半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法及び製造装置、並びに電気光学装置
【課題】大型基板と層間絶縁膜との間に発生する応力を緩和し、大型基板の反りを防止する。
【解決手段】大型基板100上に導電層15,15bと層間絶縁膜13,14,19,25とが交互に積層して複数の素子基板を形成する工程において、大型基板100に成膜した各層間絶縁膜13,14,19,25の互いに隣接する素子基板領域10の境界位置に、大型基板100の一端から他端へ貫通する分断溝180を複数本平行に形成する。各層間絶縁膜13,14,19,25に分断溝180を形成したので、大型基板100と層間絶縁膜13,14,19,25との間の応力が緩和され、大型基板100の反りが解消される。
【解決手段】大型基板100上に導電層15,15bと層間絶縁膜13,14,19,25とが交互に積層して複数の素子基板を形成する工程において、大型基板100に成膜した各層間絶縁膜13,14,19,25の互いに隣接する素子基板領域10の境界位置に、大型基板100の一端から他端へ貫通する分断溝180を複数本平行に形成する。各層間絶縁膜13,14,19,25に分断溝180を形成したので、大型基板100と層間絶縁膜13,14,19,25との間の応力が緩和され、大型基板100の反りが解消される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の素子基板を形成する大型基板の製造工程における反りの発生を抑制する半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法及び製造装置、並びに電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の電気光学装置のうち、電気光学物質として液晶を用いた液晶装置は、投射型表示装置のライトバルブ、各種電子機器の表示装置などとして広い分野にわたって使用されている。ここで、液晶装置は、対向基板と電極基板としての素子基板との間に液晶層を挟持して構成される。対向基板は、基板上に対向電極が配置されて構成される。一方、素子基板は半導体装置に用いられる基板の一種であり、この素子基板上に、互いに交差する複数の走査線と複数のデータ線が配設されていると共に、これらの走査線とデータ線との交差部毎に、スイッチング素子及び画素電極が配置されて構成される。
【0003】
詳細には、素子基板は、基板上にスイッチング素子が形成され、このスイッチング素子を覆うようにゲート絶縁膜が形成され、ゲート絶縁膜上に走査線が形成される。そして、スイッチング素子を覆うように第1層間絶縁膜が形成され、この第1層間絶縁膜上に、ゲート絶縁膜及び第1層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールに対して電気的に接続されるデータ線が形成される。
【0004】
更に、データ線を覆うように第2層間絶縁膜が形成され、この第2層間絶縁膜上に、ゲート絶縁膜、第1層間絶縁膜及び第2層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介してデータ線等と電気的に接続するITO(Indium Tin Oxide)からなる画素電極が形成されて構成される。
【0005】
各絶縁膜は、常圧又は減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によりTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)ガス、TEB(テトラ・エチル・ボートレート)ガス、TMOP(テトラ・メチル・オキシ・フォスレート)ガス等を用いて成膜され、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜で構成されている。
【特許文献1】特開2003−110017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、層間絶縁膜を代表とする絶縁膜は、常圧又は減圧CVD法等で成膜されるため、基板の略全体に形成される。そして、絶縁膜にコンタクトホールを形成するに際しては、先ず、絶縁膜を平坦化するために約900℃前後の温度下でアニール処理を施す。次いで、絶縁膜上にレジスト膜を形成してパターニングを行った後、ウェットエッチング等のエッチングを行うことで、コンタクトホールを形成する。
【0007】
アニール処理の際に絶縁膜と基板との間の応力バランスが崩れ、引張り応力、或いは圧縮応力により大型基板に反りが発生し易くなる。又、アニール処理後のエッチングによりコンタクトホールが形成されるため、このコンタクトホールにより絶縁膜にかかる応力を緩和し、大型基板の反りを緩和することも期待できるが、大型基板に形成されるコンタクトホールの総面積は、大型基板全体の面積に比し僅かであるため、大型基板の反りをなくすまでには至らない。
【0008】
この大型基板の反りにより、素子基板が直ちに製品不良となるものではないが、反りの程度によっては、クラックが誘発される可能性がある。
【0009】
例えば素子基板が液晶装置のTFT(Thin Film Transistor)を配置した基板(以下、「TFT基板」と称する)である場合、大型基板の反りにより、大型基板上に塗布される配向膜に対してラビング処理を施す際に、均一に処理することが困難となる場合が考えられる。更に、対向基板との貼り合わせに際しては、対向基板と素子基板との対向面間に形成されるギャップが不均一となる場合が考えられる。その結果、若干の表示むら、或いは色むらが発生して表示特性が低下することが考えられる。
【0010】
例えば、特許文献1(特開2003−11007号公報)には、大型基板上での素子基板の製造工程において、先ず、絶縁膜を形成し、この絶縁膜にエッチングにより溝を形成した後、この溝を含む絶縁膜全体に形成する膜を、絶縁膜よりもストレスの小さいSiOC膜とする技術が開示されている。
【0011】
特許文献1に開示されている技術では、大型基板に形成した絶縁膜上に、この絶縁膜よりもストレスの小さいSiOC膜を形成することで、絶縁膜とSiOC膜の間に発生する応力を緩和し、大型基板の反りを低下するようにしているが、大型基板と絶縁膜との間に発生する応力を緩和することはできず、大型基板に発生する反りを完全に取り去ることはできない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、大型基板と絶縁膜との間にかかる応力により生じる大型基板の反りを防止し、反りによるクラックの発生を低減し、基板を液晶装置のTFT基板として採用した場合には、良好な表示特性が得られるばかりでなく、製品不良を大幅に削減し、しかも高い信頼を得ることのできる半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法及び製造装置、並びに電気光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため第1発明は、基板上に導電層と絶縁膜とが積層されて複数の素子基板が形成される半導体装置用基板において、互いに隣接する上記複数の素子基板領域の境界に重なる少なくとも1本の溝が上記絶縁膜の表面に形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成では、複数の素子基板が形成されている基板に成膜されている絶縁膜に対して、互いに隣接する複数の素子基板領域の境界に重なる少なくとも1本の溝を形成したので、この溝により絶縁膜が分断され、その結果、基板と絶縁膜との間に生じる応力が緩和され、基板の反りが解消され、製品不良を大幅に削減することができる。
【0015】
第2発明は、第1発明に置いて、上記溝は上記半導体装置用基板の縁に達することを特徴とする。
【0016】
このような構成では、複数の素子基板が形成されている基板に成膜されている絶縁膜に対して形成する溝を、基板の縁に達するようにしたので、この溝により絶縁膜をより確実に分断することができる。
【0017】
第3発明は、第1或いは第2発明において、上記溝は設定間隔を開けて複数本が平行に形成されていることを特徴とする。又、第4発明は、第1或いは第2発明において、上記溝は十字状に形成されていることを特徴とする。更に、第5発明は、第1〜第4発明において、上記溝は階段状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
これらの構成では、基板上に複数本の溝を形成したので、基板と絶縁膜との間に生じる応力がより一層緩和される。
【0019】
第6発明は、基板上に導電層と絶縁膜とを交互に積層して複数の素子基板を形成する半導体装置用基板の製造方法において、基板上に導電層を成膜する工程と、上記導電層上に該導電層を覆う絶縁膜を成膜する工程と、上記絶縁膜の上記素子基板の境界位置に上記基板の一端から他端へ貫通する少なくとも1本の溝を該絶縁膜の面に沿って形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
このような構成では、絶縁膜に対して溝を直接形成するようにしたので、例えば絶縁膜にコンタクトホールを形成する際に溝を同時に形成することができ、製造工程の簡略化を実現することができる。
【0021】
第7発明は、第6発明において、上記溝が、上記絶縁膜上に塗布したフォトレジスト膜に形成したパターンに従って形成されることを特徴とする。
【0022】
このような構成では、溝をフォトレジストにて形成するようにしたので、例えば絶縁膜にコンタクトホールをフォトレジストにて形成する場合には、この溝を同時に形成することができるので、製造工程の簡略化を実現することができる。
【0023】
第8発明は、第6或いは第7発明において、上記素子基板が上記基板上に複数形成され、上記溝は、互いに隣接する上記素子基板の境界位置に形成されることを特徴とする。
