説明

半導体レーザー装置

【課題】 光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置に組み込まれるレーザー装置として適した半導体レーザー装置を提供する。
【解決手段】 レーザー光を外部に放射する開口部18がカバー硝子19によって封止されるように構成されたキャップ17をレーザー光を生成するレーザーチップ16が搭載されているステム13に溶接固定することによって組み立てられる半導体レーザー装置であり、前記カバー硝子19を波長板にて構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録されている信号の読み出し動作や光ディスクに信号の記録動作をレーザー光によって行う光ピックアップ装置に組み込まれる半導体レーザー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置から照射されるレーザー光を光ディスクの信号記録層に照射することによって信号の読み出し動作や信号の記録動作を行うことが出来る光ディスク装置が普及している。
【0003】
光ディスク装置としては、CDやDVDと呼ばれる光ディスクを使用するものが一般に普及しているが、最近では記録密度を向上させた光ディスク、即ちBlu−ray規格の光ディスクを使用するものが開発されている。
【0004】
CD規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光としては、波長が780nmである赤外光が使用され、DVD規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光としては、波長が650nmの赤色光が使用されている。
【0005】
斯かるCD規格及びDVD規格の光ディスクに対して、Blu−ray規格の光ディスクに記録されている信号の読み出し動作を行うレーザー光としては、波長が短いレーザー光、例えば波長が405nmの青紫色光が使用されている。
【0006】
光ピックアップ装置において、レーザー光を生成する手段としてレーザーダイオード、即ち半導体レーザー装置が一般に採用されている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−216817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4はBlu−ray規格にて規定されている光ディスクDに設けられている信号記録層Lに記録されている信号を読み出すように構成された光ピックアップ装置の光学構成図であり、同図を参照にして光ピックアップ装置について説明する。
【0009】
図4において、1は例えば波長が405nmの青紫色光であるレーザー光を放射するレーザーダイオード、2は前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光が入射される1/2波長板であり、入射されるレーザー光を例えばS方向の直線偏光光に変換する作用を成すものである。3は前記1/2波長板2を透過したレーザー光が入射される回折格子であり、レーザー光を0次光であるメインビーム、+1次光及び−1次光である2つのサブビームに分離する作用を成すものである。
【0010】
4は前記1/2波長板2及び回折格子3を透過したレーザー光が入射される偏光ビームスプリッタであり、S偏光光に変換されたレーザー光の多くを反射し、P方向に偏光されたレーザー光を透過させる制御膜4aが設けられている。5は前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光の中の前記偏光ビームスプリッタ4の制御膜4aを透過したレーザー光が照射される位置に設けられているモニター用光検出器であり、その検出出力であるモニター信号は前記レーザーダイオード1から放射されるレーザー光の出力を制御するために使用される。
【0011】
6は前記偏光ビームスプリッタ4の制御膜4aにて反射されたレーザー光が入射される位置に設けられている1/4波長板であり、入射されるレーザー光を直線偏光光から円偏光光に、また反対に円偏光光から直線偏光光に変換する作用を成すものである。7は前記1/4波長板6を透過したレーザー光が入射されるとともに入射されるレーザー光を平行光に変換するコリメートレンズであり、収差補正用モーター8によって光軸方向へ変位せしめられるように構成されている。即ち、前記コリメートレンズ7の光軸方向への変位動作によって光ディスクDの信号記録層Lとディスク面との間に設けられている保護層の厚さに基づいて生じる球面収差を補正することが出来るように構成されている。
【0012】
9は前記コリメートレンズ7を透過したレーザー光が入射される位置に設けられている立ち上げミラーであり、入射されるレーザー光の出射方向を90度変更し、該レーザー光を光ディスクDの信号記録層Lに集光させるべく設けられている対物レンズ10方向に反射させる作用を成すものである。
【0013】
斯かる構成において、前記レーザーダイオード1から放射されたレーザー光は、1/2波長板2、回折格子3、偏光ビームスプリッタ4、1/4波長板6、コリメートレンズ7及び立ち上げミラー9を介して対物レンズ10に入射された後、該対物レンズ10の集光動作によって光ディスクDの信号記録層Lにレーザースポットとして照射されるが、該信号記録層Lに照射されたレーザー光は戻り光として対物レンズ10側へ反射されることになる。
【0014】
光ディスクDの信号記録層Lから反射された戻り光は、対物レンズ10、立ち上げミラー9、コリメートレンズ7及び1/4波長板6を通して偏光ビームスプリッタ4の制御膜4aに入射される。このようにして偏光ビームスプリッタ4の制御膜4aに入射される戻り光は、前記1/4波長板6による位相変更動作によってP方向の直線偏光光に変更されている。従って、斯かる戻り光は前記偏光ビームスプリッタ4の制御膜4aにて反射されることはなく、制御用レーザー光として該制御膜4aを透過することになる。
【0015】
11は前記偏光ビームスプリッタ4の制御膜4aを透過した制御用レーザー光が入射されるセンサーレンズであり、PDICと呼ばれる光検出器12に設けられている受光部に制御用レーザー光に非点収差を付加させて照射する作用を成すものである。前記光検出器12には、周知のように4分割センサー等が設けられており、メインビームの照射動作によって光ディスクDの信号記録層Lに記録されている信号の読み出し動作に伴う信号生成動作及び非点収差法によるフォーカス制御動作を行うためのフォーカスエラー信号の生成動作、そして2つのサブビームの照射動作によってトラッキング制御動作を行うためのトラッキングエラー信号の生成動作を行うように構成されている。
