半導体発光素子および外部共振器型レーザ光源
【課題】最大位相調整量を拡大した半導体発光素子を提供する。
【解決手段】電流注入を受けて光を発しその光を活性層に沿って伝搬させる発光領域と、その発光領域からの光を導波させる導波路層の屈折率が注入電流に応じて変化する位相調整領域とを有する半導体発光素子において、特性Fのように位相調整領域の導波路層に接する第2p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度が、導波路層の上端から所定範囲、特に25〜150nmの範囲内で極大値をもつように形成することで、位相調整領域における注入キャリアのオーバーフローの抑制効果が高くなり、屈折率変化に寄与しない無駄な電流を流す必要がなくなり、その結果素子全体としての高効率化が実現できることがわかった。
【解決手段】電流注入を受けて光を発しその光を活性層に沿って伝搬させる発光領域と、その発光領域からの光を導波させる導波路層の屈折率が注入電流に応じて変化する位相調整領域とを有する半導体発光素子において、特性Fのように位相調整領域の導波路層に接する第2p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度が、導波路層の上端から所定範囲、特に25〜150nmの範囲内で極大値をもつように形成することで、位相調整領域における注入キャリアのオーバーフローの抑制効果が高くなり、屈折率変化に寄与しない無駄な電流を流す必要がなくなり、その結果素子全体としての高効率化が実現できることがわかった。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性層を含む発光領域と、導波路層を含む位相調整領域とを有し、出射光の波長変化が可能な半導体発光素子において、位相調整量を改善するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信において、波長多重通信の要求が高まっており、発振波長の変化が可能な半導体発光素子が提案されており、この種の半導体発光素子には、モードホップしないように発振波長を変化させたときに、ファブリペロモードの位相を調整するための位相調整領域を有しているものがある。
【0003】
半導体発光素子と外部反射鏡を用いた外部共振器型レーザは、波長可変フィルタを挿入することで、発振波長を選択することが可能になる。発振およびその波長選択の原理は以下のようになる。
【0004】
半導体発光素子から出射される光は外部共振器長に依存する多数のファブリペロモード(間隔Δλ)を含んでいる。この多数のファブリペロモードのうち、波長可変フィルタの透過特性を満たすファブリペロモードのみが透過して外部反射鏡で反射されて半導体発光素子に戻り発振することになる。
【0005】
波長可変フィルタで発振波長を変化させると、波長可変フィルタの透過率のピーク位置と、透過したファブリペロモードは必ずしも一致するとは限らない。このため安定した発振を継続させるためには波長可変フィルタの透過率のピーク位置に、透過したファブリペロモードのピークを一致させるために位相を調整する必要がある。
【0006】
半導体発光素子の場合には、キャリアを注入すると屈折率が減少するというプラズマ効果が知られている。屈折率が減少すると外部共振器長は短尺化し、波長変化は負(短波長)に変化することになるため、キャリアの注入、つまり電流の制御により位相を調整することが可能になる。
【0007】
ここで、初期の波長から最も短波化した波長との差を、ファブリペロモード間隔Δλで除して2πを乗じた値を最大位相調整量と呼ぶ。
【0008】
また、ファブリペロモード間隔Δλ、波長変化Δλ′は、外部共振器長の変化ΔL、初期の外部共振器長L0、半導体発光素子の物理的長さl、半導体発光素子以外の物理的長さl′、波長λ0、等価屈折率neqを用いて以下のように表される(ただし、半導体発光素子以外の光路は全て空気中とし、空気の屈折率は1とした)。
【0009】
Δλ=λ02/(2L0) ……(1)
Δλ′=λ0(ΔL/L0) ……(2)
L0=neq・l+l′ ……(3)
【0010】
なお、上記したように位相調整領域を有する半導体発光素子と波長可変フィルタと反射鏡を用いた外部共振器型レーザ光源は、例えば次の特許文献1に開示されている。
【0011】
【特許文献1】国際公開WO2006/008873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したような位相調整領域を有する半導体発光素子では、モードホップしないように、フィルタの透過率のピークにファブリペロモードのピークを一致させる必要があるが、従来の半導体発光素子では、位相調整領域の導波路層とp型クラッド層との伝導帯バンド不連続ΔEcが小さいために、電子のオーバーフローが生じ易く、このオーバーフローによって最大位相調整量が制限されてしまうという問題があり、安定した発振を維持する目的で最大位相調整量を拡大することが強く望まれていた。
【0013】
本発明はこの要求に応えるためになされたものであり、最大位相調整量を拡大した半導体発光素子を提供することを目的としている。
【0014】
なお、発明者らは、種々の実験を行った結果、位相調整領域における導波路層の上に積層されるクラッド層のドーピング濃度にある特徴的な分布与えることでこの最大位相調整量を大幅に拡大できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の半導体発光素子は、
n型半導体基板(21)と、
前記n型半導体基板の上に形成された活性層(23)と、該活性層の上に積層された第1p型クラッド層(24)とを有し、電流注入を受けて光を発し該光を前記活性層に沿って伝搬させる発光領域(22)と、
前記n型半導体基板上で前記光のエネルギーよりも大きなエネルギーギャップを有し且つ前記発光領域の活性層と光学的に結合された導波路層(31)と、該導波路層の上に積層された第2p型クラッド層(32)とを有し、前記発光領域からの光に対する屈折率が注入電流に応じて変化する位相調整領域(30)とを有する半導体発光素子において、
前記位相調整領域の前記導波路層に接する前記第2p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度が、前記導波路層の上端から所定距離の範囲で極大値をもつように形成したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項2の半導体発光素子は、請求項1の半導体発光素子において、
前記所定距離範囲が25〜150nmであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項3の半導体発光素子は、請求項1または請求項2の半導体発光素子において、
前記発光領域の第1p型クラッド層と前記位相調整領域の第2p型クラッド層の上に第3p型クラッド層(40)が形成され、該第3p型クラッド層の前記発光領域と前記位相調整領域との境界部分に所定幅の分離溝(51、52)が形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項4の半導体発光素子は、請求項3の半導体発光素子において、
前記第3p型クラッド層の厚さ方向の終点におけるドーピング濃度が厚さ方向の始点におけるドーピング濃度より大きく、且つ1.0×1018(/cm3)〜2.5×1018(/cm3)の範囲に設定されたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項5の半導体発光素子は、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体発光素子において、
前記発光領域の前記第1p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度が、前記活性層の上端から50〜250nmの範囲内で極大値をもつように形成したことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項6の半導体発光素子は、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体発光素子において、
前記発光領域側の素子端面(20a)と前記活性層を導波する光の光軸線との交差角、または、前記位相調整領域側の素子端面(20b)と前記導波路層を導波する光の光軸線との交差角の少なくとも一方が、非直交であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項7の外部共振器型レーザ光源は、