【0024】
このような構成では、溝を互いに隣接する素子基板の境界位置に形成したので、各素子基板に影響を及ぼすことがない。
【0025】
第9発明は、絶縁膜上にレジスト膜が塗布されている基板を相対的にステップ移動させながら、該基板上のレジスト膜に対してレチクルに形成されている透光パターンを順次投影して露光する縮小投影露光装置を備え、上記基板の絶縁膜に形成される該基板の一端から他端へ貫通する少なくとも1本の溝を、上記レチクルに形成した透光パターンのステップ移動により形成することを特徴とする。
【0026】
このような構成では、縮小投影露光装置に備えられているレチクルに、基板の絶縁膜に形成される、基板の一端から他端へ貫通する少なくとも1本の溝を形成する透光パターンを形成したので、縮小投影露光装置のステップ移動により溝に対応するパターンを絶縁膜上に容易に形成することができる。
【0027】
第10発明は、第9発明において、上記レチクルには上記絶縁膜に形成する溝に対応する溝用透光パターンと該絶縁膜に形成するコンタクトホールに対応するホール用透光パターンとが形成されていることを特徴とする。
【0028】
このような構成では、レチクルに、絶縁膜に形成する溝に対応する溝用透光パターンと絶縁膜に形成するコンタクトホールに対応するホール用透光パターンとを形成したので、この両者を1工程で同時に形成することができ、作業工程の簡略化が実現できる。
【0029】
第11発明は、第9或いは第10発明において、上記レチクルには上記溝用透光パターンが直交する方向に2本形成されていることを特徴とする。又、第11発明は、第10発明において、上記溝用透光パターンは上記縮小投影露光装置に備えられているレチクルブラインドにて一方又は双方がステップ移動毎に隠されて、上記絶縁膜上に設定パターンの上記溝を形成することを特徴とする。
【0030】
これらの構成では、溝用透光パターンを、直交する方向に2本形成したので、この溝用透光パターンを縮小投影露光装置に備えられているレチクルブラインドにて一方又は双方をステップ移動毎に隠すことで、絶縁膜に設定パターンの溝を少なくとも一本形成することができる。
【0031】
第13発明は、第1〜6の何れかに記載の半導体装置用基板に形成された素子基板を用いて電気光学装置を構成したので、素子基板に反りが発生せず、表示むら、色むらの少ない良好な表示特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1〜図9に本発明の第1形態を示す。図1は素子基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図、図2は一つの画素に着目した液晶装置の模式的断面図である。
【0033】
先ず、これらの図を参照して電気光学装置の代表である液晶装置1の構造について説明する。図1、図2に示すように、液晶装置1は、半導体装置を備える透明な素子基板(半導体装置用基板)10と透明な対向基板20との間に、電気光学物質としての液晶50を封入して構成される。素子基板10は、例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。素子基板10上には画素を構成する画素電極等が、マトリクス状に配置される。
【0034】
素子基板10上の画素領域には、複数本の走査線3aと複数本のデータ線6aとが交差するように配線され、走査線3aとデータ線6aとで区画された領域に画素電極9aがマトリクス状に配置されている。TFT(Thin Film Transistor)30は走査線3aのON信号によってONとなり、これにより、データ線6aに供給された画像信号が画素電極9aに供給される。この画素電極9aと対向基板20に設けられた対向電極21との間の電圧が液晶50に印加される。液晶50は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することで、光を変調し、階調表示を可能にする。
【0035】
次に、ひとつの画素に着目して液晶装置1の構成を詳しく説明する。図2に示すように、素子基板10の対向基板20に対向する側の面(以下、「表面」と称する)には、格子状に溝11が形成されている。この溝11上に下側遮光膜12及び絶縁膜としての第1層間絶縁膜13を介してLDD(Lightly Doped Drain)構造をなすTFT30が形成されている。又、溝11によって、TFT30を配設した基板(TFT基板)の液晶50との境界面が平坦化される。
【0036】
TFT30は、チャネル領域1a′、ソース領域1d、ドレイン領域1eが形成された半導体層1aと、この半導体層1a上にゲート絶縁膜2を介して設けたゲート電極をなす走査線3aとを有している。走査線3aは、ゲート電極となる部分において幅広に形成されており、チャネル領域1a′は、半導体層1aと走査線3aとが対向する領域に構成される。
【0037】
又、データ線6a及び走査線3aは、画素電極9aの縦横の境界に沿って各々配設されている。一方、下側遮光膜12は、反射光がTFT30のチャネル領域1a'、ソース領域1d及びドレイン領域1eに入射することを防止するものであり、各データ線6a及び走査線3aに沿い、各画素に対応して格子状に配設されている。
【0038】
又、TFT30上には絶縁膜としての第2層間絶縁膜14が積層され、第2層間絶縁膜14上に、走査線3a及びデータ線6a方向に延びる島状の第1中間導電層15が形成されている。第1中間導電層15上には誘電体膜17を介して容量線18が対向配置されている。
【0039】
第1中間導電層15は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極(下部容量電極)として作用し、容量線18の一部は固定電位側容量電極(上部容量電極18a)として作用する。
【0040】
容量線18は、上部容量電極18aと遮光層18bの積層膜構造であり、第1中間導電層15に対し、誘電体膜17を介して対向配置されることで蓄積容量を構成すると共に、光の内部反射を防止する遮光機能を有する。更に、半導体層1aに比較的近接した位置に中間導電層15が形成されており、光の乱反射を効率よく防止することができる。
【0041】
尚、容量線18は、内蔵遮光膜を構成すると共に固定電位側容量電極としても機能する。又、第1中間導電層15は、画素電位側容量電極としての機能及び光吸収層としての機能を有すると共に、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能を有する。更に、容量線18は、画素電極9aが配置された画像表示領域からその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されて、固定電位とされる。
【0042】
又、データ線6aとソース領域1dを電気的に接続するために、第2中間導電層15bが形成されている。この第2中間導電層15bは、第1中間導電層15と同一層で形成されており、第2層間絶縁膜14及びゲート絶縁膜2を貫通する、コンタクトホール24aを介してソース領域1dに電気的に接続されている。
【0043】
又、容量線18上に絶縁膜としての第3層間絶縁膜19が配置され、第3層間絶縁膜19上にデータ線6aが積層される。データ線6aは、第3層間絶縁膜19及び誘電体膜17を貫通するコンタクトホール24bを介してソース領域1dに電気的に接続される。
【0044】
更に、データ線6a上に絶縁膜としての第4層間絶縁膜25を介して画素電極9aが積層され、この画素電極9aが、第4層間絶縁膜25、第3層間絶縁膜19、誘電体膜17を貫通するコンタクトホール26bを介して第1中間導電層15に電気的に接続される。又、第1中間導電層15が、第2層間絶縁膜14及びゲート絶縁膜2を貫通するコンタクトホール26aを介して、ドレイン領域1eに電気的に接続される。画素電極9a上には、所定方向にラビング処理された配向膜16が積層されている。
【0045】
走査線3a(ゲート電極)にON信号が供給されると、チャネル領域1a′が導通状態となり、ソース領域1dとドレイン領域1eとが接続されて、データ線6aに供給された画像信号が画素電極9aに与えられる。
【0046】
尚、素子基板10の表面に形成されている各層間絶縁膜13,14,19,25は、素子基板10の表面のほぼ全域にわたって形成されている。又、この各第1層間絶縁膜13,14,19,25に形成されているコンタクトホール24a,24b,26a,26bの、各層間絶縁膜13,14,19,25に占める面積の割合は僅かである。
【0047】
又、対向基板20には、素子基板10のデータ線6a、走査線3a及びTFT30の形成領域に対向する領域、即ち各画素の非表示領域において第1遮光膜23が設けられている。この第1遮光膜23によって、対向基板20側からの入射光がTFT30のチャネル領域1a′、ソース領域1d及びドレイン領域1eに入射することが防止される。又、第1遮光膜23上に、対向電極(共通電極)21が対向基板20全面にわたって形成されている。更に、対向電極21上に、所定方向にラビング処理された配向膜22が積層されている。
【0048】
又、図1に示すように、対向基板20には表示領域を区画する額縁としての遮光膜42が設けられている。更に、遮光膜42の外側の領域で、且つ、素子基板10と対向基板20との間に、液晶50を封入するシール材41が形成されている。シール材41は対向基板20の輪郭形状に略一致するように配置され、素子基板10と対向基板20とを相互に固着する。シール材41は、素子基板10の1辺の一部において欠落しており、この欠落部位と、その上下に張り合わされている両基板10,20とで、液晶注入口78が形成される。この液晶注入口78は、シール材41で区画された内部に液晶50を注入するためのもので、液晶50の注入が完了した後は、封止材79で封止される。
【0049】
