説明

半導体粒子の分散体から半導体要素を製作する方法

【課題】半導体粒子の分散体から半導体要素を製作する方法を提供することである。この要素は、積層後この要素を焼結しなくても、マイクロプロセッサーやその他の高性能電気装置に使用するのに適した十分なバルク電荷担体移動度を有する。
【解決手段】膜などの半導体要素を形成する方法が提供されている。この方法には、 (i)第2半導体またはその前駆体を含む液相に懸濁された第1半導体粒子を含む混合物が基板上に生じるように、第1半導体の粒子を含む懸濁液および第2半導体またはその前駆体を含む溶液を基板表面に積層する工程と、 (ii)第1半導体の隣接粒子を電気的に接続する第2半導体のマトリックス中に第1半導体の粒子を含む半導体要素を形成するために混合物を凝固させる工程とが含まれ、 第1および第2半導体が、同じ伝導形式であり、且つ同じかまたは別の材料から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体粒子の分散体から膜などの半導体要素を製作すること、特に電荷担体の移動度が比較的高い要素などの製作に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に半導体物質を真空積層することにより半導体膜を含む薄膜トランジスターを製造することは当該技術分野では知られている。このようにして形成された無機半導体膜における電荷担体の固有移動度は、1000cm2/Vs程度である。しかし、真空積層は特殊な装置および超清浄な処理条件を必要とするので高価な生産技法である。したがって、比較的簡単な装置で満足な結果が得られる生産技法が求められている。
【0003】
最近、溶液で加工できる有機半導体の開発において大きな進歩がなされた。この種の半導体を溶液積層することにより造られた膜について、0.1cm2/Vsまでの電荷担体移動度が得られた。ペンタセンを真空積層することにより形成された有機薄膜トランジスターの場合、1〜2cm2/Vsまでの比較的高い電荷担体移動度が得られた。残念なことに、ペンタセンは普通のすべての溶媒に実質的に不溶性であるので、ペンタセンは溶液加工が容易ではない。したがって、ペンタセンはこれまでは真空積層により積層しなければならなかった。しかし、この技法によってペンタセンを積層しても、得られるペンタセン膜は、同じ方法で積層された無機半導体から形成された膜と比肩できる電荷担体移動度を達成できず、その上、ペンタセン膜が高価であることにより商業的な関心は小さい。
【0004】
ペンタセンの誘導体が現在開発されており、これは溶液から積層することができる。これらの誘導体には、スピン・コーティングにより、または液滴の状態で発射する印刷技術、すなわち、インク・ジェット印刷により液体として積層できる利点がある。これらの積層技法は、真空積層よりもはるかに安価に行うことができる。したがって、溶液から積層できる半導体によれば、半導体要素を製作するはるかに安価な方法へ辿り着くことができると考えられる。
【0005】
インク・ジェット印刷技法は、薄膜トランジスターの成分が、備え付けのインク・ジェット印刷ヘッドにより液滴の状態で基板上に発射される技法として開発されている。例えば、セレン化カドミウムのナノ結晶の懸濁液が基板上に印刷され薄膜トランジスターの半導体要素を形成するプロセスが記載されている(例えば、非特許文献1参照。)。セレン化カドミウムなどの無機半導体はそれらの化学的状態を変えないと普通の溶媒に溶かすことはできず、したがって、それらの無機半導体の半導体性を弱める。しかし、これらの無機半導体はナノ結晶の懸濁液として印刷することができ、時には「コロイド状半導体」として知られている。コロイド状のセレン化カドミウムを積層した膜を焼きなまして造られたセレン化カドミウムの多結晶膜の固有電荷担体移動度は、約1cm2/Vsであると報告されている。この移動度は溶液から積層された有機半導体膜の移動度よりも1桁高いが、真空積層により形成されたセレン化カドミウム膜の電荷担体の移動度よりもおよそ3桁低い。
【0006】
【非特許文献1】ビー.エー.リドレイ、ビー.ニビおよびジェー.エム.ヤコブソン(B.A.Ridrey,B.Nivi and J.M.Jacobson)著、「サイエンス(Science)」、286巻、1999年、p.746
【0007】
粒子の平均サイズが約2nmであるコロイド状半導体の懸濁液を積層して造られた半導体膜の電荷担体の固有移動度は中程度であるが、それ自体は、マイクロプロセッサーやその他の高性能電子装置の製作を可能にするには十分ではない。これらの装置は比較的高い移動度を必要とする。ナノ結晶膜を250〜350℃で約30分間焼結すると、この膜は多結晶膜に変わる。焼結工程では、コロイド状半導体のナノ結晶をはるかに大きなサイズ、普通は直径約15nmの顆粒に合体させる。
【0008】
半導体膜を通過する電荷担体の移動度は、電荷担体が通過しなければならない粒界の数により低下する。したがって、焼結多結晶膜を通過する電荷担体の移動度は、半導体ナノ結晶から形成された最初に積層された膜を通過する移動度よりも大きい。何故ならば、前者では電荷担体が通過しなければならない粒界の数はずっと少ないからである。しかし、コロイド状半導体膜を焼結する工程は、柔軟な電子装置の製造に通常使われるプラスチック基板並びに電子装置の予め造られた部品を破壊するおそれがある。その結果、焼結により電荷担体の移動度は向上するが、大抵の場合焼結は有害である。
【0009】
