説明

半導体装置およびこれを用いた半導体リレー

【課題】オン抵抗の増大を抑制し、信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】ユニポーラ型の化合物半導体素子(30a)と、この化合物半導体素子(30a)に並列的に外部接続されたバイパス用半導体素子(40a)とを具備し、バイパス用半導体素子(40a)の通電開始電圧が化合物半導体素子(30a)のソース・ドレイン方向の通電開始電圧よりも小さいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびこれを用いた半導体リレーに係り、特にSiCなどの化合物半導体を用いた半導体装置およびこれを用いた半導体リレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
入力信号に基づいて発光する発光素子と、発光素子からの光信号を受光して起電力を発生する受光素子を備え、この起電力によって出力用MOSFETをオン/オフする光結合型の半導体リレーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
半導体リレーは、オン抵抗が小さく、微小アナログ信号を制御することができ、小型であることから、種々の用途に用いられている。
【0003】
図11は、従来の半導体リレーの構成を示す図である。図11における半導体リレーは、入力端子T1、T2からの入力信号に応答して光信号を生成するLED等の発光素子110と、光信号を受光して起電力を発生するフォトダイオードアレイ121と、発生した起電力を充放電する充放電回路122とからなる光電変換部120と、充放電回路122からの電圧に対応して導通・遮断する2つの出力用のMOSFET131a、131bからなる出力素子130(130a、130b)とで構成されている。
【0004】
出力用のMOSFET130a、130bとしては、高耐圧でかつオン抵抗が小さいことから炭化珪素(SiC)を材料としたSiC−MOSFETが注目されている。
【0005】
この出力用のMOSFET130a、130bは、図12に示す構造となっている。すなわち、n型のSiC基板1上に形成されたn型エピタキシャル成長層2内にp型のウェル領域3を形成し、このp型のウェル領域3内にn型拡散層からなるソース領域4を形成したものである。そしてp型のウェル領域3表面に酸化シリコン層からなるゲート絶縁膜6を介してゲート電極7が形成され、p型のウェル領域3の表面領域はチャネル領域を構成している。5はソース電極、9はドレイン電極である。なおここでp型のウェル領域3とエピタキシャル成長層2との間にはボディダイオード132a、132bが形成されている。Rchはチャネル抵抗、Repiはエピタキシャル成長層の抵抗、Rsubは基板抵抗である。
【0006】
ここでドレイン側(+)からソース側(―)に電圧印加の際、ゲート電極7への電圧印加の有無により、チャネルを通じてMOSFETがターンオン乃至ターンオフする。しかし、ソース側(−)からドレイン側(+)に電圧印加の際ボディダイオード132a(132b)のpn接合に順方向電圧が印加されることになり、ゲート電極7への所定の電圧印加の有無にかかわらず、ボディダイオード順方向に電流が流れることとなる。SiCのような化合物半導体の場合、pn接合ダイオードの順方向に流れる電流により結晶欠陥が拡張するという問題がある。オン抵抗Ronは、エピタキシャル成長層の抵抗Repiに加え基板抵抗Rsubを含むため、SiC基板の場合、順方向に電流が流れると、結晶欠陥が拡張し、SiCMOSFETのオン抵抗の増加を招くことになる。このため対策が必要であった。
【0007】
ところで、直流を交流に変換するインバータや、交流を直流に変換するコンバータ等の電力変換装置においては、スイッチング素子が使用されている。このようなスイッチング素子として使用されるFETとして、SiCやGaNなどの化合物半導体で構成したものが提案されている。これらの化合物半導体は、バンドギャップエネルギーが大きく、しかも耐熱温度が高く高温動作に優れている。従って、これらの化合物半導体材料を使用した電界効果トランジスタは、素子の冷却に対するコストを低減することができ、また高耐圧化が可能となることから、電力変換装置などの電力用の半導体素子として使用されるようになってきている(特許文献2)。この特許文献2では、スイッチング素子としてのパワーFETの保護素子としてGaN系ショットキーダイオードなどの保護素子を同一基板上に集積化して用いている。
【0008】