又、素子基板10のシール材41の外側の領域には、データ線駆動回路61及び実装端子62が素子基板10の外側一辺に沿って設けられており、この一辺に隣接する2辺に沿って、走査線駆動回路63が設けられている。素子基板10の残る一辺には、画面表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路63間を接続するための複数の配線64が設けられている。又、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、素子基板10と対向基板20との間を電気的に導通させるための導通材65が設けられている。
【0050】
このように、スイッチング素子等を構成する素子基板10は、ガラス又は石英等からなる基板上に、所定のパターンを有する半導体層等の導電層と、それを覆う絶縁膜(層間絶縁膜)とを交互に積層して形成され、更に、各導電層間は、絶縁膜に形成するコンタクトホールを介して電気的に接続される。
【0051】
又、図3に示すように、各素子基板10は、多数枚取りできる大型基板100の状態で製造される。そして、大型基板100に形成された各素子基板10の境界を、スクライブ法、ダイシング法、レーザカット法等により切り出して、チップ状の素子基板10を形成する。尚、以下においては、大型基板100上の、素子基板10が切り出される領域(以下「素子基板領域」と称する)に、素子基板10と同一の符号(10)を付して説明を簡略化する。
【0052】
次に、図4、図5の工程図を参照しながら、各素子基板10を切り出す前の大型基板の状態での素子基板10の製造工程について説明する。尚、上述したように、素子基板10は、所定のパターンとなる半導体層等の導電層と、それを覆う絶縁膜とを交互に成膜する多層構造を有しており、各成膜工程は殆ど同一であるため、以下においては、半導体層1a等から成るTFT30を覆う第2層間絶縁膜14、第2中間導電層15b、及びこの第2中間導電層15bを覆う第3層間絶縁膜19との成形工程を例示して説明する。
【0053】
図4(a):大型基板100上に、TFT30を所定に形成後、このTFT30上に、減圧CVD法等により、NSG膜等のシリコン系膜からなる第2層間絶縁膜14を成膜する。次いで、第2層間絶縁膜14を平坦化するために約900℃前後の温度下でアニール処理を施す。
【0054】
そして、第2層間絶縁膜14にコンタクトホール24a、及び、スクライブライン上に分断溝140を形成するために、その表面にフォトレジスト膜120を塗布する。尚、スクライブラインは、各素子基板領域10の境界線上に形成されており、このスクライブラインに沿って、上述したスクライブ法等により、大型基板100を切り出して、チップ状の素子基板10が形成される。
【0055】
図4(b):フォトリソグラフィによりレチクル(「露光マスク」とも称する)のパターンをフォトレジスト膜120に転写してパターニングする。レチクルを用いてパターンニングを行う方法として、ステッパ方式がある。ステッパ方式は、大型基板100全体を一度に露光せず、1つ或いは数個の素子基板領域10に分けて繰り返し露光するもので、レチクルには、一度に露光する分の素子基板領域10が形成されている。
【0056】
ここで、図6〜図8に基づいて、ステッパ方式の露光について説明する。図6に一般的なステッパ(縮小投影露光装置)210の概略図を示す。
【0057】
高圧水銀ランプ等の発光体211aを備える光源211から放射される紫外線は、第1のコンデンサレンズ212を透過して干渉フィルタ213により特定波長(たとえばi線)に選別された後、フライアイレンズ214に入射されて面内照度を均一化される。その後、フライアイレンズ214から出射された紫外線は、第2のコンデンサレンズ215、レチクルブラインド(「マスキングブレード」とも称する)216、第3のコンデンサレンズ217、レチクルステージ218、縮小投影レンズ219を順次透過し、最終的に、ステージ200に載置されている大型基板100上のフォトレジスト膜120に、レチクルステージ218に載置されているレチクル220(図7参照)に形成されているパターンが縮小投影される。
【0058】
尚、レチクルブラインド216は、光路上に開口部を有しており、この開口部の開口をレチクルのパターンに併せて設定することで、不要な部分の露光を抑制することができる。
【0059】
そして、このステッパ210を順次ステップ移動させることで、全ての素子基板領域10にコンタクトホール24a、及び分断溝140を形成する。図7に示すように、レチクル220は、ガラス基板をベースとしており、その上面にクロム等の遮光膜(ハッチングで示す部分)が塗布されており、素子基板領域10に形成すべきコンタクトホール24a、分断溝140を拡大したホール用透光パターン221及び溝用透光パターン222が各々形成されている。
【0060】
尚、本形態では、1つのレチクル220に1つの素子基板領域10に対応するパターンが形成されているが、1つのレチクル220に複数の素子基板領域10に対応するパターンが形成されていても良い。又、図7の一点鎖線で示す素子基板領域10は、説明の便宜上記載しているだけであり、実際のレチクル220には形成されていない。
【0061】
本形態による、レチクル220に形成されている溝用透光パターン222は、素子基板領域10の外側の一辺(図においては、左辺)であって、互いに隣接する素子基板領域10の境界上、すなわち、スクライブラインに対応する位置に形成されていると共に、レチクル220をステップ移動させて隣の領域を露光させたとき、隣同士の溝用透光パターン222が互いに繋がる長さに形成されている。
【0062】
そして、図8に示すように、ステッパ210を順次ステップ移動させて、大型基板100上のフォトレジスト膜120にレチクル220に形成されているパターンを投影すると、フォトレジスト膜120の、素子基板領域10毎に、コンタクトホール24aに対応する位置、及び分断溝140に対応する位置が露光されて、そこに露光孔120a、及び露光溝120bが形成される。
【0063】
図9(a)に示すように、ステッパ210は、製品となる素子基板領域10に対応する通常の領域以外に、ハッチングで示すように、露光溝120bを大型基板100の端から端まで縦貫させる位置までステップ移動させて順次露光させる。その結果、大型基板100のフォトレジスト膜120には、縦方向のスクライブラインに沿って、一端から他端まで貫通された露光溝120bが形成される。
【0064】
このようにして、図4(b)に示すように、フォトレジスト膜120に、ステッパ210を用いて露光孔120a、及び露光溝120bを所定に形成した後、図4(c)の工程を行う。
【0065】
図4(c):大型基板100をエッチング液に浸漬してウエットエッチング処理を行い、第2層間絶縁膜14に対してコンタクトホール24a、及び分断溝140を開孔する。尚、ウエットエッチング処理としては、DIP式等がある。
【0066】
図4(d):第2層間絶縁膜14上に塗布されているフォトレジスト膜120を、硫酸と過酸化水素水との混合液(硫酸過水)からなる除去液、又はアセトン、エタノール、トルエン等の薬液を用いて除去し、除去後、所定に乾燥させる。
【0067】
図4(e):第2層間絶縁膜14上に第2中間導電層15bとなるAl合金等の導電層をスパッタリング法等で形成する。
【0068】
図4(f):第2中間導電層15bとなる導電層上に、フォトレジスト膜145を塗布する。
【0069】
図4(g):フォトレジスト膜120をパターンニングする。パターンニングの方法は上述したステッパ方式によって行われる。尚、同図に示すように、フォトレジスト膜120の分断溝140に対応する部分は露光されている。
【0070】
図4(h):大型基板100を、DIP式等によりエッチング液に浸漬してウエットエッチング処理を行い、余分な導電層を除去し、各素子基板領域10毎に第2中間導電層15bを形成する。従って、同図に示すように、分断溝140に装填された導電層も除去される。
【0071】
図5(i):第2中間導電層15b上に塗布されているフォトレジスト膜145を、上述したフォトレジスト膜120と同様、薬液を用いて除去し、除去後、所定に乾燥させる。
【0072】
図5(j):第2中間導電層15b上にNSG膜等のシリコン系膜からなる第3層間絶縁膜19を成膜する。次いで、第3層間絶縁膜19を約900℃前後の温度下でアニール処理し平坦化する。
【0073】
図5(k):第3層間絶縁膜19上にフォトレジスト膜150を塗布する。
【0074】
図5(l):フォトレジスト膜150に、フォトリソグラフィによりレチクルのパターンを転写してパターニングする。レチクルを用いてパターンニングを行う方法は、上述したステッパ210を用い、レチクルに形成されてるパターンを転写して行う。レチクルには、コンタクトホール24bと分断溝140とに対応する位置に透光パターンが形成されている。尚、図示しないがレチクルの構成は、図7に示すレチクル220とほぼ同一である。
【0075】
その結果、フォトレジスト膜150には、素子基板領域10毎の、コンタクトホール24bに対応する位置、及び分断溝140に対応する位置が露光され、そこに露光孔150a、及び露光溝150bが形成される。
【0076】
図5(m):大型基板100を、DIP式等によりウエットエッチング処理を行い、第3層間絶縁膜19に対してコンタクトホール24b、及び分断溝160を開孔する。
【0077】
図5(n):第3層間絶縁膜19上に塗布されているフォトレジスト膜150を、上述したフォトレジスト膜120と同様、薬液を用いて除去し、除去後、所定に乾燥させる。 尚、他の層間絶縁膜13,25にも同様の工程で、コンタクトホール及び分断溝を形成する。
【0078】
その結果、図9(b)に示すように、大型基板100上に積層された各層間絶縁膜13,14,19,25の、各素子基板領域10の境界上に形成されるスクライブライン上には、レチクルに形成されている溝用透光パターン(222)に従い、大型基板100を図の縦方向へ貫通する分断溝180が平行に複数本形成される。
