説明

半導体装置の製造方法および絶縁膜のエッチング方法

コンタクトホールのエッチングにおいて、エッチングの途中においてイオン照射のエネルギーだけでなく、ガス組成を変化させ、高速エッチングから低速エッチングに切り替え、ダメージを低減させる。低速エッチングでは、ガス組成をも変化させることにより、コンタクトホール底部に、強固なフロロカーボン膜を形成し、シリコン表面を保護した状態でエッチングすることができる。このため、シリコンにドープされた不純物の不活性化を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層のエッチング工程を含む半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程においては、エッチングが必ず行われる。例えば、半導体装置として電界効果トランジスタを製造する場合、ソースおよびドレインへの配線を行う際に層間絶縁膜の材料であるシリコン酸化膜のような絶縁膜にコンタクトホールを反応性イオンエッチングにより形成して、その開口されたコンタクトホールへ電極または金属配線を施している。
【0003】
この場合、コンタクトホール底部におけるコンタクト抵抗は、下地シリコンの抵抗率が一定であればコンタクト径に反比例して上昇する。このため、半導体装置の微細化、高集積化がますます進み、コンタクト径が微小化するにつれて、コンタクト底部における抵抗率は上昇する傾向にある。特に、コンタクトホールを通常の反応性イオンエッチングによって形成する際、酸化膜のエッチングが完了して下地シリコンが露出した時に下地シリコンにダメージが誘起される。これは、高エネルギーのイオンが下地シリコンに照射され、この結果、シリコンにドープされたボロンや燐などの不純物が不活性化してしまい、下地シリコンの抵抗率が上昇してしまうからである。特に、p+層を形成するための不純物であるボロンは未結合手を持つので、燐や砒素に比べて非常に不活性化しやすく、このp+層にイオン照射が行われると、不活性化によって、p+層からp層に近くなってしまう。この結果、下地シリコンの抵抗率が上昇することになる。
【0004】
このように、イオン照射による下地シリコンの抵抗率の上昇を防止するため、エッチング後にダメージ除去工程を導入する方法が提案されている。この方法は、コンタクトホールエッチング、レジスト除去工程を経た後、キャリアが不活性化したダメージ層をケミカルドライエッチにより除去し、再び高濃度に不純物をドーピングするためにイオン注入を行い、さらに活性化アニールを行う手法である。
【0005】
更に、抵抗率の上昇に伴う問題を解決する他の従来技術として、ダメージフリー2段階エッチングが、例えば”The Ninth International Symposium on Semiconductor Manufacturing,Proceeding of ISSM2000,pp.102−105,Tokyo,September 2000.”(以下、従来技術1という)において提案されている。これは、下地シリコンのイオン照射ダメージを低減して、且つ、エッチング時間を増大させないように、コンタクトホールの90%をセルフバイアス電圧(Vdc)を−500V〜−600Vに設定してエッチングを行い、コンタクトホールの残り10%をVdc=−150Vに設定してエッチングを行うものである。尚、このときのプラズマ励起のために使用される導入ガスは、Xe、C、CO、Oである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上に述べた従来の2つの解決手段のうち、エッチング後にダメージ層を除去する方法では、除去後の不純物ドーピング、活性化アニール、およびこれらの間に行われる洗浄を加えると数十工程にも及ぶ製造工程数の増加をまねき、TAT(Turn Around Time)が増加してしまい、コストが増大してしまうという問題点があった。
【0007】
一方、ダメージフリー2段階エッチングについては、本発明者等の研究、実験によれば、従来技術1に記載されたカーボン(C)及びフッ素(F)を含むエッチングガスを用いてダメージフリー2段階エッチングでコンタクトホール形成を行ったところ、種々の問題が生じることが判明した。
【0008】
まず、コンタクトホールの90%を−500〜−600Vのセルフバイアス(Vdc)でエッチングし、酸化膜の残り10%をVdc=−150Vに設定してエッチングすると、残り10%の酸化膜エッチングの際に、コンタクトホールの側壁には、付着確率の大きいカーボンを含むフロロカーボン系のラジカルが、高エネルギーのイオンの衝撃を受けずに側壁に到達し、そのまま側壁に堆積することが判明した。この結果として、コンタクトホールの底部へエッチングガスが到達せず、付着確率がカーボンに比べて小さいフッ素を多く含むラジカルが選択的にコンタクトホール底部へ到達してしまうことが判明した。
