説明

半導体発光素子

【課題】発光動作時における効率低下や光出力の低下を回避しつつ静電破壊耐量の向上を図る。
【解決手段】支持基板30と、発光層12を含む半導体膜10と、光取り出し面側の表面に設けられた表面電極と、支持基板と半導体膜との間に設けられた光反射層20、から形成され、表面電極は、半導体膜とオーミック接触する第1の電極片43と、第1の電極片に電気的に接続され且つ半導体膜とショットキー接触する第2の電極片41と、を含み、光反射層に形成される反射電極は、第1の電極片と互いに重ならないように配置され半導体膜とオーミック接触する第3の電極片21Dと、第3の電極片に電気的に接続され半導体膜とオーミック接触し且つ第2の電極片と対向するように配置された第4の電極片とを含み、第1の電極片と第4の電極片との間の半導体膜の主面方向における最短距離は、第1の電極片と第3の電極片との間の同方向における最短距離よりも大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(発光ダイオード)等の半導体発光素子に関する。
【従来技術】
【0002】
AlGaInP系材料で構成されるLEDは、結晶成長に使用されるGaAs基板のバンドギャップよりも発光層のバンドギャップの方が大きい。そのため、発光層から放射された光のうち、光取り出し面側に向かう光の一部は取り出すことができるが、GaAs基板側に向かう光はGaAs基板に吸収される。このような問題を解消し得る素子構造として、半導体膜の光取り出し面と反対側の面に光反射膜を形成した所謂貼り合わせ構造が知られている。このような、発光素子は、例えば、GaAs基板上にAlGaInP系材料からなる半導体膜を形成した後、半導体膜の表面に反射率の高い金属からなる光反射膜を設け、光反射膜上に支持基板に貼り付けた後、GaAs基板を除去することにより製造される。かかる構成のLEDによれば、光取り出し面とは反対側に向かう光は、光反射膜で反射されて外部に放出されるので、LEDの光取り出し効率が向上する。
【0003】
一方、半導体膜と空気又は樹脂等の周囲媒体との界面に対して臨界角以上の角度で入射する光は、全反射され外部に取り出すことはできない。外部に取り出すことができない光は、半導体膜内部で反射を繰り返して減衰する。半導体膜の内部を伝搬する光の強度は、伝搬距離(光路長)に対して指数関数的に減少する。例えば、AlGaInP系半導体膜の屈折率は3.3であり、これを屈折率1.5の樹脂で封止した場合、臨界角は27°、半導体膜と樹脂との界面における反射率は15%程度となり、外部へ取り出すことができる光は4.5%程度に制限される。
【0004】
そこで、半導体膜の光取り出し面を粗面化することにより形成される光取り出し構造が知られている。かかる構造によれば、光取り出し面に向かう光は半導体膜表面の凹凸部で散乱、回折され、光取り出し面と周囲媒体との界面で全反射される光の量を減じることができ、光取り出し効率を向上させることが可能となる。
【0005】
また、半導体膜の上面と下面にそれぞれ電極を設け、半導体膜の厚さ方向に電流を流す所謂縦型の発光素子において、上面側の電極と下面側の電極とが、半導体膜の主面と平行な投影面に投影したときに、互いに重ならないように配置したものが知られている。このような電極構成をカウンタ電極と呼ぶ。このような電極構成によれば、半導体膜の主面方向における電流拡散が促進され、電流密度分布および発光輝度分布の均一性を向上させることができる。尚、カウンタ電極は、上記の貼り合わせ構造と組み合わせて使用されるのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−227895号公報
【特許文献2】特開2008−60331号公報
【特許文献3】特開2010−192709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したような、貼り合わせ構造を有する半導体発光素子においては、半導体膜の厚さは通常20μm以下と薄い故に電流集中が生じやすく、特に逆方向サージに対する静電破壊耐量が低い。また、半導体膜の表面をエッチング処理するなどしてフォトニック結晶などの光取り出し構造を形成すると、電流拡散に寄与する半導体膜の厚さが更に小さくなるため静電破壊耐量は一層低下する。カウンタ電極配置とすることで、半導体膜内における電流拡散が促進されて静電破壊耐量が向上する傾向が見られるものの十分ではない。
【0008】
静電破壊耐量を向上させるための有効な手段として、サージ電圧印加時における電流の局所集中を回避することが可能な電極構成とすることが挙げられる。このとき、発光動作時における発光効率の低下や光出力の低下を極力抑えることが重要である。例えば光取り出し面に形成される表面電極の被覆率を大きくした場合には、光出力の低下は避けられない。また、ボンディングワイヤが接続される給電用パッド(ボンディングパッド)の直下で生成される光は、給電用パッドによって遮られて、外部に取り出すことは困難である。従って、給電用パッドの直下に電流が流入して、給電用パッド直下で光が生成されると光取り出し効率が低下する。このような光出力の低下や光取り出し効率の低下を伴うことなく静電破壊耐量の向上を図ることが望ましい。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、発光動作時における効率低下や光出力の低下を回避しつつ静電破壊耐量の向上を図ることができる半導体発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体発光素子は、支持基板と、前記支持基板上に設けられた発光層を含む半導体膜と、前記半導体膜の光取り出し面側の表面に設けられた表面電極と、前記支持基板と前記半導体膜との間に設けられて前記半導体膜と接する面において光反射面を形成する光反射層と、を含む半導体発光素子であって、前記表面電極は、前記半導体膜との間でオーミック接触を形成する第1の電極片と、前記第1の電極片に電気的に接続され且つ前記半導体膜との間でショットキー接触を形成して前記半導体膜の順方向電流を妨げる障壁を形成する第2の電極片と、を含み、前記光反射層は、反射電極を含み、前記反射電極は、前記半導体膜との間でオーミック接触を形成する第3の電極片と、前記第3の電極片に電気的に接続されて前記半導体膜との間でオーミック接触を形成し且つ前記第2の電極片と対向するように配置された第4の電極片とを含み、前記第1の電極片と前記第3の電極片は、前記半導体膜の主面と平行な投影面に投影したときに、互いに重ならないように配置され、前記第1の電極片と前記第4の電極片との間の前記半導体膜の主面方向における最短距離は、前記第1の電極片と前記第3の電極片との間の前記半導体膜の主面方向における最短距離よりも大きいことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の半導体発光素子は、支持基板と、前記支持基板上に設けられた発光層を含む半導体膜と、前記半導体膜の光取り出し面側の表面に設けられた表面電極と、前記支持基板と前記半導体膜との間に設けられて前記半導体膜と接する面において光反射面を形成する光反射層と、を含む半導体発光素子であって、前記表面電極は、前記半導体膜との間でオーミック接触を形成する第1の電極片と、前記第1の電極片に電気的に接続され且つ前記半導体膜との間でオーミック接触を形成する第2の電極片と、を含み、前記光反射層は、反射電極を含み、前記反射電極は、前記半導体膜との間でオーミック接触を形成する第3の電極片と、前記第3の電極片に電気的に接続されて前記第2の電極片と対向するように配置され且つ前記半導体膜との間でショットキー接触を形成して前記半導体膜の順方向電流を妨げる障壁を形成する第4の電極片とを含み、前記第1の電極片と前記第3の電極片は、前記半導体膜の主面と平行な投影面に投影したときに、互いに重ならないように配置され、前記第3の電極片と前記第2の電極片との間の前記半導体膜の主面方向における最短距離は、前記第3の電極片と前記第1の電極片との間の前記半導体膜の主面方向における最端距離よりも大きいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る半導体発光装置によれば、発光動作時においては給電用パッドの直下領域への電流流入は防止される一方、逆方向電圧印加時においては第2の電極片と第4の電極片との間に電流経路が形成されるので、発光動作時における光取り出し効率の低下や光出力の低下を回避しつつ逆方向の静電サージに対する破壊耐量を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体発光素子の構成を示す平面図である。
