説明

半導体デバイス用基板およびSOI基板

【課題】 裏面研削加工および裏面CMP処理が施されて製造される薄型半導体デバイスに用いられる半導体デバイス用基板であって、裏面研削を過不足なく行うことが可能であるとともに、研削加工の高速化を図ることができて、生産効率を向上させることができる半導体デバイス用基板を提供することである。
【解決手段】 半導体デバイス用基板10は、結晶性のシリコン基板11の内部に、構造変化層12が形成されたものである。この構造変化層12は、導電型領域を形成することがないイオンが注入されてなる層であって、シリコンとは異なる結晶構造に変化した層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに用いられる半導体デバイス用基板およびSOI基板に関し、特に薄型化された半導体デバイスに用いられる半導体デバイス用基板およびSOI基板に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、IC(Integrated Circuit)チップ用の半導体デバイスなどの薄型半導体デバイスは、半導体チップの薄型化を図るために、特許文献1に記載されるような半導体素子が形成されたシリコン(Si)基板やSOI(Silicon on Insulator)基板の非活性表面(裏面)が研削されて製造される。
【0003】
しかしながら、半導体素子が形成されたシリコン基板である半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏面を研削加工するとき、研削加工の終点を検出するのが困難であるため、研削が不足であったり進み過ぎたりするのを防止するために、研削速度を低下させる必要があり、研削加工の高速化を図ることができず、生産効率を向上させることができないという問題がある。
【0004】
また、半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏面を研削加工するとき、半導体デバイス用基板およびSOI基板の中央部よりも外周縁部において研削量が多くなって、半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏面の平坦性が悪くなる。そこで、裏面研削工程の後、半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏面の平坦性を精密に制御するために、裏面側からの化学的機械的研磨(CMP)が行われる。
【0005】
裏面側からのCMP処理が施される半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏側部分は、基板の構成材料のみからなる部分であるので、半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏側部分の全領域において研磨速度は同じである。そのため、CMP処理後の半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏面における平坦性は、裏面研削加工後の平坦性を維持することになり、基板の中央部よりも外周縁部における厚みが小さく(基板の裏面の平坦性が悪く)、製造される半導体デバイスの厚みを精度良く所望厚にすることができない。
【0006】
また、半導体デバイスとしては、半導体デバイス用基板およびSOI基板を貫通して設けられる貫通電極を有するものがある(特許文献2参照)。貫通電極を有する半導体デバイスは、以下のようにして製造される。
【0007】
まず、半導体デバイス用基板およびSOI基板の所定深さまで達する電極を形成した後、基板の裏面を研削加工する。このとき、研削加工の終点を検出するのが困難であるため、研削が不足であったり進み過ぎたりするのを防止するために、研削速度を低下させる必要がある。たとえば、電極(銅などによって構成される)が形成される半導体デバイス用基板およびSOI基板を、裏面側から高速で研削加工して研削が進み過ぎると、電極が研削されてしまう場合がある。このような場合、研削された電極の破片などが半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏面に付着してしまい、半導体素子にリーク電流が発生するという問題が生じる。また、裏面研削加工時には、半導体デバイス用基板およびSOI基板の中央部よりも外周縁部における研削量が多くなって、基板の裏面の平坦性が悪くなる。
【0008】
次に、半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏面の平坦性を精密に制御するために、裏面側からの化学的機械的研磨(CMP)を行う。このとき、裏面研削加工と同様に、CMP処理の終点を検出するのが困難であるため、研磨が不足であったり進み過ぎたりするのを防止するために、研磨速度を低下させる必要がある。
【0009】
また、裏面側からのCMP処理が施される半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏側部分は、基板の構成材料のみからなる部分であるので、基板の裏側部分の全領域において研磨速度は同じである。そのため、CMP処理後の半導体デバイス用基板およびSOI基板の裏面における平坦性は、裏面研削加工後の平坦性を維持することになり、基板の中央部よりも外周縁部における厚みが小さく(基板の裏面の平坦性が悪く)、製造される半導体デバイス用基板の厚みを精度良く所望厚にすることができない。
【0010】