【0009】
このため、下地シリコンが露出した時に、コンタクトホール底部には、下地シリコンをイオン衝撃から守る強固なフロロカーボン膜が形成されないと云う現象が見出された。
【0010】
このような状態でエッチングが行われると、下地シリコンが不可避的にエッチングされてしまい、下地シリコンとのエッチング選択比(酸化膜のエッチング速度/下地シリコンのエッチング速度)が確保されないという問題点があることが分かった。同時に、フォトレジストとのエッチング選択比(酸化膜のエッチング速度/フォトレジストのエッチング速度)も劣化することが分かった。
【0011】
本発明の目的は、ダメージ層除去の工程を必要とせず、さらに高フォトレジスト選択比かつ高シリコン選択比であるダメージフリーエッチングプロセス技術を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は下地シリコンが不所望にエッチングされるのを防止できる半導体装置の製造方法およびエッチング方法を提供することである。
【0013】
本発明の更に他の目的はコンタクトホール底部に効率的にフロロカーボン膜を形成し、これによって、コンタクトホール底部おける抵抗率の変化を軽減できる半導体装置の製造方法およびエッチング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、反応性イオンエッチングにより絶縁膜にコンタクトホールを開口するエッチング工程を含む半導体装置の製造方法または絶縁膜のエッチング方法において、前記エッチング工程は所定の速度でエッチングを行う第1の工程と前記速度よりも遅い速度でエッチングを行う第2の工程とを含み、前記第2の工程は前記第1の工程よりも後でかつ開口によって下地が露出する前に実施され、前記第1の工程で供給されるガスの組成および供給量の少なくとも一方と異なる組成および供給量のガスを前記第2の工程で供給することを特徴とする半導体装置の製造方法または絶縁膜のエッチング方法が得られる。
【0015】
前記コンタクトホールは電界効果トランジスタのソース領域およびドレイン領域の少なくとも一方の上の絶縁膜に形成されるものであってもよい。
【0016】
また、前記絶縁膜はシリコン酸化膜であってもよい。
【0017】
前記供給ガスはCとFとを少なくとも含み、前記第2の工程で前記供給ガスの供給量を前記第1の工程よりも減少させることが好ましい。
【0018】
あるいは前記供給ガスはCとFとを含むガスと酸素(O)とを含み、前記第2の工程で前記酸素の供給量を前記第1の工程よりも減少させること、あるいは前記第2の工程で前記CとFとを含むガスの供給量を前記第1の工程よりも減少させること、あるいは両方を減少させることが好ましい。
【0019】
前記供給ガスはCとFとを含むガスと酸素とを含み、前記第2の工程で前記CとFとを含むガスと前記酸素との組成を前記第1の工程から変化させてもよい。
【0020】
前記開口の最終的な深さの一部、たとえば90%まで、を前記第1の工程でエッチングを行い、その後前記第2の工程を行うことが好ましいが、切り替える深さは80%乃至95%でもよく、エッチングの総時間(第2工程の方が時間がかかる)や壁面堆積物の厚さ(第2工程のほうが付着しにくい)、下地表面の保護等のかねあいで定めればよい。要はエッチングの終了より前、下地表面が露出する前に第2の工程に切り替えればよい。
【0021】
前記反応性イオンエッチングをマイクロ波励起によるプラズマ処理装置で行うのが好ましく、プラズマ励起のパワーを前記第2の工程では前記第1の工程より弱くする。
【0022】
前記第2の工程で供給されるガスの組成および供給量は、前記開口の側壁への堆積物の厚さが前記開口の直径の10%以下となるように選択することが好ましい。また前記第2の工程で供給されるガスの組成および供給量は、前記開口の下地表面に保護膜が形成されるように選択することが好ましい。この下地表面に形成される保護膜はフロロカーボン膜であることが好ましい。
【0023】
あるいは本発明は、ガスを用いてエッチングを行う工程を含む半導体装置の製造方法またはエッチング方法において、前記エッチングの途中で前記ガスの組成および流量の少なくとも一方を変化させ、下地表面を保護した状態でエッチングを終了させることを特徴とする半導体装置の製造方法またはエッチング方法を提供する。
【0024】
前記組成および流量の少なくとも一方が変化されたガスによるエッチングは前記下地表面におけるボロンの不活性化を防止できるものとする。
【0025】
本発明では、反応性イオンエッチングによりコンタクトホールを形成する際、コンタクトホール底部に強固なフロロカーボン膜を形成することができる。この結果、コンタクトホール底部のシリコンが過剰にイオンに曝されることによるドープされた不純物の不活性化を防止すると共に、不純物の不活性化による高抵抗化をも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、添加O流量が0sccm、2.5sccm、5sccm、10sccm、15sccmの場合における、酸化膜エッチング速度とCガス流量の関係を示すグラフである。