【図2】図1における2−2線に沿った断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の実施例に係る表面電極の構成を示す平面図である。図3(b)は、本発明の実施例に係る反射電極の構成を示す平面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の実施例に係る半導体発光素子の発光動作時における電流経路を示す断面図、図4(b)は逆方向サージ電圧印加時における電流経路を示す断面図である。図4(c)は、比較例に係る半導体発光素子の逆方向サージ電圧印加時における電流経路を示す断面図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、本発明の実施例に係る半導体発光素子の製造方法を示す断面図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、本発明の実施例に係る半導体発光素子の製造方法を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例に係る半導体発光素子および比較例に係る半導体発光素子の静電破壊試験の結果を示す図である。
【図8】図8(a)は、本発明の実施例2に係る半導体発光素子の構成を示す平面図、図8(b)は図8(a)における8b−8b線に沿った断面図である。
【図9】図9(a)は、本発明の実施例3に係る半導体発光素子の構成を示す平面図、図9(b)および図9(c)は、それぞれ、図9(a)における9b−9b線および9c−9c線に沿った断面図である。
【図10】図10(a)は、本発明の実施例4に係る半導体発光素子の構成を示す平面図、図10(b)は図10(a)における10b−10b線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。尚、以下に示す図において、実質的に同一又は等価な構成要素、部分には同一の参照符を付している。
【実施例1】
【0015】
図1は、本発明の実施例1に係る半導体発光素子1の構成を示す平面図、図2は、図1における2−2線に沿った断面図である。尚、図1において、光取り出し面側に設けられた表面電極が実線で示され、光反射面側に設けられた反射電極が破線で示されている。
【0016】
半導体発光素子1は、例えば1辺300μmの正方形の主面を有し、光反射層20を間に挟んで半導体膜10と支持基板30とが接合されたいわゆる貼り合わせ構造を有する。半導体膜10は、光取り出し面側から順にn型クラッド層11、発光層12、p型クラッド層13、p型コンタクト層14が積層されて構成される。n型クラッド層11は、例えば厚さ2.5μmのSiドープされた(Al0.6Ga0.40.5In0.5Pからなる層と、厚さ0.5μmのSiドープされたAl0.5In0.5Pからなる層が積層されて構成される。発光層12は、例えば厚さ20nmの(Al0.1Ga0.90.5In0.5Pからなる井戸層と、厚さ10nmの(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pからなるバリア層とからなるペアを15回繰り返して積層して構成される多重量子井戸構造を有する。p型クラッド層13は、例えば厚さ0.5μmのMgドープされたAl0.5In0.5Pにより構成される。p型コンタクト層14は、例えば厚さ1.5μmのMgドープされたGaPにより構成される。尚、各層の組成比は上記したものに限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0017】
光取り出し面となるn型クラッド層11の表面には、半導体膜10との間でオーミック接触を形成する光取り出し面側のオーミック電極(第1の電極片)43と、ボンディングワイヤが接続される給電用パッド(ボンディングパッド、第2の電極片)41と、給電用パッド41とオーミック電極43とを電気的に接続するための配線電極42と、からなる表面電極が設けられている。給電用パッド41および配線電極42は、n型クラッド層11との間でショットキー接触を形成する材料により構成されている。ショットキー障壁の高さは、オーミック電極43を介して電流が流れ始めるまでの配線抵抗を含む順方向電圧VFよりも高く、0.2V以上、好ましくは0.5V以上である。給電用パッド41および配線電極42の材料としてAu、Al、Ag、Cu、Fe、Ni、Pd、Ni、Pd、Pt、Mo、Ta、Ti、Wまたはこれらの窒化物(例えばTaN、WN)またはこれらのシリサイド(例えばWSi、TaSi)を使用することが可能である。尚、給電用パッド41は、ワイヤボンディング強度を向上させるために、上記のショットキー電極材料の上にTiなどからなる密着層を介してAu(厚さ約1μm)を積層して構成されていてもよい。オーミック電極43は、n型クラッド層11との間でオーミック接触を形成する材料により構成される。オーミック電極43は、例えば、AuGeN(厚さ300nm)からなるコンタクト層、Ti/Ni(厚さ200nm)からなるバリア層、Au(厚さ200nm)からなる電流拡散層をこの順序で積層することにより構成することができる。n型クラッド層11との間でオーミック接触を形成し得る他の材料としては、例えば、AuSn、AuGe、AuSnNiなどが挙げられる。
【0018】
図3(a)は、表面電極を構成する給電用パッド41、オーミック電極43および配線電極42のみを示した図である。給電用パッド41は、例えば直径100μm(7850μm)の円形形状を有し、光取り出し面の中央に配置されている。尚、給電用パッド41のサイズは2500μm以上であることが好ましく、より好ましくは5000μm以上である。給電用パッド41には半導体発光素子1の各コーナ部に向けて伸びる幅5μm程度の線状の配線電極42が接続されている。接続配線42の各々には、幅5μm程度の線状のオーミック電極43が接続されている。オーミック電極43は、半導体発光素子1のコーナ部付近およびコーナ部からやや中央部寄りに分散配置された8つの電極片43a〜43hにより構成されている。分散配置されたオーミック電極43の各電極片43a〜43hは、接続配線42を介して給電用パッド41と電気的に接続されている。給電用パッド41、接続配線42およびオーミック電極43からなる表面電極は、半導体発光素子1の中心点を回転中心としたときに、4回回転対称(90°回転すると重なる)となるようなパターンを有する。
【0019】
光反射層20は、p型コンタクト層14に隣接して設けられている。光反射層20は、誘電体層25と反射電極とを含み、半導体膜10と接する面において光反射面を形成する。反射電極は、p型コンタクト層14との間でオーミック接触を形成する材料、例えばAuZnなどからなる線状のライン電極21L、島状のドット電極21Dおよび対向電極22により構成される。対向電極22は、給電用パッド41と対向する位置に配置される電極片である。尚、ライン電極21Lおよびドット電極21Dは、本発明の第3の電極片を構成し、対向電極22は、本発明の第4の電極片を構成する。誘電体層25は、例えばSiO2からなり、p型コンタクト層14との界面近傍に形成されている。誘電体層25は、ライン電極21L、ドット電極21D、対向電極22の間に介在し、半導体層10と接する面において、これらの各電極間を分離している。換言すれば、誘電体層25は、反射電極のパターンを画定している。尚、ライン電極21L、ドット電極21D、対向電極22は、誘電体層25の下方において互いに繋がっており、互いに同電位となっている。尚、誘電体層25の材料としては、SiO2以外にもSi3N4やAl2O3等の他の透明な誘電体材料を用いることができる。また、反射電極の材料は、p型コンタクト層14との間でオーミック性接触を形成することができ、高い光反射性を有する他の材料を用いることができる。
【0020】
図3(b)は、光反射面側に設けられたライン電極21L、ドット電極21Dおよび対向電極22のみを示した図である。ライン電極21Lは、幅5μm程度の線状をなしており、対向電極22の外周を囲むように形成された円環状の第1の部分21Lと、第1の部分21Lに接続され、半導体発光素子1の各辺に向けて伸長する略十字型の第2の部分21Lと、第2の部分21Lに接続され、半導体発光素子1の外縁に沿って伸長する第3の部分21Lと、半導体発光素子1の各コーナ部近傍に設けられ、各コーナ部を挟む2つの辺を跨ぐようにして第3の部分21Lに接続する第4の部分21Lにより構成される。ドット電極21Dは、例えば直径5μm程度の円形をなしており、ライン電極21Lの各部分に沿うように分散配置されている。このように光反射面側にドット電極21Dを分散配置することで半導体膜10の膜厚が小さい場合でも半導体膜10内における電流拡散が促進され、更にライン電極21Lを併せて設けることにより、ドット電極21Dへの電流集中を防止している。
