説明

半導体発光素子、ウェーハ、半導体発光素子の製造方法及びウェーハの製造方法

【課題】高効率の半導体発光素子、ウェーハ、半導体発光素子の製造方法及びウェーハの製造方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、n形の第1層と、p形の第2層と、第1層と第2層との間に設けられた発光部と、第1層と発光部との間に設けられた第1積層構造体と、第1層と第1積層構造体との間に設けられた第2積層構造体と、を含む半導体発光素子が提供される。発光部は、複数の障壁層と、複数の障壁層の間に設けられた井戸層と、を含む。第1積層構造体は、窒化物半導体を含む複数の第3層と、複数の第3層と交互に積層され井戸層の厚さよりも薄いGaInNを含む複数の第4層と、を含む。第2積層構造体は、第3層の組成とは異なる組成を有する窒化物半導体を含む複数の第5層と、複数の第5層と交互に積層され井戸層の厚さよりも薄いGaInNを含む複数の第6層と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子、ウェーハ、半導体発光素子の製造方法及びウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、半導体発光素子やHEMT(High Electron Mobility Transistor)素子等の各種の半導体素子に用いられている。このような窒化物半導体においては、GaN結晶との間の格子不整合による高密度の貫通転位により素子の特性が制約を受ける。
【0003】
窒化物半導体を用いた半導体発光素子つまりLED(Light Emitting Diode)素子は、白色LED等の蛍光体励起用光源として期待されているが、出力を大きくすると大きな発光効率、つまり高光出力が得られないことが問題となっている。
【0004】
窒化物半導体を用いたLEDなどの半導体発光素子の効率を向上するために、種々の提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−205988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、高効率の半導体発光素子、ウェーハ、半導体発光素子の製造方法及びウェーハの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態によれば、窒化物半導体を含むn形の第1層と、窒化物半導体を含むp形の第2層と、前記第1層と前記第2層との間に設けられた発光部と、前記第1層と前記発光部との間に設けられた第1積層構造体と、前記第1層と前記第1積層構造体との間に設けられた第2積層構造体と、を含む半導体発光素子が提供される。前記発光部は、複数の障壁層と、前記複数の障壁層の間に設けられた井戸層と、を含む。前記第1積層構造体は、窒化物半導体を含む複数の第3層と、前記複数の第3層と交互に積層され、それぞれの厚さが前記井戸層の厚さよりも薄いGaInNを含む複数の第4層と、を含む。前記第2積層構造体は、前記第3層の組成とは異なる組成を有する窒化物半導体を含む複数の第5層と、前記複数の第5層と交互に積層され、それぞれの厚さが前記井戸層の厚さよりも薄いGaInNを含む複数の第6層と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図2】図2(a)〜図2(d)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
【図4】第1参考例の半導体発光素子の構成を示す模式的断面図である。
【図5】半導体発光素子の特性を示すグラフである。
【図6】第1の実施形態に係る半導体発光素子を示すバンドギャップエネルギー図である。
【図7】第1の実施形態に係る別の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図8】第1の実施形態に係る別の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図9】第1の実施形態に係る別の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図10】第2の実施形態に係るウェーハを示す模式的断面図である。
【図11】第3の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を示すフローチャート図である。
【図12】第3の実施形態に係る半導体発光素子の別の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図13】第4の実施形態に係る半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図14】第4の実施形態に係る半導体発光素子の特性を示すグラフ図である。
【図15】第4の実施形態に係る別の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図16】第4の実施形態に係る別の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図17】第5の実施形態に係るウェーハを示す模式的断面図である。
【図18】第6の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
【図19】第6の実施形態に係る半導体発光素子の別の製造方法を例示するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。 図1に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子10は、n形の第1層131と、p形の第2層151と、発光部140と、第1積層構造体210と、第2積層構造体220と、を含む。
【0011】
第1層131は、窒化物半導体を含む。第2層151は、窒化物半導体を含む。第1層131は、例えば、n形GaN及びn形AlGaNの少なくともいずれかを含む。第2層151は、例えば、p形AlGaNを含む。例えば、第1層131として、シリコン(Si)を含有するn形閉じ込め層が用いられる。また、第2層151として、マグネシウム(Mg)を含有するp形AlGaNを含むp形閉じ込め層が用いられる。
【0012】
このように、半導体発光素子10は、n形の半導体層と、p形の半導体層と、n形の半導体層とp形の半導体層との間に設けられた発光部140と、を含む半導体層を含む。これらの半導体層には、例えば、Alα1Ga1−α1−β1Inβ1N(α1≧0、β1≧0、α1+β1≦1)などの窒化ガリウム系化合物半導体を用いることができる。すなわち、本実施形態における半導体層には、窒化物半導体を含むことができる。
【0013】
発光部140は、第1層131と第2層151との間に設けられる。発光部140の構成の例については後述する。
【0014】
第1積層構造体210は、第1層131と発光部140との間に設けられる。第1積層構造体210は、複数の第3層203と、複数の第4層204と、を含む。第3層203は、窒化物半導体を含む。複数の第4層204は、複数の第3層203と交互に積層される。第4層204は、GaInNを含む。
【0015】
第2積層構造体220は、第1層131と第1積層構造体210との間に設けられる。第2積層構造体220は、複数の第5層205と、複数の第6層206と、を含む。第5層205は、第3層の組成とは異なる組成を有する窒化物半導体を含む。複数の第6層206は、複数の第5層205と交互に積層される。第6層206は、GaInNを含む。
【0016】
ここで、第1層131から第2層151に向かう方向に対して平行な軸をZ軸とする。複数の第3層203と複数の第4層204とは、Z軸に沿って交互に積層されている。複数の第5層205と複数の第6層206とは、Z軸に沿って交互に積層されている。
【0017】
図1に表したように、半導体発光素子10は、基板110、第1バッファ層121、第2バッファ層122、n形コンタクト層130、p形コンタクト層150、p側電極160及びn側電極170をさらに含むことができる。
【0018】
基板110には、例えば、主面がc面のサファイア基板が用いられる。また、基板110には、Si基板を用いても良い。基板110の上に、第1バッファ層121が設けられる。第1バッファ層121として、例えばAlN層が用いられる。
【0019】
例えば、第1バッファ層121は、第1AlNバッファ層121aと、第2AlNバッファ層121bと、を含む。第1AlNバッファ層121aは、基板110の上に形成される。第1AlNバッファ層121aにおける炭素濃度は高い。第2AlNバッファ層121bは、第1AlNバッファ層121aの上に形成される。第1AlNバッファ層121aにおける炭素濃度は、第2AlNバッファ層121bにおける炭素濃度よりも高い。
【0020】
第1バッファ層121の上に、第2バッファ層122が用いられる。第2バッファ層122には、例えば、ノンドープのGaN層が用いられる。第2バッファ層122は、例えば格子緩和層である。
【0021】
第2バッファ層122の上に、n形コンタクト層130が設けられる。n形コンタクト層130には、例えばSiドープのn形GaN層が用いられる。n形コンタクト層130の上に、第1層131が設けられる。第1層131は、例えば、Siドープのn形閉じ込め層である。第1層131の上に第2積層構造体220が設けられる。第2積層構造体220の上に第1積層構造体210が設けられる。第1積層構造体210の上に、発光部140が設けされる。発光部140の上に第2層151が設けられる。第2層151は、例えば、Mgドープのp形閉じ込め層である。第2層151の上に、p形コンタクト層150が設けられる。p形コンタクト層150には、例えば、Mgドープのp形GaN層が用いられる。
【0022】
第1積層構造体210の複数の第3層203は、AlGaInNを含んでもよい。第2積層構造体220の複数の第5層205はGaNを含んでもよい。
【0023】
p形コンタクト層150の上に、p側電極160が設けられる。p側電極160には、例えば、Ni層が用いられる。n形コンタクト層130の上に、n側電極170が設けられる。n形コンタクト層130には、例えば、Al/Auの積層膜が用いられる。
【0024】
p側電極160とn側電極170とに電圧を印加することで、発光部140に電流が供給され、発光部140から光(発光光)が放出される。
【0025】
図2(a)〜図2(d)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図2(a)は、半導体発光素子10、及び、後述する半導体発光素子11、12、15、20、21、22、並びに、ウェーハ60及び70における発光部140の構成を例示している。図2(b)は、半導体発光素子10a、11a、12a、20a、21a、22a、並びに、ウェーハ60a及び70aにおける発光部140の構成を例示している。図2(c)は、後述する半導体発光素子10b、11b、12b、20b、21b、22b、並びに、ウェーハ60b及び70bにおける発光部140の構成を例示している。図2(d)は、後述する半導体発光素子11c、12c、20c、21c、22c、並びに、ウェーハ60c及び70cにおける発光部140の構成を例示している。
【0026】
図2(a)に表したように、半導体発光素子10においては、発光部140は、複数の障壁層41(例えば第1障壁層BL1及び第2障壁層BL2など)と、井戸層42と、を含む。井戸層42は、複数の障壁層41の間に設けられる。
【0027】
例えば、発光部140は、単一量子井戸(SQW:Single Quantum Well)構造を有することができる。このとき、発光部140は、2つの障壁層41と、その障壁層41の間に設けられた井戸層42と、を含む。例えば、発光部140は、多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)構造を有することができる。このとき、発光部140は、3つ以上の障壁層41と、障壁層41どうしのそれぞれの間に設けられた井戸層42と、を含む。
【0028】
図2(a)に示した例では、発光部30は、(n+1)個の障壁層41と、n個の井戸層42と、を含む(nは、1以上の整数)。第(i+1)障壁層BL(i+1)は、第i障壁層BLiと第2層151との間に配置される(iは、1以上(n−1)以下の整数)。第(i+1)井戸層WL(i+1)は、第i井戸層WLiと第2層151との間に配置される。第1障壁層BL1は、第1層131と第1井戸層WL1との間(すなわち、第1積層構造体210と第1井戸層WL1との間)に設けられる。第n井戸層WLnは、第n番障壁層BLnと第(n+1)障壁層BL(n+1)との間に設けられる。第(n+1)障壁層BL(n+1)は、第n井戸層WLnと第2層151との間に設けられる。
【0029】
図2(b)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子10aにおいては、発光部140に1つの井戸層42が設けられる。図2(c)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子10bにおいては、発光部140に2つの井戸層42が設けられる。図2(d)に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子10cにおいては、発光部140に3つの井戸層42が設けられる。さらに、発光部140に4つ以上の井戸層42を設けても良い。
【0030】
発光部140が単一の量子井戸構造を有する場合には、電子と正孔とが同一の井戸層42に注入されるので、高効率の発光を得ることができる。つまり井戸層42が1である場合は、複数の井戸層42が設けられる場合と異なり、キャリアの注入効率の井戸層42間での不均一が生じない。
【0031】
井戸層42が2つである場合には、電子の注入効率の高いn形の第1層131側の井戸層42と、正孔の注入効率が高いp側の第2層151側の井戸層42と、の2層が得られる。このため、キャリアの利用効率が高い。数多くの(例えば4つ以上)の井戸層42を設けた場合は、発光効率が低く吸収体としての効果の大きい井戸層42ができる可能性があるが、井戸層42が2つの場合は、このような井戸層42は生じない。
【0032】
井戸層42が3つである場合は、複数の井戸層42を設けた構造の中では、電子注入とホール注入に対して対称な構造を形成する最も単純な構造が実現できる。このため、キャリアの利用効率が高い。数多くの(例えば4つ以上)の井戸層42を設けた場合は、発光効率が低く吸収体としての効果の大きい井戸層42ができる可能性があるが、井戸層42が3つの場合は、このような井戸層42は生じない。
【0033】
発光部140が多重量子井戸構造を有する場合は、注入された電子と正孔との再結合に寄与する井戸層42の数が増加する。このため、高効率の発光を得ることができる。特に、キャリア(電子及び正孔)の注入量が多い場合でも、井戸層42内でキャリア密度の増加が分散され、キャリア密度の増加が小さいので結合効率の低下が抑制される。これにより、高効率の発光を得ることができる。
【0034】
発光部140は、実効的な単一量子井戸構造を有していても良い。実効的な単一量子井戸構造は、例えば、井戸層42内にポテンシャルの凹凸がある状態を含む。この場合、井戸層42内で、そのポテンシャルの凹凸の間を電子及び正孔の少なくともいずれかが移動できる。また、実効的な単一量子井戸構造は、複数の井戸層42において井戸層42どうしの間の障壁層41が薄い状態を含む。この場合には、井戸層42間の障壁のポテンシャル差が小さく、複数の井戸層42の間を、電子及び正孔の少なくともいずれかが移動できる。例えば、実効的な単一量子井戸構造においては、波動関数の井戸層42から井戸層42間へのしみだしが大きく、複数の井戸層42が実効的に結合している。実効的な単一量子井戸構造においては、例えば、井戸層42間の障壁のポテンシャルが低く、熱励起されたキャリアが複数の井戸層42の間で移動できる。
【0035】
井戸層42は、III族元素とV族元素とを含む窒化物半導体を含む。例えば、井戸層42は、インジウム(In)とガリウム(Ga)とを含む窒化物半導体を含む。
【0036】
障壁層41は、III族元素とV族元素とを含む窒化物半導体を含む。障壁層41のバンドギャップエネルギーは、井戸層42のバンドギャップエネルギーよりも大きい。障壁層41がInを含む場合、障壁層41のIII族元素中におけるInの組成比は、井戸層42のIII族元素中におけるInの組成比よりも低い。
【0037】
例えば、第1障壁層BL1は、例えば、Alx1Ga1−x1−y1Iny1N(0<x1、0≦y1、x1+y1<1)を含む。
例えば、第2障壁層BL2は、例えば、Alx2Ga1−x2−y2Iny2N(0<x2、0≦y2、x2+y2<1)を含む。なお、x2はx1と同じでも良く、異なっても良い。また、y2は、y1と同じでも良く、異なっても良い。例えば、x2<x1である。
【0038】
例えば、第i障壁層BLi(1≦i≦n+1)は、例えば、AlxiGa1−xi−yiInyiN(0<xi、0≦yi、Σ(xi+yi)<1)を含む。なお、xiはx1と同じでも良く、異なっても良い。また、yiは、y1と同じでも良く、異なっても良い。例えば、xi<x1である。
【0039】
第i井戸層WLi(1≦i≦n)(井戸層42)は、例えば、Alx0Ga1−x0−y0Iny0N(0≦x0、0<y0、x0+y0<1、y1<y0、y2<y0)を含む。例えば、第1井戸層WL1(井戸層42)は、Ga1−y0Iny0N(0<y0≦1、y1<y0、y2<y0)を含む。
