説明

半導体発光装置および半導体発光装置の製造方法

【課題】工程数と製造コストを削減でき、かつ製造時に化合物半導体が物理的な損傷や電気的特性の劣化を招くおそれも少なくする。
【解決手段】サファイア基板20上に形成された化合物半導体層1に、ストライプ状に分離溝21を形成した後、化合物半導体層1の全面にメッキ層6を形成するため、このメッキ層6をサファイア基板20の剥離後の支持基板として用いることができる。従って、別個の支持基板を化合物半導体層1に熱圧着する必要がなくなり、熱圧着の際の熱の影響で、支持基板に反りが生じて、この反りによって支持基板に応力がかかり、支持基板が割れる等の不具合が起きなくなる。また、メッキ層6の形成は、電解メッキ法で行えるため、熱圧着するよりも製造工程数が少なくて済み、製造コスト削減が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光装置および半導体発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物系III−V族化合物半導体をサファイア基板やSiC基板上に結晶成長させることで、レーザーダイオード(LD)や発光ダイオード(LED)等の光デバイスを作製することができる。この種の光デバイスが抱える技術上の課題として、放熱性と光取り出し効率の向上が挙げられている。
【0003】
近年、サファイア基板やSiC基板よりも放熱性に優れた基板に窒化物系III−V族化合物半導体を接合し、この基板をレーザリフトオフ法により剥離することによって、放熱性の問題を解決し、大電流動作も可能とした技術が提案されている。
【0004】
サファイア基板上の窒化物系III−V族化合物半導体を、放熱性に優れた基板に接合するには、熱圧着による接合を行うのが一般的である(特許公報1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開公報US2007/0298587
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、サファイア基板やSiC基板自体に反りがある場合もあり、また熱圧着時の熱と圧着力の強度により圧着面近傍にボイドが形成されたり、付着力が低下することがあり、これが原因で、レーザリフトオフ時にGaN薄膜が割れたり剥離する等の不具合や、支持基板が割れる等の不具合が発生する場合がある。
【0007】
支持基板を作製する技術として、上述した基板接合以外に、メッキ法を利用して金属厚膜を成長させる技術があり、工程数と製造コスト削減を実現できる。ところが、上述した化合物半導体上に、メッキ法により金属厚膜を形成すると、メッキした金属が拡散する等の不具合が発生するおそれもあり、レーザリフトオフ法とメッキ法を組み合わせて実施することは容易ではない。
【0008】
本発明は、工程数と製造コストを削減でき、かつ製造時に化合物半導体が物理的な損傷や電気的特性の劣化を招くおそれも少ない半導体発光装置および半導体発光装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、基板上に形成される窒化物系III−V族化合物半導体からなる発光素子と、
前記発光素子の一主面側に設けられる光取り出し面上に形成される第1電極層と、
前記発光素子の前記光取り出し面とは反対側の面上に形成される第2電極層と、
前記第2電極層の表面全体を覆うように形成されるシード電極層と、
前記シード電極層上に形成されるメッキ層と、を備え、
前記発光素子は、
発光層と、
前記発光層と前記第2電極層との間に配置される第2導電型半導体層と、
前記発光層と前記第1電極層との間に配置される第1導電型半導体層と、を有し、
前記発光素子は、前記第2導電型半導体層、前記発光素子および前記第1導電型半導体層の順に徐々に幅が小さくなる順テーパ状であることを特徴とする半導体発光装置が提供される。
【0010】
また、本発明の一態様では、基板上に窒化物系III−V族化合物半導体からなる発光部を形成する工程と、
前記発光部に、所定の間隔で前記基板まで達するストライプ状の分離溝を複数形成する工程と、
前記分離溝で分離された前記発光部上に第2電極層を形成する工程と、
前記第2電極層の表面全体を覆うようにシード電極層を形成する工程と、
前記シード電極の表面全体をメッキしてメッキ層を形成する工程と、
前記分離溝に沿って、前記分離溝とは反対側の前記基板の面にレーザを照射して、レーザリフトオフ法により前記基板を剥離する工程と、
前記発光部をエッチングにより素子分離して順テーパ状の複数の発光素子を形成する工程と、
前記複数の発光素子の少なくとも側壁に絶縁膜を形成する工程と、
前記複数の発光素子の上面の少なくとも一部を粗面化して光取り出し面を形成する工程と、