また、窒化物系化合物半導体層を基板上に形成した電界効果トランジスタと、その保護素子としてのダイオードとを集積化して並列接続したものも提案されている(特許文献3)。窒化物系化合物半導体層の成膜時に形成された貫通転位に起因するリークを抑制し電力損失を低減するものである(段落0044)。この例では、電界効果トランジスタにダイオードを形成することで、基板に対して垂直な方向に形成される貫通転位を避けて電流が流れるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−204533号公報
【特許文献2】特開2003−229566号公報
【特許文献3】特開2007−266475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、特許文献1のような半導体リレーの出力用スイッチング素子すなわち出力素子としてSiCMOSFETを用いた場合、結晶欠陥の拡張により、更なるオン抵抗の増大をまねくことがあった。
また、特許文献2,3については、窒化物系化合物半導体装置において窒化物系化合物半導体素子に保護素子を並列接続する例が示されているが、多数回にわたるON/OFFの繰り返しに起因する経時的変化については言及がない。またこれらはいずれも集積化されており、依然として窒化物系化合物半導体装置にも電流が流れることになる。このような窒化物系化合物半導体装置の場合、基板に対して垂直な方向に形成される貫通転位を避けて電流が流れるようにしているが、実際には高抵抗のエピタキシャル成長層を電流が流れることになり、消費電力は依然として大きく、十分な消費電力の低減は困難であるという問題がある。
【0011】
また、保護素子を集積化しようとする場合、実際には、困難であり、特許文献2,3のように、基板の深い位置までコンタクト領域を形成しなければならなかったり、寄生素子の増大を招くことになる。さらにまた、実際には保護素子内の電界や通電時の電流による発熱の影響を受けることにもなる。
このような結晶欠陥の拡張は、程度の差はあるが、SiCMOSFETだけでなく、GaN系のFETなど化合物半導体を用いて形成したFETには同様に生じる場合がある。
本発明は、前記実情に鑑みてなされたもので、オン抵抗の増大を抑制し、信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本発明の半導体装置は、ユニポーラ型の化合物半導体素子と、この化合物半導体素子に並列的に外部接続されたバイパス用半導体素子とを具備した半導体装置であって、バイパス用半導体素子の通電開始電圧が化合物半導体素子のソースからドレイン方向の通電開始電圧よりも小さいことを特徴とする。
また本発明は、上記半導体装置において、バイパス用の半導体素子がシリコンダイオードであり、化合物半導体素子のドレインにこのシリコンダイオードのカソードを接続するとともに、化合物半導体素子のソースにシリコンダイオードのアノードを接続したことを特徴とする。
また本発明は、上記半導体装置において、バイパス用の半導体素子がシリコンMOSFETであり、化合物半導体素子のドレインにシリコンMOSFETのドレインを接続するとともに、化合物半導体素子のソースにシリコンMOSFETのソースを接続したことを特徴とする。
また本発明は、上記半導体装置において、前記バイパス用の半導体素子がシリコンカーバイドショットキーダイオードであり、前記化合物半導体素子のドレインにシリコンカーバイドショットキーダイオードのカソードを接続するとともに、前記化合物半導体素子のソースにシリコンカーバイドショットキーダイオードのアノードを接続したことを特徴とする。
また本発明は、上記半導体装置において、前記化合物半導体素子がシリコンカーバイド(SiC)FET、あるいはガリウムナイトライド(GaN)FETであることを特徴とする。
また本発明は、上記半導体装置において、前記化合物半導体素子のソースを共通に逆直列に接続されたことを特徴とする。
また本発明は、上記半導体装置において、入力信号により発光する発光素子と、その光を受けて発電するフォトダイオードアレイと、フォトダイオードアレイと並列に接続された充放電回路と、出力接点に相当する化合物半導体素子のゲート及びソースが前記フォトダイオードアレイの両端に接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この構成によれば、並列にバイパス用半導体素子が外部接続されバイパス用半導体素子の通電開始電圧が化合物半導体素子のソースからドレイン方向の通電開始電圧よりも小さいため、化合物半導体素子のソースからドレインに電流が流れる前にバイパス用半導体素子がオンし、その結果、ボディダイオードであるpn接合の通電による化合物半導体エピタキシャル層(あるいは基板)の結晶欠陥拡張を防ぐことができ、化合物半導体素子のオン抵抗増加を防止することができる。特に半導体リレーなどスイッチング回数の多いデバイスへの適用に際し、結晶欠陥の拡張を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1の半導体リレーを示す等価回路図
