説明

半導体装置の製造方法

【課題】良品率を向上し、かつ半導体製造装置への処理液・洗浄液による汚染を防ぐこと。
【解決手段】リブウェハ100を、おもて面を下にしてウェハ保持機構20に保持させ、リブウェハ100の中央部3の中心付近を回転の中心Oとして回転させる。そして、この状態で、リブウェハ100の裏面側のリブ部4の表面の内周端部にエッチング液50を滴下する位置に設置されたノズル10から、エッチング液50を滴下する。このようにして、リブウェハ100におけるリブ部4の表面の内周端部を選択的にエッチングして、リブ部4の内周側の側壁に傾斜面または曲面を形成する。そして、リブウェハ100に洗浄液を滴下した後に、バッチ式乾燥装置または枚葉式乾燥装置によって、リブウェハ100を回転させて、乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置などに使用されるパワー半導体装置の製造方法に関し、特にデバイス厚が薄い薄型半導体デバイスを製造する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置を製造する際の低コスト化を目的として、1枚の半導体ウェハから製造される半導体素子(チップ)の取得数を多くするため、大口径の半導体ウェハを用いた製造方法が提案されている。また、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolor Transistor:IGBT)等の、基板に対して縦方向に電流が流れる構造の半導体素子の場合、基板の厚さが半導体素子の性能に大きな影響を与える。したがって、半導体素子の性能を維持、または向上させるために、基板となる半導体ウェハの厚さを薄くする方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、半導体ウェハの厚さを薄くすると、半導体ウェハの機械的強度が小さくなり、反りや歪みが生じやすくなるという問題がある。例えば、半導体ウェハ上に膜を積層すると、積層された膜の応力により、半導体ウェハに反りや歪みが生じる。それが原因で、製造プロセス中に半導体ウェハが割れることがある。また、この反りや歪みが、半導体ウェハ上に結晶欠陥が生じる原因となる。さらに、半導体ウェハに反りや歪みが生じていると、例えばフォトリソグラフィー工程において、焦点が合いづらくなり、素子を構成する回路パターン(素子構造)を設計通りに形成できない可能性がある。
【0004】
また、半導体ウェハを吸着し保持する装置を用いる場合に、半導体ウェハに反りや歪みが生じていると、吸着を行うステージと半導体ウェハとの間に隙間が生じてしまい、ステージに半導体ウェハを吸着することが困難となる。このため、装置に半導体ウェハを固定することができず、その後の処理を行うことができないという問題がある。
【0005】
また、半導体ウェハの厚さが薄いと半導体ウェハが割れやすいため、半導体ウェハを搬送することが困難である。さらに、半導体ウェハの厚さが薄いと機械的強度が小さくなるため、ダイシングを行って半導体ウェハを個片化する際に、半導体ウェハに加わる機械的な応力によって半導体ウェハが割れてしまうという問題がある。このように、半導体ウェハの厚さを薄くすると、半導体ウェハが割れやすくなり、その取り扱いが困難になるという問題がある。
【0006】
このため、ウェハの割れや欠け、反り、撓みを防ぐ方法として、半導体ウェハの中央部が外周端部よりも薄い、リブ構造のウェハ(以下、リブウェハとする)が提案されている。リブウェハを形成する方法としては、半導体ウェハのおもて面と裏面の外周端部を残して、中央部を薄くする方法が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。また、半導体ウェハのおもて面に素子構造を形成した後に、半導体ウェハの裏面の外周端部を残して、中央部を薄くする方法が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【0007】
リブウェハにおいては、半導体ウェハの外周端部が厚いため、半導体ウェハの機械的強度が高くなる。また、半導体ウェハの中央部(デバイス作製領域)の抵抗率の高い層が薄いため、その部分に作製された半導体装置の応答速度が向上する。したがって、半導体装置の性能を維持、または向上させ、かつ半導体ウェハの割れや欠けを防ぎ、反り量を低減することができる。
【0008】
さらに、砥石を用いて半導体ウェハの中央部を外周端部より薄くして、リブ部を形成した後に、砥石の位置を調整することで、リブ部の表面の内周端部に面取り加工を施し、曲面を形成する方法が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。この方法によれば、半導体ウェハのリブ部の表面の内周端部に応力が集中せず、リブ部の表面の内周端部からの破損を防ぐことができる。
