説明

半導体装置およびパワーオンリセット回路の調整方法

【課題】パワーオン判定電圧のばらつきによって生じる電源電圧のノイズマージンの減少を防止する。
【解決手段】電源電圧VPERIに比例した検出電圧Vx1を生成する検出電圧生成回路110と、検出電圧Vx1がパワーオン判定電圧未満である場合にはパワーオンリセット信号PONを活性状態とし、検出電圧Vx1がパワーオン判定電圧以上である場合にはパワーオンリセット信号PONを非活性状態とするパワーオン判定回路130とを備える。検出電圧生成回路110には、電源電圧VPWRIと検出電圧Vx1の比例定数を調整するためのヒューズ素子Fが設けられている。これにより、パワーオン判定電圧の調整が可能となることから、半導体装置を作製した後、パワーオン判定電圧が設計値からずれている場合には、これを設計値に近づけることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に内蔵されるパワーオンリセット回路及びその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの半導体装置には、電源の投入に応答して内部回路をリセットするためのパワーオンリセット回路が設けられている(特許文献1参照)。パワーオンリセット回路は、電源の投入から電源電圧の安定までにある程度の時間がかかることを利用し、電源電圧が所定のパワーオン判定電圧まで上昇したことを検知して、パワーオンリセット信号を発生させる回路である。
【0003】
また、パワーオンリセット回路とは異なるが、半導体装置内部の基準電圧を調整可能な回路として、特許文献2に記載された回路も知られている。
【特許文献1】特開平5−119871号公報
【特許文献2】特開平7−141041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの研究によれば、パワーオンリセット回路のパワーオン判定電圧は、製造条件などによってチップごとにばらつくことが明らかとなった。ばらつきによってパワーオン判定電圧が設計値からずれると、パワーオンリセット信号が変化するタイミングも設計値からずれてしまう。
【0005】
図9はこれを説明するための波形図であり、電圧V2が設計値通りのパワーオン判定電圧である。したがって、設計値通りのパワーオン判定電圧V2を有するチップ2においては、電源投入後、パワーオンリセット信号PONのレベルは電源電圧VPERIの上昇に連動し、その後、電源電圧VPERIがV2に達した時点でローレベルに非活性化する。これに対し、チップ1においては、パワーオン判定電圧V1が設計値よりも低く(V1<V2)、このため、電源電圧VPERIがV2に達する前にパワーオンリセット信号PONがローレベルに非活性化している。逆に、チップ3においては、パワーオン判定電圧V3が設計値よりも高く(V2<V3)、このため、電源電圧VPERIがV2に達した後も、V3に達するまではパワーオンリセット信号PONがローレベルに非活性化しない。
【0006】
実際の電源投入時においては、パワーオンリセット信号PONが非活性化するタイミングが設計値から多少ずれていたとしても、それほど大きな問題とはならない。しかしながら、パワーオン判定電圧のずれは、電源投入後の通常動作時において問題となることが明らかとなった。
【0007】
つまり、図10に示すように、実際の動作時において電源電圧VPERIにノイズが重畳し、パワーオン判定電圧以下に低下すると、パワーオンリセット信号PONが誤って出力されてしまう。つまり、VPERI−V2が設計上のノイズマージンとなる。しかしながら、図10に示すように、パワーオン判定電圧が設計値であるV2よりも高いV3である場合には、ノイズマージンがVPERI−V3に減少し、パワーオンリセット信号PONの誤出力が発生しやすくなってしまう。
【0008】