【0040】
なお、いずれの場合にも、第1積層構造体210の最も発光部140側に第3層203を用いることで、第3層203を第1障壁層BL1として機能させることができる。または、第1積層構造体210の発光部140側は、第4層204で終わっていると考えることもできる。
【0041】
発光部140から放出される光(発光光)は、例えば、近紫外光である。発光光のピーク波長は、例えば、380nm以上400nm以下である。但し、実施形態はこれに限らず、発光光の波長は任意である。発光光のピーク波長は、例えば、400nmよりも長く500nm以下でも良い。発光部140における発光光のピーク波長は、例えば、470nm以上とすることができる。
【0042】
発光部140における発光波長のピーク波長が380nm以上であると、吸収端が365nmのGaNの吸収に加え、第1積層構造体210による吸収の影響が小さくできる。本願発明者は、第1積層構造体210の発光相当波長が370nm以上380nmの間、特に、370nm以上375nm以下の間である場合は、発光部140の発光の効率が高くなることをPL測定により確認した。この結果に基づくと、第1積層構造体210の発光相当波長を、370nm以上380nmの間の波長域とすることが素子特性向上に望ましいと考えられる。なお、本実施形態の半導体発光素子に用いるウェーハのPL測定を行うと、第1積層構造体210からの発光が確認できる場合があることを確認した。この発光スペクトルのピーク波長をこの半導体発光素子の発光相当波長とした。
【0043】
発光部140における発光波長のピーク波長が400nm以下の場合は、井戸層42の厚さを4.5nm以上7nm以下に設定する。これにより、例えば、良好な発光が得られた。発光部140における発光波長のピーク波長が395nm以下の場合は、井戸層42の厚さは、4.5nm以上7nmに設定する。これにより、良好な発光が得られ、さらに発光波長と強度の制御性が向上した。
【0044】
発光部140における発光波長のピーク波長が400nm以上450nm以下の場合は、井戸層42の厚さ3nm以上4.5nmに設定すると高い発光効率を得ることができる場合があった。ピーク波長が420nm以上450nm以下の場合に、井戸層42の厚さを3.5nm以上4nm以下に設定すると発光強度が特に高くその制御性が向上した。
【0045】
発光部140における発光波長のピーク波長が発光波長が430nm以上470nm以下の単一量子井戸構造においては、井戸層42の厚さが3nm以上3.5nm以下において高い発光効率を得ることができる場合があった。発光波長が430nm以上470nm以下の多重量子井戸構造においては、井戸層42の厚さが2.5nm以上3nm以下において高い発光効率を得ることができる場合があった。
【0046】
発光部140における発光光のピーク波長は、例えば、470nm以上とすることができ、3.5nm以下の厚さの井戸層42で発光を得ることができた。
【0047】
本実施形態においては高品質な下地結晶が得られるので、本実施形態の構成は、さらに長波長(例えば500nm帯、600nm帯、700nm帯、さらに、InNの吸収端である0.75eよりも短波長の任意の波長)の活性層を有する素子に適用可能である。また、単一量子井戸構造及び多重量子井戸構造に加え、DH(Double Hetero)構造、区分的量子井戸構造及び量子ドット構造(これらの構造は平均化すると面状の発光領域を有し、井戸層とみなすことができる)等の構造を発光部140に適用可能である。
【0048】
以下では、井戸層42の数が任意である例として半導体発光素子10に関して説明する。以下の説明は、半導体発光素子10a〜10cにも適用される。
【0049】
図1に表したように、半導体発光素子10においては、第1積層構造体210及び第2積層構造体220が設けられる。
【0050】
複数の第4層204のそれぞれの厚さは、井戸層42(例えば第1井戸層WL1)の厚さよりも薄い。複数の第3層203のそれぞれの厚さは、複数の障壁層41のそれぞれの厚さ(例えば第1障壁層BL1の厚さ及び第2障壁層BL2の厚さ)よりも薄い。
【0051】
複数の第6層206のそれぞれの厚さは、井戸層42(例えば第1井戸層WL1)の厚さよりも薄い。複数の第5層205のそれぞれの厚さは、複数の障壁層41のそれぞれの厚さ(例えば第1障壁層BL1の厚さ及び第2障壁層BL2の厚さ)よりも薄い。
【0052】
第1積層構造体210は、例えば超格子構造を有する。第2積層構造体220も例えば超格子構造を有する。既に説明したように、第5層205は、第3層の組成とは異なる組成を有する窒化物半導体を含む。このように、半導体発光素子10においては、2種類の超格子が設けられる。
【0053】
例えば、複数の第3層203は、AlGaInN及びGaNのいずれか一方を含み、複数の第5層205は、AlGaInN及びGaNのいずれか他方を含む。例えば、第3層203はAlGaInNを含み、第5層205はGaNを含む。または、第3層203はGaNを含み、第5層205はAlGaInNを含む。以下では、第3層203がAlGaInNを含み、第5層205がGaNを含む場合について説明する。
【0054】
例えば、第1積層構造体210は、AlGaInNの第3層と、GaInNの第4層と、を含む超格子である。第2積層構造体220は、GaNの第5層と、GaInNの第6層と、を含む超格子である。このように、本実施形態に係る半導体発光素子10においては、種類が異なる2つの積層構造体を設けることで、効率が向上する。
【0055】
以下、半導体発光素子10の特性の例について説明する。本願発明者は、半導体発光素子10を実際に作製し、その特性を評価した。以下、半導体発光素子10の作製方法について説明する。以下の方法は、実施形態に係る半導体発光素子10の作製方法の例に相当する。
【0056】
まず、有機金属気相成長法を用いて、表面がサファイアc面からなる基板110の上に、第1バッファ層121となるAlN膜(厚さ約2μm)を形成する。具体的には、高炭素濃度の第1AlNバッファ層121aを形成する。さらに、第1AlNバッファ層121aの上に、高純度の第2AlNバッファ層121bを形成する。第1AlNバッファ層121aにおける炭素濃度は、例えば3×1018cm−3以上5×1020cm−3以下である。第1AlNバッファ層121aの厚さは、例えば、3nm以上20nm以下である。第2AlNバッファ層121bにおける炭素濃度は、例えば1×1016cm−3以上3×1018cm−3以下である。第2AlNバッファ層121bの厚さは、例えば約2μmである。
【0057】
その後、第1バッファ層121の上に、第2バッファ層122(格子緩和層)となる、ノンドープGaN膜(厚さ2μm)を形成する。
【0058】
その後、n形コンタクト層130となるSiドープn形GaN膜を形成する。Siドープn形GaN膜におけるSi濃度は、例えば0.2×1019cm−3以上2×1019cm−3以下であり、厚さは例えば3μm以上10μm以下であり、より望ましくは例えば、6μmである。さらに、n形閉じ込め層(第1層131)となる、Siドープn形GaN層を形成する。Siドープn形GaN層におけるSi濃度は、例えば0.2×1018cm−3以上9×1018cm−3あり、厚さは例えば0.2μm以上1.5μm以下である。
【0059】
第2バッファ層122の上に、第2積層構造体220を形成する。例えば、第5層205となるGaN層と、第6層206となるGaInN層(例えばGa0.93In0.07N層)と、を交互に積層する。この例では、第5層205には、Siが、例えば約1.2×1018cm−3で添加される。第5層205のそれぞれの厚さは、例えば2.5nmである。第6層206のそれぞれの厚さは、例えば1nmである。この例では、第5層205と第6層206とのペア数は、例えば12以上30以下、望ましくは16以上20以下である。
【0060】
第2積層構造体220の上に、第1積層構造体210を形成する。例えば、第3層203となるAl0.07Ga0.925In0.005N層と、第4層204となるGa0.93In0.07N層と、を交互に積層する。この例では、第3層203には、Siが、例えば約5×1018cm−3で添加される。第3層203のそれぞれの厚さは、例えば2nmである。第4層204のそれぞれの厚さは、例えば1nmである。この例では、第3層203と第4層204のペア数は、30である。
【0061】
第1積層構造体210の上に、発光部140を形成する。例えば、第1障壁層BL1となる、Siドープn形Al0.065Ga0.93In0.005N膜を形成する。Siドープn形Al0.065Ga0.93In0.005N膜におけるSi濃度は、例えば0.5×1019cm−3以上2×1019cm−3以下であり、厚さは例えば13.5nmである。その上に、井戸層42となる、Ga0.93In0.07N層(厚さ6nm)を形成する。さらに、その上に、第2障壁層BL2となるAl0.065Ga0.93In0.005N膜(厚さ6nm)を形成する。
【0062】
その上に、p形閉じ込め層(第2層151)となるMgドープp形Al0.25Ga0.75N膜(厚さ24nm)を形成する。p形閉じ込め層うちの発光部140の側の部分におけるMg濃度は、例えば0.8×1019cm−3以上5×1019cm−3以下である。p形閉じ込め層のうちの発光部140とは反対の側の部分におけるMg濃度は、例えば0.2×1019cm−3以上2×1019cm−3以下である。
【0063】
その上に、p形コンタクト層150となる、Mgドープp形GaN膜を形成する。Mgドープp形GaN膜のうちの第2層151の側の部分におけるMg濃度は、例えば0.2×1019cm−3以上2×1019cm−3以下である。Mgドープp形GaN膜のうちの第2層151とは反対の側の部分におけるMg濃度は、例えば5×1019cm−3以上20×1019cm−3以下以下である。
【0064】
そして、これらの半導体層を含む積層体に、例えば、以下に例示する方法で電極を設ける。
マスクを用いたドライエッチングによってp形半導体層と発光部140とを除去する。これにより、積層体の一部の領域において、n形コンタクト層130を露出させる。n形半導体層の露出した面を含む積層体の全体に、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて図示していないSiO膜を400nmの厚さで成膜する。
【0065】
そして、p側電極160を形成するために、まず、レジストリフトオフ用のパターニングされたレジストを積層体上に形成する。そして、p形コンタクト層150の上のSiO膜をフッ化アンモン処理で取り除く。そして、このSiO膜が取り除かれた領域に、例えば、真空蒸着装置を用いて、p側電極160となる反射導電性のAg膜を形成する、Ag膜の厚さは、例えば200nmである。その後、例えば、350℃の窒素雰囲気で1分間のシンター処理を行う。
【0066】
そしてn側電極170を形成するために、レジストリフトオフ用のパターニングされたレジストを積層体上に形成する。そして、露出したn形コンタクト層130の上のSiO膜をフッ化アンモン処理で取り除く。このSiO膜が取り除かれた領域に、n側電極170となる、導電膜を形成する。この導電膜は、例えばTi膜/Pt膜/Au膜の積層膜である。この導電膜の厚さは、500nmである。
【0067】
また、n側電極170には、高反射率の銀合金(例えばPdを1%程度含む)も使用可能である。この場合には、オーミック接触を良好にするためにn形コンタクト層130を2層構造とする。例えば、電極形成部として、高濃度層を設ける。高濃度層におけるSi濃度は、例えば0.6×1019cm−3以上3×1019cm−3以下であり、厚さは、例えば0.1μm以上1μm以下である。これにより、Siの析出による信頼性低下を抑制できる。
【0068】
次いで、基板110の裏面(第1バッファ層121とは反対の側の面)の研磨を行い、基板110及び積層体を、劈開またはダイヤモンドブレード等により切断する。これにより、個別のLED素子、すなわち半導体発光素子10が作製される。LED素子の幅は、例えば幅が400μmで、厚さは例えば100μmである。
【0069】
本願発明者は、本実施形態に係る半導体発光素子を作製し、その特性を評価した。以下この半導体発光素子の構造について説明する。
【0070】
図3は、第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図3に表したように、作製した半導体発光素子15においては、導電性基板460とp側電極160との間に第1金属層455が設けられ、導電性基板460と第1金属層455との間に第2金属層465が設けられている。また、第1積層構造体210と第2積層構造体220との間に中間層181が設けられている。
【0071】
第1層131の発光部140とは反対の側にn形コンタクト層130が設けられ、n形コンタクト層130の第1層131とは反対の側に低不純物濃度半導体層135が設けられている。
【0072】
低不純物濃度半導体層135における不純物濃度は、n形コンタクト層130における不純物濃度よりも低い。低不純物濃度半導体層135には、ノンドープのGaN層が用いられる。低不純物濃度半導体層135には、既に説明した第2バッファ層122(格子緩和層)が採用される。
【0073】
低不純物濃度半導体層135には、開口部138が設けられる。開口部138はn形コンタクト層130の一部を露出させる。開口部138は、低不純物濃度半導体層135のn形コンタクト層130とは反対の側の主面135aからn形コンタクト層130に繋がっている。すなわち、開口部138の底部は、n形コンタクト層130に繋がっている。
【0074】
開口部138において露出しているn形コンタクト層130と、低不純物濃度半導体層135の一部と、を覆うようにn側電極170が設けられている。
【0075】
そして、低不純物濃度半導体層135のn側電極170で覆われていない部分の主面135aには、凹凸137pを有する粗面部137が設けられている。
【0076】
半導体発光素子15は以下のようにして作製された。
サファイア基板(図示しない)上に、第1バッファ層121となる厚さ2μmのAlN層をMOCVD法により約1300℃で形成した。その上に、第2バッファ122となる厚さ2μmのGaN層をMOCVD法により約1200℃で形成した。
【0077】
その上に、厚さが4μmで、Si濃度が0.2×1019cm−3〜1.5×1019cm−3のGaN層(n形コンタクト層130)をMOCVD法により1050℃〜1200℃で形成した。その上に、厚さが0.5μmで、Si濃度が2×1017cm−3〜5×1018cm−3のn−GaN層(第1層131)をMOCVD法により1050℃〜1200℃で形成した。
【0078】
この上に、厚さが2.5nmで、8×1018cm−3のSiを添加したGaN層(第5層205)と、厚さが1nmのGa0.93In0.07Nの第6層206と、を交互に16層積層、MOCVD法により800℃〜900℃で形成した。これにより、第2積層構造体220が形成される。
【0079】
この上に、厚さが2.5のGaN層(中間層181)をMOCVD法により、800℃〜900℃で形成した。
【0080】
この上に、厚さが2nmで、8×1018cm−3のSiを添加したAl0.7Ga0.925In0.005N層(第3層203)と、厚さが1nmのGa0.93In0.07N層(第4層204)と、を交互に30層積層、MOCVD法により800℃〜900℃で形成した。これにより、第1積層構造体210が形成される。
【0081】
この上に、厚さが13.5nmで、4×1018cm−3〜16×1018cm−3のSiを添加したAl0.07Ga0.925In0.005N層(第1障壁層BL1:障壁層41)をMOCVD法により約850℃で形成した。この上に、厚さが7nmのGa0.93In0.07N層(井戸層42)をMOCVD法により約800℃〜900℃で形成した。この上に、厚さが4nm〜12nmのAl0.07Ga0.925In0.005N層(第2障壁層BL2:障壁層41)をMOCVD法により約800℃〜900℃で形成した。
【0082】
この上に、厚さが24nmのMg添加p−Al0.2Ga0.8N層(第2層151)をMOCVD法により約950℃〜1100℃で形成した。
【0083】
この上に、厚さが0.3μmのp−GaN層(コンタクト層150)をMOCVD法により、950℃〜1100℃で形成した。
【0084】
この上に、p側電極160を形成した。さらに、この上に第1金属層455を形成した。
第2金属層465を有する導電性基板460を用意し、第1金属層455と第2金属層465と、を接着(ボンディング)した。この後、サファイア基板をレーザリフトオフ法により除去し、露出されたn−GaN層(n形コンタクト層130)の表面上にエッチングにより凹凸構造を形成した。また、蒸着と、リソグラフィーを用いたパターニングと、により所定の形状を有するn側電極170を形成した。n側電極170をZ軸に沿ってみたときのパターンは、n形コンタクト層130の周縁に沿う周縁部と、クロス形状部と、を有する。クロス形状部は、n形コンタクト層130のX軸における中央部を通りY軸に沿って延在する第1延在部と、n形コンタクト層130のY軸における中央部を通りX軸に沿って延在する第2延在部と、を有する。上記の周縁部は、n形コンタクト層130の4つの辺に沿う4つの辺を有し、4つの辺のそれぞれの中央部は、クロス形状部の端部と接している。
【0085】
この後、加工体を個別の素子に分断することで、半導体発光素子15が得られる。半導体発光素子15のX軸に沿う長さが約1mm(ミリメートル)であり、Y軸に沿う長さは約1mmである。
【0086】