【0079】
各層間絶縁膜13,14,19,25が分断溝180にて複数に分断されているので、アニール処理の際に各層間絶縁膜13,14,19,25と大型基板100との間に生じる応力歪みが緩和される。その結果、大型基板100の反りが解消され、この大型基板100から複数の素子基板10を切り出した後も、各素子基板10に反りが発生し難くなり、クラック発生等の製品不良を低減させることができる。
【0080】
又、大型基板100の反りが緩和されるため、配向膜16に対して均一にラビング処理を施すことができるばかりでなく、後工程において、素子基板10と対向基板20との貼り合わせた場合に、両対向面間のギャップを均一化することができる。その結果、表示むら、或いは色むらの発生を有効に回避して、表示特性を向上させることができ、高い信頼性を得ることができる。
【0081】
又、コンタクトホールを形成する工程において、分断溝180が同時に形成されるため、工程を増やす必要がなく、従来の工程と同一工程で形成することができるため、高い汎用性を得ることができる。
【0082】
又、図10〜図13に本発明の第2形態を示す。尚、第1形態と同様の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
上述した第1形態の図7に示すレチクル220に形成されている溝用透光パターン222は、素子基板領域10外側の一辺に形成されているが、本形態によるレチクル230は、図10に示すように、素子基板領域10の外側の互いに直角に交差する2辺(図においては、左辺と上辺)に溝用透光パターン232a,232bを形成したものである。この各溝用透光パターン232a,232bは、レチクル230をステップ移動させて隣の領域を露光させたとき、隣同士の溝用透光パターン232a或いは232bが互いに繋がる長さに形成されている。尚、素子基板10の製造工程については、第1形態とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0084】
本形態では、図11に示すように、ステッパ210を順次ステップ移動させて、大型基板100上のフォトレジスト膜(120)にレチクル230に形成されているパターンを投影するに際し、ステッパ210に設けられているレチクルブラインド216を操作して、大型基板100のほぼ中央から十字状に分断溝180を形成するようにしたものである。
【0085】
すなわち、ステッパ210を大型基板100の略中央縦方向へステップ移動させて露光させるに際しては、レチクルブラインド216によってレチクル230の上辺側の溝用透光パターン232bを隠す。又、ステッパ210を大型基板100の略中央横方向へステップ移動させて露光させるに際しては、レチクル230の左辺側の溝用透光パターン232aをレチクルブラインド216によって隠す。それ以外の部分の露光に際しては、両溝用透光パターン232a,232bをレチクルブラインド216によって隠す。
【0086】
その結果、大型基板100上に積層される各層間絶縁膜(13,14,19,25)には、十字状の分断溝180が形成される。
【0087】
各層間絶縁膜(13,14,19,25)を分断溝180により十字状に分断することで、大型基板100の反りを充分に緩和させることができる。
【0088】
この場合、ステッパ210の移動に際して、レチクルブラインド216を適宜操作することで、様々なパターンの分断溝180を形成することができる。図12、図13に分断溝180のパターンの一例を示す。
【0089】
図12には、二本の分断溝180を中央で交差する階段状に形成したものである。又、図13には、図11に示す十字状の分断溝180に加えて、そこから斜め方向へL字状の分断溝180を形成したものである。これら何れのパターンを採用しても、大型基板100の反りを有効に緩和させることができる。この場合、各層間絶縁膜(13,14,19,25)毎に異なるパターンで分断溝180を形成するようにしても良く、或いは特定の層間絶縁膜に対してのみ分断溝180を形成しても良い。
【0090】
更に、分断溝180を大型基板100の略中央縦方向、或いは略中央横方向に1本だけ貫通させるようにしても良い。
【0091】
大型基板100に発生する反りの方向は、大型基板100のサイズ、この大型基板100に形成される素子基板10の種類、大きさ、切り出し個数等に応じて相違するため、採用する分断溝180のパターンは大型基板100に発生する反り具合に応じて最適なものを選択する。又、この分断溝180は、各素子基板10の形成に支障を来さない領域であれば、スクライブライン上に無くても良い。
【0092】
勿論、大型基板100上に形成した層間絶縁膜に対し、溝用透光パターンを一括投影して露光させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明による電気光学装置は、TFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置に限らず、パッシブマトリックス型の液晶装置、TFD(薄型ダイオード)をスイッチング素子として備えた液晶装置適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第1形態による素子基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図
【図2】同、一つの画素に着目した液晶装置の模式的断面図
【図3】同、大型基板に素子基板が形成されている状態を示す平面図
【図4】同、大型基板上に素子基板を製造する工程を示す工程図(その1)
【図5】同、大型基板上に素子基板を製造する工程を示す工程図(その2)
【図6】同、ステッパの概略構成図
【図7】同、レチクルの概略平面図
【図8】同、ステッパのステップ移動によってフォトレジスト膜にレチクルに形成されているパターンを投影する状態の説明図
【図9】同、(a)はレチクルのステップ移動により露光溝を形成する状態を示す説明図、(b)は大型基板上の絶縁膜に露光溝により分断溝が形成された状態を示す平面図
【図10】第2形態によるレチクルの概略平面図
【図11】同、ステッパのステップ移動によってフォトレジスト膜にレチクルに形成されているパターンを投影する状態の説明図
【図12】同、他の態様による図11相当説明図
【図13】同、別の態様による図11相当の説明図
【符号の説明】
【0095】
1…液晶装置、1a…半導体層、10…素子基板(素子基板領域)、13,14,19,25…層間絶縁膜、15…中間導電層、15b…第2中間導電層、24a,24b,26a,26b…コンタクトホール、30…TFT、50…液晶、100…大型基板、120,145,150…フォトレジスト膜、120a,150a…露光孔、120b,150b…露光溝、140,160,180…分断溝、210…ステッパ、216…レチクルブラインド、218…レチクルステージ、220,230…レチクル、221…ホール用透光パターン、222,232a,232b…溝用透光パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の素子基板を形成する大型基板の製造工程における反りの発生を抑制する半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法及び製造装置、並びに電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の電気光学装置のうち、電気光学物質として液晶を用いた液晶装置は、投射型表示装置のライトバルブ、各種電子機器の表示装置などとして広い分野にわたって使用されている。ここで、液晶装置は、対向基板と電極基板としての素子基板との間に液晶層を挟持して構成される。対向基板は、基板上に対向電極が配置されて構成される。一方、素子基板は半導体装置に用いられる基板の一種であり、この素子基板上に、互いに交差する複数の走査線と複数のデータ線が配設されていると共に、これらの走査線とデータ線との交差部毎に、スイッチング素子及び画素電極が配置されて構成される。
【0003】
詳細には、素子基板は、基板上にスイッチング素子が形成され、このスイッチング素子を覆うようにゲート絶縁膜が形成され、ゲート絶縁膜上に走査線が形成される。そして、スイッチング素子を覆うように第1層間絶縁膜が形成され、この第1層間絶縁膜上に、ゲート絶縁膜及び第1層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールに対して電気的に接続されるデータ線が形成される。
【0004】
更に、データ線を覆うように第2層間絶縁膜が形成され、この第2層間絶縁膜上に、ゲート絶縁膜、第1層間絶縁膜及び第2層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介してデータ線等と電気的に接続するITO(Indium Tin Oxide)からなる画素電極が形成されて構成される。
【0005】
各絶縁膜は、常圧又は減圧CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によりTEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)ガス、TEB(テトラ・エチル・ボートレート)ガス、TMOP(テトラ・メチル・オキシ・フォスレート)ガス等を用いて成膜され、NSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜で構成されている。
