説明

半導体発光デバイスのための反射性コンタクト

半導体構造が、n型領域20とp型領域24との間に配された、発光層22を含んでいる。p側電極が、p型領域の一部の上に配されている。p側電極は、p型領域の第1の部分と直接接触する反射性の第1の材料26と、その第1の部分に隣接するp型領域の第2の部分と直接接触する第2の材料30とを含んでいる。第1の材料26および第2の材料30は、同一の厚さのプラナー状の層として形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、III族窒化物発光デバイスのための、反射性コンタクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)、共鳴キャビティ発光ダイオード(RCLED)、垂直キャビティレーザーダイオード(VCSEL)およびエッジ発光レーザーを含む、半導体発光デバイスは、現在利用可能な最も効率的な光源の一種である。可視スペクトル領域に亘って動作可能な高輝度発光デバイスの製造において、現在関心が集まっている材料系は、III−IV族半導体を含み、とりわけ、ガリウム、アルミニウム、インジウムおよび窒素の、二元、三元および四元合金(III族窒化物材料とも呼ばれる)を含む。典型的には、III族窒化物発光デバイスは、有機金属気相成長法(MOCVD)、分子線エピタキシ(MBE)またはその他のエピタキシャル技術によって、サファイア基板、炭化ケイ素基板、III族窒化物基板、複合材料基板またはその他の適切な基板上に、種々の組成および不純物ドープ濃度を有する半導体層のスタックをエピタキシャル成長させることにより、作製される。このスタックは、基板上に形成された、たとえばSiがドーピングされた1つ以上のn型層を含み、この1つまたは複数のn型層の上に形成されたアクティブ領域内に1つ以上の発光層が配され、そのアクティブ領域上に、たとえばMgがドーピングされた1つ以上のp型層が形成されることが多い。電気的コンタクトは、n型およびp型領域上に形成される。III族窒化物デバイスは、n側コンタクトとp側コンタクトとの両方が半導体構造の同じ側に形成された、インバーテッド型またはフリップチップ型のデバイスとして形成されることが多い。この場合、光は、この半導体構造の、それらコンタクトとは反対の側から取り出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
銀は、反射性のp側コンタクトとしてよく使われるが、機械的なストレス、化学反応、またはエレクトロマイグレーションにより誘発されるトランスポートの影響を受けやすいことが知られている。たとえば、米国特許第6946685号に記載されているような銀のp側コンタクトを有するIII族窒化物LEDが、図1に図示されている。米国特許第6946685号は、「銀電極の金属被覆は、水分および電場の存在下、たとえばデバイスのコンタクトに駆動電圧を印加した結果として発生する電場の存在下において、エレクトロケミカルマイグレーションに曝される。デバイスのpn接合に対する銀被覆のエレクトロケミカルマイグレーションは、pn接合を通る交番分流の経路をもたらし、デバイスの効率を低下させる。」と教示している。
【0004】
図1は、III-V族窒化物半導体のn型層120とIII-V族窒化物半導体のp型層140との間に発光活性領域130Aを含む、半導体構造を含んだ発光デバイスを示している。p側電極160は、銀を含んでおり、p型層の上に積層されている。n側電極(図1には図示せず)は、n型層と接続されている。活性領域からの発光を引き起こすため、上記の電極間に電気信号を印加する手段が設けられており、また、p側電極から活性領域への銀のエレクトロケミカルマイグレーションを防止するため、マイグレーションバリア175が設けられている。マイグレーションバリア175は、導電保護シートである。この保護シートは、銀を完全に包囲しており、図1に示すように、銀製p側電極のエッジもカバーしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの目的は、p側電極に、反射性の第1の材料と、第2の材料とを含めることである。いくつかの実施形態では、第2の材料は、第1の材料のマイグレーションを抑制することができる。銀コンタクトおよびその銀コンタクトを包囲する保護シートを有するデバイスと比較して、コンタクトの反射性を改善することも可能である。
【0006】
本発明の実施形態は、n型領域とp型領域との間に配された発光層を含む、半導体構造を含んでいる。p側電極は、p型領域の一部の上に配されている。p側電極は、p型領域の第1の部分と直接接触する反射性の第1の材料と、その第1の部分に隣接するp型領域の第2の部分と直接接触する第2の材料とを含んでいる。第1の材料および第2の材料は、実質的に同一の厚さのプラナー状の層として形成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】銀製p側電極をカバーするマイグレーションバリアを有する発光デバイスを示した図