本明細書では、「バルク電気コンダクタンス」という表現は、単一の半導体粒子が所有する固有電気コンダクタンスとは対照的に、粒子間に結合剤が有る場合無い場合の両方がある半導体粒子を含む要素の電気コンダクタンスを意味し、「バルク電荷担体移動度」という表現は、単一半導体粒子における電荷担体の固有移動度とは対照的に、粒子間に結合剤が有る場合無い場合の両方がある半導体粒子を含む要素における電荷担体の移動度を意味し、「マトリックス」という用語は、粗い粒子が埋めこまれている微粒子状態またはアモルファスな物質を意味する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的はマイクロプロセッサーやその他の高性能電気装置に使用するのに適した十分なバルク電荷担体移動度を有する半導体要素を製作する方法を、積層後の要素の焼結をすることなく、半導体粒子の分散体から提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の形態によると、本発明は、半導体要素を形成する方法を提供し、
(i)第2半導体またはその前駆体を含む液相に懸濁された第1半導体粒子を含む混合物が基板上に生じるように、第1半導体の粒子を含む懸濁液および第2半導体またはその前駆体を含む溶液を基板表面に積層する工程と、
(ii)第1半導体の隣接粒子を電気的に接続する第2半導体のマトリックス中に第1半導体の粒子を含む半導体要素を形成するための混合物であって、第1および第2半導体が、同じ伝導形式であり且つ同じかまたは別の材料から形成され、この混合物を凝固させる工程とを含む方法である。
【0012】
本発明のこの形態によると、半導体要素は、真空積層工程や焼結工程を必要とせずに比較的高いバルク電荷担体移動度を有するものを製作することができる。なお、真空積層工程や焼結工程のそれぞれの欠点については上で説明した。高いバルク電荷担体移動度は、第1半導体の粒子を第2半導体のマトリックスに埋め込むことにより達成される。なお、第2半導体のマトリックスは、第1半導体の隣接粒子間に電気接続を作り、要素内の電荷担体の移動度を向上させる。
【0013】
第1および第2の半導体は、異種物質から形成され、第1半導体は第2半導体よりも高い固有電荷担体移動度を有するのが好ましい。これが、第2半導体よりも高いバルク電荷担体移動度を有する第1半導体の粒子から要素が主として形成されている限り、要素全体のバルク電荷担体移動度が高いことを保証する。
【0014】
第2半導体またはその前駆体の溶液が液体であるならば、この半導体またはその前駆体は自身から全体が形成される。これは、いくつかの例では、液晶半導体である6−(4’−オクチルフェニル)−2−ドデシルオキシナフタレン(8−PNP−012と短縮されることが多い)などの半導体またはその前駆体を溶融して達成される。やはり、適切な溶媒に溶かした溶質として第2半導体を提供するのが好ましい。
【0015】
第2半導体が前駆体として積層されるならば、このプロセスには前駆体を第2半導体に変換する工程が含まれる。これは、通常、前駆体を含む積層混合物を加熱することにより行うことができる。この種の加熱工程は、通常、100〜150℃で1〜30分行われる。この温度は、第1半導体の焼結温度より低い。第2半導体として可能性のある前駆体は、ペンタセン前駆体またはSnS2前駆体である。
【0016】
第1半導体の粒子の懸濁液は、適切な液体を分散剤とするコロイド状懸濁液の状態で提供することができる。この懸濁液は、基板表面上の第1工程として積層することができる。第2半導体またはその前駆体の溶液は、引き続き、第1半導体の積層懸濁液の上に積層して基板の表面に混合物を形成することができる。この工程は、第2半導体またはその前駆体を含む液相を液滴の状態で発射することにより行うことができる。この場合、第1半導体の粒子の積層コロイド状懸濁液は、第2半導体またはその前駆体を含む液相を積層する前に100〜150℃の温度で焼きなますのが好ましい。
【0017】
上の代わりとして、第1半導体の粒子を第2半導体またはその前駆体の溶液に分散させ、引き続き、得られた混合物を基板の表面に積層させることができる。2つの半導体を積層する前に2つの半導体の混合物を形成することは、積層工程が一度で済ませるので、本発明の好ましい特徴である。しかし、それは、第2半導体(またはその前駆体)の溶液に第1半導体の粒子が十分分散させうるか否かにかかっている。この場合、この混合物は、スピン・コーティング、ドクター・ブレーディングまたはインク・ジェット印刷のいずれかの方法により積層することができる。
【0018】
さらに、別の代替方法では、第2半導体またはその前駆体は、スピン・コーティング、ドクター・ブレーディングまたはインク・ジェット印刷のいずれかの方法により積層し、続いてその上に第1半導体の懸濁液を積層する。後で行われる積層は、インク・ジェット印刷により行われるのが好ましい。
【0019】
このようにして、第1半導体および第2半導体またはその前駆体は、任意の順番または予め形成された混合物として一緒に基板の表面に積層することも行える。より詳しく述べると、第1半導体をまず積層し、次いで、第2半導体またはその前駆体を積層するか、第2半導体またはその前駆体をまず積層し、次いで、第1半導体を積層するか、または第1半導体および第2半導体またはその前駆体を予め混合し、第2半導体の溶液中に第1半導体粒子の分散体を形成し、混合物として一緒に積層する。
【0020】
上の文脈において、「基板の表面」は、例えば、半導体要素の製造に使われるプラスチックやガラス基板の実際の表面に限定されない。むしろ、この文脈における「基板」は、上に半導体要素が形成されるあらゆる物質を包含している。すなわち、基板には、トランジスターなど電子装置を製作する部品として導体または半導体により被覆および/またはパターン化された表面が含まれる。
【0021】
第2の形態によると、本発明は隣接半導体粒子を電気的に接続する半導体結合剤のマトリックス中に半導体粒子を含む半導体要素を提供する。ここで、結合剤と粒子とは同じ伝導形式であり、結合剤は粒子を形成する物質と同じか、または異なる物質から形成される。
【0022】
