説明

半導体装置の製造方法及び半導体装置の製造装置並びに基板保持治具

【課題】基板の一面に樹脂層を配し、この樹脂層を硬化させた後に生じる、又は基板の一面に導体層を形成した後に生じる、基板の反りを抑制できる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】一面Waに樹脂層R1が配された、ウエハ状の半導体からなる基板Wを、一面Waの全域が球面状に膨出するように、反らせて保持する第一工程と、前記第一工程の後に、樹脂層R1を硬化させる第二工程と、を少なくとも有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の反りを抑制できる半導体装置の製造方法及び半導体装置の製造装置並びに基板保持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウエハ状の半導体からなる基板上に半導体素子を形成し、基板を所定のチップ寸法に切り出して個別のチップとし、このチップをプラスチック等のパッケージに封入して半導体装置を製造する方法が用いられている。また、半導体装置を薄型化・小型化するために、基板上に半導体素子を形成した後に、さらに絶縁層、再配線層及び封止層等を順次形成し、再配線層に接続される半田ボール等の外部端子を封止層の表面側に設け、基板を所定のチップ寸法に切り出してなる、いわゆるウエハーレベルCSP(wafer level Chip Size Package) を製造する方法も用いられている。すなわち、ウエハーレベルCSPの製造においては、切り出す前のウエハ状の基板に対して絶縁層、再配線層及び封止層等を形成することを特徴とする。
【0003】
絶縁層及び封止層は、例えば熱硬化性の樹脂を用いて形成される。このような熱硬化性の樹脂を用いて絶縁層を形成する手順を説明すると、まず、半導体素子が形成された基板の表面に樹脂を塗布し、プリベークにより仮硬化させて樹脂層を形成する。次に、マスクを通して露光光(UV光等)を樹脂層に照射して、パターンを露光する。次に、現像液を用いて樹脂層のパターンを現像する。この現像により、再配線層と接続される半導体素子の端子パッドが露出される。次に、樹脂層が形成された基板を、非特許文献1に示すような熱処理装置(オーブン)を用いてキュア又はハードベークして、樹脂層を熱硬化させる。このような手順により、基板上に熱硬化性樹脂を用いた絶縁層が形成される。なお、熱硬化性樹脂を用いて封止層を形成する場合にも、同様の手順が用いられる。
【0004】
また、再配線層は、基板上に形成された絶縁層の表面に配される導体層(金属層等)である。この再配線層は、薄膜形成技術(スパッタリングや真空蒸着等)やめっき法(電解めっき)を用いて形成される。電解めっき法を用いて再配線層を形成する場合には、まず、絶縁層が形成された基板の表面全域に亘って、シード層と呼ばれる金属層を例えばスパッタリングによって形成する。次に、シード層の表面にレジストを塗布し、仮硬化後に再配線層のパターンを露光・現像して、再配線層が形成される部位のレジストを除去する。次に、シード層に給電ピンを接続し、電解液で満たされためっき槽内に基板を浸漬し、電解液中に設けられた陽極電極とシード層に接続された給電ピンとの間に電流を流すことで、レジストから露出した部位のシード層の表面にめっき層を析出させる。最後に、レジスト及びレジストに被覆されていたシード層を除去し、再配線層が形成される。
【0005】
しかしながら、基板上に絶縁層、再配線層及び封止層を形成すると、これらの層が形成されている基板の面の全域が凹状且つ球面状になるように基板が反る傾向があった。絶縁層及び封止層の形成に用いられる熱硬化性の樹脂は、熱硬化時にその体積が収縮するものが一般的である。また、再配線層を形成する導体層にも、例えばめっきの析出時にその体積が収縮するものがある。各層がその形成に伴って収縮することで基板に対する応力が生じ、この応力が基板の反りの原因になっていると考えられている。基板の反りが大きくなると、半導体装置の製造において、基板の保持や搬送ができなくなる虞があった。すなわち、半導体装置の製造を安定して行うことが難しくなるという課題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】クリーンオーブン製品情報、[online]、ヤマト科学株式会社、[平成22年7月5日検索]、インターネット<URL:http://www.yamato-net.co.jp/product/science/oven/clean/desdts.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであって、基板の一面に樹脂層を配し、この樹脂層を硬化させた後に生じる、基板の反りを抑制できる半導体装置の製造方法を提供することを第一の目的とする。
本発明は、基板の一面に導体層を形成した後に生じる、基板の反りを抑制できる半導体装置の製造方法を提供することを第二の目的とする。
本発明は、基板の一面に樹脂層を配し、この樹脂層を硬化させた後に生じる、基板の反りを抑制できる半導体装置の製造装置を提供することを第三の目的とする。
本発明は、基板の一面に導体層を形成した後に生じる、基板の反りを抑制できる半導体装置の製造装置を提供することを第四の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第一の態様に従えば、一面に樹脂層が配された、ウエハ状の半導体からなる基板を、前記一面の全域が球面状に膨出するように、反らせて保持する第一工程と、前記第一工程の後に、前記樹脂層を硬化させる第二工程と、を少なくとも有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
