説明

半導体装置の製造方法

【課題】エッチング工程において絶縁膜の径を広げることなく、設計通りの配線寸法と、かつ良好なステップカバレージとを得ることができる、テーパー部を有した酸化物系層間絶縁膜の開口部を持つ半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法であって、開口部5を形成するためのマスク3を、酸化物系層間絶縁膜2上に形成する工程と、前記マスク3を形成した後、異方性エッチングによって前記酸化物系層間絶縁膜2に開口部5を形成する工程と、前記開口部5を形成した後、マスク3をエッチングすることで前記酸化物系層間絶縁膜2の開口部5周囲上面53を露出させる工程と、露出させた後、少なくとも前記酸化物系層間絶縁膜2の開口部5の側壁部51に、保護膜4を形成する工程と、前記保護膜4を形成した後、前記酸化物系層間絶縁膜2の開口部5周囲上面53を所定の深さまで異方性エッチングする工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物系層間絶縁膜の配線用開口部(一般にビアホール又はコンタクトホールと呼ばれるものを含む。)の形成方法に関するものであり、特にテーパー部を有するものを形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置上に形成された層間絶縁膜に配線用開口部を形成する場合、後の工程において当該開口部に配線される導電性材料のステップカバレージを良好なものにすることは、半導体装置の信頼性の点で極めて重要である。こうした要請にもかかわらず近年は、半導体装置の微細化に伴い、開口部の縦断面におけるアスペクト比が増大し、開口部の内部への導電性材料の埋め込みやバリアメタルの被覆自体が難しくなっている。
【0003】
そこで、開口部の上端にテーパー部を設けて、配線のステップカバレージを向上させる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、フォトレジストの拡径(後退)及びその後に絶縁膜の途中までの異方性エッチングを、数回繰り返すことにより、テーパー部を有するコンタクトホールを形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平04−293230号公報
【特許文献2】特開2004−281481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法の場合、フォトレジスト拡径(後退)のための酸素プラズマを用いたエッチングにより、直前に行った絶縁膜(12)の異方性エッチング工程で形成された開口部側壁に付着した保護膜が殆ど除去されてしまう。このため、その後の追加の異方性エッチングで、酸化物系絶縁膜の開口部の側壁がある程度等方的にエッチングされてしまうという問題がある。特に、酸化物系絶縁膜の途中でエッチングを停止しレジストを拡径(後退)させると、再度エッチングを開始する際に、エッチング生成物の一部である酸素がより多く発生する環境となり、上述の等方的なエッチングはさらに大きくなる。この結果、開口部は底部から上端部にかけて全体に拡径され、開口部の上端にテーパー部が形成されないという不具合が生じてしまい、十分なカバレージ向上が得られない。
【0005】
ここでいう保護膜とは、酸化物系絶縁膜をCF系ガス(現在、CF4、CHF3、CH2F2、C4F8等が使用されている。)雰囲気で化学的エッチングしたときにできる、副生成物(主としてCとFからなる重合体であると言われている。)をいう。この副生成物は、酸化物系絶縁膜の側壁部に付着することにより、エッチング工程において酸化物系絶縁膜の開口部側壁が等方的にエッチングされないように、保護膜としての機能を果たしていることは、一般的に良く知られている。
【0006】
本発明は、上記問題を解決し、その後のエッチング工程において酸化物系絶縁膜の開口部の底部の径を広げることなく、設計通りの配線寸法、及びバリアメタルを含む配線の良好なステップカバレージを得ることができ、テーパー部を有した酸化物系層間絶縁膜の開口部を持つ半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の課題を解決するため、本発明に係る半導体装置の製造方法は、層間絶縁膜を介して形成される異なる導電領域同士を接続するための開口部を、前記層間絶縁膜に有した半導体装置の製造方法であって、開口部を形成するためのマスクを、前記層間絶縁膜上に形成する工程と、前記マスクを形成した後、異方性エッチングによって前記層間絶縁膜に開口部を形成する工程と、前記開口部を形成した後、前記マスクをエッチングすることで前記層間絶縁膜の開口部周囲上面を露出させる工程と、前記層間絶縁膜の開口部周囲上面を露出させた後、少なくとも前記層間絶縁膜の開口部の側壁部に保護膜を形成する工程と、前記保護膜を形成した後、前記層間絶縁膜の開口部周囲上面を所定の深さまで異方性エッチングする工程を有する。
