説明

半導体装置とその製造方法

【課題】SiCを材料とする半導体素子に適した構造を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置2は、SiCを材料とする半導体素子20と、半導体素子20の外周を被覆する第1モールド樹脂50と、第1モールド樹脂50よりも耐熱性が低く、第1モールド樹脂50の外周を被覆する第2モールド樹脂70と、第2モールド樹脂70内に配置される温度センサ60と、を備える。温度センサ60は、第2モールド樹脂70内であって、第1モールド樹脂50と接する位置に配置され、半導体素子20の表面と対向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体素子と、温度センサと、半導体素子と温度センサとを被覆するモールド樹脂を備える半導体装置が開示されている。この半導体装置では、半導体素子と温度センサを放熱板上に配置し、半導体素子で発生した熱を放熱板を介して温度センサに伝達する。これによって、温度センサは半導体素子の温度を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−252885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、Si(珪素)に代えてSiC(炭化珪素)を材料とする半導体素子が開発されている。SiCを材料とする半導体素子は、Siを材料とする半導体素子と比較して、耐熱性が高く、高温でも動作が可能であるという特徴を有する。特許文献1に示すような従来の半導体装置の構造は、Siを材料とする半導体素子のための構造であり、SiCを材料とする半導体素子に適した構造とはなっていない。
【0005】
本明細書では、SiCを材料とする半導体素子に適した構造を有する半導体装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する半導体装置は、SiCを材料とする半導体素子と、半導体素子の外周を被覆する第1モールド樹脂と、第1モールド樹脂よりも耐熱性が低く、第1モールド樹脂の外周を被覆する第2モールド樹脂と、第2モールド樹脂内に配置される温度センサと、を備える。
【0007】
上述の通り、SiCを材料とする半導体素子は、Siを材料とする半導体素子と比べて高温下で動作することができる。このため、SiCを材料とする半導体素子をモールドする樹脂は、耐熱性を高くする必要がある。その一方、モールド樹脂の全てを耐熱性の高いものとすることは、過剰な耐熱性能となり好ましくない。上記の半導体装置では、半導体素子の外周を耐熱性の高い第1モールド樹脂で被覆する一方、その第1モールド樹脂の外周を耐熱性の低い第2モールド樹脂で被覆する。これにより、耐熱性を確保しながら、SiCを材料とする半導体素子をモールド樹脂で適切に被覆することができる。また、上記の半導体装置では、耐熱性の低い第2モールド樹脂を用いるため、第2モールド樹脂が最も耐熱性の低い要素となり得る。そこで、上記の半導体装置では、温度センサが第2モールド樹脂内に配置され、第2モールド樹脂の温度を検出する。このため、耐熱性の低い第2モールド樹脂を用いても、第2モールド樹脂が破損してしまうことを未然に防止することができる。
【0008】
上記の半導体装置は、半導体素子の裏面側に配置された放熱板をさらに有していてもよい。温度センサは、第2モールド樹脂内であって、第1モールド樹脂と接する位置に配置され、半導体素子の表面と対向していてもよい。この構成によると、温度センサは、第2モールド樹脂のうち、最も高温になり易い部分の温度を検出することができる。従って、この構成によると、温度センサをより適切な位置に配置することができる。
【0009】
本明細書は、新規な半導体装置の製造方法をも開示する。本明細書が開示する半導体装置の製造方法は、SiCを材料とする半導体素子の外周を第1モールド樹脂で被覆する第1モールド工程と、第1モールド樹脂の外側に温度センサを配置する配置工程と、第1モールド樹脂の外周を第1モールド樹脂より耐熱性の低い第2モールド樹脂で被覆するとともに、温度センサを第2モールド樹脂で封止する第2モールド工程と、を備える。上記の方法によれば、本明細書に開示する新規な半導体装置を製造することができる。なお、上記配置工程では、温度センサを、第1モールド樹脂の外周面であって、半導体素子の表面と対向する位置に配置することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の半導体装置を模式的に示す断面図。
【図2】実施例の半導体装置を模式的に示す平面図。
【図3】半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図4】半導体装置の製造工程を示す断面図。
【図5】半導体装置の製造工程を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施例)
図1に示すように、本実施例の半導体装置2は、放熱板10と、半導体素子20と、第1モールド樹脂50と、温度センサ60と、第2モールド樹脂70とを備えている。半導体素子20の外周は、第1モールド樹脂50によって被覆されている。第1モールド樹脂50の外周は、第2モールド樹脂70によって被覆されている。温度センサ60は、第2モールド樹脂70内であって、第1モールド樹脂50の外周面の上部(上面)と接する位置に配置され、半導体素子20の表面と対向している。