前記発光領域側の素子端面と前記位相調整領域側の素子端面のうちの一方の素子端面の反射率が、他方の素子端面の反射率より低く形成された前記請求項1〜6のいずれかに記載の半導体発光素子(20、20′)と、
前記半導体発光素子の前記一方の素子端面から出射された光を受け、その少なくとも一部を前記一方の素子端面に帰還させる光帰還部(102)とを備え、
前記半導体発光素子の前記他方の素子端面と前記光帰還部とを対向する反射器として発振することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、上記のように位相調整領域の導波路層に接する第2p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度を、導波路層から所定距離の範囲で極大となるようにしたので、位相調整領域の導波路層と第2p型クラッド層とのΔEcが小さいことによって生じる電子のオーバーフローを抑制することができ、これにより最大位相調整量を拡大することができる。特に導波路層から25〜150nmの範囲で極大値となるようにすることで導波路層からオーバーフローする電子を効果的にブロックすることができ、最大位相調整量を大幅に拡大することができる。
【0023】
また、第3p型クラッド層の発光領域と位相調整領域の境界部分に分離溝を設けているため、領域間の分離抵抗を高くすることができ、発光領域から位相調整領域へのリーク電流を大幅に減少させることができる。
【0024】
また、第3p型クラッド層の厚さ方向の終点(活性層、導波路層から遠い上層側)におけるドーピング濃度が厚さ方向の始点(活性層、導波路層に近い下層側)におけるドーピング濃度より大きく、且つ1.0×1018(/cm3)〜2.5×1018(/cm3)の範囲に設定されたものでは、膜厚方向の直列抵抗を増加させることなく、導波路損失を低減することが可能となる。
【0025】
また、発光領域の第1p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度を、活性層から50〜250nmの範囲内で極大値をもつように形成した場合には、発光領域における注入キャリアのオーバーフローを抑制することができ、発光に寄与しない無駄な電流を流す必要がなくなり、その結果素子全体としての高効率化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した半導体発光素子20の外観図、図2は平面図、図3は図2のA−A線断面を示している。
【0027】
これらの図に示しているように、この半導体発光素子20は、InP(インジウム・リン)からなるn型半導体基板21(以下、単に基板21と記す)を有している。基板21は、後述するメサ構造のn型クラッド層も兼ねており、ほぼ一定のドーピング濃度(例えば1×1018/cm3)を有している。
【0028】
基板21の上の一端側(図2、3で右端側)には発光領域22が形成され、他端側(図2、3で左端側)には位相調整領域30が形成されている。
【0029】
発光領域22には、基板21の上の中央にほぼ一定幅(例えば5μm)でInGaAsP(インジウム・ガリウム・砒素・リン)からなる活性層23が形成され、その上にInPからなる第1p型クラッド層24が所定厚さ(例えば250nm)で形成されている。なお、ここで言う活性層23は、多重量子井戸層(MQW)とそれを挟むSCH層を含むものとする。また、第1p型クラッド層24のドーピング濃度の厚さ方向の分布は一定であってもよいが、後述するように、ある範囲で極大となるような分布にして電流供給時のキャリア漏れ等を防ぐ構造であってもよい。
【0030】
一方、位相調整領域30側の基板21の上の中央には、InGaAsPからなる導波路層31が活性層23と光学的に結合されるように形成されている。ここで、活性層23は、注入電流によりある波長範囲の光に対して利得を有し、長さ方向に光を伝搬させるように形成されているのに対し、導波路層31は主にその光に対する導波作用を有するが、その光に対して利得を有していてもよい。
【0031】
なお、導波路層31のエネルギーギャップは、前記光のエネルギーより大きくなるように設定されており、導波路層での前記光の吸収は生じない。
【0032】
この導波路層31の上には、第2p型クラッド層32が第1p型クラッド層24とほぼ同じ厚さで連続するように形成されている。活性層23と導波路層31の接続位置と、第1p型クラッド層24と第2p型クラッド層32との接続位置は一致している。
【0033】
そして、第1p型クラッド層24と第2p型クラッド層32の上および側方には、InPからなる第3p型クラッド層40が形成されている。
【0034】
また、活性層23の側部の基板21の上部にはp型のInPからなる埋め込み層42が形成され、その埋め込み層42の上部にはn型のInPからなる埋め込み層43が形成されている。
【0035】
そして、第3p型クラッド層40の発光領域22と位相調整領域30の境界部分は、活性層23と導波路層31とが光学的に結合された橋渡部50と、その左右の側方の領域に設けられた分離溝51、52から構成されている。橋渡部50は、後述する素子サイズにおいて、例えば長さ50μm、幅15μm、深さ7.5μm程度としている。
【0036】
この分離溝51、52は、第3p型クラッド層40だけでなく、埋め込み層42、43と基板21との界面よりも深くエッチング処理することにより形成されている。
【0037】
橋渡部50の長さ方向は、高い分離抵抗を得るために長い方が有利であるが、活性領域長が減少すると発光強度が低下したり、位相調整領域長が減少すると最大位相調整量が減少してしまうため、後述する素子長の下では25μm〜100μmの範囲としている。
【0038】
また、橋渡部50の幅は、狭い程高い分離抵抗が得られるが、活性層23や導波路層31の幅(後述する素子サイズにおいて例えば5μm)に対して余裕をもたせる必要があり、また光のスポットサイズの大きさなどを考慮して10μm〜20μmの範囲としている。深さについては、基板21と埋め込み層の界面よりも深くエッチングすることで正孔のリークを制限することが可能となるため5μm〜10μmの範囲としている。
【0039】
分離溝51、52を境にして発光領域22側の第3p型クラッド層40の上には、InGaAsからなるコンタクト層61が形成され、位相調整領域30側の第3p型クラッド層40の上にも、同様にInGaAsからなるコンタクト層62が形成され、それぞれのコンタクト層61、62の上には、金(Au)、白金(Pt)、チタン(Ti)からなる第1の上部電極71、第2の上部電極72が蒸着形成されている。また、基板21の下面側全体に、金(Au)、ゲルマニウム(Ge)、白金(Pt)からなる下部電極73が蒸着形成されている。
【0040】
次に、図4を用いて上記半導体発光素子20を用いた外部共振器型レーザ光源80について説明する。
【0041】
この外部共振器型レーザ光源80は、半導体発光素子20、コリメートレンズ100、波長可変フィルタ101、全反射ミラー102とから構成され、半導体発光素子20の一方の素子端面20aから出射された光をコリメートレンズ100により平行光に変換して波長可変フィルタ101に入射し、その出力光を全反射ミラー102により逆光路で半導体発光素子20の素子端面20aに戻す構成となっている。なお、半導体発光素子20の一方の素子端面20aには、素子端面20aでの光の反射を防止するための反射防止膜75が形成されている。
【0042】
このような構造を有する外部共振器型レーザ光源80の場合、半導体発光素子20の第1の上部電極71と下部電極73との間に所定電流(数100mA〜1A)を流すことで、活性層内部が発光状態となり、その光が活性層23と導波路層31に沿って伝搬し、素子端面20bと全反射ミラー102で構成された外部共振器で全反射ミラー102での反射光を半導体発光素子20に戻すと、活性層23と導波路層31の屈折率等によって決まる実効的な共振光路長と波長可変フィルタ101の透過率に応じた波長の光で発振する。
【0043】
なお、出射端面は、発光領域側の素子端面20aに限られるものではない。即ち、両素子端面20a、20bの一方の素子端面の反射率を他方より低く構成し、その一方の素子端面側に全反射ミラー102等の光帰還部を配置すれば、他方の素子端面と全反射ミラーとで外部共振器が構成されて、他方の素子端面から所望波長の光を出射させることができる。
【0044】
ここで、位相調整領域30側の第2の上部電極72と下部電極73との間に電流を流し、その電流値を例えば0〜数10mAの範囲で変化させることで、導波路層31の屈折率を変化させて、出射波長の変化や、波長可変フィルタ101の透過率のピークにファブリペロモードのピークを一致させることができ、モードホップの発生を防ぐことができる。
【0045】