【0009】
【特許文献1】特開2003−332271号公報
【特許文献2】特開平11−121466号公報
【特許文献3】特開2007−103582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、IGBT等の、基板に対して縦方向に電流が流れる構造の半導体素子の場合、半導体ウェハのおもて面だけでなく、裏面側にも素子構造を形成しなければならない。このため、例えば上述の特許文献1または2に記載の技術によって半導体ウェハの裏面の中央部を外周端部よりも薄くした後に、半導体ウェハの裏面側に、洗浄工程、イオン注入工程、熱処理工程、電極の成膜工程等の処理が必要となる。
【0011】
ここで、洗浄工程には、半導体ウェハの裏面側を純水を用いて洗浄した後に、半導体ウェハを乾燥させる乾燥工程が含まれる。乾燥工程においては、例えば半導体ウェハのおもて面と裏面またはどちらか一方の面に付着した液体を、遠心力によって取り除くスピン回転方式や、気体を吹き付けることによって取り除く方式等がある。
【0012】
図20は、リブウェハにおける乾燥工程時の問題点について示す断面図である。半導体ウェハの裏面側を乾燥させる際には、半導体ウェハの裏面側の表面に付着した液体が、スピン回転による遠心力や気体の吹き付けによって、半導体ウェハの裏面側の表面に沿って外周端部へ流れる。このため、図20に示すように、例えば裏面側にリブ部の形成されたリブウェハ110においては、リブウェハ110の裏面の中央部3に付着した液体が、中央部3とリブ部4とによって形成される段差部Fにぶつかる。このとき、スピン回転や気体の吹き付けの条件、およびリブウェハ110の裏面の段差部Fの高さや形状等の条件によって、段差部Fや、リブ部4のおもて面側の表面H、リブ部4の裏面側の表面G等に液体が残ってしまう可能性がある。ここで、液体が残ってしまう際の段差部Fの高さや形状の条件とは、例えば中央部3とリブ部4との境界の角度が略直角であったり、段差部Fの高さが高い場合である。
【0013】
特に、複数枚の半導体ウェハをウェハキャリアに収納し、ウェハキャリアごと回転させて乾燥を行うバッチ式の乾燥装置を用いる場合、半導体ウェハが薄いと、回転時にウェハキャリアの内面に半導体ウェハがぶつかったときに半導体ウェハが割れてしまうおそれがある。したがって、ウェハキャリアを低速度で回転させる必要がある。このため、エッチング液等の処理液や純水等の洗浄液が半導体ウェハから十分に除去されず、中央部とリブ部とによって形成される段差部に残ってしまう。このように、乾燥工程後に液体が残っていると、デバイスの特性が異常となったり、乾燥後のウェハを搬送する装置やウェハを設置する処理容器内が汚染されてしまったりするという問題がある。
【0014】
また、特許文献3の技術では、裏面側のリブ部の表面の内周端部が曲面になるが、段差部に液体が残るか否かは不明である。また、砥石の位置を調整し、砥石を垂直方向に動かしながら水平方向にも動かすことで面取り加工を行うため、製造プロセスが複雑になり、スループットが低下するという問題がある。
【0015】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、良品率を向上し、かつ半導体製造装置への処理液・洗浄液による汚染を防ぐことのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかる半導体装置の製造方法は、半導体ウェハの裏面の中央部を外周端部よりも薄くして、当該半導体ウェハの裏面の外周端部にリブ部を形成するリブ形成工程と、前記半導体ウェハの裏面側の全面をエッチングする第1エッチング工程と、前記半導体ウェハの裏面側の前記リブ部の表面の内周端部を選択的にエッチングする第2エッチング工程と、前記半導体ウェハの裏面側に洗浄液を滴下する洗浄工程と、前記半導体ウェハを回転させて、当該半導体ウェハを乾燥させる乾燥工程と、を順に行うことを特徴とする。
【0017】
また、請求項2の発明にかかる半導体装置の製造方法は、半導体ウェハの裏面の中央部を外周端部よりも薄くして、当該半導体ウェハの裏面の外周端部にリブ部を形成するリブ形成工程と、前記半導体ウェハの裏面側の全面をエッチングし、かつ前記半導体ウェハの裏面側の前記リブ部の表面の内周端部を選択的にエッチングするエッチング工程と、前記半導体ウェハの裏面側に洗浄液を滴下する洗浄工程と、前記半導体ウェハを回転させて、当該半導体ウェハを乾燥させる乾燥工程と、を順に行うことを特徴とする。
【0018】
また、請求項3の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1または2に記載の発明において、前記第1エッチング工程および前記第2エッチング工程、または前記エッチング工程においては、前記半導体ウェハの中央部の中心付近を回転の中心として、当該半導体ウェハを回転させながらエッチングを行うことを特徴とする。