【図2】フォトレジストを用いてパターン化された銀製p側コンタクトを有するIII族窒化物デバイスの一部を示した図
【図3】パターン化された銀製p側コンタクトの上に層を形成した後の、図2のデバイスを示した図
【図4】フォトレジストを剥がしてp側電極の上に保護シートを形成した後の、図3のデバイスを示した図
【図5】マウントに取り付けられたIII族窒化物デバイスを示した図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示したデバイスでは、銀コンタクトを保護シートで封止するため、銀はまずメサのエッジから後退するようにエッチングされる。反射性p側電極160のエッジとメサのエッジとの間の帯状領域10は、銀製p側電極160のような反射性を有しないので、「黒色帯」と呼ぶこととする。この黒色帯は、たとえば、約10μmの幅で、デバイス面積の約7%を占めるものとされ得る。黒色帯による光の吸収は、デバイスの効率を低下させ得る。さらに、銀製p側電極160のエッジに形成される段差12は、保護シート175による封止が難しく、したがって水分の侵入および外側への銀のマイグレーションが生じやすい。段差12の高さを最小限に抑えるためには、銀製p側電極160は、可能な限り薄く保たれ、たとえば約150nmに保たれる。一方、銀製p側電極の安定性および反射性の観点からは、より厚い銀の層の方が好ましく、たとえば約200nmの厚さが好ましい。
【0009】
本発明の実施形態では、銀製p側コンタクトを後退させるようにエッチングした後、黒色帯が、銀と同一の厚さを有する金属層で埋められる。このほぼプラナー状のp側コンタクト構造は、図1に示したコンタクトのような従来型のコンタクトよりも、反射性が高く封止レベルも良好である。
【0010】
図2から4は、本発明の実施形態に係る反射性コンタクトの形成過程を図示している。図2から4に図示してあるのは、デバイスの一部のみである。図2では、n型領域、発光もしくは活性領域、およびp型領域を含むIII族窒化物半導体構造が、成長基板(図示せず)上に成長させられている。成長基板は、任意の適切な成長基板であってよく、典型的にはサファイアまたはSiCとされる。まず、n型領域20が、基板上に成長させられる。n型領域は、種々の組成および不純物ドープ濃度を有する複数の層を含んでいてもよい。たとえば、n型領域は、バッファ層や核形成層のようなプリパレーション層(たとえばn型層もしくは意図的にはドーピングされていない層とされ得る)、後の工程における成長基板の分離もしくは基板除去後の半導体構造の薄層化を容易にするためのリリース層、および発光領域が効率的な発光を行うために望ましい特定の光学特性もしくは電気的特性を実現するように設計された、n型あるいは場合によってはp型でもよいデバイス層を含む領域とされ得る。
【0011】
発光または活性領域22は、n型領域20の上に成長させられる。適切な発光領域の例としては、単一の厚いもしくは薄い発光層、またはバリア層により隔てられた複数の薄いもしくは厚い量子ウェル発光層を含むマルチ量子ウェル発光領域が挙げられる。一例として、マルチ量子ウェル発光領域は、各々100Å以下の厚さのバリアで隔てられた、各々25Å以下の厚さを有する複数の発光層を含むものとされてもよい。いくつかの実施形態では、デバイス内の発光層の各々の厚さは、50Åよりも厚くされる。
【0012】
p型領域24は、発光領域22の上に成長させられる。n型領域と同様に、p型領域も、種々の組成、厚さおよび不純物ドープ濃度を有する複数の層を含んでいてもよく、意図的にドーピングされていない層やn型層を含んでいてもよい。
【0013】
反射性金属製のp側コンタクト26は、p型領域24の上に形成される。反射性金属26は、通常は銀を含み、純銀製であってもよいし、銀を含む合金製であってもよいし、1つまたは複数の銀の層と、別の金属(たとえばニッケル)または他の導電性材料の1つまたは複数の層とを含むものであってもよい。いくつかの実施形態では、反射性金属26は、150nmと250nmとの間の厚さとされる。レジスト層28が、反射性金属26の上に形成およびパターン化され、その後、反射性金属26の一部、たとえば黒色帯領域27内の部分が除去される。反射性金属26のうち、レジスト層28の下にある部分は、デバイス内に残る。エッチング時間を調整することにより、レジスト層28の下からも、最大数μm分の反射性金属26が除去され得る。これは、一般的にアンダーカットと呼ばれる。
【0014】
図3では、レジスト層28および黒色帯27が、反射性金属26とほぼ同じ厚さの層30で覆われている。たとえばいくつかの実施形態では、層30は、150nmと200nmとの間の厚さとされる。層30は、銀のマイグレーションの問題を生じさせない範囲で可能な限り、高い反射率を有するものが選択される。たとえば、層30は、蒸着されたアルミニウムの単一層、スパッタリングされた1つもしくは複数のアルミニウム層、1つもしくは複数のアルミニウム合金、AlTiのようなアルミニウム金属スタック、または反射率を強化するためのAl/Al二重層もしくはSiO/Al二重層のような非金属層とされてもよい。反射性金属26のアンダーカットを調整し、かつ層30につき適切な積層技術を選択することにより、反射性金属26と層30との間の差を、ゼロから2μm未満の間で調整することが可能である。
