半導体装置およびその製造方法
【課題】エアギャップ構造において酸化に起因する配線信頼性劣化を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る半導体装置は、基板1上に形成された第1配線5と、第1配線5の上層に形成され、第1配線5との間にエアギャップ20を介在させて配置された第2配線16と、エアギャップ20内に形成され、第1配線5と第2配線16とを接続するカーボンナノチューブ11とを有する。
【解決手段】本実施形態に係る半導体装置は、基板1上に形成された第1配線5と、第1配線5の上層に形成され、第1配線5との間にエアギャップ20を介在させて配置された第2配線16と、エアギャップ20内に形成され、第1配線5と第2配線16とを接続するカーボンナノチューブ11とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、上下の配線がエアギャップを介在させて配置された半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化および高性能化に伴い、素子の微細化および多層構造化が進んでいる。増大する配線遅延を低減するためには、配線抵抗および容量に影響を与えるパラメータ(配線膜厚)、配線容量に影響を与えるパラメータ(層間膜厚、比誘電率)および配線抵抗に影響を与えるパラメータ(配線抵抗率)などを適切な割合でスケーリングする必要がある。
【0003】
配線材料は、大きな電圧降下なく電気信号を伝播するために、抵抗率が低いことが望ましい。従来広く用いられているAlに対し、抵抗率が低いものはAu,Cu,Agなどが挙げられる。なかでも、Cuは、Alよりも融点が高く、エレクトロマイグレーション現象の活性化エネルギーが大きいことからもAlに比べて信頼性が向上することが報告されている。
【0004】
しかし、Cuを微細配線に使用するには、ドライエッチング法において、下地となる絶縁膜に対して高い選択比でCuをエッチングする適当なガスが存在しないため、一般的にダマシン(Damascene)法によって埋め込み配線を形成する。特に、接続孔と配線とを同時に埋め込むデュアルダマシン(dual damascene)法は、リソグラフィーにおけるアライメントマージンの拡大や工程短縮化の観点から有用である。
【0005】
世代が進むに従い、配線遅延の影響が大きくなるなかで、層間膜として低誘電率材料(low−k材)が使用されており、究極的には、層間膜を可能な限り除去した、エアギャップ(air gap)による集積技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−183730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エアギャップ構造を用いた場合には、バリアメタルが完全に露出する。バリアメタルとして使用されるTaNは、非常に活性であり、空気中に露出すると容易に酸化が進む。バリアメタルがすべて酸化してしまうと、アモルファス状の酸化膜に変化し、耐酸化性が著しく劣化する。最終的には、Cuが酸化されてしまい、CuはCuイオンとなる。これにより、後の層間膜形成時の熱によって、銅配線中を容易にCuイオンが拡散し、ボイドを発生させることになる。
【0007】
このように、エアギャップを採用した場合には、バリアメタルおよび銅の酸化によって、配線信頼性を劣化させる恐れがある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアギャップ構造において酸化に起因する配線信頼性劣化を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の半導体装置は、基板上に形成された第1配線と、前記第1配線の上層に形成され、前記第1配線との間にエアギャップを介在させて配置された第2配線と、前記エアギャップ内に形成され、前記第1配線と前記第2配線とを接続するカーボンナノチューブとを有する。
【0010】
上記の本発明では、第1配線と第2配線の間には、エアギャップが設けられている。これにより、配線間の比誘電率は空気に近い値となる。エアギャップ内には、第1配線と第2配線を繋ぐカーボンナノチューブが形成されている。カーボンナノチューブは、酸素による変化の少ない材料であるため、酸化により腐食しにくい。
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の半導体装置の製造方法は、基板上に第1配線を形成する工程と、前記第1配線の上層にギャップ用絶縁膜を形成する工程と、前記ギャップ用絶縁膜に接続孔を形成する工程と、前記接続孔にカーボンナノチューブを埋め込む工程と、前記ギャップ用絶縁膜上に前記カーボンナノチューブに接続する第2配線を形成する工程と、前記ギャップ用絶縁膜を除去する工程とを有する。
【0012】
上記の本発明では、ギャップ用絶縁膜の接続孔にカーボンナノチューブを埋め込み、第2配線を形成した後、ギャップ用絶縁膜を除去する。ギャップ用絶縁膜の除去により、エアギャップが形成される。これにより、第1配線と第2配線とがカーボンナノチューブにより接続され、エアギャップを有する半導体装置が製造される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体装置およびその製造方法によれば、エアギャップ構造において酸化に起因する配線信頼性劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【0016】
シリコンからなる基板1には、不図示のトランジスタ等の素子が形成されている。基板1上には、層間絶縁膜2が形成されている。層間絶縁膜2は、例えば、酸化シリコン膜よりも誘電率の低い低誘電率膜であることが好ましい。このような低誘電率膜としては、アリルエーテル系樹脂あるいはSiOCなどがある。低誘電率膜は、多孔質構造のものもある。層間絶縁膜2は、異なる低誘電率膜の積層膜であってもよい。また、層間絶縁膜2は、酸化シリコン膜、あるいはフッ素含有の酸化シリコン膜であってもよい。アリルエーテル系樹脂などの低誘電率膜は、酸化シリコン膜等に比べてヤング率が低く、比較的疎な膜である。
【0017】
層間絶縁膜2には、バリアメタル3および第1導電層4からなる第1配線5が形成されている。バリアメタル3は、TaあるいはTaNからなる。なお、バリアメタル3は、マンガン化合物膜であってもよい。マンガン化合物膜は、例えば、CuMnをアニール処理することによって形成される。第1導電層4は、例えばCuである。
【0018】
層間絶縁膜2および第1配線5上には、保護膜7が形成されている。保護膜7は、第1導電層4を構成するCuの拡散防止、およびCuの酸化防止のために設けられている。保護膜7は、例えばSiCあるいはSiCNからなる。
【0019】