前記複数の発光素子の上面の一部に第1電極層を形成する工程と、
前記複数の発光素子を個片化する工程と、を備えることを特徴とする半導体発光素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、工程数と製造コストを削減でき、かつ製造時に化合物半導体が物理的な損傷や電気的特性の劣化を招くおそれも少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による半導体発光装置の断面図。
【図2】図1の半導体発光装置の製造工程の一例を示す工程図。
【図3】図2に続く工程図。
【図4】分離溝21の一例を示す平面図。
【図5】(a)は分離溝21に平行にレーザを走査する例、図5(b)は分離溝21に垂直にレーザを走査する例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態による半導体発光装置の断面図である。図1の半導体発光装置は、窒化物系III−V族化合物半導体層1と、この化合物半導体層1の一主面側に設けられる光取り出し面2上に形成されるn電極層(第1電極層)3と、化合物半導体層1を挟んで光取り出し面2とは反対側の面上に形成されるp電極層(第2電極層)4と、p電極層4の表面全体を覆うように形成されるシード電極層5と、シード電極層5上に形成されるメッキ層6と、メッキ層6上に形成される接地電極層7とを備えている。
【0015】
このように、図1の半導体発光装置は、メッキ層6を支持基板として窒化物系III−V族化合物半導体層1を支持する。
【0016】
化合物半導体層1は、光取り出し面2側から下方に向かって、n型半導体層(第1導電型半導体層)11と、発光層12と、p型半導体層(第2導電型半導体層)13とを有する。これら3層は、順テーパ状に加工されており、n型半導体層11、発光層12およびp型半導体層13の順に、徐々に幅が広くなっている。
【0017】
図2および図3は図1の半導体発光装置の製造工程の一例を示す工程図である。まず、サファイア基板20上に化合物半導体層1を構成する各層を積層する。これらの各層は、例えば有機金属気相成長法(MOCVD法)等により順次蒸着される。化合物半導体層1の材料としては、サファイア基板20またはSiC基板上に高品質な結晶成長をすることが可能なGaN系単結晶が望ましい。具体的な材料は、AlGa1−x−yInN(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1)である。
【0018】
このように、化合物半導体層1を結晶成長させる基板は、必ずしもサファイア基板20でなくてもよく、例えばSiC基板を用いてもよい。
【0019】
化合物半導体層1の積層構造は、サファイア基板20に近い側から、バッファ層、n型コンタクト層、n型半導体層11、発光層12およびp型半導体層13を有する。図1と図2では、n型コンタクト層とバッファ層を省略している。
【0020】
n型コンタクト層は、n型半導体層11とバッファ層よりもn型不純物の添加量が多いGaN系半導体層である。バッファ層は、GaN系半導体層に、シリコンやゲルマニウム等のn型不純物を約1〜2×1018cm−3の不純物濃度を添加した層である。バッファ層の成長温度は、約1000〜1100℃である。
【0021】
n型半導体層11は、例えばGaN系半導体層に、Siを不純物として添加した層である。Siの不純物濃度は約5×1018cm−3である。
【0022】
発光層12は、膜厚が数nmのInGaNからなる量子井戸層と、この量子井戸層を挟んで両側に配置されて膜厚が数nmのアンドープInGaNからなるバリア層とを、積層したSQW構造、あるいは量子井戸層とバリア層を交互に積層したMQW構造が用いられる。成長温度は約700〜800℃である。
【0023】
p型半導体層13は、GaN系半導体層に、マグネシウムや亜鉛等のp型不純物を約4×1018cm−3〜1×1020cm−3の不純物濃度で添加した層である。p型半導体層13の最上層に形成されるp型コンタクト層には、マグネシウム等のp型不純物が約1×1019cm−3の不純物濃度で添加される。成長温度は約1000〜1100℃である。
【0024】
上述のように、サファイア基板20上に化合物半導体層1を形成すると、次に、図2(a)に示すように、化合物半導体層1上に選択的にp電極層4を形成する。p電極層4は、p型オーミックコンタクト層4aと高反射電極層4bとを積層した構造を有し、これら層を熱処理することで、オーミックコンタクトが得られ、かつ発光層12で発光した光を光取り出し面2側か、または化合物半導体層1の側壁で反射させることができる。
【0025】