本発明に係る第二の態様に従えば、ウエハ状の半導体からなる基板を、その一面の全域が球面状に膨出するように、反らせて保持する第一工程と、前記第一工程の後に、前記一面に導体層を形成する第二工程と、を少なくとも有することを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0009】
本発明に係る第三の態様に従えば、一面に樹脂層が配された、ウエハ状の半導体からなる基板を、前記一面の全域が球面状に膨出するように、反らせて保持する基板保持治具と、前記基板保持治具に保持されている前記基板の前記樹脂層を硬化させる樹脂硬化手段と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造装置が提供される。
本発明に係る第四の態様に従えば、ウエハ状の半導体からなる基板を、その一面の全域が球面状に膨出するように、反らせて保持する基板保持治具と、前記基板保持治具に保持されている前記基板の前記一面に、導体層を形成する導体層形成手段と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造装置が提供される。
また、本発明の第五の態様に従えば、前記半導体装置の製造装置に着脱自在に設けられていることを特徴とする基板保持治具が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る第一の態様(半導体装置の製造方法)によれば、予め一面の全域を球面状に膨出させる応力が基板に加えられている。そのため、予め基板を反らせたことで生じる応力と、樹脂層の収縮により生じる応力とを互いに相殺させることが可能となる。各応力が互いに相殺されることで、樹脂層の硬化後に基板に残る応力が低減される。したがって、樹脂層の硬化後の形成後に生じる、基板の反りを抑制できるという効果がある。
本発明に係る第二の態様(半導体装置の製造方法)によれば、予め一面の全域を球面状に膨出させる応力が基板に加えられている。そのため、予め基板を反らせたことで生じる応力と、導体層の収縮により生じる応力とを互いに相殺させることが可能となる。各応力が互いに相殺されることで、導体層の形成後に基板に残る応力が低減される。したがって、導体層の形成後に生じる、基板の反りを抑制できるという効果がある。
【0011】
本発明に係る第三の態様(半導体装置の製造装置)によれば、予め基板保持治具によって、一面の全域を球面状に膨出させる応力が基板に加えられている。そのため、予め基板を反らせたことで生じる応力と、樹脂層の収縮により生じる応力とを互いに相殺させることが可能となる。各応力が互いに相殺されることで、樹脂層の硬化後に基板に残る応力が低減される。したがって、樹脂層の硬化後に生じる、基板の反りを抑制できるという効果がある。
本発明に係る第四の態様(半導体装置の製造装置)によれば、予め基板保持治具によって、一面の全域を球面状に膨出させる応力が基板に加えられている。そのため、予め基板を反らせたことで生じる応力と、導体層の収縮により生じる応力とを互いに相殺させることが可能となる。各応力が互いに相殺されることで、導体層の形成後に基板に残る応力が低減される。したがって、導体層の形成後に生じる、基板の反りを抑制できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一の実施形態に係る熱処理装置の概略図。
【図2】第一の実施形態に係る基板保持治具の概略図。
【図3】第一の実施形態に係る基板保持治具の第一の変形例を示す平面図。
【図4】第一の実施形態に係る基板保持治具の第二の変形例を示す垂直断面図。
【図5】第一の実施形態における基板に対する熱処理の手順を示す概略図。
【図6】第二の実施形態に係るめっき装置の概略図。
【図7】第二の実施形態に係る基板保持治具の概略図。
【図8】第二の実施形態に係る基板保持治具の変形例を示す平面図。
【図9】第二の実施形態における基板に対するめっき処理の手順を示す概略図。
【図10】第一の実施形態に係る基板保持治具の第三の変形例を示す垂直断面図。
【図11】第一の実施形態に係る基板保持治具の第四の変形例を示す垂直断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る半導体装置の製造方法並びに半導体装置の製造装置及び基板保持治具について、図面を引用しながら詳しく説明する。なお、以下の説明で使用する図面は、本発明の特徴を判り易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0014】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係る熱処理装置1の概略を示す斜視図である。
熱処理装置1(半導体装置の製造装置)は、ウエハ状の半導体からなる基板Wから、半導体装置を製造するために用いられる装置であって、基板Wに対して熱処理を施す装置である。より詳細には、熱処理装置1は、基板Wの一面に配された樹脂層R1(図2参照)を熱硬化させるための装置である。熱処理装置1は、熱処理装置本体2(樹脂硬化手段)と、基板保持治具3とを備えている。
【0015】
熱処理装置本体2は、加熱室21と、扉22と、操作パネル23とを備えている。
加熱室21は、基板保持治具3に保持された基板Wを加熱するための空間である。加熱室21内には、複数段の棚が設けられ、複数の基板保持治具3が配置される。また、熱処理装置本体2には、加熱室21内を加熱するヒータ、当該ヒータの温度を調節する温度調節装置、及び加熱室21内の気体を循環させる送風装置等(全て図示せず)が設けられている。送風装置には、加熱室21内を高いクリーン度に維持するための、フィルタ等が設けられている。
