ回路を示すブロック構成図である。
【図2】図1に示す半導体スイッチ素子用ドライバ回路の通常ON/OFF動作を示すタイムチャートである。
【図3】図1に示す半導体スイッチ素子用ドライバ回路の最小ON時間補償動作を示すタイムチャートである。
【図4】図1に示す半導体スイッチ素子用ドライバ回路の最小OFF時間補償動作を示すタイムチャートである。
【図5】本発明による第2実施形態の半導体スイッチ素子用ドライバ回路を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明による第1実施形態の半導体スイッチ素子用ドライバ回路101を示すブロック構成図である。
この半導体スイッチ素子用ドライバ回路101は、フリップフロップ回路6と、マイコン1とを備えている。
外部からのON/OFF指令は、演算処理部(マイコン1)およびフリップフロップ回路6によって処理され、半導体スイッチ素子(IGBT10)へ高応答で入力される。これにより、IGBT10のゲート電圧がON/OFFされ、IGBT10がON/OFFする。
【0012】
マイコン1は、割込みコントローラ2、CPU3、ハードウェアタイマ4およびI/Oポート5の機能を備えている。
本実施形態では、演算処理部としてマイコン(マイクロコンピュータ)1を用いているが、他のコンピュータおよび付属回路を用いて同様の回路を構成してもよい。また、半導体スイッチ素子としてIGBT10を用いるのが好適であるが、MOSFETなど、他の自己消弧形のスイッチング素子を用いることもできる。
【0013】
フリップフロップ回路6は、NOT回路15、AND回路7,8およびフリップフロップ素子9を備えている。
外部からのON/OFF指令は、2つに分岐され、一方は直接にAND回路7に入力され、他方はNOT回路15を経由して、AND回路8へ入力される。
NOT回路15は、ON/OFF指令の論理否定を取り、OFF指令L2として、AND回路8へ出力する。
AND回路7は、ON指令L1とI/Oポート5内のポートDO−1の信号L3との論理積を取り、フリップフロップ素子9のセット端子Sへ出力する。
AND回路8は、OFF指令L2とI/Oポート5内のポートDO−2の信号L4との論理積を取り、フリップフロップ素子9のリセット端子Rへ出力する。
フリップフロップ素子9は、入力端子としてセット端子Sおよびリセット端子Rを有し、出力端子としてQおよび ̄Qを有する一般的なセットリセットフリップフロップ(SRフリップフロップ)である。出力端子Qからの信号L5は、マイコン1の割込みコントローラ2へ出力されるとともに、信号L6として、IGBT10の制御に用いられる。
【0014】
〜通常ON/OFF動作〜
図2は、図1に示す半導体スイッチ素子用ドライバ回路101の通常ON/OFF動作を示すタイムチャートである(適宜図1参照)。通常ON/OFF動作とは、ON/OFF指令の周期が、IGBT10が要求する最小ON時間T2および最小OFF時間T3のいずれの条件も満たしているときの半導体スイッチ素子用ドライバ回路101の動作である。
【0015】
ON指令L1が入力されると(レベルがHighになると)(図2(1)参照)、信号L3はあらかじめHighとなっているので(図2(3)参照)、AND回路7の出力がHighになり、フリップフロップ素子9のセット端子Sへの入力がHighになる。他方、フリップフロップ素子9のリセット端子Rへの入力はLowであるので、フリップフロップ素子9のセット条件が成り立ち、出力端子Qからの信号L5がHighになる(図2(5)参照)。こうして、信号(ゲート信号)L6がHighになり(図2(10)参照)、IGBT10がONになる。
この動作では、マイコン1のソフトウェア動作を介さず、論理回路で処理を行っているため、外部からのON指令L1に対し、高応答で(実質的に遅延なしに)IGBT10が動作する。
【0016】
信号L5は、IGBT10のゲートのほか、マイコン1の割込みコントローラ2に入力されている。このため、信号L5がHighになり(図2(5)参照)、割込みコントローラ2内部のポートIC−1がHighとなると、マイコン1のハードウェア処理により、割込みコントローラ2からハードウェアタイマ4内部の第1タイマカウンタ21へ最小ON補償用タイマ動作スタート命令が出力される(図2(6)参照)。こうして、第1タイマカウンタ21は、最小ON時間T2のカウントを開始する。このカウント時間はマイコン1内部のクロック周期によって決まり、IGBT10から要求される応答性に対しては十分に小さい値である。
【0017】
最小ON補償用タイマ動作スタート命令を出力するのと同時に、割込みコントローラ2は、CPU3へ第1割込み命令を出力する。CPU3は、ソフトウェア処理により、I/Oポート5内のポートDO−1をLowとし、信号L3をOFFとする(図2(3)参照)。このとき信号L3がOFFになるタイミングは、信号L5の割込み入力に対し、CPU3によるソフトウェア処理に必要なT1時間分遅れる。
【0018】
