説明

半導体装置の製造方法

【課題】ReRAM用のダイオードを形成するために、アモルファス半導体膜の表面に酸化膜が形成された場合であっても、アモルファス半導体膜を結晶化することが可能な半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板101上に、下部電極層111とアモルファス半導体膜112を形成し、アモルファス半導体膜112上の自然酸化膜121を介して、還元性のある金属層113Aを含む上部電極層113を形成し、マイクロ波を用いたアニールにより、金属層113Aと酸化膜121を反応させて、酸化膜121を半導体へと還元する。また、アニールにより更に、金属層113Aと半導体112を反応させて、金属層113Aの構成元素と半導体112の構成元素とを含む反応生成物113Cを生成する。また、反応生成物113Cを結晶成長のためのシードとして、アモルファス半導体膜112を結晶成長させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置の製造方法に関し、例えば、シリコン等のIV族元素からなるアモルファス半導体膜を結晶化する工程で使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
従来の平面型メモリにおける集積度の限界を打破するため、次世代以降の半導体メモリとして、3次元型メモリが提案されている。3次元型メモリの例としては、抵抗変化材料を用いて構成されるReRAM(Resistance Change Random Access Memory)等が挙げられる。
【0003】
ReRAMでは、抵抗変化材料に電流を流すために、ダイオードやセレクターが用いられる。ダイオードの例としては、PIN(P-type/I-type/N-type)ダイオード、セレクターの例としては、NPN(N-type/P-tyre/N-type)型やPNP(P-type/N-tyre/P-type)型のパンチスルーセレクター等が挙げられる。
【0004】
現在、ReRAMのダイオードやセレクターは、Si(シリコン)で形成するのが一般的である。これらのダイオードやセレクターの形成方法としては、下部電極の材料となる下部電極層上に、Siの結晶化温度よりも低い温度で、不純物を含むアモルファスSi膜を堆積し、その後、RTA(Rapid Thermal Annealing)で、アモルファスSi膜の結晶化と不純物の活性化を同時に行う方法が採用されている。
【0005】
従来例として、PIN型のアモルファスSi膜を下部電極層上に形成する場合について説明する。
【0006】
製造プロセスとしては、下部電極層上に、P(リン)等のN型不純物がドープされたN型のアモルファスSi膜を堆積し、その上に、何もドープされていない(Intrinsicな)アモルファスSi膜を堆積し、その上に、B(ボロン)等のP型不純物がドープされたP型のアモルファスSi膜を堆積し、その上に、上部電極層を堆積する。これにより、PIN構造のアモルファスSi膜が形成される。PIN構造を構成する個々のアモルファスSi膜は、それぞれP層、I(Intrinsic)層、N層と呼ばれる。
【0007】
その後、N2中又は不活性ガス中での、700〜750℃、10〜60秒間のRTAにより、結晶化と活性化を同時に行う。この条件は、不純物の拡散をできるだけ抑制しつつアモルファスSi膜を完全に結晶化させることを目的に設定されている。しかしながら、不純物の拡散を完全に抑制することはできず、N層中のP原子やP層中のB原子が、I層中に拡散してしまう。
【0008】
P原子とB原子の混合は、I層を十分に厚くすることで抑制可能である。一方、上記の製造プロセスでは、ダイオード(セレクター)上に上部電極層を堆積した後に、上部電極層、ダイオード(セレクター)、及び下部電極層を一括して加工する必要があるため、ダイオード(セレクター)の高さは、加工の容易性から90nm以下とすることが望ましい。しかし、ダイオード(セレクター)の高さが90nm以下になると、十分な厚さのI層を得ることが難しくなる。
【0009】
よって、従来のようなRTAによる結晶化及び活性化では、ダイオード(セレクター)の良好なオン/オフ特性を保ちながら、加工の容易な縦型のダイオード(セレクター)を形成することは困難であった。
【0010】
また、アモルファスSi膜を結晶化する際には、場合により、結晶成長のためのシードとなる材料を、アモルファスSi膜の表面に接触させる必要がある。しかしながら、アモルファスSi膜の表面には、時間の経過に伴い自然酸化膜が生じてしまう。よって、アモルファスSi膜上に上記材料を堆積すると、アモルファスSi膜と上記材料との間に自然酸化膜が介在してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−280304号公報