【特許文献1】特開2003−110017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、層間絶縁膜を代表とする絶縁膜は、常圧又は減圧CVD法等で成膜されるため、基板の略全体に形成される。そして、絶縁膜にコンタクトホールを形成するに際しては、先ず、絶縁膜を平坦化するために約900℃前後の温度下でアニール処理を施す。次いで、絶縁膜上にレジスト膜を形成してパターニングを行った後、ウェットエッチング等のエッチングを行うことで、コンタクトホールを形成する。
【0007】
アニール処理の際に絶縁膜と基板との間の応力バランスが崩れ、引張り応力、或いは圧縮応力により大型基板に反りが発生し易くなる。又、アニール処理後のエッチングによりコンタクトホールが形成されるため、このコンタクトホールにより絶縁膜にかかる応力を緩和し、大型基板の反りを緩和することも期待できるが、大型基板に形成されるコンタクトホールの総面積は、大型基板全体の面積に比し僅かであるため、大型基板の反りをなくすまでには至らない。
【0008】
この大型基板の反りにより、素子基板が直ちに製品不良となるものではないが、反りの程度によっては、クラックが誘発される可能性がある。
【0009】
例えば素子基板が液晶装置のTFT(Thin Film Transistor)を配置した基板(以下、「TFT基板」と称する)である場合、大型基板の反りにより、大型基板上に塗布される配向膜に対してラビング処理を施す際に、均一に処理することが困難となる場合が考えられる。更に、対向基板との貼り合わせに際しては、対向基板と素子基板との対向面間に形成されるギャップが不均一となる場合が考えられる。その結果、若干の表示むら、或いは色むらが発生して表示特性が低下することが考えられる。
【0010】
例えば、特許文献1(特開2003−11007号公報)には、大型基板上での素子基板の製造工程において、先ず、絶縁膜を形成し、この絶縁膜にエッチングにより溝を形成した後、この溝を含む絶縁膜全体に形成する膜を、絶縁膜よりもストレスの小さいSiOC膜とする技術が開示されている。
【0011】
特許文献1に開示されている技術では、大型基板に形成した絶縁膜上に、この絶縁膜よりもストレスの小さいSiOC膜を形成することで、絶縁膜とSiOC膜の間に発生する応力を緩和し、大型基板の反りを低下するようにしているが、大型基板と絶縁膜との間に発生する応力を緩和することはできず、大型基板に発生する反りを完全に取り去ることはできない。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、大型基板と絶縁膜との間にかかる応力により生じる大型基板の反りを防止し、反りによるクラックの発生を低減し、基板を液晶装置のTFT基板として採用した場合には、良好な表示特性が得られるばかりでなく、製品不良を大幅に削減し、しかも高い信頼を得ることのできる半導体装置用基板、半導体装置用基板の製造方法及び製造装置、並びに電気光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため第1発明は、基板上に導電層と絶縁膜とが積層されて複数の素子基板が形成される半導体装置用基板において、互いに隣接する上記複数の素子基板領域の境界に重なる少なくとも1本の溝が上記絶縁膜の表面に形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成では、複数の素子基板が形成されている基板に成膜されている絶縁膜に対して、互いに隣接する複数の素子基板領域の境界に重なる少なくとも1本の溝を形成したので、この溝により絶縁膜が分断され、その結果、基板と絶縁膜との間に生じる応力が緩和され、基板の反りが解消され、製品不良を大幅に削減することができる。
【0015】
第2発明は、第1発明に置いて、上記溝は上記半導体装置用基板の縁に達することを特徴とする。
【0016】
このような構成では、複数の素子基板が形成されている基板に成膜されている絶縁膜に対して形成する溝を、基板の縁に達するようにしたので、この溝により絶縁膜をより確実に分断することができる。
【0017】
第3発明は、第1或いは第2発明において、上記溝は設定間隔を開けて複数本が平行に形成されていることを特徴とする。又、第4発明は、第1或いは第2発明において、上記溝は十字状に形成されていることを特徴とする。更に、第5発明は、第1〜第4発明において、上記溝は階段状に形成されていることを特徴とする。
【0018】
これらの構成では、基板上に複数本の溝を形成したので、基板と絶縁膜との間に生じる応力がより一層緩和される。
【0019】
第6発明は、基板上に導電層と絶縁膜とを交互に積層して複数の素子基板を形成する半導体装置用基板の製造方法において、基板上に導電層を成膜する工程と、上記導電層上に該導電層を覆う絶縁膜を成膜する工程と、上記絶縁膜の上記素子基板の境界位置に上記基板の一端から他端へ貫通する少なくとも1本の溝を該絶縁膜の面に沿って形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0020】
このような構成では、絶縁膜に対して溝を直接形成するようにしたので、例えば絶縁膜にコンタクトホールを形成する際に溝を同時に形成することができ、製造工程の簡略化を実現することができる。
【0021】
第7発明は、第6発明において、上記溝が、上記絶縁膜上に塗布したフォトレジスト膜に形成したパターンに従って形成されることを特徴とする。
【0022】
このような構成では、溝をフォトレジストにて形成するようにしたので、例えば絶縁膜にコンタクトホールをフォトレジストにて形成する場合には、この溝を同時に形成することができるので、製造工程の簡略化を実現することができる。
【0023】
第8発明は、第6或いは第7発明において、上記素子基板が上記基板上に複数形成され、上記溝は、互いに隣接する上記素子基板の境界位置に形成されることを特徴とする。
【0024】
このような構成では、溝を互いに隣接する素子基板の境界位置に形成したので、各素子基板に影響を及ぼすことがない。
【0025】
第9発明は、絶縁膜上にレジスト膜が塗布されている基板を相対的にステップ移動させながら、該基板上のレジスト膜に対してレチクルに形成されている透光パターンを順次投影して露光する縮小投影露光装置を備え、上記基板の絶縁膜に形成される該基板の一端から他端へ貫通する少なくとも1本の溝を、上記レチクルに形成した透光パターンのステップ移動により形成することを特徴とする。
【0026】
このような構成では、縮小投影露光装置に備えられているレチクルに、基板の絶縁膜に形成される、基板の一端から他端へ貫通する少なくとも1本の溝を形成する透光パターンを形成したので、縮小投影露光装置のステップ移動により溝に対応するパターンを絶縁膜上に容易に形成することができる。
【0027】
第10発明は、第9発明において、上記レチクルには上記絶縁膜に形成する溝に対応する溝用透光パターンと該絶縁膜に形成するコンタクトホールに対応するホール用透光パターンとが形成されていることを特徴とする。
【0028】
このような構成では、レチクルに、絶縁膜に形成する溝に対応する溝用透光パターンと絶縁膜に形成するコンタクトホールに対応するホール用透光パターンとを形成したので、この両者を1工程で同時に形成することができ、作業工程の簡略化が実現できる。
【0029】
第11発明は、第9或いは第10発明において、上記レチクルには上記溝用透光パターンが直交する方向に2本形成されていることを特徴とする。又、第11発明は、第10発明において、上記溝用透光パターンは上記縮小投影露光装置に備えられているレチクルブラインドにて一方又は双方がステップ移動毎に隠されて、上記絶縁膜上に設定パターンの上記溝を形成することを特徴とする。
【0030】
これらの構成では、溝用透光パターンを、直交する方向に2本形成したので、この溝用透光パターンを縮小投影露光装置に備えられているレチクルブラインドにて一方又は双方をステップ移動毎に隠すことで、絶縁膜に設定パターンの溝を少なくとも一本形成することができる。
【0031】
第13発明は、第1〜6の何れかに記載の半導体装置用基板に形成された素子基板を用いて電気光学装置を構成したので、素子基板に反りが発生せず、表示むら、色むらの少ない良好な表示特性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面に基づいて本発明の一形態を説明する。図1〜図9に本発明の第1形態を示す。図1は素子基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図、図2は一つの画素に着目した液晶装置の模式的断面図である。
【0033】
先ず、これらの図を参照して電気光学装置の代表である液晶装置1の構造について説明する。図1、図2に示すように、液晶装置1は、半導体装置を備える透明な素子基板(半導体装置用基板)10と透明な対向基板20との間に、電気光学物質としての液晶50を封入して構成される。素子基板10は、例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。素子基板10上には画素を構成する画素電極等が、マトリクス状に配置される。
【0034】
素子基板10上の画素領域には、複数本の走査線3aと複数本のデータ線6aとが交差するように配線され、走査線3aとデータ線6aとで区画された領域に画素電極9aがマトリクス状に配置されている。TFT(Thin Film Transistor)30は走査線3aのON信号によってONとなり、これにより、データ線6aに供給された画像信号が画素電極9aに供給される。この画素電極9aと対向基板20に設けられた対向電極21との間の電圧が液晶50に印加される。液晶50は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することで、光を変調し、階調表示を可能にする。
【0035】
