説明

半導体光配線装置

【課題】コストの上昇や特性の低下を招くことなく、実装が容易な状態で、LSIのチップ間やチップ内の信号伝送を、光配線で行えるようにする。
【解決手段】素子形成領域122のシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域122に形成された光素子123と、光導波領域121に形成された溝部101aと、溝部101aに充填されて形成された下部クラッド層102と、下部クラッド層102の上に形成されて光素子123に光接続するコア103と、コア103の上に形成された上部クラッド層104と、コア103よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域122の側部の基板101上に形成されて、光素子123に電極引き出し部105を介して接続する電極パッド部106とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSIなどの電子回路を同時に搭載してこれらの間を光信号で接続可能とした半導体光配線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及などに伴い、サーバやルータなどの機器が扱う情報量は急激に増大しており、これらの機器を構成するLSIなどの半導体部品の間でやり取りされる信号の伝送容量は、今後も急速な増大を続けることが予測されている。一方で、LSIの微細化が進展するにつれて、従来の電気配線技術においては、信号伝達遅延、信号線信頼性、信号干渉、消費電力増大などの問題が顕在化してきている。これらの問題の解決に向けて、LSIチップ間およびチップ内における信号伝送を、光配線で行うことが検討されている。
【0003】
例えば特許文献1には、SOI(Silicon on Insulator)基板を用い、光デバイスとCMOS電気デバイスとを共通のSOI層に集積する光配線構造が開示されている。また、非特許文献1には、SOI基板を用いた光配線チップとLSIチップとを貼り合わせた光配線構造を用い、LSIチップ内の信号伝送に利用する例が開示されている。また、非特許文献2には、SOI基板を用い、SOI層の上にSiGeをエピタキシャル成長して受光器と電界吸収型光変調器を同時に一括形成することができる光配線構造が開示されている。これらのSOI基板を用いた光配線構造においては、埋め込み酸化層をSi導波路の下クラッドとして利用し、SOI層の上にGeまたはSiGeをエピタキシャル成長することで高性能な受光器を構成するという特長がある。
【0004】
また、非特許文献3には、電子回路を集積したチップの上部に、電気光学ポリマーを用いた変調器と、多結晶Geを用いたフォトダイオードとを集積した構造が開示されている。この非特許文献3に開示される集積技術を用いれば、必ずしもSOI基板を用いる必要はなく、バルクSi基板上にも光配線構造を作製することが可能である。また、特許文献2には、光導波路と、受光素子または発光素子とを端面結合させる構造が開示されている。また、光導波路下部の半導体層を削ることによって、導波損失を低減させる構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−525677号公報
【特許文献2】特開2000−298218号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2007年半導体MIRAIプロジェクト成果報告会 p.82。
【非特許文献2】J. Liu , et al. ,"Design of monolithically integrated GeSi electro-absorption modulators and photodetectors on an SOI platform", Opt. Express, vol.15, no.2, pp.623-628, 2007.
【非特許文献3】B.A.Block, et al. , "Electro-optic polymer cladding ring resonator modulators", Opt. Express, vol.16, no.22, pp.18326-18333 ,2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,非特許文献1,および非特許文献2に開示される光配線構造においては、用いているSOI基板がバルクSi基板と比較して高価であるため、光回路を作製するコストが高くなるという課題があった。また、SOI基板を用いた場合、デバイスと基板の間に埋め込み酸化層が存在するため、基板側への排熱が容易ではなく、特別な除熱機構を用いることになり、やはりコストの上昇を招くという課題があった。
【0008】
また、非特許文献3に開示される光配線構造においては、バルクSi基板を用いることでコストを下げることはできるものの、エピタキシャル成長したGeまたはSiGeを用いることができないため、多結晶Geを用いて受光器を形成している。多結晶Geを用いた受光器は、Si上にエピタキシャル成長したGe受光器と比較すると暗電流が大きいため、受信感度が低くなる。この結果、非特許文献3の技術では、光回路全体としての特性が、SOI基板を用いた場合よりも低くなるという課題があった。
【0009】
また、特許文献2に開示される光配線構造においては、金属電極を受光素子または発光素子の上部に設けているため、金属電極により光が吸収されて損失が大きくなり、特性を高くできないという課題があった。また、素子の上部に金属電極を形成する場合、平坦な部分に十分な大きさの電極パッドを形成することが難しく、光配線チップの上部へのLSIチップの実装が困難になるという課題があった。さらには、光導波路と、受光素子または発光素子との結合部分において、屈折率差が存在するために、反射や散乱により効率が低下し、光回路全体としての特性が低くなるという課題があった。