【特許文献2】特開2002−16014号公報
【特許文献3】特開平8−255754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、アモルファス半導体膜の表面に酸化膜が形成された場合であっても、アモルファス半導体膜を、結晶成長のためのシードを用いて結晶化することが可能な半導体装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一の態様の半導体装置の製造方法では、例えば、基板上に、下部電極層を形成し、前記下部電極層上に、不純物を含むアモルファス半導体膜を形成し、前記アモルファス半導体膜上に、前記アモルファス半導体膜の酸化により生じた酸化膜を介して、前記酸化膜に対して還元性のある金属層を含む上部電極層を形成する。そして、前記方法では、マイクロ波を用いたアニールにより、前記金属層と前記酸化膜を反応させて、前記酸化膜を半導体へと還元する。また、前記方法では、前記アニールにより更に、前記金属層と前記半導体を反応させて、前記金属層の構成元素と前記半導体の構成元素とを含む反応生成物を生成する。また、前記方法では、前記アニールにより更に、前記反応生成物を結晶成長のためのシードとして、前記アモルファス半導体膜を結晶成長させる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す側方断面図(1/2)である。
【図2】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す側方断面図(2/2)である。
【図3】SiO2及びTiO2の標準生成自由エネルギーの温度特性を模式的に示したグラフである。
【図4】NPN型のパンチスルーセレクターを備える半導体装置の一製造工程を示した側方断面図である。
【図5】PNP型のパンチスルーセレクターを備える半導体装置の一製造工程を示した側方断面図である。
【図6】第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1及び図2は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す側方断面図である。本実施形態の半導体装置は、例えば、ReRAM等の3次元型メモリである。
【0017】
以下、本実施形態の半導体装置の製造方法について、PINダイオードを結晶化及び活性化する工程を中心に説明する。
【0018】
まず、図1(A)に示すように、基板101上に、PINダイオードの下部電極の材料となる下部電極層111を形成する。本実施形態では、基板101は、Si基板等の半導体基板とし、下部電極層111は、TiN(窒化チタン)膜とする。下部電極層111は、例えば、基板101上に設けられたプラグ配線上に形成される。
【0019】
次に、図1(B)に示すように、下部電極層111上に、PINダイオードの材料となるアモルファス半導体膜112を形成する。本実施形態のアモルファス半導体膜112は、N型不純物がドープされたN型のアモルファスSi膜(N層)112Aと、何もドープされていないIntrinsicなアモルファスSi膜(I層)111Bと、P型不純物がドープされたP型のアモルファスSi膜(P層)111Cとが順に積層されたPIN型の積層膜となっている。
【0020】
N層112Aは、例えば、PH3、Si26、及びHeの混合ガス、又はPH3、SiH4、及びHeの混合ガスを用いて、基板温度500℃にて堆積される。本実施形態では、N層112Aの膜厚は25nmとし、N型不純物としてはP(リン)を使用する。
【0021】
また、I層112Bは、例えば、SiH4ガス又はSi26ガスを用いて、基板温度500℃にて堆積される。本実施形態では、I層112Bの膜厚は50nmとする。
【0022】
また、P層112Cは、例えば、SiH4、H2、及びBCl3の混合ガス、又はSi26、H2、及びBCl3の混合ガスを用いて、基板温度500℃にて堆積される。本実施形態では、P層112Cの膜厚は25nmとし、P型不純物としてはB(ボロン)を使用する。上記のBCl3の代わりに、B26を用いてもよい。
【0023】
その後、アモルファス半導体膜112の表面には、図1(C)に示すように、時間の経過に伴い、いわゆる自然酸化膜121が生じる。自然酸化膜121は、アモルファス半導体膜112の自然酸化により生じる酸化膜であり、本実施形態では、SiO2膜(シリコン酸化膜)となる。
【0024】
自然酸化膜121の膜厚は、時間の経過に伴い厚くなり、アモルファス半導体膜112の堆積から数日経過すると1nm程度にまで厚膜化し、そこで厚膜化が止まる。堆積から数時間であれば、1nm程度までは厚膜化しないものの、やはり自然酸化膜121が形成される。
【0025】
