説明

半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置

【課題】 HF系溶液に対するエッチングレートが小さいシリコン窒化膜を、成膜温度を上げることなく形成する。
【解決手段】 処理室内に収容された基板上に薄膜を形成する基板処理方法であって、Cl元素を含有する第1の処理ガスを処理室内に供給する第1の工程と、不活性ガスを処理室内に供給して処理室内から第1の処理ガスを排出させる第2の工程と、第2の処理ガスを処理室内に供給して基板上に薄膜を生成する第3の工程と、不活性ガスを処理室内に供給して処理室内から第2の処理ガスを排出させる第4の工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返し、第2の工程では、処理室内から第1の処理ガスを排出させた後も不活性ガスを処理室内に引き続き供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に処理ガスを供給して薄膜を形成する基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAM等の半導体デバイスは、基板上に形成されたゲート電極等を被覆するためのシリコン窒化膜を備えている。シリコン窒化膜を形成する方法として、例えば、基板を収容した処理室内にジクロロシラン(SiHCl2、略称DCS)ガスを供給する第1の工程と、窒素ガスを処理室内に供給して処理室内からDCSガスを排出させる第2の工程と、アンモニア(NH)ガスを処理室内に供給して基板上に薄膜を生成する第3の工程と、窒素(N)ガスを処理室内に供給して処理室内から第2の処理ガスを排出させる第4の工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すALD(Atomic Layer Deposition)法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
なお、シリコン窒化膜が形成された基板上には、自然酸化膜や熱酸化膜等のシリコン酸化膜が形成される場合がある。かかるシリコン酸化膜を除去するため、例えばHF系溶液を用いたエッチング処理が行われる。半導体デバイスの微細化を進めるにはシリコン窒化膜を薄く形成する必要があるが、その際、半導体デバイスの信頼性を確保するため、シリコン窒化膜のエッチング量は少ない方が好ましい。すなわち、シリコン酸化膜をエッチングする際におけるシリコン窒化膜のエッチングレートは小さいほうが好ましい。
【0004】
シリコン窒化膜のエッチングレートは、成膜温度を高めることより低下させることが可能である。しかしながら、成膜温度を高めると、基板上に高濃度に不純物を拡散させて形成した拡散層等が影響を受けてしまい、半導体デバイスの信頼性が低下してしまう場合がある。そのため、シリコン窒化膜の成膜温度は低温であることが好ましい。
【0005】
本発明は、HF系溶液に対するエッチングレートが小さいシリコン窒化膜を、成膜温度を上げることなく形成することが可能な基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、
処理室内に収容された基板上に薄膜を形成する基板処理方法であって、
Cl元素を含有する第1の処理ガスを前記処理室内に供給する第1の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第1の処理ガスを排出させる第2の工程と、
第2の処理ガスを前記処理室内に供給して前記基板上に薄膜を生成する第3の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第2の処理ガスを排出させる第4の工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返し、
前記第2の工程では、前記処理室内から第1の処理ガスを排出させた後も不活性ガスを前記処理室内に引き続き供給する基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる基板処理方法によれば、HF系溶液に対するエッチングレートが小さいシリコン窒化膜を、成膜温度を上げることなく形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置の構成を例示する概略図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉の概略構成図であり、(a)は処理炉の縦断面概略図を、(b)は図1(a)に示す処理炉の横断面概略図をそれぞれ示している。
【図3】成膜温度を525℃として従来のALD法により形成したシリコン窒化膜のエッチングレート比と、成膜温度を550℃として従来のALD法により形成したシリコン窒化膜のエッチングレート比と、をそれぞれ示すグラフ図である。 525℃で成膜したシリコン窒化膜のエッチングレート比と、550℃で成膜したシリコン窒化膜のエッチングレート比とをそれぞれ示すグラフ図である。
【図4】HF系溶液を用いて自然酸化膜をエッチングする工程を示す概略図であり、(a)はシリコン窒化膜のエッチングレートが大きい場合を、(a)はシリコン窒化膜のエッチングレートが小さい場合を、それぞれ示している。
【図5】成膜温度とエッチングレート比との関係、及び成膜温度とCl元素濃度との関係をそれぞれ示すグラフ図である。
【図6】成膜温度とエッチングレート比との関係、及び成膜温度とH元素濃度との関係をそれぞれ示すグラフ図である。
【図7】ALD法を用いた成膜評価における各工程の実施時間を示す模式図であり、(a)は従来の基板処理工程の場合を、(b)は第1の処理ガスの供給時間を延長させた基板処理工程の場合を、(c)は第2の処理ガスの供給時間を延長させた基板処理工程の場合を、(d)は不活性ガスの供給時間を延長させた基板処理工程の場合を、それぞれ示している。
【図8】図7(a)〜(d)に示す各基板処理工程により成膜したシリコン窒化膜について、エッチングレート比及びRIをそれぞれ示すグラフ図である。
【図9】図7(a)〜(d)に示す各基板処理工程におけるガスコストをそれぞれ示す表図である。
【図10】第2工程にて供給する窒素ガスの供給時間とエッチングレート比との関係を示すグラフ図である。
【図11】図7(a)〜(d)に示す各基板処理工程により成膜したシリコン窒化膜について膜中のCl元素濃度をそれぞれ示すグラフ図である。
【図12】図7(a)〜(d)に示す各基板処理工程により成膜したシリコン窒化膜について膜中のH元素濃度をそれぞれ示すグラフ図である。
【図13】図7(a)〜(d)に示す各基板処理工程により成膜したシリコン窒化膜について、Si−N結合数に関するFTIRの測定結果をそれぞれ示すグラフ図である。
【図14】(a)は第2の工程における不活性ガスの供給時間を長くした基板処理工程を示す概略図であり、(b)は第4の工程における不活性ガスの供給時間を長くした基板処理工程を示す概略図である。
【図15】第2の工程における不活性ガスの供給時間のみを長くした場合と、第4の工程における不活性ガスの供給時間のみを長くした場合と、第2の工程及び第4の工程における不活性ガスの供給時間を長くした場合と、におけるシリコン窒化膜のエッチングレート比をそれぞれ示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