【0010】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、コストの上昇や特性の低下を招くことなく、実装が容易な状態で、LSIのチップ間やチップ内の信号伝送を、光配線で行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る半導体光配線装置は、シリコンからなる基板の上に設けられた光導波領域と、この光導波領域に連結して基板の上に設けられた素子形成領域と、素子形成領域のシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域に形成された光素子と、光導波領域に形成された溝部と、この溝部に充填されて形成された下部クラッド層と、この下部クラッド層の上に形成されて光素子に光接続するコアと、このコアの上に形成された上部クラッド層と、コアよりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域の側部の基板上に形成されて、光素子に電極引き出し部を介して接続する電極パッド部とを少なくとも備え、下部クラッド層は、コアよりなる光導波路を伝搬する光が基板に漏れ出さない範囲の層厚とされている。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したことにより、本発明によれば、コストの上昇や特性の低下を招くことなく、実装が容易な状態で、LSIのチップ間やチップ内の信号伝送を、光配線で行えるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における半導体光配線装置の構成を示す平面図(a)および断面図(b),(c)である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態2における半導体光配線装置の構成を示す断面図(a)および平面図(b)である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2における半導体光配線装置の製造方法例を説明するための説明図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態3における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態4における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態5における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態6における半導体光配線装置の構成を示す断面図(a)および平面図(b)である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態6における他の半導体光配線装置の構成を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態6における他の半導体光配線装置の構成を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態6における他の半導体光配線装置の構成を示す平面図である。
【図11】図11は、図11は、本発明の実施の形態7における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態8における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態9における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態10における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態11における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0015】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における半導体光配線装置の構成を示す平面図(a)および断面図(b),(c)である。図1では、各構成を簡略化して示している。この半導体光配線装置は、まず、シリコンからなる基板101の上に設けられた光導波領域121と、光導波領域121に連結して基板101の上に設けられた素子形成領域122とを備える。
【0016】
また、本実施の形態における半導体光配線装置は、素子形成領域122のシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域122に形成された光素子123と、光導波領域121に形成された溝部101aと、溝部101aに充填されて形成された下部クラッド層102と、下部クラッド層102の上に形成されて光素子123に光接続するコア103と、コア103の上に形成された上部クラッド層104と、コア103よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域122の側部の基板101上に形成されて、光素子123に電極引き出し部105を介して接続する電極パッド部106とを備える。
【0017】
また、本実施の形態では、コア103よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域122の側部に、下部クラッド層102と同様の絶縁材料が充填された溝部124を備える。電極引き出し部105は、溝部124の上に配置されている。下部クラッド層102は、コア103よりなる光導波路を伝搬する光が基板101に漏れ出さない範囲の層厚とされていればよい。
【0018】
上述した本実施の形態によれば、いわゆるバルクシリコンの基板101を用いており、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いた場合と比較してコストが低減できる。また、光デバイスである光素子123は、基板101に接して形成されるため、効率良く基板側への排熱を行うことができる。また、本実施の形態によれば、例えば、GeやSiGeなどの半導体を、素子形成領域122のシリコン上にエピタキシャル成長することで形成した光吸収層で光素子123を構成したので、多結晶の半導体を用いる場合に比較して暗電流が小さくなり、高速性・効率等の点でも優れた特性を得ることができる。
【0019】
また、本実施の形態によれば、電極パッド部106を基板101の平面上で、光導波方向に垂直な方向の素子形成領域122の側部の基板101上に形成し、電極引き出し部105を介して接続するようにしたので、例えば金属から構成された電極パッド部106による吸収損失を低減することができる。電極パッド部106は、よく知られているように、可能な範囲で大きな面積に形成するため、光素子123の上方など、光素子123の近傍に配置すると、導波させている光の吸収損失を招く場合がある。これに対し、本実施の形態では、電極パッド部106を受光素子より離して配置することができるため、吸収損失が低減できる。
【0020】
また、本実施の形態では、電極引き出し部105を、絶縁材料が充填された溝部124の上に配置しているので、高周波特性を向上させることができる。また、溝部以外の基板101の上は平坦であり、このような領域に電極パッド部106を設けているので、本実施の形態における半導体光配線装置上部に、容易にLSIチップを実装することが可能となる。