前に説明したように、第2半導体のマトリックス中に第1半導体の粒子を配置すると、粒子単独から形成された要素と比べて向上したバルク・コンダクタンスを有する半導体要素が得られる。これは、第2半導体から形成されるマトリックスが隣接半導体粒子を電気的に接続し、隣接粒子間で電荷担体の通過を促進し、このようにして要素中の電荷担体全体の移動度を向上させるからである。
【0023】
半導体粒子と半導体結合剤の容積比は、50:50〜95:5の範囲にあるのが好ましい。このような容積比から、要素の大部分は半導体粒子から形成されているという結果が得られる。粒子は、通常、半導体結合剤に比べて固有電荷担体移動度が高いので、要素のバルク電荷担体移動度は全体として比較的高いことが保証されている。
【0024】
半導体要素の中の半導体粒子は形が多様で、規則的なものもあれば、不規則なものもある。形は何であれ、各粒子には最長サイズに相当する軸がある。半導体粒子の最長サイズの平均は、0.01〜5μmの範囲に入ることが望ましい。
【0025】
粒子と結合剤とは、同じ伝導形式を有する。これがn型ならば、半導体粒子はセレン化カドミウム(CdSe)、二硫化すず(SnS2)、二硫化モリブデン(MoS2)または二テルル化タングステン(WTe2)から形成することができる。半導体結合剤分子は、ポリ(ベンズアミドアゾベンゾ・フェナンスロリン)、メタノフラーレン[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステルまたはポリ[2,3−ジ(p−トリル)−キノキサリン−5,8−ジイル]から形成することができる。
【0026】
一方、粒子と結合剤とが両方ともp型の場合、半導体粒子はペンタセンまたはヘキサベンゾコロネンなどの有機半導体から形成することができ、結合剤はポリチオフェンでよい。
【0027】
結合剤分子は、p型であれ、n型であれ、p型半導体であるポリチオフェン、その具体的な例である3−ヘキシルチオフェン(P3HT)およびn型半導体であるポリ(ベンズアミドアゾベンゾ・フェナンスロリン)が持っているような共役結合構造を有するのは好ましい。
【0028】
半導体要素では、第2半導体の分子は、固着基または固着部分により第1半導体の粒子に結合することができる。この種の基は、共有結合またはπ−π*相互作用またはファンデルワールス相互作用などのその他のいくつかの分子相互作用により第2半導体をこれらの粒子に固着することができる。粒子への結合剤のこの種の結合は、それが粒子と結合剤との間で電荷担体の移動を促進し、これが次には半導体要素のバルク電気コンダクタンスを高める利点がある。
【0029】
本発明の第2形態の半導体要素は、薄膜トランジスターの構成部品として使うことができる。例えば、半導体要素はソース電極およびドレイン電極と電気的に接触しているトランジスター・チャネルかもしれない。一方、半導体要素は有機発光ダイオードの構成部品であるかもしれない。この種の薄膜トランジスターまたは有機発光ダイオードは、電気装置に組み込まれるのが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の半導体粒子の分散体から半導体要素を製作する方法によれば、積層後この要素を焼結しなくてもよく、マイクロプロセッサーやその他の高性能電気装置に使用するのに適した十分なバルク電荷担体移動度を有する半導体要素が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら本発明について詳細に説明することにする。なお、図面では一貫して同じ番号を使用する。
【0032】
本発明は、その第1の形態によると、膜などの半導体要素を製作する方法を提供する。この膜は、溶液積層半導体から形成された先行技術の膜よりも高いバルク電気コンダクタンスを有する。この方法には、第1半導体の粒子の懸濁液および第2半導体またはその前駆体の溶液を基板表面に積層する第1工程が含まれている。これにより、第2半導体またはその前駆体を含む液相に懸濁された第1半導体の粒子を含む混合物が表面上に生じる。第2工程で、この混合物は凝固して第2半導体のマトリックス中に第1半導体の粒子を含む半導体要素を形成する。このマトリックスは第1半導体の隣接粒子を電気的に接続する。
【0033】
本発明により提供された半導体要素には、隣接半導体粒子を電気的に接続している半導体結合剤中に半導体粒子が含まれている。結合剤と粒子とは同じ伝導形式をしている。したがって、これらの物質は、両方がn型か、または両方がp型である。結合剤は、粒子を形成する同じ物質または別の物質から形成されている。半導体結合剤は、第1半導体の隣接粒子を電気的に接続し、マトリックスがない場合に比べて粒子間の電荷担体の移動度を高くする。なお、マトリックスがない場合は粒子間に空隙が存在することになる。
【0034】
互いに接近し、いくつかの半導体マトリックス分子により電気的に接続された2つの半導体粒子の場合、この系のバルク電荷担体移動度は、個々の半導体粒子の固有電荷担体移動度に近いと考えられる。
【0035】
第1および第2の半導体は、別々の物質から形成されるのが好ましい。この場合、第1半導体は第2半導体物質よりも高い固有電荷担体移動度を有するべきである。これは、半導体要素のバルク電荷担体移動度は、大部分を第1半導体の粒子が担っているからである。
【0036】
第1および第2の半導体は、同一物質からも生成することができる。この場合、第2半導体は、それが基板表面に積層される場合、第2半導体の前駆体の状態で提供されるのが好ましい。積層後、この前駆体は、適切な処理により、第1半導体を形成しているものと同じ物質である第2半導体に変換される。この変換は、積層された前駆体を100〜200℃で1〜30分間加熱して行われる。使用可能な前駆体には、ペンタセン前駆体またはSnS2前駆体がある。
【0037】