ハードウェアタイマ4内部の第1タイマカウンタ21のカウントが、あらかじめソフトウェアで設定しておいた最小ON時間T2となると(図2(6)および図2(8)参照)、ハードウェア処理によって、第1タイマカウンタ21は、I/Oポート5内のポートDO−2の出力をHighとし、信号L4がONになる(図2(4)参照)。信号L4がONとなってはじめて、IGBT10はOFF動作スタンバイ状態(OFF指令L2がHighになったときOFFとなる状態)となる。換言すると、信号L4をONしない限りは、IGBT10がOFF動作とならないようマスクされた状態となる。
【0019】
その後、OFF指令L2が入力されると(Highになると)(図2(2)参照)、信号L4はすでにHighとなっているので(図2(4)参照)、AND回路8の出力がHighになる。こうして、リセット端子Rへの入力がHighになるので、フリップフロップ素子9のリセット条件が成り立ち、フリップフロップ素子9から出力される信号L5がLowとなる(図2(5)参照)。このため、信号L6がLowになり(図2(10)参照)、IGBT10がOFFになる。
この動作では、マイコン1のソフトウェア動作を介さず、論理回路で処理を行っているため、外部ON指令に対し、高応答で(実質的に遅延なしに)IGBT10が動作する。
【0020】
信号L5は、IGBT10のゲートのほか、マイコン1の割込みコントローラ2に入力されているため、割込みコントローラ2内部のポートIC−2がLowとなると、マイコン1のハードウェア処理により、ハードウェアタイマ4内部の第2タイマカウンタ22がカウントを開始する(図2(7)参照)。このカウント値はマイコン1内部のクロック周期によって決まり、IGBT10から要求される応答性に対しては十分に小さい値である。また、それと同時に第2割込み命令が、CPU3へ出力され、ソフトウェア処理により、CPU3は、I/Oポート5内のポートDO−2をLowとし、信号L4をOFFとする(図2(4)参照)。このとき信号L4がOFFになるタイミングは、信号L5の割込み入力に対し、CPU3のソフトウェアの処理に必要なT1時間遅れる。
【0021】
ハードウェアタイマ4内部の第2タイマカウンタ22のカウントが、あらかじめソフトウェアで設定しておいた最小OFF時間T3となると(図2(7)および図2(9)参照)、ハードウェア処理により、第2タイマカウンタ22は、I/Oポート5内のポートDO−1の出力をHighとし、信号L3をONとする(図2(3)参照)。信号L3がONとなってはじめて、IGBT10はON動作スタンバイ状態(ON指令L1がHighになったとき動作する状態)となる。換言すると、信号L3をONにしない限りは、IGBT10がON動作とならないようマスクされた状態となる。
【0022】
〜最小ON時間補償動作〜
図3は、図1に示す半導体スイッチ素子用ドライバ回路101の最小ON時間補償動作を示すタイムチャートである(適宜図1参照)。
最小ON時間補償動作とは、ON/OFF指令のON周期(時間)が、IGBT10が要求する最小ON時間T2よりも短い場合に、半導体スイッチ素子用ドライバ回路101が、IGBT10が要求する最小ON時間T2を満たすように、IGBT10を制御する動作信号(信号L6)を補償する動作である。
【0023】
通常ON/OFF動作のON動作の時と同様に、ON指令L1が入力されると(Highになると)(図3(1)参照)、信号L3があらかじめHighとなっているので(図3(3)参照)、AND回路7の出力がHighになる。リセット端子Rへの入力はLowであるので、セット端子Sへの入力がHighになることによって、フリップフロップ素子9のセット条件が成り立つ。こうして、フリップフロップ素子9から出力される信号L5がHighとなり(図3(5)参照)、信号L6がHighになってIGBT10をONにする(図3(10)参照)。
【0024】
同時に信号L5によって(図3(5)参照)、割込みコントローラ2内部のポートIC−1がHighとなり、ハードウェア処理により、割込みコントローラ2から最小ON補償用タイマ動作スタート命令が第1タイマカウンタ21へ出力される。こうして、ハードウェアタイマ4内部の第1タイマカウンタ21が最小ON時間T2のカウントを開始する(図3(6)参照)。
【0025】
最小ON補償用タイマ動作スタート命令を出力するのと同時に、割込みコントローラ2は、第1割込み命令をCPU3へ出力する。CPU3は、ソフトウェアの処理に必要なT1時間遅れて、I/Oポート5内のポートDO−1をLowとし、信号L3をOFFとする(図3(3)参照)。
【0026】
ここで、ON指令L1が最小ON時間T2より短く(図3(1)参照)、OFF指令L2が入力されたとしても(図3(2)参照)、第1タイマカウンタ21のカウント値が最小ON時間T2未満であれば(図3(8)参照)、I/Oポート5内のポートDO−2の出力がLowのままであるため(図3(4)参照)、AND回路8の出力はLowのままである。このため、フリップフロップ素子9のリセット条件が満足されず(図3(5)参照)、IGBT10はON状態を継続する(図3(10)参照)。