一方で、パワーオン判定電圧が低すぎると、電源投入時において内部回路を正しくリセットできなくなるおそれが生じる。このように、パワーオン判定電圧のばらつきは、種々の問題を生じさせる。したがって、パワーオン判定電圧のばらつきに起因する種々の問題が解決されたパワーオンリセット回路が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によるパワーオンリセット回路は、電源電圧がパワーオン判定電圧未満である場合にはパワーオンリセット信号を活性状態とし、電源電圧がパワーオン判定電圧以上である場合にはパワーオンリセット信号を非活性状態とするパワーオンリセット回路であって、パワーオン判定電圧が可変であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の側面によるパワーオンリセット回路は、第1及び第2の電源配線間に接続され、第1及び第2の電源配線間に印加される電源電圧に比例した検出電圧を生成する検出電圧生成回路と、検出電圧がパワーオン判定電圧未満である場合にはパワーオンリセット信号を活性状態とし、検出電圧がパワーオン判定電圧以上である場合にはパワーオンリセット信号を非活性状態とするパワーオン判定回路と、を備え、検出電圧生成回路は、電源電圧と検出電圧の比例定数を調整可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明によるパワーオンリセット回路の調整方法は、電源電圧がパワーオン判定電圧未満である場合にはパワーオンリセット信号を活性状態とし、電源電圧がパワーオン判定電圧以上である場合にはパワーオンリセット信号を非活性状態とするパワーオンリセット回路の調整方法であって、パワーオンリセット信号をモニターすることによって、パワーオン判定電圧を検出するステップと、検出されたパワーオン判定電圧と設計値とを比較するステップと、比較の結果に基づいてヒューズトリミングを行うことにより、パワーオン判定電圧を変化させるステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によるパワーオンリセット電圧管理システムは、電源電圧がパワーオン判定電圧未満である場合にはパワーオンリセット信号を活性状態とし、電源電圧がパワーオン判定電圧以上である場合にはパワーオンリセット信号を非活性状態とするパワーオンリセット回路を含む半導体装置に用いるパワーオンリセット電圧管理システムであって、ウェハ状態でパワーオンリセット信号をモニターすることによって、パワーオン判定電圧を検出する電圧検出部と、検出されたパワーオン判定電圧又はこれに関連する情報とウェハ上における半導体装置の位置とを関連づけて記憶する記憶部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パワーオン判定電圧の調整が可能であることから、半導体装置を作製した後、パワーオン判定電圧が設計値からずれている場合には、これを設計値に近づけることが可能となる。これにより、パワーオン判定電圧のばらつきに起因して生じる種々の問題を防止することが可能となる。
【0014】
また、調整前のパワーオン判定電圧又はこれに関連する情報とウェハ上における半導体装置の位置とを関連づけて記憶することにより、プロセス条件を把握し、後続のロットに対して正しくフィードバックを行うことも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態によるパワーオンリセット回路100が用いられる半導体装置10の構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示す半導体装置10は、パワーオンリセット回路100と内部回路20によって構成されている。内部回路20は、半導体装置10の主たる機能を実現するための回路ブロックであり、例えば、半導体装置10がDRAM(Dynamic Random Access Memory)であれば、メモリセルアレイやその周辺回路(アドレスデコーダなど)が含まれる。内部回路20には種々の動作電圧が供給されるが、図1にはそのうち電源電圧VPERIのみを表示している。電源電圧VPERIは、例えばDRAMにおいては周辺回路に対する動作電圧であり、電源端子に供給される電源電圧VDDを降圧することによって生成される。
【0018】
電源電圧VPERIは、パワーオンリセット回路100にも供給される。パワーオンリセット回路100は、電源の投入を検出する回路であり、電源投入後、電源電圧VPERIがパワーオン判定電圧に達したことを検知して、パワーオンリセット信号PONを発生させる。パワーオンリセット信号PONは、内部回路20に供給される。パワーオンリセット信号PONを受けた内部回路20は、所定のリセット動作を行う。
【0019】
図2は、パワーオンリセット回路100の回路図である。
【0020】
図2に示すように、パワーオンリセット回路100は、検出電圧生成回路110と、時定数回路120と、パワーオン判定回路130と、モニター用パッド140とを備えている。
【0021】