扉22は、基板保持治具3を出し入れする加熱室21の開口部を、密閉するものである。
操作パネル23は、ヒータの温度を調節する温度調節装置に電気的に接続され、加熱室21内の温度設定に用いられるとともに、加熱室21内の現在の温度を表示するものである。加熱室21内の温度は、例えば室温+50℃から360℃の間に設定可能となっている。
【0016】
基板保持治具3は、基板Wに対して熱処理を行うときに、基板Wを反らせた状態で保持するためのものである。基板保持治具3は、熱処理装置本体2に着脱自在、すなわち熱処理装置1に着脱自在に設けられている。
この着脱自在とした構成によれば、熱処理装置本体2の外部において、基板保持治具3に対する基板Wの着脱作業が可能となるので好ましい。つまり、熱処理装置本体2の内部において、後述するところの「基板保持治具3に対して基板Wの周縁部を押さえ部材32の突出片32aにより調整しながら押さえ込む作業」が不要となる。ゆえに、基板保持治具3を熱処理装置本体2に着脱自在に設けた構成は、熱的な影響や狭い空間に束縛されることなく、安定した作業をもたらす。
【0017】
本実施形態に係る基板保持治具3を、より詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る基板保持治具3の概略図であって、(a)は垂直断面図、(b)は平面図である。
【0018】
まず、基板保持治具3に保持される基板Wについて説明する。
基板Wは、ウエハ状の半導体からなる基板であって、略円形の板状に成形されている。基板Wの一面Waには、図示しないが半導体素子(半導体デバイス)が形成されており、この一面Waには全域に亘り樹脂層R1が配されている。樹脂層R1は、例えば感光性ポリイミド樹脂からなり、基板Wの一面Waと後の工程で形成される再配線層との間を絶縁するために配される層(すなわち絶縁層)である。なお、樹脂層R1を形成する感光性ポリイミド樹脂は、熱硬化時にその体積が収縮する性質を有する。
基板Wが基板保持治具3によって保持される時点では、樹脂層R1はプリベークによって仮硬化され、露光・現像によって所定のパターン(図示せず)が形成されている。樹脂層R1に所定のパターンが形成されることで、半導体素子の端子パッドが樹脂層R1から露出した状態となっている。
【0019】
基板保持治具3は、基板支持台31と、押さえ部材32とを備えている。
基板支持台31は、基板Wが載置される台であって、円形の外周を備えた略板状に成形されている。なお、基板Wは、その他面Wbが基板支持台31に対向する姿勢で載置される。
基板支持台31の基板Wが載置される側には、凸部31aが形成されている。凸部31aは、基板W側に膨出する球面状に成形されている。また、凸部31aは、基板Wにおける他面Wbの全域に亘る大きさで形成され、基板Wの中央部に対応する部位が最も突出した形状となっている。なお、基板支持台31の周縁部と比較したときの、凸部31aの突出高さは、基板Wの外径や板厚、樹脂層R1の物性(熱硬化時の収縮率等)に応じて設定してよい。なお、本実施形態における凸部31aの突出高さは、3mmとなっている。
基板支持台31の周縁部には、板厚方向に延在する雌ネジ穴が複数形成されている。この雌ネジ穴には、基板支持台31に押さえ部材32を固定するボルト33が螺入される。
【0020】
押さえ部材32は、基板Wの周縁部を一面Wa側から押圧して保持する部材であって、リング状に成形されている。押さえ部材32には、複数のボルト33がそれぞれ挿通される貫通孔が形成されている。押さえ部材32の内周面と基板Wの外周端との間には、必要に応じて隙間が形成される。
押さえ部材32は、基板保持治具3に着脱自在に設けられる構成が好ましい。この着脱自在とした構成によれば、基板Wの反っている状況(程度)に応じて、基板保持治具3に対して基板Wの周縁部の複数箇所を個別に、後述する押さえ部材32の突出片32aを調整しながら押さえ込むことが可能となる。ゆえに、押さえ部材32を基板保持治具3に着脱自在に設けた構成は、基板Wの反り抑制に貢献する。
【0021】
押さえ部材32の内周側には、全周に亘って、内側に向かって突出する突出片32aが設けられている。すなわち、突出片32aは、押さえ部材32と同様にリング状に成形されている。突出片32aの内径は、基板Wの外径よりも小さな径に設定されており、押さえ部材32を基板支持台31に固定したときに、基板Wの周縁部を一面Wa側から押圧することが可能となっている。突出片32aの基板支持台31側の面は、凸部31aに応じた斜面となっている。また、押さえ部材32を基板支持台31に固定したときの、突出片32aと基板支持台31(凸部31a)との間には、基板Wと樹脂層R1とを合計した厚みに応じた隙間が形成される。
【0022】
本実施形態に係る基板保持治具3には4本のボルト33が用いられているが、この本数に限定されるものではない。たとえば、ボルト33は3本以上とし、基板保持治具3の周方向に等間隔に配する構成例が挙げられる。
また、基板支持台31、押さえ部材32及びボルト33は、基板Wに対する熱処理温度(例えば320℃)に耐えうる材質、例えばステンレスを用いて成形されている。
【0023】
なお、本実施形態における押さえ部材32には突出片32aが設けられているが、これに限定されるものではなく、図3に示すような変形例を採用してもよい。図3は、本実施形態に係る基板保持治具3の第一の変形例を示す平面図である。
図3に示すように、押さえ部材32の内周側には、内側に向かって突出する複数の爪部32bが設けられている。爪部32bは3つ設けられ、図3に示す構成例は、押さえ部材32が周方向に等間隔に配された一例である。爪部32bの押さえ部材32からの突出長さは、基板Wの周縁部を押圧するに十分な長さに設定されている。なお、爪部32bの個数は、3つに限定されるものではなく、4つ以上であってもよい。