【0012】
放熱板10は、熱伝導率の高い材料によって形成されている。放熱板10は、半導体素子20が発生する熱を放熱する。放熱板10は、半導体素子20の裏面(詳細には、裏面電極(図示省略))に、ハンダ12を介して接合されている。
【0013】
半導体素子20は、電力用のスイッチング素子であり、本実施例では、縦型のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が用いられている。本実施例では、半導体素子20は、SiCを材料としている。そのため、半導体素子20は、Siを材料とする半導体素子と比較して、耐熱性が高く、高温でも動作が可能である。図2に示すように、半導体素子20は、平面視すると略矩形状となるように形成されており、その表面には、メインパッド30と信号パッド32とが形成されている。なお、図2は、本実施例の半導体装置2の平面図であるが、第1モールド樹脂50、温度センサ60及び第2モールド樹脂70の図示を省略している。メインパッド30及び信号パッド32は、Al等の導電材料によって形成されている。信号パッド32は、半導体素子20の非セル領域(IGBTが形成されていない領域)の上方に配置されている。本実施例では、信号パッド32は、外部の駆動回路から出力されるゲート信号(小電流の信号)の入力のために用いられる。信号パッド32は、半導体素子20の表面の1箇所に形成されている。信号パッド32は、図示しないボンディングワイヤの一端をボンディングするためのボンディング領域を備える。
【0014】
一方、メインパッド30は、半導体素子20のセル領域(IGBTが形成されている領域)の上方に配置されている。本実施例では、メインパッド30は、半導体素子20の表面の3箇所に形成されている。各メインパッド30は、図示しないボンディングワイヤの一端をボンディングするためのボンディング領域を備える。
【0015】
半導体素子20に電流を流す場合には、メインパッド30を接地線に接続し、半導体素子20の裏面電極(図示省略)を電源線に接続する。この状態で半導体素子20をオンすると半導体素子20を電流が流れ、半導体素子20をオフすると半導体素子20を流れていた電流が遮断される。なお、半導体素子20の表面のうち、メインパッド30と信号パッド32の周囲には絶縁層40が形成されている。
【0016】
図1に示すように、第1モールド樹脂50は、絶縁樹脂により形成され、半導体素子20と、その表面のメインパッド30及び信号パッド32の外周を被覆している。なお、以下、第1モールド樹脂50によって半導体素子20とメインパッド30と信号パッド32の外周を被覆することを「第1モールド樹脂50によって半導体素子20を被覆する」と呼ぶ場合がある。第1モールド樹脂50には、ポリイミドが用いられている。ポリイミドは、エポキシ等の他の絶縁樹脂と比較して耐熱性が高い。耐熱性の高い第1モールド樹脂50によって半導体素子20の外周を被覆することにより、半導体素子20が発する熱が第1モールド樹脂50の外側に伝わり難くなる。
【0017】
第2モールド樹脂70は、第1モールド樹脂50と温度センサ60とを被覆する絶縁樹脂により形成されている。第2モールド樹脂70には、例えばエポキシ等、第1モールド樹脂50よりも耐熱性の低い絶縁樹脂を用いることができる。
【0018】
温度センサ60は、第2モールド樹脂70内に配置されている。さらに、温度センサ60は、第1モールド樹脂50の上面と接する位置に、半導体素子20の表面と対向して配置されている。温度センサ60には、例えば、温度センスダイオード、サーミスタ等を用いることができる。温度センサ60の端子62、64の端部は、それぞれ、第2モールド樹脂70の外側に突出している。温度センサ60は、第2モールド樹脂70の温度を検出する。
【0019】
次いで、図3〜図5を参照して、本実施例に係る半導体装置2の製造方法について説明する。まず、図3に示すように、裏面に放熱板10を接合した半導体素子20を用意する。半導体素子20のメインパッド30及び信号パッド32には、図示しないボンディングワイヤの一端がボンディングされている。
【0020】
次いで、第1モールド樹脂によるモールドを行う。本実施例では、トランスファーモールド法によるモールドを行う。まず、図示しない型を用意し、その成形空間内に半導体素子20を収容する。次いで、その成形空間内に硬化前の第1モールド樹脂(ポリイミド)の液体を供給する。成形空間内に液体が充填されたら、その充填した液体を加熱して硬化させる。液体が硬化することにより、図4に示すように、成形空間内の半導体素子20の外周が、硬化した第1モールド樹脂50によって被覆される。その後、成形品を型から抜く。
【0021】