検出電圧生成回路110は、電源電圧VPERIが供給される電源配線L1と電源電圧VSSが供給される電源配線L2との間に直列接続された複数の抵抗素子R及びダイオードDと、いくつかの抵抗素子Rに対して並列接続されたヒューズ素子Fとを備えており、所定のノードN1から検出電圧Vx1が取り出される。つまり、ノードN1から取り出される検出電圧Vx1は、電源配線L1,L2間に印加される電圧(VPERI=VPERI−VSS)を抵抗分割した値、つまり、電源電圧VPERIに比例した電圧となる。ダイオードDは、NチャンネルMOSトランジスタをダイオード接続した素子であり、電流源として機能する。
【0022】
ヒューズ素子Fの抵抗値は、抵抗素子Rの抵抗値よりも十分に低く設定される。したがって、ヒューズ素子Fが未切断の状態であれば、抵抗素子R及びヒューズ素子Fからなる並列回路Pの抵抗値は低くなり、逆に、ヒューズ素子Fが切断された状態であれば、抵抗素子R及びヒューズ素子Fからなる並列回路Pの抵抗値は高くなる。これにより、ヒューズ素子Fをトリミングすることによって、電源電圧VPERIと検出電圧Vx1の比例定数を調整することが可能となる。
【0023】
時定数回路120は、電源配線L1,L2間に直列接続された抵抗素子Rと容量素子Cによって構成され、その接続点であるノードN2から検出電圧Vx2が取り出される。時定数回路120は一種の保護回路であり、電源投入後、電源電圧VPERIが急速に上昇した場合であってもパワーオンリセット信号PONの非活性化を一定時間以上に遅らせる役割を果たす。したがって、通常の電源投入時のように、電源電圧VPERIの上昇がある程度緩やかである場合には、時定数回路120の動作はパワーオンリセット信号PONの非活性化タイミングに影響を与えない。
【0024】
パワーオン判定回路130は、電源配線L1,L2間に直列接続された抵抗素子R、トランジスタT1,T2及び出力回路OUTによって構成されている。トランジスタT1のゲートには検出電圧生成回路110によって生成される検出電圧Vx1が供給され、トランジスタT2のゲートには時定数回路120によって生成される検出電圧Vx2が供給される。そして、トランジスタT2のドレインと抵抗素子Rとの接続点であるノードN3は、出力回路OUTを構成する2段のインバータINV1,INV2の入力端に接続されている。そして、出力回路OUTの出力がパワーオンリセット信号PONとして用いられる。尚、トランジスタT1,T2の位置は逆であっても構わない。トランジスタT1,T2の位置を逆とした場合には、ノードN3は、トランジスタT1のドレインと抵抗素子Rとの接続点となる。
【0025】
モニター用パッド140は、出力回路OUTの出力端に接続されており、ウェハ状態で行う試験時にプローブを針当てするためのパッドである。これにより、パワーオンリセット信号PONを外部のテスター等によって直接モニターすることが可能とされている。
【0026】
以上がパワーオンリセット回路100の回路構成である。次に、パワーオンリセット回路100の動作について説明する。
【0027】
図3は、パワーオンリセット回路100の動作を説明するための波形図である。
【0028】
図3に示すように、時刻t0以前は半導体装置10には電源が投入されておらず、したがって、電源電圧VPERIの値はゼロ(=VSS)である。そして、時刻t0において電源が投入されると、電源電圧VPERIは目標値V0に向かって上昇を開始する。しかしながら、すぐに目標値V0に達するのではなく、ある程度緩やかに上昇する。
【0029】
電源電圧VPERIの上昇直後の状態においては、トランジスタT1,T2の少なくとも一方がオフ状態であることから、ノードN3のレベルは電源電圧VPERIのレベルと一致する。また、初期状態では、インバータINV2の入力ノードの電位はVSSレベルに設定されている。このため、電源電圧VPERIの上昇直後はINV2の出力ノードは、INV2内のPMOSトランジスタ(不図示)を介して電源配線L1と導通状態となっている。その結果、INV2の出力ノードの電位、即ち、パワーオンリセット信号PONのレベルは、電源電圧VPERIのレベルと一致する。つまり、パワーオンリセット信号PONは活性状態にあり、電源電圧VPERIに追従して上昇する。
【0030】