また、図3に示す基板保持治具3においては、3本のボルト33が用いられており、爪部32bと対応する位置にそれぞれ配されている。
【0024】
また、本実施形態における押さえ部材32は、図2(a)に示すように、基板支持台31の周縁部と接して固定されるが、これに限定されるものではなく、図4に示すような変形例を採用してもよい。図4は、本実施形態に係る基板保持治具3の第二の変形例を示す垂直断面図である。
図4に示すように、基板支持台31と、押さえ部材32との間には、符号hで示す隙間が形成されている。すなわち、図4に示す基板保持治具3においては、ボルト33の基板支持台31への螺入量を調整することで、押さえ部材32の基板Wに対する押し込み量を変化させ、基板Wの反り量を調整できる構成となっている。すなわち、ボルト33が、基板支持台31と押さえ部材32との距離を変化させる調整部として構成されている。
また、基板支持台31と押さえ部材32との距離を変化させる調整部を、ボルト33以外に設けてもよい。例えば、基板支持台31と押さえ部材32との間に、互いの距離を調整するためのスペーサやカラー(いずれも図示せず)を配置する構成であってもよい。予め異なる高さのスペーサやカラーを準備しておき、交換することで、基板支持台31と押さえ部材32との距離を変化させることが可能となる。
【0025】
次に、熱処理装置1を用いた基板Wに対する熱処理の手順を説明する。
図5は、本実施形態における基板Wに対する熱処理の手順を示す概略図である。なお、図5は、同図(a)から(e)の順に、熱処理の手順を示している。
【0026】
まず、図5(a)に示すように、基板Wに樹脂層R1を配する。なお、基板Wの一面Waには、予め半導体素子を形成しておく。
基板Wの一面Waに、流動性を有する状態の感光性ポリイミド樹脂を、例えばスピンコート法を用いて塗布する。塗布後、プリベークにより樹脂を仮硬化させて、樹脂層R1を形成する。樹脂層R1における膜厚の調整は、スピンコート時の回転数調整により行う。続いて、樹脂層R1に対して、露光装置を用いて所定のパターン(図示せず)を露光し、現像液を用いてパターンを現像する。この現像により、基板Wに形成された半導体素子の端子パッド等が、樹脂層R1から露出する。
【0027】
次に、図5(b)に示すように、基板保持治具3に基板Wを保持させる。
基板支持台31の凸部31a側に、基板Wを載置する。なお、基板Wの他面Wbが基板支持台31に対向する姿勢で、基板Wを基板支持台31に載置する。
続いて、ボルト33を押さえ部材32の貫通孔に挿通させるとともに、ボルト33を基板支持台31の雌ネジ穴に螺入させる。ボルト33の螺入に伴い、押さえ部材32は基板支持台31に次第に近づく。押さえ部材32が基板支持台31に近づくことで、押さえ部材32の突出片32aが、基板Wの周縁部を一面Wa側から他面Wb側に向けて押圧する。一方、基板Wの中央部は、基板支持台31の凸部31aによって他面Wb側から支持されている。そのため、押さえ部材32が基板支持台31に近づくことで、基板Wは凸部31a及び突出片32aから互いに逆の方向に押圧され、基板Wは、一面Waの全域が球面状に膨出するように反った状態となる(図4と同様の状態)。すなわち、一面Waの全域を膨出させる応力が基板Wに加えられている。押さえ部材32が基板支持台31の周縁部に接するまでボルト33を螺入させて、基板支持台31への押さえ部材32の固定が完了する。
なお、基板Wの反り量を調整するため、ボルト33の螺入の量を調整して、基板支持台31と押さえ部材32との間に隙間h(図4参照)を形成するようにしてもよい。これにより、加圧の程度を微調整できるので、基板Wが受けるダメージを抑制することが可能となる。
【0028】
次に、図5(c)に示すように、基板Wに対して熱処理を施す。
基板Wを保持した基板保持治具3を、熱処理装置本体2の加熱室21(図1参照)内に配置し、基板Wに対して熱処理(キュア)を施す。なお、樹脂層R1は熱硬化とともにその体積が収縮する。そのため、一面Waの全域を凹状に反らせる応力が基板Wに生じる。
【0029】
次に、図5(d)に示すように、基板Wを基板保持治具3から取り外す。
基板保持治具3を熱処理装置本体2の加熱室21から取り出し、押さえ部材32を基板支持台31から離脱させて、基板Wを基板保持治具3から取り外す。
樹脂層R1が熱硬化に伴い収縮することで、一面Waの全域を凹状に反らせる応力が基板Wに生じている。しかしながら、本実施形態に係る基板保持治具3は、樹脂層R1を熱硬化させるときに一面Waが球面状に膨出するように基板Wを反らせており、一面Waの全域を膨出させる応力が基板Wに加えられている。そのため、樹脂層R1の収縮により生じる応力と、基板保持治具3の保持により生じる応力とを互いに相殺させることができ、基板Wを基板保持治具3から取り外したときの、基板W内の残留応力を従来に比べて低減させることができる。したがって、基板Wの残留応力を原因とする反りを、従来よりも抑制することができる。また、残留応力が低減されているため、基板Wの半導体素子に加えられる応力も低減されており、応力を原因とする半導体素子の破損等が減少し、長期に亘る半導体装置の信頼性を向上させることができる。
なお、この工程の後に、樹脂層R1の表面に再配線層や封止層、外部端子(半田バンプ)等を形成する工程を必要に応じて実施する。また、本実施形態における樹脂層R1の形成の手順を用いて、再配線層の後に形成される封止層を形成してもよい。
【0030】
次に、図5(e)に示すように、基板Wの他面Wb側を研削する。