上述したように、シリコン酸化膜をエッチングにより除去する際には、シリコン窒化膜のエッチング量は少ないほうが好ましい。具体的には、エッチングレート比(WER=HF系溶液に対するシリコン窒化膜のエッチングレート/HF系溶液に対するシリコン酸化膜のエッチングレート)が、0.2以下であることが好ましいとされている。図4は、シリコン基板上に形成された自然酸化膜を、HF系溶液を用いてエッチングする工程を示す概略図であり、(a)はシリコン窒化膜のエッチングレートが大きい場合を、(b)はシリコン窒化膜のエッチングレートが小さい場合をそれぞれ示している。図4によれば、エッチングレートが大きい場合には、シリコン酸化膜をエッチングする際にシリコン窒化膜
までもがエッチングされてしまい、下地のゲート電極が露出してしまっていることが分かる。
【0010】
また、上述したように、シリコン窒化膜のエッチングレートは、成膜温度を高めることより低下させることが可能である。図3は、成膜温度を525℃として従来のALD法により形成したシリコン窒化膜のエッチングレート比と、成膜温度を550℃として従来のALD法により形成したシリコン窒化膜のエッチングレート比と、をそれぞれ示すグラフ図である。図3によれば、成膜温度を525℃として従来のALD法によりシリコン窒化膜を形成すると、上述のエッチングレート比が0.4を超えてしまう。これに対して、成膜温度を例えば550℃程度にまで高めることより、エッチングレート比は0.2程度にまで低下させることができることが分かる。しかしながら、上述したように、シリコン窒化膜の成膜温度は低温であることが好ましく、550℃の成膜温度は信頼性確保の観点等から受け入れられなくなってきている。
【0011】
そこで、発明者等は、HF系溶液に対するエッチングレートが小さいシリコン窒化膜を、成膜温度を上げることなく形成する方法について鋭意研究を行った。その結果、第2の工程における不活性ガスの供給量あるいは供給時間を調整することにより、上述の課題を解決可能であるとの知見を得た。
【0012】
従来のALD法においては、第2の工程における窒素ガスの供給時間を、第1の工程で供給されたDCSガスを処理室内から排気するために必要かつ十分な時間としていた。第2の工程における窒素ガスの供給時間が短すぎれば、処理室内や排気ライン内にてDCSガスとアンモニアガスとが混合し、パーティクルの要因となるNHCl等の反応生成物が発生してしまうからである。特に、DCSガスとアンモニアガスとが排気ポンプの下流部分(大気圧部分)にて混合すると、排気ポンプ内にて反応生成物が異常発生し、排気ポンプの故障などを招いてしまう場合もある。一方、第2の工程における窒素ガスの供給時間が長すぎれば、1サイクルに要する時間が長くなり、基板処理工程の生産性が低下してしまうからである。
【0013】
これに対し、発明者等は、第2の工程において、処理室内からDCSガスを排出させた後も窒素ガスを処理室内に引き続き供給することにより、シリコン窒化膜中におけるCl元素濃度を低下させ、Si−N結合数を増加させ、HF系溶液に対するエッチングレートを低下させることができるとの知見を得たのである。以下に、かかる知見を基になされた本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(1)基板処理装置の構成
まず、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置101の構成例について、図1を用いて説明する。
【0015】
図1に示すように、本実施形態にかかる基板処理装置101は筐体111を備えている。シリコン等からなるウエハ(基板)200を筐体111内外へ搬送するには、複数のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収納容器)としてのカセット110が使用される。筐体111内側の前方(図中の右側)には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工程内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0016】
カセット110は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後
方に向けて縦方向に90°回転させ、カセット110内のウエハ200を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方を向かせることが可能なように構成されている。
【0017】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105には、複数段、複数列にて複数個のカセット110が保管されるように構成されている。カセット棚105には、後述するウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0018】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連携動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0019】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板移載用治具)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連携動作により、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして後述するボート(基板支持部材)217へ装填(チャージング)したり、ウエハ200をボート217から脱装(ディスチャージング)して移載棚123上のカセット110内へ収納したりするように構成されている。
【0020】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部には開口が設けられ、かかる開口は炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0021】
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬入搬出させる昇降機構としてのボートエレベータ(基板支持部材昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート217が上昇したときに処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体としてのシールキャップ219が水平姿勢で設けられている。
【0022】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。ボート217の詳細な構成については後述する。
【0023】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0024】