保護膜7上には、エアギャップ20を介して保護膜9が形成されている。保護膜9上には、層間絶縁膜12が形成されている。層間絶縁膜12内には、バリアメタル14および第2導電層15からなる第2配線16が形成されている。第2配線16および層間絶縁膜12上には、保護膜17が形成されている。
【0020】
保護膜9,17は、Cuの拡散防止、および第2配線16の酸化防止のために設けられている。層間絶縁膜12は、例えば、上記した層間絶縁膜2と同様の材料からなる。バリアメタル14は、TaあるいはTaNからなる。なお、バリアメタル14は、マンガン化合物膜であってもよい。第2導電層15は、例えばCuである。
【0021】
第1配線5の上面には、触媒層6が形成されている。触媒層6上には、カーボンナノチューブ11が形成されている。第1配線5および第2配線16は、カーボンナノチューブ11を介して電気的に接続されている。
【0022】
触媒層6は、カーボンナノチューブ11の成長核となる。触媒層6は、例えばPdからなる。なお、触媒層6は、Co,Ni、Fe、Mo等の金属あるいはこれらを含む金属間化合物であってもよい。
【0023】
カーボンナノチューブ11は、炭素原子がsp2結合した6員環よりなるグラファイトのシートを巻いた円筒状の形状をしており、内部には長手方向に沿って空洞が形成される。カーボンナノチューブ11は、第1配線5および第2配線16を接続するプラグとして機能し、エアギャップ20に露出している。カーボンナノチューブ11は、大気に露呈しても、変化する可能性が少ない安定な材料である。このため、カーボンナノチューブ11の酸化による腐食の可能性は低い。
【0024】
また、カーボンナノチューブ11は、断線することなく流すことができる最大電流密度が1平方センチあたり100万アンペアと銅配線より100倍以上大きいという特徴を有している。また、熱伝導についても伝導率で銅の10倍高い。電気抵抗の観点からは、カーボンナノチューブ内を流れる電子は、不純物や格子振動(フォノン)との散乱現象のない、いわゆる弾道電子輸送を実現することができる。さらに、カーボンナノチューブの直径は、0.4nm〜100nmまで広範囲で、その直径は自己組織的に形成されることから1本の長さ方向で揺らぎが極めて少ないという特徴を有する。これらの特徴から、カーボンナノチューブ11をプラグとして適用した場合には、高電流密度に起因するマイグレーション現象が少なく、高信頼でかつ極めて微細なプラグを実現できる。
【0025】
上記の本実施形態に係る半導体装置では、カーボンナノチューブ11の周囲をエアギャップ20としている。これにより、配線間の比誘電率を空気に近い値にまで下げることができ、配線容量を低減することができる。このエアギャップ20に露出するプラグとして、カーボンナノチューブ11を用いることにより、酸化による腐食を防止することができる。これにより、配線信頼性を向上させることができる。また、第1配線5および第2配線16をカーボンナノチューブ11で接続することにより、銅を用いた場合に比べて電気抵抗を低くすることができる。また、第1配線5および第2配線16はエアギャップ20に接触していないことから、配線の酸化による腐食を防止することができる。
【0026】
次に、上記の本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図2〜図6を参照して説明する。
【0027】
図2(a)に示すように、基板1に不図示のトランジスタ等の素子を形成した後、基板1上に層間絶縁膜2を形成する。層間絶縁膜2の形成では、例えば、上記した低誘電率膜をCVD法あるいは塗布法により形成する。続いて、層間絶縁膜2に配線溝を形成し、当該配線溝内にバリアメタル3および第1導電層4からなる第1配線5を形成する。第1配線5の形成では、配線溝内を含む全面にバリアメタル3および第1導電層4を形成した後、層間絶縁膜2上の不要な第1導電層4およびバリアメタル3をCMPにより除去する。バリアメタル3として、例えばスパッタリング法によりTaあるいはTaNを形成する。第1導電層4として、例えばスパッタリング法により銅のシード層を形成した後、めっき法によりCuを形成する。
【0028】
次に、図2(b)に示すように、第1配線5上に触媒層6を形成する。例えば、無電解めっき法により、Pdからなる触媒層6を第1配線5上に選択的に形成する。無電解めっき法を用いることにより、第1配線5上のみに均一な膜厚の触媒層6を形成することができる。
【0029】
次に、図3(a)に示すように、触媒層6および層間絶縁膜2上に、保護膜7、ギャップ用絶縁膜8、保護膜9を順に形成する。保護膜7として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。ギャップ用絶縁膜8として、例えばCVD法により酸化シリコン膜を形成する。保護膜9として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、保護膜7、ギャップ用絶縁膜8および保護膜9に、触媒層6に達する接続孔10を形成する。例えば、保護膜9上にリソグラフィ技術によりレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いて保護膜9、ギャップ用絶縁膜8および保護膜7をエッチングすることにより、接続孔10が形成される。
【0031】
次に、図4(a)に示すように、触媒層6を成長核としてカーボンナノチューブ11を成長させる。例えば、熱CVD法、プラズマCVD法によりカーボンナノチューブ11を形成する。より詳細には、熱CVD法を用いて、アセチレン、メタン等の炭化水素系ガスを原料ガスとし、水素ガスをキャリアガスとして、加熱温度を400℃〜900℃、好ましくは400℃〜600℃、圧力を1kPaに設定し、かつ基板1に−400Vのバイアスをかけて層厚方向に電界を発生させる。これにより、カーボンナノチューブ11が層厚方向に成長して接続孔10を充填する。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、接続孔10からはみ出した余分なカーボンナノチューブ11を除去する。
【0033】
次に、図5(a)に示すように、カーボンナノチューブ11および保護膜9上に、例えば、CVD法あるいは塗布法により上記した低誘電率材料からなる層間絶縁膜12を形成する。続いて、リソグラフィ技術によりレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて層間絶縁膜12をエッチングして、層間絶縁膜12に配線溝13を形成する。その後、レジストマスクを除去する。
【0034】
次に、図5(b)に示すように、当該配線溝13内を含む全面に、バリアメタル14および第2導電層15を形成する。バリアメタル14として、例えばスパッタリング法によりTaあるいはTaNを形成する。第2導電層15として、例えばスパッタリング法により銅のシード層を形成した後、めっき法によりCuを形成する。