【図2】実施の形態1の半導体リレーで用いられる出力素子を示す等価回路図
【図3】(a)は実施の形態1のシリコンダイオードを外部接続した出力素子チップの接続例を示す説明図、(b)は(a)の等価回路図
【図4】実施の形態1の半導体リレーを示す一部破断斜視図
【図5】実施の形態1の半導体リレーを示す断面概要図
【図6】実施の形態1の半導体リレーで用いられる出力素子の変形例を示す等価回路図
【図7】実施の形態2の半導体リレーで用いられる出力素子を示す等価回路図
【図8】実施の形態3の半導体リレーで用いられる出力素子を示す等価回路図
【図9】電圧と通電電流との関係を測定した結果を示す図
【図10】ブレークダウン電圧とクロスオーバー電流ICROSSとの関係を測定した結果を示す図
【図11】従来例の半導体リレーを示す等価回路図
【図12】従来例の半導体リレーで用いられるシリコンカーバイドMOSFETチップの断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1の半導体リレーは、化合物半導体装置であるSiCMOSFETで構成される出力素子の保護素子として、シリコンダイオードを外部接続した出力素子を用いたことを特徴とするものである。そして、本実施の形態の半導体リレーは、入力信号により発光する発光素子と、その光を受けて発電するフォトダイオードアレイと、前記フォトダイオードアレイと並列に接続された充放電回路と、出力接点に相当する化合物半導体素子のゲート及びソースが前記フォトダイオードアレイの両端に接続されている。
【0016】
すなわち図1にこの半導体リレーの等価回路図、図2に出力素子の等価回路図、図3に出力素子の素子構成を示す。図3(a)は実施の形態1のシリコンダイオードを外部接続した出力素子チップの接続例を示す説明図、図3(b)は図3(a)の等価回路図である。このように、出力素子30(30a、30b)を構成するSiCMOSFET31aおよび31bのドレインDに、それぞれバイパス用のシリコンダイオード40aおよび40bのカソードKを接続するとともに、SiCMOSFETのソースSにシリコン(Si)ダイオードのアノードAを接続したものを逆直列となるように接続している。なおここでSiCMOSFET31aおよび31bにはそれぞれバイパス用のシリコンダイオード40aおよび40bを配線Lによって並列接続するように形成されている。ここではSiCMOSFET31aおよびシリコンダイオード40aの1ユニットのみを図示したが、同様のユニットが図1に示したように2つ配設されている。なおここでSiCMOSFET31aおよび31bにはそれぞれSiCボディダイオード32a、32bが並列接続するように内蔵されている。
【0017】
本実施の形態の半導体リレーは、図1に示すように、発光素子10と光電変換装置20と、出力素子30(30a、30b)とで構成されている。発光素子10は第1の入力端子T1と第2の入力端子T2を有するLEDで構成される。そして光電変換装置20は、発光素子10の発光に応じて起電力を発生し電圧を出力するフォトダイオードアレイ21と、フォトダイオードアレイ21の出力電圧を充放電する充放電回路22とから構成される。そして、出力素子30はフォトダイオードアレイ21の出力電圧をゲートに印加することによってオン/オフされる。ここで出力素子30はドレインとソースの間がオン、オフされる2つの出力素子としてのSiCMOSFET31a、31bで構成され、SiCMOSFET31a、31bにそれぞれSiダイオード40a、40bからなる保護素子が並列接続されている。ここでSiCボディダイオード32a、32bは内蔵ダイオードであり、図3(a)に示すようにp型のウェル領域3とエピタキシャル成長層2との間に形成されるpn接合ダイオードである。
【0018】