【0021】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図2は、本発明の実施の形態2における半導体光配線装置の構成を示す断面図(a)および平面図(b)である。図2では、各構成を簡略化して示している。この半導体光配線装置は、まず、シリコンからなる基板201の上に設けられた光導波領域221と、光導波領域221に連結して基板201の上に設けられた素子形成領域222a,222bとを備える。
【0022】
また、本実施の形態における半導体光配線装置は、素子形成領域222aのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域222aに形成された受光器223と、素子形成領域222bのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域222bに形成された光変調器225と、光導波領域221に形成された溝部201aと、溝部201aに充填されて形成された下部クラッド層202と、下部クラッド層202の上に形成されて受光器223および光変調器225に光接続する導波路コア203と、導波路コア203の上に形成された上部クラッド層204とを備える。図2に示すように、導波路コア203の端部から入射光が導入される。
【0023】
また、導波路コア203よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域222aの側部の基板201上に形成されて、受光器223に電極引き出し部205を介して接続する電極パッド部206と、光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域222bの側部の基板201上に形成されて、光変調器225に電極引き出し部207を介して接続する電極パッド部208とを備える。各電極引き出し部は、これらによる吸収損失が最小限になるように形成される。
【0024】
また、電極引き出し部205は、受光器223の側部に形成された電極223aに接続し、電極引き出し部207は、光変調器225の側部に形成された電極225aに接続している。また、本実施の形態では、導波路コア203よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域222a,222bの側部に、下部クラッド層202と同様の絶縁材料が充填された溝部を備える。この溝部の上に、電極引き出し部205および電極引き出し部207が配置されている。このように、絶縁材料の上に配置することで、高周波特性を向上させることができる。
【0025】
導波路コア203の端部から入射光が導入され、光変調器225で電気信号が光信号に変換され、受光器223で光信号が電気信号に変換される。入射光は、半導体光配線装置の外部の光ファイバやポリマー導波路(不図示)などから導入しても良い。あるいは、半導体光配線装置に光源(不図示)を実装して光結合器(不図示)などを用い、導波路コア203よりなる光導波路に入射光を導入しても良い。
【0026】
導波路コア203の形状は、細線型でもリブ型でもよく、所望の伝搬損失や最小曲げ半径などを勘案して適宜選択することができる。下部クラッド層202は、導波路コア203よりなる光導波路を伝搬する光が、基板201に漏れ出さないのに十分な厚みを有することが好ましい。より具体的には、入射光の波長をλ、下部クラッド層202の屈折率をn、下部クラッド層202の厚さをTとしたときに、溝深さT>2λ/nを満たすのがより好ましい。例えば、下部クラッド層202を酸化シリコンから構成する場合、下部クラッド層202の層厚は、1.55μmの波長に対しては2μm程度以上あればよい。
【0027】
また、光導波路を伝搬する光が漏れ出さないために、導波路コア203と溝部201aの側面との間には十分な距離があることが好ましい。より具体的には、導波路コア203と溝部201aの側部との間隔をW1としたときに、W1>2λ/nを満たすのがより好ましい。光導波路を形成する材料は特に限定されるものではなく、入射光および用途に応じて適宜最適な材料を選択することができる。より具体的には、下部クラッド層202および上部クラッド層204には、一般的な半導体プロセスで作製でき安定した膜が得られるSiO2,SiNx,SiONのいずれか、またはこれらを組み合わせた材料から形成するのが好ましい。下部クラッド層202および上部クラッド層204には、誘電率の小さいLow−k材料を用いることもできる。また、下部クラッド層202および上部クラッド層204に屈折率の温度係数が負である材料を用いて、導波路の温度特性を安定化させることもできる。
【0028】
導波路コア203は、下部クラッド層202および上部クラッド層204よりも屈折率が大きいアモルファスシリコン,多結晶シリコン,SiNx,SiONのいずれか、またはこれらを組み合わせた材料から形成するのが好ましい。より好ましくは、アモルファスシリコンまたは多結晶シリコンを用いるのが良い。シリコンは、比較的屈折率が大きく、シリコンを用いてコアを構成することで、強い光閉じ込め効果が得られて高密度な光回路集積が可能となる。
【0029】
受光器223は、PIN型またはMSM(Metal-Semiconductor-Metal)型のフォトダイオードにより構成することができる。受光器223を形成する材料は、特に限定されるものではないが、シリコンの上にエピタキシャル成長可能であるGe,SixGe1-x,SixGe1-x-ySnyのいずれか、またはこれらを組み合わせた材料から形成するのが好ましい。受光器223と光導波路(導波路コア203)との結合構造については、図2には受光器223の端部から光を入射させるバット結合構造を示しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、受光器223の上部に形成した光導波路から光を入射させるエバネッセント結合型の構造であっても良い。
【0030】
光変調器225は、基板201のシリコン上にエピタキシャル成長したGe,SixGe1-x,SixGe1-x-ySnyのいずれかよりなる半導体層(光吸収層)を用いた電界吸収型光変調器を用いて構成できる。また、光変調器225は、バルクシリコンからなる基板201のシリコン上にエピタキシャル成長したSixGe1-xよりなる光吸収層のキャリア・プラズマ効果を利用した光変調器であっても良い。このとき、SixGe1-xの光吸収端は、入射光の波長よりも短波側にあることが好ましい。また、下部クラッド層202上に直接堆積したアモルファスシリコンまたは多結晶シリコンのキャリア・プラズマ効果を利用して光変調器225を形成することもできる。
【0031】
基板201の抵抗率は、特に限定されるものではなく用途に応じて適宜選択できるが、光変調器225または受光器223が高速動作できるように、高抵抗基板を用いる方が好ましい。