本実施形態では、アモルファス半導体膜112の形成以降の工程を、自然酸化膜121が生じた状態で行うものとする。本実施形態では、自然酸化膜121の膜厚は、1nmであるとする。
【0026】
次に、図2(A)に示すように、アモルファス半導体膜112上に、自然酸化膜121を介して、PINダイオードの上部電極の材料となる上部電極層113を形成する。本実施形態では、上部電極層113は、Ti(チタン)膜113Aと、TiN(窒化チタン)膜113Bとが順に積層された積層膜となっている。本実施形態では、Ti膜113Aの膜厚は3nmとし、TiN膜113Bの膜厚は5nmとする。
【0027】
Ti膜113Aは、SiO2膜である自然酸化膜121に対して還元性を有する金属層であり、後述するように、自然酸化膜121を還元するのに用いられる。そのため、Ti膜113Aは、自然酸化膜121の表面に接触するよう、上部電極層113の最下位層となっている。本実施形態では、上部電極層113の最下位層として、TI膜113A以外の金属層を採用してもよく、当該最下位層は、単体層でも化合物層でも構わない。
【0028】
次に、図2(B)に示すように、基板101にマイクロ波を照射することで、基板101をアニールする。マイクロ波は、300MHz〜3THzの周波数(100μm〜1mの波長)を有する電磁波と規定されている。
【0029】
本実施形態では、2.45GHz〜300GHzのマイクロ波を用いて、基板101のアニールを行う。これにより、SiO2膜121とTi膜113Aとの界面では、SiO2膜121とTi膜113Aとの酸化還元反応が起こる。この酸化還元反応の反応式は、以下の式(1)に示す通りである。
【0030】
SiO2 + Ti → Si + TiO2 ・・・(1)
この反応により、SiO2膜121を構成するSiO2は、元の半導体であるSiへと還元される。一方、Ti膜113Aを構成するTiは、TiO2へと酸化される。
【0031】
ここで、式(1)の反応が左から右へと進む、即ち、SiO2が還元される方向に反応が進むためには、この反応における標準自由エネルギーの変化が、負の値でなければならない。
【0032】
図3は、SiO2及びTiO2の標準生成自由エネルギーΔG0の温度特性を模式的に示したグラフである。図3には、Si(固体)とO2(気体)からSiO2(固体)が生成される際の標準生成自由エネルギーΔG0と、Ti(固体)とO2(気体)からTiO2(固体)が生成される際の標準生成自由エネルギーΔG0の温度特性が示されている。これらの自由エネルギーは、いわゆるギブスの自由エネルギーに相当する。図3では、これらの自由エネルギーを表す曲線が、便宜上互いに平行に描かれているが、実際には平行とはなっていない。
【0033】
図3に示すように、SiO2及びTiO2の標準生成自由エネルギーは、少なくとも0℃から1420℃の間にわたって、常にTiO2の方が低い。よって、この温度範囲で上記のアニールを行う限り、式(1)の酸化還元反応は、SiO2が還元される方向に反応が進むことになる。なお、本実施形態では、上記のアニールは、後述するように、200℃から550℃で行われる。
【0034】
また、本実施形態では、Ti膜113Aの堆積量は、SiO2膜(自然酸化膜)121が完全に還元された場合でも、Ti膜113Aの余剰が生じる量に設定する。
【0035】
ここで、上記のアニールの開始時におけるTi膜113Aの全体積及びモル体積濃度をそれぞれ、V1[m3]及びC1[mol/m3]と表し、上記のアニールの開始時におけるSiO2膜121の全体積及びモル体積濃度をそれぞれ、V2[m3]及びC2[mol/m3]と表すことにする。体積V1及びV2はそれぞれ、Ti膜113A及びSiO2膜121の初期体積、即ち、堆積時における体積に相当する。
【0036】
この場合、上記の設定は、以下の式(2)の条件が満足されることで実現される。
【0037】
V1×C1 > V2×C2 ・・・(2)
ここで、C2/C1=1.43であることから、式(2)は、以下の式(3)に変形される。
【0038】
V1 > 1.43×V2 ・・・(3)
ここで更に、上記のアニールの開始時におけるTi膜113Aの膜厚を、T1[nm]と表し、上記のアニールの開始時におけるSiO2膜121の膜厚を、T2[nm]と表すことにする。
【0039】
Ti膜113Aの面積とSiO2膜121の面積は同一であることから、両者の膜厚比T1/T2は、両者の体積比V1/V2に等しい。即ち、T1/T2=V1/V2が成り立つ。よって、式(3)は、以下の式(4)に変形される。
【0040】
T1 > 1.43×T2 ・・・(4)
上記の式(4)から、膜厚1nmのSiO2膜121を完全に還元するのに必要なTi膜113Aの膜厚の最小量は、1.43nmであることが解る。よって、本実施形態では、Ti膜113Aの膜厚を、1.43nmよりも大きな値に設定する。
【0041】