次に、時刻t1になると、時定数回路120に含まれるノードN2のレベルがトランジスタT2のしきい値を超える。これによりトランジスタT2がオンするが、トランジスタT1がまだオフ状態であることから、ノードN3のレベルは電源電圧VPERIのままである。ここで、時刻t0から時刻t1までの期間は、電源投入後、図1に示した内部回路20が動作可能となる最短期間と同じか、それ以上に設定される。これにより、電源電圧VPERIが急速に上昇した場合であっても、一定期間はパワーオンリセット信号PONが非活性化することはない。
【0031】
この間、検出電圧生成回路110のノードN1から出力される検出電圧Vx1は、特性32に示すように、電源電圧VPERIに比例して上昇する。そして、時刻t3において電源電圧VPERIのレベルがパワーオン判定電圧V2に達すると、検出電圧Vx1がトランジスタT1のしきい値VTを超える。これによりトランジスタT1がオンするため、ノードN3と電源配線L2とが導通状態となり、ノードN3の電荷が電源配線L2に放電され、ノードN3の電位が低下する。ここで、ノードN3と電源配線L1との間の抵抗(図2においては、2つの抵抗Rの合成抵抗の抵抗値)の大きさが、ノードN3と電源配線L2との間の抵抗(図2においては、トランジスタT1,T2のオン抵抗の合成抵抗)の大きさよりも十分に大きい場合、ノードN3の電位は電源電圧VSS付近まで低下する。また、ノードN3と電源配線L1との間の抵抗の大きさは、トランジスタT1,T2が共に導通状態である場合に、少なくとも、INV1の出力信号の論理レベルが「1」となるINV1の入力信号の電位以下にノードN3の電位を規定する大きさであることが好ましい。より好ましくは、トランジスタT1,T2が共に導通状態にある場合、ノードN3と電源配線L1との間の抵抗の大きさは、ノードN3と電源配線L2との間の抵抗(つまり、トランジスタT1,T2のオン抵抗の合成抵抗)の大きさの少なくとも10倍である。ノードN3の電位が電源電圧VSS付近まで低下すると、INV1の出力ノードの電位が電源電圧VPERIに追随するようになる。その結果、INV2内のPMOSトランジスタ(不図示)が非導通状態となり、INV2内のNMOSトランジスタ(不図示)が導通状態となることで、パワーオンリセット信号PONのレベルは電源電圧VSSに変化する。つまり、パワーオンリセット信号PONが非活性状態に遷移する。
【0032】
ここで、パワーオン判定電圧V2は設計値である。換言すれば、ノードN1から出力される検出電圧Vx1のレベルがトランジスタT1のしきい値VTと一致すべき電源電圧VPERIの値である。しかしながら、電源電圧VPERIと検出電圧Vx1の比例定数は、検出電圧生成回路110を構成する抵抗素子Rの抵抗値のばらつきによって変化することから、電源電圧VPERIがパワーオン判定電圧V2となった場合に得られる検出電圧Vx1がトランジスタT1のしきい値VTと一致するとは限らない。
【0033】
具体的には、電源電圧VPERIと検出電圧Vx1の比例定数が設計値よりも大きい場合には、図3の特性31に示すように、電源電圧VPERIの上昇に伴う検出電圧Vx1の上昇が特性32よりも速くなる。その結果、電源電圧VPERIが設計値である電圧V2に達するより前に、時刻t2にて電圧V1(<V2)に達した時点で、検出電圧Vx1のレベルがトランジスタT1のしきい値VTを超える。この場合、パワーオンリセット信号PONが設計よりも早く非活性化される。
【0034】
逆に、電源電圧VPERIと検出電圧Vx1の比例定数が設計値よりも小さい場合には、図3の特性33に示すように、電源電圧VPERIの上昇に伴う検出電圧Vx1の上昇が特性32よりも遅くなる。その結果、電源電圧VPERIが設計値である電圧V2に達した後も、時刻t4にて電圧V3に達しない限り、検出電圧Vx1のレベルがトランジスタT1のしきい値を超えない。この場合、パワーオンリセット信号PONが設計よりも遅く非活性化される。
【0035】
このようなばらつきが種々の問題、特に、電源電圧VPERIにノイズが重畳した場合において重大な問題を引き起こすことは、既に説明したとおりである。本実施形態では、このようなばらつきを事後的に修正することが可能である。以下、その方法について説明する。
【0036】
図4は、パワーオンリセット回路100の調整方法を説明するためのフローチャートである。特に限定されるものではないが、図4に示す工程は全てウェハ状態で行うことが好ましい。
【0037】