【0021】
対向電極22は、光取り出し面側の給電用パッド41の直下に配置される。対向電極22は、例えば、給電用パッド41と同一サイズの円形をなしているが、これに限定されるものではない。対向電極22のサイズは給電用パッド41よりも大きくてもよく、その形状も適宜変更することが可能である。対向電極22は、その外周を囲むように設けられた誘電体層25によって半導体膜10と接する面においてライン電極21Lおよびドット電極21Dから分離されている。
【0022】
図1に示すように、光取り出し面側のオーミック電極(第1の電極片)43と、光反射面側のライン電極21Lおよびドット電極21D(第3の電極片)は、半導体膜10の主面と平行な投影面にこれらを投影したときに互いに重ならないように配置され、いわゆるカウンタ電極を構成している。すなわち、ライン電極21Lおよびドット電極21Dは、光取り出し面側のオーミック電極43を構成する各電極片を挟んだ両側に当該電極片に沿うように配置されている。光取り出し面側のオーミック電極43の直下には誘電体層25が配置される。このような電極構成とすることで、光取り出し面側のオーミック電極43の面積を小さくしても、半導体膜10内に広く電流を拡散させることが可能となる。また、本実施例では、光取り出し面側の電極と光反射面側の電極を含めた全体の電極パターンは、半導体発光素子1の中心点を回転中心としたときに4回回転対称となっている。これにより、半導体発光素子1とレンズ等とを組み合わせて照明装置を構成した場合に、等方的な配光を得ることができる。
【0023】
光反射層20上にバリアメタル層26が設けられ、さらにバリアメタル層26上に密着層27が設けられる。バリアメタル層26は、例えばTa、Ti、W等の高融点金属もしくはこれらの窒化物を含む単層又は2以上の層により構成することができる。バリアメタル層26は、反射電極に含まれるZnが外方拡散するのを防止するとともに、接合層33に含まれる共晶接合材(例えばAuSn)が反射電極内に拡散するのを防止する。密着層27は、接合層33に含まれる共晶接合材に対する濡れ性が高い材料、例えばNiなどを含む。
【0024】
支持基板30は、例えばp型不純物を高濃度で添加することにより導電性が付与されたSi基板である。支持基板30の両面には、例えばPtからなるオーミック金属層31および32が形成される。オーミック金属層32上にはTi、Ni、AuSnを順次積層して構成される接合層33が設けられている。支持基板30は、接合層33と密着層27との結合によって半導体膜10に接合される。尚、支持基板30の材料としては、Si以外にもGe、Al、Cu等の他の導電性材料を用いることができる。
【0025】
図4(a)は、上記した構成を有する半導体発光素子1の発光動作時の半導体膜10内を流れる電流の経路を示した図である。電流は、p型コンタクト層14と接する光反射面側のライン電極21Lおよびドット電極21Dの各々から、これらの最短距離に位置する光取り出し面側のオーミック電極43に向けて流れる。オーミック電極43と、ライン電極21Lおよびドット電極21Dは、半導体膜10の主面と平行な投影面にこれらを投影したときに互いに重ならないように配置されている故、電流の流れる方向は半導体膜10の主面方向(横方向)成分を持ち、これにより、比較的膜厚の小さい半導体膜10内において電流拡散が促進され電流密度分布の均一化が図られる。一方、給電用パッド41は半導体膜10との間でショットキー接触を形成しており、これらの間には、半導体膜10のpn接合によって形成されるダイオードの向きとは逆向きの障壁(すなわち、順方向電流を阻止するように作用する障壁)が形成されている。それ故、光反射面側のライン電極21L、ドット電極22bおよび対向電極22のいずれからも給電用パッド41に向けて電流は流れない。すなわち、発光動作時においては、給電用パッド41の直下領域には電流は流入しないようになっている。
【0026】
給電用パッド41の直下領域に電流が流れると、給電用パッド41によって遮られる光取り出しに寄与しない領域において光が生成されることとなり、光取り出し効率が低下する。特に、本実施例に係る半導体発光素子1は、半導体膜10の膜厚が比較的小さいため、給電用パッド41の直下に電流が流入した場合に光取り出し効率の低下が顕著となる。本実施例に係る半導体発光素子1においては、給電用パッド41をショットキー電極として構成したことに加え、光反射面側の各電極の構成によっても給電用パッド41直下への電流流入を防止している。すなわち、対向電極22は、光取り出し面側のオーミック電極43までの距離がいずれのライン電極21Lおよびドット電極21Dよりも遠い位置に配置され、しかも、半導体膜10と接する面において、誘電体層25によってライン電極21Lおよびドット電極21Dから分離されている。換言すれば、給電用パッド41と、これに隣接するオーミック電極43との間の領域Aの直下には、半導体膜10と接する面において対向電極22から分離されたライン電極21Lおよびドット電極21D(図4(a)において破線で囲まれている)が配置されている。反射電極をこのように構成することで、発光動作時において対向電極22からオーミック電極43に向けて電流は殆ど流れない。従って、発光動作時において、給電用パッド41の直下領域に流入する電流をほぼ完全になくすことができる。
【0027】
図4(b)は、半導体発光素子1の逆方向サージ電圧印加時の半導体膜10内を流れる電流の経路を示した図である。半導体膜10のpn接合に対して逆方向の電圧が印加されると、光取り出し面側の各オーミック電極43から光反射面側のライン電極21Lおよびドット電極21Dに向けて電流が流れる。逆方向サージ電圧印加時においては、給電用パッド41と半導体膜10との間のショットキー接合は、いわゆる順方向にバイアスされる故、給電用パッド41と半導体膜10との間に障壁は殆どなく、電圧に対して指数関数的に電流が流れる。従って、逆方向サージ電圧印加時においては、給電用パッド41から対向電極22に向けて電流が流れる。ここで、図4(c)は、給電用パッド41に対向する対向電極を有さない比較例に係る半導体発光素子における逆方向サージ電圧印加時の電流経路を示した図である。対向電極を設けないこととした場合、電流経路は、光取り出し面側のオーミック電極43から光反射面側のライン電極21Lおよびドット電極21Dに向かう経路のみとなる。この場合において、高い電圧が印加されると抵抗の最も小さい経路に電流が集中し(カレントバンチング)、静電破壊耐量が低くなる。抵抗の不均一は、例えば、電極配置の僅かなずれなどに起因して生じ、これを完全に排除することは困難である。一方、本実施例に係る半導体発光素子1によれば、逆方向サージ電圧印加時には比較的面積の大きい給電用パッド41と対向電極22との間にも電流経路が形成される故、電流集中が緩和され、静電破壊耐量が大幅に向上する。特に逆方向サージ電圧印加時において、給電用パッド41と対向電極22との距離は、オーミック電極43とライン電極21Lおよびドット電極21Dとの距離よりも短く、給電用パッド41と対向電極22との間の電流経路は、オーミック電極43とライン電極21Lおよびドット電極21Dとの間の電流経路と比較して、抵抗が低い。従って、効率よく電流集中を緩和して静電破壊耐量を向上させることができる。そして、図2に示すように、光取り出し面側のオーミック電極43と、光反射面側のライン電極21Lまたはドット電極21Lとの間の半導体膜10の主面方向における最短距離lよりも、給電用パッド41と対向電極22との間の距離d(すなわち、半導体膜10の厚さ)を小さくすることにより(l>d)、給電用パッド41と対向電極22との間に形成されるサージ電流経路上の抵抗を小さくすることができ、静電破壊耐量の改善効果をより高めることができる。
【0028】
次に、上記した構成を有する半導体発光素子1の製造方法について図5および図6を参照説明する。
【0029】
(半導体膜形成)