【0035】
次に、図6(a)に示すように、層間絶縁膜12上の不要な第2導電層15およびバリアメタル14をCMPにより除去する。これにより、バリアメタル14および第2導電層15からなる第2配線16が層間絶縁膜12内に形成される。
【0036】
次に、図6(b)に示すように、第2配線16および層間絶縁膜12上に、保護膜17を形成する。保護膜17として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。
【0037】
続いて、HFなどの薬液に基板1を浸漬することによって、ギャップ用絶縁膜8を除去して、エアギャップ20を形成する(図1参照)。
【0038】
以降の工程としては、上記の工程を繰り返すことにより、多層配線構造の半導体装置が完成する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、第1配線5と第2配線16とがカーボンナノチューブ11により接続され、エアギャップ20を有する半導体装置を製造することができる。その結果、容量を低減し、かつ配線信頼性を向上させた半導体装置を製造することができる。
【0040】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る半導体装置の断面図である。本実施形態では、触媒層6は、プラグの領域のみ、すなわちカーボンナノチューブ11の下面にのみ触媒層6が形成されている。
【0041】
シリコンからなる基板1には、不図示のトランジスタ等の素子が形成されている。基板1上には、層間絶縁膜2が形成されている。層間絶縁膜2の材料は、第1実施形態で説明した通りである。
【0042】
層間絶縁膜2には、バリアメタル3および第1導電層4からなる第1配線5が形成されている。バリアメタル3は、TaあるいはTaNからなる。なお、バリアメタル3は、マンガン化合物膜であってもよい。マンガン化合物膜は、例えば、CuMnをアニール処理することによって形成される。第1導電層4は、例えばCuである。
【0043】
層間絶縁膜2および第1配線5上には、保護膜7が形成されている。保護膜7は、第1導電層4を構成するCuの拡散防止、およびCuの酸化防止のために設けられている。保護膜7は、例えばSiCあるいはSiCNからなる。
【0044】
保護膜7上には、エアギャップ20を介して保護膜9が形成されている。保護膜9上には、層間絶縁膜12が形成されている。層間絶縁膜12内には、バリアメタル14および第2導電層15からなる第2配線16が形成されている。第2配線16および層間絶縁膜12上には、保護膜17が形成されている。
【0045】
保護膜9,17は、Cuの拡散防止、および第2配線16の酸化防止のために設けられている。層間絶縁膜12は、例えば、上記した層間絶縁膜2と同様の材料からなる。バリアメタル14は、TaあるいはTaNからなる。なお、バリアメタル14は、マンガン化合物膜であってもよい。第2導電層15は、例えばCuである。
【0046】
第1配線5の上面であって、プラグとなる部位のみに、触媒層6が形成されている。触媒層6上には、カーボンナノチューブ11が形成されている。第1配線5および第2配線16は、カーボンナノチューブ11を介して電気的に接続されている。
【0047】
触媒層6は、カーボンナノチューブ11の成長核となる。触媒層6は、例えばPdからなる。なお、触媒層6は、Co,Ni、Fe、Mo等の金属あるいはこれらを含む金属間化合物であってよい。
【0048】
カーボンナノチューブ11は、炭素原子がsp2結合した6員環よりなるグラファイトのシートを巻いた円筒状の形状をしており、内部には長手方向に沿って空洞が形成される。カーボンナノチューブ11は、第1配線5および第2配線16を接続するプラグとして機能し、エアギャップ20に露出している。カーボンナノチューブ11は、大気に露呈しても、変化する可能性が少ない安定な材料である。このため、カーボンナノチューブ11の酸化による腐食の可能性は低い。カーボンナノチューブ11のその他の特性については、第1実施形態で説明した通りである。
【0049】
上記の本実施形態に係る半導体装置では、カーボンナノチューブ11の周囲をエアギャップ20としている。これにより、配線間の比誘電率を空気に近い値にまで下げることができ、配線容量を低減することができる。このエアギャップ20に露出するプラグとして、カーボンナノチューブ11を用いることにより、酸化による腐食を防止することができる。これにより、配線信頼性を向上させることができる。また、第1配線5および第2配線16をカーボンナノチューブ11で接続することにより、銅を用いた場合に比べて電気抵抗を低くすることができる。また、第1配線5および第2配線16はエアギャップ20に接触していないことから、配線の酸化による腐食を防止することができる。
【0050】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図8〜図12を参照して説明する。
【0051】
図8(a)に示すように、基板1に不図示のトランジスタ等の素子を形成した後、基板1上に層間絶縁膜2を形成する。層間絶縁膜2の形成では、例えば、上記した低誘電率膜をCVD法あるいは塗布法により形成する。続いて、層間絶縁膜2に配線溝を形成し、当該配線溝内にバリアメタル3および第1導電層4からなる第1配線5を形成する。第1配線5の形成では、配線溝内を含む全面にバリアメタル3および第1導電層4を形成した後、層間絶縁膜2上の不要な第1導電層4およびバリアメタル3をCMPにより除去する。バリアメタル3として、例えばスパッタリング法によりTaあるいはTaNを形成する。第1導電層4として、例えばスパッタリング法により銅のシード層を形成した後、めっき法によりCuを形成する。
【0052】
次に、図8(b)に示すように、第1配線5および層間絶縁膜2上に、保護膜7、ギャップ用絶縁膜8、保護膜9を順に形成する。保護膜7として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。ギャップ用絶縁膜8として、例えばCVD法により酸化シリコン膜を形成する。保護膜9として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。
【0053】
次に、図9(a)に示すように、保護膜7、ギャップ用絶縁膜8および保護膜9に、第1配線5に達する接続孔10を形成する。例えば、保護膜9上にリソグラフィ技術によりレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いて保護膜9、ギャップ用絶縁膜8および保護膜7をエッチングすることにより、接続孔10が形成される。
【0054】
