説明

半導体モジュールおよび半導体モジュールを備える携帯機器

【課題】封止樹脂でパッケージされた半導体モジュールにおいて外部からの水分浸入を抑制する。
【解決手段】素子搭載用基板100の上に形成された絶縁樹脂層30の上に搭載された半導体素子40が封止樹脂50により封止されている。配線層120には、半導体素子40の側に突出する突起電極122と突起部124とがそれぞれ一体的に形成されている。そして、突起電極122は、絶縁樹脂層30を貫通して半導体素子40の素子電極42と電気的に接続されている。突起部124は、半導体素子40の四辺に沿って半導体素子40を取り囲むように配置され、突起電極122と素子電極42との接合部分よりも上方の位置にまで封止樹脂50内に埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止樹脂でパッケージされた半導体モジュールおよび半導体モジュールを備える携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、PDA、DVC、DSCといったポータブルエレクトロニクス機器の高機能化が加速するなか、こうした製品が市場で受け入れられるためには小型・軽量化が必須となっており、その実現のために高集積のシステムLSIが求められている。一方、これらのエレクトロニクス機器に対しては、より使いやすく便利なものが求められており、機器に使用されるLSIに対し、高機能化、高性能化が要求されている。このため、LSIチップの高集積化にともないそのI/O数(入出力部の数)が増大する一方でパッケージ自体の小型化要求も強く、これらを両立させるために、半導体部品の高密度な基板実装に適合した半導体パッケージの開発が強く求められている。こうした要求に対応するため、CSP(Chip Size Package)と呼ばれるパッケージ技術が種々開発されている。
【0003】
特許文献1には、インターポーザ基板の上に半導体チップが実装され、この半導体チップが封止樹脂により封止された半導体モジュールが開示されている。
【特許文献1】特開2008−60587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
封止樹脂でパッケージされた、従来型の半導体モジュールでは、封止樹脂と基材との間から水分が浸入した場合に、水分が半導体素子の搭載領域にまで容易に達し、半導体素子の接続強度の低下を招き、ひいては半導体モジュールの動作信頼性が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、封止樹脂でパッケージされた半導体モジュールにおいて外部からの水分浸入を抑制することのできる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、半導体モジュールである。当該半導体モジュールは、基材と基材の一方の主表面に設けられた配線層と、配線層と対向する素子電極を有し、基材の上に絶縁樹脂層を介して搭載された半導体素子と、配線層の上に設けられ、素子電極と電気的に接続された基板電極と、半導体素子を封止する封止樹脂と、半導体素子の少なくとも1辺に沿って配置され、配線層から半導体素子の側に突出して封止樹脂に埋め込まれた突起部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、外部から水分が浸入する場合に、基材の側から封止樹脂に埋め込まれた状態で設けられた突起部が水分浸入の障壁となるため、水分が半導体素子の側へさらに浸入することが抑制される。これにより、半導体モジュールの動作信頼性の向上を図ることができる。
【0008】
上記態様の半導体モジュールにおいて、突起部の先端部が基板電極と素子電極との接合部分よりも上方に位置していてもよい。また、突起部が半導体素子の各辺に沿って設けられていてもよい。また、基板電極が、前記半導体素子の側に突出し、前記絶縁樹脂層を貫通して前記素子電極と接続された突起電極であってもよい。この場合、突起部と突起電極とが同じ材料で形成されていてもよい。また、突起電極と配線層とが一体的に形成されていてもよい。
【0009】
上記態様の半導体モジュールにおいて、封止樹脂を被覆する金属箔をさらに備え、金属箔が突起部のうち、接地電位に固定された突起部と電気的に接続されていてもよい。
【0010】
上記態様の半導体モジュールにおいて、基材の上に設けられ、突起部形成領域が露出するような開口部を有する保護層をさらに備え、突起部が、保護層の開口部内に埋め込まれた埋込部と、保護層の開口部周囲の上面よりも上方に突出した突出部とを有してもよい。
【0011】
本発明の他の態様は、携帯機器である。当該携帯機器は、上述した半導体モジュールを備える。
【0012】