また、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給フアンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。図示しない前記クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a及びボート217の周囲を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0025】
(2)基板処理装置の動作
次に、本実施形態にかかる基板処理装置101の動作について説明する。
【0026】
まず、カセット110が、図示しない工程内搬送装置によって、ウエハ200が垂直姿勢となりカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させられる。その結果、カセット110内のウエハ200は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0027】
カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡されて一時的に保管された後、カセット棚105又は予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0028】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作によって移載室124の後方にあるボート217に装填(チャージング)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0029】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、ウエハ200群を保持したボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)される。ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後は、ウエハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ払出される。
【0030】
(3)処理炉の構成
続いて、本発明の一実施形態にかかる処理炉202の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉202の概略構成図であり、(a)は処理炉の縦断面概略図を、(b)は図2(a)に示す処理炉202の横断面概略図をそれぞれ示している。
【0031】
(処理室)
本発明の一実施形態にかかる処理炉202は、反応管203とマニホールド209とを有している。反応管203は、例えば石英(SiO)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性を有する非金属材料から構成され、上端部が閉塞され、下端部が開放された円筒形状となっている。マニホールド209は、例えばSUS等の金属材料から構成され、上端部及び下端部が開放された円筒形状となっている。反応管203は、マニホールド209により下端部側から縦向きに支持されている。反応管203とマニホールド209とは、同心円
状に配置されている。マニホールド209の下端部は、上述したボートエレベータ115が上昇した際に、シールキャップ219により気密に封止されるように構成されている。マニホールド209の下端部とシールキャップ219との間には、処理室201内を気密に封止するOリングなどの封止部材220が設けられている。
【0032】
反応管203及びマニホールド209の内部には、基板としてのウエハ200を処理する処理室201が形成されている。処理室201内には、基板保持具としてのボート217が下方から挿入されるように構成されている。反応管203及びマニホールド209の内径は、ウエハ200を装填したボート217の最大外形よりも大きくなるように構成されている。
【0033】
ボート217は、複数枚のウエハ200を、略水平状態で所定の隙間(基板ピッチ間隔)をもって多段に保持するように構成されている。ボート217は、ボート217からの熱伝導を遮断する断熱キャップ218上に搭載されている。断熱キャップ218は、回転軸267により下方から支持されている。回転軸267は、処理室201内の気密を保持しつつ、シールキャップ219の中心部を貫通するように設けられている。シールキャップ219の下方には、回転軸267を回転させる図示しない回転機構が設けられている。回転機構により回転軸267を回転させることにより、処理室201内の気密を保持したまま、複数のウエハ200を搭載したボート217を回転させることが出来るように構成されている。
【0034】
(第1ガス供給ライン)
マニホールド209の側面には、第2の処理ガスを供給する第1ガス供給ライン232aが接続されている。第1ガス供給ライン232aには、上流側から順に、図示しない第1の処理ガス供給源、マスフローコントローラ241a、開閉バルブ243a、バッファタンクとして構成されたガス溜め247a、及び開閉バルブ243aが設けられている。
【0035】
処理室201内には、ウエハ200の積層方向に沿って第1ガス供給部249aが設けられている。第1ガス供給部249aは、処理室201の内壁と、ボート217に支持されるウエハ200の周縁と、に挟まれる空間の一部を囲うように設けられ、処理室201内の下方からウエハ200を積層する方向(垂直方向)に向けて延在されている。第1ガス供給部249aの内壁と処理室201の内壁とに囲まれる空間には、第1ガス供給ライン232aから供給される処理ガスを一時的に蓄えてガス分子の速度差を緩和するバッファ空間250aが形成されている。
【0036】
第1ガス供給部249aは複数の開口部248aを有している。複数の開口部248aは、各ウエハ200の周縁と対向する第1ガス供給部249aの側壁に、ウエハ200の積層方向に沿うように配列している。各開口部248aは、処理室201の中心(ウエハ200の中心)に向けてそれぞれ開口している。バッファ空間250a内に供給され、ガス分子の速度差が緩和された第1の処理ガスは、処理室201内に収納された各ウエハ200上へと供給(噴出)されるように構成されている。バッファ空間250a内の圧力が異なる場合には、例えば、ガス流の上流側(処理室201の下方)の開口部248aの口径を小さく設定し、ガス流の下流側(処理室201の上方)の開口部248aの口径を大きく設定することにより、ウエハ200の載置位置(高さ)によらず、各ウエハ200への処理ガスの供給量をより均一化することが可能になる。
【0037】
(第2ガス供給ライン)
マニホールド209の側面には、第2の処理ガスを供給する第2ガス供給ライン232bが接続されている。第2ガス供給ライン232bには、上流側から順に、図示しない第2の処理ガス供給源、マスフローコントローラ241b、及び開閉バルブ243bが設け
られている。第2ガス供給ライン232bの下流側端部は、ガス供給ノズル233bに接続されている。ガス供給ノズル233bは、マニホールド209の側面の側面を貫通するとともに、処理室201内にて直角に屈曲して、マニホールド209及び反応管203の内壁に沿うように垂直方向に配設されている。
【0038】