【図2】図2は、添加O流量が1sccm、2sccm、3sccm、5sccmの場合のコンタクトホール側壁へのフロロカーボン膜堆積量と、C流量の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、ラジアルラインスロットアンテナを用いた2段シャワープレート構造マイクロ波励起プラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施例1に係る電界効果トランジスタのエッチング前の状態を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例1に係る電界効果トランジスタのエッチング第1工程を終えた状態を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施例1に係る製造途中の電界効果トランジスタのエッチング第2工程(ダメージフリーエッチング)を終えた状態を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施例1に係る製造途中の電界効果トランジスタのアッシングを終えた状態を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施例1に係る製造方法によって得られた電界効果トランジスタの断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
まず、本発明の理解を容易にするために、本発明の原理について説明する。
【0028】
図1を参照すると、高速エッチングモード(Vdc=−550V)におけるシリコン酸化膜のエッチング速度とC流量の関係が示されている。Cに添加ガスとして酸素(O)を添加し、当該Oの流量とCの流量とを変化させた場合におけるシリコン酸化膜のエッチング速度(nm/分)が示されている。図の例では、Oの流量を0sccmから2.5、5、10、及び、15sccmに変化させた場合におけるC流量とエッチング速度との関係がそれぞれ曲線c1〜c5によって示されている。ここで、1sccmとは一分間に標準状態のガスを1立方センチメートル流す流量である。
【0029】
曲線c4からも明らかな通り、エッチング速度が700nm/分程度以上の高速エッチングを行うには、O=10sccmの場合、C流量は10sccm以上である必要がある。また、曲線c5に示されているように、O=15sccmの場合、C流量が8sccm以上が必要となる。ただし、O流量が10sccm程度を超えると、対フォトレジスト選択比が悪化することが分かったため、高速エッチングを行うには、C=10sccm、O=10sccm程度に設定すればよい。
【0030】
本発明者等は、前記条件においてコンタクトホールの90%を高速でエッチングした後、残り10%のコンタクトホールのエッチングを高速エッチングとは異なる条件で行い、下地シリコンにダメージが誘起されるのを回避することができた。
【0031】
まず、本発明の工程を説明する前に、上記従来技術1に記載されているように、高速エッチング条件のうち、セルフバイアス電圧の絶対値を200Vに減少(Vdc=−200V)させてエッチングを行った。この場合、コンタクトホールの側壁に到達した付着確率の大きいカーボンを含むフロロカーボン系のラジカルが、高エネルギーのイオンの衝撃を受けずに、そのまま側壁に堆積し、結果としてコンタクトホール底部へエッチングガスが到達しなかった。このため、付着確率がCに比べて小さいFを多く含むラジカルが選択的にコンタクトホール底部へ到達して、下地シリコンが露出した時に下地シリコンをイオン衝撃から守る強固なフロロカーボン膜が形成され無い状態が形成される。
【0032】
強固なフロロカーボン膜が形成され無い状態で、エッチングが行われると、下地シリコンをもエッチングしてしまい、下地シリコンとのエッチング選択比(酸化膜のエッチング速度/下地シリコンのエッチング速度)が確保されないということを見出した。同時に、C流量を減少させると側壁へのフロロカーボン膜の堆積も減少するということも判明した。
【0033】
そこで、本発明者等はコンタクトホール底部に強固なフロロカーボン膜を付着させるための手法について検討し、コンタクトホール底部にフロロカーボン膜を付着させるには、単にセルフバイアスを変更するだけでなく、供給ガスの組成、流量を変化させれば良いことが判明した。
【0034】
このことを考慮して、供給ガスの組成、流量は、側壁へのフロロカーボン膜等の堆積物の厚さがコンタクトホール直径の約10%を越えないように選択される。あるいは、供給ガスの組成、流量は、コンタクトホール底部にフロロカーボン膜等の保護膜が付着するように選択する。