この態様によれば、水分浸入が抑制された半導体モジュールを備えることにより、半導体モジュールの動作信頼性が向上した結果、携帯機器の動作信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基材に実装された半導体素子が封止樹脂により封止された構造を有する半導体モジュールにおいて、封止樹脂と基材の間から水分が浸入することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る半導体モジュール10の構成を示す断面図である。図2は、図1のA−A線を切断面とする平面図である。
【0016】
半導体モジュール10は、素子搭載用基板100と素子搭載用基板100に実装され、封止樹脂50により封止された半導体素子40とを備える。
【0017】
素子搭載用基板100は、基材110と、基材110の一方の主表面に設けられた配線層120および保護層130と、基材110の他方の主表面に設けられた配線層140と、保護層150とを有する。
【0018】
基材110を構成する材料としては、たとえば、BTレジン等のメラミン誘導体、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、PPE樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドビスマレイミド等の熱硬化性樹脂が例示される。半導体モジュール10の放熱性向上の観点から、基材110は高熱伝導性を有することが望ましい。このため、基材110は、銀、ビスマス、銅、アルミニウム、マグネシウム、錫、亜鉛およびこれらの合金などを高熱伝導性フィラーとして含有する、あるいはガラスクロスを含有することが好ましい。
【0019】
配線層120は、所定パターンを有し、基材110の一方の主表面(本実施の形態では、半導体素子40搭載面)に設けられている。配線層120は、銅などの導電材料により形成される。配線層120の所定位置には、突起部124および半導体素子40に設けられた素子電極42と電気的に接続された突起電極122が設けられている。
【0020】
配線層120および突起電極122は電解銅などで形成されていてもよい。突起電極122の頂部面にNi/Au層などの金めっき層128が設けられている。金めっき層128により突起電極122の酸化が抑制される。金めっき層128としてNi/Au層を形成する場合には、Ni層の厚さは、たとえば1〜15μmであり、Au層の厚さは、たとえば0.03〜1μmである。
【0021】
保護層130は、配線層120の周囲に設けられている。本実施の形態では、保護層130が配線層120を覆うように設けられており、保護層130によって配線層120の酸化が防止される。また、保護層130には突起電極形成領域が露出するような開口部が形成されている。当該開口部内において、突起電極122が配線層120の上に設けられている。保護層130は、たとえばフォトソルダーレジストにより形成され、保護層130の厚さは、たとえば40μmである。
【0022】
配線層140は、所定パターンを有し、基材110の他方の主表面に設けられている。配線層140は、銅などの導電材料により形成される。配線層120および配線層140の厚さは、たとえば20μmである。
【0023】
基材110の所定位置において、基材110を貫通するビア導体112が設けられている。ビア導体112は、たとえば、銅めっきにより形成される。ビア導体112により、配線層120と配線層140とが電気的に接続されている。
【0024】
保護層150は、配線層140を覆うように基材110の他方の主表面に設けられており、保護層150によって配線層140の酸化などが防止される。保護層150には、配線層140のランド領域上に外部接続電極としてのはんだボール70を搭載するための開口部が設けられている。はんだボール70は、保護層150に設けられた側開口部内において配線層140に接続され、半導体モジュール10は、はんだボール70によって図示しないプリント配線基板に接続される。はんだボール70を形成する位置、すなわち開口部の形成領域は、たとえば、配線層140で引き回した先の端部である。はんだボール70の径は、たとえば、100〜300μmである。保護層150は、たとえばフォトソルダーレジストにより形成される。保護層150の厚さは、たとえば40μmである。
【0025】
絶縁樹脂層30は、素子搭載用基板100と半導体素子40との間に設けられており、絶縁樹脂層30により半導体素子40が素子搭載用基板100に接着されている。
【0026】
絶縁樹脂層30は、接着性があることが好ましいが、絶縁性樹脂であれば特に限定されない。絶縁樹脂層30を構成する材料としては、たとえば、BTレジン等のメラミン誘導体、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、PPE樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミドビスマレイミド等の熱硬化性樹脂が例示される。
【0027】