(2)上記(1)において、保護膜に、有機物を使用する。
(3)上記(1)において、保護膜を形成する工程において、CF系ガスを使用する。
(4)上記(3)において、保護膜を形成する工程において、Br系ガスを使用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体装置の製造方法においては、マスクのエッチング後、再度、酸化物系層間絶縁膜の少なくとも開口部の側壁部に保護膜を被覆していることから、その後の酸化物系層間絶縁膜の異方性エッチング工程において酸化物系絶縁膜の開口部の底部の径を広げることなく、設計通りの配線寸法とすることができる。
【0009】
さらに、酸化物系層間絶縁膜の開口部上端にテーパー部を持つことができることから、配線を断線することなく十分な厚みに被覆することができる。かつ、バリアメタル成膜後にオーバーハング形状とならないため、導電性材料の良好な被覆性や埋込性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明に係る実施の形態の一例を、図1を参照しながら説明する。
(1)まず、シリコン基板1上に膜厚a nmを有する酸化物系層間絶縁膜2を形成し、当該酸化物系層間絶縁膜2上にマスクとなるフォトレジスト3をフォトリソグラフィー技術によって形成する。当該フォトレジスト3には、上記酸化物系層間絶縁膜2を介して形成される異なる導電領域同士を接続するための開口部用を始めとする、各種パターンが作りこまれている。
【0011】
酸化物系層間絶縁膜2は、半導体プロセスにおいて一般的に使用されているものであればいずれでも良く、その層の位置や用途、又は半導体装置の用途等によって決めれば良い。具体的には、NSG、BPSG等の材料を単層膜で、又は複層構造膜にして使用する。
【0012】
(2)次に、図1(a)に示すように、酸化物系層間絶縁膜2を異方性エッチングする装置と条件を用いて、フォトレジスト3をマスクとして酸化物系層間絶縁膜2を、酸化物系層間絶縁膜2の下層の導電領域(例えば、シリコン基板1)の表層が露出するまで深さ方向にエッチングを行う。
【0013】
(3)続いて図1(b)に示すように、エッチング装置を用いて、フォトレジスト3をエッチングし、開口部を形成するためのパターンを片側b nmだけ拡径させて、酸化物系層間絶縁膜2の開口部周囲上面53を露出させる。ここで、bは、設計上必要な開口部上端の径がとれる値を設定すれば良い。
【0014】
本エッチング工程においては、酸化物系層間絶縁膜2に損傷を与えることが無く、かつフォトレジスト3のエッチングに適した方法を選択すれば良いが、O2含有ガス雰囲気でのエッチングが最も適している。使用するO2含有ガスは、半導体製造プロセスで一般的に使用されているものであれば、いずれでも良く、具体的には、O2系、O2-Ar系、O2-HBr-Ar系、O2-Cl2-HBr-Ar系等があげられるが、特にO2-Cl2-HBr系が、フォトレジスト3の開口部パターンを径方向に対し最も均等に拡径させることができ、最も好適である。
【0015】
(4)さらに、図1(c)に示すように、保護膜4をフォトレジスト3の表面、開口部用パターンの側壁部7、酸化物系層間絶縁膜2の開口部5の周囲上面53、開口部5の側壁部51及び開口部5の底部52に被覆する。開口部の拡径防止のためには、酸化物系層間絶縁膜2の開口部5の側壁部51を、保護膜で必ず被覆する。また、上記(2)の工程において、酸化物系層間絶縁膜2の下層の導電領域が露出するまで異方性エッチングを行った場合は、開口部5の底部52も必ず被覆することが望ましい。これにより、後の工程において、保護膜で被覆された状態で異方性エッチングが再開されるため、開口部5の底部52のエッチング量拡大を抑制することができる。特にコンタクトホールの場合は、Si系導電性材料の使用により、エッチングによる接合リーク増加が懸念されるが、開口部5の底部52を被覆することにより、これを抑制することができる。