【0035】
図2を参照すると、Vdc=−200Vにおける、直径0.35μmのコンタクトホール側壁へのフロロカーボン膜の堆積速度とC流量の関係が示されている。図2では、Cに添加されるO流量が1sccm、2sccm、3sccm、5sccmの時におけるCの流量と、フロロカーボンの堆積厚さ(μm)との関係が示されている(それぞれ、グラフca1、ca2、ca3、ca4)。エッチング時間はコンタクトホール残部(約10nm)をエッチングするのに要する時間である。側壁への堆積物の厚さが0.04μm以下、すなわちコンタクトホール直径の約10%以下であれば、カーボンの割合の大きいラジカルが十分コンタクトホール底部へ到達し、コンタクトホール底部にフロロカーボン膜が形成されて下地シリコンをイオン衝撃から保護することが分かった。
【0036】
具体的には、図2において、C流量を6sccm以下にし、O流量を3〜5sccmにする(グラフca3、ca4)ことにより、堆積厚さを0.04μm以下にすることができる。また、C流量を4sccm以下にすれば、Oの流量を1〜5sccmの範囲で変化させることによって(グラフca1〜ca4)、フロロカーボンの堆積厚さを0.04μm以下にすることができる。したがって、高速エッチングを行った後、供給ガスの組成を変化させて、低速エッチングを行うことにより、コンタクトホール底部を強固なフロロカーボン膜で覆うことができる。
【0037】
上記した結果を纏めると、C流量を10sccmとしてレジスト選択比が劣化しない程度にO流量を10sccm程度に設定し、高速エッチングを行った後、ダメージフリーエッチングを行う。このダメージフリーエッチングでは、側壁デポを抑制するためにC流量を減らし、さらに下地シリコンを守るためにO流量も減らすことで実現できることが明らかとなった。この手法によれば、エッチング時間を極端に増大させることなく、かつダメージの発生しないコンタクトホールエッチングを行うことができる。このように、ダメージフリーエッチングでは、イオンエネルギーを決定するセルフバイアス電圧を変化させることだけではなく、ガス組成(流量)も同時に変化させなければならない。
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【0039】
図3に、本発明の実施例に用いるReactive Ion Etching(RIE)プロセス用のマイクロ波プラズマ処理装置の概略構成が示されている。
【0040】
マイクロ波プラズマ処理装置は複数の排気ポート8から排気される処理室10を有し、前記処理室10中には被処理基板12を保持する保持台14が設けられている。前記処理室10の均一な排気を実現するため、前記保持台14の周囲にはリング状に空間が形成されており、前記複数の排気ポート8を前記空間に連通するように等間隔で、すなわち被処理基板12に対して軸対称に形成することにより、前記処理室10を前記空間および排気ポート8を介して均一に排気することができる。
【0041】
前記処理室10内の上部には、前記保持台14上の被処理基板12に対応する位置に、前記処理室10の外壁の一部として、低損失誘電体よりなり多数の開口部(ガス放出口)15が形成された板状のシャワープレート20がシールリングを介して形成されている。さらに前記シャワープレート20の外側、すなわち被処理基板12の反対側に、同じく低損失誘電体よりなるカバープレート22が、別のシールリングを介して設けられている。
【0042】
シャワープレート20にはその上面にプラズマ励起ガスを充填する空間23が形成されており、前記複数の開口部15の各々は前記プラズマガス通路をなす空間23に連通するように形成されている。さらに、前記シャワープレート20の内部には、前記処理室10の外壁に設けられたプラズマガス供給ポート24に連通するプラズマガスの供給通路26が形成されており、前記プラズマガス供給ポート24に供給されたArやKr等のプラズマ励起ガスは、前記供給通路26から前記空間23を介して前記開口部15に供給され、処理室10内へ導入される。
【0043】
図示されたプラズマ処理装置では、処理室10内のシャワープレート20と被処理基板12との間に、導体からなるシャワーヘッド28が設けられている。これを下段シャワープレートとも呼び、その場合、上部のシャワープレート20を上段シャワープレートと呼ぶ。下段シャワープレート28の内部には図示しない外部の処理ガス供給系から処理ガス(たとえば、CとOとを含むガス)が導入され、下段シャワープレート28下部に多数設けられたノズルまたはガス放出口29から下部空間、すなわち下段シャワープレート28と被処理基板12との間の空間に放出される。下段シャワープレート28には、ノズル29の間に多数の開口25が設けられており、上段シャワープレート20と下段シャワープレート28との間の空間で形成されたプラズマはこの開口25を通って被処理基板12の表面に拡散される。