半導体素子40は、突起電極122のそれぞれに対向する素子電極42を有する。絶縁樹脂層30に接する側の半導体素子40の主表面には、素子電極42が露出するように開口が設けられたポリイミドなどの素子保護層が積層されていてもよい。素子電極42の表面には、Ni/Au層などの金めっき44が被覆されている。半導体素子40の具体例としては、集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)などの半導体チップが挙げられる。また、素子電極42には、たとえばアルミニウム(Al)が用いられる。半導体素子40は、エポキシ樹脂などからなる封止樹脂50による封止されている。
【0028】
突起電極122は、絶縁樹脂層30を貫通し、半導体素子40に設けられた素子電極42と電気的に接続されている。詳しくは、本実施の形態では、突起電極122および素子電極42の表面にそれぞれ金めっき層128、44が被覆されており、突起電極122と素子電極42とは、たとえば、互いの最表面に配置された金同士が接合(金−金接合)することにより接続が図られている。これにより、突起電極122と素子電極42との接続信頼性がさらに向上する。突起電極122の高さは、たとえば、たとえば20μmである。
【0029】
実施の形態1に係る半導体モジュール10では、突起部124が半導体素子40の四辺に沿って半導体素子40を取り囲むように配線層120の上に形成されている(図2参照)。突起部124の材料は特に限定されないが、突起部124は、配線層120および突起電極122と同じ材料で形成されていることが望ましい。突起部124の材料を配線層120および突起電極122の材料と共通化することにより、配線層120および突起電極122を作製する工程において、同時に突起部124を作製することができるので、製造プロセスの簡便化が図られる。具体的には、図1に示すように、突起部124は、配線層120と一体的に形成され、突起電極122と同様に配線層120から半導体素子40の側へ突出している。突起部124の底部および先端部の幅は、たとえば、それぞれ30〜50μm、20〜30μmであり、より好ましくはそれぞれ50μm、30μmである。突起部124の高さは、突起電極122の高さに金めっき層128の厚さを加味した高さよりも高いことが好適である。言い換えると、突起部124の先端部の位置は、突起電極122と素子電極42との接合部である金−金接合部よりも上方に位置している。突起部124の高さは、たとえば30μmである。
【0030】
このような配置および形状を有する突起部124が素子搭載用基板100側から封止樹脂50に先端を向けて埋め込まれている。
【0031】
以上説明した半導体モジュール10によれば、半導体素子40の周囲において素子搭載用基板100側から封止樹脂50に先端を向けて埋め込まれた突起部124が障壁となるため、半導体モジュール10の外部から素子搭載領域への水分浸入が抑制される。特に、突起部124の先端部の位置を、突起電極122と素子電極42との接合部分よりも上方に位置させることにより、金−金接合部分への水分のはい上がりをより確実に抑制することができる。すなわち、突起部124が存在しない場合には金めっき層128の高さまで水分がはい上がると、金−金接合部分に水分が到達するが、突起部124が存在することにより、突起部124の高さまで水分がはい上がっても金−金接合部分にまで水分が到達しない。
【0032】
また、本実施の形態のように、突起部124が半導体素子40の全体を取り囲むことにより、突起部124が補強材の役割を果たし、封止樹脂50を形成した後に半導体モジュール10を反りにくくすることができる。
【0033】
突起部124は封止樹脂50に食い込んだ状態になっているため、突起部124自体が封止樹脂50と素子搭載用基板100との間のアンカー的な役割を果たすことにより、封止樹脂50と素子搭載用基板100との密着性を向上させることができる。
【0034】
さらに、CZ処理などを用いて突起部124の表面を粗化(たとえば、Raで1μm〜2μm)してもよい。これによれば、突起部124に形成された微小凹凸によるアンカー効果により、突起部124と封止樹脂50との密着性を向上させることができる。また、突起部124の表面を粗化することにより、突起部124に形成された微小凹凸が水分の浸入の妨げとなるため、水分浸入をさらに抑制することができる。なお、突起部124の表面のRaは、触針式表面形状測定器を用いて計測することができる。
【0035】
また、突起部124を銅で形成することにより、封止樹脂50の中に熱伝導性が良好な突起部124が埋め込まれることになるため、半導体モジュール10の放熱性を向上させることができる。
【0036】
(半導体モジュールの製造方法)
実施の形態1に係る半導体モジュール10の製造方法について図3乃至図7を参照して説明する。
【0037】
まず、図3(A)に示すように、一方の主表面に銅箔200が、他方の主表面に銅箔201が貼り付けられた基材110を準備する。
【0038】