このようにして作製した半導体発光素子15の特性を評価した。この評価では、以下の第1参考例の半導体発光素子91の特性についても評価した。以下、第1参考例の半導体発光素子の構造を説明する。
【0087】
図4は、第1参考例の半導体発光素子の構成を示す模式的断面図である。
図4に表したように、第1参考例の半導体発光素子91においては、サファイア基板(図示しない)上に、5μmのSi添加n−GaN層501、AlGaN/GaNのスーパーラティス層502、MQWの発光層503、30nmのp−AlGaN層504、及び、0.12μmのp−GaN層505がこの順でMOCVD法によりこの順で積層される。これらの層を含む半導体層506の上に、銀ベースの高反射率p−電極層507が設けられる。p−電極層507からp−GaN層505、p−AlGaN層504、発光層503及びスーパーラティス層502を貫通しn−GaN層502に到達する、複数の電極取り出し穴508が形成されている。
【0088】
p−電極層507と電極取り出し穴508とを覆うように絶縁層509が設けられている。絶縁層509を覆い、n−GaN層501に達するn−電極510が設けられている。なお、サファイア基板は、レーザリフトオフ法により除去されている。n−電極510は半田を介して導電性基板511に溶着されている。半導体層506の一部が除去され、p−電極層507に接するp−電極512が設けられている。半導体発光素子91の形状は、1辺が約1mmの正方形である。
【0089】
図5は、半導体発光素子の特性を例示するグラフである。
図5には、実施形態に係る半導体発光素子15の特性と、第1参考例の半導体発光素子91の特性と、が例示されている。第1参考例の半導体発光素子91においては、第1積層構造体210及び第2積層構造体220が設けられていない。。図5の横軸は電流Ic(A:アンペア)であり、縦軸は光出力PW(W:ワット)である。
【0090】
図5からわかるように、本実施形態に係る半導体発光素子15においては、第1参考例の半導体発光素子91よりも高い発光強度が得られた。すなわち、本実施形態によれば、高い効率が得られる。
【0091】
上記の半導体発光素子15において、中間層181は省略可能である。中間層181には、GaN、GaInN、AlGaN、AlGaIn及びAlNの少なくともいずれかを用いることができる。中間層181の厚さは、発光部140の厚さよりも薄いことが望ましい。中間層181が発光部140よりも薄いと、第1積層構造体210の歪の効果を発光部140だけではなく第2積層体220にも伝えることができ、第2積層体220の歪の効果を第1積層体210で強く受け、効果的に相互作用が起きる。
【0092】
図5に関して説明したように、半導体発光素子15によれば、高い発光強度と高い効率とが得られる。このような実験事実に基づいて、本実施形態に係る半導体発光素子の構成が導き出される。高い発光強度と高い効率とが得られる基となる、半導体発光素子の特性の例について説明する。以下では、実施形態に係る半導体発光素子として、半導体発光素子10に関して説明する。
【0093】
第3層203は、例えば低歪層である。第4層204は、例えば第3層203よりも歪み(strain)の程度が高い高歪層である。
【0094】
第1積層構造体210の内部の結晶に歪みが加えられる。これにより、結晶の品質が改善される。このため、第1積層構造体210の上に設けられる半導体層(例えば発光部140の特に井戸層42)の結晶品質が向上する。これにより、高い発光効率を得ることができる。すなわち、例えば、井戸層42の結晶の品質が最良となるように、第1積層構造体210の構成が最適化される。
【0095】
井戸層42は、GaN層との格子不整を有するため、第1積層構造体210の上に井戸層42を積層すると歪が蓄積される。このとき、第1積層構造体210中の第3層203と第4層204との繰り返しの積層数を適正に設定することで、第1積層構造体210における結晶の品質を改善すると共に、第1積層構造体210及び井戸層42における歪みの総和が限界を超えることによって井戸層42の結晶の特性が低下することを抑制することができる。
【0096】
複数の第4層204の合計の厚さと、井戸層42の厚さと、の合計は、例えば25nm以上45nm以下とされる。これにより、発光強度が高く、発光スペクトルの広がりが小さい特性を有する良好な結晶成長が可能となる。
特に、複数の第4層204の合計の厚さと、井戸層42の厚さと、の合計が、30nm以上35nm以下の場合には、特に良好な結晶が得られる。
【0097】
複数の第4層204の合計の厚さと、井戸層42の厚さと、の合計を25nm以上45nm以下に設定することによって、結晶中の組成の揺らぎを含めて、歪の総量が、結晶を劣化させない範囲内の上限付近に相当するためと考えられる。
【0098】
本願発明者は、複数の第3層203と、複数の第4層204と、を有する第1積層構造体210を適用した場合において、結晶下部(例えば第2バッファ層122)から第1積層構造体210に到達する結晶の転位の方向が、第1積層構造体210内において変化し、転位の方向が、第1積層構造体210の表面のc面に対して垂直に近づくことを見出した。すなわち、結晶の転位の方向が、結晶表面に垂直な方向(すなわち積層方向であるZ軸方向)に近づく。このことは、発光部140における結晶の転位を積層方向からみたときの長さが短くなることに相当する。すなわち、積層方向からみたときの発光部140内の欠陥領域の面積が小さくなることに相当する。
【0099】
すなわち、第1積層構造体210を採用することで、第1積層構造体210の上に形成される結晶の品質が向上すると考えられる。
【0100】
さらに、本願発明者は、第2積層構造体220を設けることで、結晶表面の平坦性が向上することを見出した。
【0101】
これは、第5層205に用いられるGaNが2元系であることから、GaNの成長中に横方向の均一性が改善される効果が大きいためと考えられる。
【0102】
平坦性を改善できる第2積層構造体220を用いることで、発光部140(特に井戸層42)の平坦性が向上し、その結果、結晶の特性が向上できる。これにより、発光効率が向上できる。また、平坦性を改善することで、井戸層42以外の半導体層の平坦性が改善でき、これによる効果によっても発光効率が向上できる。
【0103】
そして、半導体発光素子10においては、平坦性の向上効果が高い第2積層構造体220と、結晶性の向上効果が高い第1積層構造体210と、を組み合わせて適用することで、発光効率が向上することが分かった。
【0104】
平坦性の向上効果が高い第2積層構造体220によって歪みを導入することで、結晶表面の平坦性を維持しつつ、結晶中の転位の向きを結晶表面に対して垂直な方向(積層方向に平行な方向)に近づけることができる。さらに、第1積層構造体210を導入すると、転位は、結晶表面に対して垂直な方向に一段と近づく。これは、第1積層構造体210における第3層203(AlGaN層)と第4層204(GaInN層)との間の格子不整が、第2積層構造体220における第5層205(GaN層)と第6層206(GaInN層)との間の格子不整よりも大きいため、第1積層構造体210の方が、第2積層構造体220に比べて、転位を曲げる力が大きいと考えられことによるものと考えられる。
【0105】
本実施形態においては、層間の格子不整が小さく転位を曲げる力は小さいが、表面平坦性が高い第2積層構造体220と、層間の格子不整が大きく転位を曲げる力が大きい第1積層構造体210と、を組み合わせることで、結晶表面の平坦性を低下させずに、より効果的に転位を結晶表面に垂直な向きに近づけることができる。これにより、より良質な結晶の成長が可能となる。
【0106】
なお、上記は、第3層203がAlGaInNを含み、第5層205がGaNを含む場合についての説明であるが、第3層203がGaNを含み、第5層205がAlGaInNを含む場合は、第1積層構造体210が平坦性の向上効果が高い層となり、第2積層構造体220が結晶性の向上効果が高い層となる。実施形態において、結晶性の向上効果が高い層と、平坦性の向上効果が高い層と、における上下関係は任意である。第3層203がAlGaInNを含み、第5層205がGaNを含む構成の方が、結晶性及び平坦性の向上効果をより得やすく、発光部140における効率向上の効果が大きい。
【0107】
第4層204の厚さの下限は、第4層204が連続して層としての物性を示す以上の厚さで決まる。第4層204の厚さの上限は、第4層204における吸収端のエネルギーと、井戸層42における吸収端のエネルギーと、の間に差異が設けられる条件で決まる。
【0108】
すなわち、第4層204の厚さは、例えば3原子層以上で、第4層204における吸収端のエネルギーが井戸層42の吸収端よりも十分大きくなる厚さ以下に設定される。具体的には、第4層204の吸収端のエネルギーに相当する波長が、井戸層42の発光スペクトルの強度がピーク値の半分以下となる波長よりも短波長側に設定される。井戸層42の厚さは、例えば4原子層の厚さ以上である。
【0109】
第3層203の厚さは、例えば、3原子層の厚さ以上、6nm以下である。下限は、連続的な層と似た特性を示す最小の厚さである。上限は、両側からしみ込む波動関数の重なりの影響が残り抵抗率の低下が生じる厚さである。
例えば、第3層203においては、障壁層41(例えば第1障壁層BL1)と同程度のAl組成(Al組成比が約10%以下)とされる。これにより、GaN層との間で電子に対する障壁による抵抗を小さくできると共に、良質な結晶成長を得ることが可能である。
【0110】
第3層203には、Siがドープされる。第3層203におけるSiの濃度は、例えば1×1017cm−3以上2×1019cm−3以下である。1×1017cm−3未満では、例えば電気抵抗が高くなる。2×1019cm−3を超えると、例えば結晶性が低下する。
【0111】
例えば、第3層203に障壁層41(例えば第1障壁層BL1)と同じ組成を適用すると、障壁層41と同じ条件で第3層203の成長が可能であり、プロセスが簡便に行える。また、障壁層41の成長前に、第3層203の成長を介して障壁層41と同じ成長条件での準備を十分な時間行うことができ、障壁層41(例えば第1障壁層BL1)の制御性の向上が図れる。
【0112】
例えば、第4層204に井戸層42と同じ組成を適用すると、井戸層42と同じ条件で第4層204の成長が可能であり、プロセスが簡便に行える。また、井戸層42の成長前に、第4層204の成長を介して井戸層42と同じ成長条件での準備を十分な時間行うことができ、井戸層42の制御性の向上が図れる。
【0113】
一方、例えば、第4層204に、井戸層42よりもIn組成比が低くバンドギャップが大きいGaInNを用いれば、井戸層42からの発光の第4層204における吸収をより小さくすることができる。また、この場合には、吸収が小さいので、第4層204をより厚くことができ、また、第3層203及び第4層204のペア数を増やすことができる。
【0114】
一方、第5層205の厚さは、例えば、3子層の厚さ以上、6nm以下である。下限は、連続的な層と似た特性を示す最小の厚さである。上限は、両側からしみ込む波動関数の重なりの影響が残り抵抗率の低下が生じる厚さである。第5層205の厚さは、例えば2.5nmである。第5層205には、例えば、Siが添加される。第5層205におけるSiの濃度は、例えば10×1017cm−3以上、2×1019cm−3以下である。10×1017cm−3未満だと、例えば電気抵抗が高くなる。2×1019cm−3を超えると、例えば結晶性が低下する。第5層205におけるSi濃度は、例えば1.2×1018cm−3である。
【0115】
第6層206の厚さは、例えば3原子層の厚さ以上である。第6層206の厚さは、第6層206における吸収端のエネルギーが井戸層42の吸収端よりも十分大きくなる厚さ以下に設定される。具体的には、具体的には、第6層206の吸収端のエネルギーに相当する波長が、井戸層42の発光スペクトルの強度のピーク値の半分以下となる波長よりも短波長側になるように、第6層206の厚さが設定される。第6層206の厚さは、例えば1nmである。
【0116】
第5層205及び第6層206のペア数は、30に限らず任意である。第5層205の数は、第6層206の数と同じでも良く、第5層205の数は、第6層206の数よりも1つ多くても良く、第5層205の数は、第6層206の数よりも1つ少なくても良い。
【0117】
第6層206に合わせて第2積層構造体220の成長を低温で行う場合、温度を下げて行う最初の成長層を第6層206とすることができる。このため、低温でも良質な結晶の成長を行うことが容易になる。第6層206の数を増やすと、より平坦な層で成長が開始でき、特に良質な結晶成長が可能となる。
【0118】
実施形態において、第1積層構造体210における第3層203及び第4層204のペア数は、第2積層構造体220における第5層205及び第6層206のペア数と、同じ例でも良く、異なっていても良い。
【0119】
本実施形態においては、サファイアからなる基板110の上に、第1バッファ層121(AlN層)及び第2バッファ層122(ノンドープのGaN層)の上に、高温で、n形コンタクト層130(n形GaN層)を形成する。これにより、転位密度の小さい高品質のGaN結晶を得ている。これにより、n形閉じ込め層(第1層131)の結晶品質は良好であり、さらにその上に形成される発光部140の結晶品質は高い。
【0120】
本実施形態に係る発光部140の結晶においては、転位のほとんどは独立しており、複数の転位が接して互いに絡み合ったものの発生は少ない。このため、転位の向きが結晶表面に垂直な方向に沿うことによる結晶特性の改善の効果が、直接的に発揮される。このように、第1積層構造体210と、上記のようなバッファ層の組み合わせと、を組み合わせて適用することで、第1積層構造体210を設けることによる結晶品質の改善効果がより顕著に発揮される。
【0121】
本実施形態において、第1障壁層BL1を2層構造として、高Al組成比のAlGaN層と、低Al組成比のAlGaInN層と、の組み合わせを適用することができる。このような構造により、AlGaN層による正孔のオーバーフローの抑制と、AlGaInN層による結晶表面の特性の改善及び特性が改善された結晶表面の上への井戸層42の形成が可能となる。例えば、第1障壁層BL1の一部として、成長温度を1000℃に上げてAlGaN層(Al組成比が20%以上26%以下)及びAlGaInN層(Al組成比が8%)を成長し、成長温度を下げて、第1障壁層BL1の残りの部分であるAlGaN層と、井戸層42と、を成長すると、正孔のオーバーフローが小さく、かつ、井戸層42の発光効率が高く、低電流から大電流まで光出力の高い半導体発光素子の実現が可能である。
【0122】
高効率な半導体発光素子を実現するためには、発光する井戸層42と、その両側の障壁層41と、を実質的に連続的に成長することが望ましい。これにより、成長を中断することによって発生する界面の欠陥を減らすことができる。なお、第i障壁層BLiと第i井戸層WLiとの間、及び、第i井戸層WLiと第(i+1)障壁層BL(i+1)との間にはヘテロ接合界面があるため、原料供給条件を整えるための成長中断を行う。この時間は、例えば、0秒以上10秒以下である。この成長中断の短い時間を除いて連続的に成長を行うことを、実質的に連続的な成長とする。
【0123】
一般的に、GaInN層を井戸層42として用いる薄い多重量子井戸では、GaInN層のIn組成比が高く、低温での結晶成長が適している。一方、Alを含む障壁層41においては、Alと窒素との結合が強いことから、高い成長温度を用いることが望ましい。このため、高In組成比のGaInNを含む井戸層42と、Alを含む障壁層41と、を同じ温度で連続して成長すると、井戸層42と障壁層41との両者共に最も適した成長条件を選択するのが困難である。
【0124】
発光部140に、単一で厚い井戸層42を用いると、量子効果による発光エネルギーのシフトが小さく、井戸層42にIn組成比が低くバンドギャップの大きなGaInN層を用いることができる。このため、高い温度での成長が可能である。
【0125】
一方、障壁層41(例えば、第1障壁層BL1及び第2障壁層BL2など)にInを添加すると結晶成長中の結晶表面での原子の動きを促進することができ、Alを含有するAlGaInNを低い温度で成長することができる。Inは取り込まれ効率が低いため、わずかなInを添加するために大量のIn原料を結晶表面に供給することになる。このため、結晶表面での原子の動きが促進されて低温での結晶成長が可能となる。すなわち、本実施形態に係る光半導体発光素子及びウェーハでは、井戸層としては高温で成長可能な井戸層42と、障壁層としては低温で成長可能な障壁層41(例えば第1障壁層BL1及び第2障壁層BL2など)と、を用いることにより、実質的に一定の温度で(例えば意図的には温度を変えない条件で)、実質的に連続的な成長が可能である。これにより、本実施形態に係る半導体発光素子及びウェーハにおいては、井戸層42に隣接する界面における結晶欠陥を少なくすることができる。
【0126】
すなわち、本実施形態に係る半導体発光素子及びウェーハを、井戸層42とその両側の障壁層41とを実質的に連続的に成長する方法により製造することで、特に低電流領域の発光効率の高い半導体発光素子及びウェーハを形成することができる。
【0127】
実施形態において、第1積層構造体210を、発光部140(井戸層42及び障壁層B41)と実質的に同じ温度で成長することができる。また、第2積層構造体220)を、発光部140と実質的に同じ温度で成長することができる。
【0128】