処理室201内には、ウエハ200の積層方向に沿って第2ガス供給部249b設けられている。第2ガス供給部249bは、処理室201の内壁(マニホールド209壁及び反応管203の内壁)と、ボート217に支持されるウエハ200の周縁とに挟まれる空間の一部を囲うように、また、ガス供給ノズル233bの外周を囲うように設けられ、処理室201内の下方からウエハ200を積層する方向(垂直方向)に向けて延在されている。第2ガス供給部249bの内壁と処理室201の内壁とに囲まれる空間には、第2ガス供給ライン232bから供給される処理ガスを一時的に蓄えてガス分子の速度差を緩和するバッファ空間250bが形成されている。
【0039】
バッファ空間250b内には、一対の電極269b,270bが、マニホールド209及び反応管203の内壁に沿うように、ウエハ200を積層する方向(垂直方向)に向けて延在されている。一対の電極269b,270bには、インピーダンス整合器272bを介して外部電源273bが接続されている。これら一対の電極269b,270bは、誘電体からなる円筒状の保護管275bにそれぞれ覆われている。保護管275bの上端部は閉塞され、保護管275bの下端部は開放されて処理室201の外部に連通しており、保護管275bの内部には不活性ガスがパージされている。図示しないが、一対の電極269b,270bの屈曲部近傍の被保持部は、保護管275bの内部において放電防止のための絶縁筒、及び静電遮断のためのシールド筒によって順に覆われている。一対の電極269b,270bへ外部電源273bから高周波電力が印加されることにより、バッファ空間250b内にプラズマ(すなわちプラズマ放電領域)が生成(着火)されるように構成されている。一対の電極269b,270bにより生成(着火)されたプラズマは、バッファ空間250b内に供給された第2の処理ガスを励起するように構成されている。
【0040】
第2ガス供給部249bは複数の開口部248bを有している。複数の開口部248bは、各ウエハ200の周縁と対向する第2ガス供給部249bの側壁に、ウエハ200の積層方向に沿うように配列している。各開口部248bは、処理室201の中心(ウエハ200の中心)に向けてそれぞれ開口している。バッファ空間250b内に供給され、プラズマにより励起された第2の処理ガスは、処理室201内に収納された各ウエハ200上へと供給(噴出)されるように構成されている。バッファ空間250b内の圧力が異なる場合には、例えば、ガス流の上流側(処理室201の下方)の開口部248bの口径を小さく設定し、ガス流の下流側(処理室201の上方)の開口部248bの口径を大きく設定することにより、ウエハ200の載置位置(高さ)によらず、各ウエハ200への処理ガスの供給量をより均一化することが可能になる。
【0041】
(不活性ガス供給ライン)
第1ガス供給ライン232aの開閉バルブ244aの下流側、及び第2ガス供給ライン232bの開閉バルブ243bの下流側には、処理室201内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ライン232c,232dがそれぞれ接続されている。不活性ガス供給ライン232cには、上流側から順に、図示しない不活性ガス供給源、マスフローコントローラ241c、開閉バルブ243cが設けられている。また、不活性ガス供給ライン232dには、上流側から順に、図示しない不活性ガス供給源、マスフローコントローラ241d、開閉バルブ243dが設けられている。
【0042】
(排気ライン)
マニホールド209の側壁には、処理室201内の雰囲気を排気する排気ライン231が接続されている。排気ライン231の下流側端部には、真空ポンプ246が設けられている。排気ライン231には、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure
Controller)バルブ243dが設けられている。真空ポンプ246を作動させつつAPCバルブ243eの弁の開度を調整することにより、処理室201内の圧力を調整することが可能なように構成されている。
【0043】
(抵抗加熱ヒータ)
反応管203の外周を囲うように、加熱手段としての抵抗加熱ヒータ207が設けられている。抵抗加熱ヒータ207への通電が行われることにより、反応管203の外部から処理室201内が加熱されるように構成されている。このように、抵抗加熱ヒータ207がホットウォール型構造として構成されていることにより、処理室201内の全体にわたって温度を均一に維持することが可能となる。
【0044】
(コントローラ)
処理炉202には、コントローラ280が設けられている。コントローラ280は、開閉バルブ243a,244a,243b、マスフローコントローラ241a,241b、回転軸267を回転させる回転手段、インピーダンス整合器272b、外部電源273b、真空ポンプ246、APCバルブ243e、及び抵抗加熱ヒータ207にそれぞれ接続されており、これらの動作をそれぞれ制御するように構成されている。
【0045】
(4)基板処理工程
続いて、本発明の一実施形態としての基板処理工程について、図2を参照しながら説明する。なお、本実施形態は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法の中の1つであるALD法を用いてウエハ200の表面にSiNやSiからなるシリコン窒化膜を成膜する方法であり、半導体装置の製造工程の一工程として実施される。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0046】
(基板搬入工程)
上述した手順により、処理対象のウエハ200をボート217内へと装填する。続いて、ボートエレベータ115を上昇させて、ウエハ200を装填したボート217を処理室201内へと搬入すると共に、処理室201内をシールキャップ219により気密に封止する。このとき、開閉バルブ243a,243b,244a、APCバルブ243eは閉じておく。ウエハ200の搬入後は、回転機構によりウエハ200を回転させる。なお、処理室201内は例えば300℃に予め昇温しておくことが好ましい。
【0047】
(減圧及び昇温工程)
開閉バルブ243c,243dを閉じ、APCバルブ243eを開くことにより処理室201内を排気する。なお、減圧中は、開閉バルブ244aを開くことにより、ガス溜め247a内も併せて排気する。そして、APCバルブ243eの開度を調整することにより、処理室201内の圧力が所定の圧力になるよう制御する。また、抵抗加熱ヒータ207に電力を供給することにより、処理室201内の温度を所定の温度まで昇温する。このとき、ウエハ200の表面温度が例えば525℃になるように、抵抗加熱ヒータ207への通電量1を制御する。
【0048】
基板搬入工程、減圧及び昇温工程を実施する際には、APCバルブ243e、及び開閉バルブ243c,243dは開けておき、不活性ガスとしての窒素(N)ガスを処理室201内に常に流しておくことが好ましい。これにより、処理室201内の酸素(O)濃度を下げると共に、パーティクル(異物)や金属汚染物のウエハ200への付着を抑制
することができる。
【0049】
(第1の工程)
続いて、Cl元素を含有する第1の処理ガスとしてのジクロロシラン(SiHCl、略称DCS)ガスを処理室201内に供給する。
【0050】