本実施形態では、Ti膜113Aの初期膜厚は、3nmに設定される。よって、本実施形態では、膜厚1nmのSiO2膜121が完全に還元された後にも、Ti膜113Aが残存することとなる。
【0042】
よって、本実施形態では、上記のアニールにより更に、Ti膜113Aが、還元により生じたSiや、アモルファス半導体膜112内のSiと反応し、反応生成物として、化学的に安定なTiSi2(チタンシリサイド)が生成される。図2(B)には、アモルファス半導体膜112とTiN膜113Bとの間に、TiSi2膜113Cが生成された様子が示されている。
【0043】
本実施形態では、Ti膜113Aの初期膜厚は3nmであるため、SiO2膜121が完全に還元された場合でも、TiとSiとのシリサイド化反応が起こるのに十分なTi膜113Aが残存している。
【0044】
上記のアニールの開始時には、Ti膜113Aとアモルファス半導体膜112との間にSiO2膜121が介在しており、SiO2膜121が、TiとSiとのシリサイド化反応を抑制する。しかしながら、上記の酸化還元反応が起こった後には、SiO2膜121が部分的又は全体的に除去されているため、マイクロ波の照射を続けることで、TiとSiとのシリサイド化反応が引き起こされる。
【0045】
なお、上記の酸化還元反応により生じたTiO2は、TiSi2膜113Cの内部に混ざり込むものと考えられる。
【0046】
本実施形態では、図2(C)に示すように、引き続き基板101にマイクロ波を照射し、基板101のアニールを継続する。これにより、TiSi2膜113Cを結晶成長のためのシード(種)として、アモルファス半導体膜112が結晶化及び活性化される。図2(C)では、結晶化及び活性化されたN層112A、I層112B、P層112Cがそれぞれ、符号114A、114B、114Cで示されている。
【0047】
なお、上記のアニールでは、マイクロ波のパワーは、基板温度(アニール温度)が200℃から550℃の範囲内となるように設定し、例えば、10W/cm2から10kW/cm2に設定する。また、マイクロ波の照射時間は、例えば、30秒から30分とする。
【0048】
その後、本実施形態では、下部電極層111、結晶化及び活性化された半導体膜114、及び上部電極層113のエッチング加工を行い、PINダイオードを完成させる。また、種々のトランジスタ、コンタクトプラグ、ビアプラグ、配線層、層間絶縁膜等を形成する処理を行う。このようにして、本実施形態の半導体装置が製造される。
【0049】
(第1実施形態の効果)
以上のように、本実施形態では、マイクロ波を用いたアニールにより、Ti膜113Aと自然酸化膜であるSiO2膜121を反応させて、SiO2膜121をSiへと還元し、更に、Ti膜113AとSiを反応させて、TiSi2膜113Cを生成し、更に、TiSi2膜113Cを結晶成長のためのシードとして、アモルファス半導体膜112を結晶成長させる。
【0050】
これにより、本実施形態では、アモルファス半導体膜112の表面に自然酸化膜121が形成された場合であっても、アモルファス半導体膜112を、結晶成長のためのシードを用いて結晶化することが可能となる。Ti膜113Aにより、自然酸化膜121が除去されると共に、結晶成長のためのシードが生成されるからである。
【0051】
マイクロ波アニールには、RTA等の熱アニールに比べ、比較的低温でアモルファス半導体膜112を結晶化及び活性化できるという利点がある。しかしながら、マイクロ波アニールには、熱アニールに比べ、結晶化駆動力が小さく、シードなしではアモルファス半導体膜112を結晶化することが難しいという欠点がある。
【0052】
よって、マイクロ波アニールを行う際には、アモルファス半導体膜112の表面にシードを形成することが望まれるが、アモルファス半導体膜112の表面に自然酸化膜121が形成されることへの対処方法が問題となる。
【0053】
これに対し、本実施形態によれば、アモルファス半導体膜112の表面から自然酸化膜121を除去して、アモルファス半導体膜112の表面にシードを形成することが可能となるため、上記のようなマイクロ波アニールの問題を克服することが可能となる。
【0054】
マイクロ波アニールによって、アモルファス半導体膜112を低温で結晶化及び活性化することには、次のような利点がある。
【0055】
低温でのマイクロ波アニールによれば、第1に、半導体膜114を構成する結晶粒を大粒径化して、良好な結晶性を実現することが可能となる。このことには、半導体膜114内の粒界面積が小さくなり、粒界における電荷トラップの発生頻度が減少するという利点がある。
【0056】