半導体膜10は、有機金属気相成長法(MOCVD法)により形成した。半導体膜10の結晶成長に使用する成長用基板50として(100)面から[011]方向に15°傾斜させた厚さ300μmのn型GaAs基板を使用した。成長用基板50上に厚さ2.5μmのSiドープされた(Al0.6Ga0.40.5In0.5Pからなる層と、厚さ0.5μmのSiドープされたAl0.5In0.5Pからなる層が積層されて構成されるn型クラッド層11を形成した。n型クラッド層11上に発光層12を形成した。発光層12は、(Al0.1Ga0.90.5In0.5Pからなる厚さ20nmの井戸層と、(Al0.5Ga0.50.5In0.5Pからなる厚さ10nmのバリア層からなるペアを15回繰り返して積層した多重量子井戸構造とした。尚、井戸層のAl組成比zは発光波長に合わせて0≦z≦0.4の範囲で調整することができる。発光層12上にMgドープされたAl0.5Ga0.5Pからなる厚さ0.5μmのp型クラッド層13を形成した。尚、n型クラッド層11およびp型クラッド層13のAl組成比zは、0.4≦z≦1.0の範囲で調整することができる。p型クラッド層13上にMgドープされたGaPからなる厚さ1.5μmのp型コンタクト層14を形成した。p型コンタクト層14には、発光層12からの光を吸収しない範囲でInを含めることができる。これらの各層により半導体膜10が構成される(図5(a))。尚、V族原料としてホスフィン(PH3)を使用し、III族原料としてトリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMI)の有機金属を使用した。また、n型不純物であるSiの原料としてシラン(SiH4)を使用し、p型不純物であるMgの原料としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を使用した。成長温度は750〜850℃であり、キャリアガスに水素を使用し、成長圧力は10kPaとした。
【0030】
(光反射層およびメタル層形成)
p型コンタクト層14上にプラズマCVD法により誘電体層25を構成するSiO2膜を形成した。SiO2膜の膜厚dは、真空中の発光波長をλ、SiO2膜の屈折率をn、任意の整数をmとすると、d=m・λ/4nを満たすように設定する。ここで、λ=625nm、n=1.45、m=1として、誘電体層25の膜厚d=107nmとした。続いて、SiO2膜上にレジストマスクを形成した後、バッファードフッ酸(BHF)を用いてエッチングを行うことにより、SiO2膜にライン電極21L、ドット電極21Dおよび対向電極22のパターンに対応したパターニングを施した。SiO2膜を除去した部分において開口部が形成され、この開口部においてp型コンタクト層14が露出する(図5(b))。尚、SiO2膜の成膜方法として熱CVD法やスパッタ法を用いることもできる。また、SiO2膜のエッチング方法としてドライエッチング法を用いることも可能である。誘電体層25の材料としては、SiO2以外にもSi3N4やAl2O3等の他の透明な誘電体材料を用いることができる。
【0031】
次に、EB蒸着法により誘電体層25上にAuZnからなる厚さ300nmの反射電極を形成した。反射電極は、先のエッチング処理によって誘電体層25に形成された開口部においてp型電流拡散14と接触する。反射電極は、誘電体層25によってライン電極21L、ドット電極21Dおよび対向電極22に分割される。誘電体層25および反射電極により光反射層20が構成される(図5(c))。
【0032】
次に、光反射層20上にスパッタ法によりTaN(厚さ100nm)、TiW(厚さ100nm)、TaN(厚さ100nm)を順次堆積させ、バリアメタル層26を形成した。尚、バリアメタル層26は、Ta、Ti、W等の他の高融点金属もしくはこれらの窒化物を含む単層又は2以上の層により構成されていてもよい。また、バリアメタル層26の形成には、スパッタ法以外にEB蒸着法を用いることが可能である。その後、約500℃の窒素雰囲気下で熱処理を行った。これにより、ライン電極21L、ドット電極21Dおよび対向電極22とp型コンタクト層14との間で良好なオーミック接触が形成される。
【0033】
次に、EB蒸着法によりバリアメタル層26上にNi(厚さ300nm)、Au(厚さ30nm)を順次形成し、密着層27を形成した。尚、接合層27の形成には、抵抗加熱蒸着法やスパッタ法を用いることが可能である(図5(d))。
【0034】
(支持基板の接合)
半導体膜10を支持するための支持基板30としてp型不純物を添加することにより導電性が付与されたSi基板を用いた。EB蒸着法により、支持基板30の両面にPtからなる厚さ200nmのオーミック金属層31、32を形成した。続いて、スパッタ法によりオーミック金属層32上にTi(厚さ150nm)、Ni(厚さ100nm)、AuSn(厚さ600nm)を順次堆積して接合層33を形成した。AuSn層は、共晶接合材として機能する。Ni層は共晶接合材に対する濡れ性を向上させる機能を有する。Ti層は、Niとオーミック金属層32との密着性を向上させる機能を有する。尚、オーミック金属層31、32は、Ptに限らずSi基板との間でオーミック性接触を形成し得る他の材料、例えばAu、Ni、Tiなどを用いることができる。また、支持基板30は、導電性および高熱伝導性を備えた他の材料、例えばGe、Al、Cuなどで構成されていてもよい。
【0035】
半導体膜10と支持基板30とを熱圧着により接合した。半導体膜10側の密着層27と支持基板30側の接合層33とを密着させ、1MPa、330℃の窒素雰囲気下で10分間保持した。支持基板30側の接合層33に含まれる共晶接合材(AuSn)が溶融して、半導体膜10側の密着層27(Ni/Au)との間でAuSnNiを形成することにより支持基板30と半導体膜10とが接合される(図6(a))
(成長用基板の除去)
半導体膜10の結晶成長に使用した成長用基板50をアンモニア水と過酸化水素水との混合液を用いたウェットエッチングにより除去した。尚、成長用基板50を除去する方法として、ドライエッチング法、機械研磨法、化学機械研磨法(CMP)またはこれらの組み合わせを用いてもよい(図6(b))。
【0036】
(光取り出し構造の形成)
成長用基板を除去することによって表出したn型クラッド層11の表面に光取り出し効率を向上させる為の光取り出し構造としてフォトニック結晶を形成した。フォトリソグラフィ法によってn型クラッド層11上に人工的周期構造のレジストマスク(図示せず)を形成し、このレジストマスクを介してn型クラッド層の表面をドライエッチングすることによりn型クラッド層11の表面に複数の円錐状の突起からなるフォトニック結晶を形成した。円錐状の突起は、三角格子配列、周期500nm、高さ600nm、アスペクト比1.2にて形成された。尚、レジストマスクのパターンニングには、EBリソグラフィ、EB描画装置、ナノインプリント、レーザ露光などの方法を用いることが可能である。また、フォトニック結晶を構成する複数の突起の形状は、円柱形状、角錐形状、角柱形状などであってもよく、周期300nm〜1000nm、アスペクト比0.7〜1.5の範囲であれば良い。また、フォトニック結晶に代えて、n型クラッド層11の表面をウェットエッチング処理などによって粗面化することにより光取り出し構造を形成してもよい。
【0037】
(光取り出し面側の電極形成)
n型クラッド層11の表面にオーミック電極43、給電用パッド41および配線電極42を形成した。n型クラッド層11との間でオーミック性接触を形成するAuGeNiをEB蒸着法によりn型クラッド層11上に堆積させた後、リフトオフ法によりパターニングを行ってオーミック電極43を形成した。続いて、EB蒸着法によりn型クラッド層11との間でショットキー接触を形成するTi(厚さ100nm)をn型クラッド層11上に堆積させ、更にTi上にAu(厚さ1.5μm)を堆積した。その後、リフトオフ法によりパターニングを行って給電用パッド41および配線電極42を形成した。尚、オーミック電極43の材料としてAuGe、AuSn、AuSnNi等を使用することも可能である。また、給電用パッド41および配線電極42の材料としてAu、Al、Ag、Cu、Fe、Ni、Pd、Ni、Pd、Pt、Mo、Ta、Ti、Wまたはこれらの窒化物(例えばTaN、WN)またはこれらのシリサイド(例えばWSi、TaSi)を使用することも可能である。また、ワイヤボンディング強度を向上させるために、上記のショットキー接触を形成し得る材料の上にTiなどからなる密着層を介してAu(厚さ約1μm)が積層されていてもよい。次に、n型クラッド層11とオーミック電極43との間でオーミック性接触の形成を促進させるために400℃の窒素雰囲気下で熱処理を行った(図6(c))。以上の各工程を経て半導体発光装置1が完成する。
【0038】
図7は、本発明の実施例に係る半導体発光素子1(実線)と、給電用パッド41に対向する対向電極を有さない比較例に係る半導体発光素子(破線)における静電破壊試験(ESD)の結果を示す図である。試験は、JEDEC:JESD22-A114Fに準拠して行った。試験サンプルは、光取り出し面側のオーミック電極と、光反射面側のライン電極およびドット電極との間の電極間距離の水平方向成分を変化させることにより、シリーズ抵抗Rsを変化させた複数種のサンプルを使用した。図7において、横軸はシリーズ抵抗Rsであり、縦軸は静電破壊電圧である。実施例および比較例に係るサンプルの両者において、シリーズ抵抗Rsが小さくなる程、静電破壊耐量が向上する傾向が確認された。また、シリーズ抵抗Rsが同一であれば、本実施例に係る半導体発光素子は、比較例に係る半導体発光素子よりも3000〜5000V程度静電破壊耐量が向上することが確認された。