ただし、前記したように、上記のような位相調整領域30を有する半導体発光素子では、導波路層とクラッド層の伝導帯バンド不連続(ΔEc)が小さいためにキャリアのオーバーフローが生じやすく、位相調整できる範囲が狭いという問題があった。
【0046】
そこで発明者らは、上記構造の半導体発光素子20について種々の実験を行った結果、位相調整領域30における導波路層31の上の第2p型クラッド層32のドーピング濃度にある特徴的な分布、即ち導波路層31から所定距離の範囲で極大をもつ分布を与えることでこの位相調整領域におけるオーバーフローを抑制して無駄な電流を流すことなく最大位相調整範囲を拡大できることを見出した。
【0047】
これを表したのが図5である。各種実験を行った結果、特性Fのように位相調整領域30の導波路層31に接する第2p型クラッド層32の厚さ方向のドーピング濃度が、導波路層31の上端から所定範囲、特に25〜150nmの範囲内で極大値をもつように形成することで、位相調整領域30における注入キャリアのオーバーフローの抑制効果が高くなり、屈折率変化に寄与しない無駄な電流を流す必要がなくなり、その結果素子全体としての高効率化が実現できることがわかった。なお、特性F′は実際のドーピング濃度分布の例である。
【0048】
このように導波路層31に比較的近い位置に極大位置を設定することで無効電流として拡散するキャリア(電子)のブロッキングに効果的であることがわかった。特に高注入領域における効率の改善が確認された。
【0049】
図6は、その効果を示したもので、横軸を位相調整領域への注入電流Ipc(mA)、縦軸を波長λ(nm)とし、1つのファブリペロモードに着目し、位相調整領域に電流Ipcを徐々に注入した際の周波数変化(波長変化)を測定したものである。
【0050】
なお、図6の下側の特性(黒丸でプロットした特性)は、第2p型クラッド層のドーピング濃度が導波路層の上端から35nmの距離で極大値となるように設定したものであり、上側の特性(黒四角でプロットした特性)は、第2p型クラッド層のドーピング濃度を一様にした従来素子のものである。
【0051】
この図6から明らかなように、ファブリペロモードのシフト量は、ドーピング濃度が一様な従来素子の場合では、Ipcが約5mAにおいて既に飽和しつつあり、最大シフト量が2πであるのに対し、ドーピング濃度の分布で所定距離に極大値を与えた本実施形態の素子では、Ipcが約5mAにおいても飽和せずにより大きなシフト量を示しており、最大シフト量は3πまで改善されていることがわかる。
【0052】
なお、図5に示したようにドーピング濃度の極大値を7×1017/cm3程度にすることで、導波路層31へ拡散するZnを最小限にすることが可能で正孔による損失を最小限に留め、且つ注入電子のオーバーフローを抑制し高い変換効率を得ることができた。
【0053】
ここでは位相調整領域30の第2p型クラッド層32のドーピング濃度に特徴的な分布を与えて変換効率を向上させているが、発光領域22側の第1p型クラッド層24についても、例えば図7の特性G(実際には例えば特性G′)のように、活性層から50nm〜250nmの範囲で極大となるような分布を与えることで、発光効率を向上させることができ、上記した位相調整領域30のドーピング濃度分布と併用することで高効率が実現できる。
【0054】
ただし、上記した位相調整領域30の第2p型クラッド層32のドーピング濃度の分布は発光領域22の濃度分布に依存しないので、発光領域22の構造によらずに上記効果を奏するものである。
【0055】
また、上記したように発光領域22と位相調整領域30の境界部分の第3p型クラッド層40に、活性層23と導波路層31とが光学的に結合された橋渡部50を残すようにして分離溝51、52を設けているため、領域間の分離抵抗を高くすることができ、発光領域22から位相調整領域30へのリーク電流を大幅に低減しつつ、橋渡部50を導波される光の反射を極めて少なくすることができる。
【0056】
また、第3p型クラッド層40のドーピングプロファイルは、直列抵抗と導波路損失を決定するため重要である。
【0057】
発光領域の膜厚方向の直列(シリーズ)抵抗が高いと、モードホップが起こり易い。これは電流注入で生じるジュール熱により屈折率が変化して長波化するために起こる現象である。電流を注入しファブリペロモードの中の一つのモードから隣のモード変わるまでの電流差分をモードホップ電流Ihop と呼ぶが、このモードホップ電流Ihop が高いほど、一つのモードにおける安定動作の範囲が広くなるため好ましい。
【0058】
つまりモードホップ電流Ihop を高くするために、ドーピング濃度を高く設定し直列抵抗を下げることが望まれる。その一方、活性層、導波路層に近い領域のドーピング濃度を高く設定すると、損失が増加する。
【0059】
よって、第3p型クラッド層40のドーピングプロファイルは、第3p型クラッド層全体の直列抵抗をモードホップが発生しない所定値になるようにするとともに、活性層、導波路層に近い下層領域(厚さ方向の始点部分)では低くする必要がある。
【0060】
その一つのドーピングプロファイルの特性を図8に示す。この特性Hでは、ドーピング濃度を、活性層、導波路層に近い下層領域(厚さ方向の始点部分)から活性層、導波路層から遠い上層領域(厚さ方向の終点部分)に向かって、3.0×1017、8.5×1017、1.8×1018(/cm3)と段階的に大きくなるようにしている。この結果、前記直列抵抗値0.5Ωが得られている。経験的に言えばこの直列抵抗としては0.7Ω以下が望ましく、そのためには、厚さ方向の終点におけるドーピング濃度を、1.0×1018(/cm3)〜2.5×1018(/cm3)の範囲にすればよいことを確認している。
【0061】
さらに、その層厚tを2μm〜3.2μmの範囲に制限することで、導波路層31の近傍の損失を低減しつつ、発光領域22から位相調整領域30への分離抵抗を1kΩにすることができた。なお、第3p型クラッド層40の層厚tをより小さくすれば分離抵抗をさらに大きくできるが、出射端面のスポットサイズより小さくなってしまい、損失が増加したり、導波できなくなる。また、層厚を3.2μmより大きくすると第3p型クラッド層40の抵抗が減少して領域間の分離抵抗が小さくなってしまうので、上記層厚の範囲が好ましい。
【0062】
なお、図8において、ドーピング濃度を3段階で大きくしていたが、変化段数は2段でも4段以上でもよく、また、図9の特性H′のように直線的に大きくしてもよく、段階的な変化と直線的変化を併用してもよい。
【0063】
次に、前記半導体発光素子20の製造方法について説明する。
始めに、図10のように、ドーピング濃度1×1018(/cm3)のn型のInPからなる基板121を用意し、その上に、図11のように、MOVPE法により、InGaAsPからなる活性層122を成長形成する、さらにその上に第1p型クラッド層123を積層させる。なお、ここで言う活性層122は、多重量子井戸層(MQW)とそれを挟むSCH層を含むものとする。また、第1p型クラッド層123の厚さは例えば250nmであり、そのドーピング濃度の厚さ方向の分布は一定であってもよいが、前記したようにある範囲で極大となるような分布にして電流供給時のキャリア漏れ等を防ぐ構造であってもよい。
【0064】
次に、図12のように、第1p型クラッド層123の上にSiO2またはSiNxからなる絶縁膜125をプラズマCVD法等により数10nm堆積し、さらにその上にレジスト126を塗布する。
【0065】
続いて、フォトリソグラフィにより、図13のように、位相調整領域の作製部分のレジストを取り除き、図14のようにエッチング処理により、レジスト126′で覆われていない領域の絶縁膜を除去する。
【0066】
さらに、図15のように、残っているレジスト126′を剥離して、絶縁膜125′をマスクとするエッチング処理により、図16のように、絶縁膜125′に覆われていない領域の第1n型クラッド層123および活性層122を除去する。ここで、第1n型クラッド層123のInPに対しては例えば塩酸リン酸エッチャント、活性層122に対しては塩酸+過酸化水素+水を用いてエッチング処理する。
【0067】
次に、図17のように、上記エッチング処理された部分の基板121の上に、InGaAsPからなる導波路層131を、活性層122′と連続するように成長形成し、その上にInPからなる第2p型クラッド層132を第1p型クラッド層123′とほぼ同一高さとなるように積層する。
【0068】
次に、残った絶縁膜125′を剥離してから、図18のように新たに絶縁膜140を全面に堆積させ、その上にレジスト141を塗布する。
【0069】
そして、メサ構造を作製するために、図19のようにフォトリソグラフィによりレジスト141の中央部を残し、その両側を除去する。
【0070】
さらに、一定幅の線状に残ったレジスト141′をマスクとして、図20のように、絶縁膜140の両側をエッチング処理により除去する。