低温でのマイクロ波アニールによれば、第2に、N層112A中のN型不純物や、P層112C中のP型不純物の拡散を抑制することが可能となる。よって、アモルファス半導体膜112内の不純物濃度プロファイルを急峻にしても、不純物の拡散を従来に比べて抑制することができるため、急峻な不純物濃度プロファイルを有するダイオードやセレクターを実現することが可能となる。また、このことは、N層112AやP層112Cを薄くしてアモルファス半導体膜112内の不純物濃度プロファイルを急峻にしても、不純物の拡散を抑制できることを意味するため、N層112AやP層112Cの薄膜化を実現することが可能となる。
【0057】
N層112AやP層112Cを薄膜化すれば、ダイオードやセレクターの高さを90nm以下に抑えつつ、I層112Bを厚膜化することが可能となる。即ち、ダイオードやセレクターの加工の容易性を損なわずに、I層112Bを厚膜化することが可能となる。I層112Bの厚膜化には、N型不純物とP型不純物がI層112B内で重なり合うことが抑制され、オフ電流が低減されるという利点がある。
【0058】
これらの利点により、本実施形態では、オン/オフ特性の優れた高性能のダイオードやセレクターを実現することが可能となる。
【0059】
ここで、本実施形態におけるアニール温度とマイクロ波周波数について説明する。
【0060】
本実施形態では、TiSi2膜113Cをシードとしてマイクロ波アニールを行うことにより、200℃〜550℃という低温でアモルファス半導体膜102を結晶化することが可能となっている。このような低いアニール温度によれば、不純物の拡散を効果的に抑制することができ、且つ、半導体膜114を構成する結晶粒を効果的に大粒径化することができ、その結果、オン/オフ特性の優れた高性能のダイオードやセレクターを実現することが可能となる。
【0061】
なお、200℃〜550℃というアニール温度には、例えば、この温度範囲では、アモルファス半導体膜102におけるマイクロ波の吸収が良好になるという利点がある。
【0062】
また、本実施形態では、マイクロ波の周波数は、2.45GHz〜300GHzに設定される。
【0063】
マイクロ波の周波数に関しては、ISM(Industrial, Scientific, and Medical use)バンドとして、2.45GHz、5.80MHz、及び24.125GHzが指定されている。これらの周波数のマイクロ波は、これらを発生させるためのマグネトロン等が安価に入手可能である。よって、本実施形態で用いるマイクロ波の周波数は、例えば、2.45GHz〜24.125GHzの範囲内で設定してもよい。
【0064】
また、ISMで指定された3種類の周波数のうち、5.8GHzという周波数は、シリコンを加熱するのに最も適した周波数となっている。そのため、アモルファス半導体膜102がシリコン膜である場合には、本実施形態で用いるマイクロ波の周波数は、5.8GHz付近、例えば、3GHz〜8GHzの範囲内で設定してもよい。
【0065】
(第1実施形態の変形例)
以下、第1実施形態の種々の変形例について説明する。
【0066】
本実施形態では、アモルファス半導体膜102は、Si(シリコン)膜となっている。しかしながら、アモルファス半導体膜102は、その他の材料で形成されていてもよく、例えば、Si以外のIV族元素で形成されていてもよいし、Si及びSi以外のIV族元素で形成されていてもよい。このようなアモルファス半導体膜102の例として、Ge(ゲルマニウム)膜や、Si1-XGeX(シリコンゲルマニウム)膜が挙げられる。ただし、Xは、0<X<1を満たす実数である。
【0067】
また、本実施形態では、下部電極層113の最下位層である金属層113Aは、Ti膜となっている。しかしながら、この金属層113Aは、その他の材料で形成されていてもよく、例えば、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Pt(白金)、及びPd(パラジウム)の少なくともいずれかを含有する金属層としてもよい。この場合、上記のシリサイド化反応では、当該金属層を構成する金属元素がシリサイド化されて、金属シリサイドが生成される。
【0068】
また、本実施形態では、酸化膜121は、アモルファス半導体膜102の自然酸化により生じた自然酸化膜としたが、本実施形態は、酸化膜121が、アモルファス半導体膜102の何らかの強制酸化により生じた強制酸化膜である場合にも適用可能である。
【0069】
また、本実施形態では、アモルファス半導体膜102からPINダイオードを作製する場合について説明したが、本実施形態は、例えば、NIPダイオードやセレクターを作製する場合にも適用可能である。このような場合の例を、図4及び図5に示す。
【0070】
図4は、NPN型のパンチスルーセレクターを備える半導体装置の一製造工程を示した側方断面図である。一方、図5は、PNP型のパンチスルーセレクターを備える半導体装置の一製造工程を示した側方断面図である。図4や図5に示す工程は、図2(C)に示す工程に対応している。
【0071】