第2半導体は、その融点以上に加熱するか、またはまず第2半導体を適切な溶媒に溶解することによって溶液として積層する。代表的で有用な溶媒には、トルエン、クロロホルムおよびクロロベンゼンがある。第2半導体は液体の状態で積層される。この液体を第1半導体の粒子の懸濁液と混合し、これら両方を基板表面に積層した後、得られる混合物を、第2半導体がその融点以上に加熱されていれば冷却し、またはより普通には、2つの半導体の積層を促進した溶媒および分散体を蒸発させて凝固させる。
【0038】
本発明では、第2半導体のマトリックスはアモルファスか、または第1半導体の粒子のサイズに比べて比較的小さな粒子から形成される。第2半導体が微粒子であるならば、その粒子の平均サイズは1〜100nm、より好適には1〜10nmである。
【0039】
第1半導体の粒子は、基板表面に液相(分散剤)中のコロイド状懸濁液として積層することができる。分散剤は、例えば、水または1,3,5−メシチレンなどの有機液体である。
【0040】
第1半導体の粒子の懸濁液は、スピン・コーティング、パッド印刷、ドクター・ブレーディング、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷または液滴の状態における発射(「インク・ジェット印刷」としても公知)などのコーティング技法により積層することができる。ドクター・ブレーディングまたはインク・ジェット印刷を使用すると、迅速に、所望の領域(または複数の領域)に正確に、比較的安価にコロイド状半導体を積層することができる。
【0041】
スピン・コーティングも、第2半導体の溶液の前に第1半導体の粒子の懸濁液が積層されるならば、この懸濁液の積層に使える。これらの半導体粒子が細長い形をしているならば、スピン・コーティングにより積層の間にフロー整列が生じる。これは、つまり、粒子の充填密度を高めることになり、充填密度が高くなると、高いバルク電気コンダクタンスを有する半導体要素が導かれるので有利である。より詳しく述べると、分散剤中の半導体粒子のこのようなフロー整列は、基板表面の面に対して並行な面における平均粒子長さを効果的に高め、したがって、全体的な固有電荷担体移動度も向上する。
【0042】
第1半導体の粒子の懸濁液が積層された後、次いで、懸濁液は、第2半導体またはその前駆体の溶液を積層する前に、100〜150℃の温度で焼きなますのが好ましい。この種の焼きなまし工程には、粒子の周りを覆っているキャッピング層をすべて除去する利点がある。
【0043】
第2半導体またはその前駆体は、第1半導体の粒子の懸濁液を積層後その上に積層することができる。これは、例えば、第2半導体を溶媒に溶解し、得られた溶液を予め積層した懸濁液の上に液滴の状態で発射することにより行うことができる。予め積層した懸濁液の上に第2半導体の溶液を積層するためにインク・ジェット印刷を利用すると、第2半導体を迅速、正確且つ比較的安価に積層することが可能になる。インク・ジェット印刷は、積層装置が第1半導体の予め積層された懸濁液に直接接触せず、このため、懸濁液を撹乱して害を与えない限り有利である。
【0044】
第1半導体の懸濁液を積層する前に、第2半導体またはその前駆体の溶液を、基板上に積層することもできる。この積層は、例えば、ドクター・ブレーディング、パッド印刷、スピン・コーティングまたはインク・ジェット印刷により行うことができる。引き続き、第1半導体の粒子の懸濁液は、例えば、インク・ジェット印刷により第2半導体の上に印刷される。第1半導体の粒子の懸濁液をインク・ジェット印刷すると、この印刷は比較的迅速且つ正確に行うことができ、その上、第2半導体またはその前駆体の予め積層された溶液に直接接触する積層装置を全く必要とせず、直接接触によりこの予め積層された溶液を撹乱して害を与えることがないという利点がある。
【0045】
一方、第2半導体またはその前駆体の溶液を、懸濁液としてまたは固体粒子として、コロイド状半導体と混合し、次いで、基板上にこれらを合同積層することができる。これにより、第1および第2の半導体の積層を単一の工程で行うことができるので処理効率が改善される。この場合、第2半導体を通常溶解することができる溶媒も第1半導体の粒子の分散剤として作用することもできる。この混合物は、例えば、ドクター・ブレーディング、パッド印刷、スピン・コーティングまたはインク・ジェット印刷により積層することができる。
【0046】
半導体要素における第1半導体の粒子と第2半導体の結合剤との容積比は、50:50〜95:5の範囲にあるのが好ましい。第1半導体の粒子は第2半導体から形成されたマトリックスよりも高い固有伝導度を有する場合が多いので、50:50より上の比が望ましい。半導体粒子の場合95%に近い比較的高い容積比が望ましく、これを達成することは粒子の形状に左右される。例えば、フレーク状の粒子は、粗い球状の粒子よりもずっと緻密に充填され、したがって、粒子間の空隙を満たすために必要なマトリックス物質が少ない。好適には、第1半導体の粒子と第2半導体の結合剤との容積比は70:30〜95:5、最も好適には80:20〜95:5である。
【0047】
第1半導体の粒子は、ほぼ球状の形にしてもよいが、球状では高い充填密度は得られないので、形が球状であることは好ましくない。粒子の形状は、フレーク、小板、またはナノチューブであることが望ましい。すなわち、このような形状は高い充填密度を達成し、ほぼ球状の粒子を含む半導体要素よりも高いバルク電気コンダクタンスを有する半導体要素が得られる。ペンタセンおよびSnS2は両方とも、小板結晶として形成され、この結晶は第1半導体にとって好ましい粒子形状である。
【0048】