基板Wの他面Wb側を研削して、基板Wの板厚を薄くする。この研削の方法は、機械研削及び化学機械研磨のいずれであってもよい。研削して基板Wの板厚が薄くなることで、その剛性は低下するが、基板Wの残留応力が従来よりも低減されており、基板Wの剛性が低下してもその反り量の増大を抑えることができる。よって、基板Wの板厚を薄くしたとしても、基板Wの反りを抑制できる。基板Wの反りが抑制されることで、基板Wの保持や搬送を適切に行うことができ、半導体装置の製造におけるトラブルを防止し、製造を安定して行うことができる。
なお、この工程の後に、基板Wを所定のチップ寸法に切り分け(ダイシング)、半導体装置の製造が完了する。
【0031】
以上より、本実施形態によれば、樹脂層R1の収縮により生じる応力と、基板保持治具3の保持により生じる応力とを互いに相殺させることが可能となる。各応力が互いに相殺されることで、基板Wを基板保持治具3から取り外した後における、基板Wの残留応力が従来に比べて低減される。したがって、樹脂層R1の硬化後に生じる、基板Wの反りを抑制できるという効果がある。
【0032】
<第二実施形態>
本発明の第二の実施形態について、図6から図9を参照して説明する。これらの図において、図1から図5に示す第一の実施形態における構成要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図6は、本実施形態に係るめっき装置4の概略を示す垂直断面図である。
めっき装置4(半導体装置の製造装置)は、基板Wの表面にめっきを施すための装置であって、めっき槽5(導体層形成手段)と、基板保持治具3Aとを備えている。なお、本実施形態では、基板Wの表面に銅めっきを施すものとする。
【0034】
めっき槽5は、電解液L(めっき液)を貯留するための槽である。電解液Lとしては、例えば硫酸銅溶液が使用される。めっき槽5の電解液L内には、基板保持治具3Aが複数浸漬して配される。めっき槽5の内部には、複数の基板保持治具3Aを保持する不図示のホルダが設けられている。
めっき槽5は、陽極電極51と、めっき電源52と、電解液Lの流入口53と、めっき槽5から流れ出た電解液Lを受ける収集樋54と、収集樋54に接続された流出口55とを備えている。また、めっき槽5は、流入口53及び流出口55にそれぞれ接続される電解液貯留槽と、電解液貯留槽から流入口53に向けて電解液Lを流動させるポンプと、流入口53の上流側に設けられるフィルタ(いずれも図示せず)とを備えている。
【0035】
陽極電極51は、銅又は銅合金(含リン銅等)からなる板状部材であり、電解液L内に浸漬して配されている。なお、陽極電極51を覆うように、アノードバッグ56が配されている。アノードバッグ56は、陽極電極51から生じる未溶解の金属粒子を捕集するための袋状の部材である。
めっき電源52は、陽極電極51及び基板保持治具3Aに保持された基板Wに、電解液Lを介して電流を流すための電源である。めっき電源52の陽極側が陽極電極51に接続され、陰極側が基板W(すなわち被めっき電極)に接続されている。めっき電源52が電流を流すことで、陽極電極51が電気分解され、銅が電解液L内に電解して分散する。分散した銅は電流の流れとともに、被めっき電極である基板Wの表面において析出する。すなわち、めっき装置4を用いることで、基板Wの表面にめっきを施すことが可能となっている。
【0036】
本実施形態に係る基板保持治具3Aを、より詳細に説明する。
図7は、本実施形態に係る基板保持治具3Aの概略図であって、(a)は垂直断面図、(b)は平面図である。
【0037】
まず、基板保持治具3Aに保持される基板Wについて説明する。
基板Wの一面Waには、上記第一の実施形態において説明した樹脂層R1(硬化済み)が配されている。樹脂層R1の表面には、シード層Sと、レジスト層R2とが順次配されている。シード層Sは、スパッタリングや真空蒸着等を用いて形成された金属薄膜層である。シード層Sには、例えばチタンや銅が用いられる。レジスト層R2は感光性樹脂からなり、再配線層P(図9参照)を形成するためのパターン(図示せず)が形成されている。すなわち、レジスト層R2は、再配線層Pが形成される部位が除去された構成となっている。
【0038】
本実施形態に係る基板保持治具3Aは、押さえ部材32に設けられる給電ピン32cを備えている。
本実施形態において、給電ピン32cは、押さえ部材32に3つ設けられ、周方向に等間隔に配された構成例を示しているが、本発明は給電ピンの数や配置に限定されるものではない。また、給電ピン32cは、押さえ部材32の突出片32aを貫通して設けられている。給電ピン32cにおける基板支持台31側の先端は、押さえ部材32を基板支持台31に固定したときに、基板Wのレジスト層R2を貫通してシード層Sに接する構成となっている。なお、めっきの実施時において、給電ピン32cは、めっき電源52の陰極側(図6参照)に接続される。
なお、本実施形態における基板支持台31、押さえ部材32及びボルト33は、電解液Lによる溶解・浸食を防止するために、例えば塩化ビニルを用いて成形されている。また、基板支持台31の周縁部と比較したときの、凸部31aの突出高さは、基板Wの外径や板厚、再配線層P(図9参照)の物性(形成時の収縮率等)に応じて設定してよい。なお、本実施形態における凸部31aの突出高さは、1mmとなっている。
【0039】
また、本実施形態における押さえ部材32には突出片32aが設けられているが、これに限定されるものではなく、図8に示すように突出片32aの代わりに複数の爪部32bを設けてもよい。図8は、本実施形態に係る基板保持治具3Aの変形例を示す平面図である。