第1積層構造体210を設けることで結晶における転位の向きが変わり、第1積層構造体210の上に発光効率の高い井戸層42を形成できると期待される。しかし、第1積層構造体210と発光部140とで、成長温度が変わると欠陥の伝播方向が変わり、第1積層構造体210を設けても、発光部140の特性向上が図れなくなることが懸念される。このため、第1積層構造体210を、発光部140と実質的に同じ温度で成長させることが望ましい。
【0129】
前述したように、本実施形態に係る半導体発光素子においては、井戸層42と、障壁層(第1障壁層BL1及び第2障壁層BL2)と、を実質的に同じ温度で成長することが可能である。一方、第1積層構造体210の例えば第3層203及び第4層204として、障壁層41及び井戸層42にそれぞれ類似で、障壁層41及び井戸層42と同じ成長温度で、良好な結晶成長できる材料の組を選択することで(例えば同一でも良い)、実質的に同じ温度で、良好な特性の第1積層構造体210及び発光部140の結晶を容易に成長することができる。
【0130】
多数の層を積層し複雑な構成を有する半導体発光素子及びウェーハにおいては、各層ごとに最適な成長条件が異なると、その選択に時間がかかり、実効的に全ての層の特性が良好な素子を作ることは困難である。本実施形態に係る半導体発光素子及びウェーハにおいては、第1積層構造体210及び第2積層構造体220を、発光部140と実質的に同じ温度で成長することで、容易に適正な成長条件で高品質な結晶成長が可能となる。これにより、発光効率の高い半導体発光素子及びウェーハの製造が容易となる。
【0131】
本実施形態において、第3層203を第5層205よりも薄くすることができる。例えば、第3層203の厚さを2nmとし、第4層204の厚さを1nmとし、第5層205の厚さを2.5nmとし、第6層206の厚さを1nmとすることができる。
【0132】
第3層203を第5層205よりも薄くするのは、以下の理由による。井戸層42の光吸収に対する影響を小さくするためには、第1積層構造体210及び第2積層構造体220における吸収波長をできるだけ短波長にすることが望ましい。第3層203にはAlが含まれているため、第5層205(GaN層)よりもバンドギャップが大きい。このため、第1積層構造体210及び第2積層構造体220における準位のエネルギーを互いに同一にするために、第3層203を第5層205よりも薄くする。これにより、第1積層構造体210における平均In組成比を高くすることができ、薄い厚さでより効率的に結晶の特性を改善することができる。
【0133】
本実施形態において、第4層204を第6層206よりも厚くすることができる。また、第4層204のIn組成比を第6層206よりも高くすることができる。これは、以下の理由による。井戸層の光吸収に対する影響を小さくするためには、第1積層構造体210及び第2積層構造体220における吸収波長をできるだけ短波長にすることが望ましい。第3層203にはAlが含まれているため、第5層205(GaN層)よりもバンドギャップが大きい。このため、第4層204及び第6層206に形成される準位のエネルギーを互いに同一にするために、第4層204の厚さを厚くする、及び、第4層204におけるIn組成比を高くする、の少なくともいずれかを適用することができる。これにより、第1積層構造体210における平均In組成比を第2積層構造体220よりも高くすることができ、より効率的に結晶の特性を改善することができる。
【0134】
なお、本実施形態において、第2積層構造体220について、第5層205と第6層206とを12ペア積層した場合、第2積層構造体220が無い場合よりも平坦であったが、光学顕微鏡により結晶表面に顕著な凹凸が認められた。これに対し、第5層205と第6層206とを16ペア積層した場合には、表面の平坦性が向上した。さらに、18ペア、20ペア、27ペア及び30ペア積層したそれぞれの場合に、光出力の高い半導体発光素子が得られた。このため、第5層205及び第6層206のペア数は、12以上30以下が望ましい。ただし、27ペア積層した場合には、結晶中の欠陥の増加も認められた。このため、第5層205及び第6層206のペア数は、特に、16以上20以下がより望ましい。
【0135】
本実施形態において、第1障壁層BL1におけるSi濃度は、極力高いことが望まれる。これは、Siの添加により第1障壁層BL1に十分な正電荷源を導入し、ピエゾ電界の効果により井戸層42にかかる電界の影響を抑制するためである。しかし、Si濃度が高いと結晶の質が低下する。このため、薄い第1障壁層BL1のみでSiの濃度を上げることで、結晶の特性劣化を抑制しつつ、ピエゾ電界の効果抑制が可能になる。
【0136】
結晶の特性の劣化を抑制するために、第1積層構造体210においては、第1障壁層BL1よりもSi濃度を下げることが望まれる。
【0137】
一方、第1積層構造体210(AlGaInN層及びGaInN層)におけるヘテロ構造のエネルギーバンドの不連続と、第2積層構造体220(GaN層及びGaInN層)におけるヘテロ構造のエネルギーバンドの不連続と、を比べると、第1積層構造体210におけるエネルギーバンドの不連続の方が大きい。このため、半導体発光素子の電気抵抗を下げるためには、第1積層構造体210に、第2積層構造体220よりも高い濃度でSiを添加することが望ましい。しかし、第1積層構造体210におけるSiの濃度が高過ぎると、結晶の特性が低下することがあるため、第2積層構造体220にも、GaN層とGaInN層とのヘテロ構造に対応する十分な濃度でSiが添加される。
【0138】
一方、第2障壁層BL2のSi濃度が高いと、キャリアのオーバーフローや内部吸収の原因となることから、第2障壁層BL2におけるSi濃度は低いことが望まれる。
【0139】
以上から、第1障壁層BL1(複数の障壁層41のうちで第1積層構造体210に最も近い障壁層41)におけるSi濃度は、第1積層構造体210におけるSi濃度よりも高く設定される。そして、第2積層構造体220におけるSi濃度は、第1積層構造体210におけるSi濃度よりも低く設定される。複数の障壁層41のうちで第1障壁層BL1を除く障壁層41(例えば第2障壁層BL2〜第(n+1)障壁層BL(n+1)(nは1以上の整数))におけるSi濃度は、第2積層構造体220におけるSi濃度よりも低く設定される。第1層131におけるSi濃度は、第2積層構造体220におけるSi濃度よりも低く設定される。
【0140】
このようなSi濃度の分布を採用することで、結晶の特性が向上されると共にピエゾ電界の効果の影響が抑制され、発光効率が向上できる。さらに、電気抵抗が小さく、キャリアのオーバーフロー等の影響が少ないことから発光効率が向上できる。このように、本実施形態に係る半導体発光素子40によれば、高効率に近紫外光を発光する半導体発光素子が得られる。
【0141】
本願発明者の実験によると、以下の知見が得られた。窒化物半導体(例えばGaN)を用いた半導体発光素子をサファイア基板上に設けた場合、サファイア基板とGaNとで格子不整合によりGaN結晶(例えばGaNバッファ層)中に結晶欠陥が発生する。このような欠陥の影響は、GaN層の上に高い歪を有する層を積層することで低減される。そして、高い歪みを有する層の上に、複数のGaInNからなる井戸層を有するMQW構造を形成した場合、井戸層の格子定数がGaN層と異なっているため歪みが発生することから、複数の井戸層によって結晶欠陥の影響が低減される。すなわち、井戸層を複数積層すると、井戸層を積層するにつれて結晶欠陥の影響が少ない良質な結晶の成長が可能になる。ところが、格子不整のある層の全体の厚さが厚くなると歪量が大きくなり過ぎて、再び結晶の品質が低下する。
【0142】
本願発明者の実験によると、以下の知見も得られた。Ga(Al)InNを発光部に用いたウェーハ(半導体発光素子)では、発光波長によって結晶の質に対する鋭敏さが大きく異なる。すなわち、波長400nmよりも長波長側では結晶の品質が低下しても発光効率の変化は小さいが、400nm以下の短波長側では発光波長が短くなると発光効率が急激に低下する。より詳細には、400nm以下の短波長になると、各スペクトルの短波長側があたかもある種の包絡線を越えることができないかのように低下する。このため、発光波長が短波長になるにつれて発光効率が低下する。ところが、高品質な結晶では発光波長が400nm以下の短波長となっても発光効率の低下は限定的となる。この場合、波長(ピーク波長)が短波長となるとスペクトル全体が大きな変化なく短波長側にシフトする。このため、特に、高品質な結晶の成長を実現することで、波長が400nm以下の近紫外の波長域で特に高効率な発光を実現することができる。
【0143】
このような実験結果に基づいて、本願発明者は、結晶の品質が良好な井戸層は、1層だけしか形成することができないと推定した。そして、1つの井戸層における結晶の品質が最も向上するように、半導体発光素子に含まれる層のそれぞれを最適化することで、最も高い発光効率が得られると考えられる。さらに、このような方法を用いることで、高品質な結晶を適用することが特に適している、波長が400nm以下の近紫外発光の半導体発光素子でも高効率な発光が可能になると推定した。
【0144】
半導体発光素子10は、n形の半導体層と、p形の半導体層と、n形の半導体層とp形の半導体層との間に設けられた発光部140と、を含む半導体層を含む。これらの半導体層には、窒化物半導体を用いることができる。
【0145】
これらの半導体層の形成には、例えば、有機金属気相成長法及び分子線エピタキシャル成長法等の技術を用いることができる。ただし、実施形態において、半導体層の形成方法は、任意である。
【0146】
実施形態において、基板110には、例えば、サファイア、SiC、GaN、GaAs及びSiなどの基板が用いられる。ただし、実施形態において、基板110は、任意である。基板110は、結晶成長の後に除去されても良い。
【0147】
半導体発光素子10においては、Al組成比が高く、厚いp形閉じ込め層(第2層151)の採用を容易にする構成が適用されている。これにより、発光部140自体を高効率化し、発光部140からの電子のオーバーフローが抑制されている。これにより、結晶の欠陥を低減させて、高い効率を得ている。近紫外の波長域において、この効果は特に顕著いである。
【0148】
第1障壁層BL1及び第2障壁層BL2におけるSiの濃度分布と、第1井戸層WL1にかかるピエゾ電界と、の関係について説明する。
井戸層42には、ピエゾ電界が印加されるため、井戸層42と第2障壁層BL2との界面では、正のチャージが井戸層42から第2障壁層BL2へ染み出す。一方、井戸層42と第1障壁層BL1との界面では、負のチャージが井戸層42から第1障壁層BL1へ染み出す。
【0149】
井戸層42のp形閉じ込め層(第2層151)の側の部分には電子が多く存在するので、第2障壁層BL2からの電子の供給の程度が低くても良い。よって、この界面に接する障壁層(第2障壁層BL2)においては、Si濃度が低くても良い。すなわち、第2障壁層BL2においては、Siが意図的にドープされなくても良い。
【0150】
一方、井戸層42のn形閉じ込め層(第1層131)の側の部分には電子があまり存在しないため、第1障壁層BL1の側の部分から井戸層42に向かって電子を効率良く供給することが望まれる。よって、この界面に接する第1障壁層BL1においては、Si濃度が高く設定されることが望ましい。すなわち、第1障壁層BL1には高濃度でSiがドープされる。
【0151】
具体的には、第1障壁層BL1におけるSi濃度は、0.5×1019cm−3以上2×1019cm−3以下が望ましい。さらに、Si濃度を1.0×1019cm−3以上1.2×1019cm−3以下に設定すると、結晶を劣化させることなく高濃度の電子供給が可能となる。Si濃度を1.2×1019cm−3以上1.5×1019cm−3以下の範囲においては、結晶の劣化に伴うと推定される発光スペクトルのブロードニングが起こることがあるが、電子供給を増やすことができ発光強度は高い。
【0152】
第1井戸層WL1のp形閉じ込め層(第2層151)の側の部分には、低Si濃度の第2障壁層BL2が配置され、井戸層42のn形閉じ込め層(第1層131)の側には、高Si濃度の第1障壁層BL1が配置される。このことにより第1井戸層WL1の発光効率を高くすることができる。
【0153】
各井戸層42に関して、各障壁層41の第1層131側にSi濃度の高い領域を設け、各障壁層41の第2層151側にSi濃度の低い領域を設けることで、各井戸層42の発光効率を高めることができる。なお、第1障壁層BL1にはSi濃度の低い領域を設けなくても良い。第(n+1)障壁層BL(n+1)にSi濃度の高い領域を設けなくても良い。
【0154】
発光部140において、p形閉じ込め層(第2層151)の側からn側閉じ込め層(第1層131)の側への方向に進むに従って平均のSi濃度が増加する。このことにより発光部140のトータルとしての発光効率が向上できる。
【0155】
さらに、これに加えて発光スペクトルの半値幅を縮小することができる。
【0156】
以下、第1井戸層WL1を例にして、Si濃度と発光スペクトルとの関係について説明する。
第1障壁層BL1の井戸層42に接する界面に注目すると、その界面では、高濃度にドープされたSiから多量の電子が井戸層42に流れ込み、第1障壁層BL1の側にチャージを持ったSiが多量に残る。この界面での電子濃度及びSi濃度の分布は、ピエゾ電界を打ち消す働きがあり、その結果、ピエゾ電界が弱まる。ピエゾ電界が弱まると、ピエゾ電界により曲げられていた発光部140のエネルギーバンドが平らになり、それによって、発光効率が向上する。そして、発光スペクトルの半値幅は狭くなる。
【0157】
半導体発光素子10によれば、発光部140内の不純物濃度の制御により発光部140内の電界制御することで、発光効率を増大させ、高効率の半導体発光素子が提供できる。
【0158】
さらに、半導体発光素子10において、第i障壁層BLi(1<i≦(n+1)におけるSi濃度を、第1障壁層BL1におけるSi濃度よりも低く設定することにより、信頼性の向上、及び、半導体発光素子10の駆動電圧の低減が実現できる。
【0159】
第(n+1)障壁層BL(n+1)におけるSi濃度を低くすることで、井戸層42から、p形閉じ込め層(第2層151)の側への電子のオーバーフローが減少する。よって、半導体発光素子10の信頼性が向上する。
【0160】
そして、第(n+1)障壁層BL(n+1)におけるSi濃度を低くすることで、第(n+1)障壁層BL(n+1)のエネルギーの高さが下がり、正孔が入り易くなる。これにより、半導体発光素子10の駆動電圧が低減できる。
【0161】
このため、p形閉じ込め層(第2層151)におけるAl組成比を下げることができ、素子の信頼性が向上する。例えば、第(n+1)障壁層BL(n+1)におけるSi濃度を約1×1019cm−3とすると、p形閉じ込め層(第2層151)におけるAl組成比は25%以上とする。第(n+1)障壁層BL(n+1)にSiを添加しない場合においては、p形閉じ込め層(第2層151)におけるAl組成比を20%まで下げることができる。
【0162】
上記のように、本実施形態に係る半導体発光素子10において、第1障壁層BL1以外の障壁層41におけるSi濃度を低くすることで、発光効率を向上し、高効率で、信頼性が高く、駆動電圧が低い半導体発光素子を提供できる。
【0163】
第2障壁層BL2におけるSi濃度は均一でも良く、また、例えば、厚さ方向に沿ってSi濃度が変化しても良い。例えば、第2障壁層BL2は、高Si濃度の第1の部分と、低Si濃度の第2の部分と、を有していても良い。その際、Si濃度の分布は、多段的に変化しても良く、また連続的に変化しても良い。第i障壁層BLi(1<i≦(n+1))における平均Si濃度が、第1障壁層BL1よりも低くなるように設定されればさらに良い。
【0164】
半導体発光素子10に含むことができる各層の例について説明する。
高炭素濃度の第1AlNバッファ層121aは、基板110との結晶型の差異を緩和する働きをし、特に螺旋転位を低減する。また、高純度の第2AlNバッファ層121bにより、第2AlNバッファ層121bの表面が原子レベルで平坦化する。そのため、この上に成長するノンドープのGaNバッファ層(第2バッファ層122)の結晶欠陥が低減される。高純度第2AlNバッファ層121bの厚さは、1μmよりも厚いことが望ましい。これにより、ノンドープのGaNバッファ層(第2バッファ層122)の結晶欠陥を効果的に低減できる。また、歪みによる反りの抑制のためには、高純度の第2AlNバッファ層121bの厚みが4μm以下であることが望ましい。
【0165】
なお、第1バッファ層121には、上記のようにAlNを用いることができる。ただし、実施形態はこれには限定されず、第1バッファ層121には、例えば、Alα2Ga1−α2N(0.8≦α2≦1)を用いても良い。第1バッファ層121には、Alα2Ga1−α2N(0.8≦α2≦1)を用いると、Al組成比の調整によってウェーハの反りを補償することができる。
【0166】
第2バッファ層122(格子緩和層)は、第1バッファ層121の上における3次元島状成長により、欠陥低減と歪緩和の役割を果たす。成長表面の平坦化のためには、第2バッファ層122(格子緩和層)の平均の厚さは、0.6μm以上とすることが望ましい。再現性と反り低減の観点から、第2バッファ層122(格子緩和層)の厚さは、0.8μm以上2μm以下が望ましい。
【0167】
これらのバッファ層を採用することで、従来の低温成長のバッファ層と比較して転位密度は1/10以下とすることができる。これにより、異常成長のために通常では採用困難な、高い成長温度と高いV族原料/III族原料比での結晶成長が可能となる。そして、これにより、点欠陥の発生が抑制され、高Al組成比のAlGaN層や障壁層(第1障壁層BL1及び第2障壁層BL2)に対して高濃度ドーピングが可能となる。