次に、CMP処理後の半導体デバイス用基板およびSOI基板を裏面側からドライエッチングして、基板中に形成された電極を露出させ、基板を貫通する貫通電極を形成する。ここで、ドライエッチング処理に供せられる半導体デバイス用基板およびSOI基板は、裏面における中央部よりも外周縁部の研削量が多くされて、裏面の平坦性が悪いものであるので、裏面側からのドライエッチングが施されても、基板を貫通しない非貫通電極が存在してしまう。このような、非貫通電極が存在する半導体デバイス用基板およびSOI基板を用いて半導体デバイスを組み立てた場合、半導体素子を正常に動作させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−206431号公報
【特許文献2】特開2009−212438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、裏面研削加工および裏面CMP処理が施されて製造される薄型半導体デバイスに用いられる従来の半導体デバイス用基板およびSOI基板では、研削加工の終点を検出するのが困難であるため、研削が不足であったり進み過ぎたりするのを防止するために、研削速度を低下させる必要があり、研削加工の高速化を図ることができず、生産効率を向上させることができない。そして、従来の半導体デバイス用基板およびSOI基板を、貫通電極を有する半導体デバイスに用いた場合においては、基板の裏面側からの研削が進み過ぎてしまうと、研削された電極破片の付着によって、半導体素子にリーク電流が発生するという問題まで生じてしまう。
【0013】
また、従来の半導体デバイス用基板およびSOI基板では、裏面研削後の基板は、裏面における中央部よりも外周縁部の研削量が多くされて、裏面の平坦性が悪いものであるが、裏面側からのCMP処理が施されても平坦性が良好なものとはならない。そのため、半導体デバイスの厚みを精度良く所望厚にすることができない。そして、従来の半導体デバイス用基板およびSOI基板を、貫通電極を有する半導体デバイスに用いた場合においては、裏面の平坦性が悪い基板に対して、裏面側からのエッチングが施されても、基板を貫通しない非貫通電極が存在してしまい、半導体素子を正常に動作させることができない。
【0014】
したがって本発明の目的は、裏面研削加工および裏面CMP処理が施されて製造される薄型半導体デバイスに用いられる半導体デバイス用基板およびSOI基板であって、裏面研削が不足であったり進み過ぎたりするのを防止することができる、すなわち、裏面研削を過不足なく行うことが可能であるとともに、研削加工の高速化を図ることができて、生産効率を向上させることができる半導体デバイス用基板およびSOI基板を提供することであり、基板の裏面を良好な平坦性を有するように加工することができる半導体デバイス用基板およびSOI基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、結晶性材料で構成される基板の内部に、導電型領域を形成することがないイオンが注入されてなる層であって、前記結晶性材料とは異なる結晶構造に変化した構造変化層が形成されることを特徴とする半導体デバイス用基板である。
【0016】
また本発明は、基板がシリコン基板であり、
構造変化層は、炭化ケイ素、窒化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる材料からなることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、構造変化層が、基板の表面から5〜50μmの深さの領域内に形成されることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、基板の厚み方向のイオン濃度分布において、構造変化層に由来するイオン濃度のピークを、少なくとも1つ有することを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記半導体デバイス用基板の内部に、酸化ケイ素からなる結晶性絶縁層が形成されることを特徴とするSOI基板である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、半導体デバイス用基板は、結晶性材料で構成される基板の内部に、導電型領域を形成することがないイオンが注入されてなる層であって、前記結晶性材料とは異なる結晶構造に変化した構造変化層が形成されている。半導体デバイス用基板を用いて薄型化された半導体デバイスを製造するとき、半導体素子が形成された半導体デバイス用基板における、半導体素子が形成される面とは反対側の面である裏面を研削加工する。ここで、半導体デバイス用基板は、結晶性材料で構成される基板の内部に、基板を構成する結晶性材料とは異なる結晶構造に変化した構造変化層が形成されたものであるので、半導体デバイス用基板の裏面側からの研削が進行すると、構造変化層の一部が露出するようになる。
【0021】
この構造変化層は、結晶構造が変化した層であるので、半導体デバイス用基板を構成する材料とは研削速度が異なる。そのため、半導体デバイス用基板では、裏面側からの研削が進行して構造変化層の一部が露出したときに、半導体デバイス用基板に対する研削速度を変化させることができる。これによって、半導体デバイス用基板は、研削加工時に研削速度が変化する構造変化層の露出に基づいて、研削加工の終点検出が可能な基板となる。したがって、半導体デバイス用基板は、裏面研削を過不足なく行うことが可能であるとともに、研削加工の高速化を図ることができて、半導体デバイス用基板を用いた半導体デバイスの生産効率を向上させることができる。