次に、図9(b)に示すように、接続孔10の底部に露出した第1配線5上に触媒層6を形成する。例えば、無電解めっき法により、Pdからなる触媒層6を第1配線5上に選択的に形成する。無電解めっき法を用いることにより、接続孔10の底部のみに均一な膜厚の触媒層6を形成することができる。
【0055】
次に、図10(a)に示すように、触媒層6を成長核としてカーボンナノチューブ11を成長させる。例えば、熱CVD法、プラズマCVD法によりカーボンナノチューブ11を形成する。より詳細には、熱CVD法を用いて、アセチレン、メタン等の炭化水素系ガスを原料ガスとし、水素ガスをキャリアガスとして、加熱温度を400℃〜900℃、好ましくは400℃〜600℃、圧力を1kPaに設定し、かつ基板1に−400Vのバイアスをかけて層厚方向に電界を発生させる。これにより、カーボンナノチューブ11が層厚方向に成長して接続孔10を充填する。
【0056】
次に、図10(b)に示すように、CMP法により、接続孔10からはみ出した余分なカーボンナノチューブ11を除去する。
【0057】
次に、図11(a)に示すように、カーボンナノチューブ11および保護膜9上に、例えば、CVD法あるいは塗布法により上記した低誘電率材料からなる層間絶縁膜12を形成する。続いて、リソグラフィ技術によりレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて層間絶縁膜12をエッチングして、層間絶縁膜12に配線溝13を形成する。その後、レジストマスクを除去する。
【0058】
次に、図11(b)に示すように、当該配線溝13内を含む全面に、バリアメタル14および第2導電層15を形成する。バリアメタル14として、例えばスパッタリング法によりTaあるいはTaNを形成する。第2導電層15として、例えばスパッタリング法により銅のシード層を形成した後、めっき法によりCuを形成する。
【0059】
次に、図12(a)に示すように、層間絶縁膜12上の不要な第2導電層15およびバリアメタル14をCMPにより除去する。これにより、バリアメタル14および第2導電層15からなる第2配線16が層間絶縁膜12内に形成される。
【0060】
次に、図12(b)に示すように、第2配線16および層間絶縁膜12上に、保護膜17を形成する。保護膜17として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。
【0061】
続いて、HFなどの薬液に基板1を浸漬することによって、ギャップ用絶縁膜8を除去して、エアギャップ20を形成する(図7参照)。
【0062】
以降の工程としては、上記の工程を繰り返すことにより、多層配線構造の半導体装置が完成する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、第1配線5と第2配線16とがカーボンナノチューブ11により接続され、エアギャップ20を有する半導体装置を製造することができる。その結果、容量を低減し、かつ配線信頼性を向上させた半導体装置を製造することができる。
【0064】
本発明は、上記の実施形態の説明に限定されない。
本実施形態で挙げた材料、製造条件は一例であり、これに限定されるものではない。また、多層配線構造のうち、1つの層のみエアギャップ20を適用しても、複数の層にエアギャップ20を適用してもよい。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図2】第1実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図3】第1実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図4】第1実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図5】第1実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図6】第1実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図7】第2実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図8】第2実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図9】第2実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図10】第2実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図11】第2実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図12】第2実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1…基板、2…層間絶縁膜、3…バリアメタル、4…第1導電層、5…第1配線、6…触媒層、7…保護膜、8…ギャップ用絶縁膜、9…保護膜、10…接続孔、11…カーボンナノチューブ、12…層間絶縁膜、13…配線溝、14…バリアメタル、15…第2導電層、16…第2配線、17…保護膜、20…エアギャップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、特に、上下の配線がエアギャップを介在させて配置された半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化および高性能化に伴い、素子の微細化および多層構造化が進んでいる。増大する配線遅延を低減するためには、配線抵抗および容量に影響を与えるパラメータ(配線膜厚)、配線容量に影響を与えるパラメータ(層間膜厚、比誘電率)および配線抵抗に影響を与えるパラメータ(配線抵抗率)などを適切な割合でスケーリングする必要がある。
【0003】
配線材料は、大きな電圧降下なく電気信号を伝播するために、抵抗率が低いことが望ましい。従来広く用いられているAlに対し、抵抗率が低いものはAu,Cu,Agなどが挙げられる。なかでも、Cuは、Alよりも融点が高く、エレクトロマイグレーション現象の活性化エネルギーが大きいことからもAlに比べて信頼性が向上することが報告されている。
【0004】
しかし、Cuを微細配線に使用するには、ドライエッチング法において、下地となる絶縁膜に対して高い選択比でCuをエッチングする適当なガスが存在しないため、一般的にダマシン(Damascene)法によって埋め込み配線を形成する。特に、接続孔と配線とを同時に埋め込むデュアルダマシン(dual damascene)法は、リソグラフィーにおけるアライメントマージンの拡大や工程短縮化の観点から有用である。
【0005】