次に、図3(B)に示すように、ドリル加工、レーザ加工などの掘削加工により、基材110および銅箔200、201の所定領域にビアホール211を形成する。次に、無電解めっき法および電解めっき法により、ビアホール211に銅を充填してビア導体112を形成するとともに、基材110の主表面に設けられた銅箔200、201(図3(A)参照)を厚膜化する。この後、基材110の一方の主表面に、周知のフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、所定パターンの配線層120を形成する。また、基材110の他方の主表面に、周知のフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて配線層140を形成する。
【0039】
次に、図3(C)に示すように、周知のフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて、基材110の一方の主表面に配線層120の突起電極形成領域(図1に示したような突起電極122を形成する領域)および突起部形成領域(図1に示したような突起部124を形成する領域)が露出するような開口部を有する保護層130を形成する。また、基材110の他方の主表面に、配線層140のはんだボール形成領域(図1に示したようなはんだボール70を搭載する領域)が露出するような開口部を有する保護層150を形成する。
【0040】
次に、図3(D)に示すように、図1に示したような突起電極形成領域および突起部形成領域を開口とするマスク220を配線層120の上に形成する。また、配線層140を保護するために、配線層140の全面にマスク222を形成する。
【0041】
次に、図4(A)に示すように、めっき法により突起電極形成領域および突起部形成領域に選択的に銅を充填して、突起電極122および突起部124を形成する。これにより、突起電極122および突起部124は、配線層140上にマトリクス状に多数形成される。なお、この段階では、突起部124の高さは突起電極122の高さと同等である。
【0042】
次に、図4(B)に示すように、周知のフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて突起部形成領域を開口とするマスク224をマスク220の上に積層する。
【0043】
次に、図4(C)に示すように、めっき法により突起部形成領域にさらに銅を充填することにより、突起部124の高さを突起電極122より高くする。このとき、突起部124の高さと突起電極122の高さの差は、後述する金めっき層128の厚みよりも大きくすることが望ましい。なお、突起部124の高さとは、突起部124の基底部から先端部までの距離をいう。また、突起電極122の高さとは、突起電極122の基底部から先端部までの距離をいう。
【0044】
次に、図5(A)に示すように、マスク220、222、224を除去した後、周知のフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて基材110の一方の側に突起電極形成領域を開口とする耐金レジスト230を形成する。なお、突起部形成領域は、耐金レジスト230で被覆されている。この後、耐金レジスト230をマスクとして、めっき法により突起電極形成領域にNi/Au層からなる金めっき層128を形成する。これにより、突起電極122の頂部面に金めっき層128が形成される。
【0045】
次に、図5(B)に示すように、耐金レジスト230を除去した後、ラミネート装置を用いて絶縁樹脂層30を半導体素子搭載領域に積層する。
【0046】
次に、図5(C)に示すように、Oプラズマエッチング法などを用いて、絶縁樹脂層30を薄膜化し、突起電極122の頂部面に形成された金めっき層128を露出させる。
【0047】
次に、図6(A)に示すように、絶縁樹脂層30の上に半導体素子40を搭載するとともに、加圧により金めっき層128と金めっき層44とを接合(金−金接合)させ、突起電極122と素子電極42とを電気的に接続する。なお、金−金接合に代えて、半導体素子40の素子電極42と突起電極122とをはんだ部材により接合してもよい。
【0048】
次に、図6(B)に示すように、ポッディング法、印刷法およびトランスファーモールド法などを用いて封止樹脂50を塗布し、半導体素子40を封止する。塗布された封止樹脂50に不要部分がある場合には、スキージなどにより適宜除去する。封止樹脂50は必要に応じて熱硬化される。この工程で、突起部124が封止樹脂50により被覆される。言い換えると、封止樹脂50に突起部124が埋め込まれた構造が実現される。
【0049】
次に、図7(A)に示すように、保護層150の開口部にスクリーン印刷法によりはんだボール70を搭載する。具体的には、樹脂とはんだ材をペースト状にしたはんだペーストをスクリーンマスクにより所望の箇所に印刷し、はんだ溶融温度に加熱することではんだボール70を形成する。ここまでの工程により、半導体モジュールが一体的にマトリクス状に形成されたモジュール集合体が形成される。
【0050】
次に、図7(B)に示すように、複数の半導体モジュール形成領域240を区画するスクライブライン250に沿ってダイシングすることにより半導体モジュール10に個別化する。この後、個別化された半導体モジュール10に対して薬液による洗浄処理を行うことで、ダイシング時に発生する残渣などを除去する。
【0051】