まず、ウェハに形成された各チップのモニター用パッド140に、外部テスターのプローブを接触させる(ステップS1)。図示しない電源端子にも外部テスターのプローブを接触させ、この状態で電源端子に供給する電源電圧を段階的に上昇させる。そして、パワーオンリセット信号PONが活性状態から非活性状態に遷移する電源電圧をチップごとに記憶する(ステップS2)。電源端子に供給する電源電圧としては、パワーオン判定電圧の設計値近傍における所定の電圧範囲(例えば0.8V〜1.4V)において、例えば、0.05Vピッチで変化させることが好ましい。これにより、各チップに設けられたパワーオンリセット回路100について、それぞれパワーオン判定電圧が検出・記録される。上記の工程は、図8に示すプローブ410及び電圧検出部420を用いて行うことができる。
【0038】
次に、記憶されたパワーオン判定電圧と設計値とを比較し、記憶されたパワーオン判定電圧が設計値からどの程度ずれているか判定して、切断すべきヒューズ素子Fを決定する(ステップS3)。具体的には、パワーオン判定電圧が設計値よりも低い場合には、電源電圧VPERIと検出電圧Vx1の比例定数を小さくすべく、検出電圧生成回路110に含まれるヒューズ素子Fのうち、ノードN1から見て電源配線L1側のヒューズ素子Fを切断すればよい。逆に、パワーオン判定電圧が設計値よりも高い場合には、電源電圧VPERIと検出電圧Vx1の比例定数を大きくすべく、検出電圧生成回路110に含まれるヒューズ素子Fのうち、ノードN1から見て電源配線L2側のヒューズ素子Fを切断すればよい。調整量は、切断するヒューズ素子Fの数や、ヒューズ素子Fと並列接続された抵抗素子Rの抵抗値によって選択することができる。
【0039】
そして、切断すべきヒューズ素子Fに対してレーザービームを照射することにより、ヒューズトリミングを行う(ステップS4)。これにより、実際にパワーオン判定電圧が変化し、設計値に近いパワーオン判定電圧を得ることが可能となる。尚、上記のステップS1〜S4を繰り返し実行することによって、パワーオン判定電圧を設計値により近づけることも可能である。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、パワーオンリセット信号PONを直接モニターすることによってパワーオン判定電圧を取得し、これに基づきヒューズトリミングを行うことによってパワーオン判定電圧を調整していることから、より設計値に近いパワーオン判定電圧を得ることが可能となる。これにより、パワーオン判定電圧のばらつきがもたらす種々の問題、特に、電源電圧VPERIにノイズが重畳した場合における意図しないパワーオンリセット信号PONの活性化を防止することが可能となる。
【0041】
以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0042】
図5は、変形例によるパワーオンリセット回路200の回路図である。
【0043】
図5に示すパワーオンリセット回路200は、ヒューズ素子FがダイオードDに対して並列接続されている点において、図2に示したパワーオンリセット回路200と相違している。その他の点は、図2に示したパワーオンリセット回路200と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。このように、抵抗素子Rではなく、電流源であるダイオードDと並列にヒューズ素子Fを設け、これをトリミングすることによってパワーオン判定電圧を調整することも可能である。
【0044】
図6は、複数のパワーオンリセット回路を用いて内部回路20をリセットする例を示すブロック図である。
【0045】
図6に示す例では、2つのパワーオンリセット回路100,300が設けられ、その出力であるパワーオンリセット信号PON,PONAをオア回路350で合成した出力PONBが内部回路20に供給される。パワーオンリセット回路100は図2に示した回路であり、もう一つのパワーオンリセット回路300は図7に示す回路である。
【0046】
図7に示すとおり、パワーオンリセット回路300は、電源配線L1の代わりに電源配線L3が用いられ、この電源配線L3に電源電圧VDDが供給される他は、図2に示したパワーオンリセット回路100と同じ回路構成を有している。つまり、図2に示したパワーオンリセット回路100が電源電圧VPERIを監視するパワーオンリセット回路であるのに対し、図7に示すパワーオンリセット回路300は電源電圧VDDを監視するパワーオンリセット回路である。したがって、内部回路20は、これら2つのパワーオンリセット回路100,300の出力PON,PONAの両方がローレベルに非活性化して初めてリセットされる。
【0047】