【0016】
保護膜としては、CF系ガス雰囲気中で酸化物系層間絶縁膜2をエッチングしたときにできる生成物を利用することが、最も望ましい。エッチング装置を用いて条件を合わせれば、例えば半導体基板にかけるバイアスを0Vとすると、エッチング速度よりも生成物の被覆速度の方が遥かに大きい環境を得ることができる。また、生成物はCとFを主成分とするポリマーであるため、保護膜として利用した後は、アッシング工程で除去することが可能である。使用するCF系ガスは、上述のように酸化物系層間絶縁膜と反応してCとFを主成分とするポリマーを作るものであればいずれでも良く、具体的にはCF4、CHF3、CH2F2、C4F8等があげられる。
【0017】
(5)そして図1(d)に示すように、再び異方性エッチングの条件下で酸化物系層間絶縁膜2を、所定の深さまで垂直方向にエッチングして開口部5の側壁部上端にテーパー部6を形成する。ここで所定の深さとは、テーパー部6を設けたい範囲を示し、配線の材料、層の位置及び層の用途等により適宜選択される。
【0018】
なお、図1は模式図であって、テーパー部6は図1において階段形状で示されているが、これよりもなだらかであっても良い。
【0019】
(6)開口部5を形成した後に、アッシング工程により、保護膜と共にフォトレジスト3を除去する。
【0020】
(7)バリアメタルを成膜し、さらに導電性材料を被覆する又は埋め込む。
【0021】
本実施例の場合、保護膜4を(2)の異方性エッチングで形成された開口部の側壁部51に被覆すると、(5)の異方性エッチング中に、側壁部51の等方的なエッチングを防止することができ、設計どおりの断面形状に仕上げることができる。このため、導電性材料を良好に被覆もしくは埋め込むことができる。
【0022】
なお、当該酸化物系層間絶縁膜2の下層を構成する材料(特に、開口部5の底部52として露出する部分、この場合はシリコン基板1、の材料)によっては、上記(2)の工程において、フォトレジスト3の開口部用パターンの側壁部7にフォトレジスト3の開口部用パターンの拡径を阻害するような強固な生成物が付着することがある。このような場合には、酸化物層間絶縁膜2の開口部5のエッチングを酸化物系層間絶縁膜2のシリコン基板1が露出する手前で停止し、開口部用パターンを拡径させた後、上記(5)の工程の酸化物系層間絶縁膜2の開口部周辺上面53のエッチングの過程で、一緒に貫通させてシリコン基板1を露出させればよい。上記場合が考えられる酸化物系層間絶縁膜2の下層材料は、例えば、開口部がコンタクトホールである場合は、Si基板表面(シリサイド層の材料)やゲートの表面層(シリサイドやメタルゲートなどの材料)、また、開口部がビアホールである場合は、下層配線の表面層(各種反射防止膜の材料)となる。なお、上記のように強固な生成物が付着する理由は、下層の材料により保護膜4の膜質が変化するためと考えられる。
【0023】
なお、本実施の形態では、酸化物系層間絶縁膜2の下層の導電領域をシリコン基板1としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、W-Siやpoly-Siに代表されるSi系配線、またはAlやCu等に代表される金属系配線としてもよい。
【0024】
なお、本実施の形態の説明は、開口部がコンタクトホールの場合としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、配線間のビアホールの形成にも適用可能である。
【0025】
なお、配線間のルールが特に厳しい場合には、例えば特許文献2に示されるように、開口部5内に導電性材料を埋め込んだ後に、テーパー部6をCMPで研磨・除去すれば良い。
【実施例1】
【0026】
BPSG膜にコンタクトホールを開口する際、CF系ガスによるケミカルエッチングを利用してテーパー部を形成した場合の実施例を示す。
(1)シリコン基板上にCVD装置でBPSGを1100nm堆積させた。そして、このBPSG膜の上に、フォトリソグラフィーによりフォトレジストでマスクを形成した。開口部パターンの直径は0.45μmとした。
(2)RIE装置により、CF4-Ar系ガス雰囲気とその後のCF4-CHF3-CO-Ar系ガス雰囲気にて、BPSG膜に開口部を形成した。当該開口部の底部には、シリコン基板を露出させた。
(3)有磁場マイクロ波エッチング装置により、Cl2-HBr-O2系ガスを用いてフォトレジストの開口部パターンを片側約0.05μmだけ拡径させて、BPSG膜の開口部周囲上面を露出させた。