【0071】
続いて残ったレジスト141′を剥離除去して、絶縁膜140′をマスクとするエッチングを行い、図21のように、断面がほぼ台形状(メサ構造)に連続した活性層122′(23)と導波路層131′(31)と、その上に台形状に連続した第1p型クラッド層123′(24)と第2p型クラッド層132′(32)を形成する。
【0072】
次に、図22のように、活性層24および導波路層31の両側にp型InPからなる埋め込み層142(42)とn型InPからなる埋め込み層143(43)を形成する。そして、その上に、図23のように、InPからなる第3p型クラッド層145(40)を成長形成し、さらにその上にInGaAsからなるコンタクト層146を形成する。
【0073】
そして、図24のように、コンタクト層146の上で発光領域22を形成する部分に、Au、Ti、Ptからなる第1の上部電極171を蒸着し、位相調整領域30を形成する部分にも、Au、Ti、Ptからなる第2の上部電極172を蒸着し、さらに、基板121の下面側を研磨してAu、Ge、Ptからなる下部電極173を蒸着する。
【0074】
そして、最後に、前記した橋渡部50、分離溝51、52を形成するためのエッチング処理を行うことにより、図1に示した半導体発光素子20が完成する。
【0075】
なお、この処理については詳述しないが、フォトリソグラフィ行程によりレジストをマスクとしてエッチング処理を行うものであり、コンタクト層146に対しては、例えば硫酸系エッチャント(選択エッチャント)を用いて第3p型クラッド層(InP)145(40)をエッチストップ層としてエッチングを行う。また、また、第3p型クラッド層145、各埋め込み層142、143および基板121に対しては、例えば塩酸リン酸エッチャントを用いてエッチングする。これにより、長さ1000μm、幅400μm、厚さ100μmの素子が完成する。
【0076】
図25は、図4の半導体発光素子20の構成を変更した外部共振器型レーザ光源80の構成例である。即ち、この半導体発光素子20′の基本構造は前記半導体発光素子20と同じであるが、発光領域側の端面反射成分を抑圧するために、活性層23と第1p型クラッド層24をふくむメサ型の導波路の先端側が素子端面20aに対して非直交状態で斜めに交差するように形成して(言い換えれば、素子端面20aと活性層23を導波する光の光軸線とが非直交状態で交差するようにして)、素子端面での反射成分が活性層23に戻ることを防止している。この構成の半導体発光素子の場合、位相調整領域側の素子端面20bから所望波長の光を出射させたり、あるいはコリメートレンズ100と波長可変フィルタ101の間に光を分岐するカプラやハーフミラー等を設けて出射させる。
【0077】
なお、位相調整領域側の導波路層31を位相調整領域側の素子端面20bに非直交状態で斜めに交差するように形成して素子端面に対して出射光の光軸線を斜めに交差させてもよく、活性層23と素子端面20aとの交差角および導波路層31と素子端面20bとの交差角をともに非直交にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態の半導体発光素子の外観図
【図2】実施形態の平面図
【図3】図2のA−A線断面図
【図4】実施形態の半導体発光素子を用いた外部共振器型レーザ光源の構成例を示す図
【図5】位相調整領域のp型クラッド層のドーピング濃度分布図
【図6】位相調整領域への注入電流と位相調整量との関係を示す図
【図7】発光領域のp型クラッド層のドーピング濃度分布図
【図8】第3p型クラッド層のドーピング濃度分布図
【図9】第3p型クラッド層のドーピング濃度分布図の別の例
【図10】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図11】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図12】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図13】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図14】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図15】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図16】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図17】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図18】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図19】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図20】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図21】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図22】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図23】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図24】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図25】外部共振器型レーザ光源の別の構成図
【符号の説明】
【0079】
20、20′……半導体発光素子、21……基板、22……発光領域、23……活性層、24……第1p型クラッド層、30……位相調整領域、31……導波路層、32……第2p型クラッド層、40……第3p型クラッド層、50……橋渡部、51、52……分離溝、61、62……コンタクト層、71……第1の上部電極、72……第2の上部電極、73……下部電極、80……外部共振器型レーザ光源、100……コリメートレンズ、101……波長可変フィルタ、102……全反射ミラー
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性層を含む発光領域と、導波路層を含む位相調整領域とを有し、出射光の波長変化が可能な半導体発光素子において、位相調整量を改善するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信において、波長多重通信の要求が高まっており、発振波長の変化が可能な半導体発光素子が提案されており、この種の半導体発光素子には、モードホップしないように発振波長を変化させたときに、ファブリペロモードの位相を調整するための位相調整領域を有しているものがある。
【0003】
半導体発光素子と外部反射鏡を用いた外部共振器型レーザは、波長可変フィルタを挿入することで、発振波長を選択することが可能になる。発振およびその波長選択の原理は以下のようになる。
【0004】
半導体発光素子から出射される光は外部共振器長に依存する多数のファブリペロモード(間隔Δλ)を含んでいる。この多数のファブリペロモードのうち、波長可変フィルタの透過特性を満たすファブリペロモードのみが透過して外部反射鏡で反射されて半導体発光素子に戻り発振することになる。
【0005】
波長可変フィルタで発振波長を変化させると、波長可変フィルタの透過率のピーク位置と、透過したファブリペロモードは必ずしも一致するとは限らない。このため安定した発振を継続させるためには波長可変フィルタの透過率のピーク位置に、透過したファブリペロモードのピークを一致させるために位相を調整する必要がある。
【0006】
半導体発光素子の場合には、キャリアを注入すると屈折率が減少するというプラズマ効果が知られている。屈折率が減少すると外部共振器長は短尺化し、波長変化は負(短波長)に変化することになるため、キャリアの注入、つまり電流の制御により位相を調整することが可能になる。
【0007】
ここで、初期の波長から最も短波化した波長との差を、ファブリペロモード間隔Δλで除して2πを乗じた値を最大位相調整量と呼ぶ。
【0008】
また、ファブリペロモード間隔Δλ、波長変化Δλ′は、外部共振器長の変化ΔL、初期の外部共振器長L0、半導体発光素子の物理的長さl、半導体発光素子以外の物理的長さl′、波長λ0、等価屈折率neqを用いて以下のように表される(ただし、半導体発光素子以外の光路は全て空気中とし、空気の屈折率は1とした)。
【0009】
Δλ=λ02/(2L0) ……(1)
Δλ′=λ0(ΔL/L0) ……(2)
L0=neq・l+l′ ……(3)
【0010】