p型オーミックコンタクト層4aは、p型半導体層13との接触抵抗が小さい必要があり、Pt、Ru、Os、Rh、Ir、Pd等の白金族、またはAgが望ましい。Agを用いることは反射率の観点で望ましいが、p型半導体との付着力と接触抵抗の観点ではAgはあまり望ましくない。このため、高反射電極層4bの材料としてAgを用いて、p型オーミックコンタクト層4aにはAgとの付着力と均一性を高める材料が望ましい。
【0026】
次に、図2(b)に示すように、化合物半導体層1にドライエッチングにより、サファイア基板20に達する深さの分離溝21をストライプ状に形成する。図4は分離溝21の平面図である。図示のように、分離溝21は、ウエハ形状のサファイア基板20の一方向に沿って、所定間隔で複数形成される。分離溝21を設ける理由は、後の工程で行われる電解メッキ法で形成するメッキ層6と化合物半導体層1とが電気的に接続しないようにするためと、レーザリフトオフ法により用いるレーザ光端の跡が化合物半導体層1に残存しないようにするためである。
【0027】
次に、図2(c)に示すように、p電極層4上にシード電極層5を形成する。図1に示すようにシード電極層5は二層構造であり、p電極層4の表面全体を覆うように形成される層5aと、この層5aの上に形成される層5bとを有する。層5aは、後の工程で形成されるメッキ層6中の金属がp電極層4まで拡散するのを防止するためのものであり、TiやNi等の単金属、もしくはTiNやTiW等の合金が望ましい。この層5aを単層膜ではなく、多層膜としてもよい。
【0028】
層5aは高反射電極層4bよりも厚く、かつ高反射電極の表面積よりも大きい。このため、メッキ層6からの金属が高反射電極層4bに熱拡散するおそれを確実に回避でき、高反射電極層4bの反射率低下を抑制できる。
【0029】
層5bは、AuやCu等であり、メッキ層6の金属と混和する材料が望ましい。したがって、メッキ層6の金属がCuまたはCu系合金の場合は、層5bは例えばCuのスパッタ膜にして、膜厚を約3000オングストローム以上にするのが望ましい。
【0030】
次に、図3(a)に示すように、電解メッキ法により、シード電極層5の表面全体にメッキ層6を形成する。メッキ層6は、膜厚が約50〜250μmの金属圧膜である。メッキ層6の厚さは、分離溝21の幅とメッキ材料に応じて決定される。分離溝21の内部にもメッキ層6は形成されるが、分離溝21の幅が広いほど、分離溝21内のメッキ層6の高さは低くなる。分離溝21内のメッキ層6の高さが低くなるほど、メッキ層6の反対側の面に形成される凹部6aが深くなる。したがって、分離溝21の幅は、約5〜40μmが望ましい。メッキ層6の膜厚を、分離溝21の幅の10倍程度とすれば、どのような材料をメッキ層6の母材としても、支持基板として十分な機械的強度が得られる。
【0031】
Cuは熱伝導性が高いため、上下方向に電極を設けて通電させる半導体発光装置の台座として望ましい。Cuを母材とするメッキ層6を形成することで、サファイア基板20よりも放熱性が向上し、発光層12の動作温度を下げられるため、急峻な電流・光出力特性が得られ、かつ熱飽和も生じにくくなる。この結果、化合物半導体層1の持つ品質を最大限に発揮することができる。
【0032】
メッキ層6にCuやCu系合金を用いた場合、半導体発光装置の製造後でも、メッキ層6中の金属マイグレーションが生じて品質低下が生じることが広く知られており、何らかの対策を講じる必要がある。このため、メッキ層6の表面に接地電極層7を設ける必要がある。この接地電極層7は、バリアメタル層7aと接地電極7bを積層した構造を有する。バリアメタル層7aの材料としては、上述したようにTiやNiが望ましく、接地電極7bの材料としてはAuが望ましい。接地電極7b上にさらに電極層を形成してもよい。この場合の材料は、Ni/AuやTi/Pt/Auが望ましい。
【0033】
次に、図3(b)に示すように、レーザリフトオフ法によりサファイア基板20を剥離する。ここでは、図4に示したように、レーザの光端が分離溝21に重なるようにレーザの位置合わせをした状態で、レーザをサファイア基板20の裏面側から照射する。レーザは、波長が約248nmのKrFレーザが望ましく、レーザ照射パワー密度は約0.6〜0.8J/cm2程度が望ましい。レーザの走査方向は二通りが考えられる。
【0034】
図5(a)は分離溝21に平行にレーザを走査する例、図5(b)は分離溝21に垂直にレーザを走査する例を示す図である。図5では、レーザの口径22を四角形状で表している。図示のように、本実施形態では、分離溝21のピッチ(隣接する分離溝21の間隔)をレーザの口径22に略一致させている。これにより、レーザの光端は常に分離溝21と重なることになる。
【0035】
レーザリフトオフ法でサファイア基板20を剥離する場合、レーザ光端の跡が化合物半導体層1に残存して損傷してしまうという問題がある。このような跡が残る理由は、レーザ照射によって生じた窒素ガスの圧力が原因と考えられる。したがって、レーザ照射によって生じた窒素ガスを迅速に逃がすことができれば、窒素ガスの圧力を下げることができ、レーザ光端の跡が残らなくなる。