これは、半導体装置の内部には種々の電源電圧が用いられており、これら電源電圧の立ち上がり速度が必ずしも同じではないからである。つまり、立ち上がりの速い電源電圧に対してのみパワーオンリセット回路を設けると、立ち上がりの遅い電源電圧を用いる回路ブロックに対し、十分な電源電圧が供給される前にリセットを行ってしまうため、これを防止するためである。これを確実に防止するためには、半導体装置にて用いる全種類の電源電圧に対してパワーオンリセット回路を設ければよいが、パワーオンリセット回路はチップ上の占有面積が比較的大きいため、全種類の電源電圧に対してパワーオンリセット回路を設けることは得策ではない。
【0048】
この点を考慮して、図6に示す例では、外部から供給される電源電圧VDDと内部生成される電源電圧VPERIの2つの電源電圧に対してパワーオンリセット回路を割り当て、これら2つのパワーオンリセット回路100,300の出力PON,PONAの両方がローレベルに非活性化した場合に、パワーオンリセット信号PONBによって内部回路20をリセットしている。これにより、外部から供給される電源電圧の立ち上がり速度、並びに、内部生成される電源電圧の立ち上がり速度の両方を考慮して、内部回路20をリセットすることが可能となる。
【0049】
図8は、パワーオンリセット電圧管理システム400の構成を示す模式図である。
【0050】
図8に示すパワーオンリセット電圧管理システム400は、プローブ410、電圧検出部420及び記憶部430によって構成されている。プローブ410及び電圧検出部420の機能は既に説明したとおりであり、ウェハWに形成された複数の半導体装置に含まれるパワーオンリセット信号PONをモニターすることによって、パワーオン判定電圧を検出するために用いられる。記憶部430は、検出されたパワーオン判定電圧とウェハW上における半導体装置10の位置とを関連づけて記憶する回路である。これにより、ウェハW上における半導体装置の位置とパワーオン判定電圧との関係が明らかとなることから、これに基づいてプロセス条件を把握することができる。得られたプロセス条件は、後続のロットに対するフィードバックに利用することができ、これによって歩留まりを高めることもが可能となる。
【0051】
尚、記憶部430にはパワーオン判定電圧そのものを記憶させる必要はなく、パワーオン判定電圧に関連する情報、例えば、検出されたパワーオン判定電圧が設計値よりも高いか低いかを示す情報であっても構わない。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるパワーオンリセット回路100が用いられる半導体装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】パワーオンリセット回路100の回路図である。
【図3】パワーオンリセット回路100の動作を説明するための波形図である。
【図4】パワーオンリセット回路100の調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】変形例によるパワーオンリセット回路200の回路図である。
【図6】複数のパワーオンリセット回路を用いて内部回路20をリセットする例を示すブロック図である。
【図7】パワーオンリセット回路300の回路図である。
【図8】パワーオンリセット電圧管理システム400の構成を示す模式図である。
【図9】パワーオン判定電圧のばらつきがパワーオンリセット信号PONの変化タイミングに与える影響を説明するための波形図である。
【図10】電源ノイズによってパワーオンリセット信号PONが誤って出力される様子を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0054】
10 半導体装置
20 内部回路
100,200,300 パワーオンリセット回路
110 検出電圧生成回路
120 時定数回路
130 パワーオン判定回路
140 モニター用パッド
350 オア回路
400 パワーオンリセット電圧管理システム
410 プローブ
420 電圧検出部
430 記憶部
D ダイオード
F ヒューズ素子
R 抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧がパワーオン判定電圧未満である場合にはパワーオンリセット信号を活性状態とし、前記電源電圧が前記パワーオン判定電圧以上である場合には前記パワーオンリセット信号を非活性状態とするパワーオンリセット回路であって、