第1半導体の粒子では最長寸法の平均は、好適には0.01〜5μm、より好適には0.03〜2μm、最も好適には0.05〜0.5μmである。第1半導体の粒子では最短寸法の平均は、好適には0.1μm程度で、より好適には0.01μm程度である。第1半導体の粒子の理想的なサイズは、多少の妥協がある。比較的小さな粒子は、処理が容易で、装置の再現性を良くする傾向がある。一方、比較的大きな粒子は、小さな粒子よりも大きなバルク電気コンダクタンスを有する。すなわち、所定の間隔では電荷担体は少数の粒界を通過するからである。第1半導体の粒子の懸濁液がインク・ジェット印刷で積層されるならば、その際最大粒子は5μmを超えてはならない、さもないと、粒子はインク・ジェットのプリント・ヘッドをふさぐ傾向がある。積層される懸濁液中の第1半導体粒子のサイズおよび形状は最終半導体要素において変化しないことに留意する必要がある。
【0049】
商業的に利用できる半導体粒子は、キャッピング層により覆われた状態で入荷することが多い。この種の層は、粒子の成長中粒子のサイズ分布を調節するために使われる。例えば、セレン化カドミウム粒子は、通常、ピリジンのキャッピング層により囲まれて合成されることが多い。これらのキャッピング残滓は、いくつかの段階で除去する必要がある。これは、これらの半導体粒子を、積層の前か後に、100〜150℃の範囲で低温焼きなまし工程にかけて行うことができる。
【0050】
半導体粒子および半導体マトリックスの伝導形式は、両方とも同じである。これらがn型であるならば、半導体粒子は、例えば、セレン化カドミウムまたは硫化すず(IV)(SnS2)から形成され、および半導体マトリックスはポリ(ベンズアミドアゾベンゾ・フェナンスロリン)、メタノフラーレン[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステルまたはポリ[2,3−ジ(p−トリル)−キノキサリン−5,8−ジイル]から形成される。例えば、セレン化カドミウムの半導体粒子は、ポリ(ベンズアミドアゾベンゾ・フェナンスロリン)のマトリックスに埋め込まれている。後者には、半導体粒子がセレン化カドミウムから形成されるならば、窒素含有複素環が含まれ、この複素環では窒素原子の孤立電子対が、カドミウム陽イオンと供与結合を形成することができる。ポリ(ベンズアミドアゾベンゾ・フェナンスロリン)の共役結合構造は、セレン化カドミウムの半導体粒子を電気的に橋架けすることができ、これは、セレン化カドミウム粒子からのみ形成された、すなわち、何らかの半導体マトリックスに埋め込まれていない半導体要素に比べ、半導体要素のバルク電気コンダクタンスを上げるのに有効である。
【0051】
一方、半導体粒子および半導体マトリックス伝導形式がp型の場合、半導体粒子はペンタセンまたはヘキサベンゾコロネンなどの有機半導体である。マトリックスを形成するp型半導体には、共役結合構造が含まれるのが好ましい。このような共役構造が存在すると、電子を分子の長さに沿って、次いで第1半導体の隣接粒子間で容易に移動させることができる。この種の共役結合剤の1例は、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)などのポリチオフェンで、その化学式は下記の通りであり、式中nは100〜1000の整数である。
【0052】
【化1】

【0053】
一方、このような共役結合構造は、金属有機ルテニウム・ビピリジル錯体におけるように金属d軌道誘導結合を有する金属の群により与えられることもある。この錯体は、光電池におけるナノ結晶TiO2電極の染料増感または完全な無機金属錯体に使われる。
【0054】
第2半導体は、固着基または固着部分を介して半導体粒子への結合を形成するのが好ましい。これらの固着基または固着部分は、結合剤分子の両端を隣接半導体粒子に反応させたり、共有結合させたりすることもある。例えば、この種の基には、カルボキシル基、ホスフェート基、アミン基、ヒドロキサメート基、チオール基および電子受容性置換基を有する芳香族環がある。例えば、半導体粒子がセレン化カドミウムから形成されるならば、マトリックスを形成する半導体にはそのポリマー鎖の両端に窒素複素環が含まれるのが好ましい。これはカドミウム陽イオンと供与結合を形成することができるからである。P3HTは、ファンデルワールス相互作用を介してペンタセン粒子と反応し、この共役結合剤をペンタセン粒子に結合することができる。
【0055】
一方、半導体粒子がペンタセンまたはヘキサベンゾコロネンから形成されるならば、P3HTなどのポリチオフェンは、1つ以上の電子受容置換基を有するフェニル環またはペリレン・ジイミド部分で末端をキャップすることができる。なお、ペリレン・ジイミド部分の構造は下記の通りである。この種の環状構造はπ−π*相互作用によりp型有機半導体の粒子に結合しうる。
【0056】
【化2】

【0057】
第2半導体として固着基を有する分子を利用すると、半導体粒子と半導体マトリックス分子との間の界面において、双極子層が効率的に形成される結果になる。双極子層の配向により、双極子層がそれぞれの伝導帯間のオフセットまたはそれぞれの原子価帯の間のオフセットを低下させることができる。オフセットの低下により、結果として、半導体粒子と半導体マトリックス分子の間に電気接触が生じ、より高い抵抗があるような挙動を示す。
【0058】
第1半導体と第2半導体との間に、結合などいくつかの形態の連結があるようにこれらの半導体を選択すると、これらの半導体は基板上に別々に積層する必要があると考えられる。さもないと、これらの半導体を積層する前に混合すると、第1および第2の半導体は粒子/マトリックス半導体要素を形成する前に早すぎる反応を起こすおそれがあり、これは不利な現象であると考えられる。
【0059】