【0022】
また、半導体デバイス用基板を用いて薄型化された半導体デバイスを製造するとき、半導体デバイス用基板の裏面側からの研削加工の後工程として、基板の裏面側から化学的機械的研磨(CMP)を行う。CMP処理に供せられる半導体デバイス用基板の裏面は、半導体デバイス用基板の構成材料からなる領域に対して一部の領域に構造変化層が露出した面となっている。半導体デバイス用基板の裏面の一部の領域に露出した構造変化層は、結晶構造が変化した層であるので、半導体デバイス用基板の構成材料とはCMP処理における研磨速度が異なる。
【0023】
そのため、半導体デバイス用基板では、CMP処理において、基板の構成材料に対する研磨速度が速く、かつ、構造変化層の構成材料に対する研磨速度が遅い条件、すなわち、構造変化層の構成材料に対する基板の構成材料の研磨速度の選択比が1よりも大きい条件で、半導体デバイス用基板の裏面側からのCMP処理を行うことによって、半導体デバイス用基板の裏面を全領域にわたって構造変化層が露出した面とすることができる。これによって、半導体デバイス用基板では、裏面研削加工において中央部よりも外周縁部の研削量が多くされた場合であっても、CMP処理によって裏面の平坦性が良好なものとなる。
【0024】
また、半導体デバイス用基板では、CMP処理時において、基板の裏面の全領域にわたって構造変化層が露出したときに、半導体デバイス用基板に対する研磨速度を大きく変化させることができる。これによって、半導体デバイス用基板は、CMP処理時に研磨速度が変化する構造変化層の全領域にわたる露出に基づいて、CMP処理の終点検出が可能な基板となる。したがって、半導体デバイス用基板は、裏面研磨を過不足なく行うことが可能であるとともに、CMP処理の高速化を図ることができる。
【0025】
また本発明によれば、半導体デバイス用基板は、シリコン基板の内部に、炭化ケイ素、窒化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる材料からなる構造変化層が形成されたものである。炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素からなる構造変化層は、シリコン基板を構成するシリコンとは研削速度およびCMP処理における研磨速度が異なる。そのため、半導体デバイス用基板は、研削加工時に研削速度が変化する構造変化層の一部の露出に基づいて、研削加工の終点検出が可能な基板となり、CMP処理時に研磨速度が変化する構造変化層の全領域にわたる露出に基づいて、CMP処理の終点検出が可能な基板となる。
【0026】
また本発明によれば、半導体デバイス用基板は、構造変化層が基板の表面から5〜50μmの深さの領域内に形成される。半導体デバイス用基板は、結晶構造が変化した構造変化層が形成されているので、裏面側からの研削加工およびCMP処理において、構造変化層の露出に基づいて終点検出が可能である。すなわち、半導体デバイス用基板を用いて製造される半導体デバイスの厚みは、半導体デバイス用基板の表面からの構造変化層の深さ位置によって規定される。そのため、構造変化層が基板の表面から5〜50μmの深さの領域内に形成される半導体デバイス用基板は、充分に薄型化された半導体デバイスを作製可能なものとなる。
【0027】
また本発明によれば、半導体デバイス用基板は、基板の厚み方向のイオン濃度分布において、構造変化層に由来するイオン濃度のピークを、少なくとも1つ有する。このように、基板の厚み方向にイオン濃度のピークを有する半導体デバイス用基板は、基板の構成材料に対して結晶構造が確実に変化した構造変化層を有するものとなる。
【0028】
また本発明によれば、SOI基板は、構造変化層を有する半導体デバイス用基板の内部に、酸化ケイ素からなる結晶性絶縁層が形成される基板である。SOI基板を用いて薄型化された半導体デバイスを製造するとき、半導体素子が形成されたSOI基板における、半導体素子が形成される面とは反対側の面である裏面を研削加工およびCMP処理する。ここで、SOI基板は、構造変化層を有する半導体デバイス用基板の内部に結晶性絶縁層が形成される基板であるので、裏面側からの研削が進行して構造変化層の一部が露出したときに、SOI基板に対する研削速度を変化させることができて、研削加工の終点検出が可能な基板となる。したがって、SOI基板は、裏面研削を過不足なく行うことが可能であるとともに、研削加工の高速化を図ることができて、SOI基板を用いた半導体デバイスの生産効率を向上させることができる。
【0029】
また、SOI基板は、構造変化層を有する半導体デバイス用基板の内部に結晶性絶縁層が形成される基板であるので、構造変化層の構成材料に対する基板の構成材料の研磨速度の選択比が1よりも大きい条件で、SOI基板の裏面側からのCMP処理を行うことによって、SOI基板の裏面を全領域にわたって構造変化層が露出した面とすることができる。これによって、SOI基板では、裏面研削加工において中央部よりも外周縁部の研削量が多くされた場合であっても、CMP処理によって裏面の平坦性が良好なものとなる。
【0030】
また、SOI基板は、裏面側からのCMP処理が進行して構造変化層の全領域が露出したときに、SOI基板に対する研磨速度を大きく変化させることができて、CMP処理の終点検出が可能な基板となる。したがって、SOI基板は、裏面研磨を過不足なく行うことが可能であるとともに、CMP処理の高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の一形態に係る半導体デバイス用基板10の構成を示す図である。