図8に示すように、給電ピン32cは、3つの爪部32bにそれぞれ設けられている。また、ボルト33は、押さえ部材32の爪部32bに対応する位置にそれぞれ配されている。なお、図8の構成例は、3つの爪部32bが周方向に等間隔に配された場合である。
【0040】
さらに、本実施形態においても、第一実施形態にて参照した図4に示すように、ボルト3の螺入量を調整することで、基板支持台31と押さえ部材32との間の隙間hを変化させ、基板Wの反り量を調整するようにしてもよい。
【0041】
次に、めっき装置4を用いた基板Wに対するめっき処理の手順を説明する。
図9は、本実施形態における基板Wに対するめっき処理の手順を示す概略図である。なお、図9は、同図(a)から(f)の順に、めっき処理の手順を示している。
【0042】
まず、図9(a)に示すように、基板Wにシード層Sを配する。なお、基板Wの一面Waには、予め半導体素子及び樹脂層R1(硬化済み)を形成しておく。
スパッタリング又は真空蒸着等を用いて、樹脂層R1の全域及び樹脂層R1から露出した部位(半導体素子の端子パッド等)の表面に、シード層Sを形成する。
【0043】
次に、図9(b)に示すように、基板Wにレジスト層R2を配する。
シード層Sの表面に、流動性を有する状態のレジスト用樹脂を塗布する。塗布後、樹脂を仮硬化させた後に、露光し現像することで、パターン(図示せず)を有するレジスト層R2を形成する。すなわち、再配線層を形成する部位が除去されたレジスト層R2を形成する。
【0044】
次に、図9(c)に示すように、基板保持治具3Aに基板Wを保持させる。
基板支持台31の凸部31a側に、基板Wを載置する。なお、基板Wの他面Wbが基板支持台31に対向する姿勢で、基板Wを基板支持台31に載置する。
続いて、ボルト33を押さえ部材32の貫通孔に挿通させるとともに、ボルト33を基板支持台31の雌ネジ穴に螺入させる。ボルト33の螺入に伴い、押さえ部材32は基板支持台31に次第に近づく。押さえ部材32が基板支持台31に近づくことで、押さえ部材32の突出片32aが、基板Wの周縁部を一面Wa側から他面Wb側に向けて押圧する。一方、基板Wの中央部は、基板支持台31の凸部31aによって他面Wb側から支持されている。そのため、押さえ部材32が基板支持台31に近づくことで、基板Wは凸部31a及び突出片32aから互いに逆の方向に押圧され、基板Wは、一面Waの全域が球面状に膨出するように反った状態となる(図4と同様の状態)。すなわち、一面Waの全域を膨出させる応力が基板Wに加えられている。押さえ部材32が基板支持台31の周縁部に接するまでボルト33を螺入させて、基板支持台31への押さえ部材32の固定が完了する。なお、突出片32aが基板Wの周縁部を一面Wa側から押圧することで、突出片32aに設けられた給電ピン32cが、レジスト層R2を貫通してシード層Sに接触する。
また、基板Wの反り量を調整するため、ボルト33の螺入の量を調整して、基板支持台31と押さえ部材32との間に隙間h(図4参照)を形成するようにしてもよい。これにより、加圧の程度を微調整できるので、基板Wが受けるダメージを抑制することが可能となる。
【0045】
次に、図9(d)に示すように、基板Wに対してめっき処理を施す。
給電ピン32cをめっき電源52の陰極側に接続し、基板Wを保持した基板保持治具3Aを、めっき槽5の電解液L内に浸漬して保持する。浸漬後、めっき電源52から陽極電極51及び基板Wに対して電流を流す。陽極電極51を構成する銅が電解され電解液L内に分散し、分散した銅が電流の流れとともに電解液L内を移動し、基板Wのレジスト層R2によって被覆されていないシード層Sの表面に析出する。シード層Sの表面に銅が析出することで、再配線層P(導体層)が形成される。なお、再配線層Pをなす銅は形成とともにその体積が収縮する。そのため、一面Waの全域を凹状に反らせる応力が基板Wに生じる。
【0046】
次に、図9(e)に示すように、基板Wを基板保持治具3Aから取り外す。
基板保持治具3Aをめっき槽5から取り出し、押さえ部材32を基板支持台31から離脱させて、基板Wを基板保持治具3Aから取り外す。
再配線層Pが形成に伴い収縮することで、一面Waの全域を凹状に反らせる応力が基板Wに生じている。しかしながら、本実施形態に係る基板保持治具3Aは、再配線層Pを形成するときに一面Waが球面状に膨出するように基板Wを反らせており、一面Waの全域を膨出させる応力が基板Wに加えられている。そのため、再配線層Pの収縮により生じる応力と、基板保持治具3Aの保持により生じる応力とを互いに相殺させることができ、基板Wを基板保持治具3Aから取り外したときの、基板W内の残留応力を従来に比べて低減させることができる。したがって、基板Wの残留応力を原因とする反りを、従来よりも抑制することができる。また、残留応力が低減されているため、基板Wの半導体素子に加えられる応力も低減されており、応力を原因とする半導体素子の破損等が減少し、長期に亘る半導体装置の信頼性を向上させることができる。
なお、この工程の後に、レジスト層R2及びシード層Sの除去、封止層、及び外部端子(半田バンプ)等を形成する工程を必要に応じて実施する。
【0047】
次に、図9(f)に示すように、基板Wの他面Wb側を研削する。
基板Wの他面Wb側を研削して、基板Wの板厚を薄くする。この研削の方法は、機械研削及び化学機械研磨のいずれであってもよい。研削して基板Wの板厚が薄くなることで、その剛性は低下するが、基板Wの残留応力が従来よりも低減されており、基板Wの剛性が低下してもその反り量の増大を抑えることができる。よって、基板Wの板厚を薄くしたとしても、基板Wの反りを抑制できる。基板Wの反りが抑制されることで、基板Wの保持や搬送を適切に行うことができ、半導体装置の製造におけるトラブルを防止し、製造を安定して行うことができる。