(4)純水リンスで残留塩素成分を除去後、有磁場マイクロ波エッチング装置により、CF4とHBrを1:2の割合で混合したガス雰囲気中で保護膜を、モニター用ベアSiウェハ上で85nm被覆した。なお、その際の開口部の底部及び同側壁部における膜厚は、アスペクト比によっても変動するが、各々、約50nm及び25nm程度と推測される。ガス圧力は3Pa、マイクロ波の電力は800W、シリコン基板へのバイアスは0W、基板温度は20℃、処理時間は120secとした。被覆箇所は、フォトレジストパターンの表面及び開口部用パターンの側壁部、並びに、BPSG膜の開口部の周囲上面、側壁部及び底部であった。
(5)平行平板型RIE装置によりCF4-CHF3-Ar-He系ガスを用いて、BPSG膜の開口部側壁部上端を約0.3μmの深さまで異方性エッチングしてテーパー部を設けた。
(6)テーパー部を設けた後に、酸素プラズマによるアッシング処理を行い、その残渣をウェット洗浄し、保護膜とフォトレジストを除去した。
(7)その後、下からTiを50nm、TiNを100nmの順にバリアメタルをスパッタ装置で成膜した。その後、CVD装置で、導電性材料9であるWを350nm開口部内に埋め込んだ。
【0027】
このようにして形成したコンタクトホールの縦断面を図2に示す。図2に示されるように、開口部底部は拡径することなく開口部上端にはテーパー部が形成された、所望の断面形状の開口部が得られている。この結果、良好なバリアメタル8の被覆性及び導電性材料9であるWの埋込性が得られている。さらに、底面におけるSi基板表面の異常なエッチングも見られない。実際、電気特性測定においても、異常なリークは観察されず、良好なコンタクト特性が確認されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る半導体の製造方法の実施の形態の一例を模式的に示した説明図。
【図2】実施例1の製造方法によるコンタクトホールの一例を、縦断面より示した図。
【符号の説明】
【0029】
1 シリコン基板
2 酸化物系層間絶縁膜
3 フォトレジスト(マスク)
4 保護膜
5 酸化物系層間絶縁膜の開口部
51 酸化物系層間絶縁膜の開口部の側壁部
52 酸化物系層間絶縁膜の開口部の底部
53 酸化物系層間絶縁膜の開口部周囲上面
6 酸化物系層間絶縁膜の開口部のテーパー部
7 フォトレジストの開口部用パターン側壁部
8 バリアメタル(TiとTiN)
9 導電性材料(W)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層間絶縁膜を介して形成される異なる導電領域同士を接続するための開口部を、前記層間絶縁膜に有した半導体装置の製造方法であって、
開口部を形成するためのマスクを、前記層間絶縁膜上に形成する工程と、
前記マスクを形成した後、異方性エッチングによって前記層間絶縁膜に開口部を形成する工程と、
前記開口部を形成した後、前記マスクをエッチングすることで前記層間絶縁膜の開口部周囲上面を露出させる工程と、
前記層間絶縁膜の開口部周囲上面を露出させた後、少なくとも前記層間絶縁膜の開口部の側壁部に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜を形成した後、前記層間絶縁膜の開口部周囲上面を所定の深さまで異方性エッチングする工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
保護膜に、有機物を使用することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
保護膜を形成する工程において、CF系ガスを使用することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
保護膜を形成する工程において、Br系ガスを使用することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−109681(P2007−109681A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295833(P2005−295833)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(501285133)川崎マイクロエレクトロニクス株式会社 (449)
【Fターム(参考)】