【0016】
前述したように光ピックアップ装置の光学系は構成されており、1/2波長板2及び1/4波長板6は光ピックアップ装置を構成するハウジングと呼ばれる基台に紫外線硬化型接着剤によって接着固定されるように構成されている。
【0017】
ハウジングに対して1/2波長板等を接着固定する場合、波長板のハウジングに形成されている固定位置への位置決め作業や接着剤の塗布作業及び紫外線の照射作業等を行う必要があるので、作業工程数が多くなるという問題がある。また、波長板がレーザー光の光路内に挿入配置されるので、ゴミ等の塵が波長板の表面等に付着する機会が増大するという問題がある。
【0018】
本発明は、斯かる問題を解決することが出来る半導体レーザー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、レーザー光を外部に放射する開口部がカバー硝子によって封止されるように構成されたキャップをレーザー光を生成するレーザーチップが搭載されているステムに溶接固定することによって組み立てられる半導体レーザー装置において、前記カバー硝子を波長板にて構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の半導体レーザー装置は、レーザーチップが搭載されているステムに溶接固定されるキャップの開口部を封止するカバー硝子を波長板にて構成するようにしたので、光ピックアップ装置の基台であるハウジングへの波長板の接着固定作業を行う必要ない。従って、光ピックアップ装置の組立工程数を少なくすることが出来るので、本発明は光ピックアップ装置の生産性を向上させることが出来るという効果を奏する。
【0021】
また、本発明によれば光ピックアップ装置の光学系を構成する光学部品の数を減らすことが出来るので、光ピックアップ装置の製造コストを下げることが出来るだけでなく信頼性も向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る半導体レーザー装置の側断面図である。
【図2】本発明に係る半導体レーザー装置の斜視図である。
【図3】本発明に係る半導体レーザー装置の分解斜視図である。
【図4】本発明に係る光ピックアップ装置の光学構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
光ディスクに設けられている信号記録層に記録されている信号の読み出し動作を行う光ピックアップ装置に組み込まれる半導体レーザー装置を提供する。
【実施例1】
【0024】
図2は本発明に係る半導体レーザー装置を示す斜視図であり、一般的にはカンタイプと呼ばれるものである。図3は図2に示すカンタイプの半導体レーザー装置の分解斜視図である。
【0025】
図において、13はステムと呼ばれる基台であり、鉄や銅等の金属にて製造されているとともに電源供給等を行うリード端子14が固定されている。15は前記ステム13に固定されているサブ基台であり、レーザー光を放射するレーザーチップ16が固定されている。斯かる構成において、前記リード端子14を介してレーザーチップ16に駆動信号が供給されるようにリード線等によって両者は接続されている。
【0026】
17は前記ステム13に溶接固定される円筒状のキャップであり、上面には円形状の開口部18が形成されている。即ち、斯かる開口部18は前記レーザーチップ16から放射されるレーザー光を出射するために設けられている。
【0027】
19は前記キャップ17に形成されている開口部18を封止するカバー硝子であり、図1に示す断面図のようにキャップ17の内側に低融点硝子20によって接着固定されている。前記カバー硝子19をキャップ17の内側の面に低融点硝子20によって接着固定することによってキャップ17に形成されている開口部18を封止することが出来る。
【0028】
また、カバー硝子19によって開口部18が封止されたキャップ17をステム13に溶接固定することによって図2に示すカンタイプの半導体レーザー装置が組み立てられることになる。また、キャップ17のステム13に対する溶接固定動作はキャップ17の内側の空間部に不活性ガスを充填させた状態にて行われる。
【0029】
前述した組立作業を行うことによって図2に示すようなカンタイプの半導体レーザー装置が組立製造されることになる。本発明は、斯かる構成において、キャップ17に形成されている開口部18を封止するカバー硝子19を1/2波長板にて構成したことを特徴とするものである。
【0030】
カンタイプの半導体レーザー装置に設けられているカバー硝子19を1/2波長板にて構成すると図4に示した光学構成図において、1/2波長板2を削除することが出来る。即ち、1/2波長板2のハウジングへの接着固定作業を行う必要がないので、光ピックアップ装置の組立作業を容易に行うことが出来る。また、1/2波長板2を削除することが出来るので、ゴミ等の塵が1/2波長板2に付着する機会を減らすことが出来、その結果光ピックアップ装置の特性を向上させることが出来る。
【0031】
そして、1/2波長板の取り付け角度の多少のズレ、例えば数度のズレは、光学特性に大きな影響を与えることがないので、カバー硝子19のキャップ18の内側への接着固定作業も容易に行うことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本実施例ではカバー硝子19を1/2波長板にて構成したが、1/4波長板にて構成することは出来る。
【符号の説明】
【0033】
1 レーザーダイオード
2 1/2波長板
13 ステム
15 サブ基台
16 レーザーチップ
17 キャップ
18 開口部
19 カバー硝子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を外部に放射する開口部がカバー硝子によって封止されるように構成されたキャップをレーザー光を生成するレーザーチップが搭載されているステムに溶接固定することによって組み立てられる半導体レーザー装置であり、前記カバー硝子を波長板にて構成したことを特徴とする半導体レーザー装置。
【請求項2】
波長板が1/2波長板であることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザー装置。
【請求項3】
波長板が1/4波長板であることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−69371(P2013−69371A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206819(P2011−206819)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】