次に、ひとつの画素に着目して液晶装置1の構成を詳しく説明する。図2に示すように、素子基板10の対向基板20に対向する側の面(以下、「表面」と称する)には、格子状に溝11が形成されている。この溝11上に下側遮光膜12及び絶縁膜としての第1層間絶縁膜13を介してLDD(Lightly Doped Drain)構造をなすTFT30が形成されている。又、溝11によって、TFT30を配設した基板(TFT基板)の液晶50との境界面が平坦化される。
【0036】
TFT30は、チャネル領域1a′、ソース領域1d、ドレイン領域1eが形成された半導体層1aと、この半導体層1a上にゲート絶縁膜2を介して設けたゲート電極をなす走査線3aとを有している。走査線3aは、ゲート電極となる部分において幅広に形成されており、チャネル領域1a′は、半導体層1aと走査線3aとが対向する領域に構成される。
【0037】
又、データ線6a及び走査線3aは、画素電極9aの縦横の境界に沿って各々配設されている。一方、下側遮光膜12は、反射光がTFT30のチャネル領域1a'、ソース領域1d及びドレイン領域1eに入射することを防止するものであり、各データ線6a及び走査線3aに沿い、各画素に対応して格子状に配設されている。
【0038】
又、TFT30上には絶縁膜としての第2層間絶縁膜14が積層され、第2層間絶縁膜14上に、走査線3a及びデータ線6a方向に延びる島状の第1中間導電層15が形成されている。第1中間導電層15上には誘電体膜17を介して容量線18が対向配置されている。
【0039】
第1中間導電層15は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに接続された画素電位側容量電極(下部容量電極)として作用し、容量線18の一部は固定電位側容量電極(上部容量電極18a)として作用する。
【0040】
容量線18は、上部容量電極18aと遮光層18bの積層膜構造であり、第1中間導電層15に対し、誘電体膜17を介して対向配置されることで蓄積容量を構成すると共に、光の内部反射を防止する遮光機能を有する。更に、半導体層1aに比較的近接した位置に中間導電層15が形成されており、光の乱反射を効率よく防止することができる。
【0041】
尚、容量線18は、内蔵遮光膜を構成すると共に固定電位側容量電極としても機能する。又、第1中間導電層15は、画素電位側容量電極としての機能及び光吸収層としての機能を有すると共に、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能を有する。更に、容量線18は、画素電極9aが配置された画像表示領域からその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されて、固定電位とされる。
【0042】
又、データ線6aとソース領域1dを電気的に接続するために、第2中間導電層15bが形成されている。この第2中間導電層15bは、第1中間導電層15と同一層で形成されており、第2層間絶縁膜14及びゲート絶縁膜2を貫通する、コンタクトホール24aを介してソース領域1dに電気的に接続されている。
【0043】
又、容量線18上に絶縁膜としての第3層間絶縁膜19が配置され、第3層間絶縁膜19上にデータ線6aが積層される。データ線6aは、第3層間絶縁膜19及び誘電体膜17を貫通するコンタクトホール24bを介してソース領域1dに電気的に接続される。
【0044】
更に、データ線6a上に絶縁膜としての第4層間絶縁膜25を介して画素電極9aが積層され、この画素電極9aが、第4層間絶縁膜25、第3層間絶縁膜19、誘電体膜17を貫通するコンタクトホール26bを介して第1中間導電層15に電気的に接続される。又、第1中間導電層15が、第2層間絶縁膜14及びゲート絶縁膜2を貫通するコンタクトホール26aを介して、ドレイン領域1eに電気的に接続される。画素電極9a上には、所定方向にラビング処理された配向膜16が積層されている。
【0045】
走査線3a(ゲート電極)にON信号が供給されると、チャネル領域1a′が導通状態となり、ソース領域1dとドレイン領域1eとが接続されて、データ線6aに供給された画像信号が画素電極9aに与えられる。
【0046】
尚、素子基板10の表面に形成されている各層間絶縁膜13,14,19,25は、素子基板10の表面のほぼ全域にわたって形成されている。又、この各第1層間絶縁膜13,14,19,25に形成されているコンタクトホール24a,24b,26a,26bの、各層間絶縁膜13,14,19,25に占める面積の割合は僅かである。
【0047】
又、対向基板20には、素子基板10のデータ線6a、走査線3a及びTFT30の形成領域に対向する領域、即ち各画素の非表示領域において第1遮光膜23が設けられている。この第1遮光膜23によって、対向基板20側からの入射光がTFT30のチャネル領域1a′、ソース領域1d及びドレイン領域1eに入射することが防止される。又、第1遮光膜23上に、対向電極(共通電極)21が対向基板20全面にわたって形成されている。更に、対向電極21上に、所定方向にラビング処理された配向膜22が積層されている。
【0048】
又、図1に示すように、対向基板20には表示領域を区画する額縁としての遮光膜42が設けられている。更に、遮光膜42の外側の領域で、且つ、素子基板10と対向基板20との間に、液晶50を封入するシール材41が形成されている。シール材41は対向基板20の輪郭形状に略一致するように配置され、素子基板10と対向基板20とを相互に固着する。シール材41は、素子基板10の1辺の一部において欠落しており、この欠落部位と、その上下に張り合わされている両基板10,20とで、液晶注入口78が形成される。この液晶注入口78は、シール材41で区画された内部に液晶50を注入するためのもので、液晶50の注入が完了した後は、封止材79で封止される。
【0049】
又、素子基板10のシール材41の外側の領域には、データ線駆動回路61及び実装端子62が素子基板10の外側一辺に沿って設けられており、この一辺に隣接する2辺に沿って、走査線駆動回路63が設けられている。素子基板10の残る一辺には、画面表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路63間を接続するための複数の配線64が設けられている。又、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、素子基板10と対向基板20との間を電気的に導通させるための導通材65が設けられている。
【0050】
このように、スイッチング素子等を構成する素子基板10は、ガラス又は石英等からなる基板上に、所定のパターンを有する半導体層等の導電層と、それを覆う絶縁膜(層間絶縁膜)とを交互に積層して形成され、更に、各導電層間は、絶縁膜に形成するコンタクトホールを介して電気的に接続される。
【0051】
又、図3に示すように、各素子基板10は、多数枚取りできる大型基板100の状態で製造される。そして、大型基板100に形成された各素子基板10の境界を、スクライブ法、ダイシング法、レーザカット法等により切り出して、チップ状の素子基板10を形成する。尚、以下においては、大型基板100上の、素子基板10が切り出される領域(以下「素子基板領域」と称する)に、素子基板10と同一の符号(10)を付して説明を簡略化する。
【0052】
次に、図4、図5の工程図を参照しながら、各素子基板10を切り出す前の大型基板の状態での素子基板10の製造工程について説明する。尚、上述したように、素子基板10は、所定のパターンとなる半導体層等の導電層と、それを覆う絶縁膜とを交互に成膜する多層構造を有しており、各成膜工程は殆ど同一であるため、以下においては、半導体層1a等から成るTFT30を覆う第2層間絶縁膜14、第2中間導電層15b、及びこの第2中間導電層15bを覆う第3層間絶縁膜19との成形工程を例示して説明する。
【0053】
図4(a):大型基板100上に、TFT30を所定に形成後、このTFT30上に、減圧CVD法等により、NSG膜等のシリコン系膜からなる第2層間絶縁膜14を成膜する。次いで、第2層間絶縁膜14を平坦化するために約900℃前後の温度下でアニール処理を施す。
【0054】
そして、第2層間絶縁膜14にコンタクトホール24a、及び、スクライブライン上に分断溝140を形成するために、その表面にフォトレジスト膜120を塗布する。尚、スクライブラインは、各素子基板領域10の境界線上に形成されており、このスクライブラインに沿って、上述したスクライブ法等により、大型基板100を切り出して、チップ状の素子基板10が形成される。
【0055】
図4(b):フォトリソグラフィによりレチクル(「露光マスク」とも称する)のパターンをフォトレジスト膜120に転写してパターニングする。レチクルを用いてパターンニングを行う方法として、ステッパ方式がある。ステッパ方式は、大型基板100全体を一度に露光せず、1つ或いは数個の素子基板領域10に分けて繰り返し露光するもので、レチクルには、一度に露光する分の素子基板領域10が形成されている。
【0056】
ここで、図6〜図8に基づいて、ステッパ方式の露光について説明する。図6に一般的なステッパ(縮小投影露光装置)210の概略図を示す。
【0057】
高圧水銀ランプ等の発光体211aを備える光源211から放射される紫外線は、第1のコンデンサレンズ212を透過して干渉フィルタ213により特定波長(たとえばi線)に選別された後、フライアイレンズ214に入射されて面内照度を均一化される。その後、フライアイレンズ214から出射された紫外線は、第2のコンデンサレンズ215、レチクルブラインド(「マスキングブレード」とも称する)216、第3のコンデンサレンズ217、レチクルステージ218、縮小投影レンズ219を順次透過し、最終的に、ステージ200に載置されている大型基板100上のフォトレジスト膜120に、レチクルステージ218に載置されているレチクル220(図7参照)に形成されているパターンが縮小投影される。
【0058】