【0032】
また、光合分波器,光分岐素子,光スイッチなどの光素子を組み合わせることで、より高機能な光配線装置を実現できる。光導波路(光導波路コア)を多層に集積してより高密度な光回路を集積することも可能である。波長多重を用いることで、より高密度な情報伝送を行うことも可能である。
【0033】
上述した本実施の形態における半導体光配線装置を単純な光信号受信装置として用いる場合においては、必ずしも光変調器225は必要ではなく、受光器223と下部クラッド層202、導波路コア203、上部クラッド層204を有し、光信号を電気信号に変換する機能を備えていれば良い。同様に、単純な光信号伝送装置として用いる場合においては、必ずしも受光器223は必要ではなく、光変調器225と下部クラッド層202、導波路コア203、上部クラッド層204を有し、電気信号を光信号に変換する機能を備えていれば良い。
【0034】
上述した本実施の形態における半導体光配線装置によれば、いわゆるバルクシリコンの基板201を用いており、SOI基板を用いた場合と比較してコストが低減できる。また、光デバイスである受光器223および光変調器225は、基板201に接して形成されるため、効率良く基板側への排熱を行うことができる。また、本実施の形態によれば、例えば、GeやSiGeなどの半導体を、素子形成領域222a,222bのシリコン上にエピタキシャル成長することで形成した光吸収層で受光器223および光変調器225を構成したので、多結晶の半導体を用いる場合に比較して暗電流が小さくなり、高速性・効率等の点でも優れた特性を得ることができる。
【0035】
また、本実施の形態によれば、各電極パッド部を基板201の平面上で、光導波方向に垂直な方向の素子形成領域222a,222bの側部の基板201上に形成し、各電極引き出し部を介して接続するようにしたので、前述した実施の形態1と同様に、例えば金属から構成された電極パッド部による吸収損失を低減することができる。
【0036】
また、本実施の形態では、電極引き出し部を、絶縁材料が充填された溝部の上に配置しているので、高周波特性を向上させることができる。また、溝部以外の基板201の上は平坦であり、このような領域に電極パッド部を設けているので、本実施の形態における半導体光配線装置上部に、容易にLSIチップを実装することが可能となる。
【0037】
次に、本発明の実施の形態における半導体光配線装置の製造方法について説明する。まず、図3(a)に示すように、バルクシリコンからなる基板201を準備する。次に、図3(b)に示すように、導波路を作製する光導波領域221の基板201を公知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術により加工し、溝部201aを形成する。次に、溝部201aに例えば酸化シリコンを充填することで、図3(c)に示すように、下部クラッド層202を形成する。
【0038】
次に、例えばアモルファスシリコンを堆積してシリコン膜を形成し、このシリコン膜を公知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術によりパターニングすることで、図3(d)に示すように、導波路コア203を形成し、また、この上に酸化シリコンを堆積することで、上部クラッド層204を形成する。アモルファスシリコンの堆積は、例えば、化学気相成長法およびスパッタリング法により行うことができる。酸化シリコンの堆積は、化学気相成長法,スパッタリング法,およびゾルゲル法などにより行うことができる。
【0039】
次に、公知のフォトリソグラフィー技術およびドライエッチング技術により、図3(e)に示すように、素子形成領域222a,222bの上部クラッド層204に開口部331を形成する。開口部331を形成することで、この領域においいて基板201のシリコン表面を露出させる。
【0040】
次に、開口部331の底部に露出するシリコン表面に、例えば、Geをエピタキシャル成長して光吸収層を形成することで、図3(f)に示すように、受光器223および光変調器225を形成する。例えば、GeH4をソースガスとしたCVD法により、基板温度600℃程度の条件とすることで、露出しているシリコン表面に選択的にGeをエピタキシャル成長することができる。この後、受光器223および光変調器225の上の開口部を酸化シリコンで充填することで、図3(g)に示すように、受光器223および光変調器225の上にも上部クラッド層204が形成された状態とする。
【0041】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図4は、本発明の実施の形態3における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。図4では、各構成を簡略化して示している。
【0042】
この半導体光配線装置は、まず、シリコンからなる基板401の上に設けられた光導波領域421と、光導波領域421に連結して基板401の上に設けられた素子形成領域422a,422bとを備える。
【0043】
また、本実施の形態における半導体光配線装置は、素子形成領域422aのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域422aに形成された受光器423と、素子形成領域422bのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域422bに形成された光変調器425と、光導波領域421に形成された溝部401aと、溝部401aに充填されて形成された下部クラッド層402と、下部クラッド層402の上に形成されて受光器423および光変調器425に光接続する導波路コア403と、導波路コア403の上に形成された上部クラッド層404とを備える。図4に示すように、導波路コア403の端部から入射光が導入される。
【0044】
また、導波路コア403よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域422aの側部の基板401上に形成されて、受光器423に電極引き出し部405を介して接続する電極パッド部406と、光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域422bの側部の基板401上に形成されて、光変調器425に電極引き出し部407を介して接続する電極パッド部408とを備える。
【0045】
また、受光器423は、基板401の表面に不純物を導入することでp型としたp−シリコン層431と、ノンドープのGeから構成したi−Ge層432と、n型のGeからなるn−Ge層433と、n電極434と、p電極435とを備える。この場合、受光器423は、PIN型のダイオード構造であり、i−Ge層432が光吸収層となる。