【0039】
以上の説明から明らかなように、本実施例に係る半導体発光素子1によれば、半導体膜の膜厚が比較的小さい所謂貼り合わせ構造を有する発光素子において、表面電極の被覆率を抑えつつも半導体膜内において均一な電流拡散を達成することができる。従って、輝度むらがなく光取り出し効率の高い発光素子を提供することができる。
【0040】
また、給電用パッド(第2の電極片)41は、半導体膜10内を流れる順方向電流に対してショットキー電極として機能し、しかも給電用パッド41に対向配置された対向電極(第4の電極片)22は、オーミック電極(第1の電極片)43までの最短距離が、オーミック電極(第1の電極片)43とライン電極21Lまたはドット電極21D(第3の電極片)との間の最短距離よりも大きくなるように配置されているため、対向電極22とオーミック電極43との間の抵抗が、ライン電極21Lまたはドット電極21Dとオーミック電極43との間の抵抗より高い。このため、発光動作時に給電用パッド41の直下領域には電流が殆ど流れず、この領域では光は生成されない。本実施例においては、半導体膜10の膜厚はほぼ一定に形成されているため、対向電極22とオーミック電極43との半導体膜10の主面方向における最短距離(図2において示すl)が、オーミック電極43とライン電極21Lまたはドット電極21Dとの間の半導体膜10の主面方向における最短距離(図2において示すl)よりも大きくなる。さらに、対向電極22は、半導体膜10と接する面において誘電体層25によってライン電極21Lおよびドット電極21Dから分離されている故、これらの電極を連続させて形成した場合と比較して、発光動作時におけるオーミック電極43と対向電極22との間の電流経路に流れる電流を抑制することができる。一方、逆方向サージ電圧印加時には、給電用パッド41と対向電極22との間に電流経路が形成される故、電流集中が緩和され、静電破壊耐量の向上を達成することができる。このように、本実施例に係る半導体発光素子1によれば、発光動作時においては給電用パッドの直下領域への電流流入は防止される一方、逆方向サージ電圧印加時においては給電用パッド41と対向電極22との間にオーミック電極43とライン電極21Lおよびドット電極21Dとの間の電流経路上の抵抗よりも低抵抗の電流経路が形成されるので、発光動作時における光取り出し効率の低下や光出力の低下を回避しつつ逆方向の静電サージに対する破壊耐量を向上させることが可能となる。特に、半導体膜と支持基板との間に光反射層を有する半導体発光素子においては半導体膜の膜厚が比較的小さく、静電破壊耐量が不十分となりやすいが、本実施例の構成によれば、静電破壊耐量を大幅に改善することができる。また、フォトニック結晶などの光取り出し構造を適用した場合においても、十分な静電破壊耐量を確保することができる。
【実施例2】
【0041】
図8(a)は、本発明の実施例2に係る半導体発光素子2の構成を示す平面図、図8(b)は図8(a)における8b−8b線に沿った断面図である。尚、図8(a)において、光取り出し面側に設けられる表面電極が実線で示され、光反射面側に設けられる反射電極が破線とハッチングで示されている。半導体発光素子2は、主に半導体層の材料および電極構成が上記した実施例1に係る半導体発光素子1と異なる。他の構成部分は、実施例1に係る半導体発光装置1と同様である。
【0042】
半導体層10aは、GaN系半導体からなり、光取り出し面側から順にn型クラッド層11a、発光層12a、p型クラッド層13aが積層されて構成される。n型クラッド層11aは、例えば厚さ5μmのSiドープされたGaNにより構成される。発光層12aは例えば厚さ2nmのIn0.35Ga0.65Nからなる井戸層および厚さ14nmのGaNからなるバリア層からなるペアを5回繰り返して積層して構成される多重量子井戸構造を有する。p型クラッド層13aは、例えば厚さ40nmのMgドープされたAl0.2Ga0.8Nからなる層と、厚さ100nmのMgドープされたGaNからなる層が積層されて構成される。
【0043】
光取り出し面となるn型クラッド層11aの表面には、n型クラッド層11aとの間でオーミック接触を形成するオーミック電極(第1の電極片)43aと、ボンディングワイヤが接続される給電用パッド(ボンディングパッド、第2の電極片)41aと、からなる表面電極が設けられている。給電用パッド41aはn型クラッド層11aとの間でショットキー接触を形成する材料、例えばAu、Al、Ag、Cu、Fe、Ni、Pd、Ni、Pd、Pt、Mo、Ta、Ti、Wまたはこれらの窒化物(例えばTaN、WN)またはこれらのシリサイド(例えばWSi、TaSi)により構成することができる。オーミック電極43aは、n型クラッド層11aとの間でオーミック接触を形成する材料、例えばTi(厚さ1nm)/Al(厚さ200nm)/Au(厚さ1000nm)をこの順序で積層して構成される。給電用パッド41aは、半導体発光素子2の1辺を挟む2つコーナ部の近傍にそれぞれ配置されている。オーミック電極43aは、給電用パッド41aに接続され、n型クラッド層11aの表面を伸長する線状をなしており、半導体膜10aの各部分に電流を供給する。
【0044】
p型クラッド層13aに隣接して設けられる光反射層20aは、誘電体層25と反射電極とにより構成され、半導体膜10aと接する面において光反射面を形成する。反射電極は、光取り出し面側のオーミック電極43aとともにカウンタ電極を構成する光反射面側のオーミック電極(第3の電極片)21aと、2つの給電用パッド41aのそれぞれに対向する対向電極(第4の電極片)22aにより構成される。オーミック電極21aおよび対向電極22aは、p型クラッド層13aとの間でオーミック接触を形成する材料、例えばPtなどにより構成される。
【0045】
誘電体層25は、例えばSiO2からなり、光反射層20aの表層部分に設けられている。誘電体層25は、対向電極22aの外周を囲む環状をなす部分と、光取り出し面側のオーミック電極43aの直下においてこれに沿うように伸長する線状をなす部分とを有している。誘電体層25は、半導体層10aと接する面において光反射面側のオーミック電極21aを複数の部分に分割するとともに対向電極22aをオーミック電極21aの各部分から分離する。尚、オーミック電極21aの各部分と対向電極22aは、誘電体層25の下方において互いに繋がっており、互いに同電位となっている。
【0046】
対向電極22aは、給電用パッド41aの直下に配置される。対向電極22aは、例えば、給電用パッド41aと同一サイズおよび同一形状を有している。対向電極22aは、その外周を囲むように設けられた環状の誘電体層25によって、半導体膜10aと接する面において、オーミック電極21aの各部分から分離されている。
【0047】
光取り出し面側のオーミック電極43aと、光反射面側のオーミック電極21aの各部分は、半導体膜10aの主面と平行な投影面にこれらを投影したときに、互いに重ならないように配置され、いわゆるカウンタ電極を構成している。すなわち、光反射面側のオーミック電極21aは、光取り出し面側のオーミック電極43aを挟んだ両側においてこれに沿うように配置され、オーミック電極43aの直下には誘電体層25が配置される。
【0048】
図8(b)において、発光動作時の半導体膜10a内を流れる電流の経路が実線矢印で、逆方向サージ電圧印加時の半導体膜10a内を流れる電流の経路が破線矢印で示されている。発光動作時において電流は、p型クラッド層13aと接する光反射面側のオーミック電極21aの各々から、これらの最短距離に位置する光取り出し面側のオーミック電極43aに向けて流れる。両電極は、カウンタ電極を構成している故、電流の流れる方向は半導体膜10aの主面方向(横方向)成分を持ち、これにより、比較的膜厚の小さい半導体膜10a内における電流拡散が促進され電流密度分布の均一化が図られる。一方、給電用パッド41aは半導体膜10aとの間でショットキー接触を形成しており、これらの間には、半導体膜10aのpn接合によって形成されるダイオードの向きとは逆向きの障壁、(すなわち、順方向電流を阻止するように作用する障壁)が形成されている。それ故、発光動作時において給電用パッド41aに向けて電流は流れない。また、対向電極22aは、光取り出し面側のオーミック電極43aまでの最短距離(半導体膜の主面方向における最短距離)が、光反射面側のオーミック電極21aと光取り出し面側のオーミック電極43aとの間の最短距離(半導体膜の主面方向における最短距離)よりも大きくなる位置に配置されており、しかも、半導体膜10aと接する面において、誘電体層25によってオーミック電極21aの各部分から分離されている。反射電極をこのように構成することで、発光動作時において対向電極22aからオーミック電極43aに向けて電流が殆ど流れず、従って、発光動作時において、給電用パッド41aの直下領域を流れる電流をほぼ完全になくすことができる。その結果、給電用パッド41aの直下での発光を防止することができ、光取り出し効率を高めることができる。