以上の工程によれば、実施の形態1に係る半導体モジュール10を製造することができる。この製造方法によれば、突起電極122を形成する工程と突起部124を形成する工程を同時に行うことができ、突起部124の形成に要する手間を大幅に低減することができ、半導体モジュール10の製造工程の簡便化を図ることができる。
【0052】
(突起部の設置例)
上述した実施の形態1では、突起部124が半導体素子40の全体を取り囲んでいるが、突起部124は必ずしも半導体素子40の全体を取り囲んでいなくてもよい。
【0053】
たとえば、図8に示すように、半導体素子40の四辺に沿ってそれぞれ突起部124a〜dが形成され、半導体素子40の角部近辺において、直交する突起部124の間に隙間が設けられていてもよい。
【0054】
半導体素子40の角部近辺において突起部124を設けないことにより、ヒートサイクル下において、突起部124と封止樹脂50の熱膨張係数の違いにより、半導体モジュール10の角部に応力が集中することが抑制される。この結果、特に、半導体モジュール10の角部近傍に設けられたはんだボール70が剥離することを抑制することができ、ひいては半導体モジュール10の接続信頼性を向上させることができる。
【0055】
なお、突起部124は、半導体素子40の少なくとも1辺に沿って設けられていれば、その辺において水分が浸入することを抑制することができる。たとえば、半導体モジュール10の設置箇所の状況により、一方向からの水分浸入を抑制したい場合には、その方向に直交するように突起部124を設ければよい。
【0056】
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2に係る半導体モジュール10の構成を示す概略断面図である。図10は、図9のB−B線を切断面とする平面図である。実施の形態2に係る半導体モジュール10は、絶縁樹脂層30が半導体素子搭載領域だけでなく基材110の一方の側全体に設けられている点が実施の形態1と相違する。実施の形態2における、その他の構成は実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同様な構成については適宜説明を省略する。
【0057】
実施の形態2に係る半導体モジュールでは、絶縁樹脂層30が半導体素子搭載領域だけでなく基材110の一方の側全体に設けられており、半導体モジュール10の側面に保護層130が露出している。この絶縁樹脂層30を突起部124が貫通し、突起部124の先端部分が封止樹脂50に埋め込まれている。実施の形態1と同様に突起部124により外部からの水分浸入が抑制されている。これに加えて、絶縁樹脂層30が基材110の一方の側全体に設けられているため、封止樹脂50と素子搭載用基板100との密着性がより向上している。また、実施の形態2に係る半導体モジュールの製造方法では、実施の形態1に関して図5(B)を用いて説明した絶縁樹脂層30のラミネート工程において、基材110の一方の側全面に絶縁樹脂層30を積層すればよいため、位置合わせに要する手間を省くことができ、半導体モジュール10の製造方法を簡便化し、製造コストを低減することができる。
【0058】
(実施の形態3)
図11は、実施の形態3に係る半導体モジュール10の構成を示す概略図である。実施の形態3に係る半導体モジュール10は、封止樹脂50の側方において、突起部124が露出している点、および金属箔280で封止樹脂50が被覆されている点で実施の形態1と相違する。
【0059】
具体的には、封止樹脂50の上方および側方に金属箔280が導電性接着剤270を介して固定されている。金属箔280は、たとえば、厚さが15〜50μmのアルミ箔が好適である。封止樹脂50の側方において、金属箔280は突起部124aと電気的に続している。この突起部124aは、半導体素子40に接続された突起電極122のうち、グランド端子となる素子電極42aに接続された突起電極122aと配線層120aを介して電気的に接続されている。これにより、金属箔280の電位が接地電位となる。
【0060】
このように、接地電位に固定された金属箔280により半導体素子40を覆うことで、半導体素子40が受ける電磁波障害が抑制される。また、従来のキャン封止と比べて金属箔280を用いた場合の方が、金属箔280と封止樹脂50(パッケージ)との間の空間(距離)を小さくすることができるため、半導体モジュール10の低背化を実現することができる。
【0061】
また、封止樹脂50(パッケージ)を金属箔280で被覆することにより、外部からの水分浸入をより確実に抑制することができる。
【0062】
(実施の形態4)
図12は、実施の形態4に係る半導体モジュール10の構成を示す概略図である。実施の形態4に係る半導体モジュール10は、実施の形態2と同様に基材110の一方の側全体に絶縁樹脂層30が設けられているが、金属箔280で半導体素子40をシールドするという技術思想において実施の形態3と共通し、封止樹脂50の側方において、突起部124が露出している点、および金属箔280で封止樹脂50が被覆されている点で実施の形態2と相違する。