この出力素子30(30a、30b)は、図3(a)で左側に示すように、それぞれ所望の濃度のn型SiC基板1の表面にエピタキシャル成長によって形成されたn型エピタキシャル成長層2と、このn型エピタキシャル成長層2内に形成されたp型のウェル領域3を形成してなるものである。またこのp型のウェル領域3内には第1導電型の不純物領域としてn型領域であるソース領域4が形成されている。そしてこの上層にゲート絶縁膜6を介してゲート電極7が形成されている。このゲート電極7は隣接するp型のウェル領域3間にまたがるように形成されており、p型のウェル領域3の表面におけるチャネルの形成を制御している。さらにこの上層に絶縁膜8としての酸化シリコン膜を介してソース電極5が形成されている。この絶縁膜8は、ゲート電極7を覆うだけでなく、ソース領域4とのコンタクト領域を除く基板表面全体を被覆している。またn型SiC基板1の裏面側すなわち第2の面側にはドレイン電極9が形成されている。Pは基板表面を覆うポリイミド膜等からなる保護膜である。
【0019】
2つのSiCMOSFET31a、31bは、それぞれのゲートGがフォトダイオードアレイ21のアノード端子に接続され、それぞれのソースが互いに逆直列に接続された上でフォトダイオードアレイ21のカソード端子に接続される。また、SiCMOSFET31aのドレインは第1の出力端子T3に接続され、SiCMOSFET31bのドレインが第2の出力端子T4に接続されている。
【0020】
また図4、5に一部破断斜視図および断面概要図の一例を示す。この半導体リレーは、リードフレーム15上に、入力信号によって点灯・消灯する発光素子(LED)10と、この発光素子10からの光信号を受け、光電変換によって起電力を発生するフォトダイオードアレイ21と、このフォトダイオードアレイ21の発生する電力にもとづいて充放電する充放電回路22を含む光電変換装置20と、この光電変換装置20から出力電圧の供給を受ける、SiCMOSFET31a、31b(およびSiCボディダイオード32a、32b)からなる出力素子30とが実装されており、SiCMOSFETのゲート電圧が設定電圧値に到達するとSiCMOSFETが導通状態になり、負荷をONさせるように構成されている。ここでT1、T2は入力端子、T3、T4は出力端子、100は樹脂パッケージである。図5に示すように発光素子10からの光がフォトダイオードアレイ21に到達するように、発光素子10と光電変換装置20とは相対向して実装される。
【0021】
次に、このように構成された実施の形態1に係る半導体リレーの動作について説明する。
発光素子10は、第1及び第2の入力端子T1、T2から入力信号が入力されることによって発光し、光信号を生成する。フォトダイオードアレイ21は、発光素子10の光信号を受光してその両端で起電力を発生し、電圧を出力する。
【0022】
充放電回路22は、フォトダイオードアレイ21の出力電圧を充放電し、出力素子30(30a、30b)を構成するSiCMOSFET31a、31bのゲートに電圧を印加する。そして、SiCMOSFET31a、31bのゲートに印加されるフォトダイオードアレイ21の出力電圧がしきい値電圧Vthよりも大きくなると、SiCMOSFET31a、31bのドレイン・ソース間がオンになり、第1及び第2の出力端子T3、T4の間が導通して、リレーが閉じられる。
【0023】
一方、第1及び第2の入力端子T1、T2において入力信号がオフになると、光電変換装置20からの出力電圧がなくなり、出力素子30a、30bを構成するSiCMOSFET31a、31bのドレイン・ソース間がオフとなって、第1及び第2の出力端子T3、T4の間が遮断し、リレーが開放される。
【0024】
実施の形態1の半導体リレーに用いられる、出力素子30を構成する半導体素子がSiCMOSFETを逆直列接続してなり、各SiCMOSFETにシリコンダイオード40a、40bのチップがリードフレーム15を介して外部接続されているため、パッケージ100内部でSiCMOSFET内の寄生素子(ボディダイオード)の動作を抑制しつつ、バイパス素子が接続される。SiCボディダイオード32であるSiCpnダイオードの順方向降下電圧Vf(約3V)はシリコンダイオードのVf(約0.6V)より大きいため、ソース側(+)からドレイン側(−)に電圧印加を行うと、シリコンダイオードがなければSiCpnダイオード(SiCボディダイオード32a、32b)に流れていた電流はシリコンダイオード40a、40bにバイパスされることになる。その結果、 SiCボディpnダイオード通電によるSiCウエハ表面のエピタキシャル成長層(あるいは基板)の結晶欠陥拡張を防ぐことができ、SiCMOSFETのオン抵抗増加を防止することができる。このような繰り返し使用に際しても、リレー出力接点の信頼性を維持することが可能となる。
【0025】