【0019】
また、請求項4の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、前記乾燥工程においては、1枚の前記半導体ウェハを保持機構に吸着させて、当該半導体ウェハの中央部の中心付近を回転の中心として、当該半導体ウェハを回転させることを特徴とする。
【0020】
また、請求項5の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、前記乾燥工程においては、複数枚の前記半導体ウェハをウェハキャリアに設置して、当該ウェハキャリアから所定距離離れた位置を回転軸として、当該ウェハキャリアごと回転させることを特徴とする。
【0021】
また、請求項6の発明にかかる半導体装置の製造方法は、請求項1〜5のいずれか一つに記載の発明において、前記乾燥工程においては、前記半導体ウェハに気体を吹き付けることを特徴とする。
【0022】
上述の各請求項の発明によれば、外周端部に中央部より厚いリブの形成された半導体ウェハにおいて、リブ部の内周側の側壁に傾斜面や曲面が形成され、中央部とリブ部とによって形成される段差部が直角ではなくなる。このため、半導体ウェハを回転させることで、または気体を吹き付けることで、洗浄液を除去する乾燥工程において、段差部で洗浄液が残ることを防ぐことができる。
【0023】
また、請求項2の発明によれば、半導体ウェハにリブ部を形成するために砥石による研削を行った際に形成された加工ダメージ層を除去するためのエッチングと、リブ部の内周側の側壁に傾斜面や曲面を形成するためのエッチングと、を同時に行うことができる。このため、製造の工程数が減り、スループットが向上する。
【0024】
また、請求項5の発明によれば、複数の半導体ウェハを同時に乾燥させるバッチ式乾燥装置による乾燥処理において、回転速度が低くても、段差部で洗浄液が残ることを防ぐことができるため、スループットが向上する。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、良品率を向上し、かつ半導体製造装置への処理液・洗浄液による汚染を防ぐことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、以下の実施の形態の説明およびすべての添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
(実施の形態1)
図1〜図16は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について順に示す説明図である。まず、図1〜図3を用いて、リブウェハの製造方法の一例について説明する。なお、図3においては、上の図がリブウェハの構造について示す平面図であり、下の図が上の図の切断線A−A'における断面構造を示す断面図である。図1に示すように、半導体ウェハ1のおもて面の中央部に素子構造2を形成する。ここで、半導体ウェハ1は例えばシリコンでできている。ついで、図2に示すように、半導体ウェハ1の裏面側の全面を、後に形成されるリブ部の厚さを規定する厚さに研削する。このとき、半導体ウェハ1のおもて面の素子構造2を、図示しない保護膜や保護テープによって覆ってもよい。ただし、この工程はリブの高さをウェハ元厚(ウェハの元の厚さ)に設定したい場合は不要である。
【0028】
ついで、図3に示すように、半導体ウェハ1の裏面側を、外周端部をそのままの厚さに残して、中央部3のみを、形成するデバイスの性能に必要な厚さ(以下、目標厚さとする)に研削する。このときに残る外周端部がリブ部4となる。このようにして、おもて面の中央部3に素子構造2が設けられ、裏面の外周端部にリブ部4が設けられたリブウェハ100が作製される。また、砥石により研削を行った面には、砥石の砥粒の粒径と同程度の深さの研削ダメージ層が形成される。
【0029】
また、図3においては、砥石による研削ではなく、湿式ウェットエッチングによって半導体ウェハ1の裏面の中央部3を外周端部より薄くしてもよい。すなわち、半導体ウェハ1の裏面の外周端部をエッチングがされないように保護した後に、半導体ウェハ1の裏面側に、エッチング液による処理を行う。そして、半導体ウェハ1の裏面の中央部3が目標厚さまで薄くなったときにエッチング処理を止めるようにしてもよい。
【0030】
つぎに、図4〜図11を用いて、実施の形態1の特徴であるリブウェハのリブ部の内周側の側壁に傾斜面または曲面を形成する工程について説明する。なお、図5は、図4の切断線B−B'における断面構造を示す断面図であり、図7は、図6の切断線C−C'における断面構造を示す断面図である。まず、図4または図5に示すように、リブウェハ100のおもて面側を下にして、そのおもて面側をウェハ保持機構20によって保持させ、リブウェハ100の中央部3の中心付近を回転の中心Oとして、リブウェハ100を回転させる。そして、回転の中心Oにエッチング液50を滴下するようにノズル10の位置を設定し、ノズル10からエッチング液50を滴下する。図4においては、リブウェハ100をD1方向(時計回りの方向)へ回転させているが、逆の方向(反時計回りの方向)へ回転させてもよい。このとき、リブウェハ100の回転速度は、例えば数百rpm〜数千rpmであるのが適当である。