【0036】
図5(a)の場合、分離溝21に沿ってレーザを走査するため、窒素ガスを分離溝21の内部を通って逃がすことができる。すなわち、レーザ口径22の4辺のうち、分離溝21と重なる2辺は分離溝21の内部を通って窒素ガスを逃がすことができるため、この2辺がレーザ光端の跡を残すおそれはない。
【0037】
また、図5(a)の矢印の方向にレーザを走査する場合、レーザ口径22の上の辺は、レーザ照射により瞬時にサファイア基板20が剥離されるため、この辺からも窒素ガスは逃げる。したがって、この辺がレーザ光端の跡を残すおそれはない。
【0038】
以上より、レーザ口径22の下の辺のみがレーザ光端の跡を残すおそれがあるが、大半の窒素ガスは上述した3辺に沿って逃げるため、窒素ガスの圧力が十分に低くなっており、レーザ口径22の下の辺がレーザ光端の跡を残すおそれも少ない。
【0039】
図5(b)のように、レーザを分離溝21に垂直に走査する場合も、レーザの光端が分離溝21に重なるような位置に移動した後にレーザ照射を行うため、図5(a)と同様に、レーザ照射により生じた窒素ガスを分離溝21等を通して逃がすことができ、レーザ光端の跡が化合物半導体に残るおそれは少ない。
【0040】
レーザリフトオフ法によりサファイア基板20を剥離した後、図3(c)に示すように、化合物半導体層1に対してドライエッチングを行って、複数の発光素子を形成する。このとき、レーザリフトオフにより損傷を受けた層も除去される。
【0041】
ドライエッチングを行って得られた各発光素子の側壁は、順テーパ形状になる。また、化合物半導体層1の表面には、n型コンタクト層が露出される。n型コンタクト層は、n型半導体層11の中で最もn型不純物の添加量が多い層である。
【0042】
次に、n型コンタクト層の表面全体を絶縁膜で覆った後、フォトレジストを用いたエッチングにより、発光素子に対応する化合物半導体層1の側壁部分のみに絶縁膜23を形成する。絶縁膜23の材料は、例えばSiOまたはSiNである。この絶縁膜23は、p電極層4やシード電極層5の上にも形成されている。この絶縁膜23を形成することで、その後の工程(例えば、光取り出し面2の粗面化処理や発光素子の個片化処理)での異物付着による短絡を防止できる。
【0043】
また、本実施形態の発光素子は、順テーパ形状であり、絶縁膜23が付着しやすい構造であり、特に工程上の工夫無しに、発光素子の側壁に絶縁膜23を形成できる。
【0044】
次に、化合物半導体層1の上面、すなわちn型半導体層11の上面側に設けられる光取り出し面2の粗面化処理を行う。この粗面化処理では、アルカリ水溶液によるウェットエッチングやドライエッチングにより、全面にわたって、もしくは後の工程で形成されるn電極層3の形成箇所を除く部分について、光取り出し面2を粗面化する。この粗面化処理は、光取り出し効率を向上させるための措置である。
【0045】
次に、光取り出し面2上の一部にn電極層3を形成する。n電極層3は、n型半導体層11の光取り出し面2に接するTi層3aと、このTi層3aの上に形成されるAl層3bと、このAl層3bの上に形成されるAu層3cとを有する積層構造である。なお、n電極層3は、必ずしも3層構造に限らず、例えばTi/Al/Ni/Auの4層構造でもよいし、Ti/Al/Ta/Pt/Auの5層構造でもよい。
【0046】
このように、本実施形態では、サファイア基板20上に形成された化合物半導体層1に、ストライプ状に分離溝21を形成した後、化合物半導体層1の全面にメッキ層6を形成するため、このメッキ層6をサファイア基板20の剥離後の支持基板として用いることができる。従って、別個の支持基板を化合物半導体層1に熱圧着する必要がなくなり、熱圧着時の熱の影響、すなわち熱応力で、支持基板に反りが生じ、この反りによってレーザリフトオフ工程で支持基板が割れる等の不具合が起きなくなる。また、メッキ層6の形成は、電解メッキ法で行えるため、熱圧着するよりも製造工程数が少なくて済み、製造コスト削減が図れる。さらに、電解メッキ工程におけるメッキ浴の温度は、熱圧着時の温度よりも低いため、金属拡散による電気特性や光学特性の劣化を抑制することも期待できる。
【0047】
また、本実施形態では、メッキ層6中の金属(例えばCu)がp電極層4内に熱拡散しないように、p電極層4の表面を覆うようにシード電極層5を形成するため、p電極層4にメッキ層6中の金属が熱拡散するおそれはなく、高反射電極層4bの反射率低下を抑制できる。
【0048】