ここで、添付図面に目を向けると、図1はポリ(3−ヘキシルチオフェン)半導体結合剤およびペンタセン半導体粒子のエネルギー帯を示している。これは、それぞれ粒子およびマトリックスを形成する第1および第2の半導体物質の選択に関する1つの重要な基準を示している。より詳細に述べると、p型半導体粒子およびマトリックスの場合、半導体結合剤分子の原子価帯の最高エネルギー・レベルは、半導体粒子の原子価帯の最高エネルギー・レベルに近接して並べる必要がある。この要件は、例えば、ペンタセン半導体粒子および半導体結合剤分子としてのP3HTの組み合わせについては満たされる。これら両物質は、紫外光電子分光法(UPS)により測定された約5.0eVのイオン化ポテンシャルを有する。結果として、粒子とマトリックスとの間の界面を横断して空孔の移動を妨害するエネルギー障壁はない。
【0060】
反対に、n型半導体結合剤マトリックスおよび粒子の場合、このマトリックスを形成する第2半導体の伝導帯の最低エネルギー・レベルは、粒子を形成している第1半導体の伝導帯の最低エネルギー・レベルに対して密接に並べられることが望ましい。
【0061】
図2には、基板11上に具備された、全体を10として示された薄膜トランジスターの複数の構成部品が示されている。基板11の上にあるのは、誘電層4およびゲート電極12である。誘電層4の上には、ソース電極13およびドレイン電極14がある。この複数の構成部品は、本明細書で使われている基板の意味の範囲内にある「基板」に該当する。
【0062】
図3には、図2に示した薄膜トランジスター10の同じ構成部品を示している。なお、図2では、第1半導体の粒子の懸濁液3が、例えば、スピン・コーティングまたはインク・ジェット印刷により、ソース電極13とドレイン電極14の間に積層されている。キャッピング層が半導体粒子の上に存在するならば、焼きなまし工程が約125℃で行われ、キャッピング物質を脱着する。
【0063】
図4を参照すると、適切な溶媒に溶解したマトリックスを形成するための半導体分子は、半導体粒子の懸濁液の上にインク・ジェット印刷されている。第2半導体を含む液相に懸濁された第1半導体の粒子を含む混合物は、そこで凝固され半導体要素1を形成する。好適には、この凝固はこの混合物を40〜150℃で1〜30分間、より好適には80〜130℃で2〜20分間加熱して行われる。この工程の間に、第2半導体が溶解されている溶媒および/または第1半導体の粒子が分散されている分散剤は、蒸発してなくなる。第2半導体がその前駆体の状態で用意されているならば、この凝固工程は、同時にこの混合物を凝固させながら、前駆体を第2半導体に変換するために200℃以上の高温で行う必要がある。第2半導体の分子は、半導体粒子の周りにマトリックスを形成し、これらの粒子を電気的に接続して全体としての要素のバルク電気コンダクタンスを高める。
【0064】
本発明の半導体要素を上に形成させるための基板には、ゲート電極、誘電層、ソース電極およびドレイン電極を含む薄膜トランジスターの複数の構成部品がある。本発明により形成された膜などの要素は、薄膜トランジスターの1つ以上の構成要素を形成するのに特に適している。特に、半導体要素は、薄膜トランジスターのソース電極およびドレイン電極と電気的に接触するように形成することができる。
【0065】
電気装置には、本発明により形成された膜の状態をした要素を有する薄膜トランジスターが含まれている。本発明の半導体膜を含む薄膜トランジスターは、ディスプレイおよびその他の電気装置で使用するのに特に適している。本発明の第2形態の半導体要素は、例えば、トランジスター・チャネルである。
【0066】
一方、本発明の半導体要素は、有機発光ダイオードに含まれる。このダイオードは、次に電気装置に含まれる。
【0067】
本発明による膜製作方法の4つの実施例を、ここで、説明することにする。しかし、本発明の範囲に入るその他の製作方法も可能である。
【実施例1】
【0068】
混合物として積層したp型半導体
(1)ペンタセン粒子メシチレン懸濁液
2.0gのペンタセンを50mlのメシチレンに溶解した。この分散体を、次いで、グローブ・ボックス中不活性ガスの下で4時間惑星ボールミル中で粉砕した。
【0069】
(2)ペンタセン前駆体クロロホルム溶液
0.5gのペンタセン、0.6gのN−スルフィニルアセトアミドおよび0.005gのメチルトリオキソレニウムを30mlのクロロホルムに加え、2日間還流した。得られたペンタセン前駆体生成物をフラッシュ・クロマトグラフィにより精製した。
【0070】
等量のペンタセン懸濁液(1)およびペンタセン前駆体溶液(2)を不活性ガス雰囲気の下で混合し、インク配合物を形成した。得られたインク配合物には、mlあたり約25mgのペンタセン粒子およびmlあたり6.3mgのペンタセン前駆体が含まれ、これはペンタセン粒子/ペンタセン誘導前駆体の容積比80:20に相当する。
【0071】
粒子と前駆体を合体したインクを、グローブ・ボックス中で60秒間基板上に2000rpmにてスピン・コートした。この基板には、ソース電極(13)とドレイン電極(14)を橋架けしている半導体層に欠けた予め部分的に製作された薄膜トランジスター(10)がある。このスピン・コートにより、ペンタセン前駆体マトリックス中にペンタセン粒子を含む膜が得られた。
【0072】
次いで、ペンタセン前駆体マトリックスを、不活性ガス雰囲気の下で約2分間160℃に加熱してペンタセンに変換した。この焼きなましプロセスにより、比較的小さな前駆体誘導ペンタセン結晶子のマトリックスに埋め込まれている比較的大きな(オリジナルの)ペンタセン粒子を有する多結晶ペンタセン膜が形成された。
【実施例2】
【0073】
混合物として積層されたp型半導体
(3)P3HTクロロホルム溶液
0.5gのP3HTを、グローブ・ボックス中不活性雰囲気の下で一晩攪拌して50mlのクロロホルムに溶解した。
【0074】