尚、レチクルブラインド216は、光路上に開口部を有しており、この開口部の開口をレチクルのパターンに併せて設定することで、不要な部分の露光を抑制することができる。
【0059】
そして、このステッパ210を順次ステップ移動させることで、全ての素子基板領域10にコンタクトホール24a、及び分断溝140を形成する。図7に示すように、レチクル220は、ガラス基板をベースとしており、その上面にクロム等の遮光膜(ハッチングで示す部分)が塗布されており、素子基板領域10に形成すべきコンタクトホール24a、分断溝140を拡大したホール用透光パターン221及び溝用透光パターン222が各々形成されている。
【0060】
尚、本形態では、1つのレチクル220に1つの素子基板領域10に対応するパターンが形成されているが、1つのレチクル220に複数の素子基板領域10に対応するパターンが形成されていても良い。又、図7の一点鎖線で示す素子基板領域10は、説明の便宜上記載しているだけであり、実際のレチクル220には形成されていない。
【0061】
本形態による、レチクル220に形成されている溝用透光パターン222は、素子基板領域10の外側の一辺(図においては、左辺)であって、互いに隣接する素子基板領域10の境界上、すなわち、スクライブラインに対応する位置に形成されていると共に、レチクル220をステップ移動させて隣の領域を露光させたとき、隣同士の溝用透光パターン222が互いに繋がる長さに形成されている。
【0062】
そして、図8に示すように、ステッパ210を順次ステップ移動させて、大型基板100上のフォトレジスト膜120にレチクル220に形成されているパターンを投影すると、フォトレジスト膜120の、素子基板領域10毎に、コンタクトホール24aに対応する位置、及び分断溝140に対応する位置が露光されて、そこに露光孔120a、及び露光溝120bが形成される。
【0063】
図9(a)に示すように、ステッパ210は、製品となる素子基板領域10に対応する通常の領域以外に、ハッチングで示すように、露光溝120bを大型基板100の端から端まで縦貫させる位置までステップ移動させて順次露光させる。その結果、大型基板100のフォトレジスト膜120には、縦方向のスクライブラインに沿って、一端から他端まで貫通された露光溝120bが形成される。
【0064】
このようにして、図4(b)に示すように、フォトレジスト膜120に、ステッパ210を用いて露光孔120a、及び露光溝120bを所定に形成した後、図4(c)の工程を行う。
【0065】
図4(c):大型基板100をエッチング液に浸漬してウエットエッチング処理を行い、第2層間絶縁膜14に対してコンタクトホール24a、及び分断溝140を開孔する。尚、ウエットエッチング処理としては、DIP式等がある。
【0066】
図4(d):第2層間絶縁膜14上に塗布されているフォトレジスト膜120を、硫酸と過酸化水素水との混合液(硫酸過水)からなる除去液、又はアセトン、エタノール、トルエン等の薬液を用いて除去し、除去後、所定に乾燥させる。
【0067】
図4(e):第2層間絶縁膜14上に第2中間導電層15bとなるAl合金等の導電層をスパッタリング法等で形成する。
【0068】
図4(f):第2中間導電層15bとなる導電層上に、フォトレジスト膜145を塗布する。
【0069】
図4(g):フォトレジスト膜120をパターンニングする。パターンニングの方法は上述したステッパ方式によって行われる。尚、同図に示すように、フォトレジスト膜120の分断溝140に対応する部分は露光されている。
【0070】
図4(h):大型基板100を、DIP式等によりエッチング液に浸漬してウエットエッチング処理を行い、余分な導電層を除去し、各素子基板領域10毎に第2中間導電層15bを形成する。従って、同図に示すように、分断溝140に装填された導電層も除去される。
【0071】
図5(i):第2中間導電層15b上に塗布されているフォトレジスト膜145を、上述したフォトレジスト膜120と同様、薬液を用いて除去し、除去後、所定に乾燥させる。
【0072】
図5(j):第2中間導電層15b上にNSG膜等のシリコン系膜からなる第3層間絶縁膜19を成膜する。次いで、第3層間絶縁膜19を約900℃前後の温度下でアニール処理し平坦化する。
【0073】
図5(k):第3層間絶縁膜19上にフォトレジスト膜150を塗布する。
【0074】
図5(l):フォトレジスト膜150に、フォトリソグラフィによりレチクルのパターンを転写してパターニングする。レチクルを用いてパターンニングを行う方法は、上述したステッパ210を用い、レチクルに形成されてるパターンを転写して行う。レチクルには、コンタクトホール24bと分断溝140とに対応する位置に透光パターンが形成されている。尚、図示しないがレチクルの構成は、図7に示すレチクル220とほぼ同一である。
【0075】
その結果、フォトレジスト膜150には、素子基板領域10毎の、コンタクトホール24bに対応する位置、及び分断溝140に対応する位置が露光され、そこに露光孔150a、及び露光溝150bが形成される。
【0076】
図5(m):大型基板100を、DIP式等によりウエットエッチング処理を行い、第3層間絶縁膜19に対してコンタクトホール24b、及び分断溝160を開孔する。
【0077】
図5(n):第3層間絶縁膜19上に塗布されているフォトレジスト膜150を、上述したフォトレジスト膜120と同様、薬液を用いて除去し、除去後、所定に乾燥させる。 尚、他の層間絶縁膜13,25にも同様の工程で、コンタクトホール及び分断溝を形成する。
【0078】
その結果、図9(b)に示すように、大型基板100上に積層された各層間絶縁膜13,14,19,25の、各素子基板領域10の境界上に形成されるスクライブライン上には、レチクルに形成されている溝用透光パターン(222)に従い、大型基板100を図の縦方向へ貫通する分断溝180が平行に複数本形成される。
【0079】
各層間絶縁膜13,14,19,25が分断溝180にて複数に分断されているので、アニール処理の際に各層間絶縁膜13,14,19,25と大型基板100との間に生じる応力歪みが緩和される。その結果、大型基板100の反りが解消され、この大型基板100から複数の素子基板10を切り出した後も、各素子基板10に反りが発生し難くなり、クラック発生等の製品不良を低減させることができる。
【0080】
又、大型基板100の反りが緩和されるため、配向膜16に対して均一にラビング処理を施すことができるばかりでなく、後工程において、素子基板10と対向基板20との貼り合わせた場合に、両対向面間のギャップを均一化することができる。その結果、表示むら、或いは色むらの発生を有効に回避して、表示特性を向上させることができ、高い信頼性を得ることができる。
【0081】
又、コンタクトホールを形成する工程において、分断溝180が同時に形成されるため、工程を増やす必要がなく、従来の工程と同一工程で形成することができるため、高い汎用性を得ることができる。
【0082】
又、図10〜図13に本発明の第2形態を示す。尚、第1形態と同様の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0083】
上述した第1形態の図7に示すレチクル220に形成されている溝用透光パターン222は、素子基板領域10外側の一辺に形成されているが、本形態によるレチクル230は、図10に示すように、素子基板領域10の外側の互いに直角に交差する2辺(図においては、左辺と上辺)に溝用透光パターン232a,232bを形成したものである。この各溝用透光パターン232a,232bは、レチクル230をステップ移動させて隣の領域を露光させたとき、隣同士の溝用透光パターン232a或いは232bが互いに繋がる長さに形成されている。尚、素子基板10の製造工程については、第1形態とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0084】
本形態では、図11に示すように、ステッパ210を順次ステップ移動させて、大型基板100上のフォトレジスト膜(120)にレチクル230に形成されているパターンを投影するに際し、ステッパ210に設けられているレチクルブラインド216を操作して、大型基板100のほぼ中央から十字状に分断溝180を形成するようにしたものである。
【0085】
すなわち、ステッパ210を大型基板100の略中央縦方向へステップ移動させて露光させるに際しては、レチクルブラインド216によってレチクル230の上辺側の溝用透光パターン232bを隠す。又、ステッパ210を大型基板100の略中央横方向へステップ移動させて露光させるに際しては、レチクル230の左辺側の溝用透光パターン232aをレチクルブラインド216によって隠す。それ以外の部分の露光に際しては、両溝用透光パターン232a,232bをレチクルブラインド216によって隠す。
【0086】
その結果、大型基板100上に積層される各層間絶縁膜(13,14,19,25)には、十字状の分断溝180が形成される。
【0087】
各層間絶縁膜(13,14,19,25)を分断溝180により十字状に分断することで、大型基板100の反りを充分に緩和させることができる。
【0088】
この場合、ステッパ210の移動に際して、レチクルブラインド216を適宜操作することで、様々なパターンの分断溝180を形成することができる。図12、図13に分断溝180のパターンの一例を示す。
【0089】
図12には、二本の分断溝180を中央で交差する階段状に形成したものである。又、図13には、図11に示す十字状の分断溝180に加えて、そこから斜め方向へL字状の分断溝180を形成したものである。これら何れのパターンを採用しても、大型基板100の反りを有効に緩和させることができる。この場合、各層間絶縁膜(13,14,19,25)毎に異なるパターンで分断溝180を形成するようにしても良く、或いは特定の層間絶縁膜に対してのみ分断溝180を形成しても良い。