具体的には、開閉バルブ244aを閉じたまま、開閉バルブ243aを開くことにより、マスフローコントローラ241aにより流量制御しながら、ガス溜め247a内にDCSガスを充填する。ガス溜め247a内の圧力が例えば20000Pa以上になったら、開閉バルブ243aを閉じることにより、ガス溜め247a内へのDCSガスの充填を停止する。ガス溜め247a内へのDCSガスの充填は、減圧及び昇温工程の終了前、あるいは後述する第4の工程の終了前に完了しておくことが好ましい。
【0051】
そして、開閉バルブ243a,243b、APCバルブ243eを閉じたまま、開閉バルブ244aを開くことにより、ガス溜め247a内と処理室201内との圧力差を利用して、ガス溜め247a内のDCSガスを所定時間以内に(ごく短時間で)処理室201内へと導入する。その結果、処理室201内の圧力は例えば931Pa程度まで上昇し、ウエハ200の表面は高圧のDCSガスに暴露され、ウエハ200上にはDCSガスのガス分子が化学吸着する。
【0052】
処理室201内へのDCSガスの供給開始から所定時間(例えば6秒)が経過したら、開閉バルブ244aを閉めて、処理室201内へのDCSガスの供給を停止する。
【0053】
(第2の工程)
続いて、不活性ガスとしての窒素(N)ガスを処理室201内に供給して処理室201内からDCSガスを排気させる。具体的には、APCバルブ243e及び開閉バルブ243c,243dを開くことにより窒素ガスを処理室201内に供給しつつ、処理室201内に残留しているDCSガスや反応生成物等を排気ライン231から排気する。窒素ガスを処理室201内に供給することにより、処理室201内からのDCSガスや反応生成物の排気効率を高めることができる。
【0054】
この際、第2の工程における窒素ガスの供給量あるいは供給時間を調整することにより、本基板処理工程で形成されるシリコン窒化膜中におけるCl元素濃度を制御する。例えば、処理室201内からのDCSガスや反応生成物等の排出が完了した後、開閉バルブ243c,243d、APCバルブ243eを開けたままとし、窒素ガスを処理室201内に引き続き供給する。これにより、シリコン窒化膜中におけるCl元素濃度を低下させ、Si−N結合数を増加させ、HF系溶液に対するエッチングレートを低下させることができる。
【0055】
処理室201内への窒素ガスの供給開始から所定時間(例えば62秒)が経過し、シリコン窒化膜中からのCl元素の脱離量が所定値以下に低減して収束したら、開閉バルブ243c,243dを閉めて、処理室201内への窒素ガスの供給を停止する。
【0056】
(第3の工程)
続いて、第2の処理ガスとしてのアンモニア(NH)ガスを処理室201内に供給してウエハ200上に薄膜を生成する。なお、本実施形態においては、成膜温度を低下させるため、アンモニアガスをプラズマにより活性化させてから供給することとしている。
【0057】
具体的には、開閉バルブ243c,243dを閉じ、開閉バルブ243bを開くことにより、マスフローコントローラ241bにより流量制御しながら、バッファ空間250b
内にアンモニアガスを供給して、ガス分子の速度差を緩和させる。バッファ空間250b内の圧力が所定の着火圧力に到達したら、一対の電極269b,270bに対して、インピーダンス整合器272bを介して外部電源273bから高周波電力を供給し、バッファ空間250b内にプラズマを生成(着火)させる。そして、生成させたプラズマにより、バッファ空間250b内に供給されているアンモニアガスを励起(活性化)させ、開口部248bを介して処理室201内に活性粒子(ラジカル)を供給する。活性粒子がウエハ200上に化学吸着しているDCSガスのガス分子と反応することにより、ウエハ200の表面上に1原子層から数原子層のSiNやSiからなるシリコン窒化膜が生成される。
【0058】
処理室201内へのアンモニアガスの供給開始から所定時間(例えば20秒)が経過したら、一対の電極269b,270bへの電力供給を停止すると共に、開閉バルブ243bを閉めて処理室201内へのアンモニアガスの供給を停止する。
【0059】
(第4の工程)
続いて、不活性ガスとしての窒素ガスを処理室201内に供給して、処理室201内からアンモニアガスを排気させる。具体的には、APCバルブ243eを開いたまま、開閉バルブ243c,243dを開くことにより、窒素ガスを処理室201内に供給しつつ、処理室201内に残留しているアンモニアガスや反応生成物等を排気ライン231から排気する。窒素ガスを処理室201内に供給することにより、処理室201内からのDCSガスや反応生成物の排気効率を高めることができる。
【0060】
この際、第2の工程と同様に、第4の工程における窒素ガスの供給量あるいは供給時間を調整することにより、上述のシリコン窒化膜中におけるCl元素濃度を制御してもよい。例えば、処理室201内からのアンモニアガスや反応生成物等の排出が完了した後、第2の工程と同様に、開閉バルブ243c,243d、APCバルブ243eを開けたままとし、窒素ガスを処理室201内に引き続き供給してもよい。これにより、シリコン窒化膜中におけるCl元素濃度をさらに低下させ、Si−N結合数をさらに増加させ、HF系溶液に対するエッチングレートをさらに低下させることができる。
【0061】
処理室201内への窒素ガスの供給開始から所定時間(例えば61秒)が経過し、シリコン窒化膜中からのCl元素の脱離量が所定値以下に低減して収束したら、開閉バルブ243c,243dを閉めて、処理室201内への窒素ガスの供給を停止する。
【0062】
(繰り返し工程)
第1の工程〜第4の工程を1サイクルとしてこのサイクルを複数回繰り返す。これにより、ウエハ200上に所望膜厚のシリコン窒化膜を形成することができる。例えば、1サイクル毎に生成されるシリコン窒化膜の厚さが1Åであるとき、このサイクルを20回繰り返すことにより、20Åの厚さのシリコン窒化膜が形成される。
【0063】
(基板搬出工程)
各ウエハ200上に所望膜厚の薄膜を形成した後、回転機構によるウエハ200の回転を停止させる。そして、上述した基板搬入工程及び減圧及び昇温工程とは逆の手順により処理室201内を例えば300℃に降温させるとともに大気圧まで復帰させ、所望膜厚の薄膜が形成されたウエハ200を処理室201内から搬出する。以上により、本実施形態にかかる基板処理工程が完了する。
【0064】
(5)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す(a)〜(e)のうち1つ又は複数の効果を奏する。
【0065】
(a)本実施形態によれば、第2の工程において、処理室201内からDCSガスや反応生成物等を排出させた後、開閉バルブ243c,243d、APCバルブ243eを開けたままとし、窒素ガスを処理室201内に引き続き供給する。これにより、シリコン窒化膜中におけるCl元素濃度を低下させ、Si−N結合数を増加させ、HF系溶液に対するエッチングレートを低下させることができる。
【0066】
(b)本実施形態によれば、第2の工程のガス供給時間を延長することのみにより、HF系溶液に対するシリコン窒化膜のエッチングレートを低下させることができる。すなわち、成膜温度を高めることなく、エッチングレートを低下させることができる。例えば、成膜温度を525℃としたまま、エッチングレート比が0.2であるシリコン窒化膜を形成することが可能になる。
【0067】