【0063】
本実施の形態によれば、接地電位に固定された金属箔280により半導体素子40を覆うことで、半導体素子40が受ける電磁波障害が抑制される。また、従来のキャン封止と比べて金属箔280を用いた場合の方が、金属箔280と封止樹脂50(パッケージ)との間の空間(距離)を小さくすることができるため、半導体モジュール10の低背化を実現することができる。
【0064】
(実施の形態5)
図13は、実施の形態5に係る半導体モジュール10の構成を示す概略図である。図14は、図13のC−C線を切断面とする平面図である。本実施の形態では、半導体素子40がワイヤボンディング接続により基材110に搭載されている点で実施の形態1と相違する。また、本実施の形態の突起部124は、後述するように、実施の形態1で説明した突起部124と異なる構造を有する。
【0065】
具体的には、配線層120の所定領域にランドとなる金めっき層128が形成されている。半導体素子40は電極形成面を上にして、保護層130の上に固着されている。半導体素子40に設けられた素子電極(図示せず)と金めっき層128とが金線などのワイヤ160によりワイヤボンディング接続されている。
【0066】
保護層130に設けられた突起部形成領域を開口とする開口部分の保護層130の上面にさらに保護層132が形成されている。保護層132には、保護層130に設けられた開口部分より大きな径の開口部分が設けられている。
【0067】
突起部124は、保護層130に設けられた開口部分に埋め込まれた埋め込み部82と、保護層132に設けられた開口部分に埋め込まれた埋め込み部84と、保護層132の上面より上に突出した突出部86とで形成されている。突出部86の上面の位置は、配線層120の上の金めっき層128(ワイヤボンディング部分)の高さより上方に位置している。
【0068】
本実施の形態によれば、ワイヤボンディング接続により半導体素子40が基板に搭載された半導体モジュール10の構成において、半導体素子40の周囲において素子搭載用基板100側から封止樹脂50に先端を向けて埋め込まれた突起部124が障壁となるため、半導体モジュール10の外部から基板上のワイヤボンディング部分への水分の浸入が抑制される。これにより、基板上のワイヤボンディング部分の接続信頼性を向上させることができる。
【0069】
(半導体モジュールの製造方法)
本実施の形態に係る半導体モジュール10の製造方法は、図3(A)乃至図3(C)までは、実施の形態1と同様である。
【0070】
図3(C)に示した工程に続いて、図15(A)に示すように、保護層130に設けられた突起部形成領域用の開口部が露出するように、保護層130の上面にフォトソルダーレジストからなる保護層132を形成する。
【0071】
次に、図15(B)に示すように、突起部形成領域を除く銅メッキ部分を保護するためのレジスト300を基材110の一方の側および他方の側に形成する。ここで、基材110の一方の側に設けられた配線層120上のランド形成領域がレジスト300により被覆される。
【0072】
次に、図15(C)に示すように、保護層130および保護層132に設けられた突起部形成領域用の開口部に、めっき法により銅を埋め込んで埋込部を形成した後、めっきを継続して当該埋込部の上に突出部を形成する。これにより、配線層120上のランド形成領域よりも頂部面が上方に位置する突起部124が形成される。
【0073】
次に、図16(A)に示すように、レジスト300を除去した後、周知のフォトリソグラフィ法およびエッチング法を用いて基材110の一方の側に、突起電極形成領域を開口とする耐金レジスト310を形成する。なお、突起部形成領域は、耐金レジスト310で被覆されている。
【0074】
次に、図16(B)に示すように、耐金レジスト310をマスクとして、めっき法により突起電極形成領域にNi/Au層からなる金めっき層128を形成する。これにより、配線層120のランド形成領域に金めっき層128が形成される。
【0075】
次に、図16(C)に示すように、耐金レジスト310を除去した後、各素子搭載領域に半導体素子40を搭載した後、半導体素子40の外部電極と配線層120に設けられた金めっき層128とを金線などのワイヤ160を用いてワイヤボンディング接続する。
【0076】
次に、図17(A)に示すように、ポッディング法、印刷法およびトランスファーモールド法などを用いて封止樹脂50を塗布し、半導体素子40を封止する。塗布された封止樹脂50に不要部分がある場合には、スキージなどにより適宜除去する。封止樹脂50は必要に応じて熱硬化される。この工程で、突起部124の突出部が封止樹脂50により被覆される。言い換えると、封止樹脂50に突起部124が埋め込まれた構造が実現される。
【0077】
次に、図17(B)に示すように、保護層150の開口部にはんだ実装法によりはんだボール70を搭載する。具体的には、スクリーン印刷法またはピン転写により所望の箇所にフラックスを印刷して、はんだボールの実装を行う。その後、はんだ溶融温度に加熱することではんだボール70を形成する。ここまでの工程により、半導体モジュールが一体的にマトリクス状に形成されたモジュール集合体が形成される。