なお、上記したように位相調整領域を有する半導体発光素子と波長可変フィルタと反射鏡を用いた外部共振器型レーザ光源は、例えば次の特許文献1に開示されている。
【0011】
【特許文献1】国際公開WO2006/008873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記したような位相調整領域を有する半導体発光素子では、モードホップしないように、フィルタの透過率のピークにファブリペロモードのピークを一致させる必要があるが、従来の半導体発光素子では、位相調整領域の導波路層とp型クラッド層との伝導帯バンド不連続ΔEcが小さいために、電子のオーバーフローが生じ易く、このオーバーフローによって最大位相調整量が制限されてしまうという問題があり、安定した発振を維持する目的で最大位相調整量を拡大することが強く望まれていた。
【0013】
本発明はこの要求に応えるためになされたものであり、最大位相調整量を拡大した半導体発光素子を提供することを目的としている。
【0014】
なお、発明者らは、種々の実験を行った結果、位相調整領域における導波路層の上に積層されるクラッド層のドーピング濃度にある特徴的な分布与えることでこの最大位相調整量を大幅に拡大できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の半導体発光素子は、
n型半導体基板(21)と、
前記n型半導体基板の上に形成された活性層(23)と、該活性層の上に積層された第1p型クラッド層(24)とを有し、電流注入を受けて光を発し該光を前記活性層に沿って伝搬させる発光領域(22)と、
前記n型半導体基板上で前記光のエネルギーよりも大きなエネルギーギャップを有し且つ前記発光領域の活性層と光学的に結合された導波路層(31)と、該導波路層の上に積層された第2p型クラッド層(32)とを有し、前記発光領域からの光に対する屈折率が注入電流に応じて変化する位相調整領域(30)とを有する半導体発光素子において、
前記位相調整領域の前記導波路層に接する前記第2p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度が、前記導波路層の上端から所定距離の範囲で極大値をもつように形成したことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項2の半導体発光素子は、請求項1の半導体発光素子において、
前記所定距離範囲が25〜150nmであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項3の半導体発光素子は、請求項1または請求項2の半導体発光素子において、
前記発光領域の第1p型クラッド層と前記位相調整領域の第2p型クラッド層の上に第3p型クラッド層(40)が形成され、該第3p型クラッド層の前記発光領域と前記位相調整領域との境界部分に所定幅の分離溝(51、52)が形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項4の半導体発光素子は、請求項3の半導体発光素子において、
前記第3p型クラッド層の厚さ方向の終点におけるドーピング濃度が厚さ方向の始点におけるドーピング濃度より大きく、且つ1.0×1018(/cm3)〜2.5×1018(/cm3)の範囲に設定されたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項5の半導体発光素子は、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体発光素子において、
前記発光領域の前記第1p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度が、前記活性層の上端から50〜250nmの範囲内で極大値をもつように形成したことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項6の半導体発光素子は、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体発光素子において、
前記発光領域側の素子端面(20a)と前記活性層を導波する光の光軸線との交差角、または、前記位相調整領域側の素子端面(20b)と前記導波路層を導波する光の光軸線との交差角の少なくとも一方が、非直交であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項7の外部共振器型レーザ光源は、
前記発光領域側の素子端面と前記位相調整領域側の素子端面のうちの一方の素子端面の反射率が、他方の素子端面の反射率より低く形成された前記請求項1〜6のいずれかに記載の半導体発光素子(20、20′)と、
前記半導体発光素子の前記一方の素子端面から出射された光を受け、その少なくとも一部を前記一方の素子端面に帰還させる光帰還部(102)とを備え、
前記半導体発光素子の前記他方の素子端面と前記光帰還部とを対向する反射器として発振することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、上記のように位相調整領域の導波路層に接する第2p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度を、導波路層から所定距離の範囲で極大となるようにしたので、位相調整領域の導波路層と第2p型クラッド層とのΔEcが小さいことによって生じる電子のオーバーフローを抑制することができ、これにより最大位相調整量を拡大することができる。特に導波路層から25〜150nmの範囲で極大値となるようにすることで導波路層からオーバーフローする電子を効果的にブロックすることができ、最大位相調整量を大幅に拡大することができる。
【0023】
また、第3p型クラッド層の発光領域と位相調整領域の境界部分に分離溝を設けているため、領域間の分離抵抗を高くすることができ、発光領域から位相調整領域へのリーク電流を大幅に減少させることができる。
【0024】
また、第3p型クラッド層の厚さ方向の終点(活性層、導波路層から遠い上層側)におけるドーピング濃度が厚さ方向の始点(活性層、導波路層に近い下層側)におけるドーピング濃度より大きく、且つ1.0×1018(/cm3)〜2.5×1018(/cm3)の範囲に設定されたものでは、膜厚方向の直列抵抗を増加させることなく、導波路損失を低減することが可能となる。
【0025】
また、発光領域の第1p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度を、活性層から50〜250nmの範囲内で極大値をもつように形成した場合には、発光領域における注入キャリアのオーバーフローを抑制することができ、発光に寄与しない無駄な電流を流す必要がなくなり、その結果素子全体としての高効率化が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した半導体発光素子20の外観図、図2は平面図、図3は図2のA−A線断面を示している。
【0027】
これらの図に示しているように、この半導体発光素子20は、InP(インジウム・リン)からなるn型半導体基板21(以下、単に基板21と記す)を有している。基板21は、後述するメサ構造のn型クラッド層も兼ねており、ほぼ一定のドーピング濃度(例えば1×1018/cm3)を有している。
【0028】
基板21の上の一端側(図2、3で右端側)には発光領域22が形成され、他端側(図2、3で左端側)には位相調整領域30が形成されている。
【0029】
発光領域22には、基板21の上の中央にほぼ一定幅(例えば5μm)でInGaAsP(インジウム・ガリウム・砒素・リン)からなる活性層23が形成され、その上にInPからなる第1p型クラッド層24が所定厚さ(例えば250nm)で形成されている。なお、ここで言う活性層23は、多重量子井戸層(MQW)とそれを挟むSCH層を含むものとする。また、第1p型クラッド層24のドーピング濃度の厚さ方向の分布は一定であってもよいが、後述するように、ある範囲で極大となるような分布にして電流供給時のキャリア漏れ等を防ぐ構造であってもよい。
【0030】
一方、位相調整領域30側の基板21の上の中央には、InGaAsPからなる導波路層31が活性層23と光学的に結合されるように形成されている。ここで、活性層23は、注入電流によりある波長範囲の光に対して利得を有し、長さ方向に光を伝搬させるように形成されているのに対し、導波路層31は主にその光に対する導波作用を有するが、その光に対して利得を有していてもよい。
【0031】
なお、導波路層31のエネルギーギャップは、前記光のエネルギーより大きくなるように設定されており、導波路層での前記光の吸収は生じない。