【0031】
このように、リブウェハ100を回転させながら、回転の中心Oにエッチング液50を滴下することで、図4に破線の矢印で示すように、エッチング液50が、リブウェハ100の全面で、回転の中心Oから外周へ向かって流れる。このため、リブウェハ100の裏面側の全面がエッチングされる。ただし、滴下位置をウェハの中心に固定すると、常にフレッシュなエッチング液がリブウェハの中心に当り続けることになり、エッチング液の特性によってはリブウェハの中心部が選択的に多くエッチングされてしまう場合がある。この場合、次のような処理を行って面内が均一のエッチング量になるような調整を行う。
【0032】
それは、図4または図5に示したように、リブウェハ100を回転させ、かつノズル10からエッチング液50を滴下したまま、ノズル10を、リブウェハ100における回転の中心Oにエッチング液50を滴下する位置(以下、中心位置とする)を基点としてスウィングさせるものである。すなわち、まず、図6または図7に示すように、ノズル10を、中心位置からリブウェハ100の外周端部へ向かって移動させる。ついで、ノズル10の移動を任意の位置で止めて、さらにノズル10の位置を中心位置に向けて移動させる。そして、ノズル10の位置を中心位置に戻し(図4、図5)、そのまま中心位置を過ぎても移動を止めずに、中心位置に対して反対側の外周端部へ向かって移動させる(不図示)。ついで、ノズル10の移動を任意の位置で止めて、さらにノズル10の位置を中心位置に向けて移動させる。そして、ノズル10の位置を中心位置に戻す(図4、図5)。これらの処理を、数十秒から数分の間、繰り返し行う。
【0033】
このように、ノズル10をスウィングさせながらエッチング液50を滴下することで、中心位置以外の位置にもノズル10からエッチング液50が滴下されることとなる。このとき、リブウェハ100を回転させながらエッチング液50を滴下するため、リブウェハ100の回転による遠心力によって、図6に破線の矢印で示すように、回転の中心Oからずれた方向の外周端部に向かって扇形状にエッチング液50が流れる(図6)。このため、リブウェハ100の裏面の中央部の一定の領域のみがエッチングされるが、リブウェハ100が回転しているため、リブウェハ100の裏面側の全面がエッチングされることとなる。このように、スウィングの角度や速度を適宜調整し、且つ、エッチング液の条件や滴下量との組み合わせによりウェハ全面のエッチング量が均一になるように制御する。
【0034】
図4〜図7に示すように、リブウェハ100の裏面の中央部3をエッチングすることで、砥石により形成された研削ダメージ層を除去することができる。このとき、エッチングの深さは、例えば20μm程度とする。
【0035】
なお、図1〜図3において、リブウェハの裏面側を湿式ウェットエッチングによって薄くした場合、図4〜図7の処理を省略してもよい。
【0036】
ついで、図8または図9に示すように、リブ部4の表面の内周側端部にエッチング液50を滴下するように、ノズル10の位置を移動する。そして、リブウェハ100を回転させながら、ノズル10からエッチング液50を滴下する。なお、図9は、図8の切断線D−D'における断面構造を示す断面図である。このように、リブウェハ100を回転させながら、リブ部4の表面の内周端部にエッチング液50を滴下することで、エッチング液50が回転の中心Oの方向へ流れず、外周に向かってのみ流れる。このため、リブ部4の表面の内周端部が選択的にエッチングされる。
【0037】
このようにすることで、図10〜図14に示すように、リブ部4の内周側の側壁に傾斜面または曲面が形成される。すなわち、図10に示すように、リブウェハ100におけるリブ部4の内周側の側壁に、中央部3と接する側から表面に向けて傾斜面5が形成される。もしくは、図11に示すように、リブ部4の表面の内周端部に凸曲面6が形成される。また、図12に示すように、リブ部4と中央部3との境界に凹曲面7が形成される。すなわち、平坦な中央部3から緩やかに立ち上がり、リブ部4の表面に緩やかに達する面が形成される。なお、図13に示すように、リブ部4と中央部3との境界に凹曲面7が形成され、かつリブ部4の表面の内周端部に凸曲面6が形成されてもよい。すなわち、平坦な中央部3から緩やかに湾曲して立ち上がり、途中から湾曲が反転してリブ部4の表面に緩やかに連なる面が形成されてもよい。また、図14に示すように、リブ部4と中央部3との境界に凹曲面7が形成され、かつリブ部4の内周側の側壁に傾斜面5が形成されてもよい。すなわち、平坦な中央部3から緩やかに湾曲して立ち上がり、そのままリブ部4の表面に達する面が形成されてもよい。