図4では、図2(C)に示すN層114A、I層114B、及びP層114Cがそれぞれ、N層114D、P層114E、及びN層114Fに置き換えられている。また、図5では、図2(C)に示すN層114A、I層114B、及びP層114Cがそれぞれ、P層114G、N層114H、及びP層114Iに置き換えられている。
【0072】
図4や図5に示すセレクターは、図1(A)〜図2(C)に示すダイオードと同様の製造工程により作製可能である。
【0073】
以上のように、本実施形態では、マイクロ波を用いたアニールにより、Ti膜113Aと自然酸化膜であるSiO2膜121を反応させて、SiO2膜121をSiへと還元し、更に、Ti膜113AとSiを反応させて、TiSi2膜113Cを生成し、更に、TiSi2膜113Cを結晶成長のためのシードとして、アモルファス半導体膜112を結晶成長させる。
【0074】
これにより、本実施形態では、アモルファス半導体膜112の表面に自然酸化膜121が形成された場合であっても、アモルファス半導体膜112を、結晶成長のためのシードを用いて結晶化することが可能となる。
【0075】
本実施形態によれば、アモルファス半導体膜112の表面から自然酸化膜121を除去して、アモルファス半導体膜112の表面にシードを形成することが可能となるため、アモルファス半導体膜112の表面に自然酸化膜121が形成された場合であっても、マイクロ波アニールをシードを用いて行うことが可能となる。
【0076】
以下、第2実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。第2実施形態は、第1実施形態の変形例であり、第2実施形態については、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0077】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す側方断面図である。
【0078】
本実施形態ではまず、第1実施形態と同様に、図1(A)〜図1(C)に示す工程を行う。
【0079】
次に、図6(A)に示すように、アモルファス半導体膜112上に、自然酸化膜121を介して、上部電極層113を形成する。本実施形態では、上部電極層113は、WSi1.6膜113Dと、TiN膜113Eとが順に積層された積層膜となっている。
【0080】
なお、WSi1.6膜113Dは、W(タングステン)とSi(シリコン)が、1対1.6の組成比で含まれるタングステンシリサイド膜であり、ストイキオメトリ(化学量論的組成)よりもメタルリッチな膜となっている。ストイキオメトリ通りのタングステンシリサイド膜の組成式は、WSi2である。
【0081】
次に、図6(B)に示すように、基板101にマイクロ波を照射することで、基板101をアニールする。これにより、SiO2膜121とWSi1.6膜113Dとの酸化還元反応が起こり、その結果、SiO2膜121を構成するSiO2は、元の半導体であるSiへと還元される。
【0082】
また、本実施形態では、上記のアニールにより更に、WSi1.6膜113Dが、還元により生じたSiや、アモルファス半導体膜112内のSiと反応し、反応生成物として、化学的に安定なWSi2(タングステンシリサイド)が生成される。図6(B)には、アモルファス半導体膜112とTiN膜113Dとの間に、WSi2膜113Fが生成された様子が示されている。
【0083】
本実施形態では、図6(C)に示すように、引き続き基板101にマイクロ波を照射し、基板101のアニールを継続する。これにより、WSi2膜113Fを結晶成長のためのシードとして、アモルファス半導体膜112が結晶化及び活性化される。
【0084】
その後、PINダイオードのエッチング加工等の処理が実行され、本実施形態の半導体装置が製造される。
【0085】
ここで、第1実施形態と第2実施形態とを比較してみる。
【0086】
第1実施形態では、自然酸化膜121の還元反応及び金属シリサイド膜113Cの生成反応が、単体金属膜113Aを利用して行われる。これに対し、第2実施形態では、自然酸化膜121の還元反応及び金属シリサイド膜113Fの生成反応が、金属シリサイド膜113Fとは異なる組成比を有する金属シリサイド膜113Dを利用して行われる。
【0087】
第1実施形態と第2実施形態では、自然酸化膜の還元反応及び金属シリサイド膜の生成反応で、それぞれ単体金属膜と金属シリサイド膜を利用するものの、これらの反応の終了後には、いずれも化学的に安定な金属シリサイド膜が得られる。
【0088】
なお、第2実施形態では、金属シリサイド膜113Dとして、WSi1.6膜を用いたが、金属シリサイド膜113Dは、ストイキオメトリよりもメタルリッチであれば、WとSiの組成比が1対1.6以外のタングステンシリサイド膜でも構わない。また、金属シリサイド膜113Dは、ストイキオメトリよりもメタルリッチであれば、例えばTiSi1.6膜等、タングステンシリサイド膜以外の金属シリサイド膜でも構わない。