【0044】
下段シャワープレート28のノズル29から被処理基板12に向けて放出された処理ガスは被処理基板12上で上記のプラズマに励起され基板12のエッチングが行われる。処理ガスは、上段シャワープレート20からのプラズマ励起ガスが上段シャワープレート20と下段シャワープレート28との間の空間から下段シャワープレート28と被処理基板12との間の空間に向かって流れている。このため、処理ガスが下段シャワープレート28と被処理基板12との間の空間に流れ込むことが抑止されるので、そこで高密度プラズマに晒されて不要な解離を起こすことは防止される。
【実施例1】
【0045】
本実施例1は、図4に示されたPチャンネル電界効果トランジスタの製造に本発明を適用した例である。
【0046】
すなわち、図示されたPチャンネル電界効果トランジスタはその表面に形成された絶縁膜37にソースコンタクトホールおよびドレインコンタクトホールがそれぞれ形成されるべき領域にレジストパターンが形成されたフォトレジスト38を有している。具体的には、図示されたPチャンネル電界効果トランジスタはp型シリコン基板30に形成されたNウエル31内に形成されたソース、ドレイン領域33、34を備えている。図示されたソース領域33、ドレイン領域34はp−シリコン領域301とp+シリコン領域302との二層構造をしており、ソース領域33とドレイン領域34との間にはゲート絶縁膜35が設けられている。ゲート絶縁膜35の上にはゲート電極36が形成されている。この例では、ゲート電極36の側面および上面は絶縁膜で被覆されている。さらに、ソース領域33、ドレイン領域34およびゲート電極36はシリコン酸化膜等の層間絶縁膜37によって被覆されており、層間絶縁膜37上にはソース領域33、ドレイン領域34に対応した部分に開口を施したフォトレジスト38が被着されている。
【0047】
上記の構成の製造途中のPチャンネル電界効果トランジスタを多数形成したシリコンウエハー30を図3の被処理基板12として保持台14上へ載置した。なお、ソース領域33とドレイン領域34のp+シリコン302は、2×1020cm−3のキャリア濃度である。層間絶縁膜37はシリコン酸化膜で構成されており、厚さは1μmである。
【0048】
図3をも併せ参照すると、ウエハー(図4の30)12を保持台14に載置した後、上段シャワープレート20を介してプラズマ励起のためのArガスを460sccm、下段シャワープレート28からはAr、C、Oをそれぞれ40sccm、10sccm、10sccm導入して圧力を40mTorrに設定した。
【0049】
次に、図示していないマイクロ波発振器により、周波数2.45GHzのマイクロ波を図3に示すラジアルラインスロットアンテナ27へ給電し、プラズマを励起した。次に、前記保持台14に接続されたRF電源21より、RF電力500Wを前記保持台14へ印加し、セルフバイアス電圧を絶対値において550V程度発生させ、高速エッチングモードでエッチングを行った。
【0050】
本実施例1におけるRF電力の周波数は2MHzであるが、この周波数に限られることは無く、例えば450kHzや13.56MHzを用いても良い。シリコン酸化膜のエッチング速度は700nm/分であった。エッチング速度は、マイクロ波電力を増加させるか、またはRF電力を増加させることでより高速にエッチングすることが可能である。
【0051】
前記条件の下で、77秒エッチングを行った結果、図5に示す様に、シリコン酸化膜によって構成される層間絶縁膜37が選択的にエッチングされ、ソース領域33、ドレイン領域34の上にコンタクトホール41、42の一部が形成された。図示のように、コンタクトホール41、42の一部が形成されて、その深さがソース領域33、ドレイン領域34の表面まで、残り10nmになった時、本発明によるダメージフリーエッチングを行った。すなわち、前記下段シャワープレート28から供給する処理ガスの組成を前記組成からAr、C、Oをそれぞれ40sccm、5sccm、3sccmへ変化させると同時に、RF電力を減少させ、セルフバイアス電圧の絶対値を200Vとした。
【0052】
この条件の下で、ダメージフリーエッチングを120秒行い、コンタクトホール41、42を開口した(図6参照)。この時コンタクトホール41、42の底部すなわちp+シリコン302上には、図6に示す様に、カーボンを多く含むフロロカーボン膜45が形成され、p+シリコン302のキャリアであるボロンがイオン照射によって不活性化されるのを防いでいる。
【0053】
次に、前記上段シャワープレート20からArガスを660sccm、前記下段シャワープレート28からAr、Oをそれぞれ40、10sccm供給し、処理室10の圧力を133Paとし、前記ラジアルラインスロットアンテナ27にマイクロ波を2kW供給してプラズマを30秒励起し、前記フォトレジスト38、前記フロロカーボン膜45、及び図示していない前記コンタクトホールの側壁に僅かに堆積したフロロカーボン膜を除去した(図7参照)。