(c)本実施形態によれば、第2の工程のガス供給時間のみを延長することにより、HF系溶液に対するシリコン窒化膜のエッチングレートを低下させることができる。なお、後述する通り、第1の工程におけるDCSガスの供給時間を延長させることによっても、あるいは第3の工程におけるアンモニアガスの供給時間を延長させることによっても、シリコン窒化膜のエッチングレートを低下させることが可能である。しかしながら、窒素ガスのガスコストはDCSガスやアンモニアガスと比較して低コストである。本実施形態は、窒素ガスの供給時間のみを延長させているため、エッチングレートの低いシリコン窒化膜を比較的低コストで形成することができる。
【0068】
(d)本実施形態によれば、処理室201内への窒素ガスの供給開始から所定時間が経過し、シリコン窒化膜中からのCl元素の脱離量が所定値以下に低減して収束したら、開閉バルブ243c,243dを閉めて、処理室201内への窒素ガスの供給を停止する。これにより1サイクルあたりの処理時間が不要に延長されることを防ぎ、基板処理工程の生産性が不用意に低下してしまうことを抑制できる。
【0069】
(e)本実施形態によれば、第4の工程においても、第2の工程と同様に、処理室201内からアンモニアガスや反応生成物等を排出させた後、開閉バルブ243c,243d、APCバルブ243eを開けたままとし、窒素ガスを処理室201内に引き続き供給してもよい。かかる場合には、シリコン窒化膜中におけるCl元素濃度をさらに低下させ、Si−N結合数をさらに増加させ、HF系溶液に対するエッチングレートをさらに低下させることができる。
【0070】
(6)評価結果
以下に、上述の効果を裏付ける評価結果について、図面を参照しながら説明する。
【0071】
(評価条件)
まず、評価条件について図7を参照しながら説明する。図7は、ALD法を用いた成膜評価における各工程の実施時間を示す模式図であり、(a)は従来の基板処理工程の場合を、(b)は第1の処理ガスの供給時間を延長させた基板処理工程の場合を、(c)は第2の処理ガスの供給時間を延長させた基板処理工程の場合を、(d)は不活性ガスの供給時間を延長させた基板処理工程の場合を、それぞれ示している。
【0072】
図7(a)においては、第1の工程におけるDCSガスの供給時間を6秒、第2の工程における窒素ガスの供給時間を8秒、第3の工程におけるアンモニアガスの供給時間を20秒、第3の工程における窒素ガスの供給時間を4秒とした。なお、第1の工程におけるDCSガスの供給量は60cc、第3の工程におけるアンモニアガスの供給流量は5slm、外部電源273bからの供給電力(プラズマ生成電力)は50Wとし、成膜温度は525℃とした。以下、かかる成膜条件を「従来レシピ」とも呼ぶ。
【0073】
図7(b)においては、第1の工程におけるDCSガスの供給時間を63秒、第2の工程における窒素ガスの供給時間を8秒、第3の工程におけるアンモニアガスの供給時間を20秒、第3の工程における窒素ガスの供給時間を4秒とした。なお、第1の工程におけるDCSガスの供給量は660ccとした。他の条件は図7(a)と同様である。以下、かかる成膜条件を「DCS long」とも呼ぶ。
【0074】
図7(c)においては、第1の工程におけるDCSガスの供給時間を6秒、第2の工程における窒素ガスの供給時間を8秒、第3の工程におけるアンモニアガスの供給時間を60秒、第3の工程における窒素ガスの供給時間を4秒とした。なお、第3の工程におけるアンモニアガスの供給流量は5slmとした。他の条件は図7(a)と同様である。以下、かかる成膜条件を「NH long」とも呼ぶ。
【0075】
図7(d)においては、第1の工程におけるDCSガスの供給時間を6秒、第2の工程における窒素ガスの供給時間を62秒、第3の工程におけるアンモニアガスの供給時間を20秒、第3の工程における窒素ガスの供給時間は61秒とした。他の条件は図7(a)と同様である。以下、かかる成膜条件を「N long」とも呼ぶ。
【0076】
(膜質に関する評価結果)
図7(a)〜図7(d)にて示す条件にて形成した各シリコン窒化膜に関する評価結果を、図8、図11〜13を用いて説明する。
【0077】
図8は、図7(a)〜図7(d)に示す各基板処理工程により成膜したシリコン窒化膜について、エッチングレート比及び屈折率(RI)をそれぞれ示すグラフ図である。なお、図中において、柱状グラフはエッチングレート比(左側縦軸)を示しており、△印は屈折率(右側縦軸)を示している。また、「Top」はボート217内の上部付近に保持されたウエハ200に関する評価結果を、「Ctr」はボート217内の中部付近に保持されたウエハ200に関する評価結果を、「Btm」はボート217内の底部付近に保持されたウエハ200に関する評価結果をそれぞれ示している。図8によれば、従来レシピ(図7(a))にて形成したシリコン窒化膜のエッチングレート比はいずれも0.4を超えている。これに対し、N long(図7(d))にて形成したシリコン窒化膜のエッチングレート比はいずれも0.2未満であることが分かる。なお、図8によれば、DCS
long(図7(b))及びNH long(図7(c))にて形成したシリコン窒化膜のエッチングレート比はいずれも0.3未満であり、N long(図7(d))程ではないが、従来レシピ(図7(a))にて形成したシリコン窒化膜のエッチングレート比と比較して改善されていることが分かる。
【0078】
図11は、図7(a)〜図7(d)に示す各基板処理工程により成膜したシリコン窒化膜中のCl元素濃度をそれぞれ示すグラフ図である。図11の横軸はシリコン窒化膜表面からの深さ(nm)を示し、図11の縦軸はCl元素濃度(atoms/cm)を示している。図11によれば、従来レシピ(図7(a))にて形成したシリコン窒化膜中のCl元素濃度(曲線(a))と比較して、N long(図7(d))にて形成したシリコン窒化膜中のCl元素濃度(曲線(d))の方が低下していることが分かる。なお、図8によれば、DCS long(図7(b))及びNH long(図7(c))にて形成したシリコン窒化膜中におけるCl元素濃度(曲線(b)及び曲線(c))についても、従来レシピ(図7(a))にて形成したシリコン窒化膜中のCl元素濃度(曲線(a))より低下していることが分かる。
【0079】
図12は、図7(a)〜図7(d)に示す各基板処理工程により成膜したシリコン窒化膜について膜中のH元素濃度をそれぞれ示すグラフ図である。図12の横軸はシリコン窒
化膜表面からの深さ(nm)を示し、図12の縦軸はH元素濃度(atoms/cm)を示している。図12によれば、従来レシピ(図7(a))にて形成したシリコン窒化膜中のH元素濃度(曲線(a))と比較して、N long(図7(d))にて形成したシリコン窒化膜中のH元素濃度(曲線(d))の方が若干ではあるが低下していることが分かる。なお、図12によれば、DCS long(図7(b))及びNH long(図7(c))にて形成したシリコン窒化膜中におけるH元素濃度(曲線(b)及び曲線(c))については、従来レシピ(図7(a))にて形成したシリコン窒化膜中のH元素濃度(曲線(a))と比較してほとんど差がないことが分かる。
【0080】