【図2】半導体デバイス用基板10の厚み方向におけるイオン濃度分布の概略を示す図である。
【図3】半導体デバイス用基板10を用いて半導体デバイスを作製するときの手順を説明する図である。
【図4】半導体デバイス用基板10を用いて貫通電極を有する半導体デバイスを作製するときの手順を説明する図である。
【図5】本発明の実施の一形態に係るSOI基板20の構成を示す図である。
【図6】SOI基板20の厚み方向におけるイオン濃度分布の概略を示す図である。
【図7】SOI基板20を用いて半導体デバイスを作製するときの手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(半導体デバイス用基板)
図1は、本発明の実施の一形態に係る半導体デバイス用基板10の構成を示す図である。また、図2は、半導体デバイス用基板10の厚み方向におけるイオン濃度分布の概略を示す図である。本実施の形態の半導体デバイス用基板10は、裏面側からの研削加工および化学的機械的研磨(CMP)が施されて製造される薄型化された半導体デバイスに用いられる基板である。
【0033】
半導体デバイス用基板10は、結晶性材料で構成される基板11の内部に、導電型領域を形成することがないイオンが注入されてなる層であって、前記結晶性材料とは異なる結晶構造に変化した構造変化層12が形成されている。基板11としては、シリコン基板、ガリウム・砒素化合物半導体基板などを挙げることができるが、本実施の形態ではシリコン基板である。以下、基板11をシリコン基板11と称す。
【0034】
半導体デバイス用基板10における構造変化層12は、シリコン基板11の厚み方向一表面から、導電型領域を形成することがないイオン(以下、「構造変化層形成イオン」と称す)が注入されることによって形成される。このとき、シリコン基板11の全面にわたって構造変化層12が形成されるようにイオン注入される。シリコン基板11に対するイオン注入は、この分野で常用される高圧イオン注入装置を用いて実施することができる。
【0035】
ここで、本実施形態におけるイオン注入とは、構造変化層形成イオンをシリコン基板11内部の予め定める領域に注入するものであり、シリコン基板11中に導電型領域を形成する、ホウ素などのP型不純物、リン、砒素、アンチモンなどのN型不純物を注入して不純物拡散層を形成する、いわゆる「ドーピング」とは異なる。シリコン基板11の内部に注入される構造変化層形成イオンとしては、炭素イオン、窒素イオンおよび酸素イオンなどを挙げることができる。
【0036】
シリコン基板11内部にイオンが注入されて構造変化層12が形成される半導体デバイス用基板10は、注入されるイオン種に応じて機能付与された基板となる。たとえば、前述した炭素イオン、窒素イオンおよび酸素イオンから選ばれるイオンが注入されて形成された構造変化層12を有する半導体デバイス用基板10は、詳細は後述するが、構造変化層12で研削速度および研磨速度が変化する機能が付与された基板となる。また、シリコン基板11内部に注入するイオン種を適宜選択して、半導体デバイス用基板10が裏面研削されて構造変化層12の全面が露出状態となったときに、構造変化層12における他の基板との接着性が良好となる機能、良熱伝導性の機能が付与された半導体デバイス用基板10とすることもできる。
【0037】
半導体デバイス用基板10は、シリコン基板11内部に炭素イオンが注入された場合には、炭化ケイ素からなる構造変化層12が形成されたものとなり、窒素イオンが注入された場合には、窒化ケイ素からなる構造変化層12が形成されたものとなり、酸素イオンが注入された場合には、酸化ケイ素からなる構造変化層12が形成されたものとなる。
【0038】
このように、半導体デバイス用基板10は、シリコン基板11内部にイオンが注入されることによって、イオン注入面から所定の深さ位置に、シリコン結晶に対して結晶構造が変化した構造変化層12が形成されたものである。構造変化層12が形成された半導体デバイス用基板10は、図2に示すように、シリコン基板11の厚み方向のイオン濃度分布42において、構造変化層12に由来するイオン濃度のピーク61を有する。なお、半導体デバイス用基板10における前記イオン濃度のピーク61の数は、シリコン基板11内部に形成される構造変化層12の層数に応じて出現する。シリコン基板11の厚み方向におけるイオン濃度分布42は、たとえば、ラマン分光法を用いて測定することができる。
【0039】
また、シリコン基板11に対するイオン注入後に、窒素やアルゴンなどの不活性ガス中で150〜200℃程度の高温処理(アニール処理)を施すことによって、アニール処理前のイオン濃度分布43に対して、シリコン基板11の厚み方向におけるイオン濃度分布42がシャープな半導体デバイス用基板10とすることができる。
【0040】
図3は、半導体デバイス用基板10を用いて半導体デバイスを作製するときの手順を説明する図である。半導体デバイス用基板10を用いて薄型化された半導体デバイスを製造するとき、図3(a)に示すように、半導体デバイス用基板10の厚み方向一表面、すなわち、シリコン基板11における厚み方向一表面(イオン注入面)に対して、公知の薄膜形成処理、酸化処理、ドーピング処理などを行って、半導体デバイス用基板10に半導体素子31を形成する。
【0041】
次に、図3(b)に示すように、半導体素子31が形成された半導体デバイス用基板10における、半導体素子31が形成される面とは反対側の面である裏面を研削加工する。半導体デバイス用基板10の裏面側からの研削加工は、この分野で常用される研削装置を用いて実施することができる。
【0042】