世代が進むに従い、配線遅延の影響が大きくなるなかで、層間膜として低誘電率材料(low−k材)が使用されており、究極的には、層間膜を可能な限り除去した、エアギャップ(air gap)による集積技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−183730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エアギャップ構造を用いた場合には、バリアメタルが完全に露出する。バリアメタルとして使用されるTaNは、非常に活性であり、空気中に露出すると容易に酸化が進む。バリアメタルがすべて酸化してしまうと、アモルファス状の酸化膜に変化し、耐酸化性が著しく劣化する。最終的には、Cuが酸化されてしまい、CuはCuイオンとなる。これにより、後の層間膜形成時の熱によって、銅配線中を容易にCuイオンが拡散し、ボイドを発生させることになる。
【0007】
このように、エアギャップを採用した場合には、バリアメタルおよび銅の酸化によって、配線信頼性を劣化させる恐れがある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアギャップ構造において酸化に起因する配線信頼性劣化を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の半導体装置は、基板上に形成された第1配線と、前記第1配線の上層に形成され、前記第1配線との間にエアギャップを介在させて配置された第2配線と、前記エアギャップ内に形成され、前記第1配線と前記第2配線とを接続するカーボンナノチューブとを有する。
【0010】
上記の本発明では、第1配線と第2配線の間には、エアギャップが設けられている。これにより、配線間の比誘電率は空気に近い値となる。エアギャップ内には、第1配線と第2配線を繋ぐカーボンナノチューブが形成されている。カーボンナノチューブは、酸素による変化の少ない材料であるため、酸化により腐食しにくい。
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の半導体装置の製造方法は、基板上に第1配線を形成する工程と、前記第1配線の上層にギャップ用絶縁膜を形成する工程と、前記ギャップ用絶縁膜に接続孔を形成する工程と、前記接続孔にカーボンナノチューブを埋め込む工程と、前記ギャップ用絶縁膜上に前記カーボンナノチューブに接続する第2配線を形成する工程と、前記ギャップ用絶縁膜を除去する工程とを有する。
【0012】
上記の本発明では、ギャップ用絶縁膜の接続孔にカーボンナノチューブを埋め込み、第2配線を形成した後、ギャップ用絶縁膜を除去する。ギャップ用絶縁膜の除去により、エアギャップが形成される。これにより、第1配線と第2配線とがカーボンナノチューブにより接続され、エアギャップを有する半導体装置が製造される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導体装置およびその製造方法によれば、エアギャップ構造において酸化に起因する配線信頼性劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【0016】
シリコンからなる基板1には、不図示のトランジスタ等の素子が形成されている。基板1上には、層間絶縁膜2が形成されている。層間絶縁膜2は、例えば、酸化シリコン膜よりも誘電率の低い低誘電率膜であることが好ましい。このような低誘電率膜としては、アリルエーテル系樹脂あるいはSiOCなどがある。低誘電率膜は、多孔質構造のものもある。層間絶縁膜2は、異なる低誘電率膜の積層膜であってもよい。また、層間絶縁膜2は、酸化シリコン膜、あるいはフッ素含有の酸化シリコン膜であってもよい。アリルエーテル系樹脂などの低誘電率膜は、酸化シリコン膜等に比べてヤング率が低く、比較的疎な膜である。
【0017】
層間絶縁膜2には、バリアメタル3および第1導電層4からなる第1配線5が形成されている。バリアメタル3は、TaあるいはTaNからなる。なお、バリアメタル3は、マンガン化合物膜であってもよい。マンガン化合物膜は、例えば、CuMnをアニール処理することによって形成される。第1導電層4は、例えばCuである。
【0018】
層間絶縁膜2および第1配線5上には、保護膜7が形成されている。保護膜7は、第1導電層4を構成するCuの拡散防止、およびCuの酸化防止のために設けられている。保護膜7は、例えばSiCあるいはSiCNからなる。
【0019】
保護膜7上には、エアギャップ20を介して保護膜9が形成されている。保護膜9上には、層間絶縁膜12が形成されている。層間絶縁膜12内には、バリアメタル14および第2導電層15からなる第2配線16が形成されている。第2配線16および層間絶縁膜12上には、保護膜17が形成されている。
【0020】
保護膜9,17は、Cuの拡散防止、および第2配線16の酸化防止のために設けられている。層間絶縁膜12は、例えば、上記した層間絶縁膜2と同様の材料からなる。バリアメタル14は、TaあるいはTaNからなる。なお、バリアメタル14は、マンガン化合物膜であってもよい。第2導電層15は、例えばCuである。
【0021】
第1配線5の上面には、触媒層6が形成されている。触媒層6上には、カーボンナノチューブ11が形成されている。第1配線5および第2配線16は、カーボンナノチューブ11を介して電気的に接続されている。
【0022】
触媒層6は、カーボンナノチューブ11の成長核となる。触媒層6は、例えばPdからなる。なお、触媒層6は、Co,Ni、Fe、Mo等の金属あるいはこれらを含む金属間化合物であってもよい。
【0023】
カーボンナノチューブ11は、炭素原子がsp2結合した6員環よりなるグラファイトのシートを巻いた円筒状の形状をしており、内部には長手方向に沿って空洞が形成される。カーボンナノチューブ11は、第1配線5および第2配線16を接続するプラグとして機能し、エアギャップ20に露出している。カーボンナノチューブ11は、大気に露呈しても、変化する可能性が少ない安定な材料である。このため、カーボンナノチューブ11の酸化による腐食の可能性は低い。
【0024】
また、カーボンナノチューブ11は、断線することなく流すことができる最大電流密度が1平方センチあたり100万アンペアと銅配線より100倍以上大きいという特徴を有している。また、熱伝導についても伝導率で銅の10倍高い。電気抵抗の観点からは、カーボンナノチューブ内を流れる電子は、不純物や格子振動(フォノン)との散乱現象のない、いわゆる弾道電子輸送を実現することができる。さらに、カーボンナノチューブの直径は、0.4nm〜100nmまで広範囲で、その直径は自己組織的に形成されることから1本の長さ方向で揺らぎが極めて少ないという特徴を有する。これらの特徴から、カーボンナノチューブ11をプラグとして適用した場合には、高電流密度に起因するマイグレーション現象が少なく、高信頼でかつ極めて微細なプラグを実現できる。
【0025】