【0054】
この工程において、p+シリコン302表面に堆積した前記フロロカーボン膜45も除去され、除去された後は前記p+シリコン302表面は直接プラズマに晒される。しかしながら、このとき照射されるプラズマは電子温度が1eV以下の低温であるため、ボロンが格子位置からはずれて不活性化することは無い。次に、洗浄工程および配線工程へ移行して、コンタクトホール41、42内にコンタクトプラグ48を、さらにその上に金属配線49をそれぞれ形成してpチャンネルMOSFETを製造した(図8参照)。
【0055】
このようにして作成したpチャンネル絶縁ゲート電界効果トランジスタは、ダメージ除去工程を行わないにもかかわらず、コンタクトホール41,42の底部のp+シリコン302のキャリア濃度は2×1020cm−3程度に維持することができた。このことは、低抵抗ソース・ドレインを備えた絶縁ゲート電界効果トランジスタを実現できたことを意味している。なお、本実施例ではpチャンネル電界効果トランジスタの製造方法を示したが、これに捉われることは無く、コンタクトホールにより配線を行う他の半導体装置においても本発明は有効であることは言うまでもない。
【0056】
また、最適なガス流量はポンプの排気速度やガスの滞在時間により変化するので、本発明の効果は上述したガスの流量に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、単にpチャンネル電界効果トランジスタの製造だけでなく、コンタクトホールを有して電極接続または配線を行う他の半導体装置(液晶表示装置等のTFTを含む)にも適用できる。また、本発明は、半導体基板や平面デイスプレイのアクティブマトリクス基板等の製造においても適用可能である。
【0058】
上記実施例ではCを用いたエッチングガスについてのみ説明したが、各種フロロカーボンガスを使用する場合、あるいは他のエッチングガスを使用した場合にも同様に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性イオンエッチングにより絶縁膜にコンタクトホールを開口するエッチング工程を含む半導体装置の製造方法において、
前記エッチング工程は所定の速度でエッチングを行う第1の工程と前記速度よりも遅い速度でエッチングを行う第2の工程とを含み、前記第2の工程は前記第1の工程よりも後でかつ開口によって下地が露出する前に実施され、前記第1の工程で供給されるガスの組成および供給量の少なくとも一方と異なる組成および供給量のガスを前記第2の工程で供給することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記コンタクトホールは電界効果トランジスタのソース領域およびドレイン領域の少なくとも一方の上の絶縁膜に形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記絶縁膜はシリコン酸化膜であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記供給ガスはCとFとを少なくとも含み、前記第2の工程で前記供給ガスの供給量を前記第1の工程よりも減少させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記供給ガスはCとFとを含むガスと酸素とを含み、前記第2の工程で前記酸素の供給量を前記第1の工程よりも減少させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3および5のいずれかにおいて、前記供給ガスはCとFとを含むガスと酸素とを含み、前記第2の工程で前記CとFとを含むガスの供給量を前記第1の工程よりも減少させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかにおいて、前記供給ガスはCとFとを含むガスと酸素とを含み、前記第2の工程で前記CとFとを含むガスと前記酸素との組成を前記第1の工程から変化させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、前記開口の所定深さの80%乃至95%まで前記第1の工程でエッチングを行い、その後前記第2の工程を行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、前記反応性イオンエッチングをマイクロ波励起によるプラズマ処理装置で行い、プラズマ励起のパワーを前記第2の工程では前記第1の工程より弱くすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、前記第2の工程で供給されるガスの組成および供給量を、前記開口の側壁への堆積物の厚さが前記開口の直径の10%以下となるように選択したことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかにおいて、前記第2の工程で供給されるガスの組成および供給量を、前記開口の下地表面に保護膜が形成されるように選択したことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10において、前記下地表面に形成される保護膜はフロロカーボン膜を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