図13は、図7(a)〜図7(d)に示す各基板処理工程により成膜したシリコン窒化膜について、Si−N結合数に関するFTIR(フーリエ変換型赤外分光)の測定結果をそれぞれ示すグラフ図である。図13の横軸はシリコン窒化膜表面からの深さ(nm)を示し、図13の縦軸は、シリコン窒化膜中のSi−N結合による光吸収量を示しており、横軸はシリコン窒化膜への照射光の波長を示している。図13によれば、従来レシピ(図7(a))にて形成したシリコン窒化膜の光吸収量よりも、N long(図7(d))にて形成したシリコン窒化膜の光吸収量の方が多く、N long(図7(d))にて形成したシリコン窒化膜中においてSi−N結合数が増加していることが分かる。
【0081】
以上示すとおり、第2の工程において、処理室201内からDCSガスや反応生成物等を排気させた後、窒素ガスを処理室201内に引き続き供給することにより、シリコン窒化膜中におけるCl元素濃度を低下させ(図11)、Si−N結合数を増加させ(図13)、HF系溶液に対するシリコン窒化膜のエッチングレートを低下させる(図8)ことが可能であることが分かる。
【0082】
(成膜コストに関する評価結果)
続いて、発明者等は、図7(a)〜図7(d)に示す各基板処理工程におけるガスコスト(成膜に必要なガスのコスト)について比較検証を行った。図9は、図7(a)〜(d)に示す各基板処理工程におけるガスコストをそれぞれ示す表図である。図9に示す各コストは、300Åのシリコン窒化膜を形成する場合において、従来レシピ(図7(a))におけるDCSガスのコストに対する比率を用いて表している。
【0083】
図9によれば、300Åのシリコン窒化膜を形成するには、従来レシピ(図7(a))では375サイクルを要し、DCSガスのコストを1.0とした場合、アンモニアガスのコストは1.7となり、トータルガスコストは2.7となる。これに対し、N long(図7(d))では407サイクルを要し、DCSガスのコストは1.1となり、アンモニアのガスは1.7となり、トータルガスコストは2.9となる。また、DCS long(図7(b))では243サイクルを要し、DCSガスのコストは7.3となり、アンモニアのガスは1.1となり、トータルガスコストは8.3となる。また、NH long(図7(c))では348サイクルを要し、DCSガスのコストは0.9となり、アンモニアのガスは4.3となり、トータルガスコストは5.3となる。
【0084】
すなわち、窒素ガスの供給時間を延長するN long(図7(d))の成膜コストは、従来レシピ(図7(a))の成膜コストと比べてほとんど増加しないことが分かる。また、窒素ガスの供給時間を延長するN long(図7(d))の成膜コストは、DCS long(図7(b))の成膜コストやNH long(図7(c))の成膜コストと比較してはるかに少ないことが分かる。
【0085】
(窒素ガスの供給時間の上限値)
続いて発明者等は、第2工程にて供給する窒素ガスの供給時間とエッチングレート比との関係について評価を行った。図10に評価結果を示す。図10によれば、窒素ガスの供
給時間を延ばすにつれてシリコン窒化膜のエッチングレートが低下することが分かる。また、窒素ガスの供給時間が65秒を超えると、シリコン窒化膜のエッチングレートはほとんど低下しないことが分かる。すなわち、窒素ガスの供給開始から所定時間が経過すると、シリコン窒化膜中からのCl元素の脱離量(シリコン窒化膜のエッチングレートの低下量)が所定値以下に低減して収束することが分かる。従って、Cl元素の脱離量(シリコン窒化膜のエッチングレートの低下量)が所定値以下に低減したら、第2工程における窒素ガスの供給を停止して第3工程を開始してよい(あるいは、第4工程における窒素ガスの供給を停止して第1工程を開始してよい)ことが分かる。
【0086】
(第2工程と第4の工程との比較)
続いて発明者等は、第2工程のみにて窒素ガスの供給時間を延長させた場合と、第4工程のみにて窒素ガスの供給時間を延長させた場合と、第2工程と第4の工程との両工程にて窒素ガスの供給時間を延長させた場合と、におけるシリコン窒化膜のエッチングレート比をそれぞれ測定した。図15に測定結果を示す。なお、図14(a)は、第2の工程における不活性ガスの供給時間を長くした基板処理工程を示す概略図であり、(b)は第4の工程における不活性ガスの供給時間を長くした基板処理工程を示す概略図である。成膜温度は525℃であり同一とした。
【0087】
図15に示すように、第2工程のみにて窒素ガスの供給時間を延長させた場合(図中左)にはエッチングレート比が0.2となり、第4工程のみにて窒素ガスの供給時間を延長させた場合(図中央)にはエッチングレート比が0.35となり、第2工程と第4の工程との両工程にて窒素ガスの供給時間を延長させた場合(図中右)にはエッチングレート比が0.2未満となった。すなわち、シリコン窒化膜のエッチングレートを低下させるには、第4工程における窒素ガスの供給時間を延長させるよりも、第2工程における窒素ガスの供給時間を延長させることが有効であることが分かった。また、第2工程と第4の工程との両工程にて窒素ガスの供給時間を延長させることにより、エッチングレートをさらに低下させることが可能であることが分かった。
【0088】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0089】
本発明の一態様によれば、
処理室内に収容された基板上に薄膜を形成する基板処理方法であって、
Cl元素を含有する第1の処理ガスを前記処理室内に供給する第1の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第1の処理ガスを排出させる第2の工程と、
第2の処理ガスを前記処理室内に供給して前記基板上に薄膜を生成する第3の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第2の処理ガスを排出させる第4の工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返し、
前記第2の工程では、前記処理室内から第1の処理ガスを排出させた後も不活性ガスを前記処理室内に引き続き供給する基板処理方法が提供される。
【0090】
好ましくは、前記第2の工程では、前記処理室内から第1の処理ガスを排気させた後、前記薄膜中からCl元素を脱離させるように、不活性ガスを前記処理室内に引き続き供給する。
【0091】
好ましくは、前記第2の工程では、前記処理室内から第1の処理ガスを排気させた後、前記薄膜中からのCl元素の脱離量が所定値以下に低減するまで、不活性ガスを前記処理室内に引き続き供給する。
【0092】
好ましくは、前記第4の工程では、前記処理室内から第3の処理ガスを排出させた後も不活性ガスを前記処理室内に引き続き供給する。
【0093】
好ましくは、前記第4の工程では、前記処理室内から第2の処理ガスを排気させた後、前記薄膜中からCl元素を脱離させるように、不活性ガスを前記処理室内に引き続き供給する。
【0094】
好ましくは、前記第4の工程では、前記処理室内から第2の処理ガスを排気させた後、前記薄膜中からのCl元素の脱離量が所定値以下に低減するまで、不活性ガスを前記処理室内に引き続き供給する。
【0095】
好ましくは、前記第2の工程における不活性ガスの総供給量が、前記第4の工程における不活性ガスの総供給量よりも多い。
【0096】
好ましくは、前記第2の工程における不活性ガスの供給時間が、前記第4の工程における不活性ガスの供給時間よりも長い。