【0032】
この導波路層31の上には、第2p型クラッド層32が第1p型クラッド層24とほぼ同じ厚さで連続するように形成されている。活性層23と導波路層31の接続位置と、第1p型クラッド層24と第2p型クラッド層32との接続位置は一致している。
【0033】
そして、第1p型クラッド層24と第2p型クラッド層32の上および側方には、InPからなる第3p型クラッド層40が形成されている。
【0034】
また、活性層23の側部の基板21の上部にはp型のInPからなる埋め込み層42が形成され、その埋め込み層42の上部にはn型のInPからなる埋め込み層43が形成されている。
【0035】
そして、第3p型クラッド層40の発光領域22と位相調整領域30の境界部分は、活性層23と導波路層31とが光学的に結合された橋渡部50と、その左右の側方の領域に設けられた分離溝51、52から構成されている。橋渡部50は、後述する素子サイズにおいて、例えば長さ50μm、幅15μm、深さ7.5μm程度としている。
【0036】
この分離溝51、52は、第3p型クラッド層40だけでなく、埋め込み層42、43と基板21との界面よりも深くエッチング処理することにより形成されている。
【0037】
橋渡部50の長さ方向は、高い分離抵抗を得るために長い方が有利であるが、活性領域長が減少すると発光強度が低下したり、位相調整領域長が減少すると最大位相調整量が減少してしまうため、後述する素子長の下では25μm〜100μmの範囲としている。
【0038】
また、橋渡部50の幅は、狭い程高い分離抵抗が得られるが、活性層23や導波路層31の幅(後述する素子サイズにおいて例えば5μm)に対して余裕をもたせる必要があり、また光のスポットサイズの大きさなどを考慮して10μm〜20μmの範囲としている。深さについては、基板21と埋め込み層の界面よりも深くエッチングすることで正孔のリークを制限することが可能となるため5μm〜10μmの範囲としている。
【0039】
分離溝51、52を境にして発光領域22側の第3p型クラッド層40の上には、InGaAsからなるコンタクト層61が形成され、位相調整領域30側の第3p型クラッド層40の上にも、同様にInGaAsからなるコンタクト層62が形成され、それぞれのコンタクト層61、62の上には、金(Au)、白金(Pt)、チタン(Ti)からなる第1の上部電極71、第2の上部電極72が蒸着形成されている。また、基板21の下面側全体に、金(Au)、ゲルマニウム(Ge)、白金(Pt)からなる下部電極73が蒸着形成されている。
【0040】
次に、図4を用いて上記半導体発光素子20を用いた外部共振器型レーザ光源80について説明する。
【0041】
この外部共振器型レーザ光源80は、半導体発光素子20、コリメートレンズ100、波長可変フィルタ101、全反射ミラー102とから構成され、半導体発光素子20の一方の素子端面20aから出射された光をコリメートレンズ100により平行光に変換して波長可変フィルタ101に入射し、その出力光を全反射ミラー102により逆光路で半導体発光素子20の素子端面20aに戻す構成となっている。なお、半導体発光素子20の一方の素子端面20aには、素子端面20aでの光の反射を防止するための反射防止膜75が形成されている。
【0042】
このような構造を有する外部共振器型レーザ光源80の場合、半導体発光素子20の第1の上部電極71と下部電極73との間に所定電流(数100mA〜1A)を流すことで、活性層内部が発光状態となり、その光が活性層23と導波路層31に沿って伝搬し、素子端面20bと全反射ミラー102で構成された外部共振器で全反射ミラー102での反射光を半導体発光素子20に戻すと、活性層23と導波路層31の屈折率等によって決まる実効的な共振光路長と波長可変フィルタ101の透過率に応じた波長の光で発振する。
【0043】
なお、出射端面は、発光領域側の素子端面20aに限られるものではない。即ち、両素子端面20a、20bの一方の素子端面の反射率を他方より低く構成し、その一方の素子端面側に全反射ミラー102等の光帰還部を配置すれば、他方の素子端面と全反射ミラーとで外部共振器が構成されて、他方の素子端面から所望波長の光を出射させることができる。
【0044】
ここで、位相調整領域30側の第2の上部電極72と下部電極73との間に電流を流し、その電流値を例えば0〜数10mAの範囲で変化させることで、導波路層31の屈折率を変化させて、出射波長の変化や、波長可変フィルタ101の透過率のピークにファブリペロモードのピークを一致させることができ、モードホップの発生を防ぐことができる。
【0045】
ただし、前記したように、上記のような位相調整領域30を有する半導体発光素子では、導波路層とクラッド層の伝導帯バンド不連続(ΔEc)が小さいためにキャリアのオーバーフローが生じやすく、位相調整できる範囲が狭いという問題があった。
【0046】
そこで発明者らは、上記構造の半導体発光素子20について種々の実験を行った結果、位相調整領域30における導波路層31の上の第2p型クラッド層32のドーピング濃度にある特徴的な分布、即ち導波路層31から所定距離の範囲で極大をもつ分布を与えることでこの位相調整領域におけるオーバーフローを抑制して無駄な電流を流すことなく最大位相調整範囲を拡大できることを見出した。
【0047】
これを表したのが図5である。各種実験を行った結果、特性Fのように位相調整領域30の導波路層31に接する第2p型クラッド層32の厚さ方向のドーピング濃度が、導波路層31の上端から所定範囲、特に25〜150nmの範囲内で極大値をもつように形成することで、位相調整領域30における注入キャリアのオーバーフローの抑制効果が高くなり、屈折率変化に寄与しない無駄な電流を流す必要がなくなり、その結果素子全体としての高効率化が実現できることがわかった。なお、特性F′は実際のドーピング濃度分布の例である。
【0048】
このように導波路層31に比較的近い位置に極大位置を設定することで無効電流として拡散するキャリア(電子)のブロッキングに効果的であることがわかった。特に高注入領域における効率の改善が確認された。
【0049】
図6は、その効果を示したもので、横軸を位相調整領域への注入電流Ipc(mA)、縦軸を波長λ(nm)とし、1つのファブリペロモードに着目し、位相調整領域に電流Ipcを徐々に注入した際の周波数変化(波長変化)を測定したものである。
【0050】
なお、図6の下側の特性(黒丸でプロットした特性)は、第2p型クラッド層のドーピング濃度が導波路層の上端から35nmの距離で極大値となるように設定したものであり、上側の特性(黒四角でプロットした特性)は、第2p型クラッド層のドーピング濃度を一様にした従来素子のものである。
【0051】
この図6から明らかなように、ファブリペロモードのシフト量は、ドーピング濃度が一様な従来素子の場合では、Ipcが約5mAにおいて既に飽和しつつあり、最大シフト量が2πであるのに対し、ドーピング濃度の分布で所定距離に極大値を与えた本実施形態の素子では、Ipcが約5mAにおいても飽和せずにより大きなシフト量を示しており、最大シフト量は3πまで改善されていることがわかる。
【0052】
なお、図5に示したようにドーピング濃度の極大値を7×1017/cm3程度にすることで、導波路層31へ拡散するZnを最小限にすることが可能で正孔による損失を最小限に留め、且つ注入電子のオーバーフローを抑制し高い変換効率を得ることができた。
【0053】
ここでは位相調整領域30の第2p型クラッド層32のドーピング濃度に特徴的な分布を与えて変換効率を向上させているが、発光領域22側の第1p型クラッド層24についても、例えば図7の特性G(実際には例えば特性G′)のように、活性層から50nm〜250nmの範囲で極大となるような分布を与えることで、発光効率を向上させることができ、上記した位相調整領域30のドーピング濃度分布と併用することで高効率が実現できる。
【0054】
ただし、上記した位相調整領域30の第2p型クラッド層32のドーピング濃度の分布は発光領域22の濃度分布に依存しないので、発光領域22の構造によらずに上記効果を奏するものである。
【0055】
また、上記したように発光領域22と位相調整領域30の境界部分の第3p型クラッド層40に、活性層23と導波路層31とが光学的に結合された橋渡部50を残すようにして分離溝51、52を設けているため、領域間の分離抵抗を高くすることができ、発光領域22から位相調整領域30へのリーク電流を大幅に低減しつつ、橋渡部50を導波される光の反射を極めて少なくすることができる。
【0056】
また、第3p型クラッド層40のドーピングプロファイルは、直列抵抗と導波路損失を決定するため重要である。
【0057】