【0168】
第1障壁層BL1は、例えば、Siがドープされた4元混晶AlGaInN(Al組成が6%以上10%以下、In組成比が0.3%以上1.0%以下)を含むことができる。第2障壁層BL2は、例えば、4元混晶AlGaInN(Al組成が6%以上10%以下、In組成比が0.3%以上1.0%以下)を含み、Siのドープは任意である。井戸層42は、例えばIn0.05Ga0.95N(In組成比は4%以上10%以下の間で適宜変えることができる)を含む。
【0169】
発光部140から放出される光(発光光)は、前述したように、例えば、近紫外光である。発光光のピーク波長は、例えば、380nm以上400nm以下である。但し、実施形態はこれに限らず、発光光の波長は任意であり、前述のように、幅広く変えることができる。
発光波長が390nm以上400nm以下である場合は、井戸層42の厚さを5.5nm以上にすることで、発光効率が増加すると共に、光出力の増加に伴う効率の低下や動作温度の上昇に伴う効率の低下が抑制され、さらに望ましい。
【0170】
発光波長が380nm以上400nm以下の紫外発光を高効率で生じさせるための深いポテンシャルを形成するために、第1障壁層BL1及び第i障壁層BLi(1<i≦n+1)におけるAl組成は6%以上に設定される。
【0171】
第(n+1)障壁層BL(n+1)の厚さは2nm以上に設定される(p形AlGaNの第2層151に最も近い障壁層41)。第(n+1)障壁層BL(n+1)の厚さが2nmよりも薄いと、p形AlGaN層を成長するために成長温度を上げるプロセスにおいて、第n井戸層WLnをはじめとする井戸層42が熱劣化を起こすためである。不純物拡散の影響も含めて、井戸層42の特性を制御するためには、第(n+1)障壁層BL(n+1)の厚さは4.5nm以上に設定される。特に、第(n+1)障壁層BL(n+1)の厚さが井戸層42の厚さよりも厚いと、AlGaN層と井戸層42との間の歪の影響を緩和する効果が大きい。なお、第(n+1)障壁層BL(n+1)が過度に厚いと、素子抵抗が高くなる原因となる。また、第(n+1)障壁層BL(n+1)が過度に厚いと、井戸層42をオーバーフローしたキャリアが蓄積されて吸収の原因となる。この影響の低減には、第(n+1)障壁層BL(n+1)を第1障壁層BL1よりも薄くすることが望ましい。第2障壁層BL2の厚さを9nm以下とした半導体発光素子においては、発光波長から予想される動作電圧の一割以内の電圧上昇で素子動作させることができた。
【0172】
第1障壁層BL1の厚さは、例えば4.5nm以上30nm以下の範囲の値に設定することができる。第1障壁層BL1の厚さを4.5nm以上にすると、効率の高い半導体発光素子が得られる。第1障壁層BL1の厚さを4.5nm以上に設定すると、材料本来の物性が十分発揮されるようになり、正孔のオーバーフロー抑制効果が得られるようになるためと考えられる。また、第1障壁層BL1の厚さが30nm以下の場合において、良質な結晶成長が比較的容易に行える。
【0173】
また、第1〜第n障壁層BL1〜BLnの厚さは、井戸層42よりも厚いことが望ましい。第1障壁層BL1の厚さを井戸層42の厚さよりも厚く設定することで、井戸層42へのキャリア供給の制御が有効となる。特に、第1〜第n障壁層BL1〜BLnの厚さは、井戸層42の厚さの2倍以上であることが望ましい。第1〜第n障壁層BL1〜BLnの厚さを井戸層42の厚さの2倍以上に設定することで、第1〜第(n−1)障壁層BL1〜BL(n−1)の両側にキャリア供給が可能となり、井戸層42へのキャリア供給の精度が向上する。
【0174】
なお、第n井戸層WLnについては、p形AlGaNの第2層151からの正孔注入を効率良く行うために、第(n+1)障壁層BL(n+1)の厚さは、前述の条件を除けば薄いことが望ましい。このため、障壁層BL(n+1)の厚さは第1積層構造体210の第3層203及び第2積層構造体220の第5層205よりも薄くてよい。
【0175】
第1障壁層BL1は、例えば、発光部140の各井戸層42に注入された正孔が第1層131側に流出することを防ぐ役割がある。第1障壁層BL1は、特に結晶欠陥等がある場合も含めてキャリアに対するポテンシャルブロックの効果を持つために十分な厚さに設定される。厚さが15nm〜20nmで十分な効果がある。厚さが13nmよりも小さいと、電流注入密度を上げた時に効率低下の大きい素子の割合が増加する場合があった。厚さが22nmよりも厚いと、素子の抵抗が高い割合が増加する場合があった。
【0176】
第1積層構造体210の第3層203や第2積層構造体220の第5層205は、第1障壁層BL1に対して井戸層42と反対側にある。このため、第1障壁層BL1と比べると、第3層203及び第5層205の、発光部140から正孔が漏れ出る現象を抑制する役割は小さい。一方、これらの層は複数あることから、電流の抵抗として働きやすく、素子の駆動電圧を下げるためには、第3層203及び第5層205は薄いことが望ましい。このため、第3層203及び第5層205の厚さは、第1障壁層BL1よりも薄いことが望ましい。
【0177】
第3層203及び第5層205の厚さは電気的に抵抗を下げるために薄いことが望まれるので、第1障壁層BL1のバンドギャップエネルギーをこれらの層よりも大きくし第1障壁層BL1の電気的抵抗を高くする。障壁層41と、第3層203と、第5層205と、における厚さの関係は、電気的抵抗を基準とした実効的厚さということができる。少なくとも第1障壁層BL1が、第3層203と第5層205よりも実効的に厚く設定される。これにより、素子の特性が向上する。
【0178】
前述したように、第1障壁層BL1に高濃度にSiを添加することで、井戸層42に加わるピエゾ電界の影響を低減し、高効率の発光を得ることができる。
【0179】
発光部140の井戸層42と、第1積層構造体210の第4層204のGaInNと、第2積層構造体220の第6層206のGaInNと、の関係においては、井戸層42の厚さに対してこれらのGaInNの厚さが薄いことが望まれる。これにより、例えば、井戸層42の光学的バンドギャップエネルギーが、第4層204のGaInNと第6層206のGaInNの光学的バンドギャップエネルギーよりも小さくできる。これにより、井戸層42の発光が第4層204のGaInNと第6層206のGaInNとに吸収されることが抑制できる。
【0180】
発光部140の井戸層42の厚さと、第4層204のGaInNの厚さと、第6層206のGaInNの厚さと、の関係は、それぞれの光学的バンドギャップエネルギーを基準とした実効的厚さとすることができる。井戸層42の実効的厚さよりも、第4層204のGaInNの実効的厚さ及び第6層206のGaInNの実効的厚さは、薄いことが望ましい。薄膜構造において、組成を変えるだけでバンドギャップエネルギーを大きく変え、薄い層のバンドギャップエネルギーが厚い層のバンドギャップエネルギーよりも小さい結晶を得ようとした場合、GaInNのIn組成比の違いが大きくなり、材料物性の違いが大きくなり、良質な結晶成長が難しい。このため、実空間においても、井戸層42の厚さよりも、第4層204のGaInNの厚さと、第6層206のGaInNの厚さが薄いことが望まれる。
【0181】
第1障壁層BL1及び第i障壁層BLi(1≦i≦n+1)におけるAl組成比が10%を超えると、結晶品質が劣化する。また、第1障壁層BL1及び第i障壁層BLiに少量のInをドープすることで、結晶品質を改善する。第1障壁層BL1及び第i障壁層BLiにおけるIn組成比が0.3%以上で、結晶品質が改善する。しかし、In組成比が1.0%を超えると、結晶品質が劣化し、発光効率が減少する。ただし、その厚さが薄い場合には、In組成比を2%まで高めることができる。
【0182】
例えば、本実施形態において、第1障壁層BL1の厚さが20nm以上の場合は、In組成比の最大値は、約1%程度である。第1障壁層BL1を7nmに薄くすると、In組成比を2%としても、結晶が劣化せず、強い発光が得られる。
【0183】
第1障壁層BL1の成長技術の例について説明する。
結晶品質の良い4元混晶AlGaInN層を成長することは難しく、さらにSiを高濃度にドープすると結晶は劣化しやすい。本願発明者は、LED素子構造の検討や成長条件を最適化することにより、結晶品質を落とすことなく、AlGaInNからなる障壁層BL1のIn組成比を高くすることに成功している。
【0184】
例えば、上記のように、本実施形態において、第1障壁層BL1の厚さが20nmを越えるとIn組成比は1%程度が限界となるが、第1障壁層BL1を7nmに薄くするとIn組成比を2%としても、結晶が劣化せず、強い発光が得られる。
【0185】
In組成比が高くできるようになると、GaInNからなる井戸層42との界面の急峻性が良くなり、井戸層42の結晶性が向上し、その結果、AlGaInNからなる第1障壁層BL1にSiを高濃度ドープすることが可能になる。
【0186】
また、高Si濃度の第1障壁層BL1の厚さを薄くすることによって、Siをさらに高濃度ドープすることが可能になる。
【0187】
第1障壁層BL1と第2障壁層BL2とを比べた場合、第1障壁層BL1のAl組成比が高くても良い。この場合、第1障壁層BL1のバンドギャップが大きくなり、正孔に対する閉じ込め効果が大きくなり、注入電流を増加した時に電流の漏れが減り、光出力を増大することができる。電子に対しては第2層151(p形AlGaN層)がバリアとなるため、第2障壁層BL1のAl組成比は第2層151に対して十分低く設定される。
【0188】
例えば、第1障壁層BL1のAl組成比を8%以上とし、第2障壁層BL2のAl組成比を7%とすることができる。この場合、第1障壁層BL1を高温で成長し、その温度よりも成長温度を下げて井戸層42と第2障壁層BL2を成長しても良い。このようにすると、Al組成比が高い第1障壁層BL1を高温で成長することで、第1障壁層BL1を高品質結晶により成長でき、井戸層42と、Al組成比の低い第2障壁層BL2と、を低温で成長し、例えば高In組成比の井戸層42を良好な特性で成長させることができる。
【0189】
なお、第2障壁層BL2については、井戸層42の表面を保護する厚さで成長した後、温度を上げて成長してもよい。
【0190】
例えば、実施形態において、第1障壁層BL1を2層構造として、高Al組成比のAlGaN層と、低Al組成比のAlGaInN層と、を組み合わせても良い。このような構造とすると、高Al組成比のAlGaN層により正孔のオーバーフローを抑制することができ、低Al組成比のAlGaInN層によって結晶表面の特性を改善し、特性が改善された結晶表面の上に井戸層42を形成することができる。この場合、AlGaN層と、AlGaInN層の一部と、を高温で成長し、AlGaInN層の残りを井戸層42と同じ温度で成長しても良い。このような方法をとれば、高品質なAlGaN結晶を高温で成長し、井戸層42は井戸層42に適した温度で成長することができる。
【0191】
上記のような第1積層構造体210及び第2積層構造体220を設ける構成による効率の向上は、特に、井戸層42を複数設ける構成において、特に効果的に発揮される。
【0192】
また、井戸層42を複数設ける場合において、第1障壁層BL1の構成を、その他の障壁層41(例えば第2障壁層BL2〜第(n+1)障壁層BL(n+1)の構成と異なることで、より高い効率を得ることができる。
【0193】
図6(a)及び図6(b)は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示するバンドギャップエネルギー図である。
図6(a)は、SQW構造を有する半導体発光素子10aの例を示している。図6(b)は、MQW構造を有する例として、2つの井戸層42を有する半導体発光素子10bの例を示している。同図には、電子における価電子帯Vb(valence band)と導電帯Cb(conduction band)とが例示されている。
【0194】
図6(a)に表したように、SQW構造の場合には、第1積層構造体210の側(n型層の側)の第1障壁層BL1のバンドギャップエネルギーは、第2層151の側(p型層の側)の第2障壁層BL2pのバンドギャップエネルギーと実質的に同じとしても良い。すなわち、第1障壁層BL1及び第2障壁層BL2には、例えばAlGaInNを用いることができる。
【0195】
図6(b)に表したように、複数の障壁層41のうちの、第1積層構造体210に最も近い障壁層41は、第1障壁層BL1である。第1障壁層BL1におけるバンドギャップエネルギーは、複数の障壁層41のうちの第1障壁層BL1を除く他の障壁層41(第2障壁層BL2〜第(n+1)障壁層BL(n+1)(nは1以上の整数))におけるバンドギャップエネルギーよりも大きい。
【0196】
特に、第1障壁層BL1におけるバンドギャップエネルギーは、複数の井戸層42に挟まれた障壁層41(この例では、第2障壁層BL2)のバンドギャップエネルギーよりも大きい。
【0197】
例えば、第1積層構造体210に最も近い障壁層41(第1障壁層BL1)には、AlGaInNを用いる。そして、第1障壁層BL1を除く他の障壁層41には、GaNまたはGaInNを用いる。特に、2つの井戸層42の間に挟まれた障壁層41(この例では、第2障壁層BL2)には、GaInNを用いる。
【0198】
これにより、2つの井戸層42の間に挟まれた障壁層41(この例では、第2障壁層BL2)を介して2つの井戸層42へのホールの注入が均一に行われる。また、第1積層構造体210に最も近い障壁層41(第1障壁層BL1)にAlGaInNを用いた場合に発生し易くなる歪みを抑制できる。
【0199】
このように、第1障壁層BL1におけるバンドギャップエネルギーを、第1障壁層BL1を除く他の障壁層41におけるバンドギャップエネルギーよりも大きく設定することで、第1積層構造体210及び第2積層構造体220によって効率が向上する効果がより効果的に発揮される。
【0200】
図7は、第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図7に表したように、本実施形態に係る別の半導体発光素子10dにおいては、第1障壁層BL1が3層構造を有している。これ以外は、半導体発光素子10と同様とすることができるので説明を省略する。
【0201】
すなわち、第1障壁層BL1は、第1層131と井戸層42との間(第1積層構造体210と井戸層42との間)に設けられた第1サブ層BL1aと、第1サブ層BL1aと井戸層42との間に設けられた第2サブ層BL1bと、第1サブ層BL1aと第1層131との間(第1サブ層BL1aと第1積層構造体210との間)に設けられた第3サブ層BL1cと、を有している。
【0202】
第1サブ層BL1aには、高Al組成比のAlGaN層が用いられる。第2サブ層BL1bには、低Al組成比のAlGaInN層が用いられる、第2サブ層BL1bにおけるAl組成比は、第1サブ層BL1aよりも低い。第3サブ層BL1cには、低Al組成比のAlGaInN層が用いられる。第3サブ層BL1cにおけるAl組成比は、第1サブ層BL1aよりも低い。
【0203】
第1サブ層BL1aにおけるAl組成比は、例えば15%とされる。第1サブ層BL1aの厚さは、例えば5nmとされる。
第2サブ層BL1bにおけるAl組成比は、例えば7%とされる。第2サブ層BL1bの厚さは、例えば5nmとされる。
第3サブ層BL1cにおけるAl組成比は、例えば第1積層構造体210の第3層203におけるAl組成比と同じに設定される。第3サブ層BL1cの厚さは、例えば2nmとされる。
【0204】
さらに、第1サブ層BL1aにおけるAl組成比は、例えば10%以上26%以下に設定される。第1サブ層BL1aの厚さは、5nnm以上50nm以下に設定される。また、第1サブ層BL1aには、n形不純物としてSiを5×1017cm−3以上1×1019cm−3以下でされても良い。
【0205】
また、第2サブ層BL1bにおけるAl組成比は、例えば6%以上10%以下に設定される。第2サブ層BL1bにおけるIn組成比は、例えば0.3%以上1%以下に設定される。第2サブ層BL1bの厚さは、例えば3nm以上15nm以下に設定される。なお第2サブ層BL1bは、必要に応じて設けられ、第2サブ層BL1bは、場合によっては省略しても良い。
【0206】
このような構成を有する第1サブ層BL1aを設けることで、正孔のオーバーフローの抑制の効果が得られる。これにより、半導体発光素子において、大電流駆動時の光出力改善の効果がある。また、動作温度を上げたときの光出力低下が抑制される。
【0207】
また、第2サブ層BL1bを設けることで、結晶表面の特性の改善及び特性が改善された結晶表面の上への井戸層42の形成が可能となる。このため、特に非発光センターの形成が抑制され、半導体発光素子を駆動した際に、低電流領域での発光効率向上の効果が大きい。なお、第2サブ層BL1bにn形不純物を添加すると、非発光センターがスクリーニングされて、低電流領域での発光効率の改善が図れる。
【0208】
なお、第2サブ層BL1bを設けない場合は、井戸層42とバンドギャップの大きなAlGaN層(第1サブ層BL1a)とを互いに近接させることができ、井戸層42内のキャリア濃度を増加させることができる。このため、発光効率の増大が図れると共に、特に大出力でも発光効率の低下が限定的で、高温で大電流動作させた場合にも高い発光効率で動作する半導体発光素子を実現することができる。
【0209】
第3サブ層BL1cは、第4層204の表面を被覆して、高品質の第1サブ層BL1aを成長させるための保護層として機能する。第3サブ層BL1cは、必要に応じて設けられ、第3サブ層BL1cは、場合によっては省略しても良い。
【0210】