半導体デバイス用基板10を裏面研削加工するとき、半導体デバイス用基板10の裏面中央部よりも外周縁部における研削量が多い状態で研削が進行する。ここで、本実施の形態に係る半導体デバイス用基板10は、結晶性のシリコン基板11内部に、シリコンとは異なる結晶構造に変化した構造変化層12が形成されたものであるので、裏面研削加工が進行すると、構造変化層12の一部の領域部分12aが露出するようになる。
【0043】
この構造変化層12は、シリコン基板11を構成するシリコンとは異なる結晶構造に変化した層であるので、半導体デバイス用基板10のシリコン基板11を構成するシリコンとは研削速度が異なる。そのため、半導体デバイス用基板10では、裏面側からの研削が進行して構造変化層12の一部の領域部分12aが露出したときに、半導体デバイス用基板10に対する研削速度を変化させることができる。具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素および酸化ケイ素のいずれか1つからなる構造変化層12は、シリコン基板11を構成するシリコンよりも高い硬さを有する層であるので、裏面研削加工が進行して、構造変化層12の一部の領域部分12aが露出したときに、半導体デバイス用基板10に対する研削速度は低下する。
【0044】
このように、半導体デバイス用基板10では、裏面側からの研削が進行して構造変化層12の一部の領域部分12aが露出したときに、半導体デバイス用基板10に対する研削速度を変化させることができるので、半導体デバイス用基板10は、研削加工時に研削速度が変化する構造変化層12の露出に基づいて、研削加工の終点検出が可能な基板となる。したがって、半導体デバイス用基板10は、裏面研削を過不足なく行うことが可能であるとともに、研削加工の高速化を図ることができて、半導体デバイス用基板10を用いた半導体デバイスの生産効率を向上させることができる。
【0045】
なお、結晶構造の違いに基づいた研削速度の変化を検出する方法としては、たとえば、研削装置の研削駆動源における駆動トルクの変化量を、電気的、磁気的に検出する方法を挙げることができる。また、赤外光線などの分光反射率を測定することによって、シリコン基板11を構成するシリコンと構造変化層12の構成材料との結晶構造の違いを検知し、その検知結果に基づいて、研削速度の変化を検出するようにしてもよい。また、超音波の伝播時間を測定することによって、シリコン基板11を構成するシリコンと構造変化層12の構成材料との結晶構造の違いを検知し、その検知結果に基づいて、研削速度の変化を検出するようにしてもよい。
【0046】
次に、図3(c)に示すように、半導体デバイス用基板10の裏面側からの研削加工の後工程として、基板の裏面側から化学的機械的研磨(CMP)を行う。半導体デバイス用基板10の裏面側からのCMP処理は、この分野で常用される化学的機械的研磨装置、研磨液を用いて実施することができる。
【0047】
CMP処理に供せられる半導体デバイス用基板10の裏面は、シリコン基板11を構成するシリコンからなる領域に対して構造変化層12の一部の領域部分12aが露出した面となっている。半導体デバイス用基板10の裏面の一部の領域に露出した構造変化層12は、結晶構造が変化した層であるので、シリコン基板11を構成するシリコンとはCMP処理における研磨速度が異なる。
【0048】
そのため、半導体デバイス用基板10では、CMP処理において、シリコン基板11を構成するシリコンに対する研磨速度が速く、かつ、構造変化層12の構成材料(炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素)に対する研磨速度が遅い条件、すなわち、構造変化層12の構成材料に対するシリコンの研磨速度の選択比(シリコン/(構造変化層12の構成材料))が1よりも大きい条件で、半導体デバイス用基板10の裏面側からのCMP処理を行うことによって、半導体デバイス用基板10の裏面を全領域にわたって構造変化層12が露出した面とすることができる。このように、裏面の全領域にわたって構造変化層12が露出された半導体デバイス用基板10は、裏面側からのCMP処理が継続して行われることによって、裏面の平坦性が良好なものとなる。
【0049】
なお、構造変化層12の構成材料に対するシリコンの研磨速度の選択比が1よりも大きい条件は、CMP処理時に使用する研磨液の種類を適宜選択することによって設定することができる。
【0050】
また、半導体デバイス用基板10では、CMP処理時において、基板の裏面の全領域にわたって構造変化層12が露出したときに、半導体デバイス用基板10に対する研磨速度を大きく変化させることができる。これによって、半導体デバイス用基板10は、CMP処理時に研磨速度が変化する構造変化層12の全領域にわたる露出に基づいて、CMP処理の終点検出が可能な基板となる。したがって、半導体デバイス用基板10は、裏面研磨を過不足なく行うことが可能であるとともに、CMP処理の高速化を図ることができる。
【0051】
また、半導体デバイス用基板10は、構造変化層12がシリコン基板11の厚み方向一表面(イオン注入面)から5〜50μmの深さの領域内に形成されるのが好ましい。半導体デバイス用基板10は、結晶構造が変化した構造変化層12が形成されているので、裏面側からの研削加工およびCMP処理において、構造変化層12の露出に基づいて終点検出が可能である。すなわち、半導体デバイス用基板10を用いて製造される半導体デバイスの厚みは、半導体デバイス用基板10の表面からの構造変化層12の深さ位置によって規定される。そのため、構造変化層12がシリコン基板11の厚み方向一表面(イオン注入面)から5〜50μmの深さの領域内に形成される半導体デバイス用基板10は、充分に薄型化された半導体デバイスを作製可能なものとなる。なお、半導体デバイス用基板10において、シリコン基板11内部に形成される構造変化層12の層厚は、0.1〜2.0μm程度である。