【0015】
その後、レジスト層28が剥がされ、反射性金属26が露出させられると共に、黒色帯27内の層30は残される。図4では、保護シート32が、反射性金属26および層30を含むp側電極上に形成されている。保護シート32は、たとえば、チタン、タングステンまたは1つもしくは複数の合金といったような、1つまたは複数の金属であってもよいし、反射率を強化するためのSiN、SiOまたはAlといったような1つまたは複数の誘電体であってもよい。いくつかの実施形態では、保護シート32は、2つのTiWの層に挟まれたTiWNの層とされる。いくつかの実施形態では、層30がAlTiとされ、保護シート32が少なくとも1つのTiW層を含むものとされる。AlTiは、TiWの保護シート層に対し、強化された接着性をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、保護シートは、接着性を高めるため、ニッケル等のアンダー層および/またはオーバー層を含むものとされる。
【0016】
図5は、マウント40に取り付けられたLED42を示している。p型領域24の上に上記で述べたようなp側電極を形成する前または形成した後に、p型領域および発光領域の一部をエッチングで除去することにより、n型領域の一部が露出させられる。n型領域20、発光領域22およびp型領域24を含む半導体構造は、図5では構造44で示されている。n側コンタクト46は、n型領域の露出させられた部分に形成される。
【0017】
LED42は、n側相互接続部56およびp側相互接続部58によって、マウント40に接合させられる。相互接続部56および58は、たとえばはんだその他の金属といったような、任意の適切な材料とされ得るものであり、複数の材料層を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、相互接続部は、少なくとも1つの金の層を含むものとされ、LED42とマウント40との間の接合は、超音波接合により形成される。
【0018】
超音波接合の間、LEDダイ42はマウント40上に配される。接合ヘッドが、LEDダイの上面上に配置される。この面は、サファイア上に成長させられたIII族窒化物デバイスの場合、サファイア製の成長基板の上面とされることが多い。接合ヘッドは、超音波トランスデューサに接続される。超音波トランスデューサは、たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)層のスタックであってもよい。系を調和共振させるような周波数(数十から数百kHzのオーダーの周波数であることが多い)で、電圧がトランスデューサに印加されると、トランスデューサは振動を開始し、それにより、多くは数μmオーダーの振幅で、接合ヘッドおよびLEDダイを振動させる。この振動は、LED42上の構造の金属格子内の原子を、マウント40上の構造と相互拡散させ、結果として、冶金学的に連続した接合をもたらす。接合中において、熱および/または圧力が加えられてもよい。
【0019】
LEDダイ42をマウント40に接合した後、半導体層の成長の土台とされた基板の全部または一部が、その除去対象の特定の成長基板に適した任意の技術により除去される。たとえば、サファイアの基板は、レーザーによるリフトオフで除去され得る。成長基板の全部または一部を除去した後、たとえばフォトエレクトロケミカルエッチングによって残りの半導体構造を薄くする処理、および/またはたとえばフォトニック結晶構造によって表面を粗くするもしくはパターン化する処理が行われてもよい。基板の除去後、レンズ、波長変換材料、または当該技術分野において知られているその他の構造が、LED42の上に配されてもよい。
【0020】
上記で説明した実施形態は、図1に示した構造と比較して、いくつかの利点を有し得る。上記の実施形態におけるp側電極の構造は、よりプラナー状の構造となり得るので、ストレスが集中する点を減らし、また保護シートが段差部をカバーする必要がなくして、保護シートの一体性を改善する。反射性金属のエッジにおける段差を保護シートでカバーすることにまつわる問題を大きくすることなく、反射性金属をより厚くすることが可能である。黒色帯により吸収される光の量を低減させることにより、チップからの光の損失を抑制することができる。層30は、その後の処理中において反射性金属26のエッジを保護することができるので、下にある半導体材料からの銀の剥離にまつわる問題も、軽減することができる。アルミニウム製の層30は、電気防食用陽極として働くことができ、それにより銀の電食を阻止するまたは遅らせることができる。黒色帯内における銀のマイグレーションも、アルミニウム層30のより低い電場および高い導電性により、抑制することができる。