【0046】
また、光変調器425は、基板401の表面に不純物を導入することでp型としたp−シリコン層451と、ノンドープのGeから構成したi−Ge層452と、n型のGeからなるn−Ge層453と、n電極454と、p電極(不図示)とを備える。p電極は、p電極435と同様に形成されている。この場合、光変調器425は、PIN型のダイオード構造であり、i−Ge層452が光吸収層となる電界吸収型の光変調器である。
【0047】
n電極およびp電極の間に印加する電圧を変調することで、光吸収量を変調でき、電気信号を光信号に変換できる。GeはSiよりも屈折率が大きいため、導波路型受光器として機能させることができ、光信号を電気信号に変換できる。n電極およびp電極は、金属で構成してもよく、また、光の吸収損失が少なくなるように設置された多結晶Siから構成してもよい。
【0048】
[実施の形態4]
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図5は、本発明の実施の形態4における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。図5では、各構成を簡略化して示している。
【0049】
この半導体光配線装置は、まず、シリコンからなる基板501の上に設けられた光導波領域521と、光導波領域521に連結して基板501の上に設けられた素子形成領域522a,522bとを備える。
【0050】
また、本実施の形態における半導体光配線装置は、素子形成領域522aのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域522aに形成された受光器523と、素子形成領域522bのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域522bに形成された光変調器525と、光導波領域521に形成された溝部501aと、溝部501aに充填されて形成された下部クラッド層502と、下部クラッド層502の上に形成されて受光器523および光変調器525に光接続する導波路コア503と、導波路コア503の上に形成された上部クラッド層504とを備える。図5に示すように、導波路コア503の端部から入射光が導入される。
【0051】
また、導波路コア503よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域522aの側部の基板501上に形成されて、受光器523に電極引き出し部505を介して接続する電極パッド部506と、光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域522bの側部の基板501上に形成されて、光変調器525に電極引き出し部507を介して接続する電極パッド部508とを備える。
【0052】
また、受光器523は、基板501の表面に形成したノンドープのGeから構成したi−Ge層と、この上に形成された2つの金属電極531とを備える。この場合、受光器423は、MSM型のダイオード構造であり、上記i−Ge層が光吸収層となる。このように構成した受光器523は、PIN型の構造に比較して製造プロセスが容易であるという特長がある。
【0053】
また、光変調器525は、基板501の表面に不純物を導入することでp型としたp−シリコン層451と、ノンドープのGeから構成したi−Ge層452と、n型のGeからなるn−Ge層453と、n電極454と、p電極(不図示)とを備える。p電極は、p電極435と同様に形成されている。この場合、光変調器525は、PIN型のダイオード構造であり、i−Ge層452が光吸収層となる電界吸収型の光変調器である。
【0054】
以上に説明したことから明らかなように、本実施の形態では、受光器523をMSM型のダイオード構造としたものであり、他の構成は、前述した実施の形態3と同様である。
【0055】
[実施の形態5]
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図6は、本発明の実施の形態5における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。図6では、各構成を簡略化して示している。この半導体光配線装置は、まず、シリコンからなる基板601の上に設けられた光導波領域621と、光導波領域621に連結して基板601の上に設けられた素子形成領域622a,622bとを備える。
【0056】
また、本実施の形態における半導体光配線装置は、素子形成領域622aのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域622aに形成された受光器623と、素子形成領域622bのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域622bに形成された光変調器625と、光導波領域621に形成された溝部601aと、溝部601aに充填されて形成された下部クラッド層602と、下部クラッド層602の上に形成されて受光器623および光変調器625に光接続する導波路コア603と、導波路コア603の上に形成された上部クラッド層604とを備える。図6に示すように、導波路コア603の端部から入射光が導入される。
【0057】
また、導波路コア603よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域622aの側部の基板601上に形成されて、受光器623に電極引き出し部(不図示)を介して接続する電極パッド部(不図示)と、光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域622bの側部の基板601上に形成されて、光変調器625に電極引き出し部(不図示)を介して接続する電極パッド部(不図示)とを備える。以上の構成は、前述した実施の形態2と同様である。
【0058】
加えて、本実施の形態では、導波路コア603と受光器623との光結合部に傾斜構造部623aを設け、同様に、導波路コア603と光変調器625との光結合部に傾斜構造部625aを設けている。傾斜構造部623a,625aは、光の入出射端面であり、この入出射端面が、光の導波方向に垂直な面より角度を有している状態となっている。例えば、入出射端面が、光の導波方向に垂直な面より、基板601の側に45°傾いている状態である。このようにすることで、光結合部分における反射や散乱を低減することができ、高い結合効率が得られるようになる。
【0059】
[実施の形態6]