【0052】
以上のように、半導体素子31が形成され、裏面側からの研削加工およびCMP処理が施された半導体デバイス用基板10を用いることによって、薄型化された半導体デバイスを製造することができる。
【0053】
図4は、半導体デバイス用基板10を用いて貫通電極を有する半導体デバイスを作製するときの手順を説明する図である。
【0054】
半導体デバイス用基板10を用いて貫通電極を有する半導体デバイスを製造するとき、図4(a)に示すように、半導体デバイス用基板10の厚み方向一表面、すなわち、シリコン基板11における厚み方向一表面(イオン注入面)に対して、公知の薄膜形成処理、酸化処理、ドーピング処理などを行って、半導体デバイス用基板10に半導体素子32を形成する。このとき、半導体デバイス用基板10におけるシリコン基板11の所定深さまで達する電極33を形成する。電極形成方法としては、この分野で常用される電極形成方法を適用することができる。
【0055】
次に、図4(b)に示すように、半導体素子32が形成された半導体デバイス用基板10における、半導体素子32が形成される面とは反対側の面である裏面を研削加工する。半導体デバイス用基板10の裏面側からの研削加工は、この分野で常用される研削装置を用いて実施することができる。
【0056】
半導体デバイス用基板10を裏面研削加工するとき、半導体デバイス用基板10の裏面中央部よりも外周縁部における研削量が多い状態で研削が進行する。ここで、本実施の形態に係る半導体デバイス用基板10は、結晶性のシリコン基板11内部に、シリコンとは異なる結晶構造に変化した構造変化層12が形成されたものであるので、裏面研削加工が進行すると、構造変化層12の一部の領域部分12aが露出するようになる。
【0057】
この構造変化層12は、結晶構造が変化した層であるので、半導体デバイス用基板10のシリコン基板11を構成するシリコンとは研削速度が異なる。そのため、半導体デバイス用基板10では、裏面側からの研削が進行して構造変化層12の一部の領域部分12aが露出したときに、半導体デバイス用基板10に対する研削速度を変化させることができる。具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素および酸化ケイ素のいずれか1つからなる構造変化層12は、シリコン基板11を構成するシリコンよりも高い硬さを有する層であるので、裏面研削加工が進行して、構造変化層12の一部の領域部分12aが露出したときに、半導体デバイス用基板10に対する研削速度は低下する。
【0058】
このように、半導体デバイス用基板10では、裏面側からの研削が進行して構造変化層12の一部の領域部分12aが露出したときに、半導体デバイス用基板10に対する研削速度を変化させることができるので、半導体デバイス用基板10は、研削加工時に研削速度が変化する構造変化層12の露出に基づいて、研削加工の終点検出が可能な基板となる。したがって、半導体デバイス用基板10は、裏面研削を過不足なく行うことが可能であるとともに、研削加工の高速化を図ることができて、半導体デバイス用基板10を用いた貫通電極を有する半導体デバイスの生産効率を向上させることができる。
【0059】
また、半導体デバイス用基板10は、構造変化層12の露出に基づいて研削加工の終点検出が可能な基板であり、裏面研削が進み過ぎるのを防止することができるので、シリコン基板11内部に形成された電極33の一部が研削されてしまうのを防止することができる。そのため、研削による電極破片のシリコン基板11への付着を防止することができるので、半導体素子32にリーク電流が発生するのを防止することができる。
【0060】
次に、図4(c)に示すように、半導体デバイス用基板10の裏面側からの研削加工の後工程として、基板の裏面側からCMP処理を行う。半導体デバイス用基板10の裏面側からのCMP処理は、この分野で常用される化学的機械的研磨装置、研磨液を用いて実施することができる。
【0061】
CMP処理に供せられる半導体デバイス用基板10の裏面は、シリコン基板11を構成するシリコンからなる領域に対して構造変化層12の一部の領域部分12aが露出した面となっている。半導体デバイス用基板10の裏面の一部の領域に露出した構造変化層12は、結晶構造が変化した層であるので、シリコン基板11を構成するシリコンとはCMP処理における研磨速度が異なる。
【0062】
そのため、半導体デバイス用基板10では、CMP処理において、シリコン基板11を構成するシリコンに対する研磨速度が速く、かつ、構造変化層12の構成材料(炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素)に対する研磨速度が遅い条件、すなわち、構造変化層12の構成材料に対するシリコンの研磨速度の選択比(シリコン/(構造変化層12の構成材料))が1よりも大きい条件で、半導体デバイス用基板10の裏面側からのCMP処理を行うことによって、半導体デバイス用基板10の裏面を全領域にわたって構造変化層12が露出した面とすることができる。これによって、半導体デバイス用基板10では、裏面研削加工において中央部よりも外周縁部の研削量が多くされた場合であっても、CMP処理によって裏面の平坦性が良好なものとなる。
【0063】