実施例1で形成された、等量のペンタセン懸濁液(1)およびP3HTクロロホルム溶液(3)を不活性ガス雰囲気の下で混合した。得られたインク配合物には、20mgペンタセン粒子/mlおよび5mgP3HT/mlが含まれ、これは約75:25ペンタセン粒子/P3HT(ペンタセンの比重1.2g/cm3,P3HTの比重1.1g/cm3)の容積比に相当する。このインクを、グローブ・ボックス中で60秒間基板上に2000rpmにてスピン・コートした。この基板には、図2で説明したソース電極(13)とドレイン電極(14)を橋架けしている半導体層に欠けた、予め部分的に製作された薄膜トランジスター(10)がある。次いで、残留溶媒を不活性ガス雰囲気の下100℃で2分間焼きなまして除去した。これにより、P3HTのマトリックスに埋め込まれたペンタセン粒子を含む半導体膜が形成された。
【実施例3】
【0075】
混合物として積層したn型半導体
(4)SnS2粒子懸濁水
(ストレム[Strem])から購入したSnS2粉末を、窒素中でブチル−リチウム(無水ヘキサン中1.6M,アルドリッチ[Aldrich])を用いて層間挿入反応を行わせた。ブチル−リチウムは、SnS21モルにつき3モル過剰のBuLiを用いて、数百mgのSnS2粉末を徐々に添加した。この混合物を、次いで、無水ヘキサンで一杯にして窒素中で4日間放置しリチウムをSnS2のファンデルワールス間隙の中に拡散させた。
【0076】
20mgのLiを層間挿入したSnS2を、超音波浴中で1時間20mlの水(ミリポア[Millipore],18メグオーム/cm)の水の中で剥離させた。超音波浴は、懸濁液を完全に攪拌し、良好な剥離を保証するために用いた。次いで、懸濁液は遠心分離し、pH7になるまで水で3回洗浄し(LiOHおよびヘキサンを完全に除去するために)、最後に2mlの水に分散させた。
【0077】
(5)SnS2前駆体ヒドラジン溶液
(ストレム[Strem])から購入した20mgのSnS2粉末および4mgの硫黄を、蒸留したばかりの2mlのヒドラジンに加えた。固体反応物は、窒素を満たした小瓶中室温で6時間攪拌すると完全に溶解した。
【0078】
等量のSnS2粒子懸濁水(4)およびSnS2前駆体ヒドラジン溶液(5)を、不活性ガス雰囲気の下で混合した。得られたインク配合物には、1mlあたり約10mgのSnS2粒子および10mgのSnS2前駆体が含まれ、これは、SnS2粒子と前駆体誘導SnS2の容積比50:50に相当する。
【0079】
粒子および前駆体を合体したインクを、グローブ・ボックス中で60秒間基板上に2000rpmにてスピン・コートした。この基板には、図2で説明したソース電極(13)とドレイン電極(14)を橋架けしている半導体層に欠けた、予め部分的に製作された薄膜トランジスター(10)がある。前述のスピン・コートにより、ソース電極とドレイン電極との間に積層されているSnS2前駆体により周囲を囲まれているSnS2粒子を含む混合物が得られる。
【0080】
SnS2前駆体は、次いで、不活性ガス雰囲気中で120℃へ5分間最初に加熱することによりSnS2に変換された。次いで、この膜は295℃で20分焼きなましされた。この焼きなましプロセスにより、比較的小さな前駆体誘導SnS2結晶子のマトリックスに埋め込まれている比較的大きな(オリジナルの)粒子を有する多結晶SnS2膜が形成された。
【実施例4】
【0081】
別々に積層したn型半導体
メタノフラーレン[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステルを20g/lの濃度でクロロベンゼンに溶解した。この溶液を、次いで、グローブ・ボックス中で60秒間基板上に2000rpmにてスピン・コートした。この基板には、図2で説明したソース電極(13)とドレイン電極(14)を橋架けしている半導体層に欠けた、予め部分的に製作された薄膜トランジスター(10)がある。得られたスピン・コートした溶液は50nmの厚さがあった。
【0082】
実施例3で形成されたSnS2粒子懸濁液(4)は、次いで、予め積層した膜の上にインク・ジェット印刷した。得られた膜は、次いで、120℃まで加熱して20分間乾燥し、溶媒を蒸発させて、結果的には、フラーレンのマトリックスに埋め込まれたSnS2粒子から形成された半導体膜を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】ポリ(3−ヘキシルチオフェン)とペンタセンの間の界面のエネルギー帯図を概略示している。
【図2】ソース電極とドレイン電極とを橋架けしている半導体層を欠いている部分的に造られた薄膜トランジスターの断面を概略示している。
【図3】第1半導体の粒子の懸濁液が積層され、ソース電極とドレイン電極とを橋架けしている図2に相当する。
【図4】形成された半導体要素が、ソース電極とドレイン電極とを橋架けしている図2に相当する。
【符号の説明】
【0084】
1 半導体要素
3 懸濁液
4 誘電層
10 薄膜トランジスター
11 基板
12 ゲート電極
13 ソース電極
14 ドレイン電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体要素を形成する方法であって、前記方法は、
(i)第2半導体またはその前駆体を含む液相に懸濁された第1半導体粒子を含む混合物が基板上に生じるように、前記第1半導体の粒子を含む懸濁液および前記第2半導体またはその前駆体を含む溶液を基板表面に積層する工程と、
(ii)前記第1半導体の隣接粒子を電気的に接続する前記第2半導体のマトリックス中に前記第1半導体の粒子を含む前記半導体要素を形成するための前記混合物を凝固させる工程とを含み、
前記第1および第2半導体が、同じ伝導形式であり、且つ同じかまたは異なる物質から形成される前記方法。
【請求項2】
請求項1の方法において、前記第1および第2の半導体が異種物質であり、前記第2半導体が第1半導体よりも固有電荷担体移動度が低い前記方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2の方法において、前記第2半導体の溶液に前記第2半導体の溶媒が含まれている前記方法。