【0078】
次に、図17(C)に示すように、複数の半導体モジュール形成領域240を区画するスクライブライン250に沿ってダイシングすることにより半導体モジュール10に個別化する。この後、個別化された半導体モジュール10に対して薬液による洗浄処理を行うことで、ダイシング時に発生する残渣などを除去する。
【0079】
以上の工程によれば、実施の形態5に係る半導体モジュール10を製造することができる。この製造方法によれば、保護層132の厚みを変えることにより、所望の高さの突起部124を簡便に形成することができる。
【0080】
なお、本実施の形態で用いられた、保護層130および保護層132の開口部内に埋め込まれた埋込部と、当該開口部周囲の保護層132の上面よりも上方に突出した突出部とを有する突起部124は、実施の形態1乃至4のように半導体素子40が電極形成面をフェイスダウンして素子搭載用基板100に搭載された半導体モジュールに適用することも可能である。
【0081】
次に、本発明の半導体モジュールを備えた携帯機器について説明する。なお、携帯機器として携帯電話に搭載する例を示すが、たとえば、個人用携帯情報端末(PDA)、デジタルビデオカメラ(DVC)、音楽プレーヤ、及びデジタルスチルカメラ(DSC)といった電子機器であってもよい。
【0082】
図18は実施の形態に係る半導体モジュール10を備えた携帯電話の構成を示す図である。携帯電話1111は、第1の筐体1112と第2の筐体1114が可動部1120によって連結される構造になっている。第1の筐体1112と第2の筐体1114は可動部1120を軸として回動可能である。第1の筐体1112には文字や画像等の情報を表示する表示部1118やスピーカ部1124が設けられている。第2の筐体1114には操作用ボタンなどの操作部1122やマイク部1126が設けられている。なお、本発明の各実施形態に係る半導体モジュールはこうした携帯電話1111の内部に搭載されている。なお、このように、携帯電話に搭載した本発明の半導体モジュールとしては、各回路を駆動するための電源回路、RF発生するRF発生回路、DAC、エンコーダ回路、携帯電話の表示部に採用される液晶パネルの光源としてのバックライトの駆動回路などとして採用することが可能である。
【0083】
図19は図18に示した携帯電話の部分断面図(第1の筐体1112の断面図)である。本発明の実施形態に係る半導体モジュール10は、はんだボール70を介してプリント基板1128に搭載され、こうしたプリント基板1128を介して表示部1118などと電気的に接続されている。また、半導体モジュール10の裏面側(はんだボール70とは反対側の面)には金属基板などの放熱基板1116が設けられ、たとえば、半導体モジュール10から発生する熱を第1の筐体1112内部に篭もらせることなく、効率的に第1の筐体1112の外部に放熱することができるようになっている。
【0084】
本発明の実施形態に係る半導体モジュールを備えた携帯機器によれば、以下の効果を得ることができる。
【0085】
半導体モジュール10において、外部からの水分浸入が抑制された結果、動作信頼性が向上するので、こうした半導体モジュール10を搭載した携帯機器の動作信頼性が向上する。
【0086】
放熱基板1116を介して半導体モジュール10からの熱を効率的に外部に放熱することができるので、半導体モジュール10の温度上昇が抑制され、導電性部材と配線層との間の熱応力が低減される。このため、放熱基板1116を設けない場合に比べ、半導体モジュール内の導電性部材が配線層から剥離することが防止され、半導体モジュール10の信頼性(耐熱信頼性)が向上する。この結果、携帯機器の信頼性(耐熱信頼性)を向上させることができる。
【0087】
上記実施の形態で示した半導体モジュール10は小型化が可能であるので、こうした半導体モジュール10を搭載した携帯機器の薄型化・小型化を図ることができる。
【0088】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
【0089】
たとえば、上述の実施の形態3および4では、金属箔280は、導電性接着剤270を介して固定されているが、圧着によりあるいは静電気で固定されていてもよい。
【0090】
また、配線層120には、半導体素子40の側に突出する突起電極122が一体的に形成されていてもよい。配線層120と突起電極122とを一体的に形成することにより、配線層120と突起電極122との接続信頼性を向上させることができる。この場合、配線層120および突起電極122は、導電材料、好ましくは圧延金属、さらには圧延銅により形成される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施の形態1に係る半導体モジュールの構成を示す概略断面図である。
【図2】実施の形態1に係る半導体モジュールを構成する突起部の平面配置を示す、図1のA−A線を切断面とする平面図である。