【0038】
ついで、エッチング液50の滴下を止めて、図示しない水洗用ノズルから純水等の洗浄液を、例えば数十秒程度の間滴下する。このとき、リブウェハを回転させながら洗浄液を滴下してもよいし、水洗用ノズルを移動させながら洗浄液を滴下してもよい。すなわち、リブウェハの裏面側の中央部の全面に洗浄液が流れるようにすればよい。ついで、洗浄液の滴下を止めて、乾燥工程を行う。
【0039】
つぎに、図15および図16を用いて、乾燥工程について説明する。乾燥工程としては、バッチ式乾燥装置を用いて、複数枚のリブウェハを同時に乾燥させる方法と、枚葉式乾燥装置を用いて、1枚のリブウェハを乾燥させる方法がある。これらの方法は、乾燥工程の直前に行われる処理や、乾燥の条件によって種々変更する。図15は、バッチ式乾燥装置を用いた乾燥工程について示す断面図である。図15に示すように、複数のリブウェハ100をウェハキャリア31に設置し、このウェハキャリア31をバッチ式乾燥装置30のクレードル32に装填する。バッチ式乾燥装置30としては、1つのクレードル32を有し、1つのウェハキャリア31を装填することのできる単キャリア式と、1つのクレードル32と対向する位置にもう1つのクレードル32を有し、2つのウェハキャリアを装填することのできるキャリア対向式と、がある。図15においては、キャリア対向式のバッチ式乾燥装置30を示している。バッチ式乾燥装置30によれば、一度に複数のリブウェハ100を乾燥させることができる。
【0040】
バッチ式乾燥装置30の回転の中心軸33から、リブウェハ100の中心までの距離Rは、例えば、20cmとする。そして、バッチ式乾燥装置30の回転の中心軸33を中心として、クレードル32を回転させる。クレードル32を回転させる回転速度は、ウェハキャリア31内でリブウェハ100が回転によってずれない速度であり、例えば数百rpm程度の低速度であるのが適当である。なお、バッチ式乾燥装置30の回転の中心軸33とリブウェハ100の中心との距離Rに応じて、回転速度や回転時間が調整される。この回転の遠心力によってリブウェハ100に滴下された洗浄液51をリブウェハ100の外周方向へ除去することによって、リブウェハ100を乾燥させる。このとき、例えば図示しない乾燥ブロー用ノズルから空気等を吹き付けながらリブウェハ100を乾燥させてもよい。そして、取り除かれた洗浄液水滴および排気が、排気・排水口34からバッチ式乾燥装置30の外部へ取り除かれる。
【0041】
ここで、例えば図10に示すように、リブ部4の内周側の側壁に傾斜面が形成されている場合、中央部3とリブ部4とによって形成される段差の角度θが直角よりも大きくなり、この段差によって液体の流動が妨げられることがなくなる。また、例えば図11に示すように、リブ部4の表面の内周端部に、リブ部4と中央部3との境界からリブ部4の表面へ向かって凸曲面6が形成されている場合、リブ部4の内周側の側壁を液体が流れやすくなり、液体の流動が妨げられない。また、例えば図12に示すように、リブ部4と中央部3との境界に凹曲面7が形成されている場合、中央部3とリブ部4との境界によって液体の流動が妨げられることがなくなる。さらに、図13または図14に示すように、これらの形状を組み合わせた場合にも、同様に、中央部3とリブ部4との境界によって液体の流動が妨げられることがなくなる。したがって、洗浄液51による水滴が中央部3とリブ部4とによって形成される段差に残らない。
【0042】
また、図16は、枚葉式乾燥装置を用いた乾燥方法について示す図である。枚葉式乾燥装置は、薬液処理装置や研削装置などのプロセス処理装置に、処理後の洗浄・乾燥を行う処理部として組み込まれていることが多い。この枚葉式乾燥装置では、一度に乾燥させる枚数が少なくなるが、洗浄と乾燥とを同じ装置内で行うことができるため、ウェハキャリアなどにウェハを搬送しなくてよい。また、保持機構でウェハを保持することができるので、バッチ式の乾燥装置に比べて速い回転速度でウェハを回転させることができ、かつ細かい条件で乾燥処理を行うことができる。
【0043】
図16に示すように、枚葉式乾燥装置においては、リブウェハ100をウェハ保持機構40により保持させ、リブウェハ100の中心付近を回転の中心Oとして、リブウェハ100を回転させる。回転速度は、例えば数千rpm程度であるのが適当である。このようにすることで、回転の中心Oから外周に向かって遠心力がかかる。この遠心力によって、洗浄液51が除去される。
【0044】
実施の形態1によれば、リブウェハにおいて、リブ部の内周側の側壁に傾斜面や曲面を形成することができる。したがって、洗浄工程や薬液処理工程の後の乾燥工程において、洗浄液や薬液がリブウェハの中央部とリブ部とにより形成される段差部に残らない。これによって、リブウェハ上に残る液滴によるデバイスの特性の悪化を抑えることができるため、良品率が向上する。また、低回転で乾燥を行っても洗浄液や薬液が残ることを防ぐので、バッチ式乾燥装置を用いて一度に複数枚のリブウェハを乾燥させることができるため、スループットが向上する。