次に、本発明の実施の形態6について説明する。図7は、本発明の実施の形態6における半導体光配線装置の構成を示す断面図(a)および平面図(b)である。図7では、各構成を簡略化して示している。この半導体光配線装置は、まず、シリコンからなる基板701の上に設けられた光導波領域721と、光導波領域721に連結して基板701の上に設けられた素子形成領域722a,722bとを備える。
【0060】
また、本実施の形態における半導体光配線装置は、素子形成領域722aのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域722aに形成された受光器723と、素子形成領域722bのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域722bに形成された光変調器725と、光導波領域721に形成された溝部701aと、溝部701aに充填されて形成された下部クラッド層702と、下部クラッド層702の上に形成されて受光器723および光変調器725に光接続する導波路コア703と、導波路コア703の上に形成された上部クラッド層704とを備える。図7に示すように、導波路コア703の端部から入射光が導入される。
【0061】
本実施の形態では、上述した導波路コア703,受光器723,および光変調器725からなる複数の光導波路を備えている。また、各々の導波路コア703よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域722aの側部の基板701上に形成されて、受光器723に電極引き出し部705を介して接続する電極パッド部706と、光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域722bの側部の基板701上に形成されて、光変調器725に電極引き出し部707を介して接続する電極パッド部708とを備える。電極引き出し部および電極パッドは、各受光器723および各光変調器725に設けられている。
【0062】
また、電極引き出し部705は、受光器723の側部に形成された電極(不図示)に接続し、電極引き出し部707は、光変調器725の側部に形成された電極(不図示)に接続している。これらの構成は、前述した実施の形態2と同様である。また、本実施の形態では、導波路コア703よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域722a,722bの側部に、下部クラッド層702と同様の絶縁材料が充填された溝部を備える。溝部も、光導波路毎に設けられている。また、この溝部の上に、電極引き出し部705および電極引き出し部707が配置されている。
【0063】
また、本実施の形態では、上部クラッド層704の上にLSIチップ709が実装されている。LSIチップ709は、プロセッサコア(電子素子)732およびプロセッサコア(電子素子)752を含む複数のプロセッサコアを有している。プロセッサコア732は、電気配線731により受光器723の電極パッド706に接続し、プロセッサコア752は、電気配線751により光変調器725の電極パッド708に接続している。電気配線731および電気配線751は、上部クラッド層704に形成された貫通ビアに設けられている。なお、電気配線731,電気配線751は、図7に示される断面とは異なる位置に配置されている。
【0064】
このようにすることで、複数のプロセッサコア間の情報伝達を、導波路コア703よりなる光導波路(光配線)を介して行うことができる。また、複数の光導波路を用いているので、より大容量の情報伝送が可能である。
【0065】
ここで、隣接する導波路コア703の間の間隔で最も小さいものをW2とすると、W2>2λ/nを満たすのがより好ましい。なお、λは、光導波路を導波する入射光の波長である。また、プロセッサコアの数は2つに限るものではない。光スイッチなどを組み合わせてオンチップ光ネットワークを構築することで、3以上の複数のプロセッサコア間の情報伝送を、光導波路を用いて効率良く行うことができる。なお、図7の(b)に示す平面図において、上から2つめおよび4つめの導波路コア703の行において、受光器723および光変調器725の位置を入れ替えてもよい。
【0066】
ところで、光源の導入は、図8に示すように、光源710から出射される光を導波路コア703の光入射部に設けた光結合器703aにより光結合することで行えばよい。光源710は、例えば、表面出射型,裏面出射型などのフォトダイオードや半導体レーザを用いればよい。また、光源と導波路の高さを合わせることで、端面出射型の光源を用いることもできる。
【0067】
図8では、グレーティングからなる光結合器703aの上部にあたる上部クラッド層704の上に、裏面出射型の光源710を配置している。このようにすることで、光電気混載モジュールの全体のサイズを小型にすることができる。光結合器703aは、グレーティング結合器に限らず、フォトニック結晶、ミラー、あるいはこれらを組み合わせて構成してもよい。
【0068】
また、図9に示すように、光源710aを、溝部701aの底部の基板701に設けるようにしてもよい。このように、基板701に光源710aを実装することで、光源702より発せられる熱を、基板701の側に逃がすことができる。
【0069】
また、図10に示すように、1つの光源710bより出射される光を、光導入導波路コア703aより、各導波路コア703に分配してもよい。複数の導波路に分配して伝送チャネル数を増やすことで、より大容量の情報伝送を行うことができるようになる。なお、同一の符号は、図7と同様である。
【0070】
[実施の形態7]
次に、本発明の実施の形態7について説明する。図11は、本発明の実施の形態7における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。図11では、各構成を簡略化して示している。この半導体光配線装置は、まず、シリコンからなる基板1101の上に設けられた光導波領域1121と、光導波領域1121に連結して基板1101の上に設けられた素子形成領域1122a,1122bとを備える。
【0071】
また、本実施の形態における半導体光配線装置は、素子形成領域1122aのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域1122aに形成された受光器1123と、素子形成領域1122bのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域1122bに形成された光変調器1125と、光導波領域1121に形成された溝部1101aと、溝部1101aに充填されて形成された下部クラッド層1102と、下部クラッド層1102の上に形成されて受光器1123および光変調器1125に光接続する導波路コア1103と、導波路コア1103の上に形成された上部クラッド層1104とを備える。図11に示すように、導波路コア1103の端部から入射光が導入される。