なお、この工程の後に、基板Wを所定のチップ寸法に切り分け(ダイシング)、半導体装置の製造が完了する。
【0048】
また、本実施形態においてはめっき法を用いて再配線層Pを形成するときに、基板保持治具3Aにより基板Wを反らせて保持している。もっとも、これに限定されるものではなく、例えばシード層Sがその形成時に収縮し、基板Wに反りを生じさせるものである場合には、シード層Sの形成時に基板保持治具3(図2参照)を用いて基板Wを反らせて保持するようにしてもよい。
【0049】
以上より、本実施形態によれば、再配線層Pの収縮により生じる応力と、基板保持治具3Aの保持により生じる応力とを互いに相殺させることが可能となる。各応力が互いに相殺されることで、基板Wを基板保持治具3Aから取り外した後における、基板Wの残留応力が従来に比べて低減される。したがって、再配線層Pの形成後に生じる、基板Wの反りを抑制できるという効果がある。
【0050】
<実施例>
第一及び第二の実施形態における製造方法を用いた場合の、ウエハーレベルCSPの製造過程おける基板の反り量を、従来の製造方法を用いた場合の基板の反り量と比較した結果を以下に説明する。
【0051】
感光性ポリイミド樹脂(東レ:PW−1200)をスピンコート法にて、8インチウエハ状のSi半導体からなる基板(厚さ725μm)の一面全域に塗布し、ホットプレート(120℃)にて4分間プリベークした。なお、プリベーク後の樹脂層の厚さを15μmとなるように、スピンコートの回転数を調整した。
次に、樹脂層にi線ステッパー(露光機)を用いて所定のパターンを露光する。露光量は1000mJ/cmとした。
次に、現像液として2.38%のTMAH水溶液を用い、基板を120秒ディッピングして現像した。
【0052】
基板を基板保持治具に保持した状態で、ポリイミド樹脂のキュアを行う。基板を保持した基板保持治具を、熱処理装置(ヤマト科学株式会社製クリーンオーブンDTS82)内に入れ、320℃で30分間のキュアを実施する。キュア後、基板を基板保持治具から取り外す。この樹脂層は、基板表面と後に形成される再配線層との間を絶縁する絶縁層となる。
【0053】
続いて、ポリイミド樹脂上に再配線層をめっき法にて形成する。
スパッタリングにてシード層をポリイミド樹脂上に形成する。シード層はTi(厚さ100nm)及びCu(厚さ200nm)を順に形成した2層構造とした。すなわち、Ti層がポリイミド樹脂と接する下地層となっている。なお、Ti層及びCu層のいずれもが、ポリイミド樹脂の全面に形成されている。
次に、再配線層用のめっきレジストをフォトリソグラフィーによって形成する。めっきレジストには、東京応化工業株式会社製PMERP−LA900PMを使用した。
次に、基板保持治具によって保持された基板の表面に、Cuの電解めっきにて厚さ5μmの再配線層を形成する。なお電解液は硫酸銅溶液を用い、電流密度は1A/dmとした。めっき完了後、めっき槽から基板を取り出し、純水にて洗浄を行った。
【0054】
次に、めっきレジストを剥離した後、再配線層(Cuめっき)が形成されていない部位のシード層を、Cu、Tiの順にエッチングによって除去した。
次に、再配線層及び樹脂層上に封止樹脂層を形成した。封止樹脂層に行うパターニングは、後述する半田バンプ形成部を開口するための露光用マスクを用いる。封止樹脂層のキュアでは、樹脂層の熱硬化に用いた基板保持治具を再度利用した。
次に、半田バンプを形成した。3Ag系の鉛フリー半田ペーストを印刷した後、リフロー及びフラックス洗浄をすることで、半田バンプを形成した。
【0055】
半田バンプ形成面に表面保護テープを貼付した後、裏面研磨することで基板を薄板化する。裏面研磨後の基板の厚さは230μmとした。表面保護テープの剥離後、基板の反り量を測定した結果、第一実施形態と第二実施形態を併用することにより、基板の中央部と周縁部との差を0.3mmに抑えることができた。
一方、比較例として、キュア及びめっき時に基板保持治具を用いることなく、樹脂層、再配線層、封止樹脂層及び半田バンプを形成した基板を製造した。この比較例により形成された基板の反り量は、基板の中央部と周縁部との差が3.2mmであった。
以上の結果より、従来の製造方法(比較例)に比べて、本発明に係る基板保持治具を用いる製造方法では、基板の反り量を1/10にできることが判明した。
したがって、上述した実施例の結果により、本発明に係る製造方法を用いることで、樹脂層の硬化後及び再配線層(導体層)の形成後に生じる基板の反りを抑制できる効果が確認された。
【0056】
以上、本発明の半導体装置の製造方法並びに半導体装置の製造装置及び基板保持治具について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態にて説明した製造方法を、ウエハーレベルCSP以外の半導体装置の製造方法に使用してもよい。
【0058】
また、上述した第一の実施形態に係る基板保持治具3の代わりに、図10に示す基板保持治具3Bを用いてもよい。図10は、第一の実施形態に係る基板保持治具3の第三の変形例を示す垂直断面図である。
基板保持治具3Bにおける基板支持台31には、第二凸部31b(凸部)が設けられている。第二凸部31bは基板支持台31から基板Wに向けて突出しており、基板Wの中央部に対応する位置に配されている。なお、この基板保持治具3Bを、第二の実施形態に係るめっき装置4に用いてもよい。
【0059】
また、上述した第一の実施形態に係る基板保持治具3の代わりに、図11に示す基板保持治具3Cを用いてもよい。図11は、第一の実施形態に係る基板保持治具3の第四の変形例を示す垂直断面図である。