【0049】
一方、半導体膜10aのpn接合に対して逆方向の電圧が印加されると、光取り出し面側のオーミック電極43aから光反射面側のオーミック電極21aに向けて電流が流れる。逆方向サージ電圧印加時においては、給電用パッド41aと半導体膜10aとの間のショットキー接合は、いわゆる順方向にバイアスされる故、給電用パッド41aと半導体膜10aとの間に障壁は殆どなく、電圧に対して指数関数的に電流が流れる。従って、逆方向サージ電圧印加時においては、比較的面積の大きい給電用パッド41aから対向電極22aに向けて電流が流れる。逆方向サージ電圧印加時には、光取り出し面側のオーミック電極43aと光反射面側のオーミック電極21aとの間の電流経路の抵抗よりも低抵抗の電流経路が給電用パッド41aと対向電極22aとの間に形成される故、電流集中が緩和され、静電破壊耐量が大幅に向上する。
【0050】
実施例2に係る半導体発光素子2は、半導体膜10aがGaN系半導体により構成され、p型クラッド層13aの抵抗が比較的高い。このため、p型クラッド層13aに接続される反射電極の面積は、AlGaInP系半導体からなる半導体膜を含む実施例1に係る半導体発光素子のそれよりも大きいことが好ましい。そこで、実施例2に係る半導体発光素子2では、p型クラッド層13aの大部分を覆うように反射電極を形成して順方向電圧Vの低減を図っている。このような電極構成を有する半導体発光素子2においても、実施例1の場合と同様、発光動作時においては給電用パッドの直下領域への電流流入は防止される一方、逆方向サージ電圧印加時においては給電用パッド41aと対向電極22aとの間に、光取り出し面側のオーミック電極43aと光反射面側のオーミック電極21aとの間の電流経路上の抵抗よりも低抵抗の電流経路が形成されるので、発光動作時における光取り出し効率の低下や光出力の低下を回避しつつ逆方向の静電サージに対する破壊耐量を向上させることが可能となる。
【実施例3】
【0051】
図9(a)は、本発明の実施例3に係る半導体発光素子3の構成を示す平面図、図9(b)および図9(c)は、それぞれ、図9(a)における9b−9b線および9c−9c線に沿った断面図である。尚、図9(a)において、光取り出し面側に設けられる表面電極が実線で示され、光反射面側に設けられる反射電極が破線とハッチングで示されている。半導体発光素子3は、主に、光取り出し面側に設けられる表面電極を構成する全ての部分が半導体膜10との間でオーミック接触を形成する材料で構成される一方、光反射面側に設けられる反射電極が半導体膜10との間でオーミック接触を形成する材料で構成される部分とショットキー接触を形成する材料で構成される部分を有する点が上記した実施例1に係る半導体発光素子1と異なる。他の構成部分は、実施例1に係る半導体発光装置1と同様である。
【0052】
AlGaInP系半導体からなる半導体膜10の光取り出し面(n型クラッド層の表面)に設けられる表面電極は、給電用パッド(第1の電極片)41bと、これに接続されたオーミック電極(第2の電極片)43bにより構成される。給電用パッド41bは、半導体膜10の主面の中央に配置され、円形形状を有する。オーミック電極43bは給電用パッド41bと一体的に形成され半導体膜10の表面を伸長する線状の電極である。給電用パッド41bおよびオーミック電極43bはともに半導体膜10との間でオーミック接触を形成する材料、例えばAuGeNiにより構成される。表面電極を構成する各部分を同一材料で構成することにより、単一のマスクを用いた1回の成膜工程で表面電極を形成することが可能となる。実施例1および2の場合のように、表面電極を、半導体膜10との間でオーミック接触を形成する部分と、ショットキー接触を形成する部分で構成した場合には、例えばオーミック電極を形成した後、これを覆うようにオーミック電極とは材料の異なる配線電極を形成する必要がある。この場合、配線電極がオーミック電極を覆う部分(すなわち段差部分)におけるカバレージ性が悪いと、配線電極にクラックや断線が生じ、静電破壊耐量が低下するおそれがある。一方、本実施例のように、表面電極を単一の材料で構成することにより、そのようなリスクを回避することが可能となる。
【0053】
半導体膜10のp型クラッド層に隣接する光反射層20bは、誘電体層25と反射電極とにより構成され、半導体膜10と接する面において光反射面を形成する。反射電極は、光取り出し面側のオーミック電極43bとともにカウンタ電極を構成する光反射面側のオーミック電極(第3の電極片)21bと、給電用パッド41bと対向する位置に配置された対向電極(第4の電極片)22bとにより構成される。オーミック電極21bは、半導体膜10との間でオーミック接触を形成する材料、例えばAuZnにより構成される。対向電極22bは、半導体膜10との間でショットキー接触を形成する材料、例えばWSiにより構成される。
【0054】
誘電体層25は、例えばSiO2からなり、半導体膜10と接する面において光反射面側のオーミック電極21bと対向電極22bとの間に介在し、これらの電極を分離する。尚、オーミック電極21aの各部分と対向電極22bは、誘電体層25の下方において互いに繋がっており、互いに同電位となっている。対向電極22bは、光取り出し面側の給電用パッド41bの直下に配置される。対向電極22bは、例えば、給電用パッド41と同一形状および同一サイズを有している。
【0055】
光取り出し面側のオーミック電極43bと、光反射面側のオーミック電極21bは、半導体膜10の主面と平行な投影面に投影したときに、互いに重ならないように配置され、いわゆるカウンタ電極を構成している。すなわち、光反射面側のオーミック電極21bは、光取り出し面側のオーミック電極43bを挟んだ両側に配置され、これに沿うように伸長する線状の電極である。誘電体層25は、光取り出し面側のオーミック電極43bの直下を含む部分に延在している。
【0056】
このように、本実施例に係る半導体発光素子3は、表面電極を構成する各部分が半導体膜10との間でオーミック接触を形成する単一の材料で構成される一方、反射電極が半導体膜との間でオーミック接触を形成する部分(オーミック電極21b)とショットキー接触を形成する部分(対向電極22b)を含む。互いに異なる材料からなる部分を含む反射電極は、例えば、以下のように形成することができる。半導体膜10を形成した後、誘電体層25を構成するSiO2膜を半導体膜10上に成膜し、このSiO2膜に対して反射電極に対応するパターニングを施す。次に、SiO2膜の対向電極22bを形成する部分以外の部分をレジストマスクで覆い、半導体膜10との間でショットキー接触を形成する材料を成膜した後、レジストマスクを除去して対向電極22bを形成する。次に、半導体膜10との間でオーミック接触を形成する材料を成膜して光反射面側のオーミック電極21bを形成する。
【0057】
図9(b)および図9(c)において、発光動作時の半導体膜10内を流れる電流の経路が実線矢印で、逆方向サージ電圧印加時の半導体膜10内を流れる電流の経路が破線矢印で示されている。発光動作時において電流は、光反射面側のオーミック電極21bの各々から、これらの最短距離に位置する光取り出し面側のオーミック電極43bに向けて流れる。両電極は、カウンタ電極を構成している故、電流の流れる方向は半導体膜10の主面方向(横方向)成分を持ち、これにより、比較的膜厚の小さい半導体膜10内における電流拡散が促進され電流密度分布の均一化が図られる。一方、給電用パッド41bは、光反射面側のオーミック電極21bから十分に離れた位置に配置され、また対向電極22bは、半導体膜10との間でショットキー接触を形成している故、発光動作時において給電用パッド41に向けて電流は流れない。すなわち、給電用パッド41bと光反射面側のオーミック電極21bとの最短距離(半導体膜の主面方向における最短距離)が、光取り出し面側のオーミック電極43bと光反射面側のオーミック電極21bとの最短距離(半導体膜の主面方向における最短距離)よりも大きくなるように配置されている。そのため、発光動作時において、給電用パッド41bと光反射面側のオーミック電極21bとの間の電流経路の抵抗が、光取り出し面側のオーミック電極43bと光反射面側のオーミック電極21bとの間の電流経路の抵抗よりも大きくなるため、給電用パッド41bに流れる電流を抑制することができる。
【0058】