【0045】
さらに、半導体ウェハに処理を行う半導体製造装置が洗浄液や薬液によって汚染されるのを防ぐことができる。したがって、半導体製造装置を洗浄する手間が省け、かつ半導体製造装置の故障を防ぐことができる。このため、スループットが向上し、コストを抑えることができる。
【0046】
また、リブ部の内周側の側壁に傾斜面や曲面を形成する際に、複雑な工程や新しい装置が必要ないため、スループットが向上し、コストを抑えることができる。
【0047】
(実施の形態2)
図17は、実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法について示す平面図である。また、図18は、図17の切断線E−E'における断面構造を示す断面図である。図17または図18に示すように、実施の形態2においては、実施の形態1において説明した図4〜図7の処理と、図8または図9の処理と、を同時に行う。すなわち、リブウェハ100を回転させながら、中心位置を基点としてスウィングさせるノズル10と、リブ部4の表面の内周端部にエッチング液50を滴下する位置に設置されたノズル11と、から同時にエッチング液50を滴下する。その他の構成および方法は、実施の形態1と同様のため、説明を省略する。
【0048】
実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、実施の形態1よりも工程数が減り、スループットを向上することができる。
【0049】
(実施例)
つぎに、実施の形態1または実施の形態2にかかる製造方法によって形成された半導体装置(実施例とする)と、従来の製造方法によって形成された半導体装置(従来例とする)とを比較する。図19は、実施例と従来例との回転数および乾燥時間に対する乾燥状態を示す図である。図19においては、図15に示したバッチ式乾燥装置によって乾燥を行う際の、回転数と、回転を行った時間(乾燥時間)と、に対して、実施例および従来例のリブウェハの乾燥状態を調べた。乾燥状態としては、中央部とリブ部とによって形成される段差部、リブ部のおもて面側の表面(リブおもて面)、リブ部の裏面側の表面(リブ裏面)について、洗浄液(例えば、純水)の水滴が残っているか否かを調べた。図19においては、水滴が残っていない場合を○印、水滴が残っている場合を×印とした。また、実施例としては、図10に示したリブ部の内周側の側壁に傾斜面が形成されたリブウェハを用い、従来例としては、図19に示した中央部とリブ部との境界の角度が略直角であるリブウェハを用いた。
【0050】
図19に示すように、従来例においては、乾燥時間が100秒の場合、回転数を700rpmとしても段差部に水滴が残った。ここで、乾燥時間を200秒とすると回転数が700rpmでも段差部に水滴が残らないが、乾燥にかかる時間が増加し、スループットが低下する。また、回転数をさらに高速度にすると、回転時にウェハキャリア内でリブウェハが動いてしまい、ウェハキャリアの内面にリブウェハがぶつかりリブウェハが割れてしまう可能性がある。
【0051】
一方、実施例においては、乾燥時間が100秒の場合、回転数を300rpm以上とすることで、リブ裏面のウェハキャリアと接する領域(接触部)には水滴が残るが、段差部およびリブおもて面には水滴が残らなかった。さらに、回転数を600rpm以上とすることで、段差部、リブおもて面およびリブ裏面の全てに水滴が残らないことがわかった。
【0052】
このように、実施例においては、100秒程度の乾燥時間の場合、600rpm程度の低速度で回転させることで、リブウェハを乾燥させることができる。このため、乾燥にかかる時間が減少しスループットが向上する。また、300rpm程度のさらに低速度で回転させた場合でも、段差部に水滴が残るのを防ぐことができる。このため、デバイスの特性が悪化することを防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上のように、本発明にかかる半導体装置の製造方法は、デバイス厚の薄い半導体装置を製造するのに有用であり、特に、電力変換装置などに使用されるパワー半導体装置を製造するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図2】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図3】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図4】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図5】