【0072】
なお、各々の導波路コア1103よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域1122aの側部の基板1101上は、受光器1123に電極引き出し部(不図示)を介して接続する電極パッド部(不図示)と、光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域1122bの側部の基板1101上に形成されて、光変調器1125に電極引き出し部(不図示)を介して接続する電極パッド部(不図示)とを備える。また、電極引き出し部は、受光器1123の側部に形成された電極(不図示)に接続し、電極引き出し部1107は、光変調器1125の側部に形成された電極(不図示)に接続している。これらの構成は、前述した実施の形態2と同様である。
【0073】
また、本実施の形態では、導波路コア1103よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域1122a,1122bの側部に、下部クラッド層1102と同様の絶縁材料が充填された溝部を備える。この溝部の上に、電極引き出し部1105および電極引き出し部1107が配置されている。
【0074】
また、本実施の形態では、上部クラッド層1104の上にLSIチップ(電子素子)1132およびLSIチップ(電子素子)1152が実装されている。LSIチップ1132は、電気配線1131により受光器1123の電極パッド(不図示)に接続し、LSIチップ1152は、電気配線1151により光変調器1125の電極パッド(不図示)に接続している。電気配線1131および電気配線1151は、上部クラッド層1104に形成された貫通ビアに設けられている。なお、電気配線1131,電気配線1151は、図11に示される断面とは異なる位置に配置されている。
【0075】
このようにすることで、複数のLSIチップ間の情報伝達を、導波路コア1103よりなる光導波路(光配線)を介して行うことができる。また、LSIチップの数は2つに限るものではない。光スイッチなどを組み合わせて光ネットワークを構築することで、3つ以上の複数のLSIチップ間の情報伝送を、光導波路を用いて効率良く行うことができる。
【0076】
[実施の形態8]
次に、本発明の実施の形態8について説明する。図12は、本発明の実施の形態8における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。図12では、各構成を簡略化して示している。この半導体光配線装置は、前述した実施の形態におけるLSIチップ1132(図11)を、積層メモリ1132aにしたものである。他の構成は、前述した実施の形態7と同様である。
【0077】
本実施の形態によれば、LSIチップ1152と積層メモリ1132aと間の情報伝達を、導波路コア1103よりなる光導波路(光配線)を介して行うことができる。また、LSIチップおよび積層メモリの数は各々1つに限るものではない。光スイッチなどを組み合わせて光ネットワークを構築することで、複数のLSIチップおよび積層メモリの間の情報伝送を、光導波路を用いて効率良く行うことができる。
【0078】
[実施の形態9]
次に、本発明の実施の形態9について説明する。図13は、本発明の実施の形態9における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。図13では、各構成を簡略化して示している。この半導体光配線装置は、前述した実施の形態7におけるLSIチップ1132およびLSIチップ1152の上に、積層メモリ1132aおよび積層メモリ1152aを積層したものである。他の構成は、前述した実施の形態7と同様である。
【0079】
本実施の形態によれば、各LSIチップの間の情報伝達を、導波路コア1103よりなる光導波路(光配線)を介して行うことができる。また、LSIチップおよび積層メモリの数は各々2つに限るものではない。光スイッチなどを組み合わせて光ネットワークを構築することで、複数のLSIチップおよび積層メモリの間の情報伝送を、光導波路を用いて効率良く行うことができる。
【0080】
[実施の形態10]
次に、本発明の実施の形態10について説明する。図14は、本発明の実施の形態10における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。図14では、各構成を簡略化して示している。この半導体光配線装置は、まず、シリコンからなる基板1401の上に設けられた光導波領域1421と、光導波領域1421に連結して基板1401の上に設けられた素子形成領域1422a,1422bとを備える。
【0081】
また、本実施の形態における半導体光配線装置は、素子形成領域1422aのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域1422aに形成された受光器1423と、素子形成領域1422bのシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて素子形成領域1422bに形成された光変調器1425と、光導波領域1421に形成された溝部1401aと、溝部1401aに充填されて形成された下部クラッド層1402と、下部クラッド層1402の上に形成されて受光器1423および光変調器1425に光接続する導波路コア1403と、導波路コア1403の上に形成された上部クラッド層1404とを備える。導波路コア1403は、図14に示される断面とは異なる位置に配置されている。図14に示すように、導波路コア1403の端部から入射光が導入される。
【0082】
なお、各々の導波路コア1403よりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域1422aの側部の基板1401上は、受光器1423に電極引き出し部(不図示)を介して接続する電極パッド部(不図示)と、光導波路の光導波方向に垂直な方向の素子形成領域1422bの側部の基板1401上に形成されて、光変調器1425に電極引き出し部(不図示)を介して接続する電極パッド部(不図示)とを備える。また、電極引き出し部は、受光器1423の側部に形成された電極(不図示)に接続し、電極引き出し部1407は、光変調器1425の側部に形成された電極(不図示)に接続している。これらの構成は、前述した実施の形態2と同様である。
【0083】
また、本実施の形態では、光導波領域1421に形成されている溝部1401aの底部に、トランスインピーダンスアンプ回路1409および光変調器ドライバ回路1410を備える。