例えば、第3サブ層BL1cを第3層203と同じ850℃で成長した後に、成長温度を1040℃に上げて第1サブ層BL1aを成長し、成長温度を下げて第2サブ層BL1bと、井戸層42と、を成長すると、正孔のオーバーフローが小さく、かつ、井戸層42の発光効率が高く、低電流から大電流まで光出力の高い半導体発光素子が得られる。
【0211】
図8は、第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図8に表したように、本実施形態に係る別の半導体発光素子11(及び半導体発光素子11a〜11c)においては、導電性基板460の上に、第1層131、発光部140及び第2層151が設けられている。導電性基板460には、例えばGeが用いられる。半導体発光素子11、11a〜11cにおける発光部140は、図2(a)〜図2(d)に例示した構成を有することができる。
【0212】
具体的には、導電性基板460と第2層151との間に、p形コンタクト層150が設けられ、導電性基板460とp形コンタクト層150との間にp側電極160が設けられる。p側電極160は発光部140から放出される光に対して反射性を有する。
【0213】
図9は、第1の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図9に表したように、本実施形態に係る別の半導体発光素子12(及び半導体発光素子12a〜12c)においては、導電性基板460とp側電極160との間に第1金属層455が設けられ、導電性基板460と第1金属層455との間に第2金属層465が設けられている。
【0214】
図8に例示した半導体発光素子11(11a〜11c)及び図9に例示した半導体発光素子12(12a〜12c)においては、第1層131の発光部140とは反対の側にn形コンタクト層130が設けられ、n形コンタクト層130の第1層131とは反対の側に低不純物濃度半導体層135が設けられている。
【0215】
低不純物濃度半導体層135における不純物濃度は、n形コンタクト層130における不純物濃度よりも低い。低不純物濃度半導体層135には、例えばノンドープのGaN層が用いられる。低不純物濃度半導体層135には、既に説明した第2バッファ層122(格子緩和層)を採用することができる。
【0216】
また、低不純物濃度半導体層135を2層構造としても良い。すなわち、第2バッファ層122とn形コンタクト層130との間に、n形低不純物濃度層(図示しない)を設け、第2バッファ層122とこのn形不純物濃度層と、を、低不純物濃度半導体層135としても良い。このような構成とすると、第2バッファ層122上に、n形不純物濃度が低く高品質な結晶成長が容易な上記のn形不純物濃度層を成長した後に、n形コンタクト層130を成長することができる。このようにすると、不純物濃度が高く結晶成長が難しいn形コンタクト層130を高品質な下地結晶上に成長することができ、高品質なn形コンタクト層130を成長することができる。
【0217】
低不純物濃度半導体層135には、開口部138が設けられる。開口部138はn形コンタクト層130の一部を露出させる。開口部138は、低不純物濃度半導体層135のn形コンタクト層130とは反対の側の主面135aからn形コンタクト層130に繋がっている。すなわち、開口部138の底部は、n形コンタクト層130に繋がっている。
【0218】
開口部138において露出しているn形コンタクト層130と、低不純物濃度半導体層135の一部と、を覆うようにn側電極170が設けられている。
【0219】
そして、低不純物濃度半導体層135のn側電極170で覆われていない部分の主面135aには、凹凸137pを有する粗面部137が設けられている。
【0220】
半導体発光素子11(11a〜11c、12、12a〜12c)は、例えば以下のような方法によって作製される。
例えば、サファイアからなる基板110の上へ、第1バッファ層121、第2バッファ層122(低不純物濃度半導体層135となる)、n形コンタクト層130、第1層131(n形閉じ込め層)、第2積層構造体220、第1積層構造体210、発光部140、第2層151(p形閉じ込め層)、及び、p形コンタクト層150、の各結晶層を形成して結晶積層体180を形成する。
【0221】
そして、結晶積層体180へのp側電極160の形成、結晶積層体180と導電性基板460との接合、基板110及び第1バッファ層121の除去、並びに、露出した結晶層(n形コンタクト層130)へのn側電極170及び低不純物濃度半導体層135への粗面部137(すなわち凹凸137p)の形成、の各工程が実施される。
【0222】
まず、サファイアからなる基板110上における結晶層の具体例について説明する。
例えば、有機金属気相成長法を用いて、表面がサファイアc面からなる基板110の上に、AlNを含む第1バッファ層121(厚さは例えば2μm)を形成し、第2バッファ層122となるノンドープGaN層(厚さは例えば2μm)を形成する。
【0223】
なお、第1バッファ層121には、例えば、Alα2Ga1−α2N層(0.8≦α2≦1)を用いても良い。この場合において、Al組成比の調整によってウェーハの反りを補償することができる。
【0224】
そして、n形コンタクト層130となるSiドープn形GaN層(Si濃度は例えば1×1018cm−3以上1×1020cm−3以下で、厚さは例えば6μm)を形成し、さらに、第1層131となるSiドープn形GaN層(厚さが例えば0.5μm)を形成する。
【0225】
この後、第2積層構造体220と第1積層構造体210とを形成する。その後、発光部140を形成する。例えば、第1障壁層BL1となるSiドープn形Al0.07Ga0.925In0.005N層(Si濃度は例えば1.0×1019cm−3以上1.5×1019cm−3以下)を形成する。さらに、井戸層42となるGaInN層(波長が例えば380nm以上470nm以下)を形成する。さらに、第2障壁層BL2となるAl0.07Ga0.925In0.005N層(Si濃度は例えば1×1018cm−3以下。例えばSiを添加しなくても良い)を形成する。
【0226】
さらに、第2層151となるMgドープp形Al0.22Ga0.78N層(Mg濃度は例えば1×1019cm−3で、厚さは例えば0.02μm)を形成する。さらに、p形コンタクト層150となるMgドープp形GaN層(厚さは例えば0.28μm)を形成する。
【0227】
例えば、p形コンタクト層150のMg濃度を、1×1020cm−3以上1×1021cm−3未満と高めに設定することで、p側電極160とのオーミック性を向上させることができる。ただし、半導体発光ダイオードの場合は、半導体レーザダイオードとは異なり、コンタクト層と井戸層との距離が近いため、Mg拡散による特性の劣化が懸念される。そこで、p側電極160とp形コンタクト層150との接触面積が広く、動作時の電流密度が低いことを利用して、電気特性を大きく損ねることなくp形コンタクト層150におけるMg濃度を1×1019cm−3以上1×1020cm−3未満程度に抑えることで、Mgの拡散を防ぐことができ、発光特性を改善させることができる。
【0228】
次に、結晶積層体180へのp側電極160の形成、結晶積層体180と導電性基板460との接合、並びに、基板110及び第1バッファ層121の除去、の例ついて説明する。
【0229】
まず、p側電極160を形成するために、真空蒸着装置を用いて、例えば、Ag膜(厚さは例えば200nm)、及び、Pt膜(厚さは例えば2nm)を連続的に形成する。リフトオフ後に、例えば、酸素雰囲気中で400℃、1min(分)のシンター処理を行う。
【0230】
そして、p側電極160上に第1金属層455として、例えば、Ni膜及びAu膜の積層膜を1000nmの厚さで形成する。
【0231】
この例では、例えばGeからなる導電性基板460上に、第2金属層465(例えば厚さが3μmのAuSn半田)が形成されている。導電性基板460に形成された第2金属層465と、結晶積層体180に形成された第1金属層455と、を対向させて設置し、AuSnの共晶点以上の温度に加熱する。加熱の温度は、例えば300℃である。これにより、導電性基板460と結晶積層体180とが接合される。
【0232】
そして、サファイアからなる基板110の側から、例えばYVOの固体レーザの三倍高調波(355nm)または四倍高調波(266nm)のレーザ光を照射する。レーザ光は、第2バッファ層122(GaN層であり、例えば、上記のノンドープGaNバッファ層)のGaNの禁制帯幅に基づく禁制帯幅波長よりも短い波長を有する。すなわち、レーザ光は、GaNの禁制帯幅よりも高いエネルギーを有する。
【0233】
このレーザ光は、第2バッファ層122(ノンドープGaNバッファ層)のうちの、第1バッファ層121(単結晶AlNバッファ層)の側の領域において効率的に吸収される。これにより、第2バッファ層122(GaNバッファ層)のうちの第1バッファ層121(単結晶AlNバッファ層)の側のGaNは、発熱により分解する。
【0234】
なお、第1バッファ層121にAlα2Ga1−α2N(0.8≦α2≦1)を用いた場合は、Al組成比の調整によってウェーハの反りを補償することができる。
【0235】
このようなレーザリフトオフ法を用いた場合、GaNの温度が急激に上昇する。このため、急激な熱膨張及び熱収縮が起こる。第1バッファ層121としてAlNを用いると熱伝導度が高いため熱の広がりが早く、局所的な熱膨張収縮の影響を緩和することができる。
【0236】
一方、第1バッファ層121としてAlGaNを用いた場合は、わずかにGaを添加するだけでも急激に熱伝導度が低下する。このため、レーザ光による温度変化の影響の広がりを抑制することができ、局所的に温度を急変させることに適している。このためレーザ光出力を下げることが可能で、レーザ光によるダメージがウェーハ全体に広がることを抑制することができる。
【0237】
そして、塩酸処理などによって、分解されたGaNを除去し、サファイアからなる基板110を結晶積層体180から剥離して分離する。
【0238】
次に、露出した結晶層(n形コンタクト層130)へのn側電極170の形成、及び、低不純物濃度半導体層135への凹凸137pの形成の例について説明する。
【0239】
サファイアからなる基板110から分離された第2バッファ層122(ノンドープGaN層)の一部を除去して開口部138を形成する。この開口部138によって、n形コンタクト層130(n形GaN層、すなわち、上記のSiドープn形GaN層)の一部が露出する。この際、n側電極170の段切れを防ぐために、開口部138の側面はテーパ形状に加工されることが望ましい。例えば、レジストマスクで塩素ガスを用いたドライエッチングを用いることで、開口部138として、50°のテーパ形状を持つ窪みを形成することができる。開口部138から露出したn形コンタクト層130(Siドープn形GaN層)と、第2バッファ層122(ノンドープGaN層)の一部と、を覆うように、リフトオフ法などで、例えばTi/Pt/Auの積層膜を例えば500nmの厚さで形成し、パターニングして、n側電極170を形成する。
【0240】
その後、n側電極170が形成されていない第2バッファ層122(ノンドープGaN層)の表面を、例えばKOH溶液によるアルカリエッチングにより加工して、凹凸137pを形成する。KOH溶液による処理条件としては、例えばKOHの1mol/Lの溶液を80℃に加熱して、20minエッチングする条件が採用される。これにより、凹凸137pが形成される。
【0241】
次いで、劈開またはダイヤモンドブレード等により、導電性基板460を切断し、個別の素子とし、本実施形態に係る半導体発光素子11(11a〜11c、12、12a〜12c)が作製される。
【0242】
上記において、凹凸137pの大きさは、例えば、発光部140から放出される発光光の波長よりも大きく設定される。具体的には、凹凸137pの大きさは、例えば、発光部140から放出される発光光の低不純物濃度半導体層135における波長よりも大きく設定される。これにより、凹凸137pが設けられる粗面部137において、光の進路が変更され、光の取り出し効率が向上し、さらに高効率の半導体発光素子が得られる。
【0243】
このように、本実施形態に係る半導体発光素子11(11a〜11c、12、12a〜12c)においては、第1層131は、サファイア層のc面を主面とした基板110上に、Alx3Ga1−x3N(0.8≦x3≦1)を含む単結晶バッファ層を介して成長されたGaN層の上に設けられている。または、第1層131は、シリコンの基板110(シリコン基板)上に、Alx3Ga1−x3N(0.8≦x3≦1)を含むバッファ層を介して成長されたGaN層の上に設けられている。
【0244】
この単結晶バッファ層には、例えば、第1バッファ層121が用いられる。すなわち、この単結晶バッファ層には、例えば、高炭素濃度の第1AlNバッファ層121aと、第1AlNバッファ層121aの上に形成された高純度の第2AlNバッファ層121bと、が適用される。
【0245】
また、上記の単結晶バッファ層を介して成長されたGaN層としては例えば、第2バッファ層122、n形コンタクト層130及びSiドープのn形閉じ込め層などが適用される。
【0246】
このように、基板110上に上記の単結晶バッファ層を介してGaN層を成長させることで、結晶品質の高いGaN層が得られる。
【0247】
導電性基板460には、例えば、Si及びGeなどの半導体基板、並びに、Cu及びCuWなどの金属板などが用いられる。また、導電性基板460の少なくとも一部が導電性を有していれば良い。導電性基板460には、例えば、樹脂の中に金属配線が設けられている板などを用いることができる。導電性基板460には、少なくとも一部が導電性を有する材料からなる基体を用いることができる。
【0248】
p側電極160は、例えば、銀、または、銀の合金を含む。銀以外の金属単層膜の可視光帯域に対する反射効率は、420nm以下の紫外域では波長が短くなるほど低下する傾向にあるが、銀は370nm以上410nm以下の紫外帯域の光に対しても高い反射効率特性を有する。紫外発光の半導体発光素子においてp側電極160が銀合金の場合は、p側電極160の半導体層の側の界面側の部分は、銀の成分比が大きい方が望ましい。p側電極160の厚さは、光に対する反射効率を確保するために、100nm以上であることが望ましい。
【0249】
p側電極160上には、拡散抑制層を設けても良い。拡散抑制層は、例えば、半田のp側電極160への拡散、または、p側電極160に含まれる材料と半田との反応を抑制する。拡散抑制層には、銀と反応しない材料、または、銀に積極的に拡散しない材料が用いられる。この拡散抑制層は、p側電極160と電気的に接触する。拡散抑制層には、高融点金属である、例えば、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)などの単層膜または積層膜が用いられる。
【0250】
さらに、拡散抑制層には、多少拡散しても問題がないように仕事関数が高く、p形コンタクト層150(p形GaN層)とオーミック性が得られやすい金属として、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)及び白金(Pt)の少なくともいずれかを用いることがさらに望ましい。
【0251】
拡散抑制層の厚さは、単層膜の場合は膜状態を保てる5nm以上、200nm以下の範囲であることが望ましい。積層膜の場合は、拡散抑制層の厚さは、例えば、10nm以上10000nm以下の間の値に設定することができる。
【0252】
本実施形態に係る半導体発光素子11(11a〜11c、12、12a〜12c)においては、第1層131は、サファイアからなる基板110上に形成されたGaN層の上に形成され、発光部140は、第1層131の上に形成され、第2層151は、発光部140の上に形成されており、基板110が除去されている。このような構成を有する半導体発光素子11(11a〜11c、12、12a〜12c)において、特に高い発光効率を実現できる。
【0253】
結晶積層体180と導電性基板460とを接合するとき、及び、レーザ光でGaN層を分解してサファイアからなる基板110を剥離するとき、において、結晶積層体180の結晶層に結晶欠陥やダメージが発生し易い。
【0254】
これは、導電性基板460、サファイア、及び、GaN層における相互の熱膨張係数差、局所的な加熱、及び、GaNの分解による生成物、などが原因であると考えられる。結晶層に結晶欠陥やダメージが発生すると、そこからp側電極160に含まれるAgが拡散し、結晶内部でのリークや結晶欠陥の加速度的な増加を招く。
【0255】
本実施形態においては、発光部140において、高い結晶性が得られるため、結晶成長用の基板110が除去された後にも、高品質の結晶を得ることができる。
【0256】
本実施形態においては、第1積層構造体210及び第2積層構造体220を導入することで、結晶品質の向上の程度が大きいので、基板110を除去する際に発生し得る井戸層42の特性の劣化が効果的に抑制される。
【0257】
基板110が除去される構造を有する半導体発光素子においては、発光効率の低下が発生し易い。本願発明者は、この構成において発光効率が低下し易い原因を解析し、その結果、基板110を除去するプロセスにおいて、基板110の側から大きな歪が加わることで結晶中の転位が増加することが、発光効率の低下に大きく影響を与えていると推定した。
【0258】
すなわち、基板110を除去する際に、加熱によって基板110を除去すると、熱膨張に伴って横方向に成分をもった転位が結晶中に導入されていると考えられる。また、基板110を剥離する際に、剥離された部分とされていない部分とが発生し、これにより、斜めに力が働く状態で剥離が進行する。このため、基板110の除去に伴う転位も斜め方向の成分を持つと推定される。