一方、半導体膜10のpn接合に対して逆方向の電圧が印加されると、光取り出し面側のオーミック電極43bから光反射面側のオーミック電極21bに向けて電流が流れる。逆方向サージ電圧印加時においては、給電用パッド41bと半導体膜10との間のショットキー接合は、いわゆる順方向にバイアスされる故、給電用パッド41bと半導体膜10aとの間に障壁は殆どなく、電圧に対して指数関数的に電流が流れる。従って、逆方向サージ電圧印加時においては、比較的面積の大きい給電用パッド41から対向電極22bに向けて電流が流れる。逆方向サージ電圧印加時においては、光取り出し面側のオーミック電極43bと光反射面側のオーミック電極21bとの間の電流経路の抵抗よりも低抵抗の電流経路が給電用パッド41bと対向電極22bとの間に形成される故、電流集中が緩和され、静電破壊耐量が大幅に向上する。
【0059】
このように実施例3に係る半導体発光素子3においては、表面電極を構成する給電用パッド41bとオーミック電極43bとが同一の材料で構成されるので、1回の成膜工程で表面電極を形成することができ、給電用パッドと41bとオーミック電極43bとが重なることなく、半導体膜上において界面を形成せずに連続して形成することができる。すなわち、表面電極は段差部分を有しないので、クラックや断線などが生じにくい。従って、静電破壊耐量が低下するリスクを低減することが可能となる。また、実施例1の場合と同様、発光動作時においては給電用パッドの直下領域への電流流入は防止される一方、逆方向サージ電圧印加時においては給電用パッド41bと対向電極22bとの間に、光取り出し面側のオーミック電極43bと光反射面側のオーミック電極21bとの間の電流経路上の抵抗よりも低抵抗の電流経路が形成されるので、発光動作時における光取り出し効率の低下や光出力の低下を回避しつつ逆方向の静電サージに対する破壊耐量を向上させることが可能となる。
【実施例4】
【0060】
図10(a)は、本発明の実施例4に係る半導体発光素子4の構成を示す平面図、図10(b)は、図10(a)における10b−10b線に沿った断面図である。尚、図10(a)において、光取り出し面側に設けられる表面電極が実線で示され、光反射面側に設けられる反射電極が破線とハッチングで示されている。半導体発光素子4は、主に、半導体膜10cの光取り出し面側にp型クラッド層が配置され、光反射面側にn型クラッド層が配置されている点が実施例1に係る半導体発光素子1と異なる。
【0061】
半導体膜10cは、AlGaInP系材料からなり、光取り出し面側から順にp型コンタクト層14c、p型クラッド層13c、発光層12c、n型クラッド層11cが積層されて構成される。各層の組成は、上記した実施例1に係る半導体膜と同様である。
【0062】
光取り出し面となるp型コンタクト層14cの表面には、ボンディングワイヤが接続される給電用パッド(ボンディングパッド、第1の電極片)41c、半導体膜10cとの間でオーミック接触を形成する光取り出し面側のオーミック電極(第2の電極片)43c、給電用パッド41cとオーミック電極43cとを接続する配線電極42cからなる表面電極が設けられている。給電用パッド41cおよび配線電極42cは、p型クラッド層13cとの間でショットキー接触を形成する材料、例えばTa、Ti、W、Pt、WSi、Cuなどにより構成される。給電用パッド41cは、半導体膜10cの主面中央に配置され、円形形状を有する。配線電極42cは、給電用パッド41cから半導体膜10cの4つの辺に向けて伸長してオーミック電極43cに接続する線状の電極である。オーミック電極43cは、p型コンタクト層14cとの間でオーミック接触を形成する材料、例えばAuZnにより構成される。オーミック電極43cは、p型コンタクト層14cの表面を伸長する線状をなしており、半導体膜10cの各部分に電流を供給する。
【0063】
n型クラッド層11cに隣接して設けられる光反射層20cは、誘電体層25と反射電極とにより構成され、半導体膜10cと接する面において光反射面を形成する。反射電極は、光取り出し面側のオーミック電極43cとともにカウンタ電極を構成する光反射面側のオーミック電極(第3の電極片)21cと、給電用パッド41cに対向する対向電極22c(第4の電極片)により構成される。オーミック電極21cおよび対向電極22cは、n型クラッド層11cとの間でオーミック接触を形成する材料、例えばAuGeNiなどにより構成される。
【0064】
誘電体層25は、例えばSiO2からなり、光反射層20cの表層部分に設けられている。誘電体層25は、対向電極22cの外周を囲む環状をなす部分と、光取り出し面側のオーミック電極43cの直下においてこれに沿うように伸長する線状をなす部分とを有している。誘電体層25は、オーミック電極21cと対向電極22cとを分離する。尚、オーミック電極21cと対向電極22cは、誘電体層25の下方において互いに繋がっており、互いに同電位となっている。
【0065】
対向電極22cは、光取り出し面側の給電用パッド41cの直下に配置される。対向電極22cは、例えば、給電用パッド41cと同一形状および同一サイズを有している。対向電極22cは、その外周を囲むように設けられた円環状の誘電体層25によって半導体膜10cと接する面において、オーミック電極21cから分離されている。
【0066】
光取り出し面側のオーミック電極43cと、光反射面側のオーミック電極21cは、半導体膜10cの主面と平行な投影面に投影したときに、互いに重ならないように配置され、いわゆるカウンタ電極を構成している。すなわち、光反射面側のオーミック電極21cは、光取り出し面側のオーミック電極43cを挟んだ両側に配置され、オーミック電極43cの直下には誘電体層25が配置されている。
【0067】
図10(b)において、発光動作時の半導体膜10c内を流れる電流の経路が実線矢印で、逆方向サージ電圧印加時の半導体膜10c内を流れる電流の経路が破線矢印で示されている。発光動作時において電流は、p型クラッド層13cと接する光取り出し面側のオーミック電極43cの各々から、光反射面側のオーミック電極21cに向けて流れる。両電極は、カウンタ電極を構成している故、電流の流れる方向は半導体膜10cの主面方向(横方向)成分を持ち、これにより、比較的膜厚の小さい半導体膜10c内における電流拡散が促進され電流密度分布の均一化が図られる。一方、給電用パッド41cは半導体膜10cとの間でショットキー接触を形成しており、これらの間には、半導体膜10cにおけるpn接合によって形成されるダイオードの向きとは逆向きの障壁、(すなわち、順方向電流を阻止するように作用する障壁)が形成されている。それ故、発光動作時において給電用パッド41cに向けて電流は流れない。また、対向電極22cは、光取り出し面側のオーミック電極43までの距離が光反射面側のオーミック電極21dのいずれの部分よりも遠い位置に配置されており、しかも、半導体膜10cと接する面において、誘電体層25によってオーミック電極21cから分離されている。反射電極をこのように構成することで、発光動作時において対向電極22cからはオーミック電極43cに向けて電流が殆ど流れず、従って、発光動作時において、給電用パッド41cの直下領域を流れる電流をほぼ完全になくすことができる。
【0068】
一方、半導体膜10cのpn接合に対して逆方向のサージ電圧が印加されると、光反射面側のオーミック電極21cから光取り出し面側のオーミック電極43cに向けて電流が流れる。給電用パッド41cと半導体膜10cとの間のショットキー接合は、いわゆる順方向にバイアスされる故、給電用パッド41cと半導体膜10cとの間に障壁は殆どなく、電圧に対して指数関数的に電流が流れる。従って、逆方向サージ電圧印加時においては、比較的面積の大きい対向電極22cから給電用パッド41cに向けて電流が流れる。逆方向サージ電圧印加時においては、光取り出し面側のオーミック電極43cと光反射面側のオーミック電極21cとの間の電流経路の抵抗よりも低抵抗の電流経路が給電用パッド41cと対向電極22cとの間に形成される故、電流集中が緩和され、静電破壊耐量が大幅に向上する。
【0069】