【0097】
本発明の他の態様によれば、
処理室内に収容された基板上に薄膜を形成する基板処理方法であって、
Cl元素を含有する第1の処理ガスを前記処理室内に供給する第1の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第1の処理ガスを排出させる第2の工程と、
第2の処理ガスを前記処理室内に供給して前記基板上に薄膜を生成する第3の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第2の処理ガスを排出させる第4の工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返し、
前記第2の工程における不活性ガスの供給量あるいは供給時間を調整することにより、前記薄膜中におけるCl元素濃度を制御する基板処理方法が提供される。
【0098】
本発明の他の態様によれば、
処理室内に収容された基板上に薄膜を形成する基板処理方法であって、
Cl元素を含有する第1の処理ガスを前記処理室内に供給する第1の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第1の処理ガスを排出させる第2の工程と、
第2の処理ガスを前記処理室内に供給して前記基板上に薄膜を生成する第3の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第2の処理ガスを排出させる第4の工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返し、
前記第4の工程における不活性ガスの供給量あるいは供給時間を調整することにより、前記薄膜中におけるCl元素濃度を制御する基板処理方法が提供される。
【0099】
好ましくは、
前記第1の処理ガスはジクロロシランガスであり、
前記第2の処理ガスはプラズマにより活性化させたアンモニアガスであり、
前記不活性ガスは窒素ガスである。
【符号の説明】
【0100】
101 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
201 処理室
202 処理炉
231 排気ライン
232a 第1ガス供給ライン
232b 第2ガス供給ライン
232c 不活性ガス供給ライン
232d 不活性ガス供給ライン
280 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にシリコン窒化膜を形成する工程と、
前記基板上に更に形成される薄膜をエッチングする工程と、を有し、
前記シリコン窒化膜を形成する工程では、
Cl元素を含有する第1の処理ガスを前記基板を収容した処理室内に供給する第1の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第1の処理ガスを排出させる第2の工程と、
第2の処理ガスを前記処理室内に供給して前記基板上に薄膜を生成する第3の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第2の処理ガスを排出させる第4の工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返し、
前記第2の工程では、
前記処理室内から第1の処理ガスを排出させた後も不活性ガスを前記処理室内に引き続き供給する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記基板上に更に形成される薄膜をエッチングする工程では、前記基板上にHF系水溶液を供給することで前記薄膜をエッチングする
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板上に更に形成される薄膜はシリコン酸化膜である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
基板上にシリコン窒化膜を形成する工程と、
前記基板上に更に形成される薄膜をエッチングする工程と、を有し、
前記シリコン窒化膜を形成する工程では、
Cl元素を含有する第1の処理ガスを前記基板を収容した処理室内に供給する第1の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第1の処理ガスを排出させる第2の工程と、
第2の処理ガスを前記処理室内に供給して前記基板上に薄膜を生成する第3の工程と、
不活性ガスを前記処理室内に供給して前記処理室内から第2の処理ガスを排出させる第4の工程と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返し、
前記第2の工程では、
前記処理室内から第1の処理ガスを排出させた後も不活性ガスを前記処理室内に引き続き供給する
ことを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
前記基板上に更に形成される薄膜をエッチングする工程では、前記基板上にHF系水溶液を供給することで前記薄膜をエッチングする
ことを特徴とする請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板上に更に形成される薄膜はシリコン酸化膜である
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
シリコン窒化膜及び薄膜が形成され、前記薄膜がエッチングされる基板を収容する処理室と、
前記処理室内に第1の処理ガスを供給する第1処理ガス供給ラインと、
前記処理室内に第2の処理ガスを供給する第2処理ガス供給ラインと、
前記処理室内に不活性ガスを供給する不活性ガス供給ラインと、
前記処理室内を排気する排気ラインと、
少なくとも前記第1処理ガス供給ライン、前記第2処理ガス供給ライン、前記不活性ガス供給ライン及び前記排気ラインを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1の処理ガスを前記処理室内に供給させる第1の処理と、不活性ガスを前記処理室内に供給させて前記処理室内から第1の処理ガスを排出させる第2の処理と、第2の処理ガスを前記処理室内に供給させて前記基板上に薄膜を生成させる第3の処理と、不活性ガスを前記処理室内に供給させて前記処理室内から第2の処理ガスを排出させる第4の処理と、を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数繰り返すことで前記シリコン窒化膜を形成する際、前記第2の処理では、前記処理室内から第1の処理ガスを排出させた後も不活性ガスを前記処理室内に引き続き供給させる
ことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−138641(P2012−138641A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−97908(P2012−97908)
【出願日】平成24年4月23日(2012.4.23)
【分割の表示】特願2008−127957(P2008−127957)の分割
【原出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】