また、半導体デバイス用基板10では、CMP処理時において、基板の裏面の全領域にわたって構造変化層12が露出したときに、半導体デバイス用基板10に対する研磨速度を大きく変化させることができる。これによって、半導体デバイス用基板10は、CMP処理時に研磨速度が変化する構造変化層12の全領域にわたる露出に基づいて、CMP処理の終点検出が可能な基板となる。したがって、半導体デバイス用基板10は、裏面研磨を過不足なく行うことが可能であるとともに、CMP処理の高速化を図ることができる。
【0064】
次に、図4(d)に示すように、半導体デバイス用基板10を裏面側からエッチングして、電極33を露出させ、シリコン基板11を貫通する貫通電極34を形成する。エッチング工程におけるエッチング方法としては、この分野で常用されるドライエッチング装置を用いたドライエッチング方法を適用することができる。
【0065】
ここで、半導体デバイス用基板10を用いて半導体デバイスを製造する場合、裏面CMP処理で裏面の平坦性が良好にされた半導体デバイス用基板10に対して、裏面側からエッチングして貫通電極34を形成することができるので、シリコン基板11を貫通しない非貫通電極が形成されるのを防止することができ、これによって、半導体素子32が正常に動作する半導体デバイスを製造することができる。
【0066】
以上のように、半導体素子32が形成され、裏面側からの研削加工およびCMP処理が施され、さらに、エッチング処理が施されて貫通電極34が形成されてなる半導体デバイス用基板10を用いることによって、貫通電極34を有する薄型化された半導体デバイスを製造することができる。
【0067】
(SOI基板)
図5は、本発明の実施の一形態に係るSOI基板20の構成を示す図である。また、図6は、SOI基板20の厚み方向におけるイオン濃度分布の概略を示す図である。SOI(Silicon on Insulator)基板20は、構造変化層12を有する半導体デバイス用基板10の内部に、酸化ケイ素からなる結晶性絶縁層21が形成される基板である。
【0068】
SOI基板20における結晶性絶縁層21は、半導体デバイス用基板10内部に、酸素イオンが注入されることによって形成される。SOI基板20における半導体デバイス用基板10に対するイオン注入は、シリコン基板11内部に構造変化層12を形成する場合と同様に、高圧イオン注入装置を用いて実施することができる。また、SOI基板20における半導体デバイス用基板10に対するイオン注入は、構造変化層12を形成する場合と同じシリコン基板11の厚み方向一表面(イオン注入面)から行う。
【0069】
そして、SOI基板20の結晶性絶縁層21は、半導体デバイス用基板10内部において、構造変化層12よりもシリコン基板11のイオン注入面から浅い領域内に形成されている。本実施の形態におけるSOI基板20では、半導体デバイス用基板10内部において、結晶性絶縁層21は、シリコン基板11のイオン注入面から1〜2μmの深さの領域内に形成され、構造変化層12は、シリコン基板11のイオン注入面から5〜50μmの深さの領域内に形成されている。なお、SOI基板20において、半導体デバイス用基板10のシリコン基板11内部に形成される結晶性絶縁層21の層厚は、1〜2μm程度であり、構造変化層12の層厚は、0.1〜2.0μm程度である。
【0070】
また、SOI基板20では、半導体デバイス用基板10内部に酸素イオンを注入して結晶性絶縁層21を形成した後に、半導体デバイス用基板10におけるシリコン基板11のイオン注入面上にシリコンからなる薄膜をエピタキシャル成長させることによって、結晶性絶縁層21および構造変化層12の、SOI基板20全体における表面、すなわち、エピタキシャル成長させて形成されるシリコン薄膜表面からの形成位置を調整することができる。
【0071】
以上のように、SOI基板20は、構造変化層12を有する半導体デバイス用基板10の内部に、酸化ケイ素からなる結晶性絶縁層21が形成されたものである。すなわち、SOI基板20は、半導体デバイス用基板10を構成するシリコン基板11の内部に、結晶性絶縁層21および構造変化層12が形成されたものであり、図6に示すように、シリコン基板11の厚み方向のイオン濃度分布において、結晶性絶縁層21に由来するイオン濃度のピーク51、および、構造変化層12に由来するイオン濃度のピーク61を有する。なお、SOI基板20における前記イオン濃度のピークの数は、シリコン基板11内部に形成される結晶性絶縁層21および構造変化層12の層数に応じて出現する。
【0072】
また、半導体デバイス用基板10に対する酸素イオン注入後に、窒素やアルゴンなどの不活性ガス中でアニール処理を施すことによって、結晶性絶縁層21に由来するイオン濃度分布がシャープなSOI基板20とすることができる。
【0073】
図7は、SOI基板20を用いて半導体デバイスを作製するときの手順を説明する図である。SOI基板20を用いて薄型化された半導体デバイスを製造するとき、図7(a)に示すように、SOI基板20の厚み方向一表面、すなわち、半導体デバイス用基板10のシリコン基板11における厚み方向一表面(イオン注入面)に対して、公知の薄膜形成処理、酸化処理、ドーピング処理などを行って、SOI基板20に半導体素子41を形成する。
【0074】
次に、図7(b)に示すように、半導体素子41が形成されたSOI基板20における、半導体素子41が形成される面とは反対側の面である裏面を研削加工する。SOI基板20の裏面側からの研削加工は、この分野で常用される研削装置を用いて実施することができる。
【0075】