【0021】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、当業者においては、本開示内容を読むことにより、ここで説明した創作的概念の精神から逸脱することなく、発明に対し種々の変更を加えられることが理解できよう。したがって、本発明の技術的範囲を、図解および説明された具体的な実施形態に限定することは意図されていない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型領域とp型領域との間に配された発光層を含む半導体構造と、
前記p型領域上に配されたp側電極と
を含むデバイスであって、
前記p側電極が、
− 前記p型領域の第1の部分と直接接触する反射性の第1の材料と、
− 前記第1の部分に隣接する前記p型領域の第2の部分と直接接触する第2の材料とを含み、
前記第1の材料および前記第2の材料が、実質的に同一の厚さのプラナー状の層として形成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記第1の材料が銀を含むことを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記第2の材料がアルミニウムを含むことを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2の材料が、アルミニウム合金、アルミニウム金属スタック、AlTi、Al/Al二重層およびSiO/Al二重層のうちの、1つを含むことを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記p側電極が、前記第1の材料および前記第2の材料の上に配された第3の材料をさらに含み、前記第3の材料が、前記第1の材料のマイグレーションを防止するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記第3の材料が、チタンおよびタングステンを含むことを特徴とする請求項5記載のデバイス。
【請求項7】
前記n型領域の一部を露出させるように、前記p型領域および前記発光層の一部がエッチングにより除去され、
前記p型領域の残りの部分がメサを形成し、
前記第2の材料が、前記第1の材料と前記メサのエッジとの間に配されることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
n型領域とp型領域との間に配された発光層を含む半導体構造を成長させ、
前記p型領域上に反射性の第1の材料を形成し、
前記反射性の第1の材料の上にレジスト層を形成し、
前記レジスト層内に空隙を形成するように、該レジスト層をパターン化し、
前記レジスト層の前記空隙に対応する、前記反射性の第1の材料の一部を除去し、
前記レジスト層の残りの部分、および前記反射性の第1の材料を除去することにより露出させられた前記p型領域の一部の上に、第2の材料を形成し、
前記レジスト層の前記残りの部分を除去する各処理を含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記第1の材料と前記第2の材料とが、実質的に同一の厚さとされることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記第1の材料が銀を含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記第2の材料がアルミニウムを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項12】
前記第1の材料および前記第2の材料の上に第3の材料を形成する処理をさらに含み、前記第3の材料が、前記第1の材料のマイグレーションを防止するように構成されることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項13】
前記第3の材料が、チタンおよびタングステンを含むことを特徴とする請求項12記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−533903(P2012−533903A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521124(P2012−521124)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052894
【国際公開番号】WO2011/010236
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(500507009)フィリップス ルミレッズ ライティング カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (197)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】