【0084】
トランスインピーダンスアンプ回路1409は、配線1409aにより受光器1423に接続している。また、トランスインピーダンスアンプ回路1409は、下部クラッド層1402および上部クラッド層1404を貫通する電気配線1431で、上部クラッド層1404の上に実装されているLSIチップ1432に接続している。
【0085】
光変調器ドライバ回路1410は、配線1410aにより光変調器1425に接続している。また、光変調器ドライバ回路1410は、下部クラッド層1402および上部クラッド層1404を貫通する電気配線1451で、上部クラッド層1404の上に実装されているLSIチップ1452に接続している。
【0086】
LSIチップ1452から光変調器ドライバ回路1410に電気配線1451を介して送られた電気信号により光変調器1425が駆動され、送られた電気信号が光信号に変換される。また、受光器1423において光信号が電気信号に変換され、トランスインピーダンスアンプ回路1409により増幅された電気信号が送信相手となるLSIチップ1432に電気配線1431を介して送られる。
【0087】
このようにすることで、複数のLSIチップ間の情報伝達を、導波路コア1403よりなる光導波路(光配線)を介して行うことができる。また、溝部1401aの底部に電子回路を集積しているので、基板表面積を有効に利用することができ、より高密度な光電気集積が可能となる。様々な種類の電子回路を集積することが可能であり、上述したような光素子の駆動回路に限らす、キャパシタ,インダクタ,および抵抗などの受動素子も集積することができる。下部クラッド層1402の層厚と比較して、電子回路は十分に薄いため、相互に干渉することなく集積が可能である。当然ながら、基板1401の溝が形成されていない表面にも電子回路を集積することが可能である。
【0088】
[実施の形態11]
次に、本発明の実施の形態11について説明する。図15は、本発明の実施の形態11における半導体光配線装置の構成を示す断面図である。図15では、各構成を簡略化して示している。この半導体光配線装置は、前述した実施の形態7の半導体光配線装置に、迷光吸収層1501を設けたものである。迷光吸収層1501は、例えば、アモルファスのGeから構成することができる。他の構成は、前述した実施の形態7と同様である。
【0089】
半導体光配線装置においては、光導波路の表面荒れや、光導波路と光素子とのインピーダンス不整合などに起因し、光の反射あるいは散乱が起こる場合がある。これらが迷光となり、例えば、LSIチップ1132に入射すると、LSIチップ1132の電子回路の誤動作を引き起こす可能性がある。これに対し、上述した迷光を吸収する迷光吸収層1501を設けることで、誤動作を防ぐことができる。迷光吸収層1501は、使用される光信号の波長において十分な吸収係数を有する材料から構成されていればよい。例えば、Siプロセスと整合性が良く製造が比較的容易で、十分な光吸収係数が得られるアモルファスGeまたは多結晶Geを用いるのが特に好ましい。
【0090】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、上部クラッド層は、SiO2,SiNx,およびSiONなどの固体材料に限るものではなく、例えば、空気などの気体や真空の状態であってもよく、また、液体から構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
101…基板、101a…溝部、102…下部クラッド層、103…コア、104…上部クラッド層、106…電極パッド部、121…光導波領域、122…素子形成領域、123…光素子、124…溝部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンからなる基板の上に設けられた光導波領域と、
この光導波領域に連結して前記基板の上に設けられた素子形成領域と、
前記素子形成領域のシリコン上にエピタキシャル成長により形成した半導体層を光吸収層として備えて前記素子形成領域に形成された光素子と、
前記光導波領域に形成された溝部と、
この溝部に充填されて形成された下部クラッド層と、
この下部クラッド層の上に形成されて前記光素子に光接続するコアと、
このコアの上に形成された上部クラッド層と、
前記コアよりなる光導波路の光導波方向に垂直な方向の前記素子形成領域の側部の前記基板上に形成されて、前記光素子に電極引き出し部を介して接続する電極パッド部と
を少なくとも備え、
前記下部クラッド層は、前記コアよりなる光導波路を伝搬する光が前記基板に漏れ出さない範囲の層厚とされていることを特徴とする半導体光配線装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体光配線装置において、
前記コアと前記光素子との光結合部に設けられた傾斜構造を備えることを特徴とする半導体光配線装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体光配線装置において、
溝部の底部に配置されて前記光素子に接続する電子回路を備えることを特徴とする半導体光配線装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体光配線装置において、
前記上部クラッド層の上に配置されて前記光素子に接続する電子素子を備えることを特徴とする半導体光配線装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体光配線装置において、
前記コアの上の前記上部クラッド層に配置されて、前記上部クラッド層に漏れ出す光を吸収する迷光吸収層を備えることを特徴とする半導体光配線装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体光配線装置において、
前記光素子は、受光器であることを特徴とする半導体光配線装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体光配線装置において、
前記光素子として、前記受光器に加えて光変調器を備え、前記受光器および前記光変調器は、各々異なる素子形成領域に形成されていることを特徴とする半導体光配線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−232567(P2011−232567A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103097(P2010−103097)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】