SOI基板20を裏面研削加工するとき、SOI基板20の裏面中央部よりも外周縁部における研削量が多い状態で研削が進行する。ここで、本実施の形態に係るSOI基板20は、結晶性のシリコン基板11の内部に結晶構造が変化した構造変化層12が形成されたものであるので、裏面研削加工が進行すると、構造変化層12の一部の領域部分12aが露出するようになる。
【0076】
この構造変化層12は、結晶構造が変化した層であるので、SOI基板20のシリコン基板11を構成するシリコンとは研削速度が異なる。そのため、SOI基板20では、裏面側からの研削が進行して構造変化層12の一部の領域部分12aが露出したときに、SOI基板20に対する研削速度を変化させることができる。具体的には、炭化ケイ素、窒化ケイ素および酸化ケイ素のいずれか1つからなる構造変化層12は、シリコン基板11を構成するシリコンよりも高い硬さを有する層であるので、裏面研削加工が進行して、構造変化層12の一部の領域部分12aが露出したときに、SOI基板20に対する研削速度は低下する。
【0077】
このように、SOI基板20では、裏面側からの研削が進行して構造変化層12の一部の領域部分12aが露出したときに、SOI基板20に対する研削速度を変化させることができるので、SOI基板20は、研削加工時に研削速度が変化する構造変化層12の露出に基づいて、研削加工の終点検出が可能な基板となる。したがって、SOI基板20は、裏面研削を過不足なく行うことが可能であるとともに、研削加工の高速化を図ることができて、SOI基板20を用いた半導体デバイスの生産効率を向上させることができる。
【0078】
次に、図7(c)に示すように、SOI基板20の裏面側からの研削加工の後工程として、基板の裏面側からCMP処理を行う。SOI基板20の裏面側からのCMP処理は、この分野で常用される化学的機械的研磨装置、研磨液を用いて実施することができる。
【0079】
CMP処理に供せられるSOI基板20の裏面は、シリコン基板11を構成するシリコンからなる領域に対して構造変化層12の一部の領域部分12aが露出した面となっている。SOI基板20の裏面の一部の領域に露出した構造変化層12は、結晶構造が変化した層であるので、シリコン基板11を構成するシリコンとはCMP処理における研磨速度が異なる。
【0080】
そのため、SOI基板20では、CMP処理において、シリコン基板11を構成するシリコンに対する研磨速度が速く、かつ、構造変化層12の構成材料(炭化ケイ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素)に対する研磨速度が遅い条件、すなわち、構造変化層12の構成材料に対するシリコンの研磨速度の選択比(シリコン/(構造変化層12の構成材料))が1よりも大きい条件で、SOI基板20の裏面側からのCMP処理を行うことによって、SOI基板20の裏面を全領域にわたって構造変化層12が露出した面とすることができる。これによって、SOI基板20では、裏面研削加工において中央部よりも外周縁部の研削量が多くされた場合であっても、CMP処理によって裏面の平坦性が良好なものとなる。
【0081】
また、SOI基板20では、CMP処理時において、基板の裏面の全領域にわたって構造変化層12が露出したときに、SOI基板20に対する研磨速度を大きく変化させることができる。これによって、SOI基板20は、CMP処理時に研磨速度が変化する構造変化層12の全領域にわたる露出に基づいて、CMP処理の終点検出が可能な基板となる。したがって、SOI基板20は、裏面研磨が不足であったり進み過ぎたりするのを防止することができるとともに、CMP処理の高速化を図ることができる。
【0082】
以上のように、半導体素子41が形成され、裏面側からの研削加工およびCMP処理が施されたSOI基板20を用いることによって、薄型化された半導体デバイスを製造することができる。
【符号の説明】
【0083】
10 半導体デバイス用基板
11 シリコン基板
12 構造変化層
20 SOI基板
21 結晶性絶縁層
31,32,41 半導体素子
33 電極
34 貫通電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性材料で構成される基板の内部に、導電型領域を形成することがないイオンが注入されてなる層であって、前記結晶性材料とは異なる結晶構造に変化した構造変化層が形成されることを特徴とする半導体デバイス用基板。
【請求項2】
基板がシリコン基板であり、
構造変化層は、炭化ケイ素、窒化ケイ素および酸化ケイ素から選ばれる材料からなることを特徴とする請求項1記載の半導体デバイス用基板。
【請求項3】
構造変化層は、基板の表面から5〜50μmの深さの領域内に形成されることを特徴とする請求項1または2記載の半導体デバイス用基板。
【請求項4】
基板の厚み方向のイオン濃度分布において、構造変化層に由来するイオン濃度のピークを、少なくとも1つ有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体デバイス用基板の内部に、酸化ケイ素からなる結晶性絶縁層が形成されることを特徴とするSOI基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−138826(P2011−138826A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296304(P2009−296304)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000116127)ニッタ・ハース株式会社 (150)
【Fターム(参考)】