【0259】
半導体発光素子11(11a〜11c、12、12a〜12c)においては、基板110と発光部140との間に第1積層構造体210と第2積層構造体220とを導入している。これにより、基板110の除去に伴う転位の方向の変化(横方向及び斜め方向への変化)に対して影響を与えると考えられる。すなわち、本実施形態においては、転位は結晶表面に対して垂直に近づくため、転位の方向の変化を抑制する効果が発揮されていると推測される。これにより、基板110の除去において発生し得る発光効率の低下が抑制され、高効率に発光する半導体発光素子の実現が可能となる。
【0260】
実施形態においては、第1層131は、サファイアからなる基板110上に形成されたGaN層の上に形成され、発光部140は、第1層131の上に形成されている。または、第1層131は、シリコン基板上に形成されたGaN層の上に形成され、発光部140は、第1層131の上に形成されている。そして、第2層151は、発光部140の上に形成され、上記の基板が除去されている。
【0261】
以上のように、基板110が除去される構成が適用される半導体発光素子の場合に、第1積層構造体210及び第2積層構造体220を適用することで、特に結晶の品質を高く維持でき、これにより、基板110を除去する際の結晶の特性劣化が抑制され、特に高効率な発光を実現することが可能である。すなわち、基板110が除去される構成と、第1積層構造体210及び第2積層構造体220と、の組み合わせを採用すると、発光効率が特に効果的に向上できる。
【0262】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態に係るウェーハの構成を例示する模式的断面図である。
図10に表したように、本実施形態に係るウェーハ60(60a〜60c)は、窒化物半導体を含むn形の第1層131と、窒化物半導体を含むp形の第2層151と、発光部140と、第1積層構造体210と、第2積層構造体220と、を含む。発光部140は、第1層131と第2層151との間に設けられる。発光部は、複数の障壁層41と、複数の障壁層41の間に設けられた井戸層42と、を含む。ウェーハ60、60a、60b及び60cにおける、発光部140は、それぞれ図2(a)、図2(b)、図2(c)及び図2(d)に例示した構成を有する。
【0263】
第1積層構造体210は、第1層131と発光部140との間に設けられる。第1積層構造体210は、窒化物半導体を含む複数の第3層203と、複数の第3層203と交互に積層された、GaInNを含む複数の第4層204と、を含む。第4層204のそれぞれの厚さは、井戸層42の厚さよりも薄い。
【0264】
第2積層構造体220は、第1層131と第1積層構造体210との間に設けられる。第2積層構造体220は、複数の第5層205と、複数の第5層205と交互に積層された、GaInNを含む複数の第6層206と、を含む。第5層205は、第3層の組成とは異なる組成を有する。第6層206のそれぞれの厚さは、井戸層42の厚さよりも薄い。
【0265】
複数の第3層203は、AlGaInN及びGaNのいずれか一方を含み、複数の第5層205は、AlGaInN及びGaNのいずれか他方を含む。例えば、複数の第3層203はAlGaInNを含み、複数の第5層205はGaNを含む。
【0266】
複数の第3層203のそれぞれの厚さは、複数の障壁層41のそれぞれの厚さよりも薄い。複数の第5層205のそれぞれの厚さは、複数の障壁層41のそれぞれの厚さよりも薄い。
【0267】
ウェーハ60(60a〜60c)においては、第1の実施形態に係る半導体発光素子と同様の特性を有することができる。すなわち、ウェーハ60(60a〜60c)により、高効率のウェーハが提供できる。
【0268】
なお、図10に表したように、ウェーハ60(60a〜60c)は、第1の実施形態に関して説明した種々の層をさらに有することができる。
【0269】
井戸層42は、例えば、2.5nm以上9nm以下の厚さを有する。井戸層42は、例えば、近紫外光を放出する。井戸層42のピーク波長は、例えば380nm以上400nm以下である。
【0270】
発光部140から放出される光(発光光)は、前述の例と同様に、この波長域に限らず、種々の値とすることができる。また発光部140の構造は、前述種々の形態を適用することができる。
【0271】
また、井戸層42は、複数設けた場合において、特に高い効率が得られる。
なお、複数の第4層204の合計の厚さと、井戸層42の厚さと、の合計は、25nm以上45nm以下とすることができる。
【0272】
(第3の実施形態)
本実施形態は、例えば第1の実施形態に関して説明した半導体発光素子の製造方法に係る。
【0273】
図11は、第3の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図11に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、基板110上に、Alx3Ga1−x3N(0.8≦x3≦1)を含む単結晶バッファ層を形成する(ステップS101)。基板110は、サファイア層のc面の主面、または、シリコンの主面を有する。例えば、高炭素濃度の第1AlNバッファ層121aを形成し、第1AlNバッファ層121aの上に、高純度の第2AlNバッファ層121bを形成する。
【0274】
そして、単結晶バッファ層の上にGaN層を形成する(ステップS102)。例えば、第2バッファ層122及びn形コンタクト層130などを形成する。
【0275】
そして、そのGaN層の上に、n形GaN及びn形AlGaNの少なくともいずれかを含む第1層131を含むn形半導体層を形成する(ステップS103)。
n形半導体層の上に、第2積層構造体220を形成する(ステップS104)。すなわち、窒化物半導体を含む複数の第5層205と、GaInNを含む複数の第6層206と、を交互に積層する。
【0276】
第2積層構造体220の上に、第1積層構造体210を形成する(ステップS105)。すなわち、窒化物半導体を含む複数の第3層203と、GaInNを含む複数の第4層204と、を交互に積層する。第3層203は、第5層205の組成とは異なる組成を有する。
【0277】
第1積層構造体210の上に、発光部140を形成する(ステップS106)。発光部140は、複数の障壁層41と、複数の障壁層41の間に設けられた井戸層42と、を含む。
【0278】
発光部140の上に、p形AlGaNを含む第2層151を含むp形半導体層を形成する(ステップS107)。
p形半導体層の形成の後に、基板110を除去する(ステップS108)。
【0279】
上記の発光部140の形成は、例えば、Alx1Ga1−x1−y1Iny1N(0<x1、0≦y1、x1+y1<1)を含む第1障壁層BL1を形成し、第1障壁層BL1の上に、Alx0Ga1−x0−y0Iny0N(0≦x0、0<y0、x0+y0<1、y1<y0、y2<y0)を含む井戸層42を形成し、井戸層42の上に、Alx2Ga1−x2−y2Iny2N(0<x2、0≦y2、x2+y2<1)を含む第2障壁層BL2を形成することを含むことができる。井戸層42の厚さは、例えば2.5nm以上9nm以下である。例えば、井戸層42は、近紫外光を放出する。例えば、井戸層42のピーク波長は、例えば380nm以上400nm以下である。
【0280】
発光部140の特性と構造とは、前述の例と同様にこの波長域に限らず、種々の値と構造とすることができる。
【0281】
このような製造方法によれば、基板110の除去と、第1積層構造体210及び第2積層構造体220の形成と、を組み合わせることで、発光効率が効果的に向上できる。
【0282】
図12は、第3の実施形態に係る半導体発光素子の別の製造方法を例示するフローチャート図である。
図12に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子の別の製造方法においては、例えば、サファイアからなる基板110上に、有機金属気相成長法によりAlN層(第1バッファ層121)を形成する(ステップS101a)。
【0283】
そして、このAlN層の上に、有機金属気相成長法によりGaN層を形成する(ステップS102a)。例えば、第2バッファ層122及びn形コンタクト層130などを形成する。
【0284】
そして、このGaN層の上に、n形GaN及びn形AlGaNの少なくともいずれかを含む第1層131を含むn形半導体層を有機金属気相成長法により形成する(ステップS103a)。
【0285】
そして、n形半導体層の上に、第2積層構造体220を有機金属気相成長法により形成する(ステップS104a)。すなわち、有機金属気相成長法により、窒化物半導体を含む複数の第5層205と、GaInNを含む複数の第6層206と、を交互に積層する。
【0286】
第2積層構造体220の上に、第1積層構造体210を有機金属気相成長法により形成する(ステップS105a)。すなわち、有機金属気相成長法により、窒化物半導体を含む複数の第3層203と、GaInNを含む複数の第4層204と、を交互に積層する。第3層203は、第5層205の組成とは異なる組成を有する。
【0287】
第1積層構造体210の上に、発光部140を有機金属気相成長法により形成する(ステップS106a)。
【0288】
そして、発光部140の上に、p形AlGaNを含む第2層151を含むp形半導体層を有機金属気相成長法により形成する(ステップS107a)。
【0289】
このような製造方法によって、結晶の品質の高い半導体層が形成でき、特に高効率に近紫外光を発光する半導体発光素子を生産性良く製造できる。
【0290】
また、上記の半導体発光素子の製造方法は、ウェーハの製造方法にも応用できる。
すなわち、実施形態に係るウェーハの製造方法は、図11に例示したステップS101〜ステップS108、または、図12に例示したステップS101a〜ステップS107aを含むことができる。これにより、特に高効率に近紫外光を発光するウェーハを生産性良く製造できる。
【0291】
(第4の実施形態)
図13は、第4の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図13に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子20(及び20a〜20c)は、窒化物半導体を含むn形の第1層131と、窒化物半導体を含むp形の第2層151と、発光部140と、積層構造体210s(第1積層構造体210)と、を含む。
【0292】
この場合も、発光部140は、第1層131と第2層151との間に設けられる。
図2(a)〜図2(d)に表したように、発光部140は、複数の障壁層41と、複数の障壁層41の間に設けられた井戸層42と、を含む。障壁層42は、AlGaInNを含む。
【0293】
図13に表したように、積層構造体210sは、第1層131と発光部140との間に設けられる。積層構造体210sは、複数の第3層203と、複数の第3層203と交互に積層された複数の第4層204と、を含む。第3層203は、AlGaInNを含む。複数の第4層204の厚さは、井戸層42の厚さよりも薄くてよい。第4層204は、GaInNを含む。
【0294】
そして、第3層203の数及び第4層204の数は、10以上30以下である。すなわち、第3層203と第4層204とのペア数mが、10以上30以下である。
【0295】
本願発明者は、第3層203の数及び第4層204の数mを変えて半導体発光素子を作製し、その特性を評価した。
【0296】
図14は、第4の実施形態に係る半導体発光素子の特性を例示するグラフ図である。
横軸は、積層構造体210sにおけるペア数mである。m=0の場合は、積層構造体210sが設けられていない技術により作製された参考例の半導体発光素子92(構造は図示しない)に相当する。縦軸は、p−GaN層(p形コンタクト層150)の表面の表面平坦度変化ΔRMS(nm)を示す。表面平坦度変化ΔRMSは、積層構造体210sを設けた半導体発光素子におけるp形コンタクト層150の表面の平坦度と、参考例の半導体発光素子92におけるp形コンタクト層150の表面の平坦度と、の差である。ΔRMSが負であることは、p形コンタクト層150の表面の平坦度が参考例の場合よりも向上していることを示す。このことは、積層構造体210s上の発光部140の平坦度が、積層構造体210sを設けない場合よりも向上していることを示している。このことは、半導発光体素子の特性、均一性、及び、作製上の再現性が向上していることを示す。
【0297】
図14に表したように、ペア数mが0の場合(積層構造体210sを設けない参考例の半導体発光素子92の場合)は、表面の平坦度が低かった。一方、ペア数mが30と大きい場合は、表面の平坦度は参考例と同様に低かった。ペア数mが30以下の時、積層構造体210sの導入により、結晶表面の平坦性つまり半導体発光素子の特性向上を図ることができる。そして、ペア数mが10以上25以下のときに、表面平坦度が特に良好であった。
【0298】
なお、積層構造体210sと第1層131との間に、GaとGaInNとを交互に複数回積層した第2積層構造体220を設けた場合は、トータルのペア数が0から50の間で、結晶表面の平坦性が積層構造体を設けない場合よりも高かった。すなわち、積層構造体による結晶表面平坦化、及び、半導体発光素子の特性向上において、より大きな効果を得ることができた。
【0299】
このように、AlGaInNを含む複数の第3層203と、GaInNを含む複数の第4層204と、を交互に積層する場合に、ペア数mが上昇すると共に表面平坦度が向上するが、ペア数mが一定の値(例えば25)を超えると、表面平坦度が悪化することが分かった。
【0300】
このような現象に基づいて、本実施形態に係る半導体発光素子20、20a〜20cにおいては、第3層203と第4層204とのペア数mが、10以上30以下に設定される。
【0301】
本実施形態においては、積層構造体210s(第1積層構造体210)を用いることで、第3層203と第4層204との間の格子不整が大きく、転位の向きを変える効果が大きく、さらに、結晶が面内で不均一である場合でも転位の方向を変える効果が大きく、半導体発光素子の効率向上への寄与が大きい。
【0302】
本実施形態においても、複数の障壁層41のうちの、第1積層構造体210に最も近い第1障壁層BL1におけるバンドギャップエネルギーは、複数の障壁層41のうちの第1障壁層BL1を除く他障壁層41(第2障壁層BL2〜第(n+1)障壁層BL(n+1)(nは1以上の整数))におけるバンドギャップエネルギーよりも大きく設定することができる。この構成においては、第1積層構造体210及び第2積層構造体220によって効率が向上する効果がより効果的に発揮される。
【0303】
また、本実施形態においても、第1障壁層BL1は、図7に関して説明した第1サブ層BL1aと、第2サブ層BL1b、及び、第3サブ層BL1c、を有することができる。
【0304】
図15は、第4の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図15に表したように、本実施形態に係る別の半導体発光素子21(及び半導体発光素子21a〜21c)においては、導電性基板460、第1金属層455、及び、第2金属層465が設けられている。半導体発光素子21、21a〜21cにおける発光部140は、図2(a)〜図2(d)に例示した構成を有することができる。
【0305】
図16は、第4の実施形態に係る別の半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図16に表したように、本実施形態に係る別の半導体発光素子22(及び半導体発光素子22a〜22c)においては、導電性基板460とp側電極160との間に第1金属層455が設けられ、導電性基板460と第1金属層455との間に第2金属層465が設けられている。
【0306】
図15に例示した半導体発光素子21(21a〜21c)及び図16に例示した半導体発光素子22(22a〜22c)においては、第1層131の発光部140とは反対の側にn形コンタクト層130が設けられ、n形コンタクト層130の第1層131とは反対の側に低不純物濃度半導体層135(例えばノンドープのGaN層)が設けられている。
【0307】
この場合も、低不純物濃度半導体層135を2層構造としても良い。すなわち、第2バッファ層122とn形コンタクト層130との間に、n形低不純物濃度層(図示しない)を設け、第2バッファ層122とこのn形不純物濃度層と、を、低不純物濃度半導体層135としても良い。
【0308】
この場合も、低不純物濃度半導体層135に開口部138が設けられる。開口部138において露出しているn形コンタクト層130と、低不純物濃度半導体層135の一部と、を覆うようにn側電極170が設けられている。低不純物濃度半導体層135のn側電極170で覆われていない部分の主面135aには、凹凸137pを有する粗面部137が設けられている。
【0309】
(第5の実施形態)
図17は、第5の実施形態に係るウェーハの構成を例示する模式的断面図である。
図17に表したように、本実施形態に係るウェーハ70(70a〜70c)は、窒化物半導体を含むn形の第1層131と、窒化物半導体を含むp形の第2層151と、発光部140と、積層構造体210s(第1積層構造体210)と、を含む。発光部140は、第1層131と第2層151との間に設けられる。発光部は、複数の障壁層41と、複数の障壁層41の間に設けられた井戸層42と、を含む。ウェーハ70、70a、70b及び70cにおける、発光部140は、それぞれ図2(a)、図2(b)、図2(c)及び図2(d)に例示した構成を有する。