【0027】
第1タイマカウンタ21のカウント値が最小ON時間T2となると(図3(6)参照)、第1タイマカウンタ21は、ハードウェア処理により、I/Oポート5内のポートDO−2の出力をHighとし、信号L4をONとする(図3(4)参照)。こうして、AND回路8の出力がHighになり、リセット端子Rへの入力がHighになる。ここで初めて、フリップフロップ素子9のリセット条件が成り立ち(図3(5)参照)、IGBT10がOFFとなる(図3(10)参照)。
【0028】
このように、半導体スイッチ素子用ドライバ回路101によれば、最小ON時間T2の長さはソフトウェアで設定できるため、半導体スイッチ素子のさまざまな最小ON時間要求にフレキシブルに対応することが可能である。
また、CR時定数回路をタイマとして用いた場合と比較すると、最小ON時間T2の設定にマイコン1内部のクロック周期を用いるため、周囲温度のばらつきがあっても安定に動作する。
【0029】
〜最小OFF時間補償動作〜
図4は、図1に示す半導体スイッチ素子用ドライバ回路101の最小OFF時間補償動作を示すタイムチャートである(適宜図1参照)。
最小OFF時間補償動作とは、ON/OFF指令のOFF周期(時間)が、IGBT10が要求する最小OFF時間T3よりも短い場合に、半導体スイッチ素子用ドライバ回路101が、IGBT10が要求する最小OFF時間T3を満たすように、IGBT10を制御する動作信号(信号L6)を補償する動作である。
【0030】
通常ON/OFF動作時のOFF動作の時と同様に、OFF指令L2が入力されると(Highになると)(図4(2)参照)、信号L4があらかじめHighとなっているので(図4(4)参照)、AND回路8の出力がHighになり、リセット端子Rへの入力がHighになる。セット端子Sへの入力はLowであるので、フリップフロップ素子9のリセット条件が成り立ち、フリップフロップ素子9から出力される信号L5がLowとなり(図4(5)参照)、信号L6がLowとなって、IGBT10をOFFにする(図4(10)参照)。
【0031】
同時に信号L5によって(図4(5)参照)、割込みコントローラ2内部のポートIC−2がLowとなる。そして、ハードウェア処理によって、割込みコントローラ2は、最小OFF補償用タイマ動作スタート命令を第2タイマカウンタ22へ送出する。こうして、ハードウェアタイマ4内部の第2タイマカウンタ22が最小OFF時間T3のカウントを開始する(図4(7)参照)。
【0032】
最小OFF補償用タイマ動作スタート命令を出力するのと同時に、割込みコントローラ2は、第2割込み命令をCPU3へ出力する。CPU3は、ソフトウェアの処理に必要なT1時間遅れて、I/Oポート5内のポートDO−2をLowとし、信号L4をOFFとする(図4(4)参照)。
【0033】
ここで、OFF指令L2が最小OFF時間T3より短く(早く)(図4(2)参照)、ON指令L1が入力されたとしても(図4(1)参照)、第2タイマカウンタ22のカウント値が最小OFF時間T3未満であれば(図4(9)参照)、I/Oポート5内のポートDO−1の出力がLowのままであるため(図4(3)参照)、AND回路7の出力はLowのままである。このため、フリップフロップ素子9のセット条件が満足されず(図4(5)参照)、IGBT10はOFF状態を継続する(図4(10)参照)。
【0034】
第2タイマカウンタ22のカウント値が最小OFF時間T3となると(図4(7)参照)、第2タイマカウンタ22は、ハードウェア処理により、I/Oポート5内のポートDO−1の出力をHighとし、信号L3をONとする(図3(3)参照)。こうして、AND回路7の出力がHighになり、セット端子Sへの入力がHighになる。ここで初めて、フリップフロップ素子9のセット条件が成り立ち(図3(5)参照)、IGBT10がONとなる(図4(10)参照)。
【0035】
このように、半導体スイッチ素子用ドライバ回路101によれば、最小OFF時間T3の設定は、最小ON時間T2の設定と同様に、ソフトウェアによって設定できるため、さまざまな半導体スイッチの最小OFF時間要求にフレキシブルに対応することが可能である。
また、CR時定数回路をタイマとして用いた場合と比較すると、最小OFF時間T3の設定にマイコン1内部のクロック周期を用いるため、周囲温度のばらつきがあっても安定に動作する。
【0036】
(第2実施形態)
図5は、本発明による第2実施形態の半導体スイッチ素子用ドライバ回路102を示すブロック構成図である。
この半導体スイッチ素子用ドライバ回路102は、第1実施形態の半導体スイッチ素子用ドライバ回路101のマイコン1の代わりに、マイコン1bを備えた構成である。マイコン1bは、マイコン1の構成に加えて、ADコンバータ11を備えている。なお、内部メモリ14は、第1実施形態のマイコン1も備えているが、図1では特に図示していない。
【0037】