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図6】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図7】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図8】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図9】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図10】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図11】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図12】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図13】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図14】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図15】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図16】実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について示す説明図である。
【図17】実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法について示す平面図である。
【図18】図17の切断線E−E'における断面構造を示す断面図である。
【図19】実施例と従来例との回転数および乾燥時間に対する乾燥状態を示す図である。
【図20】リブウェハにおける乾燥工程時の問題点について示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
2 素子構造
3 中央部
4 リブ部
10 ノズル
20 ウェハ保持機構
50 エッチング液
100 リブウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの裏面の中央部を外周端部よりも薄くして、当該半導体ウェハの裏面の外周端部にリブ部を形成するリブ形成工程と、
前記半導体ウェハの裏面側の全面をエッチングする第1エッチング工程と、
前記半導体ウェハの裏面側の前記リブ部の表面の内周端部を選択的にエッチングする第2エッチング工程と、
前記半導体ウェハの裏面側に洗浄液を滴下する洗浄工程と、
前記半導体ウェハを回転させて、当該半導体ウェハを乾燥させる乾燥工程と、
を順に行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体ウェハの裏面の中央部を外周端部よりも薄くして、当該半導体ウェハの裏面の外周端部にリブ部を形成するリブ形成工程と、
前記半導体ウェハの裏面側の全面をエッチングし、かつ前記半導体ウェハの裏面側の前記リブ部の表面の内周端部を選択的にエッチングするエッチング工程と、
前記半導体ウェハの裏面側に洗浄液を滴下する洗浄工程と、
前記半導体ウェハを回転させて、当該半導体ウェハを乾燥させる乾燥工程と、
を順に行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1エッチング工程および前記第2エッチング工程、または前記エッチング工程においては、前記半導体ウェハの中央部の中心付近を回転の中心として、当該半導体ウェハを回転させながらエッチングを行うことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥工程においては、1枚の前記半導体ウェハを保持機構に吸着させて、当該半導体ウェハの中央部の中心付近を回転の中心として、当該半導体ウェハを回転させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥工程においては、複数枚の前記半導体ウェハをウェハキャリアに設置して、当該ウェハキャリアから所定距離離れた位置を回転軸として、当該ウェハキャリアごと回転させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥工程においては、前記半導体ウェハに気体を吹き付けることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−259941(P2009−259941A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105583(P2008−105583)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】