次いで、図5に示すように、温度センサ60を配置する。温度センサ60は、第1モールド樹脂50の上面であって、半導体素子20の表面と対向する位置に配置する。次いで、温度センサ60を配置した状態を維持したまま、第2モールド樹脂によるモールドを行う。この場合も、上述の第1モールド樹脂50によるモールドと同様に、トランスファーモールド法によるモールドを行う。具体的には、図示しない型を用意し、その成形空間内に、第1モールド樹脂50と温度センサ60を収容する。次いで、その成形空間内に硬化前の第2モールド樹脂(エポキシ等の絶縁樹脂)の液体を充填し、加熱して硬化させる。液体が硬化することにより、図1に示すように、第1モールド樹脂50の外周が、硬化した第2モールド樹脂70によって被覆される。同時に、温度センサ60が、硬化した第2モールド樹脂70で封止される。その後、成形品を型から抜くと、本実施例の半導体装置2が完成する。
【0022】
以上、本実施例の半導体装置2とその製造方法について説明した。上記の通り、本実施例の半導体装置2では、半導体素子20の外周を耐熱性の高い第1モールド樹脂50で被覆する一方、その第1モールド樹脂50の外周を耐熱性の低い第2モールド樹脂70で被覆する。これにより、耐熱性を確保しながら、SiCを材料とする半導体素子20をモールド樹脂で適切に被覆することができる。即ち、SiCを材料とする半導体素子20を耐熱性の高いモールド樹脂70で被覆する一方で、その第1モールド樹脂50の外周を耐熱性の低い第2モールド樹脂70で被覆することにより、半導体素子20を被覆するモールド樹脂が過剰な耐熱性能を備えることを抑制することができる。また、本実施例の半導体装置2では、温度センサ60が第2モールド樹脂70内に配置され、第2モールド樹脂70の温度を検出する。このため、耐熱性の低い第2モールド樹脂70を用いても、第2モールド樹脂70が破損してしまうことを未然に防止することができる。
【0023】
また、本実施例の半導体装置2では、温度センサ60は、第2モールド樹脂70内であって、第1モールド樹脂50と接する位置に配置され、半導体素子20の表面と対向している。そのため、温度センサ60は、第2モールド樹脂70のうち、最も高温になり易い部分の温度を検出することができる。従って、本実施例の半導体装置2では、温度センサ60が適切な位置に配置されている。
【0024】
また、本実施例の半導体装置2では、半導体素子20と別体の温度センサ60によって温度を検出するため、半導体素子20に温度検出のためのセンス領域を設ける必要がない。その結果、SiCを材料とする半導体基板を有効に使うことができ、半導体素子20を小型化することができる。
【0025】
上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
(1)上記の実施例では、温度センサ60は、第1モールド樹脂50と接する位置で、半導体素子20の表面と対向する位置に配されている。温度センサ60の位置は、これには限られず、第2モールド樹脂70内であれば、任意の位置に配置することができる。
(2)上記の実施例では、モールド樹脂50、70は、トランスファーモールド法によって成形されている。これに限られず、モールド樹脂50、70は、コンプレッションモールド法によって成形してもよい。
(3)半導体素子20には、IGBTに限らず、MOSFETやダイオード等の他のパワー半導体素子が用いられていてもよい。
【0026】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0027】
2:半導体装置
10:放熱板
12:ハンダ
20:半導体素子
30:メインパッド
42:信号パッド
40:絶縁層
50:第1モールド樹脂
60:温度センサ
62、64:端子
70:第2モールド樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiCを材料とする半導体素子と、
前記半導体素子の外周を被覆する第1モールド樹脂と、
前記第1モールド樹脂よりも耐熱性が低く、前記第1モールド樹脂の外周を被覆する第2モールド樹脂と、
前記第2モールド樹脂内に配置される温度センサと、を備える、
半導体装置。
【請求項2】
半導体素子の裏面側に配置された放熱板をさらに有しており、
前記温度センサは、前記第2モールド樹脂内であって、前記第1モールド樹脂と接する位置に配置され、前記半導体素子の表面と対向している、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
SiCを材料とする半導体素子の外周を第1モールド樹脂で被覆する第1モールド工程と、
前記第1モールド樹脂の外側に温度センサを配置する配置工程と、
前記第1モールド樹脂の外周を前記第1モールド樹脂より耐熱性の低い第2モールド樹脂で被覆するとともに、前記温度センサを前記第2モールド樹脂で封止する第2モールド工程と、を備える、
半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記配置工程では、前記温度センサを、前記第1モールド樹脂の外周面であって、前記半導体素子の表面と対向する位置に配置する、
請求項3記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62277(P2013−62277A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197975(P2011−197975)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】