【図3】図3(A)乃至(D)は、実施の形態1に係る半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図4】図4(A)乃至(C)は、実施の形態1に係る半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図5】図5(A)乃至(C)は、実施の形態1に係る半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図6】図6(A)および(B)は、実施の形態1に係る半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図7】図7(A)および(B)は、実施の形態1に係る半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図8】半導体モジュールを構成する突起部の設置例を示す平面図である。
【図9】実施の形態2に係る半導体モジュールの構成を示す概略断面図である。
【図10】実施の形態2に係る半導体モジュールを構成する突起部の平面配置を示す、図9のB−B線を切断面とする平面図である。
【図11】実施の形態3に係る半導体モジュールの構成を示す概略断面図である。
【図12】実施の形態4に係る半導体モジュールの構成を示す概略断面図である。
【図13】実施の形態5に係る半導体モジュールの構成を示す概略断面図である。
【図14】実施の形態5に係る半導体モジュールを構成する突起部の平面配置を示す、図13のC−C線を切断面とする平面図である。
【図15】図15(A)乃至(C)は、実施の形態5に係る半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図16】図16(A)乃至(C)は、実施の形態5に係る半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図17】図17(A)乃至(C)は、実施の形態5に係る半導体モジュールの製造方法を示す工程断面図である。
【図18】実施の形態に係る半導体モジュールを備えた携帯電話の構成を示す図である。
【図19】図18に示した携帯電話の部分断面図である。
【符号の説明】
【0092】
10 半導体モジュール、30 絶縁樹脂層、40 半導体素子、70 はんだボール、100 素子搭載用基板、110 基材、112 ビア導体、120、140 配線層、130、150 保護層、122 突起電極、124 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と
前記基材の一方の主表面に設けられた配線層と、
前記配線層と対向する素子電極を有し、前記基材の上に絶縁樹脂層を介して搭載された半導体素子と、
前記配線層の上に設けられ、前記素子電極と電気的に接続された基板電極と、
前記半導体素子を封止する封止樹脂と、
前記半導体素子の少なくとも1辺に沿って配置され、前記配線層から前記半導体素子の側に突出して前記封止樹脂に埋め込まれた突起部と、
を備えることを特徴とする半導体モジュール。
【請求項2】
前記突起部の先端部が前記基板電極と前記素子電極との接合部分よりも上方に位置していることを特徴とする請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記突起部が前記半導体素子の各辺に沿って設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記基板電極が、前記半導体素子の側に突出し、前記絶縁樹脂層を貫通して前記素子電極と接続された突起電極であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記突起部と前記突起電極とが同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項4に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記封止樹脂を被覆する金属箔をさらに備え、
前記金属箔が前記突起部のうち、接地電位に固定された突起部と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記基材の上に設けられ、突起部形成領域が露出するような開口部を有する保護層をさらに備え、
前記突起部が、前記保護層の前記開口部内に埋め込まれた埋込部と、前記保護層の前記開口部周囲の上面よりも上方に突出した突出部とを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体モジュールを備える携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−87309(P2010−87309A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255795(P2008−255795)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】