このように、マイコン1b内部にADコンバータ11を備え、ADコンバータ11のポートAN−1に温度センサ12を接続し、周囲温度のデータが得られるようにしてもよい。CPU3は、その周囲温度のデータを用いて、マイコン1b内で用いる各種の定数の補正を行う。この構成によれば、周囲温度のばらつきに対しても安定性をさらに高めることができる。
【0038】
また、入力電圧VpをADコンバータ11に取り込み、CPU3で監視することで、電圧低下時の保護にも対応することができる。例えば、図5に示すように、半導体スイッチ素子用ドライバ回路102の出力端にAND回路13を挿入し、フリップフロップ素子9からの出力を示す信号L6と、CPU3が異常を検出した際にLowレベルになる保護検出の信号L7とで論理積を取り、これをIGBT10へ出力する。この構成によれば、異常が検出された場合、IGBT10がOFFになり、過電流などから保護される。
マイコン1bの内部メモリ14を用いて、異常時の各数値の履歴を残すように構成してもよい。この構成によれば、IGBT10が故障したとき、この履歴を用いて、IGBT10の故障原因を追及することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 マイコン(第1実施形態)(演算処理部)
1b マイコン(第2実施形態)(演算処理部)
2 割込みコントローラ
3 CPU
4 ハードウェアタイマ
5 I/Oポート
6 フリップフロップ回路
7 AND回路
8 AND回路
9 フリップフロップ素子
10 IGBT
11 ADコンバータ
12 温度センサ
13 AND回路
14 内部メモリ
15 NOT回路
21 第1タイマカウンタ
22 第2タイマカウンタ
101 半導体スイッチ素子用ドライバ回路(第1実施形態)
102 半導体スイッチ素子用ドライバ回路(第2実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フリップフロップ素子を含む論理回路からなり、外部からのON指令およびOFF指令に従い半導体スイッチ素子の動作信号を生成するフリップフロップ回路と、
前記動作信号が前記半導体スイッチ素子の最小ON時間および最小OFF時間に関する要求を満たすように前記フリップフロップ素子のセット/リセットを操作する演算処理部と、
を備えたことを特徴とする半導体スイッチ素子用ドライバ回路。
【請求項2】
前記フリップフロップ素子は、セットリセットフリップフロップであることを特徴とする請求項1に記載の半導体スイッチ素子用ドライバ回路。
【請求項3】
前記演算処理部は、
前記ON指令の入力開始から前記最小ON時間までを計測する第1のタイマカウンタと、
前記最小ON時間未満では、前記OFF指令を受け付けないよう、第1のAND回路を介して第1のマスク信号を前記フリップフロップ素子のリセット端子に出力する第1のI/Oポートと、
前記OFF指令の入力開始から前記最小OFF時間までを計測する第2のタイマカウンタと、
前記最小OFF時間未満では、前記ON指令を受け付けないよう、第2のAND回路を介して第2のマスク信号を前記フリップフロップ素子のセット端子に出力する第2のI/Oポートと、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の半導体スイッチ素子用ドライバ回路。
【請求項4】
フリップフロップ素子を含む論理回路からなり、外部からのON/OFF指令に従い半導体スイッチ素子の動作信号を生成するフリップフロップ回路と、前記フリップフロップ素子のセット/リセットを操作する演算処理部と、を備えた半導体スイッチ素子の制御方法であって、
前記演算処理部が前記動作信号が前記半導体スイッチ素子の最小ON時間および最小OFF時間に関する要求を満たすように前記フリップフロップ素子のセット/リセットを操作する、
ことを特徴とする半導体スイッチ素子の制御方法。
【請求項5】
ON指令の入力開始から前記最小ON時間までを前記演算処理部の内部クロックで測定しておき、
前記最小ON時間未満では、前記OFF指令を受け付けないよう、AND回路で当該OFF指令と前記演算処理部からの第1のマスク信号との論理積を、前記フリップフロップ素子のリセット端子に入力し、
前記OFF指令の入力開始から前記最小OFF時間までを前記演算処理部の内部クロックで測定しておき、
前記最小OFF時間未満では、前記ON指令を受け付けないよう、AND回路で当該ON指令と前記演算処理部からの第2のマスク信号との論理積を、前記フリップフロップ素子のセット端子に入力する、
ことを特徴とする請求項4に記載の半導体スイッチ素子の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−199787(P2010−199787A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40399(P2009−40399)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】