【0089】
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様、アモルファス半導体膜112の表面に自然酸化膜121が形成された場合であっても、アモルファス半導体膜112を、結晶成長のためのシードを用いて結晶化することが可能となる。
【0090】
また、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様、アモルファス半導体膜112の表面から自然酸化膜121を除去して、アモルファス半導体膜112の表面にシードを形成することが可能となるため、アモルファス半導体膜112の表面に自然酸化膜121が形成された場合であっても、マイクロ波アニールをシードを用いて行うことが可能となる。
【0091】
以上、本発明の具体的な態様の例を、第1及び第2実施形態により説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0092】
101 基板
111 下部電極層
112 アモルファス半導体膜
112A N層
112B I層
112C P層
113 上部電極層
113A Ti膜
113B TiN膜
113C TiSi2
113D WSi1.6
113E TiN膜
113F WSi2
114 結晶化された半導体膜
114A,D,F,H N層
114B I層
114C,E,G,I P層
121 自然酸化膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、下部電極層を形成し、
前記下部電極層上に、不純物を含むアモルファス半導体膜を形成し、
前記アモルファス半導体膜上に、前記アモルファス半導体膜の酸化により生じた酸化膜を介して、前記酸化膜に対して還元性のある金属層を含む上部電極層を形成し、
マイクロ波を用いたアニールにより、前記金属層と前記酸化膜を反応させて、前記酸化膜を半導体へと還元し、
前記アニールにより更に、前記金属層と前記半導体を反応させて、前記金属層の構成元素と前記半導体の構成元素とを含む反応生成物を生成し、
前記アニールにより更に、前記反応生成物を結晶成長のためのシードとして、前記アモルファス半導体膜を結晶成長させる、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記酸化膜は、前記アモルファス半導体膜の表面に生じた自然酸化膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記反応生成物は、金属シリサイドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記アニールの開始時における前記金属層の全体積及びモル体積濃度を、それぞれV1[m3]及びC1[mol/m3]とし、
前記アニールの開始時における前記酸化膜の全体積及びモル体積濃度を、それぞれV2[m3]及びC2[mol/m3]とする場合、
V1×C1 > V2×C2 ・・・(5)
の条件が満足されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記金属層の酸化物の標準生成自由エネルギーは、前記アニールの温度において、前記酸化膜の標準生成自由エネルギーよりも低いことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記アニールの温度は、200から550℃であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記マイクロ波の周波数は、2.45から300GHzであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記金属層は、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Pt(白金)、及びPd(パラジウム)の少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記金属層は、単体金属膜、またはストイキオメトリよりもメタルリッチな金属シリサイド膜であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記アモルファス半導体膜は、Si(シリコン)及びGe(ゲルマニウム)の少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−69650(P2012−69650A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211982(P2010−211982)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】