【請求項4】
前項までのいずれかの請求項の方法において、前記第2半導体がその前駆体として積層され、前記方法に、さらに、前記積層混合物を加熱して前記前駆体を前記第2半導体に変換する工程が含まれている前記方法。
【請求項5】
請求項4の方法において、前記第2半導体の前記前駆体がペンタセン前駆体またはSnS2前駆体である前記方法。
【請求項6】
前項までのいずれかの請求項の方法であって、前記基板上にコロイド状懸濁液として前記半導体粒子を積層する工程を含む前記方法。
【請求項7】
請求項6の方法であって、予め積層されたコロイド状懸濁液の上に前記第2半導体またはその前駆体の溶液を引き続き積層する工程を含む前記方法。
【請求項8】
前項までのいずれかの請求項の方法であって、前記第2半導体またはその前駆体の溶液を液滴の状態で発射して積層することを含む前記方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8の方法であって、さらに、前記第2半導体またはその前駆体の溶液を積層する前に、100〜150℃の温度において前記コロイド状半導体を焼きなます工程を含む前記方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかの項の方法であって、前記第2半導体またはその前駆体の溶液中に前記第1半導体の粒子を分散させ、引き続き、得られた分散体を前記基板の表面に積層する工程を含む前記方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれかの項の方法であって、前記基板の表面に前記第2半導体またはその前駆体の溶液を積層し、その上に前記第1半導体の前記懸濁液を引き続き積層し、前記混合物を形成する工程を含む前記方法。
【請求項12】
隣接半導体粒子を電気的に接続している半導体結合剤のマトリックス中に半導体粒子を含む半導体要素であって、前記結合剤と粒子とは同じ伝導形式であり、前記結合剤は前記粒子を形成している物質と同じかまたは異なる物質から形成されている前記半導体要素。
【請求項13】
請求項12の半導体要素において、前記半導体粒子と前記半導体結合剤の容積比が、50:50〜95:5の範囲にある前記半導体要素。
【請求項14】
請求項12または請求項13の半導体要素において、前記半導体粒子の平均最長サイズが0.01〜5μmである前記半導体要素。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかの項の半導体要素において、前記粒子および結合剤両方の伝導形式がn型である前記半導体要素。
【請求項16】
請求項15の半導体要素において、前記半導体粒子がセレン化カドミウム、二硫化すず、二硫化モリブデンまたは二テルル化タングステンから形成される前記半導体要素。
【請求項17】
請求項15または請求項16の半導体要素において、前記半導体結合剤分子がポリ(ベンズアミドアゾベンゾ・フェナンスロリン)、メタノフラーレン[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステルまたはポリ[2,3−ジ(p−トリル)−キノキサリン−5,8−ジイル]である前記半導体要素。
【請求項18】
請求項12〜14のいずれかの項の半導体要素において、前記粒子および結合剤両方の伝導形式がp型である前記半導体要素。
【請求項19】
請求項18の半導体要素において、前記半導体粒子が有機半導体から形成される前記半導体要素。
【請求項20】
請求項19の半導体要素において、前記有機半導体がペンタセンまたはヘキサベンゾコロネンである前記半導体要素。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれかの項の半導体要素において、前記半導体結合剤の前記分子に共役結合構造が含まれる前記半導体要素。
【請求項22】
請求項21の半導体要素において、前記半導体マトリックスがポリチオフェンから形成される前記半導体要素。
【請求項23】
請求項22の半導体要素において、前記ポリチオフェンが3−ヘキシルチオフェンである前記半導体要素。
【請求項24】
請求項12〜23のいずれかの項の半導体要素において、前記第2半導体の前記分子が固着基または固着部分により前記第1半導体の隣接粒子に連結されている前記半導体要素。
【請求項25】
薄膜トランジスターであって、請求項12〜24のいずれかの項で規定された半導体要素を含む前記トランジスター。
【請求項26】
請求項25の薄膜トランジスターにおいて、前記半導体要素がソース電極およびドレイン電極と電気的に接触しているトランジスター・チャネルである前記トランジスター。
【請求項27】
有機発光ダイオードであって、請求項12〜24のいずれかの項で規定された半導体要素を含む前記ダイオード。
【請求項28】
電気装置であって、請求項25または請求項26の薄膜トランジスター、または請求項27の有機発光要素を含む前記装置。
【請求項29】
半導体要素を形成する方法であって、明細書本文および/または添付図面3および4を参照しながら、本明細書で実質的に説明された前記方法。
【請求項30】
半導体要素であって、明細書本文および/または添付図面4を参照しながら、本明細書で実質的に説明された前記半導体要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−41495(P2006−41495A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180203(P2005−180203)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】