ガスを用いてエッチングを行う工程を含む半導体装置の製造方法において、
前記エッチングの途中で前記ガスの組成および流量の少なくとも一方を変化させ、下地表面を保護した状態でエッチングを終了させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13において、前記組成および流量の少なくとも一方が変化されたガスによるエッチングは前記下地表面におけるボロンの不活性化を防止できるものであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項13または14において、前記ガスはCとFとを少なくとも含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
反応性イオンエッチングにより絶縁膜に開口を形成するエッチング方法において、
前記エッチングは所定の速度でエッチングを行う第1の工程と前記速度よりも遅い速度でエッチングを行う第2の工程とを含み、前記第2の工程は前記第1の工程よりも後でかつ開口によって下地が露出する前に実施され、前記第1の工程で供給されるガスの組成および供給量の少なくとも一方と異なる組成および供給量のガスを前記第2の工程で供給することを特徴とする絶縁膜のエッチング方法。
【請求項17】
請求項16において、前記絶縁膜はシリコン酸化膜であることを特徴とする絶縁膜のエッチング方法。
【請求項18】
請求項16または17において、前記供給ガスはCとFとを少なくとも含み、前記第2の工程で前記供給ガスの供給量を前記第1の工程よりも減少させることを特徴とする絶縁膜のエッチング方法。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれかにおいて、前記供給ガスはCとFとを含むガスと酸素とを含み、前記第2の工程で前記酸素の供給量を前記第1の工程よりも減少させることを特徴とする絶縁膜のエッチング方法。
【請求項20】
請求項16、17または19のいずれかにおいて、前記供給ガスはCとFとを含むガスと酸素とを含み、前記第2の工程で前記CとFとを含むガスの供給量を前記第1の工程よりも減少させることを特徴とする絶縁膜のエッチング方法。
【請求項21】
請求項16〜20のいずれかにおいて、前記供給ガスはCとFとを含むガスと酸素とを含み、前記第2の工程で前記CとFとを含むガスと前記酸素との組成を前記第1の工程から変化させることを特徴とする絶縁膜のエッチング方法。
【請求項22】
請求項16〜21のいずれかにおいて、前記開口の所定深さの80%乃至95%まで前記第1の工程でエッチングを行い、その後前記第2の工程を行うことを特徴とする絶縁膜のエッチング方法。
【請求項23】
請求項16〜22のいずれかにおいて、前記反応性イオンエッチングをマイクロ波励起によるプラズマ処理装置で行い、プラズマ励起のパワーを前記第2の工程では前記第1の工程より弱くすることを特徴とする絶縁膜のエッチング方法。
【請求項24】
請求項16〜23のいずれかにおいて、前記第2の工程で供給されるガスの組成および供給量を、前記開口の側壁への堆積物の厚さが前記開口の直径の10%以下となるように選択したことを特徴とする絶縁膜のエッチング方法。
【請求項25】
請求項16〜23のいずれかにおいて、前記第2の工程で供給されるガスの組成および供給量を、前記開口の下地表面に保護膜が形成されるように選択したことを特徴とする絶縁膜のエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/076336
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【発行日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517707(P2005−517707)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001513
【国際出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000205041)
【Fターム(参考)】