半導体膜の光取り出し面に設けられる表面電極は、光取り出し効率を確保する観点から、被覆率をあまり高くすることはできない。一方、一般的にAlGaInP系半導体は、n型半導体の抵抗を下げて電流拡散させる構造を形成しにくい。というのも、p側はp型AlGaInPに続いて抵抗率の低い格子不整合のGaPを積層できるためp側の抵抗を下げることができるのに対し、n側は一般的にn型GaAs基板上にn型から積層して形成するため、格子不整合である抵抗率の低いGaPを用いることができないためである。尚、膜厚の増加で低抵抗化することは可能であるが、順次積層するMQW、p型半導体層の結晶性が悪化するため好ましくない。従って、n型クラッド層を光取り出し面側に配置した場合にはn型クラッド層上に小面積の表面電極を形成することとなり、電流を十分に拡散させることが困難となる。本実施例のようにn型クラッド層を光反射面側に配置することにより、n型クラッド層の表面の大部分を反射電極で覆うことが可能となり、半導体膜内における電流拡散を促進することが可能となる。このような構成を有する実施例4に係る半導体発光素子4においても、実施例1の場合と同様、発光動作時においては給電用パッドの直下領域への電流流入は防止される一方、逆方向サージ電圧印加時においては給電用パッド41cと対向電極22cとの間に、光取り出し面側のオーミック電極43cと光反射面側のオーミック電極21cとの間の電流経路上の抵抗よりも低抵抗の電流経路が形成されるので、発光動作時における光取り出し効率の低下や光出力の低下を回避しつつ逆方向の静電サージに対する破壊耐量を向上させることが可能となる。
【0070】
上記した構成を有する半導体発光素子4は、例えば以下のようなプロセスで製造することができる。MOCVD法などによりGaAs基板などの成長用基板上に半導体膜10cを形成する。半導体膜10cは、n型クラッド層11c、発光層12c、p型クラッド層13c、p型コンタクト層14cの順で成長用基板上に積層される。次に、p型コンタクト層14cの表面に樹脂接着材などを用いてSiやガラスなどからなる一時基板を接合する。次に、成長用基板を除去して、n型クラッド層11cを表出させる。次に、n型クラッド層11c上に光反射層20cを構成するSiO2膜を形成し、これをパターニングした後、SiO2膜上にITOおよびAuを成膜して反射電極を形成する。尚、反射電極は、AuGeNiやAuSnなどによって形成することも可能であるが、この場合、合金層が形成されて反射率が低下するおそれがある。従って、反射電極は、合金層を形成しないITOで形成することが好ましい。その後、光反射層上にバリアメタル層および密着層を形成し、実施例1と同様の手順で、支持基板を接合する。次に、一時基板を除去してp型コンタクト層14cの表面を表出させる。次に、p型クラッド層13cの表面に光取り出し面側のオーミック電極43cを形成した後、給電用パッド41cおよび配線電極42cを形成する。
【0071】
尚、上記した各実施例においては、逆方向電圧印加時にのみ機能する(導通する)サージ電流経路を給電用パッドの直下に配置することとしたが、給電用パッドの直下領域以外の単一または複数の領域にこのような電流経路を配置することとしてもよい。すなわち、半導体膜を挟んで対向し且つ少なくとも一方がショットキー電極である電極対が半導体膜上に分散配置されていてもよい。また上記した各実施例において示した電極構成および半導体膜の構成を、相互に入れ替えてまたは適宜組み合わせて半導体発光装置を構成することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 半導体膜
11、11a、11c n型クラッド層
12、12a、12c 発光層
13、13a、13c p型クラッド層
14 p型コンタクト層
20、20a、20b、20c 光反射層
21a、21b、21c 反射面側オーミック電極
21L ライン電極
21D ドット電極
22、22a、22b、22c 対向電極
30 支持基板
41、41a、41b、41c 給電用パッド
43、43a、43b、43c 光取り出し面側オーミック電極
30 支持基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、前記支持基板上に設けられた発光層を含む半導体膜と、前記半導体膜の光取り出し面側の表面に設けられた表面電極と、前記支持基板と前記半導体膜との間に設けられて前記半導体膜と接する面において光反射面を形成する光反射層と、を含む半導体発光素子であって、
前記表面電極は、前記半導体膜との間でオーミック接触を形成する第1の電極片と、前記第1の電極片に電気的に接続され且つ前記半導体膜との間でショットキー接触を形成して前記半導体膜の順方向電流を妨げる障壁を形成する第2の電極片と、を含み、
前記光反射層は、反射電極を含み、前記反射電極は、前記半導体膜との間でオーミック接触を形成する第3の電極片と、前記第3の電極片に電気的に接続されて前記半導体膜との間でオーミック接触を形成し且つ前記第2の電極片と対向するように配置された第4の電極片とを含み、
前記第1の電極片と前記第3の電極片は、前記半導体膜の主面と平行な投影面に投影したときに、互いに重ならないように配置され、
前記第1の電極片と前記第4の電極片との間の前記半導体膜の主面方向における最短距離は、前記第1の電極片と前記第3の電極片との間の前記半導体膜の主面方向における最短距離よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
支持基板と、前記支持基板上に設けられた発光層を含む半導体膜と、前記半導体膜の光取り出し面側の表面に設けられた表面電極と、前記支持基板と前記半導体膜との間に設けられて前記半導体膜と接する面において光反射面を形成する光反射層と、を含む半導体発光素子であって、
前記表面電極は、前記半導体膜との間でオーミック接触を形成する第1の電極片と、前記第1の電極片に電気的に接続され且つ前記半導体膜との間でオーミック接触を形成する第2の電極片と、を含み、
前記光反射層は、反射電極を含み、前記反射電極は、前記半導体膜との間でオーミック接触を形成する第3の電極片と、前記第3の電極片に電気的に接続されて前記第2の電極片と対向するように配置され且つ前記半導体膜との間でショットキー接触を形成して前記半導体膜の順方向電流を妨げる障壁を形成する第4の電極片とを含み、
前記第1の電極片と前記第3の電極片は、前記半導体膜の主面と平行な投影面に投影したときに、互いに重ならないように配置され、
前記第3の電極片と前記第2の電極片との間の前記半導体膜の主面方向における最短距離は、前記第3の電極片と前記第1の電極片との間の前記半導体膜の主面方向における最端距離よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項3】
前記第2の電極片は、給電用パッドであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記光反射層は、その表層部に設けられた誘電体層を含み、
前記誘電体層は、前記光反射層が前記半導体膜と接する面において前記第3の電極片と前記第4の電極片との間に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第3の電極片は、前記第1の電極片と前記第2の電極片との間隙の直下に配置され且つ前記半導体膜と接する面において前記誘電体層によって前記第4の電極片から分離された電極片を含むことを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第2の電極片と前記4の電極片との間の距離は、前記第1の電極片と前記第3の電極片との間の前記半導体膜の主面方向における最短距離よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記第3の電極片は、前記光反射面上を伸長する線状のライン電極と、前記ライン電極に沿って分散配置された複数の島状のドット電極を含むことを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記第1の電極片は、前記光取り出し面上を伸長する線状をなし、
前記誘電体層は、前記第4の電極片の外周を囲む環状をなす部分と、前記第1の電極片の直下において前記第1の電極片に沿って伸長する線状をなす部分とを有することを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記第1の電極片と前記第2の電極片は、同一の材料からなることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記半導体膜は、AlGaInPからなる層を含み、前記光反射面側にn型の半導体層が配置され、前記光取り出し面側にp型の半導体層が配置されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の半導体発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26451(P2013−26451A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160060(P2011−160060)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】