発光領域の膜厚方向の直列(シリーズ)抵抗が高いと、モードホップが起こり易い。これは電流注入で生じるジュール熱により屈折率が変化して長波化するために起こる現象である。電流を注入しファブリペロモードの中の一つのモードから隣のモード変わるまでの電流差分をモードホップ電流Ihop と呼ぶが、このモードホップ電流Ihop が高いほど、一つのモードにおける安定動作の範囲が広くなるため好ましい。
【0058】
つまりモードホップ電流Ihop を高くするために、ドーピング濃度を高く設定し直列抵抗を下げることが望まれる。その一方、活性層、導波路層に近い領域のドーピング濃度を高く設定すると、損失が増加する。
【0059】
よって、第3p型クラッド層40のドーピングプロファイルは、第3p型クラッド層全体の直列抵抗をモードホップが発生しない所定値になるようにするとともに、活性層、導波路層に近い下層領域(厚さ方向の始点部分)では低くする必要がある。
【0060】
その一つのドーピングプロファイルの特性を図8に示す。この特性Hでは、ドーピング濃度を、活性層、導波路層に近い下層領域(厚さ方向の始点部分)から活性層、導波路層から遠い上層領域(厚さ方向の終点部分)に向かって、3.0×1017、8.5×1017、1.8×1018(/cm3)と段階的に大きくなるようにしている。この結果、前記直列抵抗値0.5Ωが得られている。経験的に言えばこの直列抵抗としては0.7Ω以下が望ましく、そのためには、厚さ方向の終点におけるドーピング濃度を、1.0×1018(/cm3)〜2.5×1018(/cm3)の範囲にすればよいことを確認している。
【0061】
さらに、その層厚tを2μm〜3.2μmの範囲に制限することで、導波路層31の近傍の損失を低減しつつ、発光領域22から位相調整領域30への分離抵抗を1kΩにすることができた。なお、第3p型クラッド層40の層厚tをより小さくすれば分離抵抗をさらに大きくできるが、出射端面のスポットサイズより小さくなってしまい、損失が増加したり、導波できなくなる。また、層厚を3.2μmより大きくすると第3p型クラッド層40の抵抗が減少して領域間の分離抵抗が小さくなってしまうので、上記層厚の範囲が好ましい。
【0062】
なお、図8において、ドーピング濃度を3段階で大きくしていたが、変化段数は2段でも4段以上でもよく、また、図9の特性H′のように直線的に大きくしてもよく、段階的な変化と直線的変化を併用してもよい。
【0063】
次に、前記半導体発光素子20の製造方法について説明する。
始めに、図10のように、ドーピング濃度1×1018(/cm3)のn型のInPからなる基板121を用意し、その上に、図11のように、MOVPE法により、InGaAsPからなる活性層122を成長形成する、さらにその上に第1p型クラッド層123を積層させる。なお、ここで言う活性層122は、多重量子井戸層(MQW)とそれを挟むSCH層を含むものとする。また、第1p型クラッド層123の厚さは例えば250nmであり、そのドーピング濃度の厚さ方向の分布は一定であってもよいが、前記したようにある範囲で極大となるような分布にして電流供給時のキャリア漏れ等を防ぐ構造であってもよい。
【0064】
次に、図12のように、第1p型クラッド層123の上にSiO2またはSiNxからなる絶縁膜125をプラズマCVD法等により数10nm堆積し、さらにその上にレジスト126を塗布する。
【0065】
続いて、フォトリソグラフィにより、図13のように、位相調整領域の作製部分のレジストを取り除き、図14のようにエッチング処理により、レジスト126′で覆われていない領域の絶縁膜を除去する。
【0066】
さらに、図15のように、残っているレジスト126′を剥離して、絶縁膜125′をマスクとするエッチング処理により、図16のように、絶縁膜125′に覆われていない領域の第1n型クラッド層123および活性層122を除去する。ここで、第1n型クラッド層123のInPに対しては例えば塩酸リン酸エッチャント、活性層122に対しては塩酸+過酸化水素+水を用いてエッチング処理する。
【0067】
次に、図17のように、上記エッチング処理された部分の基板121の上に、InGaAsPからなる導波路層131を、活性層122′と連続するように成長形成し、その上にInPからなる第2p型クラッド層132を第1p型クラッド層123′とほぼ同一高さとなるように積層する。
【0068】
次に、残った絶縁膜125′を剥離してから、図18のように新たに絶縁膜140を全面に堆積させ、その上にレジスト141を塗布する。
【0069】
そして、メサ構造を作製するために、図19のようにフォトリソグラフィによりレジスト141の中央部を残し、その両側を除去する。
【0070】
さらに、一定幅の線状に残ったレジスト141′をマスクとして、図20のように、絶縁膜140の両側をエッチング処理により除去する。
【0071】
続いて残ったレジスト141′を剥離除去して、絶縁膜140′をマスクとするエッチングを行い、図21のように、断面がほぼ台形状(メサ構造)に連続した活性層122′(23)と導波路層131′(31)と、その上に台形状に連続した第1p型クラッド層123′(24)と第2p型クラッド層132′(32)を形成する。
【0072】
次に、図22のように、活性層24および導波路層31の両側にp型InPからなる埋め込み層142(42)とn型InPからなる埋め込み層143(43)を形成する。そして、その上に、図23のように、InPからなる第3p型クラッド層145(40)を成長形成し、さらにその上にInGaAsからなるコンタクト層146を形成する。
【0073】
そして、図24のように、コンタクト層146の上で発光領域22を形成する部分に、Au、Ti、Ptからなる第1の上部電極171を蒸着し、位相調整領域30を形成する部分にも、Au、Ti、Ptからなる第2の上部電極172を蒸着し、さらに、基板121の下面側を研磨してAu、Ge、Ptからなる下部電極173を蒸着する。
【0074】
そして、最後に、前記した橋渡部50、分離溝51、52を形成するためのエッチング処理を行うことにより、図1に示した半導体発光素子20が完成する。
【0075】
なお、この処理については詳述しないが、フォトリソグラフィ行程によりレジストをマスクとしてエッチング処理を行うものであり、コンタクト層146に対しては、例えば硫酸系エッチャント(選択エッチャント)を用いて第3p型クラッド層(InP)145(40)をエッチストップ層としてエッチングを行う。また、また、第3p型クラッド層145、各埋め込み層142、143および基板121に対しては、例えば塩酸リン酸エッチャントを用いてエッチングする。これにより、長さ1000μm、幅400μm、厚さ100μmの素子が完成する。
【0076】
図25は、図4の半導体発光素子20の構成を変更した外部共振器型レーザ光源80の構成例である。即ち、この半導体発光素子20′の基本構造は前記半導体発光素子20と同じであるが、発光領域側の端面反射成分を抑圧するために、活性層23と第1p型クラッド層24をふくむメサ型の導波路の先端側が素子端面20aに対して非直交状態で斜めに交差するように形成して(言い換えれば、素子端面20aと活性層23を導波する光の光軸線とが非直交状態で交差するようにして)、素子端面での反射成分が活性層23に戻ることを防止している。この構成の半導体発光素子の場合、位相調整領域側の素子端面20bから所望波長の光を出射させたり、あるいはコリメートレンズ100と波長可変フィルタ101の間に光を分岐するカプラやハーフミラー等を設けて出射させる。
【0077】
なお、位相調整領域側の導波路層31を位相調整領域側の素子端面20bに非直交状態で斜めに交差するように形成して素子端面に対して出射光の光軸線を斜めに交差させてもよく、活性層23と素子端面20aとの交差角および導波路層31と素子端面20bとの交差角をともに非直交にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施形態の半導体発光素子の外観図
【図2】実施形態の平面図
【図3】図2のA−A線断面図
【図4】実施形態の半導体発光素子を用いた外部共振器型レーザ光源の構成例を示す図
【図5】位相調整領域のp型クラッド層のドーピング濃度分布図
【図6】位相調整領域への注入電流と位相調整量との関係を示す図
【図7】発光領域のp型クラッド層のドーピング濃度分布図
【図8】第3p型クラッド層のドーピング濃度分布図
【図9】第3p型クラッド層のドーピング濃度分布図の別の例