上記の本実施形態に係る半導体装置では、カーボンナノチューブ11の周囲をエアギャップ20としている。これにより、配線間の比誘電率を空気に近い値にまで下げることができ、配線容量を低減することができる。このエアギャップ20に露出するプラグとして、カーボンナノチューブ11を用いることにより、酸化による腐食を防止することができる。これにより、配線信頼性を向上させることができる。また、第1配線5および第2配線16をカーボンナノチューブ11で接続することにより、銅を用いた場合に比べて電気抵抗を低くすることができる。また、第1配線5および第2配線16はエアギャップ20に接触していないことから、配線の酸化による腐食を防止することができる。
【0026】
次に、上記の本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図2〜図6を参照して説明する。
【0027】
図2(a)に示すように、基板1に不図示のトランジスタ等の素子を形成した後、基板1上に層間絶縁膜2を形成する。層間絶縁膜2の形成では、例えば、上記した低誘電率膜をCVD法あるいは塗布法により形成する。続いて、層間絶縁膜2に配線溝を形成し、当該配線溝内にバリアメタル3および第1導電層4からなる第1配線5を形成する。第1配線5の形成では、配線溝内を含む全面にバリアメタル3および第1導電層4を形成した後、層間絶縁膜2上の不要な第1導電層4およびバリアメタル3をCMPにより除去する。バリアメタル3として、例えばスパッタリング法によりTaあるいはTaNを形成する。第1導電層4として、例えばスパッタリング法により銅のシード層を形成した後、めっき法によりCuを形成する。
【0028】
次に、図2(b)に示すように、第1配線5上に触媒層6を形成する。例えば、無電解めっき法により、Pdからなる触媒層6を第1配線5上に選択的に形成する。無電解めっき法を用いることにより、第1配線5上のみに均一な膜厚の触媒層6を形成することができる。
【0029】
次に、図3(a)に示すように、触媒層6および層間絶縁膜2上に、保護膜7、ギャップ用絶縁膜8、保護膜9を順に形成する。保護膜7として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。ギャップ用絶縁膜8として、例えばCVD法により酸化シリコン膜を形成する。保護膜9として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。
【0030】
次に、図3(b)に示すように、保護膜7、ギャップ用絶縁膜8および保護膜9に、触媒層6に達する接続孔10を形成する。例えば、保護膜9上にリソグラフィ技術によりレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いて保護膜9、ギャップ用絶縁膜8および保護膜7をエッチングすることにより、接続孔10が形成される。
【0031】
次に、図4(a)に示すように、触媒層6を成長核としてカーボンナノチューブ11を成長させる。例えば、熱CVD法、プラズマCVD法によりカーボンナノチューブ11を形成する。より詳細には、熱CVD法を用いて、アセチレン、メタン等の炭化水素系ガスを原料ガスとし、水素ガスをキャリアガスとして、加熱温度を400℃〜900℃、好ましくは400℃〜600℃、圧力を1kPaに設定し、かつ基板1に−400Vのバイアスをかけて層厚方向に電界を発生させる。これにより、カーボンナノチューブ11が層厚方向に成長して接続孔10を充填する。
【0032】
次に、図4(b)に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法により、接続孔10からはみ出した余分なカーボンナノチューブ11を除去する。
【0033】
次に、図5(a)に示すように、カーボンナノチューブ11および保護膜9上に、例えば、CVD法あるいは塗布法により上記した低誘電率材料からなる層間絶縁膜12を形成する。続いて、リソグラフィ技術によりレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて層間絶縁膜12をエッチングして、層間絶縁膜12に配線溝13を形成する。その後、レジストマスクを除去する。
【0034】
次に、図5(b)に示すように、当該配線溝13内を含む全面に、バリアメタル14および第2導電層15を形成する。バリアメタル14として、例えばスパッタリング法によりTaあるいはTaNを形成する。第2導電層15として、例えばスパッタリング法により銅のシード層を形成した後、めっき法によりCuを形成する。
【0035】
次に、図6(a)に示すように、層間絶縁膜12上の不要な第2導電層15およびバリアメタル14をCMPにより除去する。これにより、バリアメタル14および第2導電層15からなる第2配線16が層間絶縁膜12内に形成される。
【0036】
次に、図6(b)に示すように、第2配線16および層間絶縁膜12上に、保護膜17を形成する。保護膜17として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。
【0037】
続いて、HFなどの薬液に基板1を浸漬することによって、ギャップ用絶縁膜8を除去して、エアギャップ20を形成する(図1参照)。
【0038】
以降の工程としては、上記の工程を繰り返すことにより、多層配線構造の半導体装置が完成する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、第1配線5と第2配線16とがカーボンナノチューブ11により接続され、エアギャップ20を有する半導体装置を製造することができる。その結果、容量を低減し、かつ配線信頼性を向上させた半導体装置を製造することができる。
【0040】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る半導体装置の断面図である。本実施形態では、触媒層6は、プラグの領域のみ、すなわちカーボンナノチューブ11の下面にのみ触媒層6が形成されている。
【0041】
シリコンからなる基板1には、不図示のトランジスタ等の素子が形成されている。基板1上には、層間絶縁膜2が形成されている。層間絶縁膜2の材料は、第1実施形態で説明した通りである。
【0042】
層間絶縁膜2には、バリアメタル3および第1導電層4からなる第1配線5が形成されている。バリアメタル3は、TaあるいはTaNからなる。なお、バリアメタル3は、マンガン化合物膜であってもよい。マンガン化合物膜は、例えば、CuMnをアニール処理することによって形成される。第1導電層4は、例えばCuである。
【0043】
層間絶縁膜2および第1配線5上には、保護膜7が形成されている。保護膜7は、第1導電層4を構成するCuの拡散防止、およびCuの酸化防止のために設けられている。保護膜7は、例えばSiCあるいはSiCNからなる。
【0044】