基板保持治具3Cにおける基板支持台31には、板厚方向に延びる複数の貫通孔31cが形成されている。なお、貫通孔31cは凸部31aをも貫通して配されている。貫通孔31cが形成されていることで、熱処理装置本体2の加熱室21(図1参照)内の熱せられた気体が貫通孔31cを通じて基板Wの他面Wbに接することができ、基板W側からも樹脂層R1を加熱することができる。また、キュア時に基板Wをなるべく加熱したくない場合には、貫通孔31cを通じて冷却用流体を基板Wの他面Wbに接触させて、基板Wを冷却してもよい。なお、この基板保持治具3Cを、第二の実施形態に係るめっき装置4に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、半導体装置の製造方法並びに半導体装置の製造装置及び基板保持治具に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 熱処理装置(半導体装置の製造装置)、2 熱処理装置本体(樹脂硬化手段)、3 基板保持治具、31 基板支持台、31a 凸部、31b 第二凸部(凸部)、32 押さえ部材、32b 爪部、33 ボルト(調整部)、4 めっき装置(半導体装置の製造装置)、5 めっき槽(導体層形成手段)、W 基板、Wa 一面、Wb 他面、R1 樹脂層、P 再配線層(導体層)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に樹脂層が配された、ウエハ状の半導体からなる基板を、前記一面の全域が球面状に膨出するように、反らせて保持する第一工程と、前記第一工程の後に、前記樹脂層を硬化させる第二工程と、を少なくとも有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
ウエハ状の半導体からなる基板を、その一面の全域が球面状に膨出するように、反らせて保持する第一工程と、前記第一工程の後に、前記一面に導体層を形成する第二工程と、を少なくとも有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第二工程の後に、前記基板の他面側を研削する第三工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第一工程は、前記基板の他面側を、凸部を備える基板支持台に向けて、前記基板支持台に前記基板を載置する工程と、押さえ部材を用いて、前記基板の周縁部を前記一面側から前記他面側に向けて押圧し、前記基板を反らせる工程と、を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記押さえ部材は、前記周縁部を全周に亘って押圧することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記押さえ部材は、前記周縁部の互いに離間する複数の箇所を押圧することを特徴とする請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第一工程は、前記基板支持台と前記押さえ部材との距離を調整する工程を有することを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
一面に樹脂層が配された、ウエハ状の半導体からなる基板を、前記一面の全域が球面状に膨出するように、反らせて保持する基板保持治具と、前記基板保持治具に保持されている前記基板の前記樹脂層を硬化させる樹脂硬化手段と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項9】
ウエハ状の半導体からなる基板を、その一面の全域が球面状に膨出するように、反らせて保持する基板保持治具と、前記基板保持治具に保持されている前記基板の前記一面に、導体層を形成する導体層形成手段と、を備えることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項10】
前記基板保持治具は、前記基板がその他面側を向けて載置される基板支持台と、前記基板の周縁部を前記一面側から押圧して保持する押さえ部材と、を備え、前記基板支持台は、前記基板側に突出して配される凸部を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項11】
前記押さえ部材は、前記基板支持台に着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項12】
前記押さえ部材は、リング状であることを特徴とする請求項10又は11に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項13】
前記押さえ部材は、前記周縁部の互いに離間する複数の箇所をそれぞれ押圧する複数の爪部を有することを特徴とする請求項10又は11に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項14】
前記基板保持治具は、前記基板支持台と前記押さえ部材との距離を変化させる調整部を備えることを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項15】
請求項8から14のいずれか一項に記載の基板保持治具は、前記半導体装置の製造装置に着脱自在に設けられていることを特徴とする基板保持治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−178422(P2012−178422A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40035(P2011−40035)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】