【0310】
積層構造体210sは、第1層201と発光部140との間に設けられる。積層構造体210sは、複数の第3層203と、複数の第3層203と交互に積層された複数の第4層204と、を含む。複数の第3層203は、AlGaInNを含む。複数の第4層204のそれぞれの厚さは、井戸層42の厚さよりも薄い。第4層204は、GaInNを含む。
【0311】
そして、第3層203の数及び第4層204の数(ペア数)は、10以上30以下である。
【0312】
ウェーハ70(70a〜70c)においては、第4の実施形態に係る半導体発光素子と同様の特性を有することができる。すなわち、ウェーハ70(70a〜70c)により、高効率のウェーハが提供できる。
【0313】
なお、図17に表したように、ウェーハ70(70a〜70c)は、第4の実施形態に関して説明した種々の層をさらに有することができる。
【0314】
井戸層42は、例えば、2.5nm以上9nm以下の厚さを有する。井戸層42の厚さは、特に5nm以上7nm以下に設定されることが望ましい。井戸層42は、近紫外光を放出する。井戸層42のピーク波長は、例えば380nm以上400nm以下である。
【0315】
本実施形態において、井戸層42の波長域は、この範囲に限らず、本実施形態の構成は、これまでの実施形態において説明したように、幅広い波長域に適用可能である。
【0316】
また、井戸層42は、複数設けた場合において、特に高い効率が得られる。
なお、複数の第4層204の合計の厚さと、井戸層42の厚さと、の合計は、25nm以上45nm以下とすることができる。
【0317】
ウェーハ70(70a〜70c)において、発光部140の構造(例えば障壁層41及び井戸層42の厚さなどを含む)には、既に説明した実施形態と同様に、種々の構造を適用できる。
【0318】
(第6の実施形態)
本実施形態は、例えば第4の実施形態に関して説明した半導体発光素子の製造方法に係る。
図18は、第6の実施形態に係る半導体発光素子の製造方法を例示するフローチャート図である。
図18に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子の製造方法においては、基板110上に、Alx3Ga1−x3N(0.8≦x3≦1)を含む単結晶バッファ層を形成する(ステップS201)。基板110は、サファイア層のc面の主面、または、シリコンの主面を有する。例えば、高炭素濃度の第1AlNバッファ層121aを形成し、第1AlNバッファ層121aの上に、高純度の第2AlNバッファ層121bを形成する。
【0319】
そして、単結晶バッファ層の上にGaN層を形成する(ステップS202)。例えば、第2バッファ層122及びn形コンタクト層130などを形成する。
【0320】
そして、そのGaN層の上に、n形GaN及びn形AlGaNの少なくともいずれかを含む第1層131を含むn形半導体層を形成する(ステップS203)。
【0321】
n形半導体層の上に、積層構造体210sを形成する(ステップS205)。すなわち、AlGaInNを含む複数の第3層203と、GaInNを含む複数の第4層204と、を交互に積層する。第3層203と、複数の第4層204と、の数(ペア数m)は、10以上30以下である。
【0322】
積層構造体210sの上に、発光部140を形成する(ステップS206)。発光部140は、複数の障壁層41と、複数の障壁層41の間に設けられた井戸層42と、を含む。井戸層42は、第3層203の厚さよりも薄い厚さを有する。
【0323】
発光部140の上に、p形AlGaNを含む第2層151を含むp形半導体層を形成する(ステップS207)。
p形半導体層の形成の後に、基板110を除去する(ステップS208)。
【0324】
図19は、第6の実施形態に係る半導体発光素子の別の製造方法を例示するフローチャート図である。
図19に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子の別の製造方法においては、例えば、サファイアからなる基板110上に、有機金属気相成長法によりAlN層(第1バッファ層121)を形成する(ステップS201a)。
【0325】
そして、このAlN層の上に、有機金属気相成長法によりGaN層を形成する(ステップS202a)。例えば、第2バッファ層122及びn形コンタクト層130などを形成する。
【0326】
そして、このGaN層の上に、n形GaN及びn形AlGaNの少なくともいずれかを含む第1層131を含むn形半導体層を有機金属気相成長法により形成する(ステップS203a)。
【0327】
そして、n形半導体層の上に、積層構造体210sを有機金属気相成長法により形成する(ステップS205a)。すなわち、AlGaInNを含む複数の第3層203と、GaInNを含む複数の第4層204と、を交互に積層する。第3層203と、複数の第4層204と、の数(ペア数m)は、10以上30以上である。
【0328】
積層構造体210sの上に、発光部140を有機金属気相成長法により形成する(ステップS206a)。
【0329】
そして、発光部140の上に、p形AlGaNを含む第2層151を含むp形半導体層を有機金属気相成長法により形成する(ステップS207a)。
【0330】
このような製造方法によって、結晶の品質の高い半導体層が形成でき、特に高効率に近紫外光を発光する半導体発光素子を生産性良く製造できる。
【0331】
また、上記の半導体発光素子の製造方法は、ウェーハの製造方法にも応用できる。
すなわち、本実施形態に係るウェーハの製造方法は、図18に例示したステップS201〜ステップS208、または、図19に例示したステップS201a〜ステップS207aを含むことができる。これにより、特に高効率に近紫外光を発光するウェーハを生産性良く製造できる。
【0332】
実施形態によれば、高効率の半導体発光素子、ウェーハ、半導体発光素子の製造方法及びウェーハの製造方法が提供できる。
【0333】
本明細書において「窒化物半導体」とは、BInAlGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電形などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0334】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれは良い。
【0335】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれる半導体層、発光部、井戸層、障壁層、積層構造体、電極、基板、バッファ層等の各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0336】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0337】
その他、本発明の実施の形態として上述した半導体発光素子、ウェーハ、半導体発光素子の製造方法及びウェーハの製造方法を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体発光素子、ウェーハ、半導体発光素子の製造方法及びウェーハの製造方法も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0338】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0339】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0340】
10、10a〜10c、11、11a〜11c、12、12a〜12c、15、20、20a〜20c、21、21a〜21c、22、22a〜22、91 半導体発光素子、 41…障壁層、 42…井戸層、 60、70…ウェーハ、 110…基板、 121…第1バッファ層、 121a…第1AlNバッファ層、 121b…第2AlNバッファ層、 122…第2バッファ層、 130…n形コンタクト層、 131…第1層、 135…低不純物濃度半導体層、 135a…主面、 137…粗面部、 137p…凹凸、 138…開口部、 140…発光部、 150…p形コンタクト層、 151…第2層、 160…p側電極、 170…n側電極、 180…結晶積層体、 181…中間層、 203〜206…第3層〜第6層、 210…第1積層構造体、 210s…積層構造体、 220…第2積層構造体、 455…第1金属層、 460…導電性基板、 465…第2金属層、 501…n−GaN層、 502…スーパーラティス層、 503…W発光層、 504…p−AlGaN層、 505…p−GaN層、 506…半導体層、 507…p−電極層、 508…電極取り出し穴、 509…絶縁層、 510…n−電極、 511…導電性基板、 512…p−電極、 BL1…第1障壁層、 BL1a…第1サブ層、 BL1b…第2サブ層、 BL1c…第3サブ層、 BL2…第2障壁層、 WL…井戸層、 WL1…第1井戸層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体を含むn形の第1層と、
窒化物半導体を含むp形の第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に設けられた発光部であって、複数の障壁層と、前記複数の障壁層の間に設けられた井戸層と、を含む発光部と、
前記第1層と前記発光部との間に設けられた第1積層構造体であって、
窒化物半導体を含む複数の第3層と、
前記複数の第3層と交互に積層され、それぞれの厚さが前記井戸層の厚さよりも薄いGaInNを含む複数の第4層と、
を含む第1積層構造体と、
前記第1層と前記第1積層構造体との間に設けられた第2積層構造体であって、
前記第3層の組成とは異なる組成を有する窒化物半導体を含む複数の第5層と、
前記複数の第5層と交互に積層され、それぞれの厚さが前記井戸層の厚さよりも薄いGaInNを含む複数の第6層と、
を含む第2積層構造体と、
を備えた半導体発光素子。
【請求項2】
前記複数の第3層は、AlGaInN及びGaNのいずれか一方を含み、
前記複数の第5層は、AlGaInN及びGaNのいずれか他方を含む、請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記複数の第3層は、AlGaInNを含み、前記複数の第3層のそれぞれの厚さは、前記複数の障壁層のいずれかの厚さよりも薄く、
前記複数の第5層は、GaNを含み、前記複数の第5層のそれぞれの厚さは、前記複数の障壁層のいずれかの厚さよりも薄い、請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記複数の障壁層のうちで前記第1積層構造体に最も近い第1障壁層におけるSi濃度は、前記第1積層構造体におけるSi濃度よりも高く、
前記第2積層構造体におけるSi濃度は、前記第1積層構造体におけるSi濃度よりも低く、
前記第1層におけるSi濃度は、前記第2積層構造体におけるSi濃度よりも低い、請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
窒化物半導体を含むn形の第1層と、
窒化物半導体を含むp形の第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に設けられた発光部であって、
AlGaInNを含む複数の障壁層と、前記複数の障壁層の間に設けられた井戸層と、
を含む発光部と、
前記第1層と前記発光部との間に設けられた第1積層構造体であって、
AlGaNを含む複数の第3層と、
前記複数の第3層と交互に積層され、それぞれの厚さが前記井戸層の厚さよりも薄いGaInNを含む複数の第4層と、
を含み、前記第3層の数及び前記第4層の数は、10以上30以下である第1積層構造体と、
を備えた半導体発光素子。
【請求項6】
前記複数の障壁層のうちの、前記第1積層構造体に最も近い第1障壁層におけるバンドギャップエネルギーは、前記複数の障壁層のうちの前記第1障壁層を除く他障壁層におけるバンドギャップエネルギーよりも大きい、請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記第1積層構造体の発光相当波長は、370ナノメートル以上380ナノメートル以下である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記複数の第4層の合計の厚さと、前記井戸層の厚さと、の合計は、25ナノメートル以上45ナノメートル以下である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項9】
窒化物半導体を含むn形の第1層と、
窒化物半導体を含むp形の第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に設けられた発光部であって、複数の障壁層と、前記複数の障壁層の間に設けられた井戸層と、を含む発光部と、
前記第1層と前記発光部との間に設けられた第1積層構造体であって、
窒化物半導体を含む複数の第3層と、
前記複数の第3層と交互に積層され、それぞれの厚さが前記井戸層の厚さよりも薄いGaInNを含む複数の第4層と、
を含む第1積層構造体と、
前記第1層と前記第1積層構造体との間に設けられた第2積層構造体であって、
前記第3層の組成とは異なる組成を有する窒化物半導体を含む複数の第5層と、
前記複数の第5層と交互に積層され、それぞれの厚さが前記井戸層の厚さよりも薄いGaInNを含む複数の第6層と、
を含む第2積層構造体と、
を備えたウェーハ。
【請求項10】
窒化物半導体を含むn形の第1層と、
窒化物半導体を含むp形の第2層と、
前記第1層と前記第2層との間に設けられた発光部であって、
AlGaInNを含む複数の障壁層と、前記複数の障壁層の間に設けられた井戸層と、
を含む発光部と、
前記第1層と前記発光部との間に設けられた第1積層構造体であって、
AlGaNを含む複数の第3層と、
前記複数の第3層と交互に積層され、それぞれの厚さが前記井戸層の厚さよりも薄いGaInNを含む複数の第4層と、
を含み、前記第3層の数及び前記第4層の数は、10以上30以下である第1積層構造体と、
を備えたウェーハ。
【請求項11】
サファイア層のc面の主面、または、シリコンの主面を有する基板上に、Alx3Ga1−x3N(0.8≦x3≦1)を含む単結晶バッファ層を形成し、
前記単結晶バッファ層の上にGaN層を形成し、
前記GaN層の上に、n形GaN及びn形AlGaNの少なくともいずれかを含む第1層を含むn形半導体層を形成し、
前記n形半導体層の上に、窒化物半導体を含む複数の第5層と、GaInNを含む複数の第6層と、を交互に積層して第2積層構造体を形成し、
前記第2積層構造体の上に、前記第5層の組成とは異なる組成を有する窒化物半導体を含む複数の第3層と、GaInNを含む複数の第4層と、を交互に積層して第1積層構造体を形成し、
前記第1積層構造体の上に、障壁層と井戸層とを含む発光部を形成し、
前記発光部の上に、p形AlGaNを含む第2層を含むp形半導体層を形成し、
前記p形半導体層の形成の後に、前記基板を除去する、半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
サファイアからなる基板上に、有機金属気相成長法によりAlN層を形成し、
前記AlN層の上に、有機金属気相成長法によりGaN層を形成し、
前記GaN層の上に、n形GaN及びn形AlGaNの少なくともいずれかを含む第1層を含むn形半導体層を有機金属気相成長法により形成し、
前記n形半導体層の上に、窒化物半導体を含む複数の第5層と、GaInNを含む複数の第6層と、を交互に積層して第2積層構造体を有機金属気相成長法により形成し、
前記第2積層構造体の上に、前記第5層の組成とは異なる組成を有する窒化物半導体を含む複数の第3層と、GaInNを含む複数の第4層と、を交互に積層して第1積層構造体を有機金属気相成長法により形成し、
前記第1積層構造体の上に、障壁層と井戸層とを含む発光部を有機金属気相成長法により形成し、
前記発光部の上に、p形AlGaNを含む第2層を含むp形半導体層を有機金属気相成長法により形成する、半導体発光素子の製造方法。
【請求項13】
サファイアからなる基板上に、有機金属気相成長法によりAlN層を形成し、
前記AlN層の上に、有機金属気相成長法によりGaN層を形成し、
前記GaN層の上に、n形GaN及びn形AlGaNの少なくともいずれかを含む第1層を含むn形半導体層を有機金属気相成長法により形成し、
前記n形半導体層の上に、窒化物半導体を含む複数の第5層と、GaInNを含む複数の第6層と、を交互に積層して第2積層構造体を有機金属気相成長法により形成し、
前記第2積層構造体の上に、前記第5層の組成とは異なる組成を有する窒化物半導体を含む複数の第3層と、GaInNを含む複数の第4層と、を交互に積層して第1積層構造体を有機金属気相成長法により形成し、
前記第1積層構造体の上に、障壁層と井戸層とを含む発光部を有機金属気相成長法により形成し、
前記発光部の上に、p形AlGaNを含む第2層を含むp形半導体層を有機金属気相成長法により形成する、ウェーハの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−65630(P2013−65630A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202319(P2011−202319)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】