保護膜7上には、エアギャップ20を介して保護膜9が形成されている。保護膜9上には、層間絶縁膜12が形成されている。層間絶縁膜12内には、バリアメタル14および第2導電層15からなる第2配線16が形成されている。第2配線16および層間絶縁膜12上には、保護膜17が形成されている。
【0045】
保護膜9,17は、Cuの拡散防止、および第2配線16の酸化防止のために設けられている。層間絶縁膜12は、例えば、上記した層間絶縁膜2と同様の材料からなる。バリアメタル14は、TaあるいはTaNからなる。なお、バリアメタル14は、マンガン化合物膜であってもよい。第2導電層15は、例えばCuである。
【0046】
第1配線5の上面であって、プラグとなる部位のみに、触媒層6が形成されている。触媒層6上には、カーボンナノチューブ11が形成されている。第1配線5および第2配線16は、カーボンナノチューブ11を介して電気的に接続されている。
【0047】
触媒層6は、カーボンナノチューブ11の成長核となる。触媒層6は、例えばPdからなる。なお、触媒層6は、Co,Ni、Fe、Mo等の金属あるいはこれらを含む金属間化合物であってよい。
【0048】
カーボンナノチューブ11は、炭素原子がsp2結合した6員環よりなるグラファイトのシートを巻いた円筒状の形状をしており、内部には長手方向に沿って空洞が形成される。カーボンナノチューブ11は、第1配線5および第2配線16を接続するプラグとして機能し、エアギャップ20に露出している。カーボンナノチューブ11は、大気に露呈しても、変化する可能性が少ない安定な材料である。このため、カーボンナノチューブ11の酸化による腐食の可能性は低い。カーボンナノチューブ11のその他の特性については、第1実施形態で説明した通りである。
【0049】
上記の本実施形態に係る半導体装置では、カーボンナノチューブ11の周囲をエアギャップ20としている。これにより、配線間の比誘電率を空気に近い値にまで下げることができ、配線容量を低減することができる。このエアギャップ20に露出するプラグとして、カーボンナノチューブ11を用いることにより、酸化による腐食を防止することができる。これにより、配線信頼性を向上させることができる。また、第1配線5および第2配線16をカーボンナノチューブ11で接続することにより、銅を用いた場合に比べて電気抵抗を低くすることができる。また、第1配線5および第2配線16はエアギャップ20に接触していないことから、配線の酸化による腐食を防止することができる。
【0050】
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について、図8〜図12を参照して説明する。
【0051】
図8(a)に示すように、基板1に不図示のトランジスタ等の素子を形成した後、基板1上に層間絶縁膜2を形成する。層間絶縁膜2の形成では、例えば、上記した低誘電率膜をCVD法あるいは塗布法により形成する。続いて、層間絶縁膜2に配線溝を形成し、当該配線溝内にバリアメタル3および第1導電層4からなる第1配線5を形成する。第1配線5の形成では、配線溝内を含む全面にバリアメタル3および第1導電層4を形成した後、層間絶縁膜2上の不要な第1導電層4およびバリアメタル3をCMPにより除去する。バリアメタル3として、例えばスパッタリング法によりTaあるいはTaNを形成する。第1導電層4として、例えばスパッタリング法により銅のシード層を形成した後、めっき法によりCuを形成する。
【0052】
次に、図8(b)に示すように、第1配線5および層間絶縁膜2上に、保護膜7、ギャップ用絶縁膜8、保護膜9を順に形成する。保護膜7として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。ギャップ用絶縁膜8として、例えばCVD法により酸化シリコン膜を形成する。保護膜9として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。
【0053】
次に、図9(a)に示すように、保護膜7、ギャップ用絶縁膜8および保護膜9に、第1配線5に達する接続孔10を形成する。例えば、保護膜9上にリソグラフィ技術によりレジストマスクを形成し、レジストマスクを用いて保護膜9、ギャップ用絶縁膜8および保護膜7をエッチングすることにより、接続孔10が形成される。
【0054】
次に、図9(b)に示すように、接続孔10の底部に露出した第1配線5上に触媒層6を形成する。例えば、無電解めっき法により、Pdからなる触媒層6を第1配線5上に選択的に形成する。無電解めっき法を用いることにより、接続孔10の底部のみに均一な膜厚の触媒層6を形成することができる。
【0055】
次に、図10(a)に示すように、触媒層6を成長核としてカーボンナノチューブ11を成長させる。例えば、熱CVD法、プラズマCVD法によりカーボンナノチューブ11を形成する。より詳細には、熱CVD法を用いて、アセチレン、メタン等の炭化水素系ガスを原料ガスとし、水素ガスをキャリアガスとして、加熱温度を400℃〜900℃、好ましくは400℃〜600℃、圧力を1kPaに設定し、かつ基板1に−400Vのバイアスをかけて層厚方向に電界を発生させる。これにより、カーボンナノチューブ11が層厚方向に成長して接続孔10を充填する。
【0056】
次に、図10(b)に示すように、CMP法により、接続孔10からはみ出した余分なカーボンナノチューブ11を除去する。
【0057】
次に、図11(a)に示すように、カーボンナノチューブ11および保護膜9上に、例えば、CVD法あるいは塗布法により上記した低誘電率材料からなる層間絶縁膜12を形成する。続いて、リソグラフィ技術によりレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて層間絶縁膜12をエッチングして、層間絶縁膜12に配線溝13を形成する。その後、レジストマスクを除去する。
【0058】
次に、図11(b)に示すように、当該配線溝13内を含む全面に、バリアメタル14および第2導電層15を形成する。バリアメタル14として、例えばスパッタリング法によりTaあるいはTaNを形成する。第2導電層15として、例えばスパッタリング法により銅のシード層を形成した後、めっき法によりCuを形成する。
【0059】
次に、図12(a)に示すように、層間絶縁膜12上の不要な第2導電層15およびバリアメタル14をCMPにより除去する。これにより、バリアメタル14および第2導電層15からなる第2配線16が層間絶縁膜12内に形成される。
【0060】
次に、図12(b)に示すように、第2配線16および層間絶縁膜12上に、保護膜17を形成する。保護膜17として、例えばCVD法によりSiCN膜を形成する。
【0061】
続いて、HFなどの薬液に基板1を浸漬することによって、ギャップ用絶縁膜8を除去して、エアギャップ20を形成する(図7参照)。