さらに、本実施形態では、サファイア基板20の一方向に沿って、所定間隔でストライプ状に分離溝21を形成し、分離溝21のピッチをレーザ口径22に略一致させて、レーザの光端が分離溝21に重なるようにして、レーザを分離溝21に沿って走査するため、レーザの光端の跡が化合物半導体層1に残存するおそれがない。また、レーザ照射により発生した窒素ガスが分離溝21を通って逃げるため、窒素ガスの圧力を弱めることができ、よりいっそうレーザ光端の跡をなくすことができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、レーザリフトオフ法によりサファイア基板20を剥離した後に、化合物半導体層1の表面をドライエッチングして複数の発光素子を形成するため、個々の発光素子の側壁を順テーパ状に加工できる。したがって、その後の工程で発光素子の側壁部分に絶縁膜23を形成するのが容易になり、簡易な工程で発光素子の側壁を保護できる。
【0050】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれない。したがって、本発明の態様は、上述した個々の実施形態には限定されない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 窒化物系III−V族化合物半導体層
2 光取り出し面
3 n電極層
4 p電極層
5 シード電極層
6 メッキ層
7 接地電極層
11 n型半導体層
12 発光層
13 p型半導体層
20 サファイア基板
21 分離溝
22 レーザ口径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成される窒化物系III−V族化合物半導体を備える発光素子と、
前記発光素子の一主面側に設けられる光取り出し面上に形成される第1電極層と、
前記発光素子の前記光取り出し面とは反対側の面上に形成される第2電極層と、
前記第2電極層の表面全体を覆うように形成されるシード電極層と、
前記シード電極層上に形成されるメッキ層と、を備え、
前記発光素子は、
発光層と、
前記発光層と前記第2電極層との間に配置される第2導電型半導体層と、
前記発光層と前記第1電極層との間に配置される第1導電型半導体層と、を有し、
前記発光素子は、前記第2導電型半導体層、前記発光素子および前記第1導電型半導体層の順に徐々に幅が小さくなる順テーパ状であることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
前記シード電極層は、
前記第2電極層の表面全体を覆うように形成され、前記メッキ層中の金属が前記第2電極層に拡散するのを防止可能な金属材料を含む第1層と、
前記第1層および前記メッキ層に接するように形成され、前記メッキ層中の金属と混和する第2層と、を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記第2電極層は、前記第1層と接するように形成され、前記発光層で発光された光を反射する高反射電極層を有し、
前記第1層は、前記高反射電極層より表面積が大きく、かつ前記高反射電極層より厚いことを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
基板上に窒化物系III−V族化合物半導体を備える発光部を形成する工程と、
前記発光部に、所定の間隔で前記基板まで達するストライプ状の分離溝を複数形成する工程と、
前記分離溝で分離された前記発光部上に第2電極層を形成する工程と、
前記第2電極層の表面全体を覆うようにシード電極層を形成する工程と、
前記シード電極の表面全体をメッキしてメッキ層を形成する工程と、
前記分離溝に沿って、前記分離溝とは反対側の前記基板の面にレーザを照射して、レーザリフトオフ法により前記基板を剥離する工程と、
前記発光部をエッチングにより素子分離して順テーパ状の複数の発光素子を形成する工程と、
前記複数の発光素子の少なくとも側壁に絶縁膜を形成する工程と、
前記複数の発光素子の上面の少なくとも一部を粗面化して光取り出し面を形成する工程と、
前記複数の発光素子の上面の一部に第1電極層を形成する工程と、
前記複数の発光素子を個片化する工程と、を備えることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記レーザリフトオフ法では、レーザの光端が前記分離溝に重なるようにレーザの位置合わせをした後にレーザを照射および走査することを特徴とする請求項4に記載の半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−187737(P2011−187737A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52220(P2010−52220)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】