またSiCMOSFET31a、31bがGaNFETである場合においても、GaNFET31aへの印加電圧が瞬間的にその耐圧以上となったとき、GaNFET31bにも電圧が印加されてしまう。ここでシリコンダイオード40bが接続されていなければ、GaNFET31bのソース−ドレイン間に電圧が印加される。ここで、ソース−ゲート間は距離が近いため、短絡しやすいという問題が生じることもあった。しかし本実施の形態の出力素子30によれば、シリコンダイオードをGaNFETの保護素子として並列接続しているため、シリコンダイオードに電流が流れ、ソース−ゲート間の短絡をも防ぐことが可能となる。
【0026】
上述したように、このSiCMOSFET31a、31bには保護素子40a、40bが接続されているため、繰り返しボディダイオード通電による結晶欠陥の拡張を抑制し、出力素子として、信頼性向上が可能となるという効果に加え、この半導体リレーは以下のような特徴がある。
1)保護素子として外部接続のシリコンダイオードを用いるため、簡単な構成で信頼性の高い半導体装置製造が容易で光結合を用いているため、入出力間が電気的に完全に分離できる。
2)負荷側のスイッチとして電力用のSiCMOSFETを用いているので、チャタリングや機械的ノイズが発生しない。ON状態で直線性が高いため、アナログ信号の制御が可能である。
3)出力回路がFETを逆直列で構成されているため、交流・直流の両用に適用可能である。
【0027】
なお前記実施の形態では出力素子として、2個のSiCMOSFET31a、31bを逆接続したものを用いたが、図6に示すように1個のSiCMOSFET31からなる出力素子30を用い、これに1個のSiダイオード40を並列接続したものを用いてもよい。
【0028】
(実施の形態2)
本実施の形態2の半導体装置として、図7に示すように、保護素子50を構成するバイパス用の半導体素子がSiMOSFET51で構成されており、出力素子30のSiCMOSFET31のドレインにSiMOSFET51のドレインを接続するとともに、SiCMOSFET31のソースにSiMOSFET51のソースを接続したことを特徴とする。
【0029】
この構成によっても、ソース→ドレイン方向に並列に接続されることになるSiCpn(ボディ)ダイオード32とSiMOSFET51のボディダイオード52とを比較すると、SiCpn(ボディ)ダイオード32の順方向降下電圧Vf(約3V)>SiMOSFET51のボディダイオード52のVf(約0.6V)である。
【0030】
従って、ソース側(+)→ドレイン側(−)と電圧印加の際、シリコンダイオード52がなければSiCpn(ボディ)ダイオード32に流れていた電流は、SiMOSFET51のボディダイオード52にバイパスされることになる。
【0031】
その結果、SiCpn(ボディ)ダイオード通電によるSiCエピタキシャル成長層および基板の結晶欠陥拡張を防ぐことができ、SiCMOSFETのオン抵抗増加を防止できる。
【0032】
(実施の形態3)
本実施の形態3の半導体装置として、図8に示すように、保護素子を構成するバイパス用の半導体素子がシリコンカーバイド(SiC)ショットキーダイオード60であり、SiCMOSFET31のドレインにSiCショットキーダイオード60のカソードを接続するとともに、SiCMOSFET31のソースにSiCショットキーダイオード60のアノードを接続したことを特徴とする。
【0033】
ソース→ドレイン方向に並列に接続されることになるSiCpn(ボディ)ダイオード32とSiCショットキーダイオード60において、電圧と通電電流との関係を測定した結果を図9に示す。通電電流がICROSS以下の時、図9に示すようにSiCpn(ボディ)ダイオード32(曲線a)の順方向降下電圧Vf>SiCショットキーダイオード60(曲線b)のVfとなる。またブレークダウン電圧とクロスオーバー電流ICROSSとの関係を測定した結果を図10に示す。図10に示すように同じ印加電圧においてSiCpnダイオードの通電電流の方が大きくなる領域R1とSiCショットキーダイオードの通電電流の方が大きくなる領域R2とがあることがわかる。
【0034】
従って、通電電流がICROSS以下であれば、ソース側(+)→ドレイン側(−)と電圧印加の際、SiCショットキダイオード60がなければSiCpn(ボディ)ダイオード32に流れていた電流はSiCショットキーダイオード60にバイパスされることになる。
【0035】
その結果、 SiCpnダイオード通電によるSiCエピタキシャル層(あるいは基板)の結晶欠陥拡張を防ぐことができ、SiCFETのオン抵抗増加を防止できる。
また、前記実施の形態1および2のSiダイオード、SiMOSFETに比べ、SiCは高温に強い特性も生かすことができる。
【0036】
なお、実施の形態1乃至3ではSiCMOSFETである場合について説明したが、ガリウムナイトライド(GaN)系FETなど、他の化合物半導体で構成したFETにも適用可能である。