【0062】
以降の工程としては、上記の工程を繰り返すことにより、多層配線構造の半導体装置が完成する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、第1配線5と第2配線16とがカーボンナノチューブ11により接続され、エアギャップ20を有する半導体装置を製造することができる。その結果、容量を低減し、かつ配線信頼性を向上させた半導体装置を製造することができる。
【0064】
本発明は、上記の実施形態の説明に限定されない。
本実施形態で挙げた材料、製造条件は一例であり、これに限定されるものではない。また、多層配線構造のうち、1つの層のみエアギャップ20を適用しても、複数の層にエアギャップ20を適用してもよい。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】第1実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図2】第1実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図3】第1実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図4】第1実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図5】第1実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図6】第1実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図7】第2実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【図8】第2実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図9】第2実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図10】第2実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図11】第2実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【図12】第2実施形態に係る半導体装置の製造における工程断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1…基板、2…層間絶縁膜、3…バリアメタル、4…第1導電層、5…第1配線、6…触媒層、7…保護膜、8…ギャップ用絶縁膜、9…保護膜、10…接続孔、11…カーボンナノチューブ、12…層間絶縁膜、13…配線溝、14…バリアメタル、15…第2導電層、16…第2配線、17…保護膜、20…エアギャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された第1配線と、
前記第1配線の上層に形成され、前記第1配線との間にエアギャップを介在させて配置された第2配線と、
前記エアギャップ内に形成され、前記第1配線と前記第2配線とを接続するカーボンナノチューブと
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1配線と前記エアギャップの接続部に、前記カーボンナノチューブの成長核となる触媒層が設けられている
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
基板上に第1配線を形成する工程と、
前記第1配線の上層にギャップ用絶縁膜を形成する工程と、
前記ギャップ用絶縁膜に接続孔を形成する工程と、
前記接続孔にカーボンナノチューブを埋め込む工程と、
前記ギャップ用絶縁膜上に前記カーボンナノチューブに接続する第2配線を形成する工程と、
前記ギャップ用絶縁膜を除去する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記接続孔を形成する工程の後、カーボンナノチューブを埋め込む工程の前に、前記接続孔から露出した前記第1配線上に、前記カーボンナノチューブの成長核となる触媒層を形成する工程をさらに有する
請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1配線を形成する工程の後、前記ギャップ用絶縁膜を形成する工程の前に、前記第1配線上に、前記カーボンナノチューブの成長核となる触媒層を形成する工程をさらに有する
請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項1】
基板上に形成された第1配線と、
前記第1配線の上層に形成され、前記第1配線との間にエアギャップを介在させて配置された第2配線と、
前記エアギャップ内に形成され、前記第1配線と前記第2配線とを接続するカーボンナノチューブと
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1配線と前記エアギャップの接続部に、前記カーボンナノチューブの成長核となる触媒層が設けられている
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
基板上に第1配線を形成する工程と、
前記第1配線の上層にギャップ用絶縁膜を形成する工程と、
前記ギャップ用絶縁膜に接続孔を形成する工程と、
前記接続孔にカーボンナノチューブを埋め込む工程と、
前記ギャップ用絶縁膜上に前記カーボンナノチューブに接続する第2配線を形成する工程と、
前記ギャップ用絶縁膜を除去する工程と
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記接続孔を形成する工程の後、カーボンナノチューブを埋め込む工程の前に、前記接続孔から露出した前記第1配線上に、前記カーボンナノチューブの成長核となる触媒層を形成する工程をさらに有する
請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1配線を形成する工程の後、前記ギャップ用絶縁膜を形成する工程の前に、前記第1配線上に、前記カーボンナノチューブの成長核となる触媒層を形成する工程をさらに有する
請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−220742(P2007−220742A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36898(P2006−36898)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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