【0090】
更に、分断溝180を大型基板100の略中央縦方向、或いは略中央横方向に1本だけ貫通させるようにしても良い。
【0091】
大型基板100に発生する反りの方向は、大型基板100のサイズ、この大型基板100に形成される素子基板10の種類、大きさ、切り出し個数等に応じて相違するため、採用する分断溝180のパターンは大型基板100に発生する反り具合に応じて最適なものを選択する。又、この分断溝180は、各素子基板10の形成に支障を来さない領域であれば、スクライブライン上に無くても良い。
【0092】
勿論、大型基板100上に形成した層間絶縁膜に対し、溝用透光パターンを一括投影して露光させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明による電気光学装置は、TFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置に限らず、パッシブマトリックス型の液晶装置、TFD(薄型ダイオード)をスイッチング素子として備えた液晶装置適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第1形態による素子基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図
【図2】同、一つの画素に着目した液晶装置の模式的断面図
【図3】同、大型基板に素子基板が形成されている状態を示す平面図
【図4】同、大型基板上に素子基板を製造する工程を示す工程図(その1)
【図5】同、大型基板上に素子基板を製造する工程を示す工程図(その2)
【図6】同、ステッパの概略構成図
【図7】同、レチクルの概略平面図
【図8】同、ステッパのステップ移動によってフォトレジスト膜にレチクルに形成されているパターンを投影する状態の説明図
【図9】同、(a)はレチクルのステップ移動により露光溝を形成する状態を示す説明図、(b)は大型基板上の絶縁膜に露光溝により分断溝が形成された状態を示す平面図
【図10】第2形態によるレチクルの概略平面図
【図11】同、ステッパのステップ移動によってフォトレジスト膜にレチクルに形成されているパターンを投影する状態の説明図
【図12】同、他の態様による図11相当説明図
【図13】同、別の態様による図11相当の説明図
【符号の説明】
【0095】
1…液晶装置、1a…半導体層、10…素子基板(素子基板領域)、13,14,19,25…層間絶縁膜、15…中間導電層、15b…第2中間導電層、24a,24b,26a,26b…コンタクトホール、30…TFT、50…液晶、100…大型基板、120,145,150…フォトレジスト膜、120a,150a…露光孔、120b,150b…露光溝、140,160,180…分断溝、210…ステッパ、216…レチクルブラインド、218…レチクルステージ、220,230…レチクル、221…ホール用透光パターン、222,232a,232b…溝用透光パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に導電層と絶縁膜とが積層されて複数の素子基板が形成される半導体装置用基板において、
互いに隣接する上記複数の素子基板領域の境界に重なる少なくとも1本の溝が上記絶縁膜の表面に形成されていることを特徴とする半導体装置用基板。
【請求項2】
上記溝は上記半導体装置用基板の縁に達することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用基板。
【請求項3】
上記溝は設定間隔を開けて複数本が平行に形成されていることを特徴とする請求項1或いは2記載の半導体装置用基板。
【請求項4】
上記溝は十字状に形成されていることを特徴とする請求項1或いは2記載の半導体装置用基板。
【請求項5】
上記溝は階段状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の半導体装置用基板。
【請求項6】
基板上に導電層と絶縁膜とを交互に積層して複数の素子基板を形成する半導体装置用基板の製造方法において、
基板上に導電層を成膜する工程と、
上記導電層上に該導電層を覆う絶縁膜を成膜する工程と、
上記絶縁膜の上記素子基板の境界位置に上記基板の一端から他端へ貫通する少なくとも1本の溝を該絶縁膜の面に沿って形成する工程と
を備えることを特徴とする半導体装置用基板の製造方法。
【請求項7】
上記溝が、上記絶縁膜上に塗布したフォトレジスト膜に形成したパターンに従って形成されることを特徴とする請求項6記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項8】
上記素子基板が上記基板上に複数形成され、
上記溝は、互いに隣接する上記素子基板の境界位置に形成されることを特徴とする請求項6或いは7記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項9】
絶縁膜上にレジスト膜が塗布されている基板を相対的にステップ移動させながら、該基板上のレジスト膜に対してレチクルに形成されている透光パターンを順次投影して露光する縮小投影露光装置を備え、
上記基板の絶縁膜に形成される該基板の一端から他端へ貫通する少なくとも1本の溝を、上記レチクルに形成した透光パターンのステップ移動により形成することを特徴とする半導体装置用基板の製造装置。
【請求項10】
上記レチクルには上記絶縁膜に形成する溝に対応する溝用透光パターンと該絶縁膜に形成するコンタクトホールに対応するホール用透光パターンとが形成されていることを特徴とする請求項9記載の半導体装置用基板の製造装置。
【請求項11】
上記レチクルには上記溝用透光パターンが直交する方向に2本形成されていることを特徴とする請求項9或いは10記載の半導体装置用基板の製造装置。
【請求項12】
上記溝用透光パターンは上記縮小投影露光装置に備えられているレチクルブラインドにて一方又は双方がステップ移動毎に隠されて、上記絶縁膜上に設定パターンの上記溝を形成することを特徴とする請求項11記載の半導体装置用基板の製造装置。
【請求項13】
請求項1〜6の何れかに記載の半導体装置用基板に形成された素子基板を用いて構成されることを特徴とする電気光学装置。
【請求項1】
基板上に導電層と絶縁膜とが積層されて複数の素子基板が形成される半導体装置用基板において、
互いに隣接する上記複数の素子基板領域の境界に重なる少なくとも1本の溝が上記絶縁膜の表面に形成されていることを特徴とする半導体装置用基板。
【請求項2】
上記溝は上記半導体装置用基板の縁に達することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置用基板。
【請求項3】
上記溝は設定間隔を開けて複数本が平行に形成されていることを特徴とする請求項1或いは2記載の半導体装置用基板。
【請求項4】
上記溝は十字状に形成されていることを特徴とする請求項1或いは2記載の半導体装置用基板。
【請求項5】
上記溝は階段状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の半導体装置用基板。
【請求項6】
基板上に導電層と絶縁膜とを交互に積層して複数の素子基板を形成する半導体装置用基板の製造方法において、
基板上に導電層を成膜する工程と、
上記導電層上に該導電層を覆う絶縁膜を成膜する工程と、
上記絶縁膜の上記素子基板の境界位置に上記基板の一端から他端へ貫通する少なくとも1本の溝を該絶縁膜の面に沿って形成する工程と
を備えることを特徴とする半導体装置用基板の製造方法。
【請求項7】
上記溝が、上記絶縁膜上に塗布したフォトレジスト膜に形成したパターンに従って形成されることを特徴とする請求項6記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項8】
上記素子基板が上記基板上に複数形成され、
上記溝は、互いに隣接する上記素子基板の境界位置に形成されることを特徴とする請求項6或いは7記載の半導体装置用基板の製造方法。
【請求項9】
絶縁膜上にレジスト膜が塗布されている基板を相対的にステップ移動させながら、該基板上のレジスト膜に対してレチクルに形成されている透光パターンを順次投影して露光する縮小投影露光装置を備え、
上記基板の絶縁膜に形成される該基板の一端から他端へ貫通する少なくとも1本の溝を、上記レチクルに形成した透光パターンのステップ移動により形成することを特徴とする半導体装置用基板の製造装置。
【請求項10】
上記レチクルには上記絶縁膜に形成する溝に対応する溝用透光パターンと該絶縁膜に形成するコンタクトホールに対応するホール用透光パターンとが形成されていることを特徴とする請求項9記載の半導体装置用基板の製造装置。
【請求項11】
上記レチクルには上記溝用透光パターンが直交する方向に2本形成されていることを特徴とする請求項9或いは10記載の半導体装置用基板の製造装置。
【請求項12】
上記溝用透光パターンは上記縮小投影露光装置に備えられているレチクルブラインドにて一方又は双方がステップ移動毎に隠されて、上記絶縁膜上に設定パターンの上記溝を形成することを特徴とする請求項11記載の半導体装置用基板の製造装置。
【請求項13】
請求項1〜6の何れかに記載の半導体装置用基板に形成された素子基板を用いて構成されることを特徴とする電気光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−30830(P2006−30830A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212611(P2004−212611)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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