【図10】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図11】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図12】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図13】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図14】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図15】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図16】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図17】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図18】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図19】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図20】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図21】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図22】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図23】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図24】実施形態の半導体発光素子の製造工程を説明するための図
【図25】外部共振器型レーザ光源の別の構成図
【符号の説明】
【0079】
20、20′……半導体発光素子、21……基板、22……発光領域、23……活性層、24……第1p型クラッド層、30……位相調整領域、31……導波路層、32……第2p型クラッド層、40……第3p型クラッド層、50……橋渡部、51、52……分離溝、61、62……コンタクト層、71……第1の上部電極、72……第2の上部電極、73……下部電極、80……外部共振器型レーザ光源、100……コリメートレンズ、101……波長可変フィルタ、102……全反射ミラー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型半導体基板(21)と、
前記n型半導体基板の上に形成された活性層(23)と、該活性層の上に積層された第1p型クラッド層(24)とを有し、電流注入を受けて光を発し該光を前記活性層に沿って伝搬させる発光領域(22)と、
前記n型半導体基板上で前記光のエネルギーよりも大きなエネルギーギャップを有し且つ前記発光領域の活性層と光学的に結合された導波路層(31)と、該導波路層の上に積層された第2p型クラッド層(32)とを有し、前記発光領域からの光に対する屈折率が注入電流に応じて変化する位相調整領域(30)とを有する半導体発光素子において、
前記位相調整領域の前記導波路層に接する前記第2p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度が、前記導波路層の上端から所定距離の範囲で極大値をもつように形成したことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記所定距離範囲が25〜150nmであることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記発光領域の第1p型クラッド層と前記位相調整領域の第2p型クラッド層の上に第3p型クラッド層(40)が形成され、該第3p型クラッド層の前記発光領域と前記位相調整領域との境界部分に所定幅の分離溝(51、52)が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第3p型クラッド層の厚さ方向の終点におけるドーピング濃度が厚さ方向の始点におけるドーピング濃度より大きく、且つ1.0×1018(/cm3)〜2.5×1018(/cm3)の範囲に設定されたことを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記発光領域の前記第1p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度が、前記活性層の上端から50〜250nmの範囲内で極大値をもつように形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記発光領域側の素子端面(20a)と前記活性層を導波する光の光軸線との交差角、または、前記位相調整領域側の素子端面(20b)と前記導波路層を導波する光の光軸線との交差角の少なくとも一方が、非直交であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記発光領域側の素子端面と前記位相調整領域側の素子端面のうちの一方の素子端面の反射率が、他方の素子端面の反射率より低く形成された前記請求項1〜6のいずれかに記載の半導体発光素子(20、20′)と、
前記半導体発光素子の前記一方の素子端面から出射された光を受け、その少なくとも一部を前記一方の素子端面に帰還させる光帰還部(102)とを備え、
前記半導体発光素子の前記他方の素子端面と前記光帰還部とを対向する反射器として発振する外部共振器型レーザ光源。
【請求項1】
n型半導体基板(21)と、
前記n型半導体基板の上に形成された活性層(23)と、該活性層の上に積層された第1p型クラッド層(24)とを有し、電流注入を受けて光を発し該光を前記活性層に沿って伝搬させる発光領域(22)と、
前記n型半導体基板上で前記光のエネルギーよりも大きなエネルギーギャップを有し且つ前記発光領域の活性層と光学的に結合された導波路層(31)と、該導波路層の上に積層された第2p型クラッド層(32)とを有し、前記発光領域からの光に対する屈折率が注入電流に応じて変化する位相調整領域(30)とを有する半導体発光素子において、
前記位相調整領域の前記導波路層に接する前記第2p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度が、前記導波路層の上端から所定距離の範囲で極大値をもつように形成したことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記所定距離範囲が25〜150nmであることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記発光領域の第1p型クラッド層と前記位相調整領域の第2p型クラッド層の上に第3p型クラッド層(40)が形成され、該第3p型クラッド層の前記発光領域と前記位相調整領域との境界部分に所定幅の分離溝(51、52)が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第3p型クラッド層の厚さ方向の終点におけるドーピング濃度が厚さ方向の始点におけるドーピング濃度より大きく、且つ1.0×1018(/cm3)〜2.5×1018(/cm3)の範囲に設定されたことを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記発光領域の前記第1p型クラッド層の厚さ方向のドーピング濃度が、前記活性層の上端から50〜250nmの範囲内で極大値をもつように形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記発光領域側の素子端面(20a)と前記活性層を導波する光の光軸線との交差角、または、前記位相調整領域側の素子端面(20b)と前記導波路層を導波する光の光軸線との交差角の少なくとも一方が、非直交であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記発光領域側の素子端面と前記位相調整領域側の素子端面のうちの一方の素子端面の反射率が、他方の素子端面の反射率より低く形成された前記請求項1〜6のいずれかに記載の半導体発光素子(20、20′)と、
前記半導体発光素子の前記一方の素子端面から出射された光を受け、その少なくとも一部を前記一方の素子端面に帰還させる光帰還部(102)とを備え、
前記半導体発光素子の前記他方の素子端面と前記光帰還部とを対向する反射器として発振する外部共振器型レーザ光源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2010−73708(P2010−73708A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235983(P2008−235983)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
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