これによりGaNFETのゲート破壊も防止できる。一般的にゲート−ドレイン間についての耐圧対策は施されているが、ゲート−ソース間は耐圧が低いため、ソース−ドレイン間への電圧印加には弱いという課題があったのに対し、本実施の形態によればゲート破壊防止を図ることができる。
【0037】
また、化合物半導体素子のソースを共通に逆直列に接続することで、瞬間的に一方のGaN系MOSFETに耐圧を越えた電圧が印加されたとき、他方のGaN系MOSFETにも電圧が印加され、保護素子であるダイオードがなければソース・ゲート間の耐圧を越えてしまうことがあったが、本発明のようにバイパス用の保護素子を外部接続することで破壊を防止することができる。
また、本発明は、SiCMOSFETあるいはGaNMOSFETなどのFETに限定されることなく、化合物半導体を用いたショットキーゲートFETなど、化合物半導体を用いたFETに適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 基板
2 エピタキシャル成長層
3、3s p型のウェル領域
4 ソース領域
5 ソース電極
6 ゲート絶縁膜
7 ゲート電極
8 層間絶縁膜
9 ドレイン電極
T1、T2 入力端子
T3、T4 出力端子
10 発光素子
15 リードフレーム
20 光電変換装置
21 フォトダイオードアレイ
22 充放電回路
30、30a、30b 出力素子
31、31a、31b SiCMOSFET
32、32a、32b SiCボディダイオード(内蔵)
40、40a、40b Siダイオード(保護素子)
50 保護素子
51 SiMOSFET
52 ボディダイオード(内蔵)
60 シリコンカーバイド(SiC)ショットキーダイオード
100 パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニポーラ型の化合物半導体素子と、前記化合物半導体素子に並列的に外部接続されたバイパス用半導体素子とを具備し、
前記バイパス用半導体素子の通電開始電圧が前記化合物半導体素子のソースからドレイン方向の通電開始電圧よりも小さい半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記バイパス用の半導体素子がシリコンダイオードであり、
前記化合物半導体素子のドレインに前記シリコンダイオードのカソードを接続するとともに、
前記化合物半導体素子のソースに前記シリコンダイオードのアノードを接続した半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記バイパス用の半導体素子がシリコン電界効果トランジスタ(SiMOSFET)であり、
前記化合物半導体素子のドレインにSiMOSFETのドレインを接続するとともに、
前記化合物半導体素子のソースにSiMOSFETのソースを接続した半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記バイパス用の半導体素子がシリコンカーバイド(SiC)ショットキーダイオードであり、
前記化合物半導体素子のドレインにSiCショットキーダイオードのカソードを接続するとともに、
前記化合物半導体素子のソースにSiCショットキーダイオードのアノードを接続した半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記化合物半導体素子がシリコンカーバイド電界効果トランジスタ(SiCFET)、あるいはガリウムナイトライド電界効果トランジスタ(GaNFET)である半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置であって、
前記化合物半導体素子のソースを共通に逆直列に接続された半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置を複数個と、
入力信号により発光する発光素子と、その光を受けて発電するフォトダイオードアレイと、
前記フォトダイオードアレイと並列に接続された充放電回路と、
前記出力接点に相当する化合物半導体素子のゲート及びソースが前記フォトダイオードアレイの両端に接続された半導体リレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−254013(P2011−254013A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128095(P2010−128095)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】