前記パワーオン判定電圧が可変であることを特徴とするパワーオンリセット回路。
【請求項2】
前記パワーオン判定電圧をヒューズトリミングによって変化させることが可能であることを特徴とする請求項1に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項3】
前記パワーオンリセット信号を外部に出力するためのモニター用パッドを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項4】
第1及び第2の電源配線間に接続され、前記第1及び第2の電源配線間に印加される電源電圧に比例した検出電圧を生成する検出電圧生成回路と、
前記検出電圧がパワーオン判定電圧未満である場合にはパワーオンリセット信号を活性状態とし、前記検出電圧が前記パワーオン判定電圧以上である場合には前記パワーオンリセット信号を非活性状態とするパワーオン判定回路と、を備え、
前記検出電圧生成回路は、前記電源電圧と前記検出電圧の比例定数を調整可能であることを特徴とするパワーオンリセット回路。
【請求項5】
前記パワーオン判定回路は、前記第1及び第2の電源配線間に接続され、ゲートに前記検出電圧を受ける第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタのドレインに接続された出力回路とを含み、前記パワーオン判定電圧が前記第1のトランジスタのしきい値電圧によって定義されることを特徴とする請求項4に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項6】
前記パワーオン判定回路は、前記第1のトランジスタに直列接続され、前記電源電圧の投入から一定期間後にオンする第2のトランジスタをさらに備えていることを特徴とする請求項5に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項7】
前記検出電圧生成回路は、前記第1及び第2の電源配線間に直列接続された複数の降圧素子と、前記複数の降圧素子の少なくとも一部をバイパスするヒューズ素子とを含んでおり、前記ヒューズ素子を切断することによって前記比例定数を調整可能であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項8】
前記複数の降圧素子には抵抗素子及びダイオードが含まれていることを特徴とする請求項7に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項9】
前記パワーオンリセット信号を外部に出力するためのモニター用パッドをさらに備えることを特徴とする請求項4乃至8のいずれか一項に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項10】
電源電圧がパワーオン判定電圧未満である場合にはパワーオンリセット信号を活性状態とし、前記電源電圧が前記パワーオン判定電圧以上である場合には前記パワーオンリセット信号を非活性状態とするパワーオンリセット回路の調整方法であって、
前記パワーオンリセット信号をモニターすることによって、前記パワーオン判定電圧を検出するステップと、
検出された前記パワーオン判定電圧と設計値とを比較するステップと、
比較の結果に基づいてヒューズトリミングを行うことにより、前記パワーオン判定電圧を変化させるステップと、を備えることを特徴とするパワーオンリセット回路の調整方法。
【請求項11】
前記パワーオン判定電圧を検出するステップにおいては、各々前記パワーオンリセット回路を有する複数の半導体装置を含むウェハについて、前記各々のパワーオンリセット回路のパワーオン判定電圧を検出し、
検出された前記各々のパワーオンリセット回路のパワーオン判定電圧と前記ウェハ上における対応する前記半導体装置の位置とを関連付けて記憶するステップをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のパワーオンリセット回路の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−147